(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179852
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】樹脂組成物、プリプレグ、樹脂フィルム、金属張積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
C08F 212/00 20060101AFI20241219BHJP
C08F 287/00 20060101ALI20241219BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20241219BHJP
B32B 15/082 20060101ALI20241219BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20241219BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20241219BHJP
C08L 25/02 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C08F212/00
C08F287/00
C08J5/24 CEY
B32B15/082 Z
B32B27/30 A
H05K1/03 610H
C08L25/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099095
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】明比 龍史
(72)【発明者】
【氏名】春日 圭一
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
4J002
4J026
4J100
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AD03
4F072AE02
4F072AF14
4F072AF23
4F072AF26
4F072AG03
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4F072AL13
4F100AB17B
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4F100GB43
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4F100JK06
4F100JL04
4J002BC041
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4J002BG052
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4J026GA06
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4J100AB07P
4J100AB15P
4J100AL62Q
4J100BC48P
4J100CA04
4J100CA23
4J100JA43
4J100JA46
(57)【要約】
【課題】金属箔との接着性に優れるとともに吸湿による誘電特性の悪化が抑制された硬化物の作製に使用可能な樹脂組成物、並びに、この樹脂組成物を用いたプリプレグ、樹脂フィルム、金属張積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージを提供する。
【解決手段】ビニルベンジル基を有する化合物と多官能(メタ)アクリレート化合物とを含む、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルベンジル基を有する化合物と多官能(メタ)アクリレート化合物とを含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記多官能(メタ)アクリレート化合物が、2官能(メタ)アクリレート化合物を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記2官能(メタ)アクリレート化合物が、脂肪族2官能(メタ)アクリレート化合物を含む、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
熱可塑性樹脂をさらに含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、スチレン単位と炭化水素単位とを含む熱可塑性樹脂を含む、請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む、プリプレグ。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む、樹脂フィルム。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物と、金属箔とを含む、金属張積層板。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、プリント配線板。
【請求項10】
請求項9に記載のプリント配線板と、半導体素子とを含む、半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂組成物、プリプレグ、樹脂フィルム、金属張積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
銅張積層板に代表される金属張積層板、金属張積層板に用いることが可能なプリプレグ、金属張積層板を用いる半導体パッケージ等は、スマートフォン等の移動体通信機器、その基地局装置、サーバー、ルーター、大型サーバー等のネットワークインフラ機器、大型コンピュータ、パーソナルコンピュータ、産業用コンピュータ等の多様な電子機器に用いられている。また、家電、自動車等に搭載される電子機器にも用いられている。なかでも電子通信機器は、5Gの普及により膨大なデータを高速で処理する需要が高まっている。
【0003】
電子機器において、膨大なデータを高速で処理する場合、基板材料等には、高周波数領域での伝送損失が少ない誘電特性が求められ、低誘電率及び低誘電正接が求められている。
【0004】
高周波帯域での使用のための電子部品の材料として、特許文献1には、ビニルベンジル系化合物を含有する熱硬化性樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ビニルベンジル基は、極性が比較的低いことから、優れた誘電特性に寄与し得る。一方、低誘電樹脂は、一般的に極性基が少ない傾向があり、銅箔との密着力が一般材と比較して低い場合がある。また、本発明者らの検討により、ビニルベンジル基を有する化合物を用いて得られる硬化物において、吸湿により、誘電特性が悪化する場合があることが判明した。
本開示は、金属箔との接着性に優れるとともに吸湿による誘電特性の悪化が抑制された硬化物の作製に使用可能な樹脂組成物、並びに、この樹脂組成物を用いたプリプレグ、樹脂フィルム、金属張積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の例を以下に列挙する。本発明は以下の実施形態に限定されない。
<1>ビニルベンジル基を有する化合物と多官能(メタ)アクリレート化合物とを含む、樹脂組成物。
<2>前記多官能(メタ)アクリレート化合物が、2官能(メタ)アクリレート化合物を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
<3>前記2官能(メタ)アクリレート化合物が、脂肪族2官能(メタ)アクリレート化合物を含む、<2>に記載の樹脂組成物。
<4>熱可塑性樹脂をさらに含む、<1>~<3>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<5>前記熱可塑性樹脂が、スチレン単位と炭化水素単位とを含む熱可塑性樹脂を含む、<4>に記載の樹脂組成物。
<6><1>~<5>のいずれか1項に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む、プリプレグ。
<7><1>~<5>のいずれか1項に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む、樹脂フィルム。
<8><1>~<5>のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物と、金属箔とを含む、金属張積層板。
<9><1>~<5>のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、プリント配線板。
<10><7>に記載のプリント配線板と、半導体素子とを含む、半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0008】
本開示により、金属箔との接着性に優れるとともに吸湿による誘電特性の悪化の抑制が可能な樹脂組成物、並びに、この樹脂組成物を用いたプリプレグ、樹脂フィルム、金属張積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0010】
本開示において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲の上限値又は下限値は、別の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、各成分には、特に断らない限り、該当する物質が、1種又は2種以上含まれていてもよい。
本開示において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、樹脂組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、樹脂組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0011】
本開示において、特に説明のない限り、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は次の手順にて測定される数値である。重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算する。検量線は、標準ポリスチレン:TSKstandard POLYSTYRENE(Type;A-2500、A-5000、F-20、F-80)(東ソー株式会社製、商品名)を用いて3次式で近似する。GPCの条件を以下に示す。
【0012】
装置:高速GPC装置「HLC-8320GPC」(東ソー株式会社、商品名)
検出器:紫外吸光検出器「UV-8320」(東ソー株式会社、商品名)
カラム:ガードカラム;TSKgel guardcolumn Super(HZ)-M+、カラム;TSKgel SuperMultipore HZ-M(2本)、リファレンスカラム;TSKgel SuperH-RC(2本)(すべて東ソー株式会社、商品名)
カラムサイズ:4.6×20mm(ガードカラム)、4.6×150mm(カラム)、6.0×150mm(リファレンスカラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:10mg/1mL
注入量:20μL又は2μL
流量:0.35mL/分
測定温度:40℃
【0013】
[樹脂組成物]
本開示の一実施形態の樹脂組成物は、ビニルベンジル基を有する化合物と多官能(メタ)アクリレート化合物とを含む。
【0014】
<ビニルベンジル基を有する化合物>
ビニルベンジル基を有する化合物(以下、「ビニルベンジル化合物」という場合もある。)は、ビニルベンジル基を1個以上有することができ、ビニルベンジル基を2個以上有してもよい。ビニルベンジル化合物は、1分子内に1個以上のビニルベンジル基を有することで、加熱等を用いてビニルベンジル基の反応を分子内又は分子間で促進することで、硬化物を得ることができる。
【0015】
ビニルベンジル化合物は、モノマ、オリゴマ、及びプレポリマのいずれであってもよく、これらの2種以上の組み合わせが樹脂組成物に含まれてもよい。
【0016】
ビニルベンジル化合物がモノマの場合、1個以上のビニルベンジル基がベース化合物に導入されているものであってよい。オリゴマは、このモノマが2個以上重合した低重合度の化合物であってよい。プレポリマは、1個以上のビニルベンジル基が樹脂骨格に導入されているものであってよく、1個以上のビニルベンジル基を有するモノマ、オリゴマ、又はこれらの組み合わせの重合体であってよい。オリゴマ及びプレポリマはいずれも、ある程度ビニルベンジル基が未反応で含まれるものであり、加熱等によって硬化反応が開始する状態であることが好ましい。
【0017】
ビニルベンジル化合物のうちモノマにおいて、ビニルベンジル基の個数は、1以上又は2以上であってよく、例えば、2~4又は2~3であってよい。
【0018】
ビニルベンジル化合物のうちオリゴマ又はプレポリマにおいて、分子内にビニルベンジル基の個数は1以上であればよいが、モノマ構成単位にビニルベンジル基が1又は2以上含まれることが好ましく、モノマ構成単位にビニルベンジル基が2~4又は2~3であってよい。
【0019】
ビニルベンジル化合物において、ビニルベンジル基は、o-ビニルベンジル基、m-ビニルベンジル基及びp-ビニルベンジル基のいずれであってもよい。ビニルベンジル化合物の1分子内において、2個以上のビニルベンジル基が含まれる場合、2個以上のビニルベンジル基は、互いに同じ異性体でも異なってもよい。誘電特性の観点から、ビニルベンジル化合物の1分子内において、少なくとも1個のp-ビニルベンジル基が含まれることが好ましい。
ビニルベンジル化合物の1分子において、全ビニルベンジル基の合計質量に対し、p-ビニルベンジル基は、10~100質量%、20~80質量%、30~70質量%、又は40~60質量%であってよい。
【0020】
ビニルベンジル化合物において、ビニルベンジル基は非置換であってもよく、置換基を有してもよい。置換基を有する場合は、置換基は、例えば、炭素数1~20、1~8、又は1~4の脂肪族炭化水素基であってよく、これらの炭素数のアルキル基であってよい。また、置換基としてハロゲン原子を有してもよく、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を有してもよい。ビニルベンジル基において、ベンゼン環に結合する1~4個の水素原子の少なくとも1個が置換されていてもよく、置換基を2個以上有する場合は互いに同一でも異なってもよい。ビニルベンジル化合物がビニルベンジル基を2個以上有する場合、2個以上のビニルベンジル基の間で置換基の有無、個数及び種類は互いに同一でも異なってもよい。ビニルベンジル化合物は、誘電特性の観点から、少なくとも1個の非置換のビニルベンジル基を有することが好ましく、全てのビニルベンジル基が非置換であってよい。
【0021】
ビニルベンジル化合物は、炭化水素化合物であることが好ましく、ビニルベンジル基以外の構造が鎖式炭化水素構造、脂環式炭化水素構造等の非芳香族炭化水素構造、及び芳香族炭化水素構造のいずれであってもよいが、芳香族炭化水素構造であることが好ましい。芳香族炭化水素構造としては、単環又は多環の芳香環、2個以上の芳香環の縮合環、芳香環と非芳香環の縮合環等であってよい。
【0022】
芳香族炭化水素構造としては、インデン環、インダン環、フェナントレン環、アセナフチレン環、フルオレン環等が挙げられる。誘電特性の観点から、インデン環、フルオレン環が好ましい。より好ましくは、ビニルベンジル化合物は、インデン環を有する化合物である。また、芳香族炭化水素構造の環上の炭素原子に直接ビニルベンジル基が結合することが好ましい。
ビニルベンジル化合物に芳香族炭化水素構造が含まれる場合、インデン環、インダン環、フェナントレン環、アセナフチレン環、フルオレン環等は非置換であってもよく、置換基を有してもよい。ただし、ビニルベンジル基との結合部位を除く。置換基としては、例えば、上記したビニルベンジル基で説明したものを挙げることができる。例えば、ビニルベンジル化合物にインデン環が含まれる場合、インデン環に結合する複数の水素原子の少なくとも1個が置換されていてもよく、置換基を2個以上有する場合は互いに同一でも異なってもよい。ビニルベンジル化合物に芳香族炭化水素構造が含まれる場合、誘電特性の観点から、インデン環、インダン環、フェナントレン環、アセナフチレン環、フルオレン環等はビニルベンジル基との結合部位を除き非置換であってよい。
【0023】
以下、ビニルベンジル化合物のうちモノマについて説明する。
モノマとしてのビニルベンジル化合物は、炭化水素化合物であることが好ましく、炭化水素化合物の中でも、インデン環、インダン環、フェナントレン環、アセナフチレン環、フルオレン環等、又はこれらの組み合わせを有する化合物であることが好ましく、インデン環、フルオレン環、又はこれらの組み合わせを有する化合物であることがより好ましく、インデン環を有する化合物であることがさらに好ましい。例えば、ビニルベンジル化合物は、1分子内に、ビニルベンジル基を1個又は2個以上有し、インデン環を1個有するモノマであってよい。
【0024】
ビニルベンジル化合物の一つの例は、インデン環を有し、インデン環の1位、2位、及び3位のうちいずれかに結合するビニルベンジル基を1個又は2個以上有するモノマである。
【0025】
ビニルベンジル化合物の具体例として、下記式(1)で表されるモノマ等が挙げられる。
【0026】
【0027】
式(1)において、nは1、2又は3であるが、nは、2又は3であってもよい。なお、式(1)で表されるモノマの混合物において、nが異なる複数種のモノマが含まれてもよい。この場合、nは、平均して2~3が好ましく、2.0~2.5がより好ましい。
【0028】
式(1)において、ビニルベンジル基は、インデン環の1位、2位、及び3位のうちいずれかの炭素原子に直接結合すればよいが、1位、又は1位と3位の組み合わせであることが好ましい。各位において、ビニルベンジル基は1個又は2個結合してよい。例えば、ビニルベンジル基は、インデン環の1位、1’位、及び3位の組み合わせ、あるいはインデン環の1位、及び1’位の組み合わせに結合するとよい。
【0029】
式(1)において、ビニルベンジル基のメチレン基は、o、m、及びpのいずれの位置であってもよいが、m又はpの位置が好ましい。式(1)において、1分子中に2又は3個のビニルベンジル基が含まれる場合、2又は3個のビニルベンジル基はo体、m体、及びp体のいずれかであってもよく、これらの組み合わせであってもよいが、p体を含むことが好ましく、p体のみであってもよく、m体とp体の組み合わせであってもよい。樹脂組成物において、式(1)で表されるモノマが2種以上含まれる場合は、2種以上のモノマの間でビニルベンジル基のメチレン基の位置は互い同一でも異なってもよい。樹脂組成物において、式(1)で表されるモノマが2種以上含まれる場合は、2種以上のモノマの混合物において、ビニルベンジル基がo体、m体、及びp体のうち1種又は2種以上の組み合わせであってよく、p体を含むことが好ましく、p体のみであってもよく、m体及びp体の組み合わせであってもよい。この場合、樹脂組成物又はその硬化物において、m体とp体の質量比は40:60~60:40が好ましい。
【0030】
以下、ビニルベンジル化合物のうちモノマの合成方法について説明する。なお、ビニルベンジル化合物は、下記合成方法によらず、その分子構造によって特定される化合物である。
【0031】
ビニルベンジル化合物のうちモノマを合成する方法としては、例えば、インデン、フルオレン等の所望する構造を有するベース化合物と、ハロゲン化メチル基を有するスチレンとを、塩基性化合物の存在下で反応させる方法が挙げられる。ハロゲン化メチル基を有するスチレンとしては、例えば、o-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレン、p-クロロメチルスチレン等が挙げられ、これらは1種又は2種以上の混合物であってもよい。塩基性化合物としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド等が挙げられる。
【0032】
上記反応には、相間移動触媒を用いてもよい。相間移動触媒としては、例えば、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム等が挙げられる。反応は、溶液重合で行うことができる。反応は、例えば、加熱及び撹拌下で行ってよい。反応系に重合禁止剤を投与してもよい。重合禁止剤としては、例えば、フェノチアジン等が挙げられる。得られた生成物は、必要に応じて、濃縮、再沈殿、洗浄等の公知の方法によって精製してもよい。
【0033】
得られるモノマは、単一の化合物であってもよく、2種以上の化合物のモノマ混合物であってもよい。例えば、ベース化合物にインデンを用いる場合、インデン環の1位、2位、及び3位の少なくとも1つの炭素原子にビニルベンジル基が直接結合する化合物が合成されるが、結合部位の異なる2種以上の異性体のビニルベンジル化合物がモノマ混合物に含まれてもよい。また、合成条件に応じて、インデン環の1位、2位、及び3位の少なくとも2つの炭素原子にそれぞれビニルベンジル基が直接結合する化合物を得ることができる。この場合、インデン環へのビニルベンジル基の結合個数及び結合部位が異なる2種以上のビニルベンジル化合物がモノマ混合物に含まれてもよい。
【0034】
ビニルベンジル化合物がモノマの場合、分子量は、特に限定されないが、成形性及び取り扱い性の観点から、200~800が好ましく、250~750がより好ましく、300~700がさらに好ましい。ビニルベンジル化合物がモノマの場合、分子量は、複数の化合物の混合物の場合は、重量平均分子量(Mw)とする。
【0035】
以下、ビニルベンジル化合物のうちプレポリマについて説明する。
プレポリマとしてのビニルベンジル化合物は、炭化水素化合物であることが好ましく、炭化水素化合物の中でも、インデン環、インダン環、フェナントレン環、アセナフチレン環、フルオレン環等、又はこれらの組み合わせを有する化合物であることが好ましく、インデン環、フルオレン環、又はこれらの組み合わせを有する化合物であることがより好ましく、インデン環を有する化合物であることがさらに好ましい。例えば、ビニルベンジル化合物は、ビニルベンジル基を1個又は2個以上有し、インデン環を1個有する構造単位を含むプレポリマであってよい。
【0036】
プレポリマは、モノマを重合して得ることができる。ビニルベンジル基は、モノマに由来して導入されるとよい。例えば、ビニルベンジル基を1個又は2個以上有するモノマを用いるとよく、ビニルベンジル基を2個以上有するモノマを用いることが好ましい。重合は完全に完了させずに、モノマ由来のビニルベンジル基がある程度残る状態で停止するとよい。例えば、硬化性プレポリマを液体状で得るために、硬化性プレポリマの重合反応系の粘度がある程度に至った状態で重合を停止するとよい。プレポリマの重合ではモノマとともに、又はモノマに代えて、オリゴマを用いてもよい。例えば、プレポリマの重合には、上記説明したビニルベンジル化合物のモノマを用いてもよく、このモノマのオリゴマを用いてもよい。
【0037】
ビニルベンジル化合物がプレポリマの場合、重量平均分子量(Mw)は、樹脂組成物の流動性の観点から、例えば、5,000~50,000、又は10,000~30,000であってよい。
【0038】
次に、ビニルベンジル化合物を重合してプレポリマとしてビニルベンジル化合物を得る方法について説明する。ビニルベンジル化合物の重合は、反応生成物に極性成分が発生しないように、ラジカル重合で行うことが好ましい。ラジカル重合は、ラジカル重合開始剤を用いて行うことができる。重合は溶液重合で行うことができ、重合溶媒は特に限定されない。例えば、後述する樹脂組成物に用いられる有機溶剤の中から1種又は2種以上を組み合わせて重合溶媒として用いてもよい。
【0039】
ラジカル重合開始剤としては、熱ラジカル重合開始剤であってもよいし、光ラジカル重合開始剤であってもよいが、熱ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤は、特に限定されず、アゾ系重合開始剤、有機過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。具体的には、例えば、後述する硬化促進剤として例示されるアゾ系重合開始剤、有機過酸化物系重合開始剤等から適宜選択して用いてよい。ラジカル重合開始剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0040】
プレポリマとしてのビニルベンジル化合物は、ビニルベンジル化合物の単独重合体であっても、共重合体であってもよい。共重合体は、2種以上のビニルベンジル化合物の共重合体であっても、ビニルベンジル化合物と他のモノマとの共重合体であってもよい。共重合体の場合、ランダム共重合体、ブロック共重合体等であってよい。
【0041】
ビニルベンジル化合物のうちオリゴマとしては、上記したモノマの低重合度の重合体であってよい。
【0042】
ビニルベンジル化合物は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0043】
誘電特性の観点から、ビニルベンジル化合物は、樹脂組成物の固形分量に対して、10質量%以上、20質量%以上、又は30質量%以上であってよい。一方、金属箔との接着性の観点から、ビニルベンジル化合物は、樹脂組成物の固形分量に対して、70質量%以下、60質量%以下、又は50質量%以下であってよい。ビニルベンジル化合物は、例えば、樹脂組成物の固形分量に対して、10~70質量%、20~60質量%、又は30~50質量%であってよい。
【0044】
本開示において、樹脂組成物の「固形分」とは、水、後述する溶媒等の揮発する物質以外の樹脂組成物中の成分をいう。固形分は、樹脂組成物を乾燥させた際に、揮発せずに残る成分であり、また、25℃付近の室温で液状、水飴状又はワックス状のものも含み、必ずしも固体であることを意味するものではない。
【0045】
ビニルベンジル化合物は、ビニルベンジル化合物と後述する多官能(メタ)アクリレート化合物との合計量に対して、60質量%以上、70質量%以上、又は80質量%以上であってよい。一方、ビニルベンジル化合物は、ビニルベンジル化合物と多官能(メタ)アクリレート化合物との合計量に対して、99質量%以下、98質量%以下、95質量%以下、又は90質量%以下であってよい。ビニルベンジル化合物は、例えば、樹脂組成物のビニルベンジル化合物と多官能(メタ)アクリレート化合物との合計量に対して、60~99質量%、70~98質量%、80~95質量%、又は80~90質量%であってよい。
【0046】
<多官能(メタ)アクリレート化合物>
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いることができる。(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリロイルオキシ基の形態で多官能(メタ)アクリレート化合物に含まれていてもよい。本開示において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの総称であり、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の総称であり、「(メタ)アクリロイルオキシ基」は、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基の総称である。多官能(メタ)アクリレート化合物は、例えば、アクリロイル基を2個以上有する化合物、メタクリロイル基を2個以上有する化合物、又は、アクリロイル基とメタクリロイル基とを合計で2個以上有する化合物であってよい。
【0047】
多官能(メタ)アクリレート化合物において、1分子中の(メタ)アクリロイル基数は、例えば、5以下、4以下、または3以下であってよい。
【0048】
多官能(メタ)アクリレート化合物は、例えば、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個含む、2官能(メタ)アクリレート化合物、1分子中に(メタ)アクリロイル基を3個含む3官能(メタ)アクリレート化合物、1分子中に(メタ)アクリロイル基を4個含む、4官能(メタ)アクリレート化合物、1分子中に(メタ)アクリロイル基を5個含む、5官能(メタ)アクリレート化合物等であってよい。
【0049】
誘電特性及び機械特性の観点から、多官能(メタ)アクリレートとしては、2官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0050】
誘電特性の観点から、多官能(メタ)アクリレート化合物は、脂肪族多官能(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、例えば、脂肪族2官能(メタ)アクリレート化合物であってよい。
【0051】
誘電特性の観点から、多官能(メタ)アクリレート化合物は、(メタ)アクリロイル基又は(メタ)アクリロイルオキシ基の酸素原子以外の酸素原子を有していないことが好ましい。
【0052】
多官能(メタ)アクリレート化合物は、例えば、アルキレン基を含んでもよい。
多官能(メタ)アクリレート化合物は、例えば、アルキレン基と2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であってよい。多官能(メタ)アクリレート化合物は、例えば、アルキレン基を含み、アルキレン基の2つの末端はそれぞれ独立に、直接又は連結基を介して(メタ)アクリロイルオキシ基に結合している化合物であってよい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、-CH2C(CH3)2CH2-、-(CH2)m-、-(CH2C(CH3)2)n-等が挙げられる。mは、例えば、1~30、1~20又は1~10であってよい。nは、例えば、1~30、1~20又は1~10であってよい。多官能(メタ)アクリレート化合物は、例えば、ポリイソブチレン骨格を含む化合物であってよく、例えば、-(CH2C(CH3)2)n-で表されるポリイソブチレン骨格を含む化合物であってよい。
多官能(メタ)アクリレート化合物は、例えば、下記式(2)で表される化合物であってよい。
【0053】
【0054】
式(2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、Rは、2価の基を表す。
式(2)において、Rは、2価の有機基が好ましく、2価の炭化水素基がより好ましい。Rは、例えば、アルキレン基であってよい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、-CH2C(CH3)2CH2-、-(CH2)m-、-(CH2C(CH3)2)n-等が挙げられる。mは、例えば、1~30、1~20又は1~10であってよい。nは、例えば、1~30、1~20又は1~10であってよい。
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート等が挙げられる。多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ポリイソブチレン骨格含有ジアクリレート等のポリイソブチレン骨格含有(メタ)アクリレート化合物等も挙げられる。
【0055】
多官能(メタ)アクリレート化合物は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
成形性の観点から、多官能(メタ)アクリレート化合物は、樹脂組成物の固形分量に対して、0.1質量%以上、1質量%以上、又は2質量%以上であってよい。一方、誘電特性の観点から、多官能(メタ)アクリレート化合物は、樹脂組成物の固形分量に対して、40質量%以下、20質量%以下、又は10質量%以下であってよい。多官能(メタ)アクリレート化合物は、例えば、樹脂組成物の固形分量に対して、0.1~40質量%、1~20質量%、又は2~10質量%であってよい。
【0056】
多官能(メタ)アクリレート化合物は、ビニルベンジル化合物と多官能(メタ)アクリレート化合物との合計量に対して、1質量%以上、2質量%以上、5質量%以上、又は10質量%以上であってよい。一方、多官能(メタ)アクリレート化合物は、ビニルベンジル化合物と多官能(メタ)アクリレート化合物との合計量に対して、40質量%以下、30質量%以下、又は20質量%以下であってよい。多官能(メタ)アクリレート化合物は、例えば、ビニルベンジル化合物と多官能(メタ)アクリレート化合物との合計量の固形分量に対して、1~40質量%、2~40質量%、5~30質量%、又は10~20質量%であってよい。
【0057】
<その他の成分>
樹脂組成物は、必要に応じて、上記各成分以外のその他の成分を含有してもよい。
【0058】
樹脂組成物は、熱硬化性樹脂をさらに含んでもよい。そのような熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、マレイミド化合物、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、及びメラミン樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0059】
樹脂組成物は、熱可塑性樹脂をさらに含んでもよく、熱可塑性樹脂として、例えば、熱可塑性エラストマをさらに含んでよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン単位を含む熱可塑性樹脂を用いることができる。金属箔との接着性の向上、吸湿による誘電特性の悪化のさらなる抑制、及び、熱特性(例えば、加熱による寸法変化の低減)の観点から、スチレン単位を含む熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン単位と炭化水素単位とを含む熱可塑性樹脂が好ましい。このような熱可塑性樹脂は、例えば、スチレン単位と炭化水素単位とを含む熱可塑性エラストマであってよく、例えば、スチレン単位と炭化水素単位とを含む共重合体であってよい。
スチレン単位は、スチレン由来の構造単位であってよい。
炭化水素単位は、例えば、炭化水素化合物由来の構造単位であってよく、脂肪族炭化水素化合物由来の構造単位であってよい。炭化水素単位としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソブチレン又はこれらの組合せの由来の構造単位等が挙げられ、イソブチレン由来の構造単位が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン・ブチレン-スチレン共重合体等が挙げられる。これらは、例えば、ブロック共重合体であってよい。
【0060】
スチレン単位を含む熱可塑性樹脂において、スチレン単位の含有量(以下、「スチレン含有量」という場合がある。)は、特に限定されないが、誘電正接(Df)の観点から、5~80質量%であることが好ましく、10~75質量%であることがより好ましく、15~60質量%であることがさらに好ましく、20~45質量%であることが特に好ましい。
【0061】
スチレン単位を含む熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば、金属箔との接着強度をさらに高める観点から、50,000以上が好ましく、60,000以上がより好ましい。スチレン単位を含む熱可塑性樹脂の平均分子量は、例えば、300,000以下が好ましく、200,000万以下がより好まし。スチレン単位を含む熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、例えば、50,000~300,000、又は60,000~200,000であってよい。
【0062】
スチレン単位を含む熱可塑性樹脂が樹脂組成物に含まれる場合、スチレン単位を含む熱可塑性樹脂は、樹脂組成物の固形分量に対して、例えば、0.1~20質量%、1~10質量%、又は2~8質量%以上であってよい。
【0063】
樹脂組成物は、充填材を含んでよい。充填材としては、無機充填材が好ましく、例えば、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、マイカ、ベリリア、クレー、タルク等が挙げられる。誘電特性の観点からシリカが好ましい。
【0064】
充填材の形状及び大きさは特に限定されない。充填材の平均粒子径は、例えば、0.01~20μm、又は0.1~10μmであってもよい。ここで、充填材の平均粒子径は、レーザー回折散乱法による体積基準の粒子分布において、積算値50%に相当する点の粒子径である。
【0065】
充填材は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
樹脂組成物が充填材を含む場合、充填材は、樹脂組成物の固形分量に対して、例えば、30~80質量%、40~70質量%、又は50~60質量%以上であってよい。
【0066】
樹脂組成物は硬化促進剤を含んでよい。硬化促進剤としては、例えばラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、熱ラジカル重合開始剤であってもよいし、光ラジカル重合開始剤であってもよいが、熱ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤は、特に限定されず、アゾ系重合開始剤、有機過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパンニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、1,1’-アゾビス(シクロヘキシルカルボン酸メチル)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、4,4’-アゾビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル4-シアノペンタノアート)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)等が挙げられる。有機過酸化物系重合開始剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、2-ブタノンパーオキサイド、tert-ブチルパーベンゾエイト、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン及びtert-ブチルヒドロパーオキシド等が挙げられる。
【0067】
硬化促進剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0068】
樹脂組成物は、無溶媒の樹脂組成物であってもよく、溶媒を含んでもよい。溶媒は、樹脂組成物の粘度を調節して、塗工性をより改善することができる。溶媒としては有機溶剤が好ましい。
【0069】
有機溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の窒素原子含有溶剤;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤;γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤などが挙げられる。有機溶剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0070】
樹脂組成物が溶媒を含む場合、樹脂組成物の固形分量は、例えば、樹脂組成物の全質量に対し30~95質量%、40~90質量%、50~80質量%又は50~70質量%であってよい。
【0071】
<樹脂組成物の製造方法>
樹脂組成物の製造方法は特に限定されない。一実施形態による樹脂組成物は、製造方法によって限定されず、その特徴は本開示にて説明される通りである。樹脂組成物の製造方法の一例としては、ビニルベンジル化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物、及び、必要に応じて任意成分を加えて混合し、樹脂組成物を得ることができる。より詳しくは、例えば、ビニルベンジル化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物等を溶媒に溶解又は分散させて、必要に応じてその他の成分を加えて混合し、樹脂組成物を得ることができる。各成分の混合順序、温度、時間等の条件は、特に限定されず、原料の種類、製造規模、製造装置等に応じて適宜調節すればよい。
【0072】
<樹脂組成物の硬化物の誘電特性>
樹脂組成物の硬化物の25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)は、4.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、3.4以下がさらに好ましい。樹脂組成物の硬化物の25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)は小さいほど好ましく、その下限値に特に制限はないが、他の物性とのバランスを考慮して、例えば、2.3以上、又は2.4以上であってよい。
例えば、樹脂組成物の硬化物は、25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)は、2.3~4.0、2.3~3.5、又は2.4~3.4が好ましい。
【0073】
樹脂組成物の硬化物の25℃、10GHzにおける誘電正接(Df)は、例えば、0.0025以下であってよく、0.0020以下が好ましく、0.0015以下がより好ましく、0.0013以下がさらに好ましい。樹脂組成物の硬化物の25℃、10GHzにおける誘電正接(Df)は小さいほど好ましく、その下限値に特に制限はないが、他の物性とのバランスを考慮して、例えば、0.0001以上、0.0002以上、又は0.0005であってよい。
例えば、樹脂組成物の硬化物の25℃、10GHzにおける誘電正接(Df)は、0.0001~0.0020、0.0002~0.0015、又は0.0005~0.0013であってよい。
【0074】
本開示において、25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)は、SPDR法(スプリットポスト誘電体共振器)に準拠して、10GHz帯で25℃にて測定する。測定装置には、アジレントテクノロジー製ベクトル型ネットワークアナライザE8364B及びベガテクノロジー社製10GHz SPDRをそれぞれ用いることができる。
樹脂組成物の硬化物の比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の測定対象となる試料は、樹脂組成物を硬化させて、JIS K 6800(1985)におけるC-ステージの状態とさせたものである。具体的には、実施例に記載の方法で、試料を用意することができる。
【0075】
[プリプレグ]
一実施形態によれば、樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含むプリプレグを提供することができる。このプリプレグは、例えば、樹脂組成物と繊維基材とを用いて形成することができる。樹脂組成物としては、上記した樹脂組成物を用いることができる。樹脂組成物の詳細については上記説明した通りである。
【0076】
プリプレグは、上記した樹脂組成物又は上記した樹脂組成物の半硬化物を含むことができる。
本開示において、半硬化物の一つの指標として、JIS K 6800(1985)におけるB-ステージの状態を挙げることができる。
プリプレグは、例えば、樹脂組成物又は樹脂組成物の半硬化物と、シート状繊維基材等の繊維基材と、を含有するものであってよい。プリプレグにおいて、樹脂組成物は未硬化状態であってもよいが、樹脂組成物は部分的又は全体的に半硬化の状態であってもよい。
【0077】
プリプレグは、例えば、繊維基材に樹脂組成物を塗工し、乾燥させることで得ることができる。例えば、プリプレグは、繊維基材を樹脂組成物に含浸塗工させ、樹脂組成物が含浸された繊維基材を乾燥させることで得ることができる。乾燥は、樹脂組成物に含まれ得る溶媒等の揮発成分が除去される温度以上で行うことが好ましく、用途に応じて樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂が半硬化する温度以上で行ってもよい。また、乾燥は、樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂が完全に硬化されないように調節されるとよい。このような観点から、乾燥温度は、例えば、80~200℃であってよく、乾燥時間は、乾燥温度及び乾燥装置、その規模等に応じて、例えば、1~30分間であってよい。
【0078】
繊維基材は、織物、編物、及び不織布のいずれであってもよい。繊維基材は、チョップドストランドマット、ロービング等の形状で提供されてもよい。
繊維の材質としては、無機繊維及び有機繊維のいずれであってもよい。
無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。ガラス繊維としては、Eガラス、NEガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等が挙げられる。有機繊維としては、ポリイミド、ポリエステル、テトラフルオロエチレン等が挙げられる。繊維基材は、これらの繊維を1種単独で用いたものであってもよいし、これらの2種以上を組み合わせて用いたものであってもよい。
繊維基材の材質は、誘電特性及び耐熱性の観点から、無機繊維が好ましく、ガラス繊維がより好ましい。
【0079】
繊維基材は、プリプレグの用途に応じて適宜選択すればよいが、シート状繊維基材が好ましい。
シート状繊維基材としては、例えば、公知の電気絶縁材料用積層板において用いられている各種のシート状繊維基材であってよい。
シート状繊維基材の厚さは特に限定されないが、例えば、0.02~0.5mmが好ましい。ここで、厚さは、シート状繊維基材の全面において均等な距離で5点の厚さを測定し、5点の算術平均値とする。
【0080】
[樹脂フィルム]
一実施形態によれば、樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂フィルムを提供することができる。樹脂組成物の詳細については上記説明した通りである。
【0081】
樹脂フィルムは、上記した樹脂組成物又は上記した樹脂組成物の半硬化物を含んでよい。樹脂フィルムにおいて、樹脂組成物は未硬化状態であってもよいが、樹脂組成物は部分的又は全体的に半硬化の状態であってもよい。例えば、この樹脂フィルムを熱処理等で硬化させることで、硬化物を得ることができる。
樹脂フィルムは、例えば、被塗工材に樹脂組成物を塗工し、乾燥させることで得ることができる。乾燥は、例えば、上記プリプレグの製造方法と同様に行えばよい。被塗工材上で樹脂フィルムを乾燥した後に、樹脂フィルムと被塗工材の組み合わせとして製品を提供してもよい。例えば、この方法では、電子機器等において被塗工材に絶縁層等を形成するために樹脂フィルムを提供することができる。別の方法では、被塗工材上で樹脂フィルムを乾燥した後に、樹脂フィルムを被塗工材から剥離して樹脂フィルムを製品として提供してもよい。
【0082】
被塗工材としては、無機物基材及び有機物基材のいずれであってもよく、ガラス基材、金属箔、金属板等の金属基材、プラスチック板、プラスチックフィルム等のプラスチック基材、紙基材等が挙げられる、上記プリプレグで説明した繊維基材であってもよい。樹脂フィルムを被塗工材から剥離して提供するために、表面に離型層が形成された被塗工材を用いてもよい。
【0083】
[金属張積層板]
一実施形態によれば、樹脂組成物の硬化物と金属箔とを含む金属張積層板を提供することができる。この金属張積層板は、例えば、プリプレグの硬化物と、金属箔とを含む金属張積層板であってよい。
他の実施形態によれば、プリプレグと金属箔とを用いて形成される金属張積層板を提供することもできる。この金属張積層板は、例えば、プリプレグの硬化物と金属箔とを含む金属張積層板であってよい。
樹脂組成物及びプリプレグの詳細については上記説明した通りである。本開示において、硬化物の一つの指標として、JIS K 6800(1985)におけるC-ステージの状態を挙げることができる。
【0084】
金属張積層板は、樹脂硬化物を含む樹脂硬化物層と、樹脂硬化物層の少なくとも一方の面に配置される金属箔とを含むことが好ましい。樹脂硬化物層は、上記した樹脂組成物の硬化物を含むものであるが、上記したプリプレグの硬化物であってよい。例えば、金属張積層板において、プリプレグの硬化物の少なくとも一方の面に金属箔が配置され、より好ましくはプリプレグの硬化物の両面に金属箔が配置される。金属張積層板は、1枚のシート状プリプレグの少なくとも一方の面に金属箔が配置されて製造されるものであってもよく、2枚以上のシート状プリプレグを積層し、積層体の最外面の少なくとも一方の面に金属箔が配置されて製造されるものであってもよい。例えば、金属張積層板は、2枚以上のシート状プリプレグを積層し、この積層体の両面に金属箔が配置されて製造されるものであってよい。
【0085】
以下、金属張積層板を製造する方法の具体例として、2枚以上のシート状プリプレグの積層体に金属箔を配置する方法を説明する。
【0086】
まず、2枚以上のシート状プリプレグを積層し、積層体を得る。この積層体において、2枚以上のシート状プリプレグは互いに同一であっても、一部又は全てが異なってもよい。積層体において、2枚以上のシート状プリプレグのうち少なくとも1枚のシート状プリプレグが一実施形態による樹脂組成物を用いて得られたものであればよい。
【0087】
次に、この積層体の少なくとも一方の面に金属箔を配置する。
この金属箔が配置された積層体を加熱加圧する。これによってシート状プリプレグの硬化反応が進行して、プリプレグの硬化物を得ることができる。また、互いに隣接するシート状プリプレグを固着させることができる。加熱加圧条件は特に限定されないが、例えば、温度100~300℃、時間10~300分間、圧力1.5~5MPaとすることができる。また、加熱加圧の後に、プリプレグの硬化をより進行させるために、再加熱を行ってもよい。この場合の再加熱温度は100~300℃であってよい。
加圧方法としては、例えば、オートクレーブ成形機、多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機等を用いることができる。
【0088】
金属箔の金属としては、特に限定されず、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、金、銀、白金、モリブデン、ルテニウム、タングステン、鉄、チタン、クロム等、これらの金属元素を2種以上含む合金等が挙げられる。工業的に銅、ニッケル、アルミニウムの単体金属であるとよい。金属箔として銅を用いることで、銅張積層板を提供することができる。
【0089】
金属張積層板において金属箔を除去して得られた評価基板(以下、「金属箔除去評価基板」ともいう。)の誘電特性は、以下の通りであることが好ましい。
【0090】
金属箔除去評価基板の25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)は、4.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、3.4以下がさらに好ましい。金属箔除去評価基板の25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)は小さいほど好ましく、その下限値に特に制限はないが、他の物性とのバランスを考慮して、例えば、2.3以上、又は2.4以上であってよい。
【0091】
例えば、金属箔除去評価基板の25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)は、2.3~4.0、2.3~3.5、又は2.4~3.4であってよい。
【0092】
金属箔除去評価基板の25℃、10GHzにおける誘電正接(Df)は、0.0020以下が好ましく、0.0015以下がより好ましく、0.0013以下がさらに好ましい。金属箔除去評価基板の25℃、10GHzにおける誘電正接(Df)は小さいほど好ましく、その下限値に特に制限はないが、他の物性とのバランスを考慮して、例えば、0.0001以上、0.0002以上又は0.0005以上であってよい。
例えば、金属箔除去評価基板の25℃、10GHzにおける誘電正接(Df)は、0.0001~0.0020、0.0002~0.0015、又は0.0005~0.0013であってよい。
金属箔除去評価基板の25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の測定は、上記した樹脂組成物の硬化物の25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の測定にしたがって行えばよい。
【0093】
[プリント配線板]
一実施形態によれば、樹脂組成物の硬化物を含むプリント配線板を提供することができる。樹脂組成物の詳細については上記説明した通りである。
【0094】
プリント配線板において、樹脂組成物の硬化物は、樹脂組成物、プリプレグ、樹脂フィルム、金属張積層板、又はこれらの組み合わせを用いて製造することができる。例えば、プリプレグの硬化物に対して、公知の方法により、配線を形成することで、プリント配線板を提供することができる。他の例では、金属張積層板を用いて、公知の方法により、配線を形成することで、プリント配線板を提供することができる。これらの例を組み合わせたプリント配線板であってもよい。プリプレグ、樹脂フィルム、及び金属張積層板の詳細については上記説明した通りである。
【0095】
プリント配線板は、単層プリント配線板及び多層プリント配線板(例えば、レーダー波多層プリント配線板等)のいずれであってもよい。
【0096】
[半導体パッケージ]
一実施形態によれば、プリント配線板と、半導体素子とを含む、半導体パッケージを提供することができる。より詳細には、樹脂組成物の硬化物を含むプリント配線板と、半導体素子とを含む、半導体パッケージを提供することができる。樹脂組成物の詳細については上記説明した通りである。樹脂組成物の硬化物及びプリント配線板の詳細についても上記説明した通りである。半導体パッケージは、例えば、プリント配線板に、公知の方法によって、半導体素子、メモリ等を搭載することによって製造することができる。半導体パッケージの絶縁材料、封止材料等として樹脂組成物の硬化物を用いてもよい。
【実施例0097】
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0098】
[重量平均分子量(Mw)の測定方法]
重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した。検量線は、標準ポリスチレン:TSKstandard POLYSTYRENE(Type;A-2500、A-5000、F-20、F-80)(東ソー株式会社製、商品名)を用いて3次式で近似した。GPCの測定条件を、以下に示す。
【0099】
装置:高速GPC装置 HLC-8320GPC(東ソー株式会社、商品名)
検出器:紫外吸光検出器 UV-8320(東ソー株式会社、商品名)
カラム:ガードカラム;TSKgel guardcolumn Super(HZ)-M+、カラム;TSKgel SuperMultipore HZ-M(2本)、リファレンスカラム;TSKgel SuperH-RC(2本)(すべて東ソー株式会社、商品名)
カラムサイズ:4.6×20mm(ガードカラム)、4.6×150mm(カラム)、6.0×150mm(リファレンスカラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:10mg/1mL
注入量:20μL又は2μL
流量:0.35mL/分
測定温度:40℃
【0100】
[ビニルベンジル化合物の製造]
撹拌装置、温度計、還流管及び窒素吹き込み口を備えた500mLの容積の反応容器に、インデン35.6質量部、下記のクロロメチルスチレン101.2質量部、相間移動触媒として臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム(関東化学株式会社製)7.1質量部、重合禁止剤としてフェノチアジン0.1質量部、溶媒としてトルエン77.6質量部を仕込み、流量50mL/分で窒素を吹き込みながら、40℃で加熱撹拌した。
【0101】
クロロメチルスチレン「CMS-P」:AGCセイミケミカル株式会社、m体とp体の混合物、m体含有量が50質量%、p体含有量が50質量%。
【0102】
次いで、下記の水酸化ナトリウムの水溶液97.0質量部を20分間で滴下し、更に60℃で9時間撹拌した。なお、反応中は窒素の吹込みを継続させた。室温(25℃)に冷却し10%塩酸水溶液で中和した後、純水で2回洗浄し、トルエンを減圧留去後、得られた粘稠液体をメタノールで洗浄した後に真空乾燥することでビニルベンジル化合物を得た。
【0103】
塩基性化合物の水溶液:濃度48質量%の水酸化ナトリウムの水溶液、関東化学株式会社。
【0104】
得られたビニルベンジル化合物は、1H-NMR分析によって、下記式(3)で表されるインデンの1位の炭素原子に直接結合する2個の水素原子が実質的に全てビニルベンジル基に置換された構造を有することが確認された。また、GPC分析によって、得られたビニルベンジル化合物は、ビニルベンジル基が2個導入されたものと、3個導入されたものとの混合物であった。ビニルベンジル化合物の重量平均分子量(Mw)は、500であった。
【0105】
【0106】
[樹脂組成物の製造]
表1に記載の各成分をトルエン及びメチルエチルケトンと共に表1に記載の配合量に従って配合し、25℃で撹拌及び混合して、固形分濃度が約60質量%の樹脂組成物を調製し、比較例1及び実施例1~3の樹脂組成物とした。なお、表1中、各成分の配合量の単位は質量部であり、溶液の場合は、固形分換算の質量部を意味する。
【0107】
【0108】
表1に記載の各材料の詳細は下記の通りである。
ビニルベンジル化合物:上記で製造
多官能(メタ)アクリレート化合物1:1,9-ノナンジオールジメタクリレート(上記の式(2)においてR1及びR2が各々メチル基で、Rが、-(CH2)9-である化合物)
多官能(メタ)アクリレート化合物2:ポリイソブチレン骨格含有ジアクリレート(株式会社カネカ製「EP400V」(商品名))
熱可塑性樹脂1:スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体(スチレン含有量30質量%、重量平均分子量約100,000)
熱可塑性樹脂2:スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体(スチレン含有量30質量%、重量平均分子量約180,000)
充填材:シリカ(平均粒子径1.5μm)
【0109】
[硬化物(樹脂板)の製造]
各例で得た樹脂組成物を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人株式会社製、商品名:G2000)に塗工した後、140℃で5分間加熱乾燥することによって、B-ステージ状態の樹脂フィルムを作製した。この樹脂フィルムをPETフィルムから剥離した後、粉砕することによって樹脂粉末とした。
厚さ18μmのロープロファイル銅箔(三井金属鉱業株式会社製、商品名:SI-VSP-18)の上に、厚さ0.8mm×長さ70mm×幅50mmのサイズに型抜きしたテフロン(登録商標)シートを配置し、型抜きされた箇所に得られた樹脂粉末を投入した。次いで、前記テフロン(登録商標)シートの樹脂粉末を投入した側にも厚さ18μmのロープロファイル銅箔(三井金属鉱業株式会社製、商品名:SI-VSP-18)を配置した。なお、2枚の銅箔は、M面が投入した樹脂粉末に接する状態で配置した。続いて、温度230℃、圧力2.0MPa、時間60分間の条件で真空加熱加圧成形することによって硬化させ、両面銅箔付き樹脂板を得た。
【0110】
[誘電特性(比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df))の測定方法]
上記のようにして得られた両面銅箔付き樹脂板を銅エッチング液である過硫酸アンモニウム(三菱ガス化学株式会社製)10質量%溶液に浸漬することによって両面の銅箔を除去し、70mm×50mmの試験片を作製した。次いで、この試験片を105℃、1時間乾燥した直後の試験片と、105℃で1時間乾燥後さらに雰囲気温度25℃、湿度50%RHで24時間放置した試験片それぞれについて、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)を用いて、雰囲気温度25℃にて10GHz帯で比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)を測定した。測定器にはアジレントテクノロジー製ベクトル型ネットワークアナライザE8364B及びベガテクノロジー社製10GHz SPDRをそれぞれ使用した。
【0111】
結果を表2に示す。表2において、「乾燥直後Dk」及び「乾燥直後Df」は、105℃で1時間乾燥した直後の比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)を示す。また、「24hr後Dk」及び「24hr後Df」は、105℃で1時間乾燥後さらに雰囲気温度25℃、湿度50%RHで24時間放置した後の比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)を示す。また、「ΔDf(24hr-乾燥直後)」は、雰囲気温度25℃湿度50%RHで24時間放置する前後の誘電正接(Df)の差を示す。
【0112】
<寸法変化率の測定>
上記のようにして得られた両面銅箔付き樹脂板を銅エッチング液である過硫酸アンモニウム(三菱ガス化学株式会社製)10質量%溶液に浸漬することによって両面の銅箔を除去し、5mm角の試験片を作製した。次いで、熱機械測定装置(TMA)(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、商品名:Q400)を用いて、IPC(The Institute for interconnecting and Packaging Electronic Circuits)規格に準拠して、上記試験片の寸法変化率を測定した。
より詳細には、温度範囲30~260℃の範囲で荷重5g、昇温速度10℃/分の条件で2回測定し、寸法変化率は2回目の測定における温度範囲30~260℃の範囲での寸法変化率とした。なお、寸法変化率は樹脂板の厚さ方向の寸法変化率である。結果を表2に示す。
【0113】
<銅箔引き剥がし強度の測定方法>
金属箔との接着性の指標として、下記のように銅箔引きはがし強度を測定した。
上記のようにして得られた両面銅箔付き樹脂板において、エッチングによって銅箔を3mm幅の直線ライン状部分を残して取り除くように加工したものを試験片とした。形成した直線ライン状の銅箔を小型卓上試験機(株式会社島津製作所製、商品名「EZ-TEST」)に取り付け、室温(25℃)にて、90°方向に引き剥がすことによって銅箔引き剥がし強度を測定した。なお、銅箔を引き剥がす際の引っ張り速度は50mm/minとした。結果を表2に示す。
【0114】
【0115】
表2に示されるように、実施例1~3は、ΔDf(24hr-乾燥直後)の値が0であり、これに対して、比較例1は、0.001であり、実施例1~3において、比較例に比べ、吸湿による誘電特性の悪化が抑制されていることが示された。また、実施例1~3は、比較例1に比べ、ピール強度も高く、金属箔との接着性に優れることが示された。