(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179291
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルの併産方法、エポキシ樹脂組成物の製造方法、炭酸ジフェニルの製造方法、及びポリカーボネート樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 59/02 20060101AFI20241219BHJP
C08G 59/18 20060101ALI20241219BHJP
C07C 68/00 20200101ALI20241219BHJP
C07C 69/96 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C08G59/02
C08G59/18
C07C68/00
C07C69/96 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098025
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深山 航
(72)【発明者】
【氏名】内山 馨
【テーマコード(参考)】
4H006
4J036
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC48
4H006KA74
4J036AD08
4J036BA01
4J036DB06
4J036DB15
4J036DC02
4J036DC21
4J036DC27
4J036DC41
4J036DD02
(57)【要約】
【課題】産業上有用なエポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルを提供できる、新たな製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 ポリカーボネート樹脂からエポキシ樹脂と炭酸ジアルキルとを併産する方法において、
金属水酸化物及びアルコール系化合物の存在下、ポリカーボネート樹脂とエピハロヒドリンとを反応させて、エポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルを得る反応工程、を含む、エポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルの併産方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂からエポキシ樹脂と炭酸ジアルキルとを併産する方法において、
金属水酸化物及びアルコール系化合物の存在下、ポリカーボネート樹脂とエピハロヒドリンとを反応させて、エポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルを得る反応工程、を含む、エポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルの併産方法。
【請求項2】
前記ポリカーボネート樹脂が芳香族ポリカーボネート樹脂である、請求項1に記載のエポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルの併産方法。
【請求項3】
前記反応工程では、前記ポリカーボネート樹脂に含まれるカーボネート基1モル当たり、前記エピハロヒドリンを1~20モル反応させる、請求項1に記載のエポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルの併産方法。
【請求項4】
前記反応工程では、前記ポリカーボネート樹脂に含まれるカーボネート基1モル当たり、前記金属水酸化物を1~10モル用いる、請求項1に記載のエポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルの併産方法。
【請求項5】
前記反応工程では、原料の総重量に対し、水の含有量が10質量%以下である、請求項1に記載のエポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルの併産方法。
【請求項6】
前記反応工程により得られるエポキシ樹脂は、エポキシ当量が、50~10,000g/eqである、請求項1に記載のエポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルの併産方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の併産方法によって得られたエポキシ樹脂に硬化剤を配合する工程、を含む、エポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂100質量部に対し、前記硬化剤0.1~1000質量部を配合する、請求項7に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記硬化剤が、多官能フェノール類、ポリイソシアネート系化合物、アミン系化合物、酸無水物系化合物、イミダゾール系化合物、アミド系化合物、メルカプタン系化合物、カチオン重合開始剤及び有機ホスフィン類からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項7に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項7に記載の製造方法によって得られたエポキシ樹脂組成物を硬化させる工程、を含む、エポキシ樹脂硬化物の製造方法。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか1項に記載の併産方法によって得られた炭酸ジアルキルとフェノールとを反応させる工程、を含む、炭酸ジフェニルの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の製造方法によって得られた炭酸ジフェニルをエステル交換反応により重合させる工程、を含む、ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルの併産方法、得られたエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物の製造方法、得られた炭酸ジアルキルから炭酸ジフェニルを製造する方法、及び得られた炭酸ジフェニルからポリカーボネート樹脂を製造する方法、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、優れた機械的性質、電気的性質、耐熱性、耐寒性および透明性等を有しており、様々な用途に利用されている材料である。その需要は増加しており、それに伴って廃棄されるポリカーボネート樹脂の量も増加している。そのため、廃棄されたポリカーボネート樹脂を再利用することが重要となってきている。
【0003】
このような状況下、芳香族ポリカーボネート樹脂を金属水酸化物水溶液により分解し、芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液を得、該水溶液から芳香族ジヒドロキシ化合物を回収する方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、芳香族ジヒドロキシ化合物の回収に加えて、炭酸ジアルキルも併せて回収する方法についても提案されている(特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006/114893号
【特許文献2】特開平10-259151号公報
【特許文献3】特開2002-212335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1~3のように、従来の廃棄されたポリカーボネート樹脂のケミカルリサイクル技術では、回収されるのはビスフェノールAなどのジヒドロキシ化合物、又はビスフェノールAなどのジヒドロキシ化合物及び炭酸ジアルキルであり、産業上有用な化学製品を得るためには、更に重縮合や官能基化など更なる工程を経る必要があった。
本発明は、産業上有用なエポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルを提供できる、新たな製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記新たな製造方法を提供すべく鋭意検討を行った結果、ポリカーボネート樹脂とエピハロヒドリンとを、金属水酸化物及びアルコール化合物の存在下、分解反応することによって、エポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルを直接製造できることを見出した。
すなわち、以下の発明を含むものである。
【0008】
[1]ポリカーボネート樹脂からエポキシ樹脂と炭酸ジアルキルとを併産する方法において、
金属水酸化物及びアルコール系化合物の存在下、ポリカーボネート樹脂とエピハロヒドリンとを反応させて、エポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルを得る反応工程、を含む、エポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルの併産方法。
[2]前記ポリカーボネート樹脂が芳香族ポリカーボネート樹脂である、[1]に記載のエポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルの併産方法。
[3]前記反応工程では、前記ポリカーボネート樹脂に含まれるカーボネート基1モル当たり、前記エピハロヒドリンを1~20モル反応させる、[1]に記載のエポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルの併産方法。
[4]前記反応工程では、前記ポリカーボネート樹脂に含まれるカーボネート基1モル当たり、前記金属水酸化物を1~10モル用いる、[1]に記載のエポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルの併産方法。
[5]前記反応工程では、原料の総重量に対し、水の含有量が10質量%以下である、[1]に記載のエポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルの併産方法。
[6]前記反応工程により得られるエポキシ樹脂は、エポキシ当量が、50~10,000g/eqである、[1]に記載のエポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルの併産方法。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の併産方法によって得られたエポキシ樹脂に硬化剤を配合する工程、を含む、エポキシ樹脂組成物の製造方法。
[8]前記エポキシ樹脂100質量部に対し、前記硬化剤0.1~1000質量部を配合する、[7]に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法。
[9]前記硬化剤が、多官能フェノール類、ポリイソシアネート系化合物、アミン系化合物、酸無水物系化合物、イミダゾール系化合物、アミド系化合物、メルカプタン系化合物、カチオン重合開始剤及び有機ホスフィン類からなる群から選ばれる少なくとも1つである、[7]に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法。
[10][7]に記載の製造方法によって得られたエポキシ樹脂組成物を硬化させる工程、を含む、エポキシ樹脂硬化物の製造方法。
[11][1]~[6]のいずれかに記載の併産方法によって得られた炭酸ジアルキルとフェノールとを反応させる工程、を含む、炭酸ジフェニルの製造方法。
[12][11]に記載の製造方法によって得られた炭酸ジフェニルをエステル交換反応により重合させる工程、を含む、ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、産業上有用なエポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルを提供できる、新たな製造方法が提供される。また、得られたエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物を製造する方法、得られた炭酸ジアルキルから炭酸ジフェニルを製造する方法、及び得られた炭酸ジフェニルからポリカーボネート樹脂を製造する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
【0011】
本発明の一形態は、ポリカーボネート樹脂からエポキシ樹脂と炭酸ジアルキルとを併産する方法において、
金属酸化物及びアルコール系化合物の存在下、ポリカーボネート樹脂とエピハロヒドリンを反応させて、エポキシ樹脂と炭酸ジアルキルとを得る反応工程、を含む、エポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルの併産方法である。
【0012】
本明細書において「エポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルの併産方法」とは、ポリカーボネート樹脂をケミカルリサイクルすることで、産業上有用なエポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルを併せて回収することを意味する。従来のポリカーボネート樹脂のケミカルリサイクルで回収されていたビスフェノールAなどのジヒドロキシ化合物及び炭酸ジアルキルを得る方法とは、目的物が異なる方法である。
【0013】
<反応工程>
反応工程は、金属水酸化物及びアルコール系化合物の存在下、ポリカーボネート樹脂とエピハロヒドリンを反応させて、エポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルを得る工程である。本工程では、ポリカーボネート樹脂を、金属水酸化物及びアルコール化合物の存在下でエピハロヒドリンと反応させることで、産業上有用なエポキシ樹脂及び炭酸ジアルキルを併せて得ることができるという、極めて効率がよいケミカルリサイクル方法を提供できる。
【0014】
(ポリカーボネート樹脂)
ポリカーボネート樹脂は、カーボネート結合(-O-C(=O)-O-)を含む重合体を含むものである。ポリカーボネート樹脂としては限定されないが、原料の入手性、製造するエポキシ樹脂の有用性の点から、芳香族ポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
【0015】
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂であればよく、該芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールF、ビスフェノールE、ビスフェノールZ、ビスフェノールS、ビスフェノールAD、ビスフェノールアセトフェノン、ビスフェノールトリメチルシクロヘキサン、ビスフェノールフルオレン、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラ-t-ブチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールS等のビスフェノール類;ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジメチルビフェノール、テトラ-t-ブチルビフェノール等のビフェノール類;ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン等のベンゼンジオール類(ここで、「ベンゼンジオール類」とは、1個のベンゼン環を有する化合物であって、当該ベンゼン環に2個の水酸基が直接結合した化合物である。);ジヒドロアントラハイドロキノン等のジヒドロアントラハイドロキノン類;ジヒドロキシジフェニルエーテル等のジヒドロキシジフェニルエーテル類;チオジフェノール等のチオジフェノール類;ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;ジヒドロキシスチルベン等のジヒドロキシスチルベン類;等の各種のフェノール系化合物等が挙げられる。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、これらの芳香族ジヒドロキシ化合物を単独で用いたホモポリマーであってもよく、2種以上を用いたコポリマーであってもよい。
【0016】
上述した芳香族ジヒドロキシ化合物のうち、ビスフェノールA、ビスフェノールCを主構造単位とするものが、反応性、原料の入手のしやすさ、得られるエポキシ樹脂の汎用性の観点から特に好ましい。
これらの芳香族ポリカーボネートは1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
また、ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂単独のものに限定されず、ポリカーボネート以外の樹脂、例えばポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂等の1種又は2種以上を含む組成物であってもよい。ポリカーボネート樹脂以外の樹脂を含む組成物を用いる場合、ポリカーボネート樹脂組成物中にポリカーボネート樹脂を50質量%以上含むものが好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、更により好ましくは90質量%以上である。
【0018】
また、ケミカルリサイクルの観点から、原料ポリカーボネート樹脂は、廃プラスチックとして処理される、使用済のポリカーボネート樹脂(以下、「廃ポリカーボネート」と略記することがある)を含むことが好ましい。原料ポリカーボネート樹脂として廃ポリカーボネートを用いる場合、廃ポリカーボネートは、予め、洗浄、破砕、粉砕など行うことが
好ましい。
また、ポリカーボネート樹脂を含む廃プラスチックを用いる場合、必要に応じて、廃プラスチック中に含まれるポリカーボネート樹脂以外の物質を除去することが好ましい。ポリカーボネート樹脂以外の物質を除去する方法としては、例えば、エピハロヒドリン、及び必要に応じて有機溶媒に廃プラスチックを溶解させて、濾過することにより、ポリカーボネート樹脂以外の物質を除去する方法などが挙げられる。
【0019】
(エピハロヒドリン)
エピハロヒドリンとしては、エピクロロヒドリン、β-メチルエピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン等が挙げられる。これらのうち、エピクロロヒドリンであることが、反応性、原料の入手のしやすさ、得られるエポキシ樹脂の汎用性の観点から特に好ましい。これらのエピハロヒドリンは、1種のみでも複数種を組み合わせて使用することもできる。
【0020】
反応工程におけるエピハロヒドリンの使用量は特に限定されないが、原料ポリカーボネート樹脂中のカーボネート結合1モル当たり、1~20モルであることが好ましく、3~16モルであることがより好ましく、6~14モルであることが特に好ましい。エピハロヒドリンの使用量が上記下限以上であると、架橋反応などの好ましくない副反応を抑制することができる点で好ましい。また、エピハロヒドリンの使用量が上記上限以下であると工業的な生産効率を向上する点で好ましい。
【0021】
(金属水酸化物及びアルコール系化合物)
反応工程は、金属水酸化物及びアルコール系化合物の存在下、実施される。金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物;等が挙げられる。
原料入手の観点から、アルカリ金属水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムであることがより好ましい。
【0022】
金属水酸化物は、アルコール系化合物とともに、金属水酸化物のアルコール溶液として反応に供されてもよい。アルコール系化合物としては、金属水酸化物の溶剤又は分散剤として用いられるものであれば特に限定されず、モノアルコールであってもよく、ジオール系化合物及びグリコール系化合物などのポリオールであってもよいが、モノアルコールであることが好ましく、低級アルコールであることがより好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノールなどを用いることが好ましい。
なお、反応工程で用いる金属水酸化物のアルコール溶液中の金属水酸化物濃度は特に限定されないが、通常5質量%以上50質量%以下である。
【0023】
反応工程において金属水酸化物は、反応時間内に連続的に供給されるが、ポリカーボネート樹脂に含まれるカーボネート基1モル当たり、1~10モルであることが好ましく、2.4~8モルであることがより好ましく、3~6モルであることが特に好ましい。金属水酸化物の使用量が上記下限以上であると、分解反応やエポキシ基の形成反応の反応速度が十分に確保できるため、得られるエポキシ樹脂の品質、生産効率の点から好ましい。また、上記上限以下であると、過剰反応を抑制し、架橋反応などの副反応を抑制できる点から好ましい。
【0024】
反応工程は、反応温度が30~100℃であることが、反応速度を十分に確保することができる点で好ましい。また反応時間は、10~360分であることが好ましく、20~300分であることがより好ましく、30~240分であることが、十分に反応を進行さ
せる点から特に好ましい。
【0025】
反応終了後は、必要に応じて後処理工程を行う。後処理として不溶性の副生塩を濾別して除くか、水洗により除去した後、未反応のエピハロヒドリンを減圧留去して除くと、目的のエポキシ樹脂と炭酸ジアルキルとが得られる。
【0026】
なお、反応工程においては、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミドなどの第四級アンモニウム塩;ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの第三級アミン;2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールなどのイミダゾール類;エチルトリフェニルホスホニウムアイオダイドなどのホスホニウム塩;トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類等の触媒を用いてもよい。
【0027】
また、反応工程においては、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶媒;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒等の不活性な有機溶媒を使用してもよい。
【0028】
さらに、上記のようにして得られたエポキシ樹脂の可鹸化ハロゲン量が多すぎる場合は、再処理して十分に可鹸化ハロゲン量が低下した精製エポキシ樹脂を得ることができる。即ち、反応により得られたその粗製エポキシ樹脂を、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、ジオキサン、メトキシプロパノール、ジメチルスルホキシドなどの不活性な有機溶媒に再溶解しアルカリ金属水酸化物又は金属アルコキシドを固体又は水溶液で加えて約30~120℃、より好ましくは40~110℃、さらに好ましくは50~100℃の温度で0.1~8時間、より好ましくは0.3~7時間、さらに好ましくは0.5~6時間再閉環反応を行った後、水洗等の方法で過剰の金属水酸化物や副性塩を除去し、さらに有機溶媒を減圧留去及び/または水蒸気蒸留を行うと、加水分解性ハロゲン量が低減されたエポキシ樹脂を得ることができる。
この反応温度が低過ぎたり、反応時間が短すぎたりすると再閉環反応が進行しないことがある。また、反応温度が高すぎる、反応時間が長すぎる、と反応は進行するが、高分子量化してエポキシ当量が高くなる、粘度が高くなる、などの不具合を生じる恐れがある。
【0029】
反応工程においては、原料の総重量に対する水の含有量が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが更に好ましく、反応系中に水が存在しないことが特に好ましい。原料の総重量に対する水の量が上限以下であることで、炭酸エステルの加水分解を抑制し、効率的に炭酸ジアルキルを得ることができる。
なお、原料の総重量に対する水の含有量は、反応に使用される全ての原料の総重量に対する、使用される全ての原料に含まれる水の重量割合を示し、反応により生成する水は含まない。
【0030】
(得られるエポキシ樹脂)
反応工程を経て得られるエポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K7236により測定された値で、50~10,000g/eqであることが好ましく、100~5,000g/eqであることがより好ましく、150~3,000g/eqであることが特に好ましい。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量が上記範囲内であることによって、種々の硬化剤で硬化させた際の架橋密度が高まり、耐薬品性などに優れた硬化物が得られる。
【0031】
(得られる炭酸ジアルキル)
反応工程を経て得られる炭酸ジアルキルは、溶融法によるポリカーボネートの製造原料として用いることができる。この炭酸ジアルキルは、蒸留によって回収されることが好ましい。そのため、炭酸ジアルキルのアルキルとしては、炭素数が10以下のアルキルが好ましく、6以下のアルキルがより好ましく、4以下のアルキルが特に好ましい。具体的には、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジブチル、が特に好ましい。
得られた炭酸ジアルキルは、フェノールとエステル交換させて、炭酸ジフェニルに変換し、溶融法によるポリカーボネートの製造原料として用いることが好ましい。炭酸ジフェニルの製造は、炭酸ジアルキルから炭酸ジフェニルを製造する公知の方法(例えば、特開平3-291257号公報など)を利用できる。
例えば、炭酸ジアルキルとフェノールとを原料に用いて、エステル交換反応させて、炭酸アルキルフェニルを得た後、炭酸アルキルフェニルを不均化反応させて、炭酸ジフェニルを得る方法で、炭酸ジフェニルを製造することが出来る。このエステル交換反応に用い足られる触媒としては、炭酸ジフェニルの製造に用いられる公知の触媒を用いることが出来る。例えば、テトラフェノキシチタンなどの有機チタン触媒を用いることが出来る。
【0032】
<エポキシ樹脂組成物>
上記得られたエポキシ樹脂は、硬化剤を配合させることで、エポキシ樹脂組成物を製造することができる。またエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、他のエポキシ化合物、硬化促進剤、その他の成分等を適宜配合することができる。
【0033】
(硬化剤)
硬化剤は、エポキシ化合物のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質である。なお、本明細書においては通常、「硬化促進剤」と呼ばれるものであってもエポキシ化合物のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質であれば、硬化剤とみなすこととする。
【0034】
硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対して好ましくは0.1~1000質量部であり、より好ましくは100質量部以下であり、更に好ましくは80質量部以下であり、特に好ましくは60質量部以下である。
【0035】
エポキシ樹脂組成物中に、上記エポキシ樹脂以外のエポキシ化合物が含まれる場合、硬化剤の配合量は、固形分としての全エポキシ樹脂成分100質量部に対して好ましくは0.1~1000質量部であり、より好ましくは100質量部以下であり、更に好ましくは80質量部以下であり、特に好ましくは60質量部以下である。硬化剤のより好ましい量は、硬化剤の種類に応じてそれぞれ以下に記載する通りである。
【0036】
本明細書において、「固形分」とは溶媒を除いた成分を意味し、固体のエポキシ化合物のみならず、半固形や粘稠な液状物をも含むものとする。また、「全エポキシ樹脂成分」とは、上記エポキシ樹脂と後述する他のエポキシ樹脂との合計を意味する。
【0037】
エポキシ樹脂組成物の製造方法において、硬化剤としては多官能フェノール類、ポリイソシアネート系化合物、アミン系化合物、酸無水物系化合物、イミダゾール系化合物、アミド系化合物、カチオン重合開始剤及び有機ホスフィン類からなる群のうちの少なくとも1つを用いることが好ましい。
【0038】
多官能フェノール類の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールB、ビスフェノールAD、ビスフェノールZ、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類、4,4’-ビフェノール、3,3’,5,5’-テ
トラメチル-4,4’-ビフェノール等のビフェノール類;カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ジヒドロキシナフタレン類;及びこれらの化合物の芳香環に結合した水素原子がハロゲン基、アルキル基、アリール基、エーテル基、エステル基、硫黄、リン、珪素等のヘテロ元素を含む有機置換基等の非妨害性置換基で置換されたもの等が挙げられる。
更に、これらのフェノール類やフェノール、クレゾール、アルキルフェノール等の単官能フェノール類とアルデヒド類の重縮合物であるノボラック類、レゾール類等が挙げられる。
【0039】
ポリイソシアネート系化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等のポリイソシアネート化合物が挙げられる。更に、これらのポリイソシアネート化合物と、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、水等の活性水素原子を少なくとも2個有する化合物との反応により得られるポリイソシアネート化合物、又は前記のポリイソシアネート化合物の3~5量体等を挙げることができる。
【0040】
アミン系化合物の例としては、脂肪族の一級、二級、三級アミン、芳香族の一級、二級、三級アミン、環状アミン、グアニジン類、尿素誘導体等があり、具体的には、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、メタキシレンジアミン、ジシアンジアミド、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-5-ノネン、ジメチル尿素、グアニル尿素等が挙げられる。
【0041】
酸無水物系化合物の例としては、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸と不飽和化合物の縮合物等が挙げられる。
【0042】
イミダゾール系化合物の例としては、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール等が挙げられる。なお、イミダゾール系化合物は後述する硬化促進剤としての機能も果たすが、本発明においては硬化剤に分類するものとする。
【0043】
アミド系化合物の例としては、ジシアンジアミド及びその誘導体、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0044】
カチオン重合開始剤は、熱又は活性エネルギー線照射によってカチオンを発生するものであり、芳香族オニウム塩等が挙げられる。具体的には、SbF6
-、BF4
-、AsF6
-、PF6
-、CF3SO3
2-、B(C6F5)4
-等のアニオン成分とヨウ素、硫黄、窒素、リン等の原子を含む芳香族カチオン成分とからなる化合物等が挙げられる。特に、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルフォニウム塩が好ましい。
【0045】
有機ホスフィン類としては、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等が例示され、ホスホニウム塩としては、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレート等が例示され、テトラフェニルボロン塩としては、2-エチル-4-メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N-メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等が例示される。
【0046】
上記の硬化剤は各々1種を用いてもよく、同種又は異種のものを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0047】
硬化剤として多官能フェノール類、アミン系化合物、酸無水物系化合物を用いる場合は、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ基に対する硬化剤中の官能基(多官能フェノール類の水酸基、アミン系化合物のアミノ基又は酸無水物系化合物の酸無水物基)の当量比で0.8~1.5の範囲となるように用いることが好ましい。ポリイソシアネート系化合物を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の水酸基数に対してポリイソシアネート系化合物中のイソシアネート基数が、当量比で1:0.01~1:1.5の範囲で用いることが好ましい。イミダゾール系化合物を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ樹脂成分100質量部に対して0.5~10質量部の範囲で用いることが好ましい。アミド系化合物を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ樹脂成分とアミド系化合物との合計量に対して0.1~20質量%の範囲で用いることが好ましい。カチオン重合開始剤を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ樹脂成分100質量部に対し、0.01~15質量部の範囲で用いることが好ましい。有機ホスフィン類を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ樹脂成分と有機ホスフィン類との合計量に対して0.1~20質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0048】
エポキシ樹脂組成物には以上に挙げた硬化剤の他、例えば、メルカプタン系化合物、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体等も硬化剤として用いることができる。これらの硬化剤は1種のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
(他のエポキシ樹脂)
エポキシ樹脂組成物の製造方法では、上記エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂(本明細書において、「他のエポキシ樹脂」と称することがある。)を用いることができる。他のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、その他の多官能フェノール型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、上記芳香族エポキシ樹脂の芳香環を水素添加したエポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂が挙げられる。以上に挙げた他のエポキシ樹脂は1種のみで用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
エポキシ樹脂組成物が、上記エポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂とを含有する場合、エポキシ樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ樹脂成分中の他のエポキシ樹脂の割合は、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、一方、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下である。他のエポキシ樹脂の割合が上記下限値以上であることにより、他のエポキシ樹脂を配合することによる物性向上効果を十分に得ることができる。一方、他のエポキシ樹脂の割合が前記上限値以下であることにより、上記エポキシ樹脂によるケミカルリサイクル性の効果を十分に得ることができる。
【0051】
エポキシ樹脂組成物には、塗膜形成時等の取り扱い時に、エポキシ樹脂組成物の粘度を適度に調整するために溶剤を配合し、希釈してもよい。溶剤は、エポキシ樹脂組成物の成形における取り扱い性、作業性を確保するために用いられ、その使用量には特に制限がない。なお、前述の通り、本発明においては「溶剤」という語と「溶媒」という語をその使
用形態により区別して用いるが、それぞれ独立して同種のものを用いても異なるものを用いてもよい。
【0052】
溶剤としては、エポキシ樹脂の製造に用いる反応溶媒として例示した有機溶媒の1種又は2種以上を用いることができる。
【0053】
エポキシ樹脂組成物には、以上に挙げた成分の他にその他の成分を含有することができる。その他の成分としては例えば、硬化促進剤(ただし、前記硬化剤に該当するものを除く。)、カップリング剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、反応性希釈剤、顔料、無機充填材、有機充填材等が挙げられる。以上に挙げたその他の成分はエポキシ樹脂組成物の所望の物性により適宜組み合わせて用いることができる。
【0054】
〔硬化物〕
上記エポキシ樹脂組成物を硬化させることにより、硬化物を得ることができる。ここでいう「硬化」とは熱及び/又は光等によりエポキシ化合物を意図的に硬化させることを意味するものであり、その硬化の程度は所望の物性、用途により制御すればよい。
【0055】
硬化物とする際のエポキシ樹脂組成物の硬化方法は、エポキシ樹脂組成物中の配合成分や配合量、配合物の形状によっても異なるが、通常、50~200℃で5秒~180分の加熱条件が挙げられる。この加熱は50~160℃で5秒~30分の一次加熱と、一次加熱温度よりも40~120℃高い90~200℃で1分~150分の二次加熱との二段処理で行うことが、硬化不良を少なくする点で好ましい。
【0056】
硬化物を半硬化物として製造する際には、加熱等により形状が保てる程度にエポキシ樹脂組成物の硬化反応を進行させればよい。エポキシ樹脂組成物が溶剤を含んでいる場合には、加熱、減圧、風乾等の手法で大部分の溶剤を除去するが、半硬化物中に5質量%以下の溶剤を残留させてもよい。
【0057】
上記方法でエポキシ樹脂とともに得られた炭酸ジアルキルは、フェノールと反応させることで、炭酸ジフェニルとすることができる。また、得られた炭酸ジフェニルは、エステル交換反応により重合させることで、ポリカーボネート樹脂とすることができる。
上記炭酸ジフェニルの製造、及びポリカーボネート樹脂の製造は、常法に従い実施することができる。
【実施例0058】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
なお、以下の実施例で得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K 7236に基づいて測定した。
【0059】
[分析]
エポキシ樹脂の生成確認は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
・装置:JASCO社製RHPLC、JASCO社製03150-3M Unifinepak C18 3μm 150mm×3.0mmID
・方式:グラジェント法
・分析温度:40℃
・溶離液組成:
A液 アセトニトリル
B液 蒸留水
分析時間0分では、A液:B液=30:70(体積比、以下同様。)、分析時間0~25分で徐々にA液:B液=100:0にした。
・流速:0.40mL/分
・検出波長:280nm
【0060】
炭酸ジアルキルの生成確認及び定量は、備えたガスクロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
・装置:AGILENT TECHNOLOGIES社製 7820GC SYSTEM
AGILENT HP-1 30m×0.25mm 0.25μm
・検出方法:FID
・気化室温度:230℃
・検出器温度:300℃
・分析時間0分から5分では、カラム温度を50℃に保ち、分析時間5~30分はカラム温度を280℃まで徐々に昇温し、分析時間30分から40分はカラム温度を280℃に維持した。
【0061】
[テトラフェノキシチタンの製造方法]
(参考例1)
受器および留出管を備えた500mLの三口フラスコに、フェノール200重量部とトルエン100重量部を仕込み、フラスコ内を窒素流通置換した。フラスコを100℃オイルバスに浸漬し、均一溶液を得た。そこへ、テトライソプロボキシチタン57重量部を添加した。フラスコのボトムの内温を100℃に保持したところ、生成したイソプロピルアルコールの留出が開始した。その後、内温を徐々に116℃まで昇温して、イソプロピルアルコールとトルエンの混合物である留出液80重量部を留出させた。得られた釜残に、ヘキサン50重量部を加えた後、室温まで冷却して、晶析させた。析出した赤色結晶を濾過することにより取得し、オイルバスを備えたロータリーエバポレータでオイルバス温度140℃、圧力50Torrで乾燥させ、テトラフェノキシチタン60重量部を得た。
【0062】
[エポキシ樹脂の製造・評価]
(実施例1)
温度計、滴下漏斗、撹拌機、窒素導入管、冷却管を有するセパラブルフラスコ反応器に、7027J(三菱ケミカル製 ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂)75重量部、エピクロルヒドリン327重量部(ポリカーボネート中カーボネート結合1モル当たり12モル)を仕込み、100℃に加温しポリカーボネート樹脂を溶解した後に、窒素ガス雰囲気下、約40℃まで放冷した。その後、エタノール(ナカライテスク 試薬特級 ≧99.5%)349重量部に対し、水酸化カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製 試薬特級 純度85.0+%、水分量14%)47重量部(ポリカーボネート中カーボネート結合1モル当たり2.4モル)を溶解させて調整した、10質量%エタノール性水酸化カリウム溶液を連続的に滴下しつつ65℃まで昇温し、120分反応を行った。使用原料の総重量に対する水の含有量は、0.8%であった。その後水230重量部を投入し、ろ紙で濾過することで不溶分を取り除いた後、油水分離した水層を分離することで樹脂溶液から反応で生成した塩、残存水酸化カリウム等を除去し、反応を停止した。
【0063】
得られた反応液を徐々に昇温、系内を減圧していき、150℃、5mmHg到達時から30分保持し、エタノール、過剰のエピクロロヒドリン、ジエチルカーボネートを完全に系外に留去した。留去物は757重量部であった。その後系内に窒素を封入しながら系内を常圧に戻し、メチルイソブチルケトン150重量部を投入し、粗樹脂のメチルイソブチ
ルケトン溶液を得た。この溶液に48%水酸化ナトリウム水溶液14重量部を投入し、65℃で1時間反応させた後に水100重量部を投入して水層を分離し、その後水100重量部で除去した水層が中性になるまで数回水洗を繰り返し、エポキシ樹脂のメチルイソブチルケトン溶液を得た。この溶液を加温・減圧下でメチルイソブチルケトンを留去していき、150℃、5mmHg到達から30分間保持してメチルイソブチルケトンを完全に除去し、液状のエポキシ樹脂を得た。得られたエポキシ樹脂は、エポキシ当量184g/eqであった。
【0064】
(実施例2)
実施例1で得られた留去物の1部を抜き出し、ガスクロマトグラフィーを測定したところ、エタノール44質量%、炭酸ジエチル3質量%、エピクロロヒドリン35質量%であった(残りの成分は水と推定される)。
得られた留分750重量部を、スルーザー社ラボパッキン(規則充填物)精留塔、留出管、還流タイマー、圧力調整機、温度計、攪拌機及びオイルバスを備えた蒸留塔装置に入れた。まず、常圧のまま110℃まで内温を昇温させて、全留出の条件でエタノール及び水を留去させた。次に常圧及び110℃のままで全還流運転した後、圧力を66kPaと
して、塔頂温度と留分のガスクロマトグラフィーの結果を見ながら還流比を2から徐々に下げて、エピクロロヒドリンを主成分とする留分を得た後、本留として純度99質量%以上の炭酸ジエチル15重量部を得た。
【0065】
得られた炭酸ジエチル15重量部、フェノール100重量部及び参考例1で得られたテトラフェノキシチタン1重量部を、リボンヒーターで保温可能な留出管、圧力調整機、温度計、攪拌機及びオイルバスを備えた蒸留塔装置に入れた。その後、内温を100℃にし、エタノールを留去した。次に、内温を100℃から200℃、圧力を常圧から徐々に30kPaまで下げることで、炭酸ジエチル及びフェノールを留去させて、釜残を得た。復圧後、得られた釜残に10質量%の水酸化ナトリウム水溶液を加え、圧力を常圧から徐々に1kPaまで下げることで、水及び炭酸エチルフェニルを留去させた後、本留として炭酸ジフェニル3重量部を留出させ、得た。
【0066】
(実施例3)
撹拌機及び留出管を備えた内容量45mLのガラス製反応槽に、ビスフェノールA(三菱ケミカルグループ製)10重量部、実施例2で得られた炭酸ジフェニル10重量部及び400質量ppmの炭酸セシウム水溶液18×10-6重量部を入れた。該ガラス製反応槽を約100Paに減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応槽の内部を窒素に置換した。その後、該反応槽を220℃のオイルバスに浸漬させ、内容物を溶解した。
撹拌機の回転数を毎分100回とし、反応槽内のビスフェノールAと炭酸ジフェニルのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて反応槽内の圧力を、絶対圧力で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。
【0067】
続いて反応槽内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールを更に留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。
その後、反応槽外部温度を290℃に昇温すると共に、40分間かけて反応槽内圧力を絶対圧力で13.3kPaから399Paまで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。
その後、反応槽の絶対圧力を30Paまで減圧し、重縮合反応を行った。反応槽の撹拌機が予め定めた所定の撹拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。290℃に昇温してから重合を終了するまでの時間は120分であった。
次いで、反応槽を窒素により絶対圧力で101.3kPaに復圧した後、ゲージ圧力で0.2MPaまで昇圧し、反応槽からポリカーボネート樹脂を抜出し、ポリカーボネート
樹脂を得た。