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特開2024-179719ブレッダー粉およびそれを用いた唐揚げの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179719
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ブレッダー粉およびそれを用いた唐揚げの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/157 20160101AFI20241219BHJP
   A23L 29/219 20160101ALI20241219BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20241219BHJP
   A23L 13/50 20160101ALI20241219BHJP
   A23L 3/36 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L29/219
A23L5/10 E
A23L13/50
A23L3/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098774
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】505145161
【氏名又は名称】株式会社ニチレイフレッシュ
(71)【出願人】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】松本 悠
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 和都也
(72)【発明者】
【氏名】西出 辰徳
【テーマコード(参考)】
4B022
4B025
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B022LA06
4B022LB01
4B022LJ02
4B022LJ05
4B022LQ01
4B022LS06
4B025LB06
4B025LD03
4B025LG04
4B025LG07
4B025LG14
4B025LG18
4B025LG19
4B025LG28
4B025LK07
4B035LC03
4B035LC16
4B035LE17
4B035LG01
4B035LG12
4B035LG14
4B035LG19
4B035LG21
4B035LG32
4B035LG35
4B035LG42
4B035LG43
4B035LG48
4B035LG49
4B035LK01
4B035LK02
4B035LK05
4B035LK15
4B035LP07
4B035LP25
4B035LP27
4B035LP43
4B035LP59
4B042AC05
4B042AC06
4B042AD18
4B042AE03
4B042AG07
4B042AH01
4B042AH11
4B042AK01
4B042AK06
4B042AK08
4B042AK09
4B042AK10
4B042AK11
4B042AK12
4B042AK17
4B042AK20
4B042AP05
4B042AP07
4B042AP18
4B042AP19
4B042AP30
(57)【要約】
【課題】冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を解凍した後に油ちょうして得られる唐揚げにおいて、衣の食感および解凍時の作業適性を向上させる新たな技術的手段を提供すること。
【解決手段】冷凍済みかつ未油ちょうの状態の唐揚げ用加工食品を解凍した後に油ちょうして得られる唐揚げの製造のための、加工澱粉、クラッカー粉およびコーンフラワーを含んでなるブレッダー粉。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を解凍した後に油ちょうして得られる唐揚げの製造のための、加工澱粉、クラッカー粉およびコーンフラワーを含んでなるブレッダー粉。
【請求項2】
前記加工澱粉の含有量が、前記ブレッダー粉全量に対して1~15質量%である、請求項1に記載のブレッダー粉。
【請求項3】
前記クラッカー粉の含有量が、前記ブレッダー粉全量に対して3~13質量%である、請求項1に記載のブレッダー粉。
【請求項4】
前記コーンフラワーの含有量が、前記ブレッダー粉全量に対して10~25質量%である、請求項1に記載のブレッダー粉。
【請求項5】
目開き1.2mmの篩の篩下かつ目開き0.6mmの篩の篩上のクラッカー粉画分の含有量が、前記クラッカー粉全量に対して24~45質量%である、請求項1に記載のブレッダー粉。
【請求項6】
請求項1に記載のブレッダー粉が付着した、冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を準備する工程、
前記冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を解凍する工程、および
前記解凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を油ちょうする工程
を含んでなる、唐揚げの製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載のブレッダー粉が付着した、冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を準備する工程、
前記冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を解凍する工程、および
前記解凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を油ちょうする工程
を含んでなる、唐揚げにおける衣の食感の向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブレッダー粉およびそれを用いた唐揚げの製造方法に関する。より詳細には、本開示は、冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を解凍した後に油ちょうして得られる唐揚げの製造のためのブレッダー粉に関する。
【背景技術】
【0002】
唐揚げは、衣のサクサク感を備えたものが良好な品質として好まれている。スーパーやコンビニエンスストアー等においてこのような唐揚げは、冷凍品または冷蔵品をその場で油ちょうした後に陳列したり、容器等に包装して販売されたり、温かさを保持するために電気ヒーター式等の店頭販売用ウォーマーケース内で保温した状態で陳列して販売されている。上記形態等で販売される唐揚げは、衣が硬くなり噛み切り難くさが発生してくるとともに、衣のサクサク感や味わいが低下するという問題がある。近年、このような唐揚げの衣の食感等を改良するため様々な衣材原料が報告されている(例えば、特許文献1等)。
【0003】
一方で、冷凍品を店頭で調理して唐揚げを提供する場合には、その冷凍処理、油ちょう処理の手順は様々であり、油ちょう済みの冷凍品を店頭で再油ちょうしたり、未油ちょうの状態の唐揚げを解凍した後に油ちょうすることがある。冷凍済みかつ未油ちょうの状態の唐揚げ用加工食品を解凍した後に油ちょうする処理は、特に唐揚げの中具の生の食感を生かす上で好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-055369号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示者らは、冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を解凍した後に油ちょうする手法について検討したところ、解凍時に発生する水分を衣材が吸収することから衣の外観や食感への悪影響が生じ、解凍時に衣材が容器に付着して剥がれてしまう問題があることが明らかとなった。
【0006】
そこで、本発明者らは、さらに鋭意検討した結果、冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を解凍した後に油ちょうする唐揚げの製造法において、特定の成分を組み合わせて得られるブレッダー粉を用いて衣材に用いると、唐揚げにおける衣の食感や解凍時の作業適性を飛躍的に向上させることができることを見出した。本開示はかかる知見に基づくものである。
【0007】
したがって、本開示は、冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を解凍した後に油ちょうして得られる唐揚げにおいて、衣の食感および解凍時の作業適性を向上させることを一つの目的としている。
【0008】
本開示の一実施態様によれば、冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を解凍した後に油ちょうして得られる唐揚げの製造のための、加工澱粉、クラッカー粉およびコーンフラワーを含んでなるブレッダー粉が提供される。
【0009】
また、本開示の別の実施態様によれば、上記ブレッダー粉が付着した冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を準備する工程、
上記冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を解凍する工程、および
上記解凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を油ちょうする工程
を含んでなる、唐揚げの製造方法が提供される。
【0010】
また、本開示の別の実施態様によれば、上記ブレッダー粉が付着した冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を準備する工程、
上記冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を解凍する工程、および
上記解凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を油ちょうする工程
を含んでなる、唐揚げにおける衣の食感の向上方法が提供される。
【0011】
本開示によれば、上記ブレッダー粉を衣材として使用することにより、冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を解凍した後に油ちょうして得られる唐揚げにおいて、衣の食感および解凍時の作業適性を向上させることができる。また、本開示のブレッダー粉は、衣の味わいを向上させる上で有利に使用することができる。また、本開示のブレッダー粉は、冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を解凍した際に衣が剥離することを防止する上で特に有利に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】加工澱粉、クラッカー粉およびコーンフラワーを含むブレッダー粉を使用する試験区1と、加工澱粉を含まずかつクラッカー粉およびコーンフラワーを含むブレッダー粉を使用する参考区2において、冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品(衣付けした鶏肉)を解凍した際の衣の状態を示す。上部の写真は、解凍時の鶏肉の接触面の写真であり、下部は鶏肉と容器との接触面の写真である。試験区1では、解凍時の衣は互いにくっつかずに取り扱いがしやすい状態となっていた一方で、参考区2では、衣がべたついて取り扱いしにくく、容器に鶏肉の底面がくっついて衣が剥がれやすかったことが示されている。
図2】加工澱粉、クラッカー粉およびコーンフラワーを含むブレッダー粉を使用する試験区1と、クラッカー粉を含まずかつ加工澱粉およびコーンフラワーを含むブレッダー粉を使用する参考区3において、冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品(衣付けした鶏肉)を解凍した際の衣の状態を示す。上部の写真は、解凍時の鶏肉の接触面の写真であり、下部は鶏肉と容器との接触面の写真である。試験区2では、解凍時の衣は互いにくっつかずに取り扱いがしやすい状態となっていた一方で、参考区3では、衣がべたついて取り扱いしにくく、容器に鶏肉の底面がくっついて衣が剥がれやすかったことが示されている。
図3】加工澱粉、クラッカー粉およびコーンフラワーを含むブレッダー粉を使用する試験区2と、コーンフラワーを含まずかつ加工澱粉およびクラッカー粉を含むブレッダー粉を使用する参考区5において、冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品(衣付けした鶏肉)を解凍した際の衣の状態を示す。上部の写真は、解凍時の鶏肉の接触面の写真であり、下部は鶏肉と容器との接触面の写真である。試験区2では、解凍時の衣は互いにくっつかずに取り扱いがしやすい状態となっていた一方で、参考区5では、衣がべたついて取り扱いしにくく、容器に鶏肉の底面がくっついて衣が剥がれやすかったことが示されている。
【発明の具体的説明】
【0013】
(ブレッダー粉)
本開示の一実施態様によれば、冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を解凍した後に油ちょうして得られる唐揚げの製造のためのブレッダー粉が提供され、上記ブレッダー粉は、加工澱粉、クラッカー粉およびコーンフラワーを含んでなることを一つの特徴としている。かかるブレッダー粉を用いることにより、とりわけ、冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を解凍した後に油ちょうして得られる唐揚げにおいて、衣の食感が向上し、さらには解凍時の作業適性を顕著に向上することは意外な事実である。
【0014】
本開示の一実施態様によれば、ブレッダー粉に使用される加工澱粉としては、例えば、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、米澱粉などの加工澱粉にα化、エーテル化、エステル化、アセチル化、架橋処理、酸化処理等の処理を施した加工澱粉が挙げられる。これら加工澱粉は、いずれか1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。加工澱粉は、好ましくはタピオカ、コーンスターチ等を由来とする澱粉である。加工デンプンのサイズは、本発明の作用効果を妨げない限り特に限定されない。
【0015】
本開示の一実施態様によれば、加工澱粉の含有量は、ブレッダー粉全量に対して、通常3~50質量%であり、好ましくは5~30質量%である。この範囲の中で加工澱粉の種類に応じて適切な量を適宜ブレッダー粉に添加することができる。
【0016】
本開示の一実施態様によれば、ブレッダー粉に使用されるクラッカー粉は、クラッカー(例えば、小麦粉を用いその一部にイーストを加えて発酵させ、本練り時に膨張剤を加えて焼きあげたもの)を粉砕したものである。
【0017】
本開示の一実施態様によれば、クラッカー粉のサイズは、特に限定されないが、クラッカー粉全量に対して、0.6mm以上1.2mm以下の粒度画分が25質量%~45質量%の粒度構成であるクラッカー粉が好ましい。かかるクラッカー粉は、例えば、複数の篩を用いてクラッカー粉を篩下し、目開き約1.2mmの篩を通過し、目開き約0.6mmmmの篩上に残るクラッカー粉を収集し、得られたクラッカー粉を所望の含有量となるように調整することにより取得することができる。
【0018】
本開示の一実施態様によれば、クラッカー粉の含有量は、ブレッダー粉全量に対して、通常1~14質量%であり、好ましくは3~13質量%であり、より好ましくは5~12質量%である。
【0019】
本開示の一実施態様によればクラッカー粉と、加工澱粉との質量比(クラッカー粉/加工澱粉)は、特に限定されないが、例えば、0.1~5であり、好ましくは0.15~4.5であり、より好ましくは0.2~2である。
【0020】
本開示の一実施態様によれば、コーンフラワーは、トウモロコシを粉にしたものを称する。コーンフラワーはその粒径や製造方法によって、コーングリッツ、コーンミール、コーンパウダー等と称されることもある。
【0021】
本開示の一実施態様によれば、コーンフラワーの含有量は、ブレッダー粉全量に対して、通常5~28質量%であり、好ましくは8~25質量%であり、より好ましくは10~20質量%である。コーンフラワーのサイズは、本発明の作用効果を妨げない限り特に限定されない。
【0022】
本開示の一実施態様によれば、コーンフラワーと、加工澱粉との質量比(コーンフラワー/加工澱粉)は、特に限定されないが、例えば、0.1~10であり、好ましくは0.15~9であり、より好ましくは0.2~7である。
【0023】
また、本開示の一実施態様によれば、クラッカー粉およびコーンフラワーとの合計と、加工澱粉との質量比(クラッカー粉+コーンフラワー/加工澱粉)は、特に限定されないが、例えば、0.1~15であり、好ましくは0.2~13であり、より好ましくは0.3~11である。
【0024】
本開示の一実施態様によれば、ブレッダー粉には、衣の所望の味わいや食感を勘案して、澱粉、クラッカー粉およびコーンフラワーの他、他の食品衛生上許容可能な追加成分を添加してもよい。かかる追加成分の好適な例としては、澱粉、穀物粉、調味料、植物油脂、およびベーキングパウダー等が挙げられる。
【0025】
本開示の一実施態様によれば、澱粉としては、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ハイアミロース小麦澱粉、米澱粉、等が挙げられるが、好ましくは馬鈴薯澱粉である。澱粉の含有量は、特に限定されないが、ブレッダー粉全量に対して、例えば、20~70質量%であり、好ましくは30~65質量%であり、より好ましくは40~60質量%である。
【0026】
本開示の一実施態様によれば、穀物粉としては、小麦粉、米粉、ソルガム粉等が挙げられるが、好ましくは小麦粉、米粉またはそれらの組みあわせである。穀物粉の含有量は、特に限定されないが、例えば、ブレッダー粉全量に対して、例えば、25~20質量%である。
【0027】
本開示の一実施態様によれば、調味料としては、食塩、こしょう、砂糖等が挙げられる。調味料の含有量は、特に限定されないが、ブレッダー粉全量に対して、例えば、0.1~10質量%である。
【0028】
本開示の一実施態様によれば、植物油脂としては、パーム油、菜種油、大豆油、コーン油、紅花油、ごま油、オリーブ油、こめ油、グレープシード油、綿実油、落花生油等が挙げられる。植物油脂の含有量は、特に限定されないが、ブレッダー粉全量に対して、例えば、0.01~5質量%である。
【0029】
本開示の一実施態様によれば、ブレッダー粉は、唐揚げの食感(サクミ等)を向上する観点から、ベーキングパウダーを含有していることが好ましい。ベーキングパウダーの含有量は、特に限定されないが、ブレッダー粉全量に対して、例えば、0.01~2質量%である。
【0030】
本開示のブレッダー粉は、上記各成分を適宜所望の順番で適宜混合することによりブレッダー粉として使用することができる。
【0031】
本開示の一実施態様によれば、ブレッダー粉の水分含量は、特に限定されないが、ブレッダー粉全量に対して、17質量%以下が好ましい。
【0032】
(油ちょう用加工食品/製造方法)
また、本開示の一実施態様によれば、上記方法により得られたブレッダー粉を中具に直接または間接的に付着させる工程を含む、冷凍し、解凍した後に油ちょうするための、未油ちょうの唐揚げ用加工食品の製造方法が提供される。ここで、「未油ちょうの唐揚げ用加工食品」とは、油ちょう処理用の加工がなされ、かつ、油ちょう処理前である唐揚げの原料食品をいう。
【0033】
中具は、特に限定されないが、例えば、肉類、魚介類等であってもよい。唐揚げの種類に応じて、中具を所定の大きさにカットし、所定の下拵えをするか、素のまま用いることができる。
【0034】
肉類としては、例えば、鶏、豚、牛、羊等の畜肉を挙げることができる。魚介類としては、例えば、エビなどの甲殻類が挙げられる。
【0035】
中具には、所望により、水分を導入する保水作用を有する保水剤溶液を添加してもよい。該保水剤溶液は、例えば、ポリリン酸ナトリウム等のリン酸塩、クエン酸三ナトリウム等のクエン酸塩、炭酸ナトリウム等の炭酸塩や、塩と、水とを含んでいてもよい。また、塩としては、塩が含まれるしょうゆ等の調味料を用いることができる。
【0036】
中具として肉類を用いる場合には、保水処理に用いる容器付混合機を使用することが好ましい。該容器付混合機は、上記保水剤溶液と、カットされた複数の肉類とを混合でき、保水剤溶液を肉類の表面から浸透させることが可能なものであれば特に限定されず、例えば、羽根付回転筒状タンク(タンブラー)を備えた混合機が挙げられ、市販品を用いることもできる。
【0037】
また、本開示の一実施態様によれば、ブレッダー粉を付着させる工程前に、中具に打ち粉を付着する工程や、バッター液を付着させる工程等を実施することができる。
【0038】
打ち粉としては、通常の揚げ物等の加熱食品の製造に用いられるものを使用することができ、例えば、小麦粉(例えば、薄力粉)、乾燥卵白、パン粉(微粉パン粉)、デンプン(加工デンプン(デンプングリコール酸ナトリウム、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酸化デンプン、アセチル化デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン等)、馬鈴薯デンプン等)またはそれらの混合物等の粉体を使用することができる。打ち粉として使用される粉体には、各種調味料等を混合してもよい。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、打ち粉の量は、中具100重量部に対して、例えば、0.5~4重量部である。
【0040】
また、本発明の一実施態様によれば、上記打ち粉を付着させる工程の後、中具にバッター液を付着させる工程を実施することが好ましい。バッター液の製造においては、特に限定されず、市販品(バッターミックス粉等)等を用いてもよい。
【0041】
また、バッターを中具に付着させる方法としては、特に限定されないが、バッターを中具の表面に均一に付着させる観点から、例えば、塗布やコーティング等の処理や、バッターと中具を混合する処理を用いることが好ましい。
【0042】
中具に付着させるバッターの量は、特に限定されないが、中具の表面全体を被覆する観点から、通常、中具100質量部あたり、5~30質量部程度とされる。
【0043】
本開示の一実施態様によれば、バッター液を付着させる工程後に、上記ブレッダー粉を中具に直接または間接的に付着させる工程を実施する。
【0044】
また、本開示の一実施態様によれば、上記ブレッダー粉を中具に直接的または間接的に付着させることにより得られた、未油ちょうの唐揚げ用加工食品が提供される。好ましい実施態様によれば、未油ちょうの唐揚げ用加工食品は、目的とする唐揚げの中具と、該中具の外側に位置する本開示のブレッダー粉の層とを含んでなる。本開示の未油ちょうの唐揚げ用加工食品は、冷凍して保管、販売することが好ましい。したがって、本開示の好ましい実施態様によれば、未油ちょうの唐揚げ用加工食品は冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品として提供される。ここで、冷凍とは、油ちょう用加工食品が、通常、-35℃以下の環境下に置かれて冷凍されることをいう。また、冷凍済みの唐揚げ用加工食品は、その芯温が、通常-15℃以下になるまで冷凍することが好ましい。
【0045】
(唐揚げ/製造方法)
また、本開示の一実施態様によれば、本開示のブレッダー粉が付着した冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を準備する工程、上記冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を解凍する工程、解凍した未油ちょうの唐揚げ用加工食品を油ちょうする工程を含む、唐揚げの製造方法が提供される。ここで、「唐揚げ」とは、未油ちょうの唐揚げ用加工食品を油ちょうしてなる食品をいい、「揚げ物」とも称される。
【0046】
本開示の一実施態様によれば、冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品の解凍方法は、特に限定されず、例えば、冷蔵庫内で0~10℃で静置することにより実施ししてもよい。解凍処理は、完全に解凍が終わり、油ちょう用加工食品の芯温が、通常10℃以下、好ましくは0~10℃になるまで実施することが好ましい。
【0047】
本開示の一実施態様によれば、油ちょうは、公知のフライヤーを用いて実施することができる。油ちょう条件は、中具の種類や大きさ等に応じて温度および時間を当業者が適宜設定することができる。例えば、油ちょう工程における油温は、通常160~200℃程度、油ちょう時間は3~10分程度とすることができる。
【0048】
また、本開示の一実施態様によれば、上記方法により得られる唐揚げが提供される。
【0049】
また、別の実施態様によれば、本開示のブレッダー粉が付着した冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を準備する工程、上記冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を解凍する工程、および上記解凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を油ちょうする工程を含んでなる、唐揚げにおける食感の向上方法が提供される。
【0050】
また、本発明の一実施態様によれば、以下の[1]~[7]が提供される。
[1]冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を解凍した後に油ちょうして得られる唐揚げの製造のための、加工澱粉、クラッカー粉およびコーンフラワーを含んでなるブレッダー粉。
[2]上記前記加工澱粉の含有量が、上記ブレッダー粉全量に対して1~15質量%である、[1]に記載のブレッダー粉。
[3]上記クラッカー粉の含有量が、上記ブレッダー粉全量に対して3~13質量%である、 [1]または[2]に記載のブレッダー粉。
[4]上記コーンフラワーの含有量が、上記ブレッダー粉全量に対して10~25質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載のブレッダー粉。
[5]目開き1.2mmの篩の篩下かつ目開き0.6mmの篩の篩上のクラッカー粉画分の含有量が、上記クラッカー粉全量に対して24~45質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載のブレッダー粉。
[6][1]~[5]のいずれかに記載のブレッダー粉が付着した、冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を準備する工程、
上記冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を解凍する工程、および
上記解凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を油ちょうする工程
を含んでなる、唐揚げの製造方法。
[7][1]~[5]のいずれかに記載のブレッダー粉が付着した、冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を準備する工程、
上記冷凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を解凍する工程、および
上記解凍済みかつ未油ちょうの唐揚げ用加工食品を油ちょうする工程
を含んでなる、唐揚げにおける衣の食感の向上方法。
【実施例0051】
以下、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。なお、この実施例は、本発明を限定するものではない。なお、特に記載しない限り、本明細書における測定方法および単位は、JIS(日本工業規格)に従う。
【0052】
(原材料)
原材料として、主に以下のものを使用した。なお、各粉体はJIS-Z8801-1規格の篩を用いて篩下した。
澱粉:馬鈴薯澱粉 士幌町農業協同組合製
小麦粉:フラワー 日清製粉株式会社製
加工澱粉:酢酸澱粉、商品名「日食MT-01」(由来原料キャッサバ芋)
クラッカー粉:商品名「マルFブレダー」、富士パン粉工業株式会社製(目開き20メッシュ)
ベーキングパウダー:商品名「日清 ベーキングパウダー」、株式会社日清製粉ウェルナ製
コーンフラワー:商品名「コーンフラワーイエローNo.7」、株式会社サニーメイズ製
【0053】
(試験区1、2、参考区1~6の唐揚げの製造)
本例では、唐揚げの作製および評価をおこなった。各例のブレッダー粉の配合を表1~表4に示す。
(唐揚げの製造方法)
1.鶏モモ肉をカットし、約40g/個とした。
2.1.の鶏肉を後述する組成の調味液で真空タンブラーを用いて30分間下味をつけた。
3.2.で下味をつけた鶏肉に対して打ち粉を添加した。
4.バッターミックス粉を水で溶いてバッター液を作製した。
5.3.で得られた鶏肉を、4.のバッター液にいれてよく絡ませた。バッター液の量は、3.で得られた鶏肉100gに対し6g程度とした。
6.表1~4の配合で成分を混合してブレッダー粉を作製した。
7.5.のバッター液をつけた鶏肉にブレッダー粉をまぶした。ブレッダー粉の量は、5.で得られた鶏肉100gに対し6~9g程度とした。
8.得られた衣付きの鶏肉を、約-35℃で芯温が-15℃以下となるまで急速冷凍した。
9.得られた冷凍済みの衣付きの鶏肉を、冷蔵庫で5℃にて約15時間ステンレス製の容器上において静置することにより解凍し、175℃で4分半~5分間油ちょうした。
【0054】
(調味液の配合)
鶏肉100gに対して以下の調味液を作成し、真空タンブラーを用いて下味をつけた。
濃口しょうゆ 4.0g
料理酒 2.0g
にんにく 1.0g
しょうが 0.7g
食塩 0.5g
砂糖 0.4g
ぶどう糖 0.3g
黒こしょう 0.2g
粉末卵白 0.2g
加工澱粉 2.0g
グルタミン酸Na 0.5g
重曹 0.2g
水 12.0g
【0055】
(官能評価)
6名の専門パネラーが唐揚げ衣の「外観(上面)」、「外観(下面)」、「食感(サクサク感または粉っぽさ)」および「味」を以下の採点基準で官能評価した。「外観(上面)」、「外観(下面)」、「食感(サクサク感または粉っぽさ)」については評点が3点超のものを合格とし、「味」については評点が2点超のものを合格とした。
なおここで、「上面」とは、解凍時に鶏肉と容器とが接触していない面をいい、「下面」とは、解凍時に鶏肉と容器とが接触している面をいう。
【0056】
(外観(上面)の評価)
4:全体的に凹凸があり、見た目が良好
3:部分的に凹凸があり、見た目がやや良好
2:一部に凹凸があり、見た目がやや不良
1:凹凸がなく、見た目が不良
【0057】
(外観(下面)の評価)
4:全体的に凹凸があり、見た目が良好
3:部分的に凹凸があり、見た目がやや良好
2:一部に凹凸があり、見た目がやや不良
1:凹凸がなく、見た目が不良
【0058】
(衣の食感の評価1)
4:サクサクとした軽い食感で、歯切れが良い
3:ややサクサクとした軽い食感があり、やや歯切れが良い
2:ややサクサクとした食感はあるが、やや硬いか又は歯切れが悪い
1:サクミがなく、硬いか又は歯切れが悪い
【0059】
(衣の食感の評価2)
4:粉っぽさを全く感じない
3:粉っぽさを感じない
2:やや粉っぽさを感じる
1:非常に粉っぽさを感じる
【0060】
(衣の味の評価)
3:味が好ましい
2:普通
1:味が好ましくない
【0061】
試験例1:凍結後の解消処理の影響の確認試験(試験区1および参考区1の比較試験)
試験区1(冷凍後、解凍して得られた鶏肉を油ちょうしたサンプル)と、参考区1(冷凍し、解凍することなく、そのまま油ちょうしたサンプル)とを上記官能試験により比較した結果を以下の表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
試験区1および参考区1は、同様の組成のブレッダー粉を用いているにもかかわらず、解凍処理があるか否かで、官能評価の結果が大きくことなっていた。この結果から、冷凍後に解凍処理を行って油ちょうする唐揚げにおいて、ブレッダー粉によっては、作業適性および食感、味において大幅な影響が生じることが示唆された。
【0064】
試験例2:加工澱粉の影響の確認(試験区1、参考区2の比較試験)
試験区1(冷凍後、解凍して得られた鶏肉を油ちょうしたサンプル)と、加工澱粉の量の異なる参考区2とを比較した結果を以下の表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
試験区1は、加工澱粉を使用しない参考区2と比較して、外観および衣の食感、味は良好な結果を示した。
【0067】
また、図1では、試験区1および参考区2を解凍した際の衣の状態を示す。上部の写真は、解凍時の鶏肉の接触面の写真であり、下部は鶏肉と容器との接触面の写真である。加工澱粉を使用する試験区1では、解凍時の衣は互いにくっつかずに取り扱いがしやすい状態となっていた一方で、加工澱粉を使用しない参考区2では、衣がべたついて取り扱いしにくく、容器に鶏肉の底面がくっついて衣が剥がれやすかった。
【0068】
試験例3:クラッカー粉の影響の確認(試験区1、参考区3、参考区4の比較試験)
試験区1(冷凍後、解凍して得られた鶏肉を油ちょうしたサンプル)と、クラッカー粉粉を使用しない参考区3とを比較した結果を以下の表3に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
試験区1は、クラッカー粉を使用しない参考区3と比較して、外観および衣の食感、味は良好な結果を示した。
【0071】
また、図2では、試験区1および参考区3を解凍した際の衣の状態を示す。上部の写真は、解凍時の鶏肉の接触面の写真であり、下部は鶏肉と容器との接触面の写真である。加工澱粉を使用する試験区1では、解凍時の衣は互いにくっつかずに取り扱いがしやすい状態となっていた一方で、クラッカー粉を使用しない参考区3では、衣がべたついて取り扱いしにくく、容器に鶏肉の底面がくっついて衣が剥がれやすかった。この結果から、クラッカー粉は、冷凍し、解凍した後に油ちょうして得られる油ちょう製品において、衣の外観を向上する効果が発揮されることが示唆された。
【0072】
なお、表および図に示さないが、試験区1においてクラッカー粉の量を15質量%とし、澱粉の量を46.5質量%とする以外は試験区1と同様の処理行って製造した参考区4について官能試験を行った結果、外観(下面)の評価について、参考区4は参考区3よりも優れていた。
【0073】
試験例4:コーンフラワーの影響の確認(試験区2、参考区5、参考区6の比較試験)
試験区2(冷凍後、解凍して得られた鶏肉を油ちょうしたサンプル)と、コーンフラワー粉を使用しない参考区5とを比較した結果を以下の表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
試験区2は、コーンフラワーを使用しない参考区5と比較して、外観および衣の食感、味は良好な結果を示した。
【0076】
また、図3では、試験区2および参考区5を解凍した際の衣の状態を示す。上部の写真は、解凍時の鶏肉の接触面の写真であり、下部は鶏肉と容器との接触面の写真である。コーンフラワーを使用する試験区2では、解凍時の衣は互いにくっつかずに取り扱いがしやすい状態となっていた一方で、コーンフラワーを使用しない参考区5では、衣がべたついて取り扱いしにくく、容器に鶏肉の底面がくっついて衣が剥がれやすかった。この結果から、コーンフラワーは、冷凍し、解凍した後に油ちょうして得られる油ちょう製品において、衣の味を向上する機能も有することが示唆された。
【0077】
なお、表および図に示さないが、試験区2においてコーンフラワーの量を30質量とし、澱粉の量を36.5質量とする以外は試験区2と同様の処理行って製造した予備サンプルについて官能試験を行った結果、参考区6は、外観(上面)の評価、外観(下面)の評価および衣の食感の評価1(サクサク感)について参考区5よりも優れていた。
図1
図2
図3