(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178756
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】原料の改質方法及び改質装置
(51)【国際特許分類】
B01J 19/00 20060101AFI20241218BHJP
C10B 57/06 20060101ALI20241218BHJP
B65G 69/20 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B01J19/00 D
C10B57/06
B65G69/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097140
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 たかし
(72)【発明者】
【氏名】谷山 奈津美
【テーマコード(参考)】
3F078
4G075
4H012
【Fターム(参考)】
3F078AA05
3F078CA03
3F078EA04
4G075AA22
4G075AA61
4G075AA65
4G075BA05
4G075BD01
4G075DA02
4G075DA12
4G075EB01
4G075EB21
4G075ED11
4G075ED17
4H012PA00
(57)【要約】
【課題】改質剤の原料への添加量を適量に制御することができ、改質剤及び原料の搬送設備への付着を抑制できる、原料の改質方法等を提供する。
【解決手段】搬送設備で搬送される原料に改質剤を添加して原料を改質する方法であって、原料の水分率を連続的に測定する工程(1)と、搬送設備の特定位置に存在する原料の量を連続的に測定する工程(2)と、搬送設備の発停を連続的に測定する工程(3)と、水分率に基づき、原料に改質剤を添加したと想定したときの改質剤添加済み原料中における改質剤の目標濃度(A)を算出する工程(4)と、原料の量と発停とに基づいて、改質剤の添加の要否を判断する工程(5)と、原料の量と目標濃度(A)とに基づいて、改質剤の単位時間当りの目標添加量(B)を算出する工程(6)と、改質剤の添加の要否が要の場合に目標添加量(B)を原料に添加する工程(7)とを有する、改質方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送設備で搬送される原料に改質剤を添加して、前記原料を改質する方法であって、
搬送される前記原料の水分率を連続的に測定する工程(1)と、
前記搬送設備の特定位置に存在する前記原料の量を連続的に測定する工程(2)と、
前記搬送設備の発停を連続的に測定する工程(3)と、
前記水分率に基づき、前記原料に前記改質剤を添加したと想定したときの改質剤添加済み原料中における前記改質剤の目標濃度(A)を算出する工程(4)と、
前記原料の量と前記発停とに基づいて、前記改質剤の添加の要否を判断する工程(5)と、
前記原料の量と前記目標濃度(A)とに基づいて、前記改質剤の単位時間当りの目標添加量(B)を算出する工程(6)と、
前記改質剤の添加の要否が要の場合に、前記目標添加量(B)を前記原料に添加し、前記改質剤の添加の要否が否の場合に、前記目標添加量(B)を前記原料に添加しない工程(7)と、
を有する、前記搬送設備への付着、前記搬送設備内における詰まり、前記搬送設備の蛇行及び偏り、並びに前記原料の嵩密度低下の少なくともいずれかを防止する、原料の改質方法。
【請求項2】
前記搬送設備が、配管、ベルトコンベア、コンベアチェーン、シュート、ホッパー、サイロ、及びコークス炉の少なくともいずれかである、請求項1に記載の原料の改質方法。
【請求項3】
搬送設備で搬送される原料に改質剤を添加して、前記原料を改質する改質装置であって、
搬送される前記原料の水分率を連続的に測定する水分率測定装置と、
前記搬送設備の特定位置に存在する前記原料の量を連続的に測定する原料量測定装置と、
前記搬送設備の発停を連続的に測定する発停測定装置と、
前記水分率に基づき、前記原料に前記改質剤を添加したと想定したときの改質剤添加済み原料中における前記改質剤の目標濃度(A)を算出する制御装置と、
前記原料の量と前記発停とに基づいて、前記改質剤の添加の要否を判断する制御装置と、
前記原料の量と前記目標濃度とに基づいて、前記改質剤の単位時間当りの目標添加量(B)を算出する制御装置と、
前記改質剤の添加の要否が要の場合に、前記目標添加量(B)を前記原料に添加し、前記改質剤の添加の要否が要の場合に、前記目標添加量(B)を前記原料に添加しない改質剤添加装置と、
を有する、前記搬送設備への付着、前記搬送設備内における詰まり、前記搬送設備の蛇行及び偏り、並びに前記原料の嵩密度低下の少なくともいずれかを防止する、原料の改質装置。
【請求項4】
前記発停測定装置は、前記搬送設備が発進しているか停止しているかを測定し、移動速度は測定しない発停二択装置である、請求項3に記載の原料の改質装置。
【請求項5】
前記発停測定装置は、前記搬送設備の移動速度測定装置である、請求項3に記載の原料の改質装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料、特に湿潤な状態にある原料の改質方法及び改質装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所や火力発電所等では、通常、鉱物原料や燃料(以下、原料ということがある)が在庫として原料ヤードに野積みされている。原料ヤードに野積みされている原料は、防塵対策として散水される水や雨水を含む場合があり、水分率が高くなりやすい。またバラ積み船などで運ばれた原料は、荷揚げされ原料ヤードに運ばれるが、輸送時にハッチ下部にある原料は水分が高くなりやすい。
原料の荷揚げや原料ヤードからの搬送では、通常ベルトコンベア(以下、BC)で搬送される。このように水分の高い原料は、搬送工程で付着、詰まり、閉塞等を引き起こし、また、コークス炉用石炭に関してはコークス炉における嵩密度の低下などを引き起こすことから、不具合防止のために改質剤を使用する場合がある。改質剤は通常、BC上の原料に散布され、乗継部で原料と改質剤が混ざり改質効果を発揮する。
【0003】
改質剤の添加方法としては、人が搬送量や荷切れを外観より判断し、薬剤注入量の設定を変更するという方法が知られている。
しかしながら、BCは常に原料を搬送している訳では無く、操業状況によって発停を繰返しており、搬送量も一定ではない。特にバラ積み船からの荷役時は、ハッチの交換、バケット洗浄、BC蛇行の対応などで停止する。また荷揚げに使用するアンローダも一基運転/二基運転と変わる場合があり、且つ各アンローダの能力は異なるため、搬送量は変化する。荷揚げは数日間に及ぶため、人が常時監視して薬注を制御することは困難である。薬注制御が不十分な場合、BC上に原料が無い状態で薬注が継続されることとなり、改質剤の種類によってはBC上に薬剤が付着し、BC上に原料が付着しやすくなるなどの問題が発生することがある。
したがって、上記のように人が薬剤注入量の設定を変更することに代えて、薬剤注入量の制御を自動で行う必要がある。
【0004】
特許文献1には、鉱物原料に改質剤を添加して、該鉱物原料を改質する方法であって、搬送される前記鉱物原料の水分率を連続的に測定する工程と、前記水分率に基づいて、前記改質剤の添加量を算出する工程と、前記添加量の前記改質剤を前記鉱物原料に添加する工程とを含み、前記改質剤の添加により、前記鉱物原料の、搬送設備への付着、該搬送設備内における詰まり、該搬送設備内及び該搬送設備外への噴出、並びに嵩密度低下の少なくともいずれかを防止する、鉱物原料の改質方法が記載されている。
特許文献2には、鉱石や石炭を含む含水バラ物を、橋形クレーンやアンローダのグラブバケットを用いて、貨物船からベルトコンベア上に荷揚げし、該ベルトコンベアで、該含水バラ物をヤードまで搬送する際に、該含水バラ物に薬液を添加する装置であって、薬液を添加する添加手段と、薬液の添加量を制御する添加量制御手段と、薬液添加の開始および停止を判断するための情報を集めるセンサーと、添加する薬液を収納する薬液タンクと、該薬液タンクから上記添加手段まで薬液を搬送する搬送ホースとを備える、含水バラ物への薬液添加装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-167442号公報
【特許文献2】特開2015-196573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、BC上における原料の搬送量の多寡にかかわらず、原料中における改質剤の含有量が所定濃度になるように制御している。しかしながら、搬送量が少ない場合に所定濃度になるように改質剤が散布されると、改質剤がBCや他の設備に付着し、原料の付着を助長しBCへの原料付着や、乗継シュート部での詰まり等を引き起こすという不都合が生じることがある。
特許文献2では、BCが稼働しており、かつBC上に荷が有る場合には薬液を添加することが開示されている。しかしながら、特許文献2においても、BC上の荷が少ない場合に所定濃度になるように改質剤が散布されると、改質剤がBCや他の設備に付着し、原料の付着を助長しBCへの原料付着や、乗継シュート部での詰まり等を引き起こすという不都合が生じることがある。
【0007】
本発明は、自動化が可能であり、改質剤の原料への添加量を適量に制御することができ、改質剤及び原料の搬送設備(BC等)への付着を抑制することができる、原料の改質方法及び改質装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、次の[1]~[5]を提供するものである。
[1]搬送設備で搬送される原料に改質剤を添加して、前記原料を改質する方法であって、
搬送される前記原料の水分率を連続的に測定する工程(1)と、
前記搬送設備の特定位置に存在する前記原料の量を連続的に測定する工程(2)と、
前記搬送設備の発停を連続的に測定する工程(3)と、
前記水分率に基づき、前記原料に前記改質剤を添加したと想定したときの改質剤添加済み原料中における前記改質剤の目標濃度(A)を算出する工程(4)と、
前記原料の量と前記発停とに基づいて、前記改質剤の添加の要否を判断する工程(5)と、
前記原料の量と前記目標濃度(A)とに基づいて、前記改質剤の単位時間当りの目標添加量(B)を算出する工程(6)と、
前記改質剤の添加の要否が要の場合に、前記目標添加量(B)を前記原料に添加し、前記改質剤の添加の要否が否の場合に、前記目標添加量(B)を前記原料に添加しない工程(7)と、
を有する、前記搬送設備への付着、前記搬送設備内における詰まり、前記搬送設備の蛇行及び偏り、並びに前記原料の嵩密度低下の少なくともいずれかを防止する、原料の改質方法。
[2]前記搬送設備が、配管、ベルトコンベア、コンベアチェーン、シュート、ホッパー、サイロ、及びコークス炉の少なくともいずれかである、上記[1]に記載の原料の改質方法。
[3]搬送設備で搬送される原料に改質剤を添加して、前記原料を改質する改質装置であって、
搬送される前記原料の水分率を連続的に測定する水分率測定装置と、
前記搬送設備の特定位置に存在する前記原料の量を連続的に測定する原料量測定装置と、
前記搬送設備の発停を連続的に測定する発停測定装置と、
前記水分率に基づき、前記原料に前記改質剤を添加したと想定したときの改質剤添加済み原料中における前記改質剤の目標濃度(A)を算出する制御装置と、
前記原料の量と前記発停とに基づいて、前記改質剤の添加の要否を判断する制御装置と、
前記原料の量と前記目標濃度とに基づいて、前記改質剤の単位時間当りの目標添加量(B)を算出する制御装置と、
前記改質剤の添加の要否が要の場合に、前記目標添加量(B)を前記原料に添加し、前記改質剤の添加の要否が要の場合に、前記目標添加量(B)を前記原料に添加しない改質剤添加装置と、
を有する、前記搬送設備への付着、前記搬送設備内における詰まり、前記搬送設備の蛇行及び偏り、並びに前記原料の嵩密度低下の少なくともいずれかを防止する、原料の改質装置。
[4]前記発停測定装置は、前記搬送設備が発進しているか停止しているかを測定し、移動速度は測定しない発停二択装置である、上記[3]に記載の原料の改質装置。
[5]前記発停測定装置は、前記搬送設備の移動速度測定装置である、上記[3]に記載の原料の改質装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る原料の改質方法及び改質装置によれば、自動化が可能であり、改質剤の原料への添加量を適量に制御することができ、改質剤及び原料の搬送設備(BC等)への付着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明に係る原料の改質方法及び改質装置を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の原料の改質方法について説明する。
なお、本発明における「原料の搬送設備への付着防止」とは、まったく付着しない場合のみならず、一部付着する場合であっても、原料の搬送が妨げられない程度に付着が十分に抑制される場合も含む意味で用いるものとする。
本発明において連続的に測定するとは、1回のみの測定ではなく、測定を続けて行うことを意味し、例えば、搬送される原料の量又は原料の水分率を、特定の間隔で複数回行うことを言う。
【0012】
[原料の改質方法]
本発明に係る原料の改質方法は、搬送設備で搬送される原料に改質剤を添加して、前記原料を改質する方法であって、
搬送される前記原料の水分率を連続的に測定する工程(1)と、
前記搬送設備の特定位置に存在する前記原料の量を連続的に測定する工程(2)と、
前記搬送設備の発停を連続的に測定する工程(3)と、
前記水分率に基づき、前記原料に前記改質剤を添加したと想定したときの改質剤添加済み原料中における前記改質剤の目標濃度(A)を算出する工程(4)と、
前記原料の量と前記発停とに基づいて、前記改質剤の添加の要否を判断する工程(5)と、
前記原料の量と前記目標濃度(A)とに基づいて、前記改質剤の単位時間当りの目標添加量(B)を算出する工程(6)と、
前記改質剤の添加の要否が要の場合に、前記目標添加量(B)を前記原料に添加し、前記改質剤の添加の要否が否の場合に、前記目標添加量(B)を前記原料に添加しない工程(7)と、
を有する、前記搬送設備への付着、前記搬送設備内における詰まり、前記搬送設備の蛇行及び偏り、並びに前記原料の嵩密度低下の少なくともいずれかを防止する、原料の改質方法である。
本発明に係る原料の改質方法によれば、自動化が可能であり、改質剤の原料への添加量を適量に制御することができ、改質剤及び原料の搬送設備(BC等)への付着を抑制することができる。
【0013】
<原料>
本発明において、原料とは、鉱物原料又は鉱物燃料を意味する。
原料の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、石炭、鉄鉱石、鉄鉱石以外の金属鉱石、ダスト、スラグ、スラッジ、コークス、焼結鉱、石灰石等が挙げられる。これらは、1種単独であっても、2種以上の混合物であってもよい。
また、原料の形状、大きさ等は、特に限定されるものではないが、詰まりを防止する観点から、詰まりやすい形態のもの、例えば、粒子1個の粒子径が0.1μm~10mmの粒状、粉末状等のものが好適に適用される。
【0014】
本発明において、改質剤の添加対象とする「原料」は、水分を含む、湿潤な原料である。「湿潤な原料」とは、湿気を帯びた状態であり、ベルトコンベアで搬送可能な原料である。湿潤な原料の水分率は、原料の種類や性状によって、一概には定めることはできないが、例えば、粒径0.1μm~10mmの石炭の場合は、9質量%超、好ましくは11質量%以上である。また、例えば、粒径0.1μm~10mmの鉄鉱石の場合は、7質量%超、好ましくは9質量%以上である。
原料中の水分は、その由来は特に限定されるものではなく、原料自体に由来するものでもよく、あるいはまた、搬送や保管中に接触した雨や粉塵防止のための散水等の水でもよい。
【0015】
<改質剤>
改質剤は、特に限定されるものではなく、例えば、高吸水性樹脂、水溶性高分子化合物、界面活性剤、有機溶剤等の有機物、製鉄所内で発生するダスト、スラグ、石炭、コークス、鉄鉱石、珪藻土、セラミック等の無機物等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上をそれぞれ単独で用いても、2種以上の混合物として用いてもよい。
原料の、搬送設備への付着、該搬送設備内における詰まり、該搬送設備内及び該搬送設備外への噴出を防止する観点から、改質剤は、高吸水性樹脂及び水溶性高分子化合物から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、高吸水性樹脂を含むことがより好ましい。
また、原料の嵩密度向上の観点から、改質剤は界面活性剤を含むことが好ましい。
【0016】
(高吸水性樹脂)
本発明における高吸水性樹脂とは、JIS K7223(1996)及びJIS K7224(1996)で定義される、「水を高度に吸収して、膨潤する樹脂で、架橋構造の親水性物質で水と接触することにより吸水し、一度吸水すると圧力をかけても離水しにくい特徴を持っている」ものである。すなわち、吸水量が多く、保水性に優れた樹脂である。
湿潤な原料に前記高吸水性樹脂を添加混合した場合、水溶性高分子化合物は原料中の水分の少なくとも一部を吸収する。これにより、原料の表面の水分率が低減して、搬送設備の接触面において、原料の滑り性が向上し、付着しにくくなり、搬送設備への付着、該搬送設備内における詰まり、該搬送設備内、該搬送設備外への噴出等を防止することができる。なお、搬送設備の接触面に対する付着性が抑制されればよく、原料中の水分の全量が、高吸水性樹脂に吸収される必要はない。
【0017】
高吸水性樹脂の種類は、合成樹脂系及び天然物由来系のいずれでもよく、特に限定されるものではないが、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアルキレンイミン、ポリオキシアルキレン、ポリマレイン酸、及びこれらを構成する単量体のいずれかを含む共重合体等が挙げられる。なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0018】
ポリ(メタ)アクリル酸塩を構成する単量体としては、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸アンモニウム等が挙げられる。
ポリ(メタ)アクリル酸エステルを構成する単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル等が挙げられる。
ポリアルキレンイミンを構成する単量体としては、エチレンイミン、メチルエチレンイミン等が挙げられる。
ポリオキシアルキレンを構成する単量体としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が挙げられる。
前記共重合体を構成する他の単量体としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、N-エチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン等が挙げられる。
【0019】
高吸水性樹脂は、1種単独で用いてもよく、あるいはまた、2種以上を併用してもよい。入手容易性及び高い吸水能等の観点から、ポリアクリル酸又はポリアクリル酸ナトリウムが好適に用いられ、ポリアクリル酸ナトリウムが特に好ましい。
また、高吸水性樹脂は、他の吸水剤と併用してもよい。他の吸水剤としては、シリカゲル、ゼオライト、活性炭等が挙げられる。
高吸水性樹脂の性状は、原料に均一に混合させること、また、取り扱い容易性等の観点から、原料と同等以下の粒径の粒状又は粉末状であることが好ましい。例えば、粒径0.1μm~2mmの石炭の場合、粒径が好ましくは10~1000μm、より好ましくは50~600μmである高吸水性樹脂を用いる。また、有機溶剤に液体状の高吸水性樹脂を分散させたものを用いてもよく、液体状の高吸水性樹脂を用いてもよい。有機溶剤は特に限定されないが、芳香族系有機溶剤などの高沸点溶剤を用いることが好ましい。
【0020】
改質剤の有効成分中の高吸水性樹脂の含有量は、原料を効率的に搬送する観点から、5~100質量%であることが好ましく、50~100質量%であることがより好ましく、90~100質量%であることがさらに好ましい。
【0021】
(水溶性高分子化合物)
本発明における水溶性高分子化合物とは、吸水量が多く保水性に優れる特性を備えるものである。本発明において水溶性とは、25℃の水100gに対して、0.01g以上溶解することをいう。
湿潤な原料に水溶性高分子化合物を添加混合した場合、水溶性高分子化合物は原料中の水分の少なくとも一部を吸収する。これにより、原料の表面の水分率が低減して、搬送設備の接触面において、原料の滑り性が向上し、付着しにくくなり、搬送設備への付着、該搬送設備内における詰まり、該搬送設備内、該搬送設備外への噴出等を防止することができる。なお、搬送設備の接触面に対する付着性が抑制されればよく、原料中の水分の全量が、水溶性高分子化合物に吸収される必要はない。
水溶性高分子化合物は、人工的につくられる合成高分子化合物でも、天然に存在する天然高分子化合物でもよく、例えば、合成水溶性高分子化合物、半合成水溶性高分子化合物、天然水溶性高分子化合物等が挙げられる。
【0022】
合成水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン又はその塩、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルメチルエーテル;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸アミド、マレイン酸イミド、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸等の共重合物又はその塩等が挙げられる。この塩としては、例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0023】
半合成水溶性高分子化合物としては、ビスコース、メチルセルロース、カチオン化セルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体;アルファ化デンプン、カルボキシルデンプン、ジアルデヒドロデンプン、カチオン化デンプン、デキストリン、ブリティッシュゴム等のデンプン誘導体;カチオン化グアーガム、アニオン化グアーガム、メチルグリコールキトサン等が挙げられる。
【0024】
天然水溶性高分子化合物としては、デンプン、マンナン、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ローカストビーンガム、ペクチン、デキストラン、ゼラチン、ラムザンガム、ジェランガム等が挙げられる。
【0025】
水溶性高分子化合物は、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性の何れでもよい。このうち、魚類への毒性が少ないアニオン性及びノニオン性が好ましく、更にアニオン性が好ましい。
【0026】
水溶性高分子化合物は、合成水溶性高分子化合物であることが好ましい。合成水溶性高分子化合物としては、アニオン性モノマーとノニオン性モノマーの1種又は2種以上を構成成分とする単独重合体又は共重合体が好適である。アニオン性基(アニオン性モノマー)としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボン酸(モノマー);スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、3-アリロキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸等のスルホン酸(モノマー)等が例示される。また、ノニオン性基(ノニオン性モノマー)としては、例えば、アクリルアミド(モノマー)やメタクリルアミド(モノマー)等が例示される。合成水溶性高分子化合物としては、アクリル酸系及び/又はアクリルアミド系ポリマーが更に好ましい。アクリル酸系及び/又はアクリルアミド系ポリマーとしては、例えば、アクリル酸単重合物、アクリルアミド単独重合物、アクリル酸/アクリルアミド共重合物、ポリアクリルアミドの部分加水分解物、アクリル酸/アクリルアミド/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸/マレイン酸共重合物又はその塩、等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。このうち、アクリル酸/アクリルアミド共重合物、アクリルアミド単独重合物、ポリアクリルアミドの部分加水分解物は、何れも高分子量であり、本発明の用途に好適に用いられる。
前記アクリルアミド系又はアクリル酸系ポリマーの平均重量分子量は、好ましくは1,000,000~10,000,000、より好ましくは5,000,000~9,000,000(固有粘度法)とするのが好適である。
また、アニオン性高分子の場合、前記アクリル酸系及び/又はアクリルアミド系ポリマーを生成する際のアクリル酸単位の含有量は、使用する単量体の全合計量(100モル%)に対して、好ましくは5モル%以上、より好ましくは20~100モル%とするのが好適である。
前記水溶性高分子化合物を使用するときの状態としては、特に限定されず、粉末状、液体状又はエマルジョン状で使用するのが好適である。特に搬送対象の水分を増加させずに使用できる粉末状とエマルジョン状で使用するのが好適である。W/O型エマルジョン状の水溶性高分子化合物は、公知の手法(例えば、特公昭52-039417号公報、特開昭51-41090号公報)にて製造することができる。
【0027】
水溶性高分子化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。アクリル酸/アクリルアミド共重合物、アクリルアミド単独重合物、ポリアクリルアミドの部分加水分解物は、何れも高分子量であり、原料を効率的に搬送する観点からも好適に用いられる。
【0028】
改質剤の有効成分中の水溶性高分子化合物の含有量は、原料を効率的に搬送する観点から、5~80質量%であることが好ましく、20~60質量%であることがより好ましく、30~50質量%であることがさらに好ましい。
【0029】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸(アルキル基の炭素数は8~16が好適である。)又はその塩(例えば、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレン(POE)付加重合物又はその塩等のノニオン系界面活性剤等を用いることができる。
湿潤な原料に前記界面活性剤を添加混合した場合、原料の滑り性が向上し、原料の嵩密度が向上する。嵩密度が向上することにより、原料を用いた工業製品の生産性向上に寄与できる。
界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、あるいはまた、2種以上を併用してもよい。原料の嵩密度向上の観点から、アニオン系界面活性剤が好ましく、アルカンスルホン酸ナトリウムがより好ましい。
【0030】
改質剤の有効成分中の界面活性剤の含有量は、嵩密度向上の観点から、5~100質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましく、20~30質量%であることがさらに好ましい。
【0031】
<搬送設備>
本発明における搬送設備とは、例えば、原料ヤード等の原料の保管場所から、原料を使用する設備まで、所定のラインで原料を送り込む搬送ライン内の搬送設備を指し、シュート、ホッパー、サイロ等の一時的に貯蔵する機能を有するものも含む。本発明における搬送設備とは、搬送設備内において原料を搬送する設備を示し、船やトラック等による輸送や、バケツによる搬送等とは区別されるものである。
本発明においては、搬送設備の中でも付着及び詰まりによる不都合が生じやすい箇所、具体的には、配管、ベルトコンベア、コンベアチェーン、シュート、ホッパー、サイロ、コークス炉等において、原料の付着、詰まり、該搬送設備内及び該搬送設備外への噴出等の防止効果が得られる。
湿潤な原料は、これらの搬送設備において付着や詰まり、噴出等の問題が生じやすく、問題が生じた場合は、ラインの運転を停止した上で問題を解消する必要があり、手間を要していた。
これに対して、本発明においては、後述の方法により、改質剤の添加量を算出し、原料に前記添加量で添加した場合、搬送設備の接触面において、原料の滑り性が向上し、付着や詰まり、噴出が防止されることにより、ラインの運転を停止させることなく、原料を効率的に搬送することが可能となる。
【0032】
<工程(1)>
工程(1)は、搬送される前記原料の水分率を連続的に測定する工程である。
水分率を測定する間隔は、特に限定されるものではなく、原料の種類、性状、搬送量等により異なるが、原料として石炭を用い、搬送量が1~20t/分の場合、0.1~60秒毎に測定することが好ましい。
搬送量を測定する間隔は、特に限定されるものではなく、原料の種類、性状、搬送速度等により異なるが、原料として石炭を用い、石炭の水分率が5~25質量%の場合、0.1秒~1分毎に測定することが好ましい。
【0033】
原料の水分率の測定方法としては、連続的に測定する観点から、非接触式水分計による測定が好ましく、例えば赤外線式、マイクロ波式、中性子式、電気抵抗式、電気容量式等が挙げられる。
これらの中でも、設置が容易であり、容易に使用できる観点から、原料に対して赤外線を照射し、反射光強度を測定する赤外線式による測定が好ましい。例えばNDC Technologies社製CM710e等を採用することができる。
原料の水分率の測定に要する時間は、生産性、原料の水分率に対応した適切な添加量で改質剤を添加する等の観点から、0.1~60秒であることが好ましく、1~10秒であることがより好ましい。
【0034】
<工程(2)>
工程(2)は、前記搬送設備の特定位置に存在する前記原料の量を連続的に測定する工程である。
原料の量の測定方法としては、例えば、ロードセル式やメリック式等の荷重測定装置、光学式、ミリ波式、超音波式等の距離計測装置等が挙げられる。
荷重測定装置では、ベルトコンベア上の原料の質量値とベルトコンベアの移動速度から原料の量を算出する。また、距離測定装置では、ベルトコンベア上部に距離センサーを設置し、距離センサーとベルトコンベア底部までの距離と、距離センサーとベルトコンベア上の原料までの距離の差から、原料の量を算出する。
原料の量の測定に要する時間は、生産性、原料の水分率に対応した適切な添加量で改質剤を添加する等の観点から、0.1~60秒であることが好ましく、1~10秒であることがより好ましい。
【0035】
搬送される前記原料の水分率及び原料の量を測定する位置は、改質剤を添加する位置より上流側であり、測定対象となる原料を搬送するベルトコンベア等の搬送設備付近に設置することが好ましい。
本発明の一態様において、水分率と原料の量とを測定する場合、水分率の測定を搬送量の測定より先に行ってもよく、原料の量の測定を水分率の測定より先に行ってもよく、水分率と原料の量の測定を同時に行ってもよい。原料が搬送されていない時は、水分率を測定する必要がないことから、原料の量の測定を水分率の測定より先に行うことが好ましい。
【0036】
<工程(3)>
工程(3)は、前記搬送設備の発停を連続的に測定する工程である。
発停の測定方法としては、メリック式ベルトスケール、ローラエンコーダー、ベルトコンベア稼働モーター、振動センサーや音センサー等の電流の測定等が挙げられる。
【0037】
<工程(4)>
工程(4)は、前記水分率に基づき、前記原料に前記改質剤を添加したと想定したときの改質剤添加済み原料中における前記改質剤の目標濃度(A)を算出する工程である。
改質剤の目標濃度(A)は、原料の種類、性状等により異なるが、例えば、原料が石炭である場合、石炭の水分率が約7質量%未満であると、搬送設備への付着、該搬送設備内における詰まり、該搬送設備内及び該搬送設備外への噴出は生じ難く、嵩密度も比較的高いため、改質剤の目標濃度(A)は0質量%と算出される。つまり、改質剤の過剰な添加が抑制される。
石炭の水分率が約7質量%以上である場合、改質剤の添加が必要となり、予めシミュレーションや検量線等により求めた、原料の水分率に対する適切な改質剤の濃度である基準値と、石炭の水分率の測定結果に基づいて、改質剤の目標濃度(A)が算出される。改質剤の目標濃度(A)は、石炭の水分率が高いほど増加する。
【0038】
原料の水分率の測定結果に基づいて、改質剤の目標濃度(A)を算出し、後述の工程(7)において、算出した改質剤の目標濃度(A)となるように改質剤を添加することにより、改質剤が不足して改質効果が不十分となることを防止することができる。
また、本発明においては、原料の水分率の測定結果に基づいて、改質剤の目標濃度(A)を算出することから、改質剤の添加が過剰となることを防止することができ、改質剤コストを低減することが可能となる。また、予めシミュレーションや検量線等により求めた、原料の水分率に対する適切な改質剤の濃度である基準値と、水分率の測定結果とが大幅に異なる場合は、原料がベルトコンベアに存在しないと判断し、改質剤の添加を停止することが可能となる。
【0039】
改質剤の目標濃度(A)は、原料の種類及び性質により異なり、かつ原料の水分率、または水分率と搬送量により算出されるものであるが、原料が粒径0.1μm~2mm、水分率9質量%以上の石炭であり、改質剤が高吸水性樹脂を含む場合、改質剤の目標濃度(A)は、好ましくは0.001~50質量%、より好ましくは0.005~5質量%、更に好ましくは0.01~0.5質量%である。また、原料が粒径0.1μm~2mm、水分率9質量%以上の石炭であり、改質剤が水溶性高分子化合物を含む場合、改質剤の目標濃度(A)は、好ましくは0.001~50質量%、より好ましくは0.005~5質量%、更に好ましくは0.01~0.5質量%である。上記範囲とすることで、原料の、搬送設備への付着、該搬送設備内における詰まり、並びに該搬送設備内及び該搬送設備外への噴出の少なくともいずれかを防止することが可能となる。
原料が粒径0.1μm~2mm、水分率9質量%以上の石炭であり、改質剤が界面活性剤を含む場合、改質剤の目標濃度(A)は、好ましくは0.001~50質量%、より好ましくは0.005~5質量%、更に好ましくは0.05~0.5質量%である。上記範囲とすることで、原料の嵩密度低下を防止することが可能となる。
【0040】
原料が粒径0.1μm~2mm、水分率7質量%以上の鉄鉱石であり、改質剤が高吸水性樹脂を含む場合、改質剤の目標濃度(A)は、好ましくは0.001~50質量%、より好ましくは0.005~5質量%、更に好ましくは0.01~0.5質量%である。また、原料が粒径0.1μm~2mm、水分率7質量%以上の鉄鉱石であり、改質剤が水溶性高分子化合物を含む場合、改質剤の目標濃度(A)は、好ましくは0.001~50質量%、より好ましくは0.005~5質量%、更に好ましくは0.01~0.5質量%である。上記範囲とすることで、原料の、搬送設備への付着、該搬送設備内における詰まり、並びに該搬送設備内及び該搬送設備外への噴出の少なくともいずれかを防止することが可能となる。
また、原料が粒径0.1μm~2mm、水分率7質量%以上の鉄鉱石であり、改質剤が界面活性剤を含む場合、改質剤の目標濃度(A)は、好ましくは0.001~50質量%、より好ましくは0.005~5質量%、更に好ましくは0.05~0.5質量%である。上記範囲とすることで、原料の嵩密度低下を防止することが可能となる。
【0041】
<工程(5)>
工程(5)は、前記発停と前記原料の量とに基づいて、前記改質剤の添加の要否を判断する工程である。
例えば、工程(5)において、以下のとおりに判断する。
・(a)発停が発進、かつ、上記原料の量が所定量以上:添加する。
・(b)発停が発進、かつ、上記原料の量が所定量未満:添加しない。
・(c)発停が停止、かつ、上記原料の量が所定量以上:添加しない。
・(d)発停が停止、かつ、上記原料の量が所定量未満:添加しない。
上記(a)のとおり、発停が発進かつ搬送設備の特定位置に存在する原料の量が所定量以上である場合に改質剤を添加することにより、改質剤及び原料の搬送設備(BC等)への付着を抑制することができる。
また、上記(b)のとおり、発停が発進であっても搬送設備の特定位置に存在する原料の量が所定量未満の場合には、改質剤を添加しなくても、改質剤及び原料の搬送設備(BC等)への付着を抑制することができる。また、搬送設備の特定位置に存在する原料の量が所定量未満の場合に改質剤を添加してしまうと、搬送装置等の搬送装置に改質剤が付着してしまい、原料の付着を助長しBCへの原料付着や、乗継シュート部での詰まり等を引き起こすという不都合が生じることがある。具体的には、改質剤の薬注は原料に対し均一になるよう添加したいため、ベルトコンベアの幅方向に対して数点又は連続的に広く薬注するが、搬送量が所定量未満の場合には原料の幅が狭く、BC上へ直接添加してしまうこと等が挙げられる。これに対して、上記(b)の場合には改質剤を添加しないため、当該不都合が回避されると共に改質剤の使用量を抑制することができる。
上記(c)及び(d)のとおり、発停が停止の場合には改質剤を添加しないことにより、停止中に原料に改質剤を何度も添加してしまい、搬送設備に改質剤が付着することが防止され、また改質剤の使用量を抑制することができる。
【0042】
<工程(6)>
工程(6)は、前記原料の量と前記改質剤の目標濃度(A)とに基づいて、前記改質剤の単位時間当りの目標添加量(B)を算出する工程である。
これにより、改質剤を過不足なく原料に添加することができる。
例えば、改質剤の単位時間当りの目標添加量(B)(ton/hr)は、下記式によって算出することができる。
・目標添加量(B)=X/Y×Z×A
ここで、各符号の意味は以下のとおりである。
・X:搬送設備の特定位置に存在する原料の量(ton)
・Y:当該特定位置の搬送方向長さ(m)
・Z:搬送速度(m/hr)
・A:改質剤の目標濃度(A)(質量%)
ここで、ベルトコンベア等の搬送装置が搬送速度を変更できない装置である場合には、Zは特定値となる。また、ベルトコンベア等の搬送装置が搬送速度を変更できる場合には、搬送速度は、搬送速度測定装置によって測定することが好ましい。
ただし、後述のとおり、工程(5)において改質剤を添加しないと判断された場合には、改質剤は添加されない。
【0043】
<工程(7)>
工程(7)は、前記改質剤の添加の要否が要の場合に、前記改質剤の目標添加量(B)を前記原料に添加し、前記改質剤の添加の要否が否の場合に、前記改質剤の目標添加量(B)を前記原料に添加しない工程である。
これにより、改質剤の添加が必要な場合に限り、改質剤を過不足なく原料に添加することができる。
【0044】
改質剤を原料に添加する位置は、原料の水分率の測定位置及び原料の量の測定位置より後に添加できる位置が望ましいが、特に限定されるものではなく、原料をベルトコンベア等の搬送装置で搬送する途中や、搬送後であってもよい。適切な添加量で改質剤を添加する観点から、添加する位置は、水分率及び原料の量の測定位置付近であることが好ましい。また、ベルトコンベアの乗継部では、添加された改質剤と原料とに混合作用が働くことから、ベルトコンベアの乗り継ぎ部より上流の位置で改質剤を添加することが好ましい。
改質剤を原料に添加する方法は、特に限定されるものではないが、ベルトコンベア等により搬送されている原料に対して、改質剤を原料の上方から散布することが好ましい。
また、改質剤は、1カ所で添加してもよく、2カ所以上で添加してもよい。
改質剤として2種以上の成分を用いる場合、各成分がそれぞれ添加されてもよく、予め調製混合されたものを添加してもよい。また、1種単独で添加した後、2種以上を予め調製混合されたものを添加してもよく、2種以上を予め調製混合されたものを添加した後、1種単独で添加してもよい。
【0045】
改質剤を原料に添加するタイミングは、原料の搬送途中で水分率が変化する場合もあることから、原料の水分率測定後、好ましくは10分以内、より好ましくは5分以内、さらに好ましくは1分以内に改質剤を添加することが好ましい。また、原料の搬送速度に変動が有る場合には、変動に応じて、改質剤を添加できることが好ましい。
【0046】
本発明においては、原料に改質剤を添加した後に、原料と改質剤とを混合することが好ましい。
混合方法は、特に限定されるものではないが、原料と改質剤とが均一に混合されて、相互に接している状態のものが得られることが好ましい。混合方法としては、例えば、ベルトコンベアの乗り継ぎ部における混合、混練機又は重機による混合等が挙げられる。
また、改質剤を、原料を収容した所定の容器内に添加して撹拌混合することにより、混合することもできる。
【0047】
改質剤が添加された原料の嵩密度は、原料の種類及び性質により異なるものであるが、原料を用いた工業製品の生産性向上に寄与する観点から、好ましくは700kg/m3超であり、より好ましくは750kg/m3超である。
【0048】
[改質装置]
本発明に係る改質装置は、搬送設備で搬送される原料に改質剤を添加して、前記原料を改質する改質装置であって、
搬送される前記原料の水分率を連続的に測定する水分率測定装置と、
前記搬送設備の特定位置に存在する前記原料の量を連続的に測定する原料量測定装置と、
前記搬送設備の発停を連続的に測定する発停測定装置と、
前記水分率に基づき、前記原料に前記改質剤を添加したと想定したときの改質剤添加済み原料中における前記改質剤の目標濃度(A)を算出する制御装置と、
前記原料の量と前記発停とに基づいて、前記改質剤の添加の要否を判断する制御装置と、
前記原料の量と前記目標濃度とに基づいて、前記改質剤の単位時間当りの目標添加量(B)を算出する制御装置と、
前記改質剤の添加の要否が要の場合に、前記目標添加量(B)を前記原料に添加し、前記改質剤の添加の要否が要の場合に、前記目標添加量(B)を前記原料に添加しない改質剤添加装置と、
を有する、前記搬送設備への付着、前記搬送設備内における詰まり、前記搬送設備の蛇行及び偏り、並びに前記原料の嵩密度低下の少なくともいずれかを防止する、原料の改質装置である。
【0049】
前記発停測定装置は、前記搬送設備が発進しているか停止しているかを測定し、移動速度は測定しない発停二択装置であってもよく、前記搬送設備の移動速度測定装置であってもよい。
【0050】
図1は、実施の形態に係る改質装置の一例を示す模式図である。
ベルトコンベア1に、発停測定装置2が設置されている。ベルトコンベア1の上方に、ベルトコンベア1の特定位置に存在する前記原料の量を連続的に測定する原料量測定装置3と、水分率測定装置4とが設置されている。これら装置2~4の搬送方向における下流側に、改質剤添加装置6が設置されている。制御装置5が、配線を介して又は無線により、発停測定装置2、原料量測定装置3、水分率測定装置4、及び改質剤添加装置6に接続されている。
【0051】
当該改質装置を用い、好ましくは前述の実施の形態に係る原料の改質方法を実施することにより、自動化が可能であり、改質剤の原料への添加量を適量に制御することができ、改質剤及び原料の搬送設備(BC等)への付着を抑制することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 ベルトコンベア
2 発停測定装置
3 原料量測定装置
4 水分率測定装置
5 制御装置
6 改質剤添加装置
10 原料の改質装置