(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179968
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】液状樹脂塗布装置
(51)【国際特許分類】
B05B 17/06 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
B05B17/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099344
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 昇
【テーマコード(参考)】
4D074
【Fターム(参考)】
4D074AA01
4D074BB02
4D074DD04
4D074DD14
4D074DD22
4D074DD34
4D074DD44
4D074DD65
(57)【要約】
【課題】対象物に対して均一に液状樹脂を塗布することができる液状樹脂塗布装置を提供すること。
【解決手段】液状樹脂塗布装置1は、液状樹脂100を霧化して対象物200に塗布する装置であって、超音波振動24を発生する振動子20と、振動子20が発生した超音波振動24を伝達し、一方の端面31が端面31と直交する方向に振動32する柱状の振動体30と、分散部材60を介して振動体30の外周面36に液状樹脂100を供給する液状樹脂供給ノズル50と、を備え、液状樹脂供給ノズル50は、液状樹脂供給源41から供給された液状樹脂100を移送するための流路51と、流路51の下流端において振動体30の外周面36に対向する開口部54と、を有し、分散部材60は、開口部54において流路51に移送された液状樹脂100を受ける位置に配置されるとともに、液状樹脂100を内部で分散させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状樹脂を霧化して対象物に塗布する液状樹脂塗布装置であって、
超音波振動を発生する振動子と、
該振動子が発生した超音波振動を伝達し、一方の端面が該端面と直交する方向に振動する柱状の振動体と、
分散部材を介して該振動体の外周面に液状樹脂を供給する液状樹脂供給ノズルと、
を備え、
該液状樹脂供給ノズルは、
液状樹脂供給源から供給された該液状樹脂を移送するための流路と、
該流路の下流端において該振動体の外周面に対向する開口部と、
を有し、
該分散部材は、
該開口部において該流路に移送された該液状樹脂を受ける位置に配置されるとともに、該液状樹脂を内部で分散させる
ことを特徴とする、液状樹脂塗布装置。
【請求項2】
該開口部は、該一方の端面に平行な方向に延びるスリット状に形成されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の液状樹脂塗布装置。
【請求項3】
該分散部材は、多孔質の樹脂部材を含む
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の液状樹脂塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状樹脂塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、表面にデバイスが形成された被加工物(ウェーハ)をチップサイズへと分割する際に、被加工物に設定された分割予定ラインに沿ってレーザービームを照射してアブレーション加工を行う方法が提案されている。このような加工方法では、デブリと呼ばれる加工屑が発生するため、このデブリが飛散して被加工物に再付着すると、被加工物を汚染してしまう可能性がある。
【0003】
この課題を解決するために、被加工物の表面に水溶性の液状樹脂を塗布して保護膜を形成する方法が開示されている(特許文献1参照)。保護膜を形成する方法としては、被加工物を保持したスピンナーテーブルを高速回転させながら、スピンナーテーブル上の被加工物の表面に水溶性の液状樹脂を供給し、遠心力を受けた液状樹脂の移動によって被加工物の表面を覆い、乾燥させて保護膜とする方法が一般的である。
【0004】
ところで、被加工物に段差や電極等のバンプが存在する場合、特許文献1の方法では、被加工物の加工面に液状樹脂を均一に塗布することが困難であり、部分的に保護膜で被覆されない可能性がある。この課題を解決するために、例えば、液状樹脂を霧化させる方法(特許文献2)を用い、本出願人は、超音波振動子の振動に連動して振動する複数の振動板間の微小間隙に液状樹脂を供給することで液状樹脂を霧化させた状態で被加工物に塗布する方法を試みた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-140311号公報
【特許文献2】特開2016-147248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の方法では、振動板間の微小間隙に対して液状樹脂が供給された箇所において、液状樹脂が局所的に霧化するため、被加工物全体に均一に塗布することが依然困難であった。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、対象物に対して均一に液状樹脂を塗布することができる液状樹脂塗布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の液状樹脂塗布装置は、液状樹脂を霧化して対象物に塗布する液状樹脂塗布装置であって、超音波振動を発生する振動子と、該振動子が発生した超音波振動を伝達し、一方の端面が該端面と直交する方向に振動する柱状の振動体と、分散部材を介して該振動体の外周面に液状樹脂を供給する液状樹脂供給ノズルと、を備え、該液状樹脂供給ノズルは、液状樹脂供給源から供給された該液状樹脂を移送するための流路と、該流路の下流端において該振動体の外周面に対向する開口部と、を有し、該分散部材は、該開口部において該流路に移送された該液状樹脂を受ける位置に配置されるとともに、該液状樹脂を内部で分散させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の液状樹脂塗布装置において、該開口部は、該一方の端面に平行な方向に延びるスリット状に形成されることが好ましい。
【0010】
また、本発明の液状樹脂塗布装置において、該分散部材は、多孔質の樹脂部材を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本願発明は、対象物に対して均一に液状樹脂を塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態の液状樹脂塗布装置の構成例を模式的に一部断面で示す側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す液状樹脂塗布装置により液状樹脂が塗布される対象物の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す液状樹脂供給ノズルを模式的に示す上面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す液状樹脂供給ノズルを模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、変形例に係る液状樹脂供給ノズルを模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す液状樹脂供給ノズルを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0014】
〔実施形態〕
まず、本発明の実施形態に係る液状樹脂塗布装置1を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態の液状樹脂塗布装置1の構成例を模式的に一部断面で示す側面図である。
図2は、
図1に示す液状樹脂塗布装置1により液状樹脂100が塗布される対象物200の一例を模式的に示す斜視図である。
【0015】
図1に示すように、実施形態の液状樹脂塗布装置1は、保持テーブル10と、振動子20と、振動体30と、液状樹脂供給部40と、を備える。なお、本明細書に添付した図面では、振動子20、振動体30、および液状樹脂供給部40を、説明のために液状樹脂塗布装置1の他の構成要素より誇張して相対的に大きく描写しているが、実際には、保持テーブル10の上方に位置する作動位置と、保持テーブル10の上方から離間した退避位置との間で移動可能な大きさである。
【0016】
図1に示す液状樹脂塗布装置1は、保持テーブル10に保持された対象物200に対して、振動体30から霧化した液状樹脂100を塗布させることにより、対象物200に保護膜を形成する装置である。対象物200は、シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、サファイア(Al
2O
3)、ヒ化ガリウム(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、またはタンタル酸リチウム(LiTaO3)等を基板201とする円板状の半導体ウェーハ、光デバイスウェーハ等のウェーハである。
【0017】
図2に示すように、対象物200は、基板201の表面202に格子状に設定される複数の分割予定ライン203と、分割予定ライン203によって区画された領域に形成されたるデバイス204と、を有する。デバイス204は、例えば、IC(Integrated Circuit)、あるいはLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ等である。
【0018】
実施形態において、対象物200は、デバイス204の表面に複数の配線層の電極等に接続した導電性の球状の電極バンプ205を搭載して、表面202に凹凸が形成されている。電極バンプ205は、30μm以上100μm以下の高さを有し、デバイス204の表面から突出している。デバイス204は、表面202に電極バンプ205が搭載されていることで、凹凸の構造物を備えている。
【0019】
対象物200は、分割予定ライン203に沿って個々のデバイス204に分割されて、デバイスチップ210に個片化される。デバイスチップ210は、基板201の一部とデバイス204とを含む。対象物200は、実施形態において、デバイス204が電極バンプ205を備えて、実装基板に実装される際にフリップチップボンディングと呼ばれる実装技術により実装されるデバイスチップ210に分割される。
【0020】
なお、デバイスチップ210は、
図2において、正方形状であるが、長方形状であってもよい。また、対象物200は、実施形態では、デバイス204の表面から突出した電極バンプ205を搭載することで、表面202に凹凸が形成されているが、本発明では、電極バンプ205の搭載に限定されずに、表面202側に凹凸が形成されていればよい。
【0021】
図1に示す保持テーブル10は、対象物200を保持面11で保持する。保持面11は、実施形態において、対象物200の電極バンプ205が搭載されたデバイス204が形成された表面202と反対側に位置する面である裏面206側を保持する。保持面11は、ポーラスセラミック等から形成された円板形状かつ水平方向と平行な平面であり、例えば、真空吸引経路を介して真空吸引源と連通している。保持テーブル10は、保持面11上に載置された対象物200を吸引保持する。
【0022】
振動子20は、第一の圧電素子21と、第二の圧電素子22と、が厚み方向に積層されてボルト締めによって締結される板形状の振動系である。第一の圧電素子21および第二の圧電素子22は、電界が印加されることで積層方向に伸縮する受動素子である。第一の圧電素子21および第二の圧電素子22は、それぞれ不図示の電極が取り付けられ、電極および配線を介して高周波電源23に接続される。
【0023】
高周波電源23は、交流電圧を印加して高周波電力を振動子20に供給する。振動子20は、高周波電源23によって所定の周波数で電圧の印加のオンとオフとが繰り返されることで、第一の圧電素子21および第二の圧電素子22が積層方向に伸縮し、
図1中の矢印に沿う機械的な超音波振動24を発生させる。超音波振動24とは、本明細書において、振幅が10μm以上100μm以下、周波数が20kHz以上100kHz以下の振動を示す。振動子20は、実施形態において、例えば、振幅が30μm、出力が20W、周波数が52kHzで振動する。
【0024】
振動体30は、例えば、アルミニウム合金等の金属により柱状に形成される、所謂超音波ホーンである。振動体30は、振動子20が発生した超音波振動24を伝達し、保持テーブル10の保持面11に対向する一方の端面31が、端面31と直交する方向である振動子20が伸縮する方向に振動32(
図1中に矢印で示す)する。対象物200に霧化した液状樹脂100を塗布する際、端面31と対象物200の表面202との距離は、実施形態において、1mm以上50mm以下であり、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下である。振動体30は、実施形態において、連結部33と、固定部34と、伝達部35と、を含む。
【0025】
連結部33は、振動子20の第二の圧電素子22側の面に固定され、軸方向(振動子20が伸縮する方向)に断面形状が一定の柱状に形成される部分である。固定部34は、振動子20の第一の圧電素子21側に配設され、連結部33に対して不図示の固定ボルト等によって固定される部分である。すなわち、振動子20は、連結部33と固定部34との間に挟まれた状態で連結部33に対して固定される。
【0026】
伝達部35は、連結部33の振動子20とは反対側に、不図示の連結ネジ等で連結される部分である。伝達部35の連結部33とは反対側の端面が、振動体30の一方の端面31である。伝達部35は、軸方向に沿って互いに断面形状(断面積)が異なる複数の柱状部分からなり、振動子20から伝達された超音波振動24の振幅を増減させるブースターとしての機能を含む。伝達部35の外周面36には、後述の液状樹脂供給部40から液状樹脂100が供給される。
【0027】
液状樹脂供給部40は、振動体30の外周面36に対して液状樹脂100を供給する。液状樹脂供給部40は、液状樹脂供給源41と、供給管42と、液状樹脂供給ノズル50と、を有する。液状樹脂供給源41は、供給管42を介して液状樹脂供給ノズル50と接続し、液状樹脂100を液状樹脂供給ノズル50に供給する。供給管42は、上流端が液状樹脂供給源41に接続し、下流端が液状樹脂供給ノズル50の流路51に連通する。
【0028】
液状樹脂100は、例えば、ポリビニルアルコール(Polyvinyl Alcohol:PVA)、またはポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone:PVP)等の液状の水溶性樹脂であり、例えば、株式会社ディスコ社製、HogoMax(登録商標)である。HogoMaxの粘度は、例えば、5cP以上300cP以下に設定される。液状樹脂供給ノズル50は、例えば、0.2mL/min以上10mL/min以下の供給量で、液状樹脂100を供給する。
【0029】
液状樹脂供給ノズル50は、分散部材60を介して、振動体30の外周面36に液状樹脂100を供給する。振動体30の外周面36に供給された液状樹脂100は、外周面36上を下方に向かって一方の端面31上まで流れる。液状樹脂供給ノズル50は、振動体30の外周面36に供給された液状樹脂100が外周面36上を下方に向かって一方の端面31上まで流れることで、一方の端面31上に液状樹脂100を供給することとなる。
【0030】
液状樹脂塗布装置1は、振動子20が超音波振動24している状態で、液状樹脂100が一方の端面31上に供給されることによって、液状樹脂100を霧化させ、霧化した液状樹脂100を、保持テーブル10の保持面11に保持された対象物200に塗布する。液状樹脂塗布装置1は、例えば、振動体30と保持テーブル10とを相対的に螺旋状に移動させる。また、液状樹脂塗布装置1は、対象物200の表面202の凹凸(電極バンプ205)が覆われるまで、繰り返し、1パス以上10パス以下で、塗布を実施する。
【0031】
液状樹脂供給ノズル50の構成について、より詳しく説明する。
図3は、
図1に示す液状樹脂供給ノズル50を模式的に示す上面図である。
図4は、
図1に示す液状樹脂供給ノズル50を模式的に示す斜視図である。実施形態の液状樹脂供給ノズル50は、L字状に屈曲した平型ノズルである。液状樹脂供給ノズル50は、筐体の内部に、液状樹脂供給源41(
図1参照)から供給された液状樹脂100を移送するための流路51を有する。なお、
図4では、流路51および分散部材60を実線で描写し、液状樹脂供給ノズル50の筐体を破線で描写している。
【0032】
流路51は、実施形態において、第一の流路52と、第二の流路53と、を含む。第一の流路52は、流路51の上流側の一部分であり、筐体のL字状の一方の直線部分の内部に、当該直線に沿って形成される。第一の流路52は、上流端が供給管42の下流端に連通し、下流端が第二の流路53に連通する円筒状に形成される。第二の流路53は、流路51の下流側の一部分であり、L字形状の一方の直線部分の内部に、当該直線に沿って形成される。第二の流路53は、筐体のL字状の断面に直交する方向に長辺を有する長方形断面の細溝形状に形成される。
【0033】
流路51の下流端には、筐体の外部に開口する開口部54が設けられる。開口部54は、第二の流路53の下流端に位置し、筐体のL字状の断面に直交する方向に延びるスリット状に開口する。液状樹脂供給ノズル50は、開口部54が振動体30の外周面36(
図1参照)に開口する位置に配置される。また、液状樹脂供給ノズル50は、開口部54の延びる方向(スリット長さ方向)が、振動体30の一方の端面31(
図1参照)に平行な方向に一致するように配置される。開口部54は、振動体30の一方の端面31に近接した位置であることが好ましい。開口部54のスリット長さは、振動体30の一方の端面31の幅と同等か、一方の端面31の幅より小さいことが好ましく、例えば、端面31の幅の20%以上、80%以下である。
【0034】
分散部材60は、開口部54において、流路51に移送された液状樹脂100を受ける位置に配置されるとともに、液状樹脂100を内部で分散される部材である。なお、分散部材60は、少なくとも一部同士が互いに連通した複数の微細な孔(細孔)が形成されたものをいう。分散部材60は、実施形態において、第二の流路53内に配置され、開口部54の延びる方向および第二の流路53の長手方向に平行な面を有する板形状である。分散部材60は、実施形態において、多孔質の樹脂部材であるが、本発明では、不織布等の繊維材料、多孔質セラミック等であってもよい。分散部材60の開口部54が延びる方向の長さは、振動体30の一方の端面31の幅と同等か、一方の端面31の幅より小さいことが好ましい。
【0035】
第一の流路52を移送された液状樹脂100は、第二の流路53で分散部材60に受け止められ、毛細管現象によって、分散部材60の内部で面方向に分散される。分散部材60によって分散された液状樹脂100は、分散された状態で、振動体30の外周面36(
図1参照)に供給される。
【0036】
〔変形例〕
次に、液状樹脂供給ノズル70の別の形態について説明する。
図5は、変形例に係る液状樹脂供給ノズル70を模式的に示す斜視図である。
図6は、
図5に示す液状樹脂供給ノズル70を模式的に示す断面図である。
【0037】
変形例の液状樹脂供給ノズル70は、分散部材80を介して、振動体30の外周面36(
図1参照)に液状樹脂100を供給する。変形例の液状樹脂供給ノズル70は、先細りの平型ノズルである。液状樹脂供給ノズル70は、筐体の内部に、液状樹脂供給源41(
図1参照)から供給された液状樹脂100を移送するための流路71を有する。なお、
図5では、流路71および分散部材80を実線で描写し、液状樹脂供給ノズル70の筐体を破線で描写している。
【0038】
流路71は、変形例において、第一の流路72と、第二の流路73と、第三の流路74と、を含む。第一の流路72は、流路71の上流側の一部分であり、上流端が供給管42の下流端に連通し、下流端が第二の流路73に連通する円筒状に形成される。第二の流路73は、流路71の中流部の一部分であり、上流端が第一の流路72の下流端に連通し、下流端が第三の流路74の上流端に連通する、長方形断面の流路である。実施形態において、第二の流路73の長手方向は、第一の流路72の長手方向に対して所定の傾きを有する。
【0039】
第三の流路74は、流路71の下流側の一部分であり、上流端が第二の流路73の下流端に連通する長方形断面の流路である。第三の流路74の長手方向は、第二の流路73の長手方向に対して所定の傾きを有するとともに、第三の流路74の短手方向は、第二の流路73の短手方向に対して平行である。
【0040】
流路71の下流端には、筐体の先端部75の外部に開口する開口部76が設けられる。開口部76は、第三の流路74の下流端に位置し、第三の流路74の短手方向に延びるスリット状に開口する。開口部76は、液状樹脂供給ノズル70の先細った先端部75の側面に開口する。液状樹脂供給ノズル70の先端部75の側面は、分散部材80によって覆われる。すなわち、開口部76は、分散部材80によって閉塞される。分散部材80の基本的な材質および機能は、実施形態の分散部材60と同様である。
【0041】
変形例の分散部材80は、液状樹脂供給ノズル70の先端部75の側面に沿う板形状である。分散部材80の開口部76が延びる方向の長さは、振動体30の一方の端面31(
図1参照)の幅と同等か、一方の端面31の幅より小さいことが好ましい。
【0042】
第一の流路72、第二の流路73および第三の流路74を移送された液状樹脂100は、開口部76分散部材80に受け止められ、毛細管現象によって、分散部材80の内部で面方向に分散される。分散部材80によって分散された液状樹脂100は、分散された状態で、振動体30の外周面36(
図1参照)に供給される。
【0043】
実施形態の分散部材60および変形例の分散部材80に示すように、本発明の分散部材60、80は、開口部54より内側に配置されても、開口部76より外側に配置されてもよい。本発明の分散部材60、80は、流路51、71を移送された液状樹脂100を受ける位置に配置され、かつ振動体30の外周面36(
図1参照)に対向する位置に配置されればよく、その構成は、実施形態および変形例の構成に限定されない。
【0044】
以上説明したように、実施形態および変形例の液状樹脂塗布装置1は、液状樹脂100を供給するスリット状の開口部54、76を有する液状樹脂供給ノズル50、70の先端、すなわち開口部54の内側または開口部76の外側に、内部で液状樹脂100を分散させる分散部材60、80を配置し、分散部材60、80を介して振動体30の外周面36に対して液状樹脂100を供給する。このように、分散された状態で液状樹脂100が供給されることで、液状樹脂100が供給された箇所において局所的に霧化することを抑制できるため、対象物200に対して均一に液状樹脂100を塗布することができるという効果を奏する。
【0045】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0046】
例えば、振動体30の一方の端面31には、凹凸が形成されることが好ましい。これにより、霧化した液状樹脂100の粒径を小さくすることができるとともに、粒径の尖度を向上することができ、粒径のばらつきを抑制することができる。
【0047】
また、液状樹脂塗布装置1は、振動子20の超音波振動24によって加熱された振動子20および振動体30を放熱する放熱部を備えていてもよい。放熱部は、例えば、水冷によって冷却可能なヒートシンクを含む。
【0048】
また、液状樹脂塗布装置1は、霧化された液状樹脂100が所望の領域に塗布されるよう、振動体30の一方の端面31と対象物200との間の領域を囲うエアカーテンを形成する気体供給機構を備えていてもよい。気体供給機構は、例えば、振動体30の一方の端面31近傍の側方を囲む環状に配置される噴出口を含む。気体供給機構は、例えば、供給する気体を加熱する熱源を更に含んでもよい。
【0049】
また、液状樹脂塗布装置1は、塗布した液状樹脂100の乾燥を促進するために、保持テーブル10を加温する機構や、ハロゲンライトを対象物200の上面(表面202)に照射する機構を設けてもよい。また、供給する液状樹脂100にエタノールを混合して、乾燥性を向上させてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 液状樹脂塗布装置
10 保持テーブル
20 振動子
24 超音波振動
30 振動体
31 端面
32 振動
36 外周面
40 液状樹脂供給部
41 液状樹脂供給源
50、70 液状樹脂供給ノズル
51、71 流路
52、72 第一の流路
53、73 第二の流路
74 第三の流路
75 先端部
54、76 開口部
60、80 分散部材
100 液状樹脂
200 対象物
202 表面
205 電極バンプ