(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017920
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】止水装置、並びに止水及び充填方法
(51)【国際特許分類】
E02D 29/12 20060101AFI20240201BHJP
F16L 55/128 20060101ALI20240201BHJP
F16L 1/028 20060101ALI20240201BHJP
H02G 1/06 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
E02D29/12 Z
F16L55/128
F16L1/028 Z
H02G1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120880
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000100942
【氏名又は名称】アイレック技建株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】西山 大策
(72)【発明者】
【氏名】板坂 浩二
(72)【発明者】
【氏名】石川 琢也
(72)【発明者】
【氏名】内堀 大輔
(72)【発明者】
【氏名】阿部 智徳
(72)【発明者】
【氏名】石津 紀行
【テーマコード(参考)】
2D147
3H025
5G352
【Fターム(参考)】
2D147AC10
3H025DA02
3H025DB18
5G352CA08
5G352CG05
(57)【要約】
【課題】地下水が流入する状況下にある地中埋設物の充填の手法を改善する。
【解決手段】止水装置10は、地下水が内部空間に流入する状況下にある地中埋設物Bに収容された充填用管路PFの端部に接続される止水装置10であって、充填用管路PFの排水側の端部に設置される第1の中空材11と、第1の中空材11に接続され、第1の中空材の内部に紐状物を移動可能に挿通させる第1の挿通部と、第1の中空材11に、第1の挿通部13と分岐して接続され、第1の中空材を通る排水を受ける第1の排水ホースD1を取り付け可能なホース取り付け部15と、充填用管路PFの端部に第1の中空材11と略平行に設置される第2の中空材12と、第2の中空材12に接続され、第2の中空材12の内部に紐状物を移動可能に挿通させる第2の挿通部14と、第1の中空材11と第2の中空材12とを充填用管路PFの端部に圧着させて止水する止水部16とを備える。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下水が溜水として内部空間に流入する状況下にある地中埋設物に収容された充填用管路の端部に接続される止水装置であって、
前記充填用管路の排水側の端部に設置される第1の中空材と、
前記第1の中空材に接続され、前記第1の中空材の内部に紐状物を移動可能に挿通させる第1の挿通部と、
前記第1の中空材に、前記第1の挿通部と分岐して接続され、前記第1の中空材を通る排水を受ける第1の排水ホースを取り付け可能なホース取り付け部と、
前記充填用管路の前記端部に前記第1の中空材と略平行に設置される第2の中空材と、
前記第2の中空材に接続され、前記第2の中空材の内部に紐状物を移動可能に挿通させる第2の挿通部と、
前記第1の中空材と前記第2の中空材とを前記充填用管路の前記端部に圧着させて止水する止水部とを備える、止水装置。
【請求項2】
前記第1の挿通部と前記第2の挿通部とのそれぞれは半割構造を有し、前記半割構造により前記紐状物を把持する、請求項1に記載の止水装置。
【請求項3】
前記第2の中空材には、前記地中埋設物の内部空間に入り込んで前記溜水を排水する排水補助管が挿入され、
前記排水補助管には、前記排水補助管からの排水を受ける第2の排水ホースを取り付け可能である、請求項1又は2に記載の止水装置。
【請求項4】
前記第1の挿通部は、前記紐状物として、前記第1の中空材に挿入されて前記充填用管路の内部を撮影するパイプカメラのケーブルを挿通させ、
前記第2の挿通部は、前記紐状物として、前記充填用管路の内部に挿入される削孔機の牽引ロープと、前記充填用管路の内部に挿入される止水ボールに空気を挿入するエアホースとを挿通させる、請求項1又は2に記載の止水装置。
【請求項5】
前記第1の中空材の断面は、前記充填用管路の内周に沿った半月形状を有する、請求項1又は2に記載の止水装置。
【請求項6】
地下水が溜水として内部空間に流入する状況下にある地中埋設物に、該地中埋設物に接続された充填用管路を介して充填材を充填させる地中埋設物の止水及び充填方法であって、
前記充填用管路の排水側の端部において止水装置を設置するステップと、
削孔機により前記充填用管路に、前記充填材の注入用の注入穴と、前記地中埋設物の内部からの前記溜水の排水用の排水穴と、前記地中埋設物の前記内部空間に入り込んで前記溜水を排水する排水補助管用の排水補助管用穴とを削孔するステップと、
前記注入穴と前記排水穴との間に管路内止水栓を設置するステップと、
前記充填用管路の充填側の端部において前記充填材を注入可能な充填止水栓を設置するステップと、
前記排水補助管用穴を介して、前記排水補助管を設置するステップと、
前記止水装置と前記充填止水栓とにより止水した状態で、前記充填止水栓及び前記注入穴を介して前記地中埋設物の前記内部空間に前記充填材を注入し、前記止水装置を介して前記排水穴からの排水及び前記排水補助管からの排水を行うことで前記溜水と前記充填材とを置換するステップと、
を含む、止水及び充填方法。
【請求項7】
前記排水穴からの排水を受ける第1の排水ホースを前記止水装置に取り付けるステップと、前記排水補助管からの排水を受ける第2の排水ホースを前記排水補助管に取り付けるステップと、
前記第1の排水ホースと前記第2の排水ホースとを地下水位の高さまで引き上げることで止水を行うステップとをさらに含む、請求項6に記載の止水及び充填方法。
【請求項8】
前記止水装置は、前記充填用管路の内部を撮影するパイプカメラのケーブルと、前記削孔機の牽引ロープと、止水ボールに空気を挿入するエアホースとを移動可能に挿通させる止水装置である、請求項6又は7に記載の止水及び充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水装置、並びに止水及び充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信ケーブルを収容する管路が地下に埋設され、マンホール間を接続している。軟弱な地盤、特殊区間等においては、信頼性を確保するため当該管路をヒューム管等の地中埋設物により防護している場合がある。当該地中埋設物の内部は空洞とされている。地中埋設物の内部を充填材で充填し、設備の永続化が図られている。このための手法として、地中埋設物を貫通する管路に、専用機械により削孔を行い、当該管路を通じて地中埋設物の内部にモルタルを充填することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地中埋設物に劣化箇所がある場合、地中埋設物の内部に地下水、土砂等が引き込まれて流入し、地中埋設物の埋め込まれた領域の地表にある道路の陥没発生のリスクがある。よって、地中埋設物の内部に流入する地下水を流出させることなく、止水を実施しながら地中埋設物の内部への充填材の充填を可能にする技術が望まれていた。さらに、管路への削孔時等、管路内での作業に必要な各装置のケーブル動作が可能で、充填時に地中埋設物の内圧を上昇させずに、地中埋設物内の溜水と充填材を置換する技術が望まれていた。このように、地下水が流入する状況下にある地中埋設物の充填の手法を改善する技術が望まれていた。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、地下水が流入する状況下にある地中埋設物の充填の手法を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明に係る止水装置は、地下水が溜水として内部空間に流入する状況下にある地中埋設物に収容された充填用管路の端部に接続される止水装置であって、前記充填用管路の排水側の端部に設置される第1の中空材と、前記第1の中空材に接続され、前記第1の中空材の内部に紐状物を移動可能に挿通させる第1の挿通部と、前記第1の中空材に、前記第1の挿通部と分岐して接続され、前記第1の中空材を通る排水を受ける第1の排水ホースを取り付け可能なホース取り付け部と、前記充填用管路の前記端部に前記第1の中空材と略平行に設置される第2の中空材と、前記第2の中空材に接続され、前記第2の中空材の内部に紐状物を移動可能に挿通させる第2の挿通部と、前記第1の中空材と前記第2の中空材とを前記充填用管路の前記端部に圧着させて止水する止水部とを備える。
【0007】
また、本発明に係る止水及び充填方法は、地下水が溜水として内部空間に流入する状況下にある地中埋設物に、該地中埋設物に接続された充填用管路を介して充填材を充填させる地中埋設物の止水及び充填方法であって、前記充填用管路の排水側の端部において止水装置を設置するステップと、削孔機により前記充填用管路に、前記充填材の注入用の注入穴と、前記地中埋設物の内部からの前記溜水の排水用の排水穴と、前記地中埋設物の前記内部空間に入り込んで前記溜水を排水する排水補助管用の排水補助管用穴とを削孔するステップと、前記注入穴と前記排水穴との間に管路内止水栓を設置するステップと、前記充填用管路の充填側の端部において前記充填材を注入可能な充填止水栓を設置するステップと、前記排水補助管用穴を介して、前記排水補助管を設置するステップと、前記止水装置と前記充填止水栓とにより止水した状態で、前記充填止水栓及び前記注入穴を介して前記地中埋設物の前記内部空間に前記充填材を注入し、前記止水装置を介して前記排水穴からの排水及び前記排水補助管からの排水を行うことで前記溜水と前記充填材とを置換するステップを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、地下水が流入する状況下にある地中埋設物の充填の手法を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る止水装置を有する地下の領域を模式的に示す断面図である。
【
図2】本実施形態に係る止水装置と止水及び充填方法とを説明するための図である。
【
図3】本実施形態に係る止水装置の構成例を上面から見た透過図である。
【
図4】本実施形態に係る止水装置の構成例を側面から見た断面図である。
【
図5】本実施形態に係る止水装置の構成例を、充填用管路の排水側の端部から見た透過図である。
【
図6】本実施形態に係る止水装置の構成例を側面から見た図である。
【
図7】本実施形態に係る止水装置の構成例を、充填用管路の排水側の端部から見た図である。
【
図8】本実施形態に係る止水装置の構成例を、充填用管路の充填側の端部から見た図である。
【
図9A】充填用管路に排水補助管が設置され、排水が行われる様子を説明するための図である。
【
図9B】充填用管路に排水補助管が設置され、排水が行われる様子を説明するための図である。
【
図10】本実施形態に係る止水及び充填の手順を示すフローチャートである。
【
図11】本実施形態に係る止水及び充填の手順を説明するための図である。
【
図12】本実施形態に係る充填止水栓の構成例を側面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について適宜図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明における「上」、「下」とは、図面に描かれた座標軸表示のZ軸に平行な方向を意味するものとし、「水平」とは、図面に描かれた座標軸表示のXY平面に平行な方向を意味するものとする。各図面中、同一又は相当する部分には、同一符号を付している。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。以下に説明する実施形態は本開示の構成の例であり、本開示は、以下の実施形態に制限されるものではない。
【0011】
図1は、本実施形態に係る止水装置10を有する地下の領域を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、管路P1と、管路P2と、充填用管路PFとは、マンホールM1とマンホールM2との間を接続する。本実施形態において、充填用管路PFのマンホールM1側の端部は充填側の端部とも称し、マンホールM2側の端部は排水側の端部とも称する。
図1では管路P1と、管路P2と、充填用管路PFとの数は計3本のみ示されるがこれに限られない。各管路は水道用管路、ガス用管路、電力用管路等の任意の管路である。
【0012】
管路P1と、管路P2と、充填用管路PFとは、地中埋設物Bの内部に収容され、地中埋設物Bを長手方向に貫通している。本実施形態において、管路P1と、管路P2と、充填用管路PFと、地中埋設物Bとは、地下水位より低い位置に埋設されている。本実施形態において、
図1の黒塗り矢印で示す部分に地中埋設物Bの劣化箇所があり、地中埋設物Bの内部に地下水が溜水として流入している。流入した地下水は
図1の破線矢印で示すように、マンホールM1とマンホールM2との両端へ向かって流れる。本実施形態に係る止水装置10と止水及び充填方法とにより、以下で説明する注入穴h1を介して、
図1の白抜き矢印で示す方向に充填側の端部から充填材が充填され、地中埋設物Bの内部空間を充填できる。
【0013】
図2は、本実施形態にかかる止水装置10と止水及び充填方法とを説明するための図であり、管路P1及び管路P2を省略して示す。
図2に簡略化して示すように、本実施形態に係る止水装置10が、充填用管路PFの排水側の端部に設置される。充填用管路PFの充填側の端部には以下で説明する充填止水栓20が設置される。充填用管路PFには、削孔穴hが少なくとも2つ設けられ、当該削孔穴hの間であって充填用管路PFの内部に管路内止水栓が設置される。
【0014】
図2では、当該削孔穴hの1つは以下で説明する注入穴h1として、1つは以下で説明する排水穴h2として設けられている。本実施形態によれば、
図2の白抜き矢印で示すように、注入穴h1を介して充填側の端部から充填材が注入される。地中埋設物Bの内部の溜水は、破線矢印で示すように排水穴h2を介して流れ出るが、止水装置10を用いることで大量に排水側の端部に流出してしまうことを防ぐことができる。地中埋設物Bの内部の溜水は、注入穴h1への方向へも流れる可能性があるが、充填止水栓20により止水され、充填側の端部に流れ出すことを防ぐことができる。このように本実施形態によれば、大量の地下水を流出させることなく、地中埋設物Bの内部空間に充填材を充填することができ、地中埋設物Bの内部の溜水と充填材とを円滑に置換することができる。
【0015】
図3から
図9Bを参照して、本実施形態における止水装置10の構成を説明する。
図3は止水装置10の構成例を上面から見た透過図である。
図4は止水装置10の構成例を側面から見た断面図である。
図5は止水装置10の構成例を、充填用管路PFの排水側の端部から見た透過図である。
図6は止水装置10の構成例を側面から見た図である。
図7は止水装置10の構成例を、充填用管路PFの排水側の端部から見た図である。
図8は止水装置10の構成例を、充填用管路PFの充填側の端部から見た図である。
図9Aと
図9Bとは充填用管路PFに排水補助管50が設置され、排水が行われる様子を説明するための図である。
【0016】
止水装置10は、第1の中空材11と、第2の中空材12と、第1の挿通部13と、第2の挿通部14と、ホース取り付け部15と、止水部16とを備える。第1の中空材11と、第2の中空材12と、第1の挿通部13と、第2の挿通部14と、ホース取り付け部15とは、いずれも任意の金属、合金、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS(アクリロニトリル・ブタジエンゴム・スチレン)等の合成樹脂材及びこれらの組み合わせにより構成してよい。
【0017】
第1の中空材11は充填用管路PFの排水側の端部に設置される。
図3及び
図4に示すように、第1の中空材11は充填用管路PFの内部に挿入して設置可能であるように、充填用管路PFの軸方向(Y軸方向)に沿った長さを有する。第1の中空材11は、充填用管路PFからの溜水を通す。第1の中空材11は、充填用管路PFの内部を撮影するパイプカメラを収容できる。当該パイプカメラは具体的には、本体部と該本体部に接続されたケーブルを有する。当該本体部が第1の中空材11に収容され、ケーブルは、以下で説明する第1の挿通部13に把持されて挿通される。
【0018】
図8に示すように、第1の中空材11の断面は、充填用管路PFの内周に沿った半月形状を有する。
図8において、二点鎖線部は充填用管路PFの円周を示す。第1の中空材11の半月形状の弧の部分が充填用管路PFの内周に密着して、第1の中空材11と充填用管路PFとの間の隙間ができることを防止し、止水ができる。また、第1の中空材11の断面が半月形状であることにより、第1の中空材11の内部に収容されたパイプカメラの脇を、溜水が通ってくることができる。
【0019】
第2の中空材12は、充填用管路PFの排水側の端部において、
図4に示すように第1の中空材11と略平行に設置される。第1の中空材11と同様に、第2の中空材12も充填用管路PFの内部に挿入して設置可能であるように、充填用管路PFの軸方向(Y軸方向)に沿った長さを有する。本実施形態では、第2の中空材12は第1の中空材11と鉛直方向(Z軸方向)に沿った上下方向に設置される。これに限られず、第2の中空材12は第1の中空材11と水平方向(X軸方向)に沿った左右、又は、第1の中空材11と鉛直方向の高さを違えて斜めに、第1の中空材11と略平行に設置されてもよい。第2の中空材12は、
図6と
図8とに示すように、不織布を充填用管路PFの側に備えてよい。当該不織布は第2の中空材12に、以下で説明する、排水補助管50に接続されるエアパイプを差し込むときの出水を低減できる。
【0020】
第2の中空材12には、地中埋設物Bの内部空間に入り込んで溜水を排水する排水補助管50が挿入される。排水補助管50は、
図9Aに示すように、一方の端部が地中埋設物Bの内部空間の鉛直方向(Z軸方向)上方に設置されて当該上方の領域の溜水を排水する。
図9Bは当該排水補助管50を簡略化して示す図である。
図9Bの白抜き矢印で示す排水補助管50の一方の端部から、地中埋設物Bの内部の溜水が取り込まれる。
図9Bの星印で示す排水補助管50の他端部が第2の中空材12に挿入され、溜水が第2の挿通部14を通ることで、充填用管路PFの排水側の端部に取り込まれた溜水が出てくることができる。排水補助管50の他端部が、以下で説明する第2の挿通部14が有する半割構造の上部と下部とによって把持されて、溜水を出すことができてもよい。
【0021】
排水補助管50の他端部には、排水補助管50からの排水を受ける第2の排水ホースD2を取り付け可能である。第2の排水ホースD2は、以下で説明する第1の排水ホースD1と共に、止水装置10を介した止水を可能にする。
【0022】
第1の挿通部13は、第1の中空材11に接続され、第1の中空材11の内部に紐状物を移動可能に挿通させる。第2の挿通部14は、第2の中空材12に接続され、第2の中空材12の内部に紐状物を移動可能に挿通させる。本実施形態では、第1の挿通部13は、紐状物として、第1の中空材11に挿入されて充填用管路PFの内部を撮影するパイプカメラのケーブルを挿通させる。第2の挿通部14は、紐状物として、充填用管路PFの内部に挿入される削孔機40の牽引ロープと、充填用管路PFの内部に挿入される止水ボール30に空気を挿入するエアホースとを挿通させる。第2の挿通部14は、削孔機40の牽引ロープと、止水ボール30のエアホースとに代えて、又は加えて、止水ボール30の牽引ロープを挿通できてもよい。これに限られず、第1の挿通部13及び第2の挿通部14は水質センサ等、充填用管路PF及び地中埋設物Bの内部空間の点検、調査等に用いられる任意の機器のケーブルを挿通させることができてよい。
【0023】
第1の挿通部13と第2の挿通部14とのそれぞれは半割構造を有し、半割構造により紐状物を把持する。
図4では、第1の挿通部13が半割構造により分割された第1上部131及び第1下部132と、第2の挿通部14が半割構造により分割された第2上部141及び第2下部142とを示す。
図4では、第1の挿通部13の第1上部131と第1下部132とが第1ねじ部133により一体的に結合されている様子を示すが、第1ねじ部133を回すことで第1上部131が鉛直方向(Z軸方向)上方に外れることができる。同様に、第2の挿通部14の第2上部141と第2下部142とも、
図4で示すように第2ねじ部143により一体的に結合されているが、第2ねじ部143を回すことで第2下部142が鉛直方向(Z軸方向)下方に外れることができる。
図6においては、第1の挿通部13の第1上部131と第2の挿通部14の第2下部142とが外されている様子を示す。第1の挿通部13と第2の挿通部14とが有する半割構造はこれに限られず、例えばばねを用いた結合機構により第1の挿通部13と第2の挿通部14とのそれぞれが紐状物を把持できる構造であってもよい。
【0024】
図7を参照すると、星印で示すところから第1の挿通部13に挿通された紐状物が出て来ることができ、2つの三角印で示すところから第2の挿通部14に挿通された紐状物が出て来ることができる。第1の挿通部13の第1上部131及び第1下部132と、第2の挿通部14の第2上部141及び第2下部142とのそれぞれは紐状物を上下方向から圧迫して把持できる。これにより、第1の中空材11及び第2の中空材12から入り込んだ溜水が漏れることを防ぐことができる。第1上部131及び第1下部132と、第2上部141及び第2下部142との間には不織布が設けられてもよい。これにより、より確実に止水することが可能となる。
【0025】
第2の挿通部14は、排水補助管50からの排水を受ける第2の排水ホースD2を取り付け可能であってもよい。第2の挿通部14と第2の排水ホースD2とは任意の接続部材を介して接続されてもよい。
図7の二点鎖線部は第2の排水ホースD2が取り付けられる部分を示す。第2の挿通部14の周面に、第2の排水ホースD2が密接して取り付けられることで排水が漏れずに排水側の端部に出てくることができる。
【0026】
ホース取り付け部15は、第1の中空材11に、第1の挿通部13と分岐して接続され、第1の中空材11を通る排水を受ける第1の排水ホースD1を取り付け可能である。
図5で示すように、ホース取り付け部15の開口には第1の排水ホースD1を嵌めこんで取り付けることができる。ホース取り付け部15は、
図4で示すように第1の排水ホースD1の嵌め込みを可能にする継手部を有してよい。当該継ぎ手部は金属又は合金等任意の素材で構成されてよい。
【0027】
図9Aは、第1の排水ホースD1と第2の排水ホースD2とが止水装置10を介して接続されている様子を示す。第1の排水ホースD1と第2の排水ホースD2とは、止水装置10を介して排水を受け、
図9Aの白抜き矢印で示す方向に、地下水位の高さまで引き上げられる。これにより、充填材の充填に伴う地中埋設物Bの内圧の上昇を防ぎつつ、排水される溜水の止水を行うことができる。ホース取り付け部15と第2の挿通部14とに別々に排水ホースを接続できることで、片方のみに取り付けられた場合と比較して円滑な排水が可能となる。
【0028】
止水部16は、第1の中空材11と第2の中空材12とを充填用管路PFの端部に圧着させて止水する。止水部16は、
図6で示すゴム161と不織布162とを備える。不織布162は、第1の中空材11と第2の中空材12とを一緒に囲むようにして設けられる。ゴム161は、図示しないねじを回すことで充填用管路PFの径方向に進退して充填用管路PFの内面に圧着できるよう構成されてよい。ゴム161は、例えば充填用管路PFの軸方向に圧縮されることにより径方向外側に膨張し、充填用管路PFの内面に圧着してもよい。
図6では、止水部16のゴム161は第2の中空材12の周方向に沿って設けられているが、当該ゴム161の構成はこれに限られず、不織布162と同様に第1の中空材11と第2の中空材12とを取り囲むように設けられていてもよい。ゴム161と不織布162とにより調整が可能なため、塩化ビニル、金属等の任意の素材の充填用管路PFに対し確実に止水を行うことができる。止水部16により、充填用管路PFに止水装置10を固定して設置することができる。
【0029】
図9A、
図9B、
図10、
図11、及び
図12を参照して、一実施形態に係る地中埋設物Bの止水及び充填方法の手順を説明する。本実施形態では、地中埋設物Bの内部空間に地下水が溜水として流入する状況下にある。
【0030】
ステップS1において、充填用管路PFの排水側の端部に止水装置10を設置する。本実施形態では、地中埋設物B内に充填用管路PFが収容されており、充填用管路PFの排水側の端部はマンホールM2に接続されている。止水装置10はマンホールM2内に入った作業員によって設置されてよい。
【0031】
止水装置10の第1の中空材11と第2の中空材12とが充填用管路PFの端部に挿入され、止水部16が備えるゴム161を充填用管路PFに圧着させる。これにより、充填用管路PFを止水しながら、止水装置10を充填用管路PFの端部に固定できる。このようにして止水装置10が充填用管路PFに設置される。
【0032】
ステップS2において、削孔機40により充填用管路PFに、充填材の注入用の注入穴h1と、地中埋設物Bの内部からの溜水の排水用の排水穴h2と、地中埋設物Bの内部空間に入り込んで溜水を排水する排水補助管50用の排水補助管用穴h3とを削孔する。
図11で示すように、注入穴h1は充填用管路PFの充填側の端部の方向に、排水穴h2と排水補助管用穴h3とは排水側の端部の方向に設けられる。これにより、以下で説明する管路内止水栓を用いて充填用管路PFの内部の空間を充填用と排水用とに分けて、充填及び排水作業を行うことが可能となる。注入穴h1、排水穴h2、及び排水補助管用穴h3を含む削孔穴hは充填用管路PFの内壁から地中埋設物Bの内部空間へ貫通する。注入穴h1、排水穴h2、及び排水補助管用穴h3のそれぞれの数は自由に決められてよい。
図11では注入穴h1、排水穴h2及び排水補助管50用穴は充填用管路PFの鉛直方向(Z軸方向)に沿った上方向に設けられるが、これに限られず、任意の方向に設けられてよい。
【0033】
削孔には任意の手法が採用されてよい。例えば
図11に示すように、ドリルを備える削孔機40が充填用管路PFの内部に挿入されて移動し、所望の位置で当該ドリルにより充填用管路PFの内面から削孔できてよい。削孔機40は取り付けられた牽引ロープによって牽引されることで移動できてよい。この場合、当該牽引ロープは止水装置10の第2の中空材12を通って第2の挿通部14に移動可能に挿通される。これにより、牽引ロープが、排水側のマンホールM2から引っ張られて、削孔機40を所望の位置まで移動させることができるようになる。これに限られず、削孔機40は押し棒によって充填側のマンホールM1から充填用管路PFの内部に押し込まれて移動できてもよい。削孔完了後、削孔機40は回収される。
【0034】
充填用管路PFの削孔の状況は、充填用管路PFの内部の様子を撮影するパイプカメラにより目視確認できてよい。パイプカメラは排水側のマンホールM2から、作業員によって止水装置10の第1の中空材11の内部に設置されてよい。パイプカメラはカメラの通信及びカメラを牽引するためのケーブルを備える。当該ケーブルは止水装置10の第1の挿通部13に移動可能に挿通され、排水側のマンホールM2に出てよい。
【0035】
削孔機40による削孔のため、止水ボール30が用いられてよい。削孔機40と止水ボール30とはワイヤーで接続される。削孔機40の牽引ロープにより、削孔機40と止水ボール30とを排水側の端部から引き込み、充填側の端部から引き戻すことができる。ここで引き込みとは、削孔機40と止水ボール30とを排水側の端部の方向に移動させることを言い、引き戻しとは充填側の端部の方向に移動させることを言う。
【0036】
具体的にはまず、排水側の端部から牽引ロープを引っ張ることで、削孔機40と止水ボール30とを充填用管路PFの内部に引き込む。削孔機40を1つ目の削孔穴の削孔位置まで引き込み、削孔穴を空ける。1つ目の削孔穴は、例えば
図11の排水補助管用穴h3となる。当該1つ目の削孔穴から充填用管路PF内に溜水が流入するので、止水ボール30で止水しながら、削孔機40及び止水ボール30を引戻す。このとき、一旦引き戻された削孔機40のメンテナンスをマンホールM1の内部において行うことができる。続いて、止水ボール30で充填用管路PF内部の溜水を止水したまま、削孔機40を2つ目の削孔穴の削孔位置まで引き込み、削孔穴を空ける。2つ目の削孔穴は、例えば
図11の排水穴h2となる。1つ目の削孔穴と同様に、止水ボール30で止水しながら、削孔機40及び止水ボール30を引戻す。このとき、1つ目の削孔穴の場合と同様に、マンホールM1に内部において削孔機40のメンテナンスを行ってよい。
【0037】
このように止水ボール30は削孔した穴から充填用管路PFの内部に流入した溜水を止水するために使用される。例えば削孔機40が
図11の排水補助管用穴h3と2つの排水穴h2とを削孔したあと、破線で示す位置に止水ボール30があるとき、当該2つの削孔穴から流入する溜水が充填側の端部へ流れて来ることを防ぐことができる。
【0038】
削孔機40の牽引ロープは止水装置10の第2の中空材12を通って第2の挿通部14に移動可能に挿通されてもよい。止水ボール30は、ゴム等の空気で膨張可能な素材で構成される。止水ボール30にはエアホースが接続され、当該エアホースにより止水ボール30に空気が送り込まれる。空気は手動式又は電動式のポンプにより送り込まれてよい。所望の位置に設置された後、エアホースを介して空気が送り込まれることにより、止水ボール30が膨張して充填用管路PFの内部で止水する。
【0039】
ステップS2に示すように、止水装置10は、充填用管路PFの内部を撮影するパイプカメラのケーブルと、削孔機40の牽引ロープと、止水ボール30に空気を挿入するエアホースとを移動可能に挿通させる。
【0040】
ステップS3において、注入穴h1と排水穴h2との間に管路内止水栓を設置する。
図9Aに示すように、管路内止水栓は注入穴h1と排水穴h2との間に設置されてよい。これにより管路内止水栓は、充填用管路PFの内部で充填材の注入部と溜水の排水部とを分けることができる。
【0041】
ステップS4において、充填用管路PFの充填側の端部において充填材を注入可能な充填止水栓20を設置する。充填止水栓20は充填材が送り込まれる充填ホースを充填用管路PFに接続させ、当該充填止水栓20と充填用管路PFとの間の隙間を埋めて止水することができる。充填止水栓20は、
図12に示すように、充填用管路PFの内周に沿って圧着するゴム部を備えてよい。充填止水栓20では、当該ゴム部が、図示しないねじを回すことで充填用管路PFの径方向に進退して充填用管路PFの内面に圧着できるよう構成されてよい。これにより、充填材、又は
図11の破線矢印で示す、注入穴h1を通って出る排水が充填側のマンホールM1に流れることなく充填作業を行うことができる。
【0042】
ステップS5において、排水補助管用穴h3を介して、排水補助管50を設置する。排水補助管50は例えば14mmの直径を有するCD(Combined Duct)管であってよい。これに限られず、排水補助管50は排水補助管用穴h3を通って排水が可能な任意の直径、及び任意の素材から構成されてよい。排水補助管50の排水を取り込む側の端部は、
図9A及び
図9Bに示すように地中埋設物Bの内部空間の鉛直方向(Z軸方向)に沿った上側に設置される。
【0043】
排水補助管50の他端部は止水装置10の第2の中空材12を通り、第2の挿通部14に排水を送り込むことができる。この場合、第2の挿通部14に挿通されていた削孔機40の牽引ロープ、止水ボール30又は止水ボール30のエアホースが抜き取られることでできた隙間を通って、排水が第2の挿通部14を通って出てもよい。排水補助管50の当該他端部自体が、第2の挿通部14の半割構造によって把持されて排水をマンホールM2側に出すことができてもよい。排水補助管50が地中埋設物Bの鉛直方向上部からも溜水の排水ができることにより、充填用管路PFが充填材で満たされた後、充填材により止水装置10の第1の中空材11及び第2の中空材12が閉塞されても排水することが可能になる。排水補助管50の設置の状況は、パイプカメラで目視確認しながら行われてよい。
【0044】
ステップS6において、排水穴h2からの排水を受ける第1の排水ホースD1と、排水補助管50からの排水を受ける第2の排水ホースD2とを取り付け、当該第1の排水ホースD1と第2の排水ホースD2とを地下水位の高さまで引き上げて止水する。ここで第1の排水ホースは、止水装置10のホース取り付け部15に取り付けられ、第2の排水ホースは、
図9Bの星印で示す排水補助管50の他端部に取り付けられてよい。地下水位の高さまでの引き上げは人手によって行われてもよいし、機械を用いて行われてもよい。止水の手法はこれに限られず、第1の排水ホースD1と第2の排水ホースD2との充填用管路PFとの反対側の端部に止水キャップを取り付けることにより行ってもよい。これにより、充填に伴い出て来る地中埋設物Bの内部の溜水が外に大量にあふれてしまうことを防ぐことができる。
【0045】
ステップS7において、充填止水栓20及び注入穴h1を介して地中埋設物Bの内部空間に充填材を注入する。充填材は、本実施形態では水中不分離性モルタルである。充填材は、クールスムージー(登録商標)であってもよい。充填材は充填止水栓20に取り付けられたポンプにより充填ホースに送り込まれ、充填用管路PFの内部へ注入される。当該充填材が注入穴h1を通って
図11の白抜き矢印で示すように地中埋設物Bの内部空間に侵入する。また、地中埋設物Bの内部の溜水は
図11の破線矢印で示すように充填用管路PFの排水穴h2を通って止水装置10の第1の中空材11へ入り、第1の排水ホースD1へと出る。このとき排水補助管50からも同時に排水が行われていてよい。
【0046】
充填材の注入が進み、充填用管路PFも充填材で満たされた場合、
図9Aに示すように排水補助管用穴h3を通って設置された排水補助管50から排水される。これにより、地中埋設物Bの内部に流入した溜水の排水が継続して行われる。このように止水装置10を介して2つの排水ホースを設けることにより、充填開始時は排水の径が大きい第1の中空材11を通らせることで排水量を多く確保し、充填用管路PFが充填材で満たされた後も排水を続けることができ、結果的に充填速度を速めることができる。
【0047】
ステップS8において、充填材によって地中埋設物Bの内部空間の充填が完了したかを判断する。充填が完了していないと判断した場合は(ステップS8:NO)、手順はステップS7に戻る。充填材によって地中埋設物Bの内部空間の充填が完了したことの判断には任意の手法が採用されてよい。例えば第2の排水ホースD2を透明に構成し、排水補助管50を通って出る排水が充填材に変わったことを目視確認したときに充填を完了したと判断できてもよい。例えば地中埋設物Bの体積が予め把握できている場合、当該体積分の充填材を注入し終えたときに充填を完了したと判断できてもよい。充填が完了した場合、第1の排水ホースD1と第2の排水ホースD2とを止水装置10から外して排水を任意の容器に受けることができてよい。これにより、大量の排水を流出させることなく安全に充填材と溜水との置換を行うことができる。このように充填が完了したと判断した場合は(ステップS8:YES)、
図10のフローチャートの処理を終了する。
【0048】
ステップS6とステップS7とに示すように、止水装置10と充填止水栓20とにより止水した状態で、充填止水栓20及び注入穴h1を介して地中埋設物Bの内部空間に充填材を注入し、止水装置10を介して排水穴h2からの排水及び排水補助管50からの排水を行うことで溜水と充填材とを置換する。
【0049】
ステップS1からステップS7に示すように、地中埋設物Bに接続された充填用管路PFを介して充填材が充填される。
【0050】
上述の通り、本実施形態の止水装置10は、地下水が溜水として内部空間に流入する状況下にある地中埋設物Bに収容された充填用管路PFの端部に接続される止水装置10であって、充填用管路PFの排水側の端部に設置される第1の中空材11と、第1の中空材11に接続され、第1の中空材11の内部に紐状物を移動可能に挿通させる第1の挿通部13と、第1の中空材11に、第1の挿通部13と分岐して接続され、第1の中空材11を通る排水を受ける第1の排水ホースD1を取り付け可能なホース取り付け部15と、充填用管路PFの端部に第1の中空材11と略平行に設置される第2の中空材12と、第2の中空材12に接続され、第2の中空材12の内部に紐状物を移動可能に挿通させる第2の挿通部14と、第1の中空材11と第2の中空材12とを充填用管路PFの端部に圧着させて止水する止水部16とを備える。
【0051】
本実施形態の止水装置10によれば、地下水が流入する状況下にある地中埋設物Bへ充填を行う際、地中埋設物Bの内圧の上昇を防ぎつつ適切な止水を行うことができる。よって大量の地下水を流出させることなく、安全に地中埋設物B内に充填材を充填することが可能となる。また、地中埋設物B内の溜水と充填材とを適切に置換することができる。このように本実施形態によれば、地下水が流入する状況下にある地中埋設物の充填の手法を改善する技術を提供できる。
【0052】
上述の通り、本実施形態の止水装置10において、第1の挿通部13と第2の挿通部14とのそれぞれは半割構造を有し、半割構造により紐状物を把持する。
【0053】
本実施形態の止水装置10によれば、充填用管路PFの内部での作業に必要な機器の操作がより簡便になり、地中埋設物B内の溜水と充填材との置換をより正確かつ効率的に行うことができる。よって、地下水が流入する状況下にある地中埋設物の充填の手法を改善することができる。
【0054】
上述の通り、本実施形態の止水装置10において、第2の中空材12には、地中埋設物Bの内部空間に入り込んで溜水を排水する排水補助管50が挿入され、排水補助管50の他端部に第2の排水ホースD2を取付ける。
【0055】
本実施形態の止水装置10では、第1の中空材11及びホース取り付け部15を通る排水と、第2の中空材12及び第2の挿通部14を通る排水とのために別個の排水用の口が設けられる。排水補助管50と第2の排水ホースD2を用いることで、充填作業が進むにつれ充填用管路PFの内部が充填材で満たされ、止水装置10が閉塞されても排水が可能となる。このように、充填開始時から充填用管路PFに充填材が満たされるまではホース取り付け部15と第1の排水ホースD1とを介して排水量を多く確保し、充填用管路PFが充填材で満たされた以降は排水補助管50と第2の排水ホースD2とを介して排水を行うことができる。すなわち、充填の進捗に応じて段階を分けて円滑に溜水と充填材との置換を行うことができる。よって、地下水が流入する状況下にある地中埋設物の充填の手法を改善することができる。
【0056】
上述の通り、本実施形態の止水装置10において、第1の挿通部13は、紐状物として、第1の中空材11に挿入されて充填用管路PFの内部を撮影するパイプカメラのケーブルを挿通させ、第2の挿通部14は、紐状物として、充填用管路PFの内部に挿入される削孔機40の牽引ロープと、充填用管路PFの内部に挿入される止水ボール30に空気を挿入するエアホースとを挿通させる。
【0057】
本実施形態の止水装置10によれば、充填用管路PFの作業の効率を高めるパイプカメラのケーブルと、削孔機40の牽引ロープ及び止水ボール30のエアホースとの挿入口は独立している。これにより、削孔機40の削孔状況、止水ボール30を設置する状況、及び削孔した穴から排水補助管50を排水補助管用穴h3に差し込む状況をパイプカメラで確認しながら、より正確に作業することができる。よって、地下水が流入する状況下にある地中埋設物の充填の手法を改善することができる。
【0058】
上述の通り、本実施形態の止水装置10において、第1の中空材11の断面は、充填用管路PFの内周に沿った半月形状を有する。
【0059】
本実施形態の止水装置10によれば、止水装置10が充填用管路PFへ密着し、止水がより確実に行われ、地中埋設物Bに対し充填材と溜水との交換がより行いやすくなる。よって、地下水が流入する状況下にある地中埋設物の充填の手法を改善することができる。
【0060】
本発明を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本発明に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形及び修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。
【符号の説明】
【0061】
10 止水装置
11 第1の中空材
12 第2の中空材
13 第1の挿通部
14 第2の挿通部
15 ホース取り付け部
16 止水部
20 充填止水栓
30 止水ボール
40 削孔機
50 排水補助管
131 第1上部
132 第1下部
133 第1ねじ部
141 第2上部
142 第2下部
143 第2ねじ部
161 ゴム
162 不織布