(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179888
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】化合物、樹脂組成物、プリプレグ、樹脂フィルム、金属張積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
C08F 12/00 20060101AFI20241219BHJP
C08L 25/02 20060101ALI20241219BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20241219BHJP
C07C 15/58 20060101ALI20241219BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20241219BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20241219BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20241219BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20241219BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C08F12/00
C08L25/02
C08L101/00
C07C15/58
C08J5/24 CER
B32B15/08 J
H05K1/03 610H
H01L23/30 R
H01L23/14 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099182
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】明比 龍史
(72)【発明者】
【氏名】春日 圭一
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
4H006
4J002
4J100
4M109
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AB09
4F072AD03
4F072AF14
4F072AF15
4F072AF23
4F072AF29
4F072AG03
4F072AG19
4F072AK02
4F072AK14
4F072AL12
4F072AL13
4F100AB01B
4F100AB33B
4F100AK02A
4F100AL05A
4F100BA02
4F100DH01A
4F100GB43
4F100JA02
4F100JA07A
4F100JG05
4F100JK06
4F100YY00A
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB46
4H006AB49
4J002AA02X
4J002BC13W
4J002CC03X
4J002CC28X
4J002CD00X
4J002CF21X
4J002CH03X
4J002CM02X
4J002CP03X
4J002FD010
4J002FD150
4J002GQ00
4J002GQ05
4J100AB07P
4J100AB15P
4J100BC43P
4J100BC48P
4J100CA23
4J100JA43
4J100JA46
4M109AA01
4M109EA02
4M109EA10
4M109EA11
4M109EC01
4M109EC07
(57)【要約】
【課題】吸湿による誘電特性の悪化が抑制された硬化物の作製に用いることができる化合物、並びにこれを用いた樹脂組成物、プリプレグ、樹脂フィルム、金属張積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージを提供する。
【解決手段】インデン環と、ビニルベンジル基と、炭素数6以上であり、重合性炭素-炭素二重結合を有さない芳香環含有基とを含み、前記ビニルベンジル基及び前記芳香環含有基は、各々、前記インデン環に直接結合している、化合物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インデン環と、
ビニルベンジル基と、
炭素数6以上であり、重合性炭素-炭素二重結合を有さない芳香環含有基とを含み、
前記ビニルベンジル基及び前記芳香環含有基は、各々、前記インデン環に直接結合している、化合物。
【請求項2】
下記式(1)で表される化合物。
【化1】
(式(1)中、R
1~R
4は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。R
1、R
2及びR
3のうちの少なくとも1つは、ビニルベンジル基であり、R
1、R
2及びR
3のうちの別の少なくとも1つは、炭素数6以上であり、重合性炭素-炭素二重結合を有さない芳香環含有基である。4個のR
4の全てが互いに異なってもよく、4個のR
4のうち2個以上が互いに同一でもよい。)
【請求項3】
前記芳香環含有基が、非置換若しくは重合性炭素-炭素二重結合を有さない置換基を有するアリール基、又は非置換若しくは重合性炭素-炭素二重結合を有さない置換基を有するアリールアルキル基である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記芳香環含有基が、非置換又は重合性炭素-炭素二重結合を有さない置換基を有するベンジル基である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の化合物を含む、樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む、プリプレグ。
【請求項7】
請求項5に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む、樹脂フィルム。
【請求項8】
請求項5に記載の樹脂組成物の硬化物と、金属箔とを含む、金属張積層板。
【請求項9】
請求項5に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、プリント配線板。
【請求項10】
請求項9に記載のプリント配線板と、半導体素子とを含む、半導体パッケージ。
【請求項11】
半導体素子と、前記半導体素子を封止する請求項5に記載の樹脂組成物の硬化物とを含む、半導体パッケージ。
【請求項12】
請求項5に記載の樹脂組成物により形成される表面保護膜および層間絶縁膜の少なくとも一方を含む、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化合物、樹脂組成物、プリプレグ、樹脂フィルム、金属張積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
銅張積層板に代表される金属張積層板、金属張積層板に用いることが可能なプリプレグ、金属張積層板を用いる半導体パッケージ等は、スマートフォン等の移動体通信機器、その基地局装置、サーバー、ルーター、大型サーバー等のネットワークインフラ機器、大型コンピュータ、パーソナルコンピュータ、産業用コンピュータ等の多様な電子機器に用いられている。また、家電、自動車等に搭載される電子機器にも用いられている。なかでも電子通信機器は、5Gの普及により膨大なデータを高速で処理する需要が高まっている。
【0003】
電子機器において、膨大なデータを高速で処理する場合、高周波数領域での伝送損失が少ない基板材料が求められる。基板材料には低誘電率及び低誘電正接の樹脂が用いられ、低伝送損失の基板が提供されるが、近年の通信技術の発展により、さらに低誘電率及び低誘電正接の樹脂の開発が求められている。
【0004】
特許文献1には、低誘電率、低誘電正接、高耐熱性、および低吸水性に優れた硬化物となり得る硬化性ビニルベンジル化合物として、ビニルベンジル基が導入されたインデン環構造を有する化合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、吸湿による誘電特性の悪化が抑制された硬化物の作製に用いることができる化合物、並びにこれを用いた樹脂組成物、プリプレグ、樹脂フィルム、金属張積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の例を以下に列挙する。本発明は以下の実施形態に限定されない。
<1>インデン環と、
ビニルベンジル基と、
炭素数6以上であり、重合性炭素-炭素二重結合を有さない芳香環含有基とを含み、
前記ビニルベンジル基及び前記芳香環含有基は、各々、前記インデン環に直接結合している、化合物。
<2>下記式(1)で表される化合物。
【化1】
(式(1)中、R
1~R
4は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。R
1、R
2及びR
3のうちの少なくとも1つは、ビニルベンジル基であり、R
1、R
2及びR
3のうちの別の少なくとも1つは、炭素数6以上であり、重合性炭素-炭素二重結合を有さない芳香環含有基である。4個のR
4の全てが互いに異なってもよく、4個のR
4のうち2個以上が互いに同一でもよい。)
<3>前記芳香環含有基が、非置換若しくは重合性炭素-炭素二重結合を有さない置換基を有するアリール基、又は非置換若しくは重合性炭素-炭素二重結合を有さない置換基を有するアリールアルキル基である、<1>又は<2>に記載の化合物。
<4>前記芳香環含有基が、非置換若しくは重合性炭素-炭素二重結合を有さない置換基を有するベンジル基である、<3>に記載の化合物。
<5><1>~<4>のいずれか1項に記載の化合物を含む、樹脂組成物。
<6><5>に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む、プリプレグ。
<7><5>に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む、樹脂フィルム。
<8><5>に記載の樹脂組成物の硬化物と、金属箔とを含む、金属張積層板。
<9><5>に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、プリント配線板。
<10><9>に記載のプリント配線板と、半導体素子とを含む、半導体パッケージ。
<11>半導体素子と、前記半導体素子を封止する<5>に記載の樹脂組成物の硬化物とを含む、半導体パッケージ。
<12><5>に記載の樹脂組成物により形成される表面保護膜および層間絶縁膜の少なくとも一方を含む、プリント配線板。
【発明の効果】
【0008】
本開示により、吸湿による誘電特性の悪化が抑制された硬化物の作製に用いることができる化合物、並びにこれを用いた樹脂組成物、プリプレグ、樹脂フィルム、金属張積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、化合物1のNMRスペクトルである。
【
図2】
図2は、化合物2のNMRスペクトルである。
【
図3】
図3は、化合物3のNMRスペクトルである。
【
図4】
図4は、化合物4のNMRスペクトルである。
【
図5】
図5は、化合物5のNMRスペクトルである。
【
図6】
図6は、化合物6のNMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0011】
本開示において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲の上限値又は下限値は、別の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、各成分には、特に断らない限り、該当する物質が、1種又は2種以上含まれていてもよい。
本開示において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、樹脂組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、樹脂組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0012】
本開示において、特に説明のない限り、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は次の手順にて測定される数値である。
重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算する。検量線は、標準ポリスチレン:TSKstandard POLYSTYRENE(Type;A-2500、A-5000、F-20、F-80)(東ソー株式会社製、商品名)を用いて3次式で近似する。GPCの条件を以下に示す。
【0013】
装置:高速GPC装置「HLC-8320GPC」(東ソー株式会社、商品名)
検出器:紫外吸光検出器「UV-8320」(東ソー株式会社、商品名)
カラム:ガードカラム;TSKgel guardcolumn Super(HZ)-M+、カラム;TSKgel SuperMultipore HZ-M(2本)、リファレンスカラム;TSKgel SuperH-RC(2本)(すべて東ソー株式会社、商品名)
カラムサイズ:4.6×20mm(ガードカラム)、4.6×150mm(カラム)、6.0×150mm(リファレンスカラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:10mg/1mL
注入量:20μL又は2μL
流量:0.35mL/分
測定温度:40℃
【0014】
[化合物]
本開示の一実施形態の化合物は、インデン環と、ビニルベンジル基と、炭素数6以上であり、重合性炭素-炭素二重結合を有さない芳香環含有基(以下、「芳香環含有基X」という場合もある。)とを含み、ビニルベンジル基及び芳香環含有基Xは、各々、インデン環に直接結合している、化合物である。以下、この化合物を、「化合物A」という場合もある。
【0015】
ビニルベンジル基は、極性が比較的低いことから、優れた誘電特性に寄与し得る。一方、本発明者らの検討により、インデン環とビニルベンジル基とを有する化合物を用いて得られる硬化物において、吸湿により、誘電特性が悪化する場合があることが判明した。そして、本発明者らは、インデン環とビニルベンジル基とともに、炭素数6以上であり、重合性炭素-炭素二重結合を有さない芳香環含有基を化合物に導入することで、得られる硬化物において吸湿による誘電特性の悪化を抑制し得ることを見出した。特定の理論に拘束されるものではないが、炭素数6以上の芳香環含有基である芳香環含有基Xの嵩高い構造により、水分子が近づきにくくなっているためと考えられる。
また、電子機器に用いられる材料としては、熱膨張率が大きくないことも一般に求められるが、化合物Aは、良好な熱膨張率を示し得る。特定の理論に拘束されるものではないが、例えば、π-π相互作用等の芳香環の間に働く相互作用等による分子運動の制御が、低熱膨張化に寄与し得ると推測される。
【0016】
化合物Aは、インデン環と、インデン環にそれぞれ結合するビニルベンジル基を1個以上及び芳香環含有基Xを1個以上有することができる。
化合物Aは、1分子内に1個以上のビニルベンジル基を有することで、加熱等を用いてビニルベンジル基の反応を促進することで、硬化物を得ることができる。
化合物Aは、ビニルベンジル基を2個以上有してもよい。化合物Aは、芳香環含有基Xを2個以上有してもよい。化合物Aは、ビニルベンジル基を1~2個有し、芳香環含有基Xを1~2個有してよい。化合物Aは、ビニルベンジル基と芳香環含有基Xとを、それらの合計個数で2個又は3個有してよい。
化合物Aは、例えば、炭化水素化合物であってよい。
【0017】
化合物Aにおいて、ビニルベンジル基は、置換基をさらに有してもよい。例えば、ビニルベンジル基は、下記式(2)で表される。
【0018】
【0019】
式(2)において、4個のR5は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。R5で表される1価の置換基は、例えば、ハロゲン原子、又は1価の有機基であってよい。R5で表される1価の有機基は、例えば、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数1~5のチオアルコキシ基、又は炭素数6~20のアリール基であってよい。ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であってよい。4個のR5は全て互いに異なってもよく、その2個以上が互いに同一でもよい。例えば、4個のR5はすべて水素原子であってよい。式(2)において、*は、インデン環との結合部位を表す。
【0020】
R5で表される炭素数1~5のアルキル基は、直鎖又は分岐アルキル基であってよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
R5で表される炭素数1~5のアルコキシ基は、例えば、R-O-で表される基であって、Rは上記説明した炭素数1~5のアルキル基であってよい。
R5で表される炭素数1~5のチオアルコキシ基は、例えば、R-S-で表される基であって、Rは上記説明した炭素数1~5のアルキル基であってよい。
R5で表される炭素数6~20のアリール基は、芳香族炭化水素から水素原子1個を取り除いた原子団であってよく、例えば、フェニル基、ビフェニル-イル基、ターフェニル-イル基、ナフタレン-イル基、アントラセン-イル基、テトラセン-イル基、フルオレン-イル基、フェナントレン-イル基等、及びこれらの誘導体等が挙げられる(ただし、ビニルベンジル基及びその誘導体は除く)。
【0021】
R5で表される1価の有機基は、非芳香族有機基であってよく、炭素数が1~5、1~4、1~3、又は1~2であってよい。R5は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、又は炭素数1~5のチオアルコキシ基であってよく、あるいは水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1~5のアルキル基であってよい。好ましくは、R5は、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1~5のアルキル基であってよく、水素原子、又は炭素数1~5、1~4、1~3、又は1~2のアルキル基であってよく、あるいは水素原子、メチル基、又はエチル基であってよい。
【0022】
化合物Aにおいて、ビニルベンジル基は、o-ビニルベンジル基、m-ビニルベンジル基及びp-ビニルベンジル基のいずれであってもよい。化合物Aの1分子内において、2個以上のビニルベンジル基が含まれる場合、2個以上のビニルベンジル基の構造異性は、互いに同じでも異なってもよい。誘電特性の観点から、ビニルベンジル化合物の1分子内において、少なくとも1個のp-ビニルベンジル基が含まれることが好ましい。
【0023】
化合物Aの1分子において、全ビニルベンジル基の合計質量に対し、p-ビニルベンジル基は、10~100質量%、20~80質量%、30~70質量%、又は40~60質量%であってよい。
【0024】
ビニルベンジル基は、例えば、インデン環の1位、2位又は3位の炭素原子に直接結合することができる1価の基であってよい。例えば、1個のビニルベンジル基が、インデン環の1位、2位又は3位の炭素原子のうちのいずれか1個にのみ結合してよい。例えば、2個のビニルベンジル基が、インデン環の1位の炭素原子に直接結合してよい。例えば、インデン環の1位、2位又は3位の炭素原子のいずれか2個に、ビニルベンジル基がそれぞれ1個ずつ直接結合してよい。いずれの場合も、インデン環の1位、2位及び3位の炭素原子のうち、置換可能な状態な位置の少なくとも1つに、芳香環含有基Xがさらに結合することができる。
インデン環において1位~7位は以下に示す通りである。
【0025】
【0026】
炭素数6以上であり、重合性炭素-炭素二重結合を有さない芳香環含有基(芳香環含有基X)は、1価の基であってよい。芳香環含有基Xにおいて芳香環は、炭素環及び複素環のいずれであってもよいが、誘電特性の観点から炭素環であってよい。芳香環含有基Xは、誘電特性の観点から、炭素環を含む1価の炭化水素基であることが好ましい。
芳香環含有基Xは、単環、縮合環、又は、単環及び縮合環から選択される2個以上が単結合を介して結合した多環のいずれを含むものでもよいが、硬化性の観点から、環の数が3個以下であることが好ましく、2個以下、又は1個であってよい。芳香環含有基Xの環の数が3個以下であると、ビニルベンジル基の反応性がより効果的に発揮されやすい傾向がある。例えば、芳香環含有基Xは、炭素環の数が、3個以下であることが好ましく、2個以下、又は1個であってよい。例えば、芳香環含有基Xは、ベンゼン環、ビフェニル構造、ターフェニル構造、ナフタレン環、フルオレン環、フェナントレン環等を含む基であってよい。
【0027】
硬化性の観点から、芳香環含有基Xの炭素数は、20以下、15以下、12以下、又は10以下であってよい。硬化性の観点から、芳香環含有基Xの炭素数は6以上、7以上、または8以上であってよい。芳香環含有基Xの炭素数は、例えば、6~20、7~15、8~12、又は8~10であってよい。
【0028】
芳香環含有基Xは、例えば、非置換若しくは重合性炭素-炭素二重結合を有さない置換基を有するアリール基、又は非置換若しくは重合性炭素-炭素二重結合を有さない置換基を有するアリールアルキル基等であってよい。ベンジル基にビニル基が結合したビニルベンジル基と比較的類似していること、及び、それによる化合物Aのより容易な合成の観点から、非置換又は重合性炭素-炭素二重結合を有さない置換基を有するアリールアルキル基が好ましい。
【0029】
アリール基は、芳香族炭化水素から水素原子1個を除いた原子団である。芳香環含有基Xにおけるアリール基としては、フェニル基、ビフェニル-イル基、ターフェニル-イル基、ナフタレン-イル基、アントラセン-イル基、テトラセン-イル基、フルオレン-イル基、フェナントレン-イル基等が挙げられる。
【0030】
アリールアルキル基は、アルキル基が有する水素原子の少なくとも1つがアリール基により置換された基である。芳香環含有基Xにおけるアリールアルキル基において、アルキル基としては、例えば、炭素数1~5のアルキル基が挙げられ、より具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。芳香環含有基Xにおけるアリールアルキル基において、アリール基としては、上記したアリール基が例示される。無置換の状態の1価のアリールアルキル基の炭素数は、例えば、7~20、7~15、8~12、又は8~10であってよい。アリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。ビニルベンジル基と比較的類似していること、及び、それによる化合物Aのより容易な合成の観点から、ベンジル基が好ましい。
【0031】
芳香環含有基Xにおいて、アリール基又はアリールアルキル基が置換基を有する場合の置換基は、炭素-炭素二重結合を有さないことが好ましい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素-炭素二重結合を有さない1価の有機基等が挙げられる。ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であってよい。炭素-炭素二重結合を有さない1価の有機基は、例えば、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数1~5のチオアルコキシ基、又は炭素数6~20のアリール基であってよい。炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等があげられる。
【0032】
芳香環含有基Xは、ヘテロ原子を含む基又はヘテロ原子を含まない基であってよい。芳香環含有基Xは、例えば、ヘテロ原子を含まない1価の基であってよい。
芳香環含有基Xとしては、例えば、メチルベンジル基、エチルベンジル基、ブチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基等が挙げられる。
【0033】
化合物Aにおいて、芳香環含有基Xは、例えば、下記式(3)で表される1価の有機基であってよい。
【0034】
【0035】
式(3)中、5個のR6は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基である。置換基は、例えば、ハロゲン原子、又は1価の有機基であってよい。R6で表されるハロゲン原子及び1価の有機基は、それぞれ上記式(2)のR5で説明したものであってよい。5個のR6は全て互いに異なってもよく、その2個以上が互いに同一でもよい。例えば、5個のR6はすべて水素原子であってよい。他の例では、5個のR6のうち4個が水素原子であり、1個が炭素数1~5のアルキル基であってよく、5個のR6のうち4個が水素原子であり、1個がメチル基又はエチル基であってよく、あるいは5個のR6のうち4個が水素原子であり、1個がメチル基であってよい。例えば、5個のR6のうち4個が水素原子であり、1個がアルキル基である場合、アルキル基はo位、m位、及びp位のいずれに結合してもよいが、p位であることが好ましい。
【0036】
芳香環含有基Xは、例えば、o-メチルベンジル基、m-メチルベンジル基、又はp-メチルベンジル基であってよい。芳香環含有基Xは、例えば、p-メチルベンジル基であってよい。
【0037】
化合物Aに、芳香環含有基Xが2個以上含まれる場合、2個以上の芳香環含有基Xは、互いに同じでも異なってもよい。
【0038】
芳香環含有基Xは、例えば、インデン環上の1位、2位又は3位の炭素原子に直接結合することができる1価の基であってよい。例えば、1個の芳香環含有基Xが、インデン環の1位、2位又は3位の炭素原子のうちのいずれか1個にのみ結合してよい。例えば、2個の芳香環含有基Xが、インデン環の1位の炭素原子に直接結合してよい。例えば、インデン環の1位、2位又は3位の炭素原子のいずれか2個に、芳香環含有基Xがそれぞれ1個ずつ直接結合してよい。いずれの場合も、インデン環の1位、2位又は3位の炭素原子のうち、置換可能な位置のうちの少なくとも1つに、ビニルベンジル基がさらに結合してよい。
【0039】
化合物Aにおいて、インデン環の炭素原子に、ビニルベンジル基及び芳香環含有基X以外の1価の置換基をさらに有してよい。化合物Aは、例えば、インデン環の4位、5位、6位、7位の炭素原子の1つ以上に、ビニルベンジル基及び芳香環含有基X以外の1価の置換基を有してよい。
【0040】
ビニルベンジル基及び芳香環含有基X以外の1価の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、1価の有機基等が挙げられる。ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であってよい。1価の有機基としては、例えば、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数1~5のチオアルコキシ基、又は炭素数6~20のアリール基等が挙げられる。炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
【0041】
化合物Aは、例えば、インデン環の4位、5位、6位、7位の炭素原子に1価の置換基を有していない化合物であってよい。
化合物Aは、例えば、インデン環の炭素原子に、ビニルベンジル基、芳香環含有基X以外の1価の置換基を有していない化合物であってよい。
【0042】
化合物Aは、例えば、1個のビニルベンジル基が、インデン環の1位、2位又は3位の炭素原子に直接結合し、1個の芳香環含有基Xが、インデン環の1位、2位又は3位の炭素原子に直接結合し、インデン環を構成するそのほかの炭素原子は置換基を有していない構造であってよい。電子機器に用いられる金属張積層板、プリプレグ等に用いられる材料は、金属箔との接着強度を良好にし得るものが好ましいが、このような構造の場合、金属箔とのより優れた接着強度が得られやすい。
【0043】
化合物Aを用いて、ビニルベンジル基及び芳香環含有基Xがインデン環に導入された化合物が重合した低重合度のオリゴマ又はプレポリマを提供することができる。オリゴマ及びプレポリマはいずれも、ある程度ビニルベンジル基が未反応で含まれるものであり、加熱等によって硬化反応が開始する状態であることが好ましい。
【0044】
化合物Aとしては、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0045】
【0046】
式(1)中、R1~R4は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは、ビニルベンジル基であり、R1、R2及びR3のうちの別の少なくとも1つは、芳香環含有基Xである。4個のR4の全てが互いに異なってもよく、4個のR4のうちの2個以上が互いに同一でもよい。
ビニルベンジル基及び芳香環含有基Xは、それぞれ上記した通りである。
【0047】
R1、R2及びR3で表される1価の置換基は、ハロゲン原子、1価の有機基等であってよい。ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であってよい。1価の有機基は、例えば、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数1~5のチオアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、ビニルベンジル基、又は芳香環含有基Xであってよい。炭素数1~5のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基であってよい。
【0048】
R4で表される1価の置換基は、例えば、ハロゲン原子、又は1価の有機基等であってよい。ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であってよい。1価の有機基は、例えば、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数1~5のチオアルコキシ基、又は炭素数6~20のアリール基であってよい。炭素数1~5のアルキル基の例としては、R1、R2、R3について上記したものが挙げられる。
【0049】
式(1)において、R1、R2及びR3のうちの1つ又は2つが、ビニルベンジル基であってよい。また、式(1)において、R1、R2及びR3のうちの残りのうちの1つ又は2つが、芳香環含有基Xであってよい。式(1)において、R1、R2及びR3のうちの1つ又は2つがビニルベンジル基であり、R1、R2及びR3のうちの残りのうちの1つまたは2つが芳香環含有基Xであり、ビニルベンジル基及び芳香環含有基Xの合計数が2又は3つであってよい。式(1)において、4個のR4が全て水素原子であってよい。
【0050】
金属箔との接着強度の観点から、例えば、R1、R2及びR3のうちのいずれか1つが、ビニルベンジル基であり、R1、R2及びR3のうちの別のいずれか1つが、芳香環含有基Xであり、R1、R2及びR3の別のいずれか1つが水素原子であってよい。
【0051】
化合物Aの合成方法について説明する。なお、化合物Aは、下記合成方法によらず、その分子構造よって特定される化合物である。
【0052】
化合物Aを合成する方法としては、例えば、インデン環を有するベース化合物と、ハロゲン化メチル基を有するスチレンと、ハロゲン又はハロゲン化アルキル基が置換した芳香環を含有する化合物とを、塩基性化合物の存在下で反応させる方法が挙げられる。ハロゲン化メチル基を有するスチレンとしては、例えば、o-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレン、p-クロロメチルスチレン等が挙げられ、これらは1種又は2種以上の混合物であってもよい。ハロゲン又はハロゲン化アルキル基が置換した芳香環を含有する化合物としては、例えば、α-クロロ-p-キシレン等のクロロアルキル基を有する芳香環を含有する化合物等が挙げられ、これらは、1種又は2種以上の混合物であってもよい。塩基性化合物としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド等が挙げられる。
【0053】
上記反応には、相間移動触媒を用いてもよい。相間移動触媒としては、例えば、テトラ-n-ブチルアンモニウムクロリド、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド(臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム)、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムブロミド、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロリド、トリカプリルメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、テトラ-n-ブチルアンモニウム硫酸水素塩等の第4級アンモニウム塩;テトラ-n-ブチルホスホニウムクロリド、テトラ-n-ブチルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロミド等の第4級ホスホニウム塩等が挙げられる。反応は、溶液重合で行うことができる。反応は、例えば、加熱及び撹拌下で行ってよい。反応系に重合禁止剤を投与してもよい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、tert-ブチルハイドロキノン、2,6-ジ-tert-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン、ハイドノキノンモノメチルエーテル、1,4-ベンゾキノン、2-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノン、2-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、クレゾール、カテコール、4-tert-ブチルカテコール、ピロガロール、4-メトキシフェノール、チオジフェニルアミン、フェノチアジン、3,7-ジオクチルフェノチアジン、3,7-ジクミルフェノチアジン、2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン-1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン-1-オキシル、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン-1-オキシル、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ-4-イル)セバケート等が挙げられる。得られた生成物は、必要に応じて、濃縮、再沈殿、洗浄等の公知の方法によって精製してもよい。
【0054】
得られる化合物は、単一の化合物であってもよく、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
例えば、インデン環の1位、2位、及び3位の少なくとも1つの炭素原子にビニルベンジル基が直接結合し、インデン環の1位、2位、及び3位の少なくとも1つの炭素原子に芳香環含有基が直接結合する化合物が合成されるが、結合部位の異なる2種以上の異性体の化合物が混合物に含まれてもよい。また、合成条件等に応じて、インデン環へのビニルベンジル基及び芳香環含有基Xの結合個数及び結合部位が異なる2種以上の化合物が混合物に含まれてもよい。さらに、例えば、化合物Aのほかに、インデン環にビニルベンジル基または芳香環含有基Xのうちの1種のみが結合した化合物が混合物に含まれてもよい。
【0055】
化合物Aの合成で、2種以上の化合物の混合物が得られる場合、この混合物の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、成形性及び取り扱い性の観点から、240~350が好ましく、250~340がより好ましく、260~330がさらに好ましい。また、この混合物の数平均分子量(Mn)は、200~330が好ましく、210~320がより好ましく、210~310がさらに好ましい。
【0056】
化合物Aの硬化物の25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)は、例えば4.0以下、3.5以下、又は3.4以下であってよい。一方、化合物Aの硬化物の25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)は、例えば2.3以上、又は2.4以上であってよい。化合物Aの硬化物の25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)は、例えば2.3~4.0、2.3~3.5、又は2.4~3.4であってよい。化合物Aの硬化物の25℃、10GHzにおける誘電正接(Df)は、例えば0.0020以下、0.0015以下、0.0013以下、0.0010以下、又は0.0008以下であってよい。一方、化合物Aの硬化物の25℃、10GHzにおける誘電正接(Df)は、例えば0.0001以上、又は0.0002以上であってよい。化合物Aの硬化物の25℃、10GHzにおける誘電正接(Df)は、例えば0.0001~0.0020、0.0001~0.0015、0.0001~0.0013、0.0002~0.0010、又は0.0002~0.0008であってよい。
化合物Aの硬化物の30~120℃の熱膨張率は、例えば、30~50ppm/℃であってよい。
化合物Aの合成で2種以上の化合物の混合物が得られる場合、この混合物の硬化物の25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)、25℃、10GHzにおける誘電正接(Df)、及び/又は30~120℃の熱膨張率は、例えば、上記の範囲内であってよい。
化合物Aの硬化物の25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)、25℃、10GHzにおける誘電正接(Df)、及び30~120℃の熱膨張率の測定対象となる試料は、化合物Aを硬化させて、JIS K 6800(1985)におけるC-ステージの状態とさせたものである。具体的には、例えば、実施例に記載の方法で、試料を用意することができる。
25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)及び25℃、10GHzにおける誘電正接(Df)の測定は、後述する樹脂組成物の硬化物の25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の測定にしたがって行えばよい。化合物Aの硬化物の30~120℃の熱膨張率は、後述する樹脂組成物の硬化物の30~120℃の熱膨張率の測定にしたがって行えばよい。
【0057】
化合物Aは、スマートフォン等の移動体通信機器、その基地局装置、サーバー、ルーター、大型サーバー等のネットワークインフラ機器、大型コンピュータ、パーソナルコンピュータ、産業用コンピュータ等の多様な電子機器、家電、自動車等に搭載される電子機器等の幅広い分野に使用され得る。
【0058】
[樹脂組成物]
一実施形態の樹脂組成物は、上記した化合物Aを含む。
<化合物A>
樹脂組成物は、上記した化合物Aを1種単独で、又は2種以上を組み合わせて含むことができる。
【0059】
誘電特性や耐熱性の観点から、化合物Aは、樹脂組成物の固形分量に対して、10質量%以上、20質量%以上、又は30質量%以上であってよい。一方、誘電特性や耐熱性の観点から、化合物Aは、樹脂組成物の固形分量に対して、100質量%以下、90質量%以下、又は80質量%以下であってよい。化合物Aは、例えば、樹脂組成物の固形分量に対して、10~100質量%、20~90質量%、又は30~80質量%であってよい。
【0060】
本開示において、樹脂組成物の「固形分」とは、水、後述する溶媒等の揮発する物質以外の樹脂組成物中の成分をいう。固形分は、樹脂組成物を乾燥させた際に、揮発せずに残る成分であり、また、25℃付近の室温で液状、水飴状又はワックス状のものも含み、必ずしも固体であることを意味するものではない。
【0061】
<その他の成分>
樹脂組成物は、必要に応じて、上記化合物A以外のその他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、熱硬化性樹脂、充填材、エラストマー、硬化剤、硬化促進剤、溶媒、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、滑剤等が挙げられる。
その他の成分は、各々について、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
樹脂組成物は、上記化合物Aに加え、さらに熱硬化性樹脂を含んでよい。
熱硬化性樹脂としては、反応性基を有する化合物を用いることができる。例えば、熱硬化性樹脂は、反応性基を有する化合物であって、自己硬化可能又は硬化剤との併用で硬化可能な化合物であってよい。
【0063】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、マレイミド化合物、フェノール樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0064】
これらの中でも、熱硬化性及び誘電特性の観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイミド化合物が好ましい。
【0065】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有することが好ましい。エポキシ樹脂としては、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂、グリシジルアミンタイプのエポキシ樹脂、グリシジルエステルタイプのエポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、これらのそれぞれタイプのエポキシ樹脂において、さらに、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂などに分類することができる。
【0066】
マレイミド化合物としては、N-置換マレイミド基を1個以上有する化合物、及びその誘導体が挙げられる。マレイミド化合物としては、例えば、N-置換マレイミド基を2個以上有する化合物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を用いてもよい。
【0067】
N-置換マレイミド基を1個以上有する化合物としては、例えば、芳香環に直接結合するN-置換マレイミド基を有する化合物である芳香族マレイミド化合物、芳香環に直接結合するN-置換マレイミド基を2個有する化合物である芳香族ビスマレイミド化合物、芳香環に直接結合するN-置換マレイミド基を3個以上有する化合物である芳香族ポリマレイミド化合物、脂肪族炭化水素に直接結合するN-置換マレイミド基を有する化合物である脂肪族マレイミド化合物等が挙げられる。
【0068】
N-置換マレイミド基を1個以上有する化合物の具体例としては、N,N’-エチレンビスマレイミド、N,N’-ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’-(1,3-フェニレン)ビスマレイミド、N,N’-[1,3-(2-メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[1,3-(4-メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-(1,4-フェニレン)ビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)ケトン、ビス(4-マレイミドシクロヘキシル)メタン、1,4-ビス(4-マレイミドフェニル)シクロヘキサン、1,4-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(マレイミドメチル)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、4,4-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス(4-マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、ポリフェニルメタンマレイミド、インダン骨格を有する芳香族ビスマレイミド化合物、ビフェニルアラルキル型マレイミド化合物等が挙げられる。
【0069】
N-置換マレイミド基を1個以上有する化合物の誘導体としては、例えば、上記したN-置換マレイミド基を1個以上有する化合物由来の構造単位とジアミン化合物由来の構造単位とを含有するアミノマレイミド化合物が挙げられる。
【0070】
樹脂組成物において、化合物Aは、熱硬化性樹脂全量に対して、10質量%以上、20質量%以上、又は30質量%以上であってよい。一方、化合物Aは、熱硬化性樹脂全量に対して、100質量%以下、90質量%以下、又は80質量%以下であってよい。化合物Aは、例えば、樹脂組成物の固形分量に対して、10~100質量%、20~90質量%、又は30~80質量%であってよい。
【0071】
樹脂組成物において、化合物Aを含む熱硬化性樹脂の量は、樹脂組成物の全量に対して、例えば、50質量%以上、60質量%以上、又は70質量%以上、又は100質量%であってよい。
【0072】
充填材としては、無機充填材が好ましく、例えば、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、マイカ、ベリリア、クレー、タルク等が挙げられる。誘電特性の観点からシリカが好ましい。
【0073】
充填材の形状及び大きさは特に限定されない。充填材の平均粒子径は、例えば、0.01~20μm、又は0.1~10μmであってもよい。ここで、充填材の平均粒子径は、レーザー回折散乱法による体積基準の粒子分布において、積算値50%に相当する点の粒子径である。
【0074】
エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー及びシリコーン系エラストマー等が挙げられる。
【0075】
硬化促進剤としては、例えばラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、熱ラジカル重合開始剤であってもよいし、光ラジカル重合開始剤であってもよいが、熱ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤は、特に限定されず、アゾ系重合開始剤、有機過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパンニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、1,1’-アゾビス(シクロヘキシルカルボン酸メチル)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、4,4’-アゾビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル4-シアノペンタノアート)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)等が挙げられる。有機過酸化物系重合開始剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、2-ブタノンパーオキサイド、tert-ブチルパーベンゾエイト、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン及びtert-ブチルヒドロパーオキシド等が挙げられる。
【0076】
樹脂組成物は、無溶媒の樹脂組成物であってもよく、溶媒を含んでもよい。溶媒は、樹脂組成物の粘度を調節して、塗工性をより改善することができる。溶媒としては有機溶剤が好ましい。
【0077】
有機溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の窒素原子含有溶剤;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤;γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤などが挙げられる。
【0078】
樹脂組成物が溶媒を含む場合、樹脂組成物の固形分量は、例えば、樹脂組成物の全質量に対し30~95質量%、40~90質量%、50~80質量%、又は50~70質量%であってよい。
【0079】
<樹脂組成物の製造方法>
樹脂組成物の製造方法は特に限定されない。一実施形態による樹脂組成物は、製造方法によって限定されず、その特徴は本開示にて説明される通りである。樹脂組成物の製造方法の一例としては、化合物A、及び、必要に応じて任意成分を加えて混合し、樹脂組成物を得ることができる。より詳しくは、例えば、化合物Aを溶媒に溶解又は分散させて、必要に応じてその他の成分を加えて混合し、樹脂組成物を得ることができる。各成分の混合順序、温度、時間等の条件は、特に限定されず、原料の種類、製造規模、製造装置等に応じて適宜調節すればよい。
【0080】
<樹脂組成物の硬化物の誘電特性>
樹脂組成物の硬化物の25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)は、4.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、3.4以下がさらに好ましい。樹脂組成物の硬化物の25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)は小さいほど好ましく、その下限値に特に制限はないが、他の物性とのバランスを考慮して、例えば、2.3以上、又は2.4以上であってよい。
例えば、樹脂組成物の硬化物の25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)は、2.3~4.0、2.3~3.5、又は2.4~3.4であってよい。
【0081】
樹脂組成物の硬化物の25℃、10GHzにおける誘電正接(Df)は、0.0020以下が好ましく、0.0015以下がより好ましく、0.0013以下がさらに好ましく、0.0010以下がさらに好ましく、0.0008以下がさらに好ましい。樹脂組成物の硬化物の25℃、10GHzにおける誘電正接(Df)は小さいほど好ましく、その下限値に特に制限はないが、他の物性とのバランスを考慮して、例えば、0.0001以上、又は0.0002以上であってよい。
【0082】
例えば、樹脂組成物の硬化物の25℃、10GHzにおける誘電正接(Df)は、0.0001~0.0020、0.0001~0.0015、0.0001~0.0013、0.0002~0.0010、又は0.0002~0.0008であってよい。
【0083】
本開示において、25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)は、SPDR法(スプリットポスト誘電体共振器)に準拠して、10GHz帯で25℃にて測定する。測定装置には、アジレントテクノロジー製ベクトル型ネットワークアナライザE8364B及びベガテクノロジー社製10GHz SPDRをそれぞれ用いることができる。
樹脂組成物の硬化物の比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の測定対象となる試料は、樹脂組成物を硬化させて、JIS K 6800(1985)におけるC-ステージの状態とさせたものである。具体的には、例えば、実施例に記載の方法で試料を用意することができる。
【0084】
<樹脂組成物の硬化物の熱膨張率>
樹脂組成物の硬化物の30~120℃の熱膨張率は、例えば、30~50ppm/℃であってよい。本開示において、30~120℃熱膨張率は、IPC(The Institute for interconnecting and Packaging Electronic Circuits)規格に準拠して測定する。測定装置としては、熱機械測定装置(TMA)(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、商品名:Q400)を用いることができる。測定対象となる試料は、樹脂組成物を硬化させて、JIS K 6800(1985)におけるC-ステージの状態とさせたものである。具体的には、例えば、実施例に記載の方法で試料を用意することができる。
【0085】
[プリプレグ]
一実施形態によれば、樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含むプリプレグを提供することができる。このプリプレグは、例えば、樹脂組成物と繊維基材とを用いて形成することができる。樹脂組成物としては、上記した樹脂組成物を用いることができる。樹脂組成物の詳細については上記説明した通りである。
【0086】
プリプレグは、上記した樹脂組成物又は上記した樹脂組成物の半硬化物を含むことができる。
本開示において、半硬化物の一つの指標として、JIS K 6800(1985)におけるB-ステージの状態を挙げることができる。
プリプレグは、例えば、樹脂組成物又は樹脂組成物の半硬化物と、シート状繊維基材等の繊維基材と、を含有するものであってよい。プリプレグにおいて、樹脂組成物は未硬化状態であってもよいが、樹脂組成物は部分的又は全体的に半硬化の状態であってもよい。
【0087】
プリプレグは、例えば、繊維基材に樹脂組成物を塗工し、乾燥させることで得ることができる。例えば、プリプレグは、繊維基材を樹脂組成物に含浸塗工させ、樹脂組成物が含浸された繊維基材を乾燥させることで得ることができる。乾燥は、樹脂組成物に含まれ得る溶媒等の揮発成分が除去される温度以上で行うことが好ましく、用途に応じて樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂が半硬化する温度以上で行ってもよい。また、乾燥は、樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂が完全に硬化されないように調節されるとよい。このような観点から、乾燥温度は、例えば、80~200℃であってよく、乾燥時間は、乾燥温度及び乾燥装置、その規模等に応じて、例えば、1~30分間であってよい。
【0088】
繊維基材は、織物、編物、及び不織布のいずれであってもよい。繊維基材は、チョップドストランドマット、ロービング等の形状で提供されてもよい。
繊維の材質としては、無機繊維及び有機繊維のいずれであってもよい。
無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。ガラス繊維としては、Eガラス、NEガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等が挙げられる。有機繊維としては、ポリイミド、ポリエステル、テトラフルオロエチレン等が挙げられる。繊維基材は、これらの繊維を1種単独で用いたものであってもよいし、これらの2種以上を組み合わせて用いたものであってもよい。
繊維基材の材質は、誘電特性及び耐熱性の観点から、無機繊維が好ましく、ガラス繊維がより好ましい。
【0089】
繊維基材は、プリプレグの用途に応じて適宜選択すればよいが、シート状繊維基材が好ましい。
シート状繊維基材としては、例えば、公知の電気絶縁材料用積層板において用いられている各種のシート状繊維基材であってよい。
シート状繊維基材の厚さは特に限定されないが、例えば、0.02~0.5mmが好ましい。ここで、厚さは、シート状繊維基材の全面において均等な距離で5点の厚さを測定し、5点の算術平均値とする。
【0090】
[樹脂フィルム]
一実施形態によれば、樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂フィルムを提供することができる。樹脂組成物の詳細については上記説明した通りである。
【0091】
樹脂フィルムは、上記した樹脂組成物又は上記した樹脂組成物の半硬化物を含んでよい。樹脂フィルムにおいて、樹脂組成物は未硬化状態であってもよいが、樹脂組成物は部分的又は全体的に半硬化の状態であってもよい。例えば、この樹脂フィルムを熱処理等で硬化させることで、硬化物を得ることができる。
樹脂フィルムは、例えば、被塗工材に樹脂組成物を塗工し、乾燥させることで得ることができる。乾燥は、例えば、上記プリプレグの製造方法と同様に行えばよい。被塗工材上で樹脂フィルムを乾燥した後に、樹脂フィルムと被塗工材の組み合わせとして製品を提供してもよい。例えば、この方法では、電子機器等において被塗工材に絶縁層等を形成するために樹脂フィルムを提供することができる。別の方法では、被塗工材上で樹脂フィルムを乾燥した後に、樹脂フィルムを被塗工材から剥離して樹脂フィルムを製品として提供してもよい。
【0092】
被塗工材としては、無機物基材及び有機物基材のいずれであってもよく、ガラス基材、金属箔、金属板等の金属基材、プラスチック板、プラスチックフィルム等のプラスチック基材、紙基材等が挙げられる、上記プリプレグで説明した繊維基材であってもよい。樹脂フィルムを被塗工材から剥離して提供するために、表面に離型層が形成された被塗工材を用いてもよい。
【0093】
[金属張積層板]
一実施形態によれば、樹脂組成物の硬化物と金属箔とを含む金属張積層板を提供することができる。この金属張積層板は、例えば、プリプレグの硬化物と、金属箔とを含む金属張積層板であってよい。
他の実施形態によれば、プリプレグと金属箔とを用いて形成される金属張積層板を提供することもできる。この金属張積層板は、例えば、プリプレグの硬化物と金属箔とを含む金属張積層板であってよい。
樹脂組成物及びプリプレグの詳細については上記説明した通りである。本開示において、硬化物の一つの指標として、JIS K 6800(1985)におけるC-ステージの状態を挙げることができる。
【0094】
金属張積層板は、樹脂硬化物を含む樹脂硬化物層と、樹脂硬化物層の少なくとも一方の面に配置される金属箔とを含むことが好ましい。樹脂硬化物層は、上記した樹脂組成物の硬化物を含むものであるが、上記したプリプレグの硬化物であってよい。例えば、金属張積層板において、プリプレグの硬化物の少なくとも一方の面に金属箔が配置され、より好ましくはプリプレグの硬化物の両面に金属箔が配置される。金属張積層板は、1枚のシート状プリプレグの少なくとも一方の面に金属箔が配置されて製造されるものであってもよく、2枚以上のシート状プリプレグを積層し、積層体の最外面の少なくとも一方の面に金属箔が配置されて製造されるものであってもよい。例えば、金属張積層板は、2枚以上のシート状プリプレグを積層し、この積層体の両面に金属箔が配置されて製造されるものであってよい。
【0095】
以下、金属張積層板を製造する方法の具体例として、2枚以上のシート状プリプレグの積層体に金属箔を配置する方法を説明する。
【0096】
まず、2枚以上のシート状プリプレグを積層し、積層体を得る。この積層体において、2枚以上のシート状プリプレグは互いに同一であっても、一部又は全てが異なってもよい。積層体において、2枚以上のシート状プリプレグのうち少なくとも1枚のシート状プリプレグが一実施形態による樹脂組成物を用いて得られたものであればよい。
【0097】
次に、この積層体の少なくとも一方の面に金属箔を配置する。
この金属箔が配置された積層体を加熱加圧する。これによってシート状プリプレグの硬化反応が進行して、プリプレグの硬化物を得ることができる。また、互いに隣接するシート状プリプレグを固着させることができる。加熱加圧条件は特に限定されないが、例えば、温度100~300℃、時間10~300分間、圧力1.5~5MPaとすることができる。また、加熱加圧の後に、プリプレグの硬化をより進行させるために、再加熱を行ってもよい。この場合の再加熱温度は100~300℃であってよい。
加圧方法としては、例えば、オートクレーブ成形機、多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機等を用いることができる。
【0098】
金属箔の金属としては、特に限定されず、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、金、銀、白金、モリブデン、ルテニウム、タングステン、鉄、チタン、クロム等、これらの金属元素を2種以上含む合金等が挙げられる。工業的に銅、ニッケル、アルミニウムの単体金属であるとよい。金属箔として銅を用いることで、銅張積層板を提供することができる。
【0099】
金属張積層板において金属箔を除去して得られた評価基板(以下、「金属箔除去評価基板」ともいう。)の誘電特性は、以下の通りであることが好ましい。
【0100】
金属箔除去評価基板の25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)は、4.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、3.4以下がさらに好ましい。金属箔除去評価基板の25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)は小さいほど好ましく、その下限値に特に制限はないが、他の物性とのバランスを考慮して、例えば、2.3以上、又は2.4以上であってよい。
例えば、金属箔除去評価基板の25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)は、2.3~4.0であってよく、2.3~3.5、又は2.4~3.4が好ましい。
【0101】
金属箔除去評価基板の25℃、10GHzにおける誘電正接(Df)は、0.0020以下が好ましく、0.0015以下がより好ましく、0.0013以下がさらに好ましい。金属箔除去評価基板の25℃、10GHzにおける誘電正接(Df)は小さいほど好ましく、その下限値に特に制限はないが、他の物性とのバランスを考慮して、例えば、0.0001以上、0.0002以上又は0.0005以上であってよい。
例えば、金属箔除去評価基板の25℃、10GHzにおける誘電正接(Df)は、0.0001~0.0020、0.0002~0.0015、又は0.0005~0.0013であってよい。
【0102】
金属箔除去評価基板の25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の測定は、上記した樹脂組成物の硬化物の25℃、10GHzにおける比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の測定にしたがって行えばよい。
【0103】
金属箔除去評価基板の30~120℃の熱膨張率(単に、金属張積層板の30~120℃の熱膨張率とも記す。)は、例えば、30~50ppm/℃であってよい。金属箔除去評価基板の30~120℃の熱膨張率の測定は、上記した樹脂組成物の硬化物の30~120℃熱膨張率の測定にしたがって行えばよい。
【0104】
[プリント配線板]
一実施形態によれば、樹脂組成物の硬化物を含むプリント配線板を提供することができる。また、一実施形態によれば、樹脂組成物により形成される表面保護膜および層間絶縁膜の少なくとも一方を含むプリント配線板を提供することができる。樹脂組成物の詳細については上記説明した通りである。
【0105】
プリント配線板において、樹脂組成物の硬化物は、樹脂組成物、プリプレグ、樹脂フィルム、金属張積層板、又はこれらの組み合わせを用いて製造することができる。例えば、プリプレグの硬化物に対して、公知の方法により、配線を形成することで、プリント配線板を提供することができる。他の例では、金属張積層板を用いて、公知の方法により、配線を形成することで、プリント配線板を提供することができる。これらの例を組み合わせたプリント配線板であってもよい。プリプレグ、樹脂フィルム、及び金属張積層板の詳細については上記説明した通りである。
【0106】
プリント配線板は、単層プリント配線板及び多層プリント配線板のいずれであってもよい。
【0107】
[半導体パッケージ]
一実施形態によれば、プリント配線板と、半導体素子とを含む、半導体パッケージを提供することができる。より詳細には、例えば、樹脂組成物の硬化物を含むプリント配線板と、半導体素子とを含む、半導体パッケージを提供することができる。樹脂組成物の詳細については上記説明した通りである。樹脂組成物の硬化物及びプリント配線板の詳細についても上記説明した通りである。半導体パッケージは、例えば、プリント配線板に、公知の方法によって、半導体素子、メモリ等を搭載することによって製造することができる。半導体パッケージの絶縁材料、封止材料等として樹脂組成物の硬化物を用いてもよい。例えば、半導体素子と、半導体素子を封止する樹脂組成物の硬化物とを含む、半導体パッケージを提供することができる。
【実施例0108】
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0109】
<重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の測定方法>
重量平均分子量及び数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した。検量線は、標準ポリスチレン:TSKstandard POLYSTYRENE(Type;A-2500、A-5000、F-20、F-80)(東ソー株式会社製、商品名)を用いて3次式で近似した。GPCの測定条件を、以下に示す。
【0110】
装置:高速GPC装置 HLC-8320GPC(東ソー株式会社、商品名)
検出器:紫外吸光検出器 UV-8320(東ソー株式会社、商品名)
カラム:ガードカラム;TSKgel guardcolumn Super(HZ)-M+、カラム;TSKgel SuperMultipore HZ-M(2本)、リファレンスカラム;TSKgel SuperH-RC(2本)(すべて東ソー株式会社、商品名)
カラムサイズ:4.6×20mm(ガードカラム)、4.6×150mm(カラム)、6.0×150mm(リファレンスカラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:10mg/1mL
注入量:20μL又は2μL
流量:0.35mL/分
測定温度:40℃
【0111】
<化合物の製造>
撹拌装置、温度計、還流管及び窒素吹き込み口を備えた500mLの容積の反応容器に、表1に記載の量のインデン、下記のクロロメチルスチレン(CMS)、α-クロロ-p-キシレン(CPX)、相間移動触媒として臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム(関東化学株式会社製)、重合禁止剤としてフェノチアジン、溶媒としてトルエンを仕込み、流量50mL/分で窒素を吹き込みながら、40℃で加熱撹拌した。
【0112】
クロロメチルスチレン「CMS-P」:AGCセイミケミカル株式会社、m体とp体の混合物、m体含有量が50質量%、p体含有量が50質量%。
【0113】
次いで、表1に記載の量の下記の水酸化ナトリウム水溶液を20分間で滴下し、更に60℃で9時間撹拌した。なお、反応中は窒素の吹込みを継続させた。室温(25℃)に冷却し10%塩酸水溶液で中和した後、純水で2回洗浄し、トルエンを減圧留去後、得られた粘稠液体をメタノールで洗浄した後に真空乾燥した。このようにして、化合物1~7が得られた。
【0114】
水酸化ナトリウム水溶液:濃度48質量%の水酸化ナトリウムの水溶液、関東化学株式会社。
【0115】
【0116】
株式会社JEOL RESONANCE製ECX400IIを用いて
1H-NMRスペクトル(0.2Hz、CDCl
3、基準物質:テトラメチルシラン(TMS))を測定した。
1H-NMR分析によって、原料のピークのシフト又は消失、具体的には、インデンの1位のHピークのシフト又は消失、インデンの2位、3位のHのピークのシフト又は消失、CMS及びCPXのメチレンピークのシフト、CMSのビニルのピークのシフト、及びCPXのメチルのピークのシフトから、インデン環の1~3位のいずれかにビニルベンジル基が結合し、インデン環の1~3位のいずれかにメチルベンジル基が結合する反応が起きていることがわかった。化合物1~6の
1H-NMRスペクトルを
図1~
図6に示す。
【0117】
また、GPC分析によって、化合物1~6は、ビニルベンジル基及びメチルベンジル基からなる群から選択される1個の置換基が導入されたもの(1置換体)と、2個の置換基が導入されたもの(2置換体)と、3個の置換基が導入されたもの(3置換体)との混合物であることが確認された。
【0118】
表2に、得られた化合物1~7について、収率(%)、GPCによる3置換体、2置換体及び1置換体の割合(強度比)、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を示す。
【0119】
【0120】
<実施例1~6及び比較例1>
上記で得られた化合物1~7を、実施例1~6及び比較例1に用いた。具体的には、表3に示されるように、化合物7を比較例1に用い、化合物1を実施例1に用い、化合物4を実施例2に用い、化合物5を実施例3に用い、化合物2を実施例4に用い、化合物6を実施例5に用い、化合物3を実施例6に用いた。
【0121】
<実施例7~9及び比較例2の樹脂組成物>
表4に記載の各成分を、トルエンと共に表4に記載の配合量に従って、25℃で撹拌及び混合して、固形分濃度が約60質量%の実施例7~9及び比較例2の樹脂組成物を調製した。表1中、その成分が溶液の場合は、固形分換算の質量%を意味する。
【0122】
表3及び4に記載の各材料の詳細は下記の通りである。
化合物1~7:いずれも上記で製造したもの
マレイミド化合物:下記式で表されるインダン骨格を有する芳香族マレイミド化合物
【0123】
【化6】
(上記式中、nは、0.95~10.0の数である。)
【0124】
<硬化物の作製方法>
(実施例1~6及び比較例1)
比較例1及び実施例1~6については、以下のようにして両面銅箔付き樹脂板を得た。
厚さ18μmのロープロファイル銅箔(三井金属鉱業株式会社製、商品名:SI-VSP-18)の上に、厚さ0.8mm×長さ70mm×幅50mmのサイズに型抜きしたテフロン(登録商標)シートを配置し、表3に記載の化合物(化合物1~7)の粉末を型抜きされた箇所に投入した。次いで、前記テフロン(登録商標)シートの化合物の粉末を投入した側にも厚さ18μmのロープロファイル銅箔(三井金属鉱業株式会社製、商品名:SI-VSP-18)を配置した。なお、2枚の銅箔は、M面(マット面)が投入した化合物の粉末に接する状態で配置した。続いて、温度230℃、圧力2.0MPa、時間60分間の条件で真空加熱加圧成形することによって硬化させ、両面銅箔付き樹脂板を得た。
(実施例7~9及び比較例2)
比較例2及び実施例7~9については、以下のようにして両面銅箔付き樹脂板を得た。上記で得られた各実施例及び比較例の樹脂組成物(実施例7~9及び比較例2の樹脂組成物)を、厚さ38μmのPETフィルム(帝人株式会社製、商品名:G2000)に塗工した後、140℃で5分間加熱乾燥することによって、B-ステージ状態の樹脂フィルムを作製した。この樹脂フィルムをPETフィルムから剥離した後、粉砕することによって樹脂粉末とした。前記樹脂粉末を用いること以外は、前述の(実施例1~6及び比較例1)と同様の手順で両面銅箔付き樹脂板を得た。
【0125】
<誘電特性(比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df))の測定方法>
上記のようにして得られた両面銅箔付き樹脂板を銅エッチング液である過硫酸アンモニウム(三菱ガス化学株式会社製)10質量%溶液に浸漬することによって両面の銅箔を除去し、70mm×50mmの試験片を作製した。次いで、この試験片を105℃で1時間乾燥した直後の試験片と、105℃で1時間乾燥後さらに雰囲気温度25℃、湿度50%RHで24時間放置した試験片それぞれについて、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)を用いて、雰囲気温度25℃にて10GHz帯で比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)を測定した。測定器にはアジレントテクノロジー製ベクトル型ネットワークアナライザE8364B及びベガテクノロジー社製10GHz SPDRをそれぞれ使用した。
【0126】
結果を表3及び4に示す。表3及び4において、「乾燥直後Dk」及び「乾燥直後Df」は、105℃で1時間乾燥した直後の比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)を示す。また、「24hr後Dk」及び「24hr後Df」は、105℃で1時間乾燥後さらに雰囲気温度25℃、湿度50%RHで24時間放置した後の比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)を示す。また、「ΔDf(24hr-乾燥直後)」は、雰囲気温度25℃湿度50%RHで24時間放置する前後の誘電正接(Df)の差を示す。
【0127】
<熱膨張率の測定方法>
上記のようにして得られた両面銅箔付き樹脂板を銅エッチング液である過硫酸アンモニウム(三菱ガス化学株式会社製)10質量%溶液に浸漬することによって両面の銅箔を除去し、5mm角の試験片を作製した。次いで、熱機械測定装置(TMA)(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、商品名:Q400)を用いて、IPC(The Institute for interconnecting and Packaging Electronic Circuits)規格に準拠して、上記試験片の3~120℃の熱膨張率を測定した。
より詳細には、温度範囲30~260℃の範囲で荷重5g、昇温速度10℃/分の条件で2回測定し、熱膨張率は2回目の測定における温度範囲30~120℃の平均熱膨張率とした。なお、熱膨張率は樹脂板の厚さ方向の熱膨張率である。結果を表3及び4に示す。
【0128】
<銅箔引き剥がし強度の測定方法>
比較例1、実施例1~3及び実施例5について、金属箔との接着性の指標として、銅箔引きはがし強度を測定した。
上記のようにして得られた両面銅箔付き樹脂板において、エッチングによって銅箔を3mm幅の直線ライン状部分を残して取り除くように加工したものを、試験片とした。形成した直線ライン状の銅箔を小型卓上試験機(株式会社島津製作所製、商品名「EZ-TEST」)に取り付け、室温(25℃)にて、90°方向に引き剥がすことによって引き剥がし強度を測定した。なお、銅箔を引き剥がす際の引っ張り速度は50mm/minとした。結果を表3に示す。
【0129】
【0130】
【0131】
表3に示されるように、化合物1~6が用いられた実施例1~6は、化合物7が用いられた比較例1に比べて、ΔDf(24hr-乾燥直後)の値が小さく、吸湿による誘電特性の悪化が抑制されていることが示された。
また、表4に示されるように、化合物1、4又は5を含む樹脂組成物が用いられた実施例7~9は、化合物7が用いられた比較例2に比べて、ΔDf(24hr-乾燥直後)の値が小さく、吸湿による誘電特性の悪化が抑制されていることが示された。