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特開2024-178988大豆蛋白加工食品およびその製造方法、並びに食品
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  • 特開-大豆蛋白加工食品およびその製造方法、並びに食品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178988
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】大豆蛋白加工食品およびその製造方法、並びに食品
(51)【国際特許分類】
   A23J 3/16 20060101AFI20241219BHJP
   A23L 13/60 20160101ALI20241219BHJP
   A23L 11/00 20210101ALI20241219BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20241219BHJP
   A23J 3/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A23J3/16
A23L13/60 Z
A23L11/00 Z
A23L5/00 M
A23J3/00 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097451
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000103840
【氏名又は名称】オリエンタル酵母工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】丹生谷 和詩
(72)【発明者】
【氏名】守屋 智恵美
(72)【発明者】
【氏名】小林 久美子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 美香
(72)【発明者】
【氏名】日比 亜弥音
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 花林
【テーマコード(参考)】
4B020
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B020LB19
4B020LC02
4B020LG04
4B020LK12
4B020LK20
4B020LP03
4B020LP15
4B035LC01
4B035LC06
4B035LG15
4B035LG33
4B035LG37
4B035LG57
4B035LK01
4B035LP02
4B035LP21
4B035LP31
4B042AC01
4B042AC03
4B042AD20
4B042AE03
4B042AK06
4B042AK10
4B042AK13
4B042AK17
4B042AP04
4B042AP14
4B042AP21
(57)【要約】
【課題】大豆蛋白由来の異味・異臭が軽減された大豆蛋白加工食品およびその製造方法、並びに前記大豆蛋白加工食品を使用した食品を提供すること。
【解決手段】大豆蛋白と、醤油と、酵母エキスと、発酵風味液と、香辛料組成物とを含有する大豆蛋白加工食品である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆蛋白と、醤油と、酵母エキスと、発酵風味液と、香辛料組成物とを含有することを特徴とする大豆蛋白加工食品。
【請求項2】
前記大豆蛋白を10~22質量%、前記醤油を0.2~1.5質量%、前記酵母エキスを0.03~1質量%、前記発酵風味液を0.2~1質量%、前記香辛料組成物を0.05~0.8質量%含有する請求項1に記載の大豆蛋白加工食品。
【請求項3】
前記発酵風味液が、酵母素材熱処理物を含有する発酵原料の酵母及び/又は乳酸菌発酵物である請求項1または2に記載の大豆蛋白加工食品。
【請求項4】
前記香辛料組成物が、少なくともショウガ、ナツメグ、及びフェンネルからなる群から選択される2種以上を含有する請求項1または2に記載の大豆蛋白加工食品。
【請求項5】
さらに、みりん類を含有し、その含有量が0質量%超、0.75質量%以下である請求項1または2に記載の大豆蛋白加工食品。
【請求項6】
大豆蛋白と、醤油と、酵母エキスと、発酵風味液と、香辛料組成物とを混合して混合物を得る工程と、
ジュール加熱装置による通電加熱で該混合物を加熱殺菌する工程とを含むことを特徴とする大豆蛋白加工食品の製造方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載の大豆蛋白加工食品を使用したことを特徴とする食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆蛋白加工食品およびその製造方法、並びに前記大豆蛋白加工食品を使用した食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粒状又は粉末状大豆蛋白を使用した疑似肉製品が開発され、食肉や惣菜など幅広い食品への利用が行われている(例えば、非特許文献1参照)。
しかしその反面、大豆蛋白を利用した製品は、2-ヘキセナール、数種のサポニンなどの少量成分による青草味、えぐ味などの異味異臭を有することが利用上における障害となり、さらなる改善が求められている。
【0003】
これまで大豆蛋白由来の異味・異臭(以下、「異味・異臭」と称することがある。)を軽減するために様々な検討がなされてきた。
【0004】
例えば、大豆由来のきな粉様の異味を抑えることができる技術として、醤油および乳酸を含有する前処理液に浸漬した粒状大豆たんぱく加工食品を配合する液状調味料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
豆乳の青臭味をマスキングする技術として、豆乳または乳清の、乳酸菌および酵母による発酵物(乳酸菌・酵母発酵物)を有効成分とする、豆乳の青臭味マスキングのための、発酵調味料組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
植物性大豆蛋白に特有のえぐみ、収れん味、穀物臭を低減する技術として、大豆蛋白に、含硫有機化合物を含有する酵母エキスを添加してなる粉末状大豆蛋白が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
大豆タンパク質が含有する大豆臭を低減する技術として、大豆タンパク質100質量部と、少なくとも1種類の香辛料1~25質量部とを含有する大豆タンパク質含有食品が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-122347号公報
【特許文献2】特開2020-78339号公報
【特許文献3】特開2001-145463号公報
【特許文献4】特開2017-51161号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】中野康行、「植物性肉様食品の開発における大豆の可能性」、月刊フードケミカル、2019-9、29-32
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記した特許文献1~4に示される従来の技術は大豆蛋白加工食品を口に含み咀嚼し始めてから初期に感じられる先味から中味における異味異臭に対して有効であるが、中味から後味における異味異臭に対しては効果が不十分であった。
【0011】
本発明は、このような要望に応え、現状を打破し、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、大豆蛋白由来の異味・異臭が軽減された大豆蛋白加工食品およびその製造方法、並びに前記大豆蛋白加工食品を使用した食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は上記課題を解決するため検討した結果、醤油と、酵母エキスと、発酵風味液と、香辛料組成物とを大豆蛋白加工食品に配合することにより、大豆蛋白由来の異味・異臭を軽減することができること、特に中味から後味における異味・異臭に対してマスキング効果が高いことを知見した。
【0013】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 大豆蛋白と、醤油と、酵母エキスと、発酵風味液と、香辛料組成物とを含有することを特徴とする大豆蛋白加工食品である。
<2> 前記大豆蛋白を10~22質量%、前記醤油を0.2~1.5質量%、前記酵母エキスを0.03~1質量%、前記発酵風味液を0.2~1質量%、前記香辛料組成物を0.05~0.8質量%含有する前記<1>に記載の大豆蛋白加工食品である。
<3> 前記発酵風味液が、酵母素材熱処理物を含有する発酵原料の酵母及び/又は乳酸菌発酵物である前記<1>または<2>に記載の大豆蛋白加工食品である。
<4> 前記香辛料組成物が、少なくともショウガ、ナツメグ、及びフェンネルからなる群から選択される2種以上を含有する前記<1>~<3>のいずれかに記載の大豆蛋白加工食品である。
<5> さらに、みりん類を含有し、その含有量が0質量%超、0.75質量%以下である前記<1>~<4>のいずれかに記載の大豆蛋白加工食品である。
<6> 大豆蛋白と、醤油と、酵母エキスと、発酵風味液と、香辛料組成物とを混合して混合物を得る工程と、
ジュール加熱装置による通電加熱で該混合物を加熱殺菌する工程とを含むことを特徴とする大豆蛋白加工食品の製造方法である。
<7> 前記<1>~<5>のいずれかに記載の大豆蛋白加工食品を使用したことを特徴とする食品である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、大豆蛋白由来の異味・異臭が軽減された大豆蛋白加工食品およびその製造方法、並びに前記大豆蛋白加工食品を使用した食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、試験例1-1および1-2のTI法による評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(官能評価手法)
本発明において、官能評価手法はTime Intensity法(以下、「TI法」と称することがある。)を採用した。TI法は、時間経過を伴う単一の特徴変化を測定する官能評価手法である。評価者に提示したサンプルからの刺激を連続して記録することで特定属性の認知刺激強度を定量化する。
具体的には、大豆蛋白加工食品を使用した食品を口に含んでから10秒間咀嚼し、その後食品を飲み込んでからの10秒間の計20秒間での大豆蛋白由来の異味・異臭の強度を評価した。
【0017】
<先味、中味、後味>
本発明において、「先味」とは食品を口に含んでから0~8秒後に感じる食味・風味、「中味」とは食品を口に含んでから8~14秒後に感じる食味・風味、「後味」とは食品を口に含んでから14~20秒後に感じる食味・風味を意味している。
【0018】
(大豆蛋白加工食品)
本発明の大豆蛋白加工食品は、大豆蛋白と、醤油と、酵母エキスと、発酵風味液と、香辛料組成物とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
本発明の大豆蛋白加工食品は、大豆蛋白由来の異味・異臭が軽減されており、特に中味から後味における異味・異臭が軽減されているメリットがある。
【0019】
<大豆蛋白>
本発明で用いる大豆蛋白としては、大豆蛋白を原料として加工食品用として製造されたものであれば、特に制限はなく、適宜選択することができる。前記大豆蛋白は、脱脂大豆を原料として粒状又は粉末状大豆蛋白として製造される。粒状又は粉末状大豆蛋白の原料となる大豆蛋白としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、脱脂大豆、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白、脱脂豆乳粉末、全脂豆乳粉末などが挙げられる。これらの中でも、脱脂大豆、分離大豆蛋白が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記粒状大豆蛋白は、脱脂大豆等の原料に水を加え、エクストルーダー等の押し出し加工機械を用いて混錬、加熱、加圧された生地をダイと呼ばれるノズルから大気圧下への放出と同時に組織加工されて製品化される。また、前記粉末状大豆蛋白は、脱脂大豆から水抽出した脱脂豆乳を酸沈殿してたんぱく質を濃縮、中和工程等を経て製品となる(非特許文献1参照)。
前記大豆蛋白としては、粒状脱脂大豆蛋白が好ましい。
前記大豆蛋白は、公知の方法により調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0020】
前記大豆蛋白の大豆蛋白加工食品における含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、10~22質量%が好ましく、12~20質量%がより好ましい。前記好ましい範囲内であると、作業性、保形性、風味、ジューシー感、および食感がより優れる点で、有利である。
【0021】
<醤油>
本発明で用いる醤油としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、通常の醸造法によって得られた濃口醤油、淡口醤油、たまり醤油、再仕込醤油、白醤油のほか、それらを加工した減塩醤油やだし醤油等が挙げられる。前記醤油は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記醤油は、市販品を適宜使用することができる。
【0022】
前記醤油の大豆蛋白加工食品における含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、0.2~1.5質量%が好ましく、0.3~1.45質量%がより好ましい。前記好ましい範囲内であると、大豆蛋白加工食品を使用した食品の風味を損なわずに大豆蛋白に由来する異味・異臭、特に先味から中味の異味・異臭を軽減できる点で、有利である。
【0023】
<酵母エキス>
本発明で用いる酵母エキスは、食品に使用し得る酵母から、自己消化法、酵素分解法、熱水抽出法、酸あるいはアルカリ分解法、物理的破砕法、凍結融解法等の定法に従って製造された抽出物であれば、特に制限はなく、適宜選択することができる。また、前記酵母エキスの形態は特に限定されるものではなく、粉末状や固形状、クリーム状など、いずれの形態であってもよい。
【0024】
前記食品に使用し得る酵母としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、パン酵母、ビール酵母、ワイン酵母、清酒酵母、味噌醤油酵母等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記酵母エキスとしては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、例えばナトリウムの含有量が7,000mg/100g以上であるものが好ましい。
【0026】
前記酵母エキスは、酵母から抽出処理して製造したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0027】
前記酵母エキスの大豆蛋白加工食品における含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、0.03~1質量%が好ましく、0.05~0.8質量%がより好ましい。前記好ましい範囲内であると、大豆蛋白加工食品を使用した食品の風味を損なわずに大豆蛋白に由来する異味・異臭、特に先味から中味の異味・異臭を軽減できる点で、有利である。
【0028】
<発酵風味液>
本発明で用いる発酵風味液としては、穀物や糖類を原料として酵母及び/又は乳酸菌を使用して発酵させ加熱処理したものあれば、特に制限はなく、適宜選択することができる。
前記発酵風味液は、市販品を使用してもよいし、適宜調製したものを使用してもよい。
前記発酵風味液は、例えば、特開2017-216952号公報などに記載の方法により調製することができる。
【0029】
前記発酵風味液としては、酵母素材熱処理物を含有する発酵原料の酵母及び/又は乳酸菌発酵物が好ましい。前記発酵原料は、通常、発酵原料として、少なくとも穀粉類を含有する。
【0030】
前記穀粉類としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、小麦粉、ライ小麦粉、大麦粉などの麦類の穀粉、米粉、ソバ粉、コーンフラワーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記酵母素材熱処理物としては、酵母素材を熱処理したものであり、食品として使用でき、発酵原料となるものであれば特に限定はされない。
【0032】
前記酵母素材としては、パン酵母、ビール酵母、ワイン酵母、清酒酵母、味噌醤油酵母から得られる素材が挙げられ、パン酵母、ビール酵母から得られる素材が好ましい。これらの酵母から得られる素材としては、例えば、酵母菌体(生菌体、乾燥菌体)、酵母粉砕物(乾燥酵母粉末等)、酵母エキス(自己消化物、酵素処理物等)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記酵母素材は、酵母から調製して使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0034】
前記酵母素材は、還元糖の存在下において熱処理されることが好ましい。
【0035】
前記還元糖としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、グルコース、フルクトース、キシロース、ガラクトース、ラクトース、アラビノース、マルトースなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、これまでにない香ばしさ・発酵風味を付与するという点で、グルコース、フルクトース、マルトース及びキシロースから選択される1種以上が好ましい。
前記還元糖は、市販品を使用することができる。
【0036】
前記熱処理の温度(以下、「加熱温度」と称することがある)としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、60~100℃が好ましく、70~90℃がより好ましい。
前記熱処理の時間(以下、「加熱処理の時間」と称することがある)としては、前記温度条件下で、30分間~6時間が好ましく、1~3時間がより好ましい。
【0037】
前記酵母及び/又は乳酸菌発酵物とする際に用いる酵母及び/又は乳酸菌は、いずれか一方を使用してもよいし、両方を使用してもよい。
前記酵母としては、食品に使用できるものであれば特に限定はされないが、例えばパン酵母、ビール酵母、ワイン酵母、清酒酵母、味噌醤油酵母が挙げられ、パン酵母、ビール酵母が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記乳酸菌としては、食品に使用できるものであれば特に限定はされないが、発酵乳の製造に用いられる一般的な乳酸菌が挙げられ、例えば、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属の乳酸菌等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記酵母及び/又は乳酸菌は、これらを含有する各種発酵乳や発酵種を用いてもよい。
前記酵母及び/又は乳酸菌の使用量としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0038】
前記発酵の温度、時間の条件としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
前記発酵の温度としては、通常は20~40℃であり、25~35℃が好ましい。
前記発酵の時間としては、前記温度条件下で、通常は12~24時間であり、16~20時間が好ましい。
【0039】
前記発酵風味液の大豆蛋白加工食品における含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、0.2~1質量%が好ましく、0.3~0.8質量%がより好ましい。前記好ましい範囲内であると、大豆蛋白加工食品を使用した食品の風味を損なわずに大豆蛋白に由来する異味・異臭、特に先味から中味の異味・異臭を軽減できる点で、有利である。
【0040】
<香辛料組成物>
本発明の香辛料組成物に配合される香辛料としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、ボリジ、ミント、マジョラム、ラベンダー、ヒソップ、タイム、バジル、しそ、ローズマリー、オレガノ、セイボリー、セージ、レッドペパー、パプリカ、セサミシード、タラゴン、ウォームウッド、ダンデリオン、よもぎ、タンジー、エンダイブ、チコリ、ペパー、ホップ、オデイユ、ナツメグ、メース、ベイリーブス、シナモン、スターアニス、マスタード、クレソン、ガーデンクレス、ホースラディッシュ、マスタードグリーン、ポピーシード、ケーパー、ポワブルローゼ、サラダバーネット、フェネグリーク、ナスターチウム、コカ、山椒、ゆず、ローレル、ハイビスカス、コーラ、オールスパイス、クローブ、パセリ、セロリ、ディル、クミン、アニス、フェンネル、キャラウェイ、コリアンダー、セリ、みつば、アジョワン、チャービル、アンジェリカ、レモングラス、にんにく、チャイブ、エシャロット、ユリ、リーク、サフラン、カルダモン、ショウガ、ターメリック、メルグアッパ、バニラなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記香辛料組成物としては、上述した香辛料の中でも、少なくともショウガ、ナツメグ、及びフェンネルからなる群から選択される2種以上を含有するものが好ましく、さらにクローブ、シナモン、クミン、及びカルダモンからなる群から選択される1種以上を含有するものがより好ましい。
前記香辛料組成物が複数の香辛料を含む場合における各香辛料の割合としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、各香辛料を等量で配合してもよいし、任意の異なる量で配合してもよい。
【0042】
前記香辛料組成物は、市販品を適宜使用することができる。
【0043】
前記香辛料組成物の大豆蛋白加工食品における含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、0.05~0.8質量%が好ましく、0.1~0.6質量%がより好ましい。前記好ましい範囲内であると、大豆蛋白加工食品を使用した食品の風味を損なわずに、先味から後味にかけて大豆蛋白に由来する異味・異臭を軽減できる点で、有利である。
【0044】
<その他成分>
本発明の大豆蛋白加工食品には、前記その他の成分として、例えば、みりん類等を配合することができる。
【0045】
-みりん類-
本発明の大豆蛋白加工食品には、大豆蛋白に由来する異味・異臭の軽減効果を向上させるために、さらにみりん類を含有させることが好ましい。
本発明においてみりん類とは、いわゆる一般的なみりん(本みりん)、発酵調味料、及びみりん風調味料等をいう。みりんとは、酒税法で言うみりんであればよく、また、その製造方法は酒税法に則ったみりんの製造方法であれば特に限定されない。前記みりん類は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記みりん類は、市販品を適宜使用することができる。
【0046】
前記みりん類を含む場合の大豆蛋白加工食品における含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、0質量%超、0.75質量%以下が好ましく、0.05~0.6質量%がより好ましい。前記好ましい範囲内であると、大豆蛋白加工食品を使用した食品の風味を損なわずに、大豆蛋白に由来する異味・異臭の軽減効果をより向上させることができる点で、有利である。
【0047】
また、本発明の大豆蛋白加工食品には、前記その他の成分として、例えば、生澱粉、加工澱粉等の澱粉類;砂糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、乳糖等の糖類;油脂類;増粘剤;アスコルビン酸;食塩等の無機塩類;麦芽粉末、麦芽エキス;食物繊維;pH調整剤等の通常大豆蛋白加工食品に使用される成分を配合することができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分の大豆蛋白加工食品における含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0048】
前記大豆蛋白加工食品の形状、構造、大きさとしては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0049】
本発明の大豆蛋白加工食品は、そのままそぼろ様食品として使用したり、後述するハンバーグなどの食品の材料として使用することができるが、その用途に限定はない。
【0050】
本発明の大豆蛋白加工食品を製造する方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、本発明の大豆蛋白加工食品の製造方法により、好適に製造することができる。
【0051】
(大豆蛋白加工食品の製造方法)
本発明の大豆蛋白加工食品の製造方法は、混合工程と、加熱殺菌工程とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0052】
<混合工程>
前記混合工程は、前記大豆蛋白と、前記醤油と、前記酵母エキスと、前記発酵風味液と、前記香辛料組成物と、必要に応じて更に前記その他の成分とを混合して混合物を得る工程である。
前記大豆蛋白、前記醤油、前記酵母エキス、前記発酵風味液、前記香辛料組成物、及び前記その他の成分は、上記した大豆蛋白加工食品の項目に記載したものと同様である。
【0053】
-混合-
前記混合の方法としては、特に制限はなく、公知の混合手段を適宜選択して行うことができる。
前記混合において、前記大豆蛋白と、前記醤油と、前記酵母エキスと、前記発酵風味液と、前記香辛料組成物と、必要に応じて前記その他の成分とを添加する順序としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
前記混合における混合時間としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、混合物の均一性、良好な食感などの点で、15~60分間が好ましい。
前記混合における温度などの条件としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0054】
前記混合工程では、前記大豆蛋白と、前記醤油と、前記酵母エキスと、前記発酵風味液と、前記香辛料組成物と、必要に応じて前記その他の成分とを加熱しながら混合することが好ましい。
前記加熱しながら混合する方法としては、特に制限はなく、公知の加熱混合手段を適宜選択して行うことができる。
前記加熱しながら混合する場合の加熱温度としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、前記醤油と、前記酵母エキスと、前記発酵風味液と、前記香辛料組成物の大豆蛋白への浸透しやすさ、良好な風味などの点で、60~90℃に維持することが好ましい。前記加熱温度は、前記混合工程を行う間、一定であってもよいし、変化してもよい。
【0055】
<加熱殺菌工程>
前記加熱殺菌工程は、ジュール加熱装置による通電加熱で前記混合物を加熱殺菌する工程である。
前記ジュール加熱装置による通電加熱を用いることで、前記混合物を短時間で所望の温度帯に昇温することができ、固形感、食感が維持され、粒が大きく、繊維感が残り、また、過加熱による色焼けがない大豆蛋白加工食品を得ることができる。
前記ジュール加熱装置による通電加熱は、直接抵抗加熱に分類されるものであり、対象に直接電気を流すことにより、体積全体に流れた電気がすべて熱変換され、対象が自ら発熱する加熱方式である。
前記ジュール加熱装置としては、特に制限はなく、公知の装置を適宜選択することができる。
【0056】
前記加熱殺菌の温度としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、80~125℃が好ましい。
前記加熱殺菌の時間としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、0.1~10分間が好ましく、0.5~2.0分間がより好ましい。
【0057】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0058】
(食品)
本発明の食品は、本発明の大豆蛋白加工食品を使用したものである。
【0059】
前記食品としては、本発明の大豆蛋白加工食品を用いる限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、従来挽肉が用いられてきた食品などが挙げられ、ハンバーグ、メンチカツ、ミートボール、担々肉味噌、ミートソース、キーマカレー、ミートパイ、そぼろ、餃子、シュウマイ、肉まん、肉詰めの具などが好適に挙げられる。
前記食品の製造方法としては、本発明の大豆蛋白加工食品を用いる以外は、通常の加工処理やレシピなどに従い、調理することができる。
【0060】
前記大豆蛋白加工食品の前記食品における使用量としては、特に制限はなく、食品の種類などに応じて適宜選択することができる。
【実施例0061】
以下、試験例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0062】
(試験例1)
下記の表1に示す配合で下記の調製方法に従い、大豆蛋白加工食品を調製した。
[調製方法]
ニーダー内に、醤油、本みりん、酵母エキスA、酵母エキスB、発酵風味液、香辛料組成物A、その他調味料、及びその他添加物を投入して混合し、均一に分散されたことを確認後、大豆蛋白と水を投入し、加熱しながら混合した(加熱温度:60℃、混合時間:10分間)。
さらに、セルロース誘導体、油脂、加工澱粉、水を順次添加して加熱しながら混合し、80℃達温後(混合時間:30分間)、ジュール加熱殺菌機に投入して95℃にて加熱殺菌し(加熱殺菌時間:1分間)、大豆蛋白加工食品を調製した。
【0063】
<評価>
調製した大豆蛋白加工食品を使用して下記の調製方法に従い、ハンバーグ様食品を調製し、下記の評価法に従い評価を行った。
[調製方法]
下記の材料をすべて混ぜ合わせ、軽くこねた後、70gずつ丸めた。
フライパンにサラダ油をひき、両面を約1分間ずつ焼いた後、水を入れて蓋をして4分間程度加熱した。
-材料-
・ 大豆蛋白加工食品 ・・・ 480g
・ タマネギみじん切り(炒めたもの) ・・・ 180g
・ パン粉 ・・・ 33g
・ 調味料(食塩、黒コショウ) ・・・ 2g
【0064】
[評価法]
-大豆臭マスキング強度の評価-
評価はTI法により行った。具体的には、調製したハンバーグ様食品を口に含んでから10秒間咀嚼し、その後食品を飲み込んでからの10秒間の計20秒間での異味異臭の強度(大豆臭の強さ)を評価した。結果を図1に示す。
また、大豆蛋白の大豆臭を100%としたときの大豆臭の低減度合いを下記の評価基準で評価した。評価は6名の訓練された評価者により行い、最も多かった評価点を下記の表1に示した。なお、評価は、先味から後味までの総合評価として点数に反映した。
[評価基準]
5点 : 大豆臭を感じない(大豆臭を90~100%程度低減)。
4点 : 大豆臭をほぼ感じない(大豆臭を70%以上90%未満程度低減)。
3点 : 大豆臭をやや感じる(大豆臭を50%以上70%未満程度低減)。
2点 : 大豆臭を感じる(大豆臭を30%以上50%未満程度低減)。
1点 : 大豆臭を非常に強く感じる(大豆臭を30%未満程度低減)。
【0065】
【表1】
【0066】
(試験例2)
下記の表2~4に示す配合とした以外は、試験例1と同様にして大豆蛋白加工食品を調製した。
【0067】
<評価>
上記で得られた大豆蛋白加工食品を使用した以外は、試験例1と同様にしてハンバーグ様食品を調製し、大豆蛋白の大豆臭を100%としたときの大豆臭の低減度合いの評価を行った。結果を下記の表2~4に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
(試験例3)
下記の表5~6に示す配合とした以外は、試験例1と同様にして大豆蛋白加工食品を調製した。
【0072】
<評価>
上記で得られた大豆蛋白加工食品を使用した以外は、試験例1と同様にしてハンバーグ様食品を調製し、大豆蛋白の大豆臭を100%としたときの大豆臭の低減度合いの評価を行った。結果を下記の表5~6に示す。
【0073】
【表5】
【0074】
【表6】
【0075】
(試験例4)
下記の表7に示す配合とした以外は、試験例1と同様にして大豆蛋白加工食品を調製した。
【0076】
<評価>
上記で得られた大豆蛋白加工食品を使用した以外は、試験例1と同様にしてハンバーグ様食品を調製し、大豆蛋白の大豆臭を100%としたときの大豆臭の低減度合いの評価を行った。結果を下記の表7に示す。
【0077】
【表7】
【0078】
(試験例5)
下記の表8に示す配合とした以外は、試験例1と同様にして大豆蛋白加工食品を調製した。
【0079】
<評価>
上記で得られた大豆蛋白加工食品を使用した以外は、試験例1と同様にしてハンバーグ様食品を調製し、大豆蛋白の大豆臭を100%としたときの大豆臭の低減度合いの評価を行った。結果を下記の表8に示す。
【0080】
【表8】
【0081】
(試験例6)
下記の表9~10に示す配合とした以外は、試験例1と同様にして大豆蛋白加工食品を調製した。
【0082】
<評価>
上記で得られた大豆蛋白加工食品を使用した以外は、試験例1と同様にしてハンバーグ様食品を調製し、大豆蛋白の大豆臭を100%としたときの大豆臭の低減度合いの評価を行った。結果を下記の表9~10に示す。
【0083】
【表9】
【0084】
【表10】
【0085】
(試験例7)
下記の表11に示す配合とした以外は、試験例1と同様にして大豆蛋白加工食品を調製した。
【0086】
<評価>
上記で得られた大豆蛋白加工食品を使用した以外は、試験例1と同様にしてハンバーグ様食品を調製し、大豆蛋白の大豆臭を100%としたときの大豆臭の低減度合いの評価を行った。結果を下記の表11に示す。
【0087】
【表11】
【0088】
(試験例8)
下記の表12~14に示す配合とした以外は、試験例1と同様にして大豆蛋白加工食品を調製した。
【0089】
<評価>
上記で得られた大豆蛋白加工食品を使用した以外は、試験例1と同様にしてハンバーグ様食品を調製し、大豆蛋白の大豆臭を100%としたときの大豆臭の低減度合いの評価を行った。結果を下記の表12~14に示す。
【0090】
【表12】
【0091】
【表13】
【0092】
【表14】
【0093】
以上の結果から、本発明によれば、大豆蛋白由来の異味・異臭、特に中味から後味における異味・異臭が軽減された大豆蛋白加工食品が得られることが確認された。
【0094】
なお、上記試験例で使用した成分の詳細は以下の通りである。
・ 大豆蛋白 ・・・ 粒状脱脂大豆蛋白
・ 酵母エキスA ・・・ ナトリウム含量11,000mg/100gである酵母エキス
・ 酵母エキスB ・・・ ナトリウム含量7,300mg/100gである酵母エキス
・ 酵母エキスC ・・・ ナトリウム含量2,000mg/100gである酵母エキス
・ 発酵風味液 ・・・ 酵母素材熱処理物を含有する発酵原料の酵母及び乳酸菌による発酵物
・ 香辛料組成物A ・・・ ショウガ、ナツメグ、フェンネル、クローブ
・ 香辛料組成物B ・・・ ナツメグ、フェンネル
・ 香辛料組成物C ・・・ ショウガ、ナツメグ、フェンネル
・ 香辛料組成物D ・・・ ショウガ、ナツメグ、フェンネル、シナモン
・ 香辛料組成物E ・・・ ショウガ、ナツメグ、フェンネル、クミン
・ 香辛料組成物F ・・・ ショウガ、ナツメグ、フェンネル、カルダモン
・ 香辛料組成物G ・・・ ショウガ、ナツメグ
・ 香辛料組成物H ・・・ ショウガ、フェンネル
・ 香辛料組成物I ・・・ ショウガ、シナモン
・ 香辛料組成物J ・・・ ナツメグ、シナモン
・ 香辛料組成物K ・・・ クミン、シナモン
・ 油脂 ・・・ 菜種油
・ セルロース誘導体 ・・・ メチルセルロース
・ 加工澱粉 ・・・ ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉
図1