IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

特開2024-179248熱伝導層、熱伝導層の製造方法、転写用熱伝導層、及び電子部品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179248
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】熱伝導層、熱伝導層の製造方法、転写用熱伝導層、及び電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20241219BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097955
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 剛史
(72)【発明者】
【氏名】伊東 良平
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 賢一
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AB06
5E322FA04
5E322FA09
5F136BC04
5F136BC07
5F136DA01
(57)【要約】
【課題】熱伝導性に優れ、且つ接触熱抵抗の低下と優れた接合信頼性とを両立することができる熱伝導層を提供すること。
【解決手段】熱伝導部と、絶縁部と、前記絶縁部よりも弾性率が小さい凹凸緩和部と、を有し、前記熱伝導部の厚み方向の少なくとも一方の表面に前記凹凸緩和部が配される熱伝導層である。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導部と、絶縁部と、前記絶縁部よりも弾性率が小さい凹凸緩和部と、を有し、
前記熱伝導部の厚み方向の少なくとも一方の表面に前記凹凸緩和部が配されることを特徴とする熱伝導層。
【請求項2】
前記熱伝導層の厚み方向と略直交する方向に、前記熱伝導部を複数有する、請求項1に記載の熱伝導層。
【請求項3】
複数の前記熱伝導部がパターニング形成されてなる、請求項2に記載の熱伝導層。
【請求項4】
発熱部品の熱を伝導させるために用いられ、
複数の前記熱伝導部が、前記発熱部品の複数のホットスポットを覆う位置に配される、請求項2に記載の熱伝導層。
【請求項5】
前記熱伝導部の平均熱伝導率λf、前記絶縁部の平均熱伝導率λr、及び前記凹凸緩和部の平均熱伝導率λcが下記式(1)を満たす、請求項1に記載の熱伝導層。
λf(熱伝導部)>λc(凹凸緩和部)≧λr(絶縁部) ・・・ 式(1)
【請求項6】
前記熱伝導部の前記平均熱伝導率λfが0.5W/m・k以上である、請求項5に記載の熱伝導層。
【請求項7】
前記凹凸緩和部の平均弾性率が3,000MPa以下である、請求項1に記載の熱伝導層。
【請求項8】
厚み方向の少なくとも一方の表面に前記絶縁部が配され、且つ、厚み方向と略直交する方向に前記熱伝導部が配される熱拡散部を更に有する、請求項1に記載の熱伝導層。
【請求項9】
前記絶縁部及び前記凹凸緩和部が光硬化性樹脂を含有する、請求項1に記載の熱伝導層。
【請求項10】
前記光硬化性樹脂がエポキシ系樹脂を含有する、請求項9に記載の熱伝導層。
【請求項11】
前記熱伝導部、前記絶縁部、及び前記凹凸緩和部の少なくともいずれかがインクジェット印刷法により形成された、請求項3に記載の熱伝導層。
【請求項12】
絶縁部を形成するための絶縁部形成用インクをノズルから吐出して前記絶縁部を形成する絶縁部形成工程と、
熱伝導部を形成するための熱伝導部形成用インクをノズルから吐出して前記熱伝導部を形成する熱伝導部形成工程と、
前記絶縁部よりも弾性率が小さい凹凸緩和部を形成するための凹凸緩和部形成用インクをノズルから吐出して、前記熱伝導部の厚み方向の少なくとも一方の表面に前記凹凸緩和部が配されるように前記凹凸緩和部を形成する凹凸緩和部形成工程と、
を含むことを特徴とする熱伝導層の製造方法。
【請求項13】
熱拡散部を形成するための熱拡散部形成用インクをノズルから吐出して、厚み方向の少なくとも一方の表面に前記絶縁部が配されるように、且つ、厚み方向と略直交する方向に前記熱伝導部が配されるように熱拡散部を形成する熱拡散部形成工程を更に有する、請求項12に記載の熱伝導層の製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載の熱伝導層を仮支持体上に有することを特徴とする転写用熱伝導層。
【請求項15】
第1の部品と、第2の部品と、前記第1の部品と前記第2の部品との間の熱を伝導する請求項1に記載の熱伝導層と、を有することを特徴とする電子部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導層、熱伝導層の製造方法、転写用熱伝導層、及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路基板では高集積化や高速化に伴いICチップ等の発熱部品の回路性能低下が問題となっており、温度上昇を抑制する放熱技術の高性能化が要求されている。放熱技術としては、発熱部品(ICチップ等)に放熱部品(ヒートシンク、ヒートパイプ等)を接着する手法が広く採用されており、発熱部品と放熱部品の隙間を埋めるために、TIM(Thermal interface material)が活用されている。
【0003】
従来の熱伝導性粒子を樹脂に混合した熱伝導層の一例を、図1A及び図1Bに示す。熱伝導性粒子101を樹脂102に混合した従来の熱伝導層100(例えば、ペースト状TIM)は、部品200と部品300とを貼り付ける際(押圧時)に熱伝導性粒子101を接触させて熱伝導接点を形成するため、押圧条件によるプロセスの変動が大きい。また、熱伝導粒子101同士が点接触となるため、熱伝導性を高めるためには高濃度の熱伝導性粒子混合層を形成する必要があるが、熱伝導層100と部品200又は部品300との接着面の接着強度が低下する。また、高濃度の熱伝導性粒子101を混合したペーストインクの粘性が高くなることが、熱伝導層塗工形成のプロセスの制約となっていた。熱伝導層100と、発熱部品及び冷却部品(200又は300)との接触面においても、熱伝導性粒子101による点接触になるため、接触熱抵抗を下げることが難しい。更に熱伝導粒子101の粒子径を大きくして接点数を抑制すると、熱伝導層100の厚さが厚くなることで熱抵抗下がらないという問題があった。
【0004】
このような問題に対して、厚み方向に配向したカーボンを含有したシートを利用することで熱伝導層内部(厚み方向)の熱伝導性を改善し、更に金属メッキ層を上下部品の接触面に形成することで低熱抵抗の熱伝導層を形成することが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この提案では、配向したカーボンを接触面に塗工することは困難であり、シートを貼り付ける場合は、直接塗工して成膜する工法に比べて生産性が悪く、更にシートは薄膜化が難しいため熱抵抗が下がりにくい。また、シート表面に金属層を形成するため、コストアップとなるという問題があった。
【0005】
また、厚み方向に連続する熱伝導性ペースト製のバンプと、このバンプの周囲に充填される接着剤層とを有する接着シートが提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、この提案では、従来の熱伝導性粒子と樹脂バインダーからなるバンプを形成しているため、熱伝導性粒子の混合濃度が低い場合は熱伝導性が低下し、混合濃度が高い場合は高粘度となるため塗工が難しい、という従来の問題を解決できない。更に熱伝導性粒子の混合濃度が高い場合は、バンプ表面の柔軟性が乏しいため接合信頼性が低く、また熱伝導性粒子による点接触となるため、シートの表裏の界面と部品との接触面の形成が困難となり、接触熱抵抗が大きくなるという課題がある。また、発熱部品に面内熱分布がある場合などには、面内(厚み方向と略直交する方向)の熱を拡散して均一化することができない。シートを貼り付ける場合は、特許文献1と同様に直接塗工して成膜することに比べて、生産性が悪く、薄膜化が難しいため、熱抵抗が下がりにくいという問題があった。
【0006】
また、金属と樹脂とを含み、金属含有率が互いに異なる複数の領域を有する熱伝導層も提案されている(特許文献3参照)。この提案では、低融点金属フィラー、熱伝導性金属フィラー(大粒子径フィラー:35μm)、及び樹脂を混合し、加熱により低融点フィラーが溶融して、金属フィラー同士を接続して金属熱伝導部を形成させる。熱伝導部のパターンを形成するためには、発熱体及び放熱体に予め絶縁性樹脂をパターン形成する必要があり、また2種の金属と樹脂との熱相分離でパターン形成するため、パターン形成精度が低く、生産性も悪い。更に熱伝導性の金属フィラー同士は直接接触しにくいため、金属フィラー間の接触熱抵抗が大きくなりやすく、大粒子径フィラーを用いるため熱伝導層を薄くすることが困難であり、結果として熱抵抗が下がらない。そのため、金属部の面内(厚み方向と略直交する方向)の熱を拡散均一化して放熱することが難しいという問題があった。更に金属含有率の高い領域においては絶縁樹脂層ほどの接合強度は得られないため、発熱体や放熱体との熱膨張係数(CTE)のミスマッチによる熱変形によって生じた応力集中によってクラックなどの接合信頼性が課題になる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、熱伝導性に優れ、且つ接触熱抵抗の低下と優れた接合信頼性とを両立することができる熱伝導層を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としての本発明の熱伝導層は、熱伝導部と、絶縁部と、前記絶縁部よりも弾性率が小さい凹凸緩和部と、を有し、前記熱伝導部の厚み方向の少なくとも一方の表面に前記凹凸緩和部が配されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱伝導性に優れ、且つ接触熱抵抗の低下と優れた接合信頼性とを両立することができる熱伝導層を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1Aは、従来の熱伝導性粒子を樹脂に混合した熱伝導層の一例を示す厚み方向の断面模式図である。
図1B図1Bは、従来の熱伝導性粒子を樹脂に混合した熱伝導層の一例を示す上面模式図である。
図2A図2Aは、実施形態例1の熱伝導層10の厚み方向の断面模式図である。
図2B図2Bは、図2AのA-A’断面(実施形態例1の熱伝導層10の厚み方向と略直行する方向)の断面模式図である。
図3図3は、実施形態例2の熱伝導層10の厚み方向の断面模式図である。
図4A図4Aは、実施形態例3の熱伝導層10の厚み方向の断面模式図である。
図4B図4Bは、実施形態例4の熱伝導層10の厚み方向の断面模式図である。
図4C図4Cは、実施形態例5の熱伝導層10の厚み方向の断面模式図である。
図4D図4Dは、実施形態例6の熱伝導層10の厚み方向の断面模式図である。
図4E図4Eは、実施形態例7の熱伝導層10の厚み方向の断面模式図である。
図5図5は、インクジェット印刷法によって熱伝導層10を形成する製造装置の一例を示す図である。
図6A図6Aは、本発明の熱伝導層を用いた電子部品の層構造の一実施形態(構成形態例1)を示す図である。
図6B図6Bは、本発明の熱伝導層を用いた電子部品の層構造の別の一実施形態(構成形態例2)を示す図である。
図6C図6Cは、本発明の熱伝導層を用いた電子部品の層構造の別の一実施形態(構成形態例3)を示す図である。
図7図7は、本発明の熱伝導層を用いた電子部品の層構造の別の一実施形態(第1の変形例)を示す図である。
図8図8は、本発明の熱伝導層を用いた電子部品の層構造の別の一実施形態(第2の変形例)を示す図である。
図9A図9Aは、実施例1~4及び比較例1~8の貼合せサンプルの作製の際の、下部部品30(第1のガラス基板)に対する熱伝導層形成領域10bを説明する上面模式図である。
図9B図9Bは、実施例1~4の貼合せサンプルの作製におけるパターン設計の際の熱伝導層の上面模式図である。
図10A図10Aは、比較例1の貼合せサンプルの厚み方向の断面模式図である。
図10B図10Bは、比較例1の貼合せサンプルの作製におけるパターン設計の際の熱伝導層の上面模式図である。
図11A図11Aは、比較例2の貼合せサンプルの厚み方向の断面模式図である。
図11B図11Bは、比較例2の貼合せサンプルの作製におけるパターン設計の際の熱伝導層の上面模式図である。
図12図12は、比較例3の貼合せサンプルの厚み方向の断面模式図である。
図13A図13Aは、比較例4の貼合せサンプルの厚み方向の断面模式図である。
図13B図13Bは、比較例4の貼合せサンプルの作製におけるパターン設計の際の熱伝導層の上面模式図である。
図14A図14Aは、比較例5の貼合せサンプルの厚み方向の断面模式図である。
図14B図14Bは、比較例5の貼合せサンプルの作製におけるパターン設計の際の熱伝導層の上面模式図である。
図15図15は、の熱伝導層の熱流体シミュレーションのモデルの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(熱伝導層)
本発明の熱伝導層は、熱伝導部と、絶縁部と、前記絶縁部よりも弾性率が小さい凹凸緩和部と、を有し、更に熱拡散部を有することが好ましく、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
本発明の熱伝導層は、前記熱伝導部の厚み方向の少なくとも一方の表面に前記凹凸緩和部が配される。
【0012】
従来の熱伝導部は、熱伝導率を上げるためにフィラー充填率が高く、粘度が上昇することから、熱伝導部と部品との界面の凹凸への追随性が悪かった。焼結するような銀ナノインクやペーストにおいては、焼結時に更に凹凸ができてしまい、熱伝導部と部品との界面が点接触になっていた。これらの要因で、界面接触熱抵抗が上がり、接合信頼性の面でも劣るという問題があった。
【0013】
このような問題に対し、本発明者らは、鋭意検討を行い、前記熱伝導層に前記凹凸緩和部を形成することで、熱伝導部のフィラー充填率を高くして熱伝導性を向上させた場合であっても、前記熱伝導層の厚み方向の上下面に配される発熱部品や放熱部品(冷却部品)等の部品の構造、前記熱伝導部における凹凸、及び熱変形に対する前記熱伝導層の追随性が向上し、接触熱抵抗の低下と優れた接合信頼性とを両立することができることを見出した。更に、本発明者らは、前記凹凸緩和部の熱伝導率と厚みを調整することで、熱抵抗を向上させることができることも見出した。
【0014】
なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、又は削除などの当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用及び効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0015】
<熱伝導部>
前記熱伝導部は、前記熱伝導層の厚み方向の上下面に配される部品間の熱を伝導させるための部材である。したがって、前記熱伝導部は、前記熱伝導層の厚み方向に連続して形成されることが好ましい。
【0016】
<<材料>>
前記熱伝導部を構成する材料としては、熱を伝導することができる材料(以下、「熱伝導性材料」と称することがある)を含有する限り、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、熱伝導性材料以外のその他の成分を含有していてもよい。
【0017】
前記熱伝導性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、金属材料、カーボン、セラミック材料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記熱伝導部は、熱伝導性の点から、金属材料を含有することが好ましい。
【0018】
-金属材料-
前記金属材料としては、例えば、Ag、Cu、Au、Alなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、Agが好ましい。
なお、前記金属材料は、電気伝導性材料としても使用することができるため、前記熱伝導部が前記金属材料を含有する場合、前記熱伝導層は、電気伝導層としても使用可能である。
また、前記金属材料は、熱伝導部として塗工した後に、加熱又は光で焼成することにより、粒子間がシンタリングした高熱伝導性の熱伝導部とすることができる。したがって、前記熱伝導部は、シンタリングした金属材料を含有することがより好ましい。
【0019】
-セラミック材料-
前記セラミック材料としては、例えば、SiO、Al、AlN、BNなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記熱伝導部における前記熱伝導性材料の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記熱伝導部の全体積に対して、40体積%~100体積%が好ましく、60体積%~100体積%がより好ましい。前記熱伝導部における前記熱伝導性材料の含有量が多い程、高い熱伝導性が得られる。
【0021】
-その他の材料-
前記熱伝導部の前記熱伝導性材料以外の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0022】
前記熱伝導部における前記熱伝導性材料以外の成分の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0023】
[平均熱伝導率λf]
前記熱伝導部の平均熱伝導率λfとしては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、0.5W/m・k以上が好ましく、10W/m・k以上がより好ましく、30W/m・k以上が更に好ましい。前記熱伝導部の平均熱伝導率λfが0.5W/m・k以上であると、前記熱伝導層の厚み方向の上下面に配される部品間(例えば、発熱部品と冷却部品との間)に効率良く熱伝導させることができる。前記熱伝導部の平均熱伝導率λfは、高い程好ましいため、その上限値には特に制限はない。
【0024】
なお、前記熱伝導部の熱伝導率は、熱伝導率測定装置(TIMテスター、モデル1300、Analysis Tech社製)で測定することができる。本発明において、前記熱伝導部の平均熱伝導率λfは、3つの測定用サンプルについて測定した前記熱伝導部の熱伝導率の平均値を意味する。
【0025】
[数及び形状]
前記熱伝導層における前記熱伝導部の数としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、1つであってもよく、複数であってもよいが、前記熱伝導層の厚み方向と略直交する方向に、前記熱伝導部を複数有することが好ましい。通常、発熱部品におけるホットスポットは複数存在しているため、これに接する、好ましくはこれを覆う位置に前記熱伝導部を周期的に配することで、より効果的に発熱部品の複数のホットスポットの熱を伝熱できる。発熱部品のホットスポットを前記熱伝導部が覆う構造にすることで、熱伝導層に対し熱が分散されるため、効率良く熱を伝導させることができる。
【0026】
なお、本発明において「熱伝導層の厚み方向と略直交する方向」とは、前記熱伝導層の厚み方向に対して、90°±5°が好ましく、90°±3°がより好ましく、90°が更に好ましい。
【0027】
このように、前記熱伝導層における前記熱伝導部は、所望の領域に配されるようにパターニング形成されてなることが好ましく、複数の前記熱伝導部がパターニング形成されてなることがより好ましい。
なお、本発明において「パターニング形成」(「パターン形成」とも称する)とは、前記熱伝導部、前記絶縁部、前記凹凸緩和部、又は前記熱拡散部を予め決められた位置及び形状に選択的に配することを意味する。したがって、前記熱伝導層の厚さ方向及び/又は面方向(前記厚さ方向と略直交する方向)において、前記熱伝導部、前記絶縁部、前記凹凸緩和部、又は前記熱拡散部の疎密分布を形成すること;前記熱伝導層において、前記熱伝導部、前記絶縁部、前記凹凸緩和部、又は前記熱拡散部を所望形状に意図的(人工的)に形成することの少なくともいずれかを意味する。したがって、前記「パターニング形成」には、任意形状に意図せず(自然発生的に)形成される構造(例えば、海島構造)は含まれない。
これは前記熱伝導層の製造方法に起因するものであり、前記パターニング形成は、前記熱伝導層の製造方法により実現可能である。
【0028】
[平均厚み]
前記熱伝導部の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、1μm~3,000μmが好ましく、1μm~100μmがより好ましい。前記熱伝導層の熱抵抗を下げるためには、前記熱伝導部の厚みが薄い方が好ましい。
【0029】
前記熱伝導部の厚みは、例えば、触針式プロファイラー(Alpha-Step D-500、KLA-Tenchore社製)で測定することができる。
本発明において、前記熱伝導部の平均厚みは、前記熱伝導部の中から任意に選択した10箇所の厚みの測定値の平均値を意味する。
【0030】
[体積含有率]
前記熱伝導層における前記熱伝導部の体積含有率としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記熱伝導層の全体積に対して、5体積%~90体積%が好ましく、5体積%~50体積%がより好ましい。前記熱伝導層における前記熱伝導部の体積含有率が90体積%以下であると、相対的に前記絶縁部の体積が増加し、前記熱伝導層の厚み方向の上下面の部品(例えば、発熱部品及び/又は冷却部品)との接着性や、熱応力変形における応力緩和性を得やすい。また、前記熱伝導層における前記熱伝導部の体積含有率が5体積%以上であると熱伝導性が得やすい。
【0031】
<絶縁部>
前記絶縁部は、前記熱伝導層の厚み方向の上下面に配される部品との機械的接着強度や応力緩和性を得る機能を有する。また、前記絶縁部は、前記熱伝導部を外部に露出しないようにして絶縁信頼性を担保する機能も有することが好ましい。
【0032】
<<材料>>
前記絶縁部を構成する材料としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、樹脂材料などが挙げられ、更に必要に応じて、その他の成分を含有していてもよい。
【0033】
-樹脂材料-
前記樹脂材料としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、光重合性樹脂を含有することが、パターニング形成しやすい点で好ましい。
【0034】
前記樹脂材料の具体例としては、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、エステル系樹脂、ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、スチレン系樹脂、セルロース系樹脂、アミド系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記樹脂材料としては、耐熱性が良好なエポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂が好ましく、硬化収縮が小さい点で、エポキシ系樹脂がより好ましい。
【0035】
また、前記樹脂材料としては、熱応力を緩和するために軟化温度(Tg)が低い、低弾性樹脂材料を含有することが更に好ましい。前記樹脂材料が前記低弾性樹脂材料を含有すること、更にその含有量を調整することで、前記絶縁部を低弾性にすることができ、該絶縁部の弾性率を所望の範囲に調整することができる。
前記低弾性樹脂材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オキセタン化合物、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、低弾性の樹脂粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記低弾性樹脂材料は、具体的には、後述する前記絶縁部形成用インクにおけるその他の成分に記載のものなどを用いることができ、好ましい含有量も同様である。
【0036】
前記絶縁部における前記樹脂材料の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記熱伝導部の全質量に対して、40質量%~50質量%が好ましい。前記絶縁部における前記樹脂材料の含有量が、40質量%以上であると、硬化収縮が小さく耐熱性に優れる点で好ましく、50質量%以下であると、高い機械的接着強度や応力緩和性が得られる。
【0037】
-その他の材料-
前記絶縁部の前記樹脂材料以外の成分としては、例えば、無機粒子などが挙げられる。前記絶縁部が、例えば熱伝導性の絶縁無機粒子を含有すると、前記絶縁部の熱伝導性を向上することができる。また、前記絶縁部が前記無機粒子を含有すると、該絶縁部の機械的強度を向上するなどの効果も得られる。
【0038】
前記絶縁部における前記樹脂材料以外の成分の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0039】
[平均熱伝導率λr]
前記絶縁部の平均熱伝導率λrとしては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、2W/m・k未満が好ましく、0.5W/m・k未満がより好ましい。また、前記絶縁部の平均熱伝導率λrの上限値としても、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、0.3W/m・k以上が好ましい。前記絶縁部の平均熱伝導率λrが、2W/m・k未満であると界面接触熱抵抗の低減及び接合信頼性が良好であり、0.3W/m・k以上であると熱伝導率が良好である。
【0040】
なお、前記絶縁部の熱伝導率は、熱伝導率測定装置(TIMテスター、モデル1300、Analysis Tech社製)で測定することができる。本発明において、前記絶縁部の平均熱伝導率λrは、3つの測定用サンプルについて測定した前記絶縁部の熱伝導率の平均値を意味する。
【0041】
[数及び形状]
前記熱伝導層における前記絶縁部の数としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、1つであってもよく、複数であってもよい。前記絶縁部は、前記熱伝導層の前記熱伝導部以外の領域に配されるため、前記熱伝導部の数に応じて、適宜選択することができる。前記熱伝導部に熱導電性材料を使う場合は、周辺部品への付着によるショート等の不具合を防ぐために、前記絶縁部で前記熱伝導層の側面を封止するような構造にすることが好ましい。
【0042】
[平均厚み]
前記絶縁部の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0043】
前記絶縁部の厚みは、例えば、触針式プロファイラー(Alpha-Step D-500、KLA-Tenchore社製)で測定することができる。
本発明において、絶縁部の平均厚みは、絶縁部の中から任意に選択した10箇所の厚みの測定値の平均値を意味する。
【0044】
[体積含有率]
前記熱伝導層における前記絶縁部の体積含有率としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記熱伝導層の全体積に対して、10体積%~95体積%が好ましく、50体積%~95体積%がより好ましい。前記熱伝導層における前記絶縁部の体積含有率が95体積%以下であると、相対的に前記熱伝導部の体積が増加し、前記熱伝導層の熱伝導性が得やすい。また、前記熱伝導層における前記絶縁部の体積含有率が10体積%以上であると、厚み方向の上下面の部品(例えば、発熱部品及び/又は冷却部品)との接着性や、熱応力変形における応力緩和性を得やすい。
【0045】
[平均弾性率]
前記絶縁部の平均弾性率としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、500Mpa以上10,000Mpa以下が好ましく、500Mpa以上5,000Mpa以下がより好ましい。前記絶縁部の平均弾性率が500Mpa以上であると、前記熱伝導層の厚み方向の上下面に配される部品との機械的接着強度を好適に得ることができる。また、前記絶縁部の平均弾性率が10,000Mpa以下であると、前記熱伝導層の厚み方向の上下面に配される部品に対する応力緩和性を好適に得ることができる。
【0046】
前記絶縁部の弾性率は、微小硬度計(FISCHERSCOPE(登録商標)HM2000、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)を用い、下記測定条件に設定して測定することができる。
本発明において、前記絶縁部の平均弾性率とは、前記絶縁部の中から任意に選択した2箇所の弾性率の測定値の平均値を意味する。
[測定条件]
・ 負荷除荷繰返し:1回
・ 試験点数:各サンプル2点
・ 圧子:ビッカース圧子
・ 最大荷重:10mN
・ 最大押込み深さ:0.7μm
・ 負荷(除荷)時間:20秒間
・ クリープ時間:5秒間
【0047】
<凹凸緩和部>
前記凹凸緩和部の弾性率は、前記絶縁部よりも弾性率が小さい。前記凹凸緩和部は、前記熱伝導層の厚み方向の上下面に配される部品の凹凸(表面粗さや寸法のバラつき等)、前記熱伝導部の凹凸、及び熱変形に対する追随性を向上させ、これにより、前記熱伝導層の界面接触熱抵抗を低下させ、接合信頼性を向上させる機能を有する。また、前記凹凸緩和部は、前記熱伝導部の材料として、液状TIMを使用した場合に、液漏れを防止する封止機能も有する。
【0048】
<<材料>>
前記凹凸緩和部を構成する材料としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、樹脂材料などが挙げられ、更に熱伝導性材料を含有することが好ましく、更に必要に応じて、その他の成分を含有していてもよい。
【0049】
-樹脂材料-
前記凹凸緩和部を構成する樹脂材料としては、前記絶縁部よりも弾性率を小さくすることができる限り、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、光重合性樹脂を含有することが、パターニング形成しやすい点で好ましい。
【0050】
前記樹脂材料の具体例としては、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、エステル系樹脂、ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、スチレン系樹脂、セルロース系樹脂、アミド系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記樹脂材料としては、耐熱性が良好なエポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂が好ましく、硬化収縮が小さい点で、エポキシ系樹脂がより好ましい。また、前記樹脂材料としては、前記凹凸緩和部の弾性率を前記絶縁部の弾性率よりも小さくするため、及び熱応力を緩和するために、軟化温度(Tg)が低い、低弾性樹脂材料を含有することが更に好ましい。
【0051】
このように、前記凹凸緩和部の前記樹脂材料は、前記絶縁部を構成する樹脂材料と同じ材料を用いることができ、好ましくは同類の材料であるが、更に熱伝導性の高い材料を用いることが、前記絶縁部と前記凹凸緩和部との密着性が良好であり、熱伝導性を向上させることができる点で好ましい。
【0052】
前記凹凸緩和部の弾性率を、前記絶縁部の弾性率よりも小さくするためには、オキセタン化合物の含有量、グリシジルエーテル型エポキシ化合物の含有量、(メタ)アクリル系樹脂の含有量、ウレタン系樹脂の含有量、及び低弾性の樹脂粒子から選択される少なくともいずれかの低弾性樹脂材料の含有量を、前記絶縁部における前記低弾性樹脂材料の含有量より多くする方法が挙げられる。
【0053】
前記絶縁部における前記樹脂材料の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記熱伝導部の全質量に対して、1質量%~50質量%が好ましく、5質量%~30質量%がより好ましい。前記絶縁部における前記樹脂材料の含有量が、1質量%以上であると、硬化収縮が小さく耐熱性に優れる点で好ましく、50質量%以下であると、高い機械的接着強度や応力緩和性が得られる。
【0054】
-熱伝導性材料-
前記凹凸緩和部の熱伝導性を向上させるためには、前記樹脂材料に加え、前記熱伝導性材料を含有することが好ましい。
前記凹凸緩和部における前記熱伝導性材料としては、特に制限はなく、前記熱伝導部と同様の材料を用いることができ、例えば、金属材料、カーボン、セラミック材料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記凹凸緩和部における前記熱伝導性材料としては、セラミック材料が好ましい。
【0055】
前記金属材料としては、例えば、Ag、Cu、Au、Alなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
前記セラミック材料としては、例えば、SiO、Al、AlN、BNなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、AlNを含有することが好ましく、ファイバー状AlNを含有することが、熱伝導率の向上が期待できる点でより好ましい。
【0057】
前記凹凸緩和部における前記熱伝導性材料の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記凹凸緩和部の全質量に対して、1質量%~50質量%が好ましく、3質量%~20質量%がより好ましい。前記凹凸緩和部における前記熱伝導性材料の含有量が、1質量%以上であると、前記凹凸緩和部の熱伝導性を向上させることができ、50質量%以下であると、界面接触熱抵抗を低減し、接合信頼性が向上する。
【0058】
-その他の材料-
前記凹凸緩和部の前記樹脂材料及び前記熱伝導性材料以外の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0059】
前記凹凸緩和部における前記樹脂材料以外の成分の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0060】
[平均熱伝導率λc]
前記凹凸緩和部の平均熱伝導率λcとしては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、0.4W/m・k以上5.0W/m・k未満が好ましく、0.5W/m・k以上2.0W/m・k以下がより好ましく、0.5W/m・k以上1.0W/m・k以下が更に好ましい。前記凹凸緩和部の平均熱伝導率λcが0.4W/m・k以上であると、前記熱伝導層の厚み方向の上下面に配される部品間(例えば、発熱部品と冷却部品との間)に効率良く熱伝導させることができる。また、前記凹凸緩和部の平均熱伝導率λcが5.0W/m・k未満であると、前記熱伝導層の界面接触熱抵抗を低下させ、接合信頼性を向上させることができる。
【0061】
なお、前記凹凸緩和部の熱伝導率は、熱伝導率測定装置(TIMテスター、モデル1300、Analysis Tech社製)で測定することができる。本発明において、前記凹凸緩和部の平均熱伝導率λcは、3つの測定用サンプルについて測定した前記凹凸緩和部の熱伝導率の平均値を意味する。
【0062】
また、前記熱伝導部の平均熱伝導率λf、前記絶縁部の平均熱伝導率λr、及び前記凹凸緩和部の平均熱伝導率λcは、下記式(1)を満たすことが好ましい。下記式(1)を満たすことで、前記熱伝導部の熱伝導を大きく損なうことなく、前記熱伝導層の厚み方向の上下に配される部品の熱伝導を向上させることができる。好ましくは、前記熱伝導層の厚み方向の上下面に配される発熱部品から、冷却部品へ熱を逃がすことができる。また、前記凹凸緩和部の平均熱伝導率λcを、前記絶縁部の平均熱伝導率λrと同等以上とすることで、界面接触熱抵抗を更に低減し、更に良好な接合信頼性を奏することができる。
λf(熱伝導部)>λc(凹凸緩和部)≧λr(絶縁部) ・・・ 式(1)
【0063】
[数及び形状]
前記熱伝導層における前記凹凸緩和部の数としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、1つであってもよく、複数であってもよい。前記凹凸緩和部は、前記熱伝導層の前記熱伝導部を配する領域に合わせて配されるため、前記熱伝導部の数に応じて、適宜選択することができる。好適な条件は、特に発熱が高い複数のホットスポット部を覆うように前記熱伝導部を配置できるように、前記熱伝導部を複数形成し、これに合わせた領域に前記凹凸緩和部を複数形成しておくとよい。
【0064】
[平均厚み]
前記凹凸緩和部の平均厚みとしては、特に制限はなく、前記熱伝導層の厚み方向の上下面に配される部品の表面粗さや寸法のバラつきに合わせて、適宜選択することができ、これにより、界面接触熱抵抗を低減することができる。
【0065】
前記凹凸緩和部の厚みは、例えば、触針式プロファイラー(Alpha-Step D-500、KLA-Tenchore社製)で測定することができる。
本発明において、凹凸緩和部の平均厚みは、凹凸緩和部の中から任意に選択した10箇所の厚みの測定値の平均値を意味する。
【0066】
[体積含有率]
前記熱伝導層における前記凹凸緩和部の体積としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記熱伝導層の全体積に対して、0.5体積%~10体積%が好ましく、0.5体積%~5体積%がより好ましい。前記熱伝導層における前記凹凸緩和部の体積が10体積%以下であると、相対的に前記熱伝導部の体積が増加し、前記熱伝導層の熱伝導性が得やすい。また、前記熱伝導層における前記熱伝導部の体積が0.5体積%以上であると、厚み方向の上下面の部品(例えば、発熱部品及び/又は冷却部品)との接着性や、熱応力変形における応力緩和性を得やすい。
【0067】
[弾性率]
前記凹凸緩和部の弾性率は、前記絶縁部の弾性率よりも小さい限り、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記絶縁部の弾性率に対して、80%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。前記凹凸緩和部の弾性率が、前記絶縁部の弾性率に対して80%以下であると、凹凸への追随性や熱変形によるストレスを好適に緩和することができる。
【0068】
前記凹凸緩和部の平均弾性率としては、前記絶縁部の平均弾性率よりも小さい限り、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、3,000MPa以下が好ましく、500Mpa以下がより好ましい。前記凹凸緩和部の平均弾性率が小さい程、高い応力緩和効果が得られる。
【0069】
前記凹凸緩和部の弾性率は、微小硬度計(FISCHERSCOPE(登録商標)HM2000、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)を用い、前記絶縁部の弾性率の測定条件と同様の条件に設定して測定することができる。
本発明において、前記凹凸緩和部の平均弾性率とは、前記凹凸緩和部の中から任意に選択した2箇所の弾性率の測定値の平均値を意味する。
【0070】
前記凹凸緩和部の平均弾性率を調整するために、前記低弾性樹脂材料、若しくは低弾性樹脂粒子を適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
【0071】
前記凹凸緩和部における前記低弾性ゴム材料の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記凹凸緩和部の全体積に対して、5体積%~90体積%が好ましい。
【0072】
前記凹凸緩和部の面積としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記熱伝導層の全表面積に対して、10%~80%の領域に形成することが好ましい。前記凹凸緩和部の面積が、前記熱伝導層の全表面積に対して、10%以上であると、前記熱伝導層の厚み方向の上下面に配される部品(例えば、発熱部品及び/又は冷却部品)との熱抵抗を好適に低下させることができ、80%以下であると、前記熱伝導層の厚み方向の上下面に配される部品との界面での接合信頼性が向上する。
【0073】
また、前記熱伝導層において、熱伝導を行うための有効面積の比率としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、10%以上90%以下が好ましく、10%以上70%以下がより好ましく、10%以上50%以下が更に好ましく、20%以上50%以下が特に好ましい。
【0074】
ここで、本明細書においては、前記熱伝導層における熱伝導部及び凹凸緩和部を、熱伝導を行うための「有効部」とする。
また、「熱伝導を行うための有効面積の比率」とは、前記熱伝導層の厚み方向と略直行する方向における、前記熱伝導層の全面積に対する前記有効部の面積を意味する。具体的には、前記熱伝導層の厚み方向と略直行する方向で切断した場合の断面Xにおける、前記熱伝導層の全断面積に対する、前記有効部の断面積の割合を意味し、次式で表される。
熱伝導を行うための有効面積の比率(%)=有効部の断面積/熱伝導層の全断面積×100
【0075】
「有効部」及び「熱伝導を行うための有効面積の比率」は、以下の実施形態1で詳述する。なお、断面Xに前記熱伝導部、前記凹凸緩和部、前記絶縁部、及び後述する熱拡散部を含む場合、「熱伝導を行うための有効面積の比率」は、次式で表される。また、前記熱伝導層が、前記熱拡散部を有する場合は、前記熱伝導層の厚み方向における熱拡散部を有しない領域において、前記熱伝導層の厚み方向に略直行する方向の断面Xから、前記熱伝導を行うための有効面積の比率を算出することが望ましい。
熱伝導を行うための有効面積の比率(%)=(熱伝導部の断面積+凹凸緩和部の断面積)/(熱伝導部の断面積+凹凸緩和部の断面積+絶縁部の断面積+熱拡散部の断面積)×100
【0076】
<熱拡散部>
前記熱伝導層は、更に、前記熱伝導層の厚み方向の少なくとも一方の表面に前記絶縁部が配され、且つ、厚み方向と略直交する方向に前記熱伝導部が配されるように前記熱拡散部を有することが好ましい。
前記熱拡散部は、前記熱伝導層の厚み方向の上下方向の熱伝導を行う前記熱伝導部の熱を、前記熱伝導層の厚み方向に拡散させ、熱伝導率をより向上させる機能を有する。また、前記絶縁部への伝熱を促進し、等価的な熱伝導率を下げ、これにより熱抵抗を低下する機能も有する。
【0077】
<<材料>>
前記熱拡散部を構成する材料としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、熱導電性材料などが挙げられ、更に必要に応じて、その他の成分を含有していてもよい。
前記熱拡散部を構成する熱導電性材料としては、前記熱伝導部を構成する材料と同様のものを用いることができ、各成分の含有量等も同様の範囲が好ましい。
【0078】
[熱伝導率]
前記熱拡散部の平均熱伝導率としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、0.5W/m・k以上が好ましく、10W/m・k以上がより好ましく、30W/m・k以上が更に好ましい。前記熱拡散部の平均熱伝導率が0.5W/m・k以上であると、前記熱伝導層の厚み方向に効率良く熱伝導させることができる。前記熱拡散部の平均熱伝導率は、高い程好ましいため、その上限値は特に制限はない。
【0079】
なお、前記熱拡散部の熱伝導率は、熱伝導率測定装置(TIMテスター、モデル1300、Analysis Tech社製)で測定することができる。本発明において、前記熱拡散部の平均熱伝導率は、3つの測定用サンプルについて測定した前記熱拡散部の熱伝導率の平均値を意味する。
【0080】
[数及び形状]
前記熱伝導層における前記熱拡散部の数としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、1つであってもよく、複数であってもよい。通常、発熱部品におけるホットスポットは複数存在しているため、これに接する、好ましくはこれを覆う構造となるように前記熱伝導部を周期的に配置させる場合は、この複数の熱伝導部を接続するように周期的に前記熱拡散部を配置させることで、より効果的に伝熱できるため、前記熱拡散部は複数有することが好ましい。また、前記熱拡散部は、トータルの断面積が大きいほど、熱抵抗が低くなる。これらの条件は、ICチップ等の発熱部品の発熱量や、冷却部品のヒートシンクの冷却能力など、多くの条件によって決まり、それぞれの条件において最適な設計を行うことができる。
【0081】
前記熱拡散部の構造としては、特に制限はないが、前記絶縁部内にフィン構造(即ち、厚み方向の上下面、又は厚み方向の上下面及び厚み方向に略直交する方向の左右面が前記絶縁部によって囲まれた構造)として有することが好ましい。
【0082】
ここで、本発明の熱伝導層の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。また、下記構成部材の数、位置、大きさ、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数、位置、大きさ、形状等にすることができる。
【0083】
[実施形態例1]
図2Aは、実施形態例1の熱伝導層10の厚み方向の断面模式図である。熱伝導層10は、熱を伝導する熱伝導部1、凹凸緩和部2、及び熱伝導部1を支持する絶縁部3を有し、周期的に形成された熱伝導部1とその厚み方向の上下面に凹凸緩和部2が形成されている。これにより、発熱部品としての下部部品30から発生した熱を効果的に、冷却部品としての上部部品20熱伝導させ、熱伝導部の界面接触熱抵抗を低減させると共に、接合信頼性にも優れた熱伝導層となる。
【0084】
ここで、実施形態1では、下部部品30として発熱部品としたが、これに限られず、「基材」と称することもある。また、実施形態1では、上部部品20として冷却部品としたが、これに限られず、「被伝導部材」と称することもある。
【0085】
次に、実施形態例1における「有効部」及び「熱伝導を行うための有効面積の比率」について説明する。実施形態例1では、図2Aの熱伝導部1及び凹凸緩和部2を「有効部」とする。また、図2Aの熱伝導層10の厚み方向と略直行する方向に切断した場合の断面、即ち、図2AのA-A’断面の断面模式図を図2Bに示す。図2Bにおいて、「熱伝導を行うための有効面積の比率」は、熱伝導層10の全断面積に対する、熱伝導部1の断面積の割合であり、次式で表される
熱伝導を行うための有効面積の比率(%)=熱伝導部1の断面積/(熱伝導部1の断面積+絶縁部3の断面積)
【0086】
[実施形態例2]
図3は、実施形態例2の熱伝導層10の厚み方向の断面模式図である。実施形態例2は、熱拡散部1aを有する点で、実施形態例1と異なる。熱伝導部1を連結するフィン構造の熱拡散部1aを有することで、熱拡散部1aの厚み方向の上下面の絶縁部3aの等価的な熱伝導率が低下し、熱抵抗を下げることができる。また、フィン構造の熱拡散部1aの厚み方向の上下面を絶縁部3aで挟む構造にすることで、界面接触熱抵抗や接合信頼性との両立も可能となる。
【0087】
[実施形態例3]
図4Aは、実施形態例3の熱伝導層10の厚み方向の断面模式図である。実施形態例3は、熱伝導部1、凹凸緩和部2、及び絶縁部3の形状が異なる点で、実施形態例1と異なる。実施形態例3は、実施形態例1と比べて、2つの絶縁部3と接する凹凸緩和部2を厚み方向と略直交する方向(下部部品30又は上部部品20と接する面方向)に長く連続して形成することができるため、成形性に優れ、接着性及び応力緩和性も優位である。
【0088】
[実施形態例4]
図4Bは、実施形態例4の熱伝導層10の厚み方向の断面模式図である。実施形態例4は、熱伝導部1を連結するフィン構造の熱拡散部1aを、熱伝導層10の厚み方向に複数有する点で、実施形態例2と異なる。実施形態例4では、熱伝導層10の厚み方向の断面において、3つ(3層)の絶縁部3aに挟まれた、2つ(2層)のフィン構造の熱拡散部1aを有する例を示す。実施形態例4は、フィン構造を熱伝導層10の厚み方向に分割して配することで、実施形態例2と熱拡散部1aが同じ体積比率である場合でも、等価的な熱伝導率が更に低下し、更に熱抵抗を下げると共に、接着性と応力緩和性とを両立することができる。
【0089】
[実施形態例5]
図4Cは、実施形態例5の熱伝導層10の厚み方向の断面模式図である。実施形態例5は、熱伝導層10厚み方向において、熱伝導部1を連結するフィン構造の熱拡散部1aの位置が異なる点で、実施形態例2と異なる。実施形態例5は、複数のフィン構造の熱拡散部1aについて、熱伝導層10厚み方向における配置を変えることで、応力が分散し、実施形態例2と比べて、接着性及び応力緩和性が更に向上する。
【0090】
[実施形態例6]
図4Dは、実施形態例6の熱伝導層10の厚み方向の断面模式図である。実施形態例6は、熱伝導部1を連結するフィン構造の熱拡散部1aが、フィン構造の熱拡散部1aの厚み方向の上下面を絶縁部3aで挟まれるだけでなく、熱拡散部1aの厚み方向と略直交する方向の両端も絶縁部3aで挟まれる点で、実施形態例2と異なる。これにより、熱伝導部1のフィン構造の熱拡散部1a付近に集中する応力を分割し、応力を分散させる効果がある。実施形態例6は、熱伝導部1とフィン構造の熱拡散部1aとを、絶縁部3aで分割することで、実施形態例2における熱伝導部1と熱拡散部1aとの連結部に集中する応力を抑制し、接着性及び応力緩和性を更に向上させることができる。また、フィン構造の熱拡散部1aは、熱伝導部1の熱を拡散するだけでなく、絶縁部3aへの伝熱を促進し、等価的な熱伝導率を下げる機能も有するため、熱抵抗を下げるのに有効である。
[実施形態例7]
図4Eは、実施形態例7の熱伝導層10の厚み方向の断面模式図である。実施形態例7は、熱伝導部1を連結するフィン構造の熱拡散部1aが、フィン構造の熱拡散部1aの厚み方向の上下面を絶縁部3aで挟まれるだけでなく、熱拡散部1aの厚み方向と略直交する方向の中央部が絶縁部3aで分割されている点で、実施形態例2と異なる。これにより、熱伝導部1のフィン構造の熱拡散部1a付近に集中する応力を分割し、応力を分散するため、実施形態例2と比べて、接着性及び応力緩和性が更に向上する。
【0091】
このように、本発明の熱伝導層10のパターニング形成は、放熱効果が最大になるように適宜調整することが可能である。
【0092】
前記熱伝導層の製造方法としては、特に制限はないが、インクジェット印刷法によって熱伝導層を形成する方法が好適である。前記熱伝導部、前記絶縁部、及び前記凹凸緩和部、好ましくは前記熱拡散部をそれぞれ任意の形状及び厚みに3次元構造形成できるため、伝熱と接合信頼性の面で最適な熱伝導層を形成することができる。なお、前記熱伝導層の製造方法としては、後述する本発明の熱伝導層の製造方法を用いることが特に好ましい。
【0093】
また、必要に応じて前記熱伝導層は一度フィルムに印刷し、シート状TIMとして扱うこともできる。前記フィルムを任意の形状に打抜くことで、塗布装置導入が難しい実装工程にも対応することができる。
【0094】
(熱伝導層の製造方法)
本発明の熱伝導層の製造方法は、絶縁部形成工程と、熱伝導部形成工程と、凹凸緩和部形成工程と、を含み、更に熱拡散部形成工程を含むことが好ましく、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0095】
本発明の熱伝導層は、絶縁部、熱伝導部、及び凹凸緩和部、好ましくは更に熱拡散部が、上述の通りパターニング形成されてなる。
パターニング形成方法としては、例えば、絶縁部を形成した隙間に凹凸緩和部、次いで熱伝導部を充填して積層して形成する方法、これとは逆の順番に積層して形成する方法、厚み方向の同一層において、絶縁部、熱伝導部、及び凹凸緩和部、好ましくは更に熱拡散部を適宜所望の領域に同時に積層する方法、絶縁部、熱伝導部、及び凹凸緩和部、好ましくは更に熱拡散部の中の少なくともいずれかを形成し、その他の領域を形成する方法などが挙げられる。
【0096】
これらの中でも、前記絶縁部を先にパターニング形成する方法が好ましい。この方法の場合、前記絶縁部を形成する絶縁部形成用インクを光硬化させながら該絶縁部をパターニング形成することにより、高精度のパターン形成が可能となる。即ち、インクジェットプリント、スクリーン印刷、又はディスペンスコート直後の液滴を光硬化することでパターニング形成が可能となる。
【0097】
特にUV-LEDアレイをインクジェットヘッドに搭載したインクジェット印刷システムにより、ジェッティングした前記絶縁部形成用インクの着弾滴をUV-LEDで即時硬化させることにより高精度なパターニング形成が可能となる。インクジェット印刷に適用するインクは微小径ノズルで吐出するため、一般的に5mPa・s~200mPa・s程度の低粘度インクが必要となる。
【0098】
インクジェット印刷、ディスペンスコート、スプレーコートでは、版を用いずにパターニング形成が可能であり、前記熱伝導層を形成面に直接塗工できるので、予め作製した熱伝導層をカットして貼り付ける方法に比べ、前記熱伝導層の薄膜化形成が可能となると共に、生産性が高い点で有利である。インクジェット印刷は微細パターン形成に優れるため、特に好ましい塗工方法である。
【0099】
<絶縁部形成工程>
前記絶縁部形成工程は、絶縁部を形成するための絶縁部形成用インクをノズルから吐出して前記絶縁部を形成する工程である。
前記絶縁部については、前記(熱伝導層)の項目に記載の通りであるため、詳細は省略する。
【0100】
前記絶縁部は、該絶縁部を構成する樹脂材料のモノマー成分を含有する絶縁部形成用インクを用いて形成することが好ましい。これにより、前記絶縁部を形成する部品に絶縁部形成用インクを塗布し、重合反応させることにより前記絶縁部を形成することができる。
【0101】
<<絶縁部形成用インク>>
前記絶縁部形成用インクは、前記樹脂材料を含有していてもよく、前記樹脂材料のモノマー成分と、重合開始剤とを含有していてもよく、更に必要に応じてその他の成分を含有していてもよいが、前記樹脂材料のモノマー成分と、重合開始剤とを含有することが、パターニング形成を良好に行うことができる点で好ましい。
【0102】
-モノマー成分-
前記樹脂材料のモノマー成分としては、特に制限はなく、使用する樹脂の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、エポキシモノマー、(メタ)アクリレートモノマー、オキセタンモノマー、ウレタンモノマー、シリコーンモノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記樹脂のモノマー成分としては、エポキシモノマーを含有することが好ましい。
【0103】
--エポキシモノマー--
前記エポキシモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂環式エポキシモノマー、グリシジルエーテル型エポキシモノマー、グリシジルアミン型エポキシモノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0104】
前記脂環式エポキシモノマーは、環構造によりガラス転移温度(Tg)が高く、耐熱性に優れると共に、モノマー粘度が低い。
前記グリシジルエーテル型エポキシモノマーは、硬化物の弾性率を低弾性に調整しやすく、モノマー粘度が低い。
前記グリシジルアミン型エポキシモノマーは、接着強度を得やすい。
以上の特徴を有する各種エポキシモノマーを混合することにより、インクジェット印刷法に好適な接着部形成用インクとして用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0105】
前記脂環式エポキシモノマーは、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
前記脂環式モノマーの市販品としては、例えば、エポカリック(登録商標)THI-DE、エポカリック(登録商標)DE-102、エポカリック(登録商標)DE-103、VNBB-ME(以上、ENEOS株式会社製)、DCPD-DE(日本材料技研株式会社製)、セロキサイド(CEL)8010P、CEL2010P、CEL2081、CEL2000(以上、株式会社ダイセル製)などが挙げられる。
【0106】
前記グリシジルエーテル型エポキシモノマーとしては、例えば、アリルジグリシジルエーテル、ビスフェノール型ジグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0107】
前記グリシジルエーテル型エポキシモノマーは、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
前記グリシジルエーテル型エポキシモノマーの市販品としては、例えば、リカレジンDME-100(新日本理化株式会社製)、エポライトM-1230、エポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P、エポライト1500NP、エポライト1600、エポライト80MF、エポライト100MF(以上、共栄社化学株式会社製)、ショウフリー(登録商標)PETG、ショウフリー(登録商標)BATG(以上、昭和電工株式会社製)デナコールEX-614B、デナコールEX-313、デナコールEX-512、デナコールEX-321、デナコールEX-321L、デナコールEX-612、デナコールEX-614、デナコールEX-622、デナコールEX-314、デナコールEX-421、デナコールEX-521、デナコールEX-411、デナコールEX-171、デナコールEX-146、デナコールEX-121、デナコールEX-141、デナコールEX-145、デナコールEX-147、デナコールEX-192、デナコールEX-731(以上、ナガセケムテックス株式会社製)、YL9028(三菱化学株式会社製)、OCR-EP、NPG(D)、DY-BP(以上、四日市合成株式会社製)などが挙げられる。
【0108】
前記グリシジルアミン型エポキシモノマーは、アミン構造を有する。
前記グリシジルアミン型エポキシモノマーは、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
前記グリシジルアミン型エポキシモノマーの市販品としては、例えば、TETRAD-X(三菱ガス化学株式会社製)、VH-523(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)
などが挙げられる。
【0109】
--(メタ)アクリレートモノマー--
前記(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に制限はなく、一般的な光重合型(メタ)アクリレートモノマーの中から目的に応じて適宜選択することができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0110】
前記(メタ)アクリレートモノマーは、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
前記(メタ)アクリレートモノマーの市販品としては、例えば、AOMA(登録商標)(日本触媒株式会社製)、HEA(ヒドロキシエチルアクリレート)、HPA(ヒドロキシプロピルアクリレート)、4-HBA(4-ヒドロキシブチルアクリレート)、AIB(イソブチルアクリレート)、TBA(t-ブチルアクリレート)、NOAA(n-オクチルアクリレート)、INAA(イソノニルアクリレート)、ビスコート#197(ノニルアクリレート)、IDAA(ノニルアクリレート)、LA(ラウリルアクリレート)、STA(ステアリルアクリレート)、ISTA(イソステアリルアクリレート)、IBXA(イソボルニルアクリレート)、ビスコート#155(シクロヘキシルアクリレート)、ビスコート#196(3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート)、ビスコート#160(ベンジルアクリレート)、ビスコート#192(フェノキシエチルアクリレート)、ビスコート#150(テトラヒドロフルフリルアクリレート)、ビスコート#190(エチルカルビトールアクリレート)、2-MTA(メトキシエチルアクリレート)、ビスコート#MTG(メトキシトリエチレングリコールアクリレート)、MPE400A(メトキシポリエチレングリコールアクリレート)、MPE550A(メトキシポリエチレングリコールアクリレート)、OXE-10((3-エチルオキセタン-3-イル)メチルアクリレート)、OXE-30((3-エチルオキセタン-3-イル)メチルメタクリレート)、MEDOL-10((3-エチルオキセタン-3-イル)メチルアクリレート)、ビスコート#200(環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート)(以上、大阪有機化学工業株式会社製)、A-LEN-10(エトキシ化-o-フェニルフェノールアクリレート)、AM-90G(エトキシ化-o-フェニルフェノールアクリレート)、AM-130G(エトキシ化-o-フェニルフェノールアクリレート)、AMP-20GY(エトキシ化-o-フェニルフェノールアクリレート)、A-SA(2-アクリロイルオキシエチルコハク酸)、701A(2-ヒドロキシ-3-メタクリルプロピルアクリレート)、A-200(ポリエチレングリコール#200ジアクリレート)、A-400(ポリエチレングリコール#400ジアクリレート)、A-600(ポリエチレングリコール#600ジアクリレート)、A-100(ポリエチレングリコール#100ジアクリレート)、ABE-300(エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート)、A-BPE-10(エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート)、A-BPE-20(エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート)、A-BPE-4(エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート)、A-DCP(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、A-DOD-N(1,10-デカンジオールジアクリレート)、A-HD-N(1,6-ヘキサンジオールジアクリレート)、A-NOD-N(1,6-ヘキサンジオールジアクリレート)、APG-200(トリプロピレングリコールジアクリレート)、APG-400(ポリプロピレングリコール#400ジアクリレート)、APG-700(ポリプロピレングリコール#700ジアクリレート)、A-PTMG-65(ポリテトラメチレングリコール#650ジアクリレート)、A-9300(ポリテトラメチレングリコール#650ジアクリレート)、A-GLY-9E(エトキシ化グリセリントリアクリレート)、A-GLY-20E(エトキシ化グリセリントリアクリレート)、A-TMM-3(ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート)、A-TMM-3L(ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート)、A-TMPT(トリメチロールプロパントリアクリレート)、AD-TMP(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)、ATM-35E(エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート)、A-TMMT(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)、A-9550(ジペンタエリスリトールポリアクリレート)、A-DPH(ジペンタエリスリトールポリアクリレート)(以上、新中村化学工業株式会社製)、SR440(イソオクチルアクリレート)、SR849D(トリデシルアクリレート)、SR395(イソデシルアクリレート)(以上、巴工業株式会社製)などが挙げられる。
【0111】
--オキセタンモノマー--
前記オキセタンモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0112】
前記オキセタンモノマーは、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
前記オキセタンモノマーの市販品としては、例えば、アロンオキセタンOXT-101、アロンオキセタンOXT-212、アロンオキセタンOXT-121、アロンオキセタンOXT-221(以上、東亜合成株式会社製)、ETERNACOLL(登録商標)HBOX、ETERNACOLL(登録商標)OXBP、ETERNACOLL(登録商標)OXIPA(以上、宇部興産株式会社製)などが挙げられる。
【0113】
--ウレタンモノマー--
前記ウレタンモノマーとしては、特に制限はなく、一般的なウレタンモノマーの中から目的に応じて適宜選択することができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0114】
前記ウレタンモノマーは、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
前記ウレタンモノマーの市販品としては、例えば、US3003、US3003M、US3007、US3007M、US3123M(以上、共栄社化学株式会社製)などが挙げられる。
【0115】
--シリコーンモノマー--
前記シリコーンモノマーとしては、特に制限はなく、一般的なシリコーンモノマーの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリジメチルシロキサンの片末端又は両末端に反応基を有するシリコーン化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0116】
前記シリコーンモノマーは、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
前記シリコーンモノマーの市販品としては、例えば、サイラプレーン(登録商標)FM-3311、サイラプレーン(登録商標)FM-3321、サイラプレーン(登録商標)FM-3325(以上、JNC株式会社製)、STP-103-UV、STP-104-UV(以上、信越シリコーン株式会社製)などが挙げられる。
【0117】
前記絶縁部形成用インクは、前述したようにエポキシモノマーを含有することが好ましい。前記絶縁部形成用インクにおける前記エポキシモノマーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記絶縁部形成用インクの全質量に対して、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。前記エポキシモノマーの含有量が40質量%以上であると、硬化収縮が小さく耐熱性に優れる点で好ましい。
【0118】
前記絶縁部形成用インクにおける前記モノマー成分が、前記エポキシモノマーと、該エポキシモノマー以外のモノマー成分との混合物である場合、前記エポキシモノマー以外のモノマーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記エポキシモノマーに対して、5質量%~90質量%が好ましく、5質量%~70質量%がより好ましい。前記エポキシモノマー以外のモノマー成分としては、オキセタンモノマーが、前記エポキシモノマーとの相溶性に優れ、粘度が低い点で好ましい。
【0119】
-重合開始剤-
前記重合開始剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、光カチオン重合開始剤、光ラジカル重合開始剤、熱重合開始剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0120】
--光カチオン重合開始剤--
前記光カチオン重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スルホニウムイオンやヨードニウムイオンをカチオン部とするオニウム塩等の光酸発生剤などが挙げられる。これらの中でも、前記光カチオン重合開始剤としては、金属部への腐食性が少ないアニオン部を有する化合物が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記光カチオン重合開始剤の具体例としては、アニオン部(発生酸部)がB(C、PF(Cなどの化合物が挙げられる。
【0121】
前記光カチオン硬化開始剤は、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
前記光カチオン硬化開始剤の市販品としては、例えば、CPI(登録商標)-110P、CPI(登録商標)-110A、CPI(登録商標)-210S、CPI(登録商標)-110B、CPI(登録商標)-310B、CPI(登録商標)-410B、CPI(登録商標)-310FG、IK-1FG(以上、サンアプロ株式会社製)などが挙げられる。
【0122】
--光ラジカル重合開始剤--
前記光ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキルフェノン化合物、アシルフォスシンオキサイド化合物、オキシフェニル酢酸エステル化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0123】
前記光ラジカル重合開始剤は、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
前記光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、Omnirad 184(former Irgacure 184)、Omnirad 651(former Irgacure 651)、Omnirad 1173(former Irgacure 1173)、Omnirad 2959(former Irgacure 2959)、Omnirad 369(former Irgacure 369)、Omnirad 907(former Irgacure 907)、Omnirad BMS、Omnirad DETX、Omnirad TPO H(former Irgacure TPO)、Omnirad 819(former Irgacure 819)(以上、IGM Resins B.V.製)、Irgacure OXE01、Irgacure OXE02、Irgacure OXE03、Irgacure OXE04(以上、BASFジャパン株式会社製)などが挙げられる。
【0124】
--熱重合開始剤--
前記熱重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スルホニウムイオンやヨードニウムイオンをカチオン部とするオニウム塩等の光酸発生剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0125】
前記熱重合開始剤は、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
前記熱重合開始剤の市販品としては、例えば、サンエイドSI-60L、サンエイドSI-80L、サンエイドSI-100L、サンエイドSI-110、サンエイドSI-150L(以上、三新化学工業株式会社製)、TA-100、TA-100FG、IK-1、IK-1FG(サンアプロ株式会社製)、Omnicat 250(former Irgacure 250)、Omnicat 270(former Irgacure 270)(以上、IGM Resins B.V.社製)などが挙げられる。
【0126】
前記絶縁部形成用インクにおける前記重合開始剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記絶縁部形成用インクの全質量に対して、0.1質量%~10質量%が好ましく、0.2質量%~2質量%がより好ましい。前記重合開始剤の含有量が0.1質量%~10質量%であると、適性に硬化反応を完了させることができ、未反応分が反応性不純物として残量しにくい。
【0127】
-その他の成分-
前記絶縁部形成用インクにおける前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機粒子、樹脂又は樹脂粒子、密着改良剤、溶媒などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0128】
--無機粒子--
前記無機粒子は接着部の線熱膨張係数を低減し、膜強度を向上するために添加される。
前記無機粒子としては、絶縁性であるものの中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、セラミック材料が挙げられる。
前記セラミック材料としては、例えば、シリカ(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記セラミック材料は、樹脂材料に比べて線熱膨張係数が小さく、軟化温度が高いため、接着部の線熱膨張係数を低減すると共に、高温状態での膜強度を向上する効果が得られる。
【0129】
前記無機粒子は、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
前記無機粒子の市販品としては、例えば、AEROSIL(登録商標) OX50、AEROSIL(登録商標) 50、AEROSIL(登録商標) 90G、AEROSIL(登録商標) 130、AEROSIL(登録商標) 150、AEROSIL(登録商標) 200、AEROSIL(登録商標) 300、AEROSIL(登録商標) 380、AEROSIL(登録商標) RM50、AEROSIL(登録商標) R711、AEROSIL(登録商標) R7200、AEROXIDE(登録商標) P25、AEROXIDE(登録商標) P90 AluC(以上、日本アエロジル株式会社製)、シーホスター(登録商標)KE-S10、シーホスター(登録商標)S30、シーホスター(登録商標)S50(以上、日本触媒株式会社製)などが挙げられる。
【0130】
前記絶縁部形成用インクにおける前記無機粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記絶縁部形成用インクの全質量に対して、10質量%~70質量%が好ましく、10質量%~50質量%がより好ましい。前記無機粒子の含有量が10質量%以上であると、線熱膨張及び膜強度の効果を得やすく、70質量%以下であると接着部が脆くなりにくく、インク粘度が増加しにくいため点で好ましい。
【0131】
--樹脂又は樹脂粒子--
前記樹脂又は樹脂粒子は、前記絶縁部に柔軟性を付与し、熱応力を緩和させるために添加される。
前記樹脂又は樹脂粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、低弾性及び柔軟性の少なくともいずれかの性質を有する直鎖状のポリマーを有する材料が好ましく、例えば、スチレンブタジエン系樹脂、アクリルニトリルブタジエン樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。更に、アクリル系共重合体内部にゴム状ポリマーを配したコアシェル型の多層構造のポリマー粒子でもよい。これらの中でも、前記樹脂又は樹脂粒子としては、スチレンブタジエン系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。前記樹脂又は樹脂粒子は、熱応力を緩和するためにガラス転移温度(Tg)が低く、Tg30℃以下程度と、室温と同程度である点で好ましい。
【0132】
ここで、前記樹脂又は樹脂粒子が「低弾性」であるとは、例えば、弾性率が200MPa以下の材料を意味する。
前記樹脂又は樹脂粒子は、例えば、微小硬度計(FISCHERSCOPE(登録商標)HM2000、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)を用い、前記絶縁部の弾性率の測定条件と同様の条件に設定して測定することができる。
【0133】
また、前記樹脂又は樹脂粒子が「柔軟性」を有するとは、例えば、弾性変形仕事率が70%以上の材料を意味する。
前記樹脂及び樹脂粒子の弾性変形仕事率は、例えば、微小硬度計(例えば、FISCHERSCOPE(登録商標)HM2000、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)で押し込み弾性率を測定することにより確認することができる。
【0134】
低弾性な前記樹脂材料は、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
低弾性な前記樹脂材料の市販品としては、例えば、アルフォン(登録商標)US-1000、アルフォン(登録商標)UH-2000、アルフォン(登録商標)UC-3000、アルフォン(登録商標)UG-4000、アルフォン(登録商標)UF-5000、アルフォン(登録商標)US-600などが挙げられる。
【0135】
低弾性な前記樹脂粒子は、適宜合成してもよく、市販品を使用してもよい。
低弾性な前記樹脂粒子の市販品としては、例えば、カネエース(登録商標)MX-150、カネエース(登録商標)MX-553(以上、株式会社カネカ製)、ファインスフェア(登録商標)MG-155、ファインスフェア(登録商標)MG-351、ファインスフェア(登録商標)MG-451、ファインスフェア(登録商標)MG-651、ファインスフェア(登録商標)PZP-1003、ファインスフェア(登録商標)BGK-001(以上、日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製)、メタブレン(登録商標)C-223A、メタブレン(登録商標)C-215AC-201A、メタブレン(登録商標)C-140A、メタブレン(登録商標)E-860A、メタブレン(登録商標)E-870A、メタブレン(登録商標)E-875A、メタブレン(登録商標)W-300A、メタブレン(登録商標)W-450A、メタブレン(登録商標)W-600A、メタブレン(登録商標)W-377、メタブレン(登録商標)S-2002、メタブレン(登録商標)S-2006、メタブレン(登録商標)S-2501、メタブレン(登録商標)S-2030、メタブレン(登録商標)S-2100、メタブレン(登録商標)S-2200、メタブレン(登録商標)SRK200A、メタブレン(登録商標)SX-006、メタブレン(登録商標)SX-00(以上、三菱ケミカル株式会社製)、ゼフィアック F351、スタフィロイド AC-3355、AC-3816N、AC-3832SD、AC-4030、AC-3388(以上、アイカ工業株式会社製)などが挙げられる。
【0136】
前記絶縁部形成用インクにおける前記樹脂又は樹脂粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記絶縁部形成用インクの全質量に対して、1質量%~50質量%が好ましく、3質量%~20質量%がより好ましい。前記樹脂又は樹脂粒子の含有量が1質量%以上であると、更に熱応力を好適に緩和することができる。また、前記樹脂又は樹脂粒子の含有量が50質量%以下であると、前記絶縁部形成用インクの粘度の増加を抑制できるためインクジェット印刷法に好適に用いることができ、また、高温時においてバブルやボイドの原因となりにくい。
【0137】
--密着改良剤--
前記密着改良剤は、有機物とケイ素から構成される化合物であり、分子中に2種以上の異なった反応基を有するシランカップリング剤が、接触対象物(特に、半導体及び半導体用基板)との接着性を向上することができるため、特に好ましい。
前記密着改良剤は、市販品を使用することができ、その具体例としては、DOWSIL Z-6040、DOWSIL Z-6062(以上、DOW社製)、KMB-403(信越シリコーン株式会社製)などが挙げられる。
【0138】
前記絶縁部形成用インクにおける前記密着改良剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記絶縁部形成用インクの全質量に対して、0.1質量%~20質量%が好ましく、0.1質量%~5質量%がより好ましい。前記密着改良剤の含有量が0.1質量%以上であると、密着効果を得ることができる。また、前記密着改良剤の含有量が20質量%以下であると、インク強度の低下を抑制できる点で好ましい。
【0139】
--溶媒--
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テルピネオール、1-メトキシ-2-プロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸2-メトキシエチル、酢酸2-メトキシブチル、2-ブタノンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0140】
前記絶縁部形成用インクにおける前記溶媒の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記絶縁部形成用インクの粘度が適性であれば含有しないことが好ましい。前記溶媒を添加する場合は、前記絶縁部形成用インクの全質量に対して、1質量%~10質量%が好ましく、1質量%~5質量%がより好ましい。前記溶媒の含有量が1質量%以上であると、前記絶縁部形成用インクの溶媒成分管理が容易となると共に、粘度を低粘度化することができ、インクジェット印刷法に好適に用いることができ、10質量%以下であると、高温時においてバブルやボイドの原因となりにくい。
【0141】
これらの中でも、前記絶縁部形成用インクは、光硬化可能な組成であることが好ましく、前記エポキシ系モノマー、前記(メタ)アクリレートモノマー、及び前記光カチオン重合開始剤又は前記光ラジカル重合開始剤を含有することがより好ましい。
【0142】
なお、光硬化後に熱硬化による接着プロセスを適用することが難しい場合は、光硬化にて粘着性を有する絶縁部を形成することが好ましい。粘着性を有する絶縁部形成用インクとしては、(メタ)アクリレートモノマー及び光ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。特に(メタ)アクリレートモノマーとして単官能材料を用いることで容易粘着性を付与することができる。単官能の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、SR440(イソオクチルアクリレート)、SR849D(トリデシルアクリレート)、SR395(イソデシルアクリレート)などが挙げられる。
【0143】
また、市販の光硬化インクジェット用ソルダレジストインク、熱硬化インクジェット用ソルダレジストインクなども絶縁部形成用インクとして用いることができる。前記市販インクとしては、例えば、IJSR4000、IJSR9000(以上、太陽インキ株式会社製)、PR1205、PR1243、PR1258、(以上、互応化学工業株式会社製)、SUN-004、SUN-013、SUN-015、C-202、C-400、E635A、E800D(以上、積水化学株式会社製)、jSVR(デクセリアルズ株式会社製)などを挙げることができる。
【0144】
<熱伝導部形成工程>
前記熱伝導部形成工程は、熱伝導部を形成するための熱伝導部形成用インクをノズルから吐出して前記熱伝導部を形成する工程である。
前記熱伝導部については、前記(熱伝導層)の項目に記載の通りであるため、詳細は省略する。
【0145】
前記熱伝導部は、熱伝導部を構成する前記熱伝導性材料(粒子)を樹脂、溶媒などに混合した熱伝導部形成用インクを塗工することにより形成することができる。
【0146】
前記熱伝導部形成用インクにおける前記熱伝導性材料のメジアン径としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、0.01μm~100μmが好ましい。
【0147】
<<熱伝導部形成用インク>>
前記熱伝導部形成用インク中の前記熱導電性材料、好ましくは金属材料のナノ粒子のメジアン径としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、インクジェット印刷法による吐出が良好である点から、5nm~1,000nmが好ましく、150℃程度の比較的低い温度処理でシンタリングが可能な粒子径200nm以下の粒子を溶媒中又は樹脂中に分散したインクが好ましい。
【0148】
また、小粒子径にすることで熱伝導層を薄膜化すること、微小径ノズルのインクジェットプリント塗工などにより精密なパターニングが可能となる。金属ナノ粒子インクには溶媒に加えて分散材や粘度調整材などの固形成分が含有されているが、特に金属インクに対して5質量%以下の固形成分配合品が好ましい。シンタリング時の分解・ガス化して除去されるなどにより、金属含有量95体積%以上の熱伝導部を形成することが可能である。
【0149】
前記金属ナノ粒子インクは市販の材料を用いることができる。例えば、下記表1に記載の材料が挙げられる。
【0150】
【表1】
【0151】
前記熱伝導部形成用インクの塗工方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、ディスペンスコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷法を用いることができる。これらの中でも、前記熱伝導部形成用インクの塗工方法としては、薄膜化及び精密なパターニング成膜が可能なインクジェット印刷塗工及びスクリーン印刷塗工が特に好ましい。
【0152】
金属系材料の熱伝導部の形成は、前記金属粒子インクを用いる方法の他には、金属溶液インクを還元析出する方法がある。一般的には銀塩インクとして知られており、これらのインクも用いることができる。
【0153】
また、液体金属のような流動性TIMを用いてもよい。液体金属は融点が低く電子部品の動作時に流動性を有する金属材料であり、例えば、Ga(融点:29.8℃、熱伝導率40.6W/mk)、In(融点:156.4℃、熱伝導率81.6W/mk)、及びSn(融点:231.97℃、熱伝導66.6W/mk)からなる群より選ばれる1種以上の低融点金属、又は、前記1種以上の低融点金属を含有する合金を用いることができる。 合金の具体例としては、In-Ag、Sn-Ag-Cu、In-Sn-Biなどが挙げられる。 液体金属は特に熱変形に対する応力緩和性が優れているため、熱変形対策が課題である用途において向いている。
【0154】
<凹凸緩和部形成工程>
前記凹凸緩和部形成工程は、前記絶縁部よりも弾性率が小さい凹凸緩和部を形成するための凹凸緩和部形成用インクをノズルから吐出して、前記熱伝導部の厚み方向の少なくとも一方の表面に前記凹凸緩和部が配されるように前記凹凸緩和部を形成する工程である。
前記凹凸緩和部については、前記(熱伝導層)の項目に記載の通りであるため、詳細は省略する。
【0155】
<<凹凸緩和部形成用インク>>
前記凹凸緩和部形成用インクは、前記樹脂材料を含有していてもよく、前記樹脂材料のモノマー成分と、重合開始剤とを含有していてもよく、更に熱伝導性材料を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有していてもよいが、前記樹脂材料のモノマー成分と、重合開始剤とを含有することが、パターニング形成を良好に行うことができる点で好ましい。
【0156】
前記凹凸緩和部形成用インクにおける前記樹脂材料は、前記絶縁部形成用インク中の樹脂材料と同様のものを用いることができる。
前記凹凸緩和部形成用インクにおける前記熱伝導性材料は、前記熱伝導部形成用インク中の樹脂材料と同様のものを用いることができる。
ただし、前記絶縁部よりも弾性率が小さい凹凸緩和部を形成するために、オキセタンモノマーの含有量、グリシジルエーテル型エポキシモノマーの含有量、(メタ)アクリレートモノマーの含有量、ウレタンモノマーの含有量、及び低弾性の樹脂粒子から選択される少なくともいずれかの低弾性樹脂材料モノマーの含有量を、前記絶縁部形成用インクにおける前記低弾性樹脂材料の含有量より多くすることが好ましい。
【0157】
前記凹凸緩和部形成用インクにおける前記樹脂材料は、パターニング形成するために、前記絶縁部形成用インクと同様に、前記樹脂材料のモノマー成分と、重合開始剤とを含有することが好ましく、光重合性モノマーと光重合開始剤とを含有することがより好ましい。
UV-LED硬化に対応するため、特に好ましい組成は、エポキシ反応性モノマー、光カチオン硬化材又は光ラジカル硬化開始材、(膜弾性調整用)バインダーの組合せである。
【0158】
<熱拡散部形成工程>
前記熱拡散部形成工程は、熱拡散部を形成するための熱拡散部形成用インクをノズルから吐出して、厚み方向の少なくとも一方の表面に前記絶縁部が配されるように、且つ、厚み方向と略直交する方向に前記熱伝導部が配されるように熱拡散部を形成する工程である。
前記熱拡散部については、前記(熱伝導層)の項目に記載の通りであるため、詳細は省略する。
【0159】
<<熱拡散部形成用インク>>
前記熱拡散部形成用インクは、熱伝導性材料を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。
【0160】
前記熱拡散部形成用インクにおける前記熱伝導性材料は、前記熱伝導部形成用インク中の熱伝導性材料と同様のものを用いることができる。
【0161】
図5はインクジェット印刷法によって熱伝導層10を形成する製造装置の一例を示す図である。インクジェットのヘッド60からインク61を吐出する。発熱部品としての下部部品30はステージ62に固定されている。ステージ62は3次元に移動することが可能であり、コンピューターに記録されたプログラムにより制御される。ここで、インク61としては、前記絶縁部形成用インク、前記熱伝導部形成用インク、前記凹凸緩和部形成用インク、又は前記熱拡散部形成用インクを使用することができる。
【0162】
以上で説明したように、本発明の熱伝導層は、前記凹凸緩和部を有することで、界面接触熱抵抗が低減され、密着性が良くなることから、接合信頼性においても両立が可能になる。また、熱伝導部が周期的に複数形成されることで、発熱部を囲う構造となり熱を効率良く放熱部に流すことができ、且つ複数のホットスポットが存在するような発熱部においても効果を発揮する熱伝導層を提供することができる。
【0163】
(転写用熱伝導層)
本発明の転写用熱伝導層は、本発明の熱伝導層を仮支持体上に層状に有するものである。
本発明の熱伝導層については、前記(熱伝導層)の項目に記載の通りであるため、詳細は省略する。
【0164】
<仮支持体>
前記仮支持体としては、その表面に前記熱伝導層を製造可能であり、該熱伝導層の効果に影響しないものである限り、特に制限はなく、公知の剥離シートを用いることができる。
【0165】
前記剥離シートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クラフト紙、グラシン紙、上質紙等の紙;ポリエチレン、ポリプロピレン(二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、一軸延伸ポリプロピレン(CPP))、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルム;前記紙と樹脂フィルムとを積層したラミネート紙、前記紙にクレーやポリビニルアルコールなどで目止め処理を施したものの片面若しくは両面に、シリコーン系樹脂等の剥離処理を施したものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0166】
前記熱伝導層を仮支持体上に層状に形成する方法としては、特に制限はなく、前記熱伝導層の製造方法において、部品(発熱部品や冷却部品等)を前記仮支持体に代えること以外は同様にして形成することができる。
【0167】
前記転写用接着層は、前記熱伝導層の保存及び搬送が容易であり、取扱性に優れ、また、部品に直接前記熱伝導層を形成できない場合であっても、前記転写用接着層を部品に貼り付け、前記仮支持体を剥離することで、前記熱伝導層を部品に容易に形成できる点で有利である。
【0168】
(電子部品)
本発明の電子部品は、第1の部品と、第2の部品と、前記第1の部品と前記第2の部品との間の熱を伝導する本発明の熱伝導層と、を有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
本発明の熱伝導層については、前記(熱伝導層)の項目に記載の通りであるため、詳細は省略する。
【0169】
<第1の部品及び第2の部品>
前記第1の部品及び第2の部品としては、電子部品に用いられる部品であれば、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、発熱部品、冷却部品、基板、電極材などが挙げられる。
【0170】
前記第1の部品と、前記第2の部品との組合せは、同じ部品であってもよく、異なる部品であってもよい。前記第1の部品と、前記第2の部品との組合せは、前記電子部品の用途に応じて適宜選択することができる。
【0171】
前記発熱部品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、半導体(ダイ)、半導体パッケージ(ICチップ)、バッテリー、発光ダイオード(LED)、コンデンサー、抵抗、ダイオードなどが挙げられる。これらの中でも、前記発熱部品としては、近年の高集積化及び高速化に伴い、温度上昇による実装回路の接着及び接続に対する耐熱信頼性が要求されている半導体、半導体パッケージ、及びこれらに直接接している部品が好ましい。
【0172】
前記冷却部品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記発熱部品の熱を空冷、液冷、相変化冷却、熱電冷却などにより冷却する部品であることが好ましい。前記冷却部品の具体例としては、ヒートシンク、ヒートパイプ、マイクロチャンネル、ペルチェ素子、放熱シート、ヒートスプレッダー、及びこれらに直接接している部品などが挙げられる。
【0173】
前記基板としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、PCB/PWB基板(例えば、ガラスエポキシ基板、酸化アルミナ等のセラミック基板、銅基板、ポリイミド基板等)、BGAパッケージ用基板、リードフレームなどが挙げられる。
【0174】
前記電極材としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、銅(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、鉄(Fe)、コバルト(Co)等の金属、Sn/Pb、Sn/Ag/Cu等の半田材料などが挙げられる。
【0175】
<その他の部材>
前記電子部品におけるその他の部材としては、特に制限はなく、電子部品に一般的に使用し得る部材の中から、目的に応じて適宜選択することができる。
【0176】
図6Aは、本発明の熱伝導層を用いた電子部品の層構造の一実施形態(構成形態例1)について説明する図であり、図6Bは、本発明の熱伝導層を用いた部品の層構造の別の一実施形態(構成形態例2)について説明する図であり、図6Cは、本発明の熱伝導層を用いた部品の層構造の別の一実施形態(構成形態例3)について説明する図である。
【0177】
図6A図6Cでは、熱伝導層10が、発熱部品としての下部部品30からの熱を、冷却部品としての上部部品20に伝えることで、発熱部品の熱を放熱する。
【0178】
熱伝導層10と発熱部品30、及び/又は、熱伝導層10と冷却部品20との間には、中間層40(図6B又は図6C)が形成されていてもよく、例えば、熱を面方向(厚さ方向と略直交する方向)に拡散する熱拡散層、接着性を改善する表面処理層などが形成されていてもよい。
【0179】
<中間層、熱拡散層>
熱拡散層材料は熱伝導性が良好な材料として金属(Ag、Cu、Au、Al等)カーボン、セラミック(SiO、Al、AlN、BN等)などを用いることができる。
【0180】
熱拡散層の厚みは放熱設計により最適化されるが、Ag、Cu、Au、Al等のメタル材料を真空成膜形成する場合は、一般的に0.05μmから10μmにある。カーボン材料をカーボンナノ粒子インク、グラフェンインクなどを用いて塗工形成する場合は一般的に1μmから300μmにある。セラミック材料をセラミック粒子と樹脂を混合したセラミックペーストとして塗工する場合は1μmから500μmにある。
【0181】
金属材料の真空成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法等が挙げられる。これらの中では、高速成膜が可能なスパッタ法が好ましい。湿式成膜方法としてはメッキなどが挙げられる。
【0182】
カーボンインクを用いた塗工方法及びセラミックペーストを用いた塗工方式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、ディスペンスコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェット印刷法などの各種印刷法が挙げられる。
【0183】
<中間層:表面処理層>
表面処理層は膜表面の濡れ性又は表面エネルギーを調整する層として形成され、表面に親水性基又は疎水性基を有する樹脂膜として形成される。表面処理層の材料としては樹脂構造中にカルボキシル基、アミノ基、ケト基、OH基、フッ素基、シラノール基などを有する材料を用いることができる。
【0184】
更に、セラミック(SiO、Al、AlN、BN等)や金属(Ag、Cu、Au、Alなど)、カーボンなどの無機粒子を混合することもできる。表面処理層の厚みは一般的に0.5μmから10μmの範囲にある。表面処理層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、少なくとも反応基を有する有機モノマー材料及び開始剤を混合した樹脂材料や無機材料を混合したものを塗工し、UV照射、熱処理、脱水処理等の硬化処理を行うことにより形成することができる。
【0185】
塗工方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、ディスペンスコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷法を用いることができる。
【0186】
図7は、本発明の熱伝導層を用いた電子部品の層構造の別の一実施形態(第1の変形例)を示す図である。図7では冷却部品としての上部部品20が、第2の発熱部品31となっている点で図6Aの構成形態例1と異なる。図7の第1の変形例の構成形態は、第1の発熱部品としての下部部品30と第2の発熱部品31との間の温度差を低減させ均一化する場合に有効である。
【0187】
図8は、本発明の熱伝導層を用いた電子部品の層構造の別の一実施形態(第2の変形例)を示す図である。図8では冷却部品としての上部部品20が、第2の熱伝導層11を挟んで図7に示す第2の発熱部品31に形成されている点で図6Aの層構造形態例1及び図7の第1の変形例の層構造と異なる。図8の複数構成(2つ)の発熱部品、即ち、第1の発熱部品としての下部部品30及び第2の発熱部品31の熱を冷却部品としての上部部品20に放熱する場合に有効である。第1の熱伝導層10及び第2の熱伝導層11の熱伝導率、膜構造、及び厚みは、全て同じであってもよく、異なっていてもよい。
【実施例0188】
以下に調製例、実施例、及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの調製例、実施例、及び比較例に何ら限定されるものではない。
【0189】
<<厚みの測定>>
以下の実施例1~4及び比較例1~8において、熱伝導層及び凹凸緩和部の厚みは、触針式プロファイラー(Alpha-Step D-500、KLA-Tenchore社製)で測定した。
任意に選択した10箇所の厚みの測定値の平均値を算出し、それぞれ熱伝導層及び凹凸緩和部の平均厚みとし、下記表2及び表3に示した。
【0190】
<<熱伝導率の測定>>
以下の実施例1~4及び比較例1~8において、熱伝導部、絶縁部、及び凹凸緩和部の熱伝導率は、熱伝導率測定装置(TIMテスター、モデル1300、Analysis Tech社製)で測定した。それぞれ3つの測定用サンプルを作製し、熱伝導部、絶縁部、及び凹凸緩和部について、3つの測定用サンプルの熱伝導率をそれぞれ測定し、その平均値を算出して、熱伝導部の平均熱伝導率λf、絶縁部の平均熱伝導率λr、及び凹凸緩和部の平均熱伝導率λcを算出した。結果は、下記表2及び表3に示した。
【0191】
<<弾性率の測定>>
以下の実施例1~4及び比較例1~8において、絶縁部及び凹凸緩和部の各部の弾性率は、微小硬度計(FISCHERSCOPE(登録商標)HM2000、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)を用い、下記測定条件に設定して測定した。
任意に選択した2箇所の弾性率の測定値の平均値を算出し、それぞれ絶縁部及び凹凸緩和部の平均弾性率とし、下記表2及び表3に示した。
[測定条件]
・ 負荷除荷繰返し:1回
・ 試験点数:各サンプル2点
・ 圧子:ビッカース圧子
・ 最大荷重:10mN
・ 最大押込み深さ:0.7μm
・ 負荷(除荷)時間:20秒間
・ クリープ時間:5秒間
【0192】
(調製例1:絶縁部形成用インク1の調製)
脂環式エポキシモノマー(エポカリック(登録商標)THI-DE、ENEOS株式会社製)40質量部、オキセタンモノマー(アロンオキセタンOXT-221、東亜合成株式会社製)40質量部、オキセタンアクリルモノマー(OXE-10、大阪有機化学工業株式会社製)19質量部、光重合開始剤(CPI(登録商標)-410B、サンアプロ株式会社製)0.5質量部、及び熱重合開始剤(サンエイドSI-150L、三新化学工業株式会社製)0.5質量部を混合及び撹拌し、絶縁部形成用インク1を調製した。
【0193】
(調製例2:凹凸緩和部形成用インク1の調製)
脂環式エポキシモノマー(エポカリック(登録商標)THI-DE)19質量部、低弾性バインダー(アロンオキセタンOXT-212、東亜合成株式会社製)80質量部、光重合開始剤(CPI(登録商標)-410B)0.5質量部、及び熱重合開始剤(サンエイドSI-150L)0.5質量部を混合及び撹拌し、凹凸緩和部形成用インク1を調製した。
【0194】
(調製例3:凹凸緩和部形成用インク2の調製)
脂環式エポキシモノマー(エポカリック(登録商標)THI-DE)19質量部、低弾性バインダー(アロンオキセタンOXT-212、東亜合成株式会社製)80質量部、光重合開始剤(CPI(登録商標)-410B)0.5質量部、及び熱重合開始剤(サンエイドSI-150L)0.5質量部を混合及び撹拌した混合物を作製した。次に、この混合物に対して、メジアン径(d50)1.2μmの窒化アルミニウムフィラー(トーヤルテックフィラー(登録商標)TFZ-N01P、東洋アルミ株式会社製)を50体積%となるように添加して混合及び撹拌し、凹凸緩和部形成用インク2を調製した。
【0195】
(調製例4:凹凸緩和部形成用インク3の調製)
脂環式エポキシモノマー(エポカリック(登録商標)THI-DE)49質量部、オキセタンモノマー(アロンオキセタンOXT-221)50質量部、光重合開始剤(CPI(登録商標)-410B)0.5質量部、及び熱重合開始剤(サンエイドSI-150L)0.質量5部を混合及び撹拌し、凹凸緩和部形成用インク3を調製した。
【0196】
(実施例1)
実施例1では、図2Aに示す構成の貼合せサンプルを作製した。
下部部品30及び上部部品20としてガラス基板を準備し、熱伝導層10で接着した貼合せサンプルとした。
熱伝導部形成用インク1としては、Agナノ粒子の含有量50質量%、メジアン径(d50)70nmのAgナノ粒子インク(SicrysTM I50TM-119、PVnanocell社製)を使用した。また、絶縁部形成用インクとしては、調製例1の絶縁部形成用インク1を使用し、凹凸緩和部形成用インクとしては、調製例2の凹凸緩和部形成用インク1を使用した。
前記熱伝導層10を形成する際、熱伝導部形成用インク1、絶縁部形成用インク1、及び凹凸緩和部形成用インク1は、いずれもインクジェットヘッドとしてRICHO MH5420(株式会社リコー製)を搭載したインクジェット装置(Stage JET、株式会社トライテック製)を使用した。
具体的な方法は以下の通りである。なお、図2Aは、熱伝導層10及びその上下に配される下部部品30及び上部部品20の部分のみを厚み方向に抜き出して示した断面模式図であり、下部部品30、上部部品20、及び熱伝導層10のサイズは、下記パターン設計に記載の通りである。
【0197】
<パターン設計>
厚み1mm、縦40mm、横40mmの正方形の下部部品30としてのガラス基板(以下、「第1のガラス基板」と称することがある)を準備し、図9Aに示すように、第1のガラス基板(下部部品30)の上面図における中心部に、縦15mm、横15mmの正方形の熱伝導層形成領域10bを設計した。次に、図9Bに示すように、熱伝導層形成領域10bの周囲に2.3mm幅の絶縁部形成領域3bを設計した。また、図9Bに示すように、縦2.4mm、横2.4mmの正方形の絶縁部形成領域3cを9個設計した。このとき、一つの正方形の絶縁部形成領域3cの重心と、これと隣り合う他の正方形の絶縁部形成領域3cの重心とのピッチは3.2mmとなるように設計した。また、熱伝導層形成領域10bの周囲の絶縁部形成領域3bの内周と、これと隣り合う正方形の絶縁部形成領域3cの外周との最短距離が0.8mmとなるように設計した。また、熱伝導層形成領域10b内の絶縁部形成領域3b及び絶縁部形成領域3c以外の領域は、凹凸緩和部形成領域2bとして設計した。これにより、熱伝導を行うための有効面積の比率が25%を占める割合で形成できるようにパターン設計した。また、凹凸緩和部2の上に積層するように熱伝導部形成領域1bを設計した。更に、熱伝導部形成領域1bに形成される熱伝導部1の上に積層するように凹凸緩和部形成領域2cを設計した。
【0198】
なお、「熱伝導を行うための有効面積の比率」は、熱伝導層10における熱伝導部1を通過する位置で、熱伝導層10の厚み方向と略直行する方向で切断した場合の断面(図2AのA-A’で切断した図2Bに示すA-A’断面)における、熱伝導層10の全断面積に対する、熱伝導部1の断面積の割合を意味し、次式で表される。
熱伝導を行うための有効面積の比率(%)=熱伝導部1の断面積/(熱伝導部1の断面積+絶縁部3の断面積)×100
【0199】
<熱伝導層の形成>
以下の方法で、平均厚み10μmの熱伝導層を形成した。
【0200】
-絶縁部形成工程-
下部部品30として、厚み1mm、縦40mm、横40mmの正方形のガラス基板(第1のガラス基板)を準備した。
第1のガラス基板の一方の表面(厚み方向と略直交する方向の表面)の絶縁部形成領域3b及び3cに、絶縁部形成用インク1をインクジェットヘッド(RICHO MH5420)から吐出し、その着弾滴を、Honle LEDcube100(honle uv technology製)を用いてUV LED(波長365nm、1,500mJ/cm)で光硬化して、図2Aに示すような絶縁部3をパターニング形成した。この際、光硬化後の絶縁部3の平均厚みが10μmとなるように絶縁部形成用インク1の吐出量を調整した。
【0201】
-凹凸緩和部形成工程及び熱伝導部形成工程-
次に、第1のガラス基板の一方の表面(厚み方向と略直交する方向の表面)に形成した絶縁部3の間の凹凸緩和部形成領域2bに、凹凸緩和部形成用インク1をインクジェットヘッド(RICHO MH5420)から吐出し、その着弾滴を、Honle LEDcube100を用いてUV LED(波長365nm、1,500mJ/cm)で光硬化し、図2Aに示すような凹凸緩和部2をパターニング形成した。この際、光硬化後の凹凸緩和部2の平均厚みが0.5μmとなるように凹凸緩和部形成用インク1の吐出量を調整した。
【0202】
次に、凹凸緩和部2の表面(凹凸緩和部2と第1のガラス基板とが接する面とは反対側の面)の熱伝導部形成領域1bに、熱伝導部形成用インク1をインクジェットヘッド(RICHO MH5420)から吐出し、その着弾滴を、120℃にて10分間乾燥して熱伝導部1を形成した。この際、乾燥後の熱伝導部1の平均厚みが9μmとなるように熱伝導部形成用インク1の吐出量を調整した。
【0203】
次に、凹凸緩和部2の表面に形成した熱伝導部1の表面(熱伝導部1と最初に形成した凹凸緩和部2とが接する面とは反対側の面)の凹凸緩和部形成領域2bに、凹凸緩和部形成用インク1をインクジェットヘッド(RICHO MH5420)から吐出し、その着弾滴を、Honle LEDcube100を用いてUV LED(波長365nm、1,500mJ/cm)で光硬化し、図2Aに示すような凹凸緩和部2をパターニング形成した。この際、光硬化後の凹凸緩和部2の平均厚みが0.5μmとなるように凹凸緩和部形成用インク1の吐出量を調整した。
【0204】
<貼り合わせ>
厚み0.4mm、縦22mm、横22mmの正方形の上部部品20としてのガラス基板(以下、「第2のガラス基板」と称することがある)を準備した。
第1のガラス基板上に形成した熱伝導層10の表面(第1のガラス基板(下部部品30)と熱伝導層10が接する面とは反対側の面)に、第2のガラス基板(上部部品20)を重ねて貼り合わせた。この際、第2のガラス基板の中心と熱伝導層の中心とが一致するようにして貼り合わせた。その後、150℃にて1時間アニール処理することで、2枚のガラス基板を熱伝導層で接着した実施例1の貼合せサンプルを作製した。
【0205】
(実施例2)
実施例1において、調製例2で調製した凹凸緩和部形成用インク1を、調製例3で調製した凹凸緩和部形成用インク2に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の貼合せサンプルを作製した。
【0206】
(実施例3)
実施例2の凹凸緩和部形成工程において、光硬化後の2層の凹凸緩和部2の平均厚みがそれぞれ0.5μmとなるように凹凸緩和部形成用インク1の吐出量を調整したことを、光硬化後の2層の凹凸緩和部2の平均厚みがそれぞれ1.0μmとなるように凹凸緩和部形成用インク1の吐出量を調整したことに変更したこと以外は、実施例2と同様の方法で、実施例3の貼合せサンプルを作製した。
【0207】
(実施例4)
実施例4では、図3に示す構成の貼合せサンプルを作製した。
下部部品30及び上部部品20としてガラス基板を準備し、熱伝導層10で接着した貼合せサンプルとした。
熱伝導部形成用インク1としては、Agナノ粒子の含有量50質量%、メジアン径(d50)70nmのAgナノ粒子インク(SicrysTM I50TM-119、PVnanocell社製)を使用した。熱伝導部形成用インク1と同様のインクを、熱拡散部形成用インク1としても使用した。また、絶縁部形成用インクとしては、調製例1の絶縁部形成用インク1を使用し、凹凸緩和部形成用インクとしては、調製例3で調製した凹凸緩和部形成用インク2を使用した。
前記熱伝導層10を形成する際、熱伝導部形成用インク1、熱拡散部形成用インク1、絶縁部形成用インク1、及び凹凸緩和部形成用インク1は、いずれもインクジェットヘッドとしてRICHO MH5420(株式会社リコー製)を搭載したインクジェット装置(Stage JET、株式会社トライテック製)を使用した。
具体的には、実施例1において、<パターン設計>及び<熱伝導層の形成>を以下の方法に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例4の貼合せサンプルを作製した。なお、図3は、熱伝導層10及びその上下に配される下部部品30及び上部部品20の部分のみを厚み方向に抜き出して示した断面模式図であり、下部部品30、上部部品20、及び熱伝導層10のサイズは、下記パターン設計に記載の通りである。
【0208】
<パターン設計>
厚み1mm、縦40mm、横40mmの正方形の下部部品30としてのガラス基板(第1のガラス基板)を準備し、図9Aに示すように、第1のガラス基板の上面図における中心部に、縦15mm、横15mmの正方形の熱伝導層形成領域10bを設計した。次に、図9Bに示すように、熱伝導層形成領域10bの周囲に2.3mm幅の絶縁部形成領域3bを設計した。また、図9Bに示すように、縦2.4mm、横2.4mmの正方形の絶縁部形成領域3cを9個設計した。このとき、一つの正方形の絶縁部形成領域3cの重心と、これと隣り合う他の正方形の絶縁部形成領域3cの重心とのピッチは3.2mmとなるように設計した。また、熱伝導層形成領域10bの周囲の絶縁部形成領域3bの内周と、これと隣り合う正方形の絶縁部形成領域3cの外周との最短距離が0.8mmとなるように設計した。また、熱伝導層形成領域10b内の絶縁部形成領域3b及び絶縁部形成領域3c以外の領域は、凹凸緩和部形成領域2bとして設計した。これにより、熱伝導を行うための有効面積の比率が25%を占める割合で形成できるようにパターン設計した。また、凹凸緩和部2の上に積層するように熱伝導部形成領域1bを設計した。更に、熱伝導部形成領域1bに形成される熱伝導部1の上に積層するように凹凸緩和部形成領域2cを設計した。また、絶縁部3の上に積層するように熱拡散部形成領域1cを設計した。更に、絶縁部形成領域3cに形成される絶縁部3の上に積層する熱拡散部1aに更に積層するように絶縁部形成領域3cを設計した。
【0209】
<熱伝導層の形成>
以下の方法で、平均厚み10μmの熱伝導層を形成した。
【0210】
-絶縁部形成工程-
下部部品30として、厚み1mm、縦40mm、横40mmの正方形のガラス基板(第1のガラス基板)を準備した。
第1のガラス基板の一方の表面(厚み方向と略直交する方向の表面)の絶縁部形成領域3b及び3cに、絶縁部形成用インク1をインクジェットヘッド(RICHO MH5420)から吐出し、その着弾滴を、Honle LEDcube100(honle uv technology製)を用いてUV LED(波長365nm、1,500mJ/cm)で光硬化して、図3に示すような絶縁部3をパターニング形成した。この際、絶縁部形成領域3bに形成した光硬化後の絶縁部3の平均厚みは10μmとなるように絶縁部形成用インク1の吐出量を調整した。また、絶縁部形成領域3cに形成した光硬化後の絶縁部3の平均厚みは1μmとなるように絶縁部形成用インク1の吐出量を調整した。
【0211】
-凹凸緩和部形成工程及び熱伝導部形成工程-
次に、第1のガラス基板の一方の表面(厚み方向と略直交する方向の表面)に形成した絶縁部3の間の凹凸緩和部形成領域2bに、凹凸緩和部形成用インク1をインクジェットヘッド(RICHO MH5420)から吐出し、その着弾滴を、Honle LEDcube100を用いてUV LED(波長365nm、1,500mJ/cm)で光硬化し、図3に示すような凹凸緩和部2をパターニング形成した。この際、光硬化後の凹凸緩和部2の平均厚みが0.5μmとなるように凹凸緩和部形成用インク1の吐出量を調整した。
【0212】
次に、凹凸緩和部2の表面(凹凸緩和部2と第1のガラス基板とが接する面とは反対側の面)の熱伝導部形成領域1b及び熱拡散部形成領域1cに、熱伝導部形成用インク1をインクジェットヘッド(RICHO MH5420)から吐出し、その着弾滴を、120℃にて10分間乾燥して熱伝導部1及び熱拡散部1aを形成した。この際、乾燥後の熱伝導部1の平均厚みは9μmとなるように熱伝導部形成用インク1の吐出量を調整した。また、乾燥後の熱拡散部1aの平均厚みは8μmとなるように熱伝導部形成用インク1の吐出量を調整した。
【0213】
次に、凹凸緩和部2の表面に形成した熱伝導部1の表面(熱伝導部1と最初に形成した凹凸緩和部2とが接する面とは反対側の面)の凹凸緩和部形成領域2cに、凹凸緩和部形成用インク1をインクジェットヘッド(RICHO MH5420)から吐出し、その着弾滴を、Honle LEDcube100を用いてUV LED(波長365nm、1,500mJ/cm)で光硬化し、図3に示すような凹凸緩和部2をパターニング形成した。この際、光硬化後の凹凸緩和部2の平均厚みが0.5μmとなるように凹凸緩和部形成用インク1の吐出量を調整した。
【0214】
-絶縁部形成工程-
次に、絶縁部3の表面に形成した熱拡散部1aの表面(熱拡散部1aと最初に形成した絶縁部3とが接する面とは反対側の面)の絶縁部形成領域3cに、絶縁部形成用インク1をインクジェットヘッド(RICHO MH5420)から吐出し、その着弾滴を、Honle LEDcube100を用いてUV LED(波長365nm、1,500mJ/cm)で光硬化し、図3に示すような絶縁部3をパターニング形成した。この際、光硬化後の絶縁部3の平均厚みが1μmとなるように絶縁部形成用インク1の吐出量を調整した。
【0215】
(比較例1)
比較例1では、凹凸緩和部を有しない図10Aに示す構成の貼合せサンプルを作製した。
下部部品30及び上部部品20としてガラス基板を準備し、熱伝導層50で接着した貼合せサンプルとした。
熱伝導部形成用インク1としては、Agナノ粒子の含有量50質量%、メジアン径(d50)70nmのAgナノ粒子インク(SicrysTM I50TM-119、PVnanocell社製)を使用した。また、絶縁部形成用インクとしては、調製例1の絶縁部形成用インク1を使用した。
前記熱伝導層50を形成する際、熱伝導部形成用インク1及び絶縁部形成用インク1は、いずれもインクジェットヘッドとしてRICHO MH5420(株式会社リコー製)を搭載したインクジェット装置(Stage JET、株式会社トライテック製)を使用した。
具体的には、実施例1において、<パターン設計>及び<熱伝導層の形成>を以下の方法に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1の貼合せサンプルを作製した。なお、図10Aは、熱伝導層50及びその上下に配される下部部品30及び上部部品20の部分のみを厚み方向に抜き出して示した断面模式図であり、下部部品30、上部部品20、及び熱伝導層50のサイズは、下記パターン設計に記載の通りである。
【0216】
<パターン設計>
厚み1mm、縦40mm、横40mmの正方形の下部部品30としてのガラス基板(第1のガラス基板)を準備し、図9Aに示すように、第1のガラス基板の上面図における中心部に、縦15mm、横15mmの正方形の熱伝導層形成領域50bを設計した。次に、図10Bに示すように、上面図における熱伝導層形成領域50bの周囲に7.5mm幅の絶縁部形成領域3bを設計した。また、熱伝導層形成領域50b内の絶縁部形成領域3b以外の領域は、熱伝導部形成領域1bとして設計した。これにより、熱伝導を行うための有効面積の比率が25%を占める割合で形成できるようにパターン設計した。
【0217】
<熱伝導層の形成>
以下の方法で、平均厚み10μmの熱伝導層を形成した。
【0218】
-絶縁部形成工程-
下部部品30として、厚み1mm、縦40mm、横40mmの正方形のガラス基板(第1のガラス基板)を準備した。
第1のガラス基板の一方の表面(厚み方向と略直交する方向の表面)の絶縁部形成領域3bに、絶縁部形成用インク1をインクジェットヘッド(RICHO MH5420)から吐出し、その着弾滴を、Honle LEDcube100(honle uv technology製)を用いてUV LED(波長365nm、1,500mJ/cm)で光硬化して、図10Aに示すような絶縁部3をパターニング形成した。この際、光硬化後の絶縁部3の平均厚みが10μmとなるように絶縁部形成用インク1の吐出量を調整した。
【0219】
-熱伝導部形成工程-
次に、第1のガラス基板の一方の表面(厚み方向と略直交する方向の表面)に形成した絶縁部3の間の熱伝導部形成領域1bに、熱伝導部形成用インク1をインクジェットヘッド(RICHO MH5420)から吐出し、その着弾滴を、120℃にて10分間乾燥して熱伝導部1を形成した。この際、乾燥後の熱伝導部1の平均厚みが10μmとなるように熱伝導部形成用インク1の吐出量を調整した。
【0220】
(比較例2)
比較例1において、<パターン設計>を以下の方法に変更したこと以外は、比較例1と同様の方法で、比較例2の凹凸緩和部を有しない図11Aに示す構成の貼合せサンプルを作製した。なお、図11Aは、熱伝導層50及びその上下に配される下部部品30及び上部部品20の部分のみを厚み方向に抜き出して示した断面模式図であり、下部部品30、上部部品20、及び熱伝導層50のサイズは、下記パターン設計に記載の通りである。
【0221】
<パターン設計>
厚み1mm、縦40mm、横40mmの正方形の下部部品30としてのガラス基板(第1のガラス基板)を準備し、図9Aに示すように、第1のガラス基板の上面図における中心部に、縦15mm、横15mmの正方形の熱伝導層形成領域50bを設計した。次に、図11Bに示すように、上面図における熱伝導層形成領域50bの周囲に1mm幅の熱伝導部形成領域1bを設計した。また、熱伝導層形成領域50b内の熱伝導部形成領域1b以外の領域は、絶縁部形成領域3bとして設計した。これにより、熱伝導を行うための有効面積の比率が25%を占める割合で形成できるようにパターン設計した。
【0222】
(比較例3)
比較例2において、図12に示すように、絶縁部の厚み方向の中央(2層の絶縁部3aの間)に、熱拡散部1aを形成したこと以外は、比較例2と同様の方法で、比較例3の凹凸緩和部を有しない図12に示す構成の貼合せサンプルを作製した。
具体的には、比較例2において、<パターン設計>及び<熱伝導層の形成>を以下の方法に変更したこと以外は、比較例2と同様の方法で、比較例3の貼合せサンプルを作製した。なお、図12は、熱伝導層50及びその上下に配される下部部品30及び上部部品20の部分のみを厚み方向に抜き出して示した断面模式図であり、下部部品30、上部部品20、及び熱伝導層50のサイズは、下記パターン設計に記載の通りである。
【0223】
<パターン設計>
厚み1mm、縦40mm、横40mmの正方形の下部部品30としてのガラス基板(第1のガラス基板)を準備し、図9Aに示すように、第1のガラス基板の上面図における中心部に、縦15mm、横15mmの正方形の熱伝導層形成領域50bを設計した。次に、図11Bに示すように、上面図における熱伝導層形成領域50bの周囲に1mm幅の熱伝導部形成領域1bを設計した。これにより、熱伝導部1の表面積が、熱伝導層50の表面積(即ち、貼り合せ表面積)の25%を占める割合で形成できるようにパターン設計した。また、熱伝導層形成領域50b内の熱伝導部形成領域1b以外の領域は、絶縁部形成領域3bとして設計した。また、絶縁部3の上に積層するように熱拡散部形成領域1cを設計した。更に、熱拡散部形成領域1cに形成される熱拡散部1aの上に積層するように絶縁部形成領域3bを設計した。
【0224】
<熱伝導層の形成>
以下の方法で、平均厚み10μmの熱伝導層を形成した。
【0225】
-絶縁部形成工程-
下部部品30として、厚み1mm、縦40mm、横40mmの正方形のガラス基板(第1のガラス基板)を準備した。
第1のガラス基板の一方の表面(厚み方向と略直交する方向の表面)の絶縁部形成領域3bに、絶縁部形成用インク1をインクジェットヘッド(RICHO MH5420)から吐出し、その着弾滴を、Honle LEDcube100(honle uv technology製)を用いてUV LED(波長365nm、1,500mJ/cm)で光硬化して、図12示すような絶縁部3をパターニング形成した。この際、絶縁部形成領域3bに形成した光硬化後の絶縁部3の平均厚みは4.5μmとなるように絶縁部形成用インク1の吐出量を調整した。
【0226】
-熱伝導部形成工程-
次に、第1のガラス基板の一方の表面(厚み方向と略直交する方向の表面)に形成した絶縁部3以外の熱伝導部形成領域1bに、熱伝導部形成用インク1をインクジェットヘッド(RICHO MH5420)から吐出し、その着弾滴を、120℃にて10分間乾燥して熱伝導部1及び熱拡散部1aを形成した。この際、乾燥後の熱伝導部1の平均厚みは9μmとなるように熱伝導部形成用インク1の吐出量を調整した。また、乾燥後の熱拡散部1aの平均厚みは8μmとなるように熱伝導部形成用インク1の吐出量を調整した。
【0227】
-絶縁部形成工程-
次に、絶縁部3の表面に形成した熱拡散部1aの表面(熱拡散部1aと最初に形成した絶縁部3とが接する面とは反対側の面)の絶縁部形成領域3cに、絶縁部形成用インク1をインクジェットヘッド(RICHO MH5420)から吐出し、その着弾滴を、Honle LEDcube100を用いてUV LED(波長365nm、1,500mJ/cm)で光硬化し、図12に示すような絶縁部3をパターニング形成した。この際、光硬化後の絶縁部3の平均厚みが1μmとなるように絶縁部形成用インク1の吐出量を調整した。
【0228】
(比較例4)
比較例3において、絶縁部と熱拡散部の配置を逆にし、絶縁部を熱伝導層の厚み方向及び厚み方向と略直交する方向の中央に、図13Aに示すように形成し、絶縁部の厚み方向の両表面(絶縁部3と下部部品30との間、及び絶縁部3と上部部品20との間)に熱拡散部1aを平均厚み1μmとなるように形成したこと以外は、比較例3と同様の方法で、比較例4の凹凸緩和部を有しない図13Aに示す構成の貼合せサンプルを作製した。
具体的には、比較例3において、<パターン設計>及び<熱伝導層の形成>を以下の方法に変更したこと以外は、比較例3と同様の方法で、比較例4の貼合せサンプルを作製した。なお、図13Aは、熱伝導層50及びその上下に配される下部部品30及び上部部品20の部分のみを厚み方向に抜き出して示した断面模式図であり、下部部品30、上部部品20、及び熱伝導層50のサイズは、下記パターン設計に記載の通りである。
【0229】
<パターン設計>
厚み1mm、縦40mm、横40mmの正方形の下部部品30としてのガラス基板(第1のガラス基板)を準備し、図9Aに示すように、第1のガラス基板の上面図における中心部に、縦15mm、横15mmの正方形の熱伝導層形成領域50bを設計した。次に、図13Bに示すように、熱伝導層形成領域50bの全面に熱伝導部形成領域1bを設計した。また、図13Aに示すように、熱伝導部形成領域1bに形成した熱伝導部1の中央に、縦13mm、横13mmの正方形の絶縁部3を形成するための絶縁部形成領域3bを設計した。このとき、熱伝導部1の重心と、絶縁部形成領域3bの重心が一致するようにした。これにより、熱伝導を行うための有効面積の比率が25%を占める割合で形成できるようにパターン設計した。更に、絶縁部形成領域3bに形成される絶縁部3の上に積層するように熱伝導部形成領域1bを設計した。
【0230】
<熱伝導層の形成>
以下の方法で、平均厚み10μmの熱伝導層を形成した。
【0231】
-熱伝導部形成工程-
下部部品30として、厚み1mm、縦40mm、横40mmの正方形のガラス基板(第1のガラス基板)を準備した。
第1のガラス基板の一方の表面(厚み方向と略直交する方向の表面)の熱伝導部形成領域1bに、熱伝導部形成用インク1をインクジェットヘッド(RICHO MH5420)から吐出し、その着弾滴を、120℃にて10分間乾燥して、図13Aに示すような熱伝導部1をパターニング形成した。この際、熱伝導層の厚み方向と略直交する方向の周囲、即ち、上に絶縁部形成領域3bを形成しない領域は、乾燥後の熱伝導部1の平均厚みが10μmとなるように熱伝導部形成用インク1の吐出量を調整した。また、熱伝導層の厚み方向と略直交する方向の中央部、即ち、上に絶縁部形成領域3bを形成する領域は、乾燥後の熱伝導部1の平均厚みが4.5μmとなるように熱伝導部形成用インク1の吐出量を調整した。
【0232】
-絶縁部形成工程-
次に、熱伝導部1上の絶縁部形成領域3bに、絶縁部形成用インク1をインクジェットヘッド(RICHO MH5420)から吐出し、その着弾滴を、Honle LEDcube100を用いてUV LED(波長365nm、1,500mJ/cm)で光硬化し、図13Aに示すような絶縁部3をパターニング形成した。この際、光硬化後の絶縁部3の平均厚みが1μmとなるように絶縁部形成用インク1の吐出量を調整した。
【0233】
-熱伝導部形成工程-
次に、熱伝導部1の表面に形成した絶縁部3の表面(絶縁部3と最初に形成した熱伝導部1とが接する面とは反対側の面)の熱伝導部形成領域1bに熱伝導部形成用インク1をインクジェットヘッド(RICHO MH5420)から吐出し、その着弾滴を、120℃にて10分間乾燥して、図13Aに示すような熱伝導部1をパターニング形成した。この際、乾燥後の熱伝導部1の平均厚みが4.5μmとなるように熱伝導部形成用インク1の吐出量を調整した。
【0234】
(比較例5)
実施例1において、凹凸緩和部を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例5の凹凸緩和部を有しない図14Aに示す構成の貼合せサンプルを作製した。
具体的には、実施例1において、<パターン設計>及び<熱伝導層の形成>を以下の方法に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例5の貼合せサンプルを作製した。なお、図14Aは、熱伝導層50及びその上下に配される下部部品30及び上部部品20の部分のみを厚み方向に抜き出して示した断面模式図であり、下部部品30、上部部品20、及び熱伝導層50のサイズは、下記パターン設計に記載の通りである。
【0235】
<パターン設計>
厚み1mm、縦40mm、横40mmの正方形の下部部品30としてのガラス基板(第1のガラス基板)を準備し、図9Aに示すように、第1のガラス基板の上面図における中心部に、縦15mm、横15mmの正方形の熱伝導層形成領域50bを設計した。次に、図14Bに示すように、熱伝導層形成領域50bの周囲に2.3mm幅の絶縁部形成領域3bを設計した。また、図14Bに示すように、縦2.4mm、横2.4mmの正方形の絶縁部形成領域3cを9個設計した。このとき、一つの正方形の絶縁部形成領域3cの重心と、これと隣り合う他の正方形の絶縁部形成領域3cの重心とのピッチは3.2mmとなるように設計した。また、熱伝導層形成領域50bの周囲の絶縁部形成領域3bの内周と、これと隣り合う正方形の絶縁部形成領域3cの外周との最短距離が0.8mmとなるように設計した。また、熱伝導層形成領域50b内の絶縁部形成領域3b及び絶縁部形成領域3c以外の領域は、熱伝導部形成領域1bとして設計した。これにより、熱伝導を行うための有効面積の比率が25%を占める割合で形成できるようにパターン設計した。
【0236】
<熱伝導層の形成>
以下の方法で、平均厚み10μmの熱伝導層を形成した。
【0237】
-絶縁部形成工程-
下部部品30として、厚み1mm、縦40mm、横40mmの正方形のガラス基板(第1のガラス基板)を準備した。
第1のガラス基板の一方の表面(厚み方向と略直交する方向の表面)の絶縁部形成領域3bに、絶縁部形成用インク1をインクジェットヘッド(RICHO MH5420)から吐出し、その着弾滴を、Honle LEDcube100(honle uv technology製)を用いてUV LED(波長365nm、1,500mJ/cm)で光硬化して、図14Aに示すような絶縁部3をパターニング形成した。この際、光硬化後の絶縁部3の平均厚みが10μmとなるように絶縁部形成用インク1の吐出量を調整した。
【0238】
-熱伝導部形成工程-
次に、第1のガラス基板の一方の表面(厚み方向と略直交する方向の表面)に形成した絶縁部3の間の熱伝導部形成領域1bに、熱伝導部形成用インク1をインクジェットヘッド(RICHO MH5420)から吐出し、その着弾滴を、120℃にて10分間乾燥して熱伝導部1を形成した。この際、乾燥後の熱伝導部1の平均厚みが10μmとなるように熱伝導部形成用インク1の吐出量を調整した。
【0239】
(比較例6)
比較例5において、調製例2で調製した凹凸緩和部形成用インク1を、調製例4で調製した凹凸緩和部形成用インク3に変更したこと以外は、比較例5と同様の方法で、比較例6の凹凸緩和部を有しない図14Aに示す構成の貼合せサンプルを作製した。
【0240】
(比較例7)
実施例1において、熱伝導層10を、市販の放熱用カーボンシート(TC-001、レゾナック株式会社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例7の貼合せサンプルを作製した。
【0241】
(比較例8)
実施例1において、熱伝導層10を、市販の放熱用グリース(X-23-7921-5、信越化学工業株式会社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例8の貼合せサンプルを作製した。
【0242】
【表2】
【0243】
【表3】
【0244】
<評価>
実施例1~4及び比較例1~8の貼合せサンプルについて、以下の方法で、熱抵抗、密着性、及びリフロー耐性を評価した。
【0245】
<<熱抵抗>>
熱抵抗は、実施例1~4及び比較例1~8の貼合せサンプルの作製の際の熱伝導層のみを用いて実施した。熱抵抗は、熱流体シミュレーションによる熱抵抗計算と、橘/佐野川の式を使用した界面接触熱抵抗の算出とを組み合わせ、トータル熱抵抗を算出して比較した。具体的には、以下の方法で評価した。
【0246】
まず、下記条件で実施例1~4及び比較例1~8で作製した熱伝導層の熱流体シミュレーションを行い、熱抵抗を算出した。
[シミュレーション条件]
・ 熱流体シミュレーションソフトウェア:STREAM V2020 SP1( 株式会社ソフトウェアクレイドル製)
・ モデル:図15に示すように、熱伝導層の上下に30mm銅ブロック51a及び51bを配置した。
・ 発熱条件:図15に示すY方向の上面は100Wの発熱条件に設定し、Y方向の下面は20℃で一定とした。図15に示すX方向及びZ方向の側面は断熱条件に設定した。
・ 解析:熱、流れ、定常解析、1/4モデル
・ メッシュ形状:構造格子。メッシュは熱伝導層の厚み方向に100要素(最小0.1μm)を入れた。
・ 絶縁部の熱伝導率:文献値より0.3W/m・Kに設定した(株式会社八光電機ホームページの「各種物質の性質:非金属固体の性質」、https://www.hakko.co.jp/qa/qakit/html/h01010.htm参照)。
・ 熱伝導部の熱伝導率:文献値より200W/m・Kに設定した(金築 俊介, 「焼結型接合材の熱物性評価技術」, コベルコ科研 テクニカルレポート, No.50, Vol.28, 2020.APR参照)。
・ 比較例7の放熱用カーボンシート(TC-001、レゾナック株式会社製)の熱伝導率:メーカーのカタログ値より45W/m・Kに設定した。
・ 比較例8の放熱用グリース(X-23-7921-5、信越化学工業株式会社製)の熱伝導率:メーカーのカタログ値より6W/m・Kに設定した。
【0247】
次に、橘/佐野川の式(下記式1)及び下記表2及び表3に示す物性値を使用し、実施例1~4及び比較例1~8で作製した熱伝導層の界面接触熱抵抗を算出した。
【数1】
式1において、Rairは界面接触熱抵抗(即ち、ボイド部の熱抵抗値)を示し、zは熱伝導層の粗さの最大高さ(即ち、0.001cm)を示し、zは発熱部及び冷却部の粗さの最大高さ(即ち、0.001cm)を示し、aは熱伝導層の接触圧力(実装時の圧力)値(即ち、0.044Mpa)を示し、Aは文献値(▲斎▼藤 寛, 「銀ハイブリッドペーストの開発とその応用」, HARIMAテクノロジーレポート, 2012, No.111参照)に基づく銀焼結の値(即ち、25HV)を示し、λは熱伝導部の平均熱伝導率λfを示す。
なお、z及びzは、実施例1~4及び比較例1~8で作製した熱伝導層を触針式プロファイラー(Alpha-Step D-500、KLA-Tenchore社製)を用いて測定した値である。また、aは、実施例1~4及び比較例1~8で作製した熱伝導層の中央の押圧力を、フォースゲージ(ZTSシリーズ、株式会社イマダ製)を用いて測定した値である。
【0248】
次に、熱流体シミュレーションによる熱抵抗値と、橘/佐野川の式を使用した界面接触熱抵抗値との合計抵抗値をトータル熱抵抗値として算出した。下記表4にトータル熱抵抗値を示した。
【0249】
<<密着性>>
実施例1~4及び比較例1~8の貼合せサンプルの密着性は、各貼合せサンプルの厚み方向と略直交する方向の中央を、バンドソーを用いて切断し、切断面を走査電子顕微鏡(SEM)(Helios NanoLab G3 CX、Thermo Fisher製社製)により観察し、下記評価基準に基づき密着性を評価した。評価結果は、下記表4に示した。
-密着性の評価基準-
A:切断面にボイドが観察されない
B:切断面にボイドが観察される
【0250】
<<リフロー耐性>>
実施例1~4及び比較例1~8の貼合せサンプルのリフロー耐性は、各貼合せサンプルについて、260℃にて3回、連続リフロー(JEDEC規格、Level3)を行った。その後、上記密着性の評価と同様の方法で、各貼合せサンプルの厚み方向と略直交する方向の中央をバンドソーを用いて切断し、切断面を走査電子顕微鏡(SEM)(Helios NanoLab G3 CX、Thermo Fisher製社製)により観察し、熱伝導層と、下部部品及び上部部品の少なくともいずれかとの剥離の有無を確認し、下記評価基準に基づきリフロー耐性を評価した。評価結果は、下記表4に示した。
-リフロー耐性の評価基準-
A:剥離がない
B:剥離がある
【0251】
【表4】
【0252】
実施例1~4では、凹凸緩和部を設けたことにより、貼合せた下部部品及び上部部品との密着性が良好であり、トータル熱抵抗値は、比較例7及び8の従来品と比較しても低くなっていた。
一方、比較例1~5や比較例7の従来のシートは、熱伝導部の密着性が悪く、貼合せた下部部品及び上部部品との間にボイドが確認された。このようにボイドがある場合、界面接触熱抵抗を悪化させるだけでなく、実使用時の熱ストレスにより破壊の起点となり接合不具合の原因となる懸念がある。
【0253】
また、リフロー耐性の評価より、凹凸緩和部を有し、該凹凸緩和部の弾性率が3,000MPa以下の実施例1~4では剥離が認められなかった。
一方、凹凸緩和部を有しない比較例1~5や比較例7の従来のシートは、ボイドを起点とした剥離の進行が認められた。また、凹凸緩和部の弾性率が3,000MPa以上の比較例6は、初期のボイドは認められなかったが、リフロー後には剥離が確認された。これらの比較例1~7では、リフロー時の熱変形に伴い剥離が発生したと考えられる。
本試験ではリフロー耐性として評価を行ったが、リフロー工程がない場合においても、貼合せ部品のCTEミスマッチがあることで、実使用時の温度サイクル時に熱変形が起きるため、同様の不具合が起きる可能性があると考えられる。
【0254】
また、凹凸緩和部の熱伝導率を向上させた実施例2及び3は、比較例1~7と比較してもトータル熱抵抗値を大きく低下させることができた。更に、熱拡散部を設けた実施例4は、更にトータル熱抵抗値を低下させることができた。
【0255】
比較例1及び2を比較すると、熱伝導部が同じ有効面積の比率であるにもかかわらず、比較例2の方が、比較例1に比べて大幅にトータル熱抵抗値が低かった。これは、発熱部品としての下部部品に対して、熱伝導部を中央に1点に配置させるより、断面図における両端に配置(即ち、上面図において周囲を囲うような構造)とする方が、熱伝導部に対する熱が分散され、効率良く熱が流れた効果であると考えられた。
【0256】
また、比較例3及び4を比較すると、熱拡散部を、熱伝導層の厚み方向の中央(即ち、上部部品及び下部部品と接しない領域)に配置させても、上下面(即ち、上部部品及び下部部品と接する面)どちらに配置させても、トータル熱抵抗値は大きく変化しなかった。したがって、界面接触熱抵抗や接合信頼性を考慮すると、絶縁樹脂層に挟まれた比較例3のような構造にすることが良いということが言える。
【0257】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> 熱伝導部と、絶縁部と、前記絶縁部よりも弾性率が小さい凹凸緩和部と、を有し、
前記熱伝導部の厚み方向の少なくとも一方の表面に前記凹凸緩和部が配されることを特徴とする熱伝導層である。
<2> 前記熱伝導層の厚み方向と略直交する方向に、前記熱伝導部を複数有する、前記<1>に記載の熱伝導層である。
<3> 複数の前記熱伝導部がパターニング形成されてなる、前記<2>に記載の熱伝導層である。
<4> 発熱部品の熱を伝導させるために用いられ、
複数の前記熱伝導部が、前記発熱部品の複数のホットスポットを覆う位置に配される、前記<2>から<3>のいずれかに記載の熱伝導層である。
<5> 前記熱伝導部の平均熱伝導率λf、前記絶縁部の平均熱伝導率λr、及び前記凹凸緩和部の平均熱伝導率λcが下記式(1)を満たす、前記<1>から<4>のいずれかに記載の熱伝導層である。
λf(熱伝導部)>λc(凹凸緩和部)≧λr(絶縁部) ・・・ 式(1)
<6> 前記熱伝導部の前記平均熱伝導率λfが0.5W/m・k以上である、前記<1>から<5>のいずれかに記載の熱伝導層である。
<7> 前記凹凸緩和部の平均弾性率が3,000MPa以下である、前記<1>から<6>のいずれかに記載の熱伝導層である。
<8> 厚み方向の少なくとも一方の表面に前記絶縁部が配され、且つ、厚み方向と略直交する方向に前記熱伝導部が配される熱拡散部を更に有する、前記<1>から<7>のいずれかに記載の熱伝導層である。
<9> 前記絶縁部及び前記凹凸緩和部が光硬化性樹脂を含有する、前記<1>から<8>のいずれかに記載の熱伝導層である。
<10> 前記光硬化性樹脂がエポキシ系樹脂を含有する、前記<9>に記載の熱伝導層である。
<11> 前記熱伝導部、前記絶縁部、及び前記凹凸緩和部の少なくともいずれかがインクジェット印刷法により形成された、前記<3>から<10>のいずれかに記載の熱伝導層である。
<12> 絶縁部を形成するための絶縁部形成用インクをノズルから吐出して前記絶縁部を形成する絶縁部形成工程と、
熱伝導部を形成するための熱伝導部形成用インクをノズルから吐出して前記熱伝導部を形成する熱伝導部形成工程と、
前記絶縁部よりも弾性率が小さい凹凸緩和部を形成するための凹凸緩和部形成用インクをノズルから吐出して、前記熱伝導部の厚み方向の少なくとも一方の表面に前記凹凸緩和部が配されるように前記凹凸緩和部を形成する凹凸緩和部形成工程と、
を含むことを特徴とする熱伝導層の製造方法である。
<13> 熱拡散部を形成するための熱拡散部形成用インクをノズルから吐出して、厚み方向の少なくとも一方の表面に前記絶縁部が配されるように、且つ、厚み方向と略直交する方向に前記熱伝導部が配されるように熱拡散部を形成する熱拡散部形成工程を更に有する、前記<12>に記載の熱伝導層の製造方法である。
<14> 前記<1>から<11>のいずれかに記載の熱伝導層を仮支持体上に有することを特徴とする転写用熱伝導層である。
<15> 第1の部品と、第2の部品と、前記第1の部品と前記第2の部品との間の熱を伝導する前記<1>から<11>のいずれかに記載の熱伝導層と、を有することを特徴とする電子部品である。
【0258】
前記<1>から<11>のいずれかに記載の熱伝導層、前記<12>及び<13>に記載の熱伝導層の製造方法、前記<14>に記載の転写用熱伝導層、及び前記<15>に記載の電子部品は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0259】
1 …熱伝導部
1a…熱拡散部
2 …凹凸緩和部
3 …絶縁部
3a…絶縁部
10 …熱伝導層
11 …第2の熱伝導層
20 …上部部品
30 …下部部品
31 …第2の発熱部品
40 …中間層
50 …熱伝導層
51a…ブロック
51b…ブロック
60 …ヘッド
61 …インク
62 …ステージ
100 …従来の熱伝導層
101 …熱伝導性粒子
102 …樹脂
200 …部品
300 …部品
【先行技術文献】
【特許文献】
【0260】
【特許文献1】国際公開第2020/091008号
【特許文献2】特開2015-015322号公報
【特許文献3】特開2006-059998号公報
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15