(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178764
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097153
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松林 恵理
(72)【発明者】
【氏名】高妻 豊
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA01
5F004BA20
5F004BB23
5F004BB26
5F004BB27
(57)【要約】
【課題】サセプタリングの位置固定に関する工夫を施した基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理装置は、分散板の上面またはサセプタリングの下面の一方に備わる複数の突起502(凸部)と、分散板の上面またはサセプタリングの下面の他方に備わる複数の溝501(凹部)と、を有し、突起502の側面が溝501の内側面と接するように突起502が溝501に挿入されることにより、サセプタリングが分散板上で位置決めされる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室を備える容器と、
前記処理室の内部に配置され、かつ、基板を配置可能な試料台基材と、
前記試料台基材の外周側に設けられた段差部と、
前記試料台基材内に設けられ、かつ、前記段差部の下面に達する内部配管と、
前記段差部の前記下面上に配置され、かつ、前記内部配管から供給されるガスを前記段差部の円柱形状の段差側面に向けて拡散させる溝を有する分散板と、
前記分散板上に配置されたサセプタリングと、
前記サセプタリングと前記段差側面との間に設けられ、かつ、前記段差側面に拡散された前記ガスを上方に向けて流すリング状の隙間と、
前記分散板の上面または前記サセプタリングの下面の一方に備わる複数の凸部と、
前記分散板の上面または前記サセプタリングの下面の他方に備わる複数の凹部と、
を有し、
前記凸部の側面が前記凹部の内側面と接するように前記凸部が前記凹部に挿入されることにより、前記サセプタリングが前記分散板上で位置決めされる、基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記分散板の平面形状は、リング形状をしており、
前記サセプタリングの平面形状は、リング形状をしており、
前記凹部の平面形状は、三角形形状をしており、
前記三角形形状は、
リング形状の半径方向に延在する第1辺と、
前記第1辺と直交する第2辺と、
前記第1辺および前記第2辺のそれぞれと交差する斜辺と、
を有し、
前記凹部の前記内側面は、前記斜辺を含む、基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板処理装置において、
前記溝は、
リング状の第1溝と、
前記第1溝の内周側で周方向に間隔を開けて配置され、かつ、前記第1溝および前記隙間と連通するように設けられた複数のスリットと、
を有する、基板処理装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の基板処理装置において、
平面視において、前記隙間は、前記基板と重なるように設けられている、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に予め形成された膜をエッチング処理する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-143186号公報(特許文献1)には、半導体ウエハ上に形成された膜に対し、原子層レベルのエッチング処理を行うことが開示されている。
【0003】
具体的には、まず、半導体ウエハ上に形成された膜の上面にプラズマを用いて形成した処理用ガスの活性種(ラジカル)を供給して付着させることにより、当該上面に生成物層を生成する処理を行う。その後、半導体ウエハの上方領域を囲むようにリング状に配置されたランプから赤外線を含む波長域の電磁波を半導体ウエハに照射して生成物層を脱離・揮発させる処理を行う。この結果、原子層と同等程度の厚さで形成される生成物層を除去することができる。以上のことから、生成物層を生成する処理と、生成物層を脱離・揮発させる処理とを繰り返して実施することにより、エッチング処理を行うことができる。
【0004】
ここで、エッチング処理により処理室に配置された各部品もエッチングされるおそれがある。特に、試料台付近の部品がエッチングされると、このエッチングで発生した異物が半導体ウエハに付着する。この結果、パターン欠陥を発生させたり、試料台の消耗によって、試料台と内部電極との間で電気的にパスができることで基板処理装置を故障させたりすることが懸念される。
【0005】
この懸念事項に対して、化学的または物理的なクリーニングを実施することが検討されている。代表的には、例えば、特開2022-152246号公報(特許文献2)に開示された技術が知られている。この技術は、試料台の外周部からガスを導入し、ラジカルの試料台側面への拡散を抑制するとともに、滞留している異物を加熱したガスで除去する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-143186号公報
【特許文献2】特開2022-152246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した技術では、以下に示す点について充分な考慮がなされていない。
【0008】
例えば、試料台の外周部に導入するガスを周方向に拡散する部品(分散板)は、流路に加工精度が求められるため、SUS等の金属が使用されている。
【0009】
一方、エッチング処理でエッチングされた金属部品によって、半導体ウエハが汚染されないように、試料台近傍に配置される金属部品は、石英等の絶縁部品で覆われている。したがって、分散板も石英のサセプタリングで覆われている。
【0010】
この点に関し、試料台近傍では試料台の側面とサセプタリングとの間の微細隙間をガス流路としており、サセプタリングのセンタリングがガスの周方向の均一性に影響を与える。ところが、例えば、スキミゲージによるサセプタリングの位置合わせでは、作業具合によって、上述した微細隙間がばらつくという課題がある。
【0011】
また、エッチング処理中にサセプタリングは200℃付近まで加熱される。ここで、石英に対してSUS等の金属は線膨張係数が2桁大きい。このため、線膨張率の差によってサセプタリングと分散板とをボルトで固定することができない。
【0012】
この結果、エッチング処理中に基板処理装置に発生する振動等によってサセプタリングのセンタリングがずれてしまい、ガスの吹き出しが不均一となる課題もある。ガスの吹き出しが周方向に不均一になると、吹き出し流量の少ない場所での異物の滞留や試料台の消耗等の問題や、エッチング処理中に半導体ウエハ上のラジカル分布が周方向で変化するため、エッチング処理の面内均一性が悪化するというプロセス制御性の問題が生じる。
【0013】
本発明の目的は、上述した課題を解決するためになされたものであり、サセプタリングの位置固定に関する工夫を施した基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一実施の形態における基板処理装置は、処理室を備える容器と、処理室の内部に配置され、かつ、基板を配置可能な試料台基材と、試料台基材の外周側に設けられた段差部と、試料台基材内に設けられ、かつ、前記段差部の下面に達する内部配管と、段差部の下面上に配置され、かつ、内部配管から供給されるガスを段差部の円柱形状の段差側面に向けて拡散させる溝を有する分散板と、分散板上に配置されたサセプタリングと、サセプタリングと段差側面との間に設けられ、かつ、段差側面に拡散されたガスを上方に向けて流すリング状の隙間と、分散板の上面またはサセプタリングの下面の一方に備わる複数の凸部と、分散板の上面またはサセプタリングの下面の他方に備わる複数の凹部と、を有し、凸部の側面が凹部の内側面と接するように凸部が凹部に挿入されることにより、サセプタリングが分散板上で位置決めされる。
【発明の効果】
【0015】
一実施の形態によれば、サセプタリングを分散板に位置固定することにより、安定的なエッチング処理を可能にする基板処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態における基板処理装置の構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】基板処理装置のステージガス供給機構の構成を模式的に示す断面図である。
【
図3】分散板の上面側の構造を模式的に示す図である。
【
図4】サセプタリングの下面側の構造を模式的に示す図である。
【
図5】分散板の突起とサセプタリングの溝の位置合わせの手順を示す図である。
【
図6】サセプタリングの突起と分散板の溝の位置合わせの手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0018】
<基板処理装置の構成>
本実施の形態における基板処理装置について説明する。
図1は、本実施の形態における基板処理装置の構成を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、基板処理装置100は、真空容器101と、真空容器101の上部を構成して内部でプラズマを生成する放電部102と、真空容器101の下部を構成して半導体ウエハ(以下ではウエハ1019と呼ぶ場合がある)を置く試料台103とを備えている。この試料台103は、真空容器101の下部に設けられた処理室104の内部に配置されている。つまり、試料台103は、処理対象となるウエハ1019が配置されるステージであり、真空容器101の内部の処理室104内に配置されている。
【0019】
また、基板処理装置100は、試料台103上のウエハ1019を加熱するIRランプユニット105と、プラズマに含まれるラジカル粒子を通過させる貫通孔を有する誘電体製のイオンシールドプレート106とを有している。このイオンシールドプレート106は、放電部102と処理室104とを連結する通路に設けられている。
【0020】
基板処理装置100において、処理室104および放電部102の内部空間は、円筒形を有した空間であって、その中心軸は同軸上またはこれと見做せる程度に近似した位置に配置されている。処理室104および放電部102の間は、同様に処理室104および放電部102と中心軸が合致またはこれと見做せる程度に近似した位置に配置された円形のイオンシールドプレート106によって区分されている。そして、処理室104と放電部102は、イオンシールドプレート106に同心円状に設けられた複数の貫通孔を通して連通されている。
【0021】
放電部102は、処理ガス1013を流入してプラズマ1011を生成する機能を有し、生成したプラズマの状態を光学的手法で観測できるように構成されている。
【0022】
基板処理装置100には、放電部102に処理ガス1013を供給するための供給路が設けられている。さらに、基板処理装置100には、ウエハ1019を処理するための処理ガス1013に基づいて生成されたプラズマ1011を処理室104内に供給する供給路が試料台103の上方に配置されている。これにより、放電部102に供給された処理ガス1013からプラズマ1011が生成され、生成されたプラズマ1011は、放電部102の下方に位置する処理室104に導入される。
【0023】
放電部102には、真空に保たれた円筒型の石英チャンバ(誘電体チャンバ)107が設置されており、石英チャンバ107の外側にはICPコイル108が設置されている。ICPコイル108は、整合器を介して高周波電源に接続され、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)放電方式で石英チャンバ107内にプラズマ1011を生成する機能を有している。ここで、例えば、高周波電力の周波数は13.56MHzなどの数十MHzの周波数帯を用いる。
【0024】
放電部102には、天板1014が設けられている。天板1014の下方には、イオンシールドプレート106が設置されており、処理ガス1013は、イオンシールドプレート106を介して処理室104の内部に導入される。
【0025】
天板1014と石英チャンバ107の上面との間には、Oリング等のシール部材が介在している。これにより、放電部102の内部が気密に封止される。
【0026】
処理ガス1013は、ガス種毎に設置されたマスフローコントローラによって供給流量が調整される。処理ガス1013として、可燃性ガス、支燃性ガス、およびこれらの混合ガス、または不活性ガスにより希釈された混合ガスが用いられる。
【0027】
処理室104の下部には、真空容器101内を減圧するため、排気用の開口が設けられており、真空容器101はこの開口部から排気管を通して真空ポンプ1017に接続されている。開口部と真空ポンプ1017の経路上には圧力調整バルブが配置されており、経路または開口の流路断面積を増減して排気の流量または速度を調整している。
【0028】
処理室104には、放電部102および処理室104の中心軸に合致またはこれと見做せると近似した位置にウエハ1019を搭載する試料台103が配置されている。
【0029】
試料台103と放電部102の間にはウエハ1019を加熱するためのIRランプユニット105が設置されている。IRランプユニット105は、主に、IRランプ1020、IR光を反射するための反射板1021および光透過窓1022からなる。
【0030】
IRランプ1020にはサークル型(円形状)のランプを用いる。すなわち、ウエハ1019に電磁波を照射してウエハを加熱するIRランプ1020が、試料台103の上方であってプラズマ1011の供給路の周囲にリング状に配置されている。
【0031】
なお、IRランプ1020から放射される光は、可視光領域から赤外光領域の波長域を有する光を主とした光(IR光と呼ぶ場合がある)である。
【0032】
IRランプユニット105には、その下面から内周側壁面にわたって、IR光を通すための石英製の光透過窓1022が配置されている。
【0033】
IRランプユニット105の内周の内側空間は、上方に配置された放電部102で生成されたプラズマ1011が通流する流路である。この流路には、プラズマ1011に含まれるイオンまたは電子などを遮蔽する一方、ガスの中性粒子またはラジカルなどを透過される誘電体製のイオンシールドプレート106が設置されている。
以上のようにして、基板処理装置100が構成されている。
【0034】
<基板処理装置を使用したウエハ処理方法>
基板処理装置100では、ウエハ1019に対する処理方法が実施される。この処理方法は、(1)ウエハ1019の表面にラジカルによる反応生成物層を形成する工程、(2)反応生成物層が形成されたウエハ1019に対して、赤外線を含む電磁波を照射することにより、ウエハ1019の表面を加熱して反応生成物層を除去する工程を含む。
【0035】
反応生成物層の形成工程については、まず、処理室104上部のラジカル生成空間に処理ガスを供給し、ガスを活性化することによりラジカル粒子を生成する。生成されたラジカル粒子は、処理室104と連通されたガス導入管を介して、処理室104に配置されたウエハ1019の上面に供給され、ウエハ1019の上面に反応生成物層が形成される。つまり、試料台103上に配置されたウエハ1019上にラジカル粒子を導入して、ウエハ1019の上面に予め形成されている処理対象膜の表面に反応生成物層を形成する。
【0036】
続いて、反応生成物層の除去工程では、ウエハ1019の上部に配置したIRランプユニット105から赤外光を含む電磁波が照射され、ウエハ1019の上面に形成されている反応生成物層を構成する生成物が気化される。これにより、反応生成物層が除去される。これらの工程を交互に繰り返し、処理対象の膜がエッチングされる。
以上のようにして、基板処理装置を使用してウエハ処理方法が実施される。
【0037】
<基板処理装置の詳細な構成>
以下では、試料台の外周部からガスを導入するためのステージガス供給機構の構成について説明する。
図2は、基板処理装置100のステージガス供給機構の構成を模式的に示す断面図である。
図2において、試料台103は、処理室の中心軸と同軸の円柱型の構造をしており、試料台基材201と、試料台基材201の上面に設けられた試料吸着膜202と、試料吸着膜202の内部に埋め込まれた電極板203とを有するように構成されている。そして、試料台基材201を側面から取り囲むようにサセプタリング205が設けられている。このように構成されている試料台103は、ウエハ1019を固定吸着する機能と冷却機能とを有している。
【0038】
試料台基材201には、試料台103を冷却するための冷媒流路が螺旋状に設けられており、チラーによって冷媒が循環供給されるようになっている。
【0039】
試料吸着膜202には、ウエハ1019を吸着したまま加熱・冷却サイクルを行ってもウエハ1019の裏面に傷がつかないように、ポリイミド等の樹脂シートが貼り付けられている。また、
図2に示すように、ウエハ1019を静電吸着によって固定するため、試料吸着膜202の内部に板状の電極板203が埋め込まれている。この電極板203は直流電源(DC電源)に接続されている。さらに、試料吸着膜202には溝が設けられており、ウエハ1019と試料吸着膜202との間にHeガスを供給することができるようになっている。これにより、冷媒経路で温調された試料台103とウエハ1019とは、Heガスを通して熱的に接触することができ、これによって、IRランプユニットで加熱されたウエハ1019を効率良く冷却することができる。
【0040】
試料台103の外周部には、エッチングガスによる腐食から試料台を保護するために石英製のサセプタリング205が配置されている。サセプタリング205は試料台103と中心軸を同じくする円筒形であり、内径を試料台基材201、試料吸着膜202のそれぞれの側壁の径に合わせて設計されており、ウエハ1019が配置される部分以外の試料台103の部分を覆うように設けられている。
【0041】
サセプタリング205の下には試料台103の側面に堆積した異物の除去と異物の侵入を抑制するためのステージガス導入機構206が設けられている。ステージガス導入機構206は、ステージ内部配管207および分散板208を有する機構である。
【0042】
ステージ内部配管207よって供給されるガスは、分散板208の内部に形成された溝10で周方向に拡散され、サセプタリング205と試料台基材201の微細隙間209(0.2mm)を通り、ウエハ1019の裏面側から処理室内に抜けていく。
【0043】
分散板208は、例えば、平面度の加工精度を確保するため、例えば、SUSやアルマイトの金属で作製されており、アルマイトからなる試料台基材201に位置合わせされた後、複数個所においてボルト固定されている。
【0044】
図2において、試料台基材201の外周側には段差部210が設けられている一方、試料台基材201内には、ステージ内部配管207が設けられている。このステージ内部配管207は、上述した段差部210の下面に達するように構成されている。そして、段差部210の下面上には、分散板208が配置されている。この分散板208には、ステージ内部配管207から供給されるガスを段差部の円柱形状の段差側面に向けて拡散させる溝10を有している。具体的に、例えば、この溝10は、リング状のリング溝1と、リング溝1の内周側で周方向に間隔を開けて配置され、かつ、リング溝1および微細隙間209と連通するように設けられた複数のスリットSLとから構成されている。この結果、ステージ内部配管207よって供給されるガスは、分散板208の内部に形成された溝10で周方向に拡散されて段差部210の円柱形状の段差側面に達することになる。つまり、ステージ内部配管207から分散板208に供給されたガスは、分散板208に設けられているリング溝1から複数のスリットSLに誘導された後、複数のスリットSLから微細隙間209に誘導されることになる。
【0045】
上述した分散板208上には、サセプタリング205が配置されている。
図2に示すように、このサセプタリング205と段差側面との間には、微細隙間209が設けられている。微細隙間209は、段差側面に拡散されたガスを上方に向けて流すリング状の隙間である。微細隙間209の上方には、ウエハ1019が配置されている。すなわち、平面視において、微細隙間209は、ウエハ1019と重なるように設けられている。
【0046】
<<実施の形態における特徴>>
ここで、本実施の形態における特徴は、サセプタリング205と分散板208との接続構造にある。例えば、分散板208の上面またはサセプタリング205の下面の一方には、複数の凸部(突起302)が設けられており、分散板208の上面またはサセプタリング205の下面の他方には複数の凹部(溝402)が設けられている。そして、凸部の側面が凹部の内側面と接するように凸部が凹部に挿入されることにより、サセプタリング205が分散板208上で位置決めされる。
以下に、図面を使用して具体的に説明する。
【0047】
図3は、分散板208の上面側の構造を模式的に示す図であり、
図4は、サセプタリング205の下面側の構造を模式的に示す図である。
【0048】
図3に示すように、分散板208の上面301には、3点以上の複数箇所に突起302(凸部)が設けられている。一方、
図4に示すように、サセプタリング205の下面401には、突起302を挿入可能な位置に対応して溝402(凹部)が設けられている。
【0049】
具体的に、分散板208の平面形状は、リング形状をしており、サセプタリング205の平面形状も、リング形状をしている。このとき、溝402の平面形状は、三角形形状をしている。そして、三角形形状は、リング形状の半径方向に延在する第1辺402aと、第1辺402aと直交する第2辺402bと、第1辺402aおよび第2辺402bのそれぞれと交差する斜辺402cと、を有しており、溝402の内側面は、斜辺402cを含んでいる。このようにして、嵌合可能な突起302と溝402が形成されている。
【0050】
図5は、分散板の突起502とサセプタリングの溝501との位置合わせの手順を模式的に示す図である。
図5に示すように、まず、分散板の突起502が、サセプタリングの溝501に嵌め合うようにサセプタリングを分散板上に配置する。
【0051】
このとき、突起502は、サセプタリングの溝501のいずれの内側面(内壁面)にも接しないようにする。次に、サセプタリングを回転し、突起502が溝501の傾斜している斜辺503に接するように調整する。そして、突起502が溝501の斜辺503に3点以上で接するように調整する。これにより、溝501と突起502の加工精度でサセプタリングが分散板上で位置決めされる。なお、回転時の偏心を防ぐため、サセプタリングと試料基材との間の隙間(
図2の微細隙間209)の3箇所以上に等間隔でスキミゲージを補助的に挟みながら、サセプタリングを回転させてもよい。
【0052】
上述した本実施の形態における特徴によれば、以下に示す効果が得られる。例えば、基板処理装置でのウエハの処理中において、サセプタリングは、ドライポンプ等の装置からの振動を受けることが想定される。この点に関し、本実施の形態における特徴によれば、突起502と溝501の斜辺503が3点以上で接しているため、直径方向にサセプタリングの位置がずれることはない。一方、加熱処理中においては、入熱によりサセプタリングの温度と分散板の温度が共に200℃付近に到達する。この結果、石英製のサセプタリングは外径方向へ0.01mm線膨張する一方、SUSやアルミナ製の分散板も外径方向へ0.5mm線膨張することが想定される。しかしながら、この場合、サセプタリングと分散板の線膨張の差によって、突起502が溝501の斜辺503から離れる方向に変位するため、両者は干渉せずに損傷することはない。また、エッチング処理中においては、常時ガスを流すことにより、溝501に異物が溜まることを防止することができる。
【0053】
以上のことから、本実施の形態における特徴によれば、副作用を生じさせることなく、サセプタリングを分散板に確実に位置固定することができ、これによって、安定的なエッチング処理を可能にする基板処理装置を提供することができる。
【0054】
<変形例>
例えば、サセプタリングの下面に突起を設ける一方、分散板の上面に溝を設けるように加工をしてもよく、この場合、実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
図6は、サセプタリングの突起602と分散板の溝601との位置合わせの手順を模式的に示す図である。
図6に示すように、まず、サセプタリングの突起602が、分散板の溝601に嵌め合うようにサセプタリングを分散板上に配置する。
【0056】
このとき、突起602は、分散板の溝601のいずれの内側面(内壁面)にも接しないようにする。次に、サセプタリングを回転し、突起602が溝601の傾斜している斜辺603に接するように調整する。そして、突起602が溝601の斜辺603に3点以上で接するように調整する。これにより、溝601と突起602の加工精度でサセプタリングが分散板上で位置決めされる。
【0057】
これにより、本変形例においても、突起602と溝601の斜辺603が3点以上で接しているため、直径方向にサセプタリングの位置がずれることはない。このとき、本変形例においても、実施の形態と同様に副作用を抑制することができる。したがって、本変形例においても、副作用を生じさせることなく、サセプタリングを分散板に確実に位置固定することができ、これによって、安定的なエッチング処理を可能にする基板処理装置を提供することができる。
【0058】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0059】
1 リング溝
10 溝
100 基板処理装置
101 真空容器
102 放電部
103 試料台
104 処理室
105 IRランプユニット
106 イオンシールドプレート
107 石英チャンバ
108 ICPコイル
201 試料台基材
202 試料吸着膜
203 電極板
205 サセプタリング
206 ステージガス導入機構
207 ステージ内部配管
208 分散板
209 微細隙間
301 上面
302 突起
401 下面
402 溝
402a 第1辺
402b 第2辺
402c 斜辺
501 溝
502 突起
503 斜辺
601 溝
602 突起
603 斜辺
1011 プラズマ
1013 処理ガス
1014 天板
1017 真空ポンプ
1019 ウエハ
1020 IRランプ
1021 反射板
1022 光透過窓
SL スリット