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特開2024-179175活性エネルギー線硬化型組成物、硬化物、積層体、物品、及び、積層体の製造方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179175
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型組成物、硬化物、積層体、物品、及び、積層体の製造方法。
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/20 20060101AFI20241219BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20241219BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241219BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C08F220/20
C08F2/50
B32B27/00 D
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097807
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】長野 尭
(72)【発明者】
【氏名】麸山 解
【テーマコード(参考)】
4F100
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AL05A
4F100AT00B
4F100AT00C
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CA30A
4F100EH46A
4F100EJ08A
4F100EJ42A
4F100EJ52A
4F100EJ86A
4F100JA05B
4F100JA05C
4F100JA07A
4F100JB14A
4F100JK06
4F100JK12
4F100JL11
4F100JN30
4J011QA03
4J011QA06
4J011QA13
4J011QA23
4J011QA34
4J011SA02
4J011SA14
4J011SA16
4J011SA20
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA02
4J100AL09R
4J100AL62P
4J100AL63Q
4J100AM19R
4J100AM21R
4J100BA31R
4J100CA05
4J100CA23
4J100JA32
(57)【要約】
【課題】基材との密着性に優れ、高硬度な硬化物を形成することができる活性エネルギー線硬化性組成物の提供。
【解決手段】単官能モノマー(A)と、2官能(メタ)アクリレート化合物(B)と、3官能以上の多官能モノマー(C)とを含有する、活性エネルギー線硬化型組成物であって、前記単官能モノマー(A)は、水酸基又はアミド結合を有し、前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B)は、分子量が230以下であり、前記単官能モノマー(A)の含有量は、1~20質量%であり、前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B)の含有量は、40~98質量%であり、前記多官能モノマー(C)の含有量は、1~40質量%である、活性エネルギー線硬化型組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単官能モノマー(A)と、2官能(メタ)アクリレート化合物(B)と、3官能以上の多官能モノマー(C)とを含有する、活性エネルギー線硬化型組成物であって、
前記単官能モノマー(A)は、水酸基又はアミド結合を有し、
前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B)は、分子量が230以下であり、
前記単官能モノマー(A)の含有量は、前記単官能モノマー(A)、前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B)、及び、前記多官能モノマー(C)の合計100質量%に対して、1~20質量%であり、
前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B)の含有量は、前記単官能モノマー(A)、前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B)、及び、前記多官能モノマー(C)の合計100質量%に対して、40~98質量%であり、
前記多官能モノマー(C)の含有量は、前記単官能モノマー(A)、前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B)、及び、前記多官能モノマー(C)の合計100質量%に対して、1~40質量%である、活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項2】
前記単官能モノマー(A)は、水酸基又はアミド結合を有する単官能(メタ)アクリレート化合物である、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項3】
前記3官能以上の多官能モノマー(C)は、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物である、請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項4】
さらに光重合開始剤(D)を含む、請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物の硬化物。
【請求項6】
基材の一方又は両方に請求項5に記載の硬化物を有する、積層体。
【請求項7】
前記基材がアクリル系基材である、請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
前記基材は、Tgが100℃以上のポリメタクリル酸メチル基材であり、前記基材と前記硬化物とは直接接触している、請求項6に記載の積層体。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか一項に記載の積層体を有する、物品。
【請求項10】
基材の一方又は両方に活性エネルギー線硬化型組成物を塗工して塗膜を形成する塗工工程と、前記塗膜を90℃以下の温度で乾燥させる乾燥工程と、乾燥した前記塗膜に活性エネルギー線を照射して硬化物を形成し、基材と硬化物とを有する積層体を製造する硬化工程とを有し、
前記活性エネルギー線硬化型組成物は、単官能モノマー(A)と、2官能(メタ)アクリレート化合物(B)と、3官能以上の多官能モノマー(C)と、有機溶剤(E)とを含有し、
前記単官能モノマー(A)は、水酸基又はアミド結合を有し、
前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B)は、分子量が230以下であり、
前記単官能モノマー(A)の含有量は、前記単官能モノマー(A)、前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B)、及び、前記多官能モノマー(C)の合計100質量%に対して、1~20質量%であり、
前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B)の含有量は、前記単官能モノマー(A)、前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B)、及び、前記多官能モノマー(C)の合計100質量%に対して、40~98質量%であり、
前記多官能モノマー(C)の含有量は、前記単官能モノマー(A)、前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B)、及び、前記多官能モノマー(C)の合計100質量%に対して、1~40質量%である、積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型組成物、硬化物、積層体、物品、及び、積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学ディスプレイに搭載される偏光板には、PMMA、TAC、PET、COP等からなるプラスチックフィルムが用いられる。一般的に、プラスチックフィルムからなる偏光板には、表面の傷つきを抑えるために、偏光板の表面に活性エネルギー線硬化型組成物からなるハードコート層を設け、積層体としている。
上記の中でも、PMMA等のアクリル系フィルムは、透明性が高く、透湿性・吸湿性が低いため有用であるが、活性エネルギー線硬化型組成物からなるコート層との密着性が低いという課題がある。
【0003】
上記の課題に対し、プラスチックフィルムと、ハードコート層との密着性を向上する方法として、プライマー処理やコロナ処理等の前処理を行うことでプラスチックフィルム表面を親水化する方法が提案されている。この方法により、プラスチックフィルムとハードコート層との密着性を向上させることはできるが、プライマー層の塗工、乾燥により工程数が増加し、歩留まり低下、コストアップ等の問題がある。そのため、前処理無しでプラスチックフィルムに密着させることができる活性エネルギー線硬化型組成物が求められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、多官能のウレタン(メタ)アクリレート樹脂と少なくともヒドロキシル基または芳香族基を有する特定の単官能(メタ)アクリレートモノマーとを含むハードコート層形成用樹脂組成物が開示されている。該ハードコート層形成用樹脂組成物においては、当該組成物を高温(100℃で90秒間)で乾燥させることで、プラスチックフィルムと、ハードコート層とを密着させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-152763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の活性エネルギー線硬化型組成物においては、ハード層の形成において、比較的高温で乾燥する必要があるため、単官能モノマーの揮発によるラインの汚染、塗膜の外観不良が発生するという課題がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、基材にプライマー処理やコロナ処理等の前処理を必要とすることなく、基材との密着性に優れ、高硬度な硬化物を形成することができる活性エネルギー線硬化性組成物、当該活性エネルギー線硬化性組成物を用いて形成される硬化物、当該硬化物を有する積層体、当該積層体を有する物品、及び、当該積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、水酸基又はアミド結合を有する単官能モノマー(A)と、特定の分子量を有する2官能(メタ)アクリレート化合物(B)と、3官能以上の多官能モノマー(C)とを、それぞれ特定の割合で配合することで、基材との密着性、及び、硬化物の硬度を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
[1]単官能モノマー(A)と、2官能(メタ)アクリレート化合物(B)と、3官能以上の多官能モノマー(C)とを含有する、活性エネルギー線硬化型組成物であって、
前記単官能モノマー(A)は、水酸基又はアミド結合を有し、
前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B)は、分子量が230以下であり、
前記単官能モノマー(A)の含有量は、前記単官能モノマー(A)、前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B)、及び、前記多官能モノマー(C)の合計100質量%に対して、1~20質量%であり、
前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B)の含有量は、前記単官能モノマー(A)、前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B)、及び、前記多官能モノマー(C)の合計100質量%に対して、40~98質量%であり、
前記多官能モノマー(C)の含有量は、前記単官能モノマー(A)、前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B)、及び、前記多官能モノマー(C)の合計100質量%に対して、1~40質量%である、活性エネルギー線硬化型組成物。
[2]前記単官能モノマー(A)は、水酸基又はアミド結合を有する単官能(メタ)アクリレート化合物である、[1]に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
[3]前記3官能以上の多官能モノマー(C)は、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物である、[1]又は[2]に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
[4]さらに光重合開始剤(D)を含む、[1]~[3]のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【0010】
[5][1]~[4]のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物の硬化物。
[6]基材の一方又は両方に[5]に記載の硬化物を有する、積層体。
[7]前記基材がアクリル系基材である、[6]に記載の積層体。
[8]前記基材は、Tgが100℃以上のポリメタクリル酸メチル基材であり、前記基材と前記硬化物とは直接接触している、[6]に記載の積層体。
[9][6]~[8]のいずれか一項に記載の積層体を有する、物品。
【0011】
[10]基材の一方又は両方に活性エネルギー線硬化型組成物を塗工して塗膜を形成する塗工工程と、前記塗膜を90℃以下の温度で乾燥させる乾燥工程と、乾燥した前記塗膜に活性エネルギー線を照射して硬化物を形成し、基材と硬化物とを有する積層体を製造する硬化工程とを有し、
前記活性エネルギー線硬化型組成物は、単官能モノマー(A)と、2官能(メタ)アクリレート化合物(B)と、3官能以上の多官能モノマー(C)と、有機溶剤(E)とを含有し、
前記単官能モノマー(A)は、水酸基又はアミド結合を有し、
前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B)は、分子量が230以下であり、
前記単官能モノマー(A)の含有量は、前記単官能モノマー(A)、前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B)、及び、前記多官能モノマー(C)の合計100質量%に対して、1~20質量%であり、
前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B)の含有量は、前記単官能モノマー(A)、前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B)、及び、前記多官能モノマー(C)の合計100質量%に対して、40~98質量%であり、
前記多官能モノマー(C)の含有量は、前記単官能モノマー(A)、前記2官能(メタ)アクリレート化合物(B)、及び、前記多官能モノマー(C)の合計100質量%に対して、1~40質量%である、活性エネルギー線硬化型組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基材にプライマー処理やコロナ処理等の前処理を必要とすることなく、基材との密着性に優れ、高硬度な硬化物を形成することができる活性エネルギー線硬化性組成物、当該活性エネルギー線硬化性組成物を用いて形成される硬化物、当該硬化物を有する積層体、当該積層体を有する物品、及び、当該積層体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(活性エネルギー線硬化性組成物)
本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物は、水酸基又はアミド結合を有する単官能モノマー(A)(以下、「(A)成分ともいう」)と、2官能(メタ)アクリレート化合物(B)(以下、「(B)成分ともいう」)と、3官能以上の多官能モノマー(C)(以下、「(C)成分ともいう」)とを含有する。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの一方又は両方を意味し、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基とメタクリロイル基の一方又は両方を意味する。
【0014】
<(A)成分:水酸基又はアミド結合を有する単官能モノマー(A)>
(A)成分として、具体的には、水酸基又はアミド結合を有する単官能(メタ)アクリレート化合物、水酸基又はアミド結合を有する単官能ビニル化合物等が挙げられる。
【0015】
(A)成分の分子量は、200以下が好ましく、180以下がより好ましく、160以下がさらに好ましい。
(A)成分の分子量が上記の好ましい上限値以下であれば、(A)成分を含有する活性エネルギー線硬化性組成物により形成される硬化物の基材との密着性がより向上する。
【0016】
(A)成分の分子量の下限値は特に限定されず、例えば、80以上が好ましく、90以上がより好ましく、95以上がさらに好ましい。
例えば、(A)成分の分子量は、80以上200以下が好ましく、90以上180以下がより好ましく、95以上160以下がさらに好ましい。
【0017】
(A)成分としては、上記の中でも、水酸基又はアミド結合を有する単官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0018】
水酸基又はアミド結合を有する(メタ)アクリレート化合物としては、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(A1)(以下、「(A1)成分ともいう」)、アミド結合を有する(メタ)アクリレート化合物(A2)(以下、「(A2)成分ともいう」)、水酸基及びアミド結合を有する(メタ)アクリレート化合物(A3)(以下、「(A3)成分ともいう」)が挙げられる。
【0019】
≪(A1)成分:水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(A1)≫
(A1)成分は、少なくとも1つの水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物である。(A1)成分における水酸基の数は、特に限定されないが、1~3つが好ましく、1又は2つがより好ましく、1つがさらに好ましい。
(A1)成分における(メタ)アクリレート化合物は、水酸基以外の置換基を有してもよい。
【0020】
(A1)成分として、具体的には、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。当該ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのアルキレン基の炭素原子数は、1~10が好ましく、2~6がより好ましく、2~4がさらに好ましい。
【0021】
当該ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体;分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入した(ポリ)ラクトン変性体等であってもよい。
【0022】
(A1)成分として、より具体的には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
その中でも、(A1)成分としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレートがより好ましい。
【0023】
(A1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
≪(A2)成分:アミド結合を有する(メタ)アクリレート化合物(A2)≫
(A2)成分は、少なくとも1つのアミド結合を有する(メタ)アクリレート化合物である。(A2)成分におけるアミド結合の数は、特に限定されないが、1~3つが好ましく、1又は2つがより好ましく、1つがさらに好ましい。
【0025】
(A2)成分は、(メタ)アクリルアミド、N-1置換(メタ)アクリルアミド化合物、N,N-2置換(メタ)アクリルアミド化合物のいずれであってもよい。
【0026】
(A2)成分として、具体的には、(メタ)アクリルアミド;N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-(1,1-ジメチル-3-オキソブチル)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド等のN-1置換(メタ)アクリルアミド化合物;N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピペリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイル-4-ピペリドン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のN-2置換(メタ)アクリルアミド化合物等が挙げられる。
【0027】
(A2)成分は、上記の中でも、下記一般式(A2-a)又は(A2-b)で表される化合物が好ましい。
【0028】
【化1】
[式中、Raは、水素原子又はメチル基であり、Ra及びRaは、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であり、前記アルキル基が-CH-を含む場合、-CH-の一部が-CO-又は-O-に置き換わってもよい。]
【0029】
前記一般式(A2-a)中のRaは、水素原子又はメチル基であり、水素原子であることが好ましい。
【0030】
前記一般式(A2-a)中のRa及びRaにおけるアルキル基としては、炭素原子数1~20のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基がさらに好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基が特に好ましい。
具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0031】
【化2】
[式中、Rbは、水素原子又はメチル基であり、Rb~Rbは、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であり、前記アルキル基が-CH-を含む場合、-CH-の一部が-CO-又は-O-に置き換わってもよい。Lbは、アルキレン基である。]
【0032】
前記一般式(A2-b)中のRbは、水素原子又はメチル基であり、水素原子であることが好ましい。
【0033】
前記一般式(A2-b)中のRb~Rbにおけるアルキル基としては、炭素原子数1~20のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基がさらに好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基が特に好ましい。
具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0034】
前記一般式(A2-b)中のLbにおけるアルキレン基としては、炭素数1~10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~6のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1~4のアルキレン基であることがさらに好ましい。
【0035】
炭素数1~4の直鎖状のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、及びテトラメチレン基[-(CH-]が挙げられる。
炭素数2~4の分岐鎖状のアルキレン基としては、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-等のアルキルメチレン基;-CHCH(CH)-、-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-等のアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。
【0036】
前記一般式(A2-b)中のLbとしては、上記の中でも、炭素原子数1~4の直鎖状のアルキレン基が好ましく、トリメチレン基[-(CH-]がより好ましい。
【0037】
(A2)成分としては、上記の中でも、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミドが好ましい。
【0038】
(A2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
≪(A3)成分:水酸基及びアミド結合を有する(メタ)アクリレート化合物(A3)≫
(A3)成分は、少なくとも1つの水酸基と、少なくとも1つのアミド結合を有する(メタ)アクリレート化合物である。(A3)成分における水酸基の数は、特に限定されないが、1~3つが好ましく、1又は2つがより好ましく、1つがさらに好ましい。(A3)成分におけるアミド結合の数は、特に限定されないが、1~3つが好ましく、1又は2つがより好ましく、1つがさらに好ましい。
【0040】
(A3)成分としては、上述した(A2)成分が有するアルキル基の水素原子の少なくとも1つが水酸基に置換された化合物が挙げられる。具体的には、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0041】
(A3)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
(A)成分としては、上記の中でも、(A1)成分又は(A2)成分を含むことが好ましい。
(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
(A)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分、及び、(C)成分の合計100質量%に対して、1質量%以上であり、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。
(A)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分、及び、(C)成分の合計100質量%に対して、20質量%以下であり、18質量%以下が好ましく、16質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
【0044】
(A)成分の含有量が、(A)成分、(B)成分、及び、(C)成分の合計100質量%に対して、1質量%以上であることで、基材との密着性が向上する。また、(A)成分の含有量が上記の好ましい下限値以上であることで、基材との密着性がより向上する。
(A)成分の含有量が、(A)成分、(B)成分、及び、(C)成分の合計100質量%に対して、20質量%以下であることで、硬化物の硬度が向上する。また、(A)成分の含有量が上記の好ましい上限値以下であることで、硬化物の硬度がより向上する。
【0045】
例えば、(A)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分、及び、(C)成分の合計100質量%に対して、2質量%以上18質量%が好ましく、3質量%以上16質量%がより好ましく、5質量%以上15質量%以下がさらに好ましい。
【0046】
<(B)成分:2官能(メタ)アクリレート化合物(B)>
(B)成分は、2つの(メタ)アクリロイル基を有し、分子量が230以下の2官能(メタ)アクリレート化合物である。
【0047】
(B)成分の分子量は、230以下であり、220以下が好ましく、210以下がより好ましく、200以下がさらに好ましい。
(B)成分の分子量が、230以下であれば、基材との密着性が向上する。(B)成分の分子量が、上記の好ましい上限値以下であれば、基材との密着性がより向上する。
【0048】
(B)成分の分子量の下限値は特に限定されず、例えば、170以上が好ましく、180以上がより好ましく、190以上がさらに好ましい。
例えば、(B)成分の分子量は、170以上220以下が好ましく、180以上210以下がより好ましく、190以上200以下がさらに好ましい。
【0049】
(B)成分として、具体的には、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、グリセリンジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等が挙げられる。
【0050】
(B)成分としては、上記の中でも、基材との密着性向上の観点から、2官能メタクリレート化合物が好ましく、具体的には、エチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレートが好ましい。
【0051】
(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
(B)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分、及び、(C)成分の合計100質量%に対して、40質量%以上であり、47質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、53質量%以上がさらに好ましい。
(B)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分、及び、(C)成分の合計100質量%に対して、98質量%以下であり、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。
【0053】
(B)成分の含有量が、(A)成分、(B)成分、及び、(C)成分の合計100質量%に対して、40質量%以上であることで、基材との密着性が向上する。また、(B)成分の含有量が上記の好ましい下限値以上であることで、基材との密着性がより向上する。
(B)成分の含有量が、(A)成分、(B)成分、及び、(C)成分の合計100質量%に対して、98質量%以下であることで、硬化物の硬度が向上する。また、(B)成分の含有量が上記の好ましい上限値以下であることで、硬化物の硬度がより向上する。
【0054】
例えば、(B)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分、及び、(C)成分の合計100質量%に対して、47質量%以上80質量%以下が好ましく、50質量%以上70質量%以下がより好ましく、53質量%以上60質量%以下がさらに好ましい。
【0055】
<(C)成分:3官能以上の多官能モノマー(C)>
(C)成分としては、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0056】
3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物として、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0057】
(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
(C)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分、及び、(C)成分の合計100質量%に対して、1質量%以上であり、10質量%以上が好ましく、28質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。
(C)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分、及び、(C)成分の合計100質量%に対して、40質量%以下であり、39質量%以下が好ましい。
【0059】
(C)成分の含有量が、(A)成分、(B)成分、及び、(C)成分の合計100質量%に対して、1質量%以上であることで、硬化物の硬度が向上する。また、(C)成分の含有量が上記の好ましい下限値以上であることで、硬化物の硬度がより向上する。
(C)成分の含有量が、(A)成分、(B)成分、及び、(C)成分の合計100質量%に対して、40質量%以下であることで、基材との密着性が向上する。また、(C)成分の含有量が上記の好ましい上限値以下であることで、基材との密着性がより向上する。
【0060】
例えば、(C)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分、及び、(C)成分の合計100質量%に対して、10質量%以上40質量%以下が好ましく、28質量%以上40質量%以下がより好ましく、30質量%以上39質量%以下がさらに好ましい。
【0061】
<任意成分>
本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物は、上述した(A)~(C)成分以外の任意成分を含有してもよい。
任意成分としては、光重合開始剤(D)(以下、「(D)成分」ともいう)、有機溶剤(E)(以下、「(E)成分」ともいう)、光増感剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤等の表面調整剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、有機顔料、無機顔料、顔料分散剤、有機ビーズ等の添加剤;酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニア、五酸化アンチモン等の無機充填剤等が挙げられる。
各任意成分は、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
≪(D)成分:光重合開始剤(D)≫
本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物は、(D)成分を含有することが好ましい。
【0063】
(D)成分としては、各種公知のものを使用することができ、例えば、α開裂型又は水素引き抜き型の光重合開始剤を使用できる。
α開裂型の光重合開始剤としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,2’-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン等が挙げられる。
水素引き抜き型の光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル-4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;キサントン、2-イソプロピルキサントン、2,4-ジメチルキサントン、2,4-ジエチルキサントン、2,4-ジクロロキサントン等のキサントン系化合物;ポリブチレングリコールビス(4-ベンゾイルフェノキシ)アセテート等のベンゾフェノン骨格を持つポリマー等が挙げられる。
【0064】
(D)成分の市販品としては、例えば、「Omnirad-1173」、「Omnirad-184」、「Omnirad-127」、「Omnirad-2959」、「Omnirad-369」、「Omnirad-379」、「Omnirad-907」、「Omnirad-4265」、「Omnirad-1000」、「Omnirad-651」、「Omnirad-TPO」、「Omnirad-819」、「Omnirad-2022」、「Omnirad-2100」、「Omnirad-754」、「Omnirad-784」、「Omnirad-500」、「Omnirad-81」(IGM社製)、「カヤキュア-DETX」、「カヤキュア-MBP」、「カヤキュア-DMBI」、「カヤキュア-EPA」、「カヤキュア-OA」(日本化薬社製)、「バイキュア-10」、「バイキュア-55」(ストウファ・ケミカル社製)、「トリゴナルP1」(アクゾ社製)、「サンドレイ1000」(サンドズ社製)、「ディープ」(アプジョン社製)、「クオンタキュア-PDO」、「クオンタキュア-ITX」、「クオンタキュア-EPD」(ワードブレンキンソップ社製)、「Runtecure-1104」、「Runtecure-1108」(Runtec社製)等が挙げられる。
【0065】
(D)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(D)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分、及び、(C)成分の合計100質量部に対して、1質量部以上15質量部が好ましく、2質量部以上10質量部がより好ましく、4質量部以上8質量部以下がさらに好ましい。
【0066】
≪(E)成分:有機溶剤(E)≫
(E)成分は、本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物の溶液粘度を適宜調整する上で有用である。特に(E)成分を含有することで、薄膜コーティングを行う際に、膜厚を調整することが容易となる。
【0067】
(E)成分としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類等が挙げられる。
【0068】
(E)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(E)成分の含有量は、例えば、本実施形態の活性エネルギー線硬化性組成物の固形分濃度が、30~70%になるように適宜使用される。
【0069】
以上説明した本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物は、水酸基又はアミド結合を有し、基材との密着性を高めることができる単官能モノマー(A)、及び、架橋点が多く、硬化物の硬度を高めることができる3官能以上の多官能モノマー(C)に加えて、分子量が適度に低く基材との密着性が高められつつ、架橋点を有し、硬化物の硬度を高めることができる2官能(メタ)アクリレート化合物(B)を有する。さらに、本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物は、当該3つの含有量が適度に制御されている。
したがって、本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物によれば、基材にプライマー処理やコロナ処理等の前処理を必要とすることなく、基材との密着性に優れ、高硬度な硬化物を形成することができる。
【0070】
(硬化物)
本実施形態の硬化物は、上述した実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物により形成される。
本実施形態の硬化物は、上述した実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物に活性エネルギー線を照射することで製造できる。
本実施形態の硬化物は、上述した実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物が用いられているため、基材との密着性に優れ、高硬度である。
【0071】
(積層体)
本実施形態の積層体は、基材の一方又は両方に上述した実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物により形成される硬化物(硬化膜)を有する。
【0072】
基材は、フィルム状でもシート状でもよく、その厚さは特に制限されない。例えば、基材の厚さは10μm~5mmが好ましく、10~60μmがより好ましい。
【0073】
基材の材質としては、透明性の高い樹脂が好ましく、例えば、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂;環状オレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン-1等のポリオレフィン系樹脂;セルロースアセテート(ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等)、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸セルロース等のセルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;ポリビニルアルコール;エチレン-酢酸ビニル共重合体;ポリスチレン;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリイミド、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂;ノルボルネン系樹脂(例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア」)、変性ノルボルネン系樹脂(例えば、JSR社製「アートン」)等が好ましい。
さらに、これらの樹脂からなる基材を2種以上貼り合わせたものを用いてもよい。
【0074】
上述した実施形態の硬化物は、基材との密着性が高いため、従来ハードコート層との密着が難しいとされていた基材との積層体を製造することが可能である。
したがって、本実施形態の積層体の基材としては、アクリル系基材であることが好ましく、Tgが100℃以上のポリメタクリル酸メチル基材であることがより好ましい。
【0075】
上述した実施形態の硬化物は、基材に対して前処理を施さない場合にも、基材に対して良好な密着性が得られるものである。
したがって、本実施形態の積層体は、基材と前記硬化物とが直接接触していることが好ましい。すなわち、基材に対して予め前処理が行われていないことが好ましい。当該前処理としては、サンドブラスト法、溶剤処理法等による表面の凹凸化処理、電気的処理(コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理)、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線・電子線照射処理、酸化処理等の処理が挙げられる。
なお、さらなる密着性の向上を目的として、基材に対して予め前処理が行われていてもよい。
【0076】
本実施形態の積層体は、無機層をさらに含有しても良い。無機層を含有する場合、基材、硬化物、無機層の順に重なる。
【0077】
無機層としては、無機化合物からなる層を意味し、一般に、反射防止、耐擦り傷性等の機能を有するものである。
【0078】
前記無機化合物としては、例えば、金属酸化物、複酸化物、金属窒化物、金属フッ化物、複フッ化物、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0079】
前記金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、イットリウム、インジウム、スズ、ジルコニウム、ニオブ、セリウム、ハフニウム、タンタル、等が挙げられる。
【0080】
前記無機層を反射防止膜層として用いる場合、前記反射防止膜層は単層であってもよいが、低屈折率層と、高屈折率層とを有していてもよい。また、低屈折率層と高屈折率層は、それぞれ1 層でも複数層であってもよい。なお、低屈折率層と高屈折率層の積層順序も特に限定されない。
【0081】
前記高屈折率層に用いる無機化合物としては、例えば、チタン酸ランタン、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化セリウム、酸化イットリウム及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0082】
前記低屈折率層に用いる無機化合物としては、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0083】
前記無機層は、前記硬化物表面に成膜することで得られるものである。前記無機層の成膜方法は、特に制限されず、適宜公知の成膜方法を用いることができるが、物理蒸着(PVD)又は化学蒸着(CVD)により成膜することが好ましい。
【0084】
前記成膜方法は、成膜工程の一貫性及び簡素化の観点から、前記物理蒸着(PVD)を用いることがより好ましく、例えば、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の方法が挙げられる。
【0085】
前記真空蒸着としては、例えば、抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、電子ビーム加熱方式等を用いることができる。
【0086】
前記スパッタリングは、DCスパッタでもRFスパッタでもよく、マグネトロンスパッタでもイオンビームスパッタでもよい。また、平行平板ターゲット方式でも対向ターゲット方式でもよい。また、真空チャンバー内に導入する気体としては、例えば、アルゴン、クリプトン、酸素、窒素等が挙げられ、各々単独でも2 種以上を混合して用いてもよい。
【0087】
前記無機層の膜厚は、目的とする機能により適宜調整し得るが、反射防止機能を目的とする場合、10nm~5,000nmの範囲が好ましく、無機層の膜強度と生産性の観点から、100nm~2,000nmの範囲がより好ましく、250nm~1,000nmの範囲が特に好ましい。
【0088】
(積層体の製造方法)
本実施形態の積層体の製造方法においては、乾燥時の温度に依存せず硬化物を基材に密着性させることができるため、特に有機溶剤(E)を用いた製造方法に有用である。
【0089】
有機溶剤(E)を用いた本実施形態の積層体の製造方法は、基材の一方又は両方に上述した実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物を塗工して塗膜を形成する塗工工程と、前記塗膜を90℃以下の温度で乾燥させる乾燥工程と、乾燥した前記塗膜に活性エネルギー線を照射して硬化物を形成し、基材と硬化物とを有する積層体を製造する硬化工程とを有する。
【0090】
[塗工工程]
塗工工程は、基材の一方又は両方に上述した実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物を塗工して塗膜を形成する工程である。
【0091】
有機溶剤(E)を含有する活性エネルギー線硬化型組成物を塗工する方法としては、ダイコート、マイクログラビアコート、グラビアコート、ロールコート、コンマコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、ディップコート、スピンナーコート、刷毛塗り、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート等が挙げられる。
【0092】
[乾燥工程]
乾燥工程は、前記塗膜を90℃以下の温度で乾燥させて有機溶剤(E)を蒸発させる工程である。
本実施形態の積層体の製造方法においては、上述した実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物が用いられているため、高温で乾燥せずとも硬化物を基材に密着性させることができる。
したがって、本実施形態の積層体の製造方法は、外観不良やモノマーの揮発の恐れが少ない。また、乾燥時の凝集による硬化物の物性の変化も抑制することができる。
【0093】
乾燥温度は、90℃以下であり、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましい。
また、乾燥温度は、40℃以上が好ましく、45℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。
例えば、乾燥温度は、40℃以上90℃以下が好ましく、45℃以上80℃以下がより好ましく、50℃以上70℃以下がさらに好ましい。
【0094】
乾燥時間は、10秒以上5分以下が好ましく、15秒以上1分以下がより好ましく、20秒以上40秒以下がさらに好ましい。
【0095】
[硬化工程]
塗工工程は、乾燥した前記塗膜に活性エネルギー線を照射して硬化物を形成し、基材と硬化物(硬化膜)とを有する積層体を製造する工程である。
【0096】
活性エネルギー線は、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線である。
活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、その紫外線を照射する装置としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ(フュージョンランプ)、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀-キセノンランプ、ショートアーク灯、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザー、太陽光、LEDランプ等が挙げられる。
【0097】
硬化物の膜厚は、硬さを十分なものとし、かつ硬化収縮によるカールを抑制できることから、1~30μmが好ましく、2~15μmがより好ましく、3~10μmがさらに好ましい。
【0098】
本実施形態の積層体の製造方法において有機溶剤(E)を用いない場合、本実施形態の積層体の製造方法は、基材の一方又は両方に上述した実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物を塗工して塗膜を形成する塗工工程と、前記塗膜に活性エネルギー線を照射して硬化物を形成し、基材と硬化物とを有する積層体を製造する硬化工程とを有する。
当該積層体の製造方法の詳細は、乾燥工程を有さないこと以外は上述の通りである。
【0099】
(物品)
本実施形態の物品は、上述した実施形態の積層体を有する物品であり、具体的には、光学ディスプレイ、光学用の保護フィルム、プリズムシート等が挙げられる。
【実施例0100】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0101】
[積層体の製造]
(実施例1~11、比較例1~9)
表1~3に示す各成分を混合して、実施例1~11及び比較例1~9の活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。
各例の活性エネルギー線硬化性組成物を、厚さ40μmのPMMA基材(Tg=120℃)に、バーコーターで塗工した。次いで、60℃で30秒間加熱し、溶剤を乾燥させた。次いで、窒素雰囲気下で紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、高圧水銀ランプ)を用いて照射光量150mJ/cmで照射し、PMMA基材上に膜厚5μmの硬化物(硬化膜)を形成し、積層体をそれぞれ製造した。
【0102】
(実施例12)
表2に示す各成分を混合して、実施例12の活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。
実施例12の活性エネルギー線硬化性組成物を、厚さ40μmのPMMA基材(Tg=120℃)に、バーコーターで塗工した。次いで、窒素雰囲気下で紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、高圧水銀ランプ)を用いて照射光量150mJ/cmで照射し、PMMA基材上に膜厚5μmの硬化物(硬化膜)を形成し、積層体を製造した。
【0103】
[塗膜ヘイズの測定]
各例の活性エネルギー線硬化性組成物を用いて製造した積層体の硬化物表面のヘイズ値をJIS K7136に準拠して測定した。その結果を表1~3に示す。
【0104】
[密着性の評価]
・セロテープ剥離による密着試験
各例の活性エネルギー線硬化性組成物を用いて製造した積層体の硬化物表面に、1mm間隔で縦、横11本の切れ目を入れて100個のマス目を作製した。次いで、セロハンテープ(ニチバン社製「セロテープ(登録商標) CT-18」)をその表面に密着させた後、一気に剥がす操作を2回繰り返した。剥離せずに残った残面積比率から、下記の基準により密着性を評価した。B評価以上を合格と判定した。その結果を「密着性」として、表1~3に示す。
A:残面積比率が100%である。
B:残面積比率が95%以上100%未満である。
C:残面積比率が10%以上95%未満である。
D:残面積比率が10%未満である。
【0105】
[鉛筆硬さの評価]
・鉛筆試験
各例の活性エネルギー線硬化性組成物を用いて製造した積層体の硬化物表面について、JIS K5600-5-4(1999)に準拠して、鉛筆硬度を500g荷重条件下で測定した。1つの硬度につき5回測定を行い、傷が付かなかった測定が4回以上あった硬度を硬化物の表面硬度とした。
なお、鉛筆硬さは、硬度が高い順から2H、H、F、HB、Bである。H評価以上を合格と判定した。その結果を「鉛筆硬さ」として、表1~3に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
表1~3中の(A)~(C)成分、単官能モノマー、2官能モノマーにおける数値は、当該成分全量に対する各成分の配合量(質量%)である。
(D)成分及び(E)成分における数値は、上記(A)~(C)成分、単官能モノマー、2官能モノマーの全量100質量部に対する配合量(質量部)である。
【0110】
表1~3中の各略号はそれぞれ以下の意味を有する。
A-1:4-ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業社製の「4-HBA」)
A-2:2-ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学社製の「ライトエステル HOA(N)」)
A-3:2-ヒドロキシブチルメタクリレート(共栄社化学社製の「ライトエステル HOB(N)」)
A-4:N,N-ジメチルアクリルアミド(KJケミカル社製の「DMAA」)
A-5:N,N-ジエチルアクリルアミド(KJケミカル社製の「DEAA」)
A-6:N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド(KJケミカル社製の「DMAPAA」)
a-1:イソボロニルアクリレート(大阪有機化学工業社製の「IBXA」)
a-2:フェノキシエチルアクリレート(共栄社化学社製の「ライトアクリレートPO-A」)
a-3:ベンジルアクリレート(MIWON社製の「MIRAMER M1182」)
【0111】
B-1:エチレングリコールジメタクリレート(MIWON社製の「MIRAMER M221」)
B-2:1,4-ブタンジオールジメタクリレート(共栄社化学社製の「ライトエステル 1,4BG」)
b-1:1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート(共栄社化学社製の「ライトエステル 1,6HX」)
b-2:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(MIWON社製の「MIRAMER M200」)
【0112】
C-1:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(東亜合成社製の「アロニ
ックス M-450」)
D-1:1-ベンゾイルシクロヘキサノール(IGM社製の「Runtecure1104」)
E-1:メチルエチルケトン
E-2:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0113】
表1~3に示す通り、実施例の活性エネルギー線硬化性組成物を用いて形成した硬化物は、比較例の活性エネルギー線硬化性組成物を用いて形成した硬化物に比べて、基材との密着性が高く、高硬度であることが確認できた。
また、実施例の活性エネルギー線硬化性組成物を用いて形成した硬化物は、塗布ヘイズの値も低く、透明性も良好であった。