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特開2024-178891具材入り調味料、大豆たん白含有食品、大豆たん白含有食品の香味改善方法及び大豆たん白含有食品用香味改善剤
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  • 特開-具材入り調味料、大豆たん白含有食品、大豆たん白含有食品の香味改善方法及び大豆たん白含有食品用香味改善剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178891
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】具材入り調味料、大豆たん白含有食品、大豆たん白含有食品の香味改善方法及び大豆たん白含有食品用香味改善剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20241218BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20241218BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20241218BHJP
   A23J 3/16 20060101ALI20241218BHJP
   A23L 35/00 20160101ALN20241218BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L27/10 C
A23L7/10 Z
A23J3/16 501
A23L35/00
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024035348
(22)【出願日】2024-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2023097230
(32)【優先日】2023-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003753
【氏名又は名称】弁理士法人シエル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥下 歩
(72)【発明者】
【氏名】高田 健矢
(72)【発明者】
【氏名】庄司 祐子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 典子
【テーマコード(参考)】
4B023
4B036
4B047
【Fターム(参考)】
4B023LC01
4B023LE07
4B023LP07
4B023LP20
4B036LC01
4B036LF11
4B036LH04
4B036LH10
4B036LH12
4B036LH13
4B036LH15
4B036LH22
4B036LH26
4B036LH29
4B036LH44
4B036LH45
4B036LK01
4B036LP01
4B047LB09
4B047LE04
4B047LE07
4B047LF02
4B047LF03
4B047LF04
4B047LF09
4B047LG18
4B047LG24
4B047LG27
4B047LG40
4B047LG41
4B047LG42
4B047LG60
4B047LP02
4B047LP04
4B047LP05
4B047LP14
(57)【要約】
【課題】具材として粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含み、植物性蛋白質に由来する不快臭が抑制された具材入り調味料及び大豆たん白含有食品、植物性蛋白質に由来する不快臭を抑制できる大豆たん白含有食品の香味改善方法及び大豆たん白含有食品用香味改善剤を提供する。
【解決手段】具材として粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含む具材入り調味料や粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含有する食品において、大豆たん白100質量部に対して、香味改善剤としてα化率が23%以上のα化米粉、米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉又はその両方を合計で3.75~100質量部添加する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
具材として粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含む具材入り調味料であって、
前記大豆たん白100質量部に対して、α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉を合計で3.75~100質量部含有する具材入り調味料。
【請求項2】
更に、調味成分を含む請求項1に記載の具材入り調味料。
【請求項3】
更に、粒状及び繊維状以外の大豆たん白を含有し、
全ての大豆たん白の合計量100質量部に対して、α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉を合計で3.75~100質量部含有する請求項1に記載の具材入り調味料。
【請求項4】
粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含む食品であって、
前記大豆たん白100質量部に対して、α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉を合計で3.75~100質量部含有する大豆たん白含有食品。
【請求項5】
更に、粒状及び繊維状以外の大豆たん白を含有し、
全ての大豆たん白の合計量100質量部に対して、α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉を合計で3.75~100質量部含有する請求項4に記載の大豆たん白含有食品。
【請求項6】
粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含む食品の香味を改善する方法であって、
前記大豆たん白100質量部に対して、α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉を合計で3.75~100質量部添加する大豆たん白含有食品の香味改善方法。
【請求項7】
粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含む食品に用いられる香味改善剤であって、
α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉からなり、
前記大豆たん白100質量部に対して3.75~100質量部の割合で添加される大豆たん白含有食品用香味改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、具材として粒状や繊維状の大豆たん白を含む具材入り調味料、粒状や繊維状の大豆たん白を含有する食品、大豆たん白含有食品の香味改善方法及び大豆たん白含有食品用香味改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、栄養面及び健康面から大豆に含まれる成分が注目されている。大豆加工品の1種で大豆由来の蛋白質(大豆蛋白質)を含む原料を組織加工した「大豆たん白」も、畜肉加工品や水産加工品の増量剤や結着剤などの従来からの用途の他に、菓子、飲料及び代替肉など様々な食品に利用され、用途が拡大している。一方、大豆たん白などの大豆加工品には植物性蛋白質特有の臭いがあり、従来、大豆たん白を含む食品において、この植物性蛋白質特有の不快臭を低減する方法が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1~3には、大豆たん白を含む食品を製造する際に、不快臭を低減する効果がある成分として、メラノイジンと卵白分解物からなる風味改良剤(特許文献1)、乳酸発酵卵白(特許文献2)又は濃縮トマトを含む香味改善剤(特許文献3)を添加する方法が提案されている。また、食品に不快臭抑制効果がある成分を添加するのではなく、大豆たん白自身を処理することにより不快臭を低減する方法も提案されている(特許文献4参照)。特許文献4に記載の液状調味料の製造方法では、前処理として、醤油及び乳酸を含有する前処理液に粒状大豆たん白を浸漬している。
【0004】
更に、本出願人は、HMMF(4-ヒドロキシ-5-メチル-3(2H)-フラノン)を食品用組成物全質量に対して5~100ppm添加することで、植物性蛋白質特有の不快臭を低減した大豆たん白加工品を含む食品用組成物(特許文献5)や、米を含む原料を発酵させて得られるアルコール成分を含む発酵調味料であって、着色度(OD430)が10~70であり、かつ、pHが5~7であり、大豆蛋白質由来の大豆臭を抑制できる酒精含有調味料(特許文献6)を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3-155759号公報
【特許文献2】特開2015-23853号公報
【特許文献3】特開2019-71851号公報
【特許文献4】特開2019-122347号公報
【特許文献5】特開2021-69377号公報
【特許文献6】特開2022-120819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献1~4に記載の方法には、植物性蛋白質に由来する不快臭を十分に抑制することができない、食品の風味や香りのバランスを崩す虞があり汎用性に欠ける、作業工程が煩雑であるといった課題がある。一方、特許文献5,6に記載の方法は、不快臭を抑制する効果は高いが、調理品に発酵食品由来の香気成分や、発酵調味料の風味が付与されるため、料理のジャンルが限定され、適用範囲が狭いという課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、具材として粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含み、植物性蛋白質に由来する不快臭が抑制された具材入り調味料及び大豆たん白含有食品、植物性蛋白質に由来する不快臭を抑制できる大豆たん白含有食品の香味改善方法及び大豆たん白含有食品用香味改善剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前述した課題を解決するために鋭意検討を行った結果、大豆たん白に対して、特定の割合でα化米粉及び/又は米粉由来のα化澱粉を配合することにより、植物性蛋白質特有の不快臭が低減されることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明に係る具材入り調味料は、具材として粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含む具材入り調味料であって、前記大豆たん白100質量部に対して、α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉を合計で3.75~100質量部含有する。
本発明の具材入り調味料は、更に、調味成分を含んでいてもよい。
また、本発明の具材入り調味料は、更に、粉末状の大豆たん白を含有していてもよく、その場合、全ての大豆たん白の合計量100質量部に対して、α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉を合計で3.75~100質量部含有するようにする。
【0009】
本発明に係る大豆たん白含有食品は、粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含む食品であって、前記大豆たん白100質量部に対して、α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉を合計で3.75~100質量部含有する。
本発明の食品は、更に、粉末状の大豆たん白を含有していてもよく、その場合、全ての大豆たん白の合計量100質量部に対して、α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉を合計で3.75~100質量部含有するようにする。
【0010】
本発明に係る大豆たん白含有食品の香味改善方法は、粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含む食品の香味を改善する方法であって、前記大豆たん白100質量部に対して、α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉を合計で3.75~100質量部添加する。
【0011】
本発明に係る大豆たん白含有食品用香味改善剤は、粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含む食品に用いられる香味改善剤であって、α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉からなり、前記大豆たん白100質量部に対して3.75~100質量部の割合で添加される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含む様々のジャンルの料理において植物性蛋白質に由来する不快臭を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】α化米粉を添加していないNo.1の試料と、α化米粉を添加したNo.8の試料のヘキサナール量を相対的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0015】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係る具材入り調味料について説明する。本実施形態の具材入り調味料は、具材として組織化された粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含む具材入り調味料であり、大豆たん白100質量部に対して、α化率が23%以上のα化米粉、米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉又はその両方を合計で3.75~100質量部含有する。また、本実施形態の具材入り調味料には、調味成分が配合されていてもよい。
【0016】
[大豆たん白]
本実施形態の具材入り調味料に具材として配合される粒状や繊維状の大豆たん白は、大豆由来の蛋白質(大豆蛋白質)を含む原料を組織加工することにより得られる。ここでいう「粒状大豆たん白」には、塊状、フレーク状及びサイコロ状のものも含まれる。また、大豆蛋白質を含む原料としては、例えば大豆から抽出・分離した分離大豆たん白、濃縮大豆たん白及び脱脂大豆粉などが挙げられる。更に、大豆蛋白質を含む原料には、おからなどの蛋白質以外の成分が含まれていてもよい。
【0017】
一方、大豆たん白の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、「粒状大豆たん白」は、脱脂大豆などの大豆蛋白質を含む原料を一軸又は二軸のエクストルーダーで膨化・組織化した後、必要に応じて乾燥・粉砕・整粒などを行うことにより製造される。また、「繊維状大豆たん白」は、例えば、分離大豆たん白などの大豆蛋白質を含む原料を、水と共に高温・高圧で溶融状態にし、これを細いノズルから大気中に押し出して繊維状化することで製造される。
【0018】
[α化米粉・α化澱粉]
α化処理が施された米粉(以下、「α化米粉」という。)及びα化処理が施された米粉由来の澱粉(以下、「米粉由来のα化澱粉」という。)は、植物性蛋白質に由来する不快臭を抑制する効果があり、本実施形態の具材入り調味料の必須成分である。なお、本実施形態の具材入り調味料は、α化米粉及び米粉由来のα化澱粉の両方を含有していてもよいが、少なくとも一方を含有していれば不快臭抑制効果が得られる。
【0019】
ただし、具材入り調味料に含まれる大豆たん白の量を100質量部としたとき、α化米粉及び米粉由来のα化澱粉の総含有量が3.75質量部未満の場合、不快臭を抑制する効果が十分に得られない。一方、大豆たん白量を超える量のα化米粉及び米粉由来のα化澱粉を配合しても、即ち、α化米粉及び米粉由来のα化澱粉を合計で100質量部を超えて含有させても、不快臭抑制効果の向上は期待できず、また、米粉由来の香りが強くなって、調味料やそれを用いた調理品(食品)の風味や香味が損なわれたり、調味料の粘度が高くなったりする虞がある。
【0020】
よって、本実施形態の具材入り調味料におけるα化米粉及び米粉由来のα化澱粉の総含有量は、大豆たん白100質量部に対して、3.75~100質量部とする。なお、α化米粉及び米粉由来のα化澱粉の総含有量は、25~100質量部であることが好ましく、これにより、植物性蛋白質に由来する不快臭の抑制効果を更に高めることができる。
【0021】
α化米粉は、例えば原料米の精白米、未熟米、玄米、破砕精米及び白糠などを、蒸煮、焙炒又は炒煎などによって加熱して変性させるか、膨化処理(パフ化)を施すことによってα化した後、粉砕することにより製造することができる。また、米粉由来のα化澱粉は、α化された米粉から澱粉質のみを精製したもの又は米粉由来の澱粉をα化処理したものであり、例えば原料米の澱粉質に水を加えて加熱糊化し、その状態で乾燥することにより製造することができる。
【0022】
なお、本実施形態の具材入り調味料に配合されるα化米粉及び米粉由来のα化澱粉は、前述した方法で製造されたものに限らず、原料米が粉砕などのように摩擦熱が生じる加工工程を経て、結果としてα化された米粉などを用いてもよい。また、本実施形態の具材入り調味料に用いられるα化米粉及び米粉由来のα化澱粉の原料となる米は、うるち米、もち米及びインディカ米などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、黒米や赤米などの古代米など種々の米を用いることができる。
【0023】
本実施形態の具材入り調味料にα化米粉及び米粉由来のα化澱粉の両方を配合する場合、これらの混合比は、特に限定されるものではないが、米粉由来のα化澱粉よりも不快臭の抑制効果が高いα化米粉を多く含むことが好ましく、α化米粉の中でも特に効果が高い膨化処理(パフ化)されたα化米粉を用いることが好ましい。また、本実施形態の具材入り調味料を製造する際は、予めα化処理が施された米粉や米粉由来の澱粉を配合してもよいが、α化されていない米粉や米粉由来の澱粉を配合し、調味料の製造過程で高温での加熱処理などを行うことで調味料中の米粉や米粉由来の澱粉をα化してもよい。
【0024】
ただし、α化率が低いα化米粉や米粉由来のα化澱粉を用いると、前述した割合で配合しても、植物性蛋白質に由来する不快臭を十分に抑制できないことがある。そこで、本実施形態の具材入り調味料では、α化率が23%以上のα化米粉や米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉を用いる。なお、不快臭の抑制効果向上の観点から、α化米粉及び米粉由来のα化澱粉のα化率は32%以上であることが好ましく、より好ましくは46%以上である。なお、ここでいう「α化率」は、α化米粉及び米粉由来のα化澱粉全体の平均値である。
【0025】
米粉及び米粉由来の澱粉のα化率は、例えば、処理温度や処理時間の調整、pHや攪拌・摩砕などの処理条件の調整、塩類、水分、極性の高い有機物、界面活性剤、脂質、糖類及び親水性高分子などの添加の有無や添加量の調整、湿熱処理にするといった処理方法の変更などのように、α化に影響する要因を1又は2以上変更又は適用することにより、目的とする値にすることができる。また、α化率が低い原料とα化率が高い原料を混合することでも、α化率の調整が可能である。
【0026】
一方、α化米粉及び米粉由来のα化澱粉の粒子径は、特に限定されるものではなく、調理品(食品)の種類などに応じて適宜設定することができるが、メディアン径で14~500μm程度のものが好適である。α化米粉及び米粉由来のα化澱粉の粒子径をこの範囲にすることにより、他の成分との混合性が向上すると共に、加工に用いた場合に食品にざらつきなどが発生せず、良好な口あたりや食感を得ることができる。
【0027】
[調味成分]
調味成分は、必要に応じて配合される任意成分であり、食品の味や風味、外観などを向上させる目的で添加される。調味成分の具体例としては、砂糖、液糖、ブドウ糖、三温糖及び水あめなどの糖類、醤油、塩、味噌類、醸造酢、香辛料、酵母エキス、畜肉系、魚介系又は野菜系のエキスや調味料、みりん、日本酒、ワイン及びエタノールなどの酒類調味料、柚子やカボスなどの柑橘類、ネギやニンニクなどの香味野菜やその加工品、澱粉類などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、調理品に応じて各種調味成分を配合することができる。
【0028】
[その他の成分]
本実施形態の具材入り調味料には、濃度や粘度を調整するために、調味成分由来の水とは別に、水が添加されていてもよい。また、本実施形態の調味料には、具材として、粒状や繊維状の大豆たん白以外に、豚肉や牛肉などの肉類、魚介類、海藻類、野菜類、きのこ類、果実及びそれらの加工品などが配合されていてもよい。
【0029】
更に、本実施形態の具材入り調味料には、具材として又は副原料として、粒状及び繊維状以外の大豆たん白(粉末状の大豆たん白など)が添加されていてもよい。その場合、α化米粉及び米粉由来のα化澱粉の総含有量は、全ての大豆たん白の合計量100質量部に対して、3.75~100質量部とすることが好ましい。これにより、調味料に含まれる全ての大豆たん白に起因する不快臭を低減することができる。
【0030】
[製造方法]
本実施形態の具材入り調味料は、例えば、α化率が23%以上のα化米粉、米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉又はその両方を含む調味液に、水で戻した又は水で戻していない粒状及び/又は繊維状の大豆たん白と共に、加熱された又は非加熱の状態のその他の具材を添加することで製造することができる。
【0031】
[使用方法]
次に、本実施形態の具材入り調味料の使用方法について説明する。本実施形態の具材入り調味料は、ゆでる、煮る、蒸す、炊く、焼く、揚げる、炒めるなど各種加熱調理方法に適用することができ、これにより、植物性蛋白質に由来する不快臭が抑制された大豆たん白含有食品が得られる。例えば、本実施形態の具材入り調味料は、予め加熱調理された野菜類、肉類、魚介類、きのこ類、豆腐類、麺類、卵又はこれらの加工品などと混合してもよく、また、調味料とこれらの食材を一緒に加熱調理してもよい。更に、本実施形態の調味料を用いて調理された総菜と、麺類又は米飯とを組み合わせて具入り麺や丼物とすることもできる。
【0032】
以上詳述したように、本実施形態の具材入り調味料は、α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉が特定の割合で配合されているため、具材に粒状及び/又は繊維状の大豆たん白が含まれていても、調理品(食品)本来の香味を維持しつつ、植物性蛋白質に由来する不快臭を抑制することができる。また、本実施形態の具材入り調味料は、調理法、ジャンル及び具材にかかわらず、様々な料理に適用することができる。
【0033】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る大豆たん白含有食品について説明する。本実施形態の大豆たん白含有食品は、粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含み、更に、大豆たん白100質量部に対して、α化率が23%以上のα化米粉、米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉又はその両方を合計で3.75~100質量部含む。
【0034】
本実施形態の大豆たん白含有食品は、粒状大豆たん白、繊維状大豆たん白又はその両方を含むものであればよく、前述した第1の実施形態の具材入り調味料を用いて加工されたものの他に、例えば、粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含む唐揚げ、しぐれ煮、ハンバーグ、ミートボール(肉団子)、ミートローフ、メンチカツ、餃子、焼売、ワンタン、春巻き、肉まん、ナゲット、ハム、ソーセージ、蒲鉾、竹輪、つみれ、各種ふりかけ、フィリング類、菓子類及びシリアル類などが挙げられる。
【0035】
[α化米粉・α化澱粉]
本実施形態の大豆たん白含有食品に用いられるα化米粉及び米粉由来のα化澱粉、並びにこれらのα化率及び配合量の数値限定理由は、前述した第1の実施形態と同様である。
【0036】
[大豆たん白]
本実施形態の大豆たん白含有食品に用いられる大豆たん白は、粒状大豆たん白又は繊維状大豆たん白であればよい。なお、ここでいう「粒状大豆たん白」には、塊状、フレーク状及びサイコロ状のものも含まれる。また、本実施形態の大豆たん白含有食品には、粉末状大豆たん白などの粒状及び繊維状以外の大豆たん白が含まれていてもよい。更に、本実施形態の大豆たん白含有食品に配合される大豆たん白には、おからなどの蛋白質以外の成分が含まれていてもよい。
【0037】
[その他の成分]
本実施形態の大豆たん白含有食品には、前述した各成分の他に、豚肉・牛肉・鶏肉などの肉類、魚介類、海藻類、野菜類、きのこ類、果実及びそれらの加工品が含まれていてもよく、また、調味成分として、砂糖、液糖、ブドウ糖、三温糖及び水あめなどの糖類、醤油、塩、味噌類、醸造酢、香辛料、酵母エキス、畜肉系、魚介系又は野菜系のエキスや調味料、みりん、日本酒、ワイン及びエタノールなどの酒類調味料、柚子やカボスなどの柑橘類、ネギやニンニクなどの香味野菜やその加工品、唐辛子、胡椒及びターメリックなどの香辛料が添加されていてもよい。更に、つなぎや粘度調整の目的で、米粉由来のα化澱粉以外の澱粉類、キサンタンガムなどの増粘剤、小麦粉、パン粉などが添加されていてもよい。
【0038】
[製造方法]
本実施形態の大豆たん白含有食品は、例えば、前述した第1の実施形態の具材入り調味料を用いて加工することでも製造することができるが、粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含む原料に、α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉を所定量添加して加工することで製造することもできる。
【0039】
具体的には、大豆たん白100質量部に対して、α化米粉及び/又は米粉由来のα化澱粉を合計で3.75~100質量部配合し、その他の原料と共に加工すればよい。なお、本実施形態の大豆たん白含有食品の原料に、粒状及び繊維状の大豆たん白以外の大豆たん白(粉末状大豆たん白など)が含まれている場合は、それらも含めて全ての大豆たん白の合計量100質量部に対して、α化米粉及び/又は米粉由来のα化澱粉を合計で3.75~100質量部配合すればよい。これにより、食品に含まれる全ての大豆たん白に起因する不快臭を低減することができる。
【0040】
本実施形態の大豆たん白含有食品の製造方法は、特に限定されず、ゆでる、煮る、蒸す、炊く、焼く、揚げる、炒めるなどいずれの加工方法でもよい。また、α化米粉及び米粉由来のα化澱粉の添加時期も、特に限定されるものではなく、加工する前及び加工途中のいずれでもよい。例えば、大豆たん白含有食品が焼売の場合は、水戻しした粒状大豆たん白に、水、粉末状の大豆たん白、油脂で溶かしたα化米粉及び/又は米粉由来のα化澱粉、調味料類及び野菜などを加えて混合し、成形することで製造することができる。また、成形した後で蒸し加工し、調理済み食品としてもよい。
【0041】
以上詳述したように、本実施形態の大豆たん白含有食品は、α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉を特定の割合で含有しているため、大豆たん白に含まれる植物性蛋白質に由来する不快臭が抑制され、本来の香味が維持された大豆たん白含有食品を実現できる。
【0042】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る大豆たん白含有食品の香味改善方法について説明する。本実施形態の香味改善方法は、粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含む食品の香味を改善する方法であって、α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉からなる大豆たん白含有食品用香味改善剤を用いて、植物性蛋白質に由来する不快臭を抑制し、大豆たん白含有食品の香味を改善する。
【0043】
[大豆たん白含有食品用香味改善剤]
本実施形態の大豆たん白含有食品用香味改善剤は、α化率が23%以上のα化米粉、米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉又はその両方からなり、粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含む大豆たん白含有食品又はその原料に、大豆たん白100質量部に対して、3.75~100質量部の割合で添加される。本実施形態の大豆たん白含有食品用香味改善剤に用いられるα化米粉及び米粉由来のα化澱粉は、不快臭の抑制効果向上の観点から、α化率が32%以上であることが好ましく、より好ましくは46%以上である。
【0044】
本実施形態の香味改善方法では、大豆たん白含有食品に含まれる大豆たん白100質量部に対して、α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉を合計で3.75~100質量部添加しているため、食品本来の香味や食感を維持しつつ、植物性蛋白質に由来する不快臭を抑制することができる。また、本実施形態の大豆たん白含有食品用香味改善剤は、前述した範囲で添加していれば、調理品(食品)本来の香味が阻害されたり、異なる香味や風味が付与されたりすることがないため、様々のジャンルの料理に適用することができる。
【実施例0045】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。
【0046】
<第1実施例>
第1実施例では、香味改善剤の添加量を変えて評価用試料を作製し、植物性蛋白質に由来する不快臭の抑制効果を評価した。
【0047】
〔評価用試料の調製〕
粒状大豆たん白(不二製油社製 ニューフジニック52S)2gに、香味改善剤としてうるち米を膨化によりα化した後粉砕したα化米粉A(α化率約80%)を、下記表1に示す割合で添加し、総量が50gとなるように水を加えて、攪拌しながら加熱した。試料温度が80℃に達した時点で加熱を止め、室温程度になるまで冷却し、評価用試料とした。
【0048】
〔評価〕
2名の分析型官能評価パネル(訓練期間:8~10年)によって、各評価用試料を喫食し、香味改善剤(α化米粉)を添加しなかった場合を規準とし、植物性蛋白質に由来する不快臭の度合いを下記の4段階で評価した。
4:強く感じる(α化米粉を添加しなかった場合と同等又はそれ以上)
3:感じる(α化米粉を添加しなかった場合よりも弱い)
2:僅かに感じる(α化米粉を添加しなかった場合よりもかなり弱い)
1:感じない
【0049】
総合評価は、2人のパネルによる評価点の合計が7点以上だったものを×(不可)、4~6点だったものを○(良)、3点以下であったものを◎(優)とした。以上の結果を下記表1にまとめて示す。
【0050】
【表1】
【0051】
上記表1に示すように、大豆たん白100質量部に対し、α化率が23%以上のα化米粉を3.75~100質量部の範囲で添加したNo.3~16の試料は、植物性蛋白質に由来する不快臭が抑制されていた。特にα化米粉を25質量部以上添加したNo.8~16の試料は、不快臭がほとんど感じられなかった。
【0052】
これに対して、α化米粉添加量が2.5質量部のNo.2の試料は、α化米粉を添加していないNo.1の試料と同等の不快臭が感じられた。また、α化米粉を125質量部添加したNo.17の試料は、不快臭は感じられなかったが、米粉の香りが強く、調味料や食品として不適なものであった。
【0053】
<第2実施例>
第2実施例では、香味改善剤としてα化率が異なるα化米粉及び/又は米粉由来のα化澱粉を用いて評価用試料を作製し、植物性蛋白質に由来する不快臭の抑制効果を評価した。
【0054】
〔評価用試料の調製〕
粒状大豆たん白(不二製油社製 ニューフジニック52S)2gに、下記表2に示す香味改善剤を0.5g(大豆たん白100質量部に対して25質量部)添加し、更に水を47.5g加えて総量を50gとしたものを、攪拌しながら加熱した。試料温度が80℃に達した時点で加熱を止め、室温程度になるまで冷却し、評価用試料とした。
【0055】
なお、下記表2に示す香味改善剤のうち、「α化米粉A」はうるち米を膨化によりα化した後粉砕したもの(α化率約80%)、「α化米粉B」はうるち米を加水分解によりα化したもの(α化率94.4%)、「米粉」はα化していないうるち米の米粉(α化率15.3%)、「α化澱粉A」はうるち米由来のα化澱粉(α化率100%)、「α化澱粉B」はタピオカ由来のα化澱粉(α化率100%)、「α化澱粉C」はワキシコーン由来のα化澱粉(α化率100%)である。
【0056】
〔評価〕
上記方法で調製した評価用試料について、前述した第1実施例と同様の方法及び規準で、植物性蛋白質に由来する不快臭の度合いを評価した。以上の結果を下記表2にまとめて示す。なお、下記表2には、上記表1に示す第1実施例のNo.8の試料の結果を併せて示す。
【0057】
【表2】
【0058】
上記表2に示すように、大豆たん白100質量部に対し、α化率が23%以上のα化米粉又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉を添加したNo.8,20~24,27の試料は、植物性蛋白質に由来する不快臭が抑制されていた。特に、香味改善剤がα化率46%以上のα化米粉であるNo.8,20~22の試料は、不快臭がほとんど感じられなかった。
【0059】
これに対して、α化していない米粉(α化率15.3%)を添加したNo.26の試料、タピオカ由来のα化澱粉を添加したNo.28の試料、ワキシコーン由来のα化澱粉を添加したNo.29の試料は、香味改善剤を添加していないNo.1の試料と同等の不快臭が感じられた。また、α化率が23%未満のα化米粉(α化率18.5%)を添加したNo.25の試料は、不快臭が感じられ、抑制効果が不十分であった。
【0060】
<第3実施例>
第3実施例では、香味改善剤としてα化率が23%以上のα化米粉を添加した実施例の試料と、α化米粉を添加していない比較例の試料について、それぞれ異なる条件で殺菌処理を行い、植物性蛋白質に由来する不快臭の抑制効果を評価した。
【0061】
〔評価用試料の調製〕
実施例の試料は、粒状大豆たん白(不二製油社製 ニューフジニック52S)2gに、香味改善剤としてうるち米を膨化によりα化した後粉砕したα化米粉A(α化率約80%)を0.5g(大豆たん白100質量部に対して25質量部)添加し、更に水を47.5g加えて総量を50gとしたものを、攪拌しながら加熱した。試料温度が80℃に達した時点で加熱を止め、アルミパウチに封入して、120℃で20分間殺菌処理(殺菌処理I)、又は、100℃で10分間殺菌処理(殺菌処理II)した。
【0062】
一方、比較例の試料は、香味改善剤を添加せず、粒状大豆たん白(不二製油社製 ニューフジニック52S)2gに、水のみ48g加えて総量を50gとしたものを、攪拌しながら加熱した。試料温度が80℃に達した時点で加熱を止め、アルミパウチに封入し、120℃で20分間殺菌処理(殺菌処理I)、又は、100℃で10分間殺菌処理(殺菌処理II)した。
【0063】
〔評価〕
上記方法で調製した実施例及び比較例の各試料について、前述した第1実施例と同様の方法及び規準で、植物性蛋白質に由来する不快臭の度合いを評価した。以上の結果を下記表3にまとめて示す。
【0064】
【表3】
【0065】
上記表3に示すように、香味改善剤としてα化米粉Aを添加した実施例のNo.31,33の試料は、α化率が23%以上のα化米粉を添加していない比較例のNo.30,32の試料に比べて、植物性蛋白質に由来する不快臭が抑制されていた。これにより、大豆たん白食品にα化率が23%以上のα化米粉を所定量添加すると、殺菌処理を行っても、その条件にかかわらず、植物性蛋白質に由来する不快臭を抑制できることが確認された。
【0066】
<第4実施例>
次に、本発明の第4実施例として、具材として粒状大豆たん白を含む簡易的な具材入り調味料を作製し、香味改善剤添加による不快臭抑制効果を評価した。
【0067】
〔評価用試料の調製〕
実施例の試料は、粒状大豆たん白(不二製油社製 ニューフジニック52S)2gに、香味改善剤としてうるち米を膨化によりα化した後粉砕したα化米粉A(α化率約80%)を0.5g(大豆たん白100質量部に対して25質量部)添加し、更にしょうゆを5g、砂糖を2.5g、昆布エキスを0.5g、水を39.5g加えて総量を50gとしたものを、攪拌しながら加熱した。試料温度が80℃に達した時点で加熱を止め、アルミパウチに封入して、120℃で20分間殺菌処理(殺菌処理I)、又は、100℃で10分間殺菌処理(殺菌処理II)した。
【0068】
一方、比較例の試料は、香味改善剤を添加せず、粒状大豆たん白(不二製油社製 ニューフジニック52S)2gに、しょうゆを5g、砂糖を2.5g、昆布エキスを0.5g、水を40g加えて総量を50gとしたものを、攪拌しながら加熱した。試料温度が80℃に達した時点で加熱を止め、アルミパウチに封入し、120℃で20分間殺菌処理(殺菌処理I)、又は、100℃で10分間殺菌処理(殺菌処理II)した。
【0069】
〔評価〕
上記方法で調製した実施例及び比較例の各試料について、前述した第1実施例と同様の方法及び規準で、植物性蛋白質に由来する不快臭の度合いを評価した。以上の結果を下記表4にまとめて示す。
【0070】
【表4】
【0071】
上記表4に示すように、香味改善剤としてα化米粉Aを添加した実施例のNo.41,43の試料(具材入り調味料)は、α化率が23%以上のα化米粉を添加していない比較例のNo.40,42の試料(具材入り調味料)に比べて、植物性蛋白質に由来する不快臭が抑制されていた。これにより、具材入り調味料でも、α化率が23%以上のα化米粉を添加することにより、植物性蛋白質に由来する不快臭を抑制できることが確認された。
【0072】
<第5実施例>
第5実施例では、第1実施例で作製したNo.1の試料とNo.8の試料について、ヘキサナール量を測定することにより、大豆たん白に対するα化米粉の添加効果を確認した。
【0073】
〔測定方法〕
ガスクロマトグラフィー(アルファ・モス・ジャパン社製 HERACLES II)により、ヘッドスペース法にて、大豆の青臭さの原因と言われている「n-ヘキサナール」の濃度を測定した。その際の測定条件は、サンプル3gを20mlのバイアルに封入し、トラップ温度を40℃/240℃(脱離温度)とし、キャリアガスには水素を用いた。カラムはメタルキャピラリーカラム(MXT-5・MXT-WAX)を用い、カラム昇温条件は初期温度40℃、初期恒温時間10秒、昇温速度は1.5℃/秒にて40℃から250℃に到達させ、FID温度は260℃にて検出を行った。この測定を、同一サンプルについて3回行い、その平均値をとった。
【0074】
図1はα化率が23%以上のα化米粉を添加していないNo.1の試料と、α化米粉A(α化率約80%)を添加したNo.8の試料のヘキサナール量を相対的に示す図である。図1に示すように、α化率が23%以上のα化米粉を添加していないNo.1の試料のヘキサナール量を100%としたとき、α化率が23%以上のα化米粉Aを添加したNo.8の試料では、ヘキサナール量が81.6%に低減した。
【0075】
<第6実施例>
第6実施例では、組織化された粒状の大豆たん白(粒状大豆たん白A,B)と粉末状大豆たん白を用いて焼売を作製し、香味改善剤(α化率が23%以上のα化米粉又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉)の添加による不快臭抑制効果を評価した。下記表5に原料の配合組成を示す。なお、下記表5に示す「α化米粉A」はうるち米を膨化によりα化した後粉砕したもの(α化率約80%)、「α化澱粉A」はうるち米由来のα化澱粉(α化率100%)である。
【0076】
【表5】
【0077】
〔評価用試料の調製〕
事前準備として、以下の(i)~(iii)の処理を行った。
(i)粒状大豆たん白A,Bを水で膨潤させた。
(ii)水戻しした干し椎茸とタマネギをみじん切りにした。
(iii)粉類に水を少量ずつ加えてしっかりと混ぜた後、油を加えて均一に混ぜ、つなぎを作製した。
【0078】
引き続き、以下の(1)~(4)の加工を行い、評価用試料(焼売)を作製した。
(1)水で戻した粒状大豆たん白A,Bに、事前に準備した粉末状大豆たん白を含むつなぎを加えて混合した。
(2)(1)で得た混合物に、更に、食塩、上白糖、日本酒、片栗粉、胡椒、パン粉を入れて混合した。
(3)(2)で得た混合物に、みじん切りした干し椎茸とタマネギを入れて更に混合し、焼売のたねを得た。
(4)(3)で得た焼売のたねを、18gずつ等分したものを焼売の皮で包み、評価用試料(焼売)とした。
【0079】
〔評価〕
前述した方法で作製した評価用試料(焼売)を蒸し器で蒸したものを、5名の分析型官能評価パネル(訓練期間:8~15年)が喫食し、香味改善剤(α化米粉A又はα化澱粉A)を添加しなかったNo.50の試料を規準とし、植物性蛋白質に由来する不快臭の度合いを下記の4段階で評価した。
4:強く感じる(香味改善剤を添加しなかった焼売と同等又はそれ以上)
3:感じる(香味改善剤を添加しなかった焼売よりも弱い)
2:僅かに感じる(香味改善剤を添加しなかった焼売よりもかなり弱い)
1:感じない
【0080】
総合評価は、5人のパネルによる評価点の合計が16点以上だったものを×(不可)、10~15点だったものを○(良)、9点以下であったものを◎(優)とした。以上の結果を下記表6に示す。なお、下記表6に示すα化米粉量及びα化澱粉量は、全ての大豆たん白(粒状大豆たん白A、粒状大豆たん白B、粉末状大豆たん白)の合計量100質量部に対する値である。
【0081】
【表6】
【0082】
上記表6に示すように、つなぎとしてα化率が23%以上のα化米粉(α化米粉A)を全大豆たん白100質量部に対して4.6質量部配合したNo.51の焼売、及び、米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉(α化澱粉A)を全大豆たん白100質量部に対して4.6質量部配合したNo.52の焼売は、植物性蛋白質に由来する不快臭が抑制されていた。これに対して、α化率が23%以上のα化米粉及び米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉のいずれも配合していないNo.50の焼売は、不快臭が強く感じられた。
【0083】
以上の結果から、本発明によれば、粒状及び/又は繊維状大豆たん白を含有する調味料や食品において、植物性蛋白質に由来する不快臭を抑制できることが確認された。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-08-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
具材として粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含む具材入り調味料であって、
前記大豆たん白100質量部に対して、α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉を合計で3.75~100質量部含有する具材入り調味料。
【請求項2】
更に、調味成分を含む請求項1に記載の具材入り調味料。
【請求項3】
更に、粒状及び繊維状以外の大豆たん白を含有し、
全ての大豆たん白の合計量100質量部に対して、α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉を合計で3.75~100質量部含有する請求項1に記載の具材入り調味料。
【請求項4】
大豆由来の蛋白質を含む原料を組織加工してなる粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含む食品であって、
前記大豆たん白100質量部に対して、α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉を合計で3.75~100質量部含有する大豆たん白含有食品。
【請求項5】
更に、粒状及び繊維状以外の大豆たん白を含有し、
全ての大豆たん白の合計量100質量部に対して、α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉を合計で3.75~100質量部含有する請求項4に記載の大豆たん白含有食品。
【請求項6】
大豆由来の蛋白質を含む原料を組織加工してなる粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含む食品の香味を改善する方法であって、
前記大豆たん白100質量部に対して、α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉を合計で3.75~100質量部添加する大豆たん白含有食品の香味改善方法。
【請求項7】
粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含む食品に用いられる香味改善剤であって、
α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉からなり、
前記大豆たん白100質量部に対して3.75~100質量部の割合で添加される大豆たん白含有食品用香味改善剤。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明に係る大豆たん白含有食品は、大豆由来の蛋白質を含む原料を組織加工してなる粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含む食品であって、前記大豆たん白100質量部に対して、α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉を合計で3.75~100質量部含有する。
本発明の食品は、更に、粒状及び繊維状以外の大豆たん白を含有していてもよく、その場合、全ての大豆たん白の合計量100質量部に対して、α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉を合計で3.75~100質量部含有するようにする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明に係る大豆たん白含有食品の香味改善方法は、大豆由来の蛋白質を含む原料を組織加工してなる粒状及び/又は繊維状の大豆たん白を含む食品の香味を改善する方法であって、前記大豆たん白100質量部に対して、α化率が23%以上のα化米粉及び/又は米粉由来でα化率が23%以上のα化澱粉を合計で3.75~100質量部添加する。