(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179941
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】化合物、有機半導体材料、膜、有機光電子素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 43/225 20060101AFI20241219BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20241219BHJP
H10K 71/12 20230101ALI20241219BHJP
H10K 71/16 20230101ALI20241219BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20241219BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20241219BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20241219BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
C07C43/225 C CSP
C09K11/06 690
H10K71/12
H10K71/16
H10K85/60
H10K50/15
H10K50/16
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099286
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 亮介
(72)【発明者】
【氏名】阿部 岳文
(72)【発明者】
【氏名】野村 好廷
(72)【発明者】
【氏名】桑名 保宏
(72)【発明者】
【氏名】飯野 裕明
(72)【発明者】
【氏名】岡村 寿
(72)【発明者】
【氏名】高屋敷 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】半那 純一
【テーマコード(参考)】
3K107
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC05
3K107DD73
3K107DD76
3K107DD78
3K107GG04
3K107GG06
3K107GG28
4H006AA01
4H006AA03
4H006AA05
4H006AB64
4H006AB91
4H006AB92
4H039CA41
4H039CA61
4H039CD10
4H039CD20
4H039CD30
4H039CD90
(57)【要約】
【課題】屈折率が低い有機半導体材料が得られる化合物、前記化合物を含む有機半導体材料及び膜、並びに前記化合物を含む膜を有する有機光電子素子及びその製造方法の提供。
【解決手段】下式1で表される、化合物。
(Z)b-X-(-Y-(Rf)k)a 式1
X:芳香族縮合環を有するa+b価の電荷輸送基。
Y:単結合又はk+1価の連結基。
Z:1価の有機基。
Rf:フルオロアルキル基等。
a:1~22。
b:0~21。
k:1~3。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式1で表される、化合物。
(Z)b-X-(-Y-(Rf)k)a 式1
式1中、
Xは、芳香族縮合環を有するa+b価の電荷輸送基であり、
Yは、それぞれ独立に、単結合又はk+1価の連結基であり、
Zは、それぞれ独立に、1価の有機基であり、
Rfは、それぞれ独立に、フルオロアルキル基であり、前記フルオロアルキル基の炭素数が2以上の場合、該フルオロアルキル基は、炭素原子間にエーテル性酸素原子を有してもよく、
aは、1~22であり、
bは、0~21であり、
kは、1~3である。
【請求項2】
前記Yの少なくとも1つが、炭素数1~20のアルキレン基又は炭素数1~20のオキシアルキレン基であり、前記アルキレン基の炭素数又は前記オキシアルキレン基の炭素数が2以上の場合、該アルキレン基又は該オキシアルキレン基は炭素原子間にエーテル性酸素原子を有してもよい、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記Rfの炭素数が、1~8である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記Rfの少なくとも1つが、ペルフルオロアルキル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記Zの少なくとも1つが、炭素数1~20のアルキル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
液晶性を示す、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物を含む、有機半導体材料。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物を含む、膜。
【請求項9】
有機光電子素子であって、
請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物を含む膜を有する、有機光電子素子。
【請求項10】
前記膜が、電荷輸送層である、請求項9に記載の有機光電子素子。
【請求項11】
有機EL素子である、請求項9に記載の有機光電子素子。
【請求項12】
有機光電子素子の製造方法であって、
基材上に、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物を含む第1の膜を形成することで第1の基材を得て、
前記第1の膜の少なくとも一部の表面上に、水溶性材料を含む第2の膜を形成することで第2の基材を得て、
前記第2の基材を前記請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物の相転移温度以上に加熱した後、前記第2の膜を除去する、製造方法。
【請求項13】
蒸着法によって前記第1の膜を形成する、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記有機光電子素子が、前記化合物を含む電荷輸送層を有する、請求項12に記載の製造方法。
【請求項15】
前記有機光電子素子が、有機EL素子である、請求項12に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、有機半導体材料、膜、有機光電子素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体材料は、有機EL素子、有機トランジスタ、有機太陽電池、有機メモリー素子等の有機光電子素子の膜の材料として利用できる。有機光電子素子の膜に適用し得る導電性を示す化合物の例はいくつかある(例えば、特許文献1、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Appl. Phys. Lett.,Vol.73,No.25,3733-3735(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機光電子素子においては、内部量子効率がほぼ100%に既に達している。そこで外部量子効率のさらなる改善のために、光取り出し効率の向上が望まれている。光取り出し効率を高くするために、例えば、電荷輸送層の屈折率を低くすることは重要である。
本発明者らによれば、特許文献1、非特許文献1に記載の各化合物を適用した有機半導体材料においては、屈折率の低下に改善の余地がある。
【0006】
本発明は、屈折率が低い有機半導体材料が得られる化合物、前記化合物を含む有機半導体材料及び膜、並びに前記化合物を含む膜を有する有機光電子素子及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の態様を有する。
[1]下式1で表される、化合物。
(Z)b-X-(-Y-(Rf)k)a 式1
式1中、
Xは、芳香族縮合環を有するa+b価の電荷輸送基であり、
Yは、それぞれ独立に、単結合又はk+1価の連結基であり、
Zは、それぞれ独立に、1価の有機基であり、
Rfは、それぞれ独立に、フルオロアルキル基であり、前記フルオロアルキル基の炭素数が2以上の場合、該フルオロアルキル基は、炭素原子間にエーテル性酸素原子を有してもよく、
aは、1~22であり、
bは、0~21であり、
kは、1~3である。
[2]前記Yの少なくとも1つが、炭素数1~20のアルキレン基又は炭素数1~20のオキシアルキレン基であり、前記アルキレン基の炭素数又は前記オキシアルキレン基の炭素数が2以上の場合、該アルキレン基又は該オキシアルキレン基は炭素原子間にエーテル性酸素原子を有してもよい、前記[1]に記載の化合物。
[3]前記Rfの炭素数が、1~8である、前記[1]又は[2]に記載の化合物。
[4]前記Rfの少なくとも1つが、ペルフルオロアルキル基である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の化合物。
[5]前記Zの少なくとも1つが、炭素数1~20のアルキル基である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の化合物。
[6]液晶性を示す、前記[1]~[5]のいずれかに記載の化合物。
[7]前記[1]~[6]のいずれかに記載の化合物を含む、有機半導体材料。
[8]前記[1]~[6]のいずれかに記載の化合物を含む、膜。
[9]有機光電子素子であって、前記[1]~[6]のいずれかに記載の化合物を含む膜を有する、有機光電子素子。
[10]前記膜が、電荷輸送層である、前記[9]に記載の有機光電子素子。
[11]有機EL素子である、前記[9]又は[10]に記載の有機光電子素子。
[12]有機光電子素子の製造方法であって、
基材上に、前記[1]~[6]のいずれかに記載の化合物を含む第1の膜を形成することで第1の基材を得て、
前記第1の膜の少なくとも一部の表面上に、水溶性材料を含む第2の膜を形成することで第2の基材を得て、
前記第2の基材を前記[1]~[6]のいずれかに記載の化合物の相転移温度以上に加熱した後、前記第2の膜を除去する、製造方法。
[13]蒸着法によって前記第1の膜を形成する、前記[12]に記載の製造方法。
[14]前記有機光電子素子が、前記化合物を含む電荷輸送層を有する、前記[12]又は[13]に記載の製造方法。
[15]前記有機光電子素子が、有機EL素子である、前記[12]~[14]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の化合物によれば、屈折率が低い有機半導体材料が得られる。
本発明の有機半導体材料及び膜によれば、電荷輸送層の屈折率を低くできる。
本発明の有機光電子素子及びその製造方法によれば、屈折率が低い膜を有する有機光電子素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、化合物A2のDSC分析結果を示す。
【
図2】
図2は、40℃での化合物A2の偏光顕微鏡像を示す。
【
図3】
図3は、130℃での化合物A2の偏光顕微鏡像を示す。
【
図4】
図4は、化合物B2のDSC分析結果を示す。
【
図5】
図5は、30℃での化合物B2の偏光顕微鏡像を示す。
【
図6】
図6は、160℃での化合物B2の偏光顕微鏡像を示す。
【
図7】
図7は、化合物C2のDSC分析結果を示す。
【
図8】
図8は、20℃での化合物C2の偏光顕微鏡像を示す。
【
図9】
図9は、180℃での化合物C2の偏光顕微鏡像を示す。
【
図11】
図11は、例1の蒸着膜を132℃で水平配向化処理した水平配向膜の偏光顕微鏡像を示す。
【
図13】
図13は、例2の蒸着膜を148℃で水平配向化処理した水平配向化膜の偏光顕微鏡像を示す。
【
図15】
図15は、例3の蒸着膜を135℃で水平配向化処理した水平配向化膜の偏光顕微鏡像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
用語の意味は、以下の通りである。
「エーテル性酸素原子」とは、炭素原子間においてエーテル結合(-O-)を形成する酸素原子を意味する。
「フルオロアルキル基」とは、アルキル基の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換された基を意味する。
「ペルフルオロアルキル基」とは、アルキル基の水素原子のすべてがフッ素原子に置換された基を意味する。
数値範囲を示す「~」は、~の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。本明細書に開示の数値範囲は、その下限値及び上限値を任意に組み合わせて新たな数値範囲とすることができる。
式A1で表される化合物を「化合物A1」と記すことがある。他の式で表される化合物も同様である。
【0011】
<化合物>
本発明の一態様は、下式1で表される化合物(以下、「本化合物」と記す。)に関する。
(Z)b-X-(-Y-(Rf)k)a 式1
【0012】
(X)
式1中、Xは、芳香族縮合環を有するa+b価の電荷輸送基である。Xは、一つの芳香族縮合環を有してもよく、複数の芳香族縮合環を有してもよい。Xが複数の芳香族縮合環を有する場合、芳香族縮合環はすべて同じであってもよく、一部が異なってもよく、すべて異なってもよい。
【0013】
芳香族縮合環としては、5員環及び6員環からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する芳香族縮合環が好ましく、6員環を有する芳香族縮合環がより好ましい。
芳香族縮合環の環数は特に限定されるものではないが、2~5が好ましく、2~4がより好ましく、2又は3がさらに好ましく、2が特に好ましい。
【0014】
芳香族縮合環としては、例えば、下記の縮合環が挙げられる。
・総環数が2~5のベンゼン環同士の縮合環。
・総環数が2~5のベンゼン環とヘテロ環との縮合環。
【0015】
ベンゼン環とヘテロ環との縮合環の場合、ヘテロ環としては、5員環、6員環が好ましい。該ヘテロ環におけるヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子が挙げられる。
ベンゼン環とヘテロ環との縮合環の総環数が2個である場合、ヘテロ環の環数は1個でもよく、0個でもよい。
ベンゼン環とヘテロ環との縮合環の総環数が3個である場合、ヘテロ環の環数は2個でもよく、1個でもよく、0個でもよい。
ベンゼン環とヘテロ環との縮合環の総環数が4個である場合、ヘテロ環の環数は3個でもよく、2個でもよく、1個でもよく、0個でもよい。
ベンゼン環とヘテロ環との縮合環の総環数が5個である場合、ヘテロ環の環数は4個でもよく、3個でもよく、2個でもよく、1個でもよく、0個でもよい。
【0016】
芳香族縮合環として、例えば、下記の化合物が挙げられる。式中、QはS、O、NH又はNRである。ここで、Rは炭素数1~10のアルキル基である。
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
芳香族縮合環としては、下記化合物が好ましい。
【0024】
【0025】
芳香族縮合環は、任意の置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、置換基としてのチオフェン、チエノチオフェン、ベンゾチオフェン、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、フルオレン、ピリジン、イミダゾール、ベンゾチアゾール、フラン等の芳香族化合物が挙げられる。
【0026】
一例においてXは、芳香族縮合環以外の環構造をさらに有してもよい。この場合、環構造は、芳香族縮合環と単結合で連結され得る。環構造は芳香族環構造であってもよく、脂肪族環構造であってもよい。
【0027】
環構造としては、5員環及び6員環からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する環構造が好ましく、6員環を有する環構造がより好ましい。
環構造の総環数は特に限定されるものではないが、芳香族縮合環の総環数以下であることが好ましい。
芳香族縮合環の総環数が2個である場合、環構造の総環数は2個でもよく、1個でもよく、0個でもよい。
芳香族縮合環の総環数が3個である場合、環構造の総環数は3個でもよく、2個でもよく、1個でもよく、0個でもよい。
芳香族縮合環の総環数が4個である場合、環構造の総環数は4個でもよく、3個でもよく、2個でもよく、1個でもよく、0個でもよい。
芳香族縮合環の総環数が5個である場合、環構造の総環数は5個でもよく、4個でもよく、3個でもよく、2個でもよく、1個でもよく、0個でもよい。
【0028】
環構造として、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0029】
環構造としては、例えば、チオフェン、ベンゼン、ビフェニル、ピリジン、ピロリジン、ピペリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、オキサゾール、チアゾール、ピロール、イミダゾール、フラン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロペンテン、シクロヘキセン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオフェンが挙げられる。
【0030】
環構造は、任意の置換基を有していてもよい。環構造における任意の置換基は、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、置換基としてのチオフェン、チエノチオフェン、ベンゾチオフェン、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、フルオレン、ピリジン、イミダゾール、ベンゾチアゾール、フラン等の芳香族化合物が挙げられる。
【0031】
式1中、aは1~22である。aは1~11が好ましく、1~7がより好ましく、1~3がさらに好ましい。
式1中、bは0~21である。bは0~17が好ましく、0~13がより好ましく、0~11がさらに好ましい。
式1中、a+bは1~22が好ましく、1~10がより好ましく、1~6がさらに好ましく、1~4が特に好ましい。a+bが前記数値範囲内の下限値以上であると、液晶性が発現しやすい。a+bが前記数値範囲内の上限値以下であると、成膜性が向上しやすい。
【0032】
Xとしては、下記化合物が好ましい。
【0033】
【0034】
(Y)
式1中、Yは、それぞれ独立に、単結合又はk+1価の連結基である。YはXの芳香族縮合環に結合するが特に限定されるものではなく、YはXの環構造と結合していてもよい。Yは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有してもよい。
本化合物が複数個のYを有する場合、Yはすべて同じ基であってもよく、一部が異なる基であってもよく、すべて異なる基であってもよい。
【0035】
Yとしては、例えば、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数1~20のオキシアルキレン基が挙げられる。
アルキレン基の炭素数、オキシアルキレン基の炭素数が2以上の場合、該アルキレン基、該オキシアルキレン基は炭素原子間にエーテル性酸素原子を有してもよい。アルキレン基、オキシアルキレン基は直鎖状でもよく、分岐構造を有してもよい。
【0036】
Yとしては、例えば、-O-、-OCH2CH2-、-OCH2CH2O-、-OCH2CH2CH2CH2O-、-OCH2CH2CH2CH2O-、-CH2O-、-CH2OCH2CH2O-、-OCONHCH2CH2O-、-OCONHCH2CH2OCH2CH2O-、-S-、-SO-、-SO2-、-CH2S-、-SCONHCH2CH2O-、-COOCH2CH2O-、-COSCH2CH2O-、-NHCOOCH2CH2O-、-NHCOO-、-NHCOCH2CH2-が挙げられる。
【0037】
(Rf)
式1中、Rfは、それぞれ独立に、フルオロアルキル基である。RfはYを介してXの芳香族縮合環に結合することが好ましいが特に限定されるものではなく、Xが環構造を有する場合、RfはYを介してXの環構造と結合していてもよい。
本化合物が複数個のRfを有する場合、Rfはすべて同じ基であってもよく、一部が異なる基であってもよく、すべて異なる基であってもよい。
【0038】
フルオロアルキル基の炭素数が2以上の場合、該フルオロアルキル基は、炭素原子間にエーテル性酸素原子を有してもよい。また、フルオロアルキル基は直鎖状でもよく、分岐構造を有してもよい。フルオロアルキル基の炭素数は1~8が好ましく、2~8がより好ましく、2~6がさらに好ましい。
フルオロアルキル基の炭素数が前記下限値以上であると、低屈折率の化合物が得られやすい。フルオロアルキル基の炭素数が前記上限値以下であると、合成がしやすい。
【0039】
Rfとしては、低屈折率にしやすいことからペルフルオロアルキル基が好ましい。ペルフルオロアルキル基の炭素数の詳細及び好ましい態様は、フルオロアルキル基について説明した内容と同じである。
【0040】
式1中、kは1~3である。kは1又は2が好ましく、1がより好ましい。kが大きな値であるほど、低屈折率の化合物が得られやすい。kが小さな値であるほど、合成がしやすい。
【0041】
(Z)
式1中、Zは、それぞれ独立に、1価の有機基である。ZはXの芳香族縮合環に結合することが好ましいが特に限定されるものではなく、Xが環構造を有する場合、ZはXの環構造と結合していてもよい。
本化合物が複数個のZを有する場合、Zはすべて同じであってもよく、一部が異なってもよく、すべて異なってもよい。
【0042】
1価の有機基は直鎖状、環状、分岐状のいずれでもよい。
1価の有機基としては、アルキル基が好ましい。アルキル基は、炭素原子間に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有してもよい。アルキル基が窒素原子を有する場合、該アルキル基はNH又はNRを有する。ここで、Rは炭素数1~10のアルキル基である。
【0043】
アルキル基の炭素数は1~20が好ましく、2~20がより好ましく、2~10がさらに好ましく、2~8が特に好ましい。炭素数が前記下限値以上であると、液晶性が発現しやすく、前記上限値以下であると、低屈折率を実現しやすい。
【0044】
1価の有機基としては、液晶性を発現しやすい点から、直鎖のアルキル基が特に好ましい。
1価の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、-(CH2)2-O-C10H21、-(CH2)3-O-C12H25、-(CH2)6-O-C6H13、-(CH2)2-S-C10H21、-(CH2)3-S-C12H25、-(CH2)6-S-C6H13、-(CH2)2-NH-C10H21、-(CH2)3-NH-C12H25、-(CH2)6-NH-C6H13が挙げられる。
1価の有機基としては、n-オクチル基が特に好ましい。
【0045】
本化合物としては、式1中のXが下記化合物であり、Yが炭素数1~20の直鎖状のオキシアルキレン基であり、Rfが炭素数1~8の直鎖状のペルフルオロアルキル基あり、Zが炭素数1~20の直鎖状のアルキル基であり、aが1であり、bが1であり、kが1である化合物が好ましい。
【0046】
【0047】
(作用機序)
以上説明した本化合物は、電荷輸送基のXに連結基のYを介して結合したフルオロアルキル基のRfを有するため、本化合物を含む膜の屈折率が低くなる。
【0048】
(本化合物の用途等)
本化合物を含む有機半導体材料は、好適な用途例の一つである。有機半導体材料は、半導体特性を示す有機化合物を含む材料である。好適例において、本化合物は液晶性を示し得る。液晶性を示す本化合物によれば、好適な導電性を示す膜が得られやすい。膜及びその用途等については、以下、詳細に説明する。
【0049】
<膜>
本発明の他の一態様は、既に述べた本化合物を含む膜に関する。膜は、電荷注入層、電荷輸送層のような有機光電子素子の層に適用できる。本化合物を含む膜の屈折率は、従来の膜より低くなる。よって、有機光電子素子の層のなかでも正孔輸送層、電子輸送層等の電荷輸送層は、膜の好適な用途例である。
【0050】
膜は、本化合物以外の有機半導体をさらに含んでもよい。有機半導体としては、種々の化合物を使用することができ、特に限定されるものではない。
正孔輸送層の場合、例えば、芳香族アミン誘導体が有機半導体の代表例として挙げられる。芳香族アミン誘導体としては、例えば、下記のα-NPD、TAPC、PDA、TPD、m-MTDATAが挙げられるが、これらの例示に限定されるものではない。
【0051】
【0052】
電子輸送層の場合も有機半導体としては、種々の化合物を使用することができ、特に限定されるものではない。例えば、含窒素複素環誘導体が有機半導体の代表例として挙げられる。含窒素複素環誘導体としては、例えば、下記のAlq3、PBD、TAZ、BND、OXD-7が挙げられるが、これらの例示に限定されるものではない。
【0053】
【0054】
膜は、ドーパントをさらに含んでいてもよい。ドーパントをさらに含む膜によれば、好適な導電性が得られやすい。ドーパントは特に限定されるものではなく、種々のドーパントが適用され得る。有機光電子素子に求められる特性に応じて、ドーパントを任意に選択できる。
【0055】
本化合物を含む膜はドライコーティング法、ウェットコーティング法のいずれでも形成できる。ドライコーティング法としては、蒸着法が好ましい。蒸着法は特に限定されるものではないが、例えば、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法が挙げられる。本化合物の分解を抑制する点では、抵抗加熱蒸着法が好ましい。
【0056】
ウェットコーティング法としては、例えば、スピンコート法、ワイプコート法、スプレーコート法、スキージーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法、フローコート法、ロールコート法、キャスト法、ラングミュア・ブロジェット法、グラビアコート法が挙げられる。
【0057】
好適例においては、本化合物を含む膜に膜厚方向での電子移動度を得るために、本化合物の分子を水平に配向させる処理を施すことができる。水平配向化処理については、下記の<有機光電子素子>の項で説明する。
【0058】
<有機光電子素子>
本発明のさらなる他の一態様は、既に述べた本化合物を含む膜を有する有機光電子素子及びその製造方法に関する。有機光電子素子は、一対の電極を有し、該一対の電極間に少なくとも一層の、本化合物を含む膜を有する。各電極の材質は特に限定されず、種々の金属、金属酸化物、導電性高分子を使用できる。
【0059】
有機光電子素子の層構成も特に限定されず、本化合物を含む膜に加えて任意の機能層が陽極と陰極の間に形成されていてもよい。例えば、透明導電性電極とその対向電極の間に、本化合物を含む膜に加えて電荷輸送層、電荷注入層、発光層、発電層等の層が挟持されていてもよい。また、任意の機能層を構成する材料は有機化合物に限定されず、無機化合物でもよい。種々の層構成のなかでも、本化合物を含む膜が電荷輸送層であることが好ましい。
【0060】
有機光電子素子の製造方法は、本化合物を含む膜を一対の電極間に形成することを含む方法であればよく、特に限定されない。例えば、基材上に陽極又は陰極等を形成した後、本化合物を含む膜及び任意の機能層を形成し、その上に陰極又は陽極等を形成することで有機光電子素子を製造できる。
【0061】
一例において、本化合物が水平配向した膜を有する有機光電子素子を製造するためには、以下に述べる方法1が好適である。
方法1:基材上に、既に述べた本化合物を含む第1の膜を形成することで第1の基材を得て、該第1の膜の少なくとも一部の表面上に、水溶性材料を含む第2の膜を形成することで第2の基材を得て、該第2の基材を本化合物の相転移温度以上に加熱した後、該第2の膜を除去する、有機光電子素子の製造方法。
【0062】
方法1によれば、第1の膜の表面の少なくとも一部が第2の膜で覆われた状態で、本化合物をその相転移温度以上に加熱できる。そのため、本化合物の分子を水平方向に選択的に配向させることができる。本化合物が水平配向した膜においては、膜厚方向での電子移動度が得られやすい。よって、有機光電子素子のような層構造を有する電子デバイスに好適に適用できる。
【0063】
方法1で用いる基材は単層構造であってもよく、複数の層を有する多層構造であってもよい。多層構造の場合、その少なくとも一つの層が既に述べた任意の機能層であってもよい。
第1の膜の形成方法の詳細は既に述べた通り、ドライコーティング法、ウェットコーティング法のいずれも適用でき、その詳細及び好ましい態様も既に述べた通りである。特に限定されるものではないが、製膜性の点では蒸着法によって第1の膜を基材上に形成することが好ましい。
【0064】
方法1で用いる水溶性材料は特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリル酸が挙げられる。
水溶性材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
水溶性材料は、典型的にはその水溶液として第2の膜の形成に使用される。そのため、第2の膜の形成方法としては、ウェットコーティング法が好ましい。ウェットコーティング法の詳細は既に述べた通りである。
【0066】
方法1によれば、少なくとも一部の表面が第2の膜で覆われた状態で本化合物の相転移温度以上に加熱することで、該表面部分の第1の膜において本化合物の分子を水平方向に選択的に配向させることができる。本化合物の相転移温度はその化学構造により変化するため、示差熱分析及び偏光顕微鏡分析により事前に測定することが好ましい。示差熱分析及び偏光顕微鏡分析の手法は特に限定されるものではなく、当業者によって広く実施されている分析手法を適用できる。
【0067】
方法1においては、第2の基材を本化合物の相転移温度以上に加熱した後、該第2の膜を除去することで、本化合物が水平配向した膜を基材上に形成できる。水溶性材料を含む第2の膜の除去には、操作が簡便であるため水洗が好ましい。
【0068】
有機光電子素子は、有機ELデバイス、有機トランジスタ、有機メモリー、有機太陽電池、有機フォトダイオード、有機レーザー等の有機光電子デバイスに利用できる。なかでも特に、有機EL素子は好適である。有機EL素子は有機ELディスプレイ、有機EL照明等の有機ELデバイスに利用できる。有機ELデバイスは、トップエミッション型であってもよく、ボトムエミッション型であってもよい。
【実施例0069】
以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載に限定されない。例1~3は実施例であり、例4は比較例である。
【0070】
<例1>
乾燥した三口フラスコに乾燥した三口フラスコにBi(OTf)3の328mg(0.5mmol)、6-ブロモ-2-ナフトールの2.229g(10mmol)、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブタノールの1.805g(11mmol)、脱水処理されたCH2ClCH2Clの5mLを加え、80℃で24時間撹拌した。溶媒を減圧で除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製し、化合物A1の1.55gを得た(収率44%)。
【0071】
【0072】
次に、200mLの丸底フラスコに化合物A1の0.738g(2mmol)、4-オクチルフェニルボロン酸の0.500g(2mmol)、Pd(PPh3)4の20mg、ジメチルエーテル(DME)の20mL、10質量%Na2CO3水溶液の20mLを加え、20時間還流を行った。その後、冷却し、水を加えてろ過した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製し、さらにエタノールで再結晶し、白色結晶である化合物A2の0.41gを得た(収率43%)。
【0073】
【0074】
化合物A2について、DSC及び偏光顕微鏡分析を行った。
図1に示すDSCに降温過程及び昇温過程で複数の発熱ピークと吸熱ピークがあるように、明確な液晶相への相転移の挙動が見られた。
図2に示す40℃での偏光顕微鏡像から、化合物A2は40℃では結晶状態にあると考えられた。一方で
図3に示す130℃での偏光顕微鏡像では、スメクチック相の低次の液晶相に特徴的な像が観測された。
図1、
図2及び
図3に示す結果から、化合物A2が約60~150℃の温度範囲で液晶性を示すことを確認した。
【0075】
<例2>
乾燥した三口フラスコにBi(OTf)3の164mg(0.25mmol)、6-ブロモ-2-ナフトールの1.120g(5mmol)、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキサノールの1.452g(5.5mmol)、脱水処理されたCH2ClCH2Clの2.5mLを加え、80℃で24時間撹拌した。溶媒を減圧で除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製し、化合物B1の1.33gを得た(収率57%)。
【0076】
【0077】
次に、200mLの丸底フラスコに化合物B1の0.940g(2mmol)、4-オクチルフェニルボロン酸の0.500g(2mmol)、Pd(PPh3)4の20mg、DMEの20mL、10質量%Na2CO3水溶液の20mLを加え、20時間還流を行った。その後、冷却し、水を加えてろ過した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製し、さらにエタノールで再結晶し、白色結晶である化合物B2の0.85gを得た(収率82.7%)。
【0078】
【0079】
化合物B2について、DSC及び偏光顕微鏡分析を行った。
図4に示すDSCに降温過程及び昇温過程で複数の発熱ピークと吸熱ピークがあるように、明確な液晶相への相転移の挙動が見られた。
図5に示す30℃での偏光顕微鏡像から、化合物B2は30℃では結晶状態にあると考えられた。一方で
図6に示す160℃での偏光顕微鏡像では、スメクチック相の低次の液晶相に特徴的な像が観測された。
図4、
図5及び
図6に示す結果から、化合物B2が約90~160℃の温度範囲で液晶性を示すことを確認した。
【0080】
<例3>
乾燥した三口フラスコにBi(OTf)3の164mg(0.25mmol)、6-ブロモ-2-ナフトールの1.120g(5mmol)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクタノールの1.821g(5.5mmol)、脱水処理されたCH2ClCH2Clの2.5mLを加え、80℃で24時間撹拌した。溶媒を減圧で除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製し、化合物C1の1.65gを得た(収率58%)。
【0081】
【0082】
次に、200mLの丸底フラスコに化合物C1の1.138g(2mmol)、4-オクチルフェニルボロン酸の0.500g(2mmol)、Pd(PPh3)4の20mg、DMEの20mL、10質量%Na2CO3水溶液の20mLを加え、20時間還流を行った。その後、冷却し、水を加えてろ過した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製し、エタノールで再結晶した後、さらにヘキサンで再結晶し、白色結晶である化合物C2の0.67gを得た(収率57%)。
【0083】
【0084】
化合物C2について、DSC及び偏光顕微鏡分析を行った。
図7に示すDSCに降温過程及び昇温過程で複数の発熱ピークと吸熱ピークがあるように、明確な液晶相への相転移の挙動が見られた。
図8に示す20℃での偏光顕微鏡像から、化合物C2は20℃では結晶状態にあると考えられた。一方で
図9に示す180℃での偏光顕微鏡像では、スメクチック相の低次の液晶相に特徴的な像が観測された。
図7、
図8及び
図9に示す結果から、化合物C2が約130~180℃の温度範囲で液晶性を示すことを確認した。
【0085】
<例4>
例4で用いた化合物Dは、非特許文献1のp.3734の記載にしたがって合成した。
【0086】
【0087】
<測定方法>
(示差熱分析:DSC)
示差熱分析には、島津製作所製品「DSC-60」を用いた。窒素雰囲気下で5mgの試料を封入したアルムニウムクリンプセルを、40℃で5分間保持した。次に該アルムニウムクリンプセルを、5℃/分の速度で40℃から180℃まで昇温した。次に該アルムニウムクリンプセルを、180℃で5分間保持した。次に該アルムニウムクリンプセルを、5℃/分の速度で180℃から20℃まで降温した。同条件で昇温、降温を2回実施し、2回目の評価を結果として用いた。リファレンスを空のアルミニウムクリンプセルとして、同条件の昇温過程及び降温過程で測定を行った。
【0088】
(偏光顕微鏡分析)
顕微鏡としてニコン社製品「Optiphot2-pol」を用いた。ホットステージとしてMettler社製品「FP900 thermo-system」を用い、ガラス基板2枚に挟んだ試料を等方相温度まで加熱した。冷却過程で偏光顕微鏡観察を行った。
【0089】
(屈折率、膜厚)
膜の屈折率及び膜厚は、単色エリプソメトリ(光源:HeNeレーザー、ガードナーサイエンテフィック製品「LSE-100」)を用いて測定した。HeNeレーザーの波長は、632.8nmである。
【0090】
(蒸着膜)
真空蒸着装置の蒸着セルとして北野精機株式会社製品「K-Cellタイプ」を使用した。基材としては、UV-オゾン洗浄したシリコンウエハ(2cm角、厚さ0.6mm、エレクトロニクスエンドマテリアルズコーポレーション社製品)を使用した。
各例で得た化合物A2、B2、C2、Dの30~40mgを炭素ルツボに入れた。真空度5~6×10-4Pa、炭素ルツボ温度130℃、蒸着速度1.5~2.5Å/秒の条件で、膜厚が50nmになるまで蒸着し、シリコンウエハ上に蒸着膜を得た。各例の蒸着膜の屈折率及び膜厚を測定した。測定結果を表1に示す。
【0091】
(水平配向化膜)
蒸着膜の表面に10質量%のポリメチルメタクリル酸(PMMA)水溶液を塗布した。次いで、真空デシケータで水分を除去し、蒸着膜の表面にPMMAの膜を形成した。次いで、DSCで事前に測定した各化合物の相転移温度まで加熱し、各例で得た化合物A2、B2、C2、Dを低次のスメクチック相に相転移させた。25℃に急冷した後、PMMAの膜を超純水に浸漬させることで除去した。その後、表面を窒素ブローで乾燥させ、水平配向化膜を得た。各例の水平配向化膜の屈折率及び膜厚を測定した。測定結果を表1に示す。
【0092】
【0093】
例1~3の蒸着膜の各屈折率は、例4の蒸着膜の屈折率より低いことを確認した。また、例1~3の水平配向化膜の各屈折率は、例4の水平配向化膜の屈折率より低いことを確認した。これらのことから、屈折率が低い有機半導体材料が得られる化合物を合成したことを確認した。
【0094】
図10に示す蒸着膜の偏光顕微鏡像及び
図11に示す水平配向化膜の偏光顕微鏡像の比較により、例1の水平配向化膜において、化合物A2の液晶分子が水平配向していると考えられた。
【0095】
図12に示す蒸着膜の偏光顕微鏡像及び
図13に示す水平配向化膜の偏光顕微鏡像の比較により、例2の水平配向化膜において、化合物B2の液晶分子が水平配向していると考えられた。
【0096】
図14に示す蒸着膜の偏光顕微鏡像及び
図15に示す水平配向化膜の偏光顕微鏡像の比較により、例3の水平配向化膜において、化合物C2の液晶分子が水平配向していると考えられた。