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特開2024-178141偏光板およびこれを含む光学表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178141
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】偏光板およびこれを含む光学表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241217BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20241217BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20241217BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
G02F1/13363
C08J5/18 CEP
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024094642
(22)【出願日】2024-06-11
(31)【優先権主張番号】10-2023-0074730
(32)【優先日】2023-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ジョン フン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ボン チョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ソン フン
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
4F071
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AB05
2H149BA02
2H149BA13
2H149CA02
2H149DA02
2H149DA12
2H149DA16
2H149EA02
2H149EA12
2H149EA19
2H149FA02X
2H149FA03W
2H149FA05X
2H149FA12X
2H149FA12Z
2H149FA13X
2H149FA15X
2H149FD03
2H149FD04
2H149FD05
2H149FD24
2H149FD47
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA30X
2H291FA30Z
2H291FA94X
2H291FA94Z
2H291FB02
2H291FD12
2H291HA15
2H291LA11
2H291LA25
2H291LA27
2H291PA04
2H291PA07
2H291PA25
2H291PA62
4F071AA09
4F071AA78
4F071AF29Y
4F071AF30
4F071AF31Y
4F071AG34
4F071AH12
4F071AH19
4F071BA02
4F071BB02
4F071BB07
4F071BC01
4F071BC12
(57)【要約】
【課題】全体の視野角で視認性を改善し、色変化を最小化した偏光板を提供する。
【解決手段】偏光子および前記偏光子の一面に積層された位相差層を含み、前記位相差層は波長550nmでnx>nz>ny(nx、ny、nzはそれぞれ位相差フィルムの波長550nmで遅相軸方向の屈折率、進相軸方向の屈折率および厚さ方向の屈折率である)である位相差フィルムを含み、前記位相差フィルムに含まれた樹脂の主鎖の配向方向は前記偏光子の光透過軸対比-5°~+5°をなし、前記位相差フィルムは波長550nmで二軸性の程度が0.2~0.6である偏光板およびこれを含む光学表示装置が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子、および
前記偏光子の一面に積層された位相差層
を含み、
前記位相差層は、波長550nmでnx>nz>ny(nx、ny、nzは位相差フィルムの波長550nmで遅相軸方向の屈折率、進相軸方向の屈折率および厚さ方向の屈折率である)である位相差フィルムを含み、
前記位相差フィルムに含まれた樹脂の主鎖の配向方向は、前記偏光子の光透過軸対比-5°~+5°をなし、
前記位相差フィルムは波長550nmで二軸性の程度が0.2~0.6である、偏光板。
【請求項2】
前記位相差フィルムは、単一層の位相差フィルムである、請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記位相差フィルムは、波長550nmで面内位相差が220~300nmである、請求項1に記載の偏光板。
【請求項4】
前記位相差フィルムは、下記の式1の値が0.8~1.2であり、下記の式2の値が0.9~1.1である、請求項1に記載の偏光板。
[式1]
Re(450nm)/Re(550nm)
[式2]
Re(650nm)/Re(550nm)
(前記式1、式2で、Re(450nm)、Re(550nm)、Re(650nm)は、それぞれ前記位相差フィルムの波長450nm、550nm、650nmでの面内位相差である(単位:nm)。)
【請求項5】
前記位相差フィルムの遅相軸は、前記偏光子の光吸収軸対比-5°~+5°である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項6】
前記位相差フィルムの遅相軸は、前記位相差フィルムの機械的方向と平行である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項7】
前記位相差フィルムは、幅方向(TD)延伸された位相差フィルムである、請求項1に記載の偏光板。
【請求項8】
nx-nyは、0.0022~0.0075、nx-nzは0.00044~0.0045である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項9】
nxは1.500~1.710、nyは1.480~1.700、nzは1.500~1.705である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項10】
前記樹脂は、前記位相差フィルムの主成分である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項11】
前記樹脂は、セルロースエステル系樹脂である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項12】
前記セルロースエステル系樹脂は、置換基として複数の芳香族-CO-基;置換基として複数の第1不飽和または飽和の(C1-6)アルキル-CO-基;および置換基として複数のヒドロキシ基で位置選択的に置換されたセルロースエステル系樹脂を含む、請求項11に記載の偏光板。
【請求項13】
前記セルロースエステル系樹脂は
ヒドロキシ置換度が0.2~2.0であり、
C2での置換度が0.15~0.8であり、
C3での置換度が0.05~0.6であり、
C6での置換度が0.05~0.6であり、
総置換度が0.25~2.5である、請求項12に記載の偏光板。
【請求項14】
前記位相差層は、前記位相差フィルムのみからなる、請求項1に記載の偏光板。
【請求項15】
前記位相差フィルムは、厚さが40~100μmである、請求項1に記載の偏光板。
【請求項16】
前記偏光子の他の一面に保護層が積層された、請求項1に記載の偏光板。
【請求項17】
請求項1~請求項16のいずれか一項に記載された偏光板を含む、光学表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
偏光板およびこれを含む光学表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は光学表示装置用パネルとして液晶パネル、液晶パネルの上部面に積層された視認側偏光板および液晶パネルの下部面に積層された光源側偏光板を含む。液晶パネルの駆動方式の中でも横電界方式は、液晶パネルの基板面に略平行な成分を含む電界によって液晶化合物を基板の面内方向に駆動させる方式である。横電界方式はIPSまたはFFS方式などがある。横電界方式は液晶パネルと偏光子の間に位相差層を備えることによって、コントラスト比と視野角を広げ、色の変化を最小化することができる。
【0003】
一実施形態によると、位相差層はポジティブC(+C)層とポジティブA(+A)層の位相差層の積層体が使われてもよい。例えば、偏光板は偏光子からポジティブC(+C)層、粘着層およびポジティブA(+A)層の順で積層されてもよい。ところで、このような偏光板は、ポジティブC(+C)層およびポジティブA(+A)層の2個の位相差層を備える。したがって、偏光板の薄型化することによる効果を提供するためには位相差層を単一層にすることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許第2013-0103595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題の一つは、単一層の位相差フィルムを備え、全体の視野角で視認性を改善し、色変化を最小化した偏光板を提供することである。
【0006】
本発明の課題の一つは、単一層の位相差フィルムを備え、全体の視野角でブラック状態(black mode)での最大光透過率を低くして光漏れを改善した偏光板を提供することである。
【0007】
本発明の課題の一つは、単一層の位相差フィルムを備え、優れた薄型化効果を発揮する偏光板を提供することである。
【0008】
本発明の課題の一つは、単一層の位相差フィルムを備え、横方向に広い幅で製造が可能な偏光板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態によると、偏光板は偏光子および前記偏光子の一面に積層された位相差層を含み、前記位相差層は波長550nmでnx>nz>ny(nx、ny、nzは位相差フィルムの波長550nmで遅相軸方向の屈折率、進相軸方向の屈折率および厚さ方向の屈折率である)である位相差フィルムを含み、前記位相差フィルムに含まれた樹脂の主鎖の配向方向は前記偏光子の光透過軸対比-5°~+5°をなし、前記位相差フィルムは波長550nmで二軸性の程度が0.2~0.6である。
【0010】
一実施形態によると、光学表示装置は前記偏光板を含む。
【発明の効果】
【0011】
単一層の位相差フィルムを備え、全体の視野角で視認性を改善し、色変化を最小化した偏光板を提供することができる。
【0012】
単一層の位相差フィルムを備え、全体の視野角でブラック状態での最大光透過率を低くして光漏れを改善した偏光板を提供することができる。
【0013】
単一層の位相差フィルムを備え、優れた薄型化効果を発揮する偏光板を提供することができる。
【0014】
単一層の位相差フィルムを備え、横向に広い幅で製造が可能な偏光板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態による偏光板の断面図である。
図2】他の実施形態による偏光板の断面図である。
図3】一実施形態による偏光板を横電界方式の装置に装着させて駆動させたときの位相差フィルムの波長550nmで二軸性の程度(NZ)および波長550nmで面内位相差(X軸、単位:nm)による全体の視野角で最大光透過率値(Y軸、単位:%)を示したものである。(■:位相差フィルムの波長550nmでNZが0.4、●:位相差フィルムの波長550nmでNZが0.5、▲:位相差フィルムの波長550nmでNZが0.6であるときの光透過率である。)
図4】実施例1の偏光板を駆動したときの光透過率である。
図5】実施例1の偏光板を駆動したときの色相値である。
図6】比較例2の偏光板を駆動したときの光透過率である。
図7】比較例2の偏光板を駆動したときの色相値である。
図8】比較例3の偏光板を駆動したときの光透過率である。
図9】比較例3の偏光板を駆動したときの色相値である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付した図面を参照して本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明を詳細に説明する。本発明は多様な異なる形態で実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0017】
図面では本発明を明確に説明するために説明に関わらない部分は省略し、明細書全体を通じて同一または類似する構成要素に対しては同一の図面符号を付した。図面において各構成要素の長さ、大きさは本発明を説明するためのものであって、本発明は図面に記載された各構成要素の長さ、大きさに制限されるものではない。
【0018】
ここで使われる用語は単に例示的な実施形態を説明するために使われたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0019】
本明細書で「面内位相差(Re)」は下記の式Aで表され、「厚さ方向位相差(Rth)」は下記の式Bで表され、「二軸性の程度(NZ)」は下記の式Cで表される。
[式A]
Re=(nx-ny)×d
[式B]
Rth=((nx+ny)/2-nz)×d
[式C]
NZ=(nx-nz)/(nx-ny)
【0020】
式A~式Cにおいて、nx、ny、nzは測定波長でそれぞれ光学素子の遅相軸(slow axis)方向、進相軸(fast axis)方向、厚さ方向の屈折率であり、dは光学素子の厚さ(単位:nm)である。式A~式Cにおいて、測定波長は450nm~650nmのうち任意の特定波長であってもよい。
【0021】
本明細書において、nx、ny、nzはそれぞれ特に言及されない限り、光学素子に対して波長550nmでの遅相軸(slow axis、面内方向で屈折率が最大である軸)、進相軸(fast axis、面内方向で屈折率が最小である軸)、厚さ方向の屈折率を意味する。
【0022】
本明細書において、角度を記載するとき、「+」は基準に対して反時計回り方向、「-」は基準に対して時計回り方向を意味する。
【0023】
本明細書において、「光透過率」は直交光透過率ではなく全光線透過率(total transmittance)を意味する。
【0024】
本明細書において、「(メト)アクリル」はアクリルおよび/またはメタアクリルを意味する。
【0025】
本明細書において、数値範囲を示すとき、「X~Y」は「X以上Y以下(X≦そして、≦Y)」を意味する。
【0026】
一実施形態に係る偏光板は、単一層の位相差フィルムを備える。該偏光板は、全体の視野角で視認性を改善し、色変化を最小化し、全体の視野角でブラック状態での最大光透過率を低くして光漏れを改善し、優れた厚さの薄型化効果を有する。ここで「最大光透過率を低くすること」は、偏光板を光学表示装置に適用して駆動させたときに全体の視野角でブラック状態(black mode)での光透過の程度を低くすることにより光漏れを防止できる。
【0027】
一実施形態において、最大光透過率は低いほど好ましい。最大光透過率は、0.9%以下、例えば0~0.5%、0~0.3%、0.1~0.4%、0.1~0.3%であってもよい。
【0028】
一実施形態に係る偏光板は、単一層の位相差フィルムを備え、該位相差フィルムは、幅方向に広幅の製造が可能であることによって、偏光板の製造時に工程性および経済性を高めることができる。
【0029】
一実施形態に係る偏光板は、偏光子および該偏光子の一面に積層された位相差層を含み、位相差層は波長550nmでnx>nz>ny(nx、ny、nzは位相差フィルムの波長550nmでの遅相軸方向の屈折率、進相軸方向の屈折率および厚さ方向の屈折率である)である位相差フィルムを含み、位相差フィルムに含まれた樹脂の主鎖の配向方向は、偏光子の光透過軸対比-5°~+5°をなし、位相差フィルムは波長550nmで二軸性の程度が0.2~0.6である。
【0030】
偏光板は、視認側偏光板または光源側偏光板であってもよい。
【0031】
一実施形態によると、位相差層は、視認側偏光板の偏光子と光学表示装置用パネル(例:液晶パネル)の間に位置してもよい。好ましくは、視認側偏光板中の偏光子の光吸収軸とパネルの液晶の配向方向は実質的に直交していてもよい。
【0032】
他の実施形態によると、位相差層は、光源側偏光板の偏光子と光学表示装置用パネルの間に位置してもよい。好ましくは、光源側偏光板中の偏光子の光吸収軸とパネルの液晶の配向方向は実質的に直交していてもよい。
【0033】
位相差フィルムは単一層の位相差フィルムである。これは偏光板の厚さを薄型化する効果および偏光板の製造時における加工性および採算性を改善する。ここで、「単一層の位相差フィルム」は、2層以上の位相差フィルムが粘着層または接着層などによって接合されずに一つの層のみからなる位相差フィルムを意味する。
【0034】
一実施形態によると、位相差フィルムは、厚さが40~100μm、例えば40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、100μm、例えば40~80μmであってもよい。該範囲では、偏光板に適用され得、厚さを薄型化する効果を提供することができる。
【0035】
位相差層は、位相差フィルムのみからなり得る。これは偏光板の厚さを薄型化する効果および偏光板の製造時における加工性および採算性を改善する。
【0036】
一実施形態によると、偏光板は、偏光子と被着体(例えば、光学表示装置用パネル)の間に位相差フィルムのみ存在することができる。このとき、偏光板は、偏光子の一面に接着層、位相差フィルムおよび粘着層が順次積層されてもよく、粘着層は被着体に粘着されてもよい。
【0037】
他の実施形態によると、偏光板は、偏光子と被着体(例えば、光学表示装置用パネル)の間に位相差フィルムおよび1層以上の下部保護層が存在してもよい。下部保護層は、偏光子と位相差フィルムの間および/または位相差フィルムと被着体の間に介在してもよい。一実施形態において、偏光板は、偏光子の一面に接着層、位相差フィルム、下部保護層、および粘着層が順次積層されてもよく、粘着層は被着体に粘着されてもよい。
【0038】
下部保護層は、波長550nmで面内位相差が10nm以下、例えば0nm、1nm、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、10nm、例えば0~10nmであってもよい。該範囲では、位相差フィルムの機能および効果に影響を与えずに、偏光子の保護効果を提供することができる。下部保護層は、光学的に透明なフィルムまたはコーティング層であってもよい。例えば、下部保護層は、トリアセチルセルロース(TAC)等を含むセルロース系、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどを含むポリエステル系、環状オレフィンコポリマー(COC)系、環状オレフィンポリマー(COP)系、ポリカーボネート系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリオレフィン系、ポリアリレート系、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系、アクリル系のうち1種以上の樹脂からなるフィルムであってもよい。
【0039】
位相差フィルムは、波長550nmでnx>nz>ny(nx、ny、nzは位相差フィルムの波長550nmでの遅相軸方向の屈折率、進相軸方向の屈折率および厚さ方向の屈折率である)であり、位相差フィルムに含まれた樹脂の主鎖の配向方向は、偏光子の光透過軸対比-5°~+5°をなす。これは、偏光板が単一層の位相差フィルムを備えても全体の視野角で視認性を改善し、色変化を最小化させ、全体の視野角でブラック状態での光透過率を低くする効果を提供するのに容易であるようにすることができる。
【0040】
位相差フィルムは、波長550nmでnx>nz>nyである。これはnx>nyであり、0<(nx-nz)/(nx-ny)<1となるようにすることによって、位相差フィルム使用時に視野角による変化が少なく、複屈折性光学表示装置用パネルに適用時に明暗比または白黒表示での視認性を向上させ、色変化を低くするのに役に立つようにすることができる。
【0041】
一実施形態によると、(nx-ny)は、0.0022~0.0075、例えば0.0028~0.0075、(nx-nz)は、0.00044~0.0045、例えば0.00066~0.0038であってもよい。該範囲では、位相差フィルム採用時に視野角による変化が少なく、複屈折性光学表示装置用パネルに適用時に明暗比または白黒表示での視認性を向上させるのに役に立つようにすることができる。
【0042】
一実施形態によると、位相差フィルムのnxは1.500~1.710、例えば1.500、1.550、1.600、1.650、1.700、1.710、例えば1.500~1.705であってもよく、nyは1.480~1.700、例えば1.480、1.500、1.550、1.600、1.650、1.700、例えば1.485~1.700であってもよく、nzは1.500~1.705、例えば1.500、1.550、1.600、1.650、1.700、1.705、例えば1.500~1.700であってもよい。該範囲では、前述したnx-nyおよびnx-nzの範囲に容易に到達され得、位相差フィルムの製造が容易であり得る。
【0043】
位相差フィルムでは、位相差フィルムに含まれた樹脂の主鎖の配向方向は、偏光子の光透過軸対比-5°~+5°をなす。これは、位相差フィルムが下記で説明される位相差フィルム用組成物で製造され、位相差フィルムが下記で説明される光学特性を満足するようにすることによって、全体の視野角で視認性を改善し、全体の視野角でブラック状態での光透過率を低くする効果を提供することができる。
【0044】
一実施形態によると、位相差フィルムに含まれた樹脂の主鎖の配向方向は、偏光子の光透過軸対比-3°~+3°、0°であってもよい。該範囲では、前述した効果を得ることができ、位相差フィルムの機械的方向と偏光子の機械的方向とが実質的に平行であることによって、ロールツーロール(roll to roll)による偏光板の製造工程性も高めることができる。
【0045】
位相差フィルムに含まれた樹脂の主鎖方向は、当業者に知られている常法で測定することができる。例えば、主鎖配向方向は、目視で位相差フィルムの延伸方向の結晶配向を確認することによって確認することができる。例えば、主鎖配向方向は、位相差フィルムのX線測定による位相差フィルム内樹脂の結晶構造の測定、位相差フィルムのNMR測定による位相差フィルム内樹脂の動的構造の測定、ラマンおよび赤外線分光測定を通じての配向方向の測定を通じて確認することができる。偏光子の光透過軸は、偏光子の幅方向(transverse direction)であってもよい。
【0046】
位相差フィルムに含まれた樹脂の主鎖の配向方向と偏光子の光透過軸とがなす角度は、偏光子に位相差フィルムを積層させるときに主鎖方向と偏光子の光透過軸間の角度を調節することによって実現することができる。
【0047】
一実施形態によると、位相差フィルムは、波長550nmで二軸性の程度が0.2~0.6である。二軸性の程度が0.2未満であれば、全体の視野角でブラック状態での光透過率が高まってブラック視感が悪く、黄色と青色が同時に視認されることがある。二軸性の程度が0.6超過であれば、全体の視野角でブラック状態での光透過率が高まってブラック視感が悪く、黄色と青色が同時に視認されることがある。例えば、二軸性の程度は、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、例えば0.4~0.6であってもよく、該範囲では効果が著しく顕著である。
【0048】
一実施形態によると、位相差フィルムは、下記の式1の値が0.8~1.2であり、下記の式2の値が0.9~1.1であってもよい。式1の値および式2の値の範囲内で、位相差フィルムが下記で説明される位相差フィルム用組成物で製造されると、全体の視野角で視認性を改善し、全体の視野角でブラック状態の光透過率を低くする効果を提供することが容易になる。例えば、式1の値は0.8、0.85、0.9、0.95、1.0、1.05、1.1、例えば0.9~1.1であってもよく、式2の値は0.9、0.95、1.0、1.05、1.1、例えば0.95~1.05であってもよい。
[式1]
Re(450nm)/Re(550nm)
[式2]
Re(650nm)/Re(550nm)
式1、式2では、Re(450nm)、Re(550nm)、Re(650nm)はそれぞれ、位相差フィルムの波長450nm、550nm、650nmでの面内位相差(単位:nm)である。
【0049】
一実施形態によると、位相差フィルムは、波長450~650nmでの面内位相差が176~360nm、例えば176nm、180nm、185nm、190nm、195nm、200nm、205nm、210nm、215nm、220nm、225nm、230nm、235nm、240nm、245nm、250nm、255nm、260nm、265nm、270nm、275nm、280nm、285nm、290nm、295nm、300nm、305nm、310nm、315nm、320nm、325nm、330nm、335nm、340nm、345nm、350nm、355nm、360nm、例えば225~308nmであってもよい。範囲では、上述した式1の値および式2の値に容易に到達することができ、全体の視野角でブラック状態での光透過率を低くする効果を提供することができる。
【0050】
一実施形態によると、位相差フィルムは、波長550nmでの面内位相差が220~300nm、二軸性の程度が0.2~0.6であってもよい。該範囲では、全体の視野角でブラック状態での光透過率を低くする効果を容易に提供することができる。好ましくは、位相差フィルムは、波長550nmでの面内位相差が220nm、225nm、230nm、235nm、240nm、245nm、250nm、255nm、260nm、265nm、270nm、275nm、280nm、285nm、290nm、295nm、300nmnm、例えば250~280nmであってもよく、二軸性の程度が0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、例えば0.4~0.6であってもよい。該範囲では、光透過率が0.3%以下と顕著に低くすることができる。
【0051】
図3は、一実施形態の偏光板を、横電界方式、例えばIPS液晶パネルに装着して駆動させたときの位相差フィルムの、波長550nmでの二軸性の程度(NZ)および波長550nmでの面内位相差(X軸、単位:nm)による光透過率値(Y軸、単位:%)を示したものである。
【0052】
図3で■は位相差フィルムの波長550nmでのNZが0.4、●は位相差フィルムの波長550nmでのNZが0.5、▲は位相差フィルムの波長550nmでのNZが0.6であるときの光透過率である。
【0053】
図3を参照すると、位相差フィルムの波長550nmでの面内位相差が250~280nm、二軸性の程度が0.4~0.6であるとき、光透過率が0.3%以下と顕著に低くなったことを確認することができる。
【0054】
位相差フィルムは、位相差フィルム用組成物で形成されることができる。
【0055】
位相差フィルム用組成物は、樹脂および下記で説明される化学式I~IVうち1種以上を含むことができる。位相差フィルム用組成物は、前述した光学特性を達成するのに容易である。
【0056】
樹脂は、セルロースエステル系樹脂であり、該樹脂は位相差フィルムのうち主成分として含まれる。ここで、「主成分」は、位相差フィルムまたは位相差フィルム用組成物の固形分基準として、70重量%以上、例えば75~99重量%、80~99重量%で含まれることを意味する。
【0057】
セルロースエステル系樹脂は、置換基として複数の芳香族-CO-基、置換基として複数の第1不飽和または飽和の(C1-6)アルキル-CO-基、および置換基として複数のヒドロキシ基で位置選択的に置換された、セルロースエステル系樹脂を含むことができる。
【0058】
ここで、「芳香族-CO-」は、(i)アリールが無置換若しくは1~5個のRによって置換された、(C6-20)アリール-CO-であるか、(ii)ヘテロアリールがN、OおよびSから選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~10員環であり、ヘテロアリールが無置換若しくは1~5個のRによって置換されたヘテロアリール-CO-であってもよい。Rは下記で説明された定義に従う。
【0059】
一実施形態によると、位置選択的に置換されたセルロースエステル系樹脂は、複数のアルキル-アシルまたはアルキル-CO-基、複数のアリール-アシルまたはアリール-CO-基、複数のヘテロアリール-アシルまたはヘテロアリール-CO-基を含むことができる。
【0060】
アシル置換基またはR-CO-は、下記の構造を有する置換基を示す。
【化1】
【0061】
セルロースエステル中のこのようなアシルまたはR-CO-基は、一般的にエステル結合を通じて(すなわち、酸素原子を通じて)セルロースのピラノース環に結合される。
【0062】
芳香族-CO-は、芳香族含有環系を有するアシル置換基であってもよい。この例は、アリール-CO-またはヘテロアリール-CO-を含むことができる。具体的な例は、ベンゾイル、ナフトイルおよびフロイルが含まれ、それぞれは無置換若しくは置換されてもよい。
【0063】
用語「アリール-アシル」置換基は、「R」が、アリール基であるアシル置換基を示す。用語「アリール」はアレーン(すなわち、単環または多環芳香族炭化水素)の環炭素から水素原子を除去して形成された1価基を意味する。場合によってはアリール-アシル基は炭素単位の前に位置する。例えば、(C5-6)アリール-アシル、(C6-12)アリール-アシル、または(C6-20)アリール-アシル。様々な態様で使うのに適合したアリール基の例はフェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基およびナフチル基を含むが、これらに制限されはしない。このようなアリール基は置換または無置換であってもよい。
【0064】
用語「アルキル-アシル」は「R」がアルキル基であるアシル置換基を示す。「アルキル」は、非芳香族炭化水素から水素原子が除去された1価基を意味し、ヘテロ原子を含むことができる。本発明で使うのに適したアルキル基は直鎖、分枝状または環状であってもよく、飽和または不飽和であってもよい。本発明で使うのに適したアルキル基は、任意の(C1-20)、(C1-12)、(C1-5)、または(C1-3)アルキル基を含む。様々な態様で、アルキルはC1-5直鎖アルキル基であってもよい。さらに他の態様では、アルキルは、C1-3直鎖アルキル基であってもよい。適したアルキル基の具体的な例は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、およびシクロヘキシル基を含む。アルキル-アシル基の例は、アセチル基、プロピオニル基およびブチロイル基等を含む。
【0065】
用語「ハロアルキル」は、一つ以上の水素がハロゲン原子で代替されたアルキル置換基を意味する。ハロアルキル基の炭素単位、例えば、ハロ(C1-6)アルキルがしばしば含まれる。ハロアルキル基は直鎖または分枝状であってもよい。ハロアルキル基の非制限的な例は、クロロメチル基、トリフルオロメチル基およびジブロモエチル基などを含む。
【0066】
用語「ヘテロアルキル」は、一つ以上の炭素原子が、例えば、N、OおよびSのようなヘテロ原子で代替されたアルキルを意味する。
【0067】
用語「ヘテロアリール」は、アリール環の炭素単位のうち一つ以上がO、NおよびSのようなヘテロ原子で代替されたアリールを意味する。ヘテロアリール環は単環または多環であり得る。しばしば、ヘテロアリール環システムを構成する単位は、例えば、5~20員環系を含む。5員ヘテロアリールはヘテロアリール環を形成する5個の原子を有する環系を意味する。ヘテロアリールの非制限的な例は、ピリジンイル、キノリンイル、ピリミジンイルおよびチオフェンイルなどを含む。
【0068】
用語「アルコキシ」は、アルキル-O-または酸素原子に末端結合されたアルキル基を意味する。しばしば、炭素単位、例えば、(C1-6)アルコキシが含まれる。アルコキシの非制限的な例は、メトキシ基、エトキシ基およびプロポキシ基などを含む。
【0069】
用語「ハロアルコキシ」は水素のうち一つ以上がハロゲンで代替されたアルコキシを意味する。しばしば、炭素単位、例えば、ハロ(C1-6)アルコキシが含まれる。ハロアルコキシの非制限的な例は、トリフルオロメトキシ基、ブロモメトキシ基および1-ブロモエトキシ基などを含む。
【0070】
用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨウ素のようなハロゲンを意味する。
【0071】
用語「置換度(DS)」は、無水グルコース単位(「AGU」)の置換基の置換レベルを表すために使われる。一般的に既存のセルロースは、各AGUに置換され得る3個のヒドロキシ基を含む。したがって、DSは0~3の値を有することができる。しかし、低分子量セルロース混合エステルは末端基寄与度から3より若干高い総置換度を有することができる。DSは統計的平均値であるので、値が1であるとしてすべてのAGUが単一置換基を有するものではない。場合によっては置換されていない無水グルコース単位があり得、一部は2個、一部は3個の置換基を有し、値は整数でない場合がさらに多い。総DSは無水グルコース単位当たりすべての置換基の平均数と定義される。AGU当たりの置換度はまた、例えば、ヒドロキシ基、アセチル基、ブチリル基またはプロピオニル基のような特定の置換基を指称し得る。また、置換の程度は、無水グルコース単位の炭素単位を指定することができる。
【0072】
置換度がヒドロキシ基を指称するとき(すなわち、DSOH)、前記指称は置換されていない、無水グルコース当たりの平均ヒドロキシ基を意味する。結果的に、DSOHは総置換度計算に使われない。
【0073】
位置選択性は、炭素13NMR分光法(文献[Macromolecules、1991、24、3050-3059])によりセルロースエステルのC6、C3およびC2で相対的な置換度(「RDS」)を決定することによって測定され得る。一類型のアシル置換基の場合、または第2アシル置換基が少量で存在する場合(DS<0.2)、RDSはシクロアルカン(cycloalkane)の積分によって最も容易に直接的に測定され得る。2個以上のアシル置換基が類似する量で存在するとき、環RDSを決定することの他にも、カルボニル炭素の積分によって各置換基のRDSを独立的に測定するためにセルロースエステルを追加的な置換基で完全に置換しなければならない場合がある。既存のセルロースエステルでは一般的に位置選択性が観察されず、C6/C3、C6/C2またはC3/C2のRDS比が一般的に1以下に近い。本質的に、既存のセルロースエステルはランダム共重合体である。対照的に、適切な溶媒に溶解したセルロースに一つ以上のアシル化試薬を添加するとき、セルロースのC6位置はC2およびC3位置よりはるかに速くアシル化される。結果的に、C6/C3およびC6/C2比は1よりはるかに大きく、これは6,3または6,2増強された位置選択的に置換されたセルロースエステルの特徴である。
【0074】
一実施形態によると、セルロースエステルは一般的に下記の構造式で表される構造を含む。
【化2】

上記構造式では、R、R、およびRはそれぞれ独立して水素(ただし、R、RおよびRは同時に水素ではない)、エステル結合を通じてセルロースに結合されたアルキル-アシル基、またはアリール-アシル基であり、nは1以上の整数である。
【0075】
これらの方法によって製造されたセルロースエステルの重合度(「DP」)は10以上、50以上、100以上、または250以上であってもよい。
【0076】
アシル化試薬は、本明細書に記載された位置選択的に置換されたセルロースエステルのアシル置換基に使うのに適した前述したアルキル基またはアリール基を含有するアルキルまたはアリールカルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物、および/またはカルボン酸エステルを含むことができるが、これらに制限されない。適したカルボン酸無水物の例は、酢酸無水物、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、ピバロイル無水物、安息香酸無水物およびナフトイル無水物を含むが、これらに制限されない。カルボン酸ハライドの例は、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ピバロイル、ベンゾイル、およびナフトイルのクロライドまたはブロマイドを含むが、これらに制限されない。カルボン酸エステルの例は、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ピバロイル、ベンゾイルおよびナフトイルのメチルエステルを含むが、これらに制限されない。一つ以上の態様において、アシル化剤は、酢酸無水物、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、ピバロイル無水物、ベンゾイル無水物、およびナフトイル無水物からなる群から選択される一つ以上のカルボン酸無水物であってもよい。
【0077】
上記セルロースエステル系樹脂は、置換基として複数の芳香族-CO-基、置換基として複数の第1不飽和または飽和の(C1-6)アルキル-CO-基、および置換基として複数のヒドロキシ基で位置選択的に置換されたセルロースエステル系樹脂を含むことができる。
【0078】
一実施形態によると、セルロースエステル系樹脂は、ヒドロキシ置換度が0.2~2.0であり、C2での置換度が0.15~0.8であり、C3での置換度が0.05~0.6であり、C6での置換度が0.05~0.6であり、総置換度が0.25~2.5となってもよい。
【0079】
一具現例によると、前記セルロースエステル系樹脂はヒドロキシ置換度が0.2~2.0であり、芳香族-CO基またはアルキル-CO基によるC2での置換度が0.15~0.8であり、芳香族-CO基またはアルキル-CO基によるC3での置換度が0.05~0.6であり、芳香族-CO基またはアルキル-CO基によるC6での置換度が0.05~0.6であり、芳香族-CO基またはアルキル-CO基による総置換度が0.25~2.5となり得る。
【0080】
セルロースエステル系樹脂は、第1不飽和または飽和の(C1-6)アルキル-アシル置換基(「DSFAk」)の置換度が0.7~2.2であり得る。一態様において、セルロースエステル系樹脂は、0.7~1.9である第1不飽和または飽和の(C1-6)アルキル-アシル置換基の置換度を有することができる。
【0081】
このような態様の一部において、第1不飽和または飽和(C1-20)アルキル-CO-置換基は、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、3-メチルブタノイル、ペンタノイル、4-メチルペンタノイル、3-メチルペンタノイル、2-メチルペンタノイル、ヘキサノイルまたはクロトニルである。このような態様の一部において、第1不飽和または飽和(C1-6)アルキル-CO-置換基は、アセチル、プロピオニルまたはクロトニルである。
【0082】
一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、セルロースエステル系樹脂は、複数の第2(C1-20)アルキル-CO-置換基を追加で含むことができる。このような態様の一部において、第2(C1-20)アルキル-CO-置換基(「DSSAk」)の置換度は0.05~0.6である。
【0083】
このような態様の一部において、第2(C1-20)アルキル-CO-置換基は、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、3-メチルブタノイル、ペンタノイル、4-メチルペンタノイル、3-メチルペンタノイル、2-メチルペンタノイル、ヘキサノイル、ピバリル、または2-エチルヘキサノイルである。このような態様の一部において、第2(C1-20)アルキル-CO-置換基は、アセチル、イソブチリル、3-メチルブタノイル、ペンタノイル、4-メチルペンタノイル、3-メチルペンタノイル、2-メチルペンタノイル、ヘキサノイル、または2-エチルヘキサノイルである。このような態様の一部において、第2(C1-20)アルキル-CO-置換基は、アセチルまたは2-エチルヘキサノイルである。
【0084】
一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、芳香族-CO-は、(C6-20)アリール-CO-であり、このとき、該アリールは無置換若しくは1~5個のRによって置換される。このような態様の一部において、芳香族-CO-は、ベンゾイルまたはナフトイルであり、これは無置換若しくは1~5個のRによって置換される。このような態様の一部において、芳香族-CO-は、無置換若しくは1~5個のRによって置換されたベンゾイルである。このような態様の一部において、芳香族-CO-は、無置換若しくは1~5個のRによって置換されたナフトイルである。
【0085】
一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、芳香族-CO-は、無置換若しくはRによって置換されたベンゾイルである。このような態様の一部において、セルロースエステルは、0.40~1.20の総DSArCOを有する。このような態様の一下位部において、C3DSArCOとC3DSArCOの和は0.30~0.75である。
【0086】
一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、芳香族-CO-は、無置換若しくは1~5個のRによって置換されたナフトイルである。このような態様の一部において、セルロースエステルは、0.30~0.6の総DSArCOを有する。このような態様の一下位部において、C3DSArCOとC3DSArCOの和は0.20~0.40である。このような態様の一下位部において、C3DSArCOとC3DSArCOの和は0.30~0.40である。
【0087】
一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、芳香族-CO-は、ヘテロアリール-CO-であり、このとき、ヘテロアリールはN、OおよびSから選択される1-~4-ヘテロ原子を有する5~10員環であり、このとき、ヘテロアリールは無置換若しくは1~5個のRによって置換される。このような態様の一部において、ヘテロアリール-CO-は、ピリジンイル-CO-、ピリミジンイル-CO-、フラニル-CO-、またはピロリル-CO-である。このような態様の一部において、ヘテロアリール-CO-は、2-フロイルである。
【0088】
一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、セルロースエステルは、0.4~1.6のtotDSArCOを有する。一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、セルロースエステルは1.0~1.6のtotDSArCOを有する。一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、セルロースエステルは、0.3~1.25のtotDSArCOを有する。一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、セルロースエステルは、0.4~1.2のtotDSArCOを有する。一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、セルロースエステルは、0.4~0.8のtotDSArCOを有する。一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、セルロースエステルは、0.3~0.8のtotDSArCOを有する。一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、セルロースエステルは、0.3~0.6のtotDSArCOを有する。一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、セルロースエステルは、0.2~06のtotDSArCOを有する。一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、セルロースエステルは、0.2~0.5のtotDSArCOを有する。一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、セルロースエステルは、0.8~1.2のtotDSArCOを有する。一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、セルロースエステルは、0.5~1.1のtotDSArCOを有する。
【0089】
一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、DSOHは0.3~1.0である。一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、DSOHは0.3~0.9である。一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、DSOHは0.4~0.9である。一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、DSOHは0.5~0.9である。一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、DSOHは0.6~0.9である。一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、DSOHは0.4~0.8である。一態様で、または任意の他の態様と組み合わせにおいて、DSOHは0.5~0.8である。
【0090】
一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、C2DSArCOとC3DSArCOの和は0.3~1.25である。一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、C2DSArCOとC3DSArCOの和は0.2~0.4である。一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、C2DSArCOとC3DSArCOの和は0.3~0.4である。一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、C2DSArCOとC3DSArCOの和は0.4~1.2である。一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、C2DSArCOとC3DSArCOの和は0.4~1.1である。一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、C2DSArCOとC3DSArCOの和は0.4~1.0である。一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、C2DSArCOとC3DSArCOの和は0.5~1.1である。一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、C2DSArCOとC3DSArCOの和は0.6~1.0である。一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、C2DSArCOとC3DSArCOの和は0.6~1.25である。一態様で、または任意の他の態様との組み合わせにおいて、C2DSArCOとC3DSArCOの和は0.30~0.75である。
【0091】
位相差フィルム用組成物、すなわち位相差フィルムは、化学式I~IVのうち1種以上の成分Aを含むことができる。
[化学式I]
【化3】

[化学式II]
【化4】

[化学式III]
【化5】

[化学式IV]
【化6】

前記化学式I~IVにおいて、
環Aは、(C6-20)アリールであるか、N、OおよびSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員のヘテロアリールであり、
環Bは、(C6-20)アリールであるか、N、OおよびSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員のヘテロアリールであり、
環Cは、(C6-20)アリールであるか、N、OおよびSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員のヘテロアリールであり、
は、飽和または不飽和(C1-20)アルキル;飽和または不飽和ハロ(C1-20)アルキル;アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシまたはハロによって任意で1~5置換された(C6-20)アリール;N、OおよびSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員のヘテロアリール;または-CHC(O)-Rであり、
は独立的に、水素、飽和または不飽和(C1-20)アルキル、または飽和または不飽和ハロ(C1-20)アルキルであり、
は、飽和または不飽和(C1-20)アルキル、飽和または不飽和ハロ(C1-20)アルキル(C6-20)アリール、またはN、OおよびSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員のヘテロアリールであり、このとき、前記アリールまたは前記ヘテロアリールは無置換若しくは1~5個のRによって置換され、
は、飽和または不飽和(C1-20)アルキル、飽和または不飽和ハロ(C1-20)アルキル、または飽和または不飽和(C1-20)アルキル-CO-(C1-20)アルキルであり、このとき、それぞれの基は無置換若しくは1~3個のヒドロキシ、飽和または不飽和(C1-20)アルキル、飽和または不飽和ハロ(C1-20)アルキル、飽和または不飽和(C1-20)アルコキシ、飽和または不飽和ハロ(C1-20)アルコキシ、飽和または不飽和ヒドロキシ(C1-20)アルキル、飽和または不飽和(C1-20)アルコキシ-(C1-20)アルキル、飽和または不飽和(C1-20)アルコキシ-ヒドロキシ(C1-20)アルキル、飽和または不飽和(C1-20)アルコキシ-(C1-20)アルキル-CO-(C1-20)アルキル、飽和または不飽和(C1-20)アルキル-CO、飽和または不飽和(C1-20)アルキル-COO、飽和または不飽和(C1-20)アルキル-O-CO-(C1-20)アルキル、飽和または不飽和(C1-20)アルキル-COO-(C1-20)アルキル、飽和または不飽和(C1-20)アルコキシ-(C1-20)アルキル-COO-(C1-20)アルキル、または(C1-20)アルコキシ-(C1-20)アルキル-O-CO-(C1-20)アルキルによって置換され、
それぞれのRは独立的に、ヒドロキシ、シアノ、飽和または不飽和(C1-20)アルキル、飽和または不飽和ハロ(C1-20)アルキル、飽和または不飽和(C1-20)アルコキシ、飽和または不飽和ハロ(C1-20)アルコキシ、またはハロであり、
それぞれのRは独立的に、ヒドロキシ、シアノ、飽和または不飽和(C1-20)アルキル、飽和または不飽和ハロ(C1-20)アルキル、飽和または不飽和(C1-20)アルコキシ、飽和または不飽和ハロ(C1-20)アルコキシ、またはハロまたは(C6-20)アリールであり、このとき、前記アリールは無置換若しくは1~5個のRによって置換され、
それぞれのRは独立的に、ヒドロキシ、飽和または不飽和(C1-6)アルキル、飽和または不飽和ハロ(C1-6)アルキル、または飽和または不飽和(C1-6)アルコキシルであり、
は、飽和または不飽和(C1-20)アルキル、飽和または不飽和ハロ(C1-20)アルキル、飽和または不飽和(C1-20)アルコキシル、または飽和または不飽和ハロ(C1-20)アルコキシルであり、
それぞれのRは、R-O-、ヒドロキシ、飽和または不飽和(C1-20)アルキル、N、OおよびSから選択される1または2個のヘテロ原子を含有する飽和または不飽和ヘテロ(C1-20)アルキル、飽和または不飽和ハロ(C1-20)アルキル、飽和または不飽和(C1-20)アルキル-CO-(C1-20)アルキル-、飽和または不飽和(C1-20)アルキル-COO-(C1-20)アルキル-、飽和または不飽和(C1-20)アルキル-COO-、飽和または不飽和(C1-20)アルキル-O-CO-、飽和または不飽和(C1-20)アルキル-CO-、飽和または不飽和(C1-20)アルコキシ-(C1-20)アルキル-CO-O-(C1-20)アルキル、飽和または不飽和(C1-20)アルコキシ-(C1-20)アルキル-O-CO-(C1-20)アルキル、飽和または不飽和(C1-20)アルコキシ-(C1-20)アルキル-COO-(C1-20)アルキル、(C1-20)アルコキシ-(C1-20)アルキル-O-CO-(C1-20)アルキル-(C6-10)アリール、N、OおよびSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員のヘテロアリールであり、
このとき、それぞれの基は無置換若しくは1~3個のヒドロキシ、飽和または不飽和(C1-20)アルキル、飽和または不飽和ハロ(C1-20)アルキル、飽和または不飽和(C1-20)アルコキシル、飽和または不飽和ハロ(C1-20)アルコキシル、飽和または不飽和ヒドロキシ(C1-20)アルキル、飽和または不飽和(C1-20)アルコキシ-(C1-20)アルキル、飽和または不飽和(C1-20)アルコキシ-ヒドロキシ(C1-20)アルキルまたは飽和または不飽和(C1-20)アルコキシ-(C1-20)アルキル-CO-(C1-20)アルキル-、飽和または不飽和(C1-20)アルキル-CO、飽和または不飽和(C1-20)アルキル-COO、飽和または不飽和(C1-20)アルキル-O-CO-(C1-20)アルキル、飽和または不飽和(C1-20)アルキル-COO-(C1-20)アルキル、飽和または不飽和(C1-20)アルコキシ-(C1-20)アルキル-COO-(C1-20)アルキル、または(C1-20)アルコキシ-(C1-20)アルキル-O-CO-(C1-20)アルキルによって置換され、
それぞれのnは0、1、2、3、4または5であり、
それぞれのmは0、1、2、3または4であり、
kは0、1、3または4である。
【0092】
一実施形態によると、成分Aは、1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオン、アボベンゾン、(2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)フェニル(フェニル)メタンオン、(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)(2-ヒドロキシフェニル)メタンオン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)フェノール(チヌビン(チヌビン)1577)、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-[2-ヒドロキシ-3-(ドデシルオキシ-およびトリデシルオキシ)プロポキシ]フェノール(チヌビン400)、イソオクチル2-(4-(4,6-ジ([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-3-ヒドロキシフェノキシ)プロパノエート(チヌビン479)、6,6’-(6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン-2、4-ジイル)ビス(3-ブトキシフェノール)(チヌビン460)、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(3-((2-エチルヘキシル)オキシ)-2-ヒドロキシプロポキシ)フェノール(チヌビン405)、7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0093】
一実施形態によると、成分Aは、1重量%以上で存在してもよい。このような態様の一部において、成分Aは、1~30重量%の範囲で存在してもよい。このような態様の一部において、成分Aは、1~20重量%の範囲で存在してもよい。このような態様の一部において、成分Aは、1~15重量%の範囲で存在してもよい。該範囲であれば、本発明の効果を容易に実現することができる。
【0094】
位相差フィルム用組成物は、位相差フィルムの作業性と柔軟性を高めるために可塑剤をさらに含むことができる。可塑剤は、位相差フィルムまたは位相差フィルム用組成物の固形分基準0.1~10重量%、例えば0.1~5重量%で含まれてもよい。該範囲では、位相差フィルムが形成される物質のガラス転移温度および溶融温度を低くすることができ、さらに低い温度および/または単純化されたフィルム製造を可能とすることができる。
【0095】
可塑剤は、ホスフェート系可塑剤、フタレート系可塑剤、テレフタレート系可塑剤、トリトリメリテート系可塑剤、ベンゾエート系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、ポリオル系可塑剤、ポリエーテル系可塑剤などから選択することができる。
【0096】
グリコレート可塑剤の非制限的な例は、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレートおよびオクチルフタリルエチルグリコレートを含むことができる。
【0097】
位相差フィルムは、位相差フィルム用組成物を溶液キャストして延伸することにより製造することができる。一実施形態によると、位相差フィルムは、位相差フィルム用組成物自体または位相差フィルム用組成物に溶媒を添加してキャスティング溶液を製造し、該キャスト溶液を基材に塗布して乾燥させて未延伸されたフィルムを製造し、未延伸のフィルムを未延伸されたフィルムの幅方向(TD、transverse direction)に延伸させることによって製造することができる。
【0098】
一実施形態において、位相差フィルムに含まれた樹脂の主鎖の配向方向は、未延伸のフィルムを製造するとき、位相差フィルム用組成物の粘度、位相差フィルム用組成物中の樹脂の濃度、および未延伸のフィルムの延伸方向および延伸比などによって調節されてもよい。
【0099】
一実施形態において、位相差フィルムの遅相軸は、偏光子の光吸収軸対比-5°~+5°、例えば-3°~+3°、0°であってもよい。該範囲では、本発明の効果の実現が容易であってもよい。
【0100】
一実施形態において、位相差フィルムの遅相軸は、位相差フィルムの機械的方向と実質的に平行であってもよい。
【0101】
偏光子は、入射した自然光または偏光を特定方向の直線偏光に変換することができる。偏光子は、厚さが2~30μm、具体的には4~25μmであってもよく、該範囲では、偏光板に使用されることができる。
【0102】
偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とするフィルムから当業者に知られている通常の方法で製造することができる。例えば、偏光子は、ヨウ素染色および延伸によって製造された偏光子であってもよい。偏光子は、面内方向で光吸収軸および光吸収軸と直交する光透過軸を有し、光吸収軸はMD、光透過軸はTDとなってもよい。
【0103】
偏光板は、偏光子の上部面に上部保護層をさらに1層以上含んでもよい。
【0104】
上部保護層は、光学的に透明な、保護コーティング層、保護フィルムのうち1種以上を含むことができる。保護コーティング層は、活性エネルギー線硬化型化合物を含む組成物で形成されたコーティング層を含むことができる。保護フィルムは、光学的透明フィルムであって、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等を含むセルロース系、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどを含むポリエステル系、環状ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリオレフィン系、ポリアリレート系、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系のうち一つ以上の樹脂からなるフィルムであってもよい。具体的には、TAC、PETフィルムを使うことができる。
【0105】
上部保護層は、厚さが0.1~100μm、具体的には5~70μm、具体的には15~45μmであってもよく、該範囲はで偏光板に使うことができる。
【0106】
上部保護層は、接着層によって被着体に接着されてもよい。上部保護層を省略しても偏光板の機能に問題がなければ、上部保護層は省略されてもよい。
【0107】
偏光板は、最下部面に粘着層をさらに含むことができる。粘着層は、偏光板をパネルに粘着させる役割をする。粘着層は、当業者に知られている通常の粘着剤組成物で形成され得る。
【0108】
図1を参照すると、偏光板は、偏光子100、偏光子100の上部面に積層された上部保護層300、および偏光子100の下部面に積層された位相差フィルム200を含むことができる。
【0109】
図2を参照すると、偏光板は、偏光子100、偏光子100の上部面に積層された上部保護層300、および偏光子100の下部面に順次積層された位相差フィルム200および下部保護層400を含むことができる。
【0110】
光学表示装置
一実施形態によると、光学表示装置は、上記偏光板を含む。光学表示装置は、液晶表示装置を含むことができる。偏光板は、光学表示装置のうち視認側偏光板として含まれてもよい。一実施形態では、液晶表示装置は水平配向モードの液晶であって、IPS(in-plane switching)、FFS(fringe-field switching)、ADS(advanced super dimension switching)またはPLSモードの液晶表示装置であってもよい。
【0111】
一実施形態によると、液晶表示装置は、液晶パネル、液晶パネルの一側面にある視認側偏光板、液晶パネルの他の一側面にある光源側偏光板を含むことができる。視認側偏光板中の偏光子の光吸収軸は、光源側偏光板中の光吸収軸と実質的に直交していてもよい。視認側偏光板中の偏光子の光吸収軸を0°とすると、光源側偏光板中の光吸収軸は90°であってもよく、液晶パネル中の液晶のラビング方向は90°であってもよい。視認側偏光板は、前述した一実施形態に係る偏光板を含むことができる。
【実施例0112】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて本発明の構成および作用をさらに詳細に説明する。ただし、これは本発明の好ましい例示として提示されるものであり、いかなる意味としても、これによって本発明が制限されるものと解釈されてはならない。
【0113】
実施例1
位置選択的に置換されたセルロースエステル系樹脂(プロピオニル基C2のプロピオニル基置換度が0.26、C3のプロピオニル基置換度が0.34、C6のプロピオニル基置換度が0.53、プロピオニル基の総置換度が2.33、ヒドロキシの置換度が1.87)を含む位相差フィルム用組成物(EASTMAN Chemical Ltd.)を溶液キャスト法で未延伸のフィルムを製造した。製造された未延伸のフィルムを、該未延伸のフィルムの幅方向に延伸比1.5倍で延伸して位相差フィルム(波長550nmで、面内位相差270nm、二軸性の程度0.4、厚さ:56μm、nx=1.5323、ny=1.5275、nz=1.5304)を製造した。
【0114】
ポリビニルアルコール系フィルム(TS#20、日本Kuraray社、延伸前厚さ:20μm)を55℃ヨウ素水溶液でMD 1軸で6倍に延伸して光透過率45%の偏光子を製造した。
【0115】
製造された偏光子の上部面に反射防止層が形成されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを合紙し、前記偏光子の下部面に前記製造された位相差フィルムを積層して、偏光板を製造した。製造された偏光板は、偏光子の光透過軸(偏光子の幅方向)に対して位相差フィルム中の位置選択的に置換されたセルロースエステル系樹脂の主鎖方向がなす角度は0°である。
【0116】
実施例2~実施例6
実施例1で置換度が変更された位置選択的に置換されたセルロースエステル系樹脂を使用し、延伸比を変更した点を除いては実施例1と同じ方法で偏光板を製造した。
【0117】
比較例1~比較例4
実施例1で位相差フィルムの面内位相差および/または二軸性の程度を変更した点、延伸比を変更した点を除いては実施例1と同じ方法で偏光板を製造した。
【0118】
実施例と比較例の偏光板をもって下記の物性を評価し、下記の表1、図4図9に示した。
(1)位相差フィルムの光学特性:位相差フィルムに対してAXOSCANを使って測定された。
(2)角度:偏光板中の偏光子の光透過軸に対して位相差フィルム中のセルロースエステル系樹脂の主鎖方向がなす角度は、位相差フィルムと偏光子が分離された状態で偏光子の光透過軸はAXOSCANで測定し、セルロースエステル系樹脂の主鎖方向はX-RD(X-ray diffraction)方法で測定して、これらの互いに相対的な角度を計算した。
(3)最大光透過率(単位:%):IPS液晶パネルを備えるサムスン電子TVモデルで視認側偏光板の代わりに実施例と比較例で製造された偏光板を取り付けて駆動させた。そして、TECHWIZ 1D(SANAI SYSTEM、KOREA)シミュレーションプログラムを通じてExtended Jones Matrix方法で全体の視野角でブラック状態での最大光透過率を計算した。ただし、パネルの内部カラーフィルタによる光透過率の減少分は上記の計算から排除した。最大光透過率が低いほど光が漏れることを防ぐことができ、視認性を高め得ることを意味する。
(4)ブラック視感および色:IPS液晶パネルを備えるサムスン電子TVモデルで視認側偏光板の代わりに実施例と比較例で製造された偏光板を取り付けて駆動させた。そして、目視評価方法でブラック視感および色相を評価した。
【0119】
【表1】

*実施例と比較例の位相差フィルムは波長550nmでnx>nz>nyを満たす。
【0120】
表1に示すように、本発明の偏光板は単一層の位相差フィルムを備えて、全体の視野角で視認性を改善し、色変化を最小化し、全体の視野角でブラック状態での最大光透過率を低くして光漏れを改善する効果を提供することができた。一方、表1に示すように、本発明の光特性を満たさない位相差フィルムを備える比較例の偏光板は、前述した効果が実施例に比べて低かった。
【0121】
図4および図5に示されるように、実施例1の偏光板は、優れたブラック視感と全体の視野角で色変化が最小化された。一方、図6図9に示されるように、比較例2および比較例3の偏光板は、実施例1に比べてブラック視感が悪く、全体の視野角で色変化が激しかったことを確認することができる。
【0122】
本発明の単純な変形乃至変更はこの分野の通常の知識を有する者によって容易に実施され得、このような変形や変更はすべて本発明の領域に含まれるものと見なすことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9