(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179099
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ポリアミック酸の製造方法、及び剥離層形成用組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097645
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(72)【発明者】
【氏名】松山 元信
【テーマコード(参考)】
4J043
【Fターム(参考)】
4J043PA02
4J043PB23
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA35
4J043SA06
4J043SB01
4J043TA22
4J043TB01
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA262
4J043UA451
4J043UA561
4J043UB011
4J043UB121
4J043UB131
4J043UB151
4J043UB161
4J043UB221
4J043UB402
4J043XA04
4J043XA16
4J043XB09
4J043YA06
4J043ZA02
4J043ZB11
4J043ZB21
4J043ZB47
(57)【要約】
【課題】 優れた剥離性を有する剥離層の形成に有用なポリアミック酸を製造するポリアミック酸の製造方法などの提供。
【解決手段】 ポリアミック酸を製造するポリアミック酸製造工程を含む、ポリアミック酸の製造方法であって、
前記ポリアミック酸が、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン成分と、ジカルボン酸無水物及びモノアミン成分の少なくともいずれかとを含む原料成分の反応生成物であり、
前記ポリアミック酸製造工程における前記テトラカルボン酸二無水物と前記ジアミン成分との反応が、前記ジカルボン酸無水物及び前記モノアミン成分の少なくともいずれかの存在下で行われる、ポリアミック酸の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミック酸を製造するポリアミック酸製造工程を含む、ポリアミック酸の製造方法であって、
前記ポリアミック酸が、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン成分と、ジカルボン酸無水物及びモノアミン成分の少なくともいずれかとを含む原料成分の反応生成物であり、
前記ポリアミック酸製造工程における前記テトラカルボン酸二無水物と前記ジアミン成分との反応が、前記ジカルボン酸無水物及び前記モノアミン成分の少なくともいずれかの存在下で行われる、ポリアミック酸の製造方法。
【請求項2】
前記ジカルボン酸無水物が、芳香族ジカルボン酸無水物を含み、
前記モノアミン成分が、環構造を有するモノアミンを含む、
請求項1に記載のポリアミック酸の製造方法。
【請求項3】
前記ジカルボン酸無水物が、下記式(E1-1)で表され、
前記モノアミン成分が、下記式(E2-1)又は式(E2-2)で表される、
請求項1に記載のポリアミック酸の製造方法。
【化1】
(式(E1-1)中、R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、又は炭素原子数6~20のアリール基を表す。)
【化2】
(式(E2-1)及び式(E2-2)中、R
1~R
5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~10の炭化水素基を表す。R
1~R
5のうちの隣接する2つは、一緒になって環構造を形成していてもよい。
R
6は、単結合、又は炭素原子数1~4のアルキレン基を表す。)
【請求項4】
前記テトラカルボン酸二無水物が、芳香族テトラカルボン酸二無水物を含む、請求項1に記載のポリアミック酸の製造方法。
【請求項5】
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物が、下記式(1-1)又は式(1-2)で表される、請求項4に記載のポリアミック酸の製造方法。
【化3】
(式(1-1)中、Ar
1は、置換基を有していてもよいベンゼン環から隣接する2つの水素原子の組を2組除いた4価の基、又は置換基を有していてもよいナフタレン環から隣接する2つの水素原子の組を2組除いた4価の基を表す。
式(1-2)中、X
1は、単結合、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオエーテル結合、スルホニル結合、-C(=O)N(-R)-(Rは、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す。)、又は下記式(1-2-1)で表される基を表す。
R
aは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す。
nは、それぞれ独立して、0~3の整数を表す。
1つの(R
a)
nにおいて、nが2以上のとき、2つ以上のR
aは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。)
【化4】
(式(1-2-1)中、Y
1及びY
2は、それぞれ独立して、単結合、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオエーテル結合、スルホニル結合、又は-C(=O)N(-R)-(Rは、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す。)を表す。
Ar
2は、置換基を有していてもよいフェニレン基、又は置換基を有していてもよいビフェニルから2つの水素原子を除いた2価の基を表す。
*は、結合手を表す。)
【請求項6】
前記ジアミン成分が、芳香族ジアミンを含む、請求項1に記載のポリアミック酸の製造方法。
【請求項7】
前記芳香族ジアミンが、下記式(2-1)又は式(2-2)で表される、請求項6に記載のポリアミック酸の製造方法。
【化5】
(式(2-1)中、X
11は、単結合、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオエーテル結合、スルホニル結合、-C(=O)N(-R)-(Rは、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す。)、又は下記式(2-1-1)で表される基を表す。
R
bは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す。
mは、それぞれ独立して、0~4の整数を表す。
1つの(R
b)
mにおいて、mが2以上のとき、2つ以上のR
bは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
式(2-2)中、X
12は、-NH-基、-O-基、又は-S-基を表す。
R
cは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す。
p1は、0~3の整数を表す。p2は、0~4の整数を表す。
(R
c)
p1において、p1が2以上のとき、2つ以上のR
cは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
(R
c)
p2において、p2が2以上のとき、2つ以上のR
cは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。)
【化6】
(式(2-1-1)中、Y
11及びY
12は、それぞれ独立して、単結合、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオエーテル結合、スルホニル結合、又は-C(=O)N(-R)-(Rは、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す。)を表す。
Z
11は、炭素原子数1~20の2価の炭化水素基を表す。
*は、結合手を表す。)
【請求項8】
前記原料成分が、前記モノアミン成分を含み、
前記ポリアミック酸製造工程が、前記ジアミン成分と前記モノアミン成分とを含む有機溶媒溶液中に、前記テトラカルボン酸二無水物を加え、反応させることを含む、請求項1に記載のポリアミック酸の製造方法。
【請求項9】
前記原料成分が、前記ジカルボン酸無水物を含み、
前記ポリアミック酸製造工程が、前記ジアミン成分を含む有機溶媒溶液中に、前記テトラカルボン酸二無水物及び前記ジカルボン酸無水物を加え、反応させることを含む、請求項1に記載のポリアミック酸の製造方法。
【請求項10】
ポリアミック酸と、有機溶媒とを含む剥離層形成用組成物を製造する、組成物の製造方法であって、
請求項1から9のいずれかに記載のポリアミック酸の製造方法によって前記ポリアミック酸を製造することを含む、組成物の製造方法。
【請求項11】
剥離層の製造方法であって、
請求項10に記載の組成物の製造方法によって製造された剥離層形成用組成物を用いて剥離層を形成する工程を含む、剥離層の製造方法。
【請求項12】
樹脂基板を備えるフレキシブル電子デバイスの製造方法であって、
請求項11に記載の剥離層の製造方法によって製造された剥離層を用いる、樹脂基板を備えるフレキシブル電子デバイスの製造方法。
【請求項13】
ポリアミック酸と、有機溶媒とを含む剥離層形成用組成物であって、
前記ポリアミック酸が、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン成分と、ジカルボン酸無水物及びモノアミン成分の少なくともいずれかとを含む原料成分の反応生成物であり、
前記ポリアミック酸の構成成分についての1H-NMR分析において、前記テトラカルボン酸二無水物及び前記ジアミン成分の合計に対する、前記ジカルボン酸無水物及び前記モノアミン成分の合計のモル割合が、3モル%以上である、剥離層形成用組成物。
【請求項14】
前記モル割合が、50モル%以下である、請求項13に記載の剥離層形成用組成物。
【請求項15】
前記ジカルボン酸無水物が、芳香族ジカルボン酸無水物を含み、
前記モノアミン成分が、環構造を有するモノアミンを含む、
請求項13に記載の剥離層形成用組成物。
【請求項16】
請求項13から15のいずれかに記載の剥離層形成用組成物により形成された剥離層。
【請求項17】
請求項16に記載の剥離層を用いる、樹脂基板を備えるフレキシブル電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミック酸の製造方法、剥離層形成用組成物の製造方法、剥離層の製造方法、及び樹脂基板を備えるフレキシブル電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスには曲げるという機能付与や薄型化及び軽量化といった性能が求められている。このことから、従来の重く脆弱で曲げることができないガラス基板に代わって、軽量なフレキシブルプラスチック基板を用いることが求められる。
【0003】
特に、新世代ディスプレイでは、軽量なフレキシブルプラスチック基板(以下、樹脂基板と表記する)を用いたアクティブマトリクス型フルカラーTFT(thin film transistor)ディスプレイパネルの開発が求められている。この新世代ディスプレイに関する技術は、フレキシブルディスプレイや、フレキシブルスマートフォン、ミラーディスプレイ等の様々な分野への転用が期待されている。
【0004】
そこで、樹脂フィルムを基板とした電子デバイスの製造方法が各種検討され始めており、新世代ディスプレイでは、既存のTFT設備を転用可能なプロセスで製造検討が進められている。例えば、特許文献1、2及び3では、ガラス基板上にアモルファスシリコン薄膜層を形成し、その薄膜層上にプラスチック基板を形成した後に、ガラス面側からレーザーを照射して、アモルファスシリコンの結晶化に伴い発生する水素ガスによりプラスチック基板をガラス基板から剥離する方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献4では、特許文献1~3に開示の技術を用いて被剥離層(特許文献4において「被転写層」と記載される)をプラスチックフィルムに貼りつけて液晶表示装置を完成させる方法が開示されている。
【0006】
しかし、特許文献1~4で開示された方法、特に特許文献4で開示された方法では、レーザー光を透過させるために透光性の高い基板を使用することが必須であること、基板を通過させ、更にアモルファスシリコンに含まれる水素を放出させるのに十分な、比較的大きなエネルギーのレーザー光の照射が必要とされること、レーザー光の照射によって被剥離層に損傷を与えてしまう場合があること、という問題がある。しかも、剥離層が大面積である場合には、レーザー処理に長時間を要するため、デバイス作製の生産性を上げることが難しい。
【0007】
そこで、その上に形成されたフレキシブル電子デバイスの樹脂基板を損傷せずに剥離可能であるとともに、TFT工程等の比較的高温での加熱処理後でも、その剥離性が変化しない剥離層を与える、剥離層形成用組成物として、特定のポリアミック酸と有機溶媒とを含む剥離層形成用組成物が提案されている(例えば、特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10-125929号公報
【特許文献2】特開平10-125931号公報
【特許文献3】国際公開第2005/050754号
【特許文献4】特開平10-125930号公報
【特許文献5】国際公開第2017/204178号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
剥離層には、剥離する時には容易に剥がすことができる剥離性が求められる。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた剥離性を有する剥離層の形成に有用なポリアミック酸を製造するポリアミック酸の製造方法、及び当該製造方法を用いた剥離層形成用組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、末端基が導入されたポリアミック酸を特定の方法で製造することで、優れた剥離性を有する剥離層が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] ポリアミック酸を製造するポリアミック酸製造工程を含む、ポリアミック酸の製造方法であって、
前記ポリアミック酸が、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン成分と、ジカルボン酸無水物及びモノアミン成分の少なくともいずれかとを含む原料成分の反応生成物であり、
前記ポリアミック酸製造工程における前記テトラカルボン酸二無水物と前記ジアミン成分との反応が、前記ジカルボン酸無水物及び前記モノアミン成分の少なくともいずれかの存在下で行われる、ポリアミック酸の製造方法。
[2] 前記ジカルボン酸無水物が、芳香族ジカルボン酸無水物を含み、
前記モノアミン成分が、環構造を有するモノアミンを含む、
[1]に記載のポリアミック酸の製造方法。
[3] 前記ジカルボン酸無水物が、下記式(E1-1)で表され、
前記モノアミン成分が、下記式(E2-1)又は式(E2-2)で表される、
[1]又は[2]に記載のポリアミック酸の製造方法。
【化1】
(式(E1-1)中、R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、又は炭素原子数6~20のアリール基を表す。)
【化2】
(式(E2-1)及び式(E2-2)中、R
1~R
5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~10の炭化水素基を表す。R
1~R
5のうちの隣接する2つは、一緒になって環構造を形成していてもよい。
R
6は、単結合、又は炭素原子数1~4のアルキレン基を表す。)
[4] 前記テトラカルボン酸二無水物が、芳香族テトラカルボン酸二無水物を含む、[1]から[3]のいずれかに記載のポリアミック酸の製造方法。
[5] 前記芳香族テトラカルボン酸二無水物が、下記式(1-1)又は式(1-2)で表される、[4]に記載のポリアミック酸の製造方法。
【化3】
(式(1-1)中、Ar
1は、置換基を有していてもよいベンゼン環から隣接する2つの水素原子の組を2組除いた4価の基、又は置換基を有していてもよいナフタレン環から隣接する2つの水素原子の組を2組除いた4価の基を表す。
式(1-2)中、X
1は、単結合、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオエーテル結合、スルホニル結合、-C(=O)N(-R)-(Rは、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す。)、又は下記式(1-2-1)で表される基を表す。
R
aは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す。
nは、それぞれ独立して、0~3の整数を表す。
1つの(R
a)
nにおいて、nが2以上のとき、2つ以上のR
aは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。)
【化4】
(式(1-2-1)中、Y
1及びY
2は、それぞれ独立して、単結合、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオエーテル結合、スルホニル結合、又は-C(=O)N(-R)-(Rは、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す。)を表す。
Ar
2は、置換基を有していてもよいフェニレン基、又は置換基を有していてもよいビフェニルから2つの水素原子を除いた2価の基を表す。
*は、結合手を表す。)
[6] 前記ジアミン成分が、芳香族ジアミンを含む、[1]から[5]のいずれかに記載のポリアミック酸の製造方法。
[7] 前記芳香族ジアミンが、下記式(2-1)又は式(2-2)で表される、[6]に記載のポリアミック酸の製造方法。
【化5】
(式(2-1)中、X
11は、単結合、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオエーテル結合、スルホニル結合、-C(=O)N(-R)-(Rは、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す。)、又は下記式(2-1-1)で表される基を表す。
R
bは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す。
mは、それぞれ独立して、0~4の整数を表す。
1つの(R
b)
mにおいて、mが2以上のとき、2つ以上のR
bは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
式(2-2)中、X
12は、-NH-基、-O-基、又は-S-基を表す。
R
cは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す。
p1は、0~3の整数を表す。p2は、0~4の整数を表す。
(R
c)
p1において、p1が2以上のとき、2つ以上のR
cは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
(R
c)
p2において、p2が2以上のとき、2つ以上のR
cは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。)
【化6】
(式(2-1-1)中、Y
11及びY
12は、それぞれ独立して、単結合、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオエーテル結合、スルホニル結合、又は-C(=O)N(-R)-(Rは、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す。)を表す。
Z
11は、炭素原子数1~20の2価の炭化水素基を表す。
*は、結合手を表す。)
[8] 前記原料成分が、前記モノアミン成分を含み、
前記ポリアミック酸製造工程が、前記ジアミン成分と前記モノアミン成分とを含む有機溶媒溶液中に、前記テトラカルボン酸二無水物を加え、反応させることを含む、[1]から[7]のいずれかに記載のポリアミック酸の製造方法。
[9] 前記原料成分が、前記ジカルボン酸無水物を含み、
前記ポリアミック酸製造工程が、前記ジアミン成分を含む有機溶媒溶液中に、前記テトラカルボン酸二無水物及び前記ジカルボン酸無水物を加え、反応させることを含む、[1]から[7]のいずれかに記載のポリアミック酸の製造方法。
[10] ポリアミック酸と、有機溶媒とを含む剥離層形成用組成物を製造する、組成物の製造方法であって、
[1]から[9]のいずれかに記載のポリアミック酸の製造方法によって前記ポリアミック酸を製造することを含む、組成物の製造方法。
[11] 剥離層の製造方法であって、
[10]に記載の組成物の製造方法によって製造された剥離層形成用組成物を用いて剥離層を形成する工程を含む、剥離層の製造方法。
[12] 樹脂基板を備えるフレキシブル電子デバイスの製造方法であって、
[11]に記載の剥離層の製造方法によって製造された剥離層を用いる、樹脂基板を備えるフレキシブル電子デバイスの製造方法。
[13] ポリアミック酸と、有機溶媒とを含む剥離層形成用組成物であって、
前記ポリアミック酸が、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン成分と、ジカルボン酸無水物及びモノアミン成分の少なくともいずれかとを含む原料成分の反応生成物であり、
前記ポリアミック酸の構成成分についての
1H-NMR分析において、前記テトラカルボン酸二無水物及び前記ジアミン成分の合計に対する、前記ジカルボン酸無水物及び前記モノアミン成分の合計のモル割合が、3モル%以上である、剥離層形成用組成物。
[14] 前記モル割合が、50モル%以下である、[13]に記載の剥離層形成用組成物。
[15] 前記ジカルボン酸無水物が、芳香族ジカルボン酸無水物を含み、
前記モノアミン成分が、環構造を有するモノアミンを含む、
[13]又は[14]に記載の剥離層形成用組成物。
[16] [13]から[15]のいずれかに記載の剥離層形成用組成物によりけいせいされた剥離層。
[17] [16]に記載の剥離層を用いる、樹脂基板を備えるフレキシブル電子デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、優れた剥離性を有する剥離層の形成に有用なポリアミック酸を製造するポリアミック酸の製造方法、及び当該製造方法を用いた剥離層形成用組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(ポリアミック酸の製造方法)
本発明のポリアミック酸の製造方法は、ポリアミック酸を製造するポリアミック酸製造工程を含む。
ポリアミック酸は、原料成分の反応生成物である。
原料成分は、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン成分と、ジカルボン酸無水物及びモノアミン成分の少なくともいずれかとを含む。
ポリアミック酸製造工程におけるテトラカルボン酸二無水物とジアミン成分との反応は、ジカルボン酸無水物及びモノアミン成分の少なくともいずれかの存在下で行われる。
【0015】
ジカルボン酸無水物及びモノアミン成分の少なくともいずれかに由来する基が末端基として導入されたポリアミック酸を製造する際に、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分との反応を、ジカルボン酸無水物及びモノアミン成分の少なくともいずれかの存在下で行うことで、得られたポリアミック酸と有機溶媒とを含む剥離層形成用組成物から形成される剥離層は、優れた剥離性を有する。
その理由について、本発明者は以下の様に考えている。
ポリアミック酸の末端に末端基を導入しようとする場合、末端基を与える原料成分の仕込み量として同じ量を用いても、ポリアミック酸の製造方法によって、末端基の導入量は異なる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを反応させた後に、更にジカルボン酸無水物及びモノアミン成分の少なくともいずれかを反応させてポリアミック酸を製造する場合と比べて、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分との反応を、ジカルボン酸無水物及びモノアミン成分の少なくともいずれかの存在下で行う方が、ポリアミック酸の末端により多くの末端基(ジカルボン酸無水物に由来する基及びモノアミン成分に由来する基)が導入される。その結果、剥離性が向上する。即ち、より小さい剥離力で剥離することができる。
【0016】
<<テトラカルボン酸二無水物>>
テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、優れた耐熱性を有する剥離層が得られる点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物を含むことが好ましい。
ここで、芳香族テトラカルボン酸二無水物とは、同一の又は異なる芳香族環に、合計で2つの酸無水物基が結合する化合物である。
芳香族環は、芳香族炭化水素環であってもよいし、芳香族複素環であってもよい。
【0017】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、より優れた耐熱性を有する剥離層が得られる点から、下記式(1-1)又は式(1-2)で表されることが好ましい。
【化7】
(式(1-1)中、Ar
1は、置換基を有していてもよいベンゼン環から隣接する2つの水素原子の組を2組除いた4価の基、又は置換基を有していてもよいナフタレン環から隣接する2つの水素原子の組を2組除いた4価の基を表す。
式(1-2)中、X
1は、単結合、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオエーテル結合、スルホニル結合、-C(=O)N(-R)-(Rは、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す。)、又は下記式(1-2-1)で表される基を表す。
R
aは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す。
nは、それぞれ独立して、0~3の整数を表す。
1つの(R
a)
nにおいて、nが2以上のとき、2つ以上のR
aは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。)
【化8】
(式(1-2-1)中、Y
1及びY
2は、それぞれ独立して、単結合、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオエーテル結合、スルホニル結合、又は-C(=O)N(-R)-(Rは、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す。)を表す。
Ar
2は、置換基を有していてもよいフェニレン基、又は置換基を有していてもよいビフェニルから2つの水素原子を除いた2価の基を表す。
*は、結合手を表す。)
【0018】
本明細書において、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0019】
本明細書において、炭素原子数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などが挙げられる。
【0020】
式(1-1)中のAr1におけるベンゼン環及びナフタレン環が有していてもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基などが挙げられる。
【0021】
式(1-1)中のAr
1としては、例えば、以下の4価の基が挙げられる。
【化9】
(式中、*は、結合手を表す)。
【0022】
式(1-2)中のnは、0~3の整数であり、0~2の整数が好ましく、0がより好ましい。
【0023】
式(1-2-1)中のAr2におけるフェニレン基及びビフェニルから2つの水素原子を除いた2価の基が有していてもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基などが挙げられる。
【0024】
式(1-2)中のX
1としては、例えば、以下の基が挙げられる。
【化10】
(式中、*は、結合手を表す)。
【0025】
芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、ベンゼン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,7,8-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-2,2’,3,3’-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-2,3,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、アントラセン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、アントラセン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、アントラセン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、アントラセン-1,2,7,8-テトラカルボン酸二無水物、アントラセン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-1,2,7,8-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-1,2,9,10-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-2,3,9,10-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-3,4,5,6-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物等が挙げられるが、これらに限定されない。これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
芳香族テトラカルボン酸二無水物の一例の構造式を以下に示す。
【化11】
【化12】
【0027】
テトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物を含んでいてもよい。そのようなテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、2,3,5-トリカルボキシ-2-シクロペンタン酢酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、3,5,6-トリカルボキシ-2-ノルボルナン酢酸二無水物の様な脂環式テトラカルボン酸二無水物や、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物の様な脂肪族テトラカルボン酸二無水物等の化合物を挙げることができる。
【0028】
テトラカルボン酸二無水物における芳香族テトラカルボン酸二無水物のモル割合としては、特に限定されないが、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上が特に好ましい。
テトラカルボン酸二無水物における芳香族テトラカルボン酸二無水物のモル割合は、100モル%以下であってもよいし、100モル%未満であってもよい。
【0029】
<<ジアミン成分>>
ジアミン成分としては、特に限定されないが、優れた耐熱性を有する剥離層が得られる点から、芳香族ジアミンを含むことが好ましい。
ここで、芳香族ジアミンとは、同一の又は異なる芳香族環に、合計で2つのアミノ基(-NH2)が結合する化合物である。
芳香族環は、芳香族炭化水素環であってもよいし、芳香族複素環であってもよい。
【0030】
芳香族ジアミンとしては、特に限定されないが、より優れた耐熱性を有する剥離層が得られる点から、下記式(2-1)又は式(2-2)で表されることが好ましい。
【化13】
(式(2-1)中、X
11は、単結合、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオエーテル結合、スルホニル結合、-C(=O)N(-R)-(Rは、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す。)、又は下記式(2-1-1)で表される基を表す。
R
bは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す。
mは、それぞれ独立して、0~4の整数を表す。
1つの(R
b)
mにおいて、mが2以上のとき、2つ以上のR
bは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
式(2-2)中、X
12は、-NH-基、-O-基、又は-S-基を表す。
R
cは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す。
p1は、0~3の整数を表す。p2は、0~4の整数を表す。
(R
c)
p1において、p1が2以上のとき、2つ以上のR
cは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
(R
c)
p2において、p2が2以上のとき、2つ以上のR
cは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。)
【化14】
(式(2-1-1)中、Y
11及びY
12は、それぞれ独立して、単結合、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオエーテル結合、スルホニル結合、又は-C(=O)N(-R)-(Rは、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す。)を表す。
Z
11は、炭素原子数1~20の2価の炭化水素基を表す。
*は、結合手を表す。)
【0031】
式(2-1-1)中のZ11の炭素原子数1~20の2価の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1~20のアルキレン基が挙げられる。
炭素原子数1~20のアルキレン基としては、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、エイコサニレン基等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明では、炭素原子数2~6のアルキレン基が好ましく、炭素原子数2~6の直鎖状のアルキレン基がより好ましい。
【0032】
式(2-1-1)中のZ11の炭素原子数1~20の2価の炭化水素基は、例えば、フルオレン骨格を有する2価の炭化水素基であってもよい。
【0033】
式(2-1)において、1つのベンゼン環に結合するアミノ基(-NH2)とX11とは、本発明の効果を好適に得る観点から、パラ位であることが好ましい。
【0034】
式(2-1)中のmは、0~4の整数であり、0~2の整数が好ましく、0がより好ましい。
式(2-2)中のp1は、0~3の整数であり、0~2の整数が好ましく、0がより好ましい。
式(2-2)中のp2は、0~4の整数であり、0~2の整数が好ましく、0がより好ましい。
【0035】
芳香族ジアミンとしては、例えば、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2-メチル-1,4-フェニレンジアミン、5-メチル-1,3-フェニレンジアミン、4-メチル-1,3-フェニレンジアミン、2-(トリフルオロメチル)-1,4-フェニレンジアミン、2-(トリフルオロメチル)-1,3-フェニレンジアミン及び4-(トリフルオロメチル)-1,3-フェニレンジアミン、ベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,3’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’-ジアミノフェニルエーテル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ジアミノベンズアニリド、5-アミノ-2-(3-アミノフェニル)-1H-ベンゾイミダゾール、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0036】
芳香族ジアミンの一例の構造式を以下に示す。
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【0037】
ジアミン成分における芳香族ジアミンのモル割合としては、特に限定されないが、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上が特に好ましい。
ジアミン成分における芳香族ジアミンのモル割合は、100モル%以下であってもよいし、100モル%未満であってもよい。
【0038】
<<ジカルボン酸無水物>>
ジカルボン酸無水物としては、特に限定されないが、優れた耐熱性を有する剥離層が得られる点から、芳香族ジカルボン酸無水物を含むことが好ましい。
ここで、芳香族ジカルボン酸無水物とは、同一の又は異なる芳香族環に、1つの酸無水物基が結合する化合物である。
芳香族環は、芳香族炭化水素環であってもよいし、芳香族複素環であってもよい。
【0039】
芳香族ジカルボン酸無水物としては、より優れた耐熱性を有する剥離層が得られる点から、下記式(E1-1)で表されることが好ましい。
【化19】
(式(E1-1)中、R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、又は炭素原子数6~20のアリール基を表す。)
【0040】
芳香族ジカルボン酸無水物の具体例としては、フタル酸無水物、2,3-ナフタレンジカルボン酸無水物、及び1,8-ナフタレンジカルボン酸無水物等を挙げることができる。本発明では、これらの中でも、安全性や取り扱い性、反応性等を考慮すると、本発明では特にフタル酸無水物が好適である。
【0041】
ジカルボン酸無水物における芳香族ジカルボン酸無水物のモル割合としては、特に限定されないが、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上が特に好ましい。
ジカルボン酸無水物における芳香族ジカルボン酸無水物のモル割合は、100モル%以下であってもよいし、100モル%未満であってもよい。
【0042】
<<モノアミン成分>>
モノアミン成分としては、特に限定されないが、優れた耐熱性を有する剥離層が得られる点から、環構造を有するモノアミンを含むことが好ましい。
環構造としては、非芳香族環であってもよいし、芳香族環であってもよい。
環構造の員数としては、特に制限されず、例えば、5員環~7員環が挙げられる。
環構造は、単環であってもよいし、多環であってもよい。
非芳香族環としては、例えば、脂肪族炭化水素環が挙げられる。
芳香族環は、芳香族炭化水素環であってもよいし、芳香族複素環であってもよい。
【0043】
モノアミン成分としては、より優れた耐熱性を有する剥離層が得られる点から、下記式(E2-1)又は式(E2-2)で表されることが好ましい。
【化20】
(式(E2-1)及び式(E2-2)中、R
1~R
5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~10の炭化水素基を表す。R
1~R
5のうちの隣接する2つは、一緒になって環構造を形成していてもよい。
R
6は、単結合、又は炭素原子数1~4のアルキレン基を表す。)
【0044】
モノアミン成分としては、例えば、アニリン、1-ナフチルアミン、2-ナフチルアミン、1-アミノアントラセン、2-アミノアントラセン、9-アミノアントラセン、9-アミノフェナントラセン、2-アミノビフェニル、3-アミノビフェニル、4-アミノビフェニル等が挙げられる。
【0045】
式(E2-1)で表されるモノアミンの一例の構造式を以下に示す。
【化21】
【0046】
式(E2-2)で表されるモノアミンの一例の構造式を以下に示す。
【化22】
【0047】
モノアミン成分における環構造を有するモノアミンのモル割合としては、特に限定されないが、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上が特に好ましい。
モノアミン成分における環構造を有するモノアミンのモル割合は、100モル%以下であってもよいし、100モル%未満であってもよい。
【0048】
ポリアミック酸製造工程は、好ましくは、ジアミン成分を含む有機溶媒溶液中に、テトラカルボン酸二無水物を加え、反応させることを含む。テトラカルボン酸二無水物は粉末状かつ有機溶媒に溶けにくいことが多く、ジアミン成分を含む有機溶媒溶液にテトラカルボン酸二無水物を加える方が、反応が均一に進行しやすい。
また、ポリアミック酸製造工程は、好ましくは、ジアミン成分とモノアミン成分と含む有機溶媒溶液中に、テトラカルボン酸二無水物を加え、反応させることを含む。
また、ポリアミック酸製造工程は、好ましくは、ジアミン成分を含む有機溶媒溶液中に、テトラカルボン酸二無水物及びジカルボン酸無水物を加え、反応させることを含む。なお、この場合、テトラカルボン酸二無水物及びジカルボン酸無水物は、同時に有機溶媒溶液に加えてもよいし、テトラカルボン酸二無水物を有機溶媒溶液に加えた後に、ジカルボン酸無水物を有機溶媒溶液に加えてもよいし、ジカルボン酸無水物を有機溶媒溶液に加えた後に、テトラカルボン酸二無水物を有機溶媒溶液に加えてもよい。
【0049】
ポリアミック酸製造工程としては、例えば、以下の(1)~(2)の態様が挙げられる。
(1):反応容器に、ジアミン成分と、モノアミン成分と、有機溶媒とを入れた後に、更に、反応容器にテトラカルボン酸二無水物を入れ、反応を行うことで、ポリアミック酸を得る工程
(2):反応容器に、ジアミン成分と、有機溶媒とを入れた後に、更に、テトラカルボン酸二無水物と、ジカルボン酸無水物とを反応容器に入れ、反応を行うことで、ポリアミック酸を得る工程
【0050】
テトラカルボン酸二無水物(M1)と、ジアミン成分(M2)との仕込み比(モル比)は、所望するポリアミック酸の分子量やモノマー単位の割合等を勘案して適宜設定することができるが、モル比(M1:M2)で、100:150~150:100が挙げられる。
テトラカルボン酸二無水物、ジアミン成分、ジカルボン酸無水物、及びモノアミン成分の仕込みモル量は、所望するポリアミック酸の分子量やモノマー単位の割合等を勘案して適宜設定することができるが、以下の式を満たすことが好ましい。
0.8≦〔M1+(0.5×M3)〕/〔M2+0.5×M4〕≦1.2
M1:テトラカルボン酸二無水物の仕込みモル量
M2:ジアミン成分の仕込みモル量
M3:ジカルボン酸無水物の仕込みモル量
M4:モノアミン成分の仕込みモル量
なお、式中、ジカルボン酸無水物及びジアミン成分のいずれかの仕込みモル量は0モルであってもよい。
【0051】
上述した反応に用いる有機溶媒は、反応に悪影響を及ぼさない限り特に限定されないが、その具体例としては、m-クレゾール、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-プロポキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-イソプロポキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-sec-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。なお、有機溶媒は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
特に、反応に用いる有機溶媒は、原料(ジアミン成分、テトラカルボン酸二無水物、ジカルボン酸無水物、モノアミン成分)、及び生成物(ポリアミック酸)をよく溶解することから、下記式(S1)で表されるアミド類、下記式(S2)で表されるアミド類、及び下記式(S3)で表されるアミド類から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【化23】
(式(S1)~式(S3)中、R
51、及びR
53は、それぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基を表し、R
54は、水素原子、又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、R
52は、炭素原子数1~5のアルキレン基を表す。)
【0053】
炭素原子数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。これらのうち、炭素原子数1~3のアルキル基が好ましく、炭素原子数1又は2のアルキル基がより好ましい。
【0054】
炭素原子数1~5のアルキレン基としては、メチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1,5-ペンチレン基などが挙げられる。これらの中でも、メチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基が好ましく、メチレン基、1,2-エチレン基がより好ましい。
【0055】
反応温度は、用いる溶媒の融点から沸点までの範囲で適宜設定すればよく、通常0~100℃程度であるが、得られるポリアミック酸のイミド化を防いでポリアミック酸単位の高含有量を維持するためには、好ましくは0~70℃程度であり、より好ましくは0~60℃程度であり、より一層好ましくは0~50℃程度である。
反応時間は、反応温度や原料物質の反応性に依存するため一概に規定できないが、通常1~100時間程度である。
【0056】
以上説明した方法によって、ポリアミック酸を含む反応溶液を得ることができる。
【0057】
(ポリアミック酸)
本発明のポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン成分と、ジカルボン酸無水物及びモノアミン成分の少なくともいずれかとを含む原料成分の反応生成物である。言い換えれば、本発明のポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン成分と、ジカルボン酸無水物及びモノアミン成分の少なくともいずれかとを構成成分として含む。
ポリアミック酸の構成成分についての1H-NMR分析において、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン成分の合計に対する、ジカルボン酸無水物及びモノアミン成分の合計のモル割合(以下、「モル割合」と称することがある)は、3モル%以上である。
モル割合が大きいほど、当該ポリアミック酸を用いて得られる剥離層の剥離性が向上する。即ち、より小さい剥離力で剥離することができる。
【0058】
モル割合は、3モル%以上であり、5モル%以上がより好ましい。
モル割合の上限値は特に限定されず、モル割合は、例えば、50モル%以下であってもよく、30モル%以下であってもよく、15モル%以下であってもよい。
なお、ポリアミック酸の構成成分にジカルボン酸無水物が含まれる場合、ポリアミック酸の構成成分にモノアミン成分は含まれていなくてもよいし、含まれていてもよい。また、ポリアミック酸の構成成分にモノアミン成分が含まれる場合、ポリアミック酸の構成成分にジカルボン酸無水物は含まれていなくてもよいし、含まれていてもよい。そのため、「ジカルボン酸無水物及びモノアミン成分の合計」において、ジカルボン酸無水物及びモノアミン成分の一方は0であってもよい。
【0059】
モル割合は、ポリアミック酸を1H-NMR分析、13C-NMR分析、又はIR(赤外分光)分析することにより求めることができる。
モル割合は、例えば、ポリアミック酸の1H-NMR分析により求めることができる。1H-NMR分析では、例えば、ポリアミック酸中の、テトラカルボン酸二無水物に由来する基、ジアミン成分に由来する基、ジカルボン酸無水物に由来する基、及びモノアミン成分に由来する基において他の成分と区別可能な水素原子(プロトン:1H)を特定し、1H-NMR分析におけるそれらの水素原子(プロトン:1H)の化学シフトの積分強度から、モル割合を求めることができる。その一例は、後述の実施例で詳述する。
【0060】
ポリアミック酸を構成するテトラカルボン酸二無水物の具体例及び好適例としては、本発明のポリアミック酸の製造方法の説明で挙げたテトラカルボン酸二無水物の具体例及び好適例が挙げられる。
ポリアミック酸を構成するジアミン成分の具体例及び好適例としては、本発明のポリアミック酸の製造方法の説明で挙げたジアミン成分の具体例及び好適例が挙げられる。
ポリアミック酸を構成するジカルボン酸無水物の具体例及び好適例としては、本発明のポリアミック酸の製造方法の説明で挙げたジカルボン酸無水物の具体例及び好適例が挙げられる。
ポリアミック酸を構成するモノアミン成分の具体例及び好適例としては、本発明のポリアミック酸の製造方法の説明で挙げたモノアミン成分の具体例及び好適例が挙げられる。
【0061】
本発明のポリアミック酸は、好適には、本発明のポリアミック酸の製造方法により製造される。
前述のとおり、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを反応させた後に、更にジカルボン酸無水物及びモノアミン成分の少なくともいずれかを反応させてポリアミック酸を製造する場合と比べて、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分との反応を、ジカルボン酸無水物及びモノアミン成分の少なくともいずれかの存在下で行う方が、ポリアミック酸の末端により多くの末端基(ジカルボン酸無水物に由来する基及びモノアミン成分に由来する基)が導入される。
そのため、本発明のポリアミック酸の製造方法によれば、モル割合が3モル%以上のポリアミック酸を製造することができる。
【0062】
本発明のポリアミック酸及び本発明のポリアミック酸の製造方法で得られるポリアミック酸の重量平均分子量としては、特に限定されないが、3,000以上が好ましく、より好ましくは5,000以上、より一層好ましくは10,000以上である。
一方、ポリアミック酸の重量平均分子量の上限値は、通常2,000,000であるが、剥離層形成用組成物の粘度が過度に高くなることを抑制することや柔軟性の高い樹脂薄膜を再現性よく得ること等を考慮すると、ポリアミック酸の重量平均分子量は、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは200,000以下である。
【0063】
(剥離層形成用組成物、及び剥離層形成用組成物の製造方法)
本発明の剥離層形成用組成物は、本発明のポリアミック酸と、有機溶媒とを含む。
本発明の剥離層形成用組成物の製造方法は、ポリアミック酸と、有機溶媒とを含む剥離層形成用組成物を製造する、組成物の製造方法である。
剥離層形成用組成物の製造方法は、本発明のポリアミック酸の製造方法によってポリアミック酸を製造することを含む。
剥離層形成用組成物は、ポリアミック酸及び有機溶媒以外のその他の成分を含んでいてもよい。
【0064】
剥離層形成用組成物の総質量に対するポリアミック酸の濃度は、作製する薄膜(剥離層)の厚みや組成物の粘度等を勘案して適宜設定するものではあるが、通常0.5~30質量%程度、好ましくは2~25質量%程度である。
【0065】
<有機溶媒>
本発明においては、通常、上記反応溶液をろ過した後、そのろ液をそのまま、又は希釈若しくは濃縮して得られる溶液を、本発明の剥離層形成用組成物として用いることができる。このようにすることで、得られる剥離層の密着性、剥離性等の悪化の原因となり得る不純物の混入を低減できるだけでなく、効率よく剥離層形成用組成物を得ることができる。
希釈や濃縮に用いる溶媒は、特に限定されるものではなく、例えば、上記反応の反応溶媒の具体例と同様のものが挙げられ、それらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0066】
上記具体例の中でも、平坦性の高い樹脂薄膜を再現性よく得ることを考慮すると、用いる溶剤としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘプタン、シクロヘキサン、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールが好ましい。
【0067】
<その他の成分>
その他の成分としては、特に限定されず、例えば、架橋剤(以下、架橋性化合物ともいう。)が挙げられる。
【0068】
<<架橋性化合物>>
架橋性化合物としては、例えば、エポキシ基を2個以上含有する化合物、アミノ基の水素原子がメチロール基、アルコキシメチル基又はその両方で置換された基を有する、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体又はグリコールウリルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
以下に、架橋性化合物の具体例を挙げるが、これに限定されない。
エポキシ基を2個以上含有する化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
・エポリードGT-401、エポリードGT-403、エポリードGT-301、エポリードGT-302、セロキサイド2021、セロキサイド3000(以上、株式会社ダイセル製)等のシクロヘキセン構造を有するエポキシ化合物;
・エピコート1001、エピコート1002、エピコート1003、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009、エピコート1010、エピコート828(以上、ジャパンエポキシレジン株式会社製(現:三菱ケミカル株式会社製、jER(登録商標)シリーズ))等のビスフェノールA型エポキシ化合物;
・エピコート807(ジャパンエポキシレジン株式会社製(現:三菱ケミカル株式会社製))等のビスフェノールF型エポキシ化合物;
・エピコート152、エピコート154(以上、ジャパンエポキシレジン株式会社製(現:三菱ケミカル株式会社製、jER(登録商標)シリーズ))、EPPN201、EPPN202(以上、日本化薬株式会社製)等のフェノールノボラック型エポキシ化合物;
・ECON-102、ECON-103S、ECON-104S、ECON-1020、ECON-1025、ECON-1027(以上、日本化薬株式会社製)、エピコート180S75(ジャパンエポキシレジン株式会社製(現:三菱ケミカル株式会社製、jER(登録商標)シリーズ)製)等のクレゾールノボラック型エポキシ化合物;
・V8000-C7(DIC株式会社製)等のナフタレン型エポキシ化合物;
・デナコールEX-252(ナガセケムテックス株式会社製)、CY175、CY1770、CY179、アラルダイトCY-182、アラルダイトCY-192、アラルダイトCY-184(以上、BASF社製)、エピクロン200、エピクロン400(以上、DIC株式会社製)、エピコート871、エピコート872(以上、ジャパンエポキシレジン株式会社製(現:三菱ケミカル株式会社製、jER(登録商標)シリーズ))、ED-5661、ED-5662(以上、セラニーズコーティング株式会社製)等の脂環式エポキシ化合物;
・デナコールEX-611、デナコールEX-612、デナコールEX-614、デナコールEX-622、デナコールEX-411、デナコールEX-512、デナコールEX-522、デナコールEX-421、デナコールEX-313、デナコールEX-314、デナコールEX-312(以上、ナガセケムテックス株式会社製)等の脂肪族ポリグリシジルエーテル化合物
【0070】
アミノ基の水素原子がメチロール基、アルコキシメチル基又はその両方で置換された基を有する、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体又はグリコールウリルとしては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
・トリアジン環1個当たりメトキシメチル基が平均3.7個置換されているMX-750、トリアジン環1個当たりメトキシメチル基が平均5.8個置換されているMW-30(以上、株式会社三和ケミカル製);
・サイメル300、サイメル301、サイメル303、サイメル350、サイメル370、サイメル771、サイメル325、サイメル327、サイメル703、サイメル712(以上、三井サイアナミッド株式会社製(現:日本サイテックインダストリーズ株式会社))等のメトキシメチル化メラミン;
・サイメル235、サイメル236、サイメル238、サイメル212、サイメル253、サイメル254(以上、三井サイアナミッド株式会社製(現:日本サイテックインダストリーズ株式会社))等のメトキシメチル化ブトキシメチル化メラミン;
・サイメル506、サイメル508(以上、三井サイアナミッド株式会社製(現:日本サイテックインダストリーズ株式会社))等のブトキシメチル化メラミン;
・サイメル1141(三井サイアナミッド株式会社製(現:日本サイテックインダストリーズ株式会社))のようなカルボキシ基含有メトキシメチル化イソブトキシメチル化メラミン;
・サイメル1123(三井サイアナミッド株式会社製(現:日本サイテックインダストリーズ株式会社))のようなメトキシメチル化エトキシメチル化ベンゾグアナミン;
・サイメル1123-10(以上、三井サイアナミッド株式会社製(現:日本サイテックインダストリーズ株式会社))のようなメトキシメチル化ブトキシメチル化ベンゾグアナミン;
・サイメル1128(以上、三井サイアナミッド株式会社製(現:日本サイテックインダストリーズ株式会社))のようなブトキシメチル化ベンゾグアナミン;
・サイメル1125-80(以上、三井サイアナミッド株式会社製(現:日本サイテックインダストリーズ株式会社))のようなカルボキシ基含有メトキシメチル化エトキシメチル化ベンゾグアナミン;
・サイメル1170(三井サイアナミッド株式会社製(現:日本サイテックインダストリーズ株式会社))のようなブトキシメチル化グリコールウリル;
・サイメル1172のようなメチロール化グリコールウリル(三井サイアナミッド株式会社製(現:日本サイテックインダストリーズ株式会社))
【0071】
剥離層形成用組成物の粘度は、作製する薄膜の厚み等を勘案して適宜設定するものであるが、特に0.05~5μm程度の厚さの樹脂薄膜を再現性よく得ること目的とする場合、通常、25℃で3~10,000mPa・s程度、好ましくは5~1,000mPa・s程度、より好ましくは、8~200mPa・s程度である。ここで、粘度は、市販の液体の粘度測定用粘度計を使用して、例えば、JIS K7117-2に記載の手順を参照して、組成物の温度25℃の条件にて測定することができる。好ましくは、粘度計としては、円錐平板型(コーンプレート型)回転粘度計を使用し、好ましくは同型の粘度計で標準コーンロータとして1°34’×R24を使用して、組成物の温度25℃の条件にて測定することができる。このような回転粘度計としては、例えば、東機産業株式会社製TVE-25Hが挙げられる。
【0072】
(剥離層、及び剥離層の製造方法)
本発明の剥離層は、本発明の剥離層形成用組成物により形成される。
本発明の剥離層の製造方法は、例えば、本発明の組成物の製造方法によって製造された剥離層形成用組成物を用いて剥離層を形成する工程を含む。
【0073】
例えば、本発明の剥離層形成用組成物又は本発明の組成物の製造方法によって製造された剥離層形成用組成物を基体に塗布して加熱することで、薄膜(剥離層)を得ることができる。
【0074】
基体(基材)としては、例えば、ガラス、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ、メラミン、トリアセチルセルロース、ABS、AS、ノルボルネン系樹脂等)、金属(シリコンウェハ等)、金属化合物(窒化ケイ素等)、木材、紙、スレート等が挙げられ、ガラス、窒化ケイ素又はシリコンウェハを含むものが好ましい。特に、本発明に係る剥離層形成用組成物から得られる剥離層がそれに対する十分な密着性を有することから、ガラス、窒化ケイ素がより好ましい。なお、基体表面は、単一の材料で構成されていてもよく、2以上の材料で構成されていてもよい。2以上の材料で基体表面が構成される態様としては、基体表面のうち、ある範囲はある材料で構成され、その余の表面はその他の材料で構成されている態様、基体表面全体にドットパターン、ラインアンドスペースパターン等のパターン状にある材料がその他の材料中に存在する態様等がある。
【0075】
塗布する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、キャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)等が挙げられる。
【0076】
また、剥離層形成用組成物中に含まれるポリアミック酸をイミド化させる方法としては、基体上に塗布した組成物をそのまま加熱する熱イミド化、及び、組成物中に触媒を添加し加熱する触媒イミド化が挙げられる。
【0077】
ポリアミック酸の触媒イミド化は、剥離層形成用組成物中に触媒を添加し、撹拌することにより触媒添加組成物を調製した後、基体へ塗布、加熱することにより行うことができる。触媒の量はアミド酸基の0.1~30モル倍、好ましくは1~20モル倍である。また触媒添加組成物中に脱水剤として無水酢酸等を加えることもでき、その量はアミド酸基の1~50モル倍、好ましくは3~30モル倍である。
【0078】
イミド化触媒としては三級アミンを用いることが好ましい。三級アミンとしては、ピリジン、置換ピリジン類、イミダゾール、置換イミダゾール類、ピコリン、キノリン、イソキノリンなどが好ましい。
【0079】
熱イミド化及び触媒イミド化時の加熱温度は、通常50~550℃の範囲内で適宜決定されるが、好ましくは200℃以上、また、好ましくは450℃以下である。加熱温度をこのようにすることで、得られる膜の脆弱化を防ぎつつ、イミド化反応を十分に進行させることが可能となる。加熱時間は、加熱温度によって異なるため一概に規定できないが、通常5分~5時間である。また、イミド化率は、例えば、50~100%の範囲であればよい。
【0080】
本発明における加熱態様の好ましい一例としては、得られる剥離層の耐熱性と使用装置の汎用性を考慮すると、塗布した組成物を50~100℃で1分間~30分間加熱した後に、110~150℃で3分間~1時間加熱した後に、そのまま段階的に加熱温度を上昇させて最終的に200~300℃で10分間~2時間加熱する手法が挙げられる。特に、80~120℃で5~30分間、次いで、230~300℃で30分間~1時間加熱することが好ましい。
【0081】
加熱に用いる器具としては、例えば、ホットプレート、オーブン等が挙げられる。加熱雰囲気は、空気下であっても不活性ガス下であってもよく、また、常圧下であっても減圧下であってもよい。
【0082】
剥離層の厚さは、通常0.01~10μm程度、好ましくは0.05~5μm程度であり、加熱前の塗膜の厚さを調整して所望の厚さの剥離層を実現する。
【0083】
以上説明した剥離層は、基体、特にガラス、窒化ケイ素等の基体との優れた密着性及び樹脂基板との適度な密着性と適度な剥離性を有する。それ故、本発明に係る剥離層は、フレキシブル電子デバイスの製造プロセスにおいて、当該デバイスの樹脂基板に損傷を与えることなく、当該樹脂基板を、その樹脂基板上に形成された回路等とともに、基体から剥離させるために好適に用いることができる。
【0084】
(樹脂基板を備えるフレキシブル電子デバイスの製造方法)
本発明の、樹脂基板を備えるフレキシブル電子デバイスの製造方法では、例えば、本発明の剥離層を用いる。
本発明の、樹脂基板を備えるフレキシブル電子デバイスの製造方法では、例えば、本発明の剥離層の製造方法によって製造された剥離層を用いる。
【0085】
以下、本発明の剥離層を用いたフレキシブル電子デバイスの製造方法の一例について説明する。
本発明に係る剥離層形成用組成物を用いて、前述の方法によって、基体上に剥離層を形成する。この剥離層の上に、樹脂基板を形成するための樹脂溶液を塗布し、この塗膜を加熱することで、本発明に係る剥離層を介して、基体に固定された樹脂基板を形成する。この際、剥離層を全て覆うようにして、剥離層の面積と比較して大きい面積で、樹脂基板を形成する。上記樹脂基板としては、フレキシブル電子デバイスの樹脂基板として代表的なポリイミド樹脂やアクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂からなる樹脂基板等が挙げられ、それを形成するための樹脂溶液としては、ポリイミド溶液、ポリアミック酸溶液、アクリルポリマー溶液、シクロオレフィンポリマー溶液、シクロオレフィンコポリマー溶液が挙げられる。当該樹脂基板の形成方法は、常法に従えばよい。
【0086】
次に、本発明に係る剥離層を介して基体に固定された当該樹脂基板の上に、所望の回路を形成し、その後、例えば剥離層に沿って樹脂基板をカットし、この回路とともに樹脂基板を剥離層から剥離して、樹脂基板と基体とを分離する。この際、基体の一部を剥離層とともにカットしてもよい。
【0087】
また、本発明は、以下の被剥離体の製造方法を提供する。
本発明の剥離層形成用組成物を基体上に塗布し、焼成して剥離層を形成する工程、
剥離層上に、被剥離体を形成する工程、及び
被剥離体を、剥離層から剥離する工程を
含む被剥離体の製造方法を提供する。
【0088】
上記の製造方法において、剥離層を形成する際の焼成条件は、上述した条件を採用できる。
また、「被剥離体」は一層であっても複数層であってもよい。なお、「被剥離体」のうち剥離層の直上の層(通常は、樹脂基板)は、用いる剥離層に依存するが、該剥離層との剥離性が良いもの、換言すると用いる剥離層との密着性が良くないもの、であるのがよい。
【0089】
更に、本発明は、フレキシブル電子デバイスに適用される積層体であって、
基体と、
基体上に形成される剥離層と、
剥離層上に形成される樹脂基板と
を有する積層体を提供する。
【実施例0090】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、下記例で使用した化合物の略称、並びに重量平均分子量及び分子量分布の測定方法は以下のとおりである。
【0091】
<化合物の略称>
<<テトラカルボン酸二無水物>>
・PMDA:ピロメリット酸二無水物
・BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
・NADA:2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸2,3:6,7-二無水物
<<ジアミン>>
・ODA:4,4’-オキシジアニリン
・34ODA:3,4’-オキシジアニリン
・BAPB:1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン
・DABA:4,4’-ジアミノベンズアニリド
・APAB:4-アミノ安息香酸4-アミノフェニル
・DADPM:4,4’-メチレンジアニリン
・DABA-Me:4-アミノ-N-(4-アミノフェニル)-N-メチルベンズアミド
・DABP:4,4’-ジアミノベンゾフェノン
・ABI:5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾイミダゾール
・ABO:5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール
・p-PDA:p-フェニレンジアミン
<<モノアミン(末端基)>>
・An:アニリン
・BzAn:ベンジルアニリン
・TI:m-トルイジン
・DMAn:3,5-ジメチルアニリン
・EAn:p-エチルアニリン
・HxAn:p-ヘキシルアニリン
・FAn:p-フルオロアニリン
・3FAn:m-(トリフルオロメチル)アニリン
・APy:m-アミノピリジン
<<ジカルボン酸無水物(末端基)>>
・PA:無水フタル酸
<<溶媒>>
・NMP:N-メチル-2-ピロリドン
・NEP:N-エチル-2-ピロリドン
・EL:乳酸エチル
【0092】
<重量平均分子量及び分子量分布の測定>
ポリマーの重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定は、日本分光(株)製GPC装置(カラム:Shodex製 KD803及びKD805;溶離液:ジメチルホルムアミド/LiBr・H2O(30mM)/H3PO4(30mM)/THF(1%);流量:1.0mL/分;カラム温度:50℃;Mw:標準ポリエチレンオキシド換算値)を用いて行った(以下の実施例及び比較例において、同じ)。
【0093】
[1]ポリマーの合成
以下の方法によって、ポリアミック酸を合成した。
なお、得られたポリマー含有反応液からポリマーを単離せず、後述のとおり、反応液を希釈することで、樹脂基板形成用組成物または剥離層形成用組成物を調製した。
【0094】
[合成例1]ポリアミック酸A1の合成
ODA1.73g(8.6mmol)及びAn0.18g(1.9mmol)をNEP29gに溶解させた後、窒素雰囲気下、氷浴で5~15℃に冷却させた。得られた溶液にPMDA2.09g(9.6mmol)、及びNEP7gを加え、23℃で24時間反応させ、ポリアミック酸A1を得た。ポリアミック酸A1のMwは13,570、Mw/Mnは1.7であった。
【0095】
[合成例2~22]ポリアミック酸A2~A22の合成
合成例1において、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン、及び末端基の種類、並びに仕込み量、並びに、溶媒の種類及び反応温度を、表1-1~表1-4に示した組み合わせに変更した以外は、合成例1と同様にして、ポリアミック酸A2~A22を得た。
得られたポリアミック酸A2~A22のMw及びMw/Mnを表1-1~表1-4に示した。
【0096】
[合成例23]ポリアミック酸A23の合成
ODA1.88g(9.4mmol)をNEP29gに溶解させた後、窒素雰囲気下、氷浴で5~15℃に冷却させた。得られた溶液にPMDA1.84g(8.4mmol)、PA0.28g(1.9mmol)、及びNEP7gを加え、23℃で24時間反応させ、ポリアミック酸A23を得た。ポリアミック酸A23のMwは13,400、Mw/Mnは1.7であった。
【0097】
[合成例24]ポリアミック酸A24の合成
ODA1.81g(9.1mmol)をNEP29gに溶解させた後、窒素雰囲気下、氷浴で5~15℃に冷却させた。得られた溶液にPMDA1.38g(6.3mmol)、PA0.80g(5.4mmol)、及びNEP7gを加え、23℃で24時間反応させ、ポリアミック酸A24を得た。ポリアミック酸A24のMwは4,550、Mw/Mnは1.5であった。
【0098】
[合成例25]ポリアミック酸A25の合成
ODA9.11g(45.5mmol)及びAn0.45g(4.8mmol)をNMP144gに溶解させた後、窒素雰囲気下、氷浴で5~15℃に冷却させた。得られた溶液にPMDA10.44g(47.9mmol、NMP7gを加え、30分撹拌した後、50℃で24時間反応させ、ポリアミック酸A25を得た。ポリアミック酸A25のMwは19,370、Mw/Mnは1.8であった。
【0099】
[合成例26(比較合成例1)]ポリアミック酸C1の合成
ODA1.86g(9.3mmol)をNEP29gに溶解させた後、窒素雰囲気下、氷浴で5~15℃に冷却させた。得られた溶液にPMDA2.14g(9.8mmol)、及びNEP7gを加え、23℃で24時間反応させ、ポリアミック酸C1を得た。ポリアミック酸C1のMwは44,850、Mw/Mnは1.9であった。
【0100】
[合成例27(比較合成例2)]ポリアミック酸C2の合成
ODA1.97g(9.8mmol)をNEP29gに溶解させた後、窒素雰囲気下、氷浴で5~15℃に冷却させた。得られた溶液にPMDA2.03g(9.3mmol)、及びNEP7gを加え、23℃で24時間反応させ、ポリアミック酸C2を得た。ポリアミック酸C2のMwは31,520、Mw/Mnは2.1であった。
【0101】
[合成例28(比較合成例3)]ポリアミック酸C3の合成
ODA1.73g(8.6mmol)をNEP26gに溶解させた後、窒素雰囲気下、氷浴で5~15℃に冷却させた。得られた溶液にPMDA2.09g(9.6mmol)、及びNEP6gを加え、23℃で24時間反応させた。得られた溶液にAn0.18g(1.9mmol)、及びNEP4gを加え、さらに23℃で6時間反応させ、ポリアミック酸C3を得た。ポリアミック酸C3のMwは57,930、Mw/Mnは1.6であった。
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
[合成例F1]ポリアミック酸F1の合成
p-PDA16.37g(151.3mmol)をNMP240gに溶解させた。得られた溶液にBPDA43.64g(148.3mmol)を加え、窒素雰囲気下、23℃で24時間反応させ、ポリアミック酸F1を得た。ポリアミック酸F1のMwは107,300、Mw/Mnは3.6であった。
【0107】
[2]剥離層形成用組成物の調製
[実施例1-1]
合成例1で得られた反応液に、ELとNEPとを加え、ポリマー濃度が5質量%、ELが20質量%となるように希釈し、剥離層形成用組成物1を得た。
【0108】
[実施例1-2~1-25]
合成例1で得られた反応液の代わりに、それぞれ合成例2~25で得られた反応液を用いた以外は、実施例1-1と同様の方法で、ポリマー濃度が5質量%、ELが20質量%の剥離層形成用組成物2~25を得た。ポリマー溶液がNEPの場合は、NEPで希釈し、ポリマー溶液がNMPの場合は、NMPで希釈した。
【0109】
[比較例1-1~1-3]
合成例1で得られた反応液の代わりに、それぞれ比較合成例1~3で得られた反応液を用いた以外は、実施例1-1と同様の方法で、ポリマー濃度が5質量%、ELが20質量%の剥離層形成用組成物25~29を得た。
【0110】
実施例1-1~1-25及び比較例1-1~1-3の各剥離層形成用組成物におけるポリアミック酸の種類を表2に示す。
【0111】
【0112】
[3]剥離層の形成
[実施例2-1]
スピンコータを用いて、実施例1-1で得られた剥離層形成用組成物を、100mm×100mmガラス基板(以下同様)の上に塗布した。そして、得られた塗膜を、ホットプレートを用いて100℃で2分間、その後、窒素雰囲気下のオーブンを用いて、300℃で30分間加熱し、加熱温度を450℃まで昇温(10℃/分)し、更に450℃で30分間加熱し、ガラス基板上に厚さ100~200nmの剥離層を形成し、剥離層付きガラス基板を得た。なお、昇温の間、塗膜付きガラス基板をオーブンから取り出すことはせず、オーブン内で加熱した。
【0113】
[実施例2-2~2-25]
実施例1-1で得られた剥離層形成用組成物の代わりに、それぞれ実施例1-2~1-25で得られた剥離層形成用組成物を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で剥離層を形成し、剥離層付きガラス基板を得た。
【0114】
[比較例2-1~2-3]
実施例1-1で得られた剥離層形成用組成物の代わりに、それぞれ比較例1-1~1-3で得られた剥離層形成用組成物を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で剥離層を形成し、剥離層付きガラス基板を得た。
【0115】
[4]樹脂基板の形成及び剥離性の評価
[実施例3-1]
スピンコータを用いて、実施例2-1で得られた剥離層付きガラス基板上の剥離層(樹脂薄膜)の上に樹脂基板形成用組成物F1を塗布した。そして、得られた塗膜を、ホットプレートを用いて加熱することで樹脂基板層を形成した。樹脂基板形成用組成物F1の焼成条件は以下に記載する。
ホットプレートを用いて80℃で10分間加熱し、その後、窒素雰囲気下のオーブンを用いて、120℃で10分間加熱し、加熱温度を180℃まで昇温(10℃/分、以下同様)し、更に180℃で60分間加熱し、加熱温度を250℃まで昇温し、更に250℃で10分間加熱し、加熱温度を450℃まで昇温し、更に450℃で10分間加熱し、剥離層上に厚さ10μmの樹脂基板を形成した。なお、昇温の間、塗膜付きガラス基板をオーブンから取り出すことはせず、オーブン内で加熱した。
【0116】
[実施例3-2~3-25、比較例3-1~3-3]
実施例2-1で得られた剥離層付きガラス基板の代わりに、それぞれ実施例2-2~2-25及び比較例2-1~2-3で得られた剥離層付きガラス基板を用いた以外は、実施例3-1と同様の方法で剥離層上に樹脂基板を形成した。
【0117】
<樹脂基板の剥離力の評価>
実施例3-1~3-25及び比較例3-1~3-3で得られた樹脂基板・剥離層付きガラス基板の樹脂基板を剥離層と共にカットし、25mm×70mmの短冊を作製した。更に、セロテープ(登録商標)(ニチバン(株)製CT-24)を上記短冊上に貼った後、オートグラフAGS-X500N((株)島津製作所製)を用いて、剥離角度90°、剥離速度300mm/分で樹脂基板を剥離層から剥離し、剥離力を測定した。なお、剥離できないものは、剥離不可とした。結果を表3に示す。
〔評価基準〕
a:0.30N/25mm未満の剥離力
b:0.30N/25mm以上0.50N/25mm未満の剥離力
c:0.50N/25mm以上の剥離力
【0118】
[5]剥離層の耐熱性評価
実施例2-1~2-25及び比較例2-1~2-3で得られた剥離層付きガラス基板の剥離層を削り取り、熱重量測定で窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で加熱したとき、重量減少が1%になる温度を求めた。結果を表3に示す。
<評価基準>
A:500℃以上
B:450℃以上500℃未満
C:450℃以上
【0119】
【0120】
[7]ポリアミック酸の組成分析
合成例1-1及び比較合成例1-3で得られたポリアミック酸の反応液を、クロロホルムで再沈殿精製を行うことでポリアミック酸の固形物を回収した。得られた固形物を重DMSOに溶解し、1H-NMR分析を行った。結果を表4に示し、以下に、各ユニットの算出方法を記載する。
<1H-NMRによる算出方法>
ポリアミック酸A1及びC3中のPMDAに由来する基の水素原子の内、ODAに由来する基の水素原子及びAnに由来する基の水素原子と区別可能な水素原子(プロトン:1H)の化学シフト(化学シフトA;7.99ppm+8.35ppm(s,2H))の積分強度Aを求めた。
ポリアミック酸A1及びC3中のODAに由来する基の水素原子の内、PMDAに由来する基の水素原子及びAnに由来する基の水素原子と区別可能な水素原子(プロトン:1H)の化学シフト(化学シフトB;(7.04ppm(m,4H)-7.10(m,1H An由来のピーク))の積分強度Bを求めた。
ポリアミック酸A1及びC3中のAnに由来する基の水素原子の内、PMDAに由来する基の水素原子及びODAに由来する基の水素原子と区別可能な水素原子(プロトン:1H)の化学シフト(化学シフトC;7.35ppm(m,2H))の積分強度Cを求めた。
ここで、化学シフトAは、PMDAに由来する基の2つの水素原子の化学シフトである。そのため、1つの水素原子当たりの積分強度Aは、積分強度Aの1/2である。そして、積分強度Aの1/2は、ポリアミック酸中のPMDAに由来する基のモル割合と関係する。
化学シフトBは、ODAに由来する基の4つの水素原子の化学シフトである。そのため、1つの水素原子当たりの積分強度Bは、積分強度Bの1/4である。そして、積分強度Bの1/4は、ポリアミック酸中のODAに由来する基のモル割合と関係する。
化学シフトCは、Anに由来する基の2つの水素原子の化学シフトである。そのため、1つの水素原子当たりの積分強度Cは、積分強度Cの1/2である。そして、積分強度Cの1/2は、ポリアミック酸中のAnに由来する基のモル割合と関係する。
【0121】
ポリアミック酸A1の1H-NMR分析において、積分強度Aの1/2を100とした時、積分強度Bの1/4は92であり、積分強度Cの1/2は14であった。これらの数値は、ポリアミック酸A1におけるPMDAに由来する基、ODAに由来する基、及びAnに由来する基のモル比に相当する。
また、末端基Anのモル割合(%)は、以下の様に求めることができる。
末端基のモル割合(%)=Cm/(Am+Bm)
Am:積分強度Aの1/2
Bm:積分強度Bの1/4
Cm:積分強度Cの1/2
その結果、ポリアミック酸A1におけるモノアミン成分(An)のモル割合は、7.3モル%であった。
【0122】
ポリアミック酸C3の1H-NMR分析において、積分強度Aの1/2を100とした時、積分強度Bの1/4は95であり、積分強度Cの1/2は4であった。これらの数値は、ポリアミック酸C3におけるPMDAに由来する基、ODAに由来する基、及びAnに由来する基のモル比に相当する。
また、ポリアミック酸C3におけるモノアミン成分(An)のモル割合は、2.1モル%であった。
【0123】
【0124】
表3の結果より、実施例の剥離層形成用組成物から作製された剥離層は、樹脂基板とは容易に剥がれる特性を有していることが確認された。一方、末端基のないポリアミック酸を含む比較例1-1~1-2の剥離層形成用組成物、及び合成方法が実施例とは異なるポリアミック酸を含む比較例1-3の剥離層形成用組成物は、当該剥離層形成用組成物から作製された剥離層は、樹脂基板と剥離しにくいことが確認された。