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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178779
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】キャリア板の除去方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20241218BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20241218BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H01L23/12 501P
H01L21/68 N
H01L21/78 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097177
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】木内 逸人
【テーマコード(参考)】
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
5F063AA05
5F063BA17
5F063CA04
5F131AA23
5F131BA52
5F131DA12
5F131DA42
5F131EA05
5F131EB03
(57)【要約】
【課題】キャリア板に仮接着層を介してワークピースが固定されてなる複合基板からキャリア板を容易に除去できるキャリア板の除去方法を提供する。
【解決手段】キャリア板の除去方法であって、複合基板のキャリア板側が露出するように、複合基板のワークピース側にテープを貼付し、且つ、テープの外周部に環状のフレームを固定する一体化工程と、仮接着層の外縁部が除去されるように、複合基板の外縁部を加工する加工工程と、キャリア板の第2面側を保持具で保持し、ワークピースがキャリア板から離れるように保持具とフレームとを相対的に移動させることにより、複合基板からキャリア板を除去する除去工程と、を含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、該第1面とは反対側の第2面と、を有するキャリア板の該第1面に仮接着層を介してワークピースが固定されてなる複合基板から、該キャリア板を除去する際に用いられるキャリア板の除去方法であって、
該複合基板の該キャリア板側が露出するように、該複合基板の該ワークピース側にテープを貼付し、且つ、該テープの外周部に環状のフレームを固定する一体化工程と、
該仮接着層の外縁部が除去されるように、該複合基板の外縁部を加工する加工工程と、
該一体化工程及び該加工工程を実施した後に、該キャリア板の該第2面側を保持具で保持し、該ワークピースが該キャリア板から離れるように該保持具と該フレームとを相対的に移動させることにより、該複合基板から該キャリア板を除去する除去工程と、を含むキャリア板の除去方法。
【請求項2】
該除去工程では、該キャリア板の該第2面側を該保持具で上方から保持し、該フレームの上方から押圧具で該フレームに下向きの力を加えることにより、該ワークピースが該キャリア板から離れるように該保持具と該フレームとを相対的に移動させる請求項1に記載のキャリア板の除去方法。
【請求項3】
該加工工程では、該テープを介して該複合基板をチャックテーブルで保持し、回転させた切削ブレードを該複合基板の該外縁部に切り込ませることにより、該複合基板の該外縁部を加工する請求項1又は請求項2に記載のキャリア板の除去方法。
【請求項4】
該加工工程では、該仮接着層の該外縁部とともに該ワークピースの外縁部が除去されるように、回転させた該切削ブレードを該複合基板の該外縁部に切り込ませる請求項3に記載のキャリア板の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア板に仮接着層を介してワークピースが固定されてなる複合基板からキャリア板を除去する際に用いられるキャリア板の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やパーソナルコンピュータに代表される電子機器では、電子回路等のデバイスを備えるデバイスチップが必須の構成要素になっている。デバイスチップは、例えば、シリコン等の半導体でなるウェーハの表面(一方の主面)を分割予定ライン(ストリート)で複数の領域に区画し、各領域にデバイスを形成した後、この分割予定ラインに沿ってウェーハを分割することにより得られる。
【0003】
上述のような方法で得られたデバイスチップは、例えば、CSP(Chip Size Package)用のマザー基板に固定され、ワイヤボンディング等の方法でマザー基板の端子等に接続された上で、モールド樹脂により封止される。このように、モールド樹脂によりデバイスチップを封止してパッケージデバイスを形成することで、衝撃、光、熱、水等の外的な要因からデバイスチップが適切に保護される。
【0004】
近年では、ウェーハレベルの再配線技術を用いてデバイスチップの領域外に端子を設けるFOWLP(Fan-Out Wafer Level Package)と呼ばれるパッケージ技術が実用化されている(例えば、特許文献1参照)。また、ウェーハよりもサイズが大きいパネル(代表的には、液晶パネルの製造に用いられるガラス基板)のレベルでパッケージデバイスを一括して製造するFOPLP(Fan-Out Panel Level Packaging)と呼ばれるパッケージ技術も提案されている。
【0005】
FOPLPでは、例えば、仮の基板となるキャリア板の表面(一方の主面)に仮接着層を介して配線層(RDL:Redistribution Layer)が設けられた積層体が用意される。この積層体の配線層にデバイスチップが接合され、その後、デバイスチップがモールド樹脂で封止されることにより、パッケージパネルが得られる。そして、このパッケージパネルを分割することにより、パッケージデバイスが完成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-201519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したFOPLPでは、例えば、パッケージパネルをパッケージデバイスへと分割した後に、このパッケージデバイスからキャリア板が除去される。具体的には、キャリア板から各パッケージデバイスがピックアップされる。ところが、パッケージデバイスのサイズが小さいと、このパッケージデバイスをキャリア板からピックアップするのが難しい。
【0008】
一方で、パッケージパネルをパッケージデバイスへと分割する前に、パッケージパネルからキャリア板を剥離し、除去することも考えられる。しかしながら、仮接着層の接着力はある程度に強いので、パッケージパネルを損傷させることなくキャリア板をパッケージパネルから剥離するのが難しかった。
【0009】
よって、本発明の目的は、キャリア板に仮接着層を介してパッケージパネル等のワークピースが固定されてなる複合基板からキャリア板を容易に除去できるキャリア板の除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によれば、第1面と、該第1面とは反対側の第2面と、を有するキャリア板の該第1面に仮接着層を介してワークピースが固定されてなる複合基板から、該キャリア板を除去する際に用いられるキャリア板の除去方法であって、該複合基板の該キャリア板側が露出するように、該複合基板の該ワークピース側にテープを貼付し、且つ、該テープの外周部に環状のフレームを固定する一体化工程と、該仮接着層の外縁部が除去されるように、該複合基板の外縁部を加工する加工工程と、該一体化工程及び該加工工程を実施した後に、該キャリア板の該第2面側を保持具で保持し、該ワークピースが該キャリア板から離れるように該保持具と該フレームとを相対的に移動させることにより、該複合基板から該キャリア板を除去する除去工程と、を含むキャリア板の除去方法が提供される。
【0011】
好ましくは、該除去工程では、該キャリア板の該第2面側を該保持具で上方から保持し、該フレームの上方から押圧具で該フレームに下向きの力を加えることにより、該ワークピースが該キャリア板から離れるように該保持具と該フレームとを相対的に移動させる。
【0012】
また、好ましくは、該加工工程では、該テープを介して該複合基板をチャックテーブルで保持し、回転させた切削ブレードを該複合基板の該外縁部に切り込ませることにより、該複合基板の該外縁部を加工する。
【0013】
また、好ましくは、該加工工程では、該仮接着層の該外縁部とともに該ワークピースの外縁部が除去されるように、回転させた該切削ブレードを該複合基板の該外縁部に切り込ませる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面にかかるキャリア板の除去方法では、複合基板のワークピース側にテープを貼付し、且つ、テープの外周部に環状のフレームを固定し、仮接着層の外縁部が除去されるように複合基板の外縁部を加工した上で、キャリア板を保持具で保持し、ワークピースがキャリア板から離れるように保持具とフレームとを相対的に移動させるので、複合基板からキャリア板を容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、キャリア板とワークピースとを含む複合基板を模式的に示す断面図である。
図2図2は、テープを介してフレームと一体化された状態の複合基板を模式的に示す断面図である。
図3図3は、テープを介してチャックテーブルにより保持された状態の複合基板を模式的に示す断面図である。
図4図4は、切削ブレードで切削加工されている状態の複合基板を模式的に示す断面図である。
図5図5は、保持具によりキャリア板側を保持された状態の複合基板を模式的に示す断面図である。
図6図6は、フレームに下向きの力が加えられることによりキャリア板から分離されたワークピースを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一側面にかかる実施形態について説明する。本実施形態にかかるキャリア板の除去方法は、キャリア板の表面に仮接着層を介してワークピースが設けられてなる複合基板からキャリア板を除去する際に用いられ、一体化工程(図3参照)、加工工程(図4及び図5参照)、及び除去工程(図6参照)を含む。
【0017】
一体化工程では、複合基板のキャリア板側が露出するように、複合基板のワークピース側にテープを貼付し、且つ、このテープの外周部に環状のフレームを固定する。加工工程では、仮接着層の外縁部が除去されるように、複合基板の外縁部が加工される。除去工程では、複合基板のキャリア板側を保持具で保持し、ワークピースがキャリア板から離れるように保持具とフレームとを相対的に移動させることにより、複合基板からキャリア板が除去される。
【0018】
図1は、本実施形態で使用される複合基板1を模式的に示す断面図である。複合基板1は、例えば、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、又は石英ガラス等の絶縁体で形成されたキャリア板3を含む。このキャリア板3は、例えば、概ね平坦な第1面(表面)3aと、第1面3aとは反対側の第2面(裏面)3bと、を有し、第1面3a側又は第2面3b側から見た平面視で矩形状に構成されている。キャリア板3の厚みは、例えば、2mm以下、代表的には、1.1mmである。
【0019】
なお、本実施形態では、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、又は石英ガラス等の絶縁体でなるキャリア板3が用いられているが、キャリア板3の材質、形状、構造、大きさ等に特段の制限はない。例えば、半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる板等がキャリア板3として用いられ得る。また、円盤状の半導体ウェーハ等がキャリア板3として用いられてもよい。
【0020】
キャリア板3の第1面3a側には、仮接着層5を介してワークピース7が設けられている。仮接着層5は、例えば、金属膜や絶縁体膜等を重ねることによって第1面3aの概ね全体に形成され、キャリア板3とワークピース7とを接着する機能を持つ。ただし、仮接着層5は、接着剤として機能する樹脂膜等によって構成されてもよい。
【0021】
仮接着層5の厚みは、例えば、20μm以下、代表的には、0.6μm程度である。後述する除去工程においてワークピース7からキャリア板3を分離して除去する際には、この仮接着層5が、キャリア板3側に密着した第1部分5a(図6参照)と、ワークピース7側に密着した第2部分5b(図6参照)と、に分離される。
【0022】
ワークピース7は、例えば、パッケージパネルやパッケージウェーハ等とも呼ばれ、仮接着層5に接する配線層(RDL)(不図示)と、配線層に接合された複数のデバイスチップ9と、各デバイスチップ9を封止するモールド樹脂層11と、を含む。ワークピース7は、例えば、平面視でキャリア板3と概ね同じ大きさ、形状に構成されている。また、ワークピース7の厚みは、例えば、1.5mm以下、代表的には、0.6mm、0.1mm等である。
【0023】
なお、ワークピース7の露出している第1面(表面)7a側は、研削等の方法で加工されてもよい。また、ワークピース7内で隣接するデバイスチップ9の間の領域には、分割予定ライン(切断予定ライン)が設定される。任意の分割予定ラインでワークピース7を切断することにより、ワークピース7は、それぞれ1又は複数のデバイスチップ9を含む複数のワークピース片に分割される。
【0024】
全ての分割予定ラインでワークピース7(又はワークピース片)を切断すれば、各デバイスチップ9に対応する複数のパッケージデバイスが得られる。ただし、ワークピース7の材質、形状、構造、大きさ等に特段の制限はない。例えば、ワークピース7は、主に配線層により構成され、デバイスチップ9やモールド樹脂層11等を含まないことがある。
【0025】
本実施形態にかかるキャリア板の除去方法では、まず、この複合基板1を環状のフレームに一体化する一体化工程が実施される。図2は、テープ21を介してフレーム23と一体化された状態の複合基板1を模式的に示す断面図である。図2に示されるように、本実施形態では、複合基板1がテープ21を介してフレーム23と一体化される。
【0026】
テープ21は、例えば、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、又はポリエチレンテレフタラート等の樹脂により円形状に形成された薄い基材(フィルム)と、エポキシ系、アクリル系、又はゴム系の接着剤等により基材上に形成された粘着層(糊層)と、を含む。ただし、粘着層には、紫外線が照射されると硬化する紫外線硬化型の樹脂等が用いられてもよい。
【0027】
ここで、複合基板1に対するテープ21の粘着力は、1N/20mm以上であることが望ましく、2N/20mm以上であるとより望ましい。テープ21の粘着力が1N/20mmを下回ると、キャリア板3からワークピース7を分離する際にテープ21が複合基板1から剥がれる可能性が高くなるためである。本実施形態では、一例として、3N/20mm程度の粘着力を持つテープ21が使用される。
【0028】
フレーム23は、例えば、SUS(ステンレス鋼)等の金属で環状に構成され、その中央部には、フレーム23を厚みの方向に貫通するような円形状の開口部23aが存在している。開口部23aの直径は、複合基板1の任意の2つの角部の間の距離(幅)の中で最大のもの(複合基板1が円盤状の場合には、直径)よりも大きく、この開口部23aの内側に複合基板1が配置される。
【0029】
具体的には、例えば、複合基板1のキャリア板3側が露出するように、複合基板1のワークピース7側に、テープ21の粘着層側の中央部が貼付される。また、テープ21の粘着層側の外周部に、環状のフレーム23が固定される。なお、複合基板1へのテープ21の貼付と、テープ21へのフレーム23の固定とは、どのような順序で行われてもよい。更に、これらが実質的に同時に行われてもよい。
【0030】
一体化工程が実施された後には、仮接着層5の外縁部が除去されるように、複合基板1の外縁部を加工する加工工程が実施される。具体的には、まず、複合基板1のキャリア板3側が上方に露出するように、複合基板1のワークピース7側がチャックテーブルにより保持される。図3は、ワークピース7側が保持された状態の複合基板1を模式的に示す断面図である。
【0031】
本実施形態では、図3等に示される切削装置2を用いて加工工程が実施される。切削装置2は、複合基板1を保持するためのチャックテーブル4を備えている。チャックテーブル4は、例えば、ステンレス鋼に代表される金属等でなる円盤状の枠体6を含む。枠体6の上部には、枠体6の上面に開口する凹部が設けられており、この凹部には、セラミックス等により多孔質の平板状に構成された保持板8が固定されている。また、枠体6の周囲には、フレーム23を固定できる複数のクランプ(不図示)が設けられている。
【0032】
保持板8の下面側は、枠体6の内部に設けられた流路6aや、枠体6の外部に配置されたバルブ10等を介して、エジェクタ等を含む吸引源12に接続されている。そのため、吸引源12を作動させた状態でバルブ10が開かれると、保持板8の上面8aに吸引源12の負圧が作用する。このように、保持板8の上面8aは、複合基板1のワークピース7側を吸引して保持するための保持面となる。
【0033】
枠体6の下部には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、この回転駆動源が生じる動力により、チャックテーブル4は、上述した保持板8の上面(保持面)8aに対して概ね垂直な回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブル4は、第1水平移動機構(不図示)に支持されており、この第1水平移動機構が生じる動力により、上述した上面8aに対して概ね平行な第1軸(X軸)に沿って移動する(加工送り)。
【0034】
複合基板1をチャックテーブル4に保持させる際には、図3に示されるように、ワークピース7の第1面7aがテープ21を介してチャックテーブル4の上面8aに対面するように、この上面8aにテープ21を介して複合基板1が載せられる。その後、吸引源12を作動させた状態でバルブ10が開かれる。
【0035】
これにより、吸引源12の負圧が上面8aに作用し、複合基板1は、テープ21を介してチャックテーブル4により保持される。すなわち、複合基板1のワークピース7側がテープ21を介してチャックテーブル4により保持され、複合基板1のキャリア板3側が上方に露出する。併せて、フレーム23がクランプにより固定される。
【0036】
チャックテーブル4により複合基板1が保持された後には、複合基板1の外縁部が加工される。図4は、外縁部が加工されている状態の複合基板1を模式的に示す断面図である。図4に示されるように、チャックテーブル4の上方には、切削ユニット14が配置されている。切削ユニット14は、上面8aに対して概ね平行で第1軸に対して概ね垂直な第2軸(Y軸)に沿うスピンドル16を備えている。スピンドル16の一端側には、結合材に砥粒が分散されてなる環状の切削ブレード18が装着されている。
【0037】
スピンドル16の他端側には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、スピンドル16の一端側に装着された切削ブレード18は、この回転駆動源が生じる動力により回転する。切削ユニット14は、例えば、第2水平移動機構(不図示)と昇降機構(不図示)とに支持されており、第2水平移動機構が生じる動力により、第2軸に沿って移動し(割り出し送り)、昇降機構が生じる動力により、第1軸及び第2軸に対して垂直な第3軸(Z軸)に沿って移動する。
【0038】
複合基板1を加工する際には、まず、加工の対象となる複合基板1の外縁部の一部(平面視で矩形の一辺に相当する部分)が、第1軸に対して概ね平行になるように、複合基板1を保持しているチャックテーブル4を回転駆動源が回転させる。次に、上述した外縁部の一部の延長線の上方に切削ブレード18が位置付けられるように、第1水平移動機構がチャックテーブル4を第1軸に沿って移動させ、第2水平移動機構が切削ユニット14を第2軸に沿って移動させる。
【0039】
そして、仮接着層5とワークピース7との界面より僅かに低い位置に切削ブレード18の下端が位置づけられるように、昇降機構が、切削ユニット14を第3軸に沿って移動させる。その後、切削ブレード18が回転している状態で、第1水平移動機構がチャックテーブル4を第1軸に沿って移動させる。
【0040】
これにより、図4に示されるように、回転している切削ブレード18が複合基板1の外縁部に切り込み、複合基板1の外縁部は、この切削ブレード18により除去される。すなわち、複合基板1を構成しているキャリア板3、仮接着層5、及びワークピース7の外縁部が、それぞれ除去される。
【0041】
一般的に、キャリア板3の外縁部と、ワークピース7の外縁部とは、仮接着層5の外縁部により強く接着されている。そのため、仮接着層5の外縁部が除去されることにより、後に、キャリア板3からワークピース7を容易に分離できるようになる。なお、本実施形態では、仮接着層5の外縁部とともに、キャリア板3及びワークピース7の外縁部が除去されているが、少なくとも、仮接着層5の外縁部が除去されていればよい。
【0042】
上述のような手順で複合基板1の外縁部の一部が除去された後には、同様の手順で、複合基板1の外縁部の他の一部が除去される。このような手順が繰り返され、例えば、複合基板1の外縁部の全体が除去されると、加工工程は終了する。なお、本実施形態では、複合基板1の外縁部の全体が除去されているが、少なくとも、複合基板1の外縁部の一部が除去されていれば、次の除去工程を適切に実施することが可能になる。
【0043】
また、この加工工程の具体的な手順等は、複合基板1の形状等に合わせて適切に変更され得る。例えば、複合基板1が円盤状に構成されている場合には、切削ブレード18を複合基板1の外縁部に切り込ませながらチャックテーブル4を回転させることにより、複合基板1の外縁部が除去される。もちろん、この場合に、複合基板1の外縁部の一部だけが除去されてもよい。
【0044】
一体化工程及び加工工程が実施された後には、複合基板1からキャリア板3を除去する除去工程が実施される。具体的には、まず、複合基板1のキャリア板3側が上方から保持具により保持される。図5は、キャリア板3側を上方から保持された状態の複合基板1を模式的に示す断面図である。
【0045】
本実施形態では、図5等に示される分離装置22を用いて除去工程が実施される。分離装置22は、複合基板1のキャリア板3側を上方から保持するための保持具(保持部材)24を備えている。保持具24の下部には、キャリア板3の第2面3bと同程度の大きさを持つ保持面24aが形成されている。
【0046】
保持面24aには、流路(不図示)やバルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等を含む吸引源(不図示)が接続されている。そのため、吸引源を作動させた状態でバルブが開かれると、保持面24aに吸引源の負圧が作用する。また、保持具24は、昇降機構(不図示)に支持されており、この昇降機構の動力により、上下に移動する。
【0047】
キャリア板3側を上方から保持具24で保持する際には、図5に示されるように、保持具24の保持面24aがキャリア板3の第2面3bに接触し、吸引源が作動している状態で、バルブが開かれる。これにより、吸引源の負圧が保持面24aに作用し、複合基板1のキャリア板3側が上方から保持具24により保持される。
【0048】
複合基板1のキャリア板3側が保持具24により保持された後には、ワークピース7がキャリア板3から離れるように、保持具24とフレーム23とを相対的に移動させる。図6は、キャリア板3から分離されたワークピース7を模式的に示す断面図である。図6に示されるように、保持具24の側方には、保持具24により複合基板1が保持された状態でフレーム23に相当する位置に、棒状の押圧具(押圧部材)26が配置されている。
【0049】
本実施形態では、保持具24を挟む2つの位置に、それぞれ、1つの押圧具26が配置されている。各押圧具26は、例えば、保持具24を移動させる昇降機構とは別の昇降機構(不図示)に支持されており、この昇降機構の動力により、保持具24から独立した態様で上下に移動する。なお、押圧具26の形状、配置、数量等に制限はない。例えば、1つ、又は3つ以上の棒状の押圧具26が使用されてもよい。また、押圧具26は、保持具24の周りを囲む筒状(環状)又は半筒状(弧状)に構成されてもよい。
【0050】
キャリア板3からワークピース7を分離する際には、例えば、各昇降機構が、保持具24及び押圧具26をともに上方に移動させる。これにより、複合基板1及びフレーム23の下方に空間が形成される。次に、例えば、保持具24用の昇降機構が保持具24の位置を保ったまま、押圧具26用の昇降機構が押圧具26を下方に移動させ、押圧具26の下端を上方からフレーム23に接触させる。そして、押圧具26用の昇降機構が押圧具26を更に下方に移動させ、フレーム23に下向きの力を加える。つまり、フレーム23は、保持具24との関係で相対的に下方に移動する。
【0051】
上述のように、複合基板1のキャリア板3側は、保持具24により上方から保持されており、また、仮接着層5の外縁部は、除去されている。そのため、押圧具26からフレーム23に下向きの力が加えられ、フレーム23が相対的に下方に移動すると、テープ21を介してフレーム23と一体化されているワークピース7は、仮接着層5を境にキャリア板3から分離され落下する。キャリア板3からワークピース7の全体が分離されることによりキャリア板3が複合基板1から除去されると、除去工程は終了する。
【0052】
以上のように、本実施形態にかかるキャリア板の除去方法では、複合基板1のワークピース7側にテープ21を貼付し、且つ、テープ21の外周部に環状のフレーム23を固定し、仮接着層5の外縁部が除去されるように複合基板1の外縁部を加工した上で、キャリア板3を保持具24で保持し、ワークピース7がキャリア板3から離れるように保持具24とフレーム23とを相対的に移動させるので、複合基板1からキャリア板3を容易に除去することができる。
【0053】
特に、強度が十分に高いとは言えないワークピース7をキャリア板3から分離する際には、本実施形態にかかるキャリア板の除去方法が極めて有効である。例えば、厚みが0.2mm以下のワークピース7をキャリア板3から分離する際には、本実施形態のようにテープ21及び環状のフレーム23が使用されることで、ワークピース7が破損する可能性を十分に低く抑えることができる。また、本実施形態では、フレーム23が使用されるので、キャリア板3から分離された薄いワークピース7が反ってしまうこともない。
【0054】
なお、本発明は、上述した実施形態の記載に制限されず種々変更して実施され得る。例えば、上述した本実施形態では、一体化工程の後に加工工程が実施されているが、一体化工程の前に加工工程が実施されてもよい。
【0055】
また、例えば、上述した実施形態の押圧具26は、保持具24から独立した態様で上下に移動できるように構成されているが、押圧具26は、少なくとも保持具24に対して相対的に上下に移動できるように構成されていればよい。例えば、押圧具26を分離装置22の筐体(不図示)等に固定し、保持具24のみを移動させる場合にも、保持具24に対して押圧具26を相対的に移動させることができる。
【0056】
また、上述した実施形態では、切削ブレード18を切り込ませる方法で複合基板1の外縁部が加工されているが、例えば、レーザービームを照射する方法で複合基板1の外縁部が加工されてもよい。この場合には、切削装置2(切削ユニット14)の代わりに、複合基板1に吸収される波長のレーザービームを照射できるレーザー加工装置(レーザー加工ユニット)が使用される。すなわち、複合基板1の外縁部は、レーザービームでアブレーション加工される。
【0057】
また、除去工程においてキャリア板3からワークピース7が分離される際に、キャリア板3とワークピース7との間の領域(仮接着層5が存在する領域)に流体が吹き付けられてもよい。例えば、キャリア板3とワークピース7との間の領域に、ノズル等で流体を吹き付けながら、押圧具26がフレーム23に下向きの力を加えることにより、キャリア板3からワークピース7がより容易に分離される。
【0058】
もちろん、キャリア板3とワークピース7との間の領域に、ノズル等で流体を吹き付けた後に、押圧具26がフレーム23に下向きの力を加えてもよい。キャリア板3とワークピース7との間の領域に吹き付けられる流体としては、例えば、エアーや水等が用いられ得る。ただし、流体の種類等に特段の制限はない。
【0059】
また、分離装置22の保持具24の下方には、水等の液体が溜められる槽(液槽)が配置されてもよい。この場合には、除去工程においてキャリア板3から分離されるワークピース7が槽に溜められた液体中を落下するので、ワークピース7が空気中を落下する場合に比べて落下の衝撃が小さくなり、ワークピース7の破損等が防止される。
【0060】
更に、上述した実施形態及び各変形例では、複合基板1のキャリア板3側が上方から保持具24により保持され、押圧具26からフレーム23に下向きの力が加えられる態様について説明されたが、実施形態及び各変形例において示された方向の関係は、自由に変更され得る。例えば、複合基板1のキャリア板3側が下方から保持具により保持され、押圧具からフレーム23に上向きの力が加えられてもよい。
【0061】
その他、上述した実施形態及び変形例にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施され得る。
【符号の説明】
【0062】
1 :複合基板
3 :キャリア板
3a :第1面(表面)
3b :第2面(裏面)
5 :仮接着層
5a :第1部分
5b :第2部分
7 :ワークピース
7a :第1面(表面)
9 :デバイスチップ
11 :モールド樹脂層
21 :テープ
23 :フレーム
23a :開口部
2 :切削装置
4 :チャックテーブル
6 :枠体
6a :流路
8 :保持板
8a :上面(保持面)
10 :バルブ
12 :吸引源
14 :切削ユニット
16 :スピンドル
18 :切削ブレード
22 :分離装置
24 :保持具(保持部材)
24a :保持面
26 :押圧具(押圧部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6