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特開2024-178611フロートガラス製造装置、及びフロートガラス製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178611
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】フロートガラス製造装置、及びフロートガラス製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 18/16 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
C03B18/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096880
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大村 義豊
(57)【要約】
【課題】溶融金属上を移送される溶融ガラス及びガラスリボンに析出物が付着することを抑制できるフロートガラス製造装置及びフロートガラス製造方法の提供。
【解決手段】本発明のフロートガラス製造装置は、溶融金属上に供給される溶融ガラスを前記溶融金属上でガラスリボンに成形するフロートガラス製造装置であって、前記溶融金属を貯えるフロートバスと、棒状の軸部及び前記軸部の先端に設けられる接触部を有する清掃部材と、を備え、前記フロートバスは、鉛直方向と直交する方向に広がる底壁部と、前記底壁部の周縁から鉛直方向上側に延び、且つ、前記軸部が通される開口部が設けられた側壁部と、を有し、前記清掃部材は、前記底壁部の鉛直方向上側を向く底面に前記接触部が接触した状態で、前記底面に沿って移動可能である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属上に供給される溶融ガラスを前記溶融金属上でガラスリボンに成形するフロートガラス製造装置であって、
前記溶融金属を貯えるフロートバスと、
棒状の軸部及び前記軸部の先端に設けられる接触部を有する清掃部材と、
を備え、
前記フロートバスは、鉛直方向と直交する方向に広がる底壁部と、前記底壁部の周縁から鉛直方向上側に延び、且つ、前記軸部が通される開口部が設けられた側壁部と、を有し、
前記清掃部材は、前記底壁部の鉛直方向上側を向く底面に前記接触部が接触した状態で、前記底面に沿って移動可能である、フロートガラス製造装置。
【請求項2】
前記接触部は、前記底面のうち鉛直方向から見て前記溶融ガラス又は前記ガラスリボンと重なる部分に接触可能である、請求項1に記載のフロートガラス製造装置。
【請求項3】
前記底壁部のうち前記底面を有する部分は煉瓦製であり、前記軸部は金属製であり、前記接触部は炭素繊維を含む材料によって構成される、請求項1又は2に記載のフロートガラス製造装置。
【請求項4】
前記フロートバスのうち少なくとも前記底壁部に振動を加える加振装置を備える、請求項1に記載のフロートガラス製造装置。
【請求項5】
溶融金属を貯え、鉛直方向と直交する方向に延びる底壁部、及び前記底壁部の周縁から鉛直方向上側に延び、且つ、開口部が設けられた側壁部を有するフロートバスを備えるフロートガラス製造装置によってガラスリボンを成形するフロートガラス製造方法であって、
前記溶融金属上に供給された溶融ガラスを移送しつつ前記ガラスリボンに成形することと、
清掃部材を用いて前記底壁部の鉛直方向上側を向く底面を清掃することと、
を含み、
前記清掃部材は、
前記開口部に通される棒状の軸部と、
前記軸部の先端に設けられる接触部と、
を有し、
前記底面を清掃することは、前記底面に前記接触部が接触した状態で、前記接触部を前記底面に沿って移動させて、前記底面を清掃することを含む、フロートガラス製造方法。
【請求項6】
前記底面を清掃することは、前記溶融金属上に供給された前記溶融ガラスを移送しつつ、前記接触部によって前記底面を清掃することを含む、請求項5に記載のフロートガラス製造方法。
【請求項7】
前記フロートバスに振動を加えることが可能な加振装置によって、前記底壁部に振動を加えて、前記底面を清掃することを含む、請求項5又は6に記載のフロートガラス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロートガラス製造装置、及びフロートガラス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フロート成形による板ガラスの製造は一般的に以下の手順で行われる。まず、ガラス原料を加熱溶融して得られた溶融ガラスをフロートバスに貯えられた溶融錫等の溶融金属の表面上に連続的に供給する。その後、溶融ガラスを溶融金属の表面に沿って移送しながらガラスリボンを成形する。そして、成形されたガラスリボンをフロートバスから引き出し、徐冷及び洗浄した後、切断することで所望の大きさの板ガラスを得る。
フロート成形よる板ガラスの製造方法は、生産性が高く、得られた板ガラスは平坦性に優れる。したがって、フロート成形による板ガラスは、建築用板ガラス、自動車用板ガラス、及びFPD(フラットパネルディスプレイ)用板ガラス等として広く適用される。
特許文献1には、金属製のボトムケーシングの内部に煉瓦製のボトムレンガを複数整列配置して浴槽状に構成されたフロートバスを備えるフロート板ガラスの製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-124123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のような構成のフロートバスでは、溶融金属によって高温下に晒される煉瓦から溶け出して析出した煉瓦由来の析出物が煉瓦に付着する。係る析出物が煉瓦から剥がれて溶融金属の表面に向けて浮上すると、溶融金属上を移送される溶融ガラス及びガラスリボンに付着する場合がある。これにより、ガラスリボンの表面に窪み及び突起等の欠陥が発生するため、溶融ガラス及びガラスリボンに係る析出物が付着することは、板ガラスの歩留まりを低下させる要因となっていた。
【0005】
本発明は、係る事情に鑑みて、溶融金属上を移送される溶融ガラス及びガラスリボンに析出物が付着することを抑制できるフロートガラス製造装置及びフロートガラス製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]溶融金属上に供給される溶融ガラスを前記溶融金属上でガラスリボンに成形するフロートガラス製造装置であって、前記溶融金属を貯えるフロートバスと、棒状の軸部及び前記軸部の先端に設けられる接触部を有する清掃部材と、を備え、前記フロートバスは、鉛直方向と直交する方向に広がる底壁部と、前記底壁部の周縁から鉛直方向上側に延び、且つ、前記軸部が通される開口部が設けられた側壁部と、を有し、前記清掃部材は、前記底壁部の鉛直方向上側を向く底面に前記接触部が接触した状態で、前記底面に沿って移動可能である、フロートガラス製造装置。
[2]前記接触部は、前記底面のうち鉛直方向から見て前記溶融ガラス又は前記ガラスリボンと重なる部分に接触可能である、[1]に記載のフロートガラス製造装置。
[3]前記底壁部のうち前記底面を有する部分は煉瓦製であり、前記軸部は金属製であり、前記接触部は炭素繊維を含む材料によって構成される、[1]又は[2]に記載のフロートガラス製造装置。
[4]前記フロートバスのうち少なくとも前記底壁部に振動を加える加振装置を備える、[1]から[3]のいずれかに記載のフロートガラス製造装置。
[5]溶融金属を貯え、鉛直方向と直交する方向に延びる底壁部、及び前記底壁部の周縁から鉛直方向上側に延び、且つ、開口部が設けられた側壁部を有するフロートバスを備えるフロートガラス製造装置によってガラスリボンを成形するフロートガラス製造方法であって、前記溶融金属上に供給された溶融ガラスを移送しつつ前記ガラスリボンに成形することと、清掃部材を用いて前記底壁部の鉛直方向上側を向く底面を清掃することと、を含み、前記清掃部材は、前記開口部に通される棒状の軸部と、前記軸部の先端に設けられる接触部と、を有し、前記底面を清掃することは、前記底面に前記接触部が接触した状態で、前記清掃部材を前記底面に沿って移動させて、前記底面を清掃することを含む、フロートガラス製造方法。
[6]前記底面を清掃することは、前記溶融金属上に供給された前記溶融ガラスを移送しつつ、前記接触部によって前記底面を清掃することを含む、[5]に記載のフロートガラス製造方法。
[7]前記フロートバスに振動を加えることが可能な加振装置によって、前記底壁部に振動を加えて、前記底面を清掃することを含む、[5]又は[6]に記載のフロートガラス製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、溶融金属上を移送される溶融ガラス及びガラスリボンに析出物が付着することを抑制できるフロートガラス製造装置及びフロートガラス製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態のフロートガラス製造装置の一例を示す断面図である。
図2】本発明の第1実施形態の溶融金属上を移送される溶融ガラスの状態の一例を示す断面図である。
図3】本発明の第1実施形態のフロートガラス製造装置の一例を示す断面図であって、図1のIII-III断面図である。
図4】本発明の第1実施形態の清掃部材の一例を示す斜視図である。
図5】本発明の第1実施形態のフロートガラス製造方法を示すフローチャートである。
図6】本発明の第1実施形態の板ガラスの欠陥の個数の推移の一例を示す図である。
図7】本発明の第2実施形態のフロートガラス製造装置の一例を示す断面図である。
図8】本発明の第2実施形態のフロートガラス製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のフロートガラス製造装置は、フロート成形によってガラスリボンを成形する。以下、本発明のフロートガラス製造装置の一例について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施できる。
【0010】
各図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。Z軸方向は、鉛直方向である。以下の説明では、Z軸の矢印が向く側(+Z側)を「上側」又は「鉛直方向上側」と呼び、Z軸の矢印が向く側と反対側(-Z側)を「下側」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって、以下の実施形態において、溶融ガラス及びガラスリボンが移送される方向である。以下の実施形態において、溶融ガラス及びガラスリボンはX軸の矢印が向く方向に移送される。以下の説明では、X軸方向を単に「移送方向」と呼び、X軸の矢印が向く側(+X側)を「下流側」と呼び、X軸の矢印が向く側と反対側(-X側)を「上流側」と呼ぶ。Y軸方向は、X軸方向及びZ軸方向の両方と直交する方向であって、フロートガラス製造装置の幅方向である。以下の説明では、Y軸方向を単に「幅方向」と呼び、Y軸の矢印が向く側(+Y側)を、「幅方向の一方側」と呼び、Y軸の矢印が向く側と反対側(-Y側)を、「幅方向の他方側」と呼ぶ。
【0011】
<第1実施形態>
以下、図面を参照し、第1実施形態に係るフロートガラス製造装置10及びフロートガラス製造方法Mgについて説明する。
図1に示すように、本実施形態のフロートガラス製造装置10は、フロートバス20に貯えられた溶融金属28上に供給される溶融ガラスGを溶融金属28の表面に沿って移送しつつ、幅方向(Y軸方向)の両側から図2に示すトップロール61により拡げて、溶融金属28上で帯板状のガラスリボンGRを成形する装置である。図1に示すように、フロートガラス製造装置10は、フロートバス20と、溶融金属28と、ルーフ30と、リフトアウトロール41と、搬送ロール42と、を備える。また、図2に示すように、フロートガラス製造装置10は、トップロール61を備える。さらに、図3に示すように、フロートガラス製造装置10は、清掃部材50を備える。
【0012】
フロートバス20よりも上流側(-X側)には、ガラス材料を加熱溶融して溶融ガラスGを生成する図示しない溶解炉が配置される。溶融ガラスGは、フロートバス20に貯えられる溶融金属28上に溶解炉から供給される。フロートバス20において、溶融ガラスGは溶融金属28上を下流側(+X側)に向けて移送されつつ、図2に示すように溶融ガラスGの幅方向の両側に配置されるトップロール61により張力が印加され、所望の幅及び厚さに調整される。これにより、所望の幅及び厚さに調整された帯板状のガラスリボンGRが成形される。図1に示すように、ガラスリボンGRは、フロートバス20の下流側に配置されるリフトアウトロール41によりフロートバス20から引き上げられ、搬送ロール42により図示しない徐冷炉に搬送されて徐冷される。その後、徐冷炉において徐冷されたガラスリボンGRは、洗浄された後、図示しない切断装置で所定の寸法に切断され、所定の大きさの板ガラスが得られる。
【0013】
フロートバス20の上流側(-X側)には、溶融金属28及びルーフ30によって入口部16aが構成される。図示しない溶解炉から供給通路12を介して下流側(+X側)に搬送された溶融ガラスGは、供給通路12の下流端に設けられたリップ13を介して溶融金属28上に供給され、入口部16aを介して溶融金属28上を下流側に移送される。リップ13よりも上流側の供給通路12には溶融ガラスGの流れを調節するツイール14が配置されている。なお、溶融金属28上に供給される溶融ガラスGの温度は、溶融ガラスGの軟化点以上の温度である。例えば溶融ガラスGがソーダライムガラスである場合、溶融ガラスGの軟化点は750℃程度である。
【0014】
フロートバス20の下流側(+X側)には、フロートバス20及びルーフ30によって出口部16bが構成される。上述のようにトップロール61によって所定の幅及び厚さに成形されたガラスリボンGRは、出口部16bを介して、リフトアウトロール41によりフロートバス20から引き上げられる。
【0015】
フロートバス20は、溶融金属28を貯える。本実施形態において、溶融金属28は溶融錫である。図1及び図2に示すように、フロートバス20は、長辺が移送方向(X軸方向)に延びる略直方体状の容器である。フロートバス20は、上側(+Z側)に開口する。図1に示すように、フロートバス20は、底壁部20aと、側壁部20bと、を有する。底壁部20aは、鉛直方向(Z軸方向)と直交する方向に広がる。鉛直方向から見て、底壁部20aは、長辺が移送方向に延びる略長方形状である。底壁部20aは、フロートバス20の底部である。
【0016】
側壁部20bは、底壁部20aの周縁から上側(+Z側)、すなわち鉛直方向上側に延びる。図2に示すように、鉛直方向(Z軸方向)から見て、側壁部20bは、略四角枠状である。側壁部20bは、上流壁部20eと、下流壁部20fと、第1壁部20gと、第2壁部20hと、開口部25と、を有する。図1に示すように、上流壁部20eは、底壁部20aの上流側(-X側)の縁部から上側に延びる板状である。移送方向(X軸方向)から見て、上流壁部20eは、略長方形状である。上流壁部20eは、リップ13よりも上流側に位置する。下流壁部20fは、底壁部20aの下流側(+X側)の縁部から上側に延びる。移送方向から見て、下流壁部20fは、略長方形状である。
【0017】
図3に示すように、第1壁部20gは、底壁部20aの幅方向の一方側(+Y側)の縁部から上側(+Z側)に延びる。第2壁部20hは、底壁部20aの幅方向の他方側(-Y側)の縁部から上側に延びる。幅方向(Y軸方向)から見て、第1壁部20g及び第2壁部20hは、略長方形状である。開口部25は、第1壁部20g及び第2壁部20hのそれぞれと、ルーフ30との間に設けられる開口である。開口部25は、移送方向(X軸方向)に沿って延びる。開口部25は、フロートバス20及びルーフ30それぞれの内部の空間とフロートガラス製造装置10の外部の空間とを繋ぐ。
【0018】
図1に示すように、フロートバス20は、ケース21と、複数の煉瓦部材22と、を有する。図1及び図3に示すように、ケース21は、長辺が移送方向(X軸方向)に延びる略直方体状の容器である。ケース21は、上側(+Z側)に開口する。本実施形態において、ケース21は、金属製である。ケース21を構成する材料は特に限定されず、鉄及びステンレス鋼等の金属材料を使用できる。図1に示すように、ケース21は、ケース底壁部21aと、ケース側壁部21bと、を有する。
【0019】
ケース底壁部21aは、鉛直方向(Z軸方向)と直交する方向に広がる板状である。鉛直方向から見て、ケース底壁部21aは、長辺が移送方向に延びる略長方形状である。ケース側壁部21bは、ケース底壁部21aの周縁から上側(+Z側)に延びる。鉛直方向から見て、ケース側壁部21bは、略四角枠状である。
【0020】
複数の煉瓦部材22は、ケース21の内部に配置される。本実施形態において、各煉瓦部材22は、略直方体状である。各煉瓦部材22は、煉瓦製である。各煉瓦部材22を構成する材料は、溶融金属28である溶融錫に対して反応しづらい材料、且つ、高温耐湿性を有する材料が望ましく、例えば、アルミナ、シリマナイト(珪線石)、粘土質等の材料を使用できる。複数の煉瓦部材22は、複数の底壁煉瓦22aと、複数の側壁煉瓦22bと、を含む。
【0021】
図1及び図3に示すように、複数の底壁煉瓦22aは、ケース底壁部21a上に配置される。各底壁煉瓦22aは、移送方向(X軸方向)及び幅方向(Y軸方向)に並んで配置される。移送方向及び幅方向に隣り合って配置される底壁煉瓦22aは互いに接触している。各底壁煉瓦22aの上側(+Z側)を向く面は、底壁部20aの上側、すなわち鉛直方向上側を向く面である底面20cを構成する。よって、本実施形態において、底壁部20aのうち底面20cを有する部分は煉瓦製である。
【0022】
複数の側壁煉瓦22bは、ケース底壁部21a上にケース側壁部21bの内側面に沿って並んで配置される。移送方向(X軸方向)及び幅方向(Y軸方向)に隣り合って配置される側壁煉瓦22bは互いに接触している。各側壁煉瓦22bの鉛直方向(Z軸方向)の寸法は、各底壁煉瓦22aの鉛直方向の寸法よりも大きい。
【0023】
図1及び図3に示すように、ルーフ30は、長辺が移送方向(X軸方向)に延びる略直方体状の箱状である。ルーフ30は、下側(-Z側)に開口する。ルーフ30は、フロートバス20の上側(+Z側)に配置される。これにより、フロートバス20の上方空間はルーフ30によって囲まれる。ルーフ30の内部には、水素を12%以下程度含む窒素ガス雰囲気等の還元性雰囲気が充填されている。これにより、溶融金属28の上方空間は、外部雰囲気から極力遮断される。ルーフ30は、フロートバス20と鉛直方向(Z軸方向)に間隔をあけて配置される。ルーフ30の内部には、図示しない複数の加熱ヒータが設置される。複数の加熱ヒータは、ルーフ30の内部の温度を調節する。なお、加熱ヒータは、設けられなくてもよい。図1に示すように、ルーフ30は、天壁部31と、上流突出壁32と、下流突出壁33と、を有する。図3に示すように、ルーフ30は、第1突出壁34aと、第2突出壁34bと、を有する。
【0024】
図1に示すように、天壁部31は、鉛直方向(Z軸方向)と直交する方向に広がる板状である。図示は省略するが、鉛直方向に見て、天壁部31は、長辺が移送方向(X軸方向)に延びる略長方形状である。鉛直方向に見て、天壁部31は、底壁部20aと重なる。天壁部31の上流側(-X側)の端部は、フロートバス20の上流側の端部よりも下流側(+X側)に位置する。上流突出壁32は、天壁部31の上流側の縁部から下側(-Z側)に突出する板状である。移送方向から見て、上流突出壁32は、略長方形状である。上流突出壁32は、上流壁部20eよりも下流側に配置される。上流突出壁32は、溶融金属28と鉛直方向に間隔をあけて配置される。これにより、入口部16aは、上流突出壁32と溶融金属28の表面との間に設けられる。
【0025】
下流突出壁33は、天壁部31の下流側(+X側)の縁部から下側(-Z側)に突出する板状である。移送方向(X軸方向)から見て、下流突出壁33は、略長方形状である。下流突出壁33は、フロートバス20の下流壁部20fと鉛直方向(Z軸方向)に間隔をあけて対向する。これにより、出口部16bは、下流突出壁33と下流壁部20fとの間に設けられる。
【0026】
図3に示すように、第1突出壁34aは、天壁部31の幅方向の一方側(+Y側)の縁部から下側(-Z側)に突出する板状である。第2突出壁34bは、天壁部31の幅方向の他方側(-Y側)の縁部から下側に突出する板状である。幅方向(Y軸方向)から見て、第1突出壁34a及び第2突出壁34bは、略長方形状である。第1突出壁34a及び第2突出壁34bのそれぞれは、フロートバス20の第1壁部20g及び第2壁部20hのそれぞれと鉛直方向(Z軸方向)に間隔をあけて配置される。これにより、側壁部20bに開口部25が設けられる。
【0027】
なお、フロートバス20及びルーフ30それぞれの内部の空間とフロートガラス製造装置10の外部の空間とを繋ぐならば、開口部25の構成等は本実施形態に限定されない。例えば、第1突出壁34a及び第2突出壁34bのそれぞれが、フロートバス20の第1壁部20g及び第2壁部20hのそれぞれと鉛直方向(Z軸方向)に接触する等の場合、開口部25は、第1壁部20g及び第2壁部20hを幅方向(Y軸方向)に貫通する孔であってもよいし、第1壁部20g又は第2壁部20hの一方を幅方向に貫通する孔であってもよい。この場合、複数の開口部25が、移送方向(X軸方向)に沿って設けられてもよい。
【0028】
清掃部材50は、フロートバス20の底面20cを清掃する部材である。図4に示すように、清掃部材50は、軸部51と、接続部52と、接触部53と、を有する。軸部51は、直線状に延びる棒状である。本実施形態において、軸部51は、円柱状の棒状である。軸部51は、角柱状等の他の形状の棒状であってもよい。本実施形態において、軸部51は、金属製である。軸部51を構成する材料は、高い耐熱性能を有する材料が望ましく、例えば、鉄及びステンレス鋼等の材料を使用できる。図3に示すように、軸部51の直径は、開口部25の鉛直方向(Z軸方向)の寸法よりも小さい。これにより、軸部51を開口部25に通せる。軸部51は、開口部25の内部を幅方向(Y軸方向)及び移送方向(X軸方向)に移動可能である。なお、清掃部材50は、フロートバス20に対して移動可能にフロートバス20に取り付けられてもよいし、フロートバス20と着脱可能であってもよい。
【0029】
図4に示すように、接続部52は、軸部51と接触部53とを接続する。接続部52は、軸部51の先端51aと接続される。本実施形態において、接続部52は、略直方体状である。本実施形態において、接続部52は、金属製である。接続部52を構成する材料は、高い耐熱性能を有する材料が望ましく、例えば、鉄及びステンレス鋼等の材料を使用できる。
【0030】
接触部53は、清掃部材50のうち底面20cを清掃する部分である。接触部53は、接続部52と接続される。これにより、接触部53は、接続部52を介して、軸部51の先端51aに設けられる。本実施形態において、接続部52は、略直方体状である。本実施形態において、接触部53は、炭素繊維を含む材料によって構成される。接触部53は、例えば、炭素繊維を含む樹脂、セラミックス及び金属、カーボン押出材、カーボンCIP材等によって構成できる。これにより、接触部53が金属製である場合と比較して、接触部53の耐熱性能を高められるとともに、接触部53の硬度を煉瓦部材22の硬度よりも小さくできる。
【0031】
図3に示すように、軸部51を開口部25に通すと、接触部53はフロートバス20の底面20cと接触可能である。また、軸部51を開口部25に通した状態で、軸部51を移送方向(X軸方向)及び幅方向(Y軸方向)に移動させると、底面20cに接触部53が接触した状態で、接触部53を底面20cに沿って移動できる。これにより、接触部53によって、底面20cに付着した後述する析出物Pを除去できる。つまり、清掃部材50によって、底面20cを清掃できる。また、本実施形態において、接触部53は、底面20cのうち鉛直方向(Z軸方向)から見て溶融ガラスG又はガラスリボンGRと重なる部分と接触可能である。これにより、清掃部材50は、底面20cのうち鉛直方向から見て溶融ガラスG又はガラスリボンGRと重なる部分を清掃できる。
【0032】
次に、本実施形態のフロートガラス製造装置10によってガラスリボンGRを成形するフロートガラス製造方法Mgについて説明する。図5に示すように、本実施形態のフロートガラス製造方法Mgは、溶融金属28上に供給された溶融ガラスGを移送しつつガラスリボンGRに成形する成形工程S01と、板ガラスの検査を行う検査工程S02と、清掃部材50の接触部53によってフロートバス20の底面20cを清掃する第1清掃工程S04と、底面20cから除去された析出物Pを溶融金属28から回収する回収工程S05と、を含む。以下の説明において、「作業者等」とは、各工程の作業を行う作業者及び装置等を含む。各工程の作業は、作業者のみによって行われてもよいし、装置等のみによって行われてもよいし、作業者と装置等とによって行われてもよい。
【0033】
成形工程S01は、溶融金属28上に供給された溶融ガラスGを移送しつつガラスリボンGRに成形する工程である。成形工程S01では、作業者等は、図1に示すように溶融ガラスGをフロートバス20に貯えられた溶融金属28上に供給する。次に、作業者等は、図2に示すように、溶融金属28上の溶融ガラスGを下流側(+X側)に向けて移送しつつ、トップロール61によって、溶融ガラスGを所望の幅及び厚さに調整して、所望の幅及び厚さに調整された帯板状のガラスリボンGRを成形する。その後、上述のように、ガラスリボンGRはフロートバス20から引き上げられ、図示しない徐冷炉において冷却されたガラスリボンGRは、図示しない切断装置で所定の寸法に切断され、所定の大きさの板ガラスが得られる。
【0034】
検査工程S02は、成形工程S01において得られた板ガラスの欠陥の有無及び欠陥の個数を検査する工程である。作業者等は、全ての板ガラスに対して係る検査を行ってもよいし、例えば1日毎に1枚の板ガラスについて検査する等のように所定期間毎に所定枚数の板ガラスに対して係る検査を行ってもよい。板ガラスの欠陥は、例えば、溶融金属28によって高温下に晒される煉瓦部材22から溶け出して析出した煉瓦由来の析出物Pが溶融ガラスG及びガラスリボンGRに付着することによって発生する。析出物Pは、煉瓦が溶融及び変質したアルカリ性を有する物質である。析出物Pの大きさは、例えば、数十μm程度である。析出物Pは、まず、図3に示すように煉瓦部材22の表面に付着するが、煉瓦部材22から剥がれると、析出物Pの比重は溶融金属28である溶融錫の比重よりも小さいため、溶融金属28の内部を上側(+Z側)に向けて浮上する。これにより、溶融金属28上を移送される溶融ガラスG及びガラスリボンGRに析出物Pが付着するとガラスリボンGRの表面に窪み及び突起等の欠陥が発生する。検査工程S02において、欠陥の大きさ又は個数が所定の大きさ又は個数を上回る板ガラスは不良となる。したがって、板ガラスの歩留まりを高めるためには、成形工程S01において、係る析出物Pが溶融ガラスG及びガラスリボンGRに付着することを抑制する必要がある。
【0035】
図5に示すように、本実施形態のフロートガラス製造方法Mgでは、板ガラスを検査した結果、板ガラスの所定面積当たりの欠陥の個数Ndがあらかじめ定められた目標欠陥個数Naよりも少ない場合、ガラスリボンGRの成形を継続し(S03)、板ガラスの欠陥の個数Ndが目標欠陥個数Naよりも多い場合、第1清掃工程S04を行う(S03)。なお、第1清掃工程S04では、製品となるガラスリボンGRの成形を行わない。
【0036】
第1清掃工程S04は、清掃部材50の接触部53によってフロートバス20の底面20cを清掃する工程である。図3に示すように、第1清掃工程S04では、溶融金属28に供給された溶融ガラスG及びガラスリボンGRを移送しつつ、接触部53によって底面20cを清掃する。作業者等は、底面20cに清掃部材50の接触部53が接触した状態で、開口部25に通した軸部51を移送方向(X軸方向)及び幅方向(Y軸方向)に移動させる。これにより、接触部53を底面20cに接触させつつ底面20cに沿って移動できるため、接触部53によって、底面20cに付着している析出物Pを底面20cから除去できる。つまり、清掃部材50によって、底面20cを清掃できる。
【0037】
底面20cから除去された析出物Pは、溶融金属28の内部を上側(+Z側)に向けて浮上する。底面20cから除去された析出物Pの一部は、溶融ガラスG及びガラスリボンGRに付着して、ガラスリボンGRと共に溶融金属28から引き上げられ、溶融金属28から除去される。底面20cから除去された析出物Pの他の一部は、溶融金属28の表面を浮遊する。底面20cの清掃が終了すると、第1清掃工程S04は終了する。
【0038】
なお、第1清掃工程S04で清掃する煉瓦部材22の面は底面20cのみに限定されず、例えば、底面20cに加えて側壁煉瓦22bの内側面を清掃してもよい。また、清掃部材50による底面20cの清掃は、作業者が手動で行ってもよいし、清掃部材50を保持し、接触部53を底面20cに摺動可能な装置によって自動で行ってもよい。第1清掃工程S04では、清掃部材50の軸部51及び接続部52が溶融金属28から与えられる熱によって変形及び溶融することを抑制するため、軸部51及び接続部52を溶融金属28の内部から取り出して冷却する冷却作業と、底面20cの清掃を交互に繰り返し行ってもよい。また、軸部51を中空状に構成し、軸部51の内部に液体、気体及び液体と気体の混合物等の冷却媒体を流し込むことによって、軸部51を冷却してもよい。
【0039】
回収工程S05は、底面20cから除去された析出物Pを溶融金属28から回収する工程である。作業者等は、第1清掃工程S04において、底面20cから除去された析出物Pのうち、ガラスリボンGRと共に溶融金属28から引き上げられず、溶融金属28の表面を浮遊する析出物Pを溶融金属28から回収する。作業者等は、溶融金属28の表面を浮遊する析出物Pを例えば柄杓状の部材を用いて掬い取ることで、係る析出物Pを回収できる。図5に示すように、回収工程S05が終了すると、成形工程S01を再開し、ガラスリボンGRの成形を行う。
【0040】
図6は、本実施形態の板ガラスの欠陥の個数の推移の一例を示す図である。より詳細には、図6は、上述の検査工程S02において検出された板ガラスの欠陥の個数Ndの推移を示すグラフである。図6の横軸は、日数である。図6の縦軸は、板ガラスの欠陥の個数Ndである。本実施形態において、板ガラスの欠陥の個数Ndは、板ガラスの1平方メートル当りの欠陥の個数である。図6に示す板ガラスの欠陥の個数Ndの推移では、0日において、上述の第1清掃工程S04及び回収工程S05を行っている。つまり、0日より前の板ガラスの欠陥の個数Ndは、上述の第1清掃工程S04及び回収工程S05を行う前の板ガラスの欠陥の個数である。また、0日以後の板ガラスの欠陥の個数Ndは、上述の第1清掃工程S04及び回収工程S05を行った後の板ガラスの欠陥の個数である。図6に示すように、板ガラスの欠陥の個数Ndは、第1清掃工程S04及び回収工程S05を行うことによって、約80%程度減少している。これは、上述のように、清掃部材50によってフロートバス20の底面20cを清掃することにより、底面20cに付着していた析出物Pを底面20cから除去でき、析出物Pを溶融金属28から回収することにより、成形工程S01において溶融ガラスG及びガラスリボンGRに付着する析出物Pが減少したことに起因する。また、第1清掃工程S04及び回収工程S05を行った後は、少なくとも90日以上の長期間において、板ガラスの欠陥の個数Ndが増加することを抑制できる。
【0041】
本実施形態によれば、フロートガラス製造装置10は、溶融金属28を貯えるフロートバス20と、棒状の軸部51及び軸部51の先端51aに設けられる接触部53を有する清掃部材50と、を備え、フロートバス20は、鉛直方向(Z軸方向)と直交する方向に広がる底壁部20aと、底壁部20aの周縁から上側(+Z側)、すなわち鉛直方向上側に延び、且つ、軸部51が通される開口部25が設けられた側壁部20bと、を有し、清掃部材50は、底壁部20aの上側を向く底面20cに接触部53が接触した状態で、底面20cに沿って移動可能である。これにより、上述のように、第1清掃工程S04において、清掃部材50の接触部53によって底面20cを擦れるため、底面20cに付着している析出物Pを底面20cから除去できる。つまり、清掃部材50によって、底面20cを清掃できる。これにより、成形工程S01において、析出物Pが底面20cから剥がれて溶融金属28上を移送される溶融ガラスG及びガラスリボンGRに付着することを抑制できる。したがって、成形工程S01において成形されるガラスリボンGRに欠陥が発生することを抑制できるため、板ガラスの歩留まりを高められる。
【0042】
本実施形態によれば、接触部53は、底面20cのうち鉛直方向(Z軸方向)から見て溶融ガラスG又はガラスリボンGRと重なる部分に接触可能である。上述のように、底面20cから剥がれた析出物Pは、溶融金属28の内部を上側(+Z側)に向けて浮上する。そのため、成形工程S01において、底面20cのうち鉛直方向から見て溶融ガラスG及びガラスリボンGRと重なる部分から剥がれた析出物Pは、溶融ガラスG及びガラスリボンGRに付着し易い。これに対して、本実施形態では、第1清掃工程S04において、底面20cのうち鉛直方向から見て溶融ガラスG又はガラスリボンGRと重なる部分を清掃部材50によって清掃できる。よって、成形工程S01において、溶融ガラスG又はガラスリボンGRに底面20cから剥がれた析出物Pが付着することをより好適に抑制できる。したがって、成形工程S01において成形されるガラスリボンGRに欠陥が発生することをより好適に抑制できるため、板ガラスの歩留まりをさらに高められる。
【0043】
本実施形態によれば、底壁部20aのうち底面20cを有する部分は煉瓦製であり、軸部51は金属製であり、接触部53は炭素繊維を含む材料によって構成される。よって、接触部53の硬度を底面20cの硬度よりも小さくできるため、接触部53によって底面20cを清掃する際に底面20cが摩耗することを抑制できる。よって、回収工程S05において、溶融金属28から回収する底面20cの摩耗紛の量が増大することを抑制できるため、回収工程S05の作業工数が増大することを抑制できる。これにより、成形工程S01を停止してから成形工程S01を再開するまでの時間が増大することを抑制できる。したがって、ガラスリボンGR及び板ガラスの生産性が低下すること抑制できる。また、成形工程S01において、溶融ガラスG及びガラスリボンGRに底面20cの摩耗紛が付着することを抑制できる。これにより、成形工程S01において成形されるガラスリボンGRに欠陥が発生することをより好適に抑制できるため、板ガラスの歩留まりをさらに高められる。
【0044】
本実施形態によれば、フロートガラス製造方法Mgは、溶融金属28上に供給された溶融ガラスGを移送しつつガラスリボンGRに成形する成形工程S01と、清掃部材50を用いて底壁部20aの上側(+Z側)、すなわち鉛直方向上側を向く底面20cを清掃する第1清掃工程S04と、を含み、清掃部材50は、開口部25に通される棒状の軸部51と、軸部51の先端51aに設けられる接触部53と、を有し、第1清掃工程S04は、底面20cに接触部53が接触した状態で、接触部53を底面20cに沿って移動させて、底面20cを清掃することを含む。よって、上述のように、第1清掃工程S04において、清掃部材50によって、底面20cを清掃できる。これにより、成形工程S01において、析出物Pが底面20cから剥がれて溶融金属28上を移送される溶融ガラスG及びガラスリボンGRに付着することを抑制できる。したがって、成形工程S01において成形されるガラスリボンGRに欠陥が発生することを抑制できるため、板ガラスの歩留まりを高められる。
【0045】
また、本実施形態では、第1清掃工程S04において底面20cから除去された析出物Pを溶融金属28から回収する。よって、上述のように、底面20cから除去されて溶融金属28の表面を浮遊する析出物Pを回収することにより、溶融金属28から析出物Pを除去できる。そのため、成形工程S01において溶融金属28上を移送される溶融ガラスG及びガラスリボンGRに析出物Pが付着することをより好適に抑制できる。したがって、成形工程S01において成形されるガラスリボンGRに欠陥が発生することをより好適に抑制できるため、板ガラスの歩留まりをさらに高められる。
【0046】
本実施形態によれば、第1清掃工程S04は、溶融金属28上に供給された溶融ガラスGを移送しつつ、接触部53によって底面20cを清掃することを含む。よって、上述のように、第1清掃工程S04において、底面20cから除去された析出物Pの一部は、溶融ガラスG及びガラスリボンGRに付着する。そのため、係る析出物PをガラスリボンGRと共に溶融金属28から引き上げることにより、係る析出物Pの一部を溶融金属28から除去できる。したがって、溶融金属28の表面を浮遊する析出物Pを低減できるため、回収工程S05において、溶融金属28から回収する析出物Pを低減できる。よって、回収工程S05の作業工数が増大することを抑制できるため、成形工程S01を停止してから成形工程S01を再開するまでの時間が増大することを抑制できる。これにより、ガラスリボンGR及び板ガラスの生産性が低下すること抑制できる。
【0047】
また、本実施形態では、第1清掃工程S04において、溶融金属28上に供給された溶融ガラスGを移送しつつ底面20cを清掃するため、第1清掃工程S04を開始する際に、溶融金属28上への溶融ガラスGの供給を停止する作業を行う必要が無い。また、第1清掃工程S04が終了した後、成形工程S01を再開する際に、溶融金属28上への溶融ガラスGの供給を再開する作業を行う必要が無い。これらにより、成形工程S01、第1清掃工程S04、及び第1清掃工程S04の終了後に再開する成形工程S01を連続的に実施できるため、成形工程S01から第1清掃工程S04を開始するまでの時間、及び第1清掃工程S04から成形工程S01を再開するまでの時間のそれぞれが増大することを抑制できる。したがって、ガラスリボンGR及び板ガラスの生産性が低下すること抑制できる。
【0048】
なお、第1清掃工程S04において成形されたガラスリボンGRには多くの欠陥が発生し易いため、係るガラスリボンGRは廃棄してもよいし、ガラス材料として溶解炉で溶融して溶融ガラスGとして再利用してもよい。また、第1清掃工程S04において成形されたガラスリボンGRの欠陥の大きさ及び個数が所定の大きさ及び個数よりも良好な場合は、係るガラスリボンGRから成形された板ガラスを製品としてもよい。
【0049】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態のフロートガラス製造装置110を示す断面図である。以下の説明において、上述の第1実施形態と同一態様の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施形態のフロートガラス製造装置110は、フロートバス20と、溶融金属28と、ルーフ30と、リフトアウトロール41と、搬送ロール42と、加振装置150と、を備える。
【0050】
加振装置150は、フロートバス20に振動を加える装置である。本実施形態において、フロートガラス製造装置110は、複数の加振装置150を備える。各加振装置150は、フロートバス20の底壁部20aの下側(-Z側)を向く面に取り付けられる。これにより、加振装置150は、フロートバス20のうち少なくとも底壁部20aに振動を加える。加振装置150は、フロートバス20の側壁部20bに取り付けられてもよい。本実施形態において、各加振装置150は、移送方向(X軸方向)に沿って間隔をあけて配置される。これにより、底壁部20aに加わる振動のムラを低減できるため、底壁部20aの全体に亘って底壁部20aに付着した析出物Pを除去できる。なお、各加振装置150は、移送方向及び幅方向(Y軸方向)に沿って間隔をあけて配置されてもよい。この場合、底壁部20aに加わる振動のムラをより好適に低減できる。本実施形態のフロートガラス製造装置110のその他の構成等は、上述の第1実施形態のフロートガラス製造装置10のその他の構成等と同一である。
【0051】
次に、本実施形態のフロートガラス製造装置110によってガラスリボンGRを成形するフロートガラス製造方法Mgについて説明する。図8に示すように、本実施形態のフロートガラス製造方法Mgは、成形工程S01と、検査工程S02と、第1清掃工程S04と、加振装置150によって底壁部20aに振動を加える第2清掃工程S041と、回収工程S05と、を含む。本実施形態の成形工程S01、検査工程S02、第1清掃工程S04、及び回収工程S05は、上述の第1実施形態の成形工程S01、検査工程S02、第1清掃工程S04、及び回収工程S05と同一である。
【0052】
第2清掃工程S041は、加振装置150によって底壁部20aに振動を加えて、底面20cを清掃する工程である。上述のように、底壁部20aに振動が加わると、底面20cに付着している析出物Pを底面20cから除去できる。これにより、加振装置150によって、底面20cを清掃できる。上述のように、第1清掃工程S04では、直方体状の接触部53によって底面20cを擦って、底面20cを清掃する。そのため、第1清掃工程S04では、底面20cの細かい穴の内部に付着している析出物Pを除去しづらい。これに対して、第2清掃工程S041では、底壁部20aに加える振動によって析出物Pを除去するため、底面20cの細かい穴の内部に付着している析出物Pを容易に除去できる。なお、第2清掃工程S041では、製品となるガラスリボンGRの成形を行わない。
【0053】
第2清掃工程S041では、上述の第1清掃工程S04と同様に、溶融金属28に供給された溶融ガラスG及びガラスリボンGRを移送しつつ、加振装置150によって底面20cを清掃する。よって、底面20cから除去された析出物Pの一部は、溶融ガラスG及びガラスリボンGRに付着して、ガラスリボンGRと共に溶融金属28から引き上げられ、溶融金属28から除去される。底面20cから除去された析出物Pの他の一部は、溶融金属28の表面を浮遊する。底面20cの清掃が終了すると、第2清掃工程S041は終了する。
【0054】
本実施形態の回収工程S05では、第1清掃工程S04及び第2清掃工程S041において、底面20cから除去された析出物Pのうち、ガラスリボンGRと共に溶融金属28から引き上げられず、溶融金属28の表面を浮遊する析出物Pを溶融金属28から回収する。図8に示すように、回収工程S05が終了すると、成形工程S01を再開し、ガラスリボンGRの成形を行う。
【0055】
本実施形態によれば、フロートガラス製造装置110は、フロートバス20のうち少なくとも底壁部20aに振動を加える加振装置150を備える。よって、上述のように、底壁部20aに振動を加えることによって、底面20cに付着した析出物を除去できる。また、上述のように、第2清掃工程S041では、底面20cの細かい穴の内部に付着した析出物Pを除去できる。これにより、成形工程S01において、析出物Pが底面20cから剥がれて溶融金属28上を移送される溶融ガラスG及びガラスリボンGRに付着することをより好適に抑制できる。したがって、成形工程S01において成形されるガラスリボンGRに欠陥が発生することをより好適に抑制できるため、板ガラスの歩留まりをより高められる。
【0056】
本実施形態によれば、フロートガラス製造方法Mgは、フロートバス20に振動を加えることが可能な加振装置150によって、底壁部20aに振動を加えて、底面20cを清掃する第2清掃工程S041を含む。そのため、第1清掃工程S04及び第2清掃工程S041の両工程において、底面20cを清掃できる。また、上述のように、第2清掃工程S041では、底面20cの細かい穴の内部に付着した析出物Pを容易に除去できる。したがって、溶融金属28上を移送される溶融ガラスG及びガラスリボンGRに析出物Pが付着することをより好適に抑制できるため、板ガラスの歩留まりをより高められる。
【0057】
また、本実施形態では、第2清掃工程S041において、溶融金属28上に供給された溶融ガラスGを移送しつつ、底面20cを清掃する。よって、上述の第1清掃工程S04と同様に、第2清掃工程S041において底面20cから除去された析出物Pの一部をガラスリボンGRと共に溶融金属28から引き上げて、溶融金属28から除去できる。したがって、回収工程S05において、溶融金属28から回収する析出物Pを低減できるため、回収工程S05の作業工数が増大することを抑制できる。これにより、ガラスリボンGR及び板ガラスの生産性が低下すること抑制できる。
【0058】
なお、本実施形態において、第2清掃工程S041は、第1清掃工程S04の後に行われるが、第2清掃工程S041は、第1清掃工程S04よりも前に行われてもよいし、第1清掃工程S04と同時に行われてもよい。第2清掃工程S041を第1清掃工程S04と同時に行う場合、成形工程S01を停止してから成形工程S01を再開するまでの時間が増大することを抑制できる。これにより、ガラスリボンGR及び板ガラスの生産性が低下することを好適に抑制できる。
【0059】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換及びその他の変更できる。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0060】
清掃部材の軸部および接続部を構成する材料は本実施形態に限定されず、例えば、セラミックであってもよいし、接触部と同様に炭素繊維を含む材料であってもよい。また、軸部および接続部を構成する材料が、接触部を構成する材料と同じ材料である場合、清掃部材を一体的に成形して構成してもよい。また、接触部の形状は、円板状等の他の形状であってもよい。
【0061】
フロートバスの構成等は本実施形態に限定されず、例えばフロートバスは、鉛直方向から見て、円形状及び楕円状等の他の形状であってもよい。
【0062】
また、第1清掃工程及び第2清掃工程は、溶融金属上への溶融ガラスGの供給を停止して行ってもよい。これにより、第1清掃工程及び第2清掃工程において、多くの欠陥が発生したガラスリボンが成形されることを抑制できるため、廃棄されるガラスリボンの量を低減できる。
【符号の説明】
【0063】
10,110…フロートガラス製造装置、20…フロートバス、20a…底壁部、20b…側壁部、20c…底面、25…開口部、28…溶融金属、50…清掃部材、51…軸部、53…接触部、150…加振装置、Mg…フロートガラス製造方法、G…溶融ガラス、GR…ガラスリボン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8