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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179124
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ビルドアップ基板用接着フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/35 20180101AFI20241219BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20241219BHJP
   C09J 179/08 20060101ALI20241219BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20241219BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20241219BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C09J7/35
C08G73/10
C09J179/08
C08J5/18 CFG
B32B27/32 D
H05K1/03 610N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097699
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100226894
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 夏詩子
(72)【発明者】
【氏名】須藤 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】永易 杏菜
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J004
4J040
4J043
【Fターム(参考)】
4F071AA60X
4F071AA81X
4F071AA86X
4F071AA88X
4F071AF40
4F071AF62Y
4F071AH13
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
4F100AK46
4F100AK46A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100GB41
4F100JA02
4F100JA02A
4F100JA05
4F100JG05
4F100JL11
4F100JL11A
4F100JL14
4F100JL14B
4J004AA11
4J004FA08
4J040EH031
4J040JA09
4J040JB02
4J040LA08
4J040NA19
4J043PA04
4J043QB15
4J043QB26
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA43
4J043SA46
4J043SA47
4J043SA52
4J043SA54
4J043SA72
4J043SB02
4J043SB03
4J043TA22
4J043TA71
4J043TB01
4J043TB02
4J043TB03
4J043UA041
4J043UA052
4J043UA062
4J043UA121
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA141
4J043UA151
4J043UA152
4J043UB011
4J043UB021
4J043UB022
4J043UB061
4J043UB062
4J043UB121
4J043UB122
4J043UB131
4J043UB132
4J043UB152
4J043UB161
4J043UB172
4J043UB281
4J043UB301
4J043UB302
4J043UB401
4J043UB402
4J043VA021
4J043VA022
4J043VA031
4J043VA041
4J043VA061
4J043VA062
4J043XA14
4J043XA19
4J043XB34
4J043ZA02
4J043ZA23
4J043ZA46
4J043ZB01
4J043ZB11
4J043ZB50
(57)【要約】
【課題】ビルドアップ基板における層間絶縁材料として、ポリイミド系において、低沸点溶剤に可溶であり、低温でフィルム加工でき、端子間の接続信頼性を充足する耐熱性、寸法安定性に優れたビルドアップ基板用接着フィルムを提供すること。
【解決手段】ビルドアップ基板の層間絶縁膜として用いられ、テトラカルボン酸二無水物成分から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基からなる溶剤可溶性ポリイミドを含有する接着フィルムであって、ジアミン成分として、炭素数24~48の長鎖脂肪族ジアミン成分と、下記一般式(1)で表されるジアミン成分とを必須成分として含有することを特徴とするビルドアップ基板用接着フィルム。
【化1】
一般式(1)中、R1及びR2は独立にハロゲン原子で置換されている炭素数1~3のアルキル基若しくはアルコキシ基を示す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビルドアップ基板の層間絶縁膜として用いられ、テトラカルボン酸二無水物成分から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基からなる溶剤可溶性ポリイミドを含有する接着フィルムであって、
ジアミン成分として、炭素数24~48の長鎖脂肪族ジアミン成分と、下記一般式(1)で表されるジアミン成分とを必須成分として含有することを特徴とするビルドアップ基板用接着フィルム。
【化1】
一般式(1)中、R1及びR2は独立にハロゲン原子で置換されている炭素数1~3のアルキル基若しくはアルコキシ基を示す。
【請求項2】
全ジアミン成分に対して、炭素数24~48の長鎖脂肪族ジアミン成分を2~80モル%の範囲内、及び一般式(1)で表されるジアミン成分を20~98モル%の範囲内で含有する請求項1に記載のビルドアップ基板用接着フィルム。
【請求項3】
全酸二無水物成分に対して、芳香環連結基としてオキシ基及び/又はケトン基を有する酸二無水物成分を50モル%以上含有する請求項1に記載のビルドアップ基板用接着フィルム。
【請求項4】
溶剤可溶性ポリイミドが沸点200℃未満の有機溶剤に可溶である請求項1に記載のビルドアップ基板用接着フィルム。
【請求項5】
熱膨張係数(CTE)が150ppm/℃以下、ガラス転移温度(Tg)が70℃以上である請求項1に記載のビルドアップ基板用接着フィルム。
【請求項6】
請求項1に記載のビルドアップ基板用接着フィルムに用いられるポリイミド前駆体又はポリイミド。
【請求項7】
請求項1に記載のビルドアップ基板用接着フィルムを剥離可能な支持フィルム上に積層してなる積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルドアップ基板用接着フィルム(別称:ビルドアップフィルム)に関し、特に有機溶剤に可溶なポリイミドからなるビルドアップ基板用接着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子機器の高機能、小型化の要求から高密度実装に対応した実装方式として、ベース基板と絶縁層とを各層ごとに順次加工を行い積層し多層化していくビルドアップ法が汎用されている。ビルトアップ配線板において多層高密度配線を設計する場合、各基板端子間の接続信頼性を担保するために、多層基板に組込まれる層間絶縁材料(絶縁接着フィルム)としては、耐熱性や寸法安定性が要求される。
【0003】
従来、こうしたビルドアップ基板用途の層間絶縁材料としては、主に、エポキシ樹脂系が使用されている(例えば、特許文献1、5)。しかし、エポキシ樹脂系は、可撓性が不十分であり寸法安定性に難点がある。また、GHz帯の高周波信号の伝送時に要求される低誘電正接(Df)化に限界がある。
一方、ポリイミド系の層間絶縁材料も知られているが、通常、加工温度が200℃を超えるため、基板に悪影響を及ぼす懸念がある。そのため、エポキシ樹脂とポリイミドを併用した組成物も提案されている(特許文献2)。
その他、ビルドアップ基板用途ではなく、カバーレイフィルムやボンディングシート等の接着フィルムとして、脂肪族ジアミンと芳香族ジアミンを併用したポリイミドも提案されている(特許文献3、4)。しかし、これらのポリイミド系材料はガラス転移温度が低く、カバーレイフィルムやボンディングシート等の接着剤用途では使用できるものの、ビルドアップ基板に組込まれる層間絶縁材料としての信頼性は期待できないものであった。
さらに、ビルドアップ基板における層間絶縁材料として、接着フィルムの生産性を改善するため、200℃未満の低沸点溶剤に溶解する材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-181375号公報
【特許文献2】特開2003-89784号公報
【特許文献3】特開2018-168370号公報
【特許文献4】特開2021-161387号公報
【特許文献5】特開2022-121436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ビルドアップ基板における層間絶縁材料として、ポリイミド系において、低沸点溶剤に可溶であり、低温でフィルム加工でき、端子間の接続信頼性を充足する耐熱性、寸法安定性に優れたビルドアップ基板用接着フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上述した課題を解決するために、種々検討した結果、本発明に到達したものである。
すなわち、本発明は、ビルドアップ基板の層間絶縁膜として用いられ、テトラカルボン酸二無水物成分から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基からなる溶剤可溶性ポリイミドを含有する接着フィルムであって、
ジアミン成分として、炭素数24~48の長鎖脂肪族ジアミン成分と、下記一般式(1)で表されるジアミン成分とを必須成分として含有することを特徴とするビルドアップ基板用接着フィルムである。
【化1】
一般式(1)中、R1及びR2は独立にハロゲン原子で置換されている炭素数1~3のアルキル基若しくはアルコキシ基を示す。
【0007】
本発明は、上記ビルドアップ基板用接着フィルムに用いられるポリイミド前駆体又はポリイミドである。
本発明は、上記ビルドアップ基板用接着フィルムを剥離可能な支持フィルム上に積層してなる積層フィルムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のビルドアップ基板用耐熱性接着フィルムは、低沸点溶剤に可溶であり、耐熱性、寸法安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のビルドアップ基板用接着フィルムは、テトラカルボン酸二無水物成分から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基からなる溶剤可溶性ポリイミドを含有する。本明細書において、酸二無水物成分やジアミン成分とは、原料として使用する酸二無水物やジアミンに由来する反応物(誘導物)も意味するものとする。
ポリイミドは、ジアミン成分として、炭素数24~48の長鎖脂肪族ジアミン成分と、一般式(1)で表されるジアミン成分とを必須成分として含有することを特徴とする。
【0010】
本発明において、ポリイミドを構成するジアミン成分としては、第一に、炭素数24~48の長鎖脂肪族ジアミン成分を必須成分として含有する。
炭素数24~48の長鎖脂肪族ジアミンは、分子内に環状構造を有してもよく、ダイマー酸から誘導される脂肪族ジアミン(ダイマージアミン)が好ましい。ダイマー酸のカルボキシル基をヒドロキシル基に転化したのち、更にアミノ基に転化させた脂肪族ジアミンである。例えば、オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸を重合させてダイマー酸とし、これを還元した後、アミノ化することにより得られる。具体的には、炭素数36の脂肪族ジアミン(クローダジャパン社製PRIAMINE1074)等の市販品を用いることができる。
全ジアミン成分に対して、炭素数24~48の長鎖脂肪族ジアミン成分を、好ましくは2~80モル%の範囲内で含有するとよい。より好ましくは5~60モル%、更に好ましくは10~50モル%の範囲内である。
【0011】
本発明において、ポリイミドを構成するジアミン成分としては、第二に、下記一般式(1)で表されるジアミン成分を必須成分として含有する。
【化2】
一般式(1)中、R1及びR2は独立にハロゲン原子で置換されている炭素数1~3のアルキル基若しくはアルコキシ基を示す。
ジアミン成分として、炭素数24~48の長鎖脂肪族ジアミン成分と共に、上記式(1)で表されるジアミン成分を必須成分として併用することにより、溶剤可溶性を高めると共に、高い耐熱性、寸法安定性を発現できる。
【0012】
全ジアミン成分に対して、式(1)で表されるジアミン成分を、好ましくは20~98モル%の範囲内で含有するとよい。より好ましくは30~95モル%、更に好ましくは50~90モル%の範囲内である。
【0013】
一般式(1)で表されるジアミンとして、具体的には、2,2’-ジトリフルオロメチルベンジジン(TFMB)、2,2’-ビス(トリクロロメチル)[1,1’-ビフェニル]-4,4‘-ジアミン、2,2’―ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン、3,3’-ビス(トリフルオロメトキシ)ベンジジン、2、2’-ビス(1,1,2,2,2-ペンタフロエトキシ)[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミノ、2,2’-ビス(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン等が挙げられる。
【0014】
ジアミン成分として、その他のジアミンを配合することもできる。例えば、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジエトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、4-アミノフェニル-4’-アミノベンゾエート、2,2’-ジビニル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-p-ターフェニル、2,2-ビス(3-アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン、3,3-ビス(3-アミノフェノキシフェニル)スルホン、4,4-ビス(3-アミノフェノキシフェニル)スルホン、3,3-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)スルホン、4,4-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリンなどが挙げられる。
その他のジアミンを配合する場合、本発明の目的を阻害しないために、その配合量は、全ジアミン成分に対して、好ましくは50モル%未満、より好ましくは30モル%未満、さらに好ましくは10モル%未満にするとよい。
【0015】
本発明において、ジアミン成分と共にポリイミドを構成する酸二無水物(テトラカルボン酸二無水物)成分は、種々のものを使用できる。
例えば、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,2,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、3,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソピリデン)フタル酸二無水物、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレングリコール ビスアンヒドロトリメリテートなどが挙げられる。
酸二無水物成分として、好ましくは芳香環連結基としてオキシ基又はケトン基を有する酸二無水物成分であり、具体的には、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、2,2’,2,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物(BPADA)が挙げられる。
全酸二無水物成分に対して、芳香環連結基としてオキシ基及び/又はケトン基を有する酸二無水物成分を、好ましくは50モル%以上含有するとよい。より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
【0016】
ポリイミドは、公知の手法により、原料としてのジアミンと酸二無水物とを溶剤中で反応させ、前駆体樹脂を生成した後、加熱閉環させることにより、製造できる。
例えば、酸無水物とジアミンをほぼ等モルで有機溶剤に溶解させて、100℃以下の温度で30分~24時間撹拌し重合反応させることでポリイミド前駆体であるポリアミド酸が得られる。有機溶剤の使用量は、生成するポリイミド前駆体溶液の固形分濃度が5~30重量%の範囲内となるように調整するとよい。
【0017】
合成されたポリイミド前駆体は、通常、反応溶媒溶液のまま使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することもできる。ポリイミド前駆体は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。前駆体をイミド化させる方法は、特に制限されず、例えば溶媒中で、80~300℃の範囲内の温度条件で1~24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。
【0018】
本発明においては、有機溶剤として、沸点200℃未満のケトン系溶剤(S1)と芳香族炭化水素系溶剤(S2)を併用することが望ましい。溶液イミド化時に効率的にイミド化水を除去して高分子化できると共に、後工程のフィルム塗工で溶剤を効率的に除去できる。
ケトン系溶剤(S1)として、例えば、シクロヘキサノン、2-ブタノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール等が挙げられ、通常、沸点140~200℃である。
芳香族炭化水素系溶剤(S2)として、例えば、キシレン、トルエン、ベンゼン、エチルベンゼン等が挙げられ、通常、沸点70~140℃である。
ケトン系溶剤(S1)と芳香族炭化水素系溶剤(S2)の配合割合は、質量比で、10/90~90/10の範囲で選択できる。
【0019】
本発明のポリイミドの重量平均分子量(Mw)は、例えば5,000~200,000である。重量平均分子量が5,000未満の場合、フィルム化したときに脆弱化しやすくなる。一方、重量平均分子量が200,000を超える場合、ワニスにしたときに高粘度となり、配合時のハンドリング性の低下やフィルム状態の加熱時の流動性を損なう恐れがある。
重量平均分子量(Mw)の好ましい範囲は10,000~60,000の範囲内であり、
より好ましくは20,000~55,000の範囲内である。Mwが10,000未満の場
合、ポリイミド分子鎖において高極性の末端が増加するために比誘電率及び誘電正接が上昇しやすくなることがある。Mwが60,000を超える場合、分子鎖長が長くなり秩序構造を取り難くなるために、比誘電率及び誘電正接が上昇しやすくなることがある。
【0020】
本発明のポリイミドは、熱可塑性ポリイミドであることが望ましい。ポリイミドが熱可塑性であることによって、高い接着性と熱圧着加工性が付与され、接着剤層としての適用が可能となる。ここで、「熱可塑性ポリイミド」とは、一般に加熱によって軟化し、冷却によって固化し、これを繰り返すことができ、ガラス転移温度が明確に確認できるポリイミドを指すが、本発明では、特に200℃未満の温度域でガラス転移温度が明確に確認できるポリイミドを意味する。また、熱可塑性ポリイミドは、低温での熱圧着性の観点から、180℃未満の温度域でガラス転移温度が明確に確認できるポリイミドが好ましく、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定された30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、かつ、ガラス転移温度+30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa未満を示すものがより好ましい。これに対して、「非熱可塑性ポリイミド」とは、加熱しても軟化、接着性を示さないポリイミドを指すが、本発明では、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定された30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、かつ、300℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上を示すものを意味する。
【0021】
本発明のビルドアップ基板用接着フィルムにおいては、任意の添加量で本発明のポリイミドを含有することができるが、樹脂成分中の主成分とすることが望ましい。
本発明の目的を阻害しない限り、任意成分として、例えば公知の可塑剤、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、マレイミド、活性化エステル樹脂、スチレン骨格を有する樹脂等の不飽和結合を有する化合物などの他の架橋(硬化)樹脂成分、硬化剤、硬化促進剤、有機フィラー、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウムなどの無機フィラー、カップリング剤、機ホスフィン酸の金属塩、リン酸エステル、シクロフォスファゼンなどの難燃剤、顔料などをポリイミドと適宜配合することによって、接着剤組成物とすることができる。
【0022】
本発明のビルドアップ基板用接着フィルムは様々な手法で架橋形成させることができる。架橋構造の形成によって、ポリイミドの耐熱性を大幅に向上させることができる。架橋構造を形成した接着性ポリイミドは応用例であり、好ましい形態となる。なお、架橋形成によってMwが大きく変動するため、架橋ポリイミドのMwは、架橋形成前の接着性ポリイミドのMwとは異なる値となる。ポリイミドがケトン基を有する場合に、該ケトン基と、少なくとも2つの第1級のアミノ基を官能基として有するアミノ化合物のアミノ基を反応させてC=N結合を形成させることによって、架橋構造を形成することができる。また、ケトン基を有する接着性ポリイミドに架橋剤を配合した接着剤組成物は別の応用例であり、好ましい形態となる。ケトン基を有する接着性ポリイミドを形成するために好ましいテトラカルボン酸二無水物としては、例えば3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)を、ジアミン化合物としては、例えば、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゾフェノン(BABP)、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン(BABB)等の芳香族ジアミンを挙げることができる。2つの第1級のアミノ基を官能基として有するアミノ化合物として、ジヒドラジド化合物、芳香族ジアミン、脂肪族アミン等を挙げることができる。
【0023】
本発明のビルドアップ基板用接着フィルムは、ポリイミドをフィルム状に成形して得られる。好適な成形方法としては、ポリイミド及びその他の成分を溶媒に溶解し、得られた樹脂溶液を、表面が剥離処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の支持体上に公知手法により塗布後、乾燥し、支持体から剥離することによりフィルム化することができる。
【0024】
フィルム成形で用いられる有機溶剤としては、上述したとおり、重合反応に使用する沸点200℃未満のケトン系溶剤(S1)と芳香族炭化水素系溶剤(S2)を、そのまま併用することが望ましい。また、特に限定されないが、ポリイミドの溶解性を損なわない範囲で、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系の溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素系の溶剤、酢酸エチル、ジイソプロピルエーテル等を併用しても良い。
【0025】
本発明のビルドアップ基板用接着フィルムに適用するポリイミドは、23℃、50%RHの恒温恒湿条件(常態)のもと24時間調湿後に、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定される10GHzにおける誘電正接(Tanδ)が好ましくは0.0050未満、より好ましくは0.0030以下、更に好ましくは0.0025以下、最も好ましくは0.0020以下であり、比誘電率(ε)が3.0以下、好ましくは2.7以下であることがよい。誘電正接(Tanδ)及び比誘電率(ε)が上記数値を超えると、回路基板に適用した際に、誘電損失の増大に繋がり、周波数がGHz帯域(例えば1~40GHz)の高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。
【0026】
本発明のビルドアップ基板用接着フィルムに適用するポリイミドは、好ましくは、熱膨張係数(CTE)が150ppm/℃以下、より好ましくは100ppm/℃以下、更に好ましくは85ppm/℃以下であり、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは90℃以上、特に好ましくは100℃以上である。
【0027】
本発明のビルドアップ基板用接着フィルムの使用方法は、例えばフレキシブルプリント回路基板、ガラス繊維-エポキシ配線基板、紙-フェノール配線基板、ポリエステル配線基板、ポリイミド配線基板、BTレジン配線基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル配線基板、金属、樹脂基材等の被接着物の間に、耐熱性接着フィルムを挿入し、温度200℃未満、圧力4MPa未満の条件で熱圧着することにより、被接着物の間に層間絶縁層を形成できる。
【実施例0028】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。なお、実施例で用いた略号は下記化合物を示す。
DDA:炭素数36の脂肪族ジアミン(クローダジャパン株式会社製PRIAMINE1075、アミン価;209mgKOH/g)
TFMB:2,2’-ジトリフルオロメチルベンジジン
【化3】
m-TB:2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル
【化4】
ODPA:4,4’-オキシジフタル酸無水物
【化5】
BTDA:3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
【化6】
BPADA:2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物
【化7】
【0029】
各物性の評価方法は、以下のとおり。
(1) 重量平均分子量(Mw)
ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー株式会社製HLC-8420GPC)により測定した。標準物質としてポリスチレンを用い、展開溶媒にテトラヒドロフラン(THF)を用いた。
(2) 有機溶剤への溶解性(粘度)
E型粘度計を用いて、ポリイミド溶液を温度25℃、回転数100RPM、測定時間2分の条件下で、重合直後の粘度(cP)を測定した。ゲル化した場合、粘度を測定できなかった。
(3) ガラス転移温度(Tg)
5mm×20mmの試験フィルムを、熱機械分析(TMA)装置を用いて、0℃から300℃まで昇温速度5℃/分で測定を行った。昇温時の伸びの変曲点となる温度をガラス転移温度とした。
(4) 熱膨張係数(CTE)
5mm ×20mmの試験フィルムを熱機械分析(TMA)装置にて5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度(5℃/min)で0℃から300℃の温度範囲で引張り試験を行い、10℃から30℃の温度に対する試験フィルムの伸び量から熱膨張係数(ppm/K)を測定した。
(5) 誘電性
ベクトルネットワークアナライザ(Agilent社製E8363C)共振器を用いて周波数10GHzにおける試験フィルムの比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)を測定した。なお、測定に使用した試験フィルムは、温度23℃、湿度50%の条件下で24時間放置したものである。
【0030】
実施例1
500mlのセパラブルフラスコに、11.903gのDDA(0.0222モル)、13.78gのTFMB(0.0271モル)、13.827gのODPA、1.597gのBTDA(0.0.0050モル)、及び溶剤として50.4gのシクロキサノン及び33.6gのトルエンを装入し、40℃で1時間混合して、ポリアミド酸溶液を調製した。このポリアミド酸溶液を140℃に昇温し、5時間加熱、攪拌し、固形分が24gのトルエンを加えてイミド化を完結したポリイミド溶液1(固形分31.5重量%、Mw48,615、粘度8,763cP)を調製した。
次に、ポリイミド溶液1を離型PETフィルム(東山フィルム社製HY-S05)に塗布し、100~180℃で60分間、乾燥してフィルム化した後、離型PETフィルムから剥離して、厚さ25μmの接着フィルム1を得た。
得られたポリイミド溶液1及び接着フィルム1について、各物性を測定し、結果を表2に示す。
【0031】
実施例2~9、比較例1、2
表1に示す組成で実施例1と同様にポリイミド溶液2~11を調製した。また、実施例1と同様にして。接着フィルム2~11を調製し、同様に各物性を測定した。接着フィルム2~11の各種特性評価結果を表2に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
比較例1の接着剤フィルムはTgが50℃を下回っており耐熱性が低く、CTEは150ppm/Kを上回っており寸法安定性が乏しく、また、比較例2のポリイミド溶液はゲル化し溶剤溶解性に乏しい結果となった。従って、本発明のポリイミドは、低沸点溶剤に可溶であり、低温でフィルム加工でき、低誘電特性と端子間の接続信頼性を充足する耐熱性、寸法安定性を有しており、ビルドアップ基板、多層基板の層間絶縁膜の樹脂材料に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のビルドアップ基板用接着フィルムは、パソコンやスマートフォンなど、各種電気・電子機器の絶縁材料として有用である。