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特開2024-179499物品移載機構および物品管理システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179499
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】物品移載機構および物品管理システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/00 20060101AFI20241219BHJP
   B25J 15/06 20060101ALI20241219BHJP
   B25J 5/00 20060101ALI20241219BHJP
   B25J 9/06 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B25J15/00 D
B25J15/06 D
B25J5/00 A
B25J9/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098386
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】冨山 智子
(72)【発明者】
【氏名】杉村 禎昭
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS14
3C707BS09
3C707CS08
3C707CU03
3C707DS06
3C707ES01
3C707EV27
3C707EV28
3C707FS01
3C707FT02
3C707FT11
3C707FU01
3C707GS01
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、ハンド部とマニピュレータとの動作の連動を必要とせず、物品移載を短時間で効率よく行うことができる物品移載機構を提供することにある。
【解決手段】
本発明の物品移載機構は、複数の物品を載置するカセット120と、物品を把持して移動させる物品把持移動部130と、カセット120と物品把持移動部130との相対位置を変化させてカセット120に保持された複数の物品105から特定の物品を選択する物品選択移動部140と、を備える。物品選択移動部140は、カセット120と物品把持移動部130との相対位置を変化させて移載対象となる物品を選択する。物品把持移動部140は、選択された物品を保持して移動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の物品を載置するカセットと、
物品を把持して移動させる物品把持移動部と、
前記カセットと前記物品把持移動部との相対位置を変化させて前記カセットに保持された複数の物品から特定の物品を選択する物品選択移動部と、
を備え、
前記物品選択移動部は、前記カセットと前記物品把持移動部との相対位置を変化させて移載対象となる物品を選択し、
前記物品把持移動部は、選択された物品を保持して移動させることで物品を移載する物品移載機構。
【請求項2】
請求項1に記載の物品移載機構において、
前記物品選択移動部は、前記カセットを移動させて前記カセットと前記物品把持移動部との相対位置を変化させる物品移載機構。
【請求項3】
請求項1に記載の物品移載機構において、
前記物品選択移動部は、前記物品把持移動部を移動させて前記カセットと前記物品把持移動部との相対位置を変化させる物品移載機構。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の物品移載機構において、
前記カセットは、物品を保持する複数のスロットと、前記複数のスロットを構成する仕切り板と、を備え、
前記仕切り板は、移動可能に支持されてスロットサイズを変更可能に構成される物品移載機構。
【請求項5】
請求項2に記載の物品移載機構において、
前記物品把持移動部は、物品を把持して物品の移載方向に移動する物品把持部を備え、
前記カセットは、
物品を保持する複数のスロットと、
物品を出し入れする経路に配置され物品が前記スロットより脱落することを抑制するラッチ部材と、
前記ラッチ部材を回動可能に支持するシャフトと、
を備え、
前記ラッチ部材は、前記物品把持部の移動に連動して回動するように構成された物品移載機構。
【請求項6】
請求項2又は3に記載の物品移載機構において、
前記カセットは、物品保温装置を備える物品移載機構。
【請求項7】
請求項2又は3に記載の物品移載機構において、
前記カセットは、複数のスロットに温度検出器を備える物品移載機構。
【請求項8】
請求項2又は3に記載の物品移載機構において、
前記物品把持移動部は、
物品を吸着把持する吸着パッドと、
前記吸着パッドを支持して空気流路を備える吸着パッドアダプタと、
前記吸着パッドアダプタの空気流路と連結され、他端部に継ぎ手が設けられた中空シャフトと、
前記中空シャフトを前記中空シャフトの軸方向に移動させると共に、前記中空シャフトの軸まわりに回転移動させるアクチュエータと、を備える物品移載機構。
【請求項9】
請求項8に記載の物品移載機構において、
前記物品把持移動部は、物品が前記カセットより離脱して前記吸着パッドのみで保持された状態において、前記中空シャフトを軸まわりに回転させて物品の姿勢を変更する物品移載機構。
【請求項10】
請求項1に記載の物品移載機構と、
前記物品移載機構を位置決めする位置決め機構と、
前記位置決め機構を搭載して自律移動可能な移動体と、
物品を保管する物品保管庫と、
を備え、
複数の物品を、複数の物品保管庫の間で移載する物品管理システム。
【請求項11】
請求項10に記載の物品管理システムにおいて、
前記位置決め機構は、複数の回転軸を持つ物品管理システム。
【請求項12】
請求項10に記載の物品管理システムにおいて、
前記位置決め機構は、複数の直動軸と回転軸とを持つ物品管理システム。
【請求項13】
請求項10に記載の物品管理システムにおいて、
物品集配管理部を備え、
前記物品集配管理部から発信される作業指示により、複数の物品を、複数の物品保管庫の間で移載する物品管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を移載する物品移載機構、および物品移載機構を備えた物品管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数種類の試薬などの消耗品を分析ユニットや格納庫、廃棄容器、作業台などの間で搬送するとともに、投入や排出に関連する一連の作業を実施する自律移動ロボットが記載されている(段落0029参照)。特許文献1の自律移動ロボットは、例えば、形状、文字、輝度、あるいは色を認識できる、カメラなどの画像入力デバイスを眼の役割として備える頭部と、自律移動ロボットを移動させるための駆動部と、物品の一時保管や処理作業を実施可能なスペースを備えた荷台部と、頭部を360度回転して全方位を画像入力デバイスで見渡すための回転機構と、伸縮可能なアーム部と、物品の把持やボタンの押下などを行うハンド部と、搬送品を保持する保管棚と、を備えている(段落0029参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2020/021837A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の自律移動ロボットは、複数の装置と、様々な物品を保管する格納庫と、搬送品を保管する保管棚と、不要品を廃棄する廃棄容器と、の間で物品を移載する際に、ハンド部が物品を把持して、物品を一つずつ移載する。また、物品を搬送する場合には、自律移動ロボットの荷台部に物品を一つずつ移載して保管棚に一時保管して搬送する。複数の物品を取り扱う場合、格納庫から保管棚へ、保管棚から装置へ、或いは保管棚から廃棄容器へ、物品を移載しようとすると、アーム(マニピュレータ)部先端に取り付けられたハンド部が繰り返し動作を行うことになる。格納庫と保管棚との間、装置と保管棚との間、或いは廃棄容器と保管棚との間を、マニピュレータが往復動作する回数が増加するにつれて(物品数が増えるにつれて)、動作時間が増大する。また、マニピュレータ動作も複雑になり、動作生成に要する時間が長くなる。さらに、ハンド部は物品の把持のみを行うため、装置、格納庫、保管棚、或いは廃棄容器に対する物品の出し入れ動作をマニピュレータが行う必要がある。特許文献1の自律移動ロボット(物品移載機構)は、ハンド部による物品単体の把持と、物品を移載する動作を担うマニピュレータと、で構成され、物品を移載するためには、ハンド部とマニピュレータの双方を連動させることが必要であった。
【0005】
本発明の目的は、ハンド部とマニピュレータとの動作の連動を必要とせず、物品移載を短時間で効率よく行うことができる物品移載機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の物品移載機構の一例は、
複数の物品を載置するカセットと、
物品を把持して移動させる物品把持移動部と、
前記カセットと前記物品把持移動部との相対位置を変化させて前記カセットに保持された複数の物品から特定の物品を選択する物品選択移動部と、
を備え、
前記物品選択移動部は、前記カセットと前記物品把持移動部との相対位置を変化させて移載対象となる物品を選択し、
前記物品把持移動部は、選択された物品を保持して移動させることで物品を移載する。
また、物品管理システムは、前記物品移載機構と、前記物品移載機構を位置決めする位置決め機構と、前記位置決め機構を搭載して自律移動する移動体と、物品を保管する物品保管庫と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ハンド部とマニピュレータとの動作の連動を必要とせず、物品移載を短時間で効率よく行うことができる物品移載機構を提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る第一物品移載機構を説明する斜視図。
図2】本発明に係る第一物品移載機構を説明する側面図。
図3】本発明に係る第一物品移載機構を説明する上面図。
図4】本発明に係る第一カセットを説明する斜視図。
図5】本発明に係る第一カセットのラッチ動作を説明する斜視図。
図6】本発明に係る第一物品移載機構の第一移載部の動作を説明する斜視図。
図7】本発明に係る第一物品移載機構の第一移載部の動作を説明する上面図。
図8A】本発明に係る第一物品移載機構の第一移載部の動作を説明する断面図であり、吸着パッドアダプタが移載のための移動を開始する前の状態を示す図である。
図8B】本発明に係る第一物品移載機構の第一移載部の動作を説明する断面図であり、ラッチ部材によるラッチを解除した状態を示す図である。
図8C】本発明に係る第一物品移載機構の第一移載部の動作を説明する断面図であり、物品の第一カセットからの移載を開始した状態を示す図である。
図9】本発明に係る第一物品管理システムを説明する図。
図10】本発明に係る第一物品保管庫を説明する図。
図11】本発明に係る第一物品管理システムの一連の動作を説明する図。
図12】本発明に係る第一物品管理システムの動作フローチャート。
図13】本発明に係る第二物品移載機構を説明する斜視図。
図14】本発明に係る第二カセットを説明する斜視図。
図15】本発明に係る第二物品移載機構の第二移載部の動作を説明する斜視図。
図16】本発明に係る第二物品管理システムを説明する図。
図17】本発明に係る第二物品保管庫を説明する図。
図18】本発明に係る第二物品管理システムの一連の動作を説明する図。
図19】本発明に係る物品管理システムの装置連携を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
複数の物品を効率よく交換して作業時間を少なくするためには、複数の物品を同時に取り扱う物品移載機構が有効である。そのためには、複数の物品を保持可能なカセットを有することが望ましい。複数の物品を保持可能なカセットは、物品数を増加させると、カセット自体が大型化してしまう懸念がある。この課題を解決するためには、カセットや物品移載機構を着脱可能な構造とすることが有効である。すなわち、物品数や取扱う物品種類の増加に対して、カセットまたは物品移載機構を複数用意し、自動で交換できるようにすることで、作業者業務を代替して作業負担を軽減する物品管理システムを提供することができる。また、物品移載機構は、コンパクトな構成で、シンプルな制御で運用できるため、物品管理システムの導入時の負担が軽減される。
【0010】
[実施例1]
本発明の第1実施例を図1から図12を参照し説明する。
最初に図1から図3を参照して、第一物品移載機構100の基本構成を説明する。
図1は本発明に係る第一物品移載機構100を説明する斜視図である。説明で用いる方向は図1中に示す通りであり、矢印の先端方向を正方向、反対方向を負方向とする。
【0011】
第一物品移載機構100は、第一移載部(第一移載装置)110と、第一カセット120と、着脱治具111と、を備える。第一移載部110は、第一物品把持移動部(第一物品把持移動装置)130と、第一物品選択移動部(第一物品選択移動装置)140と、を備える。第一移載部110は、第一ベース114と連結されている。また、着脱治具111は、同じく第一ベース114と連結されている。第一カセット120は、第一直動ガイド122および第一カセットベース121を介して、第二ベース115(図2参照)と連結されている。また、第一カセット120は、物品105を搭載可能である。図1中では、物品105として、物品105a、105b、105c、105d、105eが第一カセット120に載置されている。物品105は、略直方体で、自動分析装置などに用いられる、試薬容器、検体試験管、システム水ボトル、洗浄液ボトル等であって良い。しかし、物品105はこれらに限定されるものでははい。
【0012】
図2は本発明に係る第一物品移載機構100を説明する側面図である。
第一物品把持移動部130は、継ぎ手131と、中空シャフト132と、第一アクチュエータ133と、アクチュエータブラケット134と、吸着パッドアダプタ135と、吸着パッド136と、を備える。第一アクチュエータ133は、継ぎ手131、中空シャフト132、吸着パッドアダプタ135、および吸着パッド136を矢印A方向(Y方向)に直線的に移動させる。アクチュエータブラケット134は、第一アクチュエータ133を第一ベース114に取り付ける部材である。
【0013】
吸着パッドアダプタ135は、空気流路135a(図8A参照)を備え、吸着パッド136を支持する。中空シャフト132はその一端部が吸着パッドアダプタ135に連結され、中空シャフト132の中空部132a(図8A参照)が吸着パッドアダプタ135の空気流路135aと連通される。中空シャフト132は、他端部に継ぎ手131が設けられる。継ぎ手131には図示しない空気チューブが連結される。
【0014】
吸着パッド136は、空気流路に連結されて物品を吸着把持する部位であり、「物品把持部」を構成する。ここで、「把持」とは手で握ることを意味する言葉であるが、本明細書及び特許請求の範囲では、「把持」は手で握ることに限らず、例えば吸着や挟持等の手段によって物品を保持する状態又は動作を表す用語として用いる。第一物品把持移動部の「把持」も同様である。
【0015】
図3は本発明に係る第一物品移載機構100を説明する上面図である。
第一物品選択移動部140は、第二アクチュエータ141と、第二アクチュエータ141の回転を伝達する伝動ベルト142と、第三ベース143と、第二アクチュエータ141に接続されて伝動ベルト142に移動力を伝えるプーリの対となるプーリ144と、を備える。
【0016】
第一物品選択移動部140は、第一カセット120と物品把持移動部130との相対位置を変化させて第一カセット120に保持された複数の物品から特定の物品を選択する。本実施例では、物品選択移動部140は、カセット120を移動させてカセット120と前記物品把持移動部130との相対位置を変化させる。
【0017】
なお、プーリ144は、対となるプーリのうち、一方のプーリを図示している。第二アクチュエータ141およびプーリ144は、第三ベース143と連結されている。また、第三ベース143は、図1の第一ベース114に連結されている。第二アクチュエータ141が矢印BのごとくZ方向軸まわりに回転することで、伝動ベルト142が矢印Cのごとく移動する。伝動ベルト142が移動すると、伝動ベルト142と第一カセット120とを連結する連結治具145(図7参照)が矢印Cのごとく移動する。
【0018】
図4および図5を参照して、第一カセット120について説明する。
図4は、本発明に係る第一カセット120を説明する斜視図である。
第一カセット120は、物品を保持する第一保持部123を有する。第一保持部123は、物品を保持する空間であるスロット125と、スロット125に入れられた物品の両側面を倒れないように支持する仕切り板124と、物品がY+方向に飛び出すことを防止するラッチ部材126と、ラッチ部材126に設けた貫通孔に勘合するシャフト127(図5参照)と、を備える。
【0019】
仕切り板124は、例えば、124a、124b、124c、124dである。これらの仕切り板の間は、スロット125a、125b、125c、125d、125eである。これらのスロット125に対応して、ラッチ部材126a、126b、126c、126d、126eが設けられ、物品のY+方向への飛び出しを抑止する。なお、第一保持部123の背面(Y-方向)端部は、Z+方向に延伸する壁を有しており、物品がY-方向に飛び出すことがないように、物品を安定して第一カセット120のスロット125に保持することが可能である。
【0020】
第一カセット120は、図1に示した第一カセットベース121に固定されていても良いし、図示していない着脱部材により着脱可能に支持されていても良い。第一カセット120が着脱可能に支持されている場合、カセット単位で物品を取扱うことができるため、物品単体で取扱う場合と比べると、移載時間が短縮される効果が期待される。また、物品を温冷保温する必要がある場合、図示していない温冷保温装置(物品保温装置)120aを第一カセット120に搭載しても良い。また、温度管理を必要とする場合、温度検出器120bを第一カセット120に設けてもよい。温冷保温装置120a及び温度検出器120bは、全スロット125に設けても良いし、特定のスロット125に設けてもよい。この場合、温冷保温装置120a及び温度検出器120bは第一カセット120に組み付けることができる。例えば、第一カセット120の仕切り板124または底面(下面)に、温冷保温装置120a及び温度検出器120bを埋設することができる。本実施例では、仕切り板124に温冷保温装置120aを埋設し、底面(下面)に温度検出器120bを埋設している。温冷保温装置120aとして、例えば、熱媒体を流す配管または電熱線等を埋設すればよい。
【0021】
図5は、本発明に係る第一カセット120のラッチ動作を説明する斜視図である。
ラッチ部材126a、126b、126c、126d、126eは、軸Ax1を回転中心として回動可能に、シャフト127に支持されている。そのため、ラッチ部材126eのように、矢印Dの方向に軸Ax1まわりに回動して、スロット125内にある物品をY+方向に移動したり、外部の物品をY-方向へ移動したりすることが可能である。図5では、仕切り板124は固定されている。しかし、仕切り板124の位置は、矢印E1、E2、E3、E4のようにX方向に移動可能に支持されていても良い。また、図示していない付勢部材(例えば、ねじりばねのような弾性体やアクチュエータ)により、ラッチ部材126は、定常的にスロット125の底面より飛び出し、物品の飛び出しを抑制するように構成されている。しかし、図8で説明するラッチ機構により、矢印Dの両方向に移動するようにするも可能である。
【0022】
図6および図7を参照して、第一物品移載機構100の第一移載部110の動作について説明する。図6は、本発明に係る第一物品移載機構100の第一移載部110の動作を説明する斜視図である。図7は、本発明に係る第一物品移載機構100の第一移載部110の動作を説明する上面図である。
【0023】
第一カセット120は、第一物品選択移動部140により、矢印F方向に移動させることができる。物品105eの移載は、第一物品選択移動部140により、第一カセット120を軸Ax2と物品105eとが略同一直線上となるように移動させる。第一物品把持移動部130は、Y+方向に中空シャフト132が移動し、物品105eを吸着してY+方向に移動させることができる。また、第一物品把持移動部130の中空シャフト132は、矢印Mで示すように、軸Ax2まわりに回転することが可能である。第一物品把持移動部130の中空シャフト132が軸Ax2まわりに回転することにより、物品を把持して移載する際に物品の姿勢を変更することが可能である。中空シャフト132のY方向における移動、および軸Ax2まわりの回転は、第一アクチュエータ133によって行われる。
【0024】
図8A図8B及び図8Cを参照して、引き続き第一物品移載機構100の第一移載部110の動作について説明する。
ラッチ機構150は、ラッチ部材押圧材151と、ラッチ部材押圧材151をY+方向にガイドする押圧材ベース152と、吸着パッドアダプタ135のY-方向面に貼付されたマグネットキャッチ153と、マグネットキャッチ153と正対するようにラッチ部材押圧材151に埋め込まれて固定されたマグネット154と、を備える。図6および図7の状態は、マグネットキャッチ153とマグネット154とは磁力により接触保持されている。図6および図7で第一カセット120を移動させて、物品105eを移載する、すなわち物品を第一カセット120から排出する準備が整う。
【0025】
図8Aは、本発明に係る第一物品移載機構100の第一移載部110の動作を説明する断面図であり、吸着パッドアダプタ135が移載のための移動を開始する前の状態を示す図である。
図8Aでは吸着パッド136は物品105eに接触しておらず、物品105eは吸着パッド136によって把持されていない状態である。第一物品把持移動部130は、図8Aに示す状態から吸着パッドアダプタ135をY+方向に移動させて、吸着パッド136で物品105eを吸着する。これにより、吸着パッド136による物品105eの把持が完了する。これと同時に、マグネット154によってマグネットキャッチ153に吸着されたラッチ部材押圧材151は、吸着パッドアダプタ135と連動してY+方向に移動する。このとき、ラッチ部材押圧材151の先端傾斜部151aと、ラッチ部材126eの一端部(Y-方向端部)126e1とが接触する。
【0026】
図8Bは、本発明に係る第一物品移載機構100の第一移載部110の動作を説明する断面図であり、ラッチ部材126eによるラッチを解除した状態を示す図である。
図8Aの状態からさらに、吸着パッドアダプタ135がY+方向に移動すると、ラッチ部材押圧材151の先端傾斜部151aは、ラッチ部材126eをシャフト127まわりに回動させる。これにより、図8Bのように、ラッチ部材126eの先端(Y+方向端部)は、スロット125の底面125fより下方に移動する。
【0027】
図8Cは、本発明に係る第一物品移載機構100の第一移載部110の動作を説明する断面図であり、物品105eの第一カセット120からの移載を開始した状態を示す図である。
【0028】
さらに、図8Cのように、吸着パッドアダプタ135がY+方向に移動すると、物品105eは第一カセット120から移載される。このとき、シャフト127まわりに回動したラッチ部材126eの一端部126e1は、第一カセット120の下部と接触して回動を停止する。これと同時に、ラッチ部材126eを回動させる力を付与したラッチ部材押圧材151は、ラッチ部材126eの一端部126e1によりY+方向への移動が止められ、吸着パッドアダプタ135から離間して停止する。その結果、ラッチ部材126eは、回動した状態、すなわち、物品105eを移載可能な状態に保持される。
物品105eを第一カセット120に挿入する場合、第一物品把持移動部130により物品105eを把持して第一カセット120のスロット内に挿入する。図8Bの状態になった時、吸着パッドアダプタ135のマグネットキャッチ153と、ラッチ部材126eを固定保持していたラッチ部材押圧材151とが接触し、磁力により吸着する。
【0029】
さらに図8Aのように吸着パッドアダプタ135が移動すると、マグネット154を埋め込まれたラッチ部材押圧材151は、吸着パッドアダプタ135に貼付したマグネットキャッチ153に磁力吸着した状態で移動し、図6および図7の状態に復帰する。また、ラッチ部材126eは、図5で説明したように、図示していない付勢手段により、図5の回動状態から復帰して図4の状態となる。
【0030】
第一物品移載機構100は、吸着パッド136で物品を吸着把持しても良いし、吸着パッドに代わりグリッパーを使用しても良い。吸着パッド136と同等に物品を把持する手段と代替することができる。
【0031】
以下、第一物品管理システム500について説明する。
図9は、本発明に係る第一物品管理システム500を説明する図である。
図9では、第一物品管理システム500が2つの第一物品移載機構100a,100bを扱う場合を図示している。すなわち第一物品管理システム500は、第一物品移載機構100aと、第一物品移載機構100bと、第一物品移載機構100aが着脱可能に連結された第一位置決め機構501と、第一位置決め機構501を搭載して自律移動可能な第一移動体512と、を備える。
【0032】
図9では、第一物品移載機構100aは、物品を搭載していない状態を示し、図10で示す第一物品保管庫400から物品を取出し移載する準備をしている状態を示す。また、第一物品移載機構100bは、第一移動体502上に設けられた、図示していない物品移載機構ストッカに配置されている。第一位置決め機構501は、第一物品移載機構100aを位置決めして、図示していない第一物品保管庫400から、例えば、空となった物品を取出し、第一カセット120(図1参照)に物品を移載する。物品の移載を完了すると、第一位置決め機構501は、転回して図示していない物品移載機構ストッカに配置して、第一物品移載機構100aを切り離す。
【0033】
さらに第一位置決め機構501は、物品を搭載した第一位置決め機構100bを連結して転回する。その後、第一移動体502により、第一物品管理システム500は、図示していない第一物品保管庫400へ移動する。そして、第一物品移載機構100bに搭載した物品を、第一位置決め機構501により位置決めして移載する。第一位置決め機構501は、軸Ax3まわりに回転する機能を有する。これにより、物品移載機構100a,100bの姿勢を変更することができる。第一位置決め機構501が軸Ax3まわりに回転することにより、物品を揺動させることが可能である。一例として、物品に液体が封入されている場合、物品を揺動させることにより、物品内の液体を流動させて混ぜ合わせることが可能となる。
【0034】
第一物品管理システム500に用いる第一位置決め機構501は、複数の回転軸を有する垂直多関節ロボットであっても良いし、水平多関節ロボットであっても良いし、直交ロボット(例えば、3軸とθ軸を有する)でも良い。この場合、位置決め機構501は複数の回転軸を持つ、或いは複数の直動軸と回転軸とを持つ。
【0035】
第一移動体502上に設けられた物品移載機構ストッカは、物品移載機構100a,100bに保持された物品を保温する機能を有しても良い。
【0036】
図10は、本発明に係る第一物品保管庫400を説明する図である。
図10は、第一物品管理システム500によって、物品105を取り込み、排出、および保管する第一物品保管庫400を示している。第一物品保管庫400は、第一物品保管スロット401を備える。また、第一物品保管スロット401は、1つ以上備えられており、複数の物品105を取り込み、排出、および保管することが可能である。また、第一物品保管スロット401は、物品105を矢印Aに示す方向に出し入れできるようになっている。第一物品保管庫400に移載された物品105は、図示していない、第一物品保管庫400内の物品取り扱い手段によって好適な位置に再配置される。
【0037】
第一物品保管庫400は、例えば冷蔵庫であっても良い。また、別の例として、物品を廃棄する廃棄ボックスであっても良い。また、別の例として、保管した物品を利用して作業を行う自動装置であっても良い。
【0038】
第一物品保管庫400は、物品105のほかに、第一カセット120(図1参照)の取り込み、排出、および保管をしても良い。この場合、第一カセット120ごと移載して、別の第一物品保管庫400へ移載するときは、物品単体ごとに移載しても良い。
【0039】
さらに、第一物品保管庫400は、物品を搭載した第一物品移載機構100a,100bの取り込み、排出、および保管を行っても良い。この場合、第一物品保管庫400は、その内部に図示していない物品移載機構ストッカを有し、第一物品移載機構100a,100bは図9で示した第一位置決め機構501により自動的に着脱される。
【0040】
第一カセット120や第一物品移載機構100a,100bを第一物品保管庫400内で保管する場合、図示していない第一物品保管庫400内に設けられた物品取り扱い機構により、予め第一カセット120に物品を搭載していても良い。この場合、第一物品保管庫400内で物品の移載が完了しているため、物品の移載動作を省略することができる。これにより、作業時間の短縮が期待される。
【0041】
図11は、本発明に係る第一物品管理システム500の一連の動作を説明する図である。
(A):第一物品管理システム500は、第一移動体502により、第一物品保管庫400まで移動する。第一位置決め機構501により、第一物品移載機構100は、第一物品保管スロット401に略正対するように位置決めされる。
【0042】
(B):第一物品移載機構100は、第一物品把持移動部130(図1参照)を動作させて物品105を吸着把持する。
【0043】
(C),(D):第一物品移載機構100は、吸着把持した物品105を、第一物品保管庫400の第一物品保管スロット401方向に移動させる。
【0044】
(E):第一物品移載機構100は、物品105を第一物品保管スロット401に挿入を完了する。
【0045】
第一物品保管スロット401に物品105を挿入完了すると、第一物品移載機構100は、第一物品把持移動部130を初期位置まで復帰させる。複数の物品がある場合、第一物品移載機構100は、第一物品選択移動部140(図1参照)により、次の物品を選択して吸着把持する。これと略同時に、第一位置決め機構501は、第一物品保管庫400の別の第一物品保管スロット401に略正対するように第一物品移載機構100を位置決めする。その後、前述のように物品105を移載する。
【0046】
物品105を第一物品保管庫400から取り出して第一物品移載機構100の第一カセット120(図1参照)に移載する場合、前述の動作と逆の手順で動作させる。異なる点は、第一物品移載機構100は、物品105を吸着していない状態で、第一物品把持移動部140を動作させて、第一物品保管スロット401に吸着パッド136(図2参照)を進入させて物品105を吸着させることである。また、第一物品移載機構100への移載が完了すると、第一物品把持移動部130は、物品105の吸着把持を解除し、かつラッチ機構150(図8A参照)が動作して、第一カセット120のスロット125(図4参照)に保持される。
【0047】
図12は、本発明に係る第一物品管理システム500の動作フローチャートである。
ここでは、各構成要件に対するナンバリングは行わないで説明する。物品管理システム500は、図19で示す物品集配管理部700より指示を受けて動作を開始する(301)。物品集配管理部700からの指示は、所定の物品保管庫から別の物品保管庫へ指定された物品を移載することである。前記指示を物品管理システム500が受領すると、物品管理システム500は移動体502により、指示された物品保管庫400へ移動する(302)。次に物品保管庫400近くの所定の位置に移動体502が位置決め動作を行う(303)。ここで、移動体502による位置決め動作が完了しない場合、再度位置決め動作を実施し(304NO)、位置決め動作が完了した場合、次の工程に移行する(304YES)。次に物品移載を開始する(305)。物品移載時の動作は、図11で説明した通りである。物品移載は、(1)物品移載機構100から物品保管庫400へ物品を移載する、(2)物品保管庫400から物品移載機構100へ物品を移載する、ことを含む。次に物品が指示通りに移載されたことを確認する(306)。物品移載機構100に移載すべき物品が残っている場合、物品移載が完了していないとして物品移載を継続する(306NO)。物品移載が完了すると次の工程に移行する(306YES)。次に作業の完了を確認する(307)。複数の物品保管庫400に対して物品を移載する場合、次の物品保管庫400へ移動する必要があるため、移動体502が移動する(307NO)。すべての指示された物品移載が完了した場合、動作を完了する(307YES)(308)。一連の動作中に異常が発生した場合、異常であることを示す警告音や警告灯などにより、作業者に知らせるとともに、物品管理システム500は一時的に停止する。異常が改善された後に、物品移載を再開する。異常を検出する手段の一例として、RFID技術を適用しても良い。すなわち、物品に物品情報が書き込まれたICタグが貼付され、ICタグの情報を電波などでワイヤレスに読み取り書き換えできる通信装置を備えることで、対象となる物品が適切に移載されたかどうかを確認することができる。この技術を使うことで、物品管理システム500が移動中や、物品移載機構100が物品移載中に物品を誤って落下させたりした場合に異常と検出して、作業者に知らせることができ、誤作業の発生の抑制や、作業再開の円滑な進行が期待できる。
【0048】
[実施例2]
本発明の第2実施例を図13から図19を参照し説明する。
図13は、本発明に係る第二物品移載機構200を説明する斜視図である。
第二物品移載機構200は、第二移載部(第二移載装置)210と、第二カセット220と、第二物品移載機構200を第二位置決め機構511(図16参照)に対して脱着を可能とする着脱治具111と、を備える。さらに、第二移載部210は、第二物品把持移動部(第二物品把持移動装置)230と、第二物品選択移動部(第一物品選択移動装置)240と、を備える。着脱治具111と第二物品選択移動部240とは、第四ベース214、および第四ベースと連結されている第五ベース215を介して連結されている。
【0049】
着脱治具111は、実施例1で説明しているので説明を省略する。第二カセット220は、第二物品保持部223を有する。第二物品保持部223は、第二物品把持移動部230により移載される物品205(205a、205b、205c、205d、205e)を保持する。第二カセット220については図14で詳細を説明する。
【0050】
第二物品把持移動部230は、空気チューブが連結される継ぎ手231と、継ぎ手231が連結される中空シャフト232と、中空シャフト232を矢印Gの方向に移動させる第三アクチュエータ233と、第三アクチュエータ233を一端で固定し、他端は第五ベース215に固定された第二直動ガイド222に固定され、矢印Hの方向に移動する第六ベース234と、吸着パッドアダプタ235に固定される吸着パッド(物品把持部)236と、を備える。
【0051】
吸着パッドアダプタ235は、中空シャフト232において、継ぎ手231が連結された端部とは反対側の端部に固定される。吸着パッド236は、継ぎ手231、中空シャフト232および吸着パッドアダプタ235に設けられた空気流路と連通し、物品205を吸着把持する。
【0052】
第二物品選択移動部240は、第二物品把持移動部230を移動させる第四アクチュエータ241と、第四アクチュエータ241と連結されたプーリ245と、プーリ245と矢印Kの方向に対向して設けられたプーリ244と、プーリ244とプーリ245とを連結して第四アクチュエータ241の動力を伝達する伝動ベルト242と、第四アクチュエータ241とプーリ244を支持する図示していないシャフトとを固定する第七ベース243と、を備える。
【0053】
第二の物品選択移動部240は、第四アクチュエータ241が矢印Jの方向に回転することで、第二物品把持移動部230を矢印Kの方向に移動することができる。
【0054】
第一物品選択移動部140は、第一カセット120と物品把持移動部130との相対位置を変化させて第一カセット120に保持された複数の物品から特定の物品を選択する。本実施例では、物品選択移動部240は、物品把持移動部230を移動させてカセット220と物品把持移動部230との相対位置を変化させる。
【0055】
第二物品把持移動部230の中空シャフト232は、矢印Nで示すように、第三アクチュエータ233によりZ方向軸まわりに回転することが可能である。中空シャフト232がZ方向軸まわりに回転することにより、物品205を把持して移載する際に、物品205の姿勢を変更することが可能である。
【0056】
物品205の姿勢を変更できることは、移載先の様態に合わせて物品205を移載することを可能とする。さらに、物品205の姿勢を変更できることは、物品205を揺動させることを可能とする。一例として、物品に液体が封入されている場合、物品205を揺動させることにより、物品内の液体を流動させて混ぜ合わせることが可能である。物品205は、略直方体で、自動分析装置などに用いられる、試薬容器、検体試験管、システム水ボトル、洗浄液ボトルであって良い。しかし、物品205はこれらに限定されるものでははい。
【0057】
図14は、本発明に係る第二カセット220を説明する斜視図である。
第二カセット220は、物品205(205c、205d、205e)を安定に保持できるスロット225(225a、225b)を有する。スロット225は、物品を安定に保持するための仕切り板224(224a、225b、225c)を有する。仕切り板224は通常固定されている。しかし、仕切り板224は、矢印Lが示す方向に移動可能に支持されても良く、その場合、Y方向長さが異なる物品205を保持(混載)することも可能である。
【0058】
第二カセット220は、第五ベース215に固定されていても良いし、図示していない着脱部を持って取り外し可能に支持されていても良い。第二カセット220が着脱可能に支持されている場合、カセット単位で物品を取扱うことができるため、物品単体で取扱う場合と比べると、移載時間が短縮される効果が期待できる。
【0059】
また、物品を温冷保温する必要がある場合、図示していない温冷保温装置(物品保温装置)を第二カセット220又は各スロット225に搭載しても良い。また、温度管理を必要とする場合、温度検出器を第二カセット220又は各スロット225に設けても良い。この場合、温冷保温装置及び温度検出器はカセット220に組み付けることができ、例えばカセット220をヒータ及び温度検出器を埋設したものとすることで実現できる。
【0060】
また、物品を温冷保温する必要がある場合、温冷保温装置(物品保温装置)220aを第二カセット220に搭載しても良い。また、温度管理を必要とする場合、温度検出器220bを第二カセット120に設けてもよい。温冷保温装置220a及び温度検出器220bは、全スロット225に設けても良いし、特定のスロット125に設けてもよい。この場合、温冷保温装置220a及び温度検出器220bは第二カセット220に組み付けることができる。例えば、第二カセット220の仕切り板224または底面(下面)に、温冷保温装置220a及び温度検出器220bを埋設することができる。本実施例では、温冷保温装置120a及び温度検出器120bを底面(下面)に埋設した例を示す。温冷保温装置220aとして、例えば、熱媒体を流す配管または電熱線等を埋設すればよい。
【0061】
図15は、本発明に係る第二物品移載機構200の第二移載部210の動作を説明する斜視図である。
図15上左図は、第二物品移載機構200の初期位置を示す。また、物品は第二カセット220に5個搭載されている。また、第二物品把持移動部230は、第二物品選択移動部240により、Y-方向に移動させられている。また、第二物品移載機構200は、図16で説明する物品管理システム510の第二位置決め機構511により、物品移載先である第二物品保管庫のスロット近傍に位置決めされている。図15では、物品のうち、Y+方向端にある物品の移載を例にして説明する。図15上左図で物品移載の指示があると、第二物品選択移動部240は、物品を吸着把持するために矢印HのY+方向に移動を開始する。
【0062】
図15上中図は、第二物品選択移動部240により、第二物品把持移動部230を移載対象となる物品の略直上に移動した状態である。この状態から、中空シャフト232を矢印GのZ-方向に移動させることで、図15上右図に示すように、第二物品把持移動部230は、物品を吸着把持する。次に、物品を吸着把持したまま、矢印GのZ+方向に中空シャフト232を移動させて、図15下左図のように、第二カセット220のスロット225から物品を取り出す。次に第二物品選択移動部240が矢印HのY+方向に移動することで、図15下中図のように第二カセット220の外側に物品が移動させられる。次に矢印GのZ-方向にさらに中空シャフト232を移動させることで、図15下右図のように物品がZ-方向に移動して、第二物品保管庫600の物品保管スロット601(図17参照)に移載される。物品を第二物品保管庫600から第二物品移載機構200に移載する場合は、前述の説明の逆順で行い、第二カセット220に物品を移載する。第二物品移載機構200は、吸着パッド236で物品を吸着把持しても良いし、吸着パッドに代わりグリッパーを使用しても良い。吸着パッド236は、吸着パッド236と同等に物品を把持する手段と代替することができる。
【0063】
図16は、本発明に係る第二物品管理システム510を説明する図である。
図16では、第二物品管理システム510が2つの第二物品移載機構200a,200bを扱う場合を図示している。すなわち第二物品管理システム510は、第二物品移載機構200aと、第二物品移載機構200bと、第二物品移載機構200aが着脱可能に連結された第二位置決め機構511と、第二位置決め機構511を搭載して自律移動可能な第二移動体512と、を備える。
【0064】
図16では、第二物品移載機構200aは、物品を搭載していない状態を示し、図17で示す第二物品保管庫600から物品を取出し移載する準備をしている状態を示す。また、第二物品移載機構200bは、第二移動体512上に設けられた、図示していない物品移載機構ストッカに配置されている。第二位置決め機構511は、第二物品移載機構200aを位置決めして、図示していない第二物品保管庫600から、例えば、空となった物品を取出し、第二カセット220(図13参照)に物品を移載する。物品の移載を完了すると、第二位置決め機構511は、転回して図示していない物品移載機構ストッカに配置して、第二物品移載機構200aを切り離す。
【0065】
さらに第二位置決め機構511は、物品を搭載した第二位置決め機構200bを連結して転回する。その後、第二移動体512により、第二物品管理システム510は、図示していない第二物品保管庫600へ移動する。そして、第二物品移載機構200bに搭載した物品を、第二位置決め機構511により位置決めして移載する。第二位置決め機構511は、軸Ax4まわりに回転する機能を有する。これにより、物品移載機構200a,200bの姿勢を変更することができる。第二の位置決め機構511が軸Ax4まわりに回転することにより、物品を揺動させることが可能である。一例として、物品に液体が封入されている場合、物品を揺動させることにより、物品内の液体を流動させて混ぜ合わせることが可能となる。
【0066】
第二物品管理システム510に用いる第二位置決め機構511は、複数の回転軸を有する垂直多関節ロボットであっても良いし、水平多関節ロボットであっても良いし、直交ロボット(例えば、3軸とθ軸を有する)でも良い。この場合、位置決め機構511は複数の回転軸を持つ、或いは複数の直動軸と回転軸とを持つ。
【0067】
第二移動体512上に設けられた、物品移載機構ストッカは、物品移載機構200a,200bに保持された物品を保温する機能を有しても良い。
【0068】
図17は、本発明に係る第二物品保管庫600を説明する図である。
第二物品保管庫600は、第二物品保管スロット601を備える。また、第二物品保管スロット601は、1つ以上備えられており、複数の物品205を取り込み、排出、および保管することが可能である。また、第二物品保管スロット601は、物品205を矢印Gに示す方向に出し入れできるようになっている。第二物品保管庫600に移載された物品205は、図示していない、第二物品保管庫400内の物品取り扱い手段によって好適な位置に再配置される。
【0069】
矢印Hは、第二物品移載機構200a,200bの移動方向を示す。第二物品移載機構200a,200bは、矢印Hの方向に移動しながら、第二物品保管スロット601に物品205を移載する。第二物品保管庫600は、例えば冷蔵庫であっても良い。また、別の例として、物品を廃棄する廃棄ボックスであっても良い。また、別の例として、保管した物品を利用して作業を行う自動装置であっても良い。
【0070】
第二物品保管庫600は、物品205のほかに、第二カセット220の取り込み、排出、および保管をしても良い。この場合、第二カセット220ごと移載して、別の第二物品保管庫600へ移載するときは、物品単体ごとに移載しても良い。
【0071】
さらに、第二物品保管庫600は、物品を搭載した第二物品移載機構200a,200bの取り込み、排出、および保管を行っても良い。この場合、第二物品保管庫600は、その内部に図示していない物品移載機構ストッカを有し、第二物品移載機構200a,200bは図16で示した第二位置決め機構511により自動的に着脱される。
【0072】
第二カセット220や第二物品移載機構200a,200bを第二物品保管庫600内で保管する場合、第一物品保管庫600内に設けられた、図示していない物品取り扱い機構により、予め第二カセット220に物品を搭載していても良い。この場合、第二物品保管庫600内で物品の移載が完了しているため、物品の移載動作を省略することができる。これにより、作業時間の短縮が期待される。
【0073】
図18は、本発明に係る第二物品管理システム510の一連の動作を説明する図である。
(A):第二物品管理システム510の移載時の初期位置の一例を示す。この例では物品205を第二物品保管スロット601の右奥に移載しようとしている。そのため、左奥に物品移載動作可能な空間を設けるように、第二物品管理システム510の第二位置決め機構511は第二物品移載機構200を位置決めする。第二物品管理システム510および第二物品保管庫600の説明はそれぞれ図16および図17で説明したので省略する。
【0074】
(B):第二物品移載機構200は、移載対象となる物品205の略直上に第二物品把持移動部230を移動させる。
【0075】
(C):第二物品移載機構200は、第二物品把持移動部230により物品205を吸着把持する。
【0076】
(D):第二物品移載機構200は、物品205を第二カセット220より取り出す。
【0077】
(E):第二物品移載機構200は、第二カセット220より取り出した物品205を第二物品選択移動部240により、対象となる第二物品保管スロット601の略直上まで移動させる。
【0078】
(F):第二物品移載機構200は、第二物品把持移動部230により第二物品保管スロット601に物品205を移載する。
【0079】
第二物品保管スロット601に物品を移載完了すると、第二物品移載機構200は、第二物品把持移動部230を初期位置まで復帰させる。図18のように複数の物品がある場合、第二物品移載機構200は、第二物品選択移動部240および第二物品把持移動部230により、次の物品を選択して吸着把持する。これと略同時に、第二位置決め機構511は、第二物品保管庫600の別の第二物品保管スロット601に物品を移載可能な位置に第二物品移載機構200を位置決めする。その後、前述のように物品205を移載する。
【0080】
物品205を第二物品保管庫600から取り出して第二物品移載機構200の第二カセット220に移載する場合、前述の動作と逆の手順で動作させる。異なる点は、第二物品移載機構200は、物品205を吸着していない状態で、第二物品把持移動部230を動作させて、第二物品保管スロット601に吸着パッド236を進入させて物品205を吸着させることである。また、第二物品移載機構200への移載が完了すると、第二物品把持移動部230は、物品205の吸着把持を解除する。また、上記動作は、実施例1で図12を参照して説明したフローチャートのように、物品移載動作を行う。
【0081】
図19は、本発明に係る物品管理システム500,510の装置連携を説明する図である。
図19は物品管理システムの装置連携を説明する一例として、第一物品保管庫400と、第二物品保管庫600と、第一物品管理システム500と、第二物品管理システム510と、物品集配管理部700と、が連携する状況を示す。
【0082】
物品集配管理部700は、第一物品保管庫400と、第二物品保管庫600と、に入庫される物品の情報を有する。物品の情報とは、物品の種類、製造年月日、使用履歴などの物品管理に必要な情報である。物品の情報は、図12で説明したRFID技術を応用して、物品情報が入ったICタグを物品に貼付し、別途設けられた通信装置により通信することで読み取り、書き込みをすることで管理される。
【0083】
さらに、実施例1の図11および実施例2の図18で示した、それぞれの物品管理システムの一連の動作を行うために、物品集配管理部700は、物品管理システムおよび物品保管庫と通信することで、物品の保管状況を監視する。物品が不足する場合、物品集配システム700は、該当する物品保管庫から物品を取り出すように物品管理システム指令を発する。指令を受けた物品管理システムは、所定の物品保管庫に物品を保管する。説明してきたように、物品管理システム500,510は、物品の情報に基づき、物品の集配を行う。
【0084】
上述した本発明に係る実施例は、下記特徴を有する。
(1)物品移載機構100,200は、
複数の物品105,205を載置するカセット120,220と、
物品105,205を把持して移動させる物品把持移動部130,230と、
カセット120,220と物品把持移動部130,230との相対位置を変化させてカセット120,220に保持された複数の物品105,205から特定の物品を選択する物品選択移動部140,240と、
を備え、
物品選択移動部140,240は、カセット120,220と物品把持移動部130,230との相対位置を変化させて移載対象となる物品105,205を選択し、
物品把持移動部130,230は、選択された物品105,205を保持して移動させることで物品を移載する。
【0085】
(2)物品選択移動部140は、カセット120を移動させてカセット120と前記物品把持移動部130との相対位置を変化させる。
【0086】
(3)物品選択移動部240は、物品把持移動部230を移動させてカセット220と物品把持移動部230との相対位置を変化させる。
【0087】
(4)カセット120,220は、物品を保持する複数のスロット125,225と、複数のスロット125,225を構成する仕切り板124,224と、を備え、
仕切り板124,224は、移動可能に支持されてスロットサイズを変更可能に構成される。
【0088】
(5)物品把持移動部130は、物品を把持して物品の移載方向に移動する物品把持部136を備え、
カセット120は、
物品を保持する複数のスロット125と、
物品を出し入れする経路に配置され物品がスロット125より脱落することを抑制するラッチ部材126と、
ラッチ部材126を回動可能に支持するシャフト127と、
を備え、
ラッチ部材126は、物品把持部136の移動に連動して回動するように構成される。
【0089】
(6)カセット120,220は、物品保温装置120a,220aを備える。
【0090】
(7)カセット120,220は、複数のスロット125,225に温度検出器120b,220bを備える。
【0091】
(8)物品把持移動部130,230は、
物品を吸着把持する吸着パッド136,236と、
吸着パッド136,236を支持して空気流路を備える吸着パッドアダプタ135,235と、
吸着パッドアダプタ135,235の空気流路135aと連結され、他端部に継ぎ手131,231が設けられた中空シャフト132,232と、
中空シャフト132,232を中空シャフトの軸方向に移動させると共に、中空シャフトの軸まわりに回転移動させるアクチュエータ133,233と、を備える。
【0092】
(9)物品把持移動部130,230は、物品がカセット120,220より離脱して吸着パッド136,236のみで保持された状態において、中空シャフト132,232を軸まわりに回転させて物品の姿勢を変更する。
【0093】
(10)物品管理システムは、
物品移載機構100,200を位置決めする位置決め機構501,511と、
位置決め機構501,511を搭載して自律移動可能な移動体502,522と、
物品を保管する物品保管庫400,600と、
を備え、
複数の物品を、複数の物品保管庫の間で移載する。
【0094】
(11)位置決め機構501,511は、複数の回転軸を持つ。
【0095】
(12)位置決め機構501,511は、複数の直動軸と回転軸とを持つ。
【0096】
(13)物品管理システムは、物品集配管理部700を備え、物品集配管理部700から発信される作業指示により、複数の物品を、複数の物品保管庫400,600の間で移載する。
【0097】
上述した本発明に係る実施例によれば、複数の物品を効率良く交換できる物品移載機構により、作業者の負担を軽減することができる。また、複数の物品を搭載し、物品の出し入れを順次行うことができる物品移載機構により、作業時間を短縮することができる。さらに、物品を短時間で出し入れできるため、物品が周囲環境から受ける影響を小さくすることができる。さらに、複数の物品をコンパクトな構成かつシンプルな制御で実現できるため、作業者が行う物品管理システムの教示時間(物品管理システムに対して、作業者が予め一連の動作を指示する時間)を短縮することができる。
【0098】
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0099】
100,200…物品移載機構、105,205…物品、120,220…カセット、120a,220a…物品保温装置、120b,220b…温度検出器、124,224…仕切り板、125,225…スロット、126…ラッチ部材、127…ラッチ部材126を回動可能に支持するシャフト、130,230…物品把持移動部、131,231…継ぎ手、132,232…中空シャフト、133,233…アクチュエータ、135,235…吸着パッドアダプタ、135a…空気流路、136,236…物品把持部(吸着パッド)、140,240…物品選択移動部、400,600…物品保管庫、500,510…物品管理システム、501,511…位置決め機構、502,522…移動体、700…物品集配管理部。
図1
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