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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178682
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】基板処理装置及び装置状態推定方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20241218BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20241218BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20241218BHJP
   G01N 21/3563 20140101ALI20241218BHJP
【FI】
H01L21/31 B
C23C16/44 B
G01N21/27 Z
G01N21/3563
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097006
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 宏之
【テーマコード(参考)】
2G059
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
2G059EE01
2G059EE12
2G059HH01
2G059HH02
2G059JJ17
2G059MM09
2G059MM10
4K030AA03
4K030AA06
4K030AA14
4K030BA44
4K030CA04
4K030CA06
4K030EA04
4K030FA10
4K030GA06
4K030KA05
4K030KA23
4K030KA36
4K030KA39
4K030KA41
5F045AA06
5F045AB32
5F045AC00
5F045AC05
5F045AC15
5F045AC16
5F045AD01
5F045AE01
5F045BB10
5F045DP19
5F045DP28
5F045DQ05
5F045EC02
5F045EC03
5F045EF03
5F045EK06
5F045GB04
5F045GB16
(57)【要約】
【課題】処理容器の状態を推定する基板処理装置及び装置状態推定方法を提供する。
【解決手段】処理容器と、前記処理容器の外側に配置されるヒータエレメントと、前記ヒータエレメントから放出された放射光を検出する第1の分光光度計と、前記処理容器を挟んで前記ヒータエレメントから放出された放射光を検出する第2の分光光度計と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1の分光光度計で計測されたスペクトルと、前記第2の分光光度計で計測されたスペクトルと、の差分に基づいて、前記処理容器の状態を推定する、基板処理装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器と、
前記処理容器の外側に配置されるヒータエレメントと、
前記ヒータエレメントから放出された放射光を検出する第1の分光光度計と、
前記処理容器を挟んで前記ヒータエレメントから放出された放射光を検出する第2の分光光度計と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1の分光光度計で計測されたスペクトルと、前記第2の分光光度計で計測されたスペクトルと、の差分に基づいて、前記処理容器の状態を推定する、
基板処理装置。
【請求項2】
前記処理容器は、
外筒と、
前記外筒内に配置される内筒と、を有し、
前記内筒の上端に開口を有する、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
外筒と、前記外筒内に配置され側面に開口を有する内筒と、を有する処理容器と、
前記処理容器の外側に配置される第1のヒータエレメント及び第2のヒータエレメントと、
前記処理容器を挟んで前記第1のヒータエレメントから放出された放射光を検出する第1の分光光度計と、
前記処理容器を挟んで前記第2のヒータエレメントから放出された放射光を検出する第2の分光光度計と、
制御部と、を備え、
前記第1のヒータエレメントから前記第1の分光光度計までの光路は、前記開口を通過し、
前記第2のヒータエレメントから前記第2の分光光度計までの光路は、前記開口を通過せず、
前記制御部は、
前記第1の分光光度計で計測されたスペクトルと、前記第2の分光光度計で計測されたスペクトルと、の差分に基づいて、前記処理容器の状態を推定する、
基板処理装置。
【請求項4】
前記処理容器及び前記ヒータエレメントを覆う断熱部材を備え、
前記ヒータエレメントから前記第1の分光光度計への路に前記断熱部材を貫通する第1の貫通孔を有し、
前記ヒータエレメントから前記第2の分光光度計への路に前記断熱部材を貫通する第2の貫通孔を有する、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記処理容器及び前記ヒータエレメントを覆う断熱部材を備え、
前記ヒータエレメントから前記第1の分光光度計までの光路に前記断熱部材を通る第1の光ファイバーを有し、
前記ヒータエレメントから前記第2の分光光度計までの光路に前記断熱部材を通る第2の光ファイバーを有する、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
処理容器と、前記処理容器の外側に配置されるヒータエレメントと、分光光度計と、を備える、基板処理装置の装置状態推定方法であって、
前記分光光度計で計測されたスペクトルに基づいて、前記処理容器の状態を推定する、
装置状態推定方法。
【請求項7】
前記分光光度計は、
前記ヒータエレメントから放出された放射光を検出する第1の分光光度計と、
前記処理容器を挟んで前記ヒータエレメントから放出された放射光を検出する第2の分光光度計と、を有し、
前記第1の分光光度計で計測されたスペクトルと、前記第2の分光光度計で計測されたスペクトルと、の差分に基づいて、前記処理容器の状態を推定する、
請求項6に記載の装置状態推定方法。
【請求項8】
前記処理容器で基板処理が行われる前に前記分光光度計で計測されたスペクトルと、前記処理容器で基板処理が行われた後の前記分光光度計で計測されたスペクトルと、の差分に基づいて、前記処理容器の状態を推定する、
請求項6に記載の装置状態推定方法。
【請求項9】
前記処理容器は、外筒と、前記外筒内に配置され側面に開口を有する内筒と、を有し、
前記処理容器を挟んで第1のヒータエレメントから放出された放射光を検出する第1の分光光度計と、
前記処理容器を挟んで第2のヒータエレメントから放出された放射光を検出する第2の分光光度計と、
制御部と、を更に備え、
前記第1のヒータエレメントから前記第1の分光光度計までの光路は、前記開口を通過し、
前記第2のヒータエレメントから前記第2の分光光度計までの光路は、前記開口を通過せず、
前記第1の分光光度計で計測されたスペクトルと、前記第2の分光光度計で計測されたスペクトルと、の差分に基づいて、前記処理容器の状態を推定する、
請求項6に記載の装置状態推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置及び装置状態推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、装置筐体内に、石英チャンバーとチャンバー加熱用のヒータとが設けられた半導体製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-4603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一の側面では、本開示は、処理容器の状態を推定する基板処理装置及び装置状態推定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、一の態様によれば、処理容器と、前記処理容器の外側に配置されるヒータエレメントと、前記ヒータエレメントから放出された放射光を検出する第1の分光光度計と、前記処理容器を挟んで前記ヒータエレメントから放出された放射光を検出する第2の分光光度計と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1の分光光度計で計測されたスペクトルと、前記第2の分光光度計で計測されたスペクトルと、の差分に基づいて、前記処理容器の状態を推定する、基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、処理容器の状態を推定する基板処理装置及び装置状態推定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す縦断面図の一例。
図2】分光光度計で計測されたスペクトルの一例。
図3】第1実施形態に係る基板処理装置の装置状態推定方法の一例を示すフローチャート。
図4】第1実施形態に係る基板処理装置の装置状態推定方法の他の一例を示すフローチャート。
図5】第2実施形態に係る基板処理装置の構成例を概略的に示す縦断面図の一例。
図6】分光光度計で計測する方向を示す模式図の一例。
図7】第2実施形態に係る基板処理装置の装置状態推定方法の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
<第1実施形態に係る処理装置>
図1は、第1実施形態に係る基板処理装置1の構成例を概略的に示す縦断面図の一例である。図1に示すように、第1実施形態に係る基板処理装置1は、複数の基板Wを鉛直方向(軸方向:上下方向)に並べて配置し、これら各基板Wに対して成膜等の基板処理を行う縦型処理装置である。基板Wは、例えば、シリコンウエハ、もしくは化合物半導体ウエハ等の半導体基板、またはガラス基板があげられる。
【0010】
基板処理装置1は、複数の基板Wを収容する処理容器10と、処理容器10の周囲を覆う筒状の炉本体50と、を有する。また、基板処理装置1は、当該基板処理装置1の各構成の動作を制御する制御部90を備える。
【0011】
処理容器10は、複数の基板Wを鉛直方向に並べて配置するために、鉛直方向に延在する中心軸を有する筒状に形成されている。例えば、処理容器10は、天井を有する一方で下端が開放された円筒状の内筒11と、この内筒11の外側を覆うと共に天井を有する一方で下端が開放された円筒状の外筒12と、を含む。内筒11および外筒12は、石英等の耐熱性材料により形成されており、互いに同軸上に配置された2重構造を呈している。なお、処理容器10は、2重構造に限らず、単筒構造でもよく、あるいは3以上の筒からなる多重構造でもよい。
【0012】
内筒11は、平坦状の天井を有する一方で、外筒12は、ドーム状の天井を有する。内筒11の所定の周方向位置には、鉛直方向に沿ってガスノズル31を収容する収容部13が形成されている。一例として、収容部13は、内筒11の側壁の一部を径方向外側に突出させた凸部14の内側に形成される。
【0013】
内筒11の上端において、開口15が形成されている。開口15は、内筒11内のガスを、内筒11と外筒12の間の空間Pに排気する。
【0014】
処理容器10の下端は、例えば、ステンレス鋼により形成される円筒状のマニホールド17によって支持されている。マニホールド17の上端にはフランジ18が形成されており、フランジ18は外筒12の下端のフランジ12fを支持する。フランジ12fとフランジ18との間には、外筒12およびマニホールド17の内部を気密にシールするシール部材19が設けられる。
【0015】
マニホールド17の上部の内壁には、環状の支持部20が径方向内側に突出しており、支持部20は、内筒11の下端を支持している。マニホールド17の下端の開口には、シール部材22を介して蓋体21が気密に取り付けられている。すなわち、蓋体21は、マニホールド17の下端側の開口を気密に塞いでいる。蓋体21は、例えば、ステンレス鋼により平板状に形成される。
【0016】
蓋体21の中央部には、磁性流体シール部23を介してウエハボート16を回転可能に支持する回転軸24が貫通している。回転軸24の下部は、ボートエレベータ等により構成される昇降機構25のアーム25Aに支持されている。基板処理装置1は、昇降機構25のアーム25Aを昇降することで、蓋体21とウエハボート16と一体に上下動させ、処理容器10内に対してウエハボート16を挿入および離脱させることができる。
【0017】
回転軸24の上端には回転プレート26が設けられており、この回転プレート26上には、断熱ユニット27を介して基板Wを保持するウエハボート16が載置される。ウエハボート16は、鉛直方向の所定間隔毎に基板Wを保持する基板保持具である。ウエハボート16により、各基板Wは水平方向に沿うように保持される。
【0018】
処理ガス供給部30は、マニホールド17を介して処理容器10の内部に挿入されている。処理ガス供給部30は、処理ガス、パージガス、クリーニングガス等のガスを内筒11の内部に導入する。例えば、処理ガス供給部30は、処理ガス、パージガス、クリーンガスを導入する1以上のガスノズル31を有する。
【0019】
ガスノズル31は、石英製のインジェクタ管であり、内筒11内の鉛直方向に沿って延びると共に、下端においてL字状に屈曲してマニホールド17の内外を貫通するように設けられている。ガスノズル31は、鉛直方向に沿って所定の間隔毎に複数のガス孔31hを備えており、各ガス孔31hを介して水平方向にガスを放出する。所定の間隔は、例えば、ウエハボート16に支持される各基板Wの間隔と同じになるように設定される。また、ガス孔31hの鉛直方向の位置は、鉛直方向に隣り合う基板W間の中間に位置するように設定されており、各基板W間の空間にガスを円滑に流通できるようになっている。
【0020】
処理ガス供給部30は、処理容器10の外部において流量を制御しながら処理ガスおよびパージガスを処理容器10内のガスノズル31に供給する。処理ガスは、基板処理に応じて適宜のものが選択されるとよい。一例として、基板Wにシリコン酸化膜を形成する場合、処理ガスとしては、例えば、ジクロロシラン(DCS)ガス等のシリコン含有ガスと、オゾン(O)ガス等の酸化ガスとを利用できる。パージガスは、例えば、窒素(N)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の不活性ガスを利用できる。
【0021】
処理ガス排気部40は、処理容器10内のガスを外部に排気する。処理ガス供給部30により供給されたガスは、内筒11の開口15から内筒11と外筒12との間の空間Pに流出し、ガス出口41を介して排気される。ガス出口41は、マニホールド17の上部の側壁であって、支持部20の上方に形成されている。ガス出口41には、処理ガス排気部40の排気路42が接続されている。処理ガス排気部40は、排気路42の上流から下流に向かって順に、圧力調整弁43、真空ポンプ44を備える。処理ガス排気部40は、処理容器10内のガスを真空ポンプ44により吸引すると共に、圧力調整弁43により排気するガスの流量を調整することで、処理容器10内の圧力を調整する。
【0022】
また、処理容器10(内筒11)の内部には、処理容器10内の温度を検出する温度センサ80が設けられている。温度センサ80は、後述する複数のゾーンZに対応して、複数(本実施形態では5つ)の測温子81~85を鉛直方向の異なる位置に有する。複数の測温子81~85は、熱電対、測温抵抗体等を適用し得る。温度センサ80は、複数の測温子81~85毎に検出した温度を、制御部90にそれぞれ送信する。
【0023】
一方、炉本体50は、処理容器10の周囲を覆うように設置され、処理容器10内の基板Wを加熱および冷却する。具体的には、炉本体50は、天井を有する円筒状の筐体51と、筐体51に設けられるヒータ52と、を備える。
【0024】
筐体51は、直径および鉛直方向(軸方向)の長さが処理容器10よりも長く形成され、その中心軸が処理容器10の中心軸と同じ位置となるように設置される。例えば、筐体51は、外筒12のフランジ12fを支持するベースプレート54に取り付けられる。筐体51は、処理容器10の外周面に対して非接触となるように取り付けられることで、処理容器10との間に温調空間53を形成する。温調空間53は、処理容器10の側方および上方を連続するように設けられる。
【0025】
筐体51は、天井部を有する筒状に形成されて処理容器10全体を覆う断熱部51a(断熱部材)と、断熱部51aの外周側において断熱部51aを補強する補強部51bと、有する。すなわち、筐体51の側壁は、断熱部51aと補強部51bとの積層構造を呈している。断熱部51aは、例えば、シリカ、アルミナ等を主成分として形成され、当該断熱部51a内での熱伝達を抑制する。補強部51bは、ステンレス鋼等の金属により形成されている。また、炉本体50の外部への熱影響を抑制するために、補強部51bの外周側は、図示しない水冷ジャケットで覆われている。
【0026】
炉本体50のヒータ52は、処理容器10内の複数の基板Wを加熱する適宜の構成を適用することができる。例えば、ヒータ52としては、可視光や赤外線等の放射光(電磁波)を放出して処理容器10を加熱するヒータ(例えば、赤外線ヒータ)を用いるとよい。この場合、ヒータ52は、線状に形成され、断熱部51aの内壁面に保持部(不図示)を介して、螺旋状、環状、円弧状、シャンク形状または蛇行するように断熱部51aに保持される。また、ヒータ52hは、複数のヒータエレメント52aを含む。
【0027】
炉本体50の筐体51には、貫通孔51c1,51c2が形成されている。貫通孔51c1は、ヒータエレメント52aの外周側を見通せるように形成された貫通孔である。貫通孔51c2は、処理容器10を透過して、ヒータエレメント52aの内周側を見通せるように形成された貫通孔である。
【0028】
分光光度計61,62は、ヒータ52のヒータエレメント52aからの光を計測する。分光光度計61,62は、複数の波長に対して、各波長における光強度を計測可能な計測器である。分光光度計61,62は、入射した光を波長で分光し、分光された光の光強度をそれぞれ計測する。なお、以下の説明において、分光光度計61,62を区別する場合、分光光度計61を第1分光光度計61と称し、分光光度計62を第2分光光度計62と称する。
【0029】
分光光度計(第1分光光度計)61は、第1の貫通孔51c1を介して、ヒータエレメント52aから放出された放射光を計測する。換言すれば、ヒータエレメント52aから分光光度計61までの光路に筐体51を貫通する第1の貫通孔51c1を有する。即ち、分光光度計61は、ヒータエレメント52aから放出された放射光を直接計測する。
【0030】
分光光度計(第2分光光度計)62は、第2の貫通孔51c2を介して、ヒータエレメント52aから放出された放射光を計測する。図1において、ヒータエレメント52aから分光光度計62までの光路を破線で示す。換言すれば、ヒータエレメント52aから分光光度計62までの光路に筐体51を貫通する第2の貫通孔51c2を有する。即ち、分光光度計62は、ヒータエレメント52aから放出された放射光を、処理容器10の壁面(外筒12の一方の壁面、内筒11の一方の壁面、内筒11の他方の壁面、外筒12の他方の壁面)を透過させ、計測する。
【0031】
なお、ヒータエレメント52aから分光光度計62までの光路は、処理容器10を上方から見た状態において、処理容器10の中心(基板Wの中心)を通るように設けられることが好ましい。換言すれば、ヒータエレメント52aから分光光度計62までの光路は、内筒11及び外筒12の側壁に対して垂直となるように配置されることが好ましい。これにより、放射光が壁面で反射してスペクトルの強度が低下することを抑制することができる。
【0032】
なお、分光光度計61,62は、貫通孔51c1,51c2からヒータエレメント52aから放出された放射光を計測するものとして説明したが、これに限られるものではない。例えば、炉本体50の筐体51に光ファイバー(図示せず)を設け、分光光度計61,62は、光ファイバーを介して、ヒータエレメント52aから放出された放射光を計測する構成であってもよい。即ち、ヒータエレメント52aから分光光度計61までの光路に筐体51を通る第1の光ファイバー(図示せず)を有し、ヒータエレメント52aから分光光度計62までの光路に筐体51を通る第2の光ファイバー(図示せず)を有する。これにより、温調空間53から外部への熱の流出を抑制することができる。また、温調空間53内の温度の均一性を向上させることができる。
【0033】
基板処理装置1の制御部90は、プロセッサ91、メモリ92、図示しない入出力インタフェース等を有するコンピュータを適用することができる。プロセッサ91は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、複数のディスクリート半導体からなる回路等のうち1つまたは複数を組み合わせたものである。メモリ92は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ(例えば、コンパクトディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、ハードディスク、フラッシュメモリ等)を適宜組み合わせたものである。
【0034】
メモリ92は、基板処理装置1を動作させるプログラム、基板処理のプロセス条件等のレシピを記憶している。プロセッサ91は、メモリ92のプログラムを読み出して実行することで、基板処理装置1の各構成を制御する。なお、制御部90は、ネットワークを介して情報通信するホストコンピュータまたは複数のクライアントコンピュータにより構成されてもよい。
【0035】
図2は、分光光度計61,62で計測されたスペクトルの一例である。図2において、横軸は波長を示し、縦軸は強度を示す。
【0036】
破線で示すスペクトル71は、分光光度計61で計測されたスペクトルである。即ち、処理容器10(内筒11及び外筒12)を透過せずに、ヒータエレメント52aから放出された放射光が、分光光度計61で直接計測されたスペクトルである。スペクトル71の形状は、例えばヒータエレメント52aの表面状態やヒータエレメント52aの温度によって決まる。
【0037】
スペクトル72(72A,72B)は、分光光度計62で計測されたスペクトルである。即ち、ヒータエレメント52aから放出された放射光が、処理容器10(内筒11及び外筒12)を透過して、分光光度計61で計測されたスペクトルである。
【0038】
また、一点鎖線で示すスペクトル72Aは、リファレンスとなる処理容器10におけるスペクトルである。例えば、スペクトル72Aは、新品(基板処理前)のリファレンスとなる処理容器10におけるスペクトルである。
【0039】
また、実線で示すスペクトル72Bは、処理容器10の状態を計測する計測対象のスペクトルである。例えば、基板処理を繰り返すことにより、処理容器10の壁面に反応副生成物等が堆積した状態の処理容器10におけるスペクトルである。
【0040】
<第1実施形態に係る装置状態推定方法>
次に、装置状態推定方法の一例について、図3を用いて説明する。図3は、第1実施形態に係る基板処理装置1の装置状態推定方法の一例を示すフローチャートである。ここでは、処理容器10の状態を推定する。
【0041】
ステップS101において、第1分光光度計61でスペクトル71を検出する。また、ステップS102において、第2分光光度計62でスペクトル72(72A又は72B)を検出する。
【0042】
ここでは、制御部90は、昇降機構25を制御して、処理容器10からウエハボート16が搬出された状態とする。処理容器10内は、減圧された真空雰囲気となっている。制御部90は、ヒータ52に電力を供給するヒータ電源(図示せず)を制御して、ヒータ52に所定の電力を供給する。これにより、ヒータエレメント52aが加熱され、熱放射による光(電磁波:可視光、赤外光)が放射される。
【0043】
第1分光光度計61では、ヒータエレメント52aから放出された放射光を直接計測する。第1分光光度計61で計測された光のスペクトル71(図2参照)の情報は、制御部90に出力される。
【0044】
また、第2分光光度計62では、ヒータエレメント52aから放出された放射光を処理容器10で透過させ、処理容器10を透過することで減衰した光を計測する。第2分光光度計62で計測された光のスペクトル72(図2参照)の情報は、制御部90に出力される。
【0045】
なお、ステップS101とステップS102の順番は逆でもよく、同時に行ってもよい。
【0046】
ステップS103において、第1分光光度計61で計測されたスペクトル71と、第2分光光度計62で計測されたスペクトル72と、の差分から吸光度(スペクトル強度の減少量)を検出する。
【0047】
ステップS104において、吸光度から処理容器10の表面状態を推定する。
【0048】
ヒータエレメント52aから放出された放射光が処理容器10を透過する際、処理容器10を形成する石英部材の表面の状態や処理容器10の壁面に堆積した反応副生成物等によって、特定の波長の光が吸収及び/又は反射される。即ち、処理容器10の表面状態によって、吸光度が変化する。制御部90は、メモリ92に、処理容器10の表面状態と吸光度との関係の情報を記憶している。制御部90は、ステップS103で検出された吸光度と、あらかじめ記憶された処理容器10の表面状態と吸光度との関係の情報に基づいて、処理容器10の表面状態を推定する。
【0049】
また、ヒータエレメント52aから放出された放射光が処理容器10を透過する際、処理容器10の温度、処理容器10の物性等によっても、特定の波長の光が吸収及び/又は反射される。即ち、処理容器10の状態によって、スペクトルの強度や吸光度が変化する。制御部90は、メモリ92に、処理容器10の温度や物性と吸光度との関係の情報を記憶している。制御部90は、ステップS103で検出されたスペクトルの強度や吸光度と、あらかじめ記憶された処理容器10の温度や物性とスペクトルの強度や吸光度との関係の情報に基づいて、処理容器10の状態(温度、物性等)を推定する。
【0050】
次に、装置状態推定方法の一例について、図4を用いて説明する。図4は、第1実施形態に係る基板処理装置1の装置状態推定方法の他の一例を示すフローチャートである。ここでは、処理容器10の状態を推定する。
【0051】
ステップS201において、処理容器10を設置する。ここでは、リファレンスとなる新品(基板処理前)の処理容器10を設置する。
【0052】
ステップS202において、分光光度計61,62でスペクトル71,72Aを検出する。
【0053】
ここでは、制御部90は、昇降機構25を制御して、処理容器10からウエハボート16が搬出された状態とする。処理容器10内は、減圧された真空雰囲気となっている。制御部90は、ヒータ52に電力を供給するヒータ電源(図示せず)を制御して、ヒータ52に所定の電力を供給する。これにより、ヒータエレメント52aが加熱され、熱放射による光(電磁波:可視光、赤外光)が放射される。
【0054】
第1分光光度計61では、ヒータエレメント52aから放出された放射光を直接計測する。第1分光光度計61で計測された光のスペクトル71(図2参照)の情報は、制御部90に出力され、メモリ92に記憶される。
【0055】
また、第2分光光度計62では、ヒータエレメント52aから放出された放射光を処理容器10で透過させ、処理容器10を透過することで減衰した光を計測する。第2分光光度計62で計測された光のスペクトル72A(図2参照)の情報は、制御部90に出力され、メモリ92に記憶される。
【0056】
ステップS203において、基板処理を施す。
【0057】
ここでは、制御部90は、基板処理において、まず複数の基板Wを搭載したウエハボート16を処理容器10内に搬入する。搬入に伴って、マニホールド17の下端の開口を蓋体21により閉じることで、処理容器10内が密閉空間となる。密閉空間の形成後、基板処理装置1は、所定の基板処理を行う。
【0058】
例えば、基板処理として成膜処理を行う場合、制御部90は、炉本体50のヒータ52を制御して、ヒータ52を設定温度まで上昇させることで、処理容器10内の各基板Wを成膜処理に必要な温度に加熱する。さらに、制御部90は、処理ガス供給部30の動作を制御して、ガスノズル31を介して処理容器10の内部に基板処理(例えば、成膜処理)用の処理ガスを供給しつつ、処理ガス排気部40により処理容器10内の処理ガスを排気する。これにより、処理容器10内の圧力が設定圧に維持された状態で、処理容器10内に処理ガスが充満し、各基板Wに処理が施される。この際、処理容器10の壁面に反応副生成物が付着する。
【0059】
そして、基板処理が終了すると、処理容器10からウエハボート16が搬出される。
【0060】
ステップS204において、表面状態の推定タイミングであるか否かを判定する。例えば、基板Wの処理回数、基板処理装置1の動作時間等に基づいて、表面状態の推定タイミングであるか否かを判定する。表面状態の推定タイミングでない場合(S204・NO)、制御部90の処理は、ステップS203に戻る。そして、次の基板Wを搭載したウエハボートを処理容器10内に搬入する。表面状態の推定タイミングである場合(S204・YES)、制御部90の処理は、ステップS205に進む。
【0061】
ステップS205において、分光光度計61,62でスペクトル71,72Bを検出する。
【0062】
ここでは、制御部90は、昇降機構25を制御して、処理容器10からウエハボート16が搬出された状態とする。処理容器10内は、減圧された真空雰囲気となっている。制御部90は、ヒータ52に電力を供給するヒータ電源(図示せず)を制御して、ヒータ52に所定の電力を供給する。これにより、ヒータエレメント52aが加熱され、熱放射による光(電磁波:可視光、赤外光)が放射される。
【0063】
第1分光光度計61では、ヒータエレメント52aから放出された放射光を直接計測する。第1分光光度計61で計測された光のスペクトル71(図2参照)の情報は、制御部90に出力され、メモリ92に記憶される。
【0064】
また、第2分光光度計62では、ヒータエレメント52aから放出された放射光を処理容器10で透過させ、処理容器10を透過することで減衰した光を計測する。第2分光光度計62で計測された光のスペクトル72B(図2参照)の情報は、制御部90に出力され、メモリ92に記憶される。
【0065】
ステップS206において、ステップS202で検出されたスペクトルと、ステップS205で検出されたスペクトルと、の差分から吸光度(スペクトル強度の減少量)の変化を検出する。
【0066】
ここでは、ステップS202におけるスペクトル71と、ステップS206におけるスペクトル71と、が変化しないものとする。この場合、第2分光光度計62で計測されたスペクトル72Aと、第2分光光度計62で計測されたスペクトル72Bと、の差分から吸光度の変化を検出する。
【0067】
なお、ステップS202におけるスペクトル71と、ステップS206におけるスペクトル71と、が変化する場合、ステップS202におけるスペクトル71とスペクトル72Aとの差分に基づく吸光度と、ステップS206におけるスペクトル71とスペクトル72Bとの差分に基づく吸光度と、の差分から吸光度の変化を検出してもよい。
【0068】
ステップS207において、吸光度の変化から処理容器10の表面状態を推定する。
【0069】
ヒータエレメント52aから放出された放射光が処理容器10を透過する際、処理容器10を形成する石英部材の表面の状態や処理容器10の壁面に堆積した反応副生成物等によって、特定の波長の光が吸収及び/又は反射される。即ち、処理容器10の表面状態によって、吸光度が変化する。制御部90は、メモリ92に、処理容器10の表面状態と吸光度との関係の情報を記憶している。制御部90は、ステップS206で検出された吸光度の変化と、あらかじめ記憶された処理容器10の表面状態と吸光度との関係の情報に基づいて、処理容器10の表面状態を推定する。
【0070】
また、ヒータエレメント52aから放出された放射光が処理容器10を透過する際、処理容器10の温度、処理容器10の物性等によっても、特定の波長の光が吸収及び/又は反射される。即ち、処理容器10の状態によって、スペクトルの強度や吸光度が変化する。制御部90は、メモリ92に、処理容器10の温度や物性と吸光度との関係の情報を記憶している。制御部90は、ステップS206で検出されたスペクトルの強度や吸光度と、あらかじめ記憶された処理容器10の温度や物性とスペクトルの強度や吸光度との関係の情報に基づいて、処理容器10の状態(温度、物性等)を推定する。
【0071】
<第2実施形態に係る処理装置>
図5は、第2実施形態に係る基板処理装置1Aの構成例を概略的に示す縦断面図の一例である。図6は、分光光度計63,64で計測する方向を示す模式図の一例である。なお、図6において、基板Wの位置を二点鎖線で仮想的に図示している。
【0072】
図5に示すように、第2実施形態に係る基板処理装置1Aは、処理容器10Aの形状が異なっている。具体的には内筒11Aの形状が異なっている。
【0073】
内筒11Aにおいて収容部13に対向する反対側の側壁には、鉛直方向に長い開口15Aが形成されている。開口15は、内筒11A内のガスを、内筒11Aと外筒12の間の空間Pに排気する。開口15の鉛直方向の長さは、ウエハボート16の鉛直方向の長さと同一に、またはウエハボート16よりも鉛直方向に長く形成されているとよい。
【0074】
また、図5及び図6に示すように、第2実施形態に係る基板処理装置1Aは、分光光度計63,64の位置が異なっている。
【0075】
炉本体50の筐体51には、第1の貫通孔51c3,及び第2の貫通孔(図示せず)が形成されている。第1の貫通孔51c3は、処理容器10Aを透過して、ヒータエレメント52a3の内周側を見通せるように形成された貫通孔である。第2の貫通孔は、処理容器10Aを透過して、ヒータエレメント52a4の内周側を見通せるように形成された貫通孔である。
【0076】
分光光度計63は、ヒータ52のヒータエレメント52a3からの光を計測する。分光光度計64は、ヒータ52のヒータエレメント52a4からの光を計測する。分光光度計63,64は、複数の波長に対して、各波長における光強度を計測可能な計測器である。分光光度計63,64は、入射した光を波長で分光し、分光された光の光強度をそれぞれ計測する。なお、以下の説明において、分光光度計63,64を区別する場合、分光光度計63を第1分光光度計63と称し、分光光度計64を第2分光光度計64と称する。
【0077】
分光光度計(第1分光光度計)63は、第1の貫通孔51c3を介して、ヒータエレメント52a3から放出された放射光を計測する。ここで、ヒータエレメント52a3から分光光度計63までの光路73は、開口15を通過する。即ち、分光光度計63は、ヒータエレメント52a3から放出された放射光を、外筒12の一方側(図6の右側)の壁面、内筒11の他方側(図6の左側)の壁面、外筒12の他方側(図6の左側)の壁面を透過させ、計測する。
【0078】
分光光度計(第2分光光度計)62は、第2の貫通孔を介して、ヒータエレメント52a4から放出された放射光を計測する。ここで、ヒータエレメント52a4から分光光度計64までの光路74は、開口15を通過しない。即ち、分光光度計64は、ヒータエレメント52a4から放出された放射光を、外筒12の一方側(図6の右側)の壁面、内筒11の一方側(図6の右側)の壁面、内筒11の他方側(図6の左側)の壁面、外筒12の他方側(図6の左側)の壁面を透過させ、計測する。
【0079】
また、光路73及び光路74は、処理容器10を上方から見た状態において、処理容器10の中心(基板Wの中心)を通るように設けられることが好ましい。換言すれば、光路73及び光路74は、内筒11及び外筒12の側壁に対して垂直となるように配置されることが好ましい。これにより、放射光が壁面で反射してスペクトルの強度が低下することを抑制することができる。
【0080】
なお、分光光度計63,64は、貫通孔からヒータエレメント52a3,52a4から放出された放射光を計測するものとして説明したが、これに限られるものではない。例えば、炉本体50の筐体51に光ファイバー(図示せず)を設け、分光光度計63,64は、光ファイバーを介して、ヒータエレメント52a3,52a4から放出された放射光を計測する構成であってもよい。即ち、ヒータエレメント52a3から分光光度計63までの光路に筐体51を通る第1の光ファイバー(図示せず)を有し、ヒータエレメント52a4から分光光度計64までの光路に筐体51を通る第2の光ファイバー(図示せず)を有する。これにより、温調空間53から外部への熱の流出を抑制することができる。また、温調空間53内の温度の均一性を向上させることができる。
【0081】
<第2実施形態に係る装置状態推定方法>
次に、装置状態推定方法の一例について、図7を用いて説明する。図7は、第2実施形態に係る基板処理装置1Aの装置状態推定方法の一例を示すフローチャートである。ここでは、処理容器10Aの状態を推定する。
【0082】
ステップS301において、第1分光光度計63でスペクトルを計測する。また、ステップS302において、第2分光光度計64でスペクトルを計測する。
【0083】
ここでは、制御部90は、昇降機構25を制御して、処理容器10からウエハボート16が搬出された状態とする。処理容器10内は、減圧された真空雰囲気となっている。制御部90は、ヒータ52に電力を供給するヒータ電源(図示せず)を制御して、ヒータ52に所定の電力を供給する。これにより、ヒータエレメント52a3,52a4が加熱され、熱放射による光(電磁波:可視光、赤外光)が放射される。
【0084】
第1分光光度計63では、ヒータエレメント52a3から放出された放射光を処理容器10で透過させ、処理容器10を透過することで減衰した光を計測する。第1分光光度計63で計測された光のスペクトルの情報は、制御部90に出力される。
【0085】
また、第2分光光度計64では、ヒータエレメント52a4から放出された放射光を処理容器10で透過させ、処理容器10を透過することで減衰した光を計測する。第2分光光度計64で計測された光のスペクトルの情報は、制御部90に出力される。
【0086】
なお、ステップS301とステップS302の順番は逆でもよく、同時に行ってもよい。
【0087】
ステップS303において、第1分光光度計63で計測されたスペクトルと、第2分光光度計64で計測されたスペクトルと、の差分から内筒11A及び外筒12の吸光度を検出する。
【0088】
ここで、第1分光光度計63で計測された光路73のスペクトルと、第2分光光度計64で計測された光路74のスペクトルと、の差分から求めた吸光度は、内筒11Aの側壁1枚分の吸光度に相当する。
【0089】
また、2つの光路73,74におけるスペクトル強度の減少量を、内筒11Aの側壁1枚分の吸光度に基づいて処理することで、外筒12の側壁1枚分の吸光度を算出する。
【0090】
ステップS304において、内筒11Aの吸光度及び外筒12の吸光度から、内筒11A及び外筒12の表面状態を推定する。
【0091】
ここでは、ステップS303で求めた内筒11Aの側壁1枚分の吸光度と、あらかじめ記憶された内筒11Aの表面状態と吸光度との関係の情報に基づいて、内筒11Aの側壁の状態を推定する。また、ステップS303で求めた外筒12の側壁1枚分の吸光度と、あらかじめ記憶された外筒12の表面状態と吸光度との関係の情報に基づいて、外筒12の側壁の状態を推定する。
【0092】
また、ヒータエレメント52aから放出された放射光が処理容器10を透過する際、処理容器10の温度、処理容器10の物性等によっても、特定の波長の光が吸収及び/又は反射される。即ち、処理容器10の状態によって、スペクトルの強度や吸光度が変化する。制御部90は、メモリ92に、処理容器10の温度や物性と吸光度との関係の情報を記憶している。制御部90は、ステップS303で検出されたスペクトルの強度や吸光度と、あらかじめ記憶された処理容器10の温度や物性とスペクトルの強度や吸光度との関係の情報に基づいて、処理容器10の状態(温度、物性等)を推定する。
【0093】
このように、図3,4,7に示す装置状態推定方法によれば、分光光度計(61~64)の計測結果に基づいて、処理容器10の表面の状態を推定することができる。
【0094】
例えば、基板処理後において、処理容器10の表面に堆積した反応副生成物の累積膜厚を推定することができる。また、累積膜厚に応じて、基板処理の制御(例えば、処理ガスの流量、基板温度等の成膜条件)を補正してもよい。これにより、基板処理の精度(例えば、成膜処理の面内均一性、膜厚等)を向上させることができる。
【0095】
また、例えば、基板処理中において、処理容器10の表面に堆積した反応副生成物の累積膜厚を推定することができる。また、基板処理中において推定した累積膜厚に基づいて、基板処理の制御を補正してもよい。これにより、基板処理の精度を向上させることができる。また、基板処理の再現性を向上させることができ、処理された基板Wのロット間のばらつきを低減することができる。
【0096】
また、作業者が治具等を用いて直接累積膜厚を測定しなくても、累積膜厚を推定することができる。これにより、例えば、基板処理のレシピ開発におけるテストランの回数を低減することができる。また、作業者の手間を削減することができる。
【0097】
また、処理容器10の表面の状態を推定することにより、処理容器10の経年劣化の度合いを把握することができる。これにより、適切なタイミングで部品交換を行うことができるので、基板処理装置1のダウンタイムを削減することができる。
【0098】
また、リファレンスの処理容器10の新品時に計測したスペクトルと、新たに設置された処理容器10の新品時に計測したスペクトルと、の差分に基づいて、吸光度を検出し、新たに設置された処理容器10の特性を推定してもよい。また、新たに設置された処理容器10の特性に応じて、基板処理の制御を補正してもよい。
【0099】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせ等、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0100】
W 基板
1,1A 基板処理装置
10,10A 処理容器
11,11A 内筒
12 外筒
61~64 分光光度計
50 炉本体
51 筐体
51a 断熱部
51b 補強部
51c1~51c3 貫通孔
52 ヒータ
52a ヒータエレメント
53 温調空間
54 ベースプレート
90 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7