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特開2024-179131キノリノン骨格を有する高溶解性ユウロピウム錯体
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  • 特開-キノリノン骨格を有する高溶解性ユウロピウム錯体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179131
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】キノリノン骨格を有する高溶解性ユウロピウム錯体
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/00 20060101AFI20241219BHJP
   C07F 9/53 20060101ALI20241219BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20241219BHJP
   C07D 221/10 20060101ALI20241219BHJP
   C07D 495/04 20060101ALI20241219BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20241219BHJP
【FI】
C07F5/00 D CSP
C07F9/53
C09K11/06 660
C09K11/06
C07D221/10
C07D495/04 105A
H01L33/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097719
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 啓介
(72)【発明者】
【氏名】眞先 愛里
(72)【発明者】
【氏名】山本 昌紀
(72)【発明者】
【氏名】小礒 尚之
(72)【発明者】
【氏名】仲亀 良
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一平
(72)【発明者】
【氏名】岩永 宏平
【テーマコード(参考)】
4C071
4H048
4H050
5F142
【Fターム(参考)】
4C071AA01
4C071AA08
4C071BB01
4C071CC01
4C071CC21
4C071DD12
4C071EE13
4C071FF06
4C071GG03
4C071HH05
4C071HH08
4C071JJ01
4C071KK22
4C071LL05
4H048AA01
4H048AB92
4H048BB11
4H048BB12
4H048BB14
4H048BB16
4H048BB31
4H048VA11
4H048VA20
4H048VA32
4H048VA40
4H048VA45
4H048VA70
4H048VB10
4H050AA01
4H050AB92
5F142DA49
5F142DA53
5F142DA55
5F142DA73
(57)【要約】      (修正有)
【課題】青色光で励起可能で高い溶解性を有するユウロピウム錯体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】式(1b)で表される特定の構造のユウロピウム錯体を用いる。

[QUは式(1qu)で表されるキノリノナト配位子である。

(式中、R、RB1、RB2、RB3、RB4、及びRB5は、特定の置換基を表す。)]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1b)で表されるユウロピウム錯体。
【化1】
{QUは式(1qu)で表されるキノリノナト配位子である。
【化2】
[式中、Rは、炭素数1~6のフルオロアルキル基又は炭素数6~14のアリール基を表す。当該アリール基は、炭素数1~6のフルオロアルキル基、炭素数1~6のアルキルオキシ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、シアノ基;フッ素原子;若しくは炭素数1~6のフルオロアルキル基で1つ以上置換されていてもよい炭素数10~24のジアリールアミノ基、フッ素原子及びシアノ基からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
B1、RB2、RB3、RB4及びRB5は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~4のアルキルオキシ基、炭素数1~4のアルキルオキシ基で1つ以上置換されていてもよい炭素数2~4のアルケニル基、炭素数1~4のアルキルオキシ基で1つ以上置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基、炭素数2~8のジアルキルアミノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾール-9-イル基、フェノキシ基又はチオフェノキシ基を表す。当該ジフェニルアミノ基及びカルバゾール-9-イル基は、フッ素原子又はシアノ基で1つ以上置換されてもよい。
また、RB1、RB2、RB3及びRB4のうち、隣接する2つの置換基は結合するベンゼン環と一体となって5員又は6員環を形成していてもよい。]
は、下記式(3a)で表されるリン配位子を表す。mが2のとき、Lは同一又は相異なってもよい。
【化3】
[式中、Xは、各々独立に、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~4のアルキルオキシ基又はフェニル基を表し、当該フェニル基は炭素数1~4のアルキル基;炭素数1~4のアルキルオキシ基;若しくはフェニル基で置換されてもよい。]
は1又は2を表す。}
【請求項2】
前記式(1qu)が、下記式(1qu-1)、(1qu-2)又は(1qu-3)のいずれかで示されるキノリノナト配位子である請求項1に記載のユウロピウム錯体。
【化4】
[式中、Rは式(1qu)のRと同じ意味を表す。
B8は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~8のフルオロアルキル基又はフッ素原子で1つ以上置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基を表す。
Xは、酸素原子、硫黄原子、ジメチルメチレン基又は炭素数1~12の炭化水素基で置換されていてもよい窒素原子を表す。]
【請求項3】
前記式(1qu)で表されるキノリノナト配位子のRが炭素数1~6のフルオロアルキル基である請求項1に記載のユウロピウム錯体。
【請求項4】
前記式(3a)におけるXが、炭素数4~8のアルキル基、フェニル基、o-トリル基、2-メトキシフェニル基又は2-ビフェニリル基である請求項1に記載のユウロピウム錯体。
【請求項5】
前記式(1b)が、下記式(1b-1)、(1b-8)、(1b-9)、(1b-10)、(1b-12)、(1b-15)、(1b-19)又は(1b-20)のいずれかである請求項1に記載のユウロピウム錯体。
【化5】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、青色光にて励起可能かつ溶解性に優れるユウロピウム錯体に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信やディスプレイ等のオプトエレクトロニクス、並びに太陽電池等の光エネルギー変換産業は次代の基幹技術であり、それらに用いる各種の無機ガラス材料やセラミック材料、レーザー材料、有機低分子発光材料、波長変換材料等が創出されている。
【0003】
波長変換材料は、特定の波長の光を吸収して別の波長で発光する材料であり、樹脂材料に添加することで光学材料として用いることができる。
【0004】
特に、溶解性が高い波長変換材料は樹脂材料に高濃度に添加することが可能となる。高濃度の波長変換材料を含有する光学材料は、所望の光強度を得る為に必要な樹脂材料を減量することができる為に、光学材料の薄膜化が可能となり、乾燥工程短縮による生産性向上や光学材料の小型化が期待できる。
【0005】
近年、このような波長変換材料としてβ-ジケトナト配位子とホスフィンオキシド配位子を持つ希土類錯体(特許文献1及び2)やフェナントロリン配位子を持つ希土類錯体(非特許文献1)が報告されている。これらの希土類錯体は、紫外光など短波長の光を吸収し、より長波長の可視光を発光することができるため、発光ダイオード(LED)等の半導体発光素子と組み合わせることで、種々の発光色の発光装置が実現できると期待される(特許文献3)。
【0006】
上記希土類錯体の多くは、紫外光(波長が約280nm~約400nm)によって励起されて発光するが、よりエネルギーの小さい青色光(約400nm~約495nm)では励起されず発光しない為、励起光源として汎用的な青色LEDを光源として使用できない。そこで、青色光で励起可能な希土類錯体の開発が活発に行われている(非特許文献2及び3)が、これらの錯体の溶解性に関する記述は一切ない。
【0007】
非特許文献4及び非特許文献5ではキノリノン骨格を有する希土類錯体が開示されているが、本願記載のキノリノン骨格を有するユウロピウム錯体とは2-ニトロアシル基を有していない点で全く異なり、加えてこれらの錯体の溶解性に関する記述は一切ない。
【0008】
また、特許文献4には本願記載のキノリノン骨格を有するユウロピウム錯体が開示されているが、これらの錯体の溶解性に関する記述は一切ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】ソ連特許発明第1453860号明細書
【特許文献2】特開2003-81986号公報
【特許文献3】特開2005-15564号公報
【特許文献4】国際公開第2023/282236号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】CrystEngComm、第11巻、1197ページ(2009年)
【非特許文献2】Coordination Chemistry Reviews、第293-294巻、19ページ(2015年)
【非特許文献3】Angewandte Chemie International Edition、第43巻、5010ページ(2004年)
【非特許文献4】Applied Organometallic Chemistry、第33巻、第10号、e5131ページ(2019年)
【非特許文献5】Journal of Molecular Structure、第1190巻、第15号、68ページ(2019年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示は青色光で励起可能かつ高い溶解性を有するユウロピウム錯体、その中間体及びそれら製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の配位子を導入したユウロピウム錯体が青色光で励起可能かつ高い溶解性を有することを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は特許請求の範囲に記載の通りであり、また、本開示の要旨は以下の通りである。
[1]下記式(1b)で表されるユウロピウム錯体。
【0014】
【化1】
{QUは式(1qu)で表されるキノリノナト配位子である。
【0015】
【化2】
[式中、Rは、炭素数1~6のフルオロアルキル基又は炭素数6~14のアリール基を表す。当該アリール基は、炭素数1~6のフルオロアルキル基、炭素数1~6のアルキルオキシ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、シアノ基;フッ素原子;若しくは炭素数1~6のフルオロアルキル基で1つ以上置換されていてもよい炭素数10~24のジアリールアミノ基、フッ素原子及びシアノ基からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
B1、RB2、RB3、RB4及びRB5は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~4のアルキルオキシ基、炭素数1~4のアルキルオキシ基で1つ以上置換されていてもよい炭素数2~4のアルケニル基、炭素数1~4のアルキルオキシ基で1つ以上置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基、炭素数2~8のジアルキルアミノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾール-9-イル基、フェノキシ基又はチオフェノキシ基を表す。当該ジフェニルアミノ基及びカルバゾール-9-イル基は、フッ素原子又はシアノ基で1つ以上置換されてもよい。
また、RB1、RB2、RB3及びRB4のうち、隣接する2つの置換基は結合するベンゼン環と一体となって5員又は6員環を形成していてもよい。]
は、下記一般式(3a)で表されるリン配位子を表す。mが2のとき、Lは同一又は相異なってもよい。
【0016】
【化3】
[式中、Xは、各々独立に、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~4のアルキルオキシ基又はフェニル基を表し、当該フェニル基は炭素数1~4のアルキル基;炭素数1~4のアルキルオキシ基;若しくはフェニル基で置換されてもよい。]
は1又は2を表す。}
[2]前記式(1qu)が、下記式(1qu-1)、(1qu-2)又は(1qu-3)のいずれかで示されるキノリノナト配位子である[1]に記載のユウロピウム錯体。
【0017】
【化4】
[式中、Rは式(1qu)のRと同じ意味を表す。
B8は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~8のフルオロアルキル基又はフッ素原子で1つ以上置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基を表す。
Xは、酸素原子、硫黄原子、ジメチルメチレン基又は炭素数1~12の炭化水素基で置換されていてもよい窒素原子を表す。]
[3]前記式(1qu)で表されるキノリノナト配位子のRが炭素数1~6のフルオロアルキル基である[1]又は[2]に記載のユウロピウム錯体。
[4]前記式(3a)におけるXが、炭素数4~8のアルキル基、フェニル基、o-トリル基、2-メトキシフェニル基又は2-ビフェニリル基である[1]~[3]のいずれかひとつに記載のユウロピウム錯体。
[5]前記式(1b)が、下記式(1b-1)、(1b-8)、(1b-9)、(1b-10)、(1b-12)、(1b-15)、(1b-19)又は(1b-20)のいずれかである[1]に記載のユウロピウム錯体。
【0018】
【化5】
【発明の効果】
【0019】
本開示により、青色光で励起可能かつ高い溶解性を有するユウロピウム錯体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1で得た本開示のユウロピウム錯体(1b-9)のUV-Vis・発光スペクトルである。
図2】実施例2で得た本開示のユウロピウム錯体(1b-10)のUV-Vis・発光スペクトルである。
図3】実施例3で得た本開示のユウロピウム錯体(1b-12)のUV-Vis・発光スペクトルである。
図4】実施例4で得た本開示のユウロピウム錯体(1b-19)のUV-Vis・発光スペクトルである。
図5】比較例1で得たユウロピウム錯体のUV-Vis・発光スペクトルである。
図6】比較例2で得たユウロピウム錯体のUV-Vis・発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示について詳細に説明する。しかしながら、以下に記載する構成要件の説明は本開示の実施形態の一例であり、本開示はこれらの内容に限定されるものではない。
【0022】
式(1b)で表される本開示のユウロピウム錯体(以下、ユウロピウム錯体(1b)ともいう。)における各置換基の定義についてそれぞれ説明する。
【0023】
本明細書中では、水素原子は重水素原子、三重水素原子を含むものとする。
【0024】
<QUについて>
式(1b)において、QUは式(1qu)で表されるキノリノナト配位子(以下、キノリノナト配位子(1qu)ともいう。)である。
【0025】
本開示のユウロピウム錯体(1b)においては、キノリノナト配位子(1qu)は1つ又は2つの酸素原子でユウロピウムイオンに配位している。さらに、キノリノナト配位子(1qu)の互変異性体の構造によって、下記ユウロピウム錯体(1bi)~ユウロピウム錯体(1bvi)の配位構造が存在する。本開示のユウロピウム錯体(1b)は、ユウロピウム錯体(1bi)~ユウロピウム錯体(1bviii)をすべて包含するものであるが、便宜上、本明細書においては、これらの異性体をユウロピウム錯体(1b)として表記する。
【0026】
また、本開示のユウロピウム錯体(1b)の配位構造としては、光学機能材料として好適な光物性を持つ点で、ユウロピウム錯体(1bi)又はユウロピウム錯体(1bii)が好ましい。なお、ユウロピウム錯体(1bi)は、互変異性化を起こしてユウロピウム錯体(1bii)を形成しうるが、ユウロピウム錯体(1bi)はユウロピウム錯体(1bii)を包含するものであり、本明細書において配位構造を記載するとき、便宜上、ユウロピウム錯体(1bii)もユウロピウム錯体(1bi)として表記する。
【0027】
【化6】
(式中、R、RB1、RB2、RB3、RB4、RB5、L、及びmは、前記式(1b)のR、RB1、RB2、RB3、RB4、RB5、L、及びmと同じ意味を表す。)
次に、キノリノナト配位子(1qu)におけるR、RB1、RB2、RB3、RB4及びRB5の定義についてそれぞれ説明する。
【0028】
<Rについて>
で表される炭素数1~6のフルオロアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよく、具体的には、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1,1-ジフルオロプロピル基、ペルフルオロプロパン-2-イル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、ペルフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、1,1,1,2,3,3,4,4,4-ノナオロブタン-2-イル基、1,1,1-トリフルオロブタン-2-イル基、4,4,4-トリフルオロブタン-2-イル基、ペルフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンチル基、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロペンチル基、4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル基、5,5,5-トリフルオロペンチル基、ペルフルオロペンタン-2-イル基、1,1,1,3,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン-2-イル基、1,1,2,3,3,4,4,4-オクタフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,2,2,3,4,4,4-オクタフルオロ-3-(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,3,3,3-ペンタフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)プロピル基、1,1,1,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロ-1-(トリフルオロメチル)ブタン-2-イル基、ペルフルオロシクロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、1,1,1,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-デカフルオロヘキサン-2-イル基、1,1,2,3,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンチル基、1,1,2,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-(トリフルオロメチル)ペンチル基、1,1,2,2,3,3,4,5,5,5-デカフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ペンチル基、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,5-ドデカフルオロ-1-(トリフルオロメチル)ペンタン-2-イル基、1,1,1,3,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン-2-イル基、1,1,1,2,2,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-(トリフルオロメチル)ペンタン-2-イル基、1,1,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、1,2,2,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-2,3-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,2,2,4,4,4-ヘプタフルオロ-3,3-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、ペルフルオロシクロヘキシル基、ペルフルオロシクロペンチルメチル基を例示することができる。原料が容易に入手可能な点で、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、又はペルフルオロプロピル基が好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。
【0029】
で表される炭素数6~14のアリール基としては、具体的には、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,3,4-トリメチルフェニル基、2,3,5-トリメチルフェニル基、2,3,6-トリメチルフェニル基、2,4,5-トリメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、3,4,5-トリメチルフェニル基、2,3,4,5-テトラメチルフェニル基、2,3,4,6-テトラメチルフェニル基、2,3,5,6-テトラメチルフェニル基、2-エチルフェニル基、3-エチルフェニル基、4-エチルフェニル基、2,3-ジエチルフェニル基、2,4-ジエチルフェニル基、2,5-ジエチルフェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、3,4-ジエチルフェニル基、3,5-ジエチルフェニル基、2-プロピルフェニル基、3-プロピルフェニル基、4-プロピルフェニル基、2-イソプロピルフェニル基、3-イソプロピルフェニル基、4-イソプロピルフェニル基、2-シクロプロピルフェニル基、3-シクロプロピルフェニル基、4-シクロプロピルフェニル基、2-ブチルフェニル基、3-ブチルフェニル基、4-ブチルフェニル基、2-(1-メチルプロピル)フェニル基、3-(1-メチルプロピル)フェニル基、4-(1-メチルプロピル)フェニル基、2-(2-メチルプロピル)フェニル基、3-(2-メチルプロピル)フェニル基、4-(2-メチルプロピル)フェニル基、2-シクロブチルフェニル基、3-シクロブチルフェニル基、4-シクロブチルフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-ビフェニリル基、3-ビフェニリル基、4-ビフェニリル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、9-アントリル基、2-フェナントレニル基、3-フェナントレニル基、9-フェナントレニル基を例示することができる。
【0030】
で表される炭素数6~14のアリール基は、炭素数1~6のフルオロアルキル基、炭素数1~6のアルキルオキシ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、シアノ基;フッ素原子;若しくは炭素数1~6のフルオロアルキル基で1以上置換されていてもよい炭素数10~24のジアリールアミノ基、フッ素原子及びシアノ基からなる群(T1群)から選択される1以上の置換基で置換されていてもよい。
【0031】
1群に属する炭素数1~6のフルオロアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよく、具体的には、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1,1-ジフルオロプロピル基、ペルフルオロプロパン-2-イル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、ペルフルオロブチル基,2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、1,1,1,2,3,3,4,4,4-ノナオロブタン-2-イル基、1,1,1-トリフルオロブタン-2-イル基、4,4,4-トリフルオロブタン-2-イル基、ペルフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンチル基、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロペンチル基、4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル基、5,5,5-トリフルオロペンチル基、ペルフルオロペンタン-2-イル基、1,1,1,3,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン-2-イル基、1,1,2,3,3,4,4,4-オクタフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,2,2,3,4,4,4-オクタフルオロ-3-(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,3,3,3-ペンタフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)プロピル基、1,1,1,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロ-1-(トリフルオロメチル)ブタン-2-イル基、ペルフルオロシクロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、1,1,1,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-デカフルオロヘキサン-2-イル基、1,1,2,3,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンチル基、1,1,2,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-(トリフルオロメチル)ペンチル基、1,1,2,2,3,3,4,5,5,5-デカフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ペンチル基、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,5-ドデカフルオロ-1-(トリフルオロメチル)ペンタン-2-イル基、1,1,1,3,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン-2-イル基、1,1,1,2,2,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-(トリフルオロメチル)ペンタン-2-イル基、1,1,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、1,2,2,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-2,3-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,2,2,4,4,4-ヘプタフルオロ-3,3-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、ペルフルオロシクロヘキシル基、ペルフルオロシクロペンチルメチル基を例示することができる。
【0032】
1群に属する炭素数1~6のアルキルオキシ基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、2-メチルプロピルオキシ基、2,2-ジメチルプロピルオキシ基、3-シクロプロピルプロピルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、2-メチルブチルオキシ基、3-メチルブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、シクロブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、1-メチルブチルオキシ基、1,2-ジメチルブチルオキシ基、1-エチルプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基を例示することができる。
【0033】
1群に属する炭素数2~12のジアルキルアミノ基としては、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ビス(2-メチルプロピル)アミノ基、ビス(2,2-ジメチルプロピル)アミノ基、ビス(3-シクロプロピルプロピル)アミノ基、ジシクロプロピルアミノ基、ジ(tert-ブチル)アミノ基、ジシクロブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ビス(2-メチルペンチル)アミノ基、ジ(1-メチルブチル)アミノ基、ビス(1,2-ジメチルブチル)アミノ基、ジ(1-エチルプロピル)アミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、N-エチル-N-メチルアミノ基、N-メチル-N-プロピル基、N-シクロプロピル-N-メチルアミノ基、N-ブチル-N-メチルアミノ基、N-シクロブチル-N-メチルアミノ基、N-メチル-N-ペンチル基、N-シクロペンチル-N-メチルアミノ基、N-ヘキシル-N-メチルアミノ基、N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ基、N-シクロヘプチル-N-メチルアミノ基、N-メチル-N-オクチルアミノ基、N-メチル-N-ノニルアミノ基、N-デシル-N-メチルアミノ基、又は、N-メチル-N-ウンデシルアミノ基や、2つのアルキル基が窒素原子を介して連結して環を形成してもよく、具体的にはアゼチジル基、ピロリジニル基、ピペリジノ基、アゼパニル基、モルホリノ基、2-モルホリニル基を例示することができる。
【0034】
1群に属する炭素数10~24のジアリールアミノ基としては、具体的には、ジインデニルアミノ基、N-インデニル-N-フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(2-メチルフェニル)アミノ基、ビス(3-メチルフェニル)アミノ基、ビス(4-メチルフェニル)アミノ基、ビス(2,3-ジメチルフェニル)アミノ基、ビス(2,4-ジメチルフェニル)アミノ基、ビス(2,5-ジメチルフェニル)アミノ基、ビス(2,6-ジメチルフェニル)アミノ基、ビス(3,4-ジメチルフェニル)アミノ基、ビス(3,5-ジメチルフェニル)アミノ基、ビス(2,3,4-トリメチルフェニル)アミノ基、ビス(2,3,5-トリメチルフェニル)アミノ基、ビス(2,3,6-トリメチルフェニル)アミノ基、ビス(2,4,5-トリメチルフェニル)アミノ基、ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)アミノ基、ビス(3,4,5-トリメチルフェニル)アミノ基、ビス(2,3,4,5-テトラメチルフェニル)アミノ基、ビス(2,3,4,6-テトラメチルフェニル)アミノ基、ビス(2,3,5,6-テトラメチルフェニル)アミノ基、ビス(2-エチルフェニル)アミノ基、ビス(3-エチルフェニル)アミノ基、ビス(4-エチルフェニル)アミノ基、ビス(2,3-ジエチルフェニル)アミノ基、ビス(2,4-ジエチルフェニル)アミノ基、ビス(2,5-ジエチルフェニル)アミノ基、ビス(2,6-ジエチルフェニル)アミノ基、ビス(3,4-ジエチルフェニル)アミノ基、ビス(3,5-ジエチルフェニル)アミノ基、ビス(2-プロピルフェニル)アミノ基、ビス(3-プロピルフェニル)アミノ基、ビス(4-プロピルフェニル)アミノ基、ビス(2-イソプロピルフェニル)アミノ基、ビス(3-イソプロピルフェニル)アミノ基、ビス(4-イソプロピルフェニル)アミノ基、ビス(2-シクロプロピルフェニル)アミノ基、ビス(3-シクロプロピルフェニル)アミノ基、ビス(4-シクロプロピルフェニル)アミノ基、ビス(2-ブチルフェニル)アミノ基、ビス(3-ブチルフェニル)アミノ基、ビス(4-ブチルフェニル)アミノ基、ビス[2-(1-メチルプロピル)フェニル]アミノ基、ビス[3-(1-メチルプロピル)フェニル]アミノ基、ビス[4-(1-メチルプロピル)フェニル]アミノ基、ビス[2-(2-メチルプロピル)フェニル]アミノ基、ビス[3-(2-メチルプロピル)フェニル]アミノ基、ビス[4-(2-メチルプロピル)フェニル]アミノ基、ビス(2-シクロブチルフェニル)アミノ基、ビス(3-シクロブチルフェニル)アミノ基、ビス(4-シクロブチルフェニル)アミノ基、ジ(1-ナフチル)アミノ基、ジ(2-ナフチル)アミノ基、N-(2-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ基、N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ基、N-(4-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ基、N-(2,3-ジメチルフェニル)-N-フェニルアミノ基、N-(2,4-ジメチルフェニル)-N-フェニルアミノ基、N-(2,5-ジメチルフェニル)-N-フェニルアミノ基、N-(2,6-ジメチルフェニル)-N-フェニルアミノ基、N-(3,4-ジメチルフェニル)-N-フェニルアミノ基、N-(3,5-ジメチルフェニル)-N-フェニルアミノ基、N-(2,3,4-トリメチルフェニル)-N-フェニルアミノ基、N-(2,3,5-トリメチルフェニル)-N-フェニルアミノ基、N-(2,3,6-トリメチルフェニル)-N-フェニルアミノ基、N-(2,4,5-トリメチルフェニル)-N-フェニルアミノ基、N-(2,4,6-トリメチルフェニル)-N-フェニルアミノ基、N-(3,4,5-トリメチルフェニル)-N-フェニルアミノ基、N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ基、N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ基や、2つのアルキル基が窒素原子を介して連結して環を形成してもよく、具体的には、カルバゾイル基、イミノスチルベニル基、9(10H)-アクリドニル基、10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピニル基、10,11-ジヒドロ-10-オキソ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピニル基を例示することができる。
【0035】
また、T1群に属する炭素数10~24のジアリールアミノ基は、シアノ基;フッ素原子;若しくは炭素数1~6のフルオロアルキル基で1つ以上置換されていてもよく、具体的には、ビス(2-フルオロフェニル)アミノ基、ビス(4-フルオロフェニル)アミノ基、ビス(3,5-ジフルオロフェニル)アミノ基、ビス(3,4-ジフルオロフェニル)アミノ基、ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)アミノ基、ビス[4-(1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロプロピル)フェニル]アミノ基、ビス(ペルフルオロフェニル)アミノ基、ビス(4-トリフルオロメチルフェニル)アミノ基、ビス[3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ基、3-フルオロカルバゾイル基、3,6-ジフルオロカルバゾイル基、3-(トリフルオロメチル)カルバゾイル基、3,6-ビス(トリフルオロメチル)カルバゾイル基、2-(トリフルオロメチル)フェノチアジニル基、ビス(4-シアノフェニル)アミノ基、ビス(3,5-ジシアノフェニル)アミノ基を例示することができる。
【0036】
したがって、RにおけるT1群から選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基としては、具体的には、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-ビフェニリル基、3-ビフェニリル基、4-ビフェニリル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2-エトキシフェニル基、3-エトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、2-(トリフルオロメチル)フェニル基、3-(トリフルオロメチル)フェニル基、4-(トリフルオロメチル)フェニル基、2-(ペルフルオロプロピル)フェニル基、3-(ペルフルオロプロピル)フェニル基、4-(ペルフルオロプロピル)フェニル基、4-メトキシ-1-ナフチル基、6-メトキシ-2-ナフチル基、4’-メトキシビフェニル-2-イル基、4’-メトキシビフェニル-3-イル基、4’-メトキシビフェニル-4-イル基、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、3,4-ジフルオロフェニル基、4-(ジフェニルアミノ)フェニル基、4-シアノフェニル基、ペルフルオロフェニル基、ペルフルオロビフェニル-4-イル基、重水素化フェニル基を例示することができる。光学機能材料として好適な光物性を持つ点で、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-ビフェニリル基、3-ビフェニリル基、4-ビフェニリル基、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2-(トリフルオロメチル)フェニル基、3-(トリフルオロメチル)フェニル基、4-(トリフルオロメチル)フェニル基、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、3,4-ジフルオロフェニル基、2-(ジフェニルアミノ)フェニル基、3-(ジフェニルアミノ)フェニル基、4-(ジフェニルアミノ)フェニル基、重水素化フェニル基、ペルフルオロフェニル基、4-シアノフェニル基、4-{ビス[4-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}フェニル基、4-{ビス[4-ビス(4-シアノフェニル)アミノ]フェニル基、4-{ビス[4-ビス(3,5-ジフルオロフェニル)アミノ]フェニル基、又は4-[ビス(4-フルオロフェニル)アミノ]フェニル基が好ましく、合成が容易な点でフェニル基、4-(トリフルオロメチル)フェニル基、又は4-(ジフェニルアミノ)フェニル基がより好ましい。
【0037】
<RB1、RB2、RB3、RB4及びRB5について>
B1、RB2、RB3、RB4及びRB5で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を例示することができる。
【0038】
B1、RB2、RB3、RB4及びRB5で表される炭素数1~10のアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、3-シクロプロピルプロピル基、シクロプロピル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-(1,1-ジメチルエチル)基、シクロブチル基、ペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、5-ジメチルシクロペンチル基、3-エチルシクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、4-エチルシクロヘキシル基、4-プロピルシクロヘキシル基、4,4-ジメチルシクロヘキシル基、2,6-ジメチルシクロヘキシル基、3,5-ジメチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデカニル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2-イル基、アダマンタン-2-イル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル基、アダマンタン-1-イル基を例示することができる。
【0039】
B1、RB2、RB3、RB4及びRB5で表される炭素数2~4のアルケニル基としては、鎖状又は分岐状アルケニル基のいずれでもよく、具体的には、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、2-メチルアリル基、1,3-ブタンジエン-1,4-ジイルを例示することができる。
【0040】
B1、RB2、RB3、RB4及びRB5で表される炭素数6~14のアリール基としては、Rで表される炭素数6~14のアリール基として例示した置換基を例示することができる。
【0041】
また、RB1、RB2、RB3、RB4及びRB5で表される炭素数2~4のアルケニル基及び炭素数6~14のアリール基は、炭素数1~4のアルキルオキシ基で1つ以上置換されていてもよく、前記の炭素数1~4のアルキルオキシ基としては、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、2-メチルプロピルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、シクロブチルオキシ基を例示することができる。
【0042】
B1、RB2、RB3、RB4及びRB5で表されるジフェニルアミノ基及びカルバゾール-9-イル基は、フッ素原子又はシアノ基で1つ以上置換されてもよく、具体的には、ビス(4-フルオロフェニル)アミノ基、ビス(3,5-ジフルオロフェニル)アミノ基、ビス(3,4,5-トリフルオロフェニル)アミノ基、ビス(ペルフルオロフェニル)アミノ基、ビス(4-シアノフェニル)アミノ基、ビス(3,5-ジシアノフェニル)アミノ基、3,6-ジフルオロカルバゾール-9-イル基を例示することができる。
【0043】
また、RB1、RB2、RB3及びRB4のうち、隣接する2つの置換基が結合するベンゼン環と一体となって5員又は6員環を形成していてもよい。
【0044】
キノリノナト配位子(1qu)の構造として次の(1qu-1)、(1qu-2)又は(1qu-3)のいずれかで表される構造であることが好ましい。
【0045】
【化7】
(式中、Rは、前記と同じ意味を表す。
B8は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~8のフルオロアルキル基又はフッ素原子で1つ以上置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基を表す。
Xは、酸素原子、硫黄原子、ジメチルメチレン基、又は炭素数1~12の炭化水素基で置換されていてもよい窒素原子を表す。)
B8で表される炭素数1~10のアルキル基としては、RB1、RB2、RB3、RB4及びRB5で表される炭素数1~10のアルキル基として例示した基を例示することができる。
【0046】
B8で表される炭素数1~8のフルオロアルキル基としては、Rで表される炭素数1~6のフルオロアルキル基として例示した基や、ペルフルオロヘプチル基、ペルフルオロオクチル基を例示することができる。
【0047】
B8が炭素数6~14のアリール基であるとき、前記炭素数6~14のアリール基は、フッ素原子で1つ以上置換されていてもよく、具体的には、フェニル基、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、4-(トリフルオロメチル)フェニル基、2,3-ジフルオロフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、2,5-ジフルオロフェニル基、2,6-ジフルオロフェニル基、3,4-ジフルオロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基、2,3,4-トリフルオロフェニル基、2,3,5-トリフルオロフェニル基、2,3,6-トリフルオロフェニル基、2,4,5-トリフルオロフェニル基、2,4,6-トリフルオロフェニル基、3,4,5-トリフルオロフェニル基、2,3,4,5-テトラフルオロフェニル基、2,3,4,6-テトラフルオロフェニル基、2,3,5,6-テトラフルオロフェニル基、ペルフルオロフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-フルオロナフチル基、2-フルオロナフチル基、4’-フルオロビフェニル-2-イル基、4’-フルオロビフェニル-2-イル基、4’-フルオロビフェニル-3-イル基、4’-フルオロビフェニル-4-イル基、ペルフルオロビフェニル-4-イル基を例示することができる。
【0048】
<Xについて>
Xが炭素数1~12の炭化水素基で置換されていてもよい窒素原子のとき、該炭素数1~12の炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、2-メチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、3-シクロプロピルプロピル基、シクロプロピル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基を例示することができる。
【0049】
Xは、合成が容易な点で、酸素原子、硫黄原子、ジメチルメチレン基、又は炭素数1~4のアルキル基若しくは炭素数6~12のアリール基で置換されていてもよい窒素原子が好ましく、原料が容易に入手可能な点で、酸素原子、硫黄原子又はジメチルメチレン基がより好ましい。
【0050】
Xが炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよい窒素原子であるとき、該炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基を例示することができる。
【0051】
Xが炭素数6~12のアリール基で置換されていてもよい窒素原子であるとき、該炭素数6~12のアリール基としては、具体的には、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,3,4-トリメチルフェニル基、2,3,5-トリメチルフェニル基、2,3,6-トリメチルフェニル基、2,4,5-トリメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、3,4,5-トリメチルフェニル基、2,3,4,5-テトラメチルフェニル基、2,3,4,6-テトラメチルフェニル基、2,3,5,6-テトラメチルフェニル基、2-エチルフェニル基、3-エチルフェニル基、4-エチルフェニル基、2,3-ジエチルフェニル基、2,4-ジエチルフェニル基、2,5-ジエチルフェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、3,4-ジエチルフェニル基、3,5-ジエチルフェニル基、2-プロピルフェニル基、3-プロピルフェニル基、4-プロピルフェニル基、2-イソプロピルフェニル基、3-イソプロピルフェニル基、4-イソプロピルフェニル基、2-シクロプロピルフェニル基、3-シクロプロピルフェニル基、4-シクロプロピルフェニル基、2-ブチルフェニル基、3-ブチルフェニル基、4-ブチルフェニル基、2-(1-メチルプロピル)フェニル基、3-(1-メチルプロピル)フェニル基、4-(1-メチルプロピル)フェニル基、2-(2-メチルプロピル)フェニル基、3-(2-メチルプロピル)フェニル基、4-(2-メチルプロピル)フェニル基、2-シクロブチルフェニル基、3-シクロブチルフェニル基、4-シクロブチルフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-ビフェニリル基、3-ビフェニリル基、4-ビフェニリル基を例示することができる。
【0052】
<Lについて>
は、式(3a)で表されるリン配位子(以下、リン配位子(3a)ともいう。)を表す。mが2のとき、Lは同一又は相異なってもよい。合成が容易な点で、Lは同一であることが好ましい。
【0053】
本開示のユウロピウム錯体(1b)においては、リン配位子(3a)は、リン原子に結合している酸素原子の非共有電子対がユウロピウムイオンに配位している。
【0054】
<Xについて>
式(3a)のXで表される炭素数1~10のアルキル基としては、RB1、RB2、RB3、RB4及びRB5で表される炭素数1~10のアルキル基として例示した基を例示することができる。
【0055】
式(3a)のXで表される炭素数1~4のアルキル基としては、Xにおける炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよい窒素原子で例示した該炭素数1~4のアルキル基を例示することができる。
【0056】
式(3a)のXで表される炭素数1~4のアルキルオキシ基としては、RB1、RB2、RB3、RB4及びRB5で表される炭素数1~4のアルキルオキシ基で1つ以上置換されていてもよい炭素数2~4のアルケニル基における炭素数1~4のアルキルオキシ基を例示することができる。
【0057】
式(3a)のXで表されるフェニル基は、炭素数1~4のアルキル基;炭素数1~4のアルキルオキシ基;若しくはフェニル基で置換されてもよく、具体的には、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、o-エチルフェニル基、m-エチルフェニル基、p-エチルフェニル基、o-メトキシフェニル基、m-メトキシフェニル基、p-メトキシフェニル基、o-エトキシフェニル基、m-エトキシフェニル基、p-エトキシフェニル基、o-ブチルフェニル基、p-ブチルフェニル基、o-ブチルオキシフェニル基、p-ブチルオキシフェニル基、o-ビフェニリル基、m-ビフェニリル基、p-ビフェニリル基、2’,6’-ジイソプロピルビフェニル-2-イル基、2’,6’-ジメトキシビフェニル-2-イル基を例示することができる。
【0058】
したがって、リン配位子(3a)としては、より具体的には、トリフェニルホスフィンオキシド、シクロヘキシルジフェニルホスフィンオキシド、トリ(p-トリル)ホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド-d15、トリブチルホスフィンオキシド、トリ(tert-ブチル)ホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリシクロヘキシルホスフィンオキシド、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンオキシド、ジシクロヘキシル(o-トリル)ホスフィンオキシド、2-ビフェニリルジシクロヘキシルホスフィンオキシド、トリペンチルホスフィンオキシド、2-ビフェニリルジフェニルホスフィンオキシド、トリ(o-トリル)ホスフィンオキシド、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、(2’,6’-ジイソプロピルビフェニル-2-イル)ジシクロヘキシルホスフィンオキシド、(2’,6’-ジメトキシビフェニル-2-イル)ジシクロヘキシルホスフィンオキシドを例示することができる。原料が容易に入手可能な点で、トリフェニルホスフィンオキシド、シクロヘキシルジフェニルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィンオキシド、トリ(tert-ブチル)ホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリシクロヘキシルホスフィンオキシド、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンオキシド、2-ビフェニリルジフェニルホスフィンオキシド、トリ(o-トリル)ホスフィンオキシド、又はトリス(2-メトキシフェニル)ホスフィンオキシドが好ましく、ユウロピウム錯体(1b)の溶解性が高い点で、トリブチルホスフィンオキシド、又はトリオクチルホスフィンオキシドがより好ましい。
【0059】
また、本開示のユウロピウム錯体(1b)は、再沈殿、再結晶等による精製時の結晶溶媒を含んでいてもよい。
【0060】
本開示のユウロピウム錯体(1b)としては、具体的には次の式(1b-1)~(1b-21)で表されるユウロピウム錯体を例示することができる。
【0061】
【化8】
上記式(1b-1)~(1b-21)のうち、合成が容易な点で、式(1b-1)、(1b-8)、(1b-9)、(1b-10)、(1b-12)、(1b-15)、(1b-19)又は(1b-20)で表される化合物が好ましい。
【0062】
より好ましい実施態様としては、式(1bi)で表されるユウロピウム錯体(以下、ユウロピウム錯体(1bi)ともいう。)が挙げられる。具体的には次の式(1bi-1)~(1bi-21)で表されるユウロピウム錯体を例示することができる。
【0063】
【化9】
上記式(1bi-1)~(1bi-21)のうち、合成が容易な点で、式(1bi-1)、(1bi-8)、(1bi-9)、(1bi-10)、(1bi-12)、(1bi-15)、(1bi-19)又は(1bi-20)で表される化合物が好ましい。
【0064】
<ユウロピウム錯体(1b)の製造方法>)
次に、ユウロピウム錯体(1b)の製造方法について説明する。
【0065】
<製造方法1>
ユウロピウム錯体(1b)の製造方法として、下記式(4b)で表されるエノール(以下、エノール(4b)ともいう。)と、Lで表されるリン配位子(3a)と、ユウロピウム化合物とを反応させることを特徴とする製造方法1(以下、方法1ともいう。)を挙げることができる。
【0066】
【化10】
(式中、R、RB1、RB2、RB3、RB4、RB5、QU、L、及びmは、式(1b)及び又は式(qu)におけるR、RB1、RB2、RB3、RB4、RB5、QU、L、及びmと同じ意味を表す。)
方法1において、R、RB1、RB2、RB3、RB4、RB5、QU、L、及びmに示した定義及び具体例については、前記式(1b)、(1qu)におけるR、RB1、RB2、RB3、RB4、RB5、QU、L、及びmと同じである。
【0067】
リン配位子(3a)は、例えば、Chemical Reviews、第60巻、243-260ページ、1960年に記載の方法によって得ることができる。また、市販品を用いてもよい。
【0068】
方法1における、用いるリン配位子(3a)としては、具体的には、次の式(3a-1)~(3a-16)のいずれかを例示することができる。
【0069】
【化11】
方法1に用いるエノール(4b)は、例えば、The Journal of Organic Chemistry、第75巻、2741-2744ページ、2010年;Journal of the American Chemical Society、第66巻、1220-1222ページ、1944年;Tetrahedron、第74巻、2762-2768ページ、2018年;The Journal of Organic Chemistry、第80巻、10643-10650ページ、2015年に記載の方法によって得ることができる。また、市販品を用いてもよい。
【0070】
エノール(4b)は、異性化を起こしてエノール(4bi)、又はβ-ジケトン(4bii)を形成しうる。本開示はエノール(4b)、エノール(4bi)、及びβ-ジケトン(4bii)の全てを包含するものであるが、便宜上、本明細書においては、これらの異性体をエノール(4b)として表記する。
【0071】
【化12】
(式中、R、RB1、RB2、RB3、RB4、及びRB5は、前記式(1qu)のR、RB1、RB2、RB3、RB4、及びRB5と同じ意味を表す。)
方法1に用いるエノール(4b)は、塩基を作用させると活性プロトンを喪失し、下記式(4ba)~式(4bc)示す有機塩となる。この有機塩(4ba)~(4bc)をエノール(4b)として用いてもよく、その際の有機塩(4ba)~(4bc)のカウンターカチオンとして示されるM’は、具体的には、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン等のアルカリ金属イオン、トリエチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、ジイソプロピルエチルアンモニウム等の第3級アンモニウムイオン、ジエチルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム等の第2級アンモニウムイオン、ピリジニウム、2,6-ジメチルピリジニウム等のピリジニウムイオン、イミダゾリウム、N-メチルイミダゾリウム等のイミダゾリウムイオン、アンモニウムイオンを例示することができる。
【0072】
【化13】
(式中、R、RB1、RB2、RB3、RB4及びRB5は、式(qu)におけるR、RB1、RB2、RB3、RB4及びRB5と同じ意味を表す。M’は対カチオンを表す。)
方法1で用いられるユウロピウム化合物としては、例えばフッ化ユウロピウム(III);塩化ユウロピウム(III);臭化ユウロピウム(III);ヨウ化ユウロピウム(III)等のハロゲン化物塩若しくはその水和物、シュウ酸ユウロピウム(III);酢酸ユウロピウム(III);トリフルオロ酢酸ユウロピウム(III);トリフルオロメタンスルホン酸ユウロピウム(III)等の有機酸塩若しくはそれらの水和物、トリス[N,N-ビス(トリメチルシリル)アミド]ユウロピウム(III);ユウロピウム(III)トリメトキシド;ユウロピウム(III)トリエトキシド;ユウロピウム(III)トリ(イソプロポキシド)等の金属アルコキシド、又はリン酸ユウロピウム(III);硫酸ユウロピウム(III);硝酸ユウロピウム(III)等の無機酸塩若しくはそれらの水和物を挙げることができる。中でも反応収率が良い点で、塩化ユウロピウム(III);硝酸ユウロピウム(III)等の無機酸塩若しくはそれらの水和物、又はシュウ酸ユウロピウム(III);酢酸ユウロピウム(III);トリフルオロ酢酸ユウロピウム(III);トリフルオロメタンスルホン酸ユウロピウム(III)等の有機酸塩若しくはそれらの水和物が好ましく、酢酸ユウロピウム(III)、塩化ユウロピウム(III)又は硝酸ユウロピウム(III)若しくはそれらの水和物がより好ましい。
【0073】
方法1で用いるユウロピウム化合物は、市販品を用いることができる。
【0074】
方法1においてLは、用いるユウロピウム化合物の中に含まれていてもよく、具体的には、塩化ビス(トリフェニルホスフィンオキシド)ユウロピウム(III)、塩化ビス(トリシクロヘキシルホスフィンオキシド)ユウロピウム(III)、塩化ビス[トリ(o-トリル)ホスフィンオキシド]ユウロピウム(III)、塩化トリス(トリフェニルホスフィンオキシド)ユウロピウム(III)、硝酸ビス(トリフェニルホスフィンオキシド)ユウロピウム(III)、酢酸ビス(トリフェニルホスフィンオキシド)ユウロピウム(III)等の錯化合物を挙げることできる。該錯化合物は、例えば、RSC Advances、第6巻、90934-90943ページ、2016年に記載の方法によって得ることができる。また、市販品を用いてもよい。
【0075】
方法1において、ユウロピウム錯体(1b)の収率が良い点で、溶媒中で実施することが好ましい。使用可能な溶媒の種類には、反応を阻害しない限り特に制限は無い。使用可能な溶媒の例としては、ジクロロメタン;クロロホルム;クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、メタノール;エタノール;プロパノール;イソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸メチル;酢酸エチル;酢酸ブチル;酢酸イソアミル等のエステル類、エチレングリコールモノエチルエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテル;エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類、ジエチルエーテル;tert-ブチルメチルエーテル;グライム;ジグライム;トリグライム、;テトラヒドロフラン;シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、tert-ブチルメチルケトン;イソブチルメチルケトン;エチルブチルケトン;ジプロピルケトン;ジイソブチルケトン;シクロヘキサノン;アセトン等のケトン類、ヘキサン;シクロヘキサン;メチルシクロヘキサン;エチルシクロヘキサン;ヘプタン;オクタン;ベンゼン;トルエン;キシレン等の炭化水素類、又は水を挙げることができる。これら溶媒を単独、又は2種類以上を任意の比率で混合して用いることもできる。ユウロピウム錯体(1b)の反応収率が良い点で、溶媒としてはジクロロメタン、クロロホルム、メチルシクロヘキサン、アセトン、メタノール、エタノール、及び水からなる群から選択される1以上が好ましい。
【0076】
方法1における、ユウロピウム化合物及びエノール(4b)のモル比に関して説明する。ユウロピウム化合物1.0モルに対して1.0~5.0モルのエノール(4b)を用いることが好ましく、3.0~4.0モルのエノール(4b)を用いることがより好ましい。
【0077】
方法1における、ユウロピウム化合物及びリン配位子(3a)のモル比に関して説明する。ユウロピウム化合物1.0モルに対して0.5~5.0モルのリン配位子(3a)を用いることが好ましく、1.0~3.0モルのリン配位子(3a)を用いることがより好ましい。
【0078】
方法1におけるmが2であり、2つのLが異なるとき、ユウロピウム錯体(1b)を製造する際に2つのLを同時に加えてもよいし、別々に加えてもよい。
【0079】
方法1において、反応を促進するために塩基を加えて実施してもよい。該塩基として、トリメチルアミン;トリエチルアミン;ジエチルアミン;ピリジン;キノリン等の有機アミン類、又は炭酸ナトリウム;炭酸カリウム等の炭酸塩、炭酸水素ナトリウム;炭酸水素カリウム等の炭酸水素塩、水酸化ナトリウム;水酸化カリウム;水酸化リチウム等の水酸化物塩、若しくはアンモニア等の無機塩基を例示することができる。該塩基の当量としてはエノール(4b)1.0モルに対して1.0~10モルの塩基を用いるのが好ましく、2.0~8.0モルの塩基を用いることがより好ましく、3.0~5.0モルの塩基を用いることが更に好ましい。
【0080】
方法1において、反応温度及び反応時間には特に制限はなく、当業者が金属錯体を製造するときの一般的な条件を用いることができる。具体例としては、-80℃~120℃の反応温度において、1分間~120時間の反応時間を適宜選択することによってユウロピウム錯体(1b)を収率よく製造することができる。
【0081】
方法1で製造したユウロピウム錯体(1b)は当業者が金属錯体を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することができる。具体的な精製方法としては、ろ過、抽出、遠心分離、デカンテーション、蒸留、昇華、結晶化、カラムクロマトグラフィーからなる群から選択される1以上を挙げることができる。
【0082】
<製造方法2>
本開示のユウロピウム錯体(1b)の製造方法として、下記式(1baq)で表されるジケトナト錯体と、Lで表されるリン配位子(3a)とを反応させることを特徴とするユウロピウム錯体(1b)の製造方法2(以下、方法2ともいう。)も挙げることができる。
【化14】
(式中、QU、及びmは、式(1b)におけるQU、及びmと同じ意味を表す。
式中、Qは、中性分子を表す。mは0又は1を表す。)
方法2において、QU、及びmに示した定義及び具体例については、前記式(1b)におけるQU、及びmと同じである。
【0083】
方法2において、Qで表される中性分子としては、具体的には、水、重水、ピリジン、イミダゾール、アセトン;メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール;エタノール;プロパノール;イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトニトリル;プロピオニトリル等のニトリル類、アンモニア;ジエチルアミン;トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルエーテル;ジエチルエーテル;テトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド;ジメチルスルホン等の硫黄化合物を例示することができる。
【0084】
方法2に用いるジケトナト錯体(1baq)は、例えば、参考例2に示す方法に従って入手することができる。
【0085】
方法2におけるリン配位子(3a)は、上記方法1の説明にて例示した方法によって入手することができる。また、市販品を用いることもできる。
【0086】
方法2における用いるリン配位子(3a)としては、上記方法1の説明にて例示したものと同様のものを例示することができる。
【0087】
方法2において、ユウロピウム錯体(1b)の収率が良い点で、溶媒中で実施することが好ましい。使用可能な溶媒の種類には、反応を阻害しない限り特に制限は無い。使用可能な溶媒の例としては、ジクロロメタン;クロロホルム;クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、メタノール;エタノール;プロパノール;イソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸エチル;酢酸ブチル;酢酸イソアミル等のエステル、エチレングリコールモノエチルエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテル;エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類、ジエチルエーテル;tert-ブチルメチルエーテル;グライム;ジグライム;トリグライム;テトラヒドロフラン等のエーテル類、tert-ブチルメチルケトン;イソブチルメチルケトン;エチルブチルケトン;ジプロピルケトン;ジイソブチルケトン;シクロヘキサノン;アセトン等のケトン類、ヘキサン;シクロヘキサン;メチルシクロヘキサン;エチルシクロヘキサン;ヘプタン;オクタン;ベンゼン;トルエン;キシレン等の炭化水素類、又は水を挙げることができる。これら溶媒を単独、又は2種類以上を任意の比率で混合して用いることができる。ユウロピウム錯体(1b)の収率が良い点で、溶媒としてはジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、メチルシクロヘキサン、メタノール、エタノール、及び水からなる群から選択される1以上が好ましい。
【0088】
方法2における、ジケトナト錯体(1baq)及びリン配位子(3a)のモル比に関して説明する。ジケトナト錯体(1baq)1.0モルに対して0.5~5.0モルのリン配位子(3a)を用いることが好ましく、1.0~3.0モルのリン配位子(3a)を用いることがより好ましい。
【0089】
方法2における、mが2であり、2つのLが異なるとき、ユウロピウム錯体(1b)を製造する際に2つのLを同時に加えてもよいし、別々に加えてもよい。
【0090】
方法2におけるジケトナト錯体(1baq)及び中性配位子のモル比に関して説明する。ジケトナト錯体(1baq)1.0モルに対して0.5~10モルの該中性配位子を用いることが好ましく、1.0~8.0モルの該中性配位子を用いることがより好ましい。
【0091】
また、方法2において、反応温度及び反応時間には特に制限はなく、当業者が金属錯体を製造するときの一般的な条件を用いることができる。具体例としては、-80℃~120℃の反応温度において、1分間~120時間の反応時間を選択することによってユウロピウム錯体(1b)を反応収率よく製造することができる。
【0092】
方法2で製造したユウロピウム錯体(1b)は、当業者が金属錯体を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することができる。具体的な精製方法としては、ろ過、抽出、遠心分離、デカンテーション、蒸留、昇華、結晶化、及びカラムクロマトグラフィーからなる群から選択される1以上を挙げることができる。
【0093】
ジケトナト錯体(1baq)は、キノリノナト配位子(1qu)の互変異性体の構造によって、下記ジケトナト錯体(1baqi)~ジケトナト錯体(1baqviii)の配位構造が存在する。ジケトナト錯体(1baq)はジケトナト錯体(1bi)~ジケトナト錯体(1bvi)をすべて包含するものであるが、便宜上、本明細書においては、これらの異性体をジケトナト錯体(1baq)又はジケトナト錯体(1baqi)として表記する。
【0094】
【化15】
(式中、R、RB1、RB2、RB3、RB4、RB5、m、及びQは、前記式(1baq)又は(1bi)のR、RB1、RB2、RB3、RB4、RB5、m、及びQと同じ意味を表す。)
【実施例0095】
以下、本開示について実施例、比較例及び評価実施例により説明する。しかしながら、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0096】
ユウロピウム錯体(1b)の同定には、以下の分析方法を用いた。
【0097】
H-NMR、19F-NMR及び31P-NMR各スペクトル測定には、BRUKER社製 ULTRASHIELD PLUS AVANCE III(400MHz、376MHz及び162MHz)及びASCEND AVANCE III HD(400MHz、376MHz及び162MHz)を用いた。H-NMRは、重クロロホルム(CDCl)、又は重アセトン(Acetone-d)を測定溶媒とし、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用いて測定した。19F-NMRは、重クロロホルム(CDCl)、重アセトン(Acetone-d)、重アセトニトリル(CDCN)又は重ジメチルスルホキシド(DMSO-d)を測定溶媒として測定した。31P-NMRは、重クロロホルム(CDCl)又は重アセトン(Acetone-d)を用いて測定した。
【0098】
質量分析の測定には、waters社製 waters2695-micromassZQ4000を用いて行った。
【0099】
発光スペクトルの測定には分光光度計(日本分光社製、FP-6500)を用いて測定した。
【0100】
UV-Visスペクトルの測定には紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、V-670)を用いて測定した。
【0101】
また、試薬類は市販品を用いた。
【0102】
(参考例1)
【化16】
シアノ酢酸(3.40g,40.0mmol)とN-フェニル-2-ナフチルアミン(8.76g,40.0mmol)の混合物にN,N-ジメチルホルムアミド(40mL)を加え、室温の水浴上でトリフルオロ酢酸無水物(22.6mL,160mmol)を1時間かけて滴下し、同温で更に23時間撹拌した。反応液を水(200mL)に加え、析出した固体を吸引ろ取しアセトニトリルで洗浄後、真空乾燥することにより1-ヒドロキシ-4-フェニル-2-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)ベンゾ[f]キノリン-3(4H)-オンの橙黄色固体を得た(収量10.9g,収率71%)。H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):16.5(s,1H),9.47(d,J=8.9Hz,1H),7.90(d,J=9.8Hz,1H),7.84(brd,J=7.6Hz,1H),7.77(ddd,J=8.9,7.6,1.6Hz,1H),7.66-7.53(m,4H),7.32-7.29(m,2H),6.79(d,J=9.8Hz,1H).19F-NMR(376MHz,CDCl)δ(ppm):-73.7.
【0103】
(参考例2)
【化17】
酢酸ユウロピウム(III)水和物(2.5水和物として1.13g,3.01mmol)と参考例1で得た1-ヒドロキシ-4-フェニル-2-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)ベンゾ[f]キノリン-3(4H)-オン(3.45g,9.00mmol)をエタノール(113mL)及び水(37.5mL)に懸濁した後、1Mの水酸化ナトリウム水溶液(9.00mL,9.00mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。エタノールを留去した後、反応混合物に水を入れてろ過し、ろ取した固体を水、次いでごく少量のエタノールで洗浄した。洗浄した固体を加熱乾燥することでジアクアトリス[1-ヒドロキシ-4-フェニル-2-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)ベンゾ[f]キノリン-1(4H)-オナト]ユウロピウム(III)の黄色固体を得た。(収量3.72g,収率93%)。得られた粗生成物は更なる精製をせず、そのまま次の反応に用いた。19F-NMR(376MHz,Acetone-d)δ(ppm):-69.6(brs,3.4F),-70.0(brs,1.5F),-70.2(brs,0.4F),-70.4(brs,0.5F),-70.9(brs,0.5F),-71.1(brs,0.3F),-73.0(brs,1.0F),-73.9(brs,1.0F),-74.1(brs,0.4F).ESIMS(m/z),MeOH:1321.3[M-2HO+Na].
【0104】
(参考例3)
【化18】
N-エチルナフチルアミン臭化水素塩(5.04g,20.0mmol)及びシアノ酢酸(1.75g,20.0mmol)に無水酢酸(20.0mL,212mmol)を加えた。ここにピリジン(2.00mL,24.8mmol)を入れ、80℃で5時間撹拌した。反応液に氷水(120mL)を加え、室温で2時間撹拌した。生じた固体をろ取し、得られた固体を減圧下60℃で2時間乾燥することで、N-エチル-N-(1-ナフチル)-2-シアノアセトアミドの薄橙色粉末(収量4.00g,収率84%)を得た。H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):7.99-7.93(m,2H),7.78(brd,J=7.5Hz,1H),7.67-7.56(m,2H),7.54(brd,J=8.3,7.4Hz,1H),7.39(dd,J=7.4,1.1Hz,1H),4.27(dq,J=13.3,7.3Hz,1H),3.51(dq,J=13.3,7.3Hz,1H),3.15(d,J=18.1Hz,1H),2.99(d,J=18.1Hz,1H),1.21(t,J=7.3,3H).
N-エチル-N-(1-ナフチル)-2-シアノアセトアミド(4.00g,16.8mmol)にN,N-ジメチルホルムアミド(10.0mL)を加え、水浴で反応容器を冷却した。ここにトリフルオロ酢酸無水物(5.31mL,50.4mmol)を1時間かけて滴下し、室温で12.5時間撹拌した。反応液に再びトリフルオロ酢酸無水物(5.31mL,50.4mmol)を1時間かけて滴下し、室温で70時間撹拌した。反応液に水(40mL)を加え、室温で30分間撹拌した。生じた固体をろ取し、水で洗浄後、減圧下60℃で2時間乾燥することで、1-エチル-4-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)ベンゾ[h]キノリン-2(1H)-オンの橙色固体(収量4.88g,収率87%)を得た。H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):14.22(brs,1H),8.37(brd,J=8.7Hz,1H),8.07(d,J=8.7Hz,1H),7.92(brd,J=8.1Hz,1H),7.70(ddd,J=8.1,6.9,1.0Hz,1H),7.64(brd,J=8.5Hz,1H),7.60(ddd,J=8.5,6.9,1.5Hz,1H),4.47(q,J=6.9Hz,2H),1.70(t,J=6.9Hz,3H).19F-NMR(376MHz,CDCl)δ(ppm):-74.0.
【0105】
(参考例4)
【化19】
酢酸ユウロピウムn水和物(2.5水和物として187mg,500μmol)と参考例3で得た1-エチル-4-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)ベンゾ[h]キノリン-2(1H)-オン(503mg,1.50mmol)をエタノール(20.0mL)と水(6.0mL)に懸濁した後、1Mの水酸化ナトリウム(1.50mL,1.50mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮した後、得られた固体を水で洗浄し、加熱乾燥することでジアクアトリス[1-エチル-4-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)ベンゾ[h]キノリン-2(1H)-オナト]ユウロピウム(III)(1baq-15)の黄色固体を得た(収量460mg,収率77%)。19F-NMR(376MHz,CDCl)δ(ppm):-74.0.ESIMS(m/z),MeOH:1177.9[M-2HO+Na]
【0106】
(参考例5)
【化20】
アニリン(38.2mL,418mmol)、ナトリウムt-ブトキシド(43.8g,456mmol)、トリ-t-ブチルホスフィン(1Mヘキサン溶液,3.80mL,3.80μmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(873mg,953μmol)、4-ブロモジベンゾチオフェン(100g,380mmol)をトルエン(380mL)に懸濁した後、100℃で22時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(40.0mL)で希釈した後、セライトろ過し、酢酸エチルで洗浄後、減圧濃縮した。得られた固体をメタノールで洗浄することで、N-フェニルジベンゾ[b,d]チオフェン-4-アミンの白色固体を得た(収量93.2g,収率89%)。H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):8.16(m,1H),7.89-7.84(m,2H),7.50-7.45(m,2H),7.41(dd,7.7,7.7Hz,1H),7.35(dd,7.7,0.7Hz,1H),7.33-7.28(m,2H),7.08(dd,8.6,1.2Hz,2H),7.00(tt,7.4,1.2Hz,1H),5.66(s,1H).
N-フェニルジベンゾ[b,d]チオフェン-4-アミン(128g,466mmol)とシアノ酢酸(39.6g,466mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(466mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸無水物(261mL,1.86mol)を滴下した後、室温にて22時間撹拌した。反応液に水(900mL)を加え、析出した固体を吸引ろ取し、得られた固体をアセトニトリル(700mL)で洗浄することで、1-フェニル-4-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)-[1]ベンゾチエノ[3,2-h]キノリン-2(1H)-オンの黄色固体を得た(収量133g,収率65%)。H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):14.75(brs,1H),8.38(d,J=8.7Hz,1H),8.29(m,1H),8.07(d,J=8.7Hz,1H),7.70(ddd,J=6.3,6.3,1.2Hz,1H),7.65-7.59(m,3H),7.50-7.45(m,4H).19F-NMR(376MHz,CDCl)δ(ppm):-74.0.
【0107】
(参考例6)
【化21】
1-ナフチルアミン(3.00g,20.1mmol)とエタノール(3.0mL)に1-ブロモヘキサン(4.20mL,30.0mmol)を加え、加熱還流下22時間撹拌した。反応混合物から溶媒を減圧留去した後、酢酸エチルを加えて、析出した薄紫色固体をろ取した。これにクロロホルムを加え、セライトろ過した後、クロロホルムを減圧留去し、薄赤色の油状物を得た。これにアセトンを加え、析出した白色粉末をろ取することでN-ヘキシル-1-ナフチルアミン臭化水素塩の白色粉末を得た(収量2.32g,収率49%)。H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):11.25(brs,2H),8.45(brd,J=8.5Hz,1H),8.03(brd,J=7.3,1H),7.91-7.84(m,2H),7.69(ddd,J=8.5,7.0,1.3Hz,1H),7.57(ddd,J=8.2,7.3,0.7Hz,1H),7.44(dd,J=8.1,7.6Hz,1H),3.54-3.47(m,2H),2.00-1.90(m,2H),1.28-1.04(m,6H),0.75(t,J=6.9Hz,3H).
N-ヘキシル-1-ナフチルアミン臭化水素塩(1.94g,6.29mmol)及びシアノ酢酸(537mg,6.31mmol)に無水酢酸(6.75mL,71.4mmol)を加えた。ここにピリジン(530μL,6.57mmol)を入れ、80℃で3時間撹拌した。反応液に氷水(120mL)を加え、室温で2時間撹拌した。生じた油状物をろ取し、得られた油状物を減圧下室温で2時間乾燥することで、N-ヘキシル-N-(1-ナフチル)-2-シアノアセトアミドの薄褐色液体(収量1.78g,収率96%)を得た。H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):7.99-7.93(m,2H),7.76(brd,J=7.8Hz,1H),7.66-7.57(m,2H),7.56-7.51(m,1H),7.38(dd,J=7.3,1.2Hz,1H),4.27-4.19(m,1H),3.41-3.31(m,1H),3.15(d,J=18.4Hz,1H),2.97(d,J=18.4Hz,1H),1.38-1.16(m,8H)0.91-0.78(m,3H).
N-ヘキシル-N-(1-ナフチル)-2-シアノアセトアミド(687mg,2.33mmol)にN,N-ジメチルホルムアミド(2.33mL)を加え、水浴で反応容器を冷却した。ここにトリフルオロ酢酸無水物(1.11mL,7.93mmol)を1時間かけて滴下し、室温で19時間撹拌した後、40℃で25時間撹拌した。反応液に水(36mL)を加え、室温で1時間撹拌した。生じた固体をろ取し、水で洗浄後、減圧下60℃で1時間乾燥した後、ヘキサンで洗浄した。得られた粉末をジエチルエーテルに溶解させた後、水で洗浄した。有機層の溶媒を減圧留去し、減圧下60℃で3時間乾燥することで1-ヘキシル-4-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)ベンゾ[h]キノリン-2(1H)-オンの黄色固体(収量423mg,収率46%)を得た。H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):14.22(brs,1H),8.30(brd,J=8.6Hz,1H),8.06(d,J=8.6Hz,1H),7.91(brd,J=8.1Hz,1H),7.69(ddd,J=8.1,6.9,1.0Hz,1H),7.63(brd,J=8.6Hz,1H),7.59(ddd,J=8.6,6.9,1.5Hz,1H),4.39(m,2H),2.11-1.97(m,2H),1.39-1.22(m,6H),0.86(t,J=6.7Hz,3H).19F-NMR(376MHz,CDCl)δ(ppm):-74.0.
【0108】
(参考例7)
【化22】
1-ナフチルアミン(3.06g,21.4mmol)とエタノール(3.05mL)に1H,1H,2H,2H-パーフルオロヘキシルヨージド(5.89mL,30.5mmol)を加え、加熱還流下17時間撹拌した。反応混合物から溶媒を減圧留去した後、クロロホルムを加えて、析出した薄青色固体をろ過により除いた。これにヘキサンを加えて、ろ過した後、ヘキサンを減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)にて精製することで、N-(1H,1H,2H,2H-パーフルオロヘキシル)-1-ナフチルアミンの薄褐色液体(収量3.37g,収率41%)を得た。H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):7.84-7.80(m,1H),7.79-7.75(m,1H),7.51-7.43(m,2H),7.41-7.34(m,1H),7.33-7.28(m,1H),6.64(brd,J=7.5Hz,1H),4.50(brs,1H),3.73(brs,2H),2.65-2.48(m,2H).19F-NMR(376MHz,CDCl)δ(ppm):-80.9~-80.1(m,3F),-113.9~-114.0(m,2F),-124.3~-124.5(m,2F),-125.8~-126.1(m,2F).
N-(1H,1H,2H,2H-パーフルオロヘキシル)-1-ナフチルアミン(1.96g,5.02mmol)及びシアノ酢酸(427mg,5.02mmol)にN,N-ジメチルホルムアミド(5.02mL)を加え、水浴で反応容器を冷却した。ここにトリフルオロ酢酸無水物(3.52mL,25.1mmol)を1時間かけて滴下し、40℃で21時間撹拌した。反応液に水(130mL)を加え、室温で2時間撹拌した。デカンテーションにより上澄みを除き、減圧下室温で1時間乾燥することで黒色油状物を得た。これをヘキサンで洗浄した後、ヘキサンを加えて沸騰するまで加熱し、残渣をろ過した後、氷冷した。ろ液に析出した不溶物をろ過した後、ヘキサンを減圧留去し、橙色固体を得た。これをヘキサメチルジシロキサンで洗浄した後、減圧下60℃で30分乾燥することで、1-(1H,1H,2H,2H-パーフルオロヘキシル)-4-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)ベンゾ[h]キノリン-2(1H)-オンの黄色固体(収量237mg,収率9%)を得た。H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):8.13(d,J=8.7Hz,1H),8.08(d,J=.8.7Hz,1H),7.95(d,J=8.2Hz,1H),7.76-7.68(m,2H),7.63(ddd,J=8.2,7.3,1.2,1H),4.74(t,J=7.4Hz,2H),3.13-2.85(m,2H).19F-NMR(376MHz,CDCl)δ(ppm):-74.1(s,3F),-81.0(tt,J=9.6Hz,2.7Hz,3F),-114.3~-114.4(m,2F)-124.1~-124.2(m,2F),-125.9~-126.0(m,2F).
【0109】
(参考例8)
【化23】
N-(4-ビフェニリル)ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-アミン(351mg,1.00mmol)とシアノ酢酸(85.0mg,1.00mmol)を無水酢酸(2.00mL)に溶解し、80℃で4時間撹拌した。反応混合物を冷水(20mL)に注ぎ、エタノール(1.0mL)を加え30分撹拌した後、析出した固体を吸引ろ取し、得られた固体をエタノールで洗浄することで白茶色固体を得た。得られた白茶色固体をN,N-ジメチルホルムアミド(2.0mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸無水物(290μL,2.07mmol)を滴下した後、40℃で24時間撹拌した。反応液に水(20mL)を加え、析出した固体を吸引ろ取し、1Mの水酸化ナトリウム水溶液(10mL)を加えた。懸濁液に水(20mL)を加え、1時間撹拌した後セライトろ過し、水で洗浄した。母液に1Mの塩酸(10mL)加え、析出した固体を吸引ろ取し、得られた固体をジエチルエーテルで洗浄することで、1-(4-ビフェニリル)-4-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)-[1]ベンゾチエノ[3,2-h]キノリン-2(1H)-オンの黄色固体を得た(収量296mg,収率57%)。H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):14.77(brs,1H),8.39(d,J=8.6Hz,1H),8.22-8.18(m,1H),8.09(d,J=8.6Hz,1H),7.85(ddd,J=8.6,8.6,2.0Hz,2H),7.79-7.75(m,2H),7.67-7.61(m,1H),7.56-7.42(m,7H).19F-NMR(376MHz,CDCl)δ(ppm):-74.0.
【0110】
(参考例9)
【化24】
4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオン(999mg,4.50mmol)にエタノール(20mL)と1M水酸化ナトリウム水溶液(4.50mL,4.50mmol)を加えた。この混合物に塩化ユウロピウム六水和物(550mg,1.50mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。この反応液に水(150mL)を加え、60℃でさらに30分間撹拌した。生じた固体をろ取し、水で洗浄することで、ジアクアトリス[4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオナト]ユウロピウム(III)の白色固体を得た(収量695mg,収率54%)。19F-NMR(376MHz,DMSO-d)δ(ppm):-78.4(brs).ESI-MS(m/z),MeOH:839.1[M+Na]
【0111】
(参考例10)
【化25】
2,4,6-トリクロロトリアジン(18.4g,100mmol)とN,N-ジエチルアニリン(29.7g,199mmol)を混合し、70℃で18時間撹拌した。室温まで冷却した後、温めたクロロホルム(200mL)を加え、ろ過し、ろ液を静置した。析出した固体をろ取し、クロロホルムで洗浄し、乾燥した。得られた粗生成物をアセトンにて再結晶することで、4-[4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル]-N,N-ジエチルアニリンの黄褐色結晶をを得た(収量1.54g,収率5.2%)。H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):8.31(brd,J=9.3Hz,2H),6.68(brd,J=9.3Hz,2H),3.47(q,J=7.1Hz,4H),1.24(t,J=7.1Hz,6H).
4-[4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル]-N,N-ジエチルアニリン(650mg,2.19mmol)と3,5-ジメチルピラゾール(640mg,6.66mmol)をトルエン(30mL)に溶解し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(3.30mL,19.3mmol)を加え、80℃で12時間撹拌した。室温まで冷却した後、固体をろ取し、冷やしたアセトニトリルで洗浄し、乾燥することで、4-[4,6-ビス(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-N,N-ジエチルアニリンの淡黄色粉末を得た(収量638mg,収率70%)。H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):8.40(brd,J=9.1Hz,2H),6.72(brd,J=9.3Hz,2H),6.08(brs,2H),3.47(q,J=7.1Hz,4H),2.85(brs,6H),2.35(s,6H),1.24(t,J=7.1Hz,6H).
【0112】
(実施例1)
【化26】
参考例2で得たジアクアトリス[4-ヒドロキシ-1-フェニル-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)ベンゾ[h]キノリン-2(1H)-オナト]ユウロピウム(III)(1baq-1)(267mg,200μmol)、トリブチルホスフィンオキシド(87.3mg,400μmol)をアセトン(20mL)に溶解し、室温で3時間撹拌した。反応混合物をセライトろ過した後、減圧濃縮し、得られた粗生成物をアセトン/ヘキサンにて再沈殿することで、トリス[1-フェニル-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)ベンゾ[h]キノリン-2(1H)-オナト]ビス(トリブチルホスフィンオキシド)ユウロピウム(III)(1b-1)の黄色固体を得た(収量156mg,収率45%)。19F-NMR(376MHz,Acetone-d)δ(ppm):-70.9(brs,3.3F),-71.0(brs,1.3F),-71.1(brs,2.4F),-71.2(brs,2.0F).31P-NMR(162MHz,Acetone-d)δ(ppm):-57.9(brs).ESIMS(m/z),MeOH:1757.6[M+Na],1539.7[M-TPPO+Ma],1352.6[M-(4-ヒドロキシ-1-フェニル-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)ベンゾ[h]キノリン-2(1H)-オナト)]
【0113】
(実施例2)
【化27】
参考例4で得たジアクアトリス[1-エチル-4-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエチル-1-オン-1イル)ベンゾ[h]キノリン-2(1H)-オナト]ユウロピウム(III)(1baq-2)(133mg,100μmol)、トリオクチルホスフィンオキシド(77.0mg,200μmol)をアセトン(10mL)に溶解し、室温で3時間撹拌した。反応混合物をセライトろ過した後、ろ液を減圧濃縮し、アセトン/ヘキサンで再沈殿後上澄みを濃縮することで、トリス[1-エチル-4-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエチル-1-オン-1イル)ベンゾ[h]キノリン-2(1H)-オナト]ビス(トリオクチルホスフィンオキシド)ユウロピウム(III)(1b-8)の黄色固体を得た(収量155mg,収率75%)。19F-NMR(376MHz,Acetone-d)δ(ppm):-70.9(s,4.8F),-71.1(s,2.3F),-71.2(s,1.2F),-71.3(s,0.7F).31P-NMR(162MHz,Acetone-d)δ(ppm):-57.0(brs).ESIMS(m/z),MeOH:2095.7[M+Na],1708.1[M-トリオクチルホスフィンオキシド+Na]
【0114】
(実施例3)
【化28】
酢酸ユウロピウム(III)水和物(5.2水和物として128mg,303μmol)に水(1.50mL)及びトルエン(1.50mL)を加え、室温で2分間撹拌した後、トリブチルホスフィンオキシド(132mg,605μmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に参考例5で得た1-フェニル-4-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)-[1]ベンゾチエノ[3,2-h]キノリン-2(1H)-オン(400mg,910μmol)及び炭酸水素ナトリウム(76.5mg,911μmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応終了後トルエン層と水層を分離し、水層をトルエン(5.00mL)で抽出した。有機層を併せ、水(5.00mL)で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮することでトリス[1-フェニル-4-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)-[1]ベンゾチエノ[3,2-h]キノリン-2(1H)-オナト]ビス(トリブチルホスフィンオキシド)ユウロピウム(III)(1b-9)の黄色固体を得た(収量311mg,収率54%)。19F-NMR(376MHz,CDCl)δ(ppm):-70.6(s,1.8F),-71.1(s,6.2F),-73.3(s,1.0F).31P-NMR(162MHz,CDCl)δ(ppm):-53.2(brs,1.3P),-57.0(brs,0.7P).ESIMS(m/z),MeOH:1926.4[M+Na],1708.2[M-(トリブチルホスフィンオキシド)+Na]
【0115】
(実施例4)
【化29】
酢酸ユウロピウム(III)水和物(5.2水和物として19.9g,47.2mmol)に水(236mL)及びトルエン(236mL)を加え、室温で6分間撹拌した後、トリオクチルホスフィンオキシド(36.5g,94.3mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に参考例5で得た1-フェニル-4-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)-[1]ベンゾチエノ[3,2-h]キノリン-2(1H)-オン(62.2g,142mmol)及び炭酸水素ナトリウム(11.9g,142mmol)を加え、室温で5時間撹拌した。不溶物をろ過にて除いた後、トルエン層と水層を分離し、水層をトルエン(250mL)で抽出した。有機層を併せ、水(200mL)で3回洗浄し、減圧濃縮することでトリス[1-フェニル-4-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)-[1]ベンゾチエノ[3,2-h]キノリン-2(1H)-オナト]ビス(トリオクチルホスフィンオキシド)ユウロピウム(III)(1b-10)の黄色固体を得た(収量103g,収率97%)。19F-NMR(376MHz,CDCl)δ(ppm):-70.6(s,1.8F),-71.2(s,6.1F),-73.4(s,1.1F).31P-NMR(162MHz,CDCl)δ(ppm):-54.2(brs,1.3P),-58.5(brs,0.7P).ESIMS(m/z),MeOH:2262.6[M+Na],1878.3[M-(トリオクチルホスフィンオキシド)+Na]
【0116】
(実施例5)
【化30】
酢酸ユウロピウム(III)水和物(2.5水和物として64.8mg,173μmol)と参考例6で得た1-ヘキシル-4-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)-ベンゾ[h]キノリン-2(1H)-オン(203mg,519μmol)にエタノール(5.19mL)及び水(1.73mL)を加えた後、1Mの水酸化ナトリウム水溶液(519μL,519μmol)を加え、室温で3時間撹拌した。エタノールを留去した後、反応混合物に水を入れてろ過し、ろ取した固体を水で洗浄した。洗浄した固体を減圧下加熱乾燥することで、ジアクアトリス[1-ヘキシル-4-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)-ベンゾ[h]キノリン-2(1H)-オナト]ユウロピウム(III)(1baq-3)の黄色粉末固体を得た(収量182mg,収率77%)。得られた粗生成物は更なる精製をせず、そのまま次の反応に用いた。19F-NMR(376MHz,Acetone-d)δ(ppm):-70.6(s,6.0F),-71.9(s,3.0F).ESIMS(m/z),MeOH:1345.8[M-2HO+Na]
【0117】
ジアクアトリス[1-ヘキシル-54-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)-ベンゾ[h]キノリン-2(1H)-オナト]ユウロピウム(III)(164mg,121μmol)、トリフェニルホスフィンオキシド(67.3mg,242μmol)にアセトン(12.1mL)を加え、室温で4時間撹拌した。反応混合物をセライトろ過した後、減圧濃縮し、アセトン/ヘキサンで再沈殿することで、トリス[1-ヘキシル-4-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)-ベンゾ[h]キノリン-2(1H)-オナト]ビス(トリフェニルホスフィンオキシド)ユウロピウム(III)(1b-15)の黄色固体を得た(収量35mg,収率15%)。19F-NMR(376MHz,Acetone-d)δ(ppm):-70.5(brs,1.5F),-71.8(brs,0.7F),-72.1(s,2.2F),-72.2(s,3.2F),-73.7(s,0.5F),-74.1(s,0.9).31P-NMR(162MHz,Acetone-d)δ(ppm):-86.2(brs).ESIMS(m/z),MeOH:1903.7[M+Na],1624.7[M-(トリフェニルホスフィンオキシド)+Na]
【0118】
(実施例6)
【化31】
酢酸ユウロピウム(III)水和物(2.5水和物として48.7mg,130μmol)と参考例7で得た1-(1H,1H,2H,2H-パーフルオロヘキシル)-4-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)ベンゾ[h]キノリン-2(1H)-オン(217mg,392μmol)にエタノール(4.88mL)及び水(1.63mL)を加えた後、1Mの水酸化ナトリウム水溶液(390μL,390μmol)を加え、室温で3時間撹拌した。エタノールを留去した後、反応混合物に水を入れてろ過し、ろ取した固体を水で洗浄した。洗浄した固体にヘキサンを加えて撹拌した後、ヘキサンを留去し、減圧下加熱乾燥することで、ジアクアトリス[1-(1H,1H,2H,2H-パーフルオロヘキシル)-4-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)ベンゾ[h]キノリン-2(1H)-オナト]ユウロピウム(III)(1baq-4)の黄色粉末固体を得た(収量73.8mg,収率31%)。得られた粗生成物は更なる精製をせず、そのまま次の反応に用いた。19F-NMR(376MHz,Acetone-d)δ(ppm):,-71.2(s,3.9F)-74.0(s,5.1H),-82.2(s,9H),-115.7(s.6H),-125.3(s,6H),-127.1(s,6H).ESIMS(m/z),MeOH:1832.8[M-2HO+Na]
【0119】
ジアクアトリス[1-(1H,1H,2H,2H-パーフルオロヘキシル)-4-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)ベンゾ[h]キノリン-2(1H)-オナト]ユウロピウム(III)(66mg,36μmol)、トリフェニルホスフィンオキシド(19.8mg,71μmol)にアセトン(3.6mL)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物をセライトろ過した後、減圧濃縮し、ヘキサンを加えて撹拌した。固体分をろ過により除き、ヘキサンを留去した後、アセトン/水で再沈殿することで、トリス[1-(1H,1H,2H,2H-パーフルオロヘキシル)-4-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)ベンゾ[h]キノリン-2(1H)-オナト]ビス(トリフェニルホスフィンオキシド)ユウロピウム(III)(1b-20)の黄色固体を得た(収量21mg,収率25%)。19F-NMR(376MHz,Acetone-d)δ(ppm):-72.4(s,9F),-82.2(t,J=9.6Hz,9F),-115.2~-115.5(m,6F),-125.1~-125.3(m,6F),-126.9~-127.1(m,6F).31P-NMR(162MHz,Acetone-d)δ(ppm):-86.2(brs).ESIMS(m/z),MeOH:2389.0[M+Na],2110.9[M-(トリフェニルホスフィンオキシド)+Na]
【0120】
(実施例7)
【化32】
酢酸ユウロピウム(III)水和物(5.2水和物として211mg,499μmol)に水(2.50mL)及びトルエン(2.50mL)を加え、室温で2分間撹拌した後、トリオクチルホスフィンオキシド(386mg,998μmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に参考例8で得た1-(4-ビフェニリル)-4-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)-[1]ベンゾチエノ[3,2-h]キノリン-2(1H)-オン(772mg,1.50mmol)及び炭酸水素ナトリウム(126mg,1.50mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応終了後トルエン層と水層を分離し、水層をトルエン(5.00mL)で抽出した。有機層を併せ、水(5.00mL)で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮することでトリス[1-(4-ビフェニリル)-4-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)-[1]ベンゾチエノ[3,2-h]キノリン-2(1H)-オナト]ビス(トリオクチルホスフィンオキシド)ユウロピウム(III)(1b-12)の黄色固体を得た(収量1.12g,収率91%)。19F-NMR(376MHz,CDCl)δ(ppm):-70.6(s,2.0F),-71.2(s,6.0F),-73.4(s,1.0F).31P-NMR(162MHz,CDCl)δ(ppm):-54.3(brs,1.3P),-58.9(brs,0.7P).ESIMS(m/z),MeCN:2484.6[M+NH
【0121】
(実施例8)
【化33】
酢酸ユウロピウム(III)水和物(5.2水和物として84.6mg,200μmol)にエタノール(4.00mL)及び参考例5で得た1-フェニル-4-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)-[1]ベンゾチエノ[3,2-h]キノリン-2(1H)-オン(263mg,600μmol)を加え、pH7までアンモニア水溶液を滴下し、室温で3時間撹拌した。反応混合物にトリオクチルホスフィンオキシド(77.2mg,200μmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮し、アセトン/ヘキサンで再沈殿した後、クロロホルムに溶解し、不溶物をろ過にて除くことでトリス[1-フェニル-4-ヒドロキシ-3-(2,2,2-トリフルオロエタン-1-オン-1-イル)-[1]ベンゾチエノ[3,2-h]キノリン-2(1H)-オナト](トリオクチルホスフィンオキシド)ユウロピウム(III)(1b-19)の黄色固体を得た(収量95.6mg,収率26%)。19F-NMR(376MHz,CDCl)δ(ppm):-71.2(brs).31P-NMR(162MHz,CDCl)δ(ppm):-38.1(brs).ESIMS(m/z),MeCN:1876.4[M+Na]
【0122】
(比較例1)
【化34】
酢酸ユウロピウムn水和物(8.0g,2.5水和物として21mmol)に純水(100mL)を加え、室温で10分撹拌した。反応混合物にヘキサフルオロアセチルアセトン(16.7g,80.2mmol)を滴下後、50℃で3時間撹拌した。得られた白色懸濁液をろ別し、得られた白色固体を水(200mL)、トルエン(200mL)で洗浄することで、ジアクアトリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユウロピウム(III)を白色固体として得た(収量11.6g,酢酸ユウロピウム2.5水和物を21mmol使用したとして収率68%)。19F-NMR(376MHz,Acetone-d),δ(ppm):-81.2(brs).ESIMS(m/Z):566.8[M-(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)]
アルゴン雰囲気下、ジアクアトリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユウロピウム(III)(5.0g,6.18mmol)とトリフェニルホスフィンオキシド(3.4g,12.4mmol)にエタノール(200mL)を加え、65℃で3時間撹拌した。反応液をろ過し、ろ液を減圧濃縮し、メタノールで再結晶することで、ビス(トリフェニルホスフィンオキシド)トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユウロピウム(III)の白色固体を得た(収量4.8g,収率58%)。なお、この化合物は、RUB1453869及び特開2003-81986号公報に具体的に記載されている化合物である。19F-NMR(376MHz,CDCl),δ(ppm):-79.0(brs).31P-NMR(162MHz,CDCl),δ(ppm):-91.3(brs).ESIMS(m/z):1123.4[M-hfa]
【0123】
(比較例2)
【化35】
非特許文献3に従い、合成した。参考例9で得たジアクアトリス[4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオナト]ユウロピウム(III)(667mg,800μmol)と参考例10で得た4-[4,6-ビス(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-N,N-ジエチルアニリン(334mg,800μmol)にテトラヒドロフラン(160mL)を加え、室温で2時間撹拌した。反応混合物をろ過し、残渣をテトラヒドロフランで洗浄し、減圧下室温で乾燥した。得られた粗生成物から再結晶を2回(ヘキサン/酢酸エチル及びヘキサン/クロロホルム)行うことでビス{4-[4,6-ビス(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-N,N-ジエチルアニリン}トリス[4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオナト]ユウロピウム(III)の黄色粉末を得た(収量808mg,収率82%)。19F-NMR(376MHz,CDCl)δ(ppm):-81.1(brs).ESIMS(m/z):1008.9[M-(4,4,4-トリフルオロ-1-フェニル-1,3-ブタンジオナト)]
【0124】
(評価実施例)
実施例で得た本開示のユウロピウム錯体及び比較例で得たユウロピウム錯体のUV-Vis・発光スペクトル測定用サンプルは、実施例及び比較例で得たユウロピウム錯体を分光分析用クロロホルムに濃度(0.01mM)で溶解させ、1cm分光分析用石英セルに充填することで作製した。
【0125】
実施例および比較例で得た希土類錯体の発光スペクトル(励起光350nm)およびUV-Visスペクトルの結果を図1~5に示す。
【0126】
本開示のユウロピウム錯体の溶解性試験は、飽和溶解濃度を算出することにより評価した。エタノール1mLに対して過剰量となるようにユウロピウム錯体0.5gを添加し、20℃で20分間撹拌し、飽和溶液を調製した。この飽和溶液の上澄みをシリンジフィルター(φ0.2μm)でろ過後、0.2mL採取し、100℃のホットプレート上で60分間加熱し溶媒を蒸発させた。その後、減圧下、60℃で60分間乾燥させた。乾燥前の溶液質量と乾燥後の溶質質量から飽和溶解濃度を算出した結果を表1に示した。
飽和溶解濃度(%)=(乾燥後の溶質質量)/(乾燥前の溶液質量)×100
【0127】
【表1】
表1に示したように、本開示のユウロピウム錯体(1b)は特定の配位子を導入することによって、高い溶解性を有することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本開示のユウロピウム錯体(1b)は青色光で励起可能で溶解性に優れる。そのため、太陽光電池用フィルム、農業用フィルム、LED蛍光体及びセキュリティインク等の発光材料やそれらに用いられる波長変換材料として有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6