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特開2024-178940遺伝子発現抑制剤及び該遺伝子発現抑制用組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178940
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】遺伝子発現抑制剤及び該遺伝子発現抑制用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/195 20060101AFI20241218BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241218BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241218BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20241218BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20241218BHJP
【FI】
A61K31/195
A61P29/00
A61P43/00 111
A61K31/704
A61P43/00 121
A61K31/195 ZNA
C12N15/12 ZNA
C12N15/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024095303
(22)【出願日】2024-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2023097198
(32)【優先日】2023-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 典江
(72)【発明者】
【氏名】坊農 秀雅
(72)【発明者】
【氏名】田村 啓太
(72)【発明者】
【氏名】宮内 睦美
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA10
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB11
4C086ZC41
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZB11
4C206ZC41
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】本発明は、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子発現抑制剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、グリチルリチン酸及びトラネキサム酸のうちの少なくとも1種からなる、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子発現抑制剤に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)グリチルリチン酸及び(B)トラネキサム酸のうちの少なくとも1種からなる、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子発現抑制剤。
【請求項2】
(A)グリチルリチン酸及び(B)トラネキサム酸のうちの少なくとも1種を有効成分として含有する、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子発現抑制用組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のArid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子発現抑制剤を含む、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子発現に起因する疾病の予防用及び治療用の少なくとも一方である組成物。
【請求項4】
前記Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子発現に起因する疾病が口内炎である、請求項3に記載のArid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子発現に起因する疾病の予防用及び治療用の少なくとも一方である組成物。
【請求項5】
(A)グリチルリチン酸及び(B)トラネキサム酸のうちの少なくとも1種からなる、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択される2つ以上の遺伝子発現抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子発現抑制剤、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子発現抑制用組成物、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子発現に起因する疾病の予防用及び治療用の少なくとも一方である組成物、並びにArid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択される2つ以上の遺伝子発現抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
AT-rich interactive domain-containing protein 5A(以下、「Arid5a」とも称する)は、炎症性サイトカインの1つであるInterleukin-6(以下、「IL-6」とも称する)等のmRNAに結合するタンパク質である。Arid5aが存在しない状態では、IL-6 mRNAは、生成されてもリボヌクレアーゼであるRegnase-1により速やかに分解されるが、Arid5a存在下ではArid5aがIL-6 mRNAの3’ Untranslated Region(UTR:非翻訳領域)に結合することにより、IL-6 mRNAをRegnase-1の分解から保護するため、IL-6の異常産生が生じ、自己免疫疾患の促進や炎症の増悪につながることが示唆されている(非特許文献1)。
【0003】
Rac Family Small GTPase 2(以下、「Rac2」とも称する)は、Nitric Oxide Synthase 2(一酸化窒素合成酵素2;以下、「NOS2」とも称する)と相互作用し、NOS2を活性化させるタンパク質である。NOS2は、炎症等を増悪させる一酸化窒素合成に関与していることが知られている(非特許文献2)。
【0004】
Chloride intracellular channel 4(以下、「Clic4」とも称する)は、インテグリン輸送、細胞接着、液胞形成等、多様なアクチン依存性プロセスに関与している細胞質タンパク質である。ケラチノサイトでは、Clic4の発現増加は、Ca2+による分化、DNA損傷、p53やTumor necrosis factor-α(TNF-α)の発現上昇と関連している(非特許文献3、4、5)。Clic4は細胞質に存在するだけでなく、ミトコンドリア内膜の成分でもあり、Clic4の発現レベルの維持はケラチノサイトの生存に必須である(非特許文献4)。実際、Clic4の僅かな発現上昇が、ケラチノサイトへの分化を著しく増加することが報告されている(非特許文献6)。
【0005】
上皮細胞骨格の主要構成要素であるケラチンは、ケラチノサイトの構造的安定性に寄与する。これまでに54種類以上の哺乳類ケラチンが同定され、それらはpHに基づき、酸性のType Iケラチンと中性・塩基性のType IIケラチンに大別される(非特許文献7、8、9)。ケラチンはType IとType IIからなるヘテロダイマーを形成し、それらがさらに集まり細胞骨格線維の一つである中間系フィラメントを構築する。
【0006】
ケラチンには、以下のように複数の種類が存在する。例えばKeratin 1、5、14、16及び17が挙げられる。
Keratin 1(以下、「Krt1」とも称する)は、ケラチノサイトの分化マーカーである(非特許文献10、11)。Krt1はKeratin 10と共に産生される(非特許文献12)。
Keratin 5(以下、「Krt5」とも称する)は56kDaの分子量と7.4の等電点を持つ(非特許文献7)。基底細胞の一次Keratinとして、Keratin 14(以下、「Krt14」とも称する)とともに産生される(非特許文献13)。Krt5は、層状上皮の分裂活性の高い基底細胞で産生される。Krt5の産生は、上皮細胞の分裂活性と相関するが、上皮細胞の分化や上皮の層別化とは相関しない(非特許文献14)。
Krt14は、ヒトでは50kDaの分子量で、その等電点は5.3である(非特許文献7、15)。Krt14の発現は層状上皮の基底細胞の分裂活性及び多能性の程度と相関する(非特許文献16)。
Keratin 16(以下、「Krt16」とも称する)は分子量が46kDaで、等電点は5.1である(非特許文献7)。Krt16は基底細胞と上基底細胞の間の細胞分化の中間状態にあると推定される細胞のマーカーであり、細胞運動や有糸分裂に必要な柔軟性を持たせることで十分な構造安定性を提供している(非特許文献17)。Krt16及びその基本パートナーであるKeratin 6は、ケラチノサイトの活性化状態のマーカーであり、移動、細胞外マトリックスの生成、過形成に寄与する(非特許文献18)。
Keratin 17(以下、「Krt17」とも称する)は48kDaの分子量を持ち、等電点は5.1である(非特許文献19)。Krt17は、創傷治癒と発生過程に関与する(非特許文献19)。Krt17はKrt6と同時に発現し、Krt6とヘテロダイマーを形成するが、Krt5やKeratin 8と結合することもある(非特許文献19)。
【0007】
Epidermal growth factor receptor pathway substrate clone 15(以下、「Eps15」とも称する)は、上皮成長因子の受容体媒介エンドサイトーシスに寄与することが知られている(非特許文献23)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】K Masuda et al., “Arid5a controls IL-6 mRNAstability, which contributes to elevation of IL-6 level in vivo”, PNAS., 2013, 110 p.9409-9414.
【非特許文献2】Teresa Kuncewicz et al., “Specific associationof nitric oxide synthase-2 with Rac isoforms in activated murine macrophages”, Am J Physiol Renal Physiol., 2001, 281, p.F326-336.
【非特許文献3】Fernandez-Salas, E., et al., “p53 and tumornecrosis factor alpha regulate the expression of a mitochondrial chloridechannel protein”, J. Biol. Chem., 1999, 274,p.36488-36497.
【非特許文献4】Fernandez-Salas, E., et al., “mtCLIC/CLIC4,an organellular chloride channel protein, is increased by DNA damage andparticipates in the apoptotic response to p53”, Mol.Cell. Biol., 2002, 22, p.3610-3620.
【非特許文献5】Suh, K. S., et al., “The organellularchloride channel protein CLIC4/mtCLIC translocates to the nucleus in responseto cellular stress and accelerates apoptosis”, J. Biol.Chem., 2004, 279, p.4632-4641.
【非特許文献6】Kwang S Suh, et al., “CLIC4 mediates and isrequired for Ca2+-induced keratinocyte differentiation”,J Cell Sci., 2007, 120, p.2631-2640.
【非特許文献7】Moll R, et al., “The catalog of humancytokeratins: patterns of expression in normal epithelia, tumors and culturedcells”, Cell., 1982, 31, p.11-24.
【非特許文献8】W W Franke et al., “Diversity ofcytokeratins. Differentiation specific expression of cytokeratin polypeptidesin epithelial cells and tissues”, J Mol Biol., 1981,153, p.933-959.
【非特許文献9】Jurgen Schweizer et al., “New consensusnomenclature for mammalian keratins”, J Cell Biol.,2006, 174, p.169-174.
【非特許文献10】Songyun Zhu et al., “C/EBPbeta modulates theearly events of keratinocyte differentiation involving growth arrest andkeratin 1 and keratin 10 expression”, Molecular andCellular Biology, 1999, 19, p.7181-7190.
【非特許文献11】Hanitriniaina Rabeony et al., “Inhibition ofkeratinocyte differentiation by the synergistic effect of IL-17A, IL-22, IL-1α, TNFα and oncostatin M”, PLoS ONE, 2014, 9, e101937.
【非特許文献12】U Aebi et al., “The fibrillar substructureof keratin filaments unraveled”, J Cell Biol., 1983,97, p.1131-43.
【非特許文献13】Pekny M, et al., “Intermediate filaments andstress”, Exp Cell Res., 2007, 313, p.2244-2254.
【非特許文献14】Byrne C, et al., “Programming geneexpression in developing epidermis”, Development.,1994, 120, p.2369-2383.
【非特許文献15】Dale BA, et al., “Expression of epidermalkeratins and filaggrin during human fetal skin development”, J Cell Biol., 1985, 101, p.1257-1269.
【非特許文献16】Coulombe PA, et al., “Expression of keratinK14 in the epidermis and hair follicle: insights into complex programs ofdifferentiation”, J Cell Biol., 1989, 109, p.2295-2312
【非特許文献17】Bernot KM, et al., “Keratin 16 expressiondefines a subset of epithelial cells during skin morphogenesis and the haircycle”, J Invest Dermatol., 2002, 119, p.1137-1149.
【非特許文献18】Freedberg IM, et al., “Keratins and thekeratinocyte activation cycle”, J Invest Dermatol.,2001, 116, p.633-640.
【非特許文献19】McGowan KM, et al., “Onset of keratin 17expression coincides with the definition of major epithelial lineages duringskin development”, J Cell Biol. 1998, 143, p.469-486.
【非特許文献20】M Komine, et al., “Regulation of epidermalexpression of keratin K17 in inflammatory skin diseases”, J Invest Dermatol. 1996, 107, p.569-575.
【非特許文献21】Coulombe, P.A. “Towards a moleculardefinition of keratinocyte activation after acute injury to stratifiedepithelia”, Biochem. Biophys. Res. Comm., 1997, 236,p.231-238.
【非特許文献22】Xiaowei Zhang, et al., “Keratin 6, 16 and17-Critical Barrier Alarmin Molecules in Skin Wounds and Psoriasis”, Cells. 2019, 8, p.807.
【非特許文献23】M Enshoji. et al., “Eps15/Pan1p is a masterregulator of the late stages of the endocytic pathway”,J Cell Biol. 2022, 221, e202112138.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、Arid5aは炎症の増悪につながる。Arid5aをコードする遺伝子(以下、「Arid5a遺伝子」とも称する)の発現を制御する手段を確立することは、Arid5a遺伝子発現に起因する疾病の予防及び/又は治療において非常に有意義である。
【0010】
また、Rac2は、腎臓等の炎症を引き起こす。Rac2をコードする遺伝子(以下、「Rac2遺伝子」とも称する)の発現を制御する手段を確立することは、Rac2遺伝子発現に起因する疾病の予防及び/又は治療において非常に有意義である。
【0011】
Clic4によるケラチノサイトの過剰産生に起因する疾患が存在する。Clic4をコードする遺伝子(以下、「Clic4遺伝子」とも称する)の発現を制御する手段を確立することは、Clic4遺伝子発現に起因する疾病の予防及び/又は治療において非常に有意義である。
【0012】
皮膚に創傷ができると、基底膜上のケラチノサイトはケラチノサイト活性化と呼ばれるプロセスを経る(非特許文献20、21)。これらのケラチノサイトは、通常の分化経路をたどらず、例えば、傷害後にKrt16が発現上昇する等、創傷修復に寄与するように誘導される。ケラチノサイト活性化の過程で、細胞が移動性の形態をとるようになると、ケラチノサイト間の細胞接着が劇的に低下し、細胞間のデスモソームの付着数は減少する(非特許文献22)。基底膜上のケラチノサイトのデスモソームの付着数が減少することで、上皮組織は脆く剥がれやすくなり、潰瘍形成のきっかけとなると推察される。基底膜上のケラチノサイトが産生するケラチンをコードする遺伝子群(以下、「ケラチン遺伝子ファミリー」とも称する)の過剰発現を抑制することは、ケラチン遺伝子ファミリー発現に起因する疾病の予防及び/又は治療において非常に有意義であると考えられる。
【0013】
Eps15は、上皮成長因子の受容体媒介エンドサイトーシスに寄与する。エンドサイトーシスは自然免疫が関与する生体反応の主体となることが懸念される。Eps15をコードする遺伝子(以下、「Eps15遺伝子」とも称する)の発現を抑制する手段を確立することは、Eps15遺伝子発現に起因する疾病の予防及び/又は治療において非常に有意義であると考えられる。
【0014】
そこで、本発明は、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子発現抑制剤、並びに、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子発現抑制用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、グリチルリチン酸及びトラネキサム酸のうちの少なくとも1種からなる剤又はグリチルリチン酸及びトラネキサム酸のうちの少なくとも1種を有効成分として含有する組成物の、投与又は摂取によって、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子の発現抑制効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち本発明は、下記の通りである。
[1](A)グリチルリチン酸及び(B)トラネキサム酸のうちの少なくとも1種からなる、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子発現抑制剤。
[2](A)グリチルリチン酸及び(B)トラネキサム酸のうちの少なくとも1種を有効成分として含有する、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子発現抑制用組成物。
[3]上記[1]に記載のArid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子発現抑制剤を含む、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子発現に起因する疾病の予防用及び治療用の少なくとも一方である組成物。
[4]前記Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子発現に起因する疾病が口内炎である、上記[3]に記載のArid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子発現に起因する疾病の予防用及び治療用の少なくとも一方である組成物。
[5](A)グリチルリチン酸及び(B)トラネキサム酸のうちの少なくとも1種からなる、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択される2つ以上の遺伝子発現抑制剤。
【0017】
また、本発明の一態様として、以下も挙げられる。
・(A)グリチルリチン酸及び(B)トラネキサム酸のうちの少なくとも1種を対象に投与すること又は摂取させることを含む、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子の発現を抑制する方法。
・(A)グリチルリチン酸及び(B)トラネキサム酸のうちの少なくとも1種を対象に投与すること又は摂取させることを含む、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択される2つ以上の遺伝子の発現を抑制する方法。
・(A)グリチルリチン酸及び(B)トラネキサム酸のうちの少なくとも1種を対象(但し、ヒトの個体を除く)に投与すること又は摂取させることを含む、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子の発現を抑制する方法。
・(A)グリチルリチン酸及び(B)トラネキサム酸のうちの少なくとも1種を対象(但し、ヒトの個体を除く)に投与すること又は摂取させることを含む、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択される2つ以上の遺伝子の発現を抑制する方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、本発明の剤又は組成物の投与又は摂取によって、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を効果的に抑制しうる。また、本発明の一態様の剤又は組成物の投与又は摂取によって、Arid5a遺伝子の発現に起因する疾病、Rac2遺伝子の発現に起因する疾病、Clic4遺伝子の発現に起因する疾病、ケラチン遺伝子ファミリーの発現に起因する疾病及びEps15遺伝子の発現に起因する疾病からなる群より選択される1以上の疾病を効果的に予防又は治療しうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、試験例1における、Arid5a遺伝子の発現量比を示すグラフである。
図2図2は、試験例1における、Rac2遺伝子の発現量比を示すグラフである。
図3図3は、試験例1における、Clic4遺伝子の発現量比を示すグラフである。
図4A図4Aは、試験例1における、Krt1遺伝子の発現量比を示すグラフである。
図4B図4Bは、試験例1における、Krt14遺伝子の発現量比を示すグラフである。
図4C図4Cは、試験例1における、Krt16遺伝子の発現量比を示すグラフである。
図4D図4Dは、試験例1における、Krt17遺伝子の発現量比を示すグラフである。
図5図5は、試験例1における、Eps15遺伝子の発現量比を示すグラフである。
図6図6は、試験例1における、Pla2g2f遺伝子の発現量比を示すグラフである。
図7図7は、試験例2における、GAPDHの発現量に対するPla2g2f遺伝子の発現量を示すグラフである。
図8図8は、試験例2における、GAPDHの発現量に対するArid5a遺伝子の発現量を示すグラフである。
図9図9は、試験例2における、GAPDHの発現量に対するRac2遺伝子の発現量を示すグラフである。
図10図10は、試験例2における、GAPDHの発現量に対するClic4遺伝子の発現量を示すグラフである。
図11A図11Aは、試験例2における、GAPDHの発現量に対するKrt1遺伝子の発現量を示すグラフである。
図11B図11Bは、試験例2における、GAPDHの発現量に対するKrt5遺伝子の発現量を示すグラフである。
図11C図11Cは、試験例2における、GAPDHの発現量に対するKrt14遺伝子の発現量を示すグラフである。
図11D図11Dは、試験例2における、GAPDHの発現量に対するKrt16遺伝子の発現量を示すグラフである。
図12図12は、試験例2における、GAPDHの発現量に対するEps15遺伝子の発現量を示すグラフである。
図13図13は、試験例3における、GAPDHの発現量に対するPla2g2f遺伝子の発現量を示すグラフである。
図14図14は、試験例3における、GAPDHの発現量に対するArid5a遺伝子の発現量を示すグラフである。
図15図15は、試験例3における、GAPDHの発現量に対するRac2遺伝子の発現量を示すグラフである。
図16図16は、試験例3における、GAPDHの発現量に対するClic4遺伝子の発現量を示すグラフである。
図17A図17Aは、試験例3における、GAPDHの発現量に対するKrt1遺伝子の発現量を示すグラフである。
図17B図17Bは、試験例3における、GAPDHの発現量に対するKrt5遺伝子の発現量を示すグラフである。
図17C図17Cは、試験例3における、GAPDHの発現量に対するKrt14遺伝子の発現量を示すグラフである。
図17D図17Dは、試験例3における、GAPDHの発現量に対するKrt16遺伝子の発現量を示すグラフである。
図18図18は、試験例3における、GAPDHの発現量に対するEps15遺伝子の発現量を示すグラフである。
図19A図19Aは、参考例1における、EGFP遺伝子溶液を皮内注射した直後のハムスターの右側頬粘膜の写真である。
図19B図19Bは、参考例1における、EGFPタンパク質由来の蛍光波長を発するハムスター頬粘膜の写真である。
図20A図20Aは、参考例1において、無処理ハムスターを用いて免疫組織化学染色をした写真である。
図20B図20Bは、参考例1において、EGFP遺伝子を導入したハムスターにおいて、遺伝子導入部位について、免疫組織化学染色をした写真である。
図21図21は、参考例2において、Arid5a遺伝子又はRac2遺伝子をノックダウンしたハムスター及びコントロールのハムスターにおける、炎症性浮腫(口内炎)の程度を示すグラフである。
図22図22は、参考例2において、Pla2g2f遺伝子をノックダウンしたハムスター及びコントロールのハムスターにおける、炎症性浮腫(口内炎)の面積を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、これらの内容に特定されるものではない。
数値範囲の「~」は、その前後の数値を含む範囲であり、例えば、「0質量%~100質量%」は、0質量%以上であり、かつ、100質量%以下である範囲を意味する。
【0021】
[遺伝子発現抑制剤]
本発明のArid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子発現抑制剤、並びにArid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及び、Eps15遺伝子からなる群より選択される2つ以上の遺伝子発現抑制剤は、(A)グリチルリチン酸(以下、(A)成分ともいう。)及び(B)トラネキサム酸(以下、(B)成分ともいう。)のうちの少なくとも1種からなる。本明細書において、本発明剤は、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子発現抑制剤、並びにArid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及び、Eps15遺伝子からなる群より選択される2つ以上の遺伝子発現抑制剤を包含する。
後述するように、本発明の剤に含まれる(A)グリチルリチン酸は、そのままの形態、塩の形態、又はグリチルリチン酸を含む植物抽出物の形態の、いずれの形態であってもよい。また、後述するように、本発明の剤に含まれる(B)トラネキサム酸は、そのままの形態、塩の形態、又は誘導体若しくはその塩の形態の、いずれの形態であってもよい。
【0022】
本明細書において、Arid5a遺伝子としては、ヒト由来ARID5A遺伝子(NCBI Gene アクセッション番号10865)、及びヒト由来ARID5A遺伝子におけるホモログを含む。ヒト由来ARID5A遺伝子におけるホモログは、上記ヒト由来ARID5A遺伝子の塩基配列に対してアラインメントしたときに、塩基配列の同一性が、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。ヒト由来ARID5A遺伝子におけるホモログは、ヒト由来の遺伝子であってもよく、ヒト以外の動物由来の遺伝子であってもよい。ヒト以外の動物としては、例えば、ハムスター、イヌ、ネコ、ウサギ等が挙げられる。
【0023】
本明細書において、Rac2遺伝子としては、ヒト由来RAC2遺伝子(NCBI Gene アクセッション番号5880)、及びヒト由来RAC2遺伝子におけるホモログを含む。ヒト由来RAC2遺伝子におけるホモログは、上記ヒト由来RAC2遺伝子の塩基配列に対してアラインメントしたときに、塩基配列の同一性が、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。ヒト由来RAC2遺伝子におけるホモログは、ヒト由来の遺伝子であってもよく、ヒト以外の動物由来の遺伝子であってもよい。ヒト以外の動物としては、例えば、ハムスター、イヌ、ネコ、ウサギ等が挙げられる。
【0024】
本明細書において、Clic4遺伝子としては、ヒト由来CLIC4遺伝子(NCBI
Gene アクセッション番号25932)、及びヒト由来CLIC4遺伝子におけるホモログを含む。ヒト由来CLIC4遺伝子におけるホモログは、上記ヒト由来CLIC4遺伝子の塩基配列に対してアラインメントしたときに、塩基配列の同一性が、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。ヒト由来CLIC4遺伝子におけるホモログは、ヒト由来の遺伝子であってもよく、ヒト以外の動物由来の遺伝子であってもよい。ヒト以外の動物としては、例えば、ハムスター、イヌ、ネコ、ウサギ等が挙げられる。
【0025】
ケラチン遺伝子ファミリーとしては、例えばKrt1をコードする遺伝子(以下、「Krt1遺伝子」とも称する)、Krt5をコードする遺伝子(以下、「Krt5遺伝子」とも称する)、Krt14をコードする遺伝子(以下、「Krt14遺伝子」とも称する)、Krt16をコードする遺伝子(以下、「Krt16遺伝子」とも称する)、Krt17をコードする遺伝子(以下、「Krt17遺伝子」とも称する)が挙げられる。
本明細書において、Krt1遺伝子としては、ヒト由来KRT1遺伝子(NCBI Gene アクセッション番号3848)、及びヒト由来KRT1遺伝子におけるホモログを含む。本明細書において、Krt5遺伝子としては、ヒト由来KRT5遺伝子(NCBI Gene アクセッション番号3852)、及びヒト由来KRT5遺伝子におけるホモログを含む。本明細書において、Krt14遺伝子としては、ヒト由来KRT14遺伝子(NCBI Gene アクセッション番号3861)、及びヒト由来KRT14遺伝子におけるホモログを含む。本明細書において、Krt16遺伝子としては、ヒト由来KRT16遺伝子(NCBI Gene アクセッション番号3868)、及びヒト由来KRT16遺伝子におけるホモログを含む。本明細書において、Krt17遺伝子としては、ヒト由来KRT17遺伝子(NCBI Gene アクセッション番号3872)、及びヒト由来KRT17遺伝子におけるホモログを含む。ヒト由来KRT1遺伝子におけるホモログ、ヒト由来KRT5遺伝子におけるホモログ、ヒト由来KRT14遺伝子におけるホモログ、ヒト由来KRT16遺伝子におけるホモログ、及びヒト由来KRT17遺伝子におけるホモログは、それぞれ、上記ヒト由来KRT1遺伝子、上記ヒト由来KRT5遺伝子、上記ヒト由来KRT14遺伝子、上記ヒト由来KRT16遺伝子、及び上記ヒト由来KRT17遺伝子の塩基配列に対してアラインメントしたときに、塩基配列の同一性が、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。ヒト由来KRT1遺伝子におけるホモログ、ヒト由来KRT5遺伝子におけるホモログ、ヒト由来KRT14遺伝子におけるホモログ、ヒト由来KRT16遺伝子におけるホモログ、及びヒト由来KRT17遺伝子におけるホモログは、ヒト由来の遺伝子であってもよく、ヒト以外の動物由来の遺伝子であってもよい。ヒト以外の動物としては、例えば、ハムスター、イヌ、ネコ、ウサギ等が挙げられる。
【0026】
本明細書において、Eps15遺伝子としては、ヒト由来EPS15遺伝子(NCBI
Gene アクセッション番号2060)、及びヒト由来EPS15遺伝子におけるホモログを含む。ヒト由来EPS15遺伝子におけるホモログは、上記ヒト由来EPS15遺伝子の塩基配列に対してアラインメントしたときに、塩基配列の同一性が、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。ヒト由来EPS15遺伝子におけるホモログは、ヒト由来の遺伝子であってもよく、ヒト以外の動物由来の遺伝子であってもよい。ヒト以外の動物としては、例えば、ハムスター、イヌ、ネコ、ウサギ等が挙げられる。
【0027】
<(A)グリチルリチン酸>
グリチルリチン酸((A)成分)は、生薬の一種である甘草の根や茎に含まれている成分である。本発明者らにより、(A)成分の投与又は摂取により、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子の発現を抑制するという意外な知見が得られた。
【0028】
(A)成分は、そのままの形態で用いられてもよく、塩の形態で用いられてもよい。グリチルリチン酸の塩としては、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられ、具体的には、グリチルリチン酸モノカリウム、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノナトリウム、グリチルリチン酸ジナトリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、グリチルリチン酸ジアンモニウム等が挙げられる。
また、上記のとおり、グリチルリチン酸は、甘草の抽出物に含まれていることが知られており、グリチルリチン酸を含む植物抽出物の形態で用いられてもよい。
(A)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、水溶性を高め、製剤化を容易にする、あるいは、上皮への親和性を高められる観点から、グリチルリチン酸塩を用いるのが好ましく、グリチルリチン酸のカリウム塩及びアンモニウム塩がより好ましく、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウムがさらに好ましい。
【0029】
<(B)トラネキサム酸>
トラネキサム酸((B)成分)はアミノ酸の一種であり、別名トランス-4-アミノメチルシクロヘキサン-1-カルボン酸と呼ばれている。(A)成分と同様に、本発明者らにより、(B)成分の投与又は摂取により、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子の発現を抑制するという意外な知見が得られた。
【0030】
(B)成分は、そのままの形態で用いられてもよく、塩の形態で用いられてもよい。トラネキサム酸の塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム、鉄、亜鉛等の金属塩;リジン、アルギニン、ヒスチジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸塩;アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ステアリルアミン等の有機アミン塩等が挙げられる。また、(B)成分は、トラネキサム酸誘導体又はその塩として用いられてもよく、具体的には、トラネキサム酸セチルエステル等のエステル誘導体;トラネキサム酸メチルアミド等のアミド誘導体が挙げられる。
【0031】
本発明の剤の投与又は摂取量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限は無く、また適応される対象の年齢、状態等の種々の要因により適宜変えることができる。目的の効果を得るために好ましい投与又は摂取量は、剤の用途により適宜設定すればよい。
【0032】
本発明の剤は、そのままの形態で、最終製品として用いることもできる。また、飲食品用の添加剤、医薬用の添加剤、医薬部外品用の添加剤として用いることができる。これにより、飲食品、医薬品、医薬部外品に、各種効果を付与することができる。
【0033】
[遺伝子発現抑制用組成物]
本発明の、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子発現抑制用組成物、並びにArid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択される2つ以上の遺伝子発現抑制用組成物は、上記の(A)成分及び(B)成分のうち少なくとも1種を有効成分として含有し、さらに後述の(C)成分を含有してもよいが、本発明の効果を阻害しない範囲において、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分以外の任意成分をさらに含有してもよい。本明細書において、本発明の組成物は、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子発現抑制用組成物、並びにArid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択される2つ以上の遺伝子発現抑制用組成物を包含する。
【0034】
例えば、(A)成分及び(B)成分のうちの少なくとも1種は、本発明の組成物中に0.001~1w/v%含有されることが好ましい。ここで、(A)成分及び(B)成分の含有量は、それぞれグリチルリチン酸及びトラネキサム酸に換算したときの含有量を意味する。すなわち、(A)成分がグリチルリチン酸を含む植物抽出物の形態で配合される場合やグリチルリチン酸塩の形態で用いられる場合は、(A)成分はグリチルリチン酸に換算したときの量で、(B)成分がトラネキサム酸塩やトラネキサム酸誘導体又はその塩の形態で用いられる場合は、(B)成分はトラネキサム酸に換算したときの量で前記範囲となるように含まれる。上記換算は、例えば、(A)成分についてはグリチルリチン酸を含む植物抽出物やグリチルリチン酸塩、(B)成分についてはトラネキサム酸塩やトラネキサム酸誘導体又はその塩を、液体クロマトグラフや高速液体クロマトグラフを用いて液体クロマトグラフィー法の常法により分析し、(A)成分についてはグリチルリチン酸の含有量を、(B)成分についてはトラネキサム酸の含有量を確認すること等により行うことができる。
【0035】
(A)成分及び(B)成分のうちの少なくとも1種の含有量が0.001w/v%以上であると本発明の効果が発現しやすくなり、1w/v%以下であると、本発明の組成物の、刺激、べたつき、口腔内で使用するものであれば香味等、製剤として優れた使用感が得られ、かつ製剤安定性も高まる傾向がある。(A)成分及び(B)成分のうちの少なくとも1種の含有量は、0.003w/v%以上であるのが好ましく、0.005w/v%以上がより好ましく、また、0.7w/v%以下であるのがより好ましく、0.31w/v%以下であるのがさらに好ましく、0.30w/v%以下であるのがさらに一層好ましく、0.25w/v%以下が特に好ましく、0.2w/v%以下が最も好ましい。
【0036】
なお、(A)成分は、本発明の組成物中に、グリチルリチン酸に換算したときの量として0.001~0.31w/v%の範囲で含有するのが好ましい。(A)成分の含有量がグリチルリチン酸換算量で0.001w/v%以上であると、本発明の所望の効果が得られやすく、0.31w/v%以下であると、本発明の組成物の、刺激、べたつき、口腔内で使用するものであれば香味等、製剤として優れた使用感が得られ、かつ製剤安定性も高まる傾向がある。(A)成分の含有量は、グリチルリチン酸換算量で0.003w/v%以上であることがより好ましく、0.005w/v%以上がさらに好ましく、0.006w/v%以上が殊更に好ましく、0.009w/v%以上が特に好ましい。また、0.30w/v%以下であるのがより好ましく、0.25w/v%以下であることがさらに好ましく、0.2w/v%以下が特に好ましい。
【0037】
(B)成分は、本発明の組成物中に、トラネキサム酸に換算したときの量として0.001~1w/v%の範囲で含有するのが好ましい。(B)成分の含有量が0.001w/v%以上であると、本発明の所望の効果が得られやすく、1w/v%以下であると、本発明の組成物の、刺激、べたつき、口腔内で使用するものであれば香味等、製剤として優れた使用感が得られ、かつ製剤安定性も高まる傾向がある。(B)成分の含有量は、0.003w/v%以上であるのがより好ましく、0.005w/v%以上がさらに好ましく、0.01w/v%以上がさらに一層好ましく、0.03w/v%以上が特に好ましく、0.05w/v%以上が最も好ましい。また、0.7w/v%以下であるのがより好ましく、0.31w/v%以下であるのがさらに好ましく、0.30w/v%以下であるのがさらに一層好ましく、0.25w/v%以下が特に好ましく、0.2w/v%以下が最も好ましい。
【0038】
<(C)第四級アンモニウム塩>
本発明の組成物は、第四級アンモニウム塩(以下、(C)成分ともいう。)を含有してもよい。
第四級アンモニウム塩は、殺菌効果を有することが知られている成分である。
【0039】
第四級アンモニウム塩としては、例えば、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、塩化アルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化ラウロイルコラミノホルミルメチルピリジニウム等が挙げられる。(C)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子の発現抑制効果が高く得られるため、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムが好ましく、塩化セチルピリジニウムがより好ましい。
【0040】
第四級アンモニウム塩は、本発明の組成物に、0.005~0.1w/v%の範囲で含有するのが好ましい。第四級アンモニウム塩の含有量が0.005w/v%以上であると、本発明の所望の効果が得られやすい傾向があり、また、0.1w/v%以下であると、本発明の組成物の、刺激、べたつき、口腔内で使用するものであれば香味等、製剤として優れた使用感が得られ、かつ製剤安定性も高まる傾向がある。第四級アンモニウム塩の含有量は、0.01w/v%以上であるのがより好ましく、0.02w/v%以上がさらに好ましく、また、0.08w/v%以下であるのがより好ましく、0.07w/v%以下がさらに好ましい。
【0041】
なお、本発明の組成物中の(A)グリチルリチン酸、(B)トラネキサム酸、及び(C)第四級アンモニウム塩の含有量は、液体クロマトグラフや高速液体クロマトグラフを用いて液体クロマトグラフィー法の常法により測定できる。
【0042】
本発明の剤又は組成物には、(A)成分と(B)成分を共に含むのが好ましい。(A)成分と(B)成分を共に含むことにより、より効果的にArid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子の発現を抑制しうる。
本発明の組成物が(A)成分と(B)成分を共に含む場合、(A)成分と(B)成分は合計で0.001~1.31w/v%含有するのが好ましい。(A)成分と(B)成分の合計の含有量は、0.003w/v%以上であるのがより好ましく、0.005w/v%以上がさらに好ましく、0.01w/v%以上がさらに一層好ましく、0.03w/v%以上が特に好ましく、0.05w/v%以上が最も好ましい。また、1.30w/v%以下がより好ましく、1.25w/v%以下がさらに好ましく、1.2w/v%以下が特に好ましい。
【0043】
そしてさらに、本発明の組成物には、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を共に含むのが好ましい。これらの3つの成分を含有することにより、相加的あるいは相乗的な効果の増強が得られる。
【0044】
本発明の剤又は本発明の組成物中、(B)成分に対する(A)成分の含有量比A/Bは、0.001~310の範囲であるのが好ましい。含有量比A/Bが前記範囲であると本発明の効果をより発揮できる。含有量比A/Bは、0.003以上であるのがより好ましく、0.005以上がさらに好ましく、0.01以上がさらに一層好ましく、0.05以上が特に好ましく、0.1以上が最も好ましく、300以下であるのがより好ましく、200以下がさらに好ましく、150以下がさらに一層好ましく、110以下が殊更に好ましく、100以下が特に好ましく、50以下が最も好ましい。
【0045】
また、本発明の組成物中、(C)成分に対する(A)成分の含有量比A/Cは、0.01~60の範囲であるのが好ましい。含有量比A/Cが前記範囲であると本発明の効果をより発揮できる。含有量比A/Cは、0.03以上であるのがより好ましく、0.05以上がさらに好ましく、0.08以上がさらに一層好ましく、0.1以上が特に好ましく、50以下であるのがより好ましく、30以下がさらに好ましく、20以下がさらに一層好ましく、10以下が特に好ましい。
【0046】
また、本発明の組成物中、(C)成分に対する(B)成分の含有量比B/Cは、0.01~200の範囲であるのが好ましい。含有量比B/Cが前記範囲であると本発明の効果をより発揮できる。含有量比B/Cは、0.03以上であるのがより好ましく、0.05以上がさらに好ましく、0.08以上がさらに一層好ましく、0.1以上が特に好ましく、120以下であるのがより好ましく、60以下がより一層好ましく、50以下がさらに好ましく、30以下がさらに一層好ましく、20以下が特に好ましく、10以下が最も好ましい。
【0047】
本発明の組成物が含有しうる任意成分としては、例えば、溶剤、甘味料、殺菌剤、界面活性剤、抗炎症剤、歯石予防剤、pH調整剤、酵素、イオン源、防腐剤、香料、生薬、色素、保湿成分、細胞賦活成分、ビタミン類、アミノ酸等が挙げられる。
【0048】
溶剤としては、例えば、精製水、イオン水等の水;生理食塩水;エタノール等の低級一価アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール等が挙げられる。
【0049】
甘味料としては、例えば、ステビオサイド、レバウディオサイド、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、ソルビトール、サッカリンナトリウム、スクラロース、トレハロース、還元パラチノース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム等が挙げられる。
【0050】
殺菌剤としては、例えば、ヒノキチオール、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、チモール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、亜塩素酸ナトリウム等が挙げられる。
【0051】
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤又は両性界面活性剤が挙げられ、具体的には、ノニオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられ、カチオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド等が挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、硫酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、N-アシルアミノ酸塩、アシル化メチルタウリン塩等が挙げられ、両性界面活性剤としては、酢酸ベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0052】
抗炎症剤としては、例えば、アミノカプロン酸、アラントイン及びその誘導体、アスコルビン酸及びその塩、アズレン、アズレンスルホン酸塩、ジヒドロコレステロール、エピジヒドロコレステリン、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、塩化リゾチーム等が挙げられる。
【0053】
歯石予防剤としては、例えば、リン酸塩、ポリリン酸塩、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、塩化亜鉛、有機酸亜鉛、エデト酸塩類等が挙げられる。
【0054】
pH調整剤としては、例えば、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム等のリン酸ナトリウム塩、クエン酸ナトリウム、クエン酸、グルコノ-δ-ラクトン、グルコン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム及びこれらの水和物等が挙げられる。
【0055】
酵素としては、例えば、プロテアーゼ、デキストラナーゼ、アミラーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム等が挙げられる。
【0056】
イオン源としては、例えば、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸塩、フッ化第一スズ等のフッ素イオン源、リン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト等のカルシウムイオン源等が挙げられる。
【0057】
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0058】
香料としては、例えば、ペパーミント油、スペアミント油、ハッカ油、ユーカリ油、クローブ油、タイム油、ローズマリー油、レモン油、ジンジャー油、ライム油、カシア油、カルダモン油、ラベンダー油、シナモン油等の天然精油、l-メントール、l-カルボン、カルバクロール、オイゲノール、アネトール、1,8-シネオール、チモール、バニリン、ピネン、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、サリチル酸メチル等の香料成分、これらの混合物、天然香料、調合香料、合成香料等が挙げられる。
【0059】
生薬としては、例えばスギナエキス、セイヨウサンザシエキス、ハマメリスエキス、シャクヤクエキス、シラカバエキス、セージエキス、海藻エキス、オウバクエキス、トウキエキス、ニンジンエキス、ウイキョウエキス等が挙げられる。
【0060】
色素としては、例えば、青色1号、青色2号、青色201号、黄色4号、黄色5号、黄色202(1)号、黄色203号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、緑色3号、緑色201号等が挙げられる。
【0061】
保湿成分としては、グリセリン、ヘパリン類似物質(グリコサミノグリカン)、ヒアルロン酸およびその塩、ワセリン等が挙げられる。
【0062】
細胞賦活成分としては、N-アセチルグルコサミン、γ-アミノ酪酸、アセチルグルコサミン、アミノ酪酸、アラントイン、クロレラエキス、シラカバエキス、シラカンバ樹皮エキス、タイソウエキス、ツボクサエキス、トウモロコシエキス、ナツメ果実エキス、ハトムギ種子エキス、パルミチン酸レチノール、ヒオウギエキス、ヒオウギ抽出液、ビルベリー葉エキス、ユズ種子エキス、ヨクイニンエキス、レチノール等が挙げられる。
【0063】
ビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKといった脂溶性ビタミン、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、ビタミンCといった水溶性ビタミン等が挙げられる。
【0064】
アミノ酸としては、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、リジン(リシン)、フェニルアラニン、トリプトファン、スレオニン(トレオニン)、ヒスチジン、アルギニン、グリシン、アラニン、セリン、チロシン、システイン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸等が挙げられる。
【0065】
本発明の組成物が任意成分を含有する場合、該組成物中の(A)成分及び(B)成分のうちの少なくとも1種の含有量は有効量であれば特に限定されないが、0.001~1w/v%であることが好ましい。
【0066】
本発明の組成物は、(A)成分及び(B)成分のうちの少なくとも1種と、(C)成分及び/又は任意成分を、必要により加熱し、各成分を均一に撹拌混合することにより調製できる。
【0067】
本発明の剤又は本発明の組成物の投与又は摂取形態は特に限定されないが、例えば、口腔内投与、舌下投与等の経口投与、経口摂取、口腔内等の上皮粘膜や皮膚への塗布、貼付、噴霧等が好ましい。
【0068】
本発明の組成物は、例えば、液状、ジェル状、ペースト状、クリーム状、錠剤等の固形状、顆粒状や細粒等の粉末状、カプセル状、ソフトカプセル状等の形状に調製できる。中でも、有効成分を口腔内等の上皮粘膜や皮膚に均一に処理できるため、液体製剤が好ましく、液体製剤としては、例えば、うがい薬(含嗽薬とも称する。)、液体歯磨剤、洗口液、マウススプレーやローション、ボディースプレー等が好ましく、特に、口腔内に均一に処理できるうがい薬(含嗽薬とも称する。)、液体歯磨剤、洗口液、マウススプレー等が好ましい。
【0069】
なお、本明細書において、「液体」とは、流動性を有しており、20℃における粘度が20mPa・s以下、好ましくは10mPa・s以下であるものをいう。ここで、粘度は、市販の回転式粘度計(例えば、東機産業株式会社製B型粘度計)を使用して測定できる。
【0070】
上述のように、(A)成分及び(B)成分のうちの少なくとも1種からなる剤及び(A)成分及び(B)成分のうちの少なくとも1種を有効成分として含有する組成物は、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択される1つ以上の遺伝子発現を抑制しうる。さらに、(A)成分及び(B)成分のうちの少なくとも1種からなる剤及び(A)成分及び(B)成分のうちの少なくとも1種を有効成分とする組成物は、上記遺伝子発現の抑制に加えて、Pla2g2f遺伝子発現を促進しうる。
【0071】
本明細書において、Pla2g2f遺伝子は、ヒト由来PLA2G2F遺伝子(NCBI Gene アクセッション番号64600)、及びヒト由来PLA2G2F遺伝子におけるホモログを含む。ヒト由来PLA2G2F遺伝子におけるホモログは、上記ヒト由来PLA2G2F遺伝子の塩基配列に対してアラインメントしたときに、塩基配列の同一性が、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。ヒト由来PLA2G2F遺伝子におけるホモログは、ヒト由来の遺伝子であってもよく、ヒト以外の動物由来の遺伝子であってもよい。ヒト以外の動物としては、例えば、ハムスター、イヌ、ネコ、ウサギ等が挙げられる。
【0072】
Arid5a遺伝子の発現抑制剤及び該遺伝子の発現抑制用組成物は、Arid5a遺伝子の過剰発現に起因する疾病の予防及び/又は治療をし得る。(A)成分及び(B)成分のうちの少なくとも1種からなる剤又は(A)成分及び(B)成分のうちの少なくとも1種を有効成分として含有する組成物を投与又は摂取することにより、Arid5a遺伝子発現が抑制される。そのため、上記剤又は上記組成物の投与又は摂取により、Arid5a遺伝子の過剰発現に起因する疾病を予防及び/又は治療でき、特に予防に有用であると考えられる。
【0073】
Arid5aは、IκBファミリーであるIκBξのmRNA安定性と翻訳の両方を促進すること(Nilesh Amatya et al., “IL-17 integratesmultiple self-reinforcing, feed-forward mechanisms through the RNA bindingprotein Arid5a”, SCIENCE SIGNALING, 2018, 11, eaat4617)、IL-6 mRNAの分解を抑制すること(K Masuda et al., “Arid5a controls IL-6 mRNAstability, which contributes to elevation of IL-6 level in vivo”, PNAS., 2013, 110 p.9409-9414.)から、自然免疫が関与する生体反応の主体となっている可能性が高く、それらの関連疾患に有効であると考えられる。そのため、Arid5a遺伝子の過剰発現に起因する疾病としては、アトピー性皮膚炎等の炎症性疾患、潰瘍性疾患、アレルギー性疾患、骨破壊性疾患、リウマチ等の自己免疫疾患、神経変性疾患、及びがんが挙げられる。
【0074】
すなわち、過剰なArid5a遺伝子の発現抑制により、アトピー性皮膚炎等の炎症性疾患、潰瘍性疾患、アレルギー性疾患、骨破壊性疾患、リウマチ等の自己免疫疾患、神経変性疾患、及びがんの予防及び/又は治療に有効で、特に予防に有効である。IκBξに加え、IκBξの下流に存在するIL-6をはじめとした炎症性サイトカインのmRNAの分解が促進されるため、炎症性疾患及び自己免疫疾患の予防及び/又は治療が好ましい。
【0075】
Rac2遺伝子の発現抑制剤及び該遺伝子の発現抑制用組成物は、Rac2遺伝子の過剰発現に起因する疾病の予防及び治療をし得る。(A)成分及び(B)成分のうちの少なくとも1種からなる剤又は(A)成分及び(B)成分のうちの少なくとも1種を有効成分とする組成物を、投与又は摂取することにより、Rac2遺伝子発現が抑制される。そのため、上記剤又は上記組成物の投与又は摂取により、Rac2遺伝子の過剰発現に起因する疾病を予防及び/又は治療でき、特に予防に有用であると考えられる。
【0076】
活性化マクロファージにおいて、Rac2はNOS2と相互作用し、NOS2を活性化させるため(Teresa Kuncewicz et al., “Specificassociation of nitric oxide synthase-2 with Rac isoforms in activated murinemacrophages”, Am J Physiol Renal Physiol. 2001, 281,p.F326-336.)、Rac2遺伝子の抑制は、活性酸素種の過剰発生が主因や副因である疾患に有効であると考えられる。そのため、Rac2遺伝子の過剰発現に起因する疾病としては、アトピー性皮膚炎等の炎症性疾患、潰瘍性疾患、アレルギー性疾患、骨破壊性疾患、リウマチ等の自己免疫疾患、神経変性疾患、及びがんが挙げられる。
【0077】
すなわち、過剰なRac2遺伝子の発現抑制により、アトピー性皮膚炎等の炎症性疾患、潰瘍性疾患、アレルギー性疾患、骨破壊性疾患、リウマチ等の自己免疫疾患、神経変性疾患、及びがんの予防及び/又は治療に有効で、特に予防に有効であり、活性酸素種の過剰産生抑制作用があるため、炎症性疾患及び潰瘍性疾患の予防及び/又は治療が好ましい。
【0078】
Clic4遺伝子発現抑制剤及び該遺伝子発現抑制用組成物は、Clic4遺伝子の過剰発現に起因する疾病の予防及び/又は治療をし得る。(A)成分及び(B)成分のうちの少なくとも1種からなる剤又は(A)成分及び(B)成分のうちの少なくとも1種を有効成分とする組成物を投与又は摂取することにより、Clic4遺伝子発現が抑制される。そのため、上記剤又は上記組成物の投与又は摂取により、Clic4遺伝子の過剰発現に起因する疾病を予防及び/又は治療でき、特に予防に有用であると考えられる。
【0079】
Clic4は細胞質に存在するだけでなく、ミトコンドリア内膜の成分でもあり、Clic4の発現レベルの維持はケラチノサイトの生存に必須である(Fernandez-Salas, E., et al., “mtCLIC/CLIC4,an organellular chloride channel protein, is increased by DNA damage andparticipates in the apoptotic response to p53”, Mol.Cell. Biol., 2002, 22, p.3610-3620.)。分化するケラチノサイトにおけるClic4の発現上昇は、ケラチノサイトが細胞周期停止、核破裂、死滅する分化過程の終末期に関与する可能性がある。実際、Clic4の僅かな発現上昇が、ケラチノサイトの分化反応を著しく増加することが報告されている(Kwang S Suh, et al., “CLIC4 mediates and isrequired for Ca2+-induced keratinocyte differentiation”,J Cell Sci., 2007, 120, p.2631-2640.)。そのため、Clic4遺伝子の過剰発現に起因する疾病としては、アトピー性皮膚炎等の炎症性疾患、潰瘍性疾患炎、アレルギー性疾患、骨破壊性疾患、リウマチ等の自己免疫疾患、及び神経変性疾患が挙げられる。
【0080】
すなわち、過剰なClic4遺伝子の発現抑制により、アトピー性皮膚炎等の炎症性疾患、潰瘍性疾患炎、アレルギー性疾患、骨破壊性疾患、リウマチ等の自己免疫疾患、及び神経変性疾患の予防及び/又は治療に有効で、特に予防に有効である。
【0081】
ケラチン遺伝子ファミリー発現抑制剤及び該遺伝子発現抑制用組成物は、ケラチン遺伝子ファミリーの過剰発現に起因する疾病の予防及び/又は治療をし得る。(A)成分及び(B)成分のうちの少なくとも1種からなる剤又は(A)成分及び(B)成分のうちの少なくとも1種を有効成分とする組成物を投与又は摂取することにより、ケラチン遺伝子ファミリーの発現が抑制される。そのため、上記剤又は上記組成物の投与又は摂取により、ケラチン遺伝子ファミリーの過剰発現に起因する疾病を予防及び/又は治療でき、特に予防に有用であると考えられる。
【0082】
Krt16の過剰発現により、正常なケラチンプロファイルが崩壊し、上皮の末端分化過程を阻害することが報告されている。また、Interleukin-17(IL-17)やInterleukin-22(IL-22)等の炎症性サイトカインの発現上昇により、Nrf2の核移行が促進され、Krt6、Krt16、Krt17の発現上昇が起こり、ケラチノサイトの増殖促進が起こる結果、乾癬が生じるという研究報告もある(Luting Yang, et al., “Nrf2 Promotes Keratinocyte Proliferation in Psoriasis through Up-Regulation of Keratin 6, Keratin 16, and Keratin 17”, J Invest Dermatol., 2017,137, p.2168-2176.)。そのため、ケラチン遺伝子ファミリーの過剰発現を防ぐことは、アトピー性皮膚炎等の炎症性疾患、アレルギー性疾患、乾癬等の予防及び/又は治療に寄与すると考えられる。
【0083】
すなわち、過剰なケラチン遺伝子ファミリーの発現抑制により、アトピー性皮膚炎等の炎症性疾患、アレルギー性疾患、乾癬等の予防及び/又は治療に有効で、特に予防に有効である。
【0084】
Eps15遺伝子発現抑制剤及び該遺伝子発現抑制用組成物は、Eps15遺伝子の過剰発現に起因する疾病の予防及び/又は治療をし得る。(A)成分及び(B)成分のうちの少なくとも1種からなる剤又は(A)成分及び(B)成分のうちの少なくとも1種を有効成分とする組成物を投与又は摂取することにより、Eps15遺伝子発現が抑制される。そのため、上記剤又は上記組成物の投与又は摂取により、Eps15遺伝子の過剰発現に起因する疾病を予防及び/又は治療でき、特に予防に有用であると考えられる。
【0085】
Eps15は、上皮成長因子の受容体媒介エンドサイトーシスに寄与し、エンドサイトーシスは自然免疫が関与する生体反応の主体となることが懸念されるため、Eps15遺伝子の抑制はそれらの関連疾患の予防及び/又は治療に有効であると考えられる。Eps15遺伝子の過剰発現に起因する疾病としては、アトピー性皮膚炎等の炎症性疾患、潰瘍性疾患炎、アレルギー性疾患、骨破壊性疾患、リウマチ等の自己免疫疾患、及び神経変性疾患が挙げられる。
【0086】
すなわち、過剰なEps15遺伝子の発現抑制により、アトピー性皮膚炎等の炎症性疾患、潰瘍性疾患炎、アレルギー性疾患、骨破壊性疾患、リウマチ等の自己免疫疾患、及び神経変性疾患の予防及び/又は治療に有効で、特に予防に有効であり、エンドサイトーシスに寄与するため、炎症性疾患及び自己免疫疾患の予防及び/又は治療が好ましい。
【0087】
本発明の一態様の剤及び本発明の一態様の組成物は、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択される1つ以上の遺伝子発現に起因する疾病の予防及び/又は治療に加えて、Pla2g2f遺伝子の欠損又は発現低下に起因する疾病の予防をし得る。(A)成分及び(B)成分のうちの少なくとも1種からなる剤又は(A)成分及び(B)成分のうちの少なくとも1種を有効成分とする組成物を、投与又は摂取することにより、Pla2g2f遺伝子発現を促進しうる。そのため、上記剤又は上記組成物の投与又は摂取により、Pla2g2f遺伝子の欠損又は発現低下に起因する疾病を予防できると考えられる。
【0088】
Pla2g2fノックアウトマウスの皮膚はバリア機能が損なわれることから(Kei Yamamoto et al., “The role of groupIIF-secreted phospholipase A2 in epidermal homeostasis and hyperplasia”, J. Exp. Med., 2015, 212, p.1901-1919.)、Pla2g2f遺伝子の欠損又は発現低下に起因する疾病としては、アトピー性皮膚炎等の炎症性疾患、潰瘍性疾患、アレルギー性疾患、及びリウマチ等の自己免疫疾患が挙げられる。
【0089】
すなわち、Pla2g2f遺伝子の発現促進により、アトピー性皮膚炎等の炎症性疾患、潰瘍性疾患、アレルギー性疾患、リウマチ等の自己免疫疾患の予防に有効であり、特に、Pla2g2f遺伝子は皮膚のバリア機能の維持に重要であるため、炎症性疾患及び潰瘍性疾患の予防が好ましい。
【0090】
炎症性疾患としては、例えば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、気管支喘息、喘息性気管支炎,びまん性間質性肺炎、慢性閉塞性肺疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、急性肝炎、慢性肝炎、劇症肝炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎、肝硬変、末梢神経炎、強直性脊椎炎、湿疹(急性・亜急性・慢性)、接触皮膚炎、日光(紫外線)皮膚炎、放射線皮膚炎、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、乾癬、扁平苔癬、紅斑症、酒さ、蕁麻疹、円形脱毛症、天疱瘡群、類天疱瘡、紅皮症、尋常性ざ瘡、褥瘡、創傷、熱傷、結膜炎,角膜炎,強膜炎,急性・慢性中耳炎、花粉症、副鼻腔炎、喉頭炎、食道炎、アフタ性口内炎、再発性アフタ性口内炎、カタル性口内炎、ヘルペス性口内炎、カンジダ性口内炎、薬剤誘発性口内炎、放射線性口内炎などを含む口腔粘膜炎(口内炎)、口腔扁平苔癬、舌炎、急性・慢性唾液腺炎、口角炎、口唇炎、ベーチェット病、多発性硬化症、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、膵炎及び慢性心不全等が挙げられ、口内炎、口腔扁平苔癬、潰瘍性大腸炎、及び天疱瘡群が好ましい。
【0091】
潰瘍性疾患としては、例えば、口内炎、食道炎、食道潰瘍、胃炎、潰瘍性大腸炎、又は胃潰瘍等が挙げられ、口内炎及び胃潰瘍が好ましい。
【0092】
アレルギー性疾患としては、例えば、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性肉芽腫性血管炎、接触性皮膚炎等が挙げられ、アレルギー性結膜炎が好ましい。
【0093】
骨破壊性疾患としては、歯周病、骨粗鬆症、慢性関節リウマチ、顎骨壊死、大腿骨頭壊死等が挙げられ、歯周病が好ましい。
【0094】
自己免疫疾患としては、例えば、ベーチェット病、全身性エリテマトーデス、慢性円板状エリテマトーデス、多発性硬化症(全身性強皮症、進行性全身性硬化症)、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、結節性動脈周囲炎(結節性多発動脈炎、顕微鏡的多発血管炎)、大動脈炎症候群(高安動脈炎)、悪性関節リウマチ、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、脊椎関節炎、混合性結合組織病、シェーグレン症候群、成人スティル病、血管炎、過敏性血管炎、リウマトイド血管炎、大型血管炎、ANCA関連血管炎(例えば、多発血管炎性肉芽腫症及び好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)、コーガン症候群、RS3PE症候群、側頭動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、線維筋痛症、抗リン脂質抗体症候群、好酸球性筋膜炎、IgG4関連疾患(例えば、原発性硬化性胆管炎、自己免疫性膵炎等)、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、慢性萎縮性胃炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、グッドパスチャー症候群、急速進行性糸球体腎炎、巨赤芽球性貧血、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血、自己免疫性好中球減少症、特発性血小板減少性紫斑病、バセドウ病(グレーブス病(甲状腺機能亢進症))、橋本病、自己免疫性副腎機能不全、原発性甲状腺機能低下症、アジソン病(慢性副腎皮質機能低下症)、特発性アジソン病、I型糖尿病、緩徐進行性I型糖尿病(成人潜在性自己免疫性糖尿病)、限局性強皮症、乾癬、水疱性類天疱瘡、天疱瘡、類天疱瘡、妊娠性疱疹、線状IgA水疱性皮膚症、後天性表皮水疱症、視神経脊髄炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、多巣性運動ニューロパチー、サルコイドーシス、巨細胞性動脈炎、筋萎縮性側索硬化症、原田病、自己免疫性視神経症、特発性無精子症、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病)、セリアック病、強直性脊椎炎、重症喘息、慢性蕁麻疹、移植免疫、家族性地中海熱、好酸球性副鼻腔炎、拡張型心筋症、全身性肥満細胞症又は封入体筋炎等が挙げられ、ベーチェット病が好ましい。
【0095】
神経変性疾患としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、前頭側頭型認知症、脳損傷、脊髄損傷、低酸素症、痙攣、又は、外傷性脳障害等が挙げられ、アルツハイマー病が好ましい。
【0096】
がんとしては、口腔扁平上皮がん、乳がん、卵巣がん、大腸がん、肺がん、前立腺がん、頭頸部がん、リンパ腫、ぶどう膜悪性黒色腫、胸腺腫、中皮腫、食道がん、胃がん、十二指腸がん、肝細胞がん、胆管がん、胆のうがん、膵臓がん、腎細胞がん、腎盂・尿管がん、膀胱がん、陰茎がん、精巣がん、子宮がん、膣がん、外陰がん、皮膚がん(例えば、悪性黒色腫等)、悪性骨腫瘍、軟部肉腫、軟骨肉腫、白血病、骨髄異形成症候群、脳腫瘍又は多発性骨髄腫等が挙げられ、口腔扁平上皮がんが好ましい。
【0097】
乾癬としては、尋常性乾癬、乾癬性関節炎、滴状乾癬、乾癬性紅皮症又は膿疱性乾癬が挙げられ、尋常性乾癬が好ましい。
【0098】
また、本発明の一態様として、(A)グリチルリチン酸及び(B)トラネキサム酸のうちの少なくとも1種を対象に投与すること又は摂取させることを含む、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子から成る群から選択されるいずれか1つ又は2以上の遺伝子の発現を抑制する方法が挙げられる。また、上記投与又は摂取により、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子から成る群から選択されるいずれか1つ又は2以上の遺伝子の発現の抑制に加えて、Pla2g2f遺伝子発現の促進をする方法も挙げられる。ここで、上記対象はヒトの個体を除いてもよい。
【0099】
(A)成分及び(B)成分の少なくとも1種を対象に投与すること又は摂取させることで、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子から選ばれる少なくとも1つの遺伝子の発現が抑制され、Arid5a遺伝子発現に起因する疾病、Rac2遺伝子発現に起因する疾病、Clic4遺伝子発現に起因する疾病、ケラチン遺伝子ファミリー発現に起因する疾病及びEps15遺伝子発現に起因する疾病の予防及び/又は治療をし得る。上記投与又は摂取により、Pla2g2f遺伝子の欠損又は発現低下に起因する疾病の予防も行い得る。その投与又は摂取は、Arid5a遺伝子発現に起因する疾病、Rac2遺伝子発現に起因する疾病、Clic4遺伝子発現に起因する疾病、ケラチン遺伝子ファミリー発現に起因する疾病及びEps15遺伝子発現に起因する疾病の予防に用いる場合、上記疾患の発症前から行うが、発症後に上記投与又は摂取を行ってもよく、上記疾患の再発予防に用いる場合は、上記疾患が治癒した後に、上記投与又は摂取を行ってもよい。上記疾患の治療に用いる場合は、上記疾患の発症後に上記投与又は摂取を行う。投与又は摂取回数は特に限定されないが、好ましくは、1日3回以上、1か月以上継続して投与又は摂取するとよい。
【実施例0100】
以下に、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0101】
<試験例1:遺伝子発現抑制及び促進効果の評価(1)>
(実施例A-1)
0.01(w/v)%でグリチルリチン酸ジカリウム(グリチルリチン酸換算量で0.0065(w/v)%)を含有する生理食塩水を用いて、以下の試験を行った。
(実施例A-2)
0.05(w/v)%でトラネキサム酸を含有する生理食塩水を用いて、同様に試験を行った。
(対照例A-1)
生理食塩水を用い、同様に試験を行った。
(コントロール)
上記実施例A-1及びA-2並びに対照例A-1に記載の検体のいずれも塗布せず、各群あたり1匹のハムスターを6日間飼育した後、以下の試験方法のうちI.2-1)の工程に供した。
【0102】
(試験方法)
I.動物実験
1)上記の検体を1匹に対して50μL、ハムスター(Syrian系、雄、5週齢)の右側頬粘膜に、1日2回塗布した。なお、1回目と2回目の塗布は3時間以上間隔を空けた。この操作を、4日間連続で行った。5日目は、同様の塗布を1回行った。
2-1)Pla2g2f遺伝子の発現を定量する群においては、1)の後に、コントロール群においては、1)を行わずに、ハムスターを二酸化炭素ガスで安楽死させた。
2―2)Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子の発現を定量する群においては、1)における5日目の塗布後、30(w/v)%の酢酸水溶液を含浸させた、Φ6mmのろ紙を上記ハムスターの右側頬粘膜に麻酔下で10秒間貼付し、口内炎を誘発した。口内炎誘発3時間後、12時間後、24時間後に、ハムスターを二酸化炭素ガスで安楽死させた。
3)右側頬粘膜を含む周辺組織を回収した。
【0103】
II.RNAの抽出及び精製、品質確認
1)TRI Reagent(Molecular Research Center社製)、Purelink RNA Mini Kit(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)、及び、Purelink DNase(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用い、プロトコルに従い、組織からRNAの抽出精製とDNase処理を行った。
2)Agilent 4150 TapeStation システム(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用い、全てのRNAサンプルのRINe(RNA Integrity Number equivalent)値が7以上であることを確認した。
3)表1の条件でRNA シークエンスを実施した。
【0104】
【表1】
【0105】
III.RNA シークエンスのデータ処理
i)生データを用いた発現定量
1)Ensembl genome browser(release 105) からゴールデンハムスター(MesAur1.0)のcDNA配列を取得し、salmon indexを作成した。
2)RNA シークエンスのリードをfastp(v0.23.2)でトリミング後、salmon(v1.6.0)でArid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー、Eps15遺伝子及びPla2g2f遺伝子の発現を定量した。
3)tximport(v1.22.0)でTPM(transcripts per million)値のテーブルを作成した。
【0106】
ii)発現量比の計算、アノテーション情報の追加
実施例A-1、実施例A-2及び対照例A-1のコントロールに対する発現量比(TPM(sample)+1/TPM(control)+1)を算出した。
【0107】
口内炎誘発3時間後に安楽死させた個体群における、Arid5a遺伝子の発現量比に関する結果を図1に示す。コントロールと比較して、対照例A-1ではArid5a遺伝子の発現量が顕著に高かった。一方、実施例A-1及びA-2では、対照例A-1よりもArid5a遺伝子の発現量が抑制されたことが示された。すなわち、本発明の一態様の剤又は組成物の投与により、Arid5a遺伝子の発現が抑制されることが示された。
【0108】
口内炎誘発3時間後に安楽死させた個体群における、Rac2遺伝子の発現量比に関する結果を図2に示す。コントロールと比較して、対照例A-1ではRac2遺伝子の発現量が顕著に高かった。一方、実施例A-1及びA-2では、対照例A-1よりもRac2遺伝子の発現量が抑制されたことが示された。すなわち、本発明の一態様の剤又は組成物の投与により、Rac2遺伝子の発現が抑制されることが示された。
【0109】
口内炎誘発3時間後に安楽死させた個体群における、Clic4遺伝子の発現量比に関する結果を図3に示す。コントロールと比較して、対照例A-1ではClic4遺伝子の発現量が顕著に高かった。一方、実施例A-1及びA-2では、対照例A-1よりもClic4遺伝子の発現量が抑制されたことが示された。すなわち、本発明の一態様の剤又は組成物の投与により、Clic4遺伝子の発現が抑制されることが示された。
【0110】
口内炎誘発3時間後に安楽死させた個体群における、Krt1遺伝子の発現量比に関する結果を図4Aに示す。口内炎誘発12時間後に安楽死させた個体群における、Krt14遺伝子、Krt16遺伝子、及びKrt17遺伝子の発現量比に関する結果を、それぞれ図4B図4C及び図4Dに示す。図4A図4B図4C及び図4Dのいずれにおいても、コントロールと比較して、対照例A-1ではケラチン遺伝子ファミリーの発現量が顕著に高かった。一方、実施例A-1及びA-2では、対照例A-1よりもケラチン遺伝子ファミリーの発現量が抑制されたことが示された。すなわち、本発明の一態様の剤又は組成物の投与により、ケラチン遺伝子ファミリーの発現が抑制されることが示された。
【0111】
口内炎誘発24時間後に安楽死させた個体群における、Eps15遺伝子の発現量比に関する結果を図5に示す。コントロールと比較して、対照例A-1ではEps15遺伝子の発現量が顕著に高かった。一方、実施例A-1及びA-2では、対照例A-1よりもEps15遺伝子の発現量が抑制されたことが示された。すなわち、本発明の一態様の剤又は組成物の投与により、Eps15遺伝子の発現が抑制されることが示された。
【0112】
口内炎を誘発しなかった個体群における、Pla2g2f遺伝子の発現量比に関する結果を図6に示す。対照例A-1及びコントロールと比較して、実施例A-1及びA-2ではPla2g2f遺伝子の発現量比が顕著に高いことが示された。すなわち、本発明の一態様の剤又は組成物の投与により、Pla2g2f遺伝子の発現が促進されることが示された。
【0113】
<試験例2:遺伝子発現抑制及び促進効果の評価(2)>
試験例1の実施例A-1、実施例A-2及び対照例A-1の液体検体について、以下の試験を行った。
また、コントロールとして、上記実施例A-1及びA-2並びに対照例A-1に記載の検体のいずれも塗布していない、ハムスターの右側頬粘膜組織を回収し、以下の試験方法の2)の工程に供した。
【0114】
(試験方法)
1)1週間予備飼育したハムスター(Syrian系、雄、5週齢)の右側頬粘膜に、
上記の検体を1匹に対して50μL、4日間連続で1日2回塗布した。なお、1回目と2回目の塗布は3時間以上間隔を空けた。
2)5日目は、検体を1回塗布した後、実施例A-1を塗布した群、実施例A-2を塗布した群及び対照例A-1を塗布した群を3匹ずつ安楽死させて、右側頬粘膜組織を回収した。この時、コントロール群も同様に安楽死させ、右側頬粘膜組織を回収した。
3)残りの各群6匹の実施例A-1を塗布した群、実施例A-2を塗布した群及び対照例A-1を塗布した群においては、30(w/v)%酢酸水溶液を含浸させたΦ6mmのろ紙を、麻酔下でハムスターの右側頬粘膜に10秒間貼付し、口内炎を誘発した。口内炎誘発3時間後又は24時間後に、各群3匹ずつ口内炎誘発部位を含む右側頬粘膜組織を回収した。
4)TRIzol reagent (Invitrogen社製)を用い、プロトコルに従い回収組織からtotal RNAを抽出した。
5)ReverTra Ace(登録商標)(東洋紡株式会社製)のプロトコルに従いRNAを鋳型に逆転写を行った。
6)FastStart Essential DNA Green Master(Roche)のプロトコルに従い、cDNAを鋳型に以下の条件でΔΔCt法によるReal time PCRを実施した。
【0115】
(プライマー情報)
・配列番号1:F-Pla2g2f:5’-CAAGCAGGGTGGCAGTAGAA-3’
・配列番号2:R-Pla2g2f:5’-CACGCAGTGACCCCTTAGTC-3’
・配列番号3:F-Arid5a:5’-GTTGTTGGGACCGCCTGATA-3’
・配列番号4:R-Arid5a:5’-CAGGCTTTGGGCTTGGGATA-3’
・配列番号5:F-Rac2:5’-AAATGAGGAGCTCAGCCCAC-3’
・配列番号6:R-Rac2:5’-TGTCTGCAGTGGTTCTGGTC -3’
・配列番号7:F-Clic4:5’-TGGGATTGCGTCTTTCGTGA-3’
・配列番号8:R-Clic4:5’-ATCTCACCCAGCTTCAGTGC-3’
・配列番号9:F-Krt1:5’-CTCCTTCATCGACAAGGTGCG-3’
・配列番号10:R-Krt1:5’-TGGTTGTTGTATCCACCTGCT-3’
・配列番号11:F-Krt5:5’-CTTCAGCTCGGTGTCTCGAA-3’
・配列番号12:R-Krt5:5’-TACAGGCTCCGGCTACCATA-3’
・配列番号13:F-Krt14:5’-CAGTCCCAGCTCAGCATGAA-3’
・配列番号14:R-Krt14:5’-TGGGACAGCTGCATGCAATA-3’
・配列番号15:F-Krt16:5’-ACAAGATCCTGCTGGACGTG-3’
・配列番号16:R-Krt16:5’-TTGCGAGGAGATTTGGGCAT-3’
・配列番号17:F-Eps15:5’-CAGTGGGCCAATGTCGTACT-3’
・配列番号18:R-Eps15:5’-TCTTTGTTTCAAGCGCAGGC-3’
・配列番号19:F-GAPDH:5’-ACAGTCAAGGCTGAGAACGG-3’
・配列番号20:R-GAPDH:5’-CAGGCGACATGTGAGATCCA-3’
【0116】
上記配列番号1及び2に示される塩基配列を有するプライマーは、ハムスター由来Pla2g2f遺伝子mRNA配列(NCBI Nucleotide アクセッション番号 XM_021233581.2)に基づき、上記配列番号3及び4に示される塩基配列を有するプライマーは、ハムスター由来Arid5a遺伝子mRNA配列(NCBI Nucleotide アクセッション番号 XM_040729415.1)に基づき、上記配列番号5及び6に示される塩基配列を有するプライマーは、ハムスター由来Rac2遺伝子mRNA配列(NCBI Nucleotide アクセッション番号 XM_005066960.4)に基づき、上記配列番号7及び8に示される塩基配列を有するプライマーは、ハムスター由来Clic4遺伝子mRNA配列(NCBI Nucleotideアクセッション番号 XM_005079597.4)に基づき、上記配列番号9及び10に示される塩基配列を有するプライマーは、ハムスター由来Krt1遺伝子mRNA配列(NCBI Nucleotideアクセッション番号 XM_005067285.4)に基づき、上記配列番号11及び12に示される塩基配列を有するプライマーは、ハムスター由来Krt5遺伝子mRNA配列(NCBI Nucleotideアクセッション番号 XM_005067276.4)に基づき、上記配列番号13及び14に示される塩基配列を有するプライマーは、ハムスター由来Krt14遺伝子mRNA配列(NCBI Nucleotideアクセッション番号 XM_005087369.4)に基づき、上記配列番号15及び16に示される塩基配列を有するプライマーは、ハムスター由来Krt16遺伝子mRNA配列(NCBI Nucleotideアクセッション番号 XM_040749688.1)に基づき、上記配列番号17及び18に示される塩基配列を有するプライマーは、ハムスター由来Eps15遺伝子mRNA配列(NCBI Nucleotideアクセッション番号 XM_040756977.1)に基づき、上記配列番号19及び20に示される塩基配列を有するプライマーは、ハムスター由来GAPDH遺伝子mRNA配列(NCBI Nucleotide アクセッション番号 DQ403055.1)に基づき、それぞれ設計した。
また、上記配列番号15及び16に示される塩基配列を有するプライマーは、Krt16及びKrt17の両方を検出できる。
【0117】
(PCR条件)
・95℃で10分を1サイクル
・95℃で15秒、59℃で20秒、及び72℃で40秒のサイクルを計45サイクル
・72℃で5分を1サイクル
【0118】
GAPDHの発現量に対する各遺伝子の発現量(発現量比)に関する結果を図7~12に示す。図7はGAPDHの発現量に対するPla2g2f遺伝子の発現量(Pla2g2f/GAPDH)、図8はGAPDHの発現量に対するArid5a遺伝子の発現量(Arid5a/GAPDH)、図9はGAPDHの発現量に対するRac2遺伝子の発現量(Rac2/GAPDH)、図10はGAPDHの発現量に対するClic4遺伝子の発現量(Clic4/GAPDH)、図11AはGAPDHの発現量に対するKrt1遺伝子の発現量(Krt1/GAPDH)、図11BはGAPDHの発現量に対するKrt5遺伝子の発現量(Krt5/GAPDH)、図11CはGAPDHの発現量に対するKrt14遺伝子の発現量(Krt14/GAPDH)、図11DはGAPDHの発現量に対するKrt16・17遺伝子の発現量(Krt16・17/GAPDH)、図12はGAPDHの発現量に対するEps15遺伝子の発現量(Eps15/GAPDH)の結果を示す。図11Dにおいて示されたKrt16遺伝子の発現量に関する結果は、Krt17遺伝子の発現量に関する結果と解釈することもできる。
【0119】
図7~12において、対照例A-1(0h)、実施例A-1(0h)及び実施例A-2(0h)は、いずれも試験方法の2)で、口内炎を誘発せずに安楽死させたハムスターによる結果を示す。対照例A-1(3h)、実施例A-1(3h)及び実施例A-2(3h)は、いずれも試験方法の3)で、口内炎を誘発してから3時間後に安楽死させたハムスターによる結果を示す。対照例A-1(24h)、実施例A-1(24h)及び実施例A-2(24h)は、いずれも試験方法の3)で、口内炎を誘発してから24時間後に安楽死させたハムスターによる結果を示す。いずれの群もn=3である。
【0120】
図7に示すように、成分(A)又は成分(B)の塗布により、口内炎誘発前のハムスターの頬粘膜組織中のPla2g2f遺伝子のmRNA発現の上昇が確認された。
図8~12に示すように、成分(A)又は成分(B)の塗布により、対照例A-1と比較して、口内炎を誘発したハムスターにおけるArid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子のmRNA発現が抑制されることが確認された。
【0121】
これより、試験例1及び2で各遺伝子発現は同様の傾向を示した。
【0122】
<試験例3:遺伝子発現抑制及び促進効果の評価(3)>
実施例A-1、実施例A-2及び対照例A-1の代わりに以下の実施例A-3~A-9及び上述の対照例A-1を用いたこと、及び試験例2の2)において対照例A-1を塗布した群を安楽死させなかった点以外は、上記試験例2と同じ方法で、以下の試験を行った。
また、コントロールとして、下記実施例A-3~A-9及び対照例A-1に記載の検体のいずれも塗布していない、ハムスターの右側頬粘膜組織を回収し、上記試験例2と同様の工程に供した。
【0123】
(実施例A-3)
0.005(w/v)%でグリチルリチン酸ジカリウム(グリチルリチン酸換算量で0.00325(w/v)%)を含有する生理食塩水を用いて、以下の試験を行った。
(実施例A-4)
0.478(w/v)%でグリチルリチン酸ジカリウム(グリチルリチン酸換算量で0.31(w/v)%)を含有する生理食塩水を用いて、以下の試験を行った。
(実施例A-5)
0.003(w/v)%でトラネキサム酸を含有する生理食塩水を用いて、同様に試験を行った。
(実施例A-6)
1(w/v)%でトラネキサム酸を含有する生理食塩水を用いて、同様に試験を行った。
(実施例A-7)
0.005(w/v)%のグリチルリチン酸ジカリウム(グリチルリチン酸換算量で0.00325(w/v)%)と1(w/v)%のトラネキサム酸を含有する生理食塩水を用いて、同様に試験を行った。
(実施例A-8)
0.478(w/v)%のグリチルリチン酸ジカリウム(グリチルリチン酸換算量で0.31(w/v)%)と0.003(w/v)%のトラネキサム酸を含有する生理食塩水を用いて、同様に試験を行った。
(実施例A-9)
0.01(w/v)%のグリチルリチン酸ジカリウム(グリチルリチン酸換算量で0.0065(w/v)%)と0.05(w/v)%のトラネキサム酸を含有する生理食塩水を用いて、同様に試験を行った。
【0124】
GAPDHの発現量に対する各遺伝子の発現量(発現量比)に関する結果を図13~18に示す。図13はGAPDHの発現量に対するPla2g2f遺伝子の発現量(Pla2g2f/GAPDH)、図14はGAPDHの発現量に対するArid5a遺伝子の発現量(Arid5a/GAPDH)、図15はGAPDHの発現量に対するRac2遺伝子の発現量(Rac2/GAPDH)、図16はGAPDHの発現量に対するClic4遺伝子の発現量(Clic4/GAPDH)、図17AはGAPDHの発現量に対するKrt1遺伝子の発現量(Krt1/GAPDH)、図17BはGAPDHの発現量に対するKrt5遺伝子の発現量(Krt5/GAPDH)、図17CはGAPDHの発現量に対するKrt14遺伝子の発現量(Krt14/GAPDH)、図17DはGAPDHの発現量に対するKrt16・17遺伝子の発現量(Krt16・17/GAPDH)、図18はGAPDHの発現量に対するEps15遺伝子の発現量(Eps15/GAPDH)の結果を示す。図17Dにおいて示されたKrt16遺伝子の発現量に関する結果は、Krt17遺伝子の発現量に関する結果と解釈することもできる。
【0125】
図13~18において、実施例A-X(0h)は、いずれも試験方法の2)で、口内炎を誘発せずに安楽死させたハムスターによる結果を示す。対照例A-1(3h)及び実施例A-X(3h)は、いずれも試験方法の3)で、口内炎を誘発してから3時間後に安楽死させたハムスターによる結果を示す。対照例A-1(24h)及び実施例A-X(24h)は、いずれも試験方法の3)で、口内炎を誘発してから24時間後に安楽死させたハムスターによる結果を示す。なお、Xは3から9の整数である。
【0126】
図13に示すように、成分(A)又は成分(B)の塗布により、口内炎誘発前のハムスターの頬粘膜組織中のPla2g2f遺伝子のmRNA発現の上昇が確認された。
図14~18に示すように、成分(A)又は成分(B)の塗布により、対照例A-1と比較して、口内炎を誘発したハムスターにおけるArid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子のmRNA発現が抑制されることが確認された。
【0127】
これより、試験例1~3で各遺伝子発現は同様の傾向を示した。
【0128】
<試験例4:口内炎発症抑制効果の評価>
Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及びEps15遺伝子からなる群より選択されるいずれか1つの遺伝子発現に起因する疾病の一例と考えられる口内炎に対する、(A)グリチルリチン酸及び(B)トラネキサム酸の効果を確認した。
【0129】
(実施例B-1、B-2、B-3)
表2に示す処方に従い、実施例B-1、B-2及びB-3の液体検体を調製し、以下の試験を行った。表2に示すように、実施例B-1、B-3のグリチルリチン酸ジカリウムの配合量は0.01w/v%、グリチルリチン酸換算の配合量は0.0065w/v%である。
【0130】
(比較例B-1、B-2、B-3、B-4)
表2に示す処方に従い、比較例B-1、B-2、B-3及びB-4の液体検体を調製し、同様に試験を行った。
【0131】
(対照例B-1)
生理食塩水を用い、同様に試験を行った。
【0132】
【表2】
【0133】
(試験方法)
1)各群に対し、一週間予備飼育したハムスター2~4匹(Syrian系、雄、5週齢)の右側頬粘膜に、上記の液体検体を1匹に対して1日2回、50μLずつ塗布した。1回目と2回目の塗布は3時間以上の間隔を空けて行った。試験は、6日間連続で行った。
2)5、6日目は、1)の操作に加えて麻酔下で右側頬粘膜に30(w/v)%酢酸水溶液を含浸させたΦ6mmのろ紙を10秒間貼付し、口内炎(炎症性浮腫)を誘発させた。
3)7日目に、ハムスターの右側頬粘膜における炎症性浮腫の有無を目視で確認した。さらに、下記式(1)を用いて各群における口内炎発症抑制率(%)を算出し、2~4匹の平均値を求め、50%以上の場合に口内炎発症抑制効果があると判定した。
口内炎発症抑制率(%)=(炎症性浮腫を認めなかった個体数/全個体数)×100 ・・・(1)
【0134】
結果を表3に示す。
【0135】
【表3】
【0136】
表3より、試験例1、2でArid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及び/又はEps15遺伝子の発現が抑制された実施例B-1、B-2は、優れた口内炎の発症抑制効果を有し、(A)グリチルリチン酸と(B)トラネキサム酸を組み合わせて用いることで、実施例B-3はより高い口内炎の発症抑制効果を示すことがわかった。
一方、口内炎治療の有効成分として知られるアラントインやアズレンスルホン酸ナトリウムを含有する比較例B-1、B-2、B-3及びB-4では口内炎の発症抑制効果が得られないことがわかった。
このように、口内炎の予防効果は、Arid5a遺伝子、Rac2遺伝子、Clic4遺伝子、ケラチン遺伝子ファミリー及び/又はEps15遺伝子の発現抑制による効果であり、口内炎発症後の治療効果とは異なることがわかった。
【0137】
<試験例5:口内炎発症抑制効果の評価>
Arid5a遺伝子発現に起因する疾病、Rac2遺伝子発現に起因する疾病、Clic4遺伝子発現に起因する疾病、ケラチン遺伝子ファミリー発現に起因する疾病及びEps15遺伝子発現に起因する疾病の一例と考えられる口内炎に対する、(A)グリチルリチン酸及び(B)トラネキサム酸の効果を確認した。
【0138】
(実施例C-1)
表4に示す処方に従い、実施例C-1の液体検体を調製し、以下の試験を行った。表4に示すように、グリチルリチン酸ジカリウムの配合量は0.015w/v%、グリチルリチン酸換算の配合量は0.00975w/v%である。
【0139】
(比較例C-1)
表4に示す処方に従い、比較例C-1の液体検体を調製し、同様に試験を行った。
【0140】
(対照例C-1)
生理食塩水を用い、同様に試験を行った。
【0141】
【表4】
【0142】
(試験方法)
1)各群に対し、一週間予備飼育したハムスター5匹(Syrian系、雄、5週齢)の右側頬粘膜に、上記の液体検体を1匹に対して1日2回、50μLずつ塗布した。1回目と2回目の塗布は3時間以上の間隔を空けて行った。試験は、6日間連続で行った。
2)5、6日目は、1)の操作に加えて麻酔下で右側頬粘膜に30(w/v)%酢酸水溶液を含浸させたΦ6mmのろ紙を10秒間貼付し、口内炎(炎症性浮腫)を誘発させた。
3)7日目に、ハムスターの右側頬粘膜における炎症性浮腫の有無を目視で確認した。さらに、下記式(1)を用いて各群における口内炎発症抑制率(%)を算出し、5匹の平均値を求め、50%以上の場合に口内炎発症抑制効果があると判定した。
口内炎発症抑制率(%)=(炎症性浮腫を認めなかった個体数/全個体数)×100 ・・・(1)
【0143】
結果を表5に示す。
【0144】
【表5】
【0145】
表5より、本発明の一態様の組成物である実施例C-1は口内炎の発症抑制効果が顕著に高く、優れた口内炎発症抑制効果があることがわかった。実施例C-1の処方において(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有していない比較例C-1は、生理食塩水を用いた対照例C-1と同程度の結果となり口内炎の発症抑制効果は無かった。
【0146】
<試験例6:口内炎治療効果の評価>
試験例5の実施例C-1、比較例C-1及び対照例C-1の液体検体について、以下の試験を行った。
【0147】
(試験方法)
1)各群に対し、ハムスター5匹(Syrian系、雄、5週齢)を麻酔下でコルクボードに固定し、右側頬嚢に10(w/v)%酢酸生理食塩水を30μL皮内注射して、口内炎を誘発させた。
2)創傷部の長径と短径を測定し創傷部面積を算出した後、液体検体を1匹に対して50μLを創傷部に塗布した。液体検体の塗布は1日1回とし、6日間連続で行った。
3)下記式(2)を用いて1日ごとの口内炎治癒率(%)を算出し、5匹の平均値を求めた。なお、1日目から6日目までは、検体処理を行っており、7日目は検体処理を行わず、創傷部の長径と短径を測定し創傷部面積の算出のみを行った。
口内炎治癒率(%)={(創傷作製時の面積-測定時点での面積)/創傷作製時の面積}×100 ・・・(2)
【0148】
結果を表6に示す。
【0149】
【表6】
【0150】
4日目においては、実施例C-1の口内炎治癒率は34.3%と、比較例C-1の口内炎治癒率9.0%よりも高かった。7日目においても、実施例C-1の口内炎治癒率は49.8%であり、比較例C-1の口内炎治癒率30.5%よりも高かった。
【0151】
試験例5及び試験例6より、実施例C-1は比較例C-1に対して口内炎の発症抑制効果が顕著に高く、さらに口内炎治療効果も有することが示された。これより、Arid5a遺伝子発現に起因する疾病、Rac2遺伝子発現に起因する疾病、Clic4遺伝子発現に起因する疾病、ケラチン遺伝子ファミリー発現に起因する疾病及びEps15遺伝子発現に起因する疾病の一例と考えられる口内炎に対して、本発明の一態様の組成物による高い予防効果及び治療効果が示された。
【0152】
<試験例7:抗がん剤投与モデルにおける口内炎発症抑制効果の評価>
(実施例D-1)
表7に示す処方に従い、実施例D-1の液体検体を調製し、以下の試験を行った。なお、実施例D-1は実施例C-1と同一処方であり、グリチルリチン酸ジカリウムの配合量は0.015w/v%、グリチルリチン酸換算の配合量は0.00975w/v%である。
【0153】
(比較例D-1)
表7に示す処方に従い、比較例D-1の液体検体を調製し、以下の試験を行った。
【0154】
(対照例D-1)
試験例5で用いた対照例C-1(生理食塩水)について同様に試験を行った。
【0155】
(対照例D-2)
液体検体を処理せずに、同様の試験を行った。
【0156】
【表7】
【0157】
(試験方法)
1)各群に対し、麻酔下のハムスター4匹(Syrian系、雄、6週齢)の頬粘膜に上記の液体検体を1匹に対して50μL塗布する操作を10日間連続で行った。
2)1日目及び2日目に、抗がん剤である5-フルオロウラシル(5FU;60mg/kg)をハムスターの腹腔内に投与し、2日間インターバルを設けた。
3)5日目に、20μLの5(w/v)%酢酸生理食塩水をハムスターの右側頬嚢皮内に注射し、口内炎を誘発させた。
4)6日目から10日目まで創傷部の面積を測定し、4匹の平均値を各群の数値とした。
5)対照例D-2については、ハムスター4匹(Syrian系、雄、6週齢)に対して上記1)及び2)を行わずに、3)及び4)を行ったときの創傷部の面積の平均値を求めた。
【0158】
結果を表8に示す。
【0159】
【表8】
【0160】
対照例D-1、D-2から、抗がん剤である5-フルオロウラシル(5FU)を投与することで口内炎を発症しやすくなり、創傷部の面積も大きくなる傾向がみられることがわかった。口内炎治療の有効成分として知られるアズレンスルホン酸ナトリウムを含有する比較例D-1は、口内炎を発症させた6日目において対照例D-1と同等の大きさの口内炎となり、1日ごとにその炎症が抑制できる治療効果が確認できた。
これに対し、本発明の一態様の組成物である実施例D-1は、6日目において創傷部の面積が比較例D-1よりも顕著に小さく、口内炎の発症抑制効果に優れることがわかった。
【0161】
<参考例:遺伝子発現抑制及び促進による口内炎への影響評価>
以下に詳述するように、特定の遺伝子発現を抑制したハムスターを用いて、遺伝子発現の抑制による口内炎の発症への影響を観察した。
【0162】
(参考例1:エレクトロポレーション法によるハムスター頬粘膜への外来遺伝子の導入条件の確立)
まず、エレクトロポレーション法によるハムスター頬粘膜への外来遺伝子の導入条件を確立するための実験を行った。
【0163】
(EGFP遺伝子溶液の調製)
0.1w/v%トリパンブルー含有PBS溶液中に、pCAGGS-EGFP(Enhanced Green Fluorescence Protein)(ネッパジーン株式会社製)が1μg/μLとなるようにEGFP遺伝子溶液を調製した。
【0164】
(EGFP遺伝子の導入)
ハムスター(Syrian系、雄、5週齢)3匹を麻酔下でコルクボードに固定した後、注射器(BDロードーズ(登録商標)(30G):日本ベクトン・ディッキンソン株式会社製)を用い、40μLのEGFP遺伝子溶液をハムスターの右側頬粘膜に皮内注射した。皮内注射直後の写真を図19Aに示す。図19Aは、ハムスターの右側頬粘膜の注射箇所が見えるように開口した状態である。
【0165】
その後、注射部位にニードルを刺し込み、かつ、注射部位をピンセット型円形白金電極(CUY650P5:ネッパジーン株式会社製)で挟んだ。電気抵抗を約0.5KΩにあわせた後、表9の電気パルス条件でエレクトロポレーションを行った。
【0166】
【表9】
【0167】
上述のエレクトロポレーション法による外来遺伝子の導入は、スーパーエレクトロポレーター NEPA21(登録商標) TypeII(ネッパジーン株式会社製)を用いて行った。当装置は、ポアーリングパルス(高電圧・短時間・複数回・減衰率設定)によって細胞膜に微細孔を開けたのち、トランスファーパルス(低電圧・長時間・複数回・減衰率設定)により遺伝子や薬剤を複数回に渡り、細胞内に送り込むものである。組織をピンセット電極で挟んでエレクトロポレーションを実施した。
【0168】
エレクトロポレーションを実施した一週間後、麻酔下でハムスターの遺伝子導入部位に、UVライト(Exフラッシュライト ExF-B:バイオツールズ株式会社製)を用いてEGFPの励起波長(489nm近傍波長)を照射し、EGFPタンパク質由来の蛍光波長(508nm)を確認した。このとき、保護メガネ(シャープカットゴーグル イエロー:バイオツールズ株式会社製)を用いた。
【0169】
上記手順により得られた、EGFPタンパク質由来の蛍光波長を発するハムスター頬粘膜の写真を図19Bに示す。図19Bは、ハムスター頬粘膜の外来遺伝子の導入部位が見えるように開口し、UVライトを該導入部位に照射した状態である。点線枠内において、巨視的にEGFPタンパク質由来の緑色の蛍光を認めた。
エレクトロポレーション法により外来遺伝子を導入した全てのハムスターにおいて、頬粘膜の遺伝子導入部位において、特異的に強いEGFPタンパク質由来の蛍光波長が確認された。
【0170】
これより、外来的に導入した遺伝子が導入先で安定して発現(機能)することを確認した。
【0171】
その後、二酸化炭素ガスによりハムスターを安楽死させた。組織を回収して4%ホルマリン溶液にて固定後、パラフィンブロックを作製し、ミクロトームを用い、厚さ4.5μmの薄切標本を作製した。定法に従い、次の抗体を用いてEGFPタンパク質における免疫組織化学染色を実施した(一次抗体:Rabbit Polyclonal antibody to GFP,1:1000(#GTX113617、 GeneTex社製)、二次抗体:Envision + System-HRP Labelled Polymer Anti-Rabbit、Dako社製)。
【0172】
図20AにEGFP遺伝子を導入していないハムスターを用いて上記手順にてEGFPタンパク質における免疫組織化学染色をした写真を示し、図20BにEGFP遺伝子を導入した部位について、上記手順にて免疫組織化学染色をした写真を示す。図20Bの点線枠内において、EGFP遺伝子が導入されたことが分かる。これより、EGFP遺伝子の導入領域が、基底層から筋層にかけて広域に及ぶことが確認された。
【0173】
外来遺伝子を導入した全てのハムスター頬粘膜組織において組織学的にEGFPタンパク質が確認できたことから、外来的に導入した遺伝子が局所的に頬粘膜組織に導入され、安定して発現することを確認した。これより、エレクトロポレーション法によりハムスター頬粘膜に局所的に外来遺伝子を導入する条件が確立されたと判断した。
【0174】
(参考例2:RNA干渉法による特定遺伝子のノックダウン試験)
参考例1で確立した条件にて、以下のように特定遺伝子をノックダウンさせたハムスターを準備し、口内炎の発症状況を観察した。
特定遺伝子のノックダウンには、RNA干渉法を用いた。RNA干渉法とは、低分子二本鎖RNA(small interfering RNA、以下siRNA)を用いて、配列特異的にメッセンジャーRNA(mRNA)を破壊し、そのmRNAの発現を一過性に選択的に抑制(ノックダウン)する手法である。
【0175】
(siRNA溶液の調製)
以下に示す全てのsiRNAを設計し、ニッポンジーン社に合成委託した。
0.1w/v%トリパンブルー含有PBS溶液中に、以下に記載するArid5a遺伝子ノックダウン用siRNAが100nMとなるように、siRNA溶液を調製した。また、コントロールとして用いたBlankは0.1w/v%トリパンブルー含有PBS溶液(siRNA Blank)とした。また、Arid5a遺伝子ノックダウン用siRNAに代えて、以下に記載するその他の遺伝子ノックダウン用siRNAを用いて、同様にsiRNA溶液を調製した。
【0176】
((siRNA情報))
以下にsiRNA情報を記載する。dは直後に記載された塩基がデオキシ化されていることを示す。また、下線箇所がDNA、それ以外はRNAである。
【0177】
【化1】
【0178】
(siRNAの導入)
Pla2g2f遺伝子ノックダウン用siRNAを導入するハムスターを5匹用い、それ以外の遺伝子ノックダウン用siRNAを導入するハムスターを3匹用いたこと、及びEGFP遺伝子溶液の代わりにsiRNA溶液又はBlank溶液を用いたこと以外は参考例1と同様にして、エレクトロポレーション法にてハムスターに各siRNAを導入した。なおBlank溶液には0.1w/v%トリパンブルー含有PBSを用いた。
【0179】
(口内炎の誘発)
エレクトロポレーションを実施した24時間後、麻酔下でハムスター頬粘膜のsiRNA導入部位に30%酢酸溶液を含侵させたΦ6mmのろ紙を10秒間貼付し、口内炎を誘発した。
【0180】
口内炎誘発から24時間後に、麻酔下で口内炎誘発部位における炎症性浮腫(口内炎)の程度を表10のスコアにより目視判定した。Arid5a遺伝子又はRac2遺伝子をノックダウンしたハムスター及びコントロールのハムスターにおける、炎症性浮腫(口内炎)の程度を図21に示す。
【0181】
【表10】
【0182】
また、Pla2g2f遺伝子をノックダウンしたハムスター及びコントロールのハムスターについては、麻酔下で仰向けにコルクボードに固定した後、開口して口内炎全体が入るようにiPhone(登録商標) SEを用い撮影した。撮影画像をもとにオープンソースの画像処理ソフトウェアであるImageJを用い、口内炎の面積を測定した。結果を図22に示す。
【0183】
図21より、ブランクのハムスターでは口内炎スコアが2.4であるのに対し、RNA干渉法によりArid5a遺伝子又はRac2遺伝子をノックダウンしたハムスターでは口内炎スコアは1.5未満であり、口内炎発症を抑制したことが分かった。
また、Pla2g2f遺伝子をノックダウンしたハムスターでは、図22に示されるように、誘発した口内炎がブランクのハムスターよりも増悪する傾向があった。
【0184】
参考例より、Arid5a又はRac2の遺伝子発現が口内炎発症に寄与していると考えられ、またPla2g2fの遺伝子発現が口内炎の抑制に寄与していると考えられる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図17D
図18
図19A
図19B
図20A
図20B
図21
図22
【配列表】
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