(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178685
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】メラミン化粧板表面保護用フィルム及びメラミン化粧板
(51)【国際特許分類】
C08L 33/02 20060101AFI20241218BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241218BHJP
C08L 51/06 20060101ALI20241218BHJP
B32B 27/30 20060101ALN20241218BHJP
【FI】
C08L33/02
B32B27/18 Z
C08L51/06
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097012
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】峯田 翔平
(72)【発明者】
【氏名】中谷 文紀
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK73A
4F100AK73H
4F100AL05A
4F100AL09A
4F100AL09H
4F100AN02A
4F100AN02H
4F100AT00
4F100BA02
4F100CA16A
4F100CA16H
4F100GB07
4F100JL11
4J002BG01W
4J002BN11X
4J002FD166
4J002GF00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GP00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】メラミン化粧板への密着性、耐水白化性に優れるメラミン化粧板表面保護用フィルムを提供することにある。
【解決手段】樹脂組成物(B)からなる層(II)を有し、前記樹脂組成物(B)が、式1:CH2=C(R1)COO-R2(ここで、R1は、水素原子又はメチル基、R2は、水素原子又は第三級炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び脂環式炭化水素基から選ばれる基である。)で示される単量体に由来する構成単位を含有するコアシェルゴム(B-2)を含有する、メラミン化粧板表面保護用フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物(B)からなる樹脂層(II)を有し、前記樹脂組成物(B)が、以下式1で示される単量体に由来する構成単位を含有するコアシェルゴム(B-2)を含有する、メラミン化粧板表面保護用フィルム。
CH2=C(R1)COO-R2 - 式1
ここで、R1は、水素原子又はメチル基、R2は、水素原子又は第三級炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び脂環式炭化水素基から選ばれる基である。
【請求項2】
前記樹脂組成物(B)の酸価が5mgKOH/g以上である、請求項1に記載のメラミン化粧板表面保護用フィルム。
【請求項3】
酸価が5mgKOH/g未満であるアクリル樹脂組成物(A)からなる樹脂層(I)をさらに有する、請求項1に記載のメラミン化粧板表面保護用フィルム。
【請求項4】
前記樹脂層(I)の最大高さRzが0.15μm以上である、請求項3に記載のメラミン化粧板表面保護用フィルム。
【請求項5】
前記アクリル樹脂組成物(A)100質量%におけるアンチブロッキング剤の含有率が0.01~2質量%である、請求項3に記載のメラミン化粧板表面保護用フィルム。
【請求項6】
前記樹脂層(II)の厚みが3~10μmである、請求項3に記載のメラミン化粧板表面保護用フィルム。
【請求項7】
前記アクリル樹脂組成物(A)がコアシェルゴムを含有し、該コアシェルゴムの粒子径が100nm以上である、請求項3に記載のメラミン化粧板表面保護用フィルム。
【請求項8】
請求項3~7のいずれか一項に記載のメラミン化粧板表面保護用フィルムと、メラミン基材とが、樹脂層(I)、樹脂層(II)、メラミン基材の順に積層されたメラミン化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラミン化粧板表面保護用フィルム及びメラミン化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂フィルムは透明性や耐候性に優れ、表面硬度も高いことから、例えば、電気製品の光学部品、自動車の内装部品、看板、建材等、屋内又は屋外用途の各種成形品に貼合して、表面を保護するフィルムとして好ましく用いられている。また、アクリル樹脂フィルムの表面に反射防止処理や防汚処理等の表面処理を施して、これを成形品に貼合することにより、成形品に反射防止性や防汚性等の表面機能を付与することもできる。
【0003】
これらの貼合用アクリル樹脂フィルムをアクリル樹脂との接着性に乏しい基材に対して貼合する場合、接着剤、プライマー等を用いると工数と手間がかかるため、コスト面で不利である。そのため、アクリル樹脂フィルムに反応性基を導入する等して、密着性を付与したアクリル樹脂フィルムが開発されてきた。
【0004】
例えば特許文献1には、反応性基を有する単量体に由来する構成単位を含む重合体を含有した、メラミン化粧板への密着性に優れるフィルムが開示されている。
【0005】
例えば特許文献2には、ある一定の酸価を有する樹脂層を含有した、金属への密着性に優れるフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2014/192708号
【特許文献2】特開2013-103385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1ではメラミン化粧板へフィルムを貼合せた際の密着性が十分でなかった。一方、特許文献2では金属への密着性には言及しているものの、メラミン化粧板への密着性には言及されていなかった。
そこで、本発明の目的は、メラミン化粧板との密着性、耐水白化性に優れたメラミン化粧板表面保護用フィルム及びそれを用いたメラミン化粧板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意研究を行なった結果、前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下の[1]~[8]に係る発明である。
[1] 樹脂組成物(B)からなる樹脂層(II)を有し、前記樹脂組成物(B)が、以下式1で示される単量体に由来する構成単位を含有するコアシェルゴム(B-2)を含有する、メラミン化粧板表面保護用フィルム。
CH2=C(R1)COO-R2 - 式1
ここで、R1は、水素原子又はメチル基、R2は、水素原子又は第三級炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び脂環式炭化水素基から選ばれる基である。
[2] 樹脂組成物(B)の酸価が5mgKOH/g以上である、[1]に記載のメラミン化粧板表面保護用フィルム。
[3] 酸価が5mgKOH/g未満であるアクリル樹脂組成物(A)からなる樹脂層(I)をさらに有する、[1]又は[2]に記載のメラミン化粧板表面保護用フィルム。
[4] 樹脂層(I)の最大高さRzが0.15μm以上である、[3]に記載のメラミン化粧板表面保護用フィルム。
[5] 前記アクリル樹脂組成物(A)100質量%におけるアンチブロッキング剤の含有率が0.01~2質量%である、[3]又は[4]に記載のメラミン化粧板表面保護用フィルム。
[6] 前記樹脂層(II)の厚みが3~10μmである、[1]~[5]のいずれか一項に記載のメラミン化粧板表面保護用フィルム。
[7] 前記アクリル樹脂組成物(A)がコアシェルゴムを含有し、該コアシェルゴムの粒子径が100nm以上である、[3]~[6]のいずれか一項に記載のメラミン化粧板表面保護用フィルム。
[8] [3]~[7]のいずれか一項に記載のメラミン化粧板表面保護用フィルムと、メラミン基材とが、樹脂層(I)、樹脂層(II)、メラミン基材の順に積層されたメラミン化粧板。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、メラミン化粧板との密着性、耐水白化性に優れたメラミン化粧板表面保護用フィルム及びそれを用いたメラミン化粧板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[メラミン化粧板表面保護用フィルム]
本発明のメラミン化粧板表面保護用フィルムは、樹脂組成物(B)からなる樹脂層(II)を備える。
該樹脂組成物(B)は、メラミン基材との密着性を発現するため、下記式1で示される単量体に由来する構成単位を含有するコアシェルゴム(B-2)を含む。
CH2=C(R1)COO-R2 - 式1
ここで、R1は、水素原子又はメチル基、R2は、水素原子又は第三級炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び脂環式炭化水素基から選ばれる基である。
本発明のメラミン化粧板表面保護用フィルムは、樹脂層(II)にさらにアクリル樹脂組成物(A)からなる樹脂層(I)を積層していてもよい。
本発明のメラミン化粧板表面保護用フィルムが樹脂層(I)と樹脂層(II)の積層フィルムである場合(以下、積層フィルムという)、メラミン基材と貼合する際には、樹脂組成物(B)からなる樹脂層(II)を被貼合体側に向けて貼合層とし、アクリル樹脂組成物(A)からなる樹脂層(I)を被貼合体とは反対側に向けて表面層とするのが好ましい。
【0011】
[樹脂層(I)]
本発明の樹脂層(I)は、酸価が5mgKOH/g未満であるアクリル樹脂組成物(A)からなる。酸価の下限値は特に制限ないが、0mgKOH/gであってもよい。
【0012】
本発明における「酸価」は、一般的な中和滴定により求められる値であり、具体的には後述の実施例に記載の方法によって求められる。樹脂中に無水物化しているものがあれば、開環させ酸とし、その酸量の総量を酸価とする。これは、押出条件によって酸が無水物化する割合が大きく異なるためである。
【0013】
樹脂層(I)の最大高さRzは0.11μm以上が好ましく、0.15μm以上がより好ましく、0.18μm以上が更に好ましい。樹脂層(I)の最大高さRzが0.11μm以上であると、メラミン化粧板向けに枚葉でフィルムを保管する際にフィルム同士のブロッキングが防止でき、取扱性に優れる。最大高さRzの上限値は特に制限ないが、たとえば1.0μm以下である。最大高さRzは、後述するアンチブロッキング剤により調整することができる。
【0014】
樹脂層(I)の100℃における貯蔵弾性率は、1~1500MPaが好ましく、1~1000MPaがより好ましく、100~950MPaがより好ましく、500~900MPaが更に好ましい。樹脂層(I)の100℃における貯蔵弾性率が1MPa以上だと、メラミン化粧板の耐熱性及び表面硬度が良好となる。樹脂層(I)の100℃における貯蔵弾性率が1500MPa以下だと、エンボス形状を熱プレスにより転写する際にエンボス形状の転写性が良好となり、外観の良好なメラミン化粧板を作成することができる。
メラミン化粧板は通常140~160℃の温度で熱プレスして作成するが、大面積の積層板を数多く同時に積層してプレスする際には、部位により温度が不均一となり100℃前後の低温部分が生じる場合がある。そのような場合でも、100℃における貯蔵弾性率が1000MPa以下であれば良好な外観のメラミン化粧板を得ることができる。
貯蔵弾性率は実施例に記載の方法で測定することができる。
【0015】
[アクリル樹脂組成物(A)]
本発明のアクリル樹脂組成物(A)は、フィルム生産性及び取扱い性の点からコアシェルゴム(A-1)を含有することが好ましく、例えば、コアシェルゴム(A-1)と、熱可塑性重合体(A-2)と、添加剤(A-3)とを含有することができる。
特に、アクリル樹脂組成物(A)は、(A-1)と(A-2)との合計100質量%に対して、(A-1)を5.5~95質量%、(A-2)を5~94.5質量%含み、更に、(A-1)と(A-2)との合計100質量部に対して、添加剤(A-3)を0.01~20質量部含有することが好ましい。
コアシェルゴム(A-1)の含有率が5.5質量%以上であれば、樹脂層(I)に靭性がより付与され、積層フィルム生産時にフィルム切れが起こりにくく、生産性がより良好である。また、積層フィルム使用時の取扱い性が良好である。熱可塑性重合体(A-2)の含有率が5質量%以上であれば、樹脂層(I)の表面硬度がより良好となる。
【0016】
アクリル樹脂組成物(A)は、(A-1)と(A-2)との合計100質量%に対して、(A-1)を10~90質量%、(A-2)を10~90質量%含むことがより好ましく、(A-1)を15~85質量%、(A-2)を15~85質量%含むことが更に好ましい。
また、アクリル樹脂組成物(A)は、(A-1)と(A-2)との合計100質量部に対して、添加剤(A-3)を0.1~10質量部含有することがより好ましく、1~8質量部含有することが更に好ましい。
【0017】
[コアシェルゴム(A-1)]
コアシェルゴム(A-1)は多層構造の粒子であればよく、内層としての弾性共重合体(a-1)を含む層上に、外層としての硬質重合体(a-2)を含む層が形成された2層以上の多層構造を有するゴム粒子であることが好ましい。
コアシェルゴムの材質としてはアクリルゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム等が挙げられるが、透明性や耐候性の点から、アクリルゴムが好ましい。アクリルゴムとしては、特許文献1に記載されているものと同様のものが挙げられる。
【0018】
コアシェルゴムの粒子径は100nm以上が好ましく、100~400nmがより好ましく、150~350nmが更に好ましく、200~300nmが特に好ましい。コアシェルゴムの粒子径が100nm以上だと、単位面積当たりのゴム添加量を少なくできる観点から、表面硬度がより良好となる。コアシェルゴムの粒子径が400nm以下だと、フィルムの透明性に優れる。
【0019】
[熱可塑性重合体(A-2)]
熱可塑性重合体(A-2)は、コアシェルゴム(A-1)以外の熱可塑性重合体であり、メタクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体を重合して得られる重合体であることが好ましい。
熱可塑性重合体(A-2)としては、例えば、特許文献1に記載されている熱可塑性重合体や高分子系の加工助剤が挙げられる。
【0020】
[添加剤(A-3)]
添加剤(A-3)は、コアシェルゴム(A-1)及び熱可塑性重合体(A-2)以外の化合物であり、例えば、アンチブロッキング剤、安定剤、滑剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤が挙げられる。
【0021】
例えば、基材を保護するために耐候性を付与する点から、添加剤(A-3)が紫外線吸収剤であることが好ましい。
紫外線吸収剤の分子量は、300以上が好ましく、400以上がより好ましい。分子量が300以上であれば、射出成形金型内で真空成形又は圧空成形を施す際に紫外線吸収剤が揮発しにくく、金型汚れが発生しにくい。更に、成形後の紫外線吸収剤のブリードアウトが少なくなる。
紫外線吸収剤としては、分子量400以上のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、分子量400以上のトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。長期の紫外線遮蔽能を保持させる点から、分子量400以上のトリアジン系紫外線吸収剤がより好ましい。
【0022】
分子量400以上のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば「チヌビン234」(商品名、チバガイギー社製);「アデカスタブLA-31」(商品名、(株)ADEKA製)が挙げられる。
分子量400以上のトリアジン系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば「チヌビン1577」(商品名、チバガイギー社製)が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
紫外線吸収剤の添加量は、耐候性の点から、コアシェルゴム(A-1)と熱可塑性重合体(A-2)との合計100質量部に対して、0~20質量部が好ましい。また、成形時の金型汚れ防止、又はブリードアウト防止の点から1~5質量部がより好ましい。
【0024】
また、耐候性をより向上させる点から、ヒンダードアミン系の光安定剤等のラジカル捕捉剤を紫外線吸収剤と併用することが好ましい。
ラジカル捕捉剤の市販品としては、例えば「アデカスタブLA-57」、「アデカスタブLA-62」、「アデカスタブLA-67」、「アデカスタブLA-63」、「アデカスタブLA-68」(以上いずれも商品名、(株)ADEKA製);「サノールLS-770」、「サノールLS-765」、「サノールLS-292」、「サノールLS-2626」、「サノールLS-1114」、「サノールLS-744」(以上いずれも商品名、三共ライフテック(株)製)が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
ラジカル捕捉剤の添加量は、耐ブリードアウト性の点から、コアシェルゴム(A-1)と熱可塑性重合体(A-2)との合計100質量部に対して、0~10質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましい。
【0026】
また、ブロッキング防止効果を担持させる点から、添加剤(A-3)がアンチブロッキング剤であることが好ましい。
アンチブロッキング剤の市販品としては、例えば「AEROSIL R976」(日本アエロジル(株)製)が挙げられる。
【0027】
アンチブロッキング剤の添加量は、アクリル樹脂組成物(A)100質量%に対して、0.01~2質量%が好ましく、0.05~1.5質量%が好ましく、0.1~1.0質量%が更に好ましい。アンチブロッキング剤の含有率が0.01質量%以上だと、メラミン化粧板向けに枚葉でフィルムを保管する際にフィルム同士のブロッキングが防止でき、取扱性に優れる。アンチブロッキング剤の含有率が2質量%以下だと、得られるフィルムの透明性の低下を抑制でき、且つ、フィッシュアイの発生を低減できる。
【0028】
また、メラミン化粧板をプレスにより作成する際の、プレス板との貼り付きを防止する点から、添加剤(A-3)が離型剤であることが好ましい。
離型剤としては、シリコーン系化合物、フッ素系化合物、アルキルアルコール、アルキルカルボン酸が挙げられる。中でも、入手の容易さと経済性の面から、アルキルカルボン酸が好ましい。
アルキルカルボン酸としては、例えば、リノール酸、バクセン酸、ステアリン酸、オレイン酸、マルガリン酸、パルミトレイン酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
離型剤の添加量は、プレス板との貼り付き防止の点から、コアシェルゴム(A-1)と熱可塑性重合体(A-2)との合計100質量部に対して、0.01~2質量部が好ましく、0.1~0.5質量部がより好ましい。
【0030】
[樹脂層(II)]
本発明の樹脂層(II)は、基材との密着性を発現するため、下記式1で示される単量体に由来する構成単位を含有するコアシェルゴム(B-2)を含む。
CH2=C(R1)COO-R2 - 式1
ここで、R1は、水素原子又はメチル基、R2は、水素原子又は第三級炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び脂環式炭化水素基から選ばれる基である。
【0031】
樹脂組成物(B)を構成する前記コアシェルゴム(B-2)以外の成分としては、反応性基含有アクリル重合体(B-1)、熱可塑性重合体(B-3)、添加剤(B-4)を含んでよい。
【0032】
[樹脂組成物(B)]
本発明の樹脂組成物(B)は、以下の(1)又は(2)で表現される。
(1):反応性基含有アクリル重合体(B-1)と、コアシェルゴム(B-2)と、熱可塑性重合体(B-3)との合計100質量%に対して、(B-1)を0~99質量%、(B-2)を1~100質量%含有し、熱可塑性重合体(B-3)を0~99質量%、更に、(B-1)と(B-2)と(B-3)との合計100質量部に対して、添加剤(B-4)を0~50質量部含有し、(B-1)及び(B-2)はアミノ基又はメチロール基に対する反応性基を有する単量体単位を含有し、(B-1)と(B-2)と(B-3)の合計100質量%に対する反応性基を有する単量体単位の含有率が1.5質量%以上であり、(B-1)のガラス転移温度(Tg)が60~120℃であることが好ましい。
【0033】
(2):反応性基含有アクリル重合体(B-1)と、コアシェルゴム(B-2)と、熱可塑性重合体(B-3)との合計100質量%に対して、(B-1)を0~99質量%、(B-2)を1~100質量%含有し、熱可塑性重合体(B-3)を0~99質量%、更に、(B-1)と(B-2)と(B-3)との合計100質量部に対して、添加剤(B-4)を0~50質量部含有し、樹脂組成物(B)の酸価が5mgKOH/g以上であり、(B-1)のTgが60~120℃であることが好ましい。
【0034】
前記(1)及び(2)において、樹脂組成物(B)は、メラミン密着性及びフィルム取扱い性、耐傷付き性の点から、(B-1)と(B-2)と(B-3)の合計100質量%に対して、(B-1)を0~95質量%、(B-2)を5~95質量%、(B-3)を0~95質量%含有することが好ましく、(B-1)を0~90質量%、(B-2)を10~90質量%、(B-3)を0~90質量%含有することが更に好ましく、(B-1)を0~85質量%、(B-2)を15~85質量%、(B-3)を0~85質量%含有することが更に好ましい。
また、(B-1)と(B-2)と(B-3)の合計100質量部に対して、(B-4)を0.1~10質量部含有することが好ましく、1~5質量部含有することがより好ましく、2~4質量部含有することが更に好ましい。
【0035】
メラミン密着性の点からは、(B-1)と(B-2)の両方を適量含有することが好ましい。(B-1)と(B-2)が多いほど反応性基の含有量が増し、メラミン密着性が向上する。また、(B-2)が多いほど、樹脂層(II)内部での破壊が抑制されるために、メラミン密着性が向上する。
フィルム取扱い性の点からは、(B-2)が多いほど好ましい。(B-2)が多いほど、樹脂層(II)の靭性が向上し、積層フィルムの取扱い性が良好となる。
耐傷付き性の点からは、(B-2)が少ないほど好ましい。(B-2)が少ないほど、鉛筆硬度が上昇し、耐傷付き性が向上する。
また、フィルム外観の点からは、(B-2)が少ないほど好ましい。(B-2)が少ないほど、溶融成形時の熱劣化によるゲル化物の生成が抑制され、異物が減少し、フィルム外観が良好となる。
【0036】
前記(1)では、(B-1)と(B-2)と(B-3)の合計100質量%に対する反応性基を有する単量体単位の含有率が1.5質量%以上であることが好ましい。また、反応性基含有アクリル重合体(B-1)とコアシェルゴム(B-2)がアミノ基又はメチロール基に対する反応性基を有する単量体単位を含有し、その含有率は、それぞれ反応性基含有アクリル重合体(B-1)100質量%に対して1.5質量%以上、コアシェルゴム(B-2)100質量%に対して1.5質量%以上であることが好ましい。反応性基を有する単量体単位を1.5質量%以上含有することにより、良好なメラミン密着性が得られる。
より良好なメラミン密着性を得る点から、反応性基を有する単量体単位を2質量%以上含有することが好ましく、3質量%以上含有することがより好ましい。反応性基を有する単量体単位の含有率の上限は、特に制限ないが例えば、50質量%以下とすることができる。尚、この含有率は原料の仕込み量から算出した値である。
【0037】
前記(2)では、樹脂組成物(B)の酸価が5mgKOH/g以上である。酸価が5mgKOH/g以上であれば、良好なメラミン密着性が得られる。酸価は200mgKOH/g以下であることが好ましく、酸価が200mgKOH/g以下であれば、樹脂組成物(B)の吸水性が低下し、積層フィルム及び、積層フィルムを積層したメラミン化粧板の耐水白化性が向上する。メラミン密着性と耐水白化性の点から、酸価は10mgKOH/g以上が好ましく、15mgKOH/g以上がより好ましく、20mgKOH/g以上がさらに好ましい。一方、150mgKOH/g以下がより好ましく、100mgKOH/g以下が更に好ましく、80mgKOH/g以下が特に好ましく、50mgKOH/g以下が最も好ましい。尚、酸価は後述する方法により算出される値である。
【0038】
樹脂組成物(B)100質量%に対する反応性基を有する単量体単位の含有率は1.5質量%以上であることが好ましい。反応性基を有する単量体単位を1.5質量%以上含有することにより、良好なメラミン密着性が得られる。より良好なメラミン密着性を得る点から、反応性基を有する単量体単位を2質量%以上含有することが好ましく、3質量%以上含有することがより好ましい。反応性基を有する単量体単位の含有率の上限は、特に制限ないが例えば、50質量%以下とすることができる。尚、この含有率は原料の仕込み量から算出した値である。
【0039】
樹脂組成物(B)のゲル分率は、5~80%が好ましい。ゲル分率が高いほどフィルムの靭性が向上し、フィルムの取扱い性や製膜性が改善する。また、ゲル分率が低いほど樹脂の熱劣化異物の生成が抑制され、フィルム外観が良好となる。ゲル分率が5~80%であれば、フィルム靭性とフィルム外観を両立できる。
フィルム靭性の点からは、ゲル分率は45~80%がより好ましく、50~80%が更に好ましい。
また、フィルム外観の点からは、ゲル分率は5~30%がより好ましく、5~25%が更に好ましい。
【0040】
[反応性基含有アクリル重合体(B-1)]
反応性基含有アクリル重合体(B-1)は、前記(1)又は(2)における特定の反応性基を有する単量体単位を含有する。
反応性基含有アクリル重合体(B-1)は、例えば、反応性基を有する単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、その他の単量体単位を含有することができる。
具体的には、反応性基含有アクリル重合体(B-1)は、反応性基を有する単量体単位1.5~100質量%、芳香族ビニル単量体単位0~3質量%、その他の単量体単位0~96質量%の合計100質量%を含有することができる。
【0041】
反応性基含有アクリル重合体(B-1)は、カルボキシル基等のアミノ基又はメチロール基に対する反応性基を有する単量体単位を含有するために、メチロールメラミン及びその誘導体を含む材料、具体的には、メラミン化粧板のメラミン樹脂又は、その前駆体と接触させた状態で加熱反応させることで、メラミン化粧板と密着することができる。
【0042】
前記アミノ基又はメチロール基に対する反応性基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、酸無水物基、イミド基、エポキシ基が挙げられる。反応性基含有アクリル重合体(B-1)は、これら反応性基の1種を有していてもよく、2種以上を有していてもよい。
前記反応性基の反応温度は、触媒の有無やpH値等により異なるが、50~200℃が好ましく、110~170℃がより好ましい。メラミン化粧板は、通常110~170℃の温度で作製されるため、反応温度が110~170℃であれば、本発明の積層フィルムをメラミン基材と積層して加熱することで、メラミン化粧版の作製と同時に積層フィルムをメラミン基材と充分に密着させることができる。
【0043】
反応性基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等の水酸基を有する単量体;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルオキシアルキルカルボン酸、(メタ)アクリロイルオキシ芳香族カルボン酸等のカルボキシル基を有する単量体;(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル等のアミノ基を有する単量体;(メタ)アクリル酸アルキルアミドアルキルエステル等のアミド基を有する単量体;無水マレイン酸等の酸無水物単量体;マレイミド、アルキルマレイミド等のマレイミド単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有単量体が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
これらの中でも、メラミン化粧板への貼合せ時のプレス条件が低温短時間である場合における熱水試験後のメラミン密着性の点から、反応性基としてカルボキシル基、酸無水物基、又はエポキシ基を有する単量体が好ましい。
また、酸無水物等の加水分解性部位を有さず、乳化重合、懸濁重合等の水系重合において効率的に重合体を製造することができる点から反応性基としてカルボキシル基、又はエポキシ基を有する単量体がより好ましい。
また、溶融成形時の架橋防止の点から、反応性基としてカルボキシル基、酸無水物基を有する単量体が更に好ましい。
【0045】
反応性基としてカルボキシル基を有する単量体としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸が挙げられる。
反応性基として酸無水物基を有する単量体としては、例えば、無水マレイン酸、無水グルタル酸が挙げられる。溶融成形時の架橋反応によりフィルム外観が不良となることを防ぐ点で、無水マレイン酸、無水グルタル酸が好ましい。
無水マレイン酸、無水グルタル酸の場合は、基本的には芳香族ビニル単量体単位を共重合する必要がある為、耐候試験後の黄変を防ぐ点では、メタクリル酸、アクリル酸が好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
反応性基を有する単量体の使用量は、反応性基含有アクリル重合体(B-1)に対し1.5~100質量%が好ましい。使用量は、メラミン密着性と副反応防止の点から、2~80質量%がより好ましく、3~30質量%が更に好ましい。
使用量が1.5質量%以上であれば、メラミン密着性がより良好となる。
【0047】
使用量が80質量%以下であれば、非反応性の単量体を20質量%以上併用することになり、反応性基による副反応を抑制することができる。
また、反応性基を有する単量体が水溶性である場合、非水溶性の単量体を併用することで水への溶解を抑制することができ、乳化重合、懸濁重合等の水系重合において効率的に重合体を製造することができる。
反応性基の使用量を増加させると、(B-2)及び(B-3)との相溶性が低下し、積層フィルムの外観が悪化又は曇価が増大する場合がある。積層フィルムの外観及び曇価を低く保つ点からは、反応性基の量は少ないほど好ましい。
【0048】
芳香族ビニル単量体の使用量は、反応性基含有アクリル重合体(B-1)100質量%に対して0~3質量%が好ましい。使用量が3質量%以下であれば、得られる積層フィルム及びメラミン化粧板の耐候性が良好となる。
使用量は0~1質量%がより好ましく、0~0.1質量%が更に好ましい。尚、使用量は少ない方が好ましく、0質量%でもよい。
【0049】
その他の単量体としては、熱可塑性重合体(A-2)の重合に用いる単量体と同様の単量体を用いることができる。しかしながら、コアシェルゴム(B-2)、熱可塑性重合体(B-3)との相溶性や、樹脂層(I)との密着性の点から、アクリル系単量体、特にメタクリル酸メチルが好ましい。
その他の単量体の使用量は、反応性基による架橋等の反応を抑制する点から、反応性基含有アクリル重合体(B-1)に対して0~96質量%が好ましく、20~96質量%がより好ましい。尚、使用量は0質量%でもよい。
【0050】
反応性基含有アクリル重合体(B-1)の製造には、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、溶液重合等の各種重合法を用いることができる。但し、反応性基を有する単量体として、酸無水物、イミド構造を有する単量体を用いる場合には、重合時に加水分解が生じるため、懸濁重合や乳化重合等の水系重合で製造することはできない。
重合時には、連鎖移動剤、その他の重合助剤等を使用してもよい。連鎖移動剤としてはメルカプタン類が好ましい。
【0051】
反応性基含有アクリル重合体(B-1)のTgは60~120℃が好ましく、60~100℃がより好ましく、70~98℃が更に好ましく、75~95℃が特に好ましい。
Tgが60℃以上であれば、本発明の積層フィルムを使用したメラミン化粧板の耐熱性、耐水白化性が良好となり、特に、65℃の温水に48時間浸漬する試験後のメラミン密着性と耐白化性が良好となる。また、フィルム及び原料樹脂のブロッキング性が低下するため、フィルムロールからの巻出しが容易で取扱い性に優れるほか、ブロッキング跡による外観不良を生じにくくなり、外観品位に優れる積層フィルムを得ることができる。
Tgが120℃以下であれば、本発明の積層フィルムを積層したメラミン化粧板を作成する際、より低温でプレス加工をしてもメラミン基材と積層フィルムとの密着性がより良好となる。即ち、積層フィルムを積層したメラミン化粧板を作成する際の加工条件が緩和される。
【0052】
尚、Tgは、反応性基含有アクリル重合体(B-1)を構成する成分の単独重合体のTgの数値を用い、Fox式により求めることができる。Fox式を以下に示す。
1/(273+Tg)=Σ(wi/(273+Tgi))
式中、Tgは共重合体(または、その混合物)のTg(℃)、wiは単量体iの質量分率、Tgiは単量体iを重合して得られる単独重合体のTg(℃)である。
【0053】
ここで、単独重合体のTgの数値としては、POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION(WILEY INTERSCIENCE)に記載の数値又は、モノマーメーカーのカタログ値を用いる。尚、単量体が架橋性単量体を含有する場合には、架橋性単量体を除いた単量体についてTgを求めることとする。
【0054】
[コアシェルゴム(B-2)]
コアシェルゴム(B-2)としては、下記式1で示される単量体に由来する構成単位を含有するものであれば、特に限定されない。
CH2=C(R1)COO-R2 - 式1
ここで、R1は、水素原子又はメチル基、R2は、水素原子又は第三級炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び脂環式炭化水素基から選ばれる基である。
【0055】
また、コアシェルゴム(B-2)の酸価は、5mgKOH/g以上であることが好ましい。酸価が5mgKOH/g以上であれば、良好なメラミン密着性が得られる。酸価は200mgKOH/g以下であることが好ましく、酸価が200mgKOH/g以下であれば、樹脂組成物(B)の吸水性が低下し、積層フィルム及び、積層フィルムを積層したメラミン化粧板の耐水白化性が向上する。接着性と耐水白化性の点から、酸価は10mgKOH/g以上が好ましく、15mgKOH/g以上がより好ましく、20mgKOH/g以上がさらに好ましい。一方、150mgKOH/g以下がより好ましく、100mgKOH/g以下が更に好ましく、80mgKOH/g以下が特に好ましく、50mgKOH/g以下が最も好ましい。尚、酸価は後述する方法により算出される値である。コアシェルゴム(B-2)が、前記式1で示される単量体を重合して得られる重合体である場合は、加熱処理することによって酸基を有する単量体となり、上記酸価を満たすコアシェルゴム(B-2)となる。
酸価が上記範囲内であることで、アミノ基又はメチロール基に対する反応性基を有する単量体に由来する構成単位を含有するために、メチロールメラミン及びその誘導体を含む材料、具体的には、メラミン化粧板のメラミン樹脂又は、その前駆体と接触させた状態で加熱反応させることで、メラミン化粧板と接着することができる。
【0056】
反応性基を有する単量体の使用量は、コアシェルゴム(B-2)に対し1.5~100質量%が好ましい。使用量は、メラミン密着性と副反応防止の点から、2~80質量%がより好ましく、3~30質量%が更に好ましい。
使用量が1.5質量%以上であれば、メラミン密着性がより良好となる。
【0057】
さらに、コアシェルゴム(B-2)は、内層としての弾性共重合体(b-1)を含む層上に、外層としての硬質重合体(b-2)を含む層が形成された2層以上の多層構造を有するアクリルゴム粒子であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分として得られる1層又は2層以上の構造を有する内層としての弾性共重合体(b-1)を含む層上に、メタクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体をグラフト重合して得られる1層又は2層以上の構造を有する外層としての硬質重合体(b-2)を含む層が形成された、2層以上の多層構造を有するアクリルゴム粒子であることが好ましい。特に、メラミン化粧板との密着性の観点から、硬質重合体(b-2)に下記式1で示される単量体に由来する構成単位を含有するコアシェルゴム(B-2)を含むことが好ましい。
CH2=C(R1)COO-R2 - 式1
ここで、R1は、水素原子又はメチル基、R2は、水素原子又は第三級炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び脂環式炭化水素基から選ばれる基である。
また、コアシェルゴム(B-2)は、弾性共重合体(b-1)を含む層と硬質重合体(b-2)を含む層との間に、中間重合体(b-3)を含む層を1層以上備えていてもよい。
コアシェルゴム(B-2)中の弾性共重合体(b-1)の含有率は、10~90質量%が好ましく、20~70質量%がより好ましい。コアシェルゴム(B-2)中の硬質重合体(b-2)の含有率は、10~90質量%が好ましく、30~70質量%がより好ましい。コアシェルゴム(B-2)中の中間重合体(b-3)の含有率は、0~35質量%が好ましく、0~20質量%がより好ましい。また、該含有率が35質量%以下の場合、最終重合体のバランスが良好である。
【0058】
弾性共重合体(b-1)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む単量体組成物を重合して得られる重合体であることが好ましい。尚、(メタ)アクリル酸はアクリル酸又はメタクリル酸を示す。弾性共重合体(b-1)は、アクリル酸アルキルエステルを含む単量体組成物を重合して得られる重合体であることがより好ましい。
該単量体組成物は、更に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体、架橋性単量体を含んでもよい。例えば、弾性共重合体(b-1)は、炭素数1~8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル及び炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを80~100質量%、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体を0~20質量%、並びに、架橋性単量体を0~10質量%含むことができる(合計100質量%)。
【0059】
炭素数1~8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチルが好ましく、Tgの低いアクリル酸アルキルエステルがより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
前記アクリル酸アルキルエステルは、弾性共重合体(b-1)を構成する単量体の主成分として用いられる。具体的には、アクリル酸アルキルエステルの使用量は、弾性共重合体(b-1)を構成する全単量体に対し30~99.9質量%が好ましい。該使用量が30質量%以上である場合、フィルムの成形性が良好である。該使用量は50~95質量%がより好ましい。
尚、該使用量の範囲は、弾性共重合体(b-1)が2層以上の構造を有する場合には、弾性共重合体(b-1)の全体としてのアクリル酸アルキルエステルの使用量を示す。例えば、弾性共重合体(b-1)をハード芯構造にする場合には、1層目(芯部)のアクリル酸アルキルエステルの使用量を30質量%未満にすることもできる。
【0061】
炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチルが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。メタクリル酸アルキルエステルの使用量は、弾性共重合体(b-1)を構成する全単量体に対し0~69.9質量%が好ましく、0~40質量%がより好ましい。
【0062】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体としては、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な、他のビニル単量体が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体としては、例えば、スチレン、アクリロニトリルが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体を用いる場合、その使用量は、弾性共重合体(b-1)を構成する全単量体に対し0~69.9質量%が好ましく、0~20質量%がより好ましい。
【0063】
前記架橋性単量体としては、例えば、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸1,3-ブチレングリコール、ジメタクリル酸1,4-ブチレングリコール、ジメタクリル酸プロピレングリコール、グラフト交叉剤が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。架橋性単量体の使用量は、弾性共重合体(b-1)を構成する全単量体に対し0.1~10質量%が好ましく、0.5~5質量%がより好ましい。コアシェルゴム(B-2)の安定性の点で、架橋性単量体としてグラフト交叉剤を用いることが好ましい。
【0064】
前記グラフト交叉剤としては、例えば、α,β-不飽和カルボン酸又は不飽和ジカルボン酸のアリルエステル、メタリルエステル又はクロチルエステル;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートが挙げられる。これらの中では、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等のアリルエステルが好ましく、メタクリル酸アリルが優れた効果を有するためより好ましい。
このようなグラフト交叉剤は、主として、そのエステルの共役不飽和結合が、アリル基、メタリル基又はクロチル基よりもはるかに速く反応し、化学的に結合する。そして、遅く反応するアリル基、メタリル基又はクロチル基の大部分は、次層重合体の重合中に有効に働き、隣接二層間にグラフト結合を与える。
【0065】
硬質重合体(b-2)は、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、及び、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体を重合して得られる重合体であることが好ましい。また、メラミン化粧板との密着性の観点から、下記式1で示される単量体を含むことがさらに好ましい。
CH2=C(R1)COO-R2 - 式1
ここで、R1は、水素原子又はメチル基、R2は、水素原子又は第三級炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び脂環式炭化水素基から選ばれる基である。
硬質重合体(b-2)に使用される前記式1で示される単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸第三ブチルエステル、(メタ)アクリル酸フェニルエステル、(メタ)アクリル酸イソボルニルエステルなどが挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸第三ブチルエステルを使用することが好ましい。
硬質重合体(b-2)は、弾性共重合体(b-1)の存在下、硬質重合体(b-2)に使用される全単量体に対して、(メタ)アクリル酸直鎖アルキルエステル50~99質量%、および式1で示される単量体1~50質量%を重合して得られることが好ましく、(メタ)アクリル酸直鎖アルキルエステル60~99質量%、および式1で示される単量体1~40質量%を重合して得られることがより好ましく、(メタ)アクリル酸直鎖アルキルエステル70~99質量%、および式1で示される単量体1~30質量%を重合して得られることが更に好ましい。式1で示される単量体が1質量%以上であれば、得られるフィルムのメラミン密着性が向上する。また、式1で示される単量体が20質量%以下であれば、製造設備の腐食が発生しにくい。
硬質重合体(b-2)の製造に使用される(メタ)アクリル酸直鎖アルキルエステルとしては、特に限定されるわけではないが、重合反応性やコストの点から、アルキル基の炭素数が1~12であるものが好ましい。その具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸n-ブチル等が挙げられ、これらの単量体は単独で使用してもよく、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0066】
中間重合体(b-3)としては、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体、架橋性単量体を含む単量体組成物を重合して得られる重合体が好ましい。中間重合体(b-3)としては、炭素数1~8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体、架橋性単量体を含む単量体組成物を重合して得られる重合体がより好ましい。例えば、中間重合体(b-3)としては、炭素数1~8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルを10~90質量%、炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを90~10質量%、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体を0~20質量%、及び、架橋性単量体を0~10質量%含むことができる(合計100質量%)。
【0067】
中間重合体(b-3)に用いる各単量体は、弾性共重合体(b-1)の重合に用いる単量体と同様の単量体を用いることができる。また、中間重合体(b-3)におけるアクリル酸アルキルエステルの含有率(モノマー構成比率)は、弾性共重合体(b-1)におけるアクリル酸アルキルエステルの含有率よりも低く、硬質重合体(b-2)におけるアクリル酸アルキルエステルの含有率よりも高いことが好ましい。
【0068】
コアシェルゴム(B-2)の平均粒子径は、50~300nmが好ましく、50~200μmがより好ましく、60~100nmが更に好ましい。フィルムの透明性、製膜性の観点から、該平均粒子径は50nm以上が好ましい。尚、該平均粒子径は、後述する方法により測定した値である。
【0069】
コアシェルゴム(B-2)の製造方法としては、特に限定されない。弾性共重合体(b-1)及び硬質重合体(b-2)の製造方法としては、例えば、乳化重合法を用いることができる。また、乳化重合後、最外層を構成する重合体の重合時に、懸濁重合系に転換させる乳化懸濁重合によっても製造できる。重合温度は、用いる重合開始剤の種類や量によって適宜選択されるが、40~120℃が好ましく、60~95℃がより好ましい。重合開始剤としては、公知の重合開始剤を使用できる。重合開始剤は、水相及び単量体相のいずれか一方、又は双方に添加することができる。
【0070】
乳化重合法に使用できる乳化剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤が挙げられるが、アニオン系界面活性剤が好ましい。アニオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N-ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム等のカルボン酸塩系界面活性剤;ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩系界面活性剤;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸ナトリウム等の燐酸エステル塩系界面活性剤が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
乳化重合によって得られる重合体ラテックスは、例えば、目開きが100μm以下のフィルターで濾過し、その後、酸凝固法、塩凝固法、凍結凝固法、噴霧乾燥法等の方法により分離回収することができる。酸凝固法には、硫酸、塩酸、燐酸等の無機酸、酢酸等の有機酸を使用できる。塩凝固法には、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化カルシウム等の無機塩、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム等の有機塩を使用できる。得られた粉体の流動特性の観点から、塩化カルシウムが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。分離回収した重合体に対し、更に、洗浄、脱水、乾燥等を行なうことにより、コアシェルゴム(B-2)が得られる。
【0072】
[熱可塑性重合体(B-3)]
熱可塑性重合体(B-3)としては、反応性基含有アクリル重合体(B-1)及びコアシェルゴム(B-2)以外の樹脂であればよく、熱可塑性重合体(A-2)と同様のものが挙げられる。
【0073】
[添加剤(B-4)]
添加剤(B-4)は、反応性基含有アクリル重合体(B-1)、コアシェルゴム(B-2)及び熱可塑性重合体(B-3)以外の化合物であり、アクリル樹脂組成物(A)の調製に用いる添加剤(A-3)と同様のものを用いることができる。
【0074】
[積層フィルム]
本発明の積層フィルムの厚さは、10~100μmが好ましく、20~80μmがより好ましく、25~40μmが更に好ましい。
厚さが10μm以上であれば、積層フィルムの製造が容易であり、得られるメラミン化粧板に充分な耐候性を付与することができる。
厚さが100μm以下であれば、積層フィルムが適度な柔軟性を有するため、得られるメラミン化粧板を切断する際に剥離を防止することができる。また、単位面積あたりの質量の点で、経済的に有利である。更に、製膜性が安定して積層フィルムの製造が容易になる。更に、メラミン化粧板に積層した場合、化粧板の鉛筆硬度が上昇し、耐傷付き性が向上する。
【0075】
樹脂層(I)の厚さは、1~99.5μmが好ましく、5~50μmがより好ましく、20~50μmが更に好ましい。
樹脂層(I)の厚さが1μm以上であれば、得られるメラミン化粧板の耐候性及び耐水白化性が良好となる。また、樹脂層(I)の厚さが99.5μm以下であれば、単位面積あたりの質量の点で、経済的に有利である。
【0076】
樹脂層(II)の厚さは、0.5~99μmが好ましく、2~10μmがより好ましく、3~10μmがさらに好ましく、3~7μmが特に好ましい。
樹脂層(II)の厚さが0.5μm以上であれば、メラミン密着性が向上する。樹脂層(II)の厚さが99μm以下であれば、単位面積当たりの質量の点で、経済的に有利である。
【0077】
本発明の積層フィルムは上記表層以外の層(以下、中間層)を有してもよく、中間層としては公知の樹脂を使用してよい。例えばポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS系樹脂、AS系樹脂、MBS系樹脂、MS系樹脂、スチレン系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリグルタルイミド、無水グルタル酸ポリマー、ラクトン環化メタクリル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、TPO系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等の組成物があげられ、樹脂層(I)及び樹脂層(II)との相溶性の観点から、アクリル系樹脂及びフッ素系樹脂がより好ましい。
【0078】
中間層は、3層以下が好ましく、2層以下が好ましい。3層よりも多い場合、製膜が難
しい場合がある。
【0079】
本発明の積層フィルムの曇価(Haze)は20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。曇価が20%以下であれば、例えば、化粧板の保護用途に使用した際に下地となる化粧層の柄が曇ることがなく、意匠性に優れた化粧板を得ることができる。
【0080】
[積層フィルムの製造方法]
本発明の積層フィルムを製造する方法としては、生産性の点から、フィードブロックダイ又はマルチマニホールドダイを介した共押出法により、樹脂層(I)及び樹脂層(II)の積層構造を形成する方法が好ましい。また、樹脂層(I)及び樹脂層(II)を、それぞれTダイを用いた溶融押出法等によりフィルム状に成形して、その2種のフィルムを熱ラミネート法により積層する方法を用いることもできる。
更に、一方の樹脂層をフィルム状にし、その後他方の樹脂層を溶融押出法により積層する押出ラミネーション法を用いることもできる。溶融押出を行なう場合には、表面欠陥の原因となる核や不純物を取り除くために、200メッシュ以上のスクリーンメッシュで溶融状態にある樹脂組成物を濾過しながら押出することもできる。
【0081】
ペレット作成に用いる押出機は、ベント口が1個または複数付いたものが好ましい。これは樹脂組成物(B)を加熱することで酸が無水物化し、水および/またはメタノールおよび/または分解物などを発生するためベント口より除去することで、フィルム作成時の発泡による外観不良を防ぐことができるためである。使用する押出機は単軸や多軸押出機などを使用しても良い。フィルム化する押出機においても、同様な理由でベントの付いているものを使用することが好ましい。
【0082】
更に、樹脂組成物(B)の発泡及び熱劣化を防止する点から、フィルム状に成形された樹脂層(I)上に、樹脂組成物(B)を含む溶液を塗布して樹脂層(II)を積層する塗工法を用いることが好ましい。例えば、樹脂組成物(B)を有機溶媒等の溶媒に溶解させた溶液を、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等の印刷方法や、ブレードコート法、ロッドコート法等のコート法により樹脂層(I)上に塗工し、溶媒を除去するために加熱乾燥を行なう方法が挙げられる。尚、フィルム状に成形された樹脂層(II)上に、アクリル樹脂組成物(A)を含む溶液を塗布して樹脂層(I)を積層してもよい。
【0083】
前記溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒;キシレン、トルエン等の芳香族系溶媒;ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒;フェノール、クレゾール等のフェノール系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、メトキシトルエン等のエーテル系溶媒;蟻酸、酢酸等の脂肪酸系溶媒;無水酢酸等の酸無水物系溶媒;酢酸エチル、酢酸n-プロピル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の窒素含有溶媒;チオフェン、ジメチルスルホキシド等の硫黄含有溶媒;ジアセトンアルコール、2-メトキシエタノール(メチルセロソルブ)等の2種以上の官能基を有する溶媒及び水が挙げられる。
中でも、溶解力の点から、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドが好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
塗料としての印刷適性又はコート適性に応じて、樹脂組成物に皮張り防止剤、増粘剤、沈降防止剤、タレ防止剤、消泡剤、レベリング剤等の溶液性状を改善するための添加剤を添加することができる。更に、樹脂組成物に体質顔料、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、抗菌剤、防カビ剤、難燃剤等の塗膜性能を改善するための添加剤を添加することができる。
【0085】
[メラミン化粧板表面保護用フィルム、メラミン化粧板]
本発明の積層フィルムは優れた接着性を有し、各種の基材に接着することができるため、保護フィルムとして好適に使用できる。特に、本発明の積層フィルムはメラミン樹脂に対して優れた接着性(メラミン密着性)を示すため、メラミン化粧板表面保護用フィルムとして好適に使用できる。また、本発明のメラミン化粧板用保護用フィルムは耐水白化性にも優れるため、屋外での使用に適している。
【0086】
メラミン化粧板は、机、カウンター等の水平面、壁等の垂直面に使用されており、その構成、製造方法については、化粧板ハンドブック(新建材研究所、昭和48年発行)等に詳しく記載されている。これらのメラミン化粧板は、例えば、化粧板用の化粧紙にメラミン樹脂を含浸させ、乾燥したメラミン樹脂含浸紙と、芯材層である樹脂含浸コア紙とを積層し、更に必要に応じて、化粧紙の柄を保護する目的で、オーバーレイ紙にメラミン樹脂を含浸させ、乾燥したメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙と、反りを抑制する目的で最下層にバランス紙とを積層し、熱圧成形することによって得られる。
【0087】
前記メラミン樹脂含浸紙としては、例えば化粧板用の化粧紙にメラミン-ホルムアルデヒド樹脂を含浸させ、乾燥した樹脂含浸紙を用いることができる。前記樹脂含浸コア紙としては、例えばクラフト紙、不織布、織布等に、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂又はこれらの混合物を主成分とする樹脂液と、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等の無機充填材とを含むスラリーを含浸させ、乾燥した化粧板用のコア紙を使用できる。
熱圧成形は、例えば、樹脂含浸コア紙及びメラミン樹脂含浸紙(メラミン基材)と、本発明の積層フィルムとを積層し、温度110~170℃、圧力5~10MPa、時間10~90分の条件で行なうことができる。
【0088】
本発明の積層フィルムをメラミン基材に貼合する場合には、樹脂組成物(B)からなる樹脂層(II)をメラミン基材側に向けて接するようにして、熱融着させることが好ましい。この方法によれば、接着剤及び粘着剤を用いることなく貼合を行なうことができる。貼合は連続的又は非連続的に行なうことができ、例えば熱プレス法による非連続貼合法により行なうことができる。特に、メラミン化粧板を作成する際、メラミン基材と本発明の積層フィルムとを積層して熱圧成形すれば、メラミン化粧板作成と同時に積層フィルムを積層することができ、工程数が削減できるため有利である。さらに本発明の積層フィルムを用いれば、メラミン化粧板への貼合せ時のプレス条件が低温短時間であっても熱水試験後の密着性に優れる為、工業的に有利である。
【0089】
一方、本発明の積層フィルムを使用せず、例えば樹脂層(I)のみからなるフィルムを使用した場合、メラミン基材との接着性が低いため、接着剤やプライマーの使用が必要であり、コストが高くなり、生産性が大きく低下する。
これに対して本発明の積層フィルムを用いる場合、接着剤やプライマーの使用が不要であるため、工数の削減が可能であり、コストが削減できるため、工業的に有利である。
【実施例0090】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されない。実施例において「部」は「質量部」を表す。また、実施例中の略号は以下の通りである。
【0091】
MMA :メチルメタクリレート
MA :メチルアクリレート
BA :ブチルアクリレート
HPMA :2-ヒドロキシプロピルメタクリレート
MAA :メタクリル酸
St :スチレン
AMA :アリルメタクリレート
BDMA :1,3-ブチレングリコールジメタクリレート
CHP :クメンヒドロペルオキシド
tBH :t-ブチルハイドロパーオキサイド
LPO :ラウリルパーオキサイド
nOM :n-オクチルメルカプタン
RS610NA:モノn-ドデシルオキシテトラオキシエチレン燐酸ナトリウム(商品名:「フォスファノールRS-610NA」、東邦化学工業(株)製)
LA31 :(株)ADEKA製、「アデカスタブLA-31RG」(商品名)
2020 :BASF製、「Chimassorb2020」(商品名)
R976 :日本アエロジル製、「AEROSIL R976」(商品名)
1076 :BASF製、「Irganox1076」(商品名)
VH5 :メタクリル樹脂(PMMA)、三菱ケミカル社製、「アクリペットVH5001」(商品名)
MD :三菱レイヨン(株)製、「アクリペットMD001」(商品名)
【0092】
実施例における各種物性の測定は、以下の方法に従って実施した。
【0093】
(1)酸価
反応性基含有アクリル重合体(B-1)もしくはコアシェルゴム(B-2)の酸価を以下の方法により求めた。まず、サンプル0.4gをプロピレングリコールモノメチルエーテル50mlに溶解させ、65℃で3時間撹拌した。その後、アセトン/エタノールの混合溶媒50mlを添加し、中和滴定に供した。フェノールフタレインを指示薬として、0.1mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液で滴定した。また、サンプルを使用しない他は同様の操作で空試験を実施し、以下の式から酸価を求めた。
酸価=(A-B)×f×56.1×0.1/S
f:0.1mol/Lエタノール性水酸化カリウムの力価
S:サンプル量(g)
A:滴定に用いたエタノール性水酸化カリウム量(ml)
B:空試験に用いたエタノール性水酸化カリウム量(ml)
なお、樹脂組成物(B)の酸価計算値は、樹脂組成物(B)中に占める反応性基含有アクリル重合体(B-1)もしくはコアシェルゴム(B-2)の重量比率から算出した値である。
【0094】
(2)質量平均分子量(Mw)
重合体の質量平均分子量(Mw)を、以下の方法により求めた。重合体をテトラヒドロフランに溶解させた試料について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(機種名:「HLC-8200」、東ソー(株)製)、カラム(商品名:「TSK-GEL SUPER MULTIPORE HZ-H」、東ソー(株)製、内径4.6mm×長さ15cm×2本)、溶離液(テトラヒドロフラン)を用いて、温度40℃で測定を行なった。標準ポリスチレンによる検量線から、質量平均分子量(Mw)を求めた。
【0095】
(3)ガラス転移温度(Tg)
重合体のガラス転移温度をポリマーハンドブック[Polymer HandBook(J.Brandrup,Interscience,1989)]に記載されている値又はモノマーメーカーのカタログ値を用いてFox式から算出した。
【0096】
(4)平均粒子径
コアシェルゴムの平均粒子径は、乳化重合で得られた重合体のポリマーラテックスの最終粒子径を、光散乱光度計(製品名:「DLS-700」、大塚電子(株)製)を用い、動的光散乱法で測定した。
【0097】
(5)ゲル分率
得られた樹脂組成物(B)0.5gにアセトン50mlを加え、65℃で4時間撹拌した。その後、4℃、14000rpmで30分間遠心分離し、上澄みを取り除いた後に再度アセトンを50ml加え、再度同条件で遠心分離した。上澄みを除いた後、沈降したゲル部分を8時間真空乾燥して質量を測定し、以下の式によりゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=(ゲル部分の質量(g)/0.5)×100
【0098】
(6)樹脂層(I)、(II)の厚さ
積層フィルムを適当な大きさに切り出し、反射分光膜厚計 FE3000(商品名、大塚電子(株)製)を用いて、樹脂層(I)、(II)の厚さを測定した。
【0099】
(7)全光線透過率(TT)、曇価(Haze)、黄色度(YI)、色差及び白度(W(Lab))
得られた積層フィルムの全光線透過率(TT)はJIS K7361-1、曇価(Haze)はJIS K7136、黄色度(YI)はJIS K7373、色差はJIS K5600-4-6、白度(W(Lab))はJIS Z8715に準拠して評価した。
【0100】
(8)メラミン基材吸熱ピーク温度
DSC6200(製品名、SIIナノテクノロジー製)を用いて、メラミン基材を窒素気流下、25℃から200℃まで10℃/分で昇温した際の吸熱ピーク温度を測定して、第一吸熱ピーク温度をメラミン基材吸熱ピーク温度とした。
【0101】
(9)耐熱水白化性評価
得られたメラミン化粧板を用いて、CEN(欧州標準化委員会)規格、EN438-2に従い、100℃、2時間煮沸試験を実施し、煮沸試験前後の白度変化を測定した。
【0102】
(10)耐温水白化性評価
得られたメラミン化粧板を用いて、CEN(欧州標準化委員会)規格、EN438-2に従い、65℃、48時間、温水浸漬試験を実施し、温水試験前後の白度変化を測定した。
【0103】
(11)密着性評価(接着性)
室温状態のメラミン化粧板に対し、カッターナイフにより1mm間隔で100マスの碁盤目の切り込みを入れ、セロハンテープ(ニチバン(株)製)で剥がれ性を確認した。
この試験を初期状態、前記煮沸試験後、前記温水試験後に行ない、マスが全く剥がれない場合を分類0、マスが5%未満剥がれる場合を分類1、マスが15%未満剥がれる場合を分類2、マスが35%未満剥がれる場合を分類3、マスが65%未満剥がれる場合を分類4、マスが65%以上剥がれる場合を分類5と評価した。
【0104】
(12)最大高さ(Rz)
表面粗さ測定機(東京精密社製、商品名:SURFCOM 1400D)を用い、JIS B0601-2001に準じ、測定長さ4.0mm、評価長さ4.0mm、カットオフ波長0.8mm、測定速度0.3mm/sの条件で、積層フィルムの樹脂層(I)側の最大高さRzを測定した。
なお、最大高さRzは、粗さ計で測定した粗さ曲線の一部を基準長さで抜き出し、もっとも高い部分(最大山高さ:Rp)ともっとも深い部分(最大谷深さ:Rv)の和の値で求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
【0105】
(13)貯蔵弾性率
樹脂層(I)からなる単層フィルム(厚み45μm)を作製後、幅6mm及び長さ20mmに切り出した試験片を、セイコーインスツル(株)製 EXSTAR DMS6100を用いて、引張モードで昇温速度2℃/分及び測定周波数0.1Hz、測定温度100℃の条件で測定した。
【0106】
<製造例1:コアシェルゴム(A-1A)の製造>
窒素雰囲気下、還流冷却器付き反応容器に脱イオン水206部を入れ、80℃に昇温した。以下に示す成分(i)を添加し、撹拌を行いながら以下に示す原料(ii)(弾性共重合体(a-1)用原料の一部)の1/10を仕込み、15分保持した。次いで、残りの原料(ii)を、水に対する単量体混合物の増加率が8質量%/時間となるように連続的に添加した。その後1時間保持して重合を行い、重合体ラテックスを得た。続いて、該重合体ラテックスにソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2部を加えた。その後15分保持し、窒素雰囲気下80℃で撹拌を行いながら、以下に示す原料(iii)(弾性共重合体(a-1)用原料の一部)を、水に対する単量体混合物の増加率が4質量%/時間となるように連続的に添加した。その後2時間保持して重合を行い、弾性共重合体(a-1)のラテックスを得た。
【0107】
この弾性共重合体(a-1)のラテックスに、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2質量部を加えた。その後15分保持し、窒素雰囲気下80℃で撹拌を行いながら、以下に示す原料(iv)(硬質重合体(a-2)用原料)を、水に対する単量体混合物の増加率が10質量%/時間となるように連続的に添加した。その後1時間保持して重合を行い、コアシェルゴム(A-1A)のラテックスを得た。コアシェルゴム(A-1A)の平均粒子径は280nmであった。
【0108】
このコアシェルゴム(A-1A)のラテックスを、目開き50μmのフィルターで濾過した。次いで、酢酸カルシウムを用いて凝析、凝集、固化反応を行い、ろ過、水洗し、乾燥してコアシェルゴム(A-1A)を得た。
【0109】
(i)
ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.4部
硫酸第一鉄 0.00004部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.00012部
(ii)
MMA 11.25部
BA 12.5部
St 1.25部
AMA 0.094部
BDMA 0.75部
tBH 0.044部
RS610NA 0.75部
(iii)
BA 30.9部
St 6.6部
AMA 0.66部
BDMA 0.09部
CHP 0.11部
RS610NA 0.6部
(iv)
MMA 35.6部
MA 1.9部
nOM 0.11部
tBH 0.06部
【0110】
<製造例2:熱可塑性重合体(A-2A)の製造>
反応容器内に窒素置換したイオン交換水200部を仕込み、乳化剤としてオレイン酸カリウム1部、過硫酸カリウム0.3部を仕込んだ。続いてMMA40部、BA10部、nOM0.005部を仕込み、窒素雰囲気下65℃にて3時間撹拌し、重合を完結させた。
続いて、MMA48部及びBA2部からなる単量体混合物を2時間に亘り滴下し、滴下終了後2時間保持し、重合を完結させた。
得られたラテックスを0.25質量%硫酸水溶液に添加して凝析させ、濾過、水洗、乾燥し、熱可塑性重合体(A-2A)を得た。
得られた熱可塑性重合体(A-2A)のMwは1,000,000であった。
【0111】
<製造例3:アクリル樹脂組成物(A1)の製造>
製造例3では、コアシェルゴム(A-1A)24部に対し、熱可塑性重合体(A-2)としてVH5を76部、(A-2A)を2部配合した。添加剤(A-3)としてLA31を2.36部、2020を0.45部、R976を0.3部、1076を0.1部加え、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。
次いで、これを35mmφのスクリュー型二軸押出機(L/D=26)を用いて、シリンダー温度200~240℃、ダイ温度240℃の条件下で溶融混練し、ペレット化して、樹脂層(I)用のアクリル樹脂組成物(A1)を得た。アクリル樹脂組成物(A1)のゲル分率は21%、酸価は1.6mgKOH/gであった。また、アクリル樹脂組成物(A1)を用いて得られる樹脂層(I)からなる単層フィルム(厚み45μm)の貯蔵弾性率は728MPaであった。
【0112】
<製造例4:反応性基含有重合体(B-1A)の製造>
製造例4では、撹拌機、還流冷却器、及び窒素ガス導入口等の付いた反応容器内に、以下の成分の混合物を仕込んだ。
MMA 80部
BA 5部
HPMA 15部
nOM 0.25部
LPO 0.4部
メチルメタクリレート/メタクリル酸塩/メタクリル酸エチルスルホン酸塩の共重合体 0.02部
硫酸ナトリウム 0.3部
脱イオン水 145部
【0113】
容器内を充分に窒素ガスで置換し、その後撹拌しながら75℃まで加熱し、窒素ガス気流中で重合反応を進行させた。2時間後に95℃に昇温して更に60分保持して重合を完結させた。得られた重合体ビーズを、脱水、乾燥して反応性基含有重合体(B-1A)を得た。得られた反応性基含有重合体(B-1A)のMwは96,800、Tgは78℃、酸価は0.3mgKOH/gであった。
【0114】
<製造例5:コアシェルゴム(B-2A)の製造>
撹拌機を備えた容器に脱イオン水8.5部を仕込んだ後、撹拌を行ないながら下記の成分(ii)を加え、20分間撹拌を実施して乳化液を調製した。
次に、冷却器付き重合容器内に脱イオン水191.5部を投入し、窒素下で60℃に昇温した。次いで、撹拌しながら、下記の成分(i)を2分間にわたって重合容器内に滴下した後、15分間反応を継続させた。
続いて、下記の成分(iii)を、100分間にわたって前記重合容器内に滴下した後、60分間反応を継続させ、ラテックスを得た。尚、弾性共重合体単独のTgは-45℃であった。
【0115】
続いて、下記の成分(iv)を、150分間にわたって前記重合容器内に滴下した後、30分間反応を継続させ、弾性共重合体の上に硬質重合体を形成した。以上の工程により、コアシェルゴム(B-2A)100部を含むラテックスを得た。尚、硬質重合体単独のTgは75℃であった。また、重合後に測定したコアシェルゴム(B-2A)の平均粒子径は82nmであった。
このコアシェルゴム(B-2A)のラテックスを、目開き50μmのフィルターで濾過した。次いで、塩化カルシウムを用いて凝析させ、濾過、水洗、乾燥してコアシェルゴム(B-2A)を得た。
【0116】
(i)
ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.2部
硫酸第一鉄 0.0001部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.0003部
(ii)
MMA 0.3部
BA 4.5部
AMA 0.085部
CHP 0.025部
ペレックスOTP 1.0部
(iii)
MMA 4.0部
BA 36.0部
AMA 0.68部
CHP 0.04部
(iv)
MMA 35.2部
MAA 9.9部
BA 9.9部
nOM 0.22部
tBH 0.069部
【0117】
<製造例6:コアシェルゴム(B-2B)の製造>
窒素雰囲気下、還流冷却器付き反応容器に脱イオン水153部を入れ、80℃に昇温した。下記の成分(i)を添加し、撹拌を行ないながら、下記の成分(ii)を添加した。その後1時間保持して重合を行ない、重合体ラテックスを得た。
続いて、重合体ラテックスにソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1部を加えた。その後15分保持し、窒素雰囲気下80℃で撹拌を行ないながら、下記の成分(iii)を添加した。その後1時間保持して重合を行ない、コアシェルゴム(B-2B)のラテックスを得た。コアシェルゴム(B-2B)の平均粒子径は120nmであった。
このコアシェルゴム(B-2B)のラテックスを、目開き50μmのフィルターで濾過した。次いで、酢酸カルシウムを用いて凝析させ、濾過、水洗、乾燥してコアシェルゴム(B-2B)を得た。
【0118】
(i)
ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.4部
硫酸第一鉄 0.00004部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.00012部
(ii)
BA 50.9部
St 11.6部
AMA 0.56部
tBH 0.19部
RS610NA 1.0部
(iii)
MMA 35.6部
MA 1.9部
tBH 0.056部
nOM 0.16部
RS610NA 0.25部
【0119】
<製造例7:熱可塑性重合体(B-3A)の製造>
熱可塑性重合体(B-3A)は、熱可塑性重合体(A-2A)と同様のものを使用した。
【0120】
<製造例8:樹脂組成物(B1)の製造>
製造例8では、コアシェルゴム(B-2B)47部に対し、熱可塑性重合体(B-3)としてMDを53部、(B-3A)を2部配合した。添加剤(B-4)としてLA31を2.1部、2020を0.45部、1076を0.1部加えたこと以外は、製造例3の手順と同様にして、樹脂層(II)用の樹脂組成物(B1)を得た。樹脂組成物(B1)のゲル分率は28%、酸価は29.4mgKOH/g、接着性官能基含有率は4.7質量%であった。
【0121】
<製造例9:樹脂組成物(B2)の製造>
製造例9では、反応性基含有重合体(B-1A)60部、コアシェルゴム(B-2A)40部に対し、熱可塑性重合体(B-3)として(B-3A)を2部配合した。添加剤(B-4)としてLA31を2.1部、2020を0.45部、1076を0.1部加えたこと以外は、製造例3の手順と同様にして、樹脂層(II)用の樹脂組成物(B2)を得た。樹脂組成物(B2)のゲル分率は34%、酸価は0.2mgKOH/g、接着性官能基含有率は9.0質量%であった。
【0122】
<実施例1~2:積層フィルム及びメラミン化粧板の作成>
実施例1では、製造例3で得た樹脂層(I)用のアクリル樹脂組成物(A1)と、製造例8で得た樹脂層(II)用の樹脂組成物(B1)を80℃で一昼夜乾燥した。
シリンダー温度を230℃に設定した30mmφの押出し機で(B1)を可塑化した。また、シリンダー温度を240℃に設定した400メッシュのスクリーンメッシュを設けた40mmφの押出し機でアクリル樹脂組成物(A1)を可塑化した。
次いで、240℃に設定した2種2層用フィードブロックダイで、厚さ50μmの樹脂積層フィルムに製膜した。樹脂層(I)及び(II)の厚さはそれぞれ45μm及び5μmであった。得られた積層フィルムの全光線透過率(TT)、曇価(Haze)、黄変度(YI)、最大高さRzの結果を表1に纏める。
【0123】
更に、この積層フィルムの樹脂層(II)面側にメラミン基材を積層し、両面を鏡面のステンレス板で挟み、温度140℃、圧力3MPa、時間10分の条件でプレスしてメラミン化粧板を作成した。得られたメラミン化粧板の耐水試験後の密着性と白度の結果を表1に示す。使用したメラミン基材の吸熱ピーク温度は100℃であった。
【0124】
【0125】
また、実施例2では、表1に示す通りの材料を使用し、樹脂層(I)及び(II)の厚さを表1に示す通りとしたこと以外は、実施例1の操作と同様にして、積層フィルム及びメラミン化粧板を作成した。得られたメラミン化粧板の評価結果を表1に示す。
【0126】
<比較例1>
表1に示す通りの材料を使用し、樹脂層(I)及び(II)の厚さを表1に示す通りとしたこと以外は、実施例1と同様にして、積層フィルム及びメラミン化粧板を作成した。得られたメラミン化粧板の評価結果を表1に示す。
【0127】
上記の実施例及び製造例より、次のことが明らかとなった。実施例1~2で得られた積層フィルムはメラミン基材との密着性に優れる。更に、煮沸試験後の密着性が良好で白度の上昇が低く、耐水白化性に優れたメラミン化粧板を得ることができる。更に、透明性に優れ、工業的利用価値が高い。
【0128】
一方、比較例1で得られたフィルムは、コアシェルゴムに式1で示される単量体由来の構成単位を含有しないためメラミン密着性に劣るものであった。
【0129】
以上、実施形態及び実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。