IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人 国立印刷局の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017854
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】光輝性動画模様
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/324 20140101AFI20240201BHJP
   B41M 3/14 20060101ALI20240201BHJP
   B42D 25/342 20140101ALI20240201BHJP
   B42D 25/328 20140101ALI20240201BHJP
   G07D 7/12 20160101ALI20240201BHJP
【FI】
B42D25/324
B41M3/14
B42D25/342
B42D25/328
G07D7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120770
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】森永 匡
【テーマコード(参考)】
2C005
2H113
3E041
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005HA04
2C005HB01
2C005HB02
2C005HB09
2C005HB10
2C005HB13
2C005JB09
2H113AA06
2H113BA01
2H113BA27
2H113BB07
2H113BB10
2H113BB22
2H113BC09
2H113CA37
2H113CA39
2H113CA44
3E041AA01
3E041AA02
3E041BA11
3E041BB01
(57)【要約】
【課題】
本発明は、モアレ拡大方式やインテグラルフォトグラフィ方式の画線構成を応用して、基画像を圧縮及び分割圧縮することで動画効果を生じさせる凹凸構造物において、それぞれの凹凸模様要素の幅を、隣り合う凹凸模様要素間のピッチ以上に設定することにより動画効果や画像解像度を得る光輝性動画模様を提供する。
【解決手段】
本発明は、基材上の少なくとも一部に、凹凸模様要素群を有する光輝性動画模様であって、凹凸模様要素群は、基画像を分割圧縮又は圧縮して形成された凹凸模様要素が、配置方向と配置ピッチに規則性を備え、かつ、凹凸模様要素の幅が、配置方向の配置ピッチよりも大きく、隣り合う凹凸模様要素の一部が重なり合って複数配置された光輝性動画模様である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の少なくとも一部に、凹凸模様要素群を有する光輝性動画模様であって、
前記凹凸模様要素群は、基画像を分割圧縮して形成された凹凸模様要素が、配置方向及び/又は配置ピッチに規則性を備え、かつ、前記凹凸模様要素の幅が、前記配置方向の前記配置ピッチよりも大きく、隣り合う前記凹凸模様要素の一部が重なり合って複数配置され、
前記凹凸模様要素は、光輝性を有する凹凸構造が前記凹凸模様要素の前記配置方向と前記配置ピッチと同一の規則性を有して複数配置されて成り、
前記凹凸構造は、曲線又は直線の角度が連続的に変化、若しくは密度が連続的に変化する構造を有し、前記凹凸構造の形状はそれぞれが異なり、かつ、隣り合う前記凹凸構造同士が最も近似する形状を有し、
前記凹凸模様要素群は、入射した光に対し、光を反射することで、前記基画像が動画模様として出現し、角度を変化させることで、前記動画模様の位置が変化して視認されることを特徴とする光輝性動画模様。
【請求項2】
基材上の少なくとも一部に、凹凸模様要素群を有する光輝性動画模様であって、
前記凹凸模様要素群は、基画像を圧縮して形成された凹凸模様要素が、配置方向及び/又は配置ピッチに規則性を備え、かつ、前記凹凸模様要素の幅が、前記配置方向の前記配置ピッチよりも大きく、隣り合う前記凹凸模様要素の一部が重なり合って複数配置され、
前記凹凸模様要素は、光輝性を有する凹凸構造が前記凹凸模様要素の前記配置方向又は前記配置ピッチとわずかに異なって複数配置されて成り、
前記凹凸構造は、曲線又は直線の角度が連続的に変化、若しくは密度が連続的に変化する構造を有し、前記凹凸構造の形状はそれぞれが異なり、かつ、隣り合う前記凹凸構造同士が最も近似する形状を有し、
前記凹凸模様要素群は、入射した光に対し、光を反射することで、前記基画像が動画模様として出現し、角度を変化させることで、前記動画模様の位置が変化して視認されることを特徴とする光輝性動画模様
【請求項3】
前記凹凸模様要素が回折格子又は盛り上がりを有する印刷画線から成ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の光輝性動画模様。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の光輝性動画模様を作製するための光輝性動画模様用のデータの作成方法であって、
基画像を圧縮又は分割圧縮した圧縮要素を配置方向と配置ピッチに規則性を備え、かつ、前記圧縮要素の幅が、前記配置ピッチよりも大きく、隣り合う前記圧縮要素の一部を重なり合わせた前記圧縮要素を複数配置して圧縮要素群を作成し、
前記配置方向と前記配置ピッチの規則性と同一又は異なる規則性を備えた光輝性要素を、前記光輝性要素の幅が前記配置ピッチよりも大きく、隣り合う前記光輝性要素の一部を重なり合わせて前記光輝性要素を複数配置し、
複数配置した前記光輝性要素と前記圧縮要素群を重ね合わせ、
前記複数の光輝性要素と前記圧縮要素群の重なり合った部分を抽出して凹凸模様要素群を作成することを特徴とする光輝性動画模様用データの作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止効果を必要とするセキュリティ印刷物である銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード、通行券等の貴重印刷物の分野において用いられる、反射光や回折光が生じる角度において画像が動いて見える凹凸構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
画像が動いて見える動画効果は、アイキャッチ性が高く、偽造することが困難であることから、近年、セキュリティ印刷物の真偽判別要素として多く用いられる傾向にある。この効果を備えた技術の一つに印刷やエンボス加工やインプリント等によって、光輝性を有する凹凸構造を付与することで動画効果を実現する技術群がある。また、これら技術の一つとして凹凸構造をより微細な回折格子によって作り出したホログラムがあり、銀行券やパスポート等の最高のセキュリティが要求されるセキュリティ印刷物にも貼付されて広く用いられている。
【0003】
凹凸構造を利用して動画効果を実現した技術の中に、圧縮された画像や、分割圧縮された画像を用い、これらを部分的にサンプリングすることで動画効果を再現する技術がある。これらは、モアレが拡大されて見えるモアレ拡大現象と呼ばれる現象や、インテグラルフォトグラフィと呼ばれる特殊な立体画像の録画・再生方法を利用するものである。
【0004】
これらの圧縮、あるいは、分割圧縮された画像を用いる技術の中に、金属切削やエンボス加工等によって動画効果を生じさせる技術が存在する(例えば、特許文献1参照)。また、回折格子を用いたホログラムの一つとして、特許文献1の技術のような圧縮、あるいは、分割圧縮された画像を、回折格子から生じる回折光によってサンプリングする技術(例えば、特許文献2参照)が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-171774号公報
【特許文献2】特開2021-81705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2に記載の技術は、物体の動きや位置等が微妙に異なる不連続な複数の画像を次々とチェンジさせて物体が動いているように見せる、いわゆるパラパラ漫画方式で動画効果を生じさせる一般的な画線構成と異なり、圧縮、あるいは、分割圧縮した画像の一部をサンプリングする特殊な画線構成によって動画効果を実現しており、再生される画像の動きは連続的であって、特に動画効果のなめらかな表現に優れる。ただし、この技術群では、隣り合う潜像要素(本発明の凹凸模様要素に相当する)同士が重なり合わない構造であるために、再生できる画像の動画効果の大きさや画像の解像度に限界があるという問題があった。
【0007】
具体的な問題について、図36から図40を用いて説明する。例えば、特許文献1及び特許文献2に記載の技術を用いて、図36に示すような桜の花びらが出現して左右に動く構成の動画模様(3)を作製する場合について説明する。図36に示した桜の花びらに動画効果を付与する場合、図37に示すように光と直交する角度を成す一部が光を反射する凹凸構造(6)によって複数の凹凸模様要素(5)から成る凹凸模様要素群(4)を形成する必要がある。この凹凸模様要素群(4)を形成するそれぞれの凹凸模様要素(5)は、図38に示すように出現させたいと意図する基画像(10)に特定の幅(W)のフレーム(11)を当てはめて、フレーム(11)内に入った基画像(10)を分割して切り出して、特定の比率で圧縮することで成る。この凹凸模様要素群(4)は、被写体の前にレンチキュラーやマイクロアレイレンズを配置して画像を撮影・再生するインテグラルフォトグラフィと呼ばれる立体画像の方式で得られる画像由来の構造を有するために、図39に示すようにそれぞれの凹凸模様要素(5)の幅(W1)は、隣り合う凹凸模様要素(5)間の第一のピッチ(P1)以下としなければならないという制約がある。
【0008】
この技術群においては、その構成の原理上、フレーム(11)の幅(W)がそのまま動きの大きさ(幅)となる。そのため、出現する桜の花びらの動画効果を高める(動きの幅を大きくする)ためには、フレーム(11)の幅(W)を可能な限り大きく設定する必要がある。しかし、多くの場合、その凹凸模様要素(5)を付与する方法、例えば印刷、レーザー描画、金属加工、インプリントや電子線描画等の方法それぞれにおいて、その描画方法由来の画像圧縮の描画限界値がある。フレーム(11)の幅(W)を大きくしすぎて描画方法由来の限界値を超えて画像を圧縮すれば、凹凸模様要素(5)が正確に再現できず再生される画像は不鮮明となる。このため、それぞれの凹凸模様要素(5)を付与する描画方式にあわせて、フレーム(11)の幅(W)を小さくして凹凸模様要素(5)内に含まれる桜の花びらの画像の幅を制限し、第一の方向(図中S1方向)の画像圧縮率を描画限界に達しない程度に制限する必要があった。この制限に従う結果、図40に示すように動画模様(3)の動画効果(動きの幅)は、自ずから小さくなるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題の解決を目的とするものであり、モアレ拡大方式やインテグラルフォトグラフィ方式の画線構成を応用して、基画像を圧縮及び分割圧縮することで動画効果を生じさせる凹凸構造物において、それぞれの凹凸模様要素の幅を、隣り合う凹凸模様要素間のピッチ以上に設定することで、従来の構成では不可能であった高い動画効果や画像解像度を得ることを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基材上の少なくとも一部に、凹凸模様要素群を有する光輝性動画模様であって、 凹凸模様要素群は、基画像を分割圧縮して形成された凹凸模様要素が、配置方向と配置ピッチに規則性を備え、かつ、凹凸模様要素の幅が、配置方向の配置ピッチよりも大きく、隣り合う凹凸模様要素の一部が重なり合って複数配置され、凹凸模様要素は、光輝性を有する凹凸構造が凹凸模様要素の配置方向と配置ピッチと同一の規則性を有して複数配置されて成り、凹凸構造は、曲線又は直線の角度が連続的に変化、若しくは密度が連続的に変化する構造を有し、凹凸構造の形状はそれぞれが異なり、かつ、隣り合う凹凸構造同士が最も近似する形状を有し、凹凸模様要素群は、入射した光に対し、光を反射することで、基画像が動画模様として出現し、角度を変化させることで、動画模様の位置が変化して視認されることを特徴とする光輝性動画模様である。
【0011】
本発明は、凹凸模様要素が回折格子又は盛り上がりを有する印刷画線から成ることを特徴とする光輝性動画模様である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光輝性動画模様は、隣り合う凹凸模様要素同士が重なり合うことによって、それぞれの凹凸模様要素の幅を、隣り合う凹凸模様要素間のピッチ以上に設定することを可能とした。凹凸模様要素における画線幅の制約が無くなることで、一つの凹凸模様要素の中に設定できる基画像の第一方向の大きさ(幅)が飛躍的に高まった。これにより、出現する動画模様の動きの大きさ(幅)が、従来技術より高まった。
【0013】
本発明の光輝性動画模様は、隣り合う凹凸模様要素が重なった領域の存在を許容することによって、凹凸模様要素をより高密度で重ね合わせて配置することが可能となった。これにより動画模様をより高解像度で表現することが可能となり、従来では不可能であったより複雑な形状の動画模様を出現させることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明における光輝性動画模様の一例を示す。
図2】本発明における光輝性動画模様の基本的な構成の概要を示す。
図3】本発明における光輝性動画模様の基本的な構成の概要を示す。
図4】本発明における圧縮要素群の構成の一例を示す。
図5】本発明における圧縮要素群の構成の一例を示す。
図6】本発明における光輝性要素の一例を示す。
図7】本発明における圧縮要素と光輝性要素から凹凸模様要素を構成する方法を示す。
図8】本発明における光輝性要素の一例を示す。
図9】本発明における光輝性要素の一例を示す。
図10】本発明における光輝性要素に求められる光学特性を示す。
図11】本発明における本発明における光輝性動画模様の効果を示す。
図12】本発明における光輝性動画模様の一例を示す。
図13】本発明における光輝性動画模様の基本的な構成の概要を示す。
図14】本発明における光輝性動画模様の基本的な構成の概要を示す。
図15】本発明における圧縮要素群の構成の一例を示す。
図16】本発明における圧縮要素と光輝性要素から凹凸模様要素を構成する方法を示す。
図17】本発明における本発明における光輝性動画模様の効果を示す。
図18】本発明における光輝性動画模様の一例を示す。
図19】本発明における光輝性動画模様の基本的な構成の概要を示す。
図20】本発明における光輝性動画模様の基本的な構成の概要を示す。
図21】本発明における圧縮要素群の構成の一例を示す。
図22】本発明における光輝性要素の一例を示す。
図23】本発明における圧縮要素と光輝性要素から凹凸模様要素を構成する方法を示す。
図24】本発明における光輝性要素の一例を示す。
図25】本発明における光輝性要素の一例を示す。
図26】本発明における本発明における光輝性動画模様の効果を示す。
図27】本発明の圧縮要素群と従来の技術の圧縮要素群の比較例を示す。
図28】従来の技術における光輝性動画模様の効果を示す。
図29】本発明における光輝性動画模様の一例を示す。
図30】本発明における光輝性動画模様の基本的な構成の概要を示す。
図31】本発明における光輝性動画模様の基本的な構成の概要を示す。
図32】本発明における圧縮要素群の構成の一例を示す。
図33】本発明における圧縮要素と光輝性要素から凹凸模様要素を構成する方法を示す。
図34】本発明における本発明における光輝性動画模様の効果を示す。
図35】本発明における光輝性動画模様の層構造の一例を示す。
図36】従来技術における光輝性動画模様の一例を示す。
図37】従来技術における光輝性動画模様の基本的な構成の概要を示す。
図38】従来技術における光輝性動画模様の基本的な構成方法を示す。
図39】従来技術における光輝性動画模様の基本的な構成の概要を示す。
図40】従来技術における光輝性動画模様の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。なお、第二の実施の形態から第四の実施の形態までの発明の構成や特性等の説明において、それぞれが第一の実施の形態と同じであって説明が重複する部分については割愛する。そのため、第二の実施の形態から第四の実施の形態において、説明していない部分については、第一の実施の形態での同部分と基本的に同じであるものとする。
【0016】
本発明の光輝性動画模様(1)とは、凹凸模様要素群(4)を指す。本明細書において、これについて具体的に説明する。この凹凸模様要素群(4)は、ホログラム化して用紙やプラスティック、金属等に貼付したり、下地印刷がされた印刷物上に貼付したりしてもよい。また、金属やプラスティックの基材(2)に凹凸模様要素群(4)を直接描画してもよい。
【0017】
さらに金属板に凹凸模様要素群(4)を描画してエンボス加工用の版面とし、光沢を有する基材にエンボス加工を施すことによって凹凸模様要素群(4)を転写してもよく、その凹凸模様要素群(4)の付与方法は問わない。なお、ホログラムに置き換えると、凹凸模様要素群(4)はホログラムの構造の最低限の構造であるホログラム形成層(14)にあたる。
【0018】
なお、本明細書でいう画線(ライン)状とは、画像の構成要素を特定の方向に一定の距離連続して配置した状態を指し、具体的には、点線や破線の分断線、直線、曲線、破線等を含む。一方の画素(ドット)状とは、画像の構成要素を一塊にした一定の方向性のない状態を指し、具体的には円や三角形、四角形を含む多角形、星形等の各種図形、文字や記号、数字、マーク等を含める。
【0019】
(第一の実施の形態)
図1に、本発明における光輝性動画模様(1)を示す。第一の実施の形態は、インテグラルフォトグラフィ方式を利用した画線状の凹凸模様要素(5)で形成された凹凸模様要素群(4)が、基材(2)に形成された光輝性動画模様(1)である。光輝性動画模様(1)は、凹凸模様要素群(4)を少なくとも含む必要があり、それ以外にも異なる意匠を表す模様やデザインによる修飾要素を含んでいてもよい。
【0020】
なお、インテグラルフォトグラフィ方式とは、基画像を分割し、分割された基画像をそれぞれのフレーム内画像として抜き出し、このフレーム内画像を画線幅に圧縮して形成した分割圧縮を圧縮要素として使用する方式である。
【0021】
光輝性動画模様(1)は、光が入射することで動画模様(3)が出現し、観察位置又は光源(12)の位置が変化することによって、光輝性動画模様(1)の中で再生された桜の花びらによる動画模様(3)がスムーズに移動する動画効果が生じる。
【0022】
図2に凹凸模様要素群(4)を示す。凹凸模様要素群(4)が表す模様は、光輝性動画模様(1)に光が入射せず、動画模様(3)が出現しなかった場合に光輝性動画模様(1)の付与形態によっては、例えば、印刷によって光輝性動画模様(1)を形成し、印刷に用いたインキが物体色を有する有色インキであった場合には、図2に示した光輝性動画模様(1)の図柄である動画模様(3)が視認される。この凹凸模様要素群(4)は、光を反射する微細な凹凸構造(6)によって構成された特殊な模様であり、光が入射することで部分的に光を反射して動画模様(3)を再生し、動画効果を生じさせる。なお、それぞれの凹凸模様要素群(4)に含まれる凹凸構造(6)の全体の形状はそれぞれの凹凸模様要素群(4)において異なり、かつ、隣り合う凹凸模様要素群(4)の中の凹凸構造(6)同士は最も近似する形状を有している。
【0023】
図3に凹凸模様要素群(4)の構成要素について概要を示す。凹凸模様要素群(4)は、動画模様(3)として出現する基画像(10)が圧縮された圧縮要素(8)を複数配列されて成る圧縮要素群(7)と、圧縮要素(8)と対を成す光輝性要素(9)を組み合わせることで構成される。なお、本明細書における組み合わせるとは、圧縮要素(8)の内側(8j)、輪郭(8k)、外側(8l)の少なくともいずれかに光輝性要素(9)の凹凸を有した模様とその光学特性を、そのまま凹凸構造(6)として写し取った状態を指す。
【0024】
出現させる動画模様(3)の内部を光らせたい場合には、圧縮要素(8)の内側(8j)に光輝性要素(9)の凹凸構造(6)を写し取り、動画模様(3)の輪郭を光らせたい場合には、圧縮要素(8)の輪郭(8k)に光輝性要素(9)の凹凸構造(6)を写し取り、動画模様(3)の周囲を光らせたい(動画模様(3)をネガで見せる)場合には、圧縮要素(8)の外側(8l)に光輝性要素(9)の凹凸構造(6)を写し取り、動画模様(3)の輪郭の周囲を光らせたい(輪郭だけ光らせない)場合には、圧縮要素(8)の輪郭(8k)以外の内側(8j)と外側(8l)に光輝性要素(9)の凹凸構造(6)を写し取るものである。
【0025】
なお、第一の実施の形態では、出現させる動画模様(3)は輪郭を光らせる表現であり、この場合は圧縮要素(8)の輪郭(8k)に光輝性要素(9)の凹凸構造(6)を写し取るものである。この場合、光輝性動画模様(1)に光が入射した場合に、動画模様(3)は輪郭が光った状態で再生される。
【0026】
図4を用いて圧縮要素群(7)の構成及びその作製方法(データの作成方法も含む。)について説明する。圧縮要素群(7)は、圧縮要素(8)が規則性を有して複数配置されて成る。本明細書において「規則性を有して複数配置する」とは、同じ幅の複数の要素を同じピッチで同じ方向に連続して配置することを意味する。すなわち、圧縮要素群(7)は、圧縮要素(8)が特定の幅(W1)及び第一のピッチ(P1)で第一の方向(S1方向)に連続して配置されて成る。なお、配置方向は、第一の方向(S1方向)の一種類の方向に限定されず、後述する第三の実施の形態や第四の実施の形態で記載する画素状の凹凸模様要素(5)で構成する場合には、第一の方向(S1方向)及び第二の方向(S2方向)の二種類が存在する。
【0027】
なお、本明細書において、動画模様(3)として出現させたいと意図する画像の基となる画像を基画像(10)と呼ぶ。第一の実施の形態において基画像(10)として桜の花びらの図形を選択したが、これに限定されるものではなく、文字記号、数字、マーク、写真等の任意の画像を用いることができる。それぞれの圧縮要素(8)は、この基画像(10)に対して、幅(W0)、高さ(H)のフレーム(11)を当てはめ、そのフレーム(11)の内側に入った基画像(10)の一部を第一の方向(S1方向)に一定の割合で圧縮することで作製する。基本的に基画像(10)と動画模様(3)は同じ画像となるが、設計過程で上下左右の比率を変えたり、形状に歪みを生じさせることも可能である。
【0028】
第一の実施の形態における基画像(10)は、桜の花びらである。フレーム(11)を基画像(10)の右端部に対して左側に配置し、フレーム(11)内に基画像(10)がわずか(第一のピッチ(P1)の大きさより小さい幅)でも入った位置を起点とし、フレーム(11)内に含まれた基画像(10)を特定の割合で圧縮することで第一の圧縮要素(8-1(図示せず))を作製する。次に、基画像(10)の位置は固定したままフレーム(11)を起点の位置から第一のピッチ(P1)だけ第一の方向(S1方向)に移動し、同様にフレーム(11)内に含まれた基画像(10)を特定の割合で圧縮することで第二の圧縮要素(8-2)を作製する。これを繰り返し、最後の第nの圧縮要素(8-n)まで作製する。
【0029】
フレーム(11)内に基画像(10)が含まれない位置までフレーム(11)が移動した場合に、全ての圧縮要素(8)の作製が完了となる。作製したそれぞれの圧縮要素(8)は、第一の圧縮要素(8-1)の位置を起点として、第一の方向(S1方向)に第一のピッチ(P1)の幅の位置に第二の圧縮要素(8-2)を配置する。同じように、第二の圧縮要素(8-2)から第一の方向(S1方向)に第一のピッチ(P1)の幅の位置に第三の圧縮要素(8-3)を配置する。同様に圧縮要素(8-4・・・8-20・・・8-50)を行い、これを繰り返して第nの圧縮要素(8-n)までを順に配置することで圧縮要素群(7)が完成する。これが本発明の圧縮要素群(7)の基本的な構成と作製方法である。
【0030】
ここで、一例として、圧縮要素の幅(W1)をフレーム(11)の幅(W0)で除して100を乗した値を圧縮率と定義する。従来の技術であればこの圧縮率の値が小さいほど、出現する動画模様(3)は大きく動くため動画効果が高くなるが、本発明においては必ずしも圧縮率を小さくする必要はなく、フレーム(11)の幅(W0)を大きく設計することが動画効果を高める上ではより重要である。これについては、後述する。
【0031】
なお、動画効果が生じる第一の方向(S1方向)とは異なる第二の方向(S2方向)のフレームの高さ(H)の値は、この第二の方向(S2方向)に対して圧縮が行われることはないため、基画像(10)の高さ以上であれば問題なく、値の大小にかかわらず動画効果には寄与しない。第一の実施の形態においては、フレーム(11)内に含まれた基画像(10)を第一の方向(S1方向)にのみ圧縮するため、それぞれの圧縮要素(8)は画線のような棒状になることから、画線(ライン)状の形態と呼ぶものである。
【0032】
ここまで記載した圧縮要素群(7)の構成と作製方法は、従来の技術と基本的には同じである。本発明と従来の技術における最大の違いは、本発明の圧縮要素群(7)は、隣り合う圧縮要素(8)同士が重なり合うことにある。見た目上、全ての圧縮要素(8)同士が重なり合う必要はないが、圧縮要素群(7)の中の少なくとも一部において、隣り合う圧縮要素(8)同士が重なり合っている必要がある。図5に重なり合いの状態を示す。図5は、隣り合う圧縮要素(8)の第一のピッチ(P1)と幅(W1)の関係が理解しやすいように、第一の方向(S1方向)に圧縮要素群(7)の一部を拡大して表示した図である。
【0033】
図5に示すように、本発明の圧縮要素群(7)は、圧縮要素(8)(図面では、各圧縮要素(8i、8i+1、8i+2、8i+3、8i+4))の第一の方向(S1方向)の幅(W1)よりも、第一の方向(S1方向)の第一のピッチ(P1)の方が小さく構成されて成る。なお、圧縮要素群(7)の端部においては、可視化された圧縮要素(8)の幅(W1)が第一のピッチ(P1)よりも小さく見える領域も存在するが、これは単に圧縮要素(8)の画像のうち、可視化された部分のみが見えるために、見かけ上小さく見えるだけであって、実際には圧縮要素(8)はフレーム(11)内に収まった空白部分も圧縮しているため、可視化されていない空白部分を含めると全ての隣り合う圧縮要素(8)同士は重なり合っている。
【0034】
従来の技術の圧縮要素群(7)では、隣り合う圧縮要素(8)同士が重なり合うことを禁じている。そのため、従来の技術の条件では、圧縮要素(8)の幅(W1)は必ず第一のピッチ(P1)より小さな値とする必要がある。このため、圧縮要素(8)の幅(W1)を広くできなければフレーム(11)の幅(W0)を大きく設定することはできず、圧縮率を小さくして動画効果を高めるには限界があった。一方で圧縮要素(8)の幅(W1)を広くすると、フレーム(11)の幅(W0)を大きく設定することは可能となるが、圧縮要素(8)の第一のピッチ(P1)も同様に広げる必要が生じ、結果として圧縮要素(8)の密度が低くなるために出現する動画模様(3)の視認性や解像度が大きく低下するという問題が生じる。
【0035】
このため、動画模様(3)の動画効果と視認性を両立させることは困難であった。本発明の圧縮要素群(7)では、隣り合う圧縮要素(8)同士を重ねることでフレーム(11)の幅(W0)を大きく設定することを可能として動画効果を高め、かつ、第一のピッチ(P1)も密にすることで動画模様(3)の動画効果と視認性を両立させることを可能とした。以上が、本発明の圧縮要素群(7)の説明である。
【0036】
次に、光輝性要素(9)について説明する。図6に光輝性要素(9)の一例を示す。光輝性要素(9)自体は、凹凸模様要素(5)の作製過程において必要となる要素であるが、最終的には光輝性要素(9)の凹凸構造(6)を凹凸模様要素(5)やその周囲に写し取る過程を経たあとは、光輝性要素(9)の中の凹凸構造(6)の一部が凹凸模様要素(5)に残るものの、光輝性要素(9)自体は最終的には光輝性動画模様(1)の中に存在しない。第一の実施の形態における光輝性要素(9)は、立ち上がり角度(θ1)で円弧を描く曲線状の凹凸構造(6)の集合から成る。曲線状の凹凸構造(6)が、第二の方向(S2方向)に一定の第三のピッチ(P3)で連続して配置されて一つの光輝性要素(9)となる。
【0037】
第一の実施の形態及び後述する第三の実施の形態で説明するインテグラルフォトグラフィ方式の凹凸模様要素群(4)においては、一つの光輝性要素(9)が一つの圧縮要素(8)に一対で対応する。それぞれの圧縮要素(8)に光輝性要素(9)の凹凸構造(6)を組み合わせることで、凹凸模様要素(5)とする。すなわち、凹凸模様要素(5)の凹凸構造(6)とは、光輝性要素(9)の凹凸構造(6)の一部を圧縮要素(8)の形状に合わせて、その構造と光学特性を写し取ったものであり、光輝性要素(9)の凹凸構造(6)に由来する。
【0038】
それぞれの圧縮要素(8)に光輝性要素(9)の凹凸構造(6)を組み合わせて写し取って、凹凸模様要素(5)とする方法(データの作成方法も含む)について、図7を用いて具体的に説明する。説明を簡潔にするために圧縮要素群(7)の中の一部の四つの圧縮要素(8i、8i+1、8i+2、8i+3)のみを抜き出して説明する。それぞれの圧縮要素(8i、8i+1、8i+2、8i+3)は、一定の第一のピッチ(P1)で連続して配置されて成り、その幅(W1)は第一のピッチ(P1)よりも大きいためにそれぞれの圧縮要素(8i、8i+1、8i+2、8i+3)同士は重なり合っている。
【0039】
これに対して光輝性要素(9)も同様に、対応する四つの光輝性要素(9i、9i+1、9i+2、9i+3)は、同じ幅(W1)であり、隣り合う光輝性要素(9)同士は、一定の第一のピッチ(P1)ずつずらして配置する。それぞれの圧縮要素(8i、8i+1、8i+2、8i+3)にそれぞれ対応する光輝性要素(9i、9i+1、9i+2、9i+3)を重ね合わせて、圧縮要素(8)の輪郭に光輝性要素(9)の曲線状の凹凸構造(6)を写し取ることで、それぞれに対応した凹凸模様要素(5i、5i+1、5i+2、5i+3)ができる。
【0040】
これを圧縮要素群(7)の全ての圧縮要素(8)に対して行うことで、凹凸模様要素群(4)が完成する。完成した凹凸模様要素群(4)も圧縮要素群(7)と同様に、第一のピッチ(P1)よりも大きな幅(W1)の凹凸模様要素(5)が第一の方向(S1方向)に連続して配置された構成となる。なお、第一の実施の形態においては、圧縮要素(8)の幅(W1)と光輝性要素(9)の幅(W1)を同じに設定したが、これに限定されるものではなく、異なる値であっても問題ない。
【0041】
図7において、図として描画した圧縮要素(8)と凹凸模様要素(5)の幅と、製図記号として描画した幅(W1)を示す矢印の幅とが一致していないのは、圧縮要素(8)と凹凸模様要素(5)については、フレーム(11)内に含まれた余白部を含んで圧縮要素(8)と凹凸模様要素(5)の幅(W1)と定義しているからである。そのため、圧縮要素(8)に光輝性要素(9)の曲線状の凹凸構造(6)を写し取る場合、図としては描画されていない余白部の端と、光輝性要素(9)の端とを合わせて組み合わせる必要がある。凹凸模様要素(5)が光輝性要素(9)から写し取るべきものは、その凹凸構造(6)によって構成された動画模様(3)や立体構造だけでなく、光輝性要素(9)の備える光学特性も写し取る必要がある。ここで、基画像を圧縮又は分割圧縮した圧縮要素を配置方向及び/又は配置ピッチに規則性を備え、かつ、圧縮要素の幅が、配置ピッチよりも大きく、隣り合う圧縮要素の一部を重なり合わせた圧縮要素を複数配置して圧縮要素群データを作成し、配置方向と配置ピッチの規則性と同一又は異なる規則性を備えた光輝性要素を、光輝性要素の幅が前記配置ピッチよりも大きく、隣り合う光輝性要素の一部を重なり合わせて光輝性要素を複数配置したデータを作成し、複数配置した光輝性要素と圧縮要素群を重ね合わせ、重なり合った部分を抽出して凹凸模様要素群データを作成して光輝性動画模様用データとしてもよい。以上が凹凸模様要素群(4)の構成と作製方法である。
【0042】
なお、光輝性要素(9)が、重なり合う領域においては、重なり合うそれぞれの光輝性要素(9)の凹凸構造(6)の一方のみが形成される排他的な構成としてもよいし、双方の凹凸構造(6)が、市松状、マトリクス状等、双方とも凹凸構造(6)を有する構成としてもよい。
【0043】
第一の実施の形態においては、連続して角度がなだらかに変化する円弧状の凹凸構造(6)を光輝性要素(9)の基本的な構成として説明したが、これに限定するものではない。例えば、図8(a)に示すように曲線状の円弧ではなく、わずかに角度の異なる直線が連続して配置された凹凸構造(6)を光輝性要素(9)としてもよいし、図8(b)に示すように円弧ではなく、集中線のように角度の異なる直線の集合で凹凸構造(6)を構成して光輝性要素(9)としてもよいし、あるいは、図8(c)のように円と曲線の組み合わせによって凹凸構造(6)を構成して光輝性要素(9)としてもよい。これらは角度の異なる曲線や直線の組み合わせによって光輝性要素(9)を構成した一例である。
【0044】
また、仮に凹凸構造(6)を回折格子のような微細な凹凸で構成する場合、図9に示すように凹凸構造(6)の密度を連続的に変化させる構成で光輝性要素(9)を構成してもよい。これは、回折格子のような回折を利用できる微小構造の場合、凹凸構造(6)の密度の変化によって光の反射角度を変化させることができることによる。
【0045】
図9(a)及び図9(b)のように第二の方向(S2方向)の直線から成る凹凸構造(6)の密度が、光輝性要素(9)の第一の方向(S1方向)左側の密から右側の疎へと変化する構成、図9(c)のように第一の方向(S1方向)の直線から成る凹凸構造(6)の密度が、光輝性要素(9)の第一の方向(S1方向)の左側の密から右側の疎へと変化する構成、図9(d)に示すように第一の方向(S1方向)、あるいは、第二の方向(S2)とは異なる第三の方向(S3方向)の直線から成る凹凸構造(6)の密度が、光輝性要素(9)の第一の方向(S1方向)の左側の密から右側の疎へと変化する構成、図9(e)に示すように第一の方向(S1方向)の直線から成る凹凸構造(6)の密度が、光輝性要素(9)の第二の方向(S2方向)上側の密から下側の疎へと変化する構成等を用いてもよい。
【0046】
ただし、この場合には最低でも1mm当たり100本以上の密度の凹凸構造(6)を回折格子として配置する構成で回折を生じさせる必要があり、より望ましくは1mm当たり500本以上の密度の凹凸構造(6)を回折格子として配置する構成が好ましい。
【0047】
ここで、本発明の光輝性要素(9)に必要となる具体的な光学特性について説明する。まず、光輝性要素(9)は光輝性を備える必要がある。本発明でいう光輝性とは、光が入射した場合に、明度が上昇するか、または色相が変化する特性を指す。一般的な金属やプラスティック等の見た目に艶があると感じられる物体は、光が入射した場合に入射光より強く光を反射して明度が上昇する特性を有する。また、パール顔料やホログラムに用いられる回折格子等は、光が入射することで光の干渉や回折によって反射光の色相が変化する特性を有する。印刷で形成するのであれば、金属インキや透明インキ、パールインキ等のインキを用いるか、艶のあるグロス系インキを用いて凹凸構造(6)を印刷することで光輝性を得ることができる。また、基材(2)として金属やプラスティックを用いて凹凸構造(6)を切削で形成して光輝性を付与することができる。回折格子を用いて凹凸構造(6)を形成することで光輝性を付与することも可能である。加えて、光輝性要素(9)は単に前述のような光輝性を備えるだけでなく、図10(a)、図10(b)及び図10(c)が示すように、光源(12)から入射する光に対して光輝性要素(9)の一部が光を強く反射して輝点や輝線(13)を生じ、かつ、入射する光の角度が変化すると位置変化に対応してその輝点や輝線(13)の位置が連続的に変化する光学的な特性を有している必要がある。
【0048】
図8及び図9に示した光輝性要素(9)は、全てこの光学的な特性を満たしており、この光学的な特性を満たしていれば、図8及び図9に示した以外の構成の凹凸構造(6)で光輝性要素(9)を用いても何ら問題ない。一方で任意の方向から光が入射した場合に、光輝性要素(9)全体が光を反射する構造では本発明の要件を満たさない。
【0049】
なお、この光学特性は、凹凸模様要素群(4)と組み合わされて写し取られた場合にも維持される必要がある。すなわち、凹凸模様要素群(4)中の凹凸構造(6)はその模様や立体構造を写し取るだけでなく、前述の光を強く反射する特性も同様に写し取る必要がある。
【0050】
光輝性要素(9)における凹凸構造(6)の第二の方向(S2方向)の第三のピッチ(P3)は、フレキソ印刷のような盛り上がりのある印刷画線で形成したり、単純なエンボス加工等で形成したりする場合には0.01mm~0.5mm程度とすることが望ましく、回折格子のような微細な凹凸で構成する場合には0.0002mm~0.01mm程度とすることが望ましい。密度に換算すると、印刷や単純なエンボス加工等で形成する場合、1mm当たり1本~100本とし、回折格子を用いる場合には1mm当たり100本~5,000本となる。
【0051】
基本的に第三のピッチ(P3)の値を小さくして密度を高めることができれば、動画模様(3)の視認性は高くなり、解像度も向上する。凹凸模様要素(5)、圧縮要素(8)及び光輝性要素(9)の第一の方向(S1方向)の第一のピッチ(P1)は、印刷やエンボスで形成する場合には0.1mm~3mm程度とすることが望ましく、回折格子のような微細な凹凸で構成する場合には0.01mm~0.5mm程度とすることが望ましい。第一のピッチ(P1)も第三のピッチ(P3)と同様に基本的には第一のピッチ(P1)の値を小さくできるほど、動画模様(3)の視認性は高くなり、解像度も向上する。以上が光輝性要素(9)の説明である。
【0052】
図11に本発明の光輝性動画模様(1)の効果を示す。図11(a)に示すように特定の方向の光源(12)から光が入射した場合、基画像(10)と同じ動画模様(3)が出現する。図11(b)に示すように光源(12)の位置が移動した場合、動画模様(3)の位置が変化する。図11(c)のように光源(12)の位置がさらに移動した場合、動画模様(3)の位置もさらに変化する。光源(12)の移動が連続的である場合、動画模様(3)の位置も連続的に変化する。以上が、本発明の光輝性動画模様(1)の効果の説明である。
【0053】
以上の効果が生じる基本的な原理は、従来の技術と同様である。まず、凹凸模様要素群(4)内の凹凸構造(6)と直交する特定の角度で光が入射することで、入射光と直交する角度を成した凹凸構造(6)の一部から強い光の反射が生じる。凹凸模様要素(5)を構成する光輝性要素(9)由来の凹凸構造(6)は必ず一定の角度差や密度差を有するために、この強い反射光は凹凸模様要素(5)の中の幅の狭い一部の領域からのみ生じ、点状の輝点や帯状の輝線(13)となる。この輝点や輝線(13)によって凹凸模様要素群(4)の画像の一部が光の強弱としてサンプリングされる。
【0054】
凹凸模様要素群(4)は、もともと一定の第一のピッチ(P1)ずつ位置をずらしながら基画像(10)をサンプリングして圧縮した要素(凹凸模様要素(5))の集合であり、かつ、凹凸模様要素(5)中の凹凸構造(6)は、これと同じ第一のピッチ(P1)で配置されているため、凹凸模様要素群(4)が凹凸構造(6)由来の輝点や輝線(13)によって同じ第一のピッチ(P1)でサンプリングされることで、基画像(10)である桜の花びらが光の強弱により再生される。これが凹凸模様要素群(4)に光が入射することで基画像(10)が動画模様(3)として再生される原理である。
【0055】
次に、再生された動画模様(3)に動画効果が生じる原理について説明する。入射光の角度が変化することで、凹凸模様要素(5)の中の光を強く反射した輝点や輝線(13)が第一の方向(S1方向)に移動する。これは、光輝性要素(9)が元々備え、圧縮要素組み合わせ時に凹凸模様要素(5)に写し取られた光学的な特性に因る。凹凸模様要素(5)の中を輝点や輝線(13)が移動することによって、それぞれの凹凸模様要素(5)の中の画像がサンプリングされる位置が変化し、総体として凹凸模様要素群(4)全体として再生される動画模様(3)の位置が変化して視認される。凹凸模様要素(5)の中の強い回折光を発する輝点や輝線(13)は、入射する光の角度の変化に応じて、凹凸模様要素(5)の中を連続的にスムーズに移動するため、凹凸模様要素群(4)全体でサンプリングされて出現する動画模様(3)の移動も極めて滑らかに見える。以上が、光が入射することで本発明の動画模様が再生される原理と動画効果が生じる原理である。
【0056】
図36から図40を用いて説明した従来の技術の動画効果と比較すると、第一の実施の形態における光輝性動画模様(1)の動画効果は、その動きの大きさ(動きの距離)で比較するとおよそ4倍となる。これは、従来の技術の例において凹凸模様要素(5)の画線幅(W1)とその第一のピッチ(P1)がほぼ同じであったのに対し、第一の実施の形態における凹凸模様要素(5)の画線幅(W1)を第一のピッチ(P1)の4倍の大きさに設定したことによる。これを7倍とすれば動画効果は7倍となり、10倍に設定すれば動画効果は10倍となる。
【0057】
第一の実施の形態では、フレーム幅(W0)を広げて単純に画線幅(W1)を大きく設定することで動画効果を高めたが、画線幅(W1)をそのままの値として第一のピッチ(P1)をより小さくした場合には、凹凸模様要素群(4)中の凹凸模様要素(5)の密度を高めることで、動画模様(3)の視認性と解像度を向上させる効果を得ることができる。また、同様に画線幅(W1)を相対的に大きくするとともに、第一のピッチ(P1)を相対的に小さくすれば、動画模様(3)の動画効果と視認性を同時に高めることができる。
【0058】
次に、第二の実施の形態として、モアレ拡大現象を利用した画線(ライン)状の凹凸模様要素群(4)の例について説明する。
【0059】
(第二の実施の形態)
まず、図12に、本発明における光輝性動画模様(1)、すなわち画線状の凹凸模様要素(5)で形成した凹凸模様要素群(4)を示す。第二の実施の形態は、出現する動画模様(3)が一つであった第一の実施の形態の例と異なり、複数の桜の花びらから成る動画模様(3)が出現する。
【0060】
図13に凹凸模様要素群(4)を示す。この凹凸模様要素群(4)は、光を反射する微細な凹凸構造(6)によって構成された特殊な模様であり、光が入射することで動画模様(3)を再生し、動画効果を生じさせる。図14に凹凸模様要素群(4)の構成要素の概要を示す。凹凸模様要素群(4)は、基画像(10)が圧縮された、複数の圧縮要素(8)から成る圧縮要素群(7)と、光輝性要素(9)を組み合わせることで構成される。なお、動画模様(3)は、第一の実施の形態と同様に輪郭を光らせる表現である。
【0061】
図15を用いて圧縮要素群(7)の構成及びその作製方法について説明する。圧縮要素群(7)は、圧縮要素(8)が規則性を有して配置されて成る。すなわち、圧縮要素群(7)は、圧縮要素(8)が特定の幅(W1)及び第一のピッチ(P1)で第一の方向(S1方向)に連続して配置されて成る。第一の実施の形態と異なり、第二の実施の形態における圧縮要素(8)は、基画像(10)全体を第一の方向(S1方向)に圧縮した画像となるため、全ての圧縮要素(8)は同じ画像である。第二の実施の形態においては、圧縮要素(8)の幅(W1)を元々の基画像(10)の幅(W0)で除して100を乗した値を圧縮率と定義する。
【0062】
第二の実施の形態においては、圧縮要素(8)は全て同じ形状であることから、基本的には全ての圧縮要素(8)が隣り合う圧縮要素(8)と重なり合う構成となる。図15は、隣り合う圧縮要素(8)の第一のピッチ(P1)と幅(W1)の関係が理解しやすいように、第一の方向(S1方向)に画像を拡大して表示した図である。図15が示すように、本発明の圧縮要素群(7)は、圧縮要素(8)の第一の方向(S1方向)の幅(W1)よりも、第一の方向(S1方向)の第一のピッチ(P1)が小さく構成されて成り、全ての圧縮要素(8)が隣り合う圧縮要素(8)と重なり合う構成となっている。以上が、本発明の圧縮要素群(7)の説明である。
【0063】
次に、それぞれの圧縮要素(8)に光輝性要素(9)の凹凸構造(6)を組み合わせることで、凹凸模様要素(5)とする方法について、図16を用いて具体的に説明する。説明を簡潔にするために圧縮要素群(7)の中の一部の四つの圧縮要素(8i、8i+1、8i+2、8i+3)のみを抜き出して説明する。それぞれの圧縮要素(8i、8i+1、8i+2、8i+3)は、一定の第一のピッチ(P1)で連続して配置されて成り、その幅(W1)は第一のピッチ(P1)よりも大きいためにそれぞれの圧縮要素(8i、8i+1、8i+2、8i+3)同士は重なり合っている。これに対して光輝性要素(9)の四つの光輝性要素(9i、9i+1、9i+2、9i+3)は幅(W1)である一方で、隣り合う光輝性要素(9)同士は圧縮要素(8)の第一のピッチ(P1)とは異なる第二のピッチ(P2)で配置する。
【0064】
それぞれの圧縮要素(8i、8i+1、8i+2、8i+3)に光輝性要素(9i、9i+1、9i+2、9i+3)を重ね合わせて、圧縮要素(8)の輪郭に光輝性要素(9)の曲線状の凹凸構造(6)を写し取ることで、それぞれに対応した凹凸模様要素(5i、5i+1、5i+2、5i+3)ができる。ただし、圧縮要素群(7)の圧縮要素(8)の第一のピッチ(P1)と、光輝性要素(9)の第二のピッチ(P2)にはわずかなずれがあるため、圧縮要素群(7)の中の光輝性要素(9)由来の凹凸構造(6)は隣り合う凹凸模様要素(5)間でわずかずつずれが生じて異なる模様となる。これを圧縮要素群(7)の全ての圧縮要素(8)に対して行うことで、凹凸模様要素群(4)が完成する。完成した凹凸模様要素群(4)も圧縮要素群(7)と同様に、第一のピッチ(P1)よりも大きな幅(W1)の凹凸模様要素(5)が第一の方向(S1方向)に連続して配置された構成となる。
【0065】
第一のピッチ(P1)と第二のピッチ(P2)の差は大きく異なりすぎてもならず、第一のピッチ(P1)に対する第二のピッチ(P2)の比率は0.8から1.2程度とすることが望ましい(ただし、前述のとおり1.0を除く)。より望ましくは、0.95から1.05である。この比率は、出現する動画模様(3)の基となった画像、いわゆる基画像(10)と同じように見える画像とし、かつ、動画模様(3)の動きを大きく見せるために必要な条件である。
【0066】
第二の実施の形態においては、光輝性要素(9)と凹凸模様要素(5)の配置ピッチを異ならせて、同一の配置方向(S1方向)にしたが、光輝性要素(9)と凹凸模様要素(5)の配置ピッチを同じ値とする場合は、配置方向(S1方向)をわずかに変える必要がある。言い換えれば、二つの要素の角度を変えて配置する。この場合、二つの要素の配置角度の差は、3度から10度までの範囲内で構成することが好ましい。10度を超えると観察角度を変えて観察した際に視認される動画模様(3)の数が多くなり、動きの幅も小さくなるため、動的な効果は低くなる。他方、3度を下回ると観察角度を変えて観察した際に動画模様(3)がぼやけて不鮮明となるため、動画模様(3)の視認性が低下する。
【0067】
基本的には、光輝性要素(9)と凹凸模様要素(5)の配置の規則性がわずかに異なれば、微小な模様の集合体が拡大されたモアレ模様として出現する「モアレ拡大現象」を生じさせることができる。このモアレ拡大現象は、特許第5131789号公報に記載の構成を用いることで様々な効果を発現させることが可能であり、本発明においてこれらの構成を用いてもよい。
【0068】
光輝性要素(9)における凹凸構造(6)の密度や凹凸模様要素群(4)の第一のピッチ(P1)等については、第一の実施の形態で示した条件と同じである。密度や第一のピッチ(P1)を小さくできるほど、動画模様(3)の視認性は高くなり、解像度も向上する。
【0069】
図17に本発明の光輝性動画模様(1)の効果を示す。図17(a)に示すように特定の方向の光源(12)から光が入射した場合、同じ形状をした複数の動画模様(3)が出現する。図17(b)に示すように光源(12)の位置が移動した場合、動画模様(3)の位置が変化する。それぞれの動画模様(3)は全て同じ速度で同じ方向に動く。図17(c)のように光源(12)の位置がさらに移動した場合、動画模様(3)の位置もさらに変化する。光源(12)の移動が連続的である場合、動画模様(3)の位置も連続的に変化する。以上が本発明の光輝性動画模様(1)の効果の説明である。
【0070】
以上の効果が生じる基本的な原理は従来の技術と同様である。まず、凹凸模様要素群(4)内の凹凸構造(6)と直交する特定の角度で光が入射することで、入射光と直交する角度を成した凹凸構造(6)の一部から強い光の反射が生じる。凹凸模様要素(5)を構成する光輝性要素(9)由来の凹凸構造(6)は必ず一定の角度差や密度差を有するために、この強い反射光は凹凸模様要素(5)の中の幅の狭い一部の領域からのみ生じ、点状の輝点や帯状の輝線(13)となる。この輝点や輝線(13)によって凹凸模様要素群(4)の一部が光の強弱としてサンプリングされる。
【0071】
凹凸模様要素群(4)は、同じ画像である圧縮要素(8)と光輝性要素(9)の組み合わせから成り、圧縮要素(8)と光輝性要素(9)の規則性は、ピッチや配置、方向にわずかなずれがある。光輝性要素(9)由来の凹凸構造(6)からの光の反射によってサンプリングされる凹凸模様要素(5)の位置には規則的な小さなずれが生じ、小さな凹凸模様要素(5)が一つ一つ、ずれながら凹凸模様要素群(4)全体としてサンプリングされることでモアレ拡大現象により、拡大された基画像(10)である桜の花びらが動画模様(3)として光の強弱によって再生される。
【0072】
次に、入射光の角度が変化することで、凹凸模様要素(5)の中の光を強く反射した輝点や輝線(13)が第一の方向(S1方向)に移動する。これは、凹凸模様要素(5)中の凹凸構造(6)の基となった光輝性要素(9)が元々備えていた光学的な特性に因る。凹凸模様要素(5)の中を輝点や輝線(13)が移動することによって、凹凸模様要素(5)の中のサンプリングされる位置が変化し、総体として凹凸模様要素群(4)全体として再生される動画模様(3)の位置が変化して視認される。凹凸模様要素(5)の中の強い光を発する輝点や輝線(13)は、入射する光の角度の変化に応じて、凹凸模様要素(5)の中を連続的にスムーズに移動するため、凹凸模様要素群(4)全体でサンプリングされて出現する動画模様(3)の移動も極めて滑らかに見える。以上が、本発明の動画模様(3)が再生される原理と動画効果が生じる原理である。
【0073】
モアレ拡大現象を利用した従来の技術(例えば、特許文献2に記載の第三の実施の形態)の動画効果と比較すると第二の実施の形態において得られた本発明の光輝性動画模様(1)の動画効果は、その動きの大きさ(動きの距離)で比較するとおよそ4倍となる。これは、従来の技術の例において凹凸模様要素の画線幅(W1)とその第一のピッチ(P1)がほぼ同じであったのに対し、第一の実施の形態における凹凸模様要素(5)の画線幅(W1)を第一のピッチ(P1)の4倍の大きさに設定したことによる。これを7倍とすれば動画効果は7倍となり、10倍に設定すれば動画効果は10倍となる。
【0074】
第二の実施の形態では、単純に画線幅(W1)を大きく設定することで動画効果を高めたが、画線幅(W1)をそのままの値として第一のピッチ(P1)をより小さくする場合には、凹凸模様要素群(4)中の凹凸模様要素(5)の密度を高めることができるために、動画模様(3)の視認性と解像度を向上させる効果を得ることができる。また、同様に画線幅(W1)を相対的に大きくするとともに、第一のピッチ(P1)を相対的に小さくすれば、動画模様(3)の動画効果と視認性を同時に高めることができる。
【0075】
次に、第三の実施の形態として、インテグラルフォトグラフィ方式を利用した画素(ドット)状の凹凸模様要素群(4)について説明する。
【0076】
(第三の実施の形態)
図18に、本発明における光輝性動画模様(1)を示す。第三の実施の形態は、画素状の凹凸模様要素(5)で形成された凹凸模様要素群(4)が、基材(2)に形成された光輝性動画模様(1)である。第三の実施の形態は、円である動画模様(3)が上下左右にスムーズに移動する動画効果が生じる。
【0077】
図19に凹凸模様要素群(4)を示す。この凹凸模様要素群(4)は、光を反射する微細な凹凸構造(6)によって構成された特殊な模様であり、光が入射することで動画模様(3)を再生し、動画効果を生じさせる。なお、動画模様(3)は、前述の実施の形態同様に、輪郭を光らせる表現である。
【0078】
図20に凹凸模様要素群(4)の構成要素について概要を示す。凹凸模様要素群(4)は、動画模様(3)の基となる基画像(10)が圧縮された圧縮要素(8)を複数配置されて成る圧縮要素群(7)と、それと対を成す光輝性要素(9)を組み合わせることで構成される。
【0079】
図21を用いて圧縮要素群(7)の構成及びその作製方法について説明する。圧縮要素群(7)は、圧縮要素(8)が規則性を有して配置されて成る。すなわち、圧縮要素群(7)は、特定の幅(W1)及び特定の高さ(H1)の圧縮要素(8)が特定の第一のピッチ(P1)で第一の方向(S1方向)及び第二の方向(S2方向)に連続して配置されて成る。なお、第三の実施の形態において、第一の方向(S1方向)及び第二の方向(S2方向)の圧縮要素(8)の配置ピッチを同じ値としたが、これに限定されるものではない。
【0080】
それぞれの圧縮要素(8)は、基画像(10)に対して、幅(W0)、高さ(H0)のフレーム(11)を当てはめ、そのフレーム(11)に入った基画像(10)を第一の方向(S1方向)に幅(W1)、及び第二の方向(S2方向)に高さ(H1)に圧縮することで作製する。第一の実施の形態及び第二の実施の形態との違いは、第一の方向(S1方向)だけでなく、第二の方向(S2方向)にも圧縮するため、基画像(10)全体が縮小した構成となる。第三の実施の形態における基画像(10)は、円である。フレーム(11)を基画像(10)に対して上右側に配置し、フレーム(11)内に基画像(10)がわずか(第一のピッチ(P1)の大きさより小さい幅)でも入った位置を起点とし、フレーム(11)内に含まれた基画像(10)を特定の割合で圧縮することで第一の圧縮要素(8-1-1)を作製する。次に、フレーム(11)を起点の位置から第一のピッチ(P1)だけ第一の方向(S1方向)に移動し、同様にフレーム(11)内に含まれた基画像(10)を特定の割合で圧縮することで第二の圧縮要素(8-2-1)を作製する。
【0081】
これを繰り返し、フレーム(11)内に基画像(10)が含まれない位置までフレーム(11)が移動した場合、起点の位置にフレーム(11)を戻して、起点の以下から第二の方向(S2方向)に第一のピッチ(P1)だけ移動し、同様にフレーム(11)内に含まれた基画像(10)を特定の割合で圧縮することで圧縮要素(8-1-2)を作製する。次に、第一のピッチ(P1)だけ第一の方向(S1方向)に移動し、同様にフレーム(11)内に含まれた基画像(10)を特定の割合で圧縮することで圧縮要素(8-2-2)を作製する。この手順を繰り返して最終的な第nの圧縮要素(8-n-n)を作製し、フレーム(11)内に基画像(10)が含まれない位置までフレーム(11)が移動するまで圧縮要素(8)を作製できたら、全ての圧縮要素(8)の作製が完了となる。
【0082】
作製したそれぞれの圧縮要素(8)は、第一の圧縮要素(8-1-1)の位置を起点として、第一の方向(S1方向)に第一のピッチ(P1)の幅の位置に第二の圧縮要素(8-2-1)を配置する。同じように、起点から第二の方向(S2方向)に第一のピッチ(P1)の位置に圧縮要素(8-1-2)を配置する。これを繰り返して第nの圧縮要素(8-n-n)までを順に配置することで圧縮要素群(7)が完成する。これが本発明の圧縮要素群(7)の基本的な構成と作製方法である。
【0083】
ここで、第三の実施の形態では、圧縮要素の幅(W1)にフレームの幅(W0)を除して100を乗した値を第一の圧縮率、圧縮要素の高さ(H1)にフレームの高さ(H0)を除して100を乗した値を第二の圧縮率と定義する。圧縮要素の幅(W1)と圧縮要素の高さ(H1)、フレームの幅(W0)とフレームの高さ(H0)、及び第一の圧縮率と第二の圧縮率はそれぞれ必ずしも同じである必要はないが、同じ値である方が動画模様(3)として再生される基画像(10)はより正確な形状で再生されることから、これらの値は同じか近い値であることが望ましい。
【0084】
次に、図21の左下の拡大図に圧縮要素(8)同士の重なり合いの状態を示す。本発明の圧縮要素群(7)は、圧縮要素(8)の第一の方向(S1方向)の幅(W1)よりも、第一の方向(S1方向)の第一のピッチ(P1)の方が小さく構成されて、かつ圧縮要素(8)の第二の方向(S2方向)の高さ(H1)よりも、第二の方向(S2方向)の第一のピッチ(P1)の方が小さく構成されて成る。なお、圧縮要素群(7)の端部においては、画像化された圧縮要素(8)の幅(W1)や高さ(H1)が第一のピッチ(P1)よりも小さく見える領域も存在するが、これは単に可視化された部分だけ見えるために見かけ上小さく見えるだけであって、実際にはフレーム(11)内に収まった空白部分も圧縮しているため、可視化されていない空白部分を含めると全ての隣り合う圧縮要素(8)同士は重なり合っていると言える。
【0085】
従来の技術の圧縮要素群(7)では、隣り合う圧縮要素(8)同士が重なり合うことを禁じている。この条件では、圧縮要素(8)の幅(W1)や高さ(H1)は必ず第一のピッチ(P1)より小さな値とする必要がある。このため、圧縮要素(8)の幅(W1)や高さ(H1)を広くできなければフレーム(11)の幅(W0)と高さ(H0)を大きく設定することはできず、圧縮率を小さくして動画効果を高めるには限界があった。一方で圧縮要素(8)の幅(W1)や高さ(H1)を広くすると、フレーム(11)の幅(W0)と高さ(H0)を大きく設定することは可能となるが、圧縮要素(8)の第一のピッチ(P1)も同様に広げる必要が生じ、結果として圧縮要素(8)の密度が低くなるために出現する動画模様(3)の視認性や解像度が大きく低下するという問題が生じる。このため、動画模様(3)の動画効果と視認性を両立させることは困難であった。
【0086】
本発明の圧縮要素群(7)では、隣り合う圧縮要素(8)同士を重ねることでフレーム(11)の幅(W0)及び高さ(H0)を大きく設定することを可能として動画効果を高め、かつ、第一のピッチ(P1)も密にすることで動画模様(3)の動画効果と視認性を両立させることを可能とした。以上が、本発明の圧縮要素群(7)の説明である。
【0087】
図22に光輝性要素(9)の一例を示す。第三の実施の形態における光輝性要素(9)は、同心円状の凹凸構造(6)の集合から成る。円心が同じく、半径が第三のピッチ(P3)ずつ異なる円の集合による同心円に凹凸構造(6)を付与した円状の画素として成り、幅(W2)を有し、高さ(H2)を有する。第三の実施の形態においては、幅(W2)と高さ(H2)は同じであるため、同心円状の直径(W2)のドットである。一つの光輝性要素(9)は、一つの圧縮要素(8)に一対で対応する。それぞれの圧縮要素(8)に光輝性要素(9)の凹凸構造(6)を組み合わせることで、凹凸模様要素(5)とする。
【0088】
それぞれの圧縮要素(8)に光輝性要素(9)の凹凸構造(6)を組み合わせることで、凹凸模様要素(5)とする方法について図23を用いて具体的に説明する。説明を簡潔にするために圧縮要素群(7)の中の一部の四つの圧縮要素(8i、8i+1、8i+2、8i+3)のみを抜き出して説明する。それぞれの圧縮要素(8i、8i+1、8i+2、8i+3)は、第一の方向(S1方向)及び第二の方向(S2方向)に一定の第一のピッチ(P1)で連続して配置されて成り、その直径(W1)は、第一のピッチ(P1)よりも大きいためにそれぞれの圧縮要素(8i、8i+1、8i+2、8i+3)同士は重なり合っている。これに対して光輝性要素(9)も同様に、対応する四つの光輝性要素(9i、9i+1、9i+2、9i+3)は、直径(W2)であり、隣り合う光輝性要素(9)同士は一定の第一のピッチ(P1)ずつずれて配置する。それぞれの圧縮要素(8i、8i+1、8i+2、8i+3)にそれぞれ対応する光輝性要素(9i、9i+1、9i+2、9i+3)を重ね合わせて、圧縮要素(8)の輪郭に光輝性要素(9)の曲線状の凹凸構造(6)を写し取ることでそれぞれに対応した凹凸模様要素(5i、5i+1、5i+2、5i+3)ができる。
【0089】
これを圧縮要素群(7)の全ての圧縮要素(8)に対して行うことで、凹凸模様要素群(4)が完成する。完成した凹凸模様要素群(4)も圧縮要素群(7)と同様に、第一のピッチ(P1)よりも大きな直径(W1)の凹凸模様要素(5)が第一の方向(S1方向)及び第二の方向(S2方向)に連続して配置された構成となる。以上が凹凸模様要素群(4)の構成と作製方法である。
【0090】
第三の実施の形態においては、同心円状の凹凸構造(6)を光輝性要素(9)の基本的な構成として説明したが、これに限定するものではない。例えば、図24(a)に示すようにドットの内部を同心円ではなく直線が集中線状に配置された凹凸構造(6)を光輝性要素(9)としてもよいし、図24(b)に示すように曲線が集中線状に配置された凹凸構造(6)を構成して光輝性要素(9)としてもよいし、あるいは、図24(c)のように同心円をわずかに角度の異なる直線の集合によって疑似的に同心円状とした凹凸構造(6)を構成して光輝性要素(9)としてもよい。これらは角度の異なる曲線や直線の組み合わせによって光輝性要素(9)を構成した一例であり、密度と角度の少なくともいずれか一方を異ならせて光輝性要素(9)を構成してもよい。
【0091】
第三の実施の形態の画素(ドット)状の光輝性要素(9)に求められる特性は、第一の実施の形態の画線(ライン)状の光輝性要素(9)において説明したのと同様に、光源(12)から入射する光に対して光輝性要素(9)の一部に光を特に強く反射した輝点や輝線(13)を生じ、かつ、入射する光の角度が変化すると位置変化に対応してその輝点や輝線(13)の位置が連続的に変化する光学的な特性を光輝性要素(9)が有することである。
【0092】
図24に示した光輝性要素(9)は、全てこの光学的な特性を満たしており、この光学的な特性を満たしていれば、図24に示した以外の構成の凹凸模様で光輝性要素(9)を用いても何ら問題ない。一方で任意の方向から光が入射した場合に、光輝性要素(9)全体が光を反射する構造では本発明の要件を満たさない。なお、図24に示した光輝性要素(9)を用いて本発明の光輝性動画模様(1)を形成した場合、一つの光源(12)から入射する光に対して光輝性要素(9)中に二つの輝点が生じるため、再生される動画模様(3)は図18に示したように必ず二つがペアになって出現する。ペアとなって動画模様(3)が出現する形態を望まず、出現する動画模様(3)を一つとしたい場合には、一つの光源(12)から入射する光に対して光輝性要素(9)中に生じる輝点が一つとなるような構成の光輝性要素(9)を用いる必要がある。
【0093】
具体的には、図25(a)及び図25(b)に示すようなフレネル型やブレーズド型の断面構造を持つ凹凸構造(6)を用いた光輝性要素(9)とするか、あるいは、図25(c)及び図25(d)のように画素中の凹凸構造(6)の配置角度の変化を180度以下に抑えた構成の光輝性要素(9)を用いることが必要となる。なお、図25(d)の光輝性要素(9)は180度以下の配置角度の変化に加え、凹凸構造(6)の密度も段階的に変化させた構成を有する。この構成は輝点を絞り、動画模様(3)をシャープに再生するために望ましい構成である。
【0094】
図26に本発明の光輝性動画模様(1)の効果を示す。図26(a)に示すように特定の方向の光源(12)から光が入射した場合、光輝性動画模様(1)中に動画模様(3)が出現する。図26(b)に示すように光源(12)の位置が移動した場合、動画模様(3)の位置が第一の方向(S1方向)だけでなく、第二の方向(S2方向)にも同時に変化する。図26(c)のように光源(12)の位置がさらに移動した場合、動画模様(3)の位置もさらに変化する。光源(12)の移動が連続的である場合、動画模様(3)の位置も連続的に変化する。以上が本発明の光輝性動画模様(1)の効果の説明である。凹凸模様要素(5)が画線状から画素状に変わったものの、効果が生じる原理については、第一の実施の形態と同じであり、説明を省略する。
【0095】
比較例として従来の技術(例として、特許文献2の第2の実施の形態に記載の技術)によって、本発明の第三の実施の形態における凹凸模様要素群(4)を同じ圧縮率で形成した場合について、図27により説明する。図27(a)に示した本発明の第三の実施の形態における凹凸模様要素群(4)の中の凹凸模様要素(5)と比較すると、図27(b)に示す従来技術の凹凸模様要素群(4)の中の凹凸模様要素(5)の密度は、疎になっている。この場合の動画効果は図28に示す。図28に示す比較例における従来技術では、動画効果(動きの大きさ)は同等であるものの、凹凸模様要素(5)の密度が低いために視認性が低くなる。以上が第三の実施の形態の説明である。
【0096】
次に、第四の実施の形態として、モアレ拡大現象を利用した画素(ドット)状の凹凸模様要素群(4)について説明する。
【0097】
(第四の実施の形態)
図29に、本発明における光輝性動画模様(1)を示す。第四の実施の形態は、画素状の凹凸模様要素(5)で形成された凹凸模様要素群(4)が、基材(2)に形成された光輝性動画模様(1)である。第四の実施の形態における動画模様(3)は第三の実施の形態同様に円である。
【0098】
図30に凹凸模様要素群(4)を示す。この凹凸模様要素群(4)は、光を反射する微細な凹凸構造(6)によって構成された特殊な模様であり、光が入射することで動画模様(3)を再生し、動画効果を生じさせる。なお、動画模様(3)は、前述の実施の形態同様に、輪郭を光らせる表現である。
【0099】
図31に凹凸模様要素群(4)の構成要素について概要を示す。凹凸模様要素群(4)は、基となる基画像(10)が圧縮された圧縮要素(8)を複数配置されて成る圧縮要素群(7)と、圧縮要素(8)と対を成す光輝性要素(9)を組み合わせることで構成される。第四の実施の形態において、動画模様(3)は輪郭を光らせる表現を用いており、この場合は圧縮要素(8)の輪郭に光輝性要素(9)の模様を写し取るものである。この場合、光輝性動画模様(1)に光が入射した場合に、動画模様(3)は輪郭が光った状態で再生される。
【0100】
図32を用いて圧縮要素群(7)の構成及びその作製方法について説明する。圧縮要素群(7)は、圧縮要素(8)が規則性を有して配置されて成る。すなわち、圧縮要素群(7)は、特定の幅(W1)で特定の高さ(H1)の圧縮要素(8)が特定の第一の方向(S1方向)及び特定の第二の方向(S2方向)に特定の第一のピッチ(P1)で連続して配置されて成る。なお、第四の実施の形態においては、圧縮要素群(7)の幅(W1)と高さ(H1)は同じ値とし、第一の方向(S1方向)と第二の方向(S2方向)のピッチは、同じ値の第一のピッチ(P1)としたが、これに限定されるものではない。第四の実施の形態においては、圧縮要素群(7)は直径(W1)の画素が第一の方向(S1方向)及び第二の方向(S2方向)に同じ第一のピッチ(P1)で配置されて成る例である。
【0101】
第三の実施の形態と異なり、第四の実施の形態における圧縮要素(8)は、基画像(10)全体を単純に圧縮した画像となるため、全ての圧縮要素(8)は同じ画像である。第四の実施の形態においては、圧縮要素(8)の幅(W1)を元々の基画像(10)の幅(W0)を除して100を乗した値を幅方向の圧縮率と定義し、圧縮要素(8)の高さ(H1)を元々の基画像(10)の高さ(H0)で除して100を乗した値を高さ方向の圧縮率と定義する。
【0102】
なお、第四の実施の形態においては、基画像(10)の幅(W0)及び高さ(H0)は同じであることから、幅方向の圧縮率と高さ方向の圧縮率は同じ値である。幅方向の圧縮率と高さ方向の圧縮率は必ずしも同じ値である必要はないが、幅方向の圧縮率と高さ方向の圧縮率を同じとすることで、出現する動画模様(3)を基画像(10)と同じ形状とすることができる。
【0103】
第四の実施の形態においては、圧縮要素(8)は全て同じ形状であることから、基本的には全ての圧縮要素(8)が隣り合う圧縮要素(8)と重なり合う構成となる。図32における左下の拡大図からわかるように、本発明の圧縮要素群(7)は、圧縮要素(8)の第一の方向(S1方向)の幅(W1)及び高さ(H1)よりも、第一の方向(S1方向)及び第二の方向(S2方向)の第一のピッチ(P1)の方が小さく構成されて成り、全ての圧縮要素(8)が隣り合う圧縮要素(8)と重なり合う構成となっている。以上が、本発明の圧縮要素群(7)の説明である。
【0104】
次に、それぞれの圧縮要素(8)に光輝性要素(9)の凹凸構造(6)を組み合わせることで、凹凸模様要素(5)とする方法について図33を用いて具体的に説明する。説明を簡潔にするために圧縮要素群(7)の中の一部の四つの圧縮要素(8i、8i+1、8i+2、8i+3)のみを抜き出して説明する。それぞれの圧縮要素(8i、8i+1、8i+2、8i+3)は、一定の第一のピッチ(P1)で連続して配置されて成り、その直径(W1)は配置ピッチ(P1、P2)よりも大きいためにそれぞれの圧縮要素(8i、8i+1、8i+2、8i+3)同士は重なり合っている。これに対して光輝性要素(9)も同様に、四つの光輝性要素(9i、9i+1、9i+2、9i+3)は直径(W2)であり、隣り合う光輝性要素(9)同士は一定の第二のピッチ(P2)ずつずれて配置する。ここで重要なのは、第三の実施の形態と異なり、第四の実施の形態においては、圧縮要素群(7)の圧縮要素(8)の第一のピッチ(P1)と、光輝性要素(9)の第二のピッチ(P2)は同じ値であってはならず、わずかに異なる値である必要がある。
【0105】
それぞれの圧縮要素(8i、8i+1、8i+2、8i+3)に光輝性要素(9i、9i+1、9i+2、9i+3)を重ね合わせて、圧縮要素(8)の輪郭に光輝性要素(9)の曲線状の凹凸構造(6)を写し取ることでそれぞれに対応した凹凸模様要素(5i、5i+1、5i+2、5i+3)ができる。ただし、圧縮要素群(7)の圧縮要素(8)の第一のピッチ(P1)と、光輝性要素(9)の第二のピッチ(P2)にはわずかなずれがあるため、圧縮要素群(7)の中の光輝性要素(9)由来の凹凸構造(6)は隣り合う凹凸模様要素(5)間でわずかにずれが生じて異なる模様となる。
【0106】
これを圧縮要素群(7)の全ての圧縮要素(8)に対して行うことで、凹凸模様要素群(4)が完成する。完成した凹凸模様要素群(4)も圧縮要素群(7)と同様に、第一のピッチ(P1)よりも大きな直径(W1)の凹凸模様要素(5)が第一の方向(S1方向)及び第二の方向(S2方向)に連続して配置された構成となる。ただし、凹凸模様要素(5)に反映された光輝性要素(9)は、異なる第二のピッチ(P2)で構成されている。
【0107】
なお、第四の実施の形態において、光輝性要素(9)と凹凸模様要素(5)の配置ピッチの関係は、第二の実施の形態と同様であるため省略する。
【0108】
図34に本発明の光輝性動画模様(1)の効果を示す。図34(a)に示すように特定の方向の光源(12)から光が入射した場合、光輝性動画模様(1)中に複数の動画模様(3)が二つで一つのペアとなって出現する。図34(b)に示すように光源(12)の位置が移動した場合、動画模様(3)の位置が変化する。このときペアとなっている動画模様(3)は互いに逆方向に動く。図34(c)のように光源(12)の位置がさらに移動した場合、動画模様(3)の位置もさらに変化する。光源(12)の移動が連続的である場合、動画模様(3)の位置も連続的に変化する。以上が本発明の光輝性動画模様(1)の効果の説明である。凹凸模様要素(5)が画線状から画素状に変わったものの、効果が生じる原理については、第二の実施の形態と同じであり、説明を省略する。以上が第四の実施の形態の説明である。
【0109】
図35に本発明の光輝性動画模様(1)をホログラム化した場合の層構造の一例を示す。本明細書中では、発明の光輝性動画模様(1)に関して、凹凸模様要素群(4)についてのみ具体的に記載したが、これらは主として最低限の構成のホログラム形成層(14)に該当するものであり、この構成に蒸着層(15)や透明反射層(16)を施して輝度を高めたり、保護層(17)を設けて耐久性を高めたり、接着アンカー層(18)や接着層(19)を設けて基材に貼付できる形態とすることは、本発明の常識的な応用の範囲である。
【0110】
なお、第一の実施の形態から第四の実施の形態で説明した凹凸模様要素群(4)の近傍に、異なる光学的な効果をもたらすエレメント、例えばパールインキやマットインキによる印刷模様や、前述した実施形態と異なるホログラムを形成してもよい。
【0111】
(実施例)
実施例として、金属板にレーザーで凹凸を彫刻することによって光輝性動画模様(1)を形成した例について図1から図11を用いて説明する。基材(2)は表面にニッケル・リンメッキが施された金属板であり、図2に示す凹凸模様要素群(4)を直接レーザーで基材(2)に描画することで本発明の光輝性動画模様(1)を作製した例である。基画像(10)は、幅(W0)8mm×高さ(H)8mmの桜の花びらとした。これに、幅(W0)12mm×高さ(H)8mmのフレーム(11)を当てはめて、幅(W1)2mm×高さ(H)8mmのそれぞれの圧縮要素(8)を作製し、第一の方向(S1方向)に第一のピッチ(P1)を0.5mmで連続して規則的に配置して圧縮要素群(7)を作製した。この圧縮率は、約16%である。また、図6に示す光輝性要素(9)は、θ1=40度の円弧状で幅(W1)0.5mmの曲線を凹凸構造(6)とし、第三のピッチ(P3)を0.1mmとして連続して配置して光輝性要素(9)として用い、圧縮要素群(7)と同じ第一のピッチ(P1)0.5mmで組み合わせて凹凸模様要素群(4)とした。
【0112】
作製した凹凸模様要素群(4)を、YVOレーザーマーカー((株)キーエンス製)を用いてレーザーパワー40%、スキャンスピード600mm、Qスイッチ周波数60KHzの描画設定で金属板に5回レーザーを照射することで本発明の光輝性動画模様(1)を作製した。完成した光輝性動画模様(1)に対して図11(b)に示すように、光源(12)から光を入射させたところ、光輝性動画模様(1)の中に桜の花びらの模様が光の強弱によって出現し、光源(12)に対して光輝性動画模様(1)の角度を変化させたところ、図11(c)及び図11(d)のように、光輝性動画模様(1)中の動画模様(3)の位置が変化する、いわゆる動画効果が発現することが確認できた。また、ステンレス板にこの光輝性動画模様(1)を描画し、これをエンボス加工用の原版としてプレス機で使用することによって光沢を有するプラスティック製のカードの表面に光輝性動画模様(1)を転写することもできた。
【符号の説明】
【0113】
1 光輝性動画模様
2 基材
3 動画模様
4 凹凸模様要素群
5 凹凸模様要素
6 凹凸構造
7 圧縮要素群
8 圧縮要素
9 光輝性要素
10 基画像
11 フレーム
12 光源
13 反射光
14 ホログラム形成層
15 蒸着層
16 透明反射層
17 保護層
18 接着アンカー層
19 接着層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40