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特開2024-179511磁気共鳴イメージングシステム及び磁気共鳴イメージングシステムの作動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179511
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージングシステム及び磁気共鳴イメージングシステムの作動方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
A61B5/055 376
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098414
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100153822
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 重之
(72)【発明者】
【氏名】神波 一穂
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 善隆
(72)【発明者】
【氏名】横沢 俊
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA17
4C096AB07
4C096AB12
4C096AD13
4C096BA42
4C096DB02
(57)【要約】
【課題】信号対雑音比を改善した再構成画像を生成する画磁気共鳴イメージングシステム及び磁気共鳴イメージングシステムの作動方法を提供する。
【解決手段】磁気共鳴撮像装置100と、プロセッサ202、メモリ204と、を備えた磁気共鳴イメージングシステム10である。プロセッサ202は、撮像シーケンスにしたがって磁気共鳴撮像装置100により被検体の同一スライスを複数回撮像させ、複数回の撮像に対応して核磁気共鳴信号を示す計測データを収集し、複数回の撮像で収集した計測データから実空間の1枚の最終画像を生成する場合に使用する共通解を取得し、複数回の撮像で収集した計測データ及び磁気1つの共通解を使用して最終画像を生成する

【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴撮像装置と、プロセッサと、少なくとも1つのメモリと、を備えた磁気共鳴イメージングシステムであって、
前記プロセッサは、
撮像シーケンスにしたがって前記磁気共鳴撮像装置により被検体の同一スライスを複数回撮像させ、
前記磁気共鳴撮像装置から前記複数回の撮像に対応して核磁気共鳴信号を示す計測データを収集し、
前記複数回の撮像で収集した前記計測データから実空間の1枚の最終画像を生成する場合に使用する共通解を取得し、
前記複数回の撮像で収集した前記計測データ及び前記共通解を使用して前記最終画像を生成する、
磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項2】
前記撮像シーケンスは、マルチショットシーケンス又はシングルショットシーケンスであり、前記マルチショットシーケンス又は前記シングルショットシーケンスを複数回実行する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記最終画像として拡散強調画像を生成する、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項4】
前記磁気共鳴撮像装置は、Nchチャンネルのマルチプルアレイコイルからなる受信コイルを備え、
前記プロセッサは、前記撮像シーケンスにおけるショット数をNshとした場合、1回の撮像によりNch×Nsh枚の前記計測データを収集し、
前記Nch×Nsh枚の前記計測データを逆フーリエ変換して得られるNch×Nsh枚の実空間の中間画像であって、前記複数回の撮像回数をN回とすると、前記N回の撮像毎の前記中間画像をSi(i=1~N)とし、前記最終画像をmとしたときの行列式を、以下の[数1]式、
【数1】
(但し、Bi:コイル感度行列を含む行列Bi(i=1~N))
で表した場合、前記[数1]式により算出される前記共通解をDとすると、前記共通解Dは、以下の[数2]式、
【数2】
(但し、Ball:前記行列Bi(i=1~N)、Σ:前記受信コイルのNchチャンネル間のノイズ相関行列)
により表わされ、
前記プロセッサは、
前記Nch×Nsh枚の前記計測データを逆フーリエ変換して前記Nch×Nsh枚の前記中間画像Siを生成し、
前記N回の撮像毎に生成した前記中間画像Siの全ての前記中間画像をSallとすると、前記中間画像Sallと前記共通解Dとに基づいて、以下の[数3]式、
【数3】
により前記最終画像mを生成する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項5】
前記撮像シーケンスは、マルチショットシーケンスであり、
前記マルチショットシーケンスのショット数をNsh回とし、パラレルイメージング法の倍速率をRとすると、k空間の位相エンコード方向に1/Rに間引かれたライン数配置される、前記計測データは、位相エンコード方向に1/(Nsh×R)に間引かれ、Nsh回に分けて収集され、
前記行列Biは、前記Nchチャンネルからなる前記受信コイルのコイル感度行列と、前記Nsh回に分けて収集された前記計測データのk空間の配置誤差に対応する位相シフトを示す位相シフト行列と、前記Nsh回に分けて収集された前記計測データの間の、被検体の体動に起因する位相変動を示す位相変動行列とを含み、
前記プロセッサは、前記コイル感度行列、前記位相シフト行列、前記位相変動行列、及び前記受信コイルのNchチャンネル間のノイズ相関行列に基づいて前記共通解Dを算出する、
請求項4に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項6】
前記マルチショットシーケンスは、前記計測データとしてメインエコー信号及びナビエコー信号を取得するためのメインスキャン及びナビスキャンを含み、
前記メモリは、前記コイル感度行列、前記位相シフト行列、及び前記ノイズ相関行列を記憶し、
前記プロセッサは、前記メモリから前記コイル感度行列、前記位相シフト行列、及び前記ノイズ相関行列を取得し、前記Nsh回の前記ナビエコー信号に基づいて前記位相変動行列を算出する、
請求項5に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項7】
前記磁気共鳴撮像装置は、Nchチャンネルのマルチプルアレイコイルからなる受信コイルを備え、
前記プロセッサは、前記撮像シーケンスにおけるショット数をNshとした場合、1回の撮像によりNch×Nsh枚の前記計測データを収集し、
前記Nch×Nsh枚の前記計測データを逆フーリエ変換して得られるNch×Nsh枚の実空間の中間画像であって、前記複数回の撮像回数をN回とすると、前記N回の撮像毎の前記中間画像をSi(i=1~N)とし、前記最終画像をmとしたときの行列式を、以下の[数1]式、
【数1】
(但し、Bi:コイル感度行列を含む行列Bi(i=1~N))
で表した場合、前記[数1]式により算出される前記共通解をDとすると、前記共通解Dは、以下の[数2]式、
【数2】
(但し、Ball:前記行列Bi(i=1~N))
により表わされ、
前記プロセッサは、
前記Nch×Nsh枚の前記計測データを逆フーリエ変換して前記Nch×Nsh枚の前記中間画像Siを生成し、
前記N回の撮像毎に生成した前記中間画像Siの全ての前記中間画像をSallとすると、前記中間画像Sallと前記共通解Dとに基づいて、以下の[数3]式、
【数3】
により前記最終画像mを生成する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項8】
前記撮像シーケンスは、マルチショットシーケンスであり、
前記マルチショットシーケンスのショット数をNsh回とし、パラレルイメージング法の倍速率をRとすると、k空間の位相エンコード方向に1/Rに間引かれたライン数配置される、前記計測データは、位相エンコード方向に1/(Nsh×R)に間引かれ、Nsh回に分けて収集され、
前記行列Biは、前記Nchチャンネルからなる前記受信コイルのコイル感度行列と、前記Nsh回に分けて収集された前記計測データのk空間の配置誤差に対応する位相シフトを示す位相シフト行列と、前記Nsh回に分けて収集された前記計測データの間の、被検体の体動に起因する位相変動を示す位相変動行列とを含み、
前記プロセッサは、前記コイル感度行列、前記位相シフト行列、前記位相変動行列、及び前記受信コイルのNchチャンネル間のノイズ相関行列に基づいて前記共通解Dを算出する、
請求項7に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項9】
前記マルチショットシーケンスは、前記計測データとしてメインエコー信号及びナビエコー信号を取得するためのメインスキャン及びナビスキャンを含み、
前記メモリは、前記コイル感度行列、前記位相シフト行列、及び前記ノイズ相関行列を記憶し、
前記プロセッサは、前記メモリから前記コイル感度行列、前記位相シフト行列、及び前記ノイズ相関行列を取得し、前記Nsh回の前記ナビエコー信号に基づいて前記位相変動行列を算出する、
請求項8に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項10】
前記撮像シーケンスは、パラレルイメージング法を適用したシングルショットシーケンスであり、
前記メモリは、前記共通解Dを記憶し、
前記プロセッサは、前記メモリから前記共通解Dを取得する、
請求項4又は7に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項11】
磁気共鳴撮像装置と、プロセッサと、少なくとも1つのメモリと、を備えた磁気共鳴イメージングシステムの作動方法であって、
前記プロセッサが、2以上の整数をNとすると、撮像シーケンスにしたがって前記磁気共鳴撮像装置により被検体の同一スライスを複数回撮像させるステップと、
前記プロセッサが、前記磁気共鳴撮像装置から前記複数回の撮像に対応して核磁気共鳴信号を示す計測データを収集するステップと、
前記プロセッサが、前記複数回の撮像で収集した前記計測データから実空間の1枚の最終画像を生成する場合に使用する共通解を取得するステップと、
前記プロセッサが、前記複数回の撮像で収集した前記計測データ及び前記共通解を使用して前記最終画像を生成するステップと、
を含む磁気共鳴イメージングシステムの作動方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気共鳴イメージングシステム及び磁気共鳴イメージングシステムの作動方法に係り、特に核磁気共鳴信号から再構成される画像の画質を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴撮像装置(MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置)による撮像法の一つに拡散強調画像(DWI:diffusion weighted image)がある。
【0003】
DWIは、複数の方向(軸)にMPGパルス(motion probing gradient pulse)という強い傾斜磁場を印加してエコー信号を計測し、MGPパルスが与える影響の違いから水分子の拡散度合いを画像化したものであり、拡散制限が生じる梗塞や腫瘍の診断に有用である。DWIでは、高速撮像法の一つであるエコープレナーイメージング(EPI:Echo Planar Imaging)が用いられることが多い。
【0004】
EPIは、シングルショットEPIとマルチショットEPIとがある。
【0005】
シングルショットEPIは、1回のRFパルスによる励起中に、傾斜磁場の反転を繰り返して複数のグラディエントエコーを作り、k空間を画像再構成に必要なデータで埋める方法である。また、マルチショットEPIは、複数回のショットで得られるエコートレインのデータによりk空間を埋めていく方法である。
【0006】
シングルショットEPIは、核磁気共鳴信号(NMR(Nuclear Magnetic Resonance)信号)が配置されるk空間(フーリエ空間)のデータを1度の励起で取得することができることから高速で信号を取得できるという利点がある。しかし、読み出し傾斜磁場を反転しながらエコー信号としてNMR信号を取得する際に傾斜磁場の印加誤差によってN/2アーチファクトが生じる、静磁場不均一等に起因する歪みや位相エンコード方向の位置ずれが生じやすい、などの問題もある。
【0007】
マルチショットEPIは、シングルショットEPIと比較して、全てのデータを集めるために多くの時間をかけることができるので、傾斜磁場システムへの負担が少なく、位相誤差が蓄積する時間がないため、磁化率アーチファクトが減少する利点があり、その一方、撮像に時間がかかり、また、動きによるアーチファクトに弱いという欠点がある。
【0008】
特許文献1には、DWIシーケンスを繰り返し、同一の被検体について、1枚の画像に必要な数のエコー信号からなる計測データ(k空間データ)を複数収集し、複数の計測データ(複数の画像)を重み付け加算し、1枚の画像を再構成する磁気共鳴イメージング装置が記載されている。
【0009】
特許文献2には、マルチショットEPIシーケンスにより3つの異なる方向について、エコー信号を取得する記載がある。また、4つのショットにより完全なk空間エコー信号データセットが取得し、更に信号対雑音比(SNR:Signal-to-Noise Ratio)を改善するために信号平均化を使用して、エコー信号を取得する記載がある。尚、平均信号数NSA=3(NSA:number of signal average)とし、3つの信号平均化ステップが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2023-32832号公報
【特許文献2】特開2019-503750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1、2には、SNRを改善するために、複数回の撮像を行って、その結果得られる複数の画像を加算(重み付け加算、加算平均)する記載があるが、複数の画像の加算では、撮像毎の被検体の体動に起因してSNR、G-ファクタを十分に改善することができないという問題がある。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、再構成される画像の画質を向上させることができる磁気共鳴イメージングシステム及び磁気共鳴イメージングシステムの作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1態様に係る発明は、磁気共鳴撮像装置と、プロセッサと、少なくとも1つのメモリと、を備えた磁気共鳴イメージングシステムであって、プロセッサは、撮像シーケンスにしたがって磁気共鳴撮像装置により被検体の同一スライスを複数回撮像させ、磁気共鳴撮像装置から複数回の撮像に対応して核磁気共鳴信号を示す計測データを収集し、複数回の撮像で収集した計測データから実空間の1枚の最終画像を生成する場合に使用する共通解を取得し、複数回の撮像で収集した計測データ及び共通解を使用して最終画像を生成する、磁気共鳴イメージングシステムである。
【0014】
本発明の第1態様によれば、被検体の同一スライスを複数回撮像して得た計測データから実空間の1枚の最終画像を生成する場合に、共通解を使用して最終画像を生成することで、最終画像の信号対雑音比を改善することができる。
【0015】
本発明の第2態様に係る磁気共鳴イメージングシステムは、第1態様において、撮像シーケンスは、マルチショットシーケンス又はシングルショットシーケンスであり、マルチショットシーケンス又はシングルショットシーケンスを複数回実行することが好ましい。また、マルチショットシーケンス又はシングルショットシーケンスは、マルチショットEPIシーケンス又はシングルショットEPIシーケンスであることが好ましい。
【0016】
本発明の第3態様に係る磁気共鳴イメージングシステムは、第1態様又は第2態様において、プロセッサは、最終画像として拡散強調画像を生成することが好ましい。
【0017】
本発明の第4態様に係る磁気共鳴イメージングシステムは、第1態様から第3態様のいずれかにおいて、磁気共鳴撮像装置は、Nchチャンネルのマルチプルアレイコイルからなる受信コイルを備え、プロセッサは、撮像シーケンスにおけるショット数をNshとした場合、1回の撮像によりNch×Nsh枚の計測データを収集し、Nch×Nsh枚の計測データを逆フーリエ変換して得られるNch×Nsh枚の実空間の中間画像であって、複数回の撮像回数をN回とすると、N回の撮像毎の中間画像をSi(i=1~N)とし、最終画像をmとしたときの行列式を、以下の[数1]式、
【0018】
【数1】
(但し、Bi:コイル感度行列を含む行列Bi(i=1~N))
で表した場合、[数1]式により算出される共通解をDとすると、共通解Dは、以下の[数2]式、
【0019】
【数2】
(但し、Ball:行列Bi(i=1~N)、Σ:受信コイルのNchチャンネル間のノイズ相関行列)
により表わされ、プロセッサは、Nch×Nsh枚の計測データを逆フーリエ変換してNch×Nsh枚の中間画像Siを生成し、N回の撮像毎に生成した中間画像Siの全ての中間画像をSallとすると、中間画像Sallと共通解Dとに基づいて、以下の[数3]式、
【0020】
【数3】
により最終画像mを生成することが好ましい。
【0021】
本発明の第5態様に係る磁気共鳴イメージングシステムは、第4態様において、撮像シーケンスは、マルチショットシーケンスであり、マルチショットシーケンスのショット数をNsh回とし、パラレルイメージング法の倍速率をRとすると、k空間の位相エンコード方向に1/Rに間引かれたライン数配置される、計測データは、位相エンコード方向に1/(Nsh×R)に間引かれ、Nsh回に分けて収集され、行列Biは、Nchチャンネルからなる受信コイルのコイル感度行列と、Nsh回に分けて収集された計測データのk空間の配置誤差に対応する位相シフトを示す位相シフト行列と、Nsh回に分けて収集された計測データの間の、被検体の体動に起因する位相変動を示す位相変動行列とを含み、プロセッサは、コイル感度行列、位相シフト行列、位相変動行列、及び受信コイルのNchチャンネル間のノイズ相関行列に基づいて共通解Dを算出することが好ましい。
【0022】
本発明の第6態様に係る磁気共鳴イメージングシステムは、第5態様において、マルチショットシーケンスは、計測データとしてメインエコー信号及びナビエコー信号を取得するためのメインスキャン及びナビスキャンを含み、メモリは、コイル感度行列、位相シフト行列、及びノイズ相関行列を記憶し、プロセッサは、メモリからコイル感度行列、位相シフト行列、及びノイズ相関行列を取得し、Nsh回のナビエコー信号に基づいて位相変動行列を算出することが好ましい。
【0023】
即ち、コイル感度行列、位相シフト行列、及びノイズ相関行列は、予め計測可能な行列であり、メモリに記憶させることができ、共通解Dを算出する際にメモリから読み出される。一方、位相変動行列は、Nsh回に分けて収集された計測データの間の、被検体の体動に起因する位相変動を示す行列である。そこで、プロセッサは、Nsh回のメインエコー信号とともに取得されるナビエコー信号に基づいて位相変動行列を算出する。
【0024】
本発明の第7態様に係る磁気共鳴イメージングシステムは、第1態様から第3態様のいずれかにおいて、磁気共鳴撮像装置は、Nchチャンネルのマルチプルアレイコイルからなる受信コイルを備え、プロセッサは、撮像シーケンスにおけるショット数をNshとした場合、1回の撮像によりNch×Nsh枚の計測データを収集し、Nch×Nsh枚の計測データを逆フーリエ変換して得られるNch×Nsh枚の実空間の中間画像であって、複数回の撮像回数をN回とすると、N回の撮像毎の中間画像をSi(i=1~N)とし、最終画像をmとしたときの行列式を、以下の[数1]式、
【0025】
【数1】
(但し、Bi:コイル感度行列を含む行列Bi(i=1~N))
で表した場合、[数1]式により算出される共通解をDとすると、共通解Dは、以下の[数2]式、
【0026】
【数2】
(但し、Ball:行列Bi(i=1~N))
により表わされ、プロセッサは、Nch×Nsh枚の計測データを逆フーリエ変換してNch×Nsh枚の中間画像Siを生成し、N回の撮像毎に生成した中間画像Siの全ての中間画像をSallとすると、中間画像Sallと共通解Dとに基づいて、以下の[数3]式、
【0027】
【数3】
により最終画像mを生成することが好ましい。
【0028】
本発明の第8態様に係る磁気共鳴イメージングシステムは、第7態様において、撮像シーケンスは、マルチショットシーケンスであり、マルチショットシーケンスのショット数をNsh回とし、パラレルイメージング法の倍速率をRとすると、k空間の位相エンコード方向に1/Rに間引かれたライン数配置される、計測データは、位相エンコード方向に1/(Nsh×R)に間引かれ、Nsh回に分けて収集され、行列Biは、Nchチャンネルからなる受信コイルのコイル感度行列と、Nsh回に分けて収集された計測データのk空間の配置誤差に対応する位相シフトを示す位相シフト行列と、Nsh回に分けて収集された計測データの間の、被検体の体動に起因する位相変動を示す位相変動行列とを含み、プロセッサは、コイル感度行列、位相シフト行列、位相変動行列、及び受信コイルのNchチャンネル間のノイズ相関行列に基づいて共通解Dを算出することが好ましい。
【0029】
本発明の第9態様に係る磁気共鳴イメージングシステムは、第8態様において、マルチショットシーケンスは、計測データとしてメインエコー信号及びナビエコー信号を取得するためのメインスキャン及びナビスキャンを含み、メモリは、コイル感度行列、位相シフト行列、及びノイズ相関行列を記憶し、プロセッサは、メモリからコイル感度行列、位相シフト行列、及びノイズ相関行列を取得し、Nsh回のナビエコー信号に基づいて位相変動行列を算出することが好ましい。
【0030】
本発明の第10態様に係る磁気共鳴イメージングシステムは、第4態様又は第7態様において、撮像シーケンスは、パラレルイメージング法を適用したシングルショットシーケンスであり、メモリは、共通解Dを記憶し、プロセッサは、メモリから共通解Dを取得することが好ましい。シングルショットシーケンスの場合、共通解Dは変動しないため、予め算出してメモリに記憶させておくことができ、プロセッサは、中間画像Sallから最終画像を生成する際に、メモリから共通解Dを読み出して使用することができる。
【0031】
第11態様に係る発明は、磁気共鳴撮像装置と、プロセッサと、少なくとも1つのメモリと、を備えた磁気共鳴イメージングシステムの作動方法であって、プロセッサが、2以上の整数をNとすると、撮像シーケンスにしたがって磁気共鳴撮像装置により被検体の同一スライスを複数回撮像させるステップと、プロセッサが、磁気共鳴撮像装置から複数回の撮像に対応して核磁気共鳴信号を示す計測データを収集するステップと、プロセッサが、複数回の撮像で収集した計測データから実空間の1枚の最終画像を生成する場合に使用する共通解を取得するステップと、プロセッサが、複数回の撮像で収集した計測データ及び共通解を使用して最終画像を生成するステップと、を含む磁気共鳴イメージングシステムの作動方法である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、被検体の同一スライスを複数回撮像して収集した測定データから実空間の1枚の最終画像を生成する場合に共通する1つの共通解を取得し、複数回の撮像で収集した計測データ及び共通解を使用して最終画像を生成するようにしたため、最終画像の信号対雑音比を改善することができ、最終画像の画質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明に係る磁気共鳴イメージングシステムの概略構成を示す図である。
図2図2は、マルチショットEPIシーケンスの一例を示す図である。
図3図3は、メインスキャンとナビスキャンで得られるk空間データの一例を示す図である。
図4図4は、図1に示した制御装置のプロセッサの機能を示す機能ブロック図である。
図5図5は、マルチショットEPIシーケンスの1回の撮像で取得したメインスキャン画像内の或る画素と、その画素から算出される展開後の画素との関係を行列表現で表わした図である。
図6図6は、従来の再構成法と本発明に係る再構成法との相違を数式で表したものである。
図7図7は、従来の再構成法により生成された再構成画像及びG-ファクタ等を示す図である。
図8図8は、従来の再構成法により生成された再構成画像及びG-ファクタマップと、本発明の再構成法により生成された再構成画像及びG-ファクタマップとを示す比較例を示す図である。
図9図9は、従来の再構成法による全スライスのG-ファクタマップと本発明の再構成法による全スライスのG-ファクタマップとを示す図である。
図10図10は、図9に示した本発明の再構成法によるG-ファクタマップのうちの一部の拡大図である。
図11図11は、マルチショットEPIシーケンスのショット数が3回の場合の各エコー信号が配置されるk空間を示す図である。
図12図12は、シングルショットEPIシーケンスの一例を示す図である。
図13図13は、本発明に係る磁気共鳴イメージングシステムの作動方法の実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面に従って本発明に係る磁気共鳴イメージングシステム及び磁気共鳴イメージングシステムの作動方法の好ましい実施形態について説明する。
【0035】
[磁気共鳴イメージングシステムの構成]
図1は、本発明に係る磁気共鳴イメージングシステムの概略構成を示す図である。
【0036】
図1に示すように、磁気共鳴イメージングシステム10は、磁気共鳴撮像装置(MRI装置)100と、制御装置200とから構成されている。
【0037】
図1に示すMRI装置100は、被検体102が配置される撮像空間に均一な静磁場を発生する静磁場発生磁石104と、撮像空間に傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイル106と、被検体102の組織を構成する原子の原子核に核磁気共鳴信号(NMR信号)を生じさせる高周波磁場を発生するRF(Radio Frequency)コイル(送信コイル)108と、被検体102から発生するNMR信号を検出するRFプローブ(受信コイル)110とを備えている。被検体102は、通常、ベッド103に横たわった状態で撮像空間に配置される。
【0038】
シーケンサ118は、撮像シーケンス(パルスシーケンス)にしたがって高周波磁場発生器112と傾斜磁場電源116とに命令を送り、それぞれ高周波磁場及び傾斜磁場を発生させる。発生された高周波磁場は、送信コイル108を通じてパルス状の高周波磁場(RFパルス)として被検体102に印加される。被検体102から発生したNMR信号は受信コイル110によって受波され、受信器114で検波が行われる。NMR信号は、通常グラディエントエコー、あるいはスピンエコーとして発生したものを収集するので、ここでは、エコー信号という。
【0039】
尚、傾斜磁場コイル106は、X、Y、Zの3方向の傾斜磁場コイルで構成され、傾斜磁場電源116からの信号に応じてそれぞれ傾斜磁場を発生する。また、本例の受信コイル110は、2以上の整数をMとすると、Mチャンネルのマルチプルアレイコイルにより構成されている。
【0040】
受信器114において検波の基準とする核磁気共鳴周波数(検波基準周波数f0)は、シーケンサ118によりセットされる。シーケンサ118は、予めプログラムされたタイミング、強度で各部が動作するように制御を行う。プログラムのうち、特にRFパルス、傾斜磁場、信号受信のタイミングや強度を記述したものは、パルスシーケンスと呼ばれる。
【0041】
パルスシーケンスは、目的に応じて種々のものが知られているが、本実施形態では、2以上の励起RFパルスを用いて画像生成用のエコー信号を収集するマルチショットシーケンスを採用し、特にEPI法により撮像を行う、マルチショットEPIシーケンスを採用する。また、拡散強調画像を得るために、MPGパルスを用いる。
【0042】
図2は、マルチショットEPIシーケンスの一例を示す図である。
【0043】
図2(A)は、RFパルスの印加タイミングを示し、図2(B)、(C)及び(D)は、それぞれスライス方向、位相エンコード方向、及び読み出し方向の傾斜磁場パルスの印加タイミングを示し、図2(E)は、エコー信号(メインエコー信号、ナビエコー信号)の取得タイミングを示す。
【0044】
図2に示すようにマルチショットEPIシーケンスは、スライス選択傾斜磁場303とともに励起用RFパルス301を印加した後、反転RFパルス302をスライス選択傾斜磁場304とともに印加し、所望のスライスを励起する。この反転RFパルス302の前後に強度の大きいMPGパルス309を印加する。次いで、位相エンコード傾斜磁場305を印加した後、ブリップ状の位相エンコード傾斜磁場306と極性を反転させるリードアウト傾斜磁場307とを連続して印加し、反転するリードアウト傾斜磁場307の印加中にメインエコー信号308を収集する。このようにしてメインエコー信号308を収集するメインスキャン300が行われる。
【0045】
メインスキャン300後にナビスキャン310が行われる。
【0046】
ナビスキャン310では、位相エンコード傾斜磁場316の極性をメインスキャン300の位相エンコード傾斜磁場306と同じ極性にして、リードアウト317の反転毎にナビエコー信号318を収集する。収集するナビエコー信号318の数や範囲は、再構成されるナビスキャン画像として、メインスキャン画像のFOV(Field of View)と同じFOVの画像が得られればよく、特に限定されないが、位相エンコードパルス306はメインスキャン300よりも印加強度も小さく設定し、k空間の中心付近(低周波領域)のデータを収集している。
【0047】
また、マルチショットEPIシーケンスでは、TR(time to repeat)の時間間隔で繰り返し励起RFパルスを発生させ、メインエコー信号308及びナビエコー信号318を収集し、k空間に配置する。
【0048】
図3は、メインスキャンとナビスキャンで得られるk空間データの一例を示す図である。
【0049】
本例のメインスキャン300とナビスキャン310とは、位相エンコード傾斜磁場の極性を同じにしてエコー信号を収集するため、図3(A)及び(B)に示すようにメインスキャン及びナビスキャンでは、それぞれk空間は上から下に走査される。
【0050】
また、マルチショットEPIシーケンスでは、ショット毎に収集されるメインエコー信号の位相エンコード方向がシフトするように(k空間上の異なる領域に配置されるように)メインエコー信号を収集する。
【0051】
図3(A)に示すk空間は、マルチショットEPIシーケンスでのショット数が3回の場合に関して示しており、ショット毎に収集されるメインエコー信号は、k空間で異なる軌跡上に配置されている。
【0052】
マルチショットEPIシーケンスでのショット数(生成エコー数)は、2~10程度であり、TRは1000ms~7000ms程度である。空間分解能を向上させるには、1枚の画像に必要なエコー信号を分割して取得する、マルチショットシーケンスでの拡散強調イメージングが有利である。
【0053】
1回のマルチショットEPIシーケンスにより撮像され、再構成される拡散強調画像(DWI)は、SNRが低いため、被検体の同一スライスを複数回撮像させる。また、MGPパルスを、直交3軸(1軸、2軸、3軸)の各方向に印加し、各軸に対応するDWIを取得する。
【0054】
図1に戻って、制御装置200は、上述したシーケンサ118を介してMRI装置100の動作を制御するとともに、MRI装置100(受信器114)10が検波した信号、(メインスキャンによるメインエコー信号及びナビスキャンによるナビエコー信号)を受け取り、画像再構成などの各種の信号処理を行う。尚、受信器114は、設定された検波基準周波数f0によりアナログ波であるエコー信号を直交位相検波し、実数部と虚数部からなる複素数のローデータに変換してから制御装置200に送信するが、本例ではこのローデータをエコー信号、あるいは計測データともいう。
【0055】
制御装置200は、コンピュータを用いて構成することができる。制御装置200に適用されるコンピュータは、パーソナルコンピュータであってもよいし、ワークステーションであってもよい。
【0056】
制御装置200は、ハードウェアとしてプロセッサ202、メモリ204、入出力インターフェース206、表示器208、及び操作部210等を備える。
【0057】
プロセッサ202は、CPU(Central Processing Unit)等から構成され、制御装置200の各部、及びMRI装置100を統括制御するとともに、メモリ204に記憶された各種のプログラムを実行することで、後述する各種の機能を実現させる。
【0058】
メモリ204は、フラッシュメモリ、ROM(Read-only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク装置等を含む1以上のメモリである。フラッシュメモリ、ROM及びハードディスク装置は、オペレーションシステム、プロセッサ202を制御装置20として機能させるプログラム、各種のパルスシーケンス、画像再構成に使用する計算式、パラメータ、及び画像再構成したMRI画像等を記憶する不揮発性メモリである。
【0059】
RAMは、プロセッサ202による処理の作業領域として機能し、不揮発性メモリに格納されたプログラム等を一時的に記憶する。また、RAMは、エコー信号(ローデータ)を一時的に保管する場所(k空間)として機能する。尚、プロセッサ202が、メモリ204の一部(RAM)を内蔵していてもよい。
【0060】
入出力インターフェース206は、ネットワークと接続可能な通信部、及び外部機器と接続可能な接続部等を含む。外部機器と接続可能な接続部としては、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)(HDMIは登録商標)等を適用することができる。
【0061】
プロセッサ202は、入出力インターフェース206を介してMRI装置100に配設された機器(本例ではシーケンサ118)との間で通信し、これにより必要な情報の送受信を行う。尚、シーケンサ118の一部は、制御装置200側に設けられていてもよい。
【0062】
表示器208は、MRI画像、及び操作部210からの入力を受け付ける場合のGUI(Graphical User Interface)の一部として使用される。
【0063】
操作部210は、マウス、キーボード等を含み、表示器208の表示操作ウィンドウを使用し、操作者の入力を受け付けるGUIの一部として機能する。
【0064】
即ち、操作部210及び表示器208は、操作者が、MRI装置100の起動、停止(一時停止)、パルスシーケンスの選択、撮像条件や処理条件などを入力するためのGUIとして機能する。
【0065】
図4は、図1に示した制御装置のプロセッサの機能を示す機能ブロック図である。
【0066】
図4に示すようにプロセッサ202は、メモリ204に記憶された各種のプログラムを実行することで、計測制御部220、画像演算部230、及び表示制御部240として機能する。
【0067】
計測制御部220には、メインスキャン制御部222及びナビスキャン制御部224が含まれ、MRI装置100のシーケンサ118(図1)に所定のパルスシーケンスと操作者指定の撮像条件(撮像パラメータ)などを送り、シーケンサ118を介してMRI装置100を制御する。本例では、所定のパルスシーケンスとして、図2等に示したマルチショットEPIシーケンスが選択されている。
【0068】
メインスキャン制御部222及びナビスキャン制御部224は、設定された条件に従ってシーケンサ118に指令を送る。シーケンサ118の制御のもとで、MRI装置100がマルチショットEPIシーケンスを実行し、メインスキャンによるメインエコー信号及びナビスキャンによるナビエコー信号をそれぞれ収集し、メインエコー信号及びナビエコー信号をそれぞれ対応するk空間に配置する。
【0069】
画像演算部230は、逆フーリエ変換部232、位相変動行列算出部234、共通解算出部236、及びMRI画像生成部238等を含む。
【0070】
逆フーリエ変換部232は、k空間に配置された空間周波数領域のエコー信号を、逆フーリエ変換して実空間の画像に変換する部分である。
【0071】
マルチショットEPIにより生成されるDWIの課題の一つとして、ショット毎に与えられる一対の大きな傾斜磁場(MPG)の影響により、被検体の動きある部分においてショット毎に位相が異なる(位相乱れを生じる)という問題がある。
【0072】
位相変動行列算出部234は、各ショットのナビエコー信号に基づいて位相変動行列を算出する部分であり、ナビエコー信号から再構成されたナビスキャン画像に基づいてショット間の画像の変動を示す情報(位相変動行列)を算出する。この位相変動行列は、ショット間の被検体の体動に起因する、各ショットのメインエコー信号から再構成される画像間の乱れを補正するために使用される。
【0073】
DWIは、SNRが低いため、被検体の同一スライスを複数回撮像させている。従来は、複数回の撮像により複数枚の中間画像を生成し、生成した複数枚の中間画像を加算平均することで、最終的に生成される1枚の最終画像(DWI)のSNRを改善させている。尚、各中間画像の生成には、それぞれ個別の補正用の解(行列)を算出し、算出した個別の解を使用して対応する中間画像を補正している。
【0074】
共通解算出部236は、従来技術のように個別の補正用の解を算出せずに、複数回の撮像に対応して収集した計測データ(エコー信号)から実空間の1枚の最終画像(DWI)を生成する場合に使用する共通解を算出する部分である。
【0075】
MRI画像生成部238は、複数回の撮像で収集したエコー信号と共通解算出部236により算出された共通解を使用し、1枚の最終画像(DWI)を生成する部分である。
【0076】
尚、共通解算出部236及びMRI画像生成部238による演算処理の詳細については後述する。
【0077】
また、DWIには、画像に歪みやぼけが生じやすいという課題がある。これは、EPIが静磁場不均一の影響を受けやすいことや、読み出し傾斜磁場の方向がエコー毎に変わるというEPI特有の問題等に起因する。
【0078】
画像演算部230は、図示しない変位量算出部及び歪み補正部を含む。メインスキャンによるメインエコー信号とナビスキャンによるナビエコー信号とは、位相エンコードの印加極性が同一であることから、静磁場不均一等に起因する位相誤差の蓄積によってメインスキャン画像とナビスキャン画像に生じる歪みは、同方向の歪みとなる。変位量算出部は、ナビスキャン画像を用いて歪み補正に用いる変位量(実空間の変位量)を算出する。歪み補正部223は、この変位量を用いてメインスキャン画像の歪み補正を行う。
【0079】
表示制御部240は、画像演算部230により演算されたDWI、あるいはマルチショットEPIシーケンス以外のパルスシーケンスにより撮像され、再構成されたMRI画像、及び必要な付帯情報(例えば、撮像条件や被検体に関する情報など)を表示器208(図1)に表示させる。また、プロセッサ202は、付帯情報付きのDWI等をメモリ204に保存させる。
【0080】
プロセッサ202の上記の機能は、予め設計されたプログラムをCPUあるいはGPUが実行することによって実現される。尚、プロセッサ202の機能の一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアで実現される場合もある。
【0081】
[本発明の原理]
次に、図4に示した共通解算出部236及びMRI画像生成部238による演算処理にかかわる本発明の原理について説明する。
【0082】
以下に示す例では、マルチショットEPIシーケンスでのショット数(Nsh)を2回とする。
【0083】
また、本例では、パラレルイメージング法を使用する。パラレルイメージング法は、複数のコイル(マルチプルアレイコイル)を使用し、位相エンコードを間引くことで短時間の撮像を可能にする技術である。パラレルイメージングには、展開処理を実空間上で行うSENSE(sensitivity encoding)系と、k空間上で行うSMASH(Simultaneous Acquisition of Spatial Harmonics)系とがある。本例では、パラレルイメージングとして、SENSE系を使用しており、パラレルイメージング法の間引き率を示す倍速率(Reduction factor)Rを2に設定する。
【0084】
マルチショットEPIシーケンスでのショット数Nshを2回に設定し、パラレルイメージング法の倍速率Rを2に設定することで、k空間の位相エンコード方向に2分の1に間引いた測定データは、位相エンコード方向に4分の1(1/(Nsh×R))に間引かれ、2回(Nsh)に分けて収集される。
【0085】
本例の受信コイル110は、Nchチャンネルのマルチプルアレイコイルにより構成されており、具体的には、6チャンネル(Nch=6)のマルチプルアレイコイルにより構成されている。
【0086】
マルチショットEPIシーケンスのショット数Nshを2回(sh1,sh2)とし、1回のマルチショットEPIシーケンスを実行すると、12枚分の画像(即ち、受信コイル110のチャンネル数Nch(Nch=6)×ショット数Nsh(Nsh=2)の画像)に対応するエコー信号が収集される。
【0087】
そして、12枚分の画像に対応するエコー信号をそれぞれ逆フーリエ変換することで、実空間上の12枚の画像を生成することができる。
【0088】
各チャンネルのコイル毎により収集されたエコー信号は、k空間の位相エンコード方向に4分の1に間引かれるため、スキャン時間が短縮され、1枚の画像当たりの撮像の高速化を図ることができる。
【0089】
その一方、各画像のFOVは小さくなり、折り返しが発生する。本例では、各画像に対応するエコー信号は、k空間の位相エンコード方向に4分の1に間引かれているため、逆フーリエ変換により生成された画像は折り返しのある画像(折り返し画像)となり、FOVは4分の1になる。いま、折り返しのないFOVのサイズを256画素×256画素とすると、折り返し画像のFOVのサイズは、256画素×64画素になる。
【0090】
折り返し画像は、受信コイル110のコイル毎ごとの感度マップを使用し、展開処理を行うことで折り返しのない画像を取得することができる。
【0091】
図5は、マルチショットEPIシーケンスの1回の撮像で取得したメインスキャン画像内の或る画素と、その画素から算出される展開後の画素との関係を行列表現で表わした図である。
【0092】
図5において、行列表現されている式の左辺は、12個の取得信号(s1-s6,1-s6)を示し、右辺は、コイル感度行列C、位相シフト行列A、位相変動行列P、及び展開処理されて算出されるべき画像における、取得信号(s1-s6,1-s6)に対応する4画素分の信号m(mA-mD)を示す。ここで、信号mの上付きのA~Dは、ショット数Nsh×倍速率Rに対応し、本例では、4(=Nsh×R)である。
【0093】
取得信号(s1-s6,1-s6)は、受信コイル110の6チャンネル(Nch=6)×2ショット(Nsh=2)で取得したエコー信号を逆フーリエ変換した、12枚分の折り返し画像(256画素×64画素)の同じ位置の画素の信号を示している。
【0094】
コイル感度行列Cは、6チャンネルの各コイルの空間的な感度を示す感度マップ(cA-c1 D,c2 A-c2 D、…、c6 A-c6 D)を示す行列である。尚、感度マップ(c1 A-cD~c6 A-c6 D)は、事前にリファレンススキャンを実行して計測し、メモリ204に記憶させておくことができる。
【0095】
この感度マップ(c1 A-cD~c6 A-c6 D)は、各コイルに対応した取得した折り返し画像(本例では、12枚の折り返し画像)を展開処理し、折り返しのない1枚の画像を生成する際に使用される。本例では、折り返し数を超える12個の冗長性のある取得信号(s1-s6,1-s6)とコイル毎に感度が異なる感度マップ(c1 A-cD~c6 A-c6 D)とに基づいて、取得信号(s1-s6,1-s6)に対応する折り返しのない画像上の4画素分の信号m(mA-mD)を算出することができる。
【0096】
そして、折り返し画像における全ての画素(256画素×64画素)の画素毎の取得信号(s1-s6,1-s6)について、4画素分の信号m(mA-mD)を算出することで、1枚の折り返しのない画像(256画素×256画素)を生成することができる。
【0097】
k空間の位相エンコード方向に2分の1に間引いた測定データは、2回(Nsh)に分けて収集されるが、図5に示す位相シフト行列A(aA~aD)は、k空間を埋める2回分の測定データのk空間の配置誤差に対応する行列である。位相シフト行列Aは、k空間を埋める2回分の測定データ(メインエコー信号)に対応するナビエコー信号から再構成されるナビスキャン画像に基づいて算出することができる。
【0098】
図5において、位相変動行列P(pA~pD)は、2回(Nsh)に分けて収集される計測データ(エコー信号)の間の、被検体の体動に起因する位相変動を示す行列である。位相変動行列Pは、位相シフト行列Aと同様にk空間を埋める2回分のメインエコー信号に対応するナビエコー信号から再構成されるナビスキャン画像に基づいて算出することができる。被検体の体動は不規則であるため、位相変動行列Pは、2回(Nsh)に分けて計測データ(エコー信号)を収集する毎に位相変動行列算出部234により算出される。
【0099】
いま、コイル感度行列C、位相シフト行列A、及び位相変動行列Pを、行列B=CAPとすると、図5に示した行列表現の中間画像Sは、次に行列式、
【0100】
【数1】
【0101】
(但し、i:複数回の撮像の撮像番号を示すパラメータ)
で表すことができる。
【0102】
従来のMRI画像の再構成法は、マルチショットEPIシーケンスによる1回の撮像毎に、[数1]式に対する解を算出し、次式により折り返し等を除去した画像mを算出する。
【0103】
【数2】
【0104】
[数2]式において、Σは、受信コイルの複数のチャンネル間のノイズ相関行列を示す。
【0105】
また、[数2]式において、m,Sは、以下の通りある。
m=[mk]:折り返し等を除去した画像(列ベクトル)であり、kは、画素番号である。
【0106】
S=[Sij]:Nch×Nshのコイル毎に取得した折り返し画像であり、iは、ショットsh1,sh2におけるコイル番号、jは、画素番号である。
【0107】
図6は、従来の再構成法と本発明に係る再構成法との相違を数式で表したものである。尚、図6において、マルチショットEPIシーケンスにしたがってMRI装置100により被検体の同一スライスを複数回(本例では、4回)実行している。
【0108】
図6の左側は、上記従来の再構成法を示しており、4回のマルチショットEPIシーケンスによる各撮像を示すパラメータをi(i=1~4)とすると、撮像毎に画像miを、次式、
【0109】
【数3】
【0110】
により算出し、算出した画像miを、次式、
【0111】
【数4】
に示すように加算平均することで1枚の最終画像mを生成する。
【0112】
これに対し、本発明に係る再構成法は、前述したように1回の撮像により12枚(Nch×Nsh)の折り返し画像(中間画像)Si(i=1~4)を取得するが、従来技術のように個々の中間画像Siの解を求めずに、全ての中間画像S1~SN(N=4)に対する1つの共通解を算出する点で、従来の再構成法と相違する。
【0113】
即ち、共通解をDとすると、共通解Dを、以下の[数5]式、
【0114】
【数5】
(但し、Ballは、行列Bi(i=1~N)を示す)
により求め、全ての中間画像をSallとすると、画像Sallと共通解Dとに基づいて、以下の[数6]式、
【0115】
【数6】
により最終画像mを生成する。
【0116】
図4に示した共通解算出部236は、メモリ204に記憶させたコイル感度行列C、位相シフト行列A、ノイズ相関行列Σ、及び位相変動行列算出部234により算出した位相変動行列Pと、中間画像S1~SNとに基づいて、[数5]式に示す共通解(行列D)を算出する。
【0117】
そして、図4に示したMRI画像生成部238は、行列Dと行列Sallとから、[数6]式により1つの最終画像(MRI画像)mを生成する。
【0118】
尚、上記実施形態では、[数5]式に示したように共通解Dを算出する場合に、受信コイルの複数のチャンネル間のノイズ相関行列(Σ)の逆行列(Σ-1)を使用しているが、これに限らず、ノイズ相関行列(Σ)を使用せずに、次式、
【0119】
【数7】
により、共通解Dを算出するようにしてもよい。
【0120】
<比較例>
次に、従来の再構成法により生成されるMRI画像と、本発明に係る再構成法により生成されるMRI画像とを比較した比較例について説明する。
【0121】
図7は、従来の再構成法により生成された再構成画像(MRI画像)及びG-ファクタ等を示す図である。
【0122】
図7に示す例では、マルチショットEPIシーケンスによるショット数は4回であり、マルチショットEPIシーケンスによる撮像回数は2回である。
【0123】
図7に示す3枚の再構成画像MPG1、MPG2、MPG3は、それぞれMPGパルスの印加方向がそれぞれ異なる3軸に対応する再構成画像である。また、3枚の再構成画像MPG1、MPG2、MPG3は、被検体の6スライス目の画像である。
【0124】
また、マルチショットEPIシーケンスによる撮像回数は2回(NSA=2)であり、各マルチショットEPIシーケンスによるショット数は4回である。各再構成画像MPG1、MPG2、MPG3に対応してそれぞれ4ショット×2NSAの撮像が行われており、4ショット×2NSAに対応する8枚のナビスキャン画像と、2NSAの2枚のG-ファクタを示すマップとが示されている。
【0125】
ここで、パラレルイメージング法によって分離された信号から成る分離後の画像(分離画像)のSNRは、G-ファクタ(Geometry-factor)と呼ばれる指標に反比例することが知られている。空間的に重なり合った信号の位置における受信コイル間の感度の差が小さいとき、G-ファクタは増大し、SNRが低下する。G-ファクタは、画質を評価する指標といえる。
【0126】
G-ファクタは、次式により算出することができる。
【0127】
【数8】
【0128】
図7において、3軸目の再構成画像MPG3に対応するG-ファクタが増大していること分かる。これは、3軸目のMPGパルスの印加方向が、被検体の体動方向と同一又は近い方向となり、SNRが低下していると考えられる。
【0129】
図8は、従来の再構成法により生成された再構成画像及びG-ファクタマップと、本発明の再構成法により生成された再構成画像及びG-ファクタマップとを示す比較例である。
【0130】
図8に示す例では、マルチショットEPIシーケンスによる撮像回数は4回である。
【0131】
図8には、従来の各NSAの4枚の画像及びG-ファクタマップ、及び4枚の画像を加算平均した1枚の再構成画像と、本発明の共通解に基づいて生成された再構成画像及びG-ファクタマップとが図示されている。
【0132】
従来の再構成法によるG-ファクタマップの最大値は9.3であったが、本発明の再構成法によるG-ファクタマップの最大値は1.5であった。
【0133】
このように本発明の再構成法によるG-ファクタは、従来の再構成法によるG-ファクタよりも小さく、SNRが改善されていると言える。
【0134】
図9は、従来の再構成法による全スライスのG-ファクタマップと本発明の再構成法による全スライスのG-ファクタマップとを示す図である。
【0135】
図9には、被検体の全スライス(18スライス)の、MPGパルスの印加方向が異なる3軸(1軸、2軸、3軸)のG-ファクタマップが示されている。また、図9に示す例では、図8の場合と同様に、マルチショットEPIシーケンスによる撮像回数は4回である。
【0136】
したがって、図9に示す従来の再構成法によるG-ファクタマップは、216枚(=18スライス×4ショット×3軸)であり、本発明の再構成法によるG-ファクタマップは、54枚(=18スライス×1×3軸)である。
【0137】
図9に示す従来の再構成法によるG-ファクタマップは、1軸目及び2軸目に比べて3軸目が大きな値を示しているが、本発明の再構成法によるG-ファクタマップは、3軸のいずれの軸も低い値を示している。
【0138】
即ち、3軸目のMPGパルスの印加方向が、被検体の体動方向と同一又は近い方向であると考えられる。そして、従来の再構成法では、3軸目の再構成画像のぼけ、アーチファクトが十分に除去されず、SNRが低くなっている。これに対し、本発明の再構成法では、3軸目の再構成画像のぼけ、アーチファクトが除去され、1軸目及びS2軸目と同様にSNRが高くなっていることが分かる。
【0139】
図10は、図9に示した本発明の再構成法によるG-ファクタマップのうちの一部(6スライスから13スライス)の拡大図である。
【0140】
本発明の再構成法では、解の数に対する式の数を増やすことで、条件(=G-ファクタ)を改善している。
【0141】
図11は、マルチショットEPIシーケンスのショット数Nshが3回の場合の各エコー信号が配置されるk空間を示す図である。
【0142】
3ショットにおける位相変動がない場合に対して、ショット間で同等の位相変動が発生する場合と、ショット間でランダムに位相変動が発生する場合とがある。位相のばらつきは、k区間でのトラジェクトリのばらつきと考えることができ、本発明の再構成法では、k空間のカバー率を改善するとも考えられる。
【0143】
本発明は、マルチショットシーケンスに限らず、シングルショットシーケンスに適用することができる。
【0144】
図12は、シングルショットEPIシーケンスの一例を示す図である。
【0145】
図12(A)は、RFパルスの印加タイミングを示し、図12(B)、(C)及び(D)は、それぞれスライス方向、位相エンコード方向、及び読み出し方向の傾斜磁場パルスの印加タイミングを示し、図12(E)は、エコー信号の取得タイミングを示す。
【0146】
シングルショットEPIシーケンスにより撮像され、再構成されるDWIのSNRを向上させるために、シングルショットEPIシーケンスを複数回実行し、被検体の同一スライスを複数回撮像させる。
【0147】
図12に示すようにシングルショットEPIシーケンスは、スライス選択傾斜磁場303とともに励起用RFパルス301を印加した後、反転RFパルス302をスライス選択傾斜磁場304とともに印加し、所望のスライスを励起する。この反転RFパルス302の前後に強度の大きいMPGパルス309を印加する。次いで、位相エンコード傾斜磁場305を印加した後、ブリップ状の位相エンコード傾斜磁場306と極性を反転させるリードアウト傾斜磁場307とを連続して印加し、反転するリードアウト傾斜磁場307の印加中にメインエコー信号308を収集する。
【0148】
尚、メインエコー信号308とは別に、ナビエコー信号を収集するようにしてもよい。この場合のナビエコー信号は、メインエコー信号308から再構成される再構成画像の歪み補正に使用することができる。
【0149】
また、本例のシングルショットEPIシーケンスは、パラレルイメージング法を適用したシングルショットシーケンスである。即ち、パラレルイメージング法の倍速率Rを設定し、k空間の位相エンコード方向に1/Rに間引いた計測ラインは、倍速率Rに応じて位相エンコード方向に間引かれ、一度の計測で収集される。
【0150】
いま、シングルショットEPIシーケンスに適用したパラレルイメージング法の倍速率Rを3(R=3)とすると、k空間の位相エンコード方向に1/Rに間引いた測定データは、k空間の位相エンコード方向に3分の1に間引かれ、一度の計測で収集され、k空間に配置される。
【0151】
シングルショットEPIシーケンスの場合、マルチショットEPIシーケンスと比較してk空間の配置誤差がないため位相シフト行列Aの算出は省略することができる。また、ショット間の被検体の体動に起因する位相変動の影響がないため、位相変動行列Pの算出は省略することができる。したがって、前述した行列Bは、コイル感度行列Cのみ(B=C)とすることができる。
【0152】
コイル感度行列Cは、事前にリファレンススキャンを実行して計測することができ、位相シフト行列Aも一旦計測したものを共通に使用することができる。したがって、[数5]式、又は[数7]式に示した共通解Dは、事前に算出し、メモリ204に記憶させることができる。
【0153】
これにより、シングルショットEPIシーケンスの場合には、複数回の撮像により取得した中間画像Sallと、共通解D(例えば、メモリ204から読み出した行列D)とに基づいて最終画像を生成することができる。
【0154】
[磁気共鳴イメージングシステムの作動方法]
図13は、本発明に係る磁気共鳴イメージングシステムの作動方法の実施形態を示すフローチャートである。
【0155】
図13に示す磁気共鳴イメージングシステムの作動方法の各ステップの処理は、図1に示した制御装置200のプロセッサ202により行われる処理に対応する。
【0156】
図13において、プロセッサ202は、マルチショットEPIシーケンスを実行する(ステップS10)。マルチショットEPIシーケンスのショット数をNsh(Nsh:2以上の整数)、パラレルイメージング法の倍速率をR(R:1より大きな実数)とすると、Nsh×Rに応じてk空間の位相エンコード方向に1/(Nsh×R)に間引き、Nsh回に分けて、計測データをMRI装置100から収集する(ステップS12)。本例では、メインエコー信号とナビエコー信号のセットを取得する。
【0157】
プロセッサ202は、被検体の体動に起因する各計測データの間の位相変動を示す位相変動行列Pを、ナビエコー信号の情報に基づいて算出する(ステップS14)。
【0158】
マルチショットEPIシーケンスによる複数回の撮像回数をN(N:2以上の整数)回とすると、N回の撮像が終わったか否かを判定し、N回の撮像が終わるまで、ステップS10からステップS16の処理を繰り返す(ステップS16)。
【0159】
次に、プロセッサ202は、コイル感度行列C、位相シフト行列A、及びステップS14で算出した位相変動行列Pを行列B(=CAP)としたときの、N回の撮像に対応する行列Ball(=B1~BN)を求める(ステップS18)。尚、コイル感度行列C、及び位相シフト行列Aは、事前にリファレンススキャン等により計測し、メモリ204に記憶させたものを使用することができる。
【0160】
プロセッサ202は、計測データを逆フーリエ変換して全ての中間画像Sall(=S1~SN)を算出する(ステップS20)。
【0161】
続いて、プロセッサ202は、全ての中間画像Sallから1枚の最終画像mを生成する場合に使用する共通解(行列D)を、[数5]式又は[数7]式により算出する(ステップS22)。
【0162】
最後にプロセッサ202は、1枚の最終画像mを、全ての中間画像Sallと行列Dとから、[数6]式により生成する(ステップS24)。
【0163】
[その他]
本発明に適用される撮像シーケンスは、マルチショットEPIシーケンス、シングルショットEPIシーケンスに限らず、種々のシーケンスを適用し、画像再構成について公知の技術を組み合わせる等種々の変更が可能である。
【0164】
また、本実施形態において、例えば、CPU等の各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0165】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサ(例えば、複数のFPGA、あるいはCPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0166】
また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0167】
更に、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0168】
10 磁気共鳴イメージングシステム
100 MRI装置
102 被検体
104 静磁場発生磁石
106 傾斜磁場コイル
108 送信コイル
110 受信コイル
112 高周波磁場発生器
114 受信器
116 傾斜磁場電源
118 シーケンサ
200 制御装置
202 プロセッサ
204 メモリ
206 入出力インターフェース
208 表示器
210 操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12
図13