(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178259
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】紫外分光法によるハロゲンフッ化物含有ガスに含まれるフッ素ガス濃度の測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/33 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
G01N21/33
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024159898
(22)【出願日】2024-09-17
(62)【分割の表示】P 2021561295の分割
【原出願日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】P 2019214261
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、紫外分光光度計を用いてハロゲンフッ化物含有ガスに含まれるフッ素ガス濃度を測定する際に、ハロゲンフッ化物の光分解によって生じるフッ素ガス等がもたらす測定誤差を減らし、精度の高い測定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、ハロゲンフッ化物含有ガスに対し、285nmの波長の紫外光強度(WF)に対する250nm未満の波長領域における紫外光強度の最大値(WX)の比(WX/WF)が1/10以下となる紫外光を照射し、285nmの波長の吸光度を測定しハロゲンフッ化物含有ガスに含まれるフッ素ガス濃度を得る、フッ素ガス濃度の測定方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲンフッ化物含有ガスに対し、285nmの波長の紫外光強度(WF)に対する250nm未満の波長領域における紫外光強度の最大値(WX)の比(WX/WF)が1/10以下となる紫外光を照射し、285nmの波長の吸光度を測定しハロゲンフッ化物含有ガスに含まれるフッ素ガス濃度を得る、フッ素ガス濃度の測定方法。
【請求項2】
前記ハロゲンフッ化物含有ガスに対して、光源から250nm未満の波長の紫外光の照射を抑制する手段を用いて250nm以上の波長の紫外光を照射する、請求項1に記載のフッ素ガス濃度の測定方法。
【請求項3】
前記手段が前記光源からハロゲンフッ化物含有ガスに照射される紫外光を、250nm未満の波長の紫外光を50%以上遮断し、280~290nmの波長の紫外光を90%以上透過させるフィルターを介して照射することである、請求項1または2に記載のフッ素ガス濃度の測定方法。
【請求項4】
前記ハロゲンフッ化物が、三フッ化塩素、五フッ化臭素、七フッ化ヨウ素、三フッ化臭素、および五フッ化ヨウ素からなる群より選択されるいずれか1種のガスである、請求項1~3のいずれか一項に記載のフッ素ガス濃度の測定方法。
【請求項5】
前記ハロゲンフッ化物が七フッ化ヨウ素である、請求項1~4のいずれか一項に記載のフッ素ガス濃度の測定方法。
【請求項6】
前記ハロゲンフッ化物が五フッ化臭素であり、前記250nm未満の波長領域における紫外光強度の最大値(WX)が225nm未満の波長領域における紫外光強度の最大値である、請求項1~4のいずれか一項に記載のフッ素ガス濃度の測定方法。
【請求項7】
前記ハロゲンフッ化物が三フッ化塩素であり、前記250nm未満の波長領域における紫外光強度の最大値(WX)が215nm未満の波長領域における紫外光強度の最大値である、請求項1~4のいずれか一項に記載のフッ素ガス濃度の測定方法。
【請求項8】
前記ハロゲンフッ化物含有ガスに前記紫外光を照射して測定した吸収スペクトルから、リファレンスガスに前記紫外光を照射して測定した吸収スペクトルを差し引き、得られた吸収スペクトルの285nmの波長の吸光度からフッ素ガス濃度を得る、請求項1~7のいずれか一項に記載のフッ素ガス濃度の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲンフッ化物含有ガスに含まれるフッ素ガス濃度の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲンフッ化物は、半導体製造プロセスにおいてエッチングガスおよびクリーニングガスなどに使用されている。近年、半導体の微細化が進行しており、半導体製造プロセスで使用されるエッチングガスおよびクリーニングガスなどには高純度のガスが求められている。高純度のガスを調製するためには、エッチングガスおよびクリーニングガスなどに含まれる不純物であるフッ素ガス濃度を精度よく測定する方法が必要とされている。
【0003】
フッ素ガス濃度を測定する方法として、例えば、特許文献1は、半導体製造装置などの電子デバイス製造装置から排出される排ガスなどのガス中に含まれるフッ素ガス濃度を、紫外分光光度計とフーリエ変換赤外分光光度計とを用いて測定する方法を開示している。特許文献2は、六フッ化イオウを使用する半導体プロセス装置から排出された排ガス中のフッ素濃度を、紫外分光光度計とフーリエ変換赤外分光光度計とを用いて測定する方法を開示している。特許文献3は、半導体製造プロセスから生じるハロゲンガスを紫外-可視吸収分光法によって分析する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5221881号公報
【特許文献2】特開2010-203855号公報
【特許文献3】米国特許第6686594号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハロゲンフッ化物含有ガスに含まれるフッ素ガス濃度を紫外分光法によって測定する場合、ハロゲンフッ化物が主に250nm未満の波長の光を吸収するため、ハロゲンフッ化物の一部が光分解され、フッ素分子やフッ素ラジカルが生じる。そのため、ハロゲンフッ化物中のフッ素ガス濃度を測定する際に、光分解によって発生したフッ素やフッ素ラジカルによって測定誤差が生じてしまうという問題があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、紫外分光光度計を用いてハロゲンフッ化物含有ガスに含まれるフッ素ガス濃度を測定する際に、ハロゲンフッ化物の光分解によって生じるフッ素ガス等がもたらす測定誤差を減らし、精度の高い測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、紫外光を照射してハロゲンフッ化物含有ガスに含まれるフッ素ガス濃度を測定する際に、250nm未満の波長の紫外光の照射を抑制することで、精度の高い測定ができることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下に示す[1]~[8]を含む。
【0008】
[1]ハロゲンフッ化物含有ガスに対し、285nmの波長の紫外光強度(WF)に対する250nm未満の波長領域における紫外光強度の最大値(WX)の比(WX/WF)が1/10以下となる紫外光を照射し、285nmの波長の吸光度を測定しハロゲンフッ化物含有ガスに含まれるフッ素ガス濃度を得る、フッ素ガス濃度の測定方法。
[2]前記ハロゲンフッ化物含有ガスに対し、光源から250nm未満の波長の紫外光の照射を抑制する手段を用いて250nm以上の波長の紫外光を照射する、[1]に記載のフッ素ガス濃度の測定方法。
[3]前記手段が前記光源からハロゲンフッ化物含有ガスに照射される紫外光を、250nm未満の波長の紫外光を50%以上遮断し、280~290nmの波長の紫外光を90%以上透過させるフィルターを介して照射することである、[1]または[2]に記載のフッ素ガス濃度の測定方法。
[4]前記ハロゲンフッ化物が、三フッ化塩素、五フッ化臭素、七フッ化ヨウ素、三フッ化臭素、および五フッ化ヨウ素からなる群より選択されるいずれか1種のガスである、[1]~[3]のいずれかに記載のフッ素ガス濃度の測定方法。
[5]前記ハロゲンフッ化物が七フッ化ヨウ素である、[1]~[4]のいずれかに記載のフッ素ガス濃度の測定方法。
[6]前記ハロゲンフッ化物が五フッ化臭素であり、前記250nm未満の波長領域における紫外光強度の最大値(WX)が225nm未満の波長領域における紫外光強度の最大値である、[1]~[4]のいずれかに記載のフッ素ガス濃度の測定方法。
[7]前記ハロゲンフッ化物が三フッ化塩素であり、前記250nm未満の波長領域における紫外光強度の最大値(WX)が215nm未満の波長領域における紫外光強度の最大値である、[1]~[4]のいずれかに記載のフッ素ガス濃度の測定方法。
[8]前記ハロゲンフッ化物含有ガスに前記紫外光を照射して測定した吸収スペクトルから、リファレンスガスに前記紫外光を照射して測定した吸収スペクトルを差し引き、得られた吸収スペクトルの285nmの波長の吸光度からフッ素ガス濃度を得る、[1]~[7]のいずれかに記載のフッ素ガス濃度の測定方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ハロゲンフッ化物含有ガスに含まれるフッ素ガス濃度について、精度の高い測定をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明のフッ素ガス濃度の測定に使用する分析装置の一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、必要に応じて
図1を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明で使用する分析装置は、
図1に示す分析装置に限定されない。
本発明は、ハロゲンフッ化物含有ガスに対し、285nmの波長の紫外光強度(W
F)に対する250nm未満の波長領域における紫外光強度の最大値(W
X)の比(W
X/W
F)が1/10以下となる紫外光を照射し、285nmの波長の吸光度を測定しハロゲンフッ化物含有ガスに含まれるフッ素ガス濃度を得る、フッ素ガス濃度の測定方法に関する。
【0012】
<フッ素ガス濃度の測定に使用する被測定ガスおよび機器等>
(ハロゲンフッ化物含有ガス)
本発明の一実施態様で使用するハロゲンフッ化物含有ガスに含まれるハロゲンフッ化物は、構成元素に塩素、臭素およびヨウ素等のハロゲンを含むフッ素化合物である。ハロゲンフッ化物としては、例えば、フッ化塩素、三フッ化塩素、フッ化臭素、三フッ化臭素、五フッ化臭素、フッ化ヨウ素、三フッ化ヨウ素、五フッ化ヨウ素、および七フッ化ヨウ素が挙げられる。このうち、エッチング性能やクリーニング性能の点から三フッ化塩素、三フッ化臭素、五フッ化臭素、五フッ化ヨウ素、七フッ化ヨウ素が好ましく、三フッ化塩素、七フッ化ヨウ素および五フッ化臭素がより好ましく本発明に適用できる。ハロゲンフッ化物含有ガスには、ハロゲンフッ化物が一種単独で含まれてもよいし、複数種が含まれてもよい。
【0013】
ハロゲンフッ化物含有ガスには、測定対象であるフッ素ガス、およびフッ素ガス以外の不純物ガスが含まれていてもよい。不純物ガスとしては、例えば、ヘリウム、アルゴン、酸素ガス(O2)、窒素ガス(N2)、二酸化炭素および四フッ化炭素が挙げられる。ハロゲンフッ化物含有ガスには一種単独または複数種の不純物ガスが含まれていてもよく、その含有量は特に制限されない。
【0014】
また、ハロゲンフッ化物含有ガスには、希釈ガスが含まれていてもよい。希釈ガスは、上記ハロゲンフッ化物、フッ素含有ガスおよび不純物ガスに対して不活性なガスである。希釈ガスとしては、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素ガス(N2)、二酸化炭素、四フッ化炭素が挙げられる。ハロゲンフッ化物含有ガスには一種単独または複数種の希釈ガスが含まれていてもよく、その含有量は特に制限されない。
【0015】
ハロゲンフッ化物含有ガスは、ハロゲンフッ化物含有ガス供給源10からバルブ14を介して後述するガスセル22に導入される。ハロゲンフッ化物含有ガス供給源10は、ハロゲンフッ化物含有ガスをガスセル22に供給することできれば、供給方法、形態および大きさ等は特に制限されない。例えば、半導体製造プロセスにおけるエッチング装置に接続されているハロゲンフッ化物含有ガスの供給管から分岐している分岐管から、バルブ14を介してガスセル22へハロゲンフッ化物含有ガスを供給してもよいし、エッチング装置に供給するガスと同じハロゲンフッ化物含有ガスが貯留されたガスボンベ等の容器からガスセル22に供給してもよい。
【0016】
(リファレンスガス)
上記ハロゲンフッ化物含有ガスに対し、後述する方法で紫外光を照射して吸収スペクトルを測定するに際し、リファレンスガスをブランクとして使用し、後述するガスセル22におけるリファレンスガスの吸収スペクトルを測定することが好ましい。リファレンスガスは、285nm付近の波長を吸収する成分が含まれていなければ特に制限されない。リファレンスガスとしては、例えば、窒素ガス(N2)およびヘリウムガスが挙げられる。
【0017】
リファレンスガスは、リファレンスガス供給源12からバルブ16を介してガスセル22に導入される。リファレンスガス供給源12は、リファレンスガスをガスセル22に供給することができれば、供給方法、形態および大きさ等は特に制限されない。例えば、リファレンスガスが貯留されたガスボンベ等の容器からガスセル22にリファレンスガスを供給してもよい。
【0018】
(光源18)
本発明の一実施態様で使用する光源18は、上記ハロゲンフッ化物含有ガスおよびリファレンスガスに紫外光を照射するために使用する。光源18は285nmの波長を含む紫外光を発するものであれば特に制限されず、例えば、重水素ランプ、キセノンランプ、水銀ランプ(低圧,高圧)、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、ブラックライト(ブルーランプ)等を使用することができ、250nm未満の波長の光成分が少ない光線を用いてもよい。
【0019】
(フィルター20)
本発明の一実施態様において、250nm未満の波長の紫外光の照射を抑制する手段を用いる際、上記光源18から照射される紫外光をフィルター20を介してハロゲンフッ化物に照射することが、効率よくハロゲンフッ化物の光分解を抑制できる点で好ましい。フィルター20としては、250nm未満の波長の紫外光を充分遮断できるフィルターであれば特に制限はされないが、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上遮断できるものを使用する。フィルター20を介して紫外光を照射することにより、250nm未満の波長領域に最大吸収波長を有するハロゲンフッ化物の光分解によって生じるフッ素ガス等による測定精度の低下を抑制することができる。
【0020】
フィルター20は、フッ素の最大吸収波長である285nmの波長を含む紫外光を充分透過させるフィルターを使用することが精度の高い測定ができる点で好ましく、280~290nmの波長の紫外光を好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上透過させることが好ましい。フィルター20は、上記性能を有しているものであれば特に制限されないが、例えば、朝日分光株式会社製の短波長カットフィルターなどの市販品のものを使用することができる。
【0021】
(ガスセル22)
ガスセル22は、上記ハロゲンフッ化物含有ガスおよびリファレンスガスを封入または流通させて紫外光を照射するために使用する。ガスセル22にはガスセル本体に、ガス導入口、排気口26に接続されたガス排出口、入射窓、出射窓などが備えられている。入射窓および出射窓以外のガスセル22本体の材質は、ハロゲンフッ化物含有ガスに含まれる成分およびフッ素ガスに対する耐食性を示すものであれば特に制限されず、例えば、ステンレス鋼、ニッケル、インコネル、モネルが使用できる。
【0022】
また、入射窓および出射窓の材質は、285nm付近の波長の光を吸収せず、ハロゲンフッ化物含有ガスおよびフッ素含有ガスに対して耐食性を示すものであれば特に制限されないが、例えば、フッ化カルシウム、フッ化バリウムが使用できる。
【0023】
(分光器24)
分光器24は、上記ガスセル22の出射窓から出射した紫外光の波長の吸収スペクトルを測定する。分光器24は、紫外光の吸収スペクトルを測定することができれば特に制限されず、例えば、本発明の分野で通常使用されている紫外分光光度計を用いることができる。
【0024】
(その他)
光源18からの光を効率よくガスセル22に取り込むため、光源18の出射端とガスセル22の入射窓との間に、レンズなどを設けてもよい。
【0025】
<フッ素ガス濃度の測定方法>
以下、上記被測定ガスおよび機器等を用いた、本発明のフッ素ガス濃度の測定方法について説明する。
(1)リファレンスガスの測定
本発明のハロゲンフッ化物含有ガスに含まれるフッ素ガス濃度を測定するため、予めリファレンスガスの吸収スペクトルを測定することが好ましい。リファレンスガスの吸収スペクトルを測定するため、バルブ14を閉じて、ハロゲンフッ化物含有ガス供給源10からハロゲンフッ化物含有ガスが供給されないようにし、バルブ16を開きリファレンスガス供給源12からリファレンスガスをガスセル22に導入する。リファレンスガス導入の際、排気口26を開いたままにしてリファレンスガスがガスセル22を流通するようにして行ってもよいし、排気口26を閉じてリファレンスガスをガスセル22に封入するようにして行ってもよい。
【0026】
ガスセル22内のリファレンスガスに対し、光源18から出射される紫外光を、好適にはフィルター20を介してガスセル22の入射窓から照射する。このとき、光源18の紫外光を、光ファイバを介してガスセル22の入射窓に照射してもよい。また、短波長の紫外光によって空気中の酸素からオゾンが生じ測定に影響が出る可能性があるため、入射窓付近に窒素などのパージガスを流すこと、または入射窓および出射窓から酸素および空気等が入り込まないよう気密構造にすることが好ましい。
【0027】
また、光源18からリファレンスガスおよびハロゲンフッ化物含有ガスに照射される紫外光の、285nmの波長の紫外光強度(WF)に対する250nm未満の波長領域における紫外光強度の最大値(WX)の比(WX/WF)(以下「紫外光強度比」とも称する。)が1/10以下であることが必要である。これによって、250nm未満の波長の紫外光照射によってハロゲンフッ化物が光分解され、その結果生じるフッ素ガスによる測定精度の低下を抑制できる。前記紫外光強度比(WX/WF)は1/15以下であることがより好ましい。なお、250nm未満の波長領域における紫外光強度の最大値とは、換言すると、250nm未満の波長の紫外光の中で、最も強度が高い波長の紫外光の強度である。上記WFおよびWXは、上記の分光器24によって測定することができる。上記紫外光強度比は、光源18およびフィルター20によって調整することができる。
【0028】
上記紫外光強度比は、上記範囲内であればハロゲンフッ化物の吸収波長に合わせて適宜設定してもよい。例えば、五フッ化臭素の最大吸収波長は217nmであるが、この最大吸収波長プラス7~9nmの波長より短い波長領域の紫外光強度、例えば、225nm未満の波長領域の紫外光強度の最大値をWXとし、紫外光強度比の算出に供してもよい。
【0029】
同様に、三フッ化塩素の最大吸収波長は207nmであるので、例えば、215nm未満の波長領域の紫外光強度の最大値をWXとし、紫外光強度比の算出に供してもよい。また、七フッ化ヨウ素の最大吸収波長は241nmであるので、例えば、250nm未満の波長領域の紫外光強度の最大値をWXとし、紫外光強度比の算出に供してもよい。
【0030】
ガスセル22の出射窓から出射した紫外光を分光器で測定する。出射窓から出射した紫外光は光ファイバを介して分光器に導入してもよい。分光器を使用するときは、例えば、製品付属のマニュアルに従って操作して、リファレンスガスの吸収スペクトルを測定する。リファレンスガスとして、例えば、高純度の窒素ガスを使用し、上記紫外光強度比の範囲となるようにフィルターを用いてリファレンスガスに紫外光を照射すると、250nm未満の波長領域には、窒素やハロゲンフッ化物の吸収が無くなるため、吸収スペクトルをブランクとすることができる。
【0031】
(2)ハロゲンフッ化物含有ガスの285nmの波長の吸光度の測定
バルブ16を閉じ、バルブ14を開けハロゲンフッ化物含有ガス供給源10から、ガスセル22にハロゲンフッ化物含有ガスを導入し、上記リファレンスガスと同様にしてハロゲンフッ化物含有ガスの吸収スペクトルを測定する。この際、ヘリウム、アルゴン、窒素、二酸化炭素、四フッ化炭素などの希釈ガスで希釈したハロゲンフッ化物含有ガスをガスセル22に導入してもよい。該吸収スペクトルから、フッ素の最大吸収波長である285nmの波長の吸光度を測定し、吸光光度法によりフッ素ガス濃度を得る。
【0032】
また、ハロゲンフッ化物含有ガスの吸収スペクトルから上記リファレンスガスの吸収スペクトルを差し引き、得られた吸収スペクトルから285nmの波長の吸光度を測定し、吸光光度法によりフッ素ガス濃度を得ることが、精度の高い測定ができる点で好ましい。
【0033】
(3)測定条件
上記測定を行う際のガスセル22内の温度は、ハロゲンフッ化物含有ガスおよびリファレンスガスが液化および固化する温度以上であれば特に制限されないが、20~150℃が好ましく、50~120℃がさらに好ましい。この範囲より温度が高くなると、ハロゲンフッ化物とガスセル並びに入射窓および出射窓との反応が進行する場合や、ハロゲンフッ化物の分解が進行する場合があるので好ましくない。
【0034】
また、上記ハロゲンフッ化物含有ガスおよびリファレンスガスをガスセル22に封入して測定を行う際のガスセル22内の圧力は、特に制限されないが、0.01~0.2MPaAが好ましく、0.05~0.15MPaAがより好ましい。この範囲より圧力が低くなると上記ガス濃度が低くなり感度が低下する場合があり、またこの範囲より圧力が高くなると装置が損傷する場合がある。
【実施例0035】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0036】
[実施例1]
ハロゲンフッ化物含有ガスとして五フッ化臭素ガスを使用し、
図1に示した分析装置を使用して本発明の測定方法に従って五フッ化臭素ガスに含まれるフッ素ガス濃度を測定した。ガスセル22は本体がSUS316製で、入射窓および出射窓はフッ化カルシウムで構成されたガスセルを使用した。
【0037】
まず、リファレンスガスとして窒素ガスを使用し、リファレンスガス供給源12である高純度窒素ガスボンベからガスセル22に窒素ガスを導入し、光源18として重水素ランプ(製品名:L10290、浜松ホトニクス株式会社製)からフィルター20として短波長カットフィルター(製品名:LU0250、朝日分光株式会社製)を介して、225nm未満の波長領域の紫外光強度の最大値をWXとし、WX/WF=1/20の紫外光をガスセル22内の窒素ガスに照射した。ガスセル22から出射した紫外光の吸収スペクトルを分光器24としてマルチチャンネル分光器(製品名:FLAME-S、Ocean Optics社製)で測定した。ガスセル内の温度は50℃、圧力は0.1MPaAであった。
【0038】
次いで、ガスセル22中の窒素ガスを排気口26から排気した後、ハロゲンフッ化物含有ガス供給源10からガスセル22に五フッ化臭素ガスを導入し、リファレンスガス測定時と同一温度および同一圧力条件下で、光源から上記フィルターを介して、WX/WF=1/20の紫外光をガスセル22内の五フッ化臭素ガスに照射した。ここで、ガスセル22から出射した紫外光の吸収スペクトルを上記分光器で測定した。得られた五フッ化臭素ガスの吸収スペクトルから窒素ガスの吸収スペクトルを差し引いて、五フッ化臭素ガスに含まれるフッ素ガス濃度を求めた。その結果、フッ素濃度は2体積ppmであった。
【0039】
[実施例2]
ハロゲンフッ化物含有ガスとして五フッ化臭素ガスの代わりに七フッ化ヨウ素ガスを使用し、250nm未満の波長領域の紫外光強度の最大値をWXとし、WX/WF=1/18の紫外光を照射したこと以外は、実施例1と同様にして七フッ化ヨウ素ガス中のフッ素ガス濃度を求めた。その結果、フッ素濃度は、3体積ppmであった。
【0040】
[実施例3]
ハロゲンフッ化物含有ガスとして五フッ化臭素ガスの代わりに三フッ化塩素ガスを使用し、215nm未満の波長領域の紫外光強度の最大値をWXとしたこと以外は、実施例1と同様にして三フッ化塩素ガス中のフッ素ガス濃度を求めた。その結果、フッ素濃度は、5体積ppmであった。
【0041】
[比較例1]
フィルターを用いず、WX/WF=1/5の紫外光を照射したこと以外は、実施例1と同様にして、五フッ化臭素ガスに含まれるフッ素ガス濃度を求めた。その結果、フッ素濃度は20体積ppmであり、五フッ化臭素の分解反応が進んだことが確認された。
【0042】
[比較例2]
フィルターを用いず、WX/WF=1/5の紫外光を照射したこと以外は、実施例2と同様にして、七フッ化ヨウ素ガスに含まれるフッ素ガス濃度を求めた。その結果、フッ素濃度は24体積ppmであり、七フッ化ヨウ素の分解反応が進んだことが確認された。
【0043】
[比較例3]
フィルターを用いず、WX/WF=1/5の紫外光を照射したこと以外は、実施例3と同様にして、三フッ化塩素ガスに含まれるフッ素ガス濃度を求めた。その結果、フッ素濃度は18体積ppmであり、三フッ化塩素の分解反応が進んだことが確認された。
【0044】
上記実施例1~3および比較例1~3の条件と結果を表1に示す。
【0045】