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特開2024-17937リチウムイオン二次電池用負極活物質、リチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法、リチウムイオン二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017937
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用負極活物質、リチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法、リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/485 20100101AFI20240201BHJP
   C01G 23/04 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H01M4/485
C01G23/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120914
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】相田 平
【テーマコード(参考)】
4G047
5H050
【Fターム(参考)】
4G047CA06
4G047CB04
4G047CC03
4G047CD03
4G047CD07
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB03
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】リチウムイオン二次電池に適用した場合に電池容量に優れたリチウムイオン二次電池用負極活物質を提供する。
【解決手段】一般式:LiTi12-xで表され、
前記xは0<x<12であり、
元素Mが酸素よりも電気陰性度の低い元素であるリチウムイオン二次電池用負極活物質。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:LiTi12-xで表され、
前記xは0<x<12であり、
元素Mが酸素よりも電気陰性度の低い元素であるリチウムイオン二次電池用負極活物質。
【請求項2】
前記元素Mが、S、Cl、Nから選択された1種類以上である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質。
【請求項3】
前記xが0.1≦x≦2.0である請求項1または請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質。
【請求項4】
リチウム(Li)と、チタン(Ti)と、元素M(M)とを、物質量の比でLi:Ti:M=4:5:xの割合で含有する原料化合物を調製する原料化合物調製工程と、
前記原料化合物を、不活性ガス雰囲気下、600℃以上で熱処理する熱処理工程と、を有し、
前記xは0<x<12であるリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質を含む負極を備えたリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池用負極活物質、リチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法、リチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレットPCなどの小型情報端末の普及に伴い、高いエネルギー密度を有する小型で軽量な二次電池の開発が強く望まれている。また、ハイブリット自動車を始めとする電気自動車用の電池として高出力の二次電池の開発が強く望まれている。
【0003】
このような要求を満たす二次電池として、リチウムイオン二次電池がある。リチウムイオン二次電池は、負極および正極と電解質等で構成され、負極および正極の活物質として、リチウムを脱離および挿入することが可能な材料が用いられている。
【0004】
通常、リチウムイオン電池の負極には黒鉛が用いられているが、黒鉛の酸化還元電位はリチウムの酸化還元電位と極めて近いため、特に高い出力での充電時に黒鉛負極上に導電性の金属リチウムが析出し、負極と正極が短絡する不具合が発生することがある。
【0005】
そこで、負極活物質として、黒鉛よりも酸化還元電位の高いチタン酸リチウム(LiTi12)を使用することが検討されてきた(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2017-535017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、チタン酸リチウムは、質量当りの容量が低いため、リチウムイオン二次電池に適用した場合の電池容量が劣るという問題があった。
【0008】
上記従来技術が有する問題に鑑み、本発明の一側面では、リチウムイオン二次電池に適用した場合に電池容量に優れたリチウムイオン二次電池用負極活物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
一般式:LiTi12-xで表され、
前記xは0<x<12であり、
元素Mが酸素よりも電気陰性度の低い元素であるリチウムイオン二次電池用負極活物質を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、リチウムイオン二次電池に適用した場合に電池容量に優れたリチウムイオン二次電池用負極活物質を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1、比較例1で作製したコイン型電池の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[リチウムイオン二次電池用負極活物質]
本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極活物質の一構成例について説明する。
【0013】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極活物質(以下、単に「負極活物質」とも記載する)は、一般式:LiTi12-xで表すことができる。
【0014】
上記一般式中のxは0<x<12を充足し、元素Mは酸素よりも電気陰性度の低い元素である。
【0015】
本実施形態の負極活物質について以下に説明する。
(1)組成について
本実施形態の負極活物質が含有する元素と、その含有割合について、以下に説明する。
(1-1)Li(リチウム)、Ti(チタン)について
本発明の発明者は、一般式:LiTi12で表されるチタン酸リチウムをベースとして、リチウムイオン二次電池に適用した場合に、電池容量に優れた負極活物質について検討を行った。その結果、後述するように、酸素の一部を元素Mで置換することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
このため、本実施形態の負極活物質は、Liと、Tiと、を物質量の比で、Li:Ti=4:5の割合で含有できる。なお、評価方法の精度等を考慮し、測定誤差の範囲内で上記値から、例えばそれぞれ±0.1の範囲内、すなわちLiの比が3.9以上4.1以下、Tiの比が4.9以上5.1以下の範囲の場合については、上記規定を充足するものといえる。
(1-2)O(酸素)、M(元素M)について
既述のように、チタン酸リチウムは、質量当りの容量が低いため、リチウムイオン二次電池に適用した場合に、容量が低下するという問題があった。そこで、本発明の発明者は、チタン酸リチウムをベースとした負極活物質について、容量を向上させる方法について検討を行った。その結果、Oの一部を、Oよりも電気陰性度の低い元素で置換することで、Liイオンが脱離する電位を低減し、例えば実用電位範囲において吸放出できるLiイオンの量を多くでき、リチウムイオン二次電池に適用した場合に、容量を高くできることを見出した。上記実用電位範囲としては、例えば0.5V以上3.0V以下(vs.Li/Li)が挙げられる。
【0017】
Oの一部を置換する元素Mは、Oよりも電気陰性度の低い元素であればよいが、例えばS(硫黄)、Cl(塩素)、N(窒素)から選択された1種類以上であることがより好ましい。
【0018】
元素Mによる、Oの置換量を表すxの範囲は0より大きく、12よりも小さければ良いが(0<x<12)、0.1≦x≦2.0であることがより好ましい。これは元素MによるOの置換量を示すxを0.1以上とすることで、Liイオンが脱離する電位を十分に低減でき、容量向上の効果も十分に発揮できるからである。また、元素MによるOの置換量を示すxを2.0以下とすることで、酸化還元電位が過度に低下することを抑制し、金属リチウムの析出等を抑制できるからである。
(2)結晶構造について
本実施形態の負極活物質の結晶構造は特に限定されないが、岩塩型構造をとることが好ましく、岩塩型の層状構造をとることがより好ましい。本実施形態の負極活物質の結晶構造は、岩塩型構造と、層状構造との混合相とすることもできる。
[負極活物質の製造方法]
本実施形態の負極活物質の製造方法の一構成例について説明する。
【0019】
本実施形態の負極活物質の製造方法によれば、既述の負極活物質を製造できるため、既に説明した事項については、一部説明を省略する。
【0020】
本実施形態の負極活物質の製造方法は例えば以下の原料化合物調製工程、および熱処理工程を有することができる。
【0021】
原料化合物調製工程では、リチウム(Li)と、チタン(Ti)と、元素M(M)とを、物質量の比でLi:Ti:M=4:5:xの割合(0<x<12)で含有する原料化合物を調製できる。
【0022】
そして、熱処理工程では、原料化合物調製工程で調製した原料化合物を、不活性ガス雰囲気下、600℃以上で熱処理できる。
(1)原料化合物調製工程
原料化合物調製工程では、リチウム、チタン、元素Mを、目的とする負極活物質の組成比に応じて、すなわち既述の一般式と同じ組成比となるように原料化合物を調製することができる。
【0023】
具体的には、原料化合物調製工程では、上述のようにリチウム(Li)と、チタン(Ti)と、元素M(M)とを、物質量の比でLi:Ti:M=4:5:xの割合で含有する原料化合物を調製できる。
【0024】
熱処理工程における反応率等に応じて、上記Li、Ti、Mの物質量比が±0.1の範囲内で変化させることもできる。すなわち、Liの割合は3.9以上4.1以下、Tiの割合は4.9以上5.1以下、元素Mの割合はx-0.1以上x+0.1以下とすることもできる。なお、上記xは、負極活物質の一般式中の元素Mの含有割合を示すxであり、0<x<12とすることができ、0.1≦x≦2.0であることが好ましい。
【0025】
なお、各元素について個別に化合物を原料として用意する必要はなく、2種類以上の元素を同時に含有する化合物を原料として用いることもできる。
【0026】
原料化合物を調製する際に用いる原料としては、例えばLiO、TiO、LiS、LiCl、LiN等から選択された1種類以上が挙げられる。
【0027】
原料化合物調製工程では、上記所定比で各元素を含有する原料化合物を調製できれば良いが、熱処理工程における反応を容易に進行させる観点から、ミリング処理により原料化合物を混合、調製することが好ましい。
【0028】
ミリングの条件は特に限定されないが、例えばミリング容器内を不活性雰囲気として、乾式で行うことができる。
【0029】
ミリング工程の間に、原料化合物に対して十分なエネルギーを付与し、均一に混合等できるようにミリング条件を選択できる。
(2)熱処理工程
熱処理工程では、原料化合物を、不活性ガス雰囲気下、600℃以上で熱処理できる。熱処理温度の上限値は特に限定されないが、チタン酸リチウムの分解等による副生成物の生成を抑制する観点から熱処理温度は、例えば1000℃以下であることが好ましい。
不活性雰囲気としては、例えば希ガス(貴ガス)雰囲気や、窒素雰囲気が挙げられる。
【0030】
また、熱処理工程における熱処理時間は特に限定されず、反応が均一に進行するように、熱処理工程に供する原料化合物の量等に応じて選択できる。
[リチウムイオン二次電池]
本実施形態のリチウムイオン二次電池(以下、「二次電池」ともいう。)は、既述の負極活物質を含む負極を有することができる。
【0031】
以下、本実施形態の二次電池の一構成例について、構成要素ごとにそれぞれ説明する。本実施形態の二次電池は、例えば正極、負極および非水系電解質を含み、一般のリチウムイオン二次電池と同様の構成要素から構成される。なお、以下で説明する実施形態は例示に過ぎず、本実施形態のリチウムイオン二次電池は、下記実施形態をはじめとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。また、二次電池は、その用途を特に限定するものではない。
(正極)
本実施形態の二次電池が有する正極は、公知の正極活物質を含むことができる。
【0032】
以下に正極の製造方法の一例を説明する。まず、正極活物質(粉末状)、導電材および結着剤(バインダー)を混合して正極合剤とし、さらに必要に応じて活性炭や、粘度調整などの目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合剤ペーストを作製することができる。
【0033】
正極活物質としては、公知の各種正極活物質を用いることができる。正極活物質としては、例えば、LiNiOや、LiNiOのNi(ニッケル)をCo(コバルト)や、Al(アルミニウム)、Mn(マンガン)等から選択された1種類以上で置換した層状構造を有する正極活物質や、スピネル型構造を有する正極活物質等を用いることができる。
正極合剤中のそれぞれの材料の混合比は、リチウムイオン二次電池の性能を決定する要素となるため、用途に応じて、調整することができる。材料の混合比は、公知のリチウムイオン二次電池の正極と同様とすることができ、例えば、溶剤を除いた正極合剤の固形分の全質量を100質量%とした場合、正極活物質を60質量%以上95質量%以下、導電材を1質量%以上20質量%以下、結着剤を1質量%以上20質量%以下の割合で含有することができる。
【0034】
得られた正極合剤ペーストを、例えば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布し、乾燥して溶剤を飛散させ、シート状の正極が作製される。必要に応じ、電極密度を高めるべくロールプレス等により加圧することもできる。このようにして得られたシート状の正極は、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断等し、電池の作製に供することができる。
【0035】
導電材としては、例えば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛および膨張黒鉛など)や、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)などのカーボンブラック系材料などを用いることができる。
【0036】
結着剤(バインダー)としては、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂およびポリアクリル酸等から選択された1種類以上を用いることができる。
【0037】
必要に応じ、正極活物質、導電材等を分散させて、結着剤を溶解する溶剤を正極合剤に添加することもできる。溶剤としては、具体的には、N-メチル-2-ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。また、正極合剤には、電気二重層容量を増加させるために、活性炭を添加することもできる。
【0038】
正極の作製方法は、上述した例示のものに限られることなく、他の方法によってもよい。例えば正極合剤をプレス成形した後、真空雰囲気下で乾燥することで製造することもできる。
(負極)
負極は、既述の負極活物質に結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合剤を、銅等の金属箔集電体の表面に塗布、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを用いてもよい。
【0039】
負極に用いる結着剤としては、正極同様、PVDFなどの含フッ素樹脂を用いることができ、これらの活物質および結着剤を分散させる溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。
また、負極は、正極活物質に変えて、負極活物質を用いている点以外は、正極の場合と同様にして作製することもできる。
(セパレータ)
正極と負極との間には、必要に応じてセパレータを挟み込んで配置することができる。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、公知のものを用いることができ、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどの薄い膜で、微小な孔を多数有する膜を用いることができる。
(非水系電解質)
非水系電解質としては、例えば非水系電解液を用いることができる。
【0040】
非水系電解液としては、例えば支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものを用いることができる。また、非水系電解液として、イオン液体にリチウム塩が溶解したものを用いてもよい。なお、イオン液体とは、リチウムイオン以外のカチオンおよびアニオンから構成され、常温でも液体状の塩をいう。
【0041】
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートおよびトリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネートや、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート、さらにテトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランおよびジメトキシエタンなどのエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトンなどの硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチルなどのリン化合物等から選ばれる1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いることもできる。
【0042】
支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(CFSO、およびそれらの複合塩などを用いることができる。さらに、非水系電解液は、ラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤などを含んでいてもよい。
【0043】
また、非水系電解質としては、固体電解質を用いてもよい。固体電解質は、高電圧に耐えうる性質を有する。固体電解質としては、無機固体電解質、有機固体電解質が挙げられる。
【0044】
無機固体電解質としては、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質等が挙げられる。
【0045】
酸化物系固体電解質としては、特に限定されず、例えば酸素(O)を含有し、かつリチウムイオン伝導性と電子絶縁性とを有するものを好適に用いることができる。酸化物系固体電解質としては、例えば、リン酸リチウム(LiPO)、LiPO、LiBO、LiNbO、LiTaO、LiSiO、LiSiO-LiPO、LiSiO-LiVO、LiO-B-P、LiO-SiO、LiO-B-ZnO、Li1+XAlTi2-X(PO(0≦X≦1)、Li1+XAlGe2-X(PO(0≦X≦1)、LiTi(PO、Li3XLa2/3-XTiO(0≦X≦2/3)、LiLaTa12、LiLaZr12、LiBaLaTa12、Li3.6Si0.60.4等から選択された1種類以上を用いることができる。
【0046】
硫化物系固体電解質としては、特に限定されず、例えば硫黄(S)を含有し、かつリチウムイオン伝導性と電子絶縁性とを有するものを好適に用いることができる。硫化物系固体電解質としては、例えば、LiS-P、LiS-SiS、LiI-LiS-SiS、LiI-LiS-P、LiI-LiS-B、LiPO-LiS-SiS、LiPO-LiS-SiS、LiPO-LiS-SiS、LiI-LiS-P、LiI-LiPO-P等から選択された1種類以上を用いることができる。
【0047】
なお、無機固体電解質としては、上記以外のものを用いてよく、例えば、LiN、LiI、LiN-LiI-LiOH等を用いてもよい。
【0048】
有機固体電解質としては、イオン伝導性を示す高分子化合物であれば、特に限定されず、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、これらの共重合体などを用いることができる。また、有機固体電解質は、支持塩(リチウム塩)を含んでいてもよい。
(二次電池の形状、構成)
以上のように説明してきた本実施形態のリチウムイオン二次電池は、円筒形や積層形など、種々の形状にすることができる。いずれの形状を採る場合であっても、本実施形態の二次電池が非水系電解質として非水系電解液を用いる場合であれば、正極および負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に、非水系電解液を含浸させ、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リードなどを用いて接続し、電池ケースに密閉した構造とすることができる。
【0049】
なお、既述の様に本実施形態の二次電池は非水系電解質として非水系電解液を用いた形態に限定されるものではなく、例えば固体の非水系電解質を用いた二次電池、すなわち全固体電池とすることもできる。全固体電池とする場合、負極活物質以外の構成は必要に応じて変更することができる。
【実施例0050】
以下に、本発明の実施例および比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
(負極活物質の評価方法)
ICP発光分光分析装置(VARIAN社製、725ES)を用いた分析により負極活物質の組成の評価を行った。
また、負極活物質の酸素量は酸素・窒素・水素分析装置(LECO社製、ONH836)を用いて非分散型赤外線吸収法により評価した。
(リチウムイオン二次電池の評価方法)
製造したリチウムイオン二次電池の性能は、以下のように評価した。
【0051】
各実施例、比較例で作製したコイン型電池を作製してから12時間程度放置し、開回路電圧OCV(open circuit voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cmとしてカットオフ電圧0.5Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を放電容量とした。
[実施例1]
(負極活物質)
以下の手順により負極活物質を作製した。
(1)原料化合物調製工程
LiOと、TiOと、LiSを、物質量の比でLi:Ti:S=4:5:0.6となるように、秤量した。
【0052】
秤量した原料を、ジルコニアボールとともにジルコニア製のミリング容器内に入れ、容器内をArガスで置換した。次いで、遊星ボールミルにより、ミリングを行い、原料化合物を調製した。
【0053】
得られた原料化合物について、組成分析を行ったところ、LiTi11.40.6が得られていることを確認できた。また、粉末X線回折の回折パターンから、岩塩型構造を有することが確認できた。
(2)熱処理工程
原料化合物調製工程で得られた原料化合物について、アルゴン雰囲気下、800℃で、6時間熱処理を行い、負極活物質を得た。得られた負極活物質について、組成分析を行ったところ、LiTi11.40.6が得られていることを確認できた。
(コイン型電池)
得られた負極活物質を用いてリチウムイオン二次電池を作製し、充放電容量を測定した。
【0054】
図1に示すように、コイン型電池10は、ケース11と、このケース11内に収容された電極12とから構成されている。
【0055】
ケース11は、中空かつ一端が開口された正極缶111と、この正極缶111の開口部に配置される負極缶112とを有しており、負極缶112を正極缶111の開口部に配置すると、負極缶112と正極缶111との間に電極12を収容する空間が形成されるように構成されている。
【0056】
電極12は、正極121、セパレータ122および負極123からなり、この順で並ぶように積層されており、正極121が正極缶111の内面に接触し、負極123が負極缶112の内面に接触するようにケース11に収容されている。
【0057】
なお、ケース11は、ガスケット113を備えており、このガスケット113によって、正極缶111と負極缶112との間が非接触の状態、すなわち電気的に絶縁状態を維持するように相対的な移動を規制し、固定されている。また、ガスケット113は、正極缶111と負極缶112との隙間を密封して、ケース11内と外部との間を気密液密に遮断する機能も有している。
【0058】
このコイン型電池10を、以下のようにして作製した。まず、得られた負極活物質52.5mg、アセチレンブラック15mg、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂7.5mgを混合し、直径11mmで75mg程度の重量になるまでペレット化して、負極123を作製し、これを真空乾燥機中100℃で12時間乾燥した。
この負極123と、正極121、セパレータ122、および電解液を用いて、コイン型電池10を、露点が-60℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。
【0059】
正極121には、直径13mmの円盤状に打ち抜かれたリチウム金属を用いた。
【0060】
セパレータ122には、膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。電解液には、1MのLiPFを支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合比が体積基準で4:6混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。
【0061】
作製した負極活物質を含む負極を備えたコイン型電池を用いて、既述の放電容量を測定したところ、172.7mAh/gになることが確認できた。
[比較例1]
LiOと、TiOを、物質量の比でLi:Ti=4:5となるように、秤量し、原料化合物を調製した点以外は、実施例1と同様にして負極活物質、コイン型電池を作製し、評価を行った。
【0062】
得られた負極活物質について、組成分析を行ったところ、LiTi12が得られていることを確認できた。
【0063】
作製した負極活物質を含む負極を備えたコイン型電池を用いて、既述の放電容量を測定したところ、150.3mAh/gになることが確認できた。
【0064】
以上の結果から、実施例1で得られた負極活物質によれば、比較例1の負極活物質よりも、リチウムイオン二次電池に用いた場合に、電池容量が向上し、優れたものとなることが確認できた。
図1