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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179793
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】カセット
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/673 20060101AFI20241219BHJP
   B65D 85/30 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
H01L21/68 T
B65D85/30 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098929
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋柴 俊之
【テーマコード(参考)】
3E096
5F131
【Fターム(参考)】
3E096AA06
3E096BA16
3E096BB03
3E096CA01
3E096CB03
3E096DA05
3E096EA02X
3E096EA02Y
3E096FA03
3E096FA23
3E096GA03
3E096GA12
5F131AA02
5F131AA10
5F131BA51
5F131CA09
5F131GA02
5F131GA12
5F131GA63
(57)【要約】
【課題】板状物をカセット内に収容して長時間保管しても、板状物の自重により板状物に割れが生じたり、上方の板状物が、下方の板状物又はテープに接触したりするという問題を解消し、また、板状物の表面や板状物を支持するテープに異物が付着するという問題を解消することができるカセットを提供する。
【解決手段】板状物を収容するカセット10であって、板状物を支持する支持溝12が対向して配設され該板状物の搬入及び搬出を許容する開口部11を形成する一対の側壁13、14と、一対の側壁13、14の上部を連結する天井部15と、一対の側壁13、14の下部を連結する底部16と、一対の側壁13、14の開口部11の反対側を連結する背部17と、を含み、支持溝12の開口部11側の端部には、開口部11に向かって末広がり形状をなすテーパー部12aが形成され、支持溝12の幅は、テーパー部12aの狭くなった幅で背部17に向かって維持され、開口部11を上にして縦に置くことを可能にする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状物を収容するカセットであって、
板状物を支持する支持溝が対向して配設され該板状物の搬入及び搬出を許容する開口部を形成する一対の側壁と、
該一対の側壁の上部を連結する天井部と、
該一対の側壁の下部を連結する底部と、
該一対の側壁の該開口部の反対側を連結する背部と、
を含み、
該支持溝の開口部側の端部には、該開口部に向かって末広がり形状をなすテーパー部が形成され、
該支持溝の幅は、該テーパー部の狭くなった幅で該背部に向かって維持され、
該開口部を上にして縦に置くことを可能にするカセット。
【請求項2】
該背部には、該支持溝の幅に対応して板状物を支持する背部支持溝が形成される請求項1に記載のカセット。
【請求項3】
該板状物は、ウエーハを収容する開口を中央に備えたフレームにテープを介してウエーハが支持されているフレームユニットである請求項1に記載のカセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状物を収容するカセットに関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
ウエーハは、個々のデバイスチップに分割された後、ウエーハの形態を保った状態でピックアップ工程等の後工程に搬送されるため、ウエーハを収容する開口を中央に備えたフレームにテープを介して支持されてフレームユニットの形態に構成される。
【0004】
また、フレームユニットは、カセットに複数収容されてダイシング装置、レーザー加工装置等に搬送されて設置される(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-82588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来のカセットのように、ウエーハを支持するフレームユニットの面を水平方向に一致させてカセット内に収容して長時間保管すると、ウエーハの厚みが薄い場合(例えば200μm以下)には、ウエーハの自重によって中央が沈み、ウエーハに割れが生じたり、上方のウエーハが下方のウエーハやテープに接触したりするという問題が発生すると共に、ウエーハの表面やウエーハを支持するテープに異物(埃、塵等)が付着するという問題が発生する。さらには、ウエーハの面を水平方向に沿う方向で収容する従来のカセットを保管する場合には、少なくともウエーハユニットの大きさを超える面積の保管場所が必要であり、該カセットの保管場所の確保に経費が掛かるという問題がある。このような問題は、ウエーハを収容する開口を中央に備えたフレームにテープを介して支持されたフレームユニットを収容する場合に限定されず、単体のウエーハ、硝子板等を収容するカセットであっても、同様の問題が起こり得る。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、板状物をカセット内に収容して長時間保管しても、板状物の自重により板状物に割れが生じたり、上方の板状物が、下方の板状物又はテープに接触したりするという問題を解消し、また、板状物の表面や板状物を支持するテープに異物が付着するという問題を解消することができるカセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、板状物を収容するカセットであって、板状物を支持する支持溝が対向して配設され該板状物の搬入及び搬出を許容する開口部を形成する一対の側壁と、該一対の側壁の上部を連結する天井部と、該一対の側壁の下部を連結する底部と、該一対の側壁の該開口部の反対側を連結する背部と、を含み、該支持溝の開口部側の端部には、該開口部に向かって末広がり形状をなすテーパー部が形成され、該支持溝の幅は、該テーパー部の狭くなった幅で該背部に向かって維持され、該開口部を上にして縦に置くことを可能にするカセットが提供される。
【0009】
該背部には、該支持溝の幅に対応して板状物を支持する背部支持溝を形成することが好ましい。また、該板状物は、ウエーハを収容する開口を中央に備えたフレームにテープを介してウエーハが支持されているフレームユニットであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカセットは、板状物を支持する支持溝が対向して配設され該板状物の搬入及び搬出を許容する開口部を形成する一対の側壁と、該一対の側壁の上部を連結する天井部と、該一対の側壁の下部を連結する底部と、該一対の側壁の該開口部の反対側を連結する背部と、を含み、該支持溝の開口部側の端部には、該開口部に向かって末広がり形状をなすテーパー部が形成され、該支持溝の幅は、該テーパー部の狭くなった幅で該背部に向かって維持され、該開口部を上にして縦に置くことを可能にすることから、板状物のバタつきが抑制されて、隣接する板状物同士が接触することなく保管することが可能になり、板状物を収容したカセットを長時間保存しても板状物の自重によって割れることがなく、板状物への異物の付着も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】2つのカセットを、開口部を上にして縦に置いた状態を示す斜視図である。
図2図1に示す1つのカセットを平置きした状態を示す斜視図である。
図3図2に示すカセットの分解斜視図である。
図4図2に示すカセットにフレームを搬入する態様の一部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に基づいて構成されるカセットに係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0013】
図1には、板状物を複数収容可能に構成された本実施形態のカセット10、20が示されている。本実施形態のカセット10、20に収容される板状物は、例えば、図示のように、ウエーハWを収容可能な開口Faを中央に有する環状のフレームFに、保護テープTを介して複数のデバイスが表面に形成されたウエーハWが保持されたウエーハユニットである。図示のように、カセット10、20は、該ウエーハユニットの搬入及び搬出を許容する開口部11、21を上にして縦に置くことが可能に構成されている。図示のカセット10とカセット20は、同一の構成を備えており、以下の説明では、カセット10に基づいて、その構成について詳細に説明し、カセット20についての詳細な説明は省略する。なお、カセット10、20は、図1に示すように、2つを並べて置くことに限定されず、単独で置くこともできるし、3つ以上を並べて置くこともできる。
【0014】
図2には、上記したカセット10を平置きした場合の斜視図が示されている。該平置きとは、ウエーハユニットをカセット10に収容した状態で、ウエーハユニットの上面及び下面が上下方向に向く姿勢で置かれることを言う。以下の説明において、上、下という場合は、この平置きされた状態での上、下を指すものとする。
【0015】
本実施形態のカセット10は、上記したウエーハユニットを支持する支持溝12が対向して配設されウエーハユニットの搬入及び搬出を許容する開口部11を形成する一対の側壁13、14と、該一対の側壁13、14の上部を連結する天井部15と、該一対の側壁13、14の下部を連結する底部16と、該一対の側壁13、14の該開口部11の反対側を連結する背部17とを備えている。側壁13、14に形成された対向する支持溝12、12の間隔は、フレームユニットの外形寸法に対応して形成されている。
【0016】
図3には、上記したカセット10の分解斜視図が示されている。上記したように、一対の側壁13、14の内壁面には、上記したウエーハユニットを支持する複数の支持溝12が対向して形成されており(側壁14の支持溝12は一部のみ見えている。)、図3の左下側には、側壁13において支持溝12が形成された図中Aで示す領域を拡大した拡大図を示している。
【0017】
図3に示す領域Aの拡大図により理解されるように、支持溝12の開口部11側の端部には、溝幅が一定となる直線部12cが形成されると共に、該開口部11に向かって支持溝12を形成する溝の幅が徐々に大きくなる、いわゆる末広がり形状をなすテーパー部12aが形成されている。また、該支持溝12は、上記したテーパー部12aに加え、該テーパー部12aの狭くなった幅が背部17に向かって維持された細溝部12bを備えている。なお、上記した直線部12cは必ずしも必須の構成ではなく、末広がり形状をなすテーパー部12aを維持して省略してもよい。また、細溝部12bは、必ずしも背部17に達する位置まで形成される必要はなく、収容するフレームユニットのフレームFの形状が図1に示すように環状であることから、支持される領域に応じて、図3に示すように背部17に達する前に終了してもよい。側壁14にも、上記した側壁13に形成された支持溝12と同一形状の支持溝12が対向して複数形成されている。
【0018】
また、図3に示すように、本実施形態のカセット10では、背部17の内壁面に、複数の背部支持溝19が形成されている。該背部支持溝19は、側壁13、14に形成された支持溝12に対応して形成されており、上記したウエーハユニットのフレームFを支持すべく、該支持溝12に対応する幅で形成される。背部支持溝19は、背部17の内壁面に形成された支持溝形成部18に形成されている。図3の右方側には、この背部支持溝19が形成された図中Bで示す領域を拡大した拡大図が示されている。
【0019】
図3に示す領域Bの拡大図により理解されるように、背部支持溝19の開口部11側の端部には、溝幅が一定となる直線部19cが形成されると共に、該開口部11の方向に向かって末広がり形状をなすテーパー部19aが形成されている。また、該背部支持溝19の幅は、該テーパー部19aの狭くなった幅で背部17に向かって維持された細溝部19bが形成されている。
【0020】
図4に、カセット10の側壁13に形成された支持溝12と背部17に形成された背部支持溝19を側方から見た側面図とを示すと共に(説明の都合上一部のみ示している)、開口部11側から矢印R1で示す方向に搬入されるウエーハユニットのフレームFを示している。
【0021】
フレームFの厚みをLとした場合、支持溝12の開口部11側端部における幅P1は、3L~5L程度で設定されることが好ましく、より好ましくは、4L程度で設定される。よって、例えばフレームFの厚みLが1mmの場合は、支持溝12の開口部11側端部における幅P1は3~5mm、より好ましくは4mmで設定される。
【0022】
また、テーパー部12aの狭くなった幅が背部17に向かって維持された細溝部12bの溝幅P2は、フレームFの厚みをLとした場合、1.2~1.5Lに設定されることが好ましい。よって、例えばフレームFの厚みLが1mmの場合の該細溝部12bの溝幅P2は、1.2mm~1.5mmで設定される。
【0023】
背部支持溝19の開口部11側端部における幅Q1も、上記した支持溝12と同様に、3L~5L程度で設定されることが好ましく、より好ましくは、4L程度で設定される。よって、例えばフレームFの厚みLが1mmの場合は、支持溝12の開口部11側端部における幅Q1は3~5mm、より好ましくは4mmで設定される。
【0024】
また、テーパー部19aの狭くなった幅が背部17に向かって維持された細溝部19bの溝幅Q2は、上記した支持溝12と同様に、フレームFの厚みをLとした場合、1.2~1.5Lに設定されることが好ましい。よって、例えばフレームFの厚みLが1mmの場合の該細溝部19bの溝幅Q2は、1.2~1.5mmで設定される。なお、支持溝形成部18に形成する背部支持溝19については、上記したテーパー部19aを設けず、細溝部19bのみを形成するようにしてもよい。開口部11側端部から搬入されるフレームユニットを構成するフレームFは、側壁13、14の支持溝12、12のテーパー部12a、12aによってガイドされながら挿入されて、側壁13、14の細溝部12b、12bに導かれ、大幅に位置がずれることがなく背部支持溝19に到達する。特にカセット10を縦置きにした状態でフレームFを搬入する場合には、仮にテーパー部19aが無かったとしても細溝部19bに適切に到達させることができる。
【0025】
上記したカセット10の一対の側壁13、14、天井部15、底部16、及び背部17は、金属プレートに対してタレットパンチプレス等による切断・打ち抜き加工、ベンダー等による曲げ加工等による板金加工を施すことによって安価に製作することができる。また、該金属プレートとしてステンレス板を採用してカセット10を形成することで、錆びにくく、クリーンな状態を長期間、維持することが可能になる。
【0026】
上記した実施形態によれば、フレームユニットを側壁13、14に形成した支持溝12、12に沿って収容することで、フレームユニットのバタつきが抑制されて、隣接するフレームユニット同士が接触することなくカセット10の開口部11を上にして縦置きし保管することが可能になり、フレームユニットを収容したカセット10を比較的長時間保存しても、ウエーハWの厚みが例えば200μmと薄い場合であってもウエーハWの自重によって割れることがなく、ウエーハWの表面や保護テープTへの異物の付着を防止することができる。
【0027】
また、上記した支持溝12の形態によって、縦置きするのに適したカセット10、20を構成することができ、保管場所を狭くすることが可能になり、保管場所に係る経費を抑えることも可能になる。さらには、カセット10、20を縦に置くことで、カセット10、20に収容されたフレームユニットの飛び出しを防止することもできる。
【0028】
なお、上記した実施形態では、カセット10、20に収容される板状物が、ウエーハWを収容可能な開口Faを中央に有する環状のフレームFに、保護テープTを介してウエーハWが保持されたウエーハユニットである例を説明したが、本発明はこれに限定されず、単体のウエーハ、或いは硝子板であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
10:カセット
11:開口部
12:支持溝
12a:テーパー部
12b:細溝部
12c:直線部
13:側壁
14:側壁
15:天井部
16:底部
17:背部
18:支持溝形成部
19:背部支持溝
19a:テーパー部
19b:細溝部
19c:直線部
20:カセット
21:開口部
図1
図2
図3
図4