(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178980
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】トウモロコシの収穫適期予測方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20241219BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G06Q50/02
A01G7/00 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097434
(22)【出願日】2023-06-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.令和4年12月13日 Web概要集・予稿集 2.令和4年12月14日 講演会資料
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】大澤 央
(72)【発明者】
【氏名】奥野 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 正博
(72)【発明者】
【氏名】長南 友也
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】生育中のトウモロコシを撮像した生育中トウモロコシ画像データから予測絹糸抽出日を算出することで、正確な収穫適期を予測することができるトウモロコシの収穫適期予測方法を提供すること。
【解決手段】コンピュータが、生育中のトウモロコシを撮像した生育中トウモロコシ画像データを取得するデータ取得ステップ10、生育中トウモロコシ画像データに撮像されているそれぞれの生育中雄穂について、開花段階推定モデルを用いて、未開花、開花前期、及び開花後期の少なくとも3段階に判定する判定ステップ20、未開花として判定された生育中雄穂の未開花雄穂数、開花前期として判定された生育中雄穂の開花前期雄穂数、及び開花後期として判定された生育中雄穂の開花後期雄穂数を用いて予測絹糸抽出日を算出する絹糸抽出日予測ステップ30、予測絹糸抽出日を起算日として積算温度を用いて収穫適期を予測する収穫適期予測ステップ40を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トウモロコシの雄穂を撮像した学習用画像データに前記雄穂の開花段階情報を付加した教師データによって機械学習された開花段階推定モデルを用いて、前記トウモロコシの収穫適期を予測するトウモロコシの収穫適期予測方法であって、
前記開花段階推定モデルが、前記雄穂の中心部における色調変化モデルであり、
コンピュータが、
生育中の前記トウモロコシを撮像した生育中トウモロコシ画像データを取得するデータ取得ステップと、
前記データ取得ステップで取得した前記生育中トウモロコシ画像データに撮像されているそれぞれの生育中雄穂について、前記開花段階推定モデルを用いて、未開花、開花前期、及び開花後期の少なくとも3段階に判定する判定ステップと、
前記未開花として判定された前記生育中雄穂の未開花雄穂数、前記開花前期として判定された前記生育中雄穂の開花前期雄穂数、及び前記開花後期として判定された前記生育中雄穂の開花後期雄穂数を用いて予測絹糸抽出日を算出する絹糸抽出日予測ステップと、
前記絹糸抽出日予測ステップで算出された前記予測絹糸抽出日を起算日として積算温度を用いて前記収穫適期を予測する収穫適期予測ステップと
を実行する
ことを特徴とするトウモロコシの収穫適期予測方法。
【請求項2】
前記開花前期では前記雄穂の前記中心部が黄色であり、前記開花後期では前記雄穂の前記中心部が褐色である
ことを特徴とする請求項1に記載のトウモロコシの収穫適期予測方法。
【請求項3】
前記開花段階推定モデルとして、前記色調変化モデルとともに、一つの前記雄穂についての開花部と未開花部との比率による開花状況モデルを用い、
前記判定ステップでは、4段階以上に判定し、
前記絹糸抽出日予測ステップでは、前記4段階以上に判定されたそれぞれの雄穂数を用いて前記予測絹糸抽出日を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載のトウモロコシの収穫適期予測方法。
【請求項4】
前記収穫適期予測ステップでは、
前記予測絹糸抽出日以降の予測気温を用いて前記積算温度を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載のトウモロコシの収穫適期予測方法。
【請求項5】
前記収穫適期予測ステップでは、
生育中の前記トウモロコシの品種に応じた前記積算温度とする
ことを特徴とする請求項1に記載のトウモロコシの収穫適期予測方法。
【請求項6】
前記生育中トウモロコシ画像データが、生育中の前記トウモロコシを上空から撮像したものである
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のトウモロコシの収穫適期予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トウモロコシの収穫適期を予測するトウモロコシの収穫適期予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高収益作物であるスイートコーンは収穫後の品質低下が著しい作物としても知られており、計画的な収穫作業が望まれている。現在、生産者は収穫直前に雌穂を手で触り、その膨らみから収穫の可否を決定している。しかしながら、この方法では収穫期に何度も圃場へ行く必要があるため、効率的な栽培の妨げになっている。加えて、広大な圃場のごく一部のサンプルから収穫適期を判断せざるを得ないことから、正確な収穫適期判断ができず計画的な収穫作業を行うことが難しい。
ところで、特許文献1では、トウモロコシの収量を早期に精度よく予測する方法を提案している。
また、特許文献2では、農作物の味質が良好な収穫時期を推測する装置を提案し、特許文献3では、栽培作物の収穫時期をより精度高く予測可能な情報処理装置、収穫時期予測プログラムおよび収穫時期予測方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-64327号公報
【特許文献2】特開2016-19512号公報
【特許文献3】特開2013-42668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、トウモロコシの収穫適期を予測するものではなく、特許文献2及び特許文献3は、トウモロコシの収穫適期の予測には適さない。
【0005】
そこで本発明は、生育中のトウモロコシを撮像した生育中トウモロコシ画像データから予測絹糸抽出日を算出することで、正確な収穫適期を予測することができるトウモロコシの収穫適期予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明のトウモロコシの収穫適期予測方法は、トウモロコシの雄穂を撮像した学習用画像データに前記雄穂の開花段階情報を付加した教師データによって機械学習された開花段階推定モデルを用いて、前記トウモロコシの収穫適期を予測するトウモロコシの収穫適期予測方法であって、前記開花段階推定モデルが、前記雄穂の中心部における色調変化モデルであり、コンピュータが、生育中の前記トウモロコシを撮像した生育中トウモロコシ画像データを取得するデータ取得ステップ10と、前記データ取得ステップ10で取得した前記生育中トウモロコシ画像データに撮像されているそれぞれの生育中雄穂について、前記開花段階推定モデルを用いて、未開花、開花前期、及び開花後期の少なくとも3段階に判定する判定ステップ20と、前記未開花として判定された前記生育中雄穂の未開花雄穂数、前記開花前期として判定された前記生育中雄穂の開花前期雄穂数、及び前記開花後期として判定された前記生育中雄穂の開花後期雄穂数を用いて予測絹糸抽出日を算出する絹糸抽出日予測ステップ30と、前記絹糸抽出日予測ステップ30で算出された前記予測絹糸抽出日を起算日として積算温度を用いて前記収穫適期を予測する収穫適期予測ステップ40とを実行することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載のトウモロコシの収穫適期予測方法において、前記開花前期では前記雄穂の前記中心部が黄色であり、前記開花後期では前記雄穂の前記中心部が褐色であることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1に記載のトウモロコシの収穫適期予測方法において、前記開花段階推定モデルとして、前記色調変化モデルとともに、一つの前記雄穂についての開花部と未開花部との比率による開花状況モデルを用い、前記判定ステップ20では、4段階以上に判定し、前記絹糸抽出日予測ステップ30では、前記4段階以上に判定されたそれぞれの雄穂数を用いて前記予測絹糸抽出日を算出することを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1に記載のトウモロコシの収穫適期予測方法において、前記収穫適期予測ステップ40では、前記予測絹糸抽出日以降の予測気温を用いて前記積算温度を算出することを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1に記載のトウモロコシの収穫適期予測方法において、前記収穫適期予測ステップ40では、生育中の前記トウモロコシの品種に応じた前記積算温度とすることを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のトウモロコシの収穫適期予測方法において、前記生育中トウモロコシ画像データが、生育中の前記トウモロコシを上空から撮像したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のトウモロコシの収穫適期予測方法によれば、雄穂の中心部における色調変化モデルを用いることで、予測絹糸抽出日を算出することができるため、収穫適期を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施例によるトウモロコシの収穫適期予測方法におけるデータ取得ステップと判定ステップとを示すフロー説明図
【
図2】同トウモロコシの収穫適期予測方法における絹糸抽出日予測ステップを示すフロー説明図
【
図3】同トウモロコシの収穫適期予測方法における収穫適期予測ステップと出力ステップとを示すフロー説明図
【
図4】本実施例の色調変化モデルによる予測を説明する実証写真
【
図5】同トウモロコシの収穫適期予測方法での実証例を示す図
【
図6】同トウモロコシの収穫適期予測方法での開花段階推定モデルとしての開花状況モデルを説明する写真
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態によるトウモロコシの収穫適期予測方法は、開花段階推定モデルが、雄穂の中心部における色調変化モデルであり、コンピュータが、生育中のトウモロコシを撮像した生育中トウモロコシ画像データを取得するデータ取得ステップと、データ取得ステップで取得した生育中トウモロコシ画像データに撮像されているそれぞれの生育中雄穂について、開花段階推定モデルを用いて、未開花、開花前期、及び開花後期の少なくとも3段階に判定する判定ステップと、未開花として判定された生育中雄穂の未開花雄穂数、開花前期として判定された生育中雄穂の開花前期雄穂数、及び開花後期として判定された生育中雄穂の開花後期雄穂数を用いて予測絹糸抽出日を算出する絹糸抽出日予測ステップと、絹糸抽出日予測ステップで算出された予測絹糸抽出日を起算日として積算温度を用いて収穫適期を予測する収穫適期予測ステップとを実行するものである。本実施の形態によれば、雄穂の中心部における色調変化モデルを用いることで、予測絹糸抽出日を算出することができるため、収穫適期を予測することができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態によるトウモロコシの収穫適期予測方法において、開花前期では雄穂の中心部が黄色であり、開花後期では雄穂の中心部が褐色であることを用いるものである。本実施の形態によれば、雄穂の中心部における色調変化に着目することで、精度よく開花段階を判定することができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第1の実施の形態によるトウモロコシの収穫適期予測方法において、開花段階推定モデルとして、色調変化モデルとともに、一つの雄穂についての開花部と未開花部との比率による開花状況モデルを用い、判定ステップでは、4段階以上に判定し、絹糸抽出日予測ステップでは、4段階以上に判定されたそれぞれの雄穂数を用いて予測絹糸抽出日を算出するものである。本実施の形態によれば、開花段階推定モデルとして、色調変化モデルとともに開花状況モデルを用いることで、4段階以上に判定でき、更に精度よく予測絹糸抽出日を算出できる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第1の実施の形態によるトウモロコシの収穫適期予測方法において、収穫適期予測ステップでは、予測絹糸抽出日以降の予測気温を用いて積算温度を算出するものである。本実施の形態によれば、予測気温を用いて積算温度を算出することで、早い時期に収穫適期を予測することができる。また、収穫適期を予測する時点で予測絹糸抽出日を過ぎている場合は、収穫適期を予測する時点までの実際の気温を用いることで、積算気温における気温の予測誤差を減らすことができ、より正確に収穫適期を予測することができる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第1の実施の形態によるトウモロコシの収穫適期予測方法において、収穫適期予測ステップでは、生育中のトウモロコシの品種に応じた積算温度とするものである。本実施の形態によれば、トウモロコシの品種に応じた積算温度とすることで、更に精度よく収穫適期を予測することができる。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第1から第5のいずれかの実施の形態によるトウモロコシの収穫適期予測方法において、生育中トウモロコシ画像データが、生育中のトウモロコシを上空から撮像したものである。本実施の形態によれば、生育中のトウモロコシを上空から撮像することで、雄穂の中心部を撮像しやすい。
【実施例0015】
以下本発明の一実施例によるトウモロコシの収穫適期予測方法について説明する。
本実施例によるトウモロコシの収穫適期予測方法は、トウモロコシの雄穂を撮像した学習用画像データに雄穂の開花段階情報を付加した教師データによって機械学習された開花段階推定モデルを用いて、トウモロコシの収穫適期を予測するものであり、コンピュータが、データ取得ステップと、判定ステップと、絹糸抽出日予測ステップと、収穫適期予測ステップと、出力ステップとを実行する。
なお、本実施例によるトウモロコシにはスイートコーンを用いている。
【0016】
図1は本実施例によるトウモロコシの収穫適期予測方法におけるデータ取得ステップと判定ステップとを示すフロー説明図である。
データ取得ステップ10では、生育中のトウモロコシを撮像した生育中トウモロコシ画像データを取得する。
生育中トウモロコシ画像データは、生育中のトウモロコシを上空から撮像したものである。このように、生育中のトウモロコシを上空から撮像することで、雄穂の中心部を撮像しやすい。
上空からの撮像にはドローンを用いることが適しており、ドローンによって圃場を均一に空撮することで圃場全域の生育状況を生育中トウモロコシ画像として取得できる。ドローンの飛行速度は1~4m/s、撮影高度は3~7mが適している。
【0017】
判定ステップ20では、データ取得ステップ10で取得した生育中トウモロコシ画像データに撮像されているそれぞれの生育中雄穂について、開花段階推定モデルを用いて、未開花、開花前期、及び開花後期の少なくとも3段階に判定する。
AIを用いて生育状況に応じた生育中雄穂を複数段階で検出することで、判定を、正確、迅速、簡便に行うことができる。
本実施例におけるAIによる開花段階推定モデルは、雄穂の中心部における色調変化モデルである。
色調変化モデルは、雄穂の色調・形状に着目した分類基準で作成し「Coloring-model」、空撮画像中の生育中雄穂のうち、開花が認められないものを「未開花雄穂(non-flowering、以下NF)」、開花が認められ、かつ雄穂の中心部が黄色であるものを「開花前期雄穂(early stage of flowering、以下EF)」、開花が認められ、かつ雄穂の中心部が褐色であるものを「開花後期雄穂(late stage of flowering、以下LF)」と定義している。
検出される全生育中雄穂は、生育が進むにつれ、未開花雄穂数が減少するとともに開花前期雄穂数が増加し、更に生育が進むことで、開花前期雄穂数が減少して開花後期雄穂数が増加する。
【0018】
図2は本実施例によるトウモロコシの収穫適期予測方法における絹糸抽出日予測ステップを示すフロー説明図である。
絹糸抽出日予測ステップ30では、未開花として判定された生育中雄穂の未開花雄穂数、開花前期として判定された生育中雄穂の開花前期雄穂数、及び開花後期として判定された生育中雄穂の開花後期雄穂数を用いて予測絹糸抽出日を算出する。
絹糸抽出日予測ステップ30は、各段階の雄穂数算出ステップ31と、予測ステップ32とからなる。
各段階の雄穂数算出ステップ31では、未開花として判定された生育中雄穂の未開花雄穂数、開花前期として判定された生育中雄穂の開花前期雄穂数、及び開花後期として判定された生育中雄穂の開花後期雄穂数を算出する。
【0019】
図2では、各段階の雄穂数算出ステップ31での算出結果が、例えば、未開花雄穂数が157、開花前期雄穂数が940、開花後期雄穂数が304であることを示している。
予測ステップ32では、各段階の雄穂数算出ステップ31で算出された、未開花雄穂数、開花前期雄穂数、及び開花後期雄穂数とともに、撮像日を用いて絹糸抽出日を予測する。
絹糸抽出日の予測算出には、例えば、線形単回帰モデルや重回帰モデルを用いることができる。なお、NFは未開花雄穂、LFは開花後期雄穂である。
予測ステップ32における算出結果は、例えば予測絹糸抽出日が7月23日として出力される。
【0020】
図3は本実施例によるトウモロコシの収穫適期予測方法における収穫適期予測ステップと出力ステップとを示すフロー説明図である。
収穫適期予測ステップ40では、絹糸抽出日予測ステップ30で算出された予測絹糸抽出日を起算日として積算温度を用いて収穫適期を予測する。
収穫適期予測ステップ40は、予測絹糸抽出日を起算日として積算温度を算出するステップ41と、品種判別ステップ42と、品種に応じた積算温度を用いた予測収穫適期算出ステップ43、44とからなる。
図3では、予測収穫適期算出ステップ43における品種Aは恵味スター、予測収穫適期算出ステップ44における品種Bはハニーバンタム(登録商標)20である場合を例示している。なお、スイートコーンのその他の品種としては、ゴールドラッシュ(登録商標)、ピュアホワイト(登録商標)、ピーターコーンなどがある。
予測絹糸抽出日を起算日として積算温度を算出するステップ41では、予測気象データを用いる。予測気象データには、例えば気象庁が提供するデータや、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が提供する農研機構メッシュ農業気象データ(The Agro-Meteorological Grid Square Data、NARO)や、その他の機関が提供するデータを用いることができる。なお、予測気象データを用いる上では、圃場を特定する地点名や緯度・経度情報を用いる。
収穫適期予測ステップ40では、予測絹糸抽出日以降の予測気温を用いて積算温度を算出することで、早い時期に収穫適期を予測することができる。また、収穫適期を予測する時点で予測絹糸抽出日を過ぎている場合は、収穫適期を予測する時点までの実際の気温を用いることで、積算気温における気温の予測誤差を減らすことができ、より正確に収穫適期を予測することができる。
また、収穫適期予測ステップ40では、生育中のトウモロコシの品種に応じた積算温度とすることで、更に精度よく収穫適期を予測することができる。
出力ステップ50では、収穫適期予測ステップ40で予測した収穫適期を出力する。収穫適期は、予測収穫適期の開始日と終了日を出力することが好ましい。
【0021】
図4は本実施例の色調変化モデルによる予測を説明する実証写真である。
図4(a)では雄穂と雌穂とを示し、
図4(b)では雄穂の所定期間における変化を示している。
図4(a)に示すように、雄穂は植物体の上端に位置するため空撮による撮像が適している。
図4(b)では、7月16日から7月28日までの生育中雄穂の画像を示している。生育が進むにつれて、開花した雄穂数は増加するとともに、開花前期では雄穂の中心部が黄色であるが、開花後期では雄穂の中心部が褐色に変化している。
このように、雄穂の中心部における色調変化に着目することで、精度よく開花段階を判定することができる。
そして、雄穂の中心部における色調変化モデルを用い雄穂を3段階に分類することで、線形単回帰モデルを用い予測絹糸抽出日を算出することができるため、収穫適期を予測することができる。
【0022】
図5は本実施例によるトウモロコシの収穫適期予測方法での実証例を示している。
図5では、本実施例によるトウモロコシの収穫適期予測方法による収穫適期予測と、実際の収穫期との重複を示しており、重複している場合が予測が正しいことを示している。
検証地Aと検証地Bとの2か所のスイートコーン圃場(品種 恵味スターまたはハニーバンタム(登録商標)20)においてドローン(Mavic Air2、またはMavic 2 Pro、DJI社)で空撮を行った。7月上旬から8月上旬の雄穂抽出期から絹糸抽出期にかけ、高度約7mでドローン付属のRGBカメラを真下に向けることでスイートコーン雄穂を撮影した。取得した画像は3840×2160ピクセルであり、その後画像中央部を1920×1080ピクセルでトリミングした。トリミング後の画像1枚には雄穂が10~20個程度含まれている。白飛びや風の影響により雄穂が不明瞭な画像は削除している。
図5に示すように、検証地Aと検証地Bとの2か所での重複は84%を超えた結果となっている。
【0023】
図6は本実施例によるトウモロコシの収穫適期予測方法での開花段階推定モデルとしての開花状況モデルを説明する写真である。
開花状況モデルは、雄穂の開花状況に着目した分類基準「Flowering-mode」である。空撮画像中の生育中雄穂のうち、開花が認められないものを「未開花(non-flowering、以下NF)」、開花が認められるが未開花部も確認できるものを「一部開花(partially flowering、以下PF)」、生育中雄穂のすべての部位で開花が認められるものを「完全開花(fully flowering、以下FF)」と定義している。
図6(a)が未開花、
図6(b)が一部開花、
図6(c)が完全開花を示している。
【0024】
図6に示すように、一つの雄穂についての開花部と未開花部との比率による開花状況モデルを用いることもできる。
特に、このような開花状況モデルを色調変化モデルとともに用いることで、判定ステップ20では、4段階以上に判定し、絹糸抽出日予測ステップ30では、4段階以上に判定されたそれぞれの雄穂数を用いて予測絹糸抽出日を算出することもできる。
このように、開花段階推定モデルとして、色調変化モデルとともに開花状況モデルを用いることで、4段階以上に判定でき、更に精度よく予測絹糸抽出日を算出できる。
本発明は、特にスイートコーンに適しているが、ポップコーン、デントコーン、フリントコーン、ワキシーコーン、ソフトコーン、ポッドコーン、その他の種類のトウモロコシに適用できる。