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特開2024-180100シート給送装置、及び、画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180100
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】シート給送装置、及び、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 1/12 20060101AFI20241219BHJP
   B65H 1/26 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B65H1/12 310C
B65H1/26 314A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099553
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100117215
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 有二
(72)【発明者】
【氏名】西 隆行
(72)【発明者】
【氏名】児島 秀俊
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA02
3F343FB02
3F343FB03
3F343FB04
3F343FB05
3F343FC28
3F343GA03
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343HA21
3F343HA31
3F343HB03
3F343HC04
3F343HC26
3F343HD10
3F343HD18
3F343KB03
3F343KB17
3F343LA04
3F343LA15
3F343LC02
3F343LC07
3F343LC09
3F343LC12
3F343LC21
3F343LC25
3F343LD10
3F343LD29
3F343MB12
3F343MC19
3F343MC20
(57)【要約】
【課題】給送トレイの操作性が低下する不具合などが生じることなく、底板が上昇するときの衝撃を和らげる。
【解決手段】圧縮スプリング71によって付勢されて回動軸43aを中心にして回動軸43aとともに回動する昇降可能な底板43が設置されている。引出し状態で圧縮スプリング71による付勢に抗するように底板43を下降位置で保持する固定フック70と、給送トレイ12の装着時に固定フック70による底板43の保持を解除する突起部72と、給送機構51に駆動力を伝達する駆動モータ91を駆動制御する制御回路101と、が設けられている。さらに、底板43の上昇時に、回動軸43aの回転力が駆動モータ91に伝達されるように構成されている。そして、制御回路101は、底板43の上昇時に、その上昇を制動するブレーキ力を駆動モータ91に生じさせるブレーキ回路102が設けられている。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に対して着脱可能に設置されて、シートを収納可能な給送トレイと、
駆動モータによる駆動力が伝達されて前記給送トレイに収納されたシートを給送する給送機構と、
シートを載置可能に前記給送トレイに設置されて、付勢手段によって付勢されて前記給送機構によるシートの給送が可能な位置まで回動軸を中心にして前記回動軸とともに回動する昇降可能な底板と、
前記装置本体から前記給送トレイが引き出された引出し状態で、前記付勢手段による付勢に抗するように前記底板を下降位置で保持する保持機構と、
前記引出し状態の前記給送トレイが前記装置本体に装着されたときに、前記保持機構による前記底板の保持を解除する解除機構と、
前記駆動モータを駆動制御する制御回路と、
を備え、
前記底板が前記回動軸を中心に回動して前記下降位置から上昇する上昇時に、前記回動軸の回転力が前記駆動モータに伝達され、
前記制御回路は、前記上昇時に、その上昇を制動するブレーキ力を前記駆動モータに生じさせるブレーキ回路を具備したことを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記底板が前記回動軸を中心に回動して上昇位置から前記下降位置に下降する下降時に、前記回動軸の回転力が前記駆動モータに伝達されないように制限する制限手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記制限手段は、前記駆動モータによって前記給送機構が駆動されているときに、前記駆動モータの駆動力を前記回動軸に伝達しないように構成されたことを特徴とする請求項2に記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記制限手段は、前記駆動モータのモータ軸に設置された駆動ギアに噛合するとともに、前記回動軸の回転力を前記駆動ギアに伝達可能なワンウェイクラッチ・ギアであることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記制限手段は、前記給送トレイに設置されたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のシート給送装置。
【請求項6】
前記制御回路は、前記ブレーキ回路の有効・無効を切替え可能に構成されたことを特徴とする請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項7】
前記制御回路は、前記給送機構によってシートの給送がおこなわれているときには前記ブレーキ回路を無効にすることを特徴とする請求項6に記載のシート給送装置。
【請求項8】
前記給送トレイが前記装置本体にセットされているか否かを検知するセット検知手段を備え、
前記制御回路は、前記セット検知手段によって前記給送トレイのセットが検知されているときには前記ブレーキ回路を無効にして、前記セット検知手段によって前記給送トレイのセットが検知されていないときには前記ブレーキ回路を有効にすることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のシート給送装置。
【請求項9】
前記底板が前記下降位置から前記給送が可能な位置まで上昇したか否かを検知する上昇検知手段を備え、
前記制御回路は、前記上昇検知手段によって前記底板の前記給送が可能な位置までの上昇が検知されたときに、その検知から所定時間が経過した後に前記ブレーキ回路を有効から無効に切替えることを特徴とする請求項8に記載のシート給送装置。
【請求項10】
前記所定時間は、前記上昇時において前記底板が前記給送が可能な位置に達したときに生じる衝撃エネルギが減衰しきる時間よりも長い時間であることを特徴とする請求項9に記載のシート給送装置。
【請求項11】
請求項1又は請求項2に記載のシート給送装置を前記装置本体としての画像形成装置本体に備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シートを給送するシート給送装置と、それを備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機や印刷機等の画像形成装置と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機やプリンタや印刷機等の画像形成装置において、用紙などのシートが収容された給送トレイ(給紙カセット)が画像形成装置本体に対して着脱可能(引出し可能)に設置されたものが広く知られている(例えば、特許文献1参照。)。
このような給送トレイは、画像形成装置本体に装着される動作に連動して、シートが積載された底板が、付勢手段(圧縮スプリング)による付勢によって、回動軸を中心にして下降位置から上昇位置まで上昇(回動)するように構成されている。そして、給送トレイは、画像形成装置本体から取り出される動作に連動して、底板が、付勢手段(圧縮スプリング)による付勢に抗するように、回動軸を中心にして上昇位置から下降位置まで下降(回動)するように構成されている。
【0003】
一方、特許文献1には、底板の搖動軸(回動軸)に油圧式ダンパを設置することで、底板が昇降するときの速度を低下させる技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシート給送装置は、付勢手段による付勢によって、底板が回動軸を中心にして上昇位置まで勢いよく回動されてしまい、上方に位置する部品に衝突して大きな衝撃が生じてしまっていた。そして、そのような場合に、部品の破損や衝撃音が発生してしまっていた。
これに対して、特許文献1の技術は、底板の回動軸に油圧式ダンパを設置しているため、底板が上昇するときの衝撃を和らげる効果が大いに期待できる。しかし、特許文献1の技術は、底板が下降するときにも底板に負荷を掛けることになるため、底板の下降速度の低下にともない、給送トレイを引き出すときの操作性が低下してしまっていた。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、給送トレイの操作性が低下する不具合などが生じることなく、底板が上昇するときの衝撃を和らげることができる、シート給送装置、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明におけるシート給送装置は、装置本体に対して着脱可能に設置されて、シートを収納可能な給送トレイと、駆動モータによる駆動力が伝達されて前記給送トレイに収納されたシートを給送する給送機構と、シートを載置可能に前記給送トレイに設置されて、付勢手段によって付勢されて前記給送機構によるシートの給送が可能な位置まで回動軸を中心にして前記回動軸とともに回動する昇降可能な底板と、前記装置本体から前記給送トレイが引き出された引出し状態で、前記付勢手段による付勢に抗するように前記底板を下降位置で保持する保持機構と、前記引出し状態の前記給送トレイが前記装置本体に装着されたときに、前記保持機構による前記底板の保持を解除する解除機構と、前記駆動モータを駆動制御する制御回路と、を備え、前記底板が前記回動軸を中心に回動して前記下降位置から上昇する上昇時に、前記回動軸の回転力が前記駆動モータに伝達され、
前記制御回路は、前記上昇時に、その上昇を制動するブレーキ力を前記駆動モータに生じさせるブレーキ回路を具備したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、給送トレイの操作性が低下する不具合などが生じることなく、底板が上昇するときの衝撃を和らげることができる、シート給送装置、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
図2】シート給送装置の一部を示す構成図である。
図3】画像形成装置本体から給送トレイを引き出す動作を示す図である。
図4】給送トレイが引き出された状態を示す図である。
図5】給送トレイが装着された状態を示す図である。
図6】給送トレイが引き出されたときの、底板の動作を示す図である。
図7】底板を示す斜視図である。
図8】シート給送装置の駆動系を示す斜視図である。
図9】駆動モータの制御回路を示す図である。
図10】種々の場面における駆動系の動作を示す図である。
図11】シート給送装置でおこなわれる制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
まず、図1にて、画像形成装置1における全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としてのプリンタ、2は感光体ドラム、3は感光体ドラム2の表面を帯電する帯電装置、6は帯電装置3によって帯電された感光体ドラム2の表面にレーザ光Lを照射して静電潜像を形成する露光装置、を示す。
また、4は感光体ドラム2の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置、7は感光体ドラム2の表面に形成されたトナー像をシートPに転写する転写装置、を示す。また、5は感光体ドラム2の表面に残存する未転写トナーをクリーニングするクリーニング装置を示す。
また、11は3段の第1~第3給送トレイ12~14が設けられたシート給送装置、51は第1~第3給送トレイに収納されたシートPを給送するための給送機構、を示す。また、61~63は第1~第3搬送経路K1~K3に設置された第1~第3搬送ローラ対、を示す。
また、17は転写装置7の位置に向けてシートPを搬送するレジストローラ対(タイミングローラ対)、20はシートP上に担持されたトナー像(未定着画像)を定着する定着装置、31は画像形成装置本体1から排出されたシートPが積載されるスタック部、を示す。
なお、このように構成された画像形成装置1は、第1~第3給送トレイ12~14が引き出される側(図1図3の左側)が、操作者が操作する側であって、画像形成装置1の正面になる。これに対して、第1~第3搬送経路K1~K3(第1~第3搬送ローラ対61~63)が設けられた側(図1図3の右側)が画像形成装置1の背面(居室の壁面に対向する可能性が高い面である。)になる。
【0011】
図1を参照して、画像形成装置1における、通常の画像形成時(印刷時)の動作について説明する。
まず、画像形成装置1に接続された不図示のパソコンなどから画像情報が露光装置6に入力されると、露光装置6からは、その画像情報に基づいたレーザ光Lが、感光体ドラム2上に向けて発せられる。
【0012】
一方、感光体ドラム2は図1の反時計方向に回転しており、所定の作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程)を経て、感光体ドラム2上に画像情報に対応した画像(トナー像)が形成される。
その後、感光体ドラム2上に形成された画像は、転写装置7の位置(画像形成部)で、レジストローラ対17により搬送されたシートP上に転写される。
【0013】
一方、転写装置7の位置(画像形成部)に搬送されるシートPは、次のように動作する。
まず、画像形成装置1の下方に並設された第1~第3給送トレイ12~14のうち、1つの給送トレイが自動又は手動で選択される(例えば、最下段の第3給送トレイ14が選択されたものとする。)。そして、第3給送トレイ14に収納されたシートPの最上方の1枚が、給送機構51によって給送されて、第3搬送ローラ対63が設置された第3搬送経路K3、第2搬送ローラ対62が設置された第2搬送経路K2、第1搬送ローラ対61が設置された第1搬送経路K1の順に搬送される。
その後、シートPは、レジストローラ対17の位置に達する。このとき、レジストローラ対17は、回転停止した状態であって、そのニップにシートPの先端が突き当たることで、シートPの斜行(スキュー)が補正されることになる。
【0014】
そして、レジストローラ対17の回転が開始されて、シートPが、感光体ドラム2上に形成された画像と位置合わせをするためにタイミングを合わせて、転写装置7(画像形成部)に向けて搬送される。そして、転写装置7で、感光体ドラム2上の画像がシートP上に転写されることになる(転写工程である。)。
そして、転写工程後のシートPは、転写装置7の位置を通過した後に、搬送経路を経て定着装置20に達する。定着装置20に達したシートPは、定着ローラと加圧ローラとの間に送入されて、定着ローラから受ける熱とニップで受ける圧力とによってトナー像が定着される(定着工程である)。トナー像が定着された定着工程後のシートPは、定着装置20から送出された後に、画像形成装置1から排出されて、出力画像としてスタック部31上に載置されることになる。
こうして、一連の画像形成プロセス(印刷動作)が完了する。
【0015】
次に、図2を用いて、本実施の形態におけるシート給送装置における給送機構51について詳述する。
なお、以下、第1~第3給送トレイ12~14のうち、中段の第1給送トレイ12に収納されたシートPを給送する給送機構51について説明するが、他の給送トレイ13、14に収納されたシートPを給送する給送機構もほぼ同様の構成となっているため、その説明を省略することにする。
【0016】
図2図5等を参照して、給送トレイ12には、複数枚のシートP(シート束PT)を積載できるように形成された底板43(載置部)、底板43に載置されたシートPを給送するための給送機構51、等が設置されている。
底板43は、積載されたシート束PTのうち最上方のシートPの給送方向下流側(図2の右側である。)が所定の高さ位置(ピックアップローラ52の位置である。)に達するように、昇降可能に構成されている。具体的に、底板43は、回動軸43aを中心に回動可能な昇降部材であって、給送トレイ12の底部(ベース部、固定部)上に設置されている。底板43は、給送トレイ12の内部において給送方向下流側に配置されていて、回動軸43aを中心に正逆方向に回動することで昇降するように構成されている。
また、図2を参照して、給送機構51は、フィードローラ53、ピックアップローラ52、分離ローラ54、等で構成されている。
【0017】
フィードローラ53は、底板43に載置されたシートPに対して給送方向(図2の白矢印方向である。)の先端側(下流側)に設置されていて、最上方のシートPの上面に接触してシートPの給送方向に沿うように回転(図2の反時計方向の回転である。)してシートPを一点鎖線矢印で示す給送方向に給送するものである。
ピックアップローラ52は、底板43に載置された最上方のシートPの表面(上面)に当接した状態で、走行方向に沿うように図2の反時計方向に回転して、そのシートPをフィードローラ53の位置に向けて搬送するものである。なお、ピックアップローラ52は、底板43に載置されたシートP(最上方のシートP)に対して接離可能に構成されている。すなわち、ピックアップローラ52は、底板43に載置されたシートPに対して、当接しない退避位置と、当接する当接位置(図2に示す位置である。)と、の間を移動可能に形成されている。
分離ローラ54は、フィードローラ53との間にニップ部を形成するように設置されている。
そして、分離ローラ54は、ニップ部に1枚のシートPが挟持されたときと、ニップ部にシートPが挟持されていないときと、には、給送方向に沿うように順方向(図2の破線矢印方向であって、時計方向である。)に回転する。これに対して、分離ローラ54は、ニップ部に複数枚のシートが挟持されたときには、上述した順方向に対して逆方向(図2の実線矢印方向であって、反時計方向である。)に回転する。これにより、ニップ部に挟持された複数枚のシートPのうち最上方のシートPがフィードローラ53の回転に沿って給送方向に給送されて、下方のシートPが給送方向(順方向)に対して逆方向に搬送されて、シートPの重送や連送が軽減される。
なお、本実施の形態において、分離ローラ54に替えて板状の分離パッドを用いてもよい。
【0018】
ここで、給送トレイ12は、ピックアップローラ52が底板43(載置部)に積載されたシート束PTのうち最上方のシートPに当接できるように、底板43上に積載されるシートPの枚数によって、底板43(昇降板)が上下方向に昇降する。そして、上下方向の位置(上限位置)が調整された底板43(昇降板)に載置されたシートPの上面に当接する位置までピックアップローラ52が降下してから、シートPの給送動作がおこなわれることになる。
なお、このような底板43の上限位置は、上昇検知手段としての透過型フォトセンサ82a(図8等参照)による検知によって定められるが、これについては後で詳しく説明する。
【0019】
また、本実施の形態における給送トレイ12には、底板43(載置部)上に載置されたシートPの幅方向(図2の紙面垂直方向である。)の位置を規制する一対のサイドフェンス(不図示)が設けられている。サイドフェンスは、シートPを挟むように幅方向両端部にそれぞれ設置されていて、手動移動機構によってシートPの幅方向のサイズに合わせて幅方向に互いに連動して移動可能に構成されている(幅方向の間隔を増減可能に構成されている)。
また、本実施の形態における給送トレイ12には、底板43(載置部)上に載置されたシートPの給送方向(図2の左右方向である。)の位置を規制する基準フェンス107とエンドフェンス103とが設けられている。基準フェンス107は、シートPの給送方向下流側の側面(先端)が突き当てられるように設置されている。エンドフェンス103は、シートPの給送方向上流側の側面(後端)に当接するように設置されていて、手動移動機構によってシートPの給送方向のサイズに合わせて給送方向に移動可能に構成されている。
【0020】
図1図3等を参照して、本実施の形態におけるシート給送装置11は、シートPを収納可能な3つ(3段)の給送トレイ12~14(トレイ)が、上下方向に並設されている。そして、それぞれの給送トレイ12~14は、画像形成装置本体1に対して着脱可能(引出し可能)に設置されている。
また、各給送トレイ12~14の給送方向下流側の上方には、給送機構51が設置され、さらにその給送方向下流側には搬送ローラ対61~63(搬送経路K1~K3)が設けられている。
なお、本願明細書等において、画像形成装置本体1に対して「着脱可能」な給送トレイ12~14が引き出された状態(引出し状態)とは、給送トレイ12~14が画像形成装置本体1から完全に取り外された状態はもちろんのこと、給送トレイ12~14の一部が画像形成装置本体1に保持されて引き出された状態(図3(B)の第1給送トレイ12のような状態である。)も含むものと定義する。
【0021】
図3(A)等を参照して、第1給送トレイ12から給送されるシートPの搬送経路中に第1搬送ローラ対61が配置されている。具体的に、第1給送トレイ12からシートPを給送するときには、そのシートPが第1搬送経路K1(第1搬送ローラ対61)を経由することになる。
これに対して、第2給送トレイ12からシートPを給送するときには、そのシートPが第2搬送経路K2(第2搬送ローラ対62)、第1搬送経路K1(第1搬送ローラ対61)を経由することになる。
また、第3給送トレイ14からシートPを給送するときには、そのシートPが第3搬送経路K3(第3搬送ローラ対63)、第2搬送経路K2(第2搬送ローラ対62)、第1搬送経路K1(第1搬送ローラ対61)を経由することになる。
【0022】
以下、図4図11等を用いて、本実施の形態において特徴的な、シート給送装置11(画像形成装置1)について説明する。
以下、シート給送装置11において、3つの給送トレイ12~14のうち、最上段の第1給送トレイ12について説明するが、他の給送トレイ13、14もほぼ同様の構成となっているため、その説明を省略することにする。
先に説明したように、シート給送装置11には、給送トレイ12、給送機構51、底板43などが設けられている。
給送トレイ12は、シートPを収納可能に構成されていて、装置本体としての画像形成装置本体1(シート給送装置11)に対して着脱可能に設置されている。
給送機構51は、駆動モータ91(図8参照)による駆動力が伝達されて給送トレイ12に収納されたシートを給送するものである。
底板43は、シートPを載置可能に給送トレイ12に設置されている。この底板43は、付勢手段としての圧縮スプリング71によって付勢されて給送機構51によるシートPの給送が可能な位置(図5等に示す上限位置である。)まで回動軸43aを中心にして回動軸43aとともに回動する昇降可能な部材である。
【0023】
ここで、本実施の形態におけるシート給送装置11には、保持機構としての固定フック70や、解除機構としての突起部72が設けられている。
固定フック70は、画像形成装置本体1(シート給送装置11)から給送トレイ12が引き出された引出し状態(図4の状態である。)で、圧縮スプリング71(付勢手段)による付勢に抗するように底板43を下降位置(図4図6(A)の位置である。)で保持する保持機構として機能するものである。
突起部72は、引出し状態の給送トレイ12が画像形成装置本体1(シート給送装置11)に装着されたときに、固定フック70(保持機構)による底板43の保持を解除する解除機構として機能するものである。
【0024】
詳しくは、給紙トレイ12は、給送装置本体11aから矢印A方向に引き出し可能に構成されている。給送トレイ12には、シートPを積載する底板43と、底板43の下方には圧縮スプリング71が配置されている。
底板43は、圧縮スプリング71の付勢力により上方向(矢印B方向)に常時荷重が加わっており、回動軸43aを基準に反時計方向(矢印C方向)の回転力が作用している。
そして、底板43は、図4等に示すように、引出し状態において、給送トレイ12に設けられた固定フック70(保持機構)に引っ掛けられることで、下降位置(下限位置)に保持(ロック)される。具体的に、図6図7等に示すように、底板43には、給送方向下流側の幅方向両端部に当接部43xが形成されていて、この当接部43xに固定フック70が引っ掛けられることになる。
この固定フック70は、支軸70aを中心に回転可能に、給送トレイ12の筐体に保持されている。そして、固定フック70は、不図示のトーションスプリングにより、底板43を押えつける方向(矢印D方向)に付勢されている。
【0025】
そして、図5に示すように、給紙トレイ12が給送装置本体11aにセットされると、固定フック70は、給送装置本体11aに設けられた突起部72(解除機構)に当接することで、回動軸43aを中心にして時計方向(矢印E方向)に回転する。そして、このように固定フック70が回転することにより、底板43(当接部43x)と固定フック70との引っ掛かりがなくなり、底板43のロックが解除される。
そして、このように固定フック70によるロックが解除されると、底板43は、圧縮スプリング71の付勢力で上方向(矢印B方向)の力を受けて、回動軸43aを中心に反時計方向(矢印C方向)に回転する。そして、底板43は、積載されたシートPをピックアップローラ52と当接する位置まで持ち上げる。これにより、給送トレイ12(シート給送装置11)は、給紙可能な状態になる。
【0026】
ここで、図5図8等を参照して、本実施の形態におけるシート給送装置11には、セット検知手段としてのセット検知センサ81や、上昇検知手段としての透過型フォトセンサ82a及びフィラー82bや、シート検知センサ83、などが設けられている。
セット検知センサ81は、給送トレイ12がシート給送装置11(画像形成装置本体1)にセットされているか否かを検知するセット検知手段として機能するものである。セット検知センサ81は、プッシュ式検出スイッチであって、給送装置本体11aに設置されている。
また、透過型フォトセンサ82aとフィラー82bとは、底板43が図4に示す下降位置から、図5に示す上昇位置(シートPの給送が可能な位置である。)まで上昇したか否かを検知する上昇検知手段として機能するものである。透過型フォトセンサ82aとフィラー82bとは、給送装置本体11aの上方であって、ピックアップローラ52の近傍に設置されている。
シート検知センサ83は、給送機構51の下流側に設置されていて、給送機構51によってシートPが給送されたか否かを光学的に検知するものである。
【0027】
詳しくは、図5等を参照して、給送トレイ12が給送装置本体11aにセットされると、給送装置本体11aに設けられたセット検知センサ81のアクチュエータが押し込まれて、給送トレイ12がセットされたことが検知される。これに対して、給送トレイ12が給送装置本体11aから引き出されると、セット検知センサ81のアクチュエータの押し込みが解除されて(アクチュエータが突出して)、給送トレイ12が引き出されたことが検知される。
また、給送トレイ12が給送装置本体11aにセットされて、下降位置にあった底板43が上昇すると、シートP(シートPが載置されていない場合は底板43自体)がフィラー82bを押し上げて、透過型フォトセンサ82aによってフィラー82bが光学的に検知されて、底板43の上昇位置(上限位置)が検知される。底板43が上昇位置に達していないときには、フィラー82bが透過型フォトセンサ82aの位置まで押し上げられることがなく、底板43の上昇位置への未達が検知される。
【0028】
以下、図6を用いて、給送トレイ12が引き出されたときの、底板43の動作について詳述する。
図6図7を参照して、給送装置本体11aの幅方向両端部には、底板43を挟むように一対の側板11xが設けられている。この一対の側板11xには、給送トレイ12の着脱動作に連動した底板43の昇降をガイドするためのガイド部11x1が形成されている。このガイド部11x1は、圧縮スプリング71によって上方に付勢された底板43の当接部43xが当接するものであって、給送方向下流側において下流側から上流側に向けて下方に傾斜するように形成されている(給送方向の中央部から上流側にかけて水平に形成されている)。
そして、図6(A)に示すように、給送装置本体11aにセットされた状態の給送トレイ12が、図6(B)に示すように、給送装置本体11aから矢印A方向に引き出されていくことになる。このとき、底板43の当接部43xが、給送装置本体11aのガイド部11x1に当接しながら、ガイド部11x1の傾斜に沿うように底板43(当接部43x)が下降していく。
そして、図6(C)に示すように、給送トレイ12の引出しがさらに進められると、突起部72による固定フック70の押し付けが解除されて、固定フック70が不図示のトーションスプリングの付勢力によって支軸70aを中心にして反時計方向(矢印D方向)に回転する。
そして、図6(C)、(D)に示すように、給送トレイ12の引出しが進められて、底板43が下降位置(下限位置)に達すると、底板43の当接部43xが固定フック70に嵌合して、底板43が固定フック70によって下降位置でロックされる。
【0029】
ここで、図8図9等を参照して、シート給送装置11には、駆動モータ91を駆動制御する制御回路101(モータ制御回路であって、図9参照)が設けられている。
この制御回路101は、画像形成装置本体1の制御部100(画像形成装置本体制御)に接続されていている。制御部100には、先に説明したセット検知センサ81、透過型フォトセンサ82a、シート検知センサ83の検知情報(信号)が送られることになる。
なお、制御回路101は、給送トレイ12に設けることもできるし、画像形成装置本体1(給送装置本体11a)に設けることもできる。
また、制御部100は、シート給送装置11に設けることもできる。
【0030】
ここで、図8図10等を参照して、本実施の形態におけるシート給送装置11は、給送時(印刷時)に給送機構51を駆動するための駆動機構90が、給送装置本体11aに設けられている。
駆動機構90は、駆動モータ91、駆動モータ91のモータ軸に設置された駆動ギア92や、駆動モータ91の駆動力を給送機構51(ピックアップローラ52)に伝達するギア列93(駆動伝達機構)、などで構成されている。
ギア列93は、ピックアップローラ52の軸部に設置された従動ギア93a、従動ギア93aに噛合する第1ギア部93cと駆動ギア92に噛合する第2ギア部93bとが段状に設置された2段ギア、などで構成されている。
そして、給送トレイ12が給送装置本体11aに装着された状態で、制御部100による制御によって制御回路101を介して駆動モータ91(駆動機構90)が駆動されて、給送機構51の駆動によりシートPの給送動作(印刷動作)がおこなわれることになる。
【0031】
そして、図8図10等を参照して、本実施の形態におけるシート給送装置11は、底板43が回動軸43aを中心に回動して下降位置から上昇する上昇時に、その回動軸43aの回転力が駆動モータ91に伝達されるように構成されている。
詳しくは、給送トレイ12が給送装置本体11aにセットされた状態で、底板43が上昇すると、回動軸43aの回転力が、トレイ側駆動伝達機構94を介して、駆動モータ91のモータ軸に設置された駆動ギア92に伝達されることになる。
トレイ側駆動伝達機構94は、回動軸43aに設置されたプーリ96と、プーリ部95aとワンウェイクラッチ・ギア95bとが段状に形成されたプーリ・ギア95と、プーリ96とプーリ部95aとに張架・支持されたタイミングベルト97と、で構成されている。プーリ・ギア95のワンウェイクラッチ・ギア95bは、ワンウェイクラッチが内蔵されたギアであって、給送トレイ12が給送装置本体11aに設置されると、給送装置本体11aに設置された駆動モータ91の駆動ギア92に噛合する。
このように構成されたトレイ側駆動伝達機構94は、給送トレイ12に設置されていて、給送装置本体11aに対して給送トレイ12とともに着脱される。
【0032】
このように、ワンウェイクラッチ・ギア95bは、駆動モータ91のモータ軸に設置された駆動ギア92に噛合するとともに、回動軸43aの回転力を駆動ギア92に伝達可能に構成されている。
そして、このワンウェイクラッチ・ギア95bは、底板43が回動軸43aを中心に回動して上昇位置から下降位置に下降する下降時に、回動軸43aの回転力が駆動モータ91(駆動ギア92)に伝達されないように制限する制限手段として機能する。
すなわち、図10(C)に示すように、給送トレイ12が給送装置本体11aから引き出されていき底板43が下降していく過程において、ワンウェイクラッチ・ギア95bが駆動ギア92から完全に離れておらず僅かに噛合した状態であっても、ワンウェイクラッチ・ギア95bによってプーリ部95aが空転して、回動軸43aの回転力が駆動ギア92に伝達されないことになる。
このように制限手段として機能するワンウェイクラッチ・ギア95b(プーリ・ギア95)は、先に説明したように、給送トレイ12に設置されている。
【0033】
また、ワンウェイクラッチ・ギア95b(制限手段)は、駆動モータ91(駆動機構90)によって給送機構51が駆動されているときに、駆動モータ91の駆動力を回動軸43aに伝達しないように構成されている。
すなわち、図10(A)に示すように、給送トレイ12が給送装置本体11aに装着された状態で、制御部100による制御によって制御回路101を介して駆動モータ91(駆動機構90)が駆動されて、給送機構51の駆動によりシートPの給送動作(印刷動作)がおこなわれると、ワンウェイクラッチ・ギア95bによってプーリ部95aが空転して、駆動モータ91(駆動ギア92)の駆動が回動軸43aに伝達されないことになる。
【0034】
ここで、図9を参照して、本実施の形態において、駆動モータ91を駆動制御する制御回路101(モータ制御回路)には、底板43の上昇時(下降位置から上昇位置に上昇するときである。)に、その上昇を制動するブレーキ力を駆動モータ91に生じさせるブレーキ回路102が設けられている。
詳しくは、制御回路101は、駆動モータ91を指定電圧によって駆動させる回路(回路A)の他、モータ回路を短絡(ショート)させるブレーキ回路102(回路B)があり、スイッチ111により切り替え可能な構成となっている。ブレーキ回路102(回路B)は、抵抗112が設けられていて、駆動モータ91の端子間を強制的に短絡させることで、駆動モータ91の回転方向とは逆方向の力を発生することで回転を止める(制動する)ように作用する。
【0035】
そして、図10(B)を参照して、給送トレイ12が給送装置本体11aに設置されて、底板43が上昇していってトレイ側駆動伝達機構94から駆動ギア92に回転力が伝達されるときに、ブレーキ回路102が作用して、駆動モータ91に時計方向の回転を制限する反時計方向のブレーキ力が生じることになる。
そのため、トレイ装着時に固定フック70が解除されたときに、圧縮スプリング71による付勢によって、底板43が回動軸43aを中心にして上昇位置まで勢いよく回動されてしまうようなことはなく、底板43は比較的ゆっくりと上昇することになる。そのため、底板43が上昇位置に達したときに、上方に位置する部品に衝突して大きな衝撃が生じるようなこともなく部品の破損や衝撃音が発生しにくくなる。しかも、このような効果は、制御回路101にブレーキ回路102を設けることにより達成されるため、底板43の回動軸43aに油圧式ダンパを設置するような場合と比較して、底板43が下降するときにも底板43に負荷が掛かって給送トレイ12を引き出すときの操作性が低下するようなことがなく、さらに装置が低コスト化、小型化することになる。
【0036】
このように、本実施の形態における制御回路101は、ブレーキ回路102の有効・無効を切替え可能に構成されている。
詳しくは、制御回路101は、給送機構51によってシートPの給送がおこなわれているとき(給送時)には、ブレーキ回路102を無効にする(図9(A)の状態である)。これに対して、制御回路101は、給送機構51によってシーPトの給送がおこなわれていないときには、ブレーキ回路102を有効にする(図9(B)の状態である)。
【0037】
さらに詳しくは、本実施の形態において、制御回路101は、図8等に示すセット検知センサ81(セット検知手段)によって給送トレイ12のセットが検知されているときにはブレーキ回路102を無効にして、セット検知センサ81によって給送トレイ12のセットが検知されていないときにはブレーキ回路102を有効にする。
具体的には、セット検知センサ81(セット検知手段)が給送トレイ12のセットを検知している状態からセットを検知しない状態になったときに、スイッチ111によってブレーキ回路102を無効(図9(A)の状態)から有効(図9(B)の状態)に切替える。これにより、給送トレイ12が給送装置本体11aにセットするときには、ブレーキ回路102(回路B)を有効な状態にすることができる。
駆動モータ91のブレーキ回路102(回路B)が常に有効となっている場合、給送機構51の駆動停止時にもブレーキを掛けてしまうことになり、給送機構51や駆動機構90の寿命を短くする可能性がある。そのため、ブレーキ回路102(回路B)を有効とするのは、給送トレイ12を給送装置本体11aにセットするときのみとしている。
【0038】
さらに、本実施の形態において、制御回路101は、図8等に示す透過型フォトセンサ82a(上昇検知手段)によって底板43の上昇位置(シートPの給送が可能な位置である。)までの上昇が検知されたときに、その検知から所定時間T1が経過した後に、スイッチ111によってブレーキ回路102を有効(図9(B)の状態)から無効(図9(A)の状態)に切替える。
このような制御をおこなう理由は、フォトセンサ82a(上昇検知手段)による底板43の上昇位置の検知と同時に、ブレーキ回路102(回路B)を無効にしてしまうと、底板43の上昇による衝撃の減衰が収束する前に抑制のブレーキが解除されてしまい、衝撃を緩和する効果が充分に発揮されなくなってしまう可能性があるためである。
このようなことから、上述した「所定時間T1」は、上昇時において底板43が上昇位置(シート給送が可能な位置)に達したときに生じる衝撃エネルギが減衰しきる時間よりも長い時間に設定されている。
【0039】
以下、図10(A)~(C)を用いて、種々の場面におけるシート給送装置11の駆動系(駆動機構90、トレイ側駆動伝達機構94)の動作について説明する。
まず、図10(A)に示すように、印刷動作にともないシート給送装置11における給送動作(破線矢印方向のシートPの搬送動作である。)がおこなわれているとき、駆動モータ91のモータ軸に設置された駆動ギア92が図の反時計方向に回転して、その駆動力(回転力)がギア列93を介してピックアップローラ52(給送機構51)に伝達されることになる。すなわち、制御回路101は回路Aとなっており、ブレーキ回路102(回路B)は無効化されている(図9(A)の状態である。)。
このとき、駆動ギア92の回転力がプーリ・ギア95に伝達されるものの、ワンウェイクラッチ・ギア95bのワンウェイクラッチが作用して、プーリ部95aが空転して、その回転力は回動軸43aに伝達されないことになる。すなわち、駆動モータ91の動力は底板43に伝達されないことになる。
【0040】
これに対して、図10(B)に示すように、引出し状態の給送トレイ12が給送装置本体11aにセットされると、固定フック70によるロックが解除されて、底板43が圧縮スプリング71の付勢力により押し上げられる。
このとき、底板43が回動軸43aを中心に回動軸43a(プーリ96)とともに図の反時計方向に回転して、その回動軸43aの回転力がタイミングベルト97を介してプーリ・ギア95に伝達される。
このときのプーリ・ギア95の回転方向(反時計方向)は、ワンウェイクラッチが作用しない(プーリ部95aを空転させない)方向であるため、その回転力が駆動ギア92(駆動モータ91)に伝達されることになる。
さらに、このとき、図9(B)に示すように制御回路101におけるブレーキ回路102(回路B)が有効化されて、駆動モータ91の回転方向とは逆方向の力が発生して、底板43の上昇を抑制するブレーキが掛かる。このブレーキ効果により、底板43の衝撃による部品の破損や衝撃音が緩和されることになる。
【0041】
これに対して、図10(C)に示すように、給送トレイ12が給送装置本体11aから引き出されると、底板43がガイド部11x1によって下げられて、それにともない回動軸43a(プーリ96)が図の時計方向に回転する。そして、その回転力がタイミングベルト97を介してプーリ・ギア95に伝達されるものの、ワンウェイクラッチ・ギア95bのワンウェイクラッチが作用して、プーリ部95aが相対的に空転して、その回転力は駆動ギア92に伝達されないことになる。すなわち、底板43(回動軸43a)の回転力は、駆動モータ91(駆動ギア92)に伝達されないことになる。したがって、給送トレイ12が給送装置本体11aから引き出されるときに、ブレーキ回路102によるブレーキは作用しないことになる。
【0042】
以下、図11を用いて、制御回路101に関わる切替え制御の一例について説明する。
なお、図11のフローチャートは、画像形成装置制御部100(図8参照)がおこなっても良いし、シート給送装置11に設けられた制御部(不図示)でおこなっても良い。
図11に示すように、まず、シートPの搬送中(給送動作中)であるかが判別される(ステップS1)。詳しくは、シート検知センサ83(図8等参照)によるシートPの検知の有無によって、給送動作中であるか否かが判別される。
その結果、給送動作中であるものと判別された場合には、制御回路101において、回路B(ブレーキ回路)を無効にして、回路A(モータ駆動回路)にて駆動モータ91を駆動する(ステップS2)。
これに対して、ステップS1で給送動作中ではないものと判別された場合には、給送トレイ12がシート給送装置11(画像形成装置本体1)にセットされているかが判別される(ステップS3)。詳しくは、セット検知センサ81(図8等参照)による検知結果によって、セットの有無が判別される。
その結果、給送トレイ12がセットされている場合には、制御回路101において、回路B(ブレーキ回路)を無効にして、回路A(モータ駆動回路)を有効にする(ステップS4)。
これに対して、ステップS3で給送トレイ12がセットされていないものと判別された場合には、制御回路101において回路B(ブレーキ回路)を有効にする(ステップS5)。さらに、透過型フォトセンサ82a(上昇検知手段)によって底板43の上限位置への上昇が検知されて(ステップS7)、その検知から所定時間T1が経過したら(ステップS8)、有効であった回路B(ブレーキ回路)を無効にして、回路A(モータ駆動回路)を有効にする(ステップS9)。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態におけるシート給送装置11は、シートPを収納可能な給送トレイ12が、画像形成装置本体1(装置本体)に対して着脱可能に設置されている。また、駆動モータ91による駆動力が伝達されて給送トレイ12に収納されたシートPを給送する給送機構51が設けられている。また、圧縮スプリング71(付勢手段)によって付勢されて給送機構51によるシートPの給送が可能な位置まで回動軸43aを中心にして回動軸43aとともに回動する昇降可能な底板43が、シートPを載置可能に給送トレイ12に設置されている。また、画像形成装置本体1から給送トレイ12が引き出された引出し状態で、圧縮スプリング71による付勢に抗するように底板43を下降位置で保持する固定フック70(保持機構)と、引出し状態の給送トレイ12が画像形成装置本体1に装着されたときに、固定フック70による底板の43保持を解除する突起部72(解除機構)と、駆動モータ91を駆動制御する制御回路101と、が設けられている。さらに、底板43が回動軸43aを中心に回動して下降位置から上昇する上昇時に、回動軸43aの回転力が駆動モータ91に伝達されるように構成されている。そして、制御回路101は、底板43の上昇時に、その上昇を制動するブレーキ力を駆動モータ91に生じさせるブレーキ回路102が設けられている。
これにより、給送トレイ12の操作性が低下する不具合などが生じることなく、底板43が上昇するときの衝撃を和らげることができる。
【0044】
なお、本実施の形態では、モノクロの画像形成装置1に設置されるシート給送装置11に対して本発明を適用したが、カラーの画像形成装置に設置されるシート給送装置に対しても当然に本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、電子写真方式の画像形成装置1に設置されるシート給送装置11に対して本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されることなく、その他の方式の画像形成装置(例えば、インクジェット方式の画像形成装置や、孔版印刷機などである。)に設置されるシート給送装置に対しても本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、3段の第1~第3給送トレイ12~14を画像形成装置1に設置したが、1段又は2段、さらには4段以上の給送トレイ(画像形成装置の外部に露呈する手差し用の給送トレイなども含む。)を画像形成装置に設置することもできる。そして、実施の形態において説明したように、1段の給送トレイや複数段のそれぞれの給送トレイについて本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、画像形成装置1に設置されるシート給送装置11に対して本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されることなく、画像形成装置の周辺機である大容量給紙トレイや給紙ユニットに設置されるシート給送装置に対しても本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、ピックアップローラ52、フィードローラ53、分離ローラ54からなる給送機構51が設けられたシート給送装置11に対して本発明を適用したが、それ以外の方式の給送機構が設けられたシート給送装置に対しても、当然に本発明を適用することができる。
そして、それらのような場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0045】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【0046】
なお、本願明細書等において、「シート」とは、用紙の他に、コート紙、ラベル紙、OHPシート、フィルムシート等のシート状の記録媒体のすべてを含むものと定義する。
また、本願明細書等において、「底板」とは、板状の部材に限定されることなく、その表面(上面)にシートを載置可能なもののすべてを含むものと定義する。
【符号の説明】
【0047】
1 画像形成装置(画像形成装置本体)、
11 シート給送装置、
11a 給送装置本体、
11x 側板、
11x1 ガイド部、
12 第1給送トレイ(給送トレイ)、
43 底板(昇降部材)、
43a 回動軸、
43x 当接部、
51 給送機構、
52 ピックアップローラ、
70 固定フック(保持機構)、
70a 支軸、
71 圧縮スプリング(付勢手段)、
72 突起部(解除機構)、
81 セット検知センサ(セット検知手段)、
82a 透過型フォトセンサ(上昇検知手段)、
82b フィラー(上昇検知手段)、
83 シート検知センサ、
90 駆動機構、
91 駆動モータ、
92 駆動ギア、
93 ギア列(駆動伝達機構)、
94 トレイ側駆動伝達機構、
95 プーリ・ギア、
95a プーリ部、
95b ワンウェイクラッチ・ギア(制限手段)、
101 制御回路、
102 ブレーキ回路(ショートブレーキ回路)、
P シート。
【0048】
なお、本発明における態様は、例えば、以下の通り付記1~11の組み合わせとすることもできる。
(付記1)
装置本体に対して着脱可能に設置されて、シートを収納可能な給送トレイと、
駆動モータによる駆動力が伝達されて前記給送トレイに収納されたシートを給送する給送機構と、
シートを載置可能に前記給送トレイに設置されて、付勢手段によって付勢されて前記給送機構によるシートの給送が可能な位置まで回動軸を中心にして前記回動軸とともに回動する昇降可能な底板と、
前記装置本体から前記給送トレイが引き出された引出し状態で、前記付勢手段による付勢に抗するように前記底板を下降位置で保持する保持機構と、
前記引出し状態の前記給送トレイが前記装置本体に装着されたときに、前記保持機構による前記底板の保持を解除する解除機構と、
前記駆動モータを駆動制御する制御回路と、
を備え、
前記底板が前記回動軸を中心に回動して前記下降位置から上昇する上昇時に、前記回動軸の回転力が前記駆動モータに伝達され、
前記制御回路は、前記上昇時に、その上昇を制動するブレーキ力を前記駆動モータに生じさせるブレーキ回路を具備したことを特徴とするシート給送装置。
(付記2)
前記底板が前記回動軸を中心に回動して上昇位置から前記下降位置に下降する下降時に、前記回動軸の回転力が前記駆動モータに伝達されないように制限する制限手段を備えたことを特徴とする付記1に記載のシート給送装置。
(付記3)
前記制限手段は、前記駆動モータによって前記給送機構が駆動されているときに、前記駆動モータの駆動力を前記回動軸に伝達しないように構成されたことを特徴とする付記2に記載のシート給送装置。
(付記4)
前記制限手段は、前記駆動モータのモータ軸に設置された駆動ギアに噛合するとともに、前記回動軸の回転力を前記駆動ギアに伝達可能なワンウェイクラッチ・ギアであることを特徴とする付記1又は付記3に記載のシート給送装置。
(付記5)
前記制限手段は、前記給送トレイに設置されたことを特徴とする付記2~付記4のいずかに記載のシート給送装置。
(付記6)
前記制御回路は、前記ブレーキ回路の有効・無効を切替え可能に構成されたことを特徴とする付記1~付記5のいずれかにに記載のシート給送装置。
(付記7)
前記制御回路は、前記給送機構によってシートの給送がおこなわれているときには前記ブレーキ回路を無効にすることを特徴とする付記6に記載のシート給送装置。
(付記8)
前記給送トレイが前記装置本体にセットされているか否かを検知するセット検知手段を備え、
前記制御回路は、前記セット検知手段によって前記給送トレイのセットが検知されているときには前記ブレーキ回路を無効にして、前記セット検知手段によって前記給送トレイのセットが検知されていないときには前記ブレーキ回路を有効にすることを特徴とする付記6又は付記7に記載のシート給送装置。
(付記9)
前記底板が前記下降位置から前記給送が可能な位置まで上昇したか否かを検知する上昇検知手段を備え、
前記制御回路は、前記上昇検知手段によって前記底板の前記給送が可能な位置までの上昇が検知されたときに、その検知から所定時間が経過した後に前記ブレーキ回路を有効から無効に切替えることを特徴とする付記8に記載のシート給送装置。
(付記10)
前記所定時間は、前記上昇時において前記底板が前記給送が可能な位置に達したときに生じる衝撃エネルギが減衰しきる時間よりも長い時間であることを特徴とする付記9に記載のシート給送装置。
(付記11)
付記1~付記10のいずれかに記載のシート給送装置を前記装置本体としての画像形成装置本体に備えたことを特徴とする画像形成装置。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【特許文献1】特開平7-309458号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11