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特開2024-180013ベルトプレス脱水機の脱水ケーキの含水率予測方法及び汚泥の脱水処理方法
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  • 特開-ベルトプレス脱水機の脱水ケーキの含水率予測方法及び汚泥の脱水処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180013
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ベルトプレス脱水機の脱水ケーキの含水率予測方法及び汚泥の脱水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/123 20190101AFI20241219BHJP
   C02F 11/147 20190101ALI20241219BHJP
【FI】
C02F11/123 ZAB
C02F11/147
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099414
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 瑞季
(72)【発明者】
【氏名】大木 康一
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA05
4D059AA06
4D059BE09
4D059BE10
4D059BE25
4D059BE55
4D059BE56
4D059EA01
4D059EA02
4D059EA20
4D059EB01
4D059EB02
4D059EB11
4D059EB20
(57)【要約】
【課題】脱水ケーキの含水率を容易かつ精度よく予測することができるベルトプレス脱水機の脱水ケーキの含水率予測方法を提供する。
【解決手段】汚泥を脱水しているベルトプレス脱水機からの脱水ケーキの含水率を予測する方法であって、ベルトプレス脱水機への給泥量(m/h)、給泥の懸濁固形物濃度(重量%)、濾布ベルト速度(m/h)、脱水ケーキ厚(m)を測定し、これらの測定値と、脱水ケーキ幅(m)と、脱水ケーキ比重とを用い、下記式に基づいて、含水率を予測する脱水ケーキ含水率の予測方法。脱水ケーキ含水率(重量%)=[1-{給泥量(m/h)×懸濁固形物濃度(重量%÷100)}]/[濾布ベルト速度(m/h)×脱水ケーキ幅(m)×脱水ケーキ厚(m)×脱水ケーキ比重]×100
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を脱水しているベルトプレス脱水機からの脱水ケーキの含水率を予測する方法であって、
ベルトプレス脱水機への給泥量(m/h)、給泥の懸濁固形物濃度(重量%)、濾布ベルト速度(m/h)、脱水ケーキ厚(m)を測定し、これらの測定値と、脱水ケーキ幅(m)と、脱水ケーキ比重とを用い、下記式[1]に基づいて、含水率を予測する脱水ケーキ含水率の予測方法。
脱水ケーキ含水率(重量%)=
[1-{給泥量(m/h)×懸濁固形物濃度(重量%÷100)}]/
[濾布ベルト速度(m/h)×脱水ケーキ幅(m)×脱水ケーキ厚(m)×脱水ケーキ比重]×100 …[1]
【請求項2】
脱水ケーキの前記比重として、定期的に測定した実測値又は予め設定した所定値を用いる請求項1の脱水ケーキ含水率の予測方法。
【請求項3】
前記汚泥は、ベルトプレス脱水機からの脱水ケーキの含水率が50~95重量%となるものである請求項1の脱水ケーキ含水率の予測方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかの脱水ケーキ含水率の予測方法によって予測される含水率値に基づいて、ベルトプレス脱水機への給泥量、汚泥への凝集剤の薬注量、濾布ベルト速度、及び凝集槽の撹拌速度の少なくとも1つを制御するベルトプレス脱水機を用いた汚泥の脱水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベルトプレス脱水機の脱水ケーキの含水率を予測する方法に関する。また、本発明は、この含水率予測方法を利用したベルトプレス脱水機による汚泥の脱水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルトプレス脱水機を用いた汚泥の脱水処理において、脱水ケーキ含水率を下げることは廃棄物処分費を削減することに繋がるため、非常に重要である。そこで、ベルトプレス脱水機の稼働時に、脱水ケーキ含水率を定期的に測定し、含水率が上昇しないように給泥量や凝集剤の薬注量、濾布速度といった運転条件を調整する場合が多い。
【0003】
従来、脱水ケーキ含水率を測定するためには、脱水ケーキを採取して乾燥し、乾燥前後の重量を測定するようにしている。このような含水率測定方法では、脱水ケーキを乾燥するために長時間を要するため、含水率悪化の検知にタイムラグが生じてしまう。また、この測定方法は測定作業者によって行われるため、測定間隔が長くなり、連続的な測定ができず、含水率の経時変化を見逃してしまうおそれがある。
【0004】
特許文献1には、ベルトプレス脱水機の重力濾過部(重力脱水部)において、濾布上の汚泥厚みを測定し、脱水状態を監視してベルトプレス脱水機の運転条件を制御することが記載されている。しかし、重力濾過部における汚泥厚みを連続測定することは可能であるが、重力濾過部における厚みが変化した原因が、供給される固形物量が変化したことによるものか、脱水状態が変化したことによるものか判別ができず、脱水ケーキの含水率の予測は難しい。
【0005】
特許文献2には、重力濾過部の汚泥厚みの他に濾布速度や給泥量などを考慮し、脱水処理条件(給泥量、薬注量、濾布速度)を制御することが記載されている。この方法でも、特許文献1と同様に、重力濾過部での脱水状態しか測定していない。重力濾過部を通過した汚泥は、圧搾部で圧搾されてから脱水ケーキとして排出されるため、重力濾過部での脱水状態を測定するだけでは、脱水ケーキ含水率を検出することはできない。また、引用文献2では、高精度の薬注制御装置で薬注を適切に行うことによって重力濾過部の懸濁固形物(懸濁固形物)濃度をほぼ一定にできるとして一定値で扱っており、汚泥の懸濁固形物濃度は実際には測定していない。薬注点よりも手前のスラリー状態における懸濁固形物濃度を測定することで、供給される固形物量を正確に把握する必要がある。
【0006】
特許文献3には、消化汚泥の粗浮遊物、正味有機分、粘質物量、無薬注遠心含水率、及び懸濁固形物コロイド当量値を測定し、これらに基づいて脱水ケーキの含水率を予測する方法が記載されている。
【0007】
特許文献4には、余剰汚泥の浮遊物質、正味有機分、粘質物量、無薬注遠心含水率、懸濁固形物コロイド当量値、上澄液コロイド当量値、及び無機凝集剤添加後の上澄液コロイド当量値を測定し、これらに基づいて脱水ケーキの含水率を予測する方法が記載されている。
【0008】
しかし、特許文献3,4の方法では、多数の項目について測定する必要があり、脱水ケーキの含水率を迅速に予測することはできない。
【0009】
特許文献5には、マイクロ波透過型水分計の発振器と検波器の間に測定対象物の脱水ケーキを通過させ、脱水ケーキに照射したマイクロ波の通過前後の減衰電圧を測定し、この照射したマイクロ波の減衰量を制御器に入力して、あらかじめマイクロ波減衰電圧とケーキ含水率の関係を検量線として制御器に入力してある検量線データと比較演算して脱水ケーキの含水率を算出することが記載されている。しかし、この方法では、脱水機からサンプリング装置で脱水ケーキを抜き取り、圧送ポンプでマイクロ波透過型水分計の測定用ダイスに圧入して計測データを収集するようにしており、高価な測定機器と、大掛りなサンプリング装置及びサンプル圧入装置が必要であり、設備コストが嵩む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭59-133996号公報
【特許文献2】特開平7-148595号公報
【特許文献3】特開2001-334297号公報
【特許文献4】特開2001-334299号公報
【特許文献5】特開2003-177105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一態様は、脱水ケーキの含水率を容易かつ精度よく予測することができるベルトプレス脱水機の脱水ケーキの含水率予測方法を提供することを課題とする。
【0012】
また、本発明の一態様は、このベルトプレス脱水機の脱水ケーキの含水率予測方法による予測結果に基づいて、ベルトプレス脱水機の運転条件を制御する汚泥の脱水処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の脱水ケーキ含水率の予測方法は、汚泥を脱水しているベルトプレス脱水機からの脱水ケーキの含水率を予測する方法であって、ベルトプレス脱水機への給泥量(m/h)、給泥の懸濁固形物濃度(重量%)、濾布ベルト速度(m/h)、脱水ケーキ厚(m)を測定し、これらの測定値と、脱水ケーキ幅(m)と、脱水ケーキ比重とを用い、下記式[1]に基づいて、含水率を予測するものである。
【0014】
脱水ケーキ含水率(重量%)=
[1-{給泥量(m/h)×懸濁固形物濃度(重量%÷100)}]/
[濾布ベルト速度(m/h)×脱水ケーキ幅(m)×脱水ケーキ厚(m)×脱水ケーキ比重]×100 …[1]
【0015】
本発明の一態様では、脱水ケーキの前記比重として、定期的に測定した実測値又は予め設定した所定値(例えば経験的に把握している値)を用いる。
【0016】
本発明の一態様では、汚泥は、ベルトプレス脱水機からの脱水ケーキの含水率が50~95重量%となるものである。
【0017】
本発明の汚泥の脱水処理方法は、本発明の脱水ケーキ含水率の予測方法によって予測される含水率値に基づいて、ベルトプレス脱水機への給泥量、汚泥への凝集剤の薬注量及び濾布ベルト速度、凝集槽の撹拌速度の少なくとも1つを制御するベルトプレス脱水機を用いる汚泥の脱水処理方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の脱水ケーキの含水率予測方法によると、ベルトプレス脱水機への給泥量、給泥の懸濁固形物濃度、濾布ベルト速度、脱水ケーキ厚、脱水ケーキ幅及び脱水ケーキ比重から脱水ケーキの含水率を精度よく予測することができる。
【0019】
本発明の汚泥の脱水処理方法によると、この含水率の予測結果に基づいて、ベルトプレス脱水機の運転条件、例えば汚泥の給泥量や、凝集剤の薬注量、濾布ベルト速度、凝集槽の撹拌速度等を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ベルトプレス脱水機を有する汚泥脱水装置の構成図である。
図2】含水率の経時変化を示すグラフである。
図3】実験測定結果を表すグラフである。
図4】実験測定結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明方法が適用される、ベルトプレス脱水機を有する汚泥脱水装置の一例を示す構成図(概略的な側面図)である。
【0022】
給泥ポンプ1及び原汚泥配管2により原汚泥が凝集槽3に導入される。この凝集槽3には薬注ポンプ4及び薬注配管5によって凝集剤が注入される。
【0023】
凝集槽3で凝集処理された凝集汚泥は、給泥配管6によりベルトプレス脱水機10の下側濾布ベルト11上の重力濾過部(重力脱水部)Aに供給される。この下側濾布ベルト11及び上側濾布ベルト12は、それぞれ駆動ローラ及び案内ローラに架け渡されており、駆動ローラがモータで回転されることによって無端回動している。
【0024】
重力濾過部Aで凝集汚泥が重力濾過されて重力脱水ケーキが生じる。この重力脱水ケーキは、濾布ベルト11,12で圧搾脱水され、脱水ケーキとして取り出される。
【0025】
この実施の形態では、原汚泥配管2に給泥量測定センサ21及び懸濁固形物濃度測定センサ22が設けられている。また、図示は省略するが、ベルトプレス脱水機10には、下側濾布ベルト11の速度測定センサと、脱水ケーキの厚み測定センサとが設けられている。
【0026】
これらのセンサの検出信号が制御装置20に入力され、演算が行われ、その結果に従って給泥ポンプ1、凝集槽3の撹拌機、薬注ポンプ4、濾布ベルト11の駆動用モータが制御される。
【0027】
なお、処理対象とする汚泥としては、余剰汚泥、凝集沈殿汚泥などが例示されるが、これらに限定されない。汚泥は、ベルトプレス脱水機10からの脱水ケーキの含水率が50~95量%となるものが好適である。脱水ケーキの含水率の下限は50%が好ましく、70%がより好ましく、78%が更に好ましい。脱水ケーキの含水率の上限は95%が好ましく、90%がより好ましく、82%が更に好ましい。
【0028】
給泥ポンプ1としては、汚泥を供給できるものであればよく、いずれのタイプのものであってもよい。
【0029】
給泥量測定センサ21としては、流量計などが用いられる。
【0030】
懸濁固形物濃度測定センサ22としては、汚泥濃度計などが用いられる。
【0031】
薬注ポンプ4から薬注される凝集剤は、汚泥と反応し、凝集フロックを形成するものである。前記凝集剤は、無機凝集剤、高分子凝集剤あるいはそれらの組み合わせが用いられる。無機凝集剤としては、特開2001-334299号公報および特開2001-334297号公報記載の無機凝集剤などを用いることができる。高分子凝集剤としては、特開2001-334299号公報および特開2001-334297号公報記載のポリマーなどを用いることができる。
【0032】
濾布ベルトの速度測定センサとしては、濾布ベルト駆動用モータの回転数により、濾布ベルト速度を測定するものが好適である。
【0033】
脱水機出口13の脱水ケーキ厚み測定センサとしては、ベルトプレス脱水機圧搾部の脱水機出口13または前記脱水機出口13の直前にレーザー式距離計または超音波式等の非接触型距離センサを設置し、脱水機から排出される脱水ケーキ厚みを測定するものなどを用いることができる。
【0034】
本発明では、上記の各センサによって給泥量(m/h)、懸濁固形物濃度(重量%)、濾布ベルト速度(m/h)、脱水ケーキ厚(m)を測定する。そして、これらの測定データと、脱水ケーキ幅(m)及び脱水ケーキ比重とを用い、下記の式[1]に基づいて脱水ケーキ含水率を予測する。
【0035】
脱水ケーキ含水率(重量%)=
[1-{給泥量(m/h)×懸濁固形物濃度(重量%÷100)}]/
[濾布ベルト速度(m/h)×脱水ケーキ幅(m)×脱水ケーキ厚(m)×脱水ケーキ比重]×100 …[1]
【0036】
この式[1]は、給泥配管6によってベルトプレス脱水機10の重力濾過部Aに供給される単位時間当りの汚泥中の固形分量Minと、単位時間当りにベルトプレス脱水機10から取り出される脱水ケーキの固形分量Moutとが等しいとする固形分物質収支から導かれる。
【0037】
単位時間当りにベルトプレス脱水機10に供給される汚泥中の固形分量Minは、
Min=単位時間当りの給泥量(m/h)×懸濁固形物濃度(重量%÷100) …[2]
として求められる。なお、懸濁固形物濃度(重量%÷100)は、給泥1重量部中の固形分の重量部である。
【0038】
単位時間当りにベルトプレス脱水機10から取り出される脱水ケーキの固形分量Moutは、脱水ケーキの含水率(すなわち脱水ケーキ1重量部中の水の重量部)をβとした場合、
Mout=濾布ベルト速度(m/h)×脱水ケーキ幅(m)×脱水ケーキ厚さ(m)×脱水ケーキ比重×(1-β) …[3]
として求められる。なお、(1-β)は脱水ケーキ1重量部中の固形分の重量部である。
【0039】
上記供給固形分量Minと取り出し固形分量Moutとを等しいとする物質収支式Min=Moutに[2]式及び[3]式を代入し、脱水ケーキ含水率について解くことより、前記[1]式が導かれる。
【0040】
[脱水ケーキの比重]
脱水ケーキの比重は、定期的に(例えば月に1回の頻度で)サンプルを採取して測定して得られる実測値や、予め設定した所定値(例えば1.0)を代入するものとする。予め設定した所定値としては、経験的に把握している値が好適である。なお、余剰汚泥や凝集沈殿汚泥の場合、脱水ケーキの比重は、通常1.0~2.0程度である。
【0041】
[懸濁固形物濃度]
汚泥の懸濁固形物濃度は、粒子径2mm以下の不溶解性物質の汚泥中の濃度である。
【0042】
本発明では、汚泥の懸濁固形物濃度は、0.3~6.0重量%程度が好ましい。懸濁固形物濃度が0.3重量%未満の場合、凝集・脱水処理しづらくなり好ましくない場合がある。一方、懸濁固形物濃度が6.0重量%超の場合、重力濾過部Aに汚泥が均一に広がらず脱水処理しづらくなり好ましくない場合がある。
【0043】
[給泥量]
給泥量は、凝集槽へ投入される汚泥の流量である。
【0044】
汚泥の給泥量は、0.1~400m/h程度が好ましい。給泥量が0.1m/h未満であると、脱水処理に供する給泥量が少なくなり好ましくない場合がある。一方、給泥量が400m/h超であると、凝集処理量が増えることで脱水処理しづらくなり好ましくない場合がある。
【0045】
脱水機の固形物処理量は、給泥量と懸濁固形物濃度の積で求めることができる(給泥量×懸濁固形物濃度=固形物処理量)。濾布ベルト幅1m×1時間当たりの固形物処理量は、20~300kgDS/m・h程度が好ましい。固形物処理量が20kgDS/m・h未満であると、脱水処理に供する給泥量が少なくなり好ましくない場合がある。一方、固形物処理量が300kgDS/m・h超であると、凝集処理量が増えることで脱水処理しづらくなり好ましくない場合がある。
【0046】
[濾布ベルト速度]
濾布ベルト速度は、ベルトプレス脱水機に用いられている濾布ベルトの速度である。
【0047】
本発明では、濾布ベルト速度は、12~720m/h程度が好ましい。濾布ベルト速度が12m/h未満であると、装置への負荷が大きくなり脱水処理が困難になる場合がある。一方、濾布ベルト速度が720m/h超であると、十分な圧搾時間を確保できず良好な脱水効果を得られない場合がある。
【0048】
[脱水ケーキ幅]
脱水ケーキ幅は、ベルトプレス脱水機に用いられている濾布ベルトの幅のうち、ここでは実際に汚泥の脱水処理に使用されている幅である。
【0049】
本発明では、脱水ケーキ幅は、0.3~4m程度が好ましい。脱水ケーキ幅が0.3m未満であると、脱水処理量が少なくなり好ましくない場合がある。一方、脱水ケーキ幅が4m超であると、装置に負荷がかかることでケーキを脱水しづらくなり好ましくない場合がある。
【0050】
[脱水ケーキ厚さ]
脱水ケーキ厚さは、ベルトプレス脱水機によって生成される脱水ケーキの厚みである。
【0051】
本発明では、脱水ケーキ厚さは、0.001~0.02mが好ましい。脱水ケーキ厚さが0.001m未満であると、脱水ケーキの厚みが少なくなることでケーキを脱水しづらくなり好ましくない場合がある。一方、脱水ケーキ厚さが0.02m超であると、脱水ケーキの厚みが大きくなることでケーキを脱水しづらくなり好ましくない場合がある。
【0052】
本発明によると、汚泥の状況(給泥量及び懸濁固形物濃度)、ベルトプレス脱水機の運転状況(濾布ベルト速度)、汚泥の脱水状況(脱水ケーキ厚み)を測定し、脱水ケーキ含水率の予測が可能である。そして、この予測結果に基づいて、給泥量、凝集剤の薬注量、濾布ベルト速度、凝集槽の撹拌速度を制御することで、ベルトプレス脱水機の脱水処理の最適化が期待できる。
【0053】
本発明方法ではリアルタイムに含水率を予測できるため、含水率悪化をいち早く察知することが可能である。そのため、脱水ケーキ含水率(予測値)が高くなった場合には、給泥量を減少させ、凝集剤の薬注量を多くし、濾布ベルト速度を低下させるように制御することにより、含水率の悪化を防ぐことができる。逆に、含水率(予測値)が十分に低い場合には、給泥量を増加させ、凝集剤の薬注量を減少させ、濾布ベルト速度を増加させるよう制御することにより、処理量の増加や薬注量の削減を図ることができる。
【0054】
脱水ケーキ含水率(予測値)の変化に基づいて制御する対象は、給泥量、凝集剤の薬注量及び濾布ベルト速度、凝集槽の撹拌速度の4種類に限定されず、4種類のうち1種類でもよいし、いずれか2または3種類でもよい。
【実施例0055】
[実施例]
以下に、本発明による含水率予測方法の実施例を示す。
【0056】
生物処理工程からの凝集汚泥を図1の汚泥脱水装置によって脱水処理し、ベルトプレス脱水機10の脱水ケーキの含水率を前記[1]式に基づいて予測した。
【0057】
主な条件は以下の通りである。
【0058】
原汚泥の懸濁固形物濃度の平均値:約2.5重量%
原汚泥の給泥量の平均値:約11m/h
給泥量測定センサ21:電磁流量計
懸濁固形物濃度測定センサ22:JFEアドバンテック(株)社製汚泥濃度計
ベルトプレス脱水機10の脱水ケーキ幅:2.0m
濾布ベルト速度:72~108m/h
重力濾過部Aの長さ:約3m
脱水ケーキの厚さ測定装置:レーザー式距離計((株)キーエンス社製IL-300)
脱水ケーキ比重:設定値1.0
【0059】
上記条件で汚泥を脱水処理し、1分間隔で脱水ケーキの含水率の予測を行なった結果(含水率予測値の経時変化)を図2に示す。また、約30分に1回程度の頻度で脱水ケーキを手分析して含水率を測定した結果を図2に併せて示す。
【0060】
また、含水率を実測した時点における含水率予測値と含水率実測値との関係を図3に示す。
【0061】
[考察]
図2、3の通り、予測値と実測値とがほぼ一致し、予測値の精度が高いことが認められた。
【0062】
本実施例においては必要な情報をセンサで収集することにより、脱水ケーキの含水率を予測することが可能である。これに対して、脱水ケーキを採取して手分析で含水率を測定する手法では、人の手で採取したタイミングの含水率しか把握できないことに加え、脱水ケーキを採取してから結果が得られるまでに短くとも30分は要するため、含水率悪化を見逃す恐れがある。
【0063】
[参考例]
上記実施例の運転を行っているときに、重力濾過部Aの汚泥厚みを測定した。上記の含水率実測時点での重力濾過部の汚泥厚みと含水率実測値との関係を図4に示す。
【0064】
図4の通り、重力濾過部の汚泥厚みと脱水ケーキ含水率との間には相関関係は認められなかった。従って、重力濾過部の汚泥厚みからは脱水ケーキの含水率を予測することはできないことが認められた。
【符号の説明】
【0065】
1 給泥ポンプ
3 凝集槽
10 ベルトプレス脱水機
11 下側濾布ベルト
12 上側濾布ベルト
20 制御装置
21 給泥量測定センサ
22 懸濁固形物濃度測定センサ
A 重力濾過部
図1
図2
図3
図4