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特開2024-180043学習済予測モデル生成装置、停波予測装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180043
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】学習済予測モデル生成装置、停波予測装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/391 20150101AFI20241219BHJP
   H04W 16/18 20090101ALI20241219BHJP
   H04W 24/04 20090101ALI20241219BHJP
【FI】
H04B17/391
H04W16/18
H04W24/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099465
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100121119
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】日浦 人誌
(72)【発明者】
【氏名】笹原 樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽一
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA01
5K067AA02
5K067HH22
5K067HH23
(57)【要約】
【課題】降雨減衰による無線回線の障害を予測する。
【解決手段】学習済予測モデル生成装置1の降雨情報取得部10は、過去の回線障害データから、障害が発生した回線情報毎に障害期間を取得し、回線経路及び複数の計測地点を特定し、降雨情報から計測地点毎の過去の降雨情報を取得する。降雨減衰量算出部11は、障害期間及び障害期間以外の期間のそれぞれについて、計測地点毎の過去の降雨情報に含まれる降水強度に基づいて、回線経路の降雨減衰量を算出し、障害期間については障害データに「1」を設定し、障害期間以外の期間については障害データに「0」を設定する。予測モデル生成部12は、回線経路の障害発生時の降雨減衰量及び障害データ(1)を用いると共に、回線経路の障害非発生時の降雨減衰量及び障害データ(0)を用いて、降雨減衰量を入力データとし、停波確率を出力データとするモデルにつき、入力データと出力データとの間の関係を学習する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
降雨減衰による無線回線の障害の発生を予測するためのモデルを生成する学習済予測モデル生成装置において、
無線回線の回線情報及び障害期間を含む過去の回線障害データが格納されたデータベースから、障害が発生した回線情報及び障害期間を取得し、前記回線情報から無線回線の送信点と受信点との間の回線経路を特定し、
降雨情報が格納されたデータベースから、前記回線経路の過去の降雨情報を取得する降雨情報取得部と、
前記降雨情報取得部により取得された前記回線経路の過去の降雨情報に基づいて、前記回線経路における前記障害期間の障害発生時の降雨減衰量を算出し、前記障害期間の障害データに対して障害が発生したことを示すデータを設定すると共に、前記回線経路の過去の降雨情報に基づいて、前記回線経路における障害が発生していない期間の障害非発生時の降雨減衰量を算出し、前記障害が発生していない期間の障害データに対して障害が発生していないことを示すデータを設定する降雨減衰量算出部と、
前記降雨減衰量算出部により算出された前記障害発生時の降雨減衰量及び設定された前記障害が発生したことを示す障害データ、並びに前記障害非発生時の降雨減衰量及び設定された前記障害が発生していないことを示す障害データを用いて、前記降雨減衰量と、前記無線回線の停波が発生する確率を示す停波確率との間の関係を学習し、学習済予測モデルを生成する予測モデル生成部と、
を備えたことを特徴とする学習済予測モデル生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の学習済予測モデル生成装置において、
前記降雨情報取得部は、
前記過去の回線障害データが格納されたデータベースから前記回線情報及び前記障害期間を取得し、前記回線情報から前記回線経路を特定し、前記回線経路から複数の計測地点を特定し、前記降雨情報が格納されたデータベースから、前記複数の計測地点のそれぞれにおける過去の降雨情報を取得し、
前記降雨減衰量算出部は、
前記降雨情報取得部により取得された前記複数の計測地点のそれぞれにおける過去の降雨情報に基づいて、前記複数の計測地点のそれぞれにおける前記障害発生時の降雨減衰量及び前記障害非発生時の降雨減衰量を算出し、
前記複数の計測地点のそれぞれにおける前記障害発生時の降雨減衰量に基づいて、前記回線経路における前記障害発生時の降雨減衰量を算出し、前記障害期間の障害データに対して障害が発生したことを示すデータを設定すると共に、
前記複数の計測地点のそれぞれにおける前記障害非発生時の降雨減衰量に基づいて、前記回線経路における前記障害非発生時の降雨減衰量を算出し、前記障害が発生していない期間の障害データに対して障害が発生していないことを示すデータを設定する、ことを特徴とする学習済予測モデル生成装置。
【請求項3】
降雨減衰による無線回線の停波を予測する停波予測装置において、
ユーザにより指定された前記無線回線の回線情報から、当該無線回線の送信点と受信点との間の回線経路を特定し、降雨情報が格納されたデータベースから、前記回線経路の降雨情報を取得する降雨情報取得部と、
前記降雨情報取得部により取得された前記回線経路の降雨情報に基づいて、前記回線経路の降雨減衰量を算出する降雨減衰量算出部と、
請求項1に記載の学習済予測モデル生成装置により生成された前記学習済予測モデルを用いて、前記降雨減衰量算出部により算出された前記回線経路の降雨減衰量から、前記無線回線の停波が発生する確率を示す停波確率を予測する予測制御部と、
を備えたことを特徴とする停波予測装置。
【請求項4】
請求項3に記載の停波予測装置において、
前記降雨情報取得部は、
前記無線回線の回線情報から前記回線経路を特定し、前記降雨情報が格納されたデータベースから、前記回線経路の降雨情報の予報値を取得し、
前記降雨減衰量算出部は、
前記降雨情報取得部により取得された前記回線経路の降雨情報の予報値に基づいて、前記回線経路の降雨減衰量を算出し、
前記予測制御部は、
前記学習済予測モデルを用いて、前記降雨減衰量算出部により算出された前記回線経路の降雨減衰量から、前記回線経路の降雨情報の予報値に対応する前記停波確率を予測する、ことを特徴とする停波予測装置。
【請求項5】
降雨減衰による無線回線の停波を予測する停波予測装置において、
ユーザにより指定された前記無線回線の回線情報から、当該無線回線の送信点と受信点との間の回線経路を特定し、前記回線経路から複数の計測地点を特定し、降雨情報が格納されたデータベースから、前記複数の計測地点のそれぞれにおける降雨情報を取得する降雨情報取得部と、
前記降雨情報取得部により取得された前記複数の計測地点のそれぞれにおける降雨情報に基づいて、前記複数の計測地点のそれぞれにおける降雨減衰量を算出し、
前記複数の計測地点のそれぞれにおける降雨減衰量に基づいて、前記回線経路の降雨減衰量を算出する降雨減衰量算出部と、
請求項2に記載の学習済予測モデル生成装置により生成された前記学習済予測モデルを用いて、前記降雨減衰量算出部により算出された前記回線経路の降雨減衰量から、前記無線回線の停波が発生する確率を示す停波確率を予測する予測制御部と、
を備えたことを特徴とする停波予測装置。
【請求項6】
請求項3から5までのいずれか一項に記載の停波予測装置において、
さらに、前記予測制御部により予測された前記停波確率が予め設定された閾値を超えている場合、前記無線回線の障害が発生することを示す情報を出力する連絡部、を備えたことを特徴とする停波予測装置。
【請求項7】
降雨減衰による無線回線の障害の発生を予測するためのモデルを生成する学習済予測モデル生成装置を構成するコンピュータを、
無線回線の回線情報及び障害期間を含む過去の回線障害データが格納されたデータベースから、障害が発生した回線情報及び障害期間を取得し、前記回線情報から無線回線の送信点と受信点との間の回線経路を特定し、
降雨情報が格納されたデータベースから、前記回線経路の過去の降雨情報を取得する降雨情報取得部、
前記降雨情報取得部により取得された前記回線経路の過去の降雨情報に基づいて、前記回線経路における前記障害期間の障害発生時の降雨減衰量を算出し、前記障害期間の障害データに対して障害が発生したことを示すデータを設定すると共に、前記回線経路の過去の降雨情報に基づいて、前記回線経路における障害が発生していない期間の障害非発生時の降雨減衰量を算出し、前記障害が発生していない期間の障害データに対して障害が発生していないことを示すデータを設定する降雨減衰量算出部、及び、
前記降雨減衰量算出部により算出された前記障害発生時の降雨減衰量及び設定された前記障害が発生したことを示す障害データ、並びに前記障害非発生時の降雨減衰量及び設定された前記障害が発生していないことを示す障害データを用いて、前記降雨減衰量と、前記無線回線の停波が発生する確率を示す停波確率との間の関係を学習し、学習済予測モデルを生成する予測モデル生成部として機能させるためのプログラム。
【請求項8】
降雨減衰による無線回線の停波を予測する停波予測装置を構成するコンピュータを、
ユーザにより指定された前記無線回線の回線情報から、当該無線回線の送信点と受信点との間の回線経路を特定し、降雨情報が格納されたデータベースから、前記回線経路の降雨情報を取得する降雨情報取得部、
前記降雨情報取得部により取得された前記回線経路の降雨情報に基づいて、前記回線経路の降雨減衰量を算出する降雨減衰量算出部、及び、
請求項1に記載の学習済予測モデル生成装置により生成された前記学習済予測モデルを用いて、前記降雨減衰量算出部により算出された前記回線経路の降雨減衰量から、前記無線回線の停波が発生する確率を示す停波確率を予測する予測制御部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信の技術分野に関するものであり、特に、降雨減衰による無線回線の停波を予測するためのモデルを生成する学習済予測モデル生成装置、モデルを用いて降雨減衰による無線回線の停波を予測する停波予測装置、及びこれらのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、無線通信の中継回線において、降雨減衰、フェージング等により伝送条件が悪化した場合、無線による通信が困難となる。降雨減衰に関しては、周波数が高いほど減衰量が増えるため、地上デジタル放送では、放送波よりも周波数の高い中継局間専用の無線の方が大きな影響が見込まれる。このため、降雨減衰、フェージング等により受信状況が悪化した場合であっても、継続してコンテンツを伝送できるような補償技術が求められる。
【0003】
このような補償技術の例として、通信が困難となった場合に、例えばインターネット網を利用して同一内容のコンテンツを受信することで、継続してコンテンツを視聴可能な手法が提案されている(例えば特許文献1,2,3,4を参照)。
【0004】
これらの補償技術においては、無線回線が完全に受信不可能となってから有線通信によりコンテンツを要求するのではなく、無線回線の受信状況の悪化を事前に予測してコンテンツを要求することにより、安定した伝送を継続することが可能となる。
【0005】
このような安定した伝送を継続する技術の例として、無線回線の受信状況の悪化を事前に予測し、他の経路により同一内容のコンテンツを要求する手法が提案されている(例えば特許文献5を参照)。
【0006】
しかしながら、この特許文献5には、無線回線の受信状況の悪化を事前に予測する装置を用いる点について記載されているが、具体的な予測方法について言及していない。
【0007】
また、移動体が地上放送を受信する場合において、受信が困難な場所に移動体が移動するときの補償については、移動体の位置(緯度及び経度)に関する連続情報から将来の位置を予測し、当該位置に応じて事前にコンテンツを要求する手法が提案されている(例えば特許文献6を参照)。
【0008】
このような移動先を予測する手法は、移動体が放送波を受信する場合の補償について有効であるが、地上放送での固定局間における降雨減衰またはフェージングのような受信状況の悪化を予測する場合に適用することはできない。
【0009】
また、無線回線の受信状況の悪化を事前に予測する手法ではないが、放送波の受信C/Nを計測し、受信C/Nの値に対して受信不可能となる値につき一定のマージンを取ることにより、ある程度事前にコンテンツを要求することを可能とする手法が提案されている(例えば特許文献7を参照)。この手法によれば、適切なマージンを取った閾値を用いることにより、受信状況の悪化を予測することと類似した効果を得ることができる。
【0010】
しかしながら、例えば降雨減衰の場合、地域及び季節によっては突然雨量が増すことがあり、降雨減衰前にコンテンツを要求することができない場合がある。また、マージンを取った閾値として悲観的に値を設定すると、常に有線通信によりコンテンツを要求し続けてしまう等、それぞれの受信状況に合わせた閾値を設定することは困難である。
【0011】
このように、前述の特許文献1~7等の従来技術においては、降雨減衰またはフェージングのような無線回線の時系列的な受信状況の悪化を予測する仕組みについて提案されていない。
【0012】
また、有線通信による補償に限らない無線回線の時系列変化の予測として、例えば衛星放送の降雨減衰を予測する手法が提案されている(例えば特許文献8を参照)。この手法は、観測地点に設けられた雨量計の10分間の計測値の記録、または例えば気象庁の観測地点の10分間の雨量データから、その観測地点における今後の1分間の雨量値を確率的に予測するものである。
【0013】
また、この特許文献8では、降雨減衰により受信状況が悪化する地域については、例えばフェーズドアレイアンテナを利用して電力を増強することにより、受信状況を改善することを言及している。
【0014】
しかしながら、この手法では、地上デジタル放送の降雨減衰またはフェージングについては対応することができない。
【0015】
一方で、気象予測及び気象予報については多くの手法が提案されている。例えば、放送衛星または通信衛星の受信強度を測定し、受信強度から雲の量の気象情報を測定し、その測定結果に基づいて、気象予測を行う手法が提案されている(例えば特許文献9を参照)。
【0016】
しかしながら、この手法は気象を予測することが目的であり、無線回線の受信状況の悪化を予測することを目的としていない。このため、直接的な無線回線の降雨減衰またはフェージングによる受信状況の時系列変化の予測は難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2004-40380号公報
【特許文献2】特開2014-220569号公報
【特許文献3】特開2017-199956号公報
【特許文献4】国際公開第2015/048569号
【特許文献5】特開2012-138649号公報
【特許文献6】特開2007-259049号公報
【特許文献7】特開2003-134064号公報
【特許文献8】特開2006-246375号公報
【特許文献9】特開2005-318398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前述のとおり、無線回線の受信状況の悪化に対し、事前に通信による補償または別経路による伝送制御を実施し、安定的な伝送の継続を補償するためには、無線回線の受信状況を予測することが必要である。
【0019】
しかしながら、従来の手法は、無線回線における受信状況の時系列変化の予測に対応しておらず、また、例えば前述の衛星放送の降雨減衰の時系列変化を予測する手法であっても、送信装置への適用が前提であり、各受信装置に実装して受信状況の変化を予測することは難しい。さらに、従来の手法では、無線回線の時系列的な受信状況の悪化を予測する仕組みについて提案されていない。
【0020】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、降雨減衰による無線回線の障害を予測可能な学習済予測モデル生成装置、停波予測装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記課題を解決するために、請求項1の学習済予測モデル生成装置は、降雨減衰による無線回線の障害の発生を予測するためのモデルを生成する学習済予測モデル生成装置において、無線回線の回線情報及び障害期間を含む過去の回線障害データが格納されたデータベースから、障害が発生した回線情報及び障害期間を取得し、前記回線情報から無線回線の送信点と受信点との間の回線経路を特定し、降雨情報が格納されたデータベースから、前記回線経路の過去の降雨情報を取得する降雨情報取得部と、前記降雨情報取得部により取得された前記回線経路の過去の降雨情報に基づいて、前記回線経路における前記障害期間の障害発生時の降雨減衰量を算出し、前記障害期間の障害データに対して障害が発生したことを示すデータを設定すると共に、前記回線経路の過去の降雨情報に基づいて、前記回線経路における障害が発生していない期間の障害非発生時の降雨減衰量を算出し、前記障害が発生していない期間の障害データに対して障害が発生していないことを示すデータを設定する降雨減衰量算出部と、前記降雨減衰量算出部により算出された前記障害発生時の降雨減衰量及び設定された前記障害が発生したことを示す障害データ、並びに前記障害非発生時の降雨減衰量及び設定された前記障害が発生していないことを示す障害データを用いて、前記降雨減衰量と、前記無線回線の停波が発生する確率を示す停波確率との間の関係を学習し、学習済予測モデルを生成する予測モデル生成部と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
また、請求項2の学習済予測モデル生成装置は、請求項1に記載の学習済予測モデル生成装置において、前記降雨情報取得部が、前記過去の回線障害データが格納されたデータベースから前記回線情報及び前記障害期間を取得し、前記回線情報から前記回線経路を特定し、前記回線経路から複数の計測地点を特定し、前記降雨情報が格納されたデータベースから、前記複数の計測地点のそれぞれにおける過去の降雨情報を取得し、前記降雨減衰量算出部が、前記降雨情報取得部により取得された前記複数の計測地点のそれぞれにおける過去の降雨情報に基づいて、前記複数の計測地点のそれぞれにおける前記障害発生時の降雨減衰量及び前記障害非発生時の降雨減衰量を算出し、前記複数の計測地点のそれぞれにおける前記障害発生時の降雨減衰量に基づいて、前記回線経路における前記障害発生時の降雨減衰量を算出し、前記障害期間の障害データに対して障害が発生したことを示すデータを設定すると共に、前記複数の計測地点のそれぞれにおける前記障害非発生時の降雨減衰量に基づいて、前記回線経路における前記障害非発生時の降雨減衰量を算出し、前記障害が発生していない期間の障害データに対して障害が発生していないことを示すデータを設定する、ことを特徴とする。
【0023】
さらに、請求項3の停波予測装置は、降雨減衰による無線回線の停波を予測する停波予測装置において、ユーザにより指定された前記無線回線の回線情報から、当該無線回線の送信点と受信点との間の回線経路を特定し、降雨情報が格納されたデータベースから、前記回線経路の降雨情報を取得する降雨情報取得部と、前記降雨情報取得部により取得された前記回線経路の降雨情報に基づいて、前記回線経路の降雨減衰量を算出する降雨減衰量算出部と、請求項1に記載の学習済予測モデル生成装置により生成された前記学習済予測モデルを用いて、前記降雨減衰量算出部により算出された前記回線経路の降雨減衰量から、前記無線回線の停波が発生する確率を示す停波確率を予測する予測制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0024】
また、請求項4の停波予測装置は、請求項3に記載の停波予測装置において、前記降雨情報取得部が、前記無線回線の回線情報から前記回線経路を特定し、前記降雨情報が格納されたデータベースから、前記回線経路の降雨情報の予報値を取得し、前記降雨減衰量算出部が、前記降雨情報取得部により取得された前記回線経路の降雨情報の予報値に基づいて、前記回線経路の降雨減衰量を算出し、前記予測制御部が、前記学習済予測モデルを用いて、前記降雨減衰量算出部により算出された前記回線経路の降雨減衰量から、前記回線経路の降雨情報の予報値に対応する前記停波確率を予測する、ことを特徴とする。
【0025】
また、請求項5の停波予測装置は、降雨減衰による無線回線の停波を予測する停波予測装置において、ユーザにより指定された前記無線回線の回線情報から、当該無線回線の送信点と受信点との間の回線経路を特定し、前記回線経路から複数の計測地点を特定し、降雨情報が格納されたデータベースから、前記複数の計測地点のそれぞれにおける降雨情報を取得する降雨情報取得部と、前記降雨情報取得部により取得された前記複数の計測地点のそれぞれにおける降雨情報に基づいて、前記複数の計測地点のそれぞれにおける降雨減衰量を算出し、前記複数の計測地点のそれぞれにおける降雨減衰量に基づいて、前記回線経路の降雨減衰量を算出する降雨減衰量算出部と、請求項2に記載の学習済予測モデル生成装置により生成された前記学習済予測モデルを用いて、前記降雨減衰量算出部により算出された前記回線経路の降雨減衰量から、前記無線回線の停波が発生する確率を示す停波確率を予測する予測制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0026】
また、請求項6の停波予測装置は、請求項3から5までのいずれか一項に記載の停波予測装置において、さらに、前記予測制御部により予測された前記停波確率が予め設定された閾値を超えている場合、前記無線回線の障害が発生することを示す情報を出力する連絡部、を備えたことを特徴とする。
【0027】
さらに、請求項7のプログラムは、降雨減衰による無線回線の障害の発生を予測するためのモデルを生成する学習済予測モデル生成装置を構成するコンピュータを、無線回線の回線情報及び障害期間を含む過去の回線障害データが格納されたデータベースから、障害が発生した回線情報及び障害期間を取得し、前記回線情報から無線回線の送信点と受信点との間の回線経路を特定し、降雨情報が格納されたデータベースから、前記回線経路の過去の降雨情報を取得する降雨情報取得部、前記降雨情報取得部により取得された前記回線経路の過去の降雨情報に基づいて、前記回線経路における前記障害期間の障害発生時の降雨減衰量を算出し、前記障害期間の障害データに対して障害が発生したことを示すデータを設定すると共に、前記回線経路の過去の降雨情報に基づいて、前記回線経路における障害が発生していない期間の障害非発生時の降雨減衰量を算出し、前記障害が発生していない期間の障害データに対して障害が発生していないことを示すデータを設定する降雨減衰量算出部、及び、前記降雨減衰量算出部により算出された前記障害発生時の降雨減衰量及び設定された前記障害が発生したことを示す障害データ、並びに前記障害非発生時の降雨減衰量及び設定された前記障害が発生していないことを示す障害データを用いて、前記降雨減衰量と、前記無線回線の停波が発生する確率を示す停波確率との間の関係を学習し、学習済予測モデルを生成する予測モデル生成部として機能させることを特徴とする。
【0028】
また、請求項8のプログラムは、降雨減衰による無線回線の停波を予測する停波予測装置を構成するコンピュータを、ユーザにより指定された前記無線回線の回線情報から、当該無線回線の送信点と受信点との間の回線経路を特定し、降雨情報が格納されたデータベースから、前記回線経路の降雨情報を取得する降雨情報取得部、前記降雨情報取得部により取得された前記回線経路の降雨情報に基づいて、前記回線経路の降雨減衰量を算出する降雨減衰量算出部、及び、請求項1に記載の学習済予測モデル生成装置により生成された前記学習済予測モデルを用いて、前記降雨減衰量算出部により算出された前記回線経路の降雨減衰量から、前記無線回線の停波が発生する確率を示す停波確率を予測する予測制御部として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明によれば、降雨減衰による無線回線の障害を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態による学習済予測モデル生成装置の構成例を示すブロック図である。
図2】学習済予測モデル生成装置の処理例を示すフローチャートである。
図3】降雨減衰量算出部の処理例(ステップS206,S207)を示すフローチャートである。
図4】降雨減衰量の算出例(ステップS301~S303)を説明する図である。
図5】予測モデル生成部の学習処理例を説明する図である。
図6】記憶部に格納されたデータの構成例を示す図である。
図7】本発明の実施形態による停波予測装置の構成例を示すブロック図である。
図8】停波予測装置の処理例を示すフローチャートである。
図9】予測制御部の予測処理例を説明する図である。
図10】(1)は、本発明の実施形態における学習データの例を示す図である。(2)は、本発明の他の実施形態における学習データの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明は、過去の降雨情報から降雨減衰量を算出し、過去の回線障害データから二値の障害データを生成し、降雨減衰量及び二値の障害データを用いて、降雨減衰量と無線回線の停波確率(無線回線が断になる確率)との間の関係を学習し、学習済予測モデルを生成することを特徴とする。
【0032】
また、本発明は、降雨情報から降雨減衰量を算出し、学習済予測モデルを用いて、降雨減衰量から無線回線の停波確率を予測することを特徴とする。
【0033】
これにより、例えば降雨情報に含まれる将来の予報値から、将来の降雨減衰による無線回線の停波確率を得ることができるため、降雨減衰による無線回線の障害を予測することができる。そして、この予測結果を用いることで、事前に通信による補償または別経路による伝送制御を実施することで、安定した伝送を継続することができる。
【0034】
〔学習済予測モデル生成装置〕
まず、本発明の実施形態による学習済予測モデル生成装置について説明する。図1は、本発明の実施形態による学習済予測モデル生成装置の構成例を示すブロック図であり、図2は、学習済予測モデル生成装置の処理例を示すフローチャートである。
【0035】
この学習済予測モデル生成装置1は、降雨情報取得部10、降雨減衰量算出部11、予測モデル生成部12及び記憶部13を備えている。
【0036】
学習済予測モデル生成装置1は、過去の回線障害データから障害の発生した回線情報及び障害期間を取得し、障害の発生した回線情報毎に、過去の降雨情報から降雨減衰量を算出し、障害期間について障害データを1に設定し、障害期間以外の期間について障害データを0に設定し、降雨減衰量及び二値の障害データ(1/0)を用いて、障害が発生した回線情報に適用可能な個別の学習済予測モデルを生成する。
【0037】
これにより、障害の発生した回線情報毎に、停波予測に使用可能な学習済予測モデルが生成される。
【0038】
また、この学習済予測モデル生成装置1は、障害の発生した回線情報毎の降雨減衰量及び二値の障害データ(1/0)を用いて、全ての回線情報に適用可能な共通の一般化学習済予測モデルを生成する。
【0039】
これにより、全ての回線情報について停波予測に使用可能な一般化学習済予測モデルが生成され、この一般化学習済予測モデルは、特に、過去の回線障害データに含まれていない回線情報、すなわち過去に障害が発生していない回線情報について、停波予測のために用いることができる。
【0040】
<降雨情報取得部10>
降雨情報取得部10は、過去の回線障害データが格納されたデータベース(図示せず)から、過去の回線障害データを入力し(ステップS201)、過去の回線障害データから、障害が発生した回線情報毎に障害期間を取得する(ステップS202)。これにより、障害が発生した全ての回線情報のそれぞれについて、過去の障害期間が得られる。
【0041】
回線障害データは、回線情報及び当該回線情報についての障害期間等のデータから構成される。回線情報には、送信局情報(局名、送信点の緯度及び経度、海抜高等)、受信局情報(局名、送信点の緯度及び経度、海抜高等)、メディア、送信チャンネル(送信周波数)等の情報が含まれる。障害期間には、障害が発生した時刻及び障害から回復した時刻が含まれる。
【0042】
尚、回線情報には、送信局及び受信局が固定局である場合の情報だけでなく、送信局及び/または受信局が移動局である場合の情報も含まれる。また、送信局及び受信局が固定局である場合、送信局は受信局に対して一義的に特定されるため、回線情報は、送信局情報を含んでいなくてもよい。
【0043】
降雨情報取得部10は、障害が発生した全ての回線情報のうち、学習済予測モデルを生成する対象の1つの回線情報を選択する(ステップS203)。
【0044】
降雨情報取得部10は、選択された回線情報から回線経路を特定し、回線経路から複数の計測地点を特定する(ステップS204)。
【0045】
具体的には、降雨情報取得部10は、回線情報に含まれる送信局情報における緯度及び経度により定まる送信点と、受信局情報における緯度及び経度により定まる受信点との間の経路を、回線経路として特定する。そして、降雨情報取得部10は、回線経路の送信点と受信点との間において、予め設定された距離間隔にて、一定距離間隔の計測地点を特定する。
【0046】
例えば後述する図4のグラフに示すように、回線経路の送信点をOとし、受信点をEとすると、降雨情報取得部10は、回線経路における送信点Oと受信点Eとの間で、例えば50m間隔の計測地点A,B,C,D,Eを特定する。
【0047】
降雨情報取得部10は、降雨情報が格納されたデータベース(図示せず)から、計測地点毎の過去の降雨情報を取得する(ステップS205)。例えば後述する図4の例では、計測地点Aの過去の降雨情報、計測地点Bの過去の降雨情報、計測地点Cの過去の降雨情報、計測地点Dの過去の降雨情報及び計測地点Eの過去の降雨情報が取得される。
【0048】
これにより、障害が発生した回線情報の回線経路について、計測地点毎に、障害期間の過去の降雨情報、及び障害期間以外の障害が発生していない期間における過去の降雨情報が得られる。障害期間以外の障害が発生していない期間としては、例えば障害期間前後の所定期間が用いられる。
【0049】
降雨情報取得部10は、ステップS203にて選択された回線情報、当該回線情報に対応するステップS202にて取得された障害期間、及びステップS205にて取得された計測地点毎の過去の降雨情報を降雨減衰量算出部11に出力する。
【0050】
降雨情報は、例えば気象庁が提供している高解像度降水ナウキャストのデータであり、所定時間毎に提供される所定サイズのエリア毎の降水強度等から構成され、過去の降水強度等、及び降水強度等の予報値(将来の降水強度等)が含まれる。
【0051】
この高解像度降水ナウキャストのデータは、2023年1月において最も高解像度かつ短時間で提供される降雨情報であり、5分毎に配信される。配信される1データには、取得時から1時間先までの、全国の所定サイズのエリア(250m角または1km角)を単位とした降水強度等が含まれる。尚、高解像度降水ナウキャストのデータには、瞬間的な降水強度、及び5分間積算降水量の2種類がある。降水強度は、5分間積算降水量から(例えば5分間積算降水量を12倍することで)算出することも可能である。
【0052】
降雨情報取得部10により、例えば高解像度降水ナウキャストのデータが格納されたデータベースから、計測地点毎の過去の降雨情報として、当該計測地点に対応するエリアの過去のデータが取得される。
【0053】
<降雨減衰量算出部11>
降雨減衰量算出部11は、降雨情報取得部10から回線情報、障害期間、及び計測地点毎の過去の降雨情報を入力する。前述のとおり、過去の降雨情報には、障害期間の過去の降雨情報、及び障害期間以外の期間の過去の降雨情報が含まれる。
【0054】
降雨減衰量算出部11は、障害期間の障害発生時における計測地点毎の過去の降雨情報に含まれる降水強度に基づいて、回線経路の障害発生時の降雨減衰量を算出すると共に、障害期間以外の期間の障害が発生していない障害非発生時における計測地点毎の過去の降雨情報に含まれる降水強度に基づいて、回線経路の障害非発生時の降雨減衰量を算出する(ステップS206)。
【0055】
降水強度に基づいて降雨減衰量を算出するためには、回線経路の距離、送信周波数及び偏波面等を考慮した予め設定された式(ITU-R勧告P.838-3にて規定された数式)が用いられる。
【0056】
これにより、例えば過去の障害期間における5分毎の降雨情報のそれぞれに対応して、回線経路の障害発生時の降雨減衰量が得られる。また、例えば過去の障害期間以外の期間における5分毎の降雨情報のそれぞれに対応して、回線経路の障害非発生時の降雨減衰量が得られる。
【0057】
降雨減衰量算出部11は、障害期間については障害データに対し、障害が発生したことを示す「1」を設定し、障害期間以外の期間については障害データに対し、障害が発生していないことを示す「0」を設定することで、回線経路の障害データ(1/0)を設定する(ステップS207)。
【0058】
これにより、回線経路の障害発生時の降雨減衰量に対応して、障害データ(1)が設定され、回線経路の障害非発生時の降雨減衰量に対応して、障害データ(0)が設定される。
【0059】
降雨減衰量算出部11は、回線情報、回線経路の障害発生時の降雨減衰量及びこれに対応する障害データ(1)、並びに回線経路の障害非発生時の降雨減衰量及びこれに対応する障害データ(0)を予測モデル生成部12に出力する。
【0060】
図3は、降雨減衰量算出部11の処理例(ステップS206,S207)を示すフローチャートであり、図4は、降雨減衰量の算出例(ステップS301~S303)を説明する図である。
【0061】
降雨減衰量算出部11は、降雨情報取得部10から回線情報、障害期間、及び計測地点毎の過去の降雨情報を入力する(ステップS301)。図4の例では、計測地点A,B,C,D,Eのそれぞれについての過去の降雨情報が入力される。過去の降雨情報には、障害期間の障害発生時における降雨情報、及び、障害期間以外の期間の障害非発生時における降雨情報が含まれる。
【0062】
降雨減衰量算出部11は、計測地点毎に、障害期間の障害発生時における過去の降雨情報に含まれる降水強度に基づいて、障害発生時の降雨減衰量を算出すると共に、障害期間以外の期間の障害非発生時における過去の降雨情報に含まれる降水強度に基づいて、障害非発生時の降雨減衰量を算出する(ステップS302)。
【0063】
降雨減衰量算出部11は、計測地点毎の障害発生時の降雨減衰量に基づいて、回線経路の障害発生時の降雨減衰量を算出すると共に、計測地点毎の障害非発生時の降雨減衰量に基づいて、回線経路の障害非発生時の降雨減衰量を算出する(ステップS303)。
【0064】
図4の例では、送信点Oから受信点Eまでの間の回線経路において、計測間隔を50mとし、送信点Oから計測地点AまでのO-A区間の降雨量が一定であったと仮定する。計測地点A(O-A区間)の障害発生時の降雨減衰量1.0dBが算出される。
【0065】
同様に、A-B区間、B-C区間、C-D区間及びD-E区間の降雨量も一定であったと仮定する。そして、計測地点B(A-B区間)の障害発生時の降雨減衰量1.3dB、計測地点C(B-C区間)の障害発生時の降雨減衰量2.0dBがそれぞれ算出される。また、計測地点D(C-D区間)の障害発生時の降雨減衰量0.5dB、計測地点E(D-E区間)の障害発生時の降雨減衰量1.3dBがそれぞれ算出される。これにより、計測地点A,B,C,D,Eのそれぞれについて、降水強度が降雨減衰量に変換される。
【0066】
そして、計測地点A,B,C,D,Eの降雨減衰量の総和が算出されることで、回線経路の障害発生時の降雨減衰量6.1dBが求められる。
【0067】
図3に戻って、降雨減衰量算出部11は、障害期間については障害データに「1」を設定し、障害期間以外の期間については障害データに「0」を設定する(ステップS304)。
【0068】
尚、降雨情報取得部10により取得される降雨情報が高解像度降水ナウキャストのデータである場合、当該データの配信は5分間隔であり、降雨減衰量算出部11により設定される障害データは例えば秒単位の間隔である。このため、降雨減衰量算出部11は、5分間隔の降雨情報から降雨減衰量を算出し、これらの降雨減衰量を補間することで、秒単位の降雨減衰量を求める。これにより、降雨減衰量と障害データとを1対1に対応付けることができる。
【0069】
降雨減衰量算出部11は、回線情報、回線経路の障害発生時の降雨減衰量及びこれに対応する障害データ(1)、並びに回線経路の障害非発生時の降雨減衰量及びこれに対応する障害データ(0)を予測モデル生成部12に出力する(ステップS305)。
【0070】
<予測モデル生成部12>
図1及び図2に戻って、予測モデル生成部12は、回線情報、回線経路の障害発生時の降雨減衰量及びこれに対応する障害データ(1)、並びに回線経路の障害非発生時の降雨減衰量及びこれに対応する障害データ(0)を入力する。
【0071】
予測モデル生成部12は、回線経路の障害発生時の降雨減衰量及びこれに対応する障害データ(1)を用いると共に、回線経路の障害非発生時の降雨減衰量及びこれに対応する障害データ(0)を用いて、降雨減衰量を入力データとし、停波確率を出力データとする個別のモデル及び共通のモデルにつき、入力データと出力データとの間の関係を学習する(ステップS208)。
【0072】
学習対象のモデルには、個別のモデルと共通のモデルがある。個別のモデルは、障害が発生した回線情報に適用可能なモデルであり、共通のモデルは、障害の発生の有無を問わない全ての回線情報に適用可能なモデルである。この共通のモデルは、障害が発生していない回線情報の停波予測のために用いられる。
【0073】
予測モデル生成部12は、当該回線情報のモデルの学習により学習済予測モデルを生成し、当該回線情報の学習済予測モデル(のパラメータ)を記憶部13に格納する(ステップS209)。
【0074】
図5は、予測モデル生成部12の学習処理例を説明する図である。図5に示すように、回線経路の障害発生時の降雨減衰量がモデル14に入力され、モデル14から、入力された回線経路の障害発生時の降雨減衰量に対応する停波確率が出力される。
【0075】
そして、更新部15により、回線経路の障害発生時の降雨減衰量に対応する障害データ(1)とモデル14から出力される停波確率とが一致するように、モデル14のパラメータが更新される。
【0076】
また、回線経路の障害非発生時の降雨減衰量がモデル14に入力され、モデル14から、入力された回線経路の障害非発生時の降雨減衰量に対応する停波確率が出力される。
【0077】
そして、更新部15により、回線経路の障害非発生時の降雨減衰量に対応する障害データ(0)とモデル14から出力された停波確率とが一致するように、モデル14のパラメータが更新される。このようにして、回線情報の学習済予測モデル、及び後述するステップS211において一般化学習済予測モデルが生成される。
【0078】
図1及び図2に戻って、学習済予測モデル生成装置1は、ステップS203にて選択された(障害が発生した)全ての回線情報について処理が完了したか否かを判定する(ステップS210)。学習済予測モデル生成装置1は、ステップS210において、全ての回線情報について処理が完了していないと判定した場合(ステップS210:N)、ステップS203へ移行し、次の回線情報を選択する等、ステップS203~S209の処理を行う。
【0079】
一方、学習済予測モデル生成装置1は、ステップS210において、全ての回線情報について処理が完了したと判定した場合(ステップS210:Y)、ステップS211へ移行する。
【0080】
予測モデル生成部12は、ステップS210(Y)から移行して、全ての回線情報に適用可能な共通のモデルの学習により一般化学習済予測モデルを生成し、一般化学習済予測モデル(のパラメータ)を記憶部13に格納する(ステップS211)。
【0081】
図6は、記憶部13に格納されたデータの構成例を示す図である。図6に示すように、記憶部13には、回線情報毎の学習済予測モデル(のパラメータ)、及び一般化学習済予測モデル(のパラメータ)が格納される。つまり、記憶部13には、回線情報及び当該回線情報に対応する学習済予測モデル、並びに一般化学習済予測モデルが格納される。
【0082】
回線情報には、送信局情報(局名、送信点の緯度及び経度、海抜高等)、受信局情報(局名、受信点の緯度及び経度、海抜高等)、メディア及び送信チャンネル(送信周波数)等の情報が含まれる。
【0083】
尚、記憶部13に格納される回線情報は、受信局情報に含まれる局名(受信局名)及びメディアとするようにしてもよい。この場合、予測モデル生成部12は、受信局名及びメディアを回線情報として、回線情報の学習済予測モデルを記憶部13に格納する。
【0084】
以上のように、本発明の実施形態の学習済予測モデル生成装置1によれば、降雨情報取得部10は、過去の回線障害データから、障害が発生した回線情報毎に障害期間を取得し、障害が発生した回線情報毎に、回線経路を特定し、複数の計測地点を特定する。そして、降雨情報取得部10は、降雨情報から、計測地点毎の過去の降雨情報を取得する。
【0085】
降雨減衰量算出部11は、障害期間の障害発生時及び障害期間以外の期間の障害非発生時のそれぞれについて、計測地点毎の過去の降雨情報に含まれる降水強度に基づいて、回線経路の降雨減衰量を算出する。そして、降雨減衰量算出部11は、障害期間については障害データに「1」を設定し、障害期間以外の期間については障害データに「0」を設定する。
【0086】
予測モデル生成部12は、回線経路の障害発生時の降雨減衰量及びこれに対応する障害データ(1)を用いると共に、回線経路の障害非発生時の降雨減衰量及びこれに対応する障害データ(0)を用いて、降雨減衰量を入力データとし、停波確率を出力データとする個別のモデル及び共通のモデルにつき、学習を行う。
【0087】
予測モデル生成部12は、個別のモデルの学習により学習済予測モデルを生成し、回線情報の学習済予測モデルを記憶部13に格納する。また、予測モデル生成部12は、共通のモデルの学習により一般化学習済予測モデルを生成し、一般化学習済予測モデルを記憶部13に格納する
【0088】
これにより、後述する停波予測装置2は、ユーザにより指定された回線情報について、学習済予測モデルまたは一般化学習済予測モデルを用いて、降雨情報に含まれる将来の予報値から、将来の降雨減衰による無線回線の停波確率を予測することができる。そして、予測した停波確率を用いることで、事前に通信による補償または別経路による伝送制御を実施することで、安定した伝送を継続することができる。
【0089】
尚、前述の降雨減衰量算出部11は、計測地点毎の過去の降雨情報に含まれる降水強度に基づいて、計測地点毎の降雨減衰量を算出し、計測地点毎の降雨減衰量に基づいて、回線経路の降雨減衰量を算出するようにした。
【0090】
これに対し、降雨減衰量算出部11は、計測地点毎の過去の降雨情報に含まれる降水強度に基づいて、回線経路の降水強度の平均値(平均降水強度)を算出し、回線経路の平均降水強度に基づいて、回線経路の降雨減衰量を算出するようにしてもよい。後述する停波予測装置2の降雨減衰量算出部21についても同様である。
【0091】
また、前述の降雨情報取得部10が取得する過去の降雨情報は、例えば高解像度降水ナウキャストのデータであり、250m角または1km角のエリアの降水強度が含まれる。そして、降雨減衰量算出部11は、降雨情報に含まれる250m角または1km角のエリアの降水強度に基づいて、計測地点毎の降雨減衰量を算出するようにした。
【0092】
これに対し、降雨減衰量算出部11は、降雨情報に含まれる250m角または1km角のエリアの降水強度における区画を、補間処理によりさらに高精度化することで、より狭いサイズ角のエリアの降水強度を求め、この降水強度に基づいて、計測地点毎の降雨減衰量を算出するようにしてもよい。これにより、計測地点毎の降雨減衰量の計算精度を向上させることができ、結果として、回線経路の降雨減衰量の計算精度を向上させることができる。後述する停波予測装置2の降雨減衰量算出部21についても同様である。
【0093】
また、前述の降雨減衰量算出部11は、降水強度に基づいて降雨減衰量を算出する際に、回線経路の距離、送信周波数及び偏波面等を考慮した予め設定された式(ITU-R勧告P.838-3にて規定された数式)を用いるようにした。
【0094】
この場合、回線経路の距離について、送信点と受信点との間で海抜高が異なるときには、降雨減衰量算出部11は、海抜高の差を考慮した回線経路の距離を算出し、前記式を用いて、当該回線経路の距離が反映された降雨減衰量を算出するようにしてもよい。これにより、計測地点毎の降雨減衰量の計算精度を向上させることができ、結果として、回線経路の降雨減衰量の計算精度を向上させることができる。後述する停波予測装置2の降雨減衰量算出部21についても同様である。
【0095】
〔停波予測装置〕
次に、本発明の実施形態による停波予測装置について説明する。図7は、本発明の実施形態による停波予測装置の構成例を示すブロック図であり、図8は、停波予測装置の処理例を示すフローチャートである。
【0096】
この停波予測装置2は、降雨情報取得部20、降雨減衰量算出部21、記憶部22、予測制御部23及び連絡部24を備えている。
【0097】
停波予測装置2は、ユーザにより指定された無線回線の回線情報の回線経路について、降雨情報の予報値を取得し、降雨情報の予報値から降雨減衰量を算出し、図1に示した学習済予測モデル生成装置1により生成された当該回線情報の学習済予測モデルまたは一般化学習済予測モデルを用いて、降雨減衰量から停波確率を予測することを特徴とする。
【0098】
これにより、将来の降雨情報から、将来の降雨減衰による無線回線の停波確率を得ることができるため、降雨減衰による無線回線の障害を予測することができる。
【0099】
また、過去に障害が発生していない回線情報については、一般化学習済予測モデルを用いることで、その無線回線の障害を予測することができる。
【0100】
<降雨情報取得部20>
降雨情報取得部20は、ユーザにより指定された回線情報を予測対象の回線情報として入力する(ステップS801)。そして、降雨情報取得部20は、予測対象の回線情報について、図1に示した降雨情報取得部10による図2に示したステップS204の処理と同様に、当該回線情報から回線経路を特定し、回線経路から複数の計測地点を特定する(ステップS802)。
【0101】
降雨情報取得部20は、降雨情報が格納されたデータベース(図示せず)から、計測地点毎に、降雨情報の予報値を取得する(ステップS803)。そして、降雨情報取得部20は、ステップS801にて入力された回線情報、当該回線情報に対応するステップS803にて取得された計測地点毎の降雨情報の予報値を降雨減衰量算出部21に出力する。
【0102】
<降雨減衰量算出部21>
降雨減衰量算出部21は、降雨情報取得部20から回線情報及び計測地点毎の降雨情報の予報値を入力する。そして。降雨減衰量算出部21は、図2に示したステップS206の処理と同様に、予め設定された式を用いる等により、計測地点毎の降雨情報の予報値に含まれる降水強度に基づいて、回線経路の降雨減衰量を算出する(ステップS804)。
【0103】
降雨減衰量算出部21は、回線情報、及び降雨情報の予報値に対応する回線経路の降雨減衰量を予測制御部23に出力する。
【0104】
<予測制御部23>
予測制御部23は、降雨減衰量算出部21から回線情報、及び降雨情報の予報値に対応する回線経路の降雨減衰量を入力する。そして、予測制御部23は、記憶部22から、回線情報に対応する学習済予測モデルまたは一般化学習済予測モデルを読み出す(ステップS805)。
【0105】
具体的には、予測制御部23は、記憶部22に、入力した回線情報と同一の回線情報についての学習済予測モデルが格納されている場合、当該回線情報の学習済予測モデルを読み出す。一方、予測制御部23は、記憶部22に、入力した回線情報と同一の回線情報についての学習済予測モデルが格納されていない場合、一般化学習済予測モデルを読み出す。
【0106】
予測制御部23は、学習済予測モデルまたは一般化学習済予測モデルを用いて、回線経路の降雨減衰量から回線経路の停波確率を予測する(ステップS806)。これにより、ユーザにより指定された回線情報の回線経路について、降雨情報の予報値に対応する停波確率が得られる。そして、予測制御部23は、回線経路の停波確率を連絡部24に出力する。
【0107】
図9は、予測制御部23の予測処理例を説明する図である。図9に示すように、降雨減衰量が学習済予測モデルまたは一般化学習済予測モデルに入力され、学習済予測モデルまたは一般化学習済予測モデルから停波確率が出力される。
【0108】
<連絡部24>
図7及び図8に戻って、連絡部24は、予測制御部23から回線経路の停波確率を入力する。そして、連絡部24は、停波確率が予め設定された閾値を超えているか否かを判定する(ステップS807)。
【0109】
連絡部24は、ステップS807において、停波確率が閾値を超えていると判定した場合(ステップS807:Y)、当該回線情報の回線経路について、無線回線の障害が発生する可能性があると判断する。そして、連絡部24は、降雨情報の予報値に対して無線回線の障害が発生する可能性があることを示す回線障害発生情報を外部へ出力する(ステップS808)。例えば、回線障害発生情報は、電子ディスプレイへ出力されることで画面表示される。また、回線障害発生情報は、メール等にてスマートフォン及びPC等へ出力される。これにより、回線障害発生情報をユーザに通知することができる。
【0110】
一方、連絡部24は、ステップS807において、停波確率が閾値を超えていないと判定した場合(ステップS807:N)、回線障害発生情報の外部への出力は行わず、ステップS801にて入力された回線情報についての処理を終了する。
【0111】
以上のように、本発明の実施形態の停波予測装置2によれば、降雨情報取得部20は、ユーザにより指定された予測対象の回線情報について、回線経路を特定し、複数の計測地点を特定する。そして、降雨情報取得部20は、降雨情報から、計測地点毎に降雨情報の予報値を取得する。
【0112】
降雨減衰量算出部21は、計測地点毎の降雨情報の予報値に含まれる降水強度に基づいて、回線経路の降雨減衰量を算出する。
【0113】
予測制御部23は、回線情報に対応する学習済予測モデルまたは一般化学習済予測モデルを用いて、回線経路の降雨減衰量から回線経路の停波確率を予測する。
【0114】
連絡部24は、停波確率が予め設定された閾値を超えていると判定した場合、当該回線情報の回線経路について、無線回線の障害が発生する可能性があることを示す回線障害発生情報を外部へ出力する。
【0115】
これにより、ユーザが予測したい回線情報を指定することで、当該回線情報の回線経路についての将来の停波確率を得ることができ、降雨減衰による無線回線の障害を予測することができる。そして、予測結果を用いることで、事前に通信による補償または別経路による伝送制御を実施することで、安定した伝送を継続することができる。
【0116】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0117】
前記実施形態では、学習済予測モデル生成装置1の降雨減衰量算出部11は、過去の降雨情報に含まれる降水強度に基づいて降雨減衰量を算出し、予測モデル生成部12は、降雨減衰量を入力データとして、モデルを学習するようにした。
【0118】
これに対し、降雨減衰量算出部11は、過去の降雨情報に含まれる降水強度に基づいて、降雨減衰量を算出し、降雨減衰量に予め設定された補正係数を加算することで、補正後の降雨減衰量を求めるようにしてもよい。
【0119】
この場合、予測モデル生成部12は、補正後の降雨減衰量を入力データとしてモデルを学習し、学習済予測モデル及び一般化学習済予測モデルを生成する。また、停波予測装置2の降雨減衰量算出部21は、降雨情報の予報値に含まれる降水強度に基づいて、降雨減衰量を算出し、降雨減衰量に予め設定された補正係数(降雨減衰量算出部11にて用いた補正係数と同じもの)を加算することで、補正後の降雨減衰量を求める。そして、予測制御部23は、学習済予測モデル生成装置1により生成された学習済予測モデルまたは一般化学習済予測モデルを用いて、補正後の降雨減衰量から停波確率を予測する。
【0120】
総務省に提出する無線回線の免許状には、使用する周波数に応じた理論上の許容降雨減衰量が記載されており、これと回線経路で算出した降水強度または降雨減衰量を比較することで、無線回線の断を予測することができる。
【0121】
しかしながら、前述の高解像度降水ナウキャストのような降雨情報では、降雨レーダーの観測をベースとしており、降雨レーダーが上空の降水粒子からのレイリー散乱を観測しているため、実際の地上の降雨量とは必ずしも一致しない。そこで、降水レーダーでは、地上のアメダス等のデータを用いて降雨量を補正し、補正後の降雨量を表示している。
【0122】
このような点に鑑みて、降雨情報は、現実的には理論値と一致しない事例もあることから、降雨情報から単純に降雨減衰量を算出して処理を行うのではなく、降雨情報の理論値に一致するような補正係数を用いることで、より精度の高いモデルを生成することも有用である。
【0123】
この補正係数は、これまでのデータを蓄積及び分析して設定することが可能である。具体的には、本発明者らの知見によれば、理論値で10dBの降雨減衰量にて停波する場合、過去の停波時の降雨減衰量が5dBだったときには、補正係数として+5dBが妥当であると考えた。
【0124】
このため、予め設定された補正係数として例えば+5dBが用いられる。つまり、学習済予測モデル生成装置1の降雨減衰量算出部11は、降雨減衰量に予め設定された補正係数(+5dB)を加算することで、補正後の降雨減衰量を求める。また、停波予測装置2の降雨減衰量算出部21も同様に、降雨減衰量に予め設定された補正係数(+5dB)を加算することで、補正後の降雨減衰量を求める。
【0125】
また、前記実施形態では、学習済予測モデル生成装置1の降雨減衰量算出部11は、計測地点毎の過去の降雨情報に含まれる降水強度に基づいて、計測地点毎の降雨減衰量を算出し、計測地点毎の降雨減衰量に基づいて、回線経路の降雨減衰量を算出するようにした。
【0126】
これに対し、降雨減衰量算出部11は、計測地点毎の過去の降雨情報に含まれる降水強度を平均化することで、回線経路の降水強度の平均値を求め、これを平均降水強度とするようにしてもよい。
【0127】
この場合、予測モデル生成部12は、平均降水強度を入力データとしてモデルを学習し、学習済予測モデル及び一般化学習済予測モデルを生成する。また、停波予測装置2の降雨減衰量算出部21は、計測地点毎の降雨情報の予報値に含まれる降水強度を平均化することで、回線経路の降水強度の平均値を求め、これを平均降水強度とする。そして、予測制御部23は、学習済予測モデル生成装置1により生成された学習済予測モデルまたは一般化学習済予測モデルを用いて、平均降水強度から停波確率を予測する。
【0128】
また、学習済予測モデル生成装置1の降雨減衰量算出部11は、計測地点毎の過去の降雨情報に含まれる降水強度から最大値を求め、これを、回線経路の降水強度の最大値である最大降水強度としてもよい。
【0129】
この場合、予測モデル生成部12は、最大降水強度を入力データとしてモデルを学習し、学習済予測モデル及び一般化学習済予測モデルを生成する。また、停波予測装置2の降雨減衰量算出部21は、計測地点毎の降雨情報の予報値に含まれる降水強度から最大値を求め、これを、回線経路の降水強度の最大値である最大降水強度とする。そして、予測制御部23は、学習済予測モデル生成装置1により生成された学習済予測モデルまたは一般化学習済予測モデルを用いて、最大降水強度から停波確率を予測する。
【0130】
ここで、前述の例では、降雨減衰量の代わりに、補正後の降雨減衰量、平均降水強度または最大降水強度を用いるようにしたが、降雨減衰量、補正後の降雨減衰量、平均降水強度及び最大降水強度のうち2以上のデータを用いるようにしてもよい。
【0131】
これにより、精度の高い学習済予測モデル及び一般化学習済予測モデルを生成することができ、これらの学習済予測モデル及び一般化学習済予測モデルを用いることで、精度の高い停波確率を予測することができ、結果として、無線回線の障害を精度高く予測することができる。
【0132】
例えば降雨減衰量、補正後の降雨減衰量、平均降水強度及び最大降水強度を用いる場合、学習済予測モデル生成装置1の降雨減衰量算出部11は、計測地点毎の過去の降雨情報に含まれる降水強度に基づいて、降雨減衰量、補正後の降雨減衰量、平均降水強度及び最大降水強度を求める。そして、予測モデル生成部12は、降雨減衰量、補正後の降雨減衰量、平均降水強度及び最大降水強度を入力データとしてモデルを学習し、学習済予測モデル及び一般化学習済予測モデルを生成する。
【0133】
また、停波予測装置2の降雨減衰量算出部21は、計測地点毎の降雨情報の予報値に含まれる降水強度に基づいて、降雨減衰量、補正後の降雨減衰量、平均降水強度及び最大降水強度を求める。そして、予測制御部23は、学習済予測モデル生成装置1により生成された学習済予測モデルまたは一般化学習済予測モデルを用いて、降雨減衰量、補正後の降雨減衰量、平均降水強度及び最大降水強度から停波確率を予測する。
【0134】
さらに、前記実施形態では、学習済予測モデル生成装置1の降雨減衰量算出部11は、ある時間t(n)における降雨減衰量を算出すると共に、障害データを設定し、予測モデル生成部12は、ある時間t(n)における降雨減衰量及び障害データを用いて、モデルを学習するようにした。nはサンプリング番号を示し、t(n)は時分秒(hh:mm:ss)で表される時間、例えば1秒間隔の時間を示す。この場合の学習データとしては、時間t(n)毎に、1つの降雨減衰量及び1つの障害データが用いられる。
【0135】
これに対し、本発明の他の実施形態において、学習済予測モデル生成装置1の予測モデル生成部12は、ある時間(n)において、当該時間t(n)の降雨減衰量を含む所定数の連続した時間の降雨減衰量(例えば時間t(n-1),t(n),t(n+1)の降雨減衰量)、並びに障害データを用いて、モデルを学習するようにしてもよい。この場合の学習データは、時間t(n)毎に、連続した時間における所定数(例えば3つ)の降雨減衰量及び1つの障害データが用いられる。学習されたモデルは、記憶部13に格納され、停波予測装置2に備えた記憶部22に格納される。
【0136】
図10(1)は、本発明の実施形態における学習データの例を示す図であり、図10(2)は、本発明の他の実施形態における学習データの例を示す図である。
【0137】
図10(1)に示すように、学習済予測モデル生成装置1が用いる本発明の実施形態における学習データとしては、時間t(n)毎に、当該時間t(n)の降雨減衰量及び障害データが用いられる。
【0138】
例えば時間t(1)において、「20dB」の降雨減衰量及び「0」の障害データが用いられ、時間t(2)において、「10dB」の降雨減衰量及び「0」の障害データが用いられる。
【0139】
これに対し、図10(2)に示すように、本発明の他の実施形態における学習データとしては、時間t(n)毎に、当該時間t(n)の1サンプリング手前の時間t(n-1)の降雨減衰量、当該時間t(n)の降雨減衰量、及び当該時間t(n)の1サンプリング後の時間t(n+1)の降雨減衰量、並びに当該時間t(n)の障害データが用いられる。図10(2)に示す時間t(n)における降雨減衰量及び障害データは、図10(1)と同じである。
【0140】
例えば時間t(1)において、時間t(0)の降雨減衰量として当該時間t(1)と同じ「20dB」の降雨減衰量が用いられ、当該時間t(1)の「20dB」の降雨減衰量、及び時間t(2)の「10dB」の降雨減衰量、並びに当該時間t(1)の「0」の障害データが用いられる。また、時間t(2)において、時間t(1)の「20dB」の降雨減衰量、当該時間t(2)の「10dB」の降雨減衰量、及び時間t(3)の「20dB」の降雨減衰量、並びに当該時間t(2)の「0」の障害データが用いられる。また、時間t(3)において、時間t(2)の「10dB」の降雨減衰量、当該時間t(3)の「20dB」の降雨減衰量、及び時間t(4)の「30dB」の降雨減衰量、並びに当該時間t(3)の「0」の障害データが用いられる。
【0141】
尚、最後の時間t(N)においては、時間t(N-1)の降雨減衰量、当該時間t(N)の降雨減衰量、及び時間t(N+1)の降雨減衰量として当該時間t(N)と同じ降雨減衰量が用いられ、並びに当該時間t(N)の障害データが用いられる。
【0142】
この場合、本発明の他の実施形態における停波予測装置2の予測制御部23は、回線情報に対応するモデル(前述の本発明の他の実施形態による学習済予測モデル生成装置1により学習されたモデル(学習済予測モデルまたは一般化学習済予測モデル))を読み出す。
【0143】
そして、予測制御部23は、読み出したモデルを用いて、降雨減衰量算出部21から入力した、時間t(n)の降雨減衰量を含む所定数の連続した時間の降雨減衰量(例えば時間t(n-1),t(n),t(n+1)の降雨減衰量)から、当該時間(n)における回線経路の停波確率を予測する。これにより、精度の高い停波確率を得ることができる。
【0144】
前述の本発明の他の実施形態においては、連続した時間の降雨減衰量の代わりに、連続した時間の補正後の降雨減衰量、平均降水強度または最大降水強度を用いるようにしてもよく、これらを組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0145】
尚、本発明の実施形態による学習済予測モデル生成装置1及び停波予測装置2のハードウェア構成としては、通常のコンピュータを使用することができる。学習済予測モデル生成装置1及び停波予測装置2は、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによって構成される。
【0146】
学習済予測モデル生成装置1に備えた降雨情報取得部10、降雨減衰量算出部11、予測モデル生成部12及び記憶部13の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。
【0147】
また、停波予測装置2に備えた降雨情報取得部20、降雨減衰量算出部21、記憶部22、予測制御部23及び連絡部24の各機能も、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。
【0148】
これらのプログラムは、前記記憶媒体に格納されており、CPUに読み出されて実行される。また、これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD-ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもでき、ネットワークを介して送受信することもできる。
【符号の説明】
【0149】
1 学習済予測モデル生成装置
2 停波予測装置
10,20 降雨情報取得部
11,21 降雨減衰量算出部
12 予測モデル生成部
13,22 記憶部
14 モデル
15 更新部
23 予測制御部
24 連絡部
図1
図2
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図10