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特開2024-178633ワークセット及びウェーハの拡張方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178633
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】ワークセット及びウェーハの拡張方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/78 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096917
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻本 浩平
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA18
5F063AA31
5F063AA36
5F063CB02
5F063CB05
5F063CB07
5F063CB08
5F063CB29
5F063DD68
5F063DD72
5F063DD75
5F063DF12
5F063DG21
5F063EE08
5F063EE73
(57)【要約】
【課題】テープの直交する2方向の伸び易さの違いによるウェーハの分割不良やデバイス同士の間隔のばらつきの発生を簡単且つ確実に防ぐこと。
【解決手段】ワークセットWSにおいて、伸び易さが直交する2方向において異なる第1テープT1と第2テープT2を、伸び易い方向(MD方向)が互いに直交するようにウェーハWとリングフレームFに貼着する。また、ウェーハWの拡張方法は、第1テープT1をウェーハWの裏面とリングフレームFの下面に貼着する第1固定ステップと、第2テープT2を第1テープT1に重ねてウェーハWの裏面とリングフレームFの下面に貼着し、または第2テープT2をウェーハWの表面とリングフレームFの上面に貼着する第2固定ステップと、第1テープT1と第2テープT2を拡張させる拡張ステップとを経てデバイスD同士の間隔を広げることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子状の分割予定ラインによって区画された表面の複数の領域にデバイスがそれぞれ形成されたウェーハをテープによってリングフレームに保持させて構成されるワークセットであって、
前記テープを、伸び易さが直交する2方向において異なる第1テープと第2テープで構成するとともに、これらの第1テープと第2テープを、伸び易い方向が互いに直交するように前記ウェーハと前記リングフレームに貼着したことを特徴とするワークセット。
【請求項2】
前記第1テープと前記第2テープを重ねて前記ウェーハの裏面と前記リングフレームの下面に貼着したことを特徴とする請求項1記載のワークセット。
【請求項3】
前記第1テープを前記ウェーハの裏面と前記リングフレームの下面に貼着し、前記第2テープを前記ウェーハの表面と前記リングフレームの上面に貼着したことを特徴とする請求項1記載のワークセット。
【請求項4】
前記第1テープと前記第2テープを直交する2方向が前記分割予定ラインに略沿うように配置したことを特徴とする請求項1記載のワークセット。
【請求項5】
前記第1テープと前記第2テープを直交する2方向が前記分割予定ラインに対して斜めになるように配置したことを特徴とする請求項1記載のワークセット。
【請求項6】
請求項1~5の何れかに記載のワークセットの前記第1テープと前記第2テープを拡張させ、前記ウェーハの分割予定ラインに沿って形成された分割部を起点として該ウェーハを複数に分割して前記デバイス同士の間隔を広げるウェーハの拡張方法であって、
前記第1テープを前記ウェーハの裏面と前記リングフレームの下面に貼着する第1固定ステップと、
前記第2テープを前記第1テープに重ねて前記ウェーハの裏面と前記リングフレームの下面に貼着し、または前記第2テープを前記ウェーハの表面と前記リングフレームの上面に貼着する第2固定ステップと、
前記第1テープと前記第2テープを拡張させる拡張ステップと、
を経て前記デバイス同士の間隔を広げることを特徴とするウェーハの拡張方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープによってウェーハをリングフレームに保持させて構成されるワークセットと、該ワークセットのウェーハを格子状の分割部を起点として拡張させるウェーハの拡張方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイスの製造工程においては、円板状の半導体ウェーハ(以下、単に「ウェーハ」と称する)の表面が格子状に形成されたストリートと称される分割予定ラインによって複数のデバイス領域に区画され、各デバイス領域にICやLSIなどのデバイスがそれぞれ形成される。そして、このように多数のデバイスが形成されたウェーハを分割予定ラインに沿って分割することによって、複数の半導体チップが製造される。
【0003】
ここで、ウェーハに分割予定ラインに沿う分割部を形成する方法としては、ウェーハを切削ブレードによって分割予定ラインに沿って切削して切削溝(カーフ)を形成する方法(ブレードダイシング)の他、真空下でドライエッチングしてウェーハに分割予定ラインに沿う溝を形成するプラズマダイシング、ウェーハ表面にレーザー光を照射してウェーハの内部に改質層を形成する方法などが知られている。
【0004】
上記何れかの方法によってウェーハに分割予定ラインに沿う分割部が形成されると、該ウェーハの裏面にエキスパンドテープ(以下、単に「テープ」と称する)を貼着し、このテープを拡張させることによって、ウェーハを格子状の分割部を起点として分割するようにしている。
【0005】
ところで、ウェーハに貼着されるテープは、通常はロール状に巻回された長尺の帯状テープを引き出して所定の長さに切断したものが使用されているが、このテープは、ロールからの引き出し方向(Machine Direction)(以下、「MD方向」と称する)の方が、このMD方向と直交する幅方向(Transverse Direction)(以下、「TD方向」と称する)よりも伸び易い性質を有している。そして、テープは、MD方向とTD方向をウェーハの分割予定ラインの方向に合わせてウェーハに貼着されている。
【0006】
したがって、ウェーハの分割に際して、テープを同心円状に同じ力で拡張させると、テープの伸び量が方向によって異なるためにウェーハが全ての分割部において分割されず、分割不良や、分割されたデバイス同士の間隔にばらつきが生じるという問題が発生する。
【0007】
そこで、特許文献1には、上記問題を解決することができるウェーハの分割方法が提案されている。この方法は、例えば、ウェーハの外周部に形成される分割部の未加工領域の大きさ(長さ)をMD方向とTD方向によって変えることによって、テープの伸び量の違いによるウェーハの分割不良やデバイス同士の間隔のばらつきの発生を防ぐようにする方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-125598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1において提案された方法によって、例えば、ウェーハの外周部に形成される分割部の未加工領域の大きさ(長さ)をMD方向とTD方向によって変えることは容易ではなく、その調整作業が大変である他、テープの伸び量の違いによるウェーハの分割不良などの発生を確実に防ぐことは困難であるという問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、テープの直交する2方向の伸び易さの違いによるウェーハの分割不良やデバイス同士の間隔のばらつきの発生を簡単且つ確実に防ぐことができるワークセット及びウェーハの拡張方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明は、格子状の分割予定ラインによって区画された表面の複数の領域にデバイスがそれぞれ形成されたウェーハをテープによってリングフレームに保持させて構成されるワークセットであって、前記テープを、伸び易さが直交する2方向において異なる第1テープと第2テープで構成するとともに、これらの第1テープと第2テープを、伸び易い方向が互いに直交するように前記ウェーハと前記リングフレームに貼着したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記ワークセットの前記第1テープと前記第2テープを拡張させ、前記ウェーハの分割予定ラインに沿って形成された分割部を起点として該ウェーハを複数に分割して前記デバイス同士の間隔を広げるウェーハの拡張方法であって、前記第1テープを前記ウェーハの裏面と前記リングフレームの下面に貼着する第1固定ステップと、前記第2テープを前記第1テープに重ねて前記ウェーハの裏面と前記リングフレームの下面に貼着し、または前記第2テープを前記ウェーハの表面と前記リングフレームの上面に貼着する第2固定ステップと、前記第1テープと前記第2テープを拡張させる拡張ステップと、を経て前記デバイス同士の間隔を広げることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、伸び易さが直交する2方向において異なる第1テープと第2テープを、伸び易い方向が互いに直交するようにウェーハとリングフレームに貼着するため、伸び易さと伸びにくさが第1テープと第2テープとの間で相殺され、テープの伸び易さの違いによるウェーハの分割不良やデバイス同士の間隔のばらつきの発生を簡単且つ確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係るワークセットの斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るワークセットの分解斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るワークセットの平面図である。
図4】(a)は図3のA-A線断面図、(b)は図3のB-B線断面図である。
図5】ロール状に巻かれた帯状テープを示す斜視図である。
図6】本発明の第1実施形態に係るワークセットの第1固定ステップを示す分解斜視図である。
図7】本発明の第1実施形態に係るワークセットの第1固定ステップによって第1テープが貼着された状態を示す斜視図である。
図8】第1固定ステップによって第1テープが貼着された本発明の第1実施形態に係るワークセットの平面図である。
図9】(a)は図8のC-C線断面図、(b)は図8のD-D断面図である。
図10】(a)~(c)は本発明の第1実施形態に係るワークセットにおけるウェーハの拡張工程をその工程順に示す縦断面図である。
図11】本発明の第2実施形態に係るワークセットの斜視図である。
図12】本発明の第2実施形態に係るワークセットの分解斜視図である。
図13】本発明の第2実施形態に係るワークセットの平面図である。
図14】(a)は図13のE-E線断面図、(b)は図13のF-F断面図である。
図15】本発明の別形態を示すワークセットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係るワークセットの構成を図1図4に基づいて以下に説明する。
【0017】
[ワークセットの構成]
本実施形態に係るワークセットWSは、図1に示すように、リング状のリングフレームFの円形の開口部を塞いでウェーハWの裏面とリングフレームFの下面に貼着された熱収縮性を有する2枚の第1テープT1と第2テープT2によってウェーハWとリングフレームFとを一体化してユニットとして構成されている。
【0018】
ここで、ウェーハWは、図1図3に示すように、例えば、単結晶のシリコン(Si)で構成された薄い円板状の部材であって、その表面(図1図3においては、上面)が互いに直交する格子状の分割予定ライン(ストリート)L1,L2によって複数の矩形領域に区画されており、各矩形領域には、ICやLSIなどのデバイスDがそれぞれ形成されている。そして、このように表面に多数のデバイスDが形成されたウェーハWは、前述のように、その裏面(下面)とリングフレームFの下面に貼着された第1テープT1と第2テープT2を介してリングフレームFに支持されている。なお、ウェーハWの材質としては、シリコン(Si)以外に、シリコンカーバイド(SiC)、ガラス、セラミックス、サファイアなどが用いられる。
【0019】
ところで、ワークセットWSに組み込まれるウェーハWには、分割予定ラインL1,L2に沿う不図示の分割部が格子状に形成され、その裏面(下面)が不図示の研削装置によって研削されて薄化されている。ここで、ウェーハWに分割予定ラインL1,L2に沿う分割部を形成する方法としては、ウェーハWを切削ブレードによって分割予定ラインL1,L2に沿って切削して切削溝(カーフ)を形成する方法(ブレードダイシング)の他、真空下でドライエッチングしてウェーハWに分割予定ラインL1,L2に沿う溝を形成するプラズマダイシング、ウェーハWの表面にレーザー光を照射して該ウェーハWの内部に改質層を形成する方法などが用いられる。
【0020】
また、第1テープT1と第2テープT2は、伸縮性と熱収縮性とを兼備するものであれば、特に材質が限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどからなる基材層の上に糊層が積層されて2層構造として構成されたものが用いられる。そして、これらの第1テープT1と第2テープT2は、少なくともウェーハWの直径よりも大きな外径を有する円形状のものであって、ウェーハWの外周とリングフレームFの内周との間にリング状に露出したリング状部分T12は、後述のウェーハWの拡張ステップにおいて第1テープT1と第2テープT2が拡張された後に弛みが生じ易い部分である(図10(c)参照)。
【0021】
ところで、第1テープT1と第2テープT2は、図5に示すように、ロール状に巻回された長尺の帯状テープTを矢印方向に引き出して所定の長さに切断し、切断したものを円形に裁断することによって得られるが、これらの第1テープT1と第2テープT2は、引き出し方向(MD方向)の方が、このMD方向と直交する幅方向(TD方向)よりも伸び易い性質を有している。つまり、引き出し方向(MD方向)の伸び率(弾性係数)の方が、幅方向(TD方向)の伸び率(弾性係数)よりも大きい。
【0022】
而して、本実施形態に係るワークセットWSにおいては、先ず、第1テープT1がウェーハWの裏面(下面)とリングフレームFの下面に貼着され、この第1テープT1に重ねて第2テープT2が第1テープT1の下面に貼着される。ここで、第1テープT1と第2テープT2には、前述のように、互いに直交する伸び易いMD方向と伸びにくいTD方向とがあるが、本実施形態では、図2図4に示すように、伸び易いMD方向と伸びにくいTD方向が第1テープT1と第2テープT2において互いに直交するように、これらの第1テープT1と第2テープT2がウェーハWの裏面(下面)とリングフレームFの下面にそれぞれ貼着される。この場合、第1テープT1と第2テープT2は、それらの直交するMD方向とTD方向がウェーハWに形成された格子状の分割予定ラインL1,L2に略沿うように配置されてウェーハWの裏面(下面)とリングフレームFの下面にそれぞれ貼着される。
【0023】
上記のことを具体的に説明すると、図3の各矢印方向が第1テープT1についてのMD方向とTD方向、第2テープT2についてのMD方向とTD方向であって、これらのMD方向とTD方向は、第1テープT1と第2テープT2において互いに直交している。また、図4(a)の矢印方向は、第1テープT1についてはMD方向、第2テープT2についてはTD方向となり、図4(b)の矢印方向は、第1テープT1についてはTD方向、第2テープT2についてはMD方向となり、これらのMD方向とTD方向は、第1テープT1と第2テープT2において互いに直交している。したがって、ウェーハWの裏面(下面)とリングフレームFの下面に貼着された第1テープT1と第2テープT2の全体の伸び易さと伸びにくさは、直交する2方向において同一となる。
【0024】
[ウェーハの拡張方法]
次に、本発明に係るウェーハWの拡張方法について説明するが、本発明方法は、
1) 第1固定ステップ
2) 第2固定ステップ
3) 拡張ステップ
を経てワークセットWSの第1テープT1と第2テープT2を拡張させ、ウェーハWの分割予定ラインL1,L2に沿って形成された不図示の分割部を起点として該ウェーハWを複数に分割してデバイスD同士の間隔を広げる方法である。以下、各ステップについてそれぞれ説明する。
【0025】
1) 第1固定ステップ:
第1固定ステップは、図6に示すように、第1テープT1をウェーハWの裏面(下面)とリングフレームFの下面に貼着し、図7に示すように、ウェーハWを第1テープT1によってリングフレームFに支持させるステップである。この第1ステップにおいては、図6図9に示すように、第1テープT1は、直交する伸び易いMD方向と伸びにくいTD方向がウェーハWに形成された格子状の分割予定ラインL1,L2に略沿うように配置された状態で、ウェーハWの裏面(下面)とリングフレームFの下面に貼着される。
【0026】
すなわち、図8の各矢印方向が第1テープT1についてのMD方向とTD方向であり、図9(a)の矢印方向が第1テープT1のMD方向、図9(b)の矢印方向が第1テープT1のTD方向となる。
【0027】
2) 第2固定ステップ:
第2固定ステップは、第1固定ステップにおいてウェーハWの裏面(下面)とリングフレームFの下面に貼着された第1テープT1に第2テープT2を重ねて貼着するステップであって、この第2ステップによって図1図4に示すワークセットWSが構成される。このように構成されたワークセットWSにおいては、前述のように、第1テープT1と第2テープT2は、伸び易いMD方向と伸びにくいTD方向とが互いに直交するようにしてウェーハWの裏面(下面)とリングフレームFの下面にそれぞれ貼着されている。
【0028】
3) 拡張ステップ:
拡張ステップは、ワークセットWSにおいて第1テープT1と第2テープT2をウェーハWの径方向外方に放射状に拡張させることによって、ウェーハWの表面に形成された複数のデバイスD同士の間隔を広げるステップであって、図10に示す装置が用いられる。
【0029】
ここで、拡張ステップに用いられる装置を図10に基づいて説明すると、この装置には、ワークセットWSのウェーハWに対応する部分(中央部分)を保持するテーブル10と、ワークセットWSのリングフレームFを保持するフレーム保持部20と、テーブル10とフレーム保持部20とを相対的に昇降させる昇降機構30と、ウェーハWの外周とリングフレームFの内周との間の第1テープT1と第2テープT2のリング状部分T12を加熱して該リング状部分T12を熱収縮させる熱収縮手段40を主要な構成要素として備えている。
【0030】
前記テーブル10は、円板状の部材であって、その上面中央部には、ワークセットWSの第1テープT1と第2テープT2の中央部を吸引保持する吸引部11が設けられており、この吸引部11は、配管12を経て吸引源13に接続されている。そして、配管12には、電磁式の開閉バルブVが設けられている。また、テーブル10には、その外周縁に沿って細長い丸棒状の複数のローラ14が回転可能に配設されている。なお、これらのローラ14は、後述のように第1テープT1と第2テープT2を拡張した場合にこれらの第1テープT1と第2テープT2に接触して回転することによって、テーブル10の外周縁で生じる第1テープT1と第2テープT2との摩擦を緩和する機能を果たす。
【0031】
前記フレーム保持部20は、リングフレームFの下面が載置される載置プレート21と、リングフレームFの上面を押さえるカバープレート22を備えており、これらの載置プレート21とカバープレート22の中央には、テーブル10の外径よりも大きな内径を有する円孔21a,22aがそれぞれ開口している。なお、載置プレート21とカバープレート22は、ワークセットWSのリングフレームFを挟持した状態で後述の昇降機構30によって上下に昇降可能である。
【0032】
前記昇降機構30は、フレーム保持部20を昇降させるものであって、載置プレート21を昇降可能に支持する複数(図10には2つのみ図示)のシリンダ機構31によって構成されている。ここで、各シリンダ機構31は、垂直に立設されたシリンダ32と、該シリンダ32内に上下摺動可能に嵌装された不図示のピストンと、該ピストンからシリンダ32を貫通して上方へと延びるピストンロッド33とでそれぞれ構成されており、各ピストンロッド33の上端に載置プレート21が取り付けられている。なお、図示しないが、各シリンダ32内は、ピストンによって上部室と下部室とに区画されている。
【0033】
したがって、各シリンダ機構31において、シリンダ32の下部室に例えば圧縮エアを供給するとともに、上部室のエアを排出すれば、ピストンロッド33が上昇して載置プレート21も上昇し、逆に上部室に圧縮エアを供給するとともに、下部室内のエアを排出すれば、ピストンロッド33が下降して載置プレート21も下降する。
【0034】
前記熱収縮手段40は、図10(c)に示すように、テーブル10の上方に配置されており、水平なアーム41のウェーハWの中心を挟んだ両端に取り付けられた一対のヒータ42と、アーム41の中央に設けられた昇降部43と、一対のヒータ42をウェーハWの中心を軸として回転させる回転手段44を備えている。ここで、各ヒータ42は、遠赤外線ヒータなどによって構成されており、所定のピーク波形の遠赤外線をスポット照射することができる。
【0035】
而して、以上のように構成された装置によって第1テープT1と第2テープT2が以下のようにして拡張される。
【0036】
すなわち、図10(a)に示すように、ワークセットWSがフレーム保持部20によって水平に保持されてテーブル10の上面に載置される。このとき、開閉バルブVは、閉じられているため、吸引源13によるテーブル10の吸引部11の吸引はなされていない。
【0037】
上記状態から、図10(b)に示すように、昇降機構30が駆動されて各シリンダ機構31のピストンロッド33が下降すると、ワークセットWSのリングフレームFを保持するフレーム保持部20がピストンロッド33と共に下降する。すると、ワークセットWSのリングフレームFがテーブル10よりも下方に位置するため、このリングフレームFによって第1テープT1と第2テープT2が放射状に拡張される。このとき、開閉バルブVは、閉じられたままであるため、吸引源13によるテーブル10の吸引部11の吸引(ワークセットWSの吸引保持)が行われず、ウェーハWに形成された格子状の分割部を起点として該ウェーハWが分割されるとともに、複数のデバイスD同士の間隔が広げられる。
【0038】
具体的には、第1テープT1と第2テープT2が拡張される前の図10(a)に示すウェーハWのデバイスD同士の間隔b1に対して、第1テープT1と第2テープT2が拡張された後の図10(b)に示すウェーハWのデバイスD同士の間隔b2が大きくなる(b2>b1)。なお、第1テープT1と第2テープT2の拡張時には、これらの第1テープT1と第2テープT2がテーブル10の吸引部11によって吸引されていないため、第1テープT1と第2テープT2の拡張がスムーズになされる。また、第1テープT1と第2テープT2を拡張させる際のこれらの第1テープT1及び第2テープT2とテーブル10との摩擦が複数のローラ14の回転によって低減するため、このことによっても第1テープT1と第2テープT2の拡張がスムーズになされる。
【0039】
上述のように、第1テープT1と第2テープT2が拡張されてウェーハWのデバイスD同士の間隔がb1からb2へと広げられると、図10(c)に示すように、開閉バルブVが開けられ、吸引源13によってテーブル10の吸引部11が真空引きされ、該吸引部11に負圧が発生するため、この負圧に引かれて第1テープT1と第2テープT2がテーブル10の上面に吸引保持される。このため、ウェーハWのデバイスD同士の間隔は、広げられた幅b2に維持される。
【0040】
而して、その後、ワークセットWSは、テーブル10から取り外されて次工程へと搬送されるが、そのときのハンドリングなどのために、図10(c)に示すように、リングフレームFが昇降機構30によって第1テープT1と第2テープT2が水平になる高さ位置まで上昇する。このとき、拡張工程において拡張された第1テープT1と第2テープT2のリング状部分T12には、図示のような弛みが発生する。このように第1テープT1と第2テープT2のリング状部分T12に弛みが発生すると、前述のように、ワークセットWSをハンドリングする際などにおいてウェーハWのデバイスD同士の間隔が狭くなってしまう。このため、第1テープT1と第2テープT2のリング状部分T12に生じた弛みは、熱収縮手段40によるリング状部分T12の加熱によって除去される。
【0041】
すなわち、図10(c)に示すように、熱収縮手段40がワークセットWSの上方に位置決めされ、回転手段44によってアーム41とこれの両端に取り付けられた一対のヒータ42を、ウェーハWの中心を軸として所定の速度で回転させながら、各ヒータ42から遠赤外線を第1テープT1と第2テープT2のリング状部分T12に向けてそれぞれ照射することによって該リング状部分T12を均一に加熱する。すると、熱収縮性を有するリング状部分T12が加熱によって収縮するため、該リング状部分T12に生じていた弛みが除去される。このように第1テープT1と第2テープT2のリング状部分T12から弛みが除去されると、該リング状部分T12が弛みなく張った状態に戻るため、ワークセットWSをハンドリングした場合などにおいて、リング状部分T12の弛みのためにウェーハWのデバイスD同士の間隔が拡大された値b2に維持される。
【0042】
以上において、本実施形態では、第2固定ステップにおいて、伸び易いMD方向と伸びにくいTD方向とが第1テープT1と第2テープT2において互いに直交するように配置したため、伸び易さと伸びにくさが第1テープT1と第2テープT2との間で相殺され、ウェーハWの拡張ステップにおいて、第1テープT1と第2テープT2の伸び易さの違いによるウェーハWの分割不良やデバイスD間の間隔のばらつきの発生を簡単且つ確実に防ぐことができるという効果が得られる。
【0043】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を図11図14に基づいて以下に説明する。
【0044】
本実施形態においては、本発明方法における第1固定ステップで前記第1実施形態と同様にウェーハWの裏面(下面)とリングフレームFの下面に第1テープT1を貼着し、次の第2固定ステップで第2テープT2をウェーハWの表面(上面)とリングフレームFの上面に貼着して図11に示すワークセットWSを構成している。この場合、前記第1実施形態と同様に、第1テープT1と第2テープT2は、それらの直交するMD方向とTD方向がウェーハWに形成された格子状の分割予定ラインL1,L2に略沿うように配置されてウェーハWの裏面(下面)とリングフレームFの下面及びウェーハWの表面(上面)とリングフレームFの上面にそれぞれ貼着される。
【0045】
而して、本実施形態においても、前記第1実施形態と同様に、第1テープT1と第2テープT2は、伸び易いMD方向と伸びにくいTD方向とが直交するように配置される。すなわち、図12及び図13の各矢印方向が第1テープT1についてのMD方向とTD方向であり、第2テープT2についてのMD方向とTD方向であって、これらのMD方向とTD方向は、第1テープT1と第2テープT2において互いに直交している。また、図14(a)の矢印方向は、第1テープT1についてはMD方向、第2テープT2についてはTD方向となり、図4(b)の矢印方向は、第1テープT1についてはTD方向、第2テープT2についてはMD方向となり、これらのMD方向とTD方向は、第1テープT1と第2テープT2において互いに直交している。したがって、ウェーハWの裏面(下面)とリングフレームFの下面に貼着された第1テープT1とウェーハWの表面とリングフレームFの上面に貼着された第2テープT2の伸び易さと伸びにくさは、直交する2方向において互いに相殺され、これらの第1テープT1と第2テープT2の全体の伸び率は直交する2方向において同一となる。
【0046】
本実施の形態においても、拡張ステップは、前記第1実施形態と同様に図10に示す装置を用いて実行されるが、図11に示すワークセットWSにおいても、第1テープT1と第2テープT2は、伸び易いMD方向と伸びにくいTD方向とが直交するように配置されているため、伸び易さと伸びにくさが第1テープT1と第2テープT2との間で相殺され、ウェーハWの拡張ステップにおいて、第1テープT1と第2テープT2の伸び易さの違いによるウェーハWの分割不良やデバイスD同士の間隔のばらつきの発生を簡単且つ確実に防ぐことができるという効果が得られる。
【0047】
なお、以上の実施形態では、第1テープT1と第2テープT2を直交する2方向がウェーハWの分割予定ラインL1,L2に略沿うように配置したが、図15に示すように、第1テープT1と第2テープT2を直交する2方向がウェーハWの分割予定ラインL1,L2に対して斜めになるように配置しても、前記と同様の効果が得られる。図15は第1テープT1と第2テープT2を直交する2方向がウェーハWの分割予定ラインL1,L2に対して角度45°傾いた状態を示しているが、両者の傾き角度は、45°に限定されず任意である。
【0048】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
10:テーブル、11:吸引部、12:配管、13:吸引源、14:ローラ、
20:フレーム保持部、21:載置フレーム、21a:円孔、22:カバープレート、
22a:円孔、30:昇降機構、31:シリンダ機構、32:シリンダ、
33:ピストンロッド、40:熱収縮手段、41:アーム、42:ヒータ、
43:昇降部、4:回転手段、b1,b2:デバイスの間隔、D:デバイス、
F:フレーム、L1,L2:分割予定ライン、T:帯状テープ、T1:第1テープ、
T2:第2テープ、T12:テープのリング状部分、V:開閉バルブ、W:ウェーハ、
WS:ワークセット
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