(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179298
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】徐放性組成物及び医薬製剤、成形体の製造方法、並びに徐放性組成物の溶出速度の抑制方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/34 20170101AFI20241219BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61K47/34
A61K9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098038
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須賀 敬太
(72)【発明者】
【氏名】木村 彰
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA37
4C076AA94
4C076BB01
4C076DD09M
4C076EE23M
4C076FF31
4C076GG14
(57)【要約】
【課題】溶出速度を抑制することができる徐放性組成物及び医薬製剤、成形体の製造方法、並びに徐放性組成物の溶出速度の抑制方法を提供する。
【解決手段】本発明の徐放性組成物は、ポリアルキレンオキシドを含有する徐放性組成物であって、前記徐放性組成物は、所定の測定方法によって測定される密度d´が1.10mg/mm3より高く、前記徐放性組成物は、所定の測定方法によって測定される弾性回復率が40.0%未満である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルキレンオキシドを含有する徐放性組成物であって、
前記徐放性組成物は、下記密度の測定方法によって測定される密度d´が1.10mg/mm3より高く、
前記徐放性組成物は、下記弾性回復率の測定方法によって測定される弾性回復率が40.0%未満である
徐放性組成物。
<密度の測定方法>
臼と杵を有する打錠機を用いて、前記臼に入れた前記徐放性組成物の粉末を、7kNにて圧縮成形して、前記徐放性組成物を含有し球冠円柱体の形状を有する成形体1を作製する。(ここで、前記球冠円柱体は、円柱部とその両方の底面に戴置されている球冠部とを有し、前記円柱部の底面の直径(D)および両方の前記球冠部の底面の直径はいずれも10mmであり、両方の前記球冠部の高さ(h)はいずれも1.34mmであり、両方の前記球冠部の体積(V1)は53.87mm3であり、両方の前記球冠部の球面はいずれも、半径が10mmである球の球面の一部であり、前記臼は、底部が一つの前記球冠部を形成する型の形状に変形された直径(D)10mmの円筒状の孔を有し、前記杵は、先端が一つの前記球冠部を形成する型の形状に変形された直径(D)10mmの円柱状の棒である。)
前記成形体1の高さT(mm)および重量W(mg)を測定し、下記式(4)および(6)により前記成形体1の密度d(mg/mm3)を算出する。
V2=π×{D/2}2×(T-2×h) ・・・(4)
d=W/{2×V1+V2} ・・・(6)
(式(4)および(6)において、D=10、h=1.34、V1=53.87である。)
前記成形体1を無加圧状態で1時間以上放置することで、成形体2を得て、前記成形体2の高さT´(mm)を測定し、下記式(5)および(7)により前記成形体2の密度(d´)を算出し、これを前記密度d´(mg/mm3)とする。
V2´=π×(D/2)2×(T´-2×h) ・・・(5)
d´=W/{2×V1+V2´} ・・・(7)
(式(5)および(7)において、D=10、h=1.34、V1=53.87である。)
<弾性回復率の測定方法>
下記式(8)により弾性回復率を算出する。
弾性回復率={1-(d´/d)}×100 ・・・(8)
【請求項2】
請求項1記載の徐放性組成物の圧縮成形体からなる医薬製剤。
【請求項3】
請求項1に記載の徐放性組成物を圧縮成形することで成形体を得る工程を備える成形体の製造方法。
【請求項4】
成形体が医薬製剤である請求項3記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載の徐放性組成物を圧縮成形することで得られる成形体を用いる徐放性組成物の溶出速度の抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、徐放性組成物及び医薬製剤、成形体の製造方法、並びに徐放性組成物の溶出速度の抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬製剤においては、マトリックス型徐放錠等の各種徐放性製剤の研究開発が盛んに進められてきている。
斯かる製剤にはポリマーを用いることが有効であると知られている。このようなポリマーは通常、吸水することによってゲル化し、徐々に溶解する性質を有する。この観点から、製剤に用いられるポリマーとして、ポリエチレンオキシドに代表されるポリアルキレンオキシドが広く使用されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO2010/038690号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ポリアルキレンオキシドを用いた従前の徐放性組成物においては、組成物中のポリアルキレンオキシドが溶出しやすいこと(すなわち、溶出が速いこと)から、医薬製剤の有効成分の放出も早くなり、所望の効能を発揮しにくいことがあると考えられる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、溶出速度を抑制できる徐放性組成物及び医薬製剤、溶出速度を抑制できる徐放性組成物の成形体の製造方法、並びに徐放性組成物の溶出速度を抑制する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
ポリアルキレンオキシドを含有する徐放性組成物であって、
前記徐放性組成物は、下記密度の測定方法によって測定される密度d´が1.10mg/mm3より高く、
前記徐放性組成物は、下記弾性回復率の測定方法によって測定される弾性回復率が40.0%未満である
徐放性組成物。
<密度の測定方法>
臼と杵を有する打錠機を用いて、前記臼に入れた前記徐放性組成物の粉末を、7kNにて圧縮成形して、前記徐放性組成物を含有し球冠円柱体の形状を有する成形体1を作製する。(ここで、前記球冠円柱体は、円柱部とその両方の底面に戴置されている球冠部とを有し、前記円柱部の底面の直径(D)および両方の前記球冠部の底面の直径はいずれも10mmであり、両方の前記球冠部の高さ(h)はいずれも1.34mmであり、両方の前記球冠部の体積(V1)は53.87mm3であり、両方の前記球冠部の球面はいずれも、半径が10mmである球の球面の一部であり、前記臼は、底部が一つの前記球冠部を形成する型の形状に変形された直径(D)10mmの円筒状の孔を有し、前記杵は、先端が一つの前記球冠部を形成する型の形状に変形された直径(D)10mmの円柱状の棒である。)
前記成形体1の高さT(mm)および重量W(mg)を測定し、下記式(4)および(6)により前記成形体1の密度d(mg/mm3)を算出する。
V2=π×{D/2}2×(T-2×h) ・・・(4)
d=W/{2×V1+V2} ・・・(6)
(式(4)および(6)において、D=10、h=1.34、V1=53.87である。)
前記成形体1を無加圧状態で1時間以上放置することで、成形体2を得て、前記成形体2の高さT´(mm)を測定し、下記式(5)および(7)により前記成形体2の密度(d´)を算出し、これを前記密度d´(mg/mm3)とする。
V2´=π×(D/2)2×(T´-2×h) ・・・(5)
d´=W/{2×V1+V2´} ・・・(7)
(式(5)および(7)において、D=10、h=1.34、V1=53.87である。)
<弾性回復率の測定方法>
下記式(8)により弾性回復率を算出する。
弾性回復率={1-(d´/d)}×100 ・・・(8)
項2
項1記載の徐放性組成物の圧縮成形体からなる医薬製剤。
項3
項1に記載の徐放性組成物を圧縮成形することで成形体を得る工程を備える、成形体の製造方法。
項4
成形体が医薬製剤である項3記載の方法。
項5
項1に記載の徐放性組成物を圧縮成形することで得られる成形体を用いる、徐放性組成物の溶出速度の抑制方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の徐放性組成物は、その溶出速度を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】(a)は成形体1を製造するために使用する杵の先端部の断面図、(b)は成形体1を製造するために使用する臼の底部の断面図である。
【
図4】成形体1を製造するために使用する圧縮試験機の概略図であって、圧盤と、錠剤成形に用いる杵及び臼との断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有する」及び「含む」なる表現については、「含有する」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0010】
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値又は実施例から一義的に導き出せる値に置き換えてもよい。また、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
【0011】
本発明の徐放性組成物は、ポリアルキレンオキシドを含有する徐放性組成物であって、前記徐放性組成物は、後記する<密度の測定方法>によって測定される密度d´が1.10mg/mm3より高く、前記徐放性組成物は、後記する<弾性回復率の測定方法>によって測定される弾性回復率が40.0%未満である。
【0012】
これにより、本発明の徐放性組成物は、製剤等の成形体となった場合であっても、その溶出速度が抑制される。よって、本発明の徐放性組成物は、医薬製剤の有効成分の放出速度の抑制効果に富み、徐放性製剤に好適である。
【0013】
本発明の徐放性組成物において、「密度d´が1.10mg/mm3より高い」とは、密度d´が1.10mg/mm3を超過することを意味し、すなわち、1.10mg/mm3は含まない。密度d´が1.10mg/mm3以下である場合、徐放性組成物が溶出しやすくなり、その溶出速度を抑制しにくい。
【0014】
密度d´は、薬の有効成分の放出性能の観点から、1.11mg/mm3以上であることが好ましく、また、1.20mg/mm3以下であることが好ましく、1.15mg/mm3以下であることがより好ましい。
【0015】
本発明の徐放性組成物は、前記弾性回復率が40.0%以上になると、ポリアルキレンオキシドが溶出しやすくなり、溶出速度を抑制しにくい。
【0016】
弾性回復率は、39.8%以下であることが好ましく、39.7%以下であることがより好ましい。また弾性回復率は、30%以上であることが好ましく、33%以上であることがより好ましく、35%以上であることがさらに好ましく、38%以上であることが特に好ましい。
【0017】
ここで、本発明の徐放性組成物において、密度の測定方法及び前記弾性回復率の測定方法は以下の通りである。
【0018】
<密度の測定方法>
臼と杵を有する打錠機を用いて、前記臼に入れた前記徐放性組成物の粉末を、7kNにて圧縮成形して、前記徐放性組成物を含有し球冠円柱体の形状を有する成形体1を作製する。(ここで、前記球冠円柱体は、円柱部とその両方の底面に戴置されている球冠部とを有し、前記円柱部の底面の直径(D)および両方の前記球冠部の底面の直径はいずれも10mmであり、両方の前記球冠部の高さ(h)はいずれも1.34mmであり、両方の前記球冠部の体積(V1)は53.87mm3であり、両方の前記球冠部の球面はいずれも、半径が10mmである球の球面の一部であり、前記臼は、底部が一つの前記球冠部を形成する型の形状に変形された直径(D)10mmの円筒状の孔を有し、前記杵は、先端が一つの前記球冠部を形成する型の形状に変形された直径(D)10mmの円柱状の棒である。)
前記成形体1の高さT(mm)および重量W(mg)を測定し、下記式(4)および(6)により前記成形体1の密度d(mg/mm3)を算出する。
V2=π×{D/2}2×(T-2×h) ・・・(4)
d=W/{2×V1+V2} ・・・(6)
(式(4)および(6)において、D=10、h=1.34、V1=53.87である。)
前記成形体1を無加圧状態で1時間以上放置することで、成形体2を得て、前記成形体2の高さT´(mm)を測定し、下記式(5)および(7)により前記成形体2の密度(d´)を算出し、これを前記密度d´(mg/mm3)とする。
V2´=π×(D/2)2×(T´-2×h) ・・・(5)
d´=W/{2×V1+V2´} ・・・(7)
(式(5)および(7)において、D=10、h=1.34、V1=53.87である。
【0019】
<弾性回復率の測定方法>
下記式(8)により弾性回復率を算出する。
弾性回復率={1-(d´/d)}×100 ・・・(8)
【0020】
<本発明の徐放性組成物の密度及び弾性回復率>
以下、
図1~
図4を参照しつつ、前述の成形体1及び成形体2並びにそれらの作製方法を詳述する。
【0021】
図1及び
図2はそれぞれ、成形体1及び成形体2の概略を示す断面図である。
【0022】
図1に示すように、成形体1は、球冠円柱体の形状を有するものであって、円柱部とその両方の底面に載置されている球冠部とを有する。円柱部の両方の底面とは、円柱部における平面視円形状である2つの面(上面及び下面)を意味する。また、球冠部とは、平面により切断された球の一部分を意味する。成形体1は、円柱部の両方の底面に一対の球冠部を有する。一対の球冠部はいずれも円柱部の上面又は下面に直接設けられている。一対の球冠部はいずれも高さ(
図1における「h」)が1.34mmであり、球冠部の体積V1は、53.87mm
3である。成形体1において、一対の球冠部は同形状である。
【0023】
成形体1は、前述のように、徐放性組成物を用いて成形されるものである。具体的には、臼と杵を有する打錠機を用いて、前記臼に入れた徐放性組成物の粉末を、圧縮成形して、成形体1を得る。
【0024】
図3は、成形体1を得るために使用する杵及び臼の概略図であって、
図3(a)は成形体1を製造するために使用する杵の先端部の断面図、(b)は成形体1を製造するために使用する臼の底部の断面図である。
【0025】
図3(a)において、Dは円柱状の棒からなる杵の直径であり、本発明ではD=10mmである。すなわち、本発明では、直径が10mmの円柱状の棒からなる杵を使用する。また、杵の先端は、
図3(a)に示すように凹球面を有しており、半径r(r=10mm)の球面の一部をなすように該凹球面が形成されている。この凹球面が、成形体1が有する球冠部の一つを形成するための型となる。
【0026】
図3(b)において、Dは臼を構成する円筒状の孔の直径であり、本発明ではD=10mmである。すなわち、本発明では、直径(内径)が10mmの円筒状の孔を有する臼を使用する。また、臼の底部は、
図3(b)に示すように、凹球面を有しており、半径r(r=10mm)の球面の一部をなすように該凹球面が形成されている。この凹球面が、成形体1が有するもう一つの球冠部を形成するための型となる。
【0027】
成形体1を得るために使用する臼及び杵は、市橋精機製のオートグラフ用汎用臼杵(φ10、R10)を使用する。
【0028】
成形体1は、上記臼及び杵を用いて下記手順により作製する。まず、本発明の徐放性組成物の粉末を、前記臼に投入し、次いで、前記杵により打錠することで圧縮成形を行う。臼に投入する徐放性組成物の量は、成形体1の高さTが2.7mm程度になる量であり、通常は200mg程度である。この打錠による圧縮成形では、打錠機を用い、7kNの圧力で加圧圧縮を行う。打錠機の速度は、通常、20mm/minである。加圧時間は100msecが好ましい。
【0029】
図4は、成形体1を製造するために使用する圧縮成形機の概略図である。当該圧縮試験機は、上下に設けられる一対の固定式圧盤20,30と、錠剤成形に用いる杵40及び臼50とを備える。圧縮成形機としては、市販の装置を使用することができ、例えば、市橋精機製HANDTABシリーズやAUTOTABシリーズ、フェッテ社製FEシリーズやiシリーズ、菊水製作所製AQUARIUSシリーズやPEGASUSシリーズ、VELAシリーズ、畑鐵工所製GSシリーズが挙げられる。圧縮試験機も、圧縮成形に用いることができる。圧縮試験機の例としては特に限定されず、例えば、島津製作所製オートグラフシリーズ、前川試験機製作所製万能試験機MRシリーズ、エー・アンド・デイ製天使論万能材料試験機RTFシリーズ・RTGシリーズ、ツウィック・ロエル・グループ製プロラインシリーズなどが使用できる。
【0030】
上記のように、本発明の徐放性組成物を圧縮成形することで、前記成形体1が得られる。
【0031】
図1において、Dは、成形体1中の円柱部の直径である。すなわち、Dは、成形体1中の円柱部の上面又は底面の直径であり、10mmである。
【0032】
図1において、Tは成形体1の高さ(mm)であり、一対の球冠部の頂上間の最長距離を示すものである。Tは、圧縮成形機が通常有する上下の圧盤間の距離や、臼と杵のサイズ等から、間接的に容易に測定することができる。
【0033】
図1において、h(mm)は前述のように、成形体1の一対の球冠部の高さであり、下記式(2)により算出することができる。
h=r-{r
2-(D/2)
2}
1/2 ・・・(2)
(2)式においてD及びrは前述と同じである。よって、hは1.34mmである。
【0034】
図1において、V1は成形体1の球冠部の体積であって、下記式(3)により算出できる。
V1=π×(h
2r-h
3/3) ・・・(3)
(3)式において、h及びrは前述と同じである。よって、V1は53.87mm
3である。成形体1の一対の球冠部の体積はいずれも同じ値である。
【0035】
図1において、V2は成形体1の円柱部(すなわち、成形体1の一対の球冠部を除いた部分)の体積であり、下記式(4)により算出する。
V2=π×{D/2}
2×(T-2×h) ・・・(4)
(4)式において、D、T及びhは前述と同じである。
【0036】
成形体1の密度d(mg/mm3)は、電子天秤(例えば、HR-200、エー・アンド・デイ製)で測定した成形体1の重量W(mg)に基づき、下記式(6)により算出することができる。
d=W/{2×V1+V2} ‥(6)
【0037】
上記のようにして得られた成形体1を、無加圧状態(室温、例えば、20~30℃、湿度20%以下)で1時間以上(例えば、2時間)放置する。これにより、
図2に示される成形体2が得られる。
【0038】
上記のようにして得られる成形体2は、成形体1よりも高さ方向(上下の球冠部の中心同士を結ぶ方向)に伸長し得る。
【0039】
図2において、Dは、成形体2中の円柱部の直径である。すなわち、
図2のDは、成形体2中の円柱部の上面又は底面の直径であり、10mmである。
【0040】
図2において、T´(mm)は成形体2の高さであり、一対の球冠部の頂上間の最長距離を示すものである。T´は市販の測定器(例えば、ダイヤルシクネスゲージ(新潟精機製))を用いて測定できる。
【0041】
図2において、h(mm)は成形体2の一対の球冠部の高さであり、本発明では、成形体1のh(
図1)と同じ値とする。
【0042】
図2において、V1は成形体2の球冠部の体積であって、本発明では、成形体1のV1(
図1)と同じ値とする。成形体2の一対の球冠部の体積はいずれも同じ値である。
【0043】
図2において、V2´は成形体2の円柱部(すなわち、成形体2の一対の球冠部を除いた部分)の体積であり、下記式(5)により算出することができる。
V2´=π×(D/2)
2×(T´-2×h) ・・・(5)
(5)式において、D=10、h=1.34である。
【0044】
成形体2の密度d´は、下記(7)式により算出することができる。
d´=W/{2×V1+V2´} ・・・(7)
(7)式において、V1=53.87である。
【0045】
本発明の徐放性組成物の弾性回復率は、下記(8)式から算出することができる。(8)式からわかるように、弾性回復率とは、成形体1の密度dに対する成形体2の密度d´の増加率を意味するものである。
弾性回復率={1-(d´/d)}×100 ・・・(8)
【0046】
<ポリアルキレンオキシド>
本発明の徐放性組成物は、ポリアルキレンオキシドを必須の成分として含む。ポリアルキレンオキシドは、アルキレンオキシド単位を有する重合体である。また、異種のアルキレンオキシド同士を共重合させて得たポリアルキレンオキシドや、アルキレンオキシドと他のモノマーとを共重合させて得たポリアルキレンオキシド、複数種のアルキレンオキシドと他のモノマーとを共重合させて得たポリアルキレンオキシドも本発明に用いることができる。
【0047】
ポリアルキレンオキシドとして、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシドがある。これらのポリアルキレンオキシドの中でも、本発明においては、ポリエチレンオキシドが特に好ましい。
【0048】
ポリアルキレンオキシドは公知の方法により製造することができる。その製造方法はアルカリ若しくは触媒の存在下でモノマーを重合または共重合させる方法が挙げられる。ポリアルキレンオキシドの製造で使用する触媒の種類としては、亜鉛等の金属触媒を挙げることができる。触媒の使用量も、公知のポリアルキレンオキシドの製造方法と同様の範囲とすることができる。
【0049】
アルキレンオキシドの重合反応を行うにあたって、連鎖移動剤を使用することもできる。これにより、ポリアルキレンオキシドの分子量が調節されやすい。連鎖移動剤の種類はアルキレンオキシドの重合反応で使用され得る公知の連鎖移動剤を広く使用することができる。例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール等の炭素数1~5のアルコールを連鎖移動剤として挙げることができる。連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は例えば、アルキレンオキシドに対して0.002~0.3モル%とすることができる。
【0050】
アルキレンオキシドの重合反応を行うにあたって、必要に応じて溶媒を使用することができ、例えば、公知のポリアルキレンオキシドの製造方法で使用されている溶媒を広く使用することができる。アルキレンオキシドの重合反応の温度等の条件は公知の条件と同様とすることができる。
【0051】
上記重合反応によって得られたポリアルキレンオキシドには、必要に応じて、活性エネルギー線を照射することができる。これにより、ポリアルキレンオキシドが分解し、分子量を所望の範囲に調節することができる。活性エネルギー線としては、ガンマ線等の放射線、紫外線、X線、イオン線等が挙げられ、分子量を調節しやすい点で、ガンマ線であることが好ましい。
【0052】
活性エネルギー線を照射する条件は、ポリアルキレンオキシドの種類に応じて0.1~20.0kGyの範囲でガンマ線を照射することができ、比較的小さい放射線量のガンマ線の照射で十分である場合は、例えば、0.3~5.0kGy、好ましくは0.5~3.0kGyとすることができる。
【0053】
本発明に用いられるポリアルキレンオキシドの質量平均分子量は通常、100,000g/mol以上であり、400,000~10,000,000g/molであることが好ましく、600,000~4,000,000g/molであることがより好ましく,900,000~2,200,000g/molであることが特に好ましい。
【0054】
本発明に用いられるポリアルキレンオキシドは、粒子状であることが好ましく、その粒度分布は、徐放性組成物の成形性の観点から、180μm以上の割合が50%未満であることができ、150μm以下の割合が50%以上であることが好ましく、180μm以上の割合が40%未満であり、150μm以下の割合が60%以上であることがより好ましく、180μm以上の割合が35%未満であり、150μm以下の割合が65%以上であることが特に好ましい。180μm以上の割合及び150μm以下の割合はそれぞれ、目開き180μmの篩及び目開き50μmの篩(JIS Z 8801-1標準篩)で分級することで算出することができる。
【0055】
本発明に用いられるポリアルキレンオキシドの粘度(2%水溶液粘度)は、通常は50mPa/s以上、好ましくは1000mPa/s以上、より好ましくは1500mPa/s以上、特に好ましくは2000mPa/s以上であり、また、通常は6000mPa/s以下、好ましくは5500mPa/s以下、より好ましくは5000mPa/s以下、特に好ましくは4800mPa/s以下である。2%水溶液粘度は、回転粘度計(BROOK FIELD製「RV DVII+」)を用いて測定することができる。
【0056】
<徐放性組成物>
本発明の徐放性組成物は、ポリアルキレンオキシド以外の他の成分を含むこともできる。他の成分としては、例えば、薬の有効成分、充填剤、崩壊剤、流動化剤、滑沢剤、香料、着色剤等を挙げることができる。本発明の徐放性組成物は、例えば、粉末状である。
【0057】
薬の有効成分は、徐放化を目的とした各種の薬物を広く挙げることができ、例えば、公知の徐放性組成物に適用される薬物を広く本発明にも適用することができる。薬物は、1種単独又は2種以上の混合物とすることができる。薬物としては、解熱剤や鎮痛剤として用いられるアセトアミノフェン等が例示される。
【0058】
前記流動化剤は、ポリアルキレンオキシドの流動性を向上させる目的で、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、タルク、シリカを使用することができる。中でも、流動化剤はシリカを含むことが好ましい。より具体的には、本発明の徐放性組成物は、ポリアルキレンオキシドとシリカとを含むことが好ましく、ポリエチレンオキシドとシリカとを含むことがより好ましい。
【0059】
本発明の前記密度d´および前記弾性回復率を有する徐放性組成物は、種々の工夫により得ることができ、例えば、本発明の徐放性組成物は、ポリアルキレンオキシド以外に、一次粒子径が1~10nmの流動化剤を含有させることで、得ることができる。
前記流動化剤の一次平均粒子径は、3~9nm以下であることが好ましく、5~8nm以下であることが特に好ましい。前記流動化剤の一次平均粒子径は、溶媒として水を用いてレーザー回折散乱法により測定した粒度分布における積算値50%での粒径をいう。前記流動化剤が上記一次平均粒子径のシリカである場合、前記密度d´及び前記弾性回復率が上述の範囲となりやすく、特に好ましい。かかるシリカとしては、AEROSIL380、レオロシールQS-30,レオロシールQS-40等の市販品を使用することもできる。
【0060】
前記流動化剤の含有割合は、ポリアルキレンオキシドの全質量に対し、3.0質量%以下であることが好ましく、0.25~1.25質量%がより好ましく、0.5~1.0質量%がさらに好ましい。
【0061】
本発明の徐放性組成物は、医薬製剤として用いることができる。製剤の剤形は特に限定されず、例えば、マトリックス型の錠剤を挙げることができる。
本発明の医薬製剤としては、本発明の徐放性組成物の圧縮成形体を用いることができる。
【0062】
<徐放性組成物の成形体の製造方法>
本発明の成形体の製造方法は、前記徐放性組成物を圧縮成形することで成形体を得る工程を備えることができる。具体的には、前記徐放性組成物の粉末を圧縮成形することで成形体1を得た後、斯かる成形体1を、前述と同じ無加圧状態で1時間以上(例えば、2時間)放置することにより、成形体2を得ることができる。成形体2は、前記密度の測定方法によって測定される密度d´が1.10mg/mm3より高く、また、前記弾性回復率の測定方法によって測定される弾性回復率が40.0%未満であるので、徐放性組成物の溶出を効果的に抑制することができ、医薬製剤の有効成分の放出制御効果に富み、徐放性製剤に好適である。
【0063】
本開示に包含される発明を特定するにあたり、本開示の各実施形態で説明した各構成(性質、構造、機能等)は、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各構成のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0064】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0065】
(製造例1-1:ポリエチレンオキシドPの作製)
窒素置換された容器内にて、亜鉛換算で0.61モル/Lの濃度になるように、ジエチル亜鉛(日本アルキルアルミ株式会社製)をn-ヘキサンで希釈した。次いで、容器内を10℃に冷却し、攪拌下で、n-ヘキサンに対して1,4-ブタンジオールが0.59モル/L、エタノールが2.58モル/Lの濃度になるまで該容器内に1,4-ブタンジオールおよびエタノールを添加した。添加終了後、容器内を30℃まで昇温して1時間反応させ、次に、50℃まで昇温して1時間反応を行い、有機亜鉛触媒を合成した。その後、容器内を80℃まで昇温して、n-ヘキサンを留去した。冷却後、容器内の有機亜鉛触媒が3質量%の濃度となるようにn-ヘキサンで希釈し、有機亜鉛触媒を含む分散液を得た。
次いで、窒素置換された耐圧容器に、n-ヘキサンに対して有機亜鉛触媒が亜鉛換算で0.0022mol/Lの濃度になるように、また、n-ヘキサンに対してt-ブタノールが0.00017mol/Lの濃度になるように、有機亜鉛触媒とt-ブチルアルコールとn-ヘキサンを添加し、均一に分散させた。次いで、n-ヘキサンに対して3.84mol/Lの濃度になるようにエチレンオキシドを添加して密閉し、40℃の恒温槽中で攪拌しながら重合させた。重合終了後、白色生成物を濾過して取り出し、40℃で乾燥し、ポリエチレンオキシドPを得た。
【0066】
(製造例2-1)
製造例1-1で得られたポリエチレンオキシドPの500gにシリカ(AEROSIL380,一次平均粒子径:7nm,日本アエロジル株式会社製)を5.0g添加し、ポリエチレンオキシドPAを505g得た。
【0067】
(製造例2-2)
製造例2-1において、シリカ(AEROSIL380,一次平均粒子径:7nm,日本アエロジル株式会社製)に代えて、シリカ(AEROSIL200,一次平均粒子径:12nm,日本アエロジル株式会社製)に変更した以外は同様の操作を行い、ポリエチレンオキシドPBを505g得た。
【0068】
(製造例3-1)
製造例2-1で得られたポリエチレンオキシドPAに0.6kGyのγ線を照射することでポリエチレンオキシドオキシドPA1を得た。得られたポリエチレンオキシド粒子PA1の2%水溶液粘度は4530mPa・sであった。
【0069】
(製造例3-2)
製造例2-1で得られたポリエチレンオキシドPAに0.8kGyのγ線を照射することでポリエチレンオキシドオキシドPA2を得た。得られたポリエチレンオキシド粒子PA2の2%水溶液粘度は4630mPa・sであった。
【0070】
(製造例3-3)
製造例2-1で得られたポリエチレンオキシドPAに2.5kGyのγ線を照射することでポリエチレンオキシドオキシドPA3を得た。得られたポリエチレンオキシド粒子PA3の2%水溶液粘度は472mPa・sであった。
【0071】
(製造例4-1)
製造例2-2で得られたポリエチレンオキシドPBに0.6kGyのγ線を照射することでポリエチレンオキシドオキシドPB1を得た。得られたポリエチレンオキシド粒子PB1の2%水溶液粘度は4310mPa・sであった。
【0072】
(製造例4-2)
製造例2-2で得られたポリエチレンオキシドPBに0.8kGyのγ線を照射することでポリエチレンオキシドオキシドPB2を得た。得られたポリエチレンオキシド粒子PB2の2%水溶液粘度は4770mPa・sであった。
【0073】
(製造例4-3)
製造例2-2で得られたポリエチレンオキシドPBに2.5kGyのγ線を照射することでポリエチレンオキシドオキシドPB3を得た。得られたポリエチレンオキシド粒子PB3の2%水溶液粘度は428mPa・sであった。
【0074】
以下の実施例および比較例において、成形体1の密度d、成形体2の密度d´及び弾性回復率は、本明細書の発明を実施するための形態の欄に記載した方法により算出した。なお、成形体2の高さT´はダイヤルシクネスゲージ(新潟精機製)で測定し、成形体の重量は電子天秤(HR-200、エー・アンド・デイ製)で測定した。
【0075】
(実施例1)
製造例3-1で得られたポリエチレンオキシドオキシドPA1を徐放性組成物の粉末として用いた。この粉末200mgを、オートグラフ用汎用臼杵(φ10,R10)[臼も杵も、D=10mmであり、r=10mmである。粉末を入れずに杵を臼に装着したときの一体化した臼杵の高さは57.00mmである。]における臼に投入し、圧縮試験機としてオートグラフ(島津製作所製AGS-T)で試験力7kN、圧縮速度20mm/min、加圧時間100msecの条件で圧縮成形し、成形体1を得た。この圧縮試験機の上下の圧盤間の距離は、圧縮成形の開始前は62.66mmであり、加圧の終了時点で該距離は5.646mm減少していたため、Tは2.69mmであり、成形体1の円柱部の体積V2は0.90mm3であった。成形体1の重量Wは200.3mgであり、成形体1の密度dは1.84mg/mm3であった。その後、圧縮状態から無加圧状態(25℃、湿度20%以下)とした後、成形体1を上記杵臼から取出して、その無加圧状態で2時間放置し、伸長がなくなることを確認して成形体2を得た。この成形体2の重量Wは200.3mgであり、成形体2の高さT´は3.594mmであり、成形体2の密度d´は1.12mg/mm3であり、弾性回復率は39.49%であり、溶出率は24.18%であった。
【0076】
(実施例2)
製造例3-2で得られたポリエチレンオキシドオキシドPA2を徐放性組成物の粉末として用いた。この粉末を用いたこと以外は実施例1と同様の手順を行った。このときの圧縮試験機の上下の圧盤間の距離の減少は5.638mmあったため、Tは2.70mmであり、成形体1の円柱部の体積V2は1.47mm3であった。成形体1の重量は200.2mgであり、成形体1の密度dは1.83mg/mm3であった。また、成形体2の重量Wは200.2mgであり、成形体2の高さT´は3.599mmであり、成形体2の密度d´は1.11mg/mm3であり、弾性回復率は39.30%であり、溶出率は23.83%であった。
【0077】
(実施例3)
製造例3-3で得られたポリエチレンオキシドオキシドPA3を徐放性組成物の粉末として用いた。この粉末を用いたこと以外は実施例1と同様の手順を行った。このときの圧縮試験機の上下の圧盤間の距離の減少は5.652mmであったため、Tは2.69mmであり、成形体1の円柱部の体積V2は0.40mm3であった。成形体1の重量Wは200.2mgであり、成形体2の高さT´は3.588mmであり、成形体1の密度dは1.85mg/mm3であった。また、成形体2の重量Wは200.2mgであり、成形体2の密度d´は1.12mg/mm3であり、弾性回復率は39.61%であり、溶出率は48.23%であった。
【0078】
(比較例1)
製造例4-1で得られたポリエチレンオキシドオキシドPB1を徐放性組成物の粉末として用いた。この粉末を用いたこと以外は実施例1と同様の手順を行った。このときの圧縮試験機の上下の圧盤間の距離の減少は5.634mmであったため、Tは2.70mmであり、成形体1の円柱部の体積V2は1.82mm3であった。成形体1の重量Wは200.7mgであり、成形体1の密度dは1.83mg/mm3であった。また、成形体2の重量Wは200.7mgであり、成形体2の高さT´は3.638mmであり、成形体2の密度d´は1.10mg/mm3であり、弾性回復率は40.11%であり、溶出率は26.30%であった。
【0079】
(比較例2)
製造例4-2で得られたポリエチレンオキシドオキシドPB2を徐放性組成物の粉末として用いた。この粉末を用いたことした以外は実施例1と同様の手順を行った。このときの圧縮試験機の上下の圧盤間の距離の減少は5.637mmであったため、Tは2.70mmであり、成形体1の円柱部の体積V2は1.58mm3であった。成形体1の重量Wは200.4mgであり、成形体1の密度dは1.83mg/mm3であった。また、成形体2の重量Wは200.4mgであり、成形体2の高さT´は3.646mmであり、成形体2の密度d´は1.09mg/mm3であり、弾性回復率は40.45%であり、溶出率は25.77%であった。
【0080】
(比較例3)
製造例4-3で得られたポリエチレンオキシドオキシドPB3を徐放性組成物の粉末として用いた。この粉末を用いたことした以外は実施例1と同様の手順を行った。このときの圧縮試験機の上下の圧盤間の距離の減少は5.642mmであったため、Tは2.70mmであり、成形体1の円柱部の体積V2は1.20mm3であった。成形体1の重量Wは200.4mgであり、成形体1の密度dは1.84mg/mm3であった。また、成形体2の重量Wは200.4mgであり、成形体2の高さT´は3.636mmであり、成形体2の密度d´は1.10mg/mm3であり、弾性回復率は40.41%であり、溶出率は51.90%であった。
【0081】
<溶出率>
溶出率は、実施例及び比較例で使用した徐放性組成物の粉末を用いて、日本薬局方(パドル法)に従った溶出試験により計測した。この溶出試験では、試験液としてイオン交換水、試験温度は37℃、撹拌回転数は200rpmとした。この条件で3時間撹拌することで溶出試験を実施し、徐放性組成物に含まれるポリエチレンオキシドを試験液に溶出させた。溶出試験後の試験液から残存の徐放性組成物を取り出し、乾燥機(FV-320、ADVANTEC社製)を用いて80℃で5時間乾燥処理を行い、下記式(9)から溶出率を算出した。
溶出率(%)={1-(A/B)}×100 ・・・(9)
式(9)中、Aは溶出試験後に残存した徐放性組成物の乾燥処理後の質量、Bは溶出試験前の徐放性組成物の質量を意味する。
【0082】
(溶出率の低下度合)
実施例1~3で得られた成形体2の溶出率の低下度合は、γ線照射量が同等である比較例を基準にして算出した。すなわち、実施例1については比較例1を基準に、実施例2については比較例2を基準に、実施例3については比較例3を基準にして、溶出率の低下度合を算出した。具体的には、溶出率の低下度合は、下記式(10)から算出した。
溶出率の低下度合(%)={1-(X/Y)}×100 ・・・(10)
式(10)中、Xは実施例で得られた溶出率、Yは比較例で得られた溶出率を意味し、具体的には、Xが実施例1の成形体2を用いて得た溶出率である場合、Yは比較例1の成形体2を用いて得た溶出率であり、Xが実施例2の成形体2を用いて得た溶出率である場合、Yは比較例2の成形体2を用いて得た溶出率であり、Xが実施例3の成形体2を用いて得た溶出率である場合、Yは比較例3の成形体2を用いて得た溶出率である。
【0083】
表1~3には、各実施例及び比較例で得られた成形体の評価結果を示している。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
表1~3より、実施例で使用した徐放性組成物は、ポリアルキレンオキシドの溶出が抑制されていることが、対応する比較例との対比から分かった。従って、所定の測定方法によって測定される密度d´が1.10mg/mm3より高く、所定の測定方法によって測定される弾性回復率が40.0%未満である徐放性組成物を用いることは、製剤等においてポリアルキレンオキシドの溶出を抑制する方法として適していることがわかった。