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特開2024-179268抑草資材固化物、抑草資材固化物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179268
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】抑草資材固化物、抑草資材固化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/14 20060101AFI20241219BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20241219BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20241219BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A01N59/14
A01N59/00 C
A01P21/00
A01N25/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097981
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】寺添 斉
(72)【発明者】
【氏名】橋田 慎之介
(72)【発明者】
【氏名】小林 卓也
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AB03
4H011BA01
4H011BB18
4H011BC06
4H011BC07
4H011DA01
4H011DD04
4H011DE14
4H011DF02
(57)【要約】
【課題】所望の場所に設置することで、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を長期にわたり調節し、植物の形態を継続して維持する(制御する)。
【解決手段】植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素を含む抑制部材(石炭灰の固化物)と、抑制部材の成分元素の溶出を促進する酸性物質である有機酸を含む泥炭(ピートモス)粒状の成型物とを有し、雨水5などに促進材料3の有機酸6が溶け込み、有機酸6が溶け込んだ雨水5などにより抑制部材2の抑草作用を有する成分元素7の溶出が促進された状態で効率よく溶出され続ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素を含む抑制部材と、
前記抑制部材の成分元素の溶出を促進する酸性物質を含む促進材料とを有する
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項2】
請求項1に記載の抑草資材固化物において、
前記促進材料の酸性物質は、有機酸である
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項3】
請求項1に記載の抑草資材固化物において、
前記抑制部材の成分元素は、
ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、ナトリウム(Na)のうち、少なくとも一種類を含む
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項4】
請求項1に記載の抑草資材固化物において、
前記促進材料は、
酸性成分を含有する、もしくは、酸性成分を付着させた担体である
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項5】
請求項1に記載の抑草資材固化物において、
前記促進材料は、
植物が腐植化した泥炭(ピートモス)である
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項6】
請求項5に記載の抑草資材固化物において、
前記泥炭(ピートモス)は成型されて粒状泥炭とされ、前記粒状泥炭が前記抑制部材に混合されている
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項7】
請求項5に記載の抑草資材固化物において、
前記泥炭(ピートモス)は繊維状にされて袋状部材とされ、
固化状の前記抑制部材の周囲に前記袋状部材が配されている
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の抑草資材固化物において、
前記促進材料の容積比は5.0%から10.0%の範囲である
ことを特徴とする抑草資材固化物。
【請求項9】
有機酸を含む泥炭を脱水、粉砕し、粉砕物を所望の大きさの粒体に成型し、型枠に前記粒体を入れ、前記粒体が入れられた前記型枠に、植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素を含むペースト状の石炭灰を加え、前記型枠内の試料を所定期間、加温硬化し、所定期間が経過した後、脱型して固化物とする
ことを特徴とする抑草資材固化物の製造方法。
【請求項10】
植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素を含むペースト状の石炭灰を型枠に打設し、有機酸を含む泥炭を型枠の内部の打設部材に練り込み、前記型枠内の試料を所定期間、加温硬化し、所定期間が経過した後、脱型して固化物とする
ことを特徴とする抑草資材固化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の成長を調節(抑制)する抑制成分を含んだ抑草資材固化物、及び、抑草資材固化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線の敷地、河川堤防、道路法面、中央分離帯、空港着陸帯等では、浸食防止、安全確保、景観確保、基盤浸食防止、飛び砂防止等のために、植物を植えて緑化が図られることがある。緑化のための植物は、成長しすぎると、防犯上、見栄え上、機能上、悪影響を及ぼす虞があるため、定期的に草刈等のメンテナンスが必要になっている。しかし、このような緑化の場所は、人が入りにくい場所であるため、メンテナンスには多大な労職と時間、費用がかかるのが現状であった。
【0003】
このため、従来から、定期的な草刈作業に代えて、除草剤等を用いて植物を枯らせることで植物が成長しないようにし、植物の必要以上の成長による悪影響を無くしている(例えば、特許文献1)。特許文献1に示された技術は、除草剤に成長を抑制する剤を混ぜて、除草の負担を軽減する技術となっている。
【0004】
緑化を行う地域は、植物の量が減少しても存在し続けることが、環境イメージの点等において重要であるが、特許文献1の技術を用いた場合、除草を行う技術であるため、除草を行った後は、緑化の地域に植物が生えていない状態になってしまう。緑化の地域で除草を行い、植物を無くした状態にすると、見栄えや安全性に対する印象を含めた景観を損なうことになり、緑化の地域では除草を実施することは得策ではないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2013-540775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、所望の場所に設置することで、抑制成分の溶出を的確に行い、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を継続的に維持する(制御する)ことができる抑草資材固化物を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、所望の場所に設置することで、抑制成分の溶出を的確に行い、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を継続的に維持する(制御する)抑草資材固化物を製造することができる抑草資材固化物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の抑草資材固化物は、植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素を含む抑制部材と、前記抑制部材の成分元素の溶出を促進する酸性物質を含む促進材料とを有することを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る本発明では、抑草資材固化物に雨水などが染み込み流通することで、雨水などに促進材料の酸性物質が溶け込み、酸性物質が溶け込んだ雨水などにより抑制部材の抑草作用を有する成分元素の溶出が促進された状態で効率よく溶出され続け、抑草作用を有する成分元素が所望期間にわたり溶出される。
【0010】
このため、所望の場所に設置することで、抑制成分の溶出を的確に行い、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を継続的に維持する(制御する)ことができる抑草資材固化物となる。
【0011】
そして、請求項2に係る本発明の抑草資材固化物は、請求項1に記載の抑草資材固化物において、前記促進材料の酸性物質は、有機酸であることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る本発明では、有機酸を用いて抑制部材の成分元素の溶出を促進することができる。有機酸としては、例えば、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、乳酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ギ酸、イタコン酸、フィチン酸、安息香酸など構造にスルホ基(-SO3H)またはカルボキシル基(-COOH)を持つ酸性を示す有機化合物が適用される。
【0013】
また、請求項3に係る本発明の抑草資材固化物は、請求項1に記載の抑草資材固化物において、前記抑制部材の成分元素は、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、ナトリウム(Na)のうち、少なくとも一種類を含むことを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る本発明では、所定の濃度の範囲で、環境基準を満たした状態で植物の成長を調整することができる。
【0015】
また、請求項4に係る本発明の抑草資材固化物は、請求項1に記載の抑草資材固化物において、前記促進材料は、酸性成分を含有する、もしくは、酸性成分を付着させた担体であることを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る本発明では、酸性成分を含有する、もしくは、酸性成分を付着させた担体を用いて抑制部材の成分元素の溶出を促進することができる。
【0017】
また、請求項5に係る本発明の抑草資材固化物は、請求項1に記載の抑草資材固化物において、前記促進材料は、植物が腐植化した泥炭(ピートモス)であることを特徴とする。
【0018】
請求項5に係る本発明では、植物(蘚苔類、ヨシ、スゲ、ヌマガヤ、ヤナギなど)が腐植化した泥炭(ピートモス)を用いて抑制部材の成分元素の溶出を促進することができる。
【0019】
植物が腐植化した泥炭(ピートモス)は、例えば、脱水、粉砕、選別され、増粘剤が加えられて固体に成型され、成型物と抑制部材(石炭灰ペースト)が混合されることで、抑草資材固化物が形成される。また、ペースト状の抑制部材に、植物が腐植化した泥炭(ピートモス)を練り込むことで、抑草資材固化物が形成される。
【0020】
また、請求項6に係る本発明の抑草資材固化物は、請求項5に記載の抑草資材固化物において、前記泥炭(ピートモス)は成型されて粒状泥炭とされ、前記粒状泥炭が前記抑制部材に混合されていることを特徴とする。
【0021】
請求項6に係る本発明では、粒状泥炭と抑制部材(例えば、石炭灰ペースト)を混合することで抑草資材固化物を得ることができる。
【0022】
また、請求項7に係る本発明の抑草資材固化物は、請求項5に記載の抑草資材固化物において、前記泥炭(ピートモス)は繊維状にされて袋状部材とされ、固化状の前記抑制部材の周囲に前記袋状部材が配されていることを特徴とする。
【0023】
請求項7に係る本発明では、袋状部材とされた泥炭(ピートモス)に固化状の抑制部材が収容されて抑草資材固化物とされる。
【0024】
また、請求項8に係る本発明の抑草資材固化物は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の抑草資材固化物において、前記促進材料の容積比は5.0%から10.0%の範囲であることを特徴とする。
【0025】
請求項8に係る本発明では、促進材料の容積比を5.0%から10.0%にしたので、空隙率を所望の状態に抑えて固化体の強度を確保し、所望の濃度で抑制部材を溶出させることができる。
【0026】
上記目的を達成するための請求項9に係る本発明の抑草資材固化物の製造方法は、有機酸を含む泥炭を脱水、粉砕し、粉砕物を所望の大きさの粒体に成型し、型枠に前記粒体を入れ、前記粒体が入れられた前記型枠に、植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素を含むペースト状の石炭灰を加え、前記型枠内の試料を所定期間、加温硬化し、所定期間が経過した後、脱型して固化物とすることを特徴とする。
【0027】
また、上記目的を達成するための請求項10に係る本発明の抑草資材固化物の製造方法は、植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素を含むペースト状の石炭灰を型枠に打設し、有機酸を含む泥炭を型枠の内部の打設部材に練り込み、前記型枠内の試料を所定期間、加温硬化し、所定期間が経過した後、脱型して固化物とすることを特徴とする。
【0028】
請求項9、請求項10に係る本発明では、抑草資材固化物に雨水などが染み込み流通することで、雨水などに促進材料が溶け込み、促進材料が溶け込んだ雨水などにより抑制部材の溶出が促進された状態で効率よく溶出され続け、抑制部材が所望期間にわたり溶出される抑草資材固化物を製造することができる。
【0029】
このため、所望の場所に設置することで、抑制成分の溶出を的確に行い、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を継続的に維持する(制御する)抑草資材固化物を製造することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の抑草資材固化物は、所望の場所に設置することで、抑制成分の溶出を的確に行い、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を継続的に維持する(制御する)ことが可能になる。
【0031】
また、本発明の抑草資材固化物の製造方法は、所望の場所に設置することで、抑制成分の溶出を的確に行い、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を継続的に維持する(制御する)抑草資材固化物を製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施例に係る抑草資材固化物の概念図である。
図2】有機酸によりホウ素が溶出する説明図である。
図3】有機酸によりリチウムが溶出する説明図である。
図4】泥炭(ピートモス)の利用例の概念図である。
図5】抑草資材固化物の製造方法の一実施例の工程図である。
図6】抑草資材固化物の製造方法の他の実施例の工程図である。
図7】泥炭(ピートモス)の利用例の概念図である。
図8】抑草資材固化物の製造方法の他の実施例の工程図である。
図9】容積比とホウ素の溶出濃度との関係を表すグラフである。
図10】容積比とリチウムの溶出濃度との関係を表すグラフである。
図11】ホウ素の溶出量の経時変化を表すグラフである。
図12】リチウムの溶出量の経時変化を表すグラフである。
図13】本発明の抑草資材固化物の使用例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1には本発明の一実施例に係る抑草資材固化物が設置された状態を概念状況、図2には有機酸によりホウ素が溶出する状況説明、図3には有機酸によりリチウムが溶出する状況説明を示してある。
【0034】
図に示すように、抑草資材固化物1は、植物を所定の状態で生育維持させるための混錬物であり、植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素を含む抑制部材2と、抑制部材2の成分元素の溶出を促進する酸性物質である有機酸を含む促進材料3とを有している。
【0035】
そして、抑草資材固化物1に雨水5などが染み込み流通することで、雨水5などに促進材料3の有機酸6が溶け込み、有機酸6が溶け込んだ雨水5などにより抑制部材2の抑草作用を有する成分元素7の溶出が促進された状態で効率よく溶出され続け、抑草作用を有する成分元素7が所望期間にわたり溶出される。
【0036】
有機酸6としては、例えば、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、乳酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ギ酸、イタコン酸、フィチン酸、安息香酸など構造にスルホ基(-SO3H)またはカルボキシル基(-COOH)を持つ酸性を示す有機化合物が適用される。
【0037】
抑制部材2としては、例えば、ペースト状にされた(水を含む)、石炭灰、パーパスラッジ灰、高炉スラグ粉末、未焼成貝殻粉末を固化したものが用いられる。そして、抑草作用を有する成分元素7としては、例えば、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、ナトリウム(Na)の少なくとも一種類が含まれる。
【0038】
従って、所定の濃度の範囲で、環境基準を満たした状態で植物の成長を調整することができる。
【0039】
図2図3に基づいてホウ素、リチウムの溶出の状況を説明する。
【0040】
図2に示すように、A灰、B灰を用いた抑制部材において、有機酸として、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、乳酸を用いた場合、比較対象と比べて、高い濃度でホウ素が溶出していることが確認された。
【0041】
図3に示すように、A灰、B灰を用いた抑制部材において、有機酸として、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、乳酸を用いた場合、比較対象と比べて、高い濃度でリチウムが溶出していることが確認された。
【0042】
図4図5に基づいて抑草資材固化物の製造方法の一実施例を説明する。図4には泥炭(ピートモス)の利用例の概念、図5には製造の工程状況を示してある。
【0043】
図4に示すように、促進材料として、植物(蘚苔類、ヨシ、スゲ、ヌマガヤ、ヤナギなど)が腐植化した泥炭(ピートモス)11が脱水、粉砕、選別され、増粘剤が加えられて固体(所望の大きさの粒体:球状)に成型されて球体12とされる。尚、促進材料は、酸性成分を含有する、もしくは、酸性成分を付着させた担体を用いることも可能である。
【0044】
図5に示すように、型枠14に球体12を入れ、球体12が入れられた型枠14に、植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素を含むペースト状の石炭灰15(抑制部材)を加える。型枠14内の試料を所定期間(例えば、2週間)、加温(例えば、40℃)硬化し、所定期間が経過した後、脱型して固化物とすることで、抑草資材固化物16となる。
【0045】
促進材料である粒状の泥炭(ピートモス)である球体12の容積比は、5.0%から10.0%の範囲とされている。球体12(促進材料)の容積比を5.0%から10.0%にしたので、空隙率を所望の状態に抑えて(例えば、20%程度以下)に抑えて、抑草資材固化物16の強度を確保し、所望の濃度で抑制部材を溶出させることができる。
【0046】
抑草資材固化物16に雨水などが染み込み流通することで、雨水などに球体12の成分(促進材料の成分)が溶け込み、促進材料が溶け込んだ雨水などにより石炭灰15(抑制部材)からの抑草成分の溶出が促進された状態で効率よく溶出され続ける。
【0047】
このため、抑草資材固化物16を所望の場所に設置することで、抑制成分の溶出を的確に行い、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を継続的に維持することができる。
【0048】
図6に基づいて抑草資材固化物の製造方法の他の実施例を説明する。図6には抑草資材固化物の製造方法の他の実施例の工程状況を示してある。
【0049】
図6に示すように、型枠21に植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素を含むペースト状の石炭灰15(抑制部材)を打設する。ペースト状の石炭灰15(抑制部材)に、植物(蘚苔類、ヨシ、スゲ、ヌマガヤ、ヤナギなど)が腐植化した泥炭(ピートモス)11を練り込む。型枠21内の試料を所定期間(例えば、2週間)、加温(例えば、40℃)硬化し、所定期間が経過した後、脱型して固化物とすることで、石炭灰15(抑制部材)に泥炭(ピートモス)11が練り込まれた抑草資材固化物22となる。
【0050】
促進材料である泥炭(ピートモス)11の容積比は、5.0%から10.0%の範囲とされている。泥炭(ピートモス)11の容積比を5.0%から10.0%にしたので、空隙率を所望の状態に抑えて(例えば、20%程度以下)に抑えて、抑草資材固化物16の強度を確保し、所望の濃度で抑制部材を溶出させることができる。
【0051】
抑草資材固化物22に雨水などが染み込み流通することで、雨水などに泥炭(ピートモス)11の成分(促進材料の成分)が溶け込み、促進材料が溶け込んだ雨水などにより石炭灰15(抑制部材)からの抑草成分の溶出が促進された状態で効率よく溶出され続ける。
【0052】
このため、抑草資材固化物22を所望の場所に設置することで、抑制成分の溶出を的確に行い、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を継続的に維持することができる。
【0053】
図7図8に基づいて抑草資材固化物の製造方法の他の実施例を説明する。図7には泥炭(ピートモス)の利用例の概念、図8には製造の工程状況を示してある。
【0054】
図7に示すように、植物(蘚苔類、ヨシ、スゲ、ヌマガヤ、ヤナギなど)が腐植化した泥炭(ピートモス)11が繊維状にされて袋状部材25とされている。また図8に示すように、植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する成分元素を含むペースト状の石炭灰が適宜の大きされに固められて固化物26とされている。袋状部材25には固化物26が収容され、固化物26が収容された袋状部材25により抑草資材固化物27が構成されている。
【0055】
促進材料である泥炭(ピートモス)11が繊維状にされた袋状部材25に収容され抑草資材固化物27が構成されているので、簡単で、任意の大きさ、形状に製造することができる。泥炭(ピートモス)11の容積比は、5.0%から10.0%の範囲とされている。袋状部材25の容積比を5.0%から10.0%にしたので、所望の濃度で固化物26の抑制部材を溶出させることができる。
【0056】
図9図10に基づいて容積比による溶出濃度の状況を説明する。図9には容積比とホウ素の溶出濃度との関係、図10には容積比とリチウムの溶出濃度との関係を示してある。
【0057】
図9に示すように、促進材料(粒状のピートモス)の容積比を5.0%から10.0%のいずれの場合も、促進材料がない石炭灰の固化物に対し、ホウ素の溶出濃度が高くなること(例えば、300mg/Lから600mg/Lになること)が確認された。
【0058】
図10に示すように、促進材料(粒状のピートモス)の容積比を5.0%から10.0%のいずれの場合も、促進材料がない石炭灰の固化物に対し、リチウムの溶出濃度が高くなること(例えば、7mg/Lから12mg/Lになること)が確認された。
【0059】
図11図12に基づいて溶出の状況を説明する。
【0060】
図11にはホウ素の溶出量の経時変化、図12にはリチウムの溶出量の経時変化を示してある。図の結果は、抑草資材固化物に対し、降雨を模擬した水の滴下を40箇月継続して行い、月相当の相対降水量に対する溶出の状況を検証したものである。
【0061】
図11に示すように、促進材料(粒状のピートモス)の容積比が10.0%の場合(実線で示してある)、促進材料(粒状のピートモス)の容積比が5.0%の場合(図中点線で示してある)のいずれも場合も、ホウ素が継続して溶出され続け、長期にわたり(40箇月相当)所定の溶出濃度(mg/L)が維持されていることが確認された。
【0062】
図12に示すように、促進材料(粒状のピートモス)の容積比が10.0%の場合(実線で示してある)、促進材料(粒状のピートモス)の容積比が5.0%の場合(図中点線で示してある)のいずれも場合も、リチウムが継続して溶出され続け、長期にわたり(40箇月相当)所定の溶出濃度(mg/L)が維持されていることが確認された。
【0063】
アルミニウム、ナトリウムも継続して溶出され続け、長期にわたり(40箇月相当)所定の溶出濃度(mg/L)が維持されていることが確認されている。
【0064】
図13に基づいて抑草資材固化物1の使用の一例を説明する。図13には本発明の一実施例に係る抑草資材固化物1(16、22、27)を送電線の敷地に適用した状況を示してある。
【0065】
送電線は人が入りにくい場所であることが多いので、送電線の敷地は景観の観点から緑化が図られる。緑化のための植物は、成長しすぎると、防犯上、見栄え上、機能上、悪影響を及ぼす虞がある。
【0066】
図に示すように、送電線31の敷地の鉄塔32の基礎部分の周囲には、複数の抑草資材固化物1(16、22、27)が敷き詰められている。鉄塔32の基礎ブロック32aの周囲の所望の範囲には、複数の抑草資材固化物1(16、22、27)が敷き詰められている。また、鉄塔32へのアクセス路33には、複数の抑草資材固化物1(16、22、27)が経路に沿って敷き詰められている。
【0067】
抑草資材固化物1(16、22、27)には植物34の成育を阻害して成長を調節する抑草作用を有する成分元素を含む抑制部材が存在し、成分元素が継続して溶出する。このため、鉄塔32の基礎ブロック32aの周囲、及び、鉄塔32へのアクセス路33は、植物34の形態である、葉、根、茎、の大きさや色、開花時期等が任意に調節され、成長の状態が長期にわたり継続して所望の状態に制御され、所望の大きさや色等の状態がメンテナンスフリーで維持される。
【0068】
抑草資材固化物1(16、22、27)を敷き詰めるだけの簡単な施工で、鉄塔32の基礎ブロック32aの周囲、及び、鉄塔32へのアクセス路33における植物34の形態が調節されて成長の状態が制御され、所望の大きさや色等の状態が、長期にわたり継続して維持される。これにより、植物34の形態(大きさや色、開花時期等)を所定の範囲で維持する(制御する)ことが可能になり、鉄塔32の基礎ブロック32aの周囲、及び、鉄塔32に対して、必要以上に植物が成長することを長期間にわたり抑制することができる。
【0069】
つまり、立ち入りが困難な場所である鉄塔32の基礎ブロック32aの周囲(鉄塔32の足元)の植物を長期間にわたり低草で継続して維持することができ、景観や設備保護に対して有利となる。また、山間部の鉄塔32へのアクセス路33に抑草資材固化物1(16、22、27)を施工し、植物34を長期間にわたり低草で維持するように制御する(調整する)ことで、特別なメンテナンスを要することなく、アクセス路33を長期間にわたり継続して確保することができる。
【0070】
尚、鉄塔32の周囲に抑草資材固化物1(16、22、27)を施工する例を挙げて説明したが、例えば、交叉点の歩道の角部等の縁石部の周縁に、所定形状に加工した抑草資材固化物を敷き詰めることで、縁石部の周囲に成長する植物の成長を長期にわたり継続して抑制することができる。縁石部には、砂や土、落ち葉等が溜まりやすく、堆肥に植物(雑草)成長する虞がある。抑草資材固化物を敷き詰めることで、堆積物が堆積しても縁石部の周囲の植物(雑草)の成長が長期にわたり継続して抑制される。
【0071】
本発明の抑草資材固化物は、所望の場所に設置することで、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を長期にわたり調節し、植物の形態を継続して維持する(制御する)ことが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、抑草資材固化物、抑草資材固化物の製造方法の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1、16、22、27 抑草資材固化物
2 抑草部材
3 促進材料
5 雨水
6 有機酸
7 成分元素
11 泥炭(ピートモス)
12 球体
14、21 型枠
15 石炭灰
25 袋状部材
26 固化物
31 送電線
32 鉄塔
32a 基礎ブロック
33 アクセス路
34 植物
図1
図2
図3
図4
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図13