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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178694
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】レーザー加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/364 20140101AFI20241218BHJP
   B23K 26/12 20140101ALI20241218BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20241218BHJP
   B23K 26/142 20140101ALI20241218BHJP
【FI】
B23K26/364
B23K26/12
H01L21/78 B
B23K26/142
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097029
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横尾 晋
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏行
(72)【発明者】
【氏名】平島 正隆
(72)【発明者】
【氏名】土田 高志
(72)【発明者】
【氏名】美山 遼
(72)【発明者】
【氏名】永島 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】飯田 英一
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AD01
4E168AD18
4E168CB04
4E168CB07
4E168DA43
4E168EA15
4E168EA16
4E168FB02
4E168FB06
4E168FC00
4E168GA01
4E168GA04
4E168HA01
4E168JA12
4E168JA13
4E168JA14
4E168KA13
4E168KB03
5F063AA15
5F063BA43
5F063BA45
5F063BA47
5F063BA48
5F063DD26
5F063DD31
5F063DE02
5F063DE33
5F063FF04
5F063FF52
(57)【要約】
【課題】被加工物へのデブリの付着を抑制することができるレーザー加工方法を提供すること。
【解決手段】レーザー加工方法は、被加工物にレーザービームを照射して被加工物を加工するレーザー加工方法であって、被加工物の一面側が鉛直下方向を向くように加工室内で被加工物を保持する保持ステップ1と、保持ステップ1の後に、加工室内の空気の圧力を大気圧より低い所定の圧力まで減圧する真空化ステップ2と、真空化ステップ2の後に、被加工物の一面側にレーザービームを照射するレーザー照射ステップ3と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物にレーザービームを照射して該被加工物を加工するレーザー加工方法であって、
該被加工物の一面側が鉛直下方向を向くように加工室内で該被加工物を保持する保持ステップと、
該保持ステップの後に、該加工室内の空気の圧力を大気圧より低い所定の圧力まで減圧する真空化ステップと、
該真空化ステップの後に、該被加工物の該一面側に該レーザービームを照射するレーザー照射ステップと、
を備える
ことを特徴とするレーザー加工方法。
【請求項2】
該被加工物は、シリコン基板であり、
該レーザー照射ステップにおいて、該レーザービームが照射される該被加工物の該一面側にフッ素系ガスを供給する
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザー加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、デバイスの製造においては、半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハ等の基板の表面に格子状に配列された複数のストリート(分割予定ライン)を設定し、ストリートに区画された複数のチップ領域にIC(Integrated Circuit)や、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスが形成される。
【0003】
ウエーハをストリートに沿って分割する方法として、ウエーハに対して吸収性を有する波長のレーザービームを分割予定ラインに沿って照射してアブレーション加工することにより、分割の起点となるレーザー加工溝を形成する方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10―305420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アブレーション加工では、レーザービームが照射された際にデブリと呼ばれる微細な粉塵が発生し、加工室内に飛散してデバイスの表面に堆積し、デバイスの品質を低下させるという課題があった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、被加工物へのデブリの付着を抑制することができるレーザー加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のレーザー加工方法は、被加工物にレーザービームを照射して該被加工物を加工するレーザー加工方法であって、該被加工物の一面側が鉛直下方向を向くように加工室内で該被加工物を保持する保持ステップと、該保持ステップの後に、該加工室内の空気の圧力を大気圧より低い所定の圧力まで減圧する真空化ステップと、該真空化ステップの後に、該被加工物の該一面側に該レーザービームを照射するレーザー照射ステップと、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のレーザー加工方法において、該被加工物は、シリコン基板であり、該レーザー照射ステップにおいて、該レーザービームが照射される該被加工物の該一面側にフッ素系ガスを供給してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本願発明は、被加工物へのデブリの付着を抑制することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係るレーザー加工方法の流れを示すフローチャートである。
図2図2は、加工対象の被加工物の一例を示す斜視図である。
図3図3は、実施形態に係るレーザー加工方法を実施するレーザー加工装置の構成例を示す模式図である。
図4図4は、第1変形例に係るレーザー加工方法を実施するレーザー加工装置を示す模式図である。
図5図5は、第2変形例に係るレーザー加工方法を実施するレーザー加工装置を示す模式図である。
図6図6は、第3変形例に係るレーザー加工方法を実施するレーザー加工装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係るレーザー加工方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態に係るレーザー加工方法の流れを示すフローチャートである。図2は、加工対象の被加工物10の一例を示す斜視図である。図3は、実施形態に係るレーザー加工方法を実施するレーザー加工装置20の構成例を示す模式図である。実施形態のレーザー加工方法は、保持ステップ1と、真空化ステップ2と、レーザー照射ステップ3と、を備え、加工対象を図2に示す被加工物10とし、図3に示すレーザー加工装置20において実施される。
【0013】
まず、加工対象である被加工物10について、一例を示して説明する。被加工物10は、例えば、シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ヒ化ガリウム(GaAs)またはその他の半導体材料を基板11とする円板状の半導体ウエーハ、光デバイスウエーハ等のウエーハである。あるいは、被加工物10は、サファイア(Al)、ガラス、石英等の材料を基板11とする円板状のウエーハである。ガラスは、例えば、アルカリガラス、無アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、等を含む。実施形態の被加工物10は、シリコン基板である。
【0014】
図2に示すように、被加工物10は、基板11の表面12に格子状に設定される複数の分割予定ライン13と、分割予定ライン13によって区画された領域に形成されたるデバイス14と、を有する。デバイス14は、例えば、IC、あるいはLSI等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、またはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等である。
【0015】
被加工物10は、例えば、環状のフレームが貼着されかつ被加工物10の外径よりも大径なテープが被加工物10の裏面15に貼着されて、フレームの開口内に支持された状態で搬送および加工されてもよい。被加工物10は、分割予定ライン13に沿って個々のデバイス14に分割されて、デバイスチップ16に個片化される。なお、被加工物10は、円板状に限定されず、樹脂パッケージ基板や金属基板等その他の板状であってもよい。また、デバイスチップ16は、正方形状に限定されず、長方形状または多角形状であってもよい。
【0016】
次に、被加工物10に対してレーザー加工を実施するレーザー加工装置20について、一例を示して説明する。図3に示すように、レーザー加工装置20は、加工室21と、保持ユニット30と、移動ユニット40と、レーザービーム50を照射するレーザー照射ユニットと、を備える。なお、以下の説明において、X軸方向は、水平面における一方向であり、加工送り方向である。また、Y軸方向は、水平面においてX軸に直交する方向であり、割り出し送り方向である。また、Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向に直交する方向であり、集光点位置調整方向である。
【0017】
加工室21には、保持ユニット30と、移動ユニット40と、が収容される。加工室21は、内部に外部とは遮断された空間22を形成可能である。加工室21を区画する壁部には、被加工物10を搬入出するための開閉可能な不図示の搬入出口と、窓部23と、排気口24と、が形成される。
【0018】
窓部23は、加工室21を区画する壁部のうち、下面側の床部に形成される。窓部23は、加工室21の外部から保持ユニット30の保持面31に向かって鉛直上方向に照射されるレーザービーム50の光路上に形成され、レーザービーム50を透過させる。窓部23は、例えば、例えば、BK7(ホウケイ酸塩クラウンガラス)、CaF2(フッ化カルシウム)、SiO2(合成石英ガラス)によって構成される。
【0019】
排気口24は、加工室21を区画する壁部のうち、いずれかの壁部に形成され、図3に示す例では、図面左側の床面寄りの位置に形成される。排気口24は、排気路25を介して、不図示の真空吸引源に接続される。加工室21が密閉されている状態において、不図示の真空吸引源が負圧を形成することにより、空間22を減圧可能である。
【0020】
保持ユニット30は、被加工物10の一面(実施形態では、表面12)側が鉛直下方向を向くように被加工物10を保持するユニットである。実施形態の保持ユニット30は、水平方向と平行な平面であって鉛直下方向を向く保持面31を有する保持テーブルである。実施形態の保持ユニット30には、不図示の高周波電源に接続された電極32が設けられている。
【0021】
保持ユニット30は、電極32に高周波電源から電力が印加されて、保持面31と被加工物10との間に誘電分極現象を発生させ、電荷の分極による静電吸着力によって被加工物10を保持面31上に吸着保持する。実施形態の保持ユニット30は、被加工物10の裏面15側を保持面31で吸着保持して、表面12側を下方に露出させる。
【0022】
移動ユニット40は、保持ユニット30とレーザービーム50の集光点51とを相対的に移動させるユニットである。移動ユニット40は、加工送りユニット41と、割り出し送りユニット42と、不図示の集光点位置調整ユニットと、回転ユニット43と、を含む。
【0023】
加工送りユニット41は、保持ユニット30とレーザービーム50の集光点51とを加工送り方向であるX軸方向に相対的に移動させるユニットである。加工送りユニット41は、実施形態において、保持ユニット30および回転ユニット43をX軸方向に移動させる。加工送りユニット41は、例えば、割り出し送りユニット42によって、Y軸方向に移動可能に設けられる。
【0024】
割り出し送りユニット42は、保持ユニット30とレーザービーム50の集光点51とを割り出し送り方向であるY軸方向に相対的に移動させるユニットである。割り出し送りユニット42は、実施形態において、保持ユニット30、回転ユニット43、および加工送りユニット41をY軸方向に移動させる。割り出し送りユニット42は、例えば、加工室21の天井壁に設置されている。
【0025】
不図示の集光点位置調整ユニットは、レーザービーム50を照射するレーザー照射ユニットのうち、少なくとも集光器52を集光点位置調整方向であるZ軸方向に移動させるユニットである。実施形態において、集光点位置調整ユニットは、集光器52を、加工室21に対してZ軸方向に移動させる。
【0026】
回転ユニット43は、保持ユニット30をZ軸方向に平行な軸心回りに回転させるユニットである。回転ユニット43は、実施形態において、加工送りユニット41に対して保持ユニット30を軸心回りに回転させる。
【0027】
レーザービーム50を照射するレーザー照射ユニットは、例えば、不図示のレーザー発振器と、集光器52と、レーザー発振器から集光器52へレーザービーム50を導く各種の光学部品と、を含む。レーザー発振器は、被加工物10を加工するための所定の波長を有するレーザービーム50を出射する。集光器52は、レーザー発振器から出射されたレーザービーム50を集光して、保持ユニット30の保持面31に保持された被加工物10に向けて照射させる。集光器52を通過したレーザービーム50は、窓部23を介して保持ユニット30に向かって照射される。
【0028】
次に、実施形態のレーザー加工方法の各ステップについて詳細に説明する。図1に示す保持ステップ1は、図3に示すように、被加工物10の一面(実施形態では、表面12)側が鉛直下方向を向くように加工室21内で被加工物10を保持するステップである。具体的には、被加工物10を、裏面15側が上方を向いている状態で、図示せぬ搬送ユニット等により加工室21内部の保持ユニット30まで搬送する。
【0029】
次に、被加工物10の裏面15側を保持ユニット30の保持面31に当接させた状態で、不図示の高周波電源から電極32に電力を印加し、保持面31と被加工物10との間に誘電分極現象を発生させ、電荷の分極による静電吸着力によって被加工物10の裏面15側を保持面31上に吸着保持する。保持ユニット30は、被加工物10の裏面15側を保持面31で吸着保持して、表面12側を下方に露出させる。
【0030】
図1に示す真空化ステップ2は、保持ステップ1の後に実施される。真空化ステップ2は、図3に示す加工室21内の空気の圧力を大気圧より低い所定の圧力まで減圧するステップである。具体的には、まず、保持ステップ1で被加工物10を加工室21内部に搬送した際の不図示の搬入出口を閉塞させ、加工室21の内部の空間22を密閉状態とする。次に、不図示の真空吸引源を作動させて、排気口24および排気路25を介して空間22を減圧させる。この際、空間22は、1×10Pa(絶対圧)以下に減圧され、低圧であるほど好ましい。
【0031】
図1に示すレーザー照射ステップ3は、真空化ステップ2の後に実施される。レーザー照射ステップ3は、図3に示すように、被加工物10の鉛直下方向を向く一面(実施形態では、表面12)側にレーザービーム50を照射するステップである。実施形態において、レーザービーム50は、被加工物10に対して吸収性を有する波長のレーザービームである。ここでは、レーザービーム50を加工送り方向に直線状に照射して分割予定ライン13(図2参照)に沿って直線状の溝加工を行う場合について説明するが、本発明では、例えば、環状の溝加工に適用してもよい。
【0032】
具体的には、まず、例えば、不図示の撮像ユニットで被加工物10の表面12を撮像すること等によって、分割予定ライン13を検出する。次に、回転ユニット43によって、保持ユニット30をZ軸回りに回転させて、加工する分割予定ライン13が延びる方向と加工送り方向(X軸方向)を一致させる。また、加工送りユニット41および割り出し送りユニット42によって、分割予定ライン13の加工開始位置をレーザービーム50が照射される位置に位置付けるとともに、不図示の集光点位置調整ユニットによって、レーザービーム50の集光点51を被加工物10の表面12近傍に設定する。
【0033】
次に、パルス状のレーザービーム50を照射しながら、加工送りユニット41によって所定の送り速度で保持ユニット30を加工送り方向(X軸方向)に移動させる。これにより、被加工物10の表面12において、分割予定ライン13に沿う加工溝が形成される。次いで、割り出し送りユニット42によって保持ユニット30を割り出し送り方向(Y軸方向)に所定距離移動させ、隣接する分割予定ライン13をレーザービーム50が照射される位置に位置付け、同様にレーザー加工を実施する。一方向に沿う全ての分割予定ライン13を加工した後は、一方向に直交する分割予定ライン13を同様にレーザービーム50が照射される位置に位置付けてレーザー加工を実施することで、全ての分割予定ライン13にレーザー加工溝が形成される。
【0034】
以上説明したように、実施形態に係るレーザー加工方法では、真空下において、加工対象である一面(表面12)を鉛直下方向に向けた被加工物10に対して、レーザービーム50を下方から上方に向けて照射して加工を施す。ここで、レーザービーム50の照射により被加工物10にデブリが付着する原因は、加工点付近の空気が膨張することで飛散したデブリが、重力によって落下することと、膨張した空気が冷えて収縮することで加工点に戻されることと、であると考えられる。
【0035】
デブリの重力による落下は、レーザー加工中に、被加工物10の加工対象である一面(表面12)を鉛直方向に向けて保持することによって、解消できる。また、膨張した空気の収縮は、加工領域の空間22を真空状態とすることで解消できる。したがって、実施形態のレーザー加工方法は、被加工物10へのデブリの付着を抑制することができる。
【0036】
このため、従来のようにレーザービーム50を透過する液状樹脂の保護膜を被加工物10に被覆しなくても、被加工物10にデブリが付着することを抑制でき、液状樹脂を除去するための工程の所要時間や、繰り返し利用することができない液状樹脂のコストを削減することができる。また、実施形態の方法に加え、液状樹脂の保護膜を併用することで、更に、被加工物10へのデブリの付着を抑制することができる。
【0037】
〔第1変形例〕
次に、第1変形例に係るレーザー加工方法を図面に基づいて説明する。図4は、第1変形例に係るレーザー加工方法を実施するレーザー加工装置20-1を示す模式図である。なお、第1変形例において使用するレーザー加工装置20-1において、実施形態のレーザー加工装置20と同様の構成には同様の符号を付して説明を省略する。
【0038】
第1変形例のレーザー加工方法は、加工対象の被加工物10がシリコン基板に限定される。第1変形例のレーザー加工方法では、レーザー照射ステップ3において、レーザービーム50が照射される被加工物10の一面(第1変形例では、表面12)側にフッ素系ガス60を供給している状態でレーザービーム50を照射する。フッ素系ガス60は、例えば、六フッ化硫黄(SF)ガス、四フッ化炭素(CF)ガス、三フッ化窒素(NF)ガス等を含む。
【0039】
第1変形例において使用するレーザー加工装置20-1は、実施形態のレーザー加工装置20と比較して、フッ素系ガス60を供給するガス供給ノズル61を備える点で異なる。ガス供給ノズル61は、加工室21の内部に噴射口を有し、レーザービーム50の集光点51、すなわち加工点に向かってフッ素系ガス60を供給する。ガス供給ノズル61は、第1変形例において、加工室21の床部において、窓部23に隣接する位置に配置される。
【0040】
以上説明したように、第1変形例に係るレーザー加工方法では、加工点にフッ素系ガス60を供給している状態でレーザービーム50を照射する。フッ素系ガス60は、レーザービーム50の照射により生じたプラズマ中で分解する。フッ素系ガス60から分解されたフッ素と、被加工物10から生じたデブリであるシリコン微粒子と、の反応により、フッ化シリコンが気体状態で生成される。これにより、デブリが被加工物10に再付着することを抑制することができる。
【0041】
第1変形例の様態に追加して、更に、フッ素系ガス60を供給する際に、ガス供給ノズル61と保持ユニット30に保持される被加工物10との間で、フッ素系ガス60をプラズマ化させ、レーザー照射ステップ3におけるレーザー加工と同時にプラズマエッチングを実施してもよい。
【0042】
この場合、例えば、加工室21を、プラズマエッチング装置のチャンバとして扱い、保持ユニット30と加工室21の下部との間に一対の電極を上下に対向して配置する。一対の電極は、導電性の材料で形成され、加工室21と絶縁されるとともに高周波電源と接続する。一対の電極に高周波電源から電力を印加することで、フッ素系ガス60がプラズマ化し、保持ユニット30に保持される被加工物10側に引き込まれる。これにより、被加工物10の一面(実施形態では、表面12)においてレーザービーム50の照射により溶融が生じた部分を、プラズマエッチングで除去できる。
【0043】
〔第2変形例〕
次に、第2変形例に係るレーザー加工方法を図面に基づいて説明する。図5は、第2変形例に係るレーザー加工方法を実施するレーザー加工装置20-2を示す模式図である。なお、第2変形例において使用するレーザー加工装置20-1において、第1変形例のレーザー加工装置20-1と同様の構成には同様の符号を付して説明を省略する。
【0044】
第2変形例のレーザー加工方法では、フッ素系ガス60を、レーザービーム50の光路を囲って光路と同軸で供給する。第2変形例において使用するレーザー加工装置20-2は、集光器52-1およびガス供給ノズル61-1の構成が、第1変形例のレーザー加工装置20-1の集光器52およびガス供給ノズル61の構成と異なるとともに、囲い26を備える点で異なる。
【0045】
第2変形例の集光器52-1は、加工室21の内部に配置される。すなわち、レーザービーム50は、窓部23を透過した後、集光器52-1に入射して集光される。また、ガス供給ノズル61-1は、加工室21の床部に設けられる。ガス供給ノズル61-1の噴射口は、レーザービーム50が透過する窓部23を囲うように、環状に複数設けられる、あるいは環状に開口して設けられる。囲い26は、ガス供給ノズル61-1およびレーザービーム50の光路を側方から囲うよう、加工室21の床部から上方に向かって円錘台形状に設けられる。ガス供給ノズル61-1から供給されるフッ素系ガス60は、円錘台形状の囲い26の内部に充満するとともに、円錘台形状の上端の開口27からレーザービーム50の集光点51、すなわち加工点に向かって供給される。
【0046】
以上説明したように、第2変形例に係るレーザー加工方法では、フッ素系ガス60をレーザービーム50の集光点51に供給する際に、レーザービーム50の光路を囲う囲い26を形成する。これにより、第1変形例と同様に、フッ素とシリコン微粒子であるデブリとの反応によりデブリが被加工物10に再付着を抑制する効果に加え、加工室21の内部側の窓部23および集光器52-1が、デブリによって汚染されることを抑制できるという効果を奏する。
【0047】
〔第3変形例〕
次に、第3変形例に係るレーザー加工方法を図面に基づいて説明する。図6は、第3変形例に係るレーザー加工方法を実施するレーザー加工装置20-3を示す模式図である。なお、第3変形例において使用するレーザー加工装置20-3において、実施形態のレーザー加工装置20と同様の構成には同様の符号を付して説明を省略する。
【0048】
第3変形例において使用するレーザー加工装置20-3は、実施形態のレーザー加工装置20と比較して、加工室21-1および移動ユニット40-1の構成が、実施形態のレーザー加工装置20の加工室21および移動ユニット40の構成と異なる。
【0049】
第3変形例の加工室21-1は、移動ユニット40-1の加工送りユニット41-1および割り出し送りユニット42-1によって、加工送り方向であるX軸方向および割り出し送り方向であるY軸方向に移動可能である。加工送りユニット41-1は、加工室21-1の外部に設けられ、加工室21-1を、X軸方向に移動させる。割り出し送りユニット42-1は、加工室21-1および加工送りユニット41-1を、Y軸方向に移動させる。
【0050】
回転ユニット43-1は、加工室21-1の内部に設けられ、加工室21-1に対して保持ユニット30を軸心回りに回転させる。このように、第3変形例では、加工室21-1全体が、レーザービーム50の集光点51に対して移動する。すなわち、加工室21-1と集光器52との位置が相対的に移動するため、加工室21-1の外部から内部へレーザービーム50を透過させる窓部23-1は、これに合わせて、加工室21-1の床部のほぼ全面に形成される。
【0051】
以上説明したように、第3変形例に係るレーザー加工方法では、加工室21-1ごと加工送りおよび割り出し送りする。すなわち、加工室21-1に対して保持ユニット30が並進方向に固定されるため、加工室21-1の寸法を小さくすることができる。このため、例えば、加工室21-1の内部の空間22の減圧が容易である。
【0052】
なお、本発明は、上記実施形態および変形例に限定されるものではない。また、実施形態と各変形例との構成は、一部を互いに置き換えてもよい。例えば、第3変形例の加工送りユニット41-1および割り出し送りユニット42-1が加工室21-1の外部に設けられる構成を、第1変形例および第2変形例のレーザー加工装置20-1、20-2に適用してもよい。また、実施形態、第1変形例および第3変形例において、窓部23、23-1より加工室21、21-1の内側に集光器52-1を配置してもよいし、第2変形例において、窓部23より加工室21の外側に集光器52を配置してもよい。
【0053】
また、上記実施形態および変形例では、保持ユニット30が静電吸着力によって被加工物10を吸着保持するが、被加工物10を前述したようにフレームおよびテープで支持した状態で加工する場合、保持ユニット30の周囲にクランプ部材を複数配置し、クランプ部材がフレームを挟持することで、被加工物10を保持してもよい。
【0054】
また、レーザービーム50の集光点51を加工送りする方法は、実施形態および変形例の加工送りユニット41、41-1に限定されず、レーザービーム50を走査することによるものでもよい。すなわち、レーザービーム50を照射するレーザー照射ユニットは、Y軸方向に平行な方向に軸心を有するポリゴンミラーやガルバノミラー等の走査ユニットを有してもよい。この場合、集光器52、52-1は、複数枚のレンズを組み合わせた組みレンズであるfθレンズを含む。
【符号の説明】
【0055】
1 保持ステップ
2 真空化ステップ
3 レーザー照射ステップ
10 被加工物
11 基板
12 表面(一面)
13 分割予定ライン
14 デバイス
15 裏面
16 デバイスチップ
20、20-1、20-2、20-3 レーザー加工装置
21、21-1 加工室
22 空間
23、23-1 窓部
24 排気口
25 排気路
26 囲い
27 開口
30 保持ユニット
31 保持面
32 電極
40、40-1 移動ユニット
41、41-1 加工送りユニット
42、42-1 割り出し送りユニット
43、43-1 回転ユニット
50 レーザービーム
51 集光点
52、52-1 集光器
60 フッ素系ガス
61、61-1 ガス供給ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6