(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178763
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/387 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
H04N1/387 110
H04N1/387 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097151
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】早坂 仁志
(57)【要約】
【課題】画像の任意の箇所に対して実行させる処理の指定のための作業負担を軽減すること。
【解決手段】画像処理装置は、画像の中から第1の図形及び第2の図形を検出し、前記第1の図形に対応する第1の領域及び前記第2の図形に対応する第2の領域を特定する検出部と、前記第2の領域から記号を抽出する抽出部と、前記第1の領域に対して前記記号に応じた処理を実行する処理実行部と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像の中から第1の図形及び第2の図形を検出し、前記第1の図形に対応する第1の領域及び前記第2の図形に対応する第2の領域を特定する検出部と、
前記第2の領域から記号を抽出する抽出部と、
前記第1の領域に対して前記記号に応じた処理を実行する処理実行部と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記抽出部は、前記第1の領域から文字列を抽出し、
前記処理実行部は、前記第1の領域から抽出された文字列に対して前記第2の領域から抽出された記号に応じた処理を実行し、処理結果に基づく画像を前記第1の領域に合成する、
ことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記画像の中から複数の前記第1の図形及び複数の前記第2の図形を検出して、複数の前記第1の領域及び複数の前記第2の領域を特定し、
前記処理実行部は、複数の前記第1の領域ごとに、当該第1の領域との位置関係に基づいて特定されるいずれかの前記第2の領域から抽出された記号に応じた処理を実行する、
ことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1の領域に対して前記記号に応じた処理が実行された画像から前記第1の図形及び前記第2の図形を消去する消去部、
を有することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記検出部は、更に、前記第1の図形に第3の図形が付与されているか否かを判定し、
前記処理実行部は、前記第3の図形が付与されている前記第1の図形に係る前記第1の領域に対しては前記記号に応じた処理を実行しない、
ことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項6】
画像の中から第1の図形及び第2の図形を検出し、前記第1の図形に対応する第1の領域及び前記第2の図形に対応する第2の領域を特定する検出手順と、
前記第2の領域から記号を抽出する抽出手順と、
前記第1の領域に対して前記記号に応じた処理を実行する処理実行手順と、
をコンピュータが実行することを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
画像の中から第1の図形及び第2の図形を検出し、前記第1の図形に対応する第1の領域及び前記第2の図形に対応する第2の領域を特定する検出手順と、
前記第2の領域から記号を抽出する抽出手順と、
前記第1の領域に対して前記記号に応じた処理を実行する処理実行手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理装置において、原稿に識別情報が付与された領域を検出し、検出した領域にOCR処理などの処理を行う機能が提供されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、使用者が所定の用紙に付加する識別情報と、画像処理装置に実行させる処理とを対応付けることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、識別情報と実行すべき処理との対応関係を画像処理装置に対して登録するための作業負担がユーザに対して要求される。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、画像の任意の箇所に対して実行させる処理の指定のための作業負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで上記課題を解決するため、画像処理装置は、画像の中から第1の図形及び第2の図形を検出し、前記第1の図形に対応する第1の領域及び前記第2の図形に対応する第2の領域を特定する検出部と、前記第2の領域から記号を抽出する抽出部と、前記第1の領域に対して前記記号に応じた処理を実行する処理実行部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
画像の任意の箇所に対して実行させる処理の指定のための作業負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施の形態における画像処理装置10のハードウェア構成例を示す図である。
【
図2】第1の実施の形態における画像処理装置10の機能構成例を示す図である。
【
図3】第1の実施の形態における原稿の一例を示す図である。
【
図4】第1の実施の形態における画像処理装置10が実行する処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図5】処理マークmrの検出処理を説明するための図である。
【
図6】指示マークmeの検出処理を説明するための図である。
【
図7】処理領域と指示領域との対応付けを説明するための図である。
【
図8】処理領域と指示領域との対応関係の判定結果の一例を示す図である。
【
図9】第1の実施の形態において各処理領域に対して指示領域の文字列に応じて実行される処理内容を説明するための図である。
【
図10】第1の実施の形態における各処理領域に対する処理の実行結果の一例を示す図である。
【
図11】マーク消去の実行結果の一例を示す図である。
【
図12】第2の実施の形態における原稿の一例を示す図である。
【
図13】第2の実施の形態における画像処理装置10が実行する処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図14】取り消し線の検出処理を説明するための図である。
【
図15】第2の実施の形態において各処理領域に対して指示領域の文字列に応じて実行される処理内容を説明するための図である。
【
図16】第2の実施の形態における各処理領域に対する処理の実行結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、第1の実施の形態における画像処理装置10のハードウェア構成例を示す図である。
図1において、画像処理装置10は、コントローラ11、スキャナ12、プリンタ13、モデム14、操作パネル15、ネットワークインタフェース16、及びSDカードスロット17等のハードウェアを有する。
【0010】
コントローラ11は、CPU111、RAM112、ROM113、HDD114、及びNVRAM115等を有する。ROM113には、各種のプログラムやプログラムによって利用されるデータ等が記憶されている。RAM112は、プログラムをロードするための記憶領域や、ロードされたプログラムのワーク領域等として用いられる。CPU111は、RAM112にロードされたプログラムを処理することにより、各種の機能を実現する。HDD114には、プログラムやプログラムが利用する各種のデータ等が記憶される。NVRAM115には、各種の設定情報等が記憶される。
【0011】
スキャナ12は、原稿より画像データを読み取るためのハードウェア(画像読取手段)である。プリンタ13は、印刷データを印刷用紙に印刷するためのハードウェア(印刷手段)である。モデム14は、電話回線に接続するためのハードウェアであり、FAX通信による画像データの送受信を実行するために用いられる。操作パネル15は、ユーザからの入力の受け付けを行うためのボタン等の入力手段や、液晶パネル等の表示手段等を備えたハードウェアである。液晶パネルは、タッチパネル機能を有していてもよい。この場合、当該液晶パネルは、入力手段の機能をも兼ねる。ネットワークインタフェース16は、LAN等のネットワーク(有線又は無線の別は問わない。)に接続するためのハードウェアである。SDカードスロット17は、SDカード80に記憶されたプログラムを読み取るために利用される。すなわち、画像処理装置10では、ROM113に記憶されたプログラムだけでなく、SDカード80に記憶されたプログラムもRAM112にロードされ、実行されうる。なお、他の記録媒体(例えば、CD-ROM又はUSB(Universal Serial Bus)メモリ等)によってSDカード80が代替されてもよい。すなわち、SDカード80の位置付けに相当する記録媒体の種類は、所定のものに限定されない。この場合、SDカードスロット17は、記録媒体の種類に応じたハードウェアによって代替されればよい。
【0012】
図2は、第1の実施の形態における画像処理装置10の機能構成例を示す図である。
図2において、画像処理装置10は、入力部121、読取制御部122、検出部123、対応判定部124、抽出部125、処理実行部126、消去部127及び出力部128を有する。これら各部は、画像処理装置10にインストールされた1以上のプログラムが、CPU111に実行させる処理により実現される。
【0013】
入力部121は、ユーザからの指示の入力を受け付ける。ユーザからの指示には、例えば、画像処理装置10が実行する処理に関する設定情報や、当該処理の実行の開始指示等が含まれる。
【0014】
読取制御部122は、スキャナ12を制御して、スキャナ12が紙文書(原稿)から読み取った画像を取得する。
【0015】
図3は、第1の実施の形態における原稿の一例を示す図である。
図3に示される原稿p1において、矩形のマークmr1~mr4(以下、それぞれを区別しない場合「処理マークmr」という。)及び楕円のマークme1~me4(以下、それぞれを区別しない場合「指示マークme」という。)等の図形は、原稿p1の構成要素ではなく、原稿p1から読み取られた画像(以下、「対象画像」という。)に対して画像処理装置10に実行させる処理に関する指示として、ユーザが手書き等により原稿p1に対して描画したものである。処理マークmrは、矩形の枠線の部分のみをいい、指示マークmeは、楕円の枠線部分のみをいう。なお、処理マークmr又は指示マークmeを原稿に描画することを、以下「マーキング」という。また、処理マークmr又は指示マークmeに係る範囲(領域)を、以下、「マーキング領域」という。処理マークmrのマーキング領域を、特に「処理領域」といい、指示マークmeのマーキング領域を、特に「指示領域」という。
【0016】
処理領域は、対象画像において処理の対象とされる範囲である。指示領域は、処理領域に対して実行する処理を示す記号を含む領域である。本実施の形態では、文字列が当該記号として採用された例を示すが、当該記号は、文字認識可能な記号であれば文字以外の1以上の記号によって構成されてもよい。なお、処理領域(処理マークmr)と指示領域(指示マークme)とは1対1に対応する。したがって、1つの指示領域内の記号は、1つの処理領域に対して実行すべき処理を意味する。
【0017】
ユーザは、原稿p1において処理対象としたい範囲を処理マークmrで囲み、当該範囲に対して実行すべき処理を示す記号を描画した上で、当該記号を指示マークmeで囲んでおけばよい。
【0018】
検出部123は、対象画像から処理マークmr及び指示マークmeを検出することで、処理領域及び指示領域を特定する。
【0019】
対応判定部124は、処理領域及び指示領域が複数の場合に、処理領域と指示領域と位置関係に基づいて、各処理領域に対応する各指示領域との対応関係を判定する。本実施の形態では、或る処理領域に対して最も近い指示領域が、当該処理領域に対応する指示領域として判定される。
【0020】
抽出部125は、検出された指示マークmeに係る指示領域から文字列を抽出する。文字列の抽出は、公知の文字認識(OCR(Optical Character Recognition))を用いて行うことができる。
【0021】
処理実行部126は、処理領域ごとに、当該処理領域に対応すると判定された指示領域内の記号に応じた処理を実行する。当該処理は、対象画像に対して行われる。したがって、当該処理の実行により対象画像が変化する。
【0022】
消去部127は、ユーザによって処理マークmr及び指示マークmeの消去が指定された場合に、対象画像から処理マークmr及び指示マークmeを消去する。指示マークmeの消去は、指示マークme内の文字列の消去をも含む。
【0023】
出力部128は、対象画像の出力処理を実行する。
【0024】
以下、画像処理装置10が実行する処理手順について説明する。
図4は、第1の実施の形態における画像処理装置10が実行する処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【0025】
ステップS110において、入力部121は、例えば、操作パネル15を介して処理の実行指示の入力をユーザから受け付ける。この際、処理に関する設定情報も入力される。例えば、原稿p1に付加された処理マークmr及び指示マークmeを最終的に対象画像から消去するか否かに関する設定(以下、「動作モード」という。)が入力される。また、対象画像に対する処理の実行結果として得られる画像を紙媒体として出力するか(つまり、印刷するか)、電子画像として出力するか(例えば、所定の記憶装置に保存するか)等の設定が入力されてもよい。なお、ユーザは、処理の実行指示の入力前に原稿p1(
図3)をスキャナ12にセットしておく。
【0026】
続いて、読取制御部122は、スキャナ12を制御して、スキャナ12が原稿p1から読み取った画像(対象画像)を取得する(S120)。
【0027】
続いて、検出部123は、対象画像の中から全ての処理マークmrを検出することで、全ての処理領域を特定する(S130)。例えば、処理領域の各頂点の座標(対象画像における座標)が特定される。すなわち、
図3の原稿p1のように、複数の処理マークmrが付加されている場合、検出部123は、複数の処理マークmrを検出する。
【0028】
処理マークmrの検出は、図形検出を利用することで実現することができる。図形検出を利用する理由としては、本実施の形態では、処理マークmr及び指示マークmeの2種類のマークを検出する必要があり、これら2種類のマークを区別して検出可能とするためのである。検出部123は、これら2種類の形状の異なるマークが混在する状況の中から処理マークmrのみを検出するために、対象画像から検出される各図形の角を検出し、角の数から各図形が何角形かを判別することで、処理マークmrを検出する。本実施の形態において、処理マークmrは、矩形であるため、検出部123は、角が4つである図形を処理マークmrとして検出する。
【0029】
図5は、処理マークmrの検出処理を説明するための図である。
図5において左側の画像g1は、原稿p1から読み取られた対象画像である。右側の画像g1は、画像g1において検出された処理マークmrに基づいて特定された各処理領域を示す。すなわち、右側の画像g1において、破線の矩形である処理領域1~4は、処理マークmr1~4に基づいて特定された処理領域である。
【0030】
なお、本実施の形態では処理マークmr(処理領域)を矩形としているが、処理マークmrの形状は、例えば、予め又はステップS110においてユーザによって指定可能とされてもよい。この場合、複数の形状を選択肢とし、ユーザによって選択された形状が処理マークmrの形状とされてもよい。
【0031】
続いて、検出部123は、対象画像の中から全ての指示マークmeを検出することで、全ての指示領域を特定する(S140)。例えば、指示領域の最小外接矩形の各頂点の座標(対象画像における座標)が特定される。
【0032】
指示マークmeの検出は、処理マークmrの検出と同様に図形検出を利用することで実現することができる。但し、指示マークmeの検出において検出対象とされる図形(形状)が処理マークmrとは異なる。具体的には、検出部123は、角の数が所定数(例えば、10個)よりも多い図形を指示マークmeである楕円として検出し、指示マークmeの範囲(例えば、指示マークmeの最小外接矩形の範囲)を指示領域として特定する。このような楕円の検出方法は、円弧を表現する画像に対して角の検出を行った場合に多数の角が検出されるという方法に基づく。但し、角を検出することではなく、他の公知の方法によって指示マークmeとして楕円が検出されてもよい。
【0033】
図6は、指示マークmeの検出処理を説明するための図である。
図6において左側の画像g1は、
図5の右側の画像g1である。
図6の右側の画像g1は、左側の画像g1において検出された指示マークmeに基づいて特定された各指示領域を示す。すなわち、右側の画像g1において、破線の矩形である指示領域A~Dは、指示マークme1~4に基づいて特定された指示領域である。
【0034】
なお、本実施の形態では指示マークme(指示領域)を楕円としているが、指示マークmeの形状は、例えば、予め又はステップS110においてユーザによって指定可能とされてもよい。この場合、複数の形状を選択肢とし、ユーザによって選択された形状が指示マークmeの形状とされてもよい。但し、指示マークmeと処理マークmrの形状は異なる必要がある。
【0035】
続いて、対応判定部124は、ステップS130において特定された処理領域と、ステップS140において特定された指示領域との対応関係を判定する(S150)。処理領域と指示領域との対応関係の判定とは、各処理領域に対していずれの指示領域が対応するのかについての判定をいい、処理領域と指示領域とを対応付ける(紐付ける)ことをいう。処理領域と指示領域とを対応付けることで、各処理領域に対してどのような処理が指示されているのかを特定することができる。
【0036】
処理領域及び指示領域がそれぞれ1つである場合、対応判定部124は、当該処理領域と指示領域とを対応付ける。一方、処理領域及び指示領域がそれぞれ複数である場合、対応判定部124は、以下の処理によって処理領域と指示領域とを対応付ける。
【0037】
対応判定部124は、各処理領域と各指示領域との物理的距離(以下、単に「距離」という。)を算出する。処理領域と指示領域との物理的距離は、例えば、それぞれの中心画素位置(X座標,Y座標)の間の距離によって評価されてもよい。或る領域の中心画素位置とは、当該領域のX座標の最小値及び最大値をそれぞれXmin、Xmaxとし、当該領域のY座標の最小値及び最大値をそれぞれYmin、Ymaxとして場合、((Xmin+Xmax)/2,(Ymin+Ymax)/2)である。
【0038】
対応判定部124は、各処理領域について、当該処理領域からの物理的距離が最も近い指示領域を、当該処理領域に対応付ける。同じ指示領域が複数の処理領域に対応付く場合、対応判定部124は、当該指示領域をより近い方の処理領域に対応付ける。複数の指示領域が同じ処理領域に対応付く場合、対応判定部124は、当該処理領域に最も近い指示領域を当該処理領域に対応付け、他の指示領域を当該処理領域の次に近い処理領域に対応付ける。対応判定部124は、このような対応付けを再帰的に行うことで、処理領域と指示領域とを1対1に対応付ける。
【0039】
図7は、処理領域と指示領域との対応付けを説明するための図である。
図7において左側の画像g1は、
図6の右側の画像g1である。
図7の右側は、処理領域と指示領域との対応付けの様子を示す。各処理領域内の(x1~4,y1~4)は、各処理領域の中心画素座標を示し、各指示領域内の(xA~D,yA~D)は、各指示領域の中心画素座標を示す。
【0040】
図7において、処理領域1に最も近い指示領域は指示領域Aである。処理領域1と指示領域Aとの距離は、処理領域2と指示領域Aとの距離よりも短く、処理領域4と指示領域Aとの距離よりも短い。したがって、処理領域1には指示領域Aが対応付けられる。
【0041】
図8は、処理領域と指示領域との対応関係の判定結果の一例を示す図である。
図7の例の場合、対応判定部124は、
図8に示されるような対応関係を出力する。
図8は、同じ行に割り当てられている処理領域及び指示領域が対応付けられたことを示す。
【0042】
続いて、抽出部125は、全ての指示領域から文字列を抽出する(S160)。或る指示領域からの文字列の抽出は、当該指示領域に対する文字認識(OCR)を実行することで行うことができる。
【0043】
続いて、処理実行部126は、処理領域ごとに、当該処理領域に対応付けられた指示領域から抽出された文字列(以下、「指示文字列」という。)に応じた処理を実行する(S170)。各指示文字列にどの処理が対応するのかについては、処理実行部126にとって既知である。指示文字列と処理との対応付けは、処理実行部126のアルゴリズムに組み込まれていてもよいし、ファイル等、アルゴリズムの外部において定義されていてもよい。指示文字列と処理との対応付けがアルゴリズムの外部に定義される場合、指示文字列の種類の拡張に応じた処理の拡張を容易に行うことができる。例えば、指示文字列とプラグインとしてのプログラムとの対応付け情報がHDD114又はNVRAM115等に記憶されていてもよい。この場合、処理実行部126は、指示文字列に対応付けられているプラグインを呼び出すことで、当該指示文字列に応じた処理を実行してもよい。
【0044】
図5等の例では、各指示領域から抽出される文字列は「太字」、「青」、「英語」、「緑」である。「太字」は、対応する処理領域内から抽出される文字列(以下、「処理文字列」という。)を太字にする処理の実行指示を示す。「青」は、対応する処理領域内の前景(
図5の例では、「かきくけこ」)の色を青にする処理の実行指示を示す。「英語」は、対応する処理領域内の処理文字列を英語に翻訳する処理の実行指示を示す。「緑」は、対応する処理領域内の前景(
図5の例では「さしすせそ」)の色を緑にする処理の実行指示を示す。したがって、
図8の対応付けに基づく各処理領域に対する処理内容は、
図9のようになる。
【0045】
図9は、第1の実施の形態において各処理領域に対して指示領域の文字列に応じて実行される処理内容を説明するための図である。
図9には、
図5の画像g1において特定される処理領域ごとに、当該処理領域に対応する指示領域の指示文字列、及び処理内容が示されている。処理内容は、処理領域内の画像について指示文字列に応じて実行される処理の内容である。
【0046】
なお、「太字」、「青」、「英語」、「緑」のうち、「英語」については、処理文字列の意味が特定される必要があるため、処理実行部126は、文字認識によって処理領域3から処理文字列(「こんにちは」)を抽出し、当該処理文字列を英語に翻訳することで得られる文字列の画像によって、処理領域3の画像を置き換える。
【0047】
「太字」については、処理実行部126は、文字認識によって処理領域1から処理文字列を抽出し、当該処理文字列を太字の書体に変換することで得られる文字列の画像によって、処理領域1の画像を置き換えてもよい。又は、処理実行部126は、処理領域1の画像を文字列として扱わずに、当該画像内における線を太くするような画像処理を行うことで、処理領域1内の文字列が太字に見えるようにしてもよい。
【0048】
「青」及び「緑」は、処理領域内の内容が文字であるとは限らないため、処理実行部126は、処理領域内において前景の画素を青又は緑にする。但し、「青」及び「緑」の場合であっても、処理実行部126は、文字認識によって各処理領域から処理文字列を抽出し、当該処理文字列を指定された色に変換することで得られる文字列の画像によって、各処理領域の画像を置き換えてもよい。
【0049】
なお、本実施の形態において指示領域において指定されている指示文字列は一例にすぎない。例えば、フォントの変更、書体の変更又は緑若しくは青以外の色への変更等、他の処理を示す指示文字列の指定が可能とされてもよい。
【0050】
処理実行部126による処理は、画像g1の処理領域に対して行われる。換言すれば、処理実行部126による処理結果は、画像g1の処理領域に対して反映される。例えば、処理実行部126は、或る処理領域の画像に対する処理結果を当該処理領域のサイズの画像に変換し、当該画像を当該処理領域に合成する。その結果、
図5の左側の画像g1は次のように変化する。
【0051】
図10は、第1の実施の形態における各処理領域に対する処理の実行結果の一例を示す図である。
図10において左側の画像g1は、処理の実行前の対象画像(すなわち、
図5の左側の画像g1)である。右側の画像g1は、処理の実行後の対象画像である。各処理領域内は、指示文字列に応じた処理によって変化している。なお、
図10においては表現されていないが、「さしすせそ」の色は緑色にされ、「かきくけこ」の色は青色にされている。
【0052】
続いて、消去部127は、動作モードの設定において処理マークmr及び指示マークmeの消去(以下、「マーク消去」という。)が指定されているか否かを判定する(S180)。マーク消去が指定されている場合(S180でYes)、消去部127は、画像g1から全ての処理マークmr及び全ての指示マークmeを消去する(S190)。処理マークmr及び指示マークmeの消去は、処理マークmr又は指示マークmeを構成する画素の色を背景色と同じにすることで実現することができる。
【0053】
図11は、マーク消去の実行結果の一例を示す図である。
図11において左側の画像g1は、マーク消去の実行前の対象画像(
図10の右側の画像g1)である。右側の画像g1は、マーク消去の実行後の対象画像である。マーク消去により、対象画像は全ての処理マークmr及び全ての指示マークmeが消去された画像になる。その結果、ユーザは、本来の原稿の内容を示す画像に対して指示文字列に応じた処理が実行された結果を示す画像を得ることができる。
【0054】
ステップS180でNoの場合、又はステップS190に続いて、出力部128は、例えば、設定情報に応じた態様で画像g1を出力する(S200)。例えば、出力部128は、画像g1の印刷をプリンタ13に実行させたり、画像g1をHDD114に保存したりする。
【0055】
上述したように、第1の実施の形態によれば。ユーザは、紙文書(原稿)に対して手書きにてマーキングや指示文字列の描画を行うことで、当該紙文書から読み取られた画像において処理マークmrが付与された範囲に対して指示文字列に応じた処理を実行させることができる。したがって、画像の任意の箇所に対して実行させる処理の指定のための作業負担を軽減することができる。
【0056】
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では第1の実施の形態と異なる点について説明する。したがって、特に言及されない点については、第1の実施の形態と同様でもよい。
【0057】
第2の実施の形態では、ユーザが原稿に対して誤ってマーキングを行ってしまった場合や、意図通り行ったマーキングを取り消したい場合の救済措置が開示される。具体的には、ユーザは、取り消したい処理マークmrに対して取り消すことを意味する所定の図形又は記号(以下、「取り消し図形」という。)を付加することで、当該処理マークmrを無効化することができる。本実施の形態では、取り消し図形として二重線(以下、「取り消し線」という。)が採用される例を示すが、他の図形又は記号が、取り消し図形として採用されてもよい。
【0058】
図12は、第2の実施の形態における原稿の一例を示す図である。
図12中、
図3と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
図12では、原稿p1において、処理マークmr3に対して取り消し線c3が付加され、処理マークmr4に対して取り消し線c4が付加された例が示されている。取り消し線c3が及び取り消し線c4は、ユーザが、処理マークmr3及び処理マークmr4を取り消したい(無効化したい)ために描画した取り消し線である。
【0059】
第2の実施の形態では、このような原稿p1が読み取り対象とされる。
【0060】
図13は、第2の実施の形態における画像処理装置10が実行する処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
図13中、
図4と同一ステップには同一ステップ番号を付し、その説明は省略する。
図13では、ステップS130とステップS140との間にステップS135が追加される。また、ステップS170がS170aに置換される。
【0061】
ステップS135において、検出部123は、ステップS130において特定した各処理領域からの取り消し線の検出処理を実行する。取り消し線の検出には、公知技術であるパターンマッチングを用いることができる。つまり、取り消し線のパターンとしての1種類1以上の画像が予めHDD114等に登録される。検出部123は、各処理領域の周囲から当該画像にマッチする部分が検出されるか否かで、取り消し線の有無を判定する。
【0062】
図14は、取り消し線の検出処理を説明するための図である。
図14において、左端の画像g1は、ステップS120において原稿p1(
図12)から読み取られた対象画像である。中央の画像g1は、ステップS130において矩形領域が特定された画像g1である。右端の画像g1は、各矩形領域について取り消し線の検出結果(取り消し線の有無)を示す対象画像である。
【0063】
検出部123は、処理領域1~4のそれぞれの周囲について、取り消し線の画像とのパターンマッチングを行う。
図14の場合、検出部123は、処理領域3及び処理領域4から取り消し線を検出する。検出部123は、取り消し線が検出された処理領域に対しては、取り消し線が有ることを示すラベル(「取り消し線有」)を関連付け、処理消し線が検出されなかった処理領域に対しては、取り消し線が無いことを示すラベル(「取り消し線無」)を関連付ける。
【0064】
なお、本実施の形態では、取り消し線が処理マークmr1の枠線上に付加されることを前提としているために、処理領域の周囲がパターンマッチングの範囲とされているが、取り消し図形がどの部分に付加されるのかに応じて、パターンマッチングの範囲は適宜変更されてもよい。
【0065】
ステップS170aにおいて、処理実行部126は、「取り消し線無」が関連付けられている処理領域ごとに、当該処理領域から抽出された処理文字列について、当該処理領域に対応付けられた指示領域から抽出された指示文字列に応じた処理を実行する。換言すれば、処理実行部126は、「取り消し線有」が関連付けられている処理領域については処理を実行しない。
【0066】
図15は、第2の実施の形態において各処理領域に対して指示領域の文字列に応じて実行される処理内容を説明するための図である。
図15には、
図9と同様に、画像g1において特定される処理領域ごとに、当該処理領域に対応する指示領域の指示文字列、及び処理内容が示されていると共に、取り消し線有無が示されている。取り消し線有無は、「取り消し線有」及び「取り消し線無」のいずれのラベルが関連付けられているのかを示す。「有」は、「取り消し線有」が関連付けられていることを示し、「無」は、「取り消し線無」が関連付けられていることを示す。
【0067】
上記したように、処理実行部126は、「取り消し線無」が関連付けられている処理領域に関しては処理を実行しない。したがって、処理領域3及び4の処理内容は、処理が実行されないことを示す「変更無し」となっている。
図15に示した処理内容の実行により、
図14の左端の画像g1は、次のように変化する。
【0068】
図16は、第2の実施の形態における各処理領域に対する処理の実行結果の一例を示す図である。
図16において左側の画像g1は、処理の実行前の対象画像(すなわち、
図5の左側の画像g1)である。右側の画像g1は、処理の実行後の対象画像である。処理領域1及び2は、処理の実行により変化しているが、処理領域3及び4は、処理が実行されないため変化しない。なお、
図16においては表現されていないが、「さしすせそ」の色は緑色にされていない。
【0069】
上述したように、第2の実施の形態によれば、マーキングを行った後でもマーキングを取り消す(無効化する)ことができる。
【0070】
なお、
図4及び
図13において、ステップS130以降の処理は、画像処理装置10にネットワークを介して接続するコンピュータによって実行されてもよい。この場合、当該コンピュータは、ネットワークを介して画像処理装置10から対象画像を受信すればよい。
【0071】
なお、上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0072】
なお、上記各実施の形態において、処理マークmrは、第1の図形の一例である。処理領域は第1の領域の一例である。指示マークmeは、第2の図形の一例である。指示領域は第2の領域の一例である。取り消し線は、第3の図形の一例である。
【0073】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0074】
本発明の態様は、例えば、以下の通りである。
<1>
画像の中から第1の図形及び第2の図形を検出し、前記第1の図形に対応する第1の領域及び前記第2の図形に対応する第2の領域を特定する検出部と、
前記第2の領域から記号を抽出する抽出部と、
前記第1の領域に対して前記記号に応じた処理を実行する処理実行部と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
<2>
前記抽出部は、前記第1の領域から文字列を抽出し、
前記処理実行部は、前記第1の領域から抽出された文字列に対して前記第2の領域から抽出された記号に応じた処理を実行し、処理結果に基づく画像を前記第1の領域に合成する、
ことを特徴とする<1>記載の画像処理装置。
<3>
前記検出部は、前記画像の中から複数の前記第1の図形及び複数の前記第2の図形を検出して、複数の前記第1の領域及び複数の前記第2の領域を特定し、
前記処理実行部は、複数の前記第1の領域ごとに、当該第1の領域との位置関係に基づいて特定されるいずれかの前記第2の領域から抽出された記号に応じた処理を実行する、
ことを特徴とする<1>又は<2>記載の画像処理装置。
<4>
前記第1の領域に対して前記記号に応じた処理が実行された画像から前記第1の図形及び前記第2の図形を消去する消去部、
を有することを特徴とする<1>乃至<3>いずれか記載の画像処理装置。
<5>
前記検出部は、更に、前記第1の図形に第3の図形が付与されているか否かを判定し、
前記処理実行部は、前記第3の図形が付与されている前記第1の図形に係る前記第1の領域に対しては前記記号に応じた処理を実行しない、
ことを特徴とする<1>乃至<4>いずれか記載の画像処理装置。
<6>
画像の中から第1の図形及び第2の図形を検出し、前記第1の図形に対応する第1の領域及び前記第2の図形に対応する第2の領域を特定する検出手順と、
前記第2の領域から記号を抽出する抽出手順と、
前記第1の領域に対して前記記号に応じた処理を実行する処理実行手順と、
をコンピュータが実行することを特徴とする画像処理方法。
<7>
画像の中から第1の図形及び第2の図形を検出し、前記第1の図形に対応する第1の領域及び前記第2の図形に対応する第2の領域を特定する検出手順と、
前記第2の領域から記号を抽出する抽出手順と、
前記第1の領域に対して前記記号に応じた処理を実行する処理実行手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0075】
10 画像処理装置
11 コントローラ
12 スキャナ
13 プリンタ
14 モデム
15 操作パネル
16 ネットワークインタフェース
17 SDカードスロット
80 SDカード
111 CPU
112 RAM
113 ROM
114 HDD
115 NVRAM
121 入力部
122 読取制御部
123 検出部
124 対応判定部
125 抽出部
126 処理実行部
127 消去部
128 出力部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】