(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179355
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理装置の作動方法、プログラム及び医用画像処理システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
A61B5/055 380
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098130
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100153822
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 重之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦郎
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 知樹
(72)【発明者】
【氏名】金子 幸生
(72)【発明者】
【氏名】横沢 俊
(72)【発明者】
【氏名】白猪 亨
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB07
4C096AD07
4C096AD14
4C096DC05
4C096DE08
(57)【要約】
【課題】ユーザの好みに合わせたデノイズ処理が実現される、画像処理装置、画像処理装置の作動方法、プログラム及び医用画像処理システムを提供する。
【解決手段】画像処理装置は、ユーザ識別情報を取得し(110)、第1撮像条件を取得し(112)、第1撮像条件が適用される第1画像を取得し(100)、第1デノイズ強度を適用して第1画像に対してデノイズ処理を実行して第1デノイズ画像を生成し(130)、複数の第2撮像条件に対応する第2信号雑音比の中から、第1撮像条件と同一又は近い第2撮像条件に対応する第2信号雑音比を第1信号雑音比として取得し(120)、第1信号雑音比に基づくデノイズ強度を第1デノイズ強度として設定する(122)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ識別情報を取得し、
撮像装置に対して適用される第1撮像条件を取得し、
前記第1撮像条件が適用される前記撮像装置を用いて撮像され、生成される第1画像を取得し、
前記第1画像に対するデノイズ処理に適用される第1デノイズ強度を設定し、
前記第1デノイズ強度を適用して、前記第1画像に対してデノイズ処理を実行して第1デノイズ画像を生成するプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
ユーザごとの、複数の第2撮像条件が適用された過去の複数回の撮像において生成された複数の第2画像のそれぞれから導出される複数の第2信号雑音比の中から、前記第1撮像条件と同一の第2撮像条件、又は前記第1撮像条件に近い第2撮像条件に対応する第2信号雑音比を第1信号雑音比として取得し、
前記第1信号雑音比に基づき導出されるデノイズ強度を前記第1デノイズ強度として設定する画像処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
複数の前記第2信号雑音比に対して、複数の前記第2撮像条件のそれぞれが関連付けされ記憶される信号雑音比データベースを参照して、前記第1撮像条件と同一の第2撮像条件、又は前記第1撮像条件に近い第2撮像条件に対応する前記第1信号雑音比を取得する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記第1デノイズ強度が変更された場合に、変更後の第2デノイズ強度に応じて、前記信号雑音比データベースを更新する請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記第1画像に対して、デノイズ強度が異なる複数回のデノイズ処理を実行して、複数の第3デノイズ画像を生成し、
複数の前記第3デノイズ画像のそれぞれから第3信号雑音比を導出し、
前記第1信号雑音比との差が最小となる前記第3信号雑音比が導出された前記第3デノイズ画像に適用される第3デノイズ強度を、前記第1デノイズ強度として設定する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記第1画像から第4信号雑音比を算出し、
信号雑音比とデノイズ強度との関係を表す関数を用いて、第4信号雑音比に対応する第4デノイズ強度を、前記第1デノイズ強度として設定する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記第1デノイズ画像を表示装置へ表示させ、
前記第1デノイズ画像に対するデノイズ処理に適用される前記第1デノイズ強度の評価を表す選択肢を、前記表示装置へ表示させ、
前記選択肢の中から選択された前記第1デノイズ強度の評価を表す第1評価信号を取得し、
前記第1評価信号が表す前記第1デノイズ強度の評価を、前記第1デノイズ強度の設定へフィードバックする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記第1撮像条件と同一の第5撮像条件、又は前記第1撮像条件に近い第5撮像条件が適用され、過去に撮像され生成された過去画像に対して、前記第1デノイズ強度を適用してデノイズ処理が実施され、生成される第5デノイズ画像を表示装置へ表示させ、
前記第5デノイズ画像に対するデノイズ処理に適用される第5デノイズ強度の評価を表す第5評価信号を取得し、
前記第5評価信号が表す前記第5デノイズ強度の評価に応じて、前記第1デノイズ強度を維持するか又は変更するかを決定する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記過去画像は、正常な撮像対象を過去に撮像して生成された正常画像が適用される請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記過去画像は、前記第1撮像条件と同一の第6撮像条件、又は前記第1撮像条件に近い第6撮像条件が適用され、同一の撮像対象を過去に撮像して生成された同一撮像対象画像が適用され、
前記プロセッサは、
前記同一撮像対象画像に対してデノイズ処理が実行された第6デノイズ画像、及び同一撮像対象画像に対して実行されたデノイズ処理に適用された第6デノイズ強度を表示装置へ表示させる請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記第6デノイズ強度の評価を表す第6評価信号を取得し、
前記第6評価信号が表す前記第6デノイズ強度の評価に応じて、前記第1デノイズ強度を維持するか又は変更するかを決定する請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
プロセッサが具備されるコンピュータが適用される画像処理装置の作動方法であって、
前記プロセッサは、
ユーザ識別情報を取得し、
撮像装置に対して適用される第1撮像条件を取得し、
前記第1撮像条件が適用される前記撮像装置を用いて撮像され、生成される第1画像を取得し、
前記第1画像に対するデノイズ処理に適用される第1デノイズ強度を設定し、
前記第1デノイズ強度を適用して、前記第1画像に対してデノイズ処理を実行して第1デノイズ画像を生成し、
前記第1デノイズ強度を設定する際に、
ユーザごとの、複数の第2撮像条件が適用された過去の複数回の撮像において生成された複数の第2画像のそれぞれから導出される複数の第2信号雑音比の中から、前記第1撮像条件と同一の第2撮像条件、又は前記第1撮像条件に近い第2撮像条件に対応する第2信号雑音比を第1信号雑音比として取得し、
前記第1信号雑音比に基づき導出されるデノイズ強度を前記第1デノイズ強度として設定する画像処理装置の作動方法。
【請求項12】
コンピュータに、
ユーザ識別情報を取得する機能、
撮像装置に対して適用される第1撮像条件を取得する機能、
前記第1撮像条件が適用される前記撮像装置を用いて撮像され、生成される第1画像を取得する機能、
前記第1画像に対するデノイズ処理に適用される第1デノイズ強度を設定する機能、及び
前記第1デノイズ強度を適用して、前記第1画像に対してデノイズ処理を実行して第1デノイズ画像を生成する機能を実現させるプログラムであって、
第1デノイズ強度を設定する機能は、
ユーザごとの、複数の第2撮像条件が適用された過去の複数回の撮像において生成された複数の第2画像のそれぞれから導出される複数の第2信号雑音比の中から、前記第1撮像条件と同一の第2撮像条件、又は前記第1撮像条件に近い第2撮像条件に対応する第2信号雑音比を第1信号雑音比として取得し、
前記第1信号雑音比に基づき導出されるデノイズ強度を前記第1デノイズ強度として設定するプログラム。
【請求項13】
撮像装置を用いて被験者を撮像して生成される医用画像に対して規定の画像処理を施す画像処理装置を備える医用画像処理システムであって、
前記画像処理装置は、
ユーザ識別情報を取得し、
撮像装置に対して適用される第1撮像条件を取得し、
前記第1撮像条件が適用される前記撮像装置を用いて撮像され、生成される第1画像を取得し、
前記第1画像に対するデノイズ処理に適用される第1デノイズ強度を設定し、
前記第1デノイズ強度を適用して、前記第1画像に対してデノイズ処理を実行して第1デノイズ画像を生成するプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
ユーザごとの、複数の第2撮像条件が適用された過去の複数回の撮像において生成された複数の第2画像のそれぞれから導出される複数の第2信号雑音比の中から、前記第1撮像条件と同一の第2撮像条件、又は前記第1撮像条件に近い第2撮像条件に対応する第2信号雑音比を第1信号雑音比として取得し、
前記第1信号雑音比に基づき導出されるデノイズ強度を前記第1デノイズ強度として設定する医用画像処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は画像処理装置、画像処理装置の作動方法、プログラム及び医用画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、MRI装置を撮像装置として備える医用画像装置が記載される。同文献に記載の医用画像装置は、ノイズの大きさが画像の領域ごとに異なる場合に、相対的にノイズレベルが大きい領域に対して、相対的に強度が大きいデノイズフィルタが適用され、相対的にノイズレベルが小さい領域に対して、相対的に強度が小さいデノイズフィルタが適用される。なお、MRIは磁気共鳴イメージングの英語表記であるMagnetic Resonance Imagingの省略語である。
【0003】
また、特許文献1に記載の医用画像装置は、ユーザが選択した領域選択パターンと撮像条件との関係が記憶されている。これにより、過去に適用された撮像条件と同様の撮像条件が適用される場合に、過去に選択された領域選択パターンの選定が可能である。
【0004】
更に、特許文献1に記載の医用画像装置は、スライド位置ごとに領域選択パターンが対応付けされたスライドバーを備える。ユーザは、スライドバーをスライドさせながら表示装置へ表示される高画質画像を見てスライド位置を停止させ、所望の高画質画像が得られる領域選択パターンの選定が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術に係る画像処理装置では、デノイズ強度の設定が撮像前に実施され、撮像が終了した後に生成される画像に対してデノイズ処理が適用される。デノイズが適用された画像をユーザが確認し、デノイズ強度を変更したい場合は、デノイズ強度の再設定が実施され、再撮像が実施される。実際の臨床現場では再撮像の実施は現実的ではない。
【0007】
また、画像処理装置のメーカが推奨するデノイズ強度は、医師及び技師等のユーザの好みと必ずしも一致するとは限らず、ユーザの好みに合わせたデノイズ強度の最適化が望まれる。
【0008】
本開示はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ユーザの好みに合わせたデノイズ強度が適用されるデノイズ処理が実現される、画像処理装置、画像処理装置の作動方法、プログラム及び医用画像処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1態様に係る画像処理装置は、ユーザ識別情報を取得し、撮像装置に対して適用される第1撮像条件を取得し、第1撮像条件が適用される撮像装置を用いて撮像され、生成される第1画像を取得し、第1画像に対するデノイズ処理に適用される第1デノイズ強度を設定し、第1デノイズ強度を適用して、第1画像に対してデノイズ処理を実行して第1デノイズ画像を生成するプロセッサを備え、プロセッサは、ユーザごとの、複数の第2撮像条件が適用された過去の複数回の撮像において生成された複数の第2画像のそれぞれから導出される複数の第2信号雑音比の中から、第1撮像条件と同一の第2撮像条件、又は第1撮像条件に近い第2撮像条件に対応する第2信号雑音比を第1信号雑音比として取得し、第1信号雑音比に基づき導出されるデノイズ強度を第1デノイズ強度として設定する画像処理装置である。
【0010】
第1態様に係る画像処理装置によれば、ユーザごとの過去の複数の撮像において生成された複数の第2画像から導出される複数の第2信号雑音比であり、過去の撮影における第2撮像条件が関連付けされた複数の第2信号雑音比の中から、第1撮像条件と同一の第2撮像条件、又は第1撮像条件に近い第2撮像条件に対応する第2信号雑音比が第1信号雑音比として取得される。これにより、ユーザの好みの第1信号雑音比に応じた第1デノイズ強度が適用されるデノイズ処理が実現される。
【0011】
第2態様に係る画像処理装置は、第1態様の画像処理装置において、プロセッサは、複数の第2信号雑音比に対して、複数の第2撮像条件のそれぞれが関連付けされ記憶される信号雑音比データベースを参照して、第1撮像条件と同一の第2撮像条件、又は第1撮像条件に近い第2撮像条件に対応する第1信号雑音比を取得してもよい。
【0012】
第3態様に係る画像処理装置は、第2態様の画像処理装置において、プロセッサは、
第1デノイズ強度が変更された場合に、変更後の第2デノイズ強度に応じて、信号雑音比データベースを更新してもよい。
【0013】
第4態様に係る画像処理装置は、第1態様から第3態様のいずれか一態様の画像処理装置において、プロセッサは、第1画像に対して、デノイズ強度が異なる複数回のデノイズ処理を実行して、複数の第3デノイズ画像を生成し、複数の第3デノイズ画像のそれぞれから第3信号雑音比を導出し、第1信号雑音比との差が最小となる第3信号雑音比が導出された第3デノイズ画像に適用される第3デノイズ強度を、第1デノイズ強度として設定してもよい。
【0014】
第5態様に係る画像処理装置は、第1態様から第3態様のいずれか一態様の画像処理装置において、プロセッサは、第1画像から第4信号雑音比を算出し、信号雑音比とデノイズ強度との関係を表す関数を用いて、第4信号雑音比に対応する第4デノイズ強度を、第1デノイズ強度として設定してもよい。
【0015】
第6態様に係る画像処理装置は、第1態様から第5態様のいずれか一態様の画像処理装置において、プロセッサは、第1デノイズ画像を表示装置へ表示させ、第1デノイズ画像に対するデノイズ処理に適用される第1デノイズ強度の評価を表す選択肢を、表示装置へ表示させ、選択肢の中から選択された第1デノイズ強度の評価を表す第1評価信号を取得し、第1評価信号が表す第1デノイズ強度の評価を、第1デノイズ強度の設定へフィードバックしてもよい。
【0016】
第7態様に係る画像処理装置は、第1態様から第6態様のいずれか一態様の画像処理装置において、プロセッサは、第1撮像条件と同一の第5撮像条件、又は第1撮像条件に近い第5撮像条件が適用され、過去に撮像され生成された過去画像に対して、第1デノイズ強度を適用してデノイズ処理が実施され、生成される第5デノイズ画像を表示装置へ表示させ、第5デノイズ画像に対するデノイズ処理に適用される第5デノイズ強度の評価を表す第5評価信号を取得し、第5評価信号が表す第5デノイズ強度の評価に応じて、第1デノイズ強度を維持するか又は変更するかを決定してもよい。
【0017】
第8態様に係る画像処理装置は、第7態様の画像処理装置において、過去画像は、正常な撮像対象を過去に撮像して生成された正常画像が適用されてもよい。
【0018】
第9態様に係る画像処理装置は、第7態様の画像処理装置において、過去画像は、第1撮像条件と同一の第6撮像条件、又は第1撮像条件に近い第6撮像条件が適用され、同一の撮像対象を過去に撮像して生成された同一撮像対象画像が適用され、プロセッサは、同一撮像対象画像に対してデノイズ処理が実行された第6デノイズ画像、及び同一撮像対象画像に対して実行されたデノイズ処理に適用された第6デノイズ強度を表示装置へ表示させてもよい。
【0019】
第10態様に係る画像処理装置は、第9態様の画像処理装置において、プロセッサは、第6デノイズ強度の評価を表す第6評価信号を取得し、第6評価信号が表す第6デノイズ強度の評価に応じて、第1デノイズ強度を維持するか又は変更するかを決定してもよい。
【0020】
本開示の第11態様に係る画像処理装置の作動方法は、プロセッサが具備されるコンピュータが適用される画像処理装置の作動方法であって、プロセッサは、ユーザ識別情報を取得し、撮像装置に対して適用される第1撮像条件を取得し、第1撮像条件が適用される撮像装置を用いて撮像され、生成される第1画像を取得し、第1画像に対するデノイズ処理に適用される第1デノイズ強度を設定し、第1デノイズ強度を適用して、第1画像に対してデノイズ処理を実行して第1デノイズ画像を生成し、第1デノイズ強度を設定する際に、ユーザごとの、複数の第2撮像条件が適用された過去の複数回の撮像において生成された複数の第2画像のそれぞれから導出される複数の第2信号雑音比の中から、第1撮像条件と同一の第2撮像条件、又は第1撮像条件に近い第2撮像条件に対応する第2信号雑音比を第1信号雑音比として取得し、第1信号雑音比に基づき導出されるデノイズ強度を第1デノイズ強度として設定する画像処理装置の作動方法である。
【0021】
本開示の第12態様に係るプログラムは、コンピュータに、ユーザ識別情報を取得する機能、撮像装置に対して適用される第1撮像条件を取得する機能、第1撮像条件が適用される撮像装置を用いて撮像され、生成される第1画像を取得する機能、第1画像に対するデノイズ処理に適用される第1デノイズ強度を設定する機能、及び第1デノイズ強度を適用して、第1画像に対してデノイズ処理を実行して第1デノイズ画像を生成する機能を実現させるプログラムであって、第1デノイズ強度を設定する機能は、ユーザごとの、複数の第2撮像条件が適用された過去の複数回の撮像において生成された複数の第2画像のそれぞれから導出される複数の第2信号雑音比の中から、第1撮像条件と同一の第2撮像条件、又は第1撮像条件に近い第2撮像条件に対応する第2信号雑音比を第1信号雑音比として取得し、第1信号雑音比に基づき導出されるデノイズ強度を第1デノイズ強度として設定するプログラムである。
【0022】
第12態様に係るプログラムを記憶した有体物である非一時的かつコンピュータ読取可能な記録媒体も本開示に含まれる。
【0023】
本開示の第13態様に係る医用画像処理システムは、撮像装置を用いて被験者を撮像して生成される医用画像に対して規定の画像処理を施す画像処理装置を備える医用画像処理システムであって、画像処理装置は、ユーザ識別情報を取得し、撮像装置に対して適用される第1撮像条件を取得し、第1撮像条件が適用される撮像装置を用いて撮像され、生成される第1画像を取得し、第1画像に対するデノイズ処理に適用される第1デノイズ強度を設定し、第1デノイズ強度を適用して、第1画像に対してデノイズ処理を実行して第1デノイズ画像を生成するプロセッサを備え、プロセッサは、ユーザごとの、複数の第2撮像条件が適用された過去の複数回の撮像において生成された複数の第2画像のそれぞれから導出される複数の第2信号雑音比の中から、第1撮像条件と同一の第2撮像条件、又は第1撮像条件に近い第2撮像条件に対応する第2信号雑音比を第1信号雑音比として取得し、第1信号雑音比に基づき導出されるデノイズ強度を第1デノイズ強度として設定する医用画像処理システムである。
である。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、ユーザごとの過去の複数回の撮像において生成された複数の第2画像から導出される複数の第2信号雑音比であり、過去の撮影における第2撮像条件が関連付けされた複数の第2信号雑音比の中から、第1撮像条件と同一の第2撮像条件、又は第1撮像条件に近い第2撮像条件に対応する第2信号雑音比が第1信号雑音比として取得される。これにより、ユーザの好みの第1信号雑音比に応じた第1デノイズ強度が適用されるデノイズ処理が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は実施形態に係るMRI装置の全体構成図である。
【
図2】
図2は
図1に示す計算機の電気的構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は
図2に示す計算機の電気的構成のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は第1例に係るSN比データベースの構築の手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は第2例に係るSN比データベースの構築の手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は実施形態に係る画像処理方法の手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は
図2に示すデノイズ強度取得部の第1構成例を示す機能ブロック図である。
【
図10】
図10は
図2に示すデノイズ強度取得部の第2構成例を示す機能ブロック図である。
【
図11】
図11はSN比が異なる数値ファントムに対して複数のデノイズ強度が適用され生成されるデノイズ画像のSN比を算出した結果を示す表である。
【
図13】
図13は第1変形例に係る計算機の電気的構成を示す機能ブロック図である。
【
図14】
図14はデノイズ強度のフィードバックに適用されるユーザインタフェースの例を示す説明図である。
【
図15】
図15はデノイズ強度の自動調整前の確認画面の第1例を示す説明図である。
【
図16】
図16は、デノイズ強度の自動調整前の確認画面の第2例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の実施形態において複数の構成要素が例示列挙される場合、複数の構成要素の少なくとも1つを含むと解釈し得る。
【0027】
[第1実施形態]
〔MRI装置の構成例〕
図1は実施形態に係るMRI装置の全体構成図である。以下、本開示の1つの実施形態としMRI装置について説明するが、本開示の技術はX線CT装置及び陽電子放出断層撮影装置などのモダリティにも適用可能である。なお、CTは、Computed Tomographyの省略語である。陽電子放出断層撮影装置は、英語表記であるPositron Emission Tomographyの省略語PETと称され得る。
【0028】
図1に示すMRI装置1は、計測装置10、計算機20、出力装置30、入力装置40及び外部記憶装置50を備える。計測装置10は、静磁場コイル11、傾斜磁場コイル12及び傾斜磁場電源15を備える。静磁場コイル11は、被検体が置かれる空間に静磁場を発生させる。傾斜磁場コイル12は、静磁場コイル11が発生させる静磁場に対して磁場勾配を与える。傾斜磁場電源15は、傾斜磁場コイル12の駆動電源である。
【0029】
計測装置10は、送信コイル13、受信コイル14、送信機16及び受信機17を備える。送信コイル13は、被検体の計測領域に対して高周波磁場を発生させる。送信機16は、送信コイル13に対して励磁電流であるパルス電流を供給する。受信コイル14は、被検体から生じる核磁気共鳴信号を受信する。受信機17は、受信コイル14を用いて受信した核磁気共鳴信号を計算機20へ送信する。なお、核磁気共鳴信号はエコー信号と称され得る。
【0030】
MRI装置1には、発生させる静磁場の方向に応じて、垂直磁場方式及び水平磁場方式がある。静磁場コイル11は、磁場方式に応じて種々の形態が採用される。傾斜磁場コイル12は、互いに直交する3軸方向のそれぞれに対して傾斜磁場を発生させる複数のコイルを備える。傾斜磁場コイル12に具備される複数のコイルのそれぞれは、傾斜磁場電源15を用いて駆動される。傾斜磁場の印加に起因して、被検体から生じる核磁気共鳴信号に対して位置情報が付加される。
【0031】
なお、
図1には、送信コイル13と受信コイル14とが個別に具備される態様が例示されるが、送信コイル13の機能及び受信コイル14の機能を有する1つのコイルが具備される態様があり得る。
【0032】
計測装置10は、シーケンス制御装置18を備える。シーケンス制御装置18は、傾斜磁場電源15及び送信機16の動作を制御して、傾斜磁場及び高周波磁場の発生タイミングを制御する。シーケンス制御装置18は、受信機17の動作を制御して、核磁気共鳴信号の受信タイミングを制御し、計測を実行する。シーケンス制御装置18に対して適用される制御のタイムチャートは撮像シーケンスと称され、計測に応じて予め設定され、計算機20へ具備される記憶装置等へ格納される。
【0033】
計算機20は、CUP等のプロセッサ、メモリ及び記憶装置などを備えるコンピュータが適用される。計算機20は、シーケンス制御装置18を介して計測装置10の各部の動作を制御する制御装置として機能する。また、計算機20は、受信機17及びシーケンス制御装置18を介して受信される核磁気共鳴信号に対する演算処理を実行し、予め定められる撮像領域の画像信号を取得する演算装置として機能する。計算機20は、MRI装置1を構成する装置であってもよいし、MRI装置1とは独立する外部装置であってもよい。
【0034】
計算機20は、出力装置30、入力装置40及び外部記憶装置50がデータ通信自在に電気接続される。出力装置30は、計算機20を用いて実行される演算処理の結果を表示させるディスプレイが適用され得る。
【0035】
出力装置30は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及びプロジェクタ等が適用され得る。出力装置30は、これらの適宜の組み合わせでもよい。なお、有機ELはOrganic Electro-Luminescenceの省略語を用いて、OELと称され得る。
【0036】
入力装置40は、計測及び演算処理等に適用される条件及びパラメータ等をオペレータが入力するインターフェースである。入力装置40の例として、キーボード及びマウス等が挙げられる。タッチパネル方式のディスプレイを用いて、出力装置30として機能する表示装置と入力装置とを一体構成としてもよい。オペレータは入力装置40を用いて、計測されるエコー数、エコー時間及びエコー間隔等のパラメータを入力し得る。
【0037】
外部記憶装置50は、計算機20が実行する各種の演算処理に用いられるデータ、演算処理の結果として導出されるデータ、演算処理に適用される条件及び演算処理に適用されるパラメータ及び演算処理を実行するプログラム等が記憶される。外部記憶装置50は、計算機20の内部記憶装置の一部の機能を実現してもよいし、外部記憶装置50の一部の機能を計算機20の内部記憶装置が実現してもよい。
【0038】
計測装置10を用いて取得される核磁気共鳴信号は、被検体からの信号に対してMRI装置1の特性及び撮像条件に起因するノイズが重畳される。核磁気共鳴信号に対して重畳されるノイズは、核磁気共鳴信号から生成される被検体の撮像画像の画質を劣化させる。計算機20は、核磁気共鳴信号に対する信号処理として、核磁気共鳴信号に重畳されるノイズを低減させる処理であるノイズ低減処理を実行する機能が具備される。ノイズ低減処理は、デノイズ処理と称され得る。
【0039】
デノイズ処理は、CNN等の学習済みの学習モデルが適用される。なお、CNNはConvolution Neural Networkの省略語である。外部記憶装置50は、デノイズ処理に適用されるフィルタ強度を導出する際に用いられるSN比データベースが記憶される。フィルタ強度はデノイズ強度と称され得る。
【0040】
SN比データベースは、医師及び技師等のユーザごとの画像の好みのSN比が、被検体を撮像する際に適用される撮像条件に関連付けされ記憶される。SN比データベースは、撮像条件をインデックスとして画像の好みのSN比の読み出しが可能である。
【0041】
なお、SN比は信号雑音比と称され得る。
図1では、SN比データベースの図示は省略される。SN比データベースは、符号52が付され
図2に図示される。なお、
図1に示す計測装置10は撮像装置の一例であり、計算機20は画像処理装置の一例であり、医用画像処理システムの構成要素の一例である。
【0042】
〔計算機の構成例〕
図2は
図1に示す計算機の電気的構成を示す機能ブロック図である。計算機20は、画像取得部100を備える。画像取得部100は、
図1に示す受信機17から送信される磁気共鳴信号が表す画像を取得する。なお、
図2に示す実施形態に記載の画像取得部100を用いて取得される画像は第1画像の一例である。
【0043】
計算機20は、画像再構成部102を備える。画像再構成部102は、画像取得部100を介して取得される画像に基づき再構成画像を生成する。画像に基づき生成される再構成画像の例として、2次元の断層画像が挙げられる。ここで、画像という用語は、画像を表す画像データという意味が含まれる。データという用語は、電気回路を信号という意味が含まれ得る。
【0044】
計算機20は、規格化部104を備える。規格化部104は、規定の規格化定数を適用して、再構成画像を構成する各画素の画素値に対して規格化処理を実行する。規格化処理の詳細は後述する。
【0045】
計算機20は、ユーザID取得部110を備える。ユーザID取得部110は、規格化された再構成画像に対してデノイズ処理を実施するユーザの識別に用いられるユーザIDを取得する。ユーザIDは、ユーザの氏名及びユーザごとの識別番号などのユーザを識別する情報が適用される。ユーザID取得部110は、バーコード及び2次元コード等を用いて表されたユーザIDが、読取装置を用いて読み取られる態様を採用し得る。なお、実施形態に記載のユーザIDはユーザ識別情報の一例である。IDはIdentificationの省略語である。
【0046】
計算機20は、撮像条件取得部112を備える。撮像条件取得部112は、被検体の撮像に対して適用される撮像条件を取得する。撮像とは、被検体に対して静磁場コイル11等から電磁波が照射され、受信機17を用いて核磁気共鳴信号が取得される計測装置10の機能を表す。撮像条件の例として、撮像マトリクス数及びシーケンス等が挙げられる。なお、実施形態に記載の撮像条件取得部112を用いて取得される撮像条件は第1撮像条件の一例である。
【0047】
計算機20は、SN比取得部120を備える。SN比取得部120は、ユーザごとに撮像条件が関連付けされるSN比が記憶されるSN比データベース52から、撮像対象部位、ユーザID及び撮像条件に対応するSN比を読み出す。SN比データベース52から読み出されたSN比は、撮像条件に応じたユーザごとの好みのSN比として、演算処理に用いられる。なお、撮像対象部位は撮像対象の解剖構造と解釈し得る。
【0048】
すなわち、SN比データベース52は、過去の複数回の撮像において生成されるMR画像について測定されるSN比が、MR画像に付帯する撮像部位及び撮像条件と関連付けされ、ユーザごとに記憶される。撮像部位及び撮像条件は、DICOM形式を適用し得る。なお、実施形態に記載の過去に撮像され、生成されるMR画像は第2画像の一例であり、過去画像の撮像条件は第2撮像条件の一例である。
【0049】
SN比取得部120は、撮像対象部位、ユーザID及び撮像条件をインデックスとしてSN比データベース52を検索し、これらに応じたユーザごとの好みのSN比を読み出す。なお、実施形態に記載のSN比データベース52は、信号雑音比データベースの一例である。実施形態に記載のSN比データベース52に記憶される複数のSN比は、複数の第2信号雑音比の一例であり、SN比データベース52から読み出されたSN比SN0は、複数の第2信号雑音比の中から取得される第1信号雑音比の一例である。
【0050】
計算機20は、デノイズ強度取得部122を備える。デノイズ強度取得部122は、SN比データベース52から読み出されたSN比SN0に基づき、デノイズ処理に適用されるデノイズ強度を取得する。デノイズ強度の取得の詳細は後述する。なお、実施形態に記載のデノイズ処理に適用されるデノイズ強度は第1デノイズ強度の一例である。
【0051】
規格化部104は、SN比取得部120から取得されるSN比、及びデノイズ強度取得部122から取得されるデノイズ強度を用いて、再構成画像に対して規格化処理を実行する。
【0052】
計算機20は、デノイズ処理部130を備える。デノイズ処理部130は、規格化された再構成画像に対してデノイズ処理を実行し、デノイズ画像を生成する。デノイズ画像は、ノイズが含まれる再構成画像からノイズの少なくとも一部が除去され、生成される。
【0053】
デノイズ処理部130は、学習済みの学習モデル132を備える。学習モデル132はCNNが適用される。学習モデル132は、ノイズが含まれる画像が入力データとされ、ノイズが除去される画像が正解データとされる学習データを用いて、ノイズを含む画像が入力されるとノイズが除去される画像が出力されるように学習がされ、生成される。学習モデル132の生成は、計算機20と独立したコンピュータを用いて実行されてもよいし、計算機20に具備される学習モデル生成部を用いて実行されてもよい。計算機20に対して学習モデル生成部が具備される場合、計算機20は学習モデル132の再学習を実行し得る。なお、
図2に示すデノイズ処理部130が適用されるデノイズ処理が施され、生成されるデノイズ画像は、第1デノイズ画像の一例である。
【0054】
計算機20は、デノイズ画像出力部140を備える。デノイズ画像出力部140は、デノイズ処理部130を用いて生成されるデノイズ画像を出力装置30に適用される信号形式に変換し、出力装置30へ出力する。例えば、出力装置30がディスプレイの場合、デノイズ画像出力部140は、デノイズ画像を映像信号へ変換し、出力装置30へ出力する。
【0055】
図3は
図2に示す計算機の電気的構成のハードウェア構成を示すブロック図である。計算機20に適用されるコンピュータは、パーソナルコンピュータであってもよいし、ワークステーションであってもよい。コンピュータは仮想マシンであってもよい。計算機20は、複数台のコンピュータを用いて構成されてもよい。
【0056】
計算機20は、プロセッサ202、主記憶装置であるメモリ204、補助記憶装置であるストレージ206、入出力インターフェース208及びバス210を備える。プロセッサ202はCPUが含まれる。プロセッサ202は、GPUが含まれてもよい。なお、CPUはCentral Processing Unitの省略語である。GPUはGraphics Processing Unitの省略語である。
【0057】
プロセッサ202は、バス210を介して、メモリ204、ストレージ206及び入出力インターフェース208と接続される。入力装置40及び出力装置30は、入出力インターフェース208を介して計算機20と接続される。
【0058】
プロセッサ202は、メモリ204に記憶されたプログラムを実行し、各種の機能を実現させる。入出力インターフェース208は、ネットワークと接続可能な通信インターフェース、及び外部機器と接続可能な接続インターフェース等が含まれる。ネットワークの例として、医療施設内のローカルエリアネットワークが挙げられる。外部機器と接続可能な接続インターフェースとしては、例えば、ユニバーサルシリアルバス及びHDMI等を適用し得る。なお、ユニバーサルシリアルバスは、Universal Serial Busの省略語を用いて、USBと称され得る。HDMIは、High-Definition Multimedia Interfaceの省略語である。USB及びHDMIは登録商標である。
【0059】
プロセッサ202は、入出力インターフェース208を介してMRI装置1の各種の外部装置との間で通信し、必要な情報の送受信を行う。なお、各種の外部装置の図示は省略される。
【0060】
出力装置30は、MRI装置1を用いて撮像される医用画像の他、各種の情報を表示するディスプレイを含み得る。出力装置30は、入力装置40からの入力を受け付ける場合のGUIの一部として使用される。なお、出力装置30は1つに限らず、複数のディスプレイを備えるマルチディスプレイの形態も可能である。GUIはGraphical User Interfaceの省略語である。
【0061】
[SN比データベースの構築]
図4は第1例に係るSN比データベースの構築の手順を示すフローチャートである。
図2に示すSN比データベース52の構築は、コンピュータが適用される情報処理装置が用いられ、以下の手順が適用される。第1例に係るSN比データベースの構築の手順は、複数の被験者について、過去画像が準備される場合に適用される。ここでいう過去画像は、過去に撮像され生成されたMRI画像を意味する。
【0062】
第1情報入力工程S10では、情報処理装置に対して、過去画像が入力される。第1情報入力工程S10では、情報処理装置に対して、複数の過去画像のそれぞれについて、ユーザID及び撮像条件が入力される。
【0063】
過去画像選択工程S12では、情報処理装置に対して、ユーザが好みのデノイズ処理が施された過去画像の選択情報が入力される。例えば、過去画像選択工程S12では、既にデノイズ処理が施され過去画像の中から、1つ以上のユーザが好みのデノイズ処理が施された過去画像が選択されてもよい。過去画像選択工程S12では、任意の1つの過去画像に対してデノイズ強度が異なるデノイズ処理が実施されて生成された複数の過去画像の中から、1つ以上のユーザが好みのデノイズ処理が施された過去画像が選択されてもよい。
【0064】
SN比算出工程S14では、過去画像選択工程S12において選択された過去画像のSN比が算出される。SN比の計算の詳細は後述する。SN比の計算は公知の手法が適用されてもよい。
【0065】
SN比記憶工程S16では、SN比算出工程S14において算出されたSN比に対して、撮像部位及び撮像条件が関連付けされ、ユーザごとに記憶される。このようにして、SN比データベース52が構築され、
図1に示す外部記憶装置50へ記憶される。
図4に示すSN比データベース52の構築の手順は、SN比データベース52の更新の手順としても適用してもよい。
【0066】
図5は第2例に係るSN比データベースの構築の手順を示すフローチャートである。第2例に係るSN比データベースの構築の手順は、同一被験者について、デノイズ強度が異なる複数の過去画像が準備される場合に適用される。
【0067】
図5に示すSN比データベースの構築の手順では、
図4に示す第1情報入力工程S10に代わり、第2情報入力工程S11が実行される。第2情報入力工程S11では、同一の被験者における複数の過去画像のそれぞれについて、撮像部位、ユーザID及び撮像条件が入力される。
【0068】
第2情報入力工程S11の後に、過去画像選択工程S12、SN比算出工程S14及びSN比記憶工程S16が実行され、SN比データベース52が構築される。過去画像選択工程S12、SN比算出工程S14及びSN比記憶工程S16の処理は、
図4に示す第2例に係るSN比データベースの構築の手順と同様であり、ここでの説明を省略する。
【0069】
[デノイズ処理の詳細な説明]
図6は実施形態に係る画像処理方法の手順を示すフローチャートである。実施形態に係るMRI装置1に対して適用される画像処理方法では、同一のユーザが過去に撮像したMR画像のSN比を参照して、デノイズ処理に適用されるデノイズ強度が自動設定される。なお、実施形態に係る画像処理方法は、画像処理装置の作動方法として把握される。
【0070】
第3情報入力工程S100では、
図2に示す画像取得部100は、処理対象の画像を取得する。撮像部位の情報は処理対象の画像の取得の際に取得され得る。また、第3情報入力工程S100では、ユーザID取得部110は、処理対象の画像を取得する撮像を行ったユーザのユーザIDを取得する。更に、第3情報入力工程S100では、撮像条件取得部112は処理対象の画像を取得する撮像に適用された撮像条件を取得する。
【0071】
SN比取得工程S102では、SN比取得部120は、第3情報入力工程S100において取得されたユーザID及び撮像条件をインデックスとして、SN比データベース52を参照して、SN比データベース52からユーザの好みのSN比SN0を取得する。ユーザの好みのSN比SN0は第1信号雑音比の一例である。
【0072】
ユーザID及び撮像条件に応じたSN比がSN比データベース52に記憶されていない場合は、同一のユーザにおいて撮像条件が近い過去画像のSN比が取得されてもよい。近い撮像条件の例として、複数の構成要素の一部が一致する撮像条件、及び指標値の差が規定の範囲となる撮像条件などが挙げられる。すなわち、近い撮像条件とは、SN比の設定及びデノイズ強度の設定において、同一の撮像条件と同様の結果が得られる程度の差を有するものと把握し得る。
【0073】
デノイズ処理工程S104では、規格化部104は、SN比取得工程S102において取得されたSN比SN0、及びSN比SN0に対応するデノイズ強度を適用して、デノイズ処理の対象の画像に対して規格化処理を実施する。また、デノイズ処理工程S104では、デノイズ処理部130は学習モデル132を用いて、規格化処理がされた画像に対してデノイズ処理を実施する。
図6に示すAIデノイズは、学習モデル132が用いられるデノイズ処理を表す。なお、AIはArtificial Intelligenceの省略語である。
【0074】
デノイズ画像出力工程S106では、デノイズ画像出力部140はデノイズ処理が施されたデノイズ画像を出力装置30の出力形式へ変換し、出力装置30へ出力する。デノイズ画像出力工程S106において、デノイズ画像が出力されると、画像処理方法の手順は終了される。
【0075】
[デノイズ強度調整の具体例]
〔多段階型〕
図7は
図2に示すデノイズ強度取得部の第1構成例を示す機能ブロック図である。デノイズ強度取得部122は、デノイズ画像生成部212、SN比算出部213、SN比比較部214及びデノイズ強度出力部215を備える。
【0076】
デノイズ画像生成部212は、
図2に示す画像再構成部102を用いて生成される再構成画像Irに対して、互いに異なる複数のデノイズ強度を適用して、複数の仮のデノイズ画像を生成する。
図7には、互いに異なる3種類のデノイズ強度D
a、デノイズ強度D
b及びデノイズ強度D
cが適用され、3種類の仮のデノイズ画像が生成される例が例示される。
【0077】
SN比算出部213は、デノイズ画像生成部212を用いて生成された複数のデノイズ画像のそれぞれのSN比を計算する。
図7には、デノイズ強度D
a、デノイズ強度D
b及びデノイズ強度D
cのそれぞれが適用されるデノイズ画像のSN比として、SN
a、SN
b及びSN
cが算出される例が例示される。
【0078】
SN比比較部214は、撮像条件に対応するユーザの好みのSN比として取得されたSN比SN0と、SN比算出部213を用いて算出されたSN比SNa、SN比SNb及びSN比SNcが比較される。SN比SNa、SN比SNb及びSN比SNcのいずれかがSN比SN0と同一の場合は、SN比SN0と同一のSN比が比較結果とされる。
【0079】
SN比SNa、SN比SNb及びSN比SNcのいずれともSN比SN0が一致しない場合は、SN比SNa、SN比SNb及びSN比SNcのうち、SN比SN0に最も近いSN比が比較結果とされる。SN比SN0に最も近いSN比は、SN比SN0との差の絶対値が最小となるSN比が適用される。
【0080】
デノイズ強度出力部215は、SN比比較部214の比較結果とされたSN比が算出された仮のデノイズ画像に適用されデノイズ強度が出力される。例えば、SN比SNaがSN比SN0と同一又はSN比SN0に最も近い場合、デノイズ強度出力部215は、デノイズ強度Daを出力する。
【0081】
〔SN比算出方法の具体例〕
SN比算出部213に適用されるSN比算出方法の具体例について説明する。MR画像では、背景のノイズレベルがMR画像全体のノイズレベルに比例するという特性を利用して、SN比が算出され得る。
【0082】
図8は関心領域の背景の説明図である。
図8には、AIデノイズが適用された再構成画像であるデノイズ画像Idにおける、関心領域Roi(Region of interest)及び背景Bg(Background)が図示される。
図9は背景ノイズの画素値の説明図である。
図9には、デノイズ画像Idの画素値のヒストグラムが図示される。デノイズ画像Idの画素値のヒストグラムを表すグラフの横軸は画素値を表し、縦軸は頻度を表す。
【0083】
図7に示すSN比算出部213は、
図8に示すデノイズ画像Idの関心領域Roiを抽出し、関心領域Roiの背景Bgを抽出し、背景Bgのノイズの画素値を推定する。関心領域Roiの背景Bgは、関心領域Roiである臓器等の周囲を覆う空気の領域として把握される。
図9に示す背景Bgのノイズの画素値Nvは、デノイズ画像Idの画素値のヒストグラムの頻度がピークとなる画素値が適用される。なお、ノイズの画素値Nvはノイズの信号値として把握される。
【0084】
SN比算出部213は、SN比を計算する際の信号値Svとして、デノイズ画像Idにおいて0を超える画素値の中央値を算出する。信号値Svは、デノイズ画像Idにおいて0を超える画素値の平均値であってもよい。SN比算出部213は、デノイズ画像IdのSN比として、Sv/Nvを算出する。
【0085】
なお、
図7に示すデノイズ画像生成部212を用いて生成された複数の仮のデノイズ画像は、第3デノイズ画像の一例である。同図に示すSN比SN
a、SN比SN
b及びSN比SN
cは第3信号雑音比の一例であり、デノイズ強度出力部215から出力されるデノイズ強度D
aは、第3デノイズ強度の一例である。
【0086】
〔規格化処理におけるデノイズ強度の調整〕
デノイズ強度は、
図2に示す規格化部104における規格化処理において調整される(特願2022-34774)。規格化部104へ入力される入力画像をI
0とし、規格化部104から出力される出力画像をI
nとする。
【0087】
入力画像I0における0を超える画素値の中央値をMinput(I0)とし、背景ノイズの画素値をNvとすると、SN比SNRは、SNR=Minput(I0)/Nvと表される。
【0088】
デノイズ強度をDとすると、規格化部104の出力画像Inは、In={1/Minput(I0)}×{a×(SNR/D)+b}×I0と表される。なお、a及びbは、実験等を実施して導出される規定の定数である。
【0089】
例えば、デノイズ強度を弱、中及び強の3段階に調整する場合は、出力画像Inにおけるデノイズ強度を決める係数として機能するデノイズ強度Dの値が、0.5、1.0及び1.5に設定される。
【0090】
〔無段階型〕
図10は
図2に示すデノイズ強度取得部の第2構成例を示す機能ブロック図である。
図2に示すデノイズ強度取得部122は、SN比算出部220及びデノイズ強度算出部222を備える。SN比算出部220は、
図2に示す画像再構成部102を用いて生成される再構成画像IrのSN比SNIrを算出する。
【0091】
デノイズ強度算出部222は、再構成画像IrのSN比SNIr及びユーザの好みのSN比SN0をパラメータとする関数f(SNIr,SN0)として表されるデノイズ強度Dを算出する。デノイズ強度算出部222を用いて算出されたデノイズ強度Dは、規格化部104を用いて実施される再構成画像Irの規格化処理に適用される。
【0092】
規格化処理が施された再構成画像Irは、デノイズ処理部130において
図2に示す学習モデル132を用いてデノイズ処理が実施され、デノイズ画像出力部140を用いて出力される。
【0093】
なお、
図10に示すSN比算出部220を用いて出力されるSN比SNIrは、第4信号雑音比の一例である。また、同図に示すデノイズ強度Dは、第4デノイズ強度の一例である。
【0094】
〔デノイズ強度の計算の具体例〕
図11はSN比が異なる数値ファントムに対して複数のデノイズ強度が適用され生成されるデノイズ画像のSN比を算出した結果を示す表である。
図11に示す表には、数値ファントムのSN比の数がMであり、デノイズ強度の数がNの場合が例示される。M及びNのそれぞれは、1以上の整数が適用される。
【0095】
図11に示す数値ファントムのSN比SN
1からSN比SN
Mまでのそれぞれは、デノイズ処理の対象となる再構成画像IrのSN比とされる範囲の値が適用される。また、デノイズ強度D
1からデノイズ強度D
Nまでのそれぞれは、再構成画像Irに対するデノイズ処理に用いられる範囲の値が適用される。
【0096】
図12はデノイズ強度を表す関数の説明図である。
図12では、数値ファントムのSN比がSN
1の場合でありデノイズ強度がD
1からD
5までの範囲について、デノイズ強度D=Σ(a
i×SN
i)がグラフとして図示される。なお、iは11からMNまでの添え字であり、a
iは予め規定される定数である。
【0097】
図11に示すSN比SN
1からSN比SN
Mまでのそれぞれについて、
図12に示すデノイズ強度Dを表す関数が、予め記憶される。デノイズ強度Dを表す関数は、計算機20に具備される記憶装置へ記憶されてもよいし、外部記憶装置50等の外部装置へ記憶されてもよい。なお、同図に示すデノイズ強度Dを表す関数は、信号雑音比とデノイズ強度との関係を表す関数の一例である。
【0098】
図10に示すデノイズ強度算出部222は、
図11に示すSN比SN
1からSN比SN
Mまでの中から、SN比算出部220を用いて算出される再構成画像IrのSN比SNIrと同一、又はSNIrとの差の絶対値が最小となるSN比を探索する。デノイズ強度算出部222は、探索結果として得られたSN比に対応するデノイズ強度D=Σ(a
i×SN
i)を算出する関数を用いて、ユーザが好みのSN比SN0となるデノイズ強度Dの値を決定する。
【0099】
[実施形態の第1変形例]
図13は第1変形例に係る計算機の電気的構成を示す機能ブロック図である。
図13に示す計算機20Aは、SN比データベース52に記憶される、SNデータベースを更新する機能を有する。すなわち、計算機20Aは、SNデータベースを更新するデノイズ強度更新部150を備える。
【0100】
デノイズ強度更新部150は、入力装置40を用いて入力されるデノイズ強度を更新することを表す入力信号を取得した場合に、SN比データベース52に記憶されるユーザが好みのSN比を更新する。
【0101】
図14はデノイズ強度のフィードバックに適用されるユーザインタフェースの例を示す説明図である。
図14に示すビューワ画面300は、
図13に示す出力装置30であるディスプレイを用いて表示される。
【0102】
ビューワ画面300は、デノイズ処理が施されたデノイズ画像Idである再構成画像Irが表示される画像表示領域302及びデノイズ強度の評価が表示される評価表示領域304を含んで構成される。
図14には、デノイズ強度の評価として、ちょうどよい、弱い及び強いが表示され、3種類の評価のそれぞれに対してチェックボックス306が表示される。
【0103】
ビューワ画面300へ表示されるデノイズ画像Idを見たユーザは、入力装置40を構成するマウスを用いて、評価表示領域304へ表示される複数のチェックボックス306のいずれかをチェックし得る。ユーザのチェックは、次回以降の撮像に対してフィードバックされる。
【0104】
次回以降の撮像において、フィードバックの結果に応じてデノイズ強度が変更され、かつ、変更後のデノイズ強度に対してちょうどよいが選択される場合、SN比データベース52に記憶されるユーザの好みのSN比が自動更新される。すなわち、デノイズ強度に対してちょうどよいと評価されたデノイズ画像のSN比が、新たなユーザの好みのSN比としてSN比データベース52へ記憶される。
【0105】
なお、実施形態に記載のデノイズ強度に対してちょうどよいと評価されたデノイズ画像は、第2デノイズ画像の一例であり。第2デノイズ画像に適用されたデノイズ強度は、第2デノイズ強度の一例である。
図14に示すビューワ画面300を表示させる出力装置30は表示装置の一例であり、同図に示すチェックボックス306は第1デノイズ強度の評価を表す選択肢の一例である。実施形態に記載の第1デノイズ強度の評価を表す信号は、第1評価信号の一例である。
【0106】
[実施形態の第2変形例]
第2変形例に係る計算機は、デノイズ強度の自動調整の際にデノイズ画像Idのプレビューを表示させる機能を有する。プレビューとしてされるデノイズ画像Idのデノイズ強度に問題がない場合は撮像が開始される。一方、デノイズ強度に問題がある場合は、ユーザがデノイズ強度を変更する。デノイズ強度が変更された場合は、SN比データベース52に記憶されるユーザが好みのSN比が自動更新される。
【0107】
図15はデノイズ強度の自動調整前の確認画面の第1例を示す説明図である。第1例に係る確認画面330は、デノイズ画像Idのプレビューが表示される画像表示領域332、デノイズ強度の評価が入力されるデノイズ強度評価入力領域334、及びデノイズ強度評価入力を確定させる際にクリックされるオーケーボタン336を含んで構成される。デノイズ強度評価入力領域334は、5段階のデノイズ強度のいずれかが選択される際にチェックされる5つのチェックボックス338が含まれる。
【0108】
図15に示すデノイズ画像Idは、任意の健常者を撮像して得られた過去のMR画像であり、今回の撮像対象と同一部位のMR画像に対して、今回の撮像の撮像条件と同一、又は近い撮像条件が適用された過去のMR画像である。同図に示すデノイズ画像は、自動調整されたデノイズ強度が適用されるデノイズ処理が実施されている。
【0109】
画像表示領域332へ表示されるデノイズ画像Idのプレビューを見たユーザは、5つのチェックボックス338のいずれかをチェックし、更に、オーケーボタン336をクリックして、デノイズ強度を変更し得る。一方、デノイズ画像Idのプレビューのデノイズ強度に問題がない場合、ユーザはチェックがされているチェックボックス338を変更せずにオーケーボタン336をクリックし、自動設定されたデノイズ強度を維持し、撮像を開始させる。
【0110】
なお、
図15に示す確認画面330へ表示される過去のMR画像は、第5デノイズ画像の一例であり、正常な撮像対象を過去に撮影して得られた正常画像の一例である。実施形態に記載の今回の撮像の撮像条件と同一、又は近い撮像条件は、第1撮像条件と同一の第5撮像条件、又は第1撮像条件に近い第5撮像条件の一例である。実施形態に記載のユーザがチェックを変更した際の評価信号は、第5評価信号の一例であり、ユーザがチェックを変更した場合のデノイズ強度は、第5デノイズ強度の一例である。
【0111】
図16は、デノイズ強度の自動調整前の確認画面の第2例を示す説明図である。
図16に示す画像表示領域332は、撮像対象の被験者と同一の被験者について、過去に撮像され得られたMR画像のうち、撮像条件が同一又は撮像条件が近いMR画像に対してユーザの好みのSN比に応じて自動調整されたデノイズ強度が適用されるデノイズ処理が実施されたデノイズ画像Idが表示される。
【0112】
デノイズ強度評価入力領域334には、画像表示領域332へ表示されるデノイズ画像Idに適用されるデノイズ強度にチェックが付され、表示される。ユーザは、画像表示領域332へ表示されるデノイズ画像Idを見て、デノイズ強度が適しているか否かを判断し得る。
【0113】
デノイズ強度が適しているとユーザが判断し、ユーザがオーケーボタン336をクリックする場合は、自動設定されたデノイズ強度が維持され、撮像が開始される。一方、デノイズ強度の変更が必要であるとユーザが判断し、チェックがされていないチェックボックスがチェックされる場合、チェックされたデノイズ強度が適用されるデノイズ画像Idが再表示される。
【0114】
再表示されたデノイズ画像Idに適用されるデノイズ強度が適切であると判断される場合は、撮像が開始され、かつ、SN比データベース52に記憶されるユーザが好みのSN比が自動更新される。
【0115】
なお、実施形態に記載の撮像対象の被験者と同一の被験者は、同一の撮像対象の一例である。
図16に示す過去に撮像され得られたMR画像は、同一撮像対象画像の一例であり、過去に撮像され得られたMR画像に対してデノイズ処理が実施されたデノイズ画像は、第6デノイズ画像の一例である。
【0116】
図16に示す過去に撮像され生成されたMR画像のデノイズ処理に適用されるデノイズ強度は、第6デノイズ強度の一例である。同図に示す過去に撮像され生成されたMR画像に適用される撮像条件は、第1撮像条件と同一の第6撮像条件、又は第1撮像条件に近い第6撮像条件の一例である。実施形態に記載のユーザがチェックを変更した際の評価信号は、第6評価信号の一例である。
【0117】
[実施形態の作用効果]
実施形態に係るMRI装置1は、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0118】
〔1〕
医師等のユーザごとに、過去に撮像され生成された再構成画像IrのSN比を参照して、ユーザの好みのSN比SN0が取得され、ユーザの好みのSN比SN0に応じて新たに撮像され得られた再構成画像Irに対するデノイズ処理に適用されるデノイズ強度Dが自動設定される。
【0119】
これにより、予め記憶されるユーザの好みのSN比SN0に応じたデノイズ強度Dが適用されるデノイズ処理が実施され、好ましいデノイズ画像Idが取得される。
【0120】
〔2〕
デノイズ強度Dが自動設定される場合に、ユーザの好みのSN比SN0が取得され、多段階のデノイズ強度から、ユーザの好みのSN比SN0と同一のSN比を有するデノイズ画像Idに適用されたデノイズ強度D、又はユーザの好みのSN比SN0と近いSN比を有するデノイズ画像Idに適用されたデノイズ強度Dが決定される。これにより、予め準備される複数のデノイズ強度Dの中から、ユーザの好みのSN比SN0に応じたデノイズ強度D適用されるデノイズ処理が実施され、好ましいデノイズ画像Idが取得される。
【0121】
〔3〕
デノイズ強度Dが自動設定される場合に、ユーザの好みのSN比が取得され、SN比をパラメータするデノイズ強度を表す関数f(SNIr,SN0)を適用して、ユーザの好みのSN比SN0に応じたデノイズ強度Dが決定される。これにより、SN比をパラメータする関数f(SNIr,SN0)を用いて表されるデノイズ強度Dの中から、ユーザの好みのSN比に応じたデノイズ強度Dが適用されるデノイズ処理が実施され、好ましいデノイズ画像Idが取得される。
【0122】
〔4〕
出力装置30として機能するディスプレイを用いて、デノイズ画像Idのプレビューを表示させる。プレビューが表示されるビューワ画面300は、デノイズ画像Idのデノイズ強度Dに対する評価を入力するチェックボックス306を有する。
【0123】
これにより、デノイズ画像Idのプレビューを見たユーザは、チェックボックス306をクリックして、デノイズ画像Idのデノイズ強度Dに対する評価を入力することができる。
【0124】
〔5〕
デノイズ強度Dが変更されたデノイズ画像Idに対して、デノイズ強度がちょうとよいという評価が入力された場合は、SN比データベース52に記憶されるユーザの好みのSN比が更新される。これにより、デノイズ強度に対するユーザの評価に応じて、SN比データベース52へ記憶されるユーザの好みのSN比が更新される。
【0125】
〔6〕
撮像前の撮像条件の設定画面である確認画面330へ、過去に健常者を撮像して得られた同一部位の過去画像に対して自動設定されたデノイズ強度Dが適用されるデノイズ処理が施されたデノイズ画像Id、及びデノイズ強度Dを表示させる。デノイズ強度Dに問題がない場合は、撮像が開始される。一方、デノイズ強度Dに問題がある場合は、デノイズ強度Dが変更される。デノイズ強度Dが変更された場合は、SN比データベース52へ記憶されるユーザの好みのSN比が更新される。
【0126】
これにより、デノイズ強度の事前の確認が可能である。また、デノイズ強度の変更に応じて、SN比データベース52へ記憶されるユーザの好みのSN比が更新される。
【0127】
〔7〕
撮像前の撮像条件の設定画面である確認画面330へ、撮像対象の被験者の過去画像のうち、今回の撮像条件と同一の撮像条件が適用される過去画像、又は今回の撮像条件に近い撮像条件が適用される過去画像のデノイズ画像Id、及びデノイズ強度Dを表示させる。
【0128】
これにより、過去画像のデノイズ処理に適用されたデノイズ強度を確認することができ、今回の撮像に対して適用されるデノイズ強度Dの適否を、ユーザが判断し得る。
【0129】
〔8〕
確認画面330は、複数のデノイズ強度Dのそれぞれについて、チェックボックスが表示される。これにより、ユーザは入力装置40を用いてチェックボックスをチェックして、デノイズ強度Dの変更指令を入力し得る。
【0130】
〔9〕
デノイズ強度Dが変更された場合は、SN比データベース52へ記憶されるユーザの好みのSN比が更新される。これにより、デノイズ強度の変更に応じて、SN比データベース52へ記憶されるユーザの好みのSN比が更新される。
【0131】
[各処理部のハードウェア構成について]
図2に示す計算機20及び
図13に示す計算機20Aにおける画像取得部100、画像再構成部102、規格化部104、ユーザID取得部110、撮像条件取得部112、SN比取得部120、デノイズ強度取得部122、デノイズ処理部130及びデノイズ画像出力部140などの各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、例えば、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。
【0132】
各種のプロセッサには、プログラムを実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU、GPU、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0133】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサで構成されてもよい。例えば、1つの処理部は、複数のFPGA、あるいは、CPUとFPGAの組み合わせ、またはCPUとGPUの組み合わせによって構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0134】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0135】
[コンピュータを動作させるプログラムについて]
実施形態における計算機20、及び実施形態の変形例における計算機20Aのそれぞれの処理機能の一部又は全部をコンピュータに実現させるプログラムを、光ディスク、磁気ディスク、もしくは、半導体メモリその他の有体物たる非一時的な情報記憶媒体であるコンピュータ可読媒体に記録し、この情報記憶媒体を通じてプログラムを提供することが可能である。
【0136】
またこのような有体物たる非一時的なコンピュータ可読媒体にプログラムを記憶させて提供する態様に代えて、インターネットなどの電気通信回線を利用してプログラム信号をダウンロードサービスとして提供することも可能である。
【0137】
更に、計算機20等における処理機能の一部又は全部をクラウドコンピューティングによって実現してもよく、また、SaaS(Software as a Service)として提供することも可能である。
【0138】
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0139】
20…計算機
30…出力装置
50…外部記憶装置
52…SN比データベース
100…画像取得部
102…画像再構成部
104…規格化部
110…ユーザID取得部
112…撮像条件取得部
120…SN比取得部
122…デノイズ強度取得部
130…デノイズ処理部
132…学習モデル
140…デノイズ画像出力部