(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179165
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】リードフレーム及びその製造方法、半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/50 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
H01L23/50 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097782
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】植松 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】上原 浩美
(72)【発明者】
【氏名】曽根原 袈裟幸
(72)【発明者】
【氏名】北條 昭信
【テーマコード(参考)】
5F067
【Fターム(参考)】
5F067AA04
5F067AB04
5F067BA02
5F067BE02
5F067DC15
5F067EA02
5F067EA04
(57)【要約】
【課題】溶剤成分の濡れ広がり抑制効果を向上可能なリードフレームを提供する。
【解決手段】本リードフレームは、上面に半導体チップが搭載される搭載領域を備えたダイパッドと、平面視で、前記搭載領域の外側において、前記搭載領域の外縁に沿って設けられた平坦膜と、前記ダイパッドの上面において、平面視で、前記平坦膜の内側及び外側に設けられた粗化膜と、を有し、前記粗化膜は、粗化めっき膜と、前記粗化めっき膜に積層され、前記粗化めっき膜の形状に追従して表面が粗化面となるめっき膜と、を含み、前記平坦膜は、前記粗化膜よりも表面が平坦であり、前記粗化めっき膜と同一の金属から形成された第1金属膜と、前記第1金属膜の上に積層された第2金属膜と、を含み、前記第2金属膜は、前記粗化めっき膜を構成する金属と、前記めっき膜を構成する金属と、の合金膜である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に半導体チップが搭載される搭載領域を備えたダイパッドと、
平面視で、前記搭載領域の外側において、前記搭載領域の外縁に沿って設けられた平坦膜と、
前記ダイパッドの上面において、平面視で、前記平坦膜の内側及び外側に設けられた粗化膜と、を有し、
前記粗化膜は、粗化めっき膜と、前記粗化めっき膜に積層され、前記粗化めっき膜の形状に追従して表面が粗化面となるめっき膜と、を含み、
前記平坦膜は、前記粗化膜よりも表面が平坦であり、前記粗化めっき膜と同一の金属から形成された第1金属膜と、前記第1金属膜の上に積層された第2金属膜と、を含み、
前記第2金属膜は、前記粗化めっき膜を構成する金属と、前記めっき膜を構成する金属と、の合金膜である、リードフレーム。
【請求項2】
前記平坦膜は、前記搭載領域の外縁に沿って環状に設けられる、請求項1に記載のリードフレーム。
【請求項3】
前記平坦膜は、前記粗化膜よりも光沢度が高い、請求項1又は2に記載のリードフレーム。
【請求項4】
前記平坦膜の光沢度は、前記粗化膜の光沢度の2倍以上3倍以下である、請求項3に記載のリードフレーム。
【請求項5】
前記平坦膜のSレシオは1.01以上1.10以下であり、
前記粗化膜のSレシオは1.10より大きく2.20以下である、請求項1又は2に記載のリードフレーム。
【請求項6】
前記平坦膜の算術平均高さSaは、20nm以上50nm以下であり、
前記粗化膜の算術平均高さSaは、80nm以上120nm以下である、請求項1又は2に記載のリードフレーム。
【請求項7】
前記ダイパッドの上面を基準として、前記平坦膜の最大高さは、前記粗化膜の最大高さよりも低く、
前記ダイパッドの上面を基準として、前記平坦膜の最大高さと、前記粗化膜の最大高さの差は、1μm未満である、請求項1又は2に記載のリードフレーム。
【請求項8】
上面に半導体チップが搭載される搭載領域を備えたダイパッドを有するリードフレームの製造方法であって、
前記ダイパッドの上面において、平面視で、前記搭載領域の内側及び外側に粗化膜を形成する工程と、
前記搭載領域の外側に位置する前記粗化膜の一部にレーザ光を照射し、前記搭載領域の外縁に沿って、前記粗化膜よりも表面が平坦な平坦膜を形成する工程と、を有し、
前記粗化膜は、粗化めっき膜と、前記粗化めっき膜に積層され、前記粗化めっき膜の形状に追従して表面が粗化面となるめっき膜と、を含み、
前記平坦膜は、前記粗化めっき膜と同一の金属から形成された第1金属膜と、前記第1金属膜の上に積層された第2金属膜と、を含み、
前記第2金属膜は、前記粗化めっき膜を構成する金属と、前記めっき膜を構成する金属と、の合金膜である、リードフレームの製造方法。
【請求項9】
前記レーザ光の照射にはグリーンレーザを用いる、請求項8に記載のリードフレームの製造方法。
【請求項10】
請求項1又は2記載のリードフレームと、
前記搭載領域に接着剤を用いて搭載された半導体チップと、
前記平坦膜の外側に位置する前記粗化膜に接触し、前記半導体チップを封止する樹脂部と、を有する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードフレーム及びその製造方法、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リードフレームに半導体チップを搭載し、樹脂で封止した半導体装置が知られている。このような半導体装置は、動作時の発熱により膨張や収縮が繰り返される。そこで、リードフレームと樹脂との密着性の向上のために、リードフレームの表面に粗化処理が行われている。
【0003】
リードフレームの表面に粗化処理が行われた場合、半導体チップのリードフレームへの固定に用いられる接着剤に含まれる溶剤成分がリードフレームの表面に濡れ広がりやすい。溶剤成分はリードフレームと樹脂との間の密着性を低下させるおそれがあるため、溶剤成分の濡れ広がりを抑制する様々な手法が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の手法では、溶剤成分の濡れ広がりを十分に抑制できない場合もあり、溶剤成分の濡れ広がり抑制効果の更なる向上が求められている。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、溶剤成分の濡れ広がり抑制効果を向上可能なリードフレームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本リードフレームは、上面に半導体チップが搭載される搭載領域を備えたダイパッドと、平面視で、前記搭載領域の外側において、前記搭載領域の外縁に沿って設けられた平坦膜と、前記ダイパッドの上面において、平面視で、前記平坦膜の内側及び外側に設けられた粗化膜と、を有し、前記粗化膜は、粗化めっき膜と、前記粗化めっき膜に積層され、前記粗化めっき膜の形状に追従して表面が粗化面となるめっき膜と、を含み、前記平坦膜は、前記粗化膜よりも表面が平坦であり、前記粗化めっき膜と同一の金属から形成された第1金属膜と、前記第1金属膜の上に積層された第2金属膜と、を含み、前記第2金属膜は、前記粗化めっき膜を構成する金属と、前記めっき膜を構成する金属と、の合金膜である。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、溶剤成分の濡れ広がり抑制効果を向上可能なリードフレームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るリードフレームの全体を例示する上面図である。
【
図2】第1実施形態に係るリードフレームの1つの個片化領域近傍を例示する図である。
【
図3】平坦膜の形状の変形例を示す上面図(その1)である。
【
図4】平坦膜の形状の変形例を示す上面図(その2)である。
【
図5】平坦膜の形状の変形例を示す上面図(その3)である。
【
図7】平坦膜及び粗化膜の構成例を示す断面図である。
【
図8】溶剤成分の濡れ広がりが抑制される様子を示す模式図である。
【
図9】第1実施形態に係るリードフレームの製造工程を例示する図である。
【
図10】溶剤成分の濡れ広がりの実験結果を示す図である。
【
図12】走査電子顕微鏡で撮影した表面外観写真である。
【
図14】比較例に係るレーザ照射部を模式的に示す断面図である。
【
図15】第2実施形態に係る半導体装置を例示する断面図である。
【
図16】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
〈第1実施形態〉
[リードフレームの構造]
図1は、第1実施形態に係るリードフレームの全体を例示する上面図である。
図1を参照すると、リードフレーム1は、複数の個片化領域Cを有している。個片化領域Cは、互いに離隔して1次元又は2次元に配置される。個片化領域Cは、最終的に切断されて個片化され、半導体装置の一部となる。個片化領域Cの個数は、要求仕様に応じて任意に決定することができる。なお、
図1では、個片化領域Cを簡略化して矩形状に図示しているが、個片化領域Cは矩形状である必要はなく、半導体装置の形状に合わせたより複雑な形状であってもよい。リードフレーム1の材料としては、例えば、銅(Cu)や銅合金、42アロイ等を用いることができる。リードフレーム1の厚さは、例えば、100μm以上200μm以下とすることができる。
【0012】
図2は、第1実施形態に係るリードフレームの1つの個片化領域近傍を例示する図であり、
図2(a)は上面図、
図2(b)は
図2(a)のA-A線に沿う断面図である。
【0013】
図2に示すように、個片化領域Cの中央部にはダイパッド10が配置されている。ダイパッド10は、例えば、平面視で矩形状である。ダイパッド10は、例えば、1辺の長さが5mm~15mm程度である。ダイパッド10の外側には、ダイパッド10から分離した状態で、複数のリード11が外側に延在して設けられている。複数のリード11は、上面視で、例えば、ダイパッド10の外側の辺と直交する方向に延びる。
【0014】
ダイパッド10の四隅には、外側に向かってサポートバー12が延在している。ダイパッド10の外側には、ダイパッド10から分離した状態で、額縁状の枠部13が設けられている。複数のリード11及びサポートバー12は、枠部13に繋がって支持されている。すなわち、ダイパッド10は、サポートバー12によって枠部13に繋がって支持されている。
【0015】
ダイパッド10の上面10aは、半導体チップが搭載される搭載領域Rを有する。搭載領域Rは、例えば、平面視で、1辺の長さが4mm~13mm程度の矩形状である。ダイパッド10の上面10aにおいて、平面視で、搭載領域Rの外側において、搭載領域Rの外縁に沿って平坦膜21が設けられている。図示の例では、平坦膜21は、搭載領域Rの外縁に沿って環状に設けられている。言い換えれば、平坦膜21に囲まれた領域が搭載領域Rである。平坦膜21の幅Wは、例えば、0.1mm以上2mm以下とすることができる。
【0016】
なお、平坦膜21は、リードフレームの形状によっては環状に設けなくてもよい。平坦膜21は、環状の他に、U字状、平行な2本の直線、一本の直線等でも良い。以下、平坦膜21の形状の具体的な例について説明する。
【0017】
図3は、平坦膜の形状の変形例を示す上面図(その1)である。
図3では、略U字状の平坦膜21が、矩形状のダイパッド10の外形に沿って形成されると共に、平坦膜21の始端と終端が、矩形状のダイパッド10のある1辺(
図3では右辺)に接して形成されている。
【0018】
図4は、平坦膜の形状の変形例を示す上面図(その2)である。
図4では、2本の平行な直線状の平坦膜21が、矩形状のダイパッド10の対向する2辺(
図4では右辺及び左辺)に沿って形成されると共に、2本の平行な直線状の平坦膜21の始端と終端が、矩形状のダイパッド10の他の対向する2辺(
図4では上辺及び下辺)に接して形成されている。
【0019】
図5は、平坦膜の形状の変形例を示す上面図(その3)である。
図5では、1本の直線状の平坦膜21が、矩形状のダイパッド10のある1辺(
図5では左辺)に沿って形成されると共に、1本の直線状の平坦膜21の始端と終端が、矩形状のダイパッド10のある1辺(
図5では左辺)に接する対向する2辺(
図5では上辺及び下辺)に接して形成されている。
【0020】
ダイパッド10の上面10aにおいて、平面視で、平坦膜21の内側及び外側には、粗化膜22が設けられている。なお、
図4の場合には、平坦膜21の内側とは、平面視で、2本の直線状の平坦膜21に挟まれた領域である。また、平坦膜21の外側とは、平面視で、2本の直線状の平坦膜21とダイパッド10の辺に挟まれた領域である。
図5の場合には、平坦膜21の内側とは、平面視で、平坦膜21により2つの領域に分離されたダイパッド10の上面10aのいずれか一方の領域である。また、平坦膜21の外側とは、平面視で、平坦膜21により2つの領域に分離されたダイパッド10の上面10aの他方の領域である。ダイパッド10の上面10aに加え、ダイパッド10の下面及び側面に粗化膜22が設けられてもよい。また、リード11、サポートバー12、及び枠部13の上面、側面、及び/又は下面に、粗化膜22が設けられてもよい。
【0021】
平坦膜21は、粗化膜22よりも表面が平坦な膜である。詳細には、平坦膜21の算術平均高さSaは、粗化膜22の算術平均高さSaよりも小さい。平坦膜21の算術平均高さSaは、例えば、20nm以上50nm以下である。一方、粗化膜22の算術平均高さSaは、例えば、80nm以上120nm以下である。
【0022】
また、平坦膜21のSレシオは、粗化膜22のSレシオよりも小さい。平坦膜21のSレシオは、例えば、1.01以上1.10以下である。一方、粗化膜22のSレシオは、例えば、1.10より大きく2.20以下である。なお、Sレシオとは、
図6に示すように、平面視での面積がS
0である領域Tの実表面積がSである場合の面積S
0に対する実表面積Sの比である。つまり、Sレシオは、「S/S
0」で表される。
【0023】
平坦膜21は、粗化膜22よりも光沢度が高い。平坦膜21の光沢度は、例えば、1.5以上1.9以下である。一方、粗化膜22の光沢度は、例えば、0.4以上0.8以下である。なお、平坦膜21の光沢度は、例えば、粗化膜22の光沢度の2倍以上3倍以下である。光沢度は、例えば、日本電色工業株式会社製のVSR400により測定することができる。
【0024】
ダイパッド10の上面10aを基準として、平坦膜21の最大高さは、粗化膜22の最大高さよりも低く、ダイパッド10の上面10aを基準として、平坦膜21の最大高さと、粗化膜22の最大高さの差は、1μm未満である。このように、平坦膜21の上面と粗化膜22の上面との間には、実質的な段差はない。
【0025】
図7は、平坦膜及び粗化膜の構成例を示す断面図である。
図7(a)示すように、平坦膜21は、第1金属膜21aと、第1金属膜21aの上に積層された第2金属膜21bとを含む。粗化膜22は、表面が粗化とされた粗化めっき膜22aと、粗化めっき膜22aに積層されためっき膜22b及び22cとを含む。めっき膜22b及び22cは、粗化めっき膜22aと比べて十分に薄いため、粗化めっき膜22aの形状に追従して表面が粗化面となっている。第1金属膜21aの上面は、粗化めっき膜22aの上面よりも平坦である。
【0026】
粗化めっき膜22aは、例えば、Cu又はNiから形成することができる。めっき膜22bは、例えば、Pdから形成することができる。めっき膜22cは、例えば、Auから形成することができる。第1金属膜21aは、粗化めっき膜22aと同一の金属から形成されている。例えば、粗化めっき膜22aがCuであれば第1金属膜21aはCuから形成され、粗化めっき膜22aがNiであれば第1金属膜21aはNiから形成される。
【0027】
第2金属膜21bは、粗化めっき膜22aを構成する金属と、めっき膜22b及び22cを構成する金属との合金膜である。例えば、粗化めっき膜22aがCu、めっき膜22bがPd、めっき膜22cがAuであれば、第2金属膜21bはCuとPdとAuの合金膜となる。また、粗化めっき膜22aがNi、めっき膜22bがPd、めっき膜22cがAuであれば、第2金属膜21bはNiとPdとAuの合金膜となる。
【0028】
図7(b)示すように、粗化膜22は、粗化めっき膜22aと、粗化めっき膜22aに積層されためっき膜22b、22c、及び22dとを含む構成としてもよい。めっき膜22b、22c、及び22dは、粗化めっき膜22aと比べて十分に薄いため、粗化めっき膜22aの形状に追従して表面が粗化面となっている。
【0029】
粗化めっき膜22aは、例えば、Cuから形成することができる。めっき膜22bは、例えば、Niから形成することができる。めっき膜22cは、例えば、Pdから形成することができる。めっき膜22dは、例えば、Auから形成することができる。第1金属膜21aは、粗化めっき膜22aと同一の金属から形成されている。例えば、粗化めっき膜22aがCuであれば第1金属膜21aはCuから形成される。
【0030】
第2金属膜21bは、粗化めっき膜22aを構成する金属と、めっき膜22b、22c、及び22dを構成する金属との合金膜である。例えば、粗化めっき膜22aがCu、めっき膜22bがNi、めっき膜22cがPd、めっき膜22dがAuであれば、第2金属膜21bはCuとNiとPdとAuの合金膜となる。
【0031】
詳細は後述するが、リードフレーム1を用いて半導体装置を製造する際には、搭載領域RにAgペースト等の接着剤(ダイアタッチペースト)を塗布し、接着剤の上に半導体チップを搭載する。そして、平坦膜21の外側に位置する粗化膜22に接触する樹脂部により、半導体チップ及びリードが封止される。
【0032】
平坦膜21が形成されていなく、粗化膜22が搭載領域Rの内側から外側に連続的に形成されている場合、接着剤に含まれる溶剤成分が、毛細管現象により粗化膜22の表面に濡れ広がりやすい。溶剤成分が粗化膜22に濡れ広がると、樹脂部と粗化膜22との間の密着性が低下する。
【0033】
そこで、リードフレーム1では、ダイパッド10の上面10aにおいて、平面視で、搭載領域Rの外縁に沿って平坦膜21が設けられている。従って、平坦膜21よりも外側に位置する粗化膜22への、溶剤成分の毛細管現象による濡れ広がりが抑制される。このため、接着剤に含まれる溶剤成分による密着性の低下を抑制し、樹脂部と平坦膜21よりも外側に位置する粗化膜22との間に優れた密着性が得られる。
【0034】
図8は、溶剤成分の濡れ広がりが抑制される様子を示す模式図である。
図8では、搭載領域R内の一部の円状の領域に接着剤としてAgペースト151が塗布されている。Agペースト151は、平坦膜21から離れて塗布されている。搭載領域Rの粗化膜22の平坦度は平坦膜21の平坦度よりも低い。このため、Agペースト151に含まれる溶剤成分152が搭載領域R内でAgペースト151の周囲に円状に濡れ広がっている。その一方で、溶剤成分152は、搭載領域Rと平坦膜21との境界を越えず、搭載領域R内に留まっている。このように、平坦膜21を設けることにより、溶剤成分152の濡れ広がりが抑制される。
【0035】
なお、接着剤に含まれる溶剤成分の濡れ広がりを抑制する他の方法として、平坦膜を形成する代わりに、金型により粗化膜を押圧し、粗度が緩和された凹部を形成する方法も考えられる。この方法では、金型により押圧された部分の粗化膜が潰され、潰された部分の平坦度が、潰されていない部分の平坦度よりも高くなる。凹部の深さは、例えば1μm~2μm程度である。このような加工は、コイニング加工とよばれることがある。コイニング加工では、ダイパッドを構成する材料の肉が周囲に延びようとするため、ダイパッドの平坦性が低下する弊害がある。後述のように、本願では、レーザ加工法により平坦膜を形成する。レーザ加工法で平坦膜を形成する場合、ダイパッドを構成する材料は伸縮しないので、ダイパッドの平坦性を損なうことはない。
【0036】
また、コイニング加工はSOP(Small Outline Package)やQFP(Quad Flat Package)等のパッケージに使用されるリードフレームのようにプレス加工が容易なデザインには適用できる。しかし、QFN(Quad Flat Non-leaded package)のパッケージに使用されるリードフレームのようにエッチング加工で形成するリードフレームには適用が困難である。本願のようにレーザ加工法で平坦膜を形成する方法は、いずれのタイプのリードフレームにも適用可能である。
【0037】
また、接着剤に含まれる溶剤成分の濡れ広がりを抑制するために、疎水性を有する有機剤を粗化面の上に部分的に塗布することも考えられる。しかしながら、このような有機剤はリードフレームと樹脂部との密着性を逆に低下させるおそれがある。また、有機剤の使用はコストの上昇に直結しやすい。また、有機剤を所望の位置に所望の量で塗布するために大きな手間がかかるおそれもある。また、有機剤は熱処理を受けた場合に変質するおそれがある。特に、1つのダイパッド10の上に複数の半導体チップが搭載される場合には、複数回の熱処理を受けることがあり、この場合には変質しやすくなるおそれがある。
【0038】
また、粗化膜22と平坦膜21とは光沢度が相違するため、目視又は光学顕微鏡により容易に平坦膜21を確認できる。これに対し、密着性が低下しない程度の量の有機剤を粗化膜(粗化面)に塗布した場合には、粗化膜と有機剤との光沢度の相違が小さい。よって、目視又は光学顕微鏡により有機剤が塗布されているか否かを確認しにくい。
【0039】
[リードフレームの製造方法]
次に、第1実施形態に係るリードフレームの製造方法について説明する。
図9は、第1実施形態に係るリードフレームの製造工程を例示する図であり、リードフレームの1つの個片化領域近傍を例示する断面図である。なお、
図9の断面は、
図2のA-A線の位置に対応している。
【0040】
まず、
図9(a)に示すように、所定形状の金属製の板材1Sを準備する。板材1Sは、最終的に切断されて個片化領域C(
図1参照)毎に個片化される部材である。各々の個片化領域Cには、半導体チップが搭載される搭載領域Rが画定されている。板材1Sの材料としては、例えば、Cu、Cu合金、42アロイ等を用いることができる。板材1Sの厚さは、例えば、100μm以上200μm以下とすることができる。板材1Sの表面のSレシオは、例えば、全体にわたって1.00~1.03程度とすることができる。
【0041】
次に、
図9(b)に示すように、板材1Sをウェットエッチングして
図2(a)に示した形状のダイパッド10、複数のリード11、サポートバー12、及び枠部13を形成する。具体的には、例えば、板材1Sの上面及び下面に、開口部を有するレジスト膜を形成する。板材1Sの上面側の開口部と下面側の開口部は、互いに平面視で重複する位置に設ける。そして、レジスト膜をエッチングマスクとして開口部内に露出する板材1Sを除去し、
図2(a)に示した形状のダイパッド10、複数のリード11、サポートバー12、及び枠部13を形成する。
【0042】
次に、
図9(c)に示すように、ダイパッド10の上面10aにおいて、平面視で、搭載領域Rの内側及び外側に粗化膜22を形成する。粗化膜22は、ダイパッド10、複数のリード11、サポートバー12、及び枠部13の全体に形成してもよい。粗化膜22を形成するには、まず、粗化Niめっき処理より粗化めっき膜22aを形成する。具体的には、陰極電解によるNiめっきの際にNi等のハロゲンを含む酸性めっき浴を使用する。ハロゲンを含む酸性めっき浴を使用することで、ハロゲンを含まない酸性めっき浴に比較し、結晶粒の大きなNiが得られる。この方法では、粗化めっき膜22aの表面のSレシオは、例えば、1.20以上1.80以下となる。また、粗化めっき膜22aの算術平均高さSaは、例えば、80nm以上120nm以下となる。
【0043】
めっき浴の組成及びめっき条件の一例を以下に示す。このめっき浴において、電流密度、めっき時間を調整することで、所定の厚さや表面粗さの粗化めっき膜22aを得ることができる。
塩化ニッケルめっき浴:
塩化ニッケル75g/L
チオシアン酸ナトリウム15g/L
塩化アンモニウム30g/L
pH:約4.5~5.5
浴温:常温(約25℃)
陰極電流密度:約1~3A/cm2
その後、電解めっき法等により、例えば、めっき膜22bとしてPd、めっき膜22cとしてAuを順次積層する。これにより、粗化膜22が形成される。めっき膜22bの厚さは、例えば、0.005μm程度とすることができる。めっき膜22cの厚さは、例えば、0.0005μm程度とすることができる。めっき膜22b及び22cの厚さは極めて薄いため、めっき膜22b及び22cは、粗化めっき膜22aの粗化面に沿って形成される。その結果、粗化膜22の表面の粗度は、粗化めっき膜22aの表面の粗度と同等の値となる。
【0044】
粗化めっき膜22aは、粗化Cuめっき処理により形成してもよい。例えば、硫酸銅系のめっき液を用いてダイパッド10、複数のリード11、サポートバー12、及び枠部13の表面に陰極電解によるめっき処理を行う際に、高電流密度領域の粗大な結晶を局所的に析出させる。これにより、Cuからなる粗化めっき膜22aが形成される。この方法では、粗化めっき膜22aの表面のSレシオは、例えば1.20以上2.20以下となる。粗化めっき膜22aの算術平均高さSaは、例えば、80nm以上120nm以下となる。
【0045】
その後、前述のように、例えば、めっき膜22bとしてPd、めっき膜22cとしてAuを順次積層する。これにより、粗化膜22が形成される。Cuからなる粗化めっき膜22aを形成した後、めっき膜22bとしてNi、めっき膜22cとしてPd、めっき膜22dとしてAuを順次積層してもよい。いずれの場合も、粗化膜22の表面の粗度は、粗化めっき膜22aの表面の粗度と同等の値となる。
【0046】
次に、
図9(d)に示すように、平坦膜21を形成する。平坦膜21の組成については、前述のとおりである。平坦膜21のSレシオは、例えば、1.01以上1.10以下となる。平坦膜21の算術平均高さSaは、例えば、20nm以上50nm以下となる。平坦膜21は、搭載領域Rの外側に位置する粗化膜22の一部にレーザ光を照射し、搭載領域Rの外縁に沿って形成することができる。レーザ光の照射には、例えば、波長が約532nmでスポット径が約2μmのグリーンレーザを用いることができる。短波長であるグリーンレーザを用いることにより、算術平均高さSaやSレシオの小さな平坦膜21を形成することが可能である。ただし、照射するレーザ光の強度により平坦膜21の算術平均高さSaやSレシオが変わるため、予め所望の算術平均高さSaやSレシオが得られる強度を実験やシミュレーションにより求めておき、その強度によりレーザ光を照射することが好ましい。
【0047】
このようにして、第1実施形態に係るリードフレーム1を製造することができる。
【0048】
ここで、本願の効果を確認する実験及びその結果について説明する。
【0049】
[実験1]
まず、銅板の表面にNi層、Pd層、及びAu層をこの順に有する粗化膜を形成し、粗化膜に条件Aでレーザ光を照射し、幅が約0.1mmの直線状のレーザ照射部Aを形成した。レーザ照射部Aを形成した銅板は、複数枚準備した。次に、上記の同様の仕様の銅板を準備し、この銅板の上面に条件Bでレーザ光を照射し、幅が約0.1mmの直線状のレーザ照射部Bを形成した。レーザ照射部Bを形成した銅板は、複数枚準備した。レーザ光の照射には、波長が約532nmでスポット径が約2μmのグリーンレーザを用いた。条件A及びBは、照射するレーザ光の強度のみが異なり、他の条件は同一である。条件Bでは照射するレーザ光の強度を条件Aの約2倍とした。
【0050】
次に、仕様の異なる3種類のAgペースト1、2、3を準備した。そして、レーザ照射部Aまたはレーザ照射部Bが形成された銅板の各々にAgペースト1~3のうちの1つを塗布し、Agペースト中の溶剤成分の濡れ広がりがレーザ照射部A、レーザ照射部Bで止まるか否かを評価した。評価は、Agペースト塗布直後、塗布から24時間放置後、塗布から24時間放置し、さらに180℃1時間加熱後、の3つのタイミングで行った。
【0051】
[結果]
図10は、溶剤成分の濡れ広がりの実験結果を示す図である。
図10において、『塗布直後』は、Agペースト塗布直後の結果である。また、『24時間放置後(加熱前)』は、塗布から24時間放置後の結果である。また、『24時間放置し加熱後』は、塗布から24時間放置し、さらに180℃1時間加熱後の結果である。なお、(1)、(2)は、異なるサンプルであることを示している。また、
図10において、『A』はレーザ照射部A、『B』はレーザ照射部B、Ag1~Ag3はAgペースト1~Agペースト3、『S』は溶剤成分を示している。
【0052】
図10(a)~
図10(c)に示すように、レーザ照射部Aを形成した銅板では、『塗布直後』、『24時間放置後(加熱前)』、及び『24時間放置し加熱後』のいずれのタイミングにおいても、Agペースト1~3中の溶剤成分Sの濡れ広がりが抑制できることが確認された。なお、レーザ照射部Aの上端及び下端付近でAgペースト中の溶剤成分Sの回り込みが見られるが、これは直線状のレーザ照射部Aを形成したことに起因するものであり、レーザ照射部Aを額縁状に形成することにより回避できると考えられる。
【0053】
一方、
図10(d)~
図10(f)に示すように、レーザ照射部Bを形成した銅板では、『塗布直後』はAgペースト1~3中の溶剤成分Sの濡れ広がりが抑制できている。しかし、『24時間放置後(加熱前)』及び『24時間放置し加熱後』のいずれのタイミングにおいても、Agペースト1~3中の溶剤成分Sの濡れ広がりは抑制できていない。Agペースト1~3中の溶剤成分Sは時間経過とともにレーザ照射部Bを通過して濡れ広がり、加熱によりさらに濡れ広がる傾向が見られる。
【0054】
[実験2]
実験2では、レーザ照射部Aとレーザ照射部Bの形状の違いについて検討した。
図11は、原子間力顕微鏡で撮影した写真であり、レーザ非照射部、レーザ照射部A、及びレーザ照射部Bについて撮影したものである。
図11は、走査電子顕微鏡で撮影した表面外観写真であり、レーザ非照射部とレーザ照射部Aの境界、及びレーザ非照射部とレーザ照射部Bについて3つの倍率で撮影したものである。いずれも左半分がレーザ非照射部である。なお、レーザ非照射部とは、レーザが照射されていない粗化めっきの表面である。
【0055】
また、表1は、
図11の写真から求めたレーザ非照射部、レーザ照射部A、及びレーザ照射部Bの算術平均高さSa及びSレシオである。また、表2は、レーザ非照射部、レーザ照射部A、及びレーザ照射部Bの光沢度を5つのサンプルについて測定した結果である。光沢度の測定は、日本電色工業株式会社製のVSR400を用いて行った。
【0056】
【0057】
【表2】
図11及び
図12並びに表1及び2から、レーザ照射部Aは、平坦であって光沢度が高いことがわかる。すなわち、レーザ照射部Aには平坦膜が形成されている。これに対して、レーザ照射部Bは、平坦ではなく、レーザ非照射部とは状態の異なる粗化面である。そのため、光沢度は低く、茶色系の色として視認できる。レーザ照射部Aは、レーザ照射部Bの2倍程度の光沢度である。
【0058】
次に、レーザ非照射部、レーザ照射部A、及びレーザ照射部BのEDS分析を行った。EDS分析とは、エネルギー分散型X線分光法を用いた元素分析である。
図13は、EDS分析の結果を示す図である。
図13において、レーザ非照射部とレーザ照射部Aとを比較すると、Ni(%)とAu(%)とPd(%)の数値がほぼ変化していないことがわかる。このことから、レーザ照射部Aでは、Au及びPdの消失や減少は起きておらず、これらが溶融してNi、Au、及びPdの合金膜が生成されて再結晶していると考えられる。
【0059】
これに対して、
図13において、レーザ非照射部とレーザ照射部Bとを比較すると、レーザ照射部Bでは、Auは消失し、Pd(%)の数値も減少していることがわかる。また、Cuの成分が確認できる。このことから、
図14に模式的に示すように、レーザ照射部Bでは、レーザ光の照射によりAu及びPdが飛散して消失し、粗化膜を構成していたNiが粒状に飛び散った粒状部22xと、ダイパッド10を構成するCuが粒状に飛び散った粒状部10xが、ダイパッド10上に付着している状態と考えられる。また、レーザ照射部Bでは、Ni、Au、及びPdの合金膜は生成されていないと考えられる。
【0060】
このように、粗化膜にレーザ光を照射する際に、レーザ光の強度を適切に選択することにより、粗化膜を構成する金属の合金膜を形成することができ、この合金膜は平坦で光沢度の高いものになることがわかった。そして、この合金膜により、Agペースト中の溶剤成分の濡れ広がりを抑制できることがわかった。
【0061】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に係るリードフレーム1を用いて製造された半導体装置に関する。
【0062】
[半導体装置の構造]
まず、半導体装置の構造について説明する。
図15は、第2実施形態に係る半導体装置を例示する断面図である。
【0063】
第2実施形態に係る半導体装置2は、
図15に示すように、大略すると、リードフレーム1Aと、半導体チップ30と、接着剤40と、金属線50(ボンディングワイヤ)と、樹脂部60とを有する。半導体装置2は、QFNタイプのパッケージである。
【0064】
リードフレーム1Aは、リードフレーム1が個片化されたものであり、リードフレーム1の個片化領域Cの内側の部分である。リードフレーム1Aは、半導体チップ30が搭載されるダイパッド10と、複数のリード11と、サポートバー12とを備えている。また、ダイパッド10の上面10a等には、第1実施形態で説明した、平坦膜21及び粗化膜22が設けられている。
【0065】
半導体チップ30は、ダイパッド10の上面10aの搭載領域R(
図2参照)にフェイスアップ状態で搭載されている。半導体チップ30は、例えば、Agペースト等の接着剤40を用いて、ダイパッド10の上面10aの搭載領域Rに搭載(ダイボンディング)することができる。半導体チップ30の上面側に形成された各電極端子は、金線や銅線等である金属線50を介して、ダイパッド10の上面10aやリード11の上面と電気的に接続(ワイヤボンディング)されている。
【0066】
樹脂部60は、リードフレーム1A上に設けられている。樹脂部60は、リードフレーム1Aの上面と側面とを被覆して設けられる。樹脂部60の下面から、リードフレーム1Aの下面が露出している。樹脂部60は、平坦膜21の外側に位置する粗化膜22に接触し、半導体チップ30及び金属線50を封止する。各リード11の側面の一部(枠部13から切断されたリード11の端面)は、樹脂部60の側面から露出している。すなわち、樹脂部60は、リード11の側面を露出するように半導体チップ30等を封止している。リード11の側面には、平坦膜21及び粗化膜22は設けられていない。リード11の側面は、外部接続端子となる。樹脂部60としては、例えば、エポキシ系樹脂にフィラーを含有させた所謂モールド樹脂等を用いることができる。
【0067】
なお、半導体装置の樹脂部内(樹脂部とリードフレームとの界面)に水分が侵入すると、半導体装置を実装基板へ実装する際のリフロー工程等で、樹脂部内の水分が急激に膨張及び気化し、樹脂部にクラック等が発生するおそれがある。このようなクラック等が発生すると、半導体装置は破壊される。
【0068】
第2実施形態に係る半導体装置2では、リードフレーム1Aがリードフレーム1から形成されており、リードフレーム1Aは、樹脂部60との密着性に優れた粗化膜22を備える。従って、上記の水分の侵入を抑制し、半導体装置2の破壊を抑制することができる。
【0069】
なお、レーザ光の照射により形成された平坦膜21は微細な幅であり、粗化膜22の面積を大きく削ることがないため、平坦膜21を形成したことにより粗化膜22と樹脂部60との密着性が低下することはない。
【0070】
[半導体装置の製造方法]
次に、第2実施形態に係る半導体装置2の製造方法について説明する。
図16は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する図である。
【0071】
まず、
図16(a)に示すように、リードフレーム1の各個片化領域Cのダイパッド10の搭載領域Rに接着剤40を塗布する。そして、
図16(b)に示すように、接着剤40の上に半導体チップ30をフェイスアップ状態で搭載し、加熱により接着剤40を硬化させる。これにより、半導体チップ30がダイパッド10に固定される。例えば、接着剤40としては、エポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂等の樹脂を含むものが使用される。または、これら樹脂中に銀や銅等の導電性フィラーを含有させた接着剤40が用いられる。接着剤40は、例えば、Agペーストである。
【0072】
図16(c)に示すように、搭載領域Rには粗化膜22が設けられているので、接着剤40に含まれる溶剤成分45は毛細管現象により搭載領域R内で濡れ広がる。しかし、搭載領域Rの外側には搭載領域Rを包囲する平坦膜21が形成されている。そのため、
図16(b)に示す工程では、溶剤成分45は、平坦膜21内まで濡れ広がらず、搭載領域R内に留まる。従って、溶剤成分45の搭載領域Rの外側への濡れ広がりが抑制される。
【0073】
次に、
図16(d)に示すように、半導体チップ30の上面側に形成された電極端子を、金属線50を介して、ダイパッド10及びリード11の上面と電気的に接続する。なお、ダイパッド10は、半導体チップ30のグランド端子と接続される。これにより、ダイパッド10をグランド導体として用いることができる。金属線50は、例えば、ワイヤボンディングにより接続できる。続いて、半導体チップ30及び金属線50を封止する樹脂部60を形成する。樹脂部60としては、例えば、エポキシ系樹脂にフィラーを含有させた所謂モールド樹脂等を用いることができる。樹脂部60は、例えば、トランスファーモールド法やコンプレッションモールド法等により形成できる。その後、
図16(d)に示す構造体を破線の位置(リードフレーム1の枠部13の内側の位置)で切断することで、個片化された複数の半導体装置2が完成する。
【0074】
以上、好ましい実施形態について詳説したが、上述した実施形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0075】
1,1A リードフレーム
1S 板材
2 半導体装置
10 ダイパッド
10a 上面
10b 下面
11 リード
12 サポートバー
13 枠部
21 平坦膜
21a 第1金属膜
21b 第2金属膜
22 粗化膜
22a 粗化めっき膜
22b,22c,22d めっき膜
30 半導体チップ
40 接着剤
45 溶剤成分
50 金属線
60 樹脂部
151 Agペースト
152 溶剤成分