(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178641
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】アンテナ用放射素子及びアンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 9/28 20060101AFI20241218BHJP
H01Q 21/24 20060101ALI20241218BHJP
H01Q 19/10 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H01Q9/28
H01Q21/24
H01Q19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096930
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】永田 肇
【テーマコード(参考)】
5J020
5J021
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA07
5J020BC09
5J020DA03
5J021AA01
5J021AA02
5J021AB03
5J021BA01
5J021GA01
5J021HA10
5J021JA05
(57)【要約】
【課題】ビーム幅の偏差を抑制できるアンテナ用放射素子及びアンテナ装置を提供すること。
【解決手段】アンテナ用放射素子は、アンテナ部と、反射板と、を備える。前記アンテナ部は、クロス形状となるように配置された2つのボウタイアンテナを備える。前記反射板は、軸方向に直交する断面での断面形状が正八角形である筒状部と、前記筒状部の前記軸方向における一方の端部を塞ぐ底部と、前記筒状部の前記一方とは反対の端部に設けられた開口部と、を備える。前記アンテナ部は、前記開口部の近傍の位置にある。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロス形状となるように配置された2つのボウタイアンテナを備えるアンテナ部と、
反射板と、
を備え、
前記反射板は、
軸方向に直交する断面での断面形状が正八角形である筒状部と、
前記筒状部の前記軸方向における一方の端部を塞ぐ底部と、
前記筒状部の前記一方とは反対の端部に設けられた開口部と、
を備え、
前記アンテナ部は、前記開口部の近傍の位置にある、
アンテナ用放射素子。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ用放射素子であって、
前記筒状部の中心軸は、前記2つのボウタイアンテナの交点を通り、
前記中心軸と、前記2つのボウタイアンテナの延伸方向とは直交する、
アンテナ用放射素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアンテナ用放射素子であって、
前記反射板は、
樹脂から成る本体部と、
前記本体部の表面に形成された金属めっき層と、
を備える、
アンテナ用放射素子。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のアンテナ用放射素子を備えるアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はアンテナ用放射素子及びアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にボウタイアンテナが開示されている。2つのボウタイアンテナを、クロス形状となるように配置した場合、直交偏波を有するアンテナ素子として省スペースに配置が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図11に、ボウタイアンテナ201における給電方向となる素子方向D1と、素子方向D1に垂直な垂直方向D2とを示す。ボウタイアンテナ201では、素子方向D1でのビーム幅と、垂直方向D2でのビーム幅との違い(以下ではビーム幅の偏差とする)が大きいという問題が生じる。
【0005】
本開示の1つの局面では、ビーム幅の偏差を抑制できるアンテナ用放射素子及びアンテナ装置を提供することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの局面は、クロス形状となるように配置された2つのボウタイアンテナを備えるアンテナ部と、反射板と、を備えるアンテナ用放射素子である。前記反射板は、軸方向に直交する断面での断面形状が正八角形である筒状部と、前記筒状部の前記軸方向における一方の端部を塞ぐ底部と、前記筒状部の前記一方とは反対の端部に設けられた開口部と、を備える。前記アンテナ部は、前記開口部の近傍の位置にある。
【0007】
本開示の1つの局面であるアンテナ用放射素子は、ビーム幅の偏差を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1Aは、アンテナ装置の外観を表す斜視図である。
図1Bは、アンテナ装置の内部に配列された複数のアンテナ用放射素子を表す斜視図である。
【
図2】アンテナ用放射素子の構成を表す斜視図である。
【
図3】方向Z1から見たときのアンテナ用放射素子を表す説明図である。
【
図4】アンテナ部を取り除いた状態のアンテナ用放射素子の構成を表す斜視図である。
【
図5】アンテナ部を取り除いた状態のアンテナ用放射素子の構成を表す斜視図である。
【
図6】アンテナ部を取り除いた状態のアンテナ用放射素子の構成を表す斜視図である。
【
図7】アンテナ部を取り除いた状態のアンテナ用放射素子の構成を表す斜視図である。
【
図8】筒状部を取り除いた状態のアンテナ用放射素子の構成を表す斜視図である。
【
図9】複数のアンテナ用放射素子を千鳥状に配列した状態を表す説明図である。
【
図10】反射板に対するアンテナ部の位置を表す説明図である。
【
図11】ボウタイアンテナにおける素子方向と垂直方向とを表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
1.アンテナ装置1の構成
図1A及び
図1Bに基づき、アンテナ装置1の構成を説明する。なお、
図1Bでは、アンテナ用放射素子4の一部であるアンテナ部41及び反射板98の記載を省略している。アンテナ装置1は、例えば携帯電話基地局用のアンテナ装置として用いられる。
【0010】
図1Aに示すように、アンテナ装置1は、円筒状のレドーム22と、アンテナキャップ23a、23bとを備える。レドーム22の両端は、アンテナキャップ23a、23bによって閉塞されている。
【0011】
アンテナ装置1は、取付金具21a、21bを備える。アンテナ装置1は、その長手方向が鉛直方向となるように、取付金具21a、21bでアンテナ塔等に取り付けられる。
アンテナ装置1は、同軸ケーブルアダプタ25a、25bを備える。同軸ケーブルアダプタ25a、25bは、高周波信号送受信端子として機能する。同軸ケーブルアダプタ25a、25bは、アンテナキャップ23bから外部へ突出している。
図1Bに示すように、アンテナ装置1は、複数のアンテナ用放射素子4を備える。複数のアンテナ用放射素子4は、レドーム22の内部に収容されている。
【0012】
アンテナ装置1は、レドーム22の内部に、底板31を備える。複数のアンテナ用放射素子4は、底板31上に1列に配置されている。底板31における幅方向の両側に、側板34a、34bが設けられている。幅方向とは、アンテナ装置1の長手方向に直交する方向である。底板31は、アンテナ用放射素子4から放射される電磁波を反射する反射板としての機能を有している。
【0013】
2.アンテナ用放射素子4の構成
アンテナ用放射素子4の構成を、
図2~
図8に基づき説明する。
図2、
図3に示すように、アンテナ用放射素子4は、アンテナ部41を備える。アンテナ部41は、基板43と、4つの放射素子45A、45B、45C、45Dとを備える。基板43は、誘電体から成る正八角形の板である。
【0014】
放射素子45A、45B、45C、45Dは、基板43の主面のうち、
図2に示す方向Z1の側にある主面に形成された導体パターンである。主面とは、板状の部材において、他の面よりもはるかに面積が大きい面である。方向Z1は、基板43の厚さ方向に平行である。
【0015】
放射素子45A、45B、45C、45Dは、基板43の中心47を囲むように配置されている。中心47は、方向Z1から見たときの中心である。放射素子45Aは、中心47から、
図3に示す方向X1に延びている。方向X1は、基板43の主面と平行であり、方向Z1と直交する方向である。
【0016】
放射素子45Bは、中心47から、
図3に示す方向X2に延びている。方向X2は、方向X1の反対方向である。放射素子45Cは、中心47から、
図3に示す方向Y1に延びている。方向Y1は、基板43の主面と平行であり、方向Z1、方向X1、及び方向X2と直交する方向である。放射素子45Dは、中心47から、
図3に示す方向Y2に延びている。方向Y2は、方向Y1の反対方向である。
【0017】
放射素子45A、45B、45C、45Dの形状は、それぞれ、二等辺三角形である。二等辺三角形において長さが等しい2辺に挟まれた頂点は、中心47の側にある。
放射素子45A、45Bは、1つのボウタイアンテナ46を構成する。放射素子45C、45Dは、1つのボウタイアンテナ48を構成する。ボウタイアンテナ46とボウタイアンテナ48とは、方向Z1から見たとき、クロス形状となるように配置されている。中心47は、ボウタイアンテナ46とボウタイアンテナ48との交点である。方向X1、X2は、ボウタイアンテナ46の延伸方向であり、給電方向である。方向Y1、Y2は、ボウタイアンテナ48の延伸方向であり、給電方向である。
【0018】
アンテナ部41は、貫通孔49A、49B、49C、49Dを備える。貫通孔49A、49B、49C、49Dは、それぞれ、アンテナ部41を厚さ方向に貫通する。貫通孔49Aは、放射素子45Aのうち、中心47の側の位置に形成されている。貫通孔49Aの形状は、方向X1が長手方向である細長い形状である。
【0019】
貫通孔49Bは、放射素子45Bのうち、中心47の側の位置に形成されている。貫通孔49Bの形状は、方向X2が長手方向である細長い形状である。貫通孔49Cは、放射素子45Cのうち、中心47の側の位置に形成されている。貫通孔49Cの形状は、方向Y1が長手方向である細長い形状である。貫通孔49Dは、放射素子45Dのうち、中心47の側の位置に形成されている。貫通孔49Dの形状は、方向Y2が長手方向である細長い形状である。
【0020】
図2、
図4~
図8に示すように、アンテナ用放射素子4は、誘電体基板51を備える。誘電体基板51は、アンテナ部41を基準として、方向Z2の側にある。方向Z2は、方向Z1の反対方向である。誘電体基板51は、アンテナ部41における方向Z2の側の主面に接している。誘電体基板51は、
図4~
図7に示すように、単位基板53A、53B、53C、53Dを備える。
【0021】
単位基板53Aは、方向Z1から見たとき、誘電体基板51の中心57から、方向X1に延びる板状の部分である。中心57は、方向Z1から見たときの中心である。方向Z1から見たとき、中心57は、アンテナ部41の中心47と一致する。また、単位基板53Aは、方向Z1から見たとき、中心57から、アンテナ部41の外周側に延びている。
【0022】
単位基板53Aの厚さ方向は、方向Y1及び方向Y2と平行である。単位基板53Aの基本的な形態は矩形である。単位基板53Aは、方向Z1の側、且つ中心57の側に、凸部59Aを備える。凸部59Aは、方向Z1に突出している。凸部59Aの形状は矩形である。
【0023】
単位基板53Bは、方向Z1から見たとき、中心57から、方向X2に延びる板状の部分である。また、単位基板53Bは、方向Z1から見たとき、中心57から、アンテナ部41の外周側に延びている。単位基板53Bの厚さ方向は、方向Y1及び方向Y2と平行である。単位基板53Bの基本的な形態は矩形である。単位基板53Bは、方向Z1の側、且つ中心57の側に、凸部59Bを備える。凸部59Bは、方向Z1に突出している。凸部59Bの形状は矩形である。
【0024】
単位基板53Cは、方向Z1から見たとき、中心57から、方向Y1に延びる板状の部分である。また、単位基板53Cは、方向Z1から見たとき、中心57から、アンテナ部41の外周側に延びている。単位基板53Cの厚さ方向は、方向X1及び方向X2と平行である。単位基板53Cの基本的な形態は矩形である。単位基板53Cは、方向Z1の側、且つ中心57の側に、凸部59Cを備える。凸部59Cは、方向Z1に突出している。凸部59Cの形状は矩形である。
【0025】
単位基板53Dは、方向Z1から見たとき、中心57から、方向Y2に延びる板状の部分である。また、単位基板53Dは、方向Z1から見たとき、中心57から、アンテナ部41の外周側に延びている。単位基板53Dの厚さ方向は、方向X1及び方向X2と平行である。単位基板53Dの基本的な形態は矩形である。単位基板53Dは、方向Z1の側、且つ中心57の側に、凸部59Dを備える。凸部59Dは、方向Z1に突出している。凸部59Dの形状は矩形である。
【0026】
図4~
図7に示すように、方向Z1から見たとき、単位基板53Aと単位基板53Bとは、中心57を通り、方向X1及びX2に平行な一直線上に並んでいる。方向Z1から見たとき、単位基板53Cと単位基板53Dとは、中心57を通り、方向Y1及びY2に平行な一直線上に並んでいる。
【0027】
図4~
図8に示すように、アンテナ用放射素子4は底部55を備える。誘電体基板51は、底部55に接続している。底部55は、正八角形の板状の部材である。底部55の大きさは、基板43の大きさと等しい。底部55は、単位基板53A~53Dにおける方向Z2の側の側面に接続している。側面とは、板状の部材の表面のうち、一方の主面と、反対側の主面との間にある表面である。底部55の厚さ方向は方向Z1及びZ2と平行である。
【0028】
図6、
図7に示すように、誘電体基板51に、連続した導体パターン61が設けられている。導体パターン61は、信号伝送用の導体パターンである。導体パターン61は、単位基板53Cの表面、及び単位基板53Dの表面を経て、凸部59Dの表面に至っている。
【0029】
図5、
図7に示すように、誘電体基板51に、連続した導体パターン63が設けられている。導体パターン63は、信号伝送用の導体パターンである。導体パターン63は、単位基板53Aの表面、及び単位基板53Bの表面を経て、凸部59Bの表面に至っている。
【0030】
図5、
図6に示すように、誘電体基板51に、連続した導体パターン83が設けられている。導体パターン83は、GND用の導体パターンである。導体パターン83は、単位基板53Cの表面を経て、凸部59Cの表面に至っている。
【0031】
図6に示すように、誘電体基板51に、連続した導体パターン85が設けられている。導体パターン85は、GND用の導体パターンである。導体パターン85は、単位基板53Aの表面を経て、凸部59Aの表面に至っている。
【0032】
導体パターン61と、単位基板53Cと、導体パターン83とは、マイクロストリップ線路を構成する。導体パターン61は信号伝送用の導体パターンである。導体パターン83はGND用の導体パターンである。
【0033】
導体パターン63と、単位基板53Aと、導体パターン85とは、マイクロストリップ線路を構成する。導体パターン63は信号伝送用の導体パターンである。導体パターン85はGND用の導体パターンである。
【0034】
単位基板53Bと、導体パターン63とは、平衡-不平衡変換器として機能する。単位基板53Dと、導体パターン61とは、平衡-不平衡変換器として機能する。平衡-不平衡変換器の機能は、不平衡回路であるマイクロストリップ線路と、平衡回路である放射素子45A、45B、45C、45Dとの平衡性のバランスを保ち、マイクロストリップ線路からのコモンモードノイズの発生を抑制することである。
【0035】
図2、
図3、及び
図8に示すように、凸部59Aは、貫通孔49Aに差し込まれている。凸部59Aの先端は、アンテナ部41よりも方向Z1の側にある。凸部59Aに形成されている導体パターン85の一部は、アンテナ部41よりも方向Z1の側にある。導体パターン85のうち、凸部59Aに形成されている部分は、半田付けにより、放射素子45Aに接続している。
【0036】
図2、
図3、及び
図8に示すように、凸部59Bは、貫通孔49Bに差し込まれている。凸部59Bの先端は、アンテナ部41よりも方向Z1の側にある。凸部59Bに形成されている導体パターン63の一部は、アンテナ部41よりも方向Z1の側にある。導体パターン63のうち、凸部59Bに形成されている部分は、半田付けにより、放射素子45Bに接続している。
【0037】
図2、
図3、及び
図8に示すように、凸部59Cは、貫通孔49Cに差し込まれている。凸部59Cの先端は、アンテナ部41よりも方向Z1の側にある。凸部59Cに形成されている導体パターン83の一部は、アンテナ部41よりも方向Z1の側にある。導体パターン83のうち、凸部59Cに形成されている部分は、半田付けにより、放射素子45Cに接続している。
【0038】
図2、
図3、及び
図8に示すように、凸部59Dは、貫通孔49Dに差し込まれている。凸部59Dの先端は、アンテナ部41よりも方向Z1の側にある。凸部59Dに形成されている導体パターン63の一部は、アンテナ部41よりも方向Z1の側にある。導体パターン63のうち、凸部59Dに形成されている部分は、半田付けにより、放射素子45Dに接続している。
【0039】
図2~
図7に示すように、アンテナ用放射素子4は、中空の筒状部97を備える。筒状部97の軸方向は、方向Z1及び方向Z2と平行である。方向Z1及び方向Z2に直交する断面での筒状部97の断面形状は、正八角形である。
図3に示す筒状部97の中心軸99は、方向Z1及び方向Z2と平行であり、中心47を通る。中心軸99とは、方向Z1及び方向Z2に直交する断面において筒状部97の中心を通り、方向Z1及び方向Z2に平行な直線である。
【0040】
筒状部97は、方向Z1の側の端部に開口部96を備える。筒状部97の外部と内部とは、開口部96を介して連通している。開口部96の大きさは、筒状部97の内部の孔の大きさと等しい。筒状部97における方向Z2の側の端部は底部55により塞がれている。筒状部97と底部55とは反射板98を構成する。
【0041】
図2に示すように、アンテナ部41は、開口部96の近傍の位置であって、反射板98の外側の位置にある。アンテナ部41は、開口部96よりも方向Z1の側にある。方向Z1において、アンテナ部41と反射板98との間には隙間が存在する。
図10に示すように、筒状部97における方向Z1の側の端部97Aと、アンテナ部41との、方向Z1における距離をL1とする。L1は、例えば、λ/6以上λ/10以下であることが好ましい。λは、アンテナ用放射素子4の共振周波数に対応する波長である。
図10に示すように、底部55と、アンテナ部41との、方向Z1における距離をL2とする。L2は、λ/4程度であることが好ましい。
【0042】
図2、
図4~
図7に示すように、誘電体基板51の大部分は筒状部97の内部に収容されている。反射板98(すなわち、筒状部97と底部55)は、例えば、アルミ等の金属製の部材である。
同軸ケーブルアダプタ25aで受信した高周波信号は、図示しない中間経路と、導体パターン61とを経て、放射素子45Dに送られる。同軸ケーブルアダプタ25bで受信した高周波信号は、図示しない中間経路と、導体パターン63とを経て、放射素子45Bに送られる。
【0043】
誘電体基板51は、例えば、射出成形により製造することができる。導体パターン61、63、81、83は、例えば、MID(Molded Interconnected Device、成形回路部品)技術により形成することができる。
【0044】
3.アンテナ用放射素子4が奏する効果
(1A)アンテナ用放射素子4は、反射板98を備えることにより、ビーム幅の偏差を抑制できる。ビーム幅の偏差を抑制できる効果は、シミュレーションソフト(ムラタソフトウエア製Femlet)を用いて確認することができた。
【0045】
(1B)方向Z1に直交する断面での反射板98の形状は正八角形である。そのため、複数のアンテナ用放射素子4を密に配列することができる。アンテナ用放射素子4を密に配列することで、アンテナ装置1を小型化することができる。この効果を
図9に基づき説明する。
図9は、複数のアンテナ用放射素子4を千鳥状に配列した状態を表す。なお、複数のアンテナ用放射素子4は、
図1に示すように1つの直線に沿って配列してもよいし、
図9に示すように配列してもよい。
【0046】
方向Z1に直交する断面において、正八角形の形状を有する反射板98の対向する2辺の距離をLとする。正八角形の形状を有する反射板98のそれぞれの辺を98Aとする。
図9に示す状態では、隣接するアンテナ用放射素子4の辺98A同士が短い距離をおいて対向している。
【0047】
仮に、方向Z1に直交する断面での反射板98の形状が、1辺の長さがLである正方形であるならば、反射板98のうち、
図9に示す隅の領域101は、隣接するアンテナ用放射素子4の反射板98の両方に重複して含まれる。そのため、隣接するアンテナ用放射素子4同士の間隔を、
図9に示す間隔よりも大きくしなければならない。その結果、反射板98の形状が正方形である場合は、反射板98の形状が正八角形である場合に比べて、アンテナ用放射素子4を密に配列することができない。
【0048】
(1C)方向Z1に直交する断面での反射板98の形状は正八角形である。正八角形の対向する2辺の距離をLとする。この場合、方向Z1に直交する断面での反射板98の形状が直径Lの円である場合に比べて、反射板98の断面積を大きくすることができる。そのことにより、ビーム幅の偏差を一層抑制できる。
【0049】
(1D)方向Z1に直交する断面での反射板98の形状は正八角形である。そのため、
図9に示すように、複数のアンテナ用放射素子4の間で、正八角形の辺98A同士を対向させることで、複数のアンテナ用放射素子4を規則正しく配列させることが容易である。なお、方向Z1に直交する断面での反射板98の形状が円形である場合は、配列の基準となる辺98Aが存在しないので、複数のアンテナ用放射素子4を規則正しく配列させることが困難である。
【0050】
(1E)筒状部97の中心軸99は、ボウタイアンテナ46とボウタイアンテナ48との交点(すなわち、中心47)を通る。また、中心軸99と、ボウタイアンテナ46の延伸方向(すなわち、方向X1、X2)とは直交する。また、中心軸99と、ボウタイアンテナ48の延伸方向(すなわち、方向Y1、Y2)とは直交する。そのため、反射板98の効果が一層高く、アンテナ用放射素子4は、ビーム幅の偏差を一層抑制できる。
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0051】
(1)第1実施形態において、反射板98は、樹脂から成る本体部と、その本体部の表面に形成された金属めっき層とを含むものであってもよい。この場合も、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0052】
(2)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0053】
(3)上述したアンテナ用放射素子4の他、当該アンテナ用放射素子4を構成要素とするシステム、アンテナ用放射素子4の製造方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【0054】
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
クロス形状となるように配置された2つのボウタイアンテナを備えるアンテナ部と、
反射板と、
を備え、
前記反射板は、
軸方向に直交する断面での断面形状が正八角形である筒状部と、
前記筒状部の前記軸方向における一方の端部を塞ぐ底部と、
前記筒状部の前記一方とは反対の端部に設けられた開口部と、
を備え、
前記アンテナ部は、前記開口部の近傍の位置にある、
アンテナ用放射素子。
[項目2]
項目1に記載のアンテナ用放射素子であって、
前記筒状部の中心軸は、前記2つのボウタイアンテナの交点を通り、
前記中心軸と、前記2つのボウタイアンテナの延伸方向とは直交する、
アンテナ用放射素子。
[項目3]
項目1又は2に記載のアンテナ用放射素子であって、
前記反射板は、
樹脂から成る本体部と、
前記本体部の表面に形成された金属めっき層と、
を備える、
アンテナ用放射素子。
[項目4]
項目1~3のいずれか1つの項目に記載のアンテナ用放射素子を備えるアンテナ装置。
【符号の説明】
【0055】
1…アンテナ装置、4…アンテナ用放射素子、21a…取付金具、22…レドーム、23a、23b…アンテナキャップ、25a、25b…同軸ケーブルアダプタ、31…底板、34a…側板、41…アンテナ部、43…基板、45A、45B、45C、45D…放射素子、46、48…ボウタイアンテナ、47…中心、49A、49B、49C、49D…貫通孔、51…誘電体基板、53A、53B、53C、53D…単位基板、55…底部、57…中心、59A、59B、59C、59D…凸部、61、63、83、85…導体パターン、96…開口部、97…筒状部、98…反射板、98A…辺、99…中心軸、101…領域