(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180180
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】酸基及び重合性不飽和基含有樹脂、硬化性樹脂組成物、ソルダーレジスト用樹脂材料、硬化物、絶縁材料及びレジスト部材
(51)【国際特許分類】
C08F 8/14 20060101AFI20241219BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20241219BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20241219BHJP
C08F 290/12 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C08F8/14
C08L33/14
C08K5/09
C08F290/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099669
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(72)【発明者】
【氏名】山田 駿介
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
4J002BG07W
4J002BG07X
4J002EF126
4J002FD206
4J002GP03
4J100AL03P
4J100AL10Q
4J100BA03H
4J100BA15H
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4J100DA61
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4J100HC29
4J100HE05
4J100JA37
4J127AA01
4J127AA03
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4J127BB041
4J127BB081
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4J127BC031
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4J127BG101
4J127BG161
4J127BG171
4J127CB371
4J127DA10
4J127DA25
4J127EA13
4J127FA18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】環境負荷を低減し、硬化時において、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性に優れた、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂、硬化性樹脂組成物及びソルダーレジスト用樹脂材料、並びにその硬化物、絶縁材料及びレジスト部材を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリレート化合物(a1)、第1重合性不飽和基及び第1反応性官能基を1以上有する化合物(a2)を必須の反応原料(i)とする(メタ)アクリル共重合体(A)と、(メタ)アクリレート化合物(a1)及び化合物(a2)とは異なる化学構造を備え、かつ第2重合性不飽和基及び前記第1反応性官能基と反応し得る第2反応性官能基を有する化合物(B)と、多塩基酸無水物(C)と、を必須の反応原料(1)とする酸基及び重合性不飽和基含有樹脂であって、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂中の塩素原子含有量が100質量ppm以下であることを特徴とする、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレート化合物(a1)、第1重合性不飽和基及び第1反応性官能基を1以上有する化合物(a2)を必須の反応原料(i)とする(メタ)アクリル共重合体(A)と、
前記(メタ)アクリレート化合物(a1)及び前記化合物(a2)とは異なる化学構造を備え、かつ第2重合性不飽和基及び前記第1反応性官能基と反応し得る第2反応性官能基を有する化合物(B)と、
多塩基酸無水物(C)と、を必須の反応原料(1)とする酸基及び重合性不飽和基含有樹脂であって、
前記酸基及び重合性不飽和基含有樹脂中の塩素原子含有量が100質量ppm以下であることを特徴とする、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル共重合体(A)と前記多塩基酸無水物(C)との混合割合が、前記(メタ)アクリル共重合体(A)が有する第1反応性官能基1モルに対して、前記多塩基酸無水物(C)が0.25~0.95モルの範囲である、請求項1に記載の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂。
【請求項3】
前記第1反応性官能基が、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂。
【請求項4】
前記第1重合性不飽和基が、(メタ)アクリロイル基、アリル基、イソプロペニル基、1-プロペニル基、スチリル基、スチリルメチル基、マレイミド基、ビニルエーテル基及び(メタ)アクリルアミド基からなる群より選ばれる1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル共重合体(A)と前記化合物(B)との混合割合が、前記(メタ)アクリル共共重合体(A)が有する第1反応性官能基1モルに対して、前記化合物(B)が有する前記第2反応性官能基が、0.5~1.05モルとなる範囲である、請求項1又は2のいずれか1項記載の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂と、光重合開始剤とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記硬化性樹脂組成物が、さらに、前記酸基及び重合性不飽和基含有樹脂以外のその他の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂を含有するものである、請求項6に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記硬化性樹脂組成物が、さらに、有機溶媒及び/又は硬化剤を含有する、請求項6に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記硬化性樹脂組成物が、さらに、白色顔料を含有するものである、請求項6に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項6に記載の硬化性樹脂組成物からなることを特徴とするソルダーレジスト用樹脂材料。
【請求項11】
請求項6に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項12】
請求項11に記載の硬化物からなることを特徴とする絶縁材料。
【請求項13】
請求項11に記載の硬化物からなることを特徴とするレジスト部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂、硬化性樹脂組成物、ソルダーレジスト用樹脂材料、硬化物、絶縁材料及びレジスト部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年における電子部品の高密度化実現のために、プリント配線板は微細化(ファイン化)、多層化及びワンボード化の一途をたどっており、実装方式も、表面実装技術(SMT)へと推移している。そのため、プリント配線板上に電子部品を実装してはんだ付けする際に、実装部以外の部分にはんだが付着することを防止したり、配線の酸化又は腐食を半永久的に防止する被膜を形成する材料としてのソルダーレジスト膜も、ファイン化、高Tg、高解像性、高精度、高信頼性の要求が高まっている。
さらに、プリント配線板向けのソルダーレジスト用硬化性組成物として用いる場合、少ない露光量で硬化すること、硬化物における耐熱性、耐熱黄変性等に優れることなども求められている。
例えば、特許文献1には、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂とアクリル酸と、無水フタル酸とを反応させて得られる中間体に、更にテトラヒドロ無水フタル酸を反応させて得られる酸基含有エポキシアクリレート樹脂を含む感光性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第1996/011239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1では、マイグレーションに代表される絶縁信頼性を検討しておらず、当該絶縁信頼性について改良の余地があった。特に、溶出した金属イオンが電極間又は配線間を移動して他方の電極又は配線等から生成する現象であるマイグレーションは、塩素原子などのハロゲン原子の含有量に関係するため、系内の塩素含有量を低減する技術が要求される。また、近年の循環型社会形成への潮流を受けて、バイオマスを利活用する、あるいはハロゲンフリー等のハロゲンの使用量を低減するといった環境負荷低減に関する技術に注目が集まっている。
そこで、本開示が解決しようとする技術的課題は、環境負荷を低減し、硬化時において、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性に優れた、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂、硬化性樹脂組成物及びソルダーレジスト用樹脂材料、並びにその硬化物、絶縁材料及びレジスト部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、絶縁層、レジスト材料あるいは基材に含まれるイオン成分(例えば、塩素原子などのハロゲン原子)が絶縁信頼性の低下に影響することから、塩素原子量を低減し、かつ特定の(メタ)アクリル共重合体(A)と、特定の化合物(B)と、多塩基酸無水物(C)とを必須の反応原料(1)とする酸基及び重合性不飽和基含有樹脂及び当該樹脂を含有する硬化性樹脂組成物を用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、以下の[1]~[9]のいずれかの本発明を完成させた。
また、塩素原子量が低減された酸基及び重合性不飽和基含有樹脂あるいは当該樹脂を含有する硬化性樹脂組成物の一態様として、当該樹脂又は当該硬化性樹脂組成物中のバイオマス炭素含有率(%)を所定量にすることにより、ハロゲンフリーであり、かつ化石燃料の使用量が少ない環境負荷低減の効果も発揮しうる。
【0006】
[1](メタ)アクリレート化合物(a1)、第1重合性不飽和基及び第1反応性官能基を1以上有する化合物(a2)を必須の反応原料(i)とする(メタ)アクリル共重合体(A)と、
前記(メタ)アクリレート化合物(a1)及び前記化合物(a2)とは異なる化学構造を備え、かつ第2重合性不飽和基及び前記第1反応性官能基と反応し得る第2反応性官能基を有する化合物(B)と、
多塩基酸無水物(C)と、を必須の反応原料(1)とする酸基及び重合性不飽和基含有樹脂であって、
前記酸基及び重合性不飽和基含有樹脂中の塩素原子含有量が100質量ppm以下であることを特徴とする、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂。
【0007】
[2]前記(メタ)アクリル共重合体(A)と前記多塩基酸無水物(C)との混合割合が、前記(メタ)アクリル共重合体(A)が有する第1反応性官能基1モルに対して、前記多塩基酸無水物(C)が0.25~0.95モルの範囲である、[1]に記載の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂。
【0008】
[3]前記第1反応性官能基が、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基及びアルコキシ基からなる群より選ばれる1種又は2種以上である、[1]又は[2]に記載の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂。
【0009】
[4]前記第1重合性不飽和基が、(メタ)アクリロイル基、アリル基、イソプロペニル基、1-プロペニル基、スチリル基、スチリルメチル基、マレイミド基、ビニルエーテル基及び(メタ)アクリルアミド基からなる群より選ばれる1種又は2種以上である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂。
【0010】
[5]前記(メタ)アクリル共重合体(A)と前記化合物(B)との混合割合が、前記(メタ)アクリル共共重合体(A)が有する第1反応性官能基1モルに対して、前記化合物(B)が有する前記第2反応性官能基が、0.5~1.05モルとなる範囲である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂。
【0011】
[6]上記[1]~[5]のいずれかに記載の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂と、光重合開始剤とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【0012】
[7]前記硬化性樹脂組成物が、前記酸基及び重合性不飽和基含有樹脂以外のその他の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂をさらに含有するものである、[6]に記載の硬化性樹脂組成物。
【0013】
[8]前記硬化性樹脂組成物が、有機溶媒及び/又は硬化剤をさらに含有する、[6]又は[7]に記載の硬化性樹脂組成物。
【0014】
[9]前記硬化性樹脂組成物が、白色顔料をさらに含有するものである、[6]~[8]のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【0015】
[10]上記[6]~[9]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物からなることを特徴とするソルダーレジスト用樹脂材料。
【0016】
[11]上記[6]~[10]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
【0017】
[12]上記[11]に記載の硬化物からなることを特徴とする絶縁材料。
【0018】
[13]上記[11]に記載の硬化物からなることを特徴とするレジスト部材。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、環境負荷を低減し、硬化時において、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性に優れた、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂、硬化性樹脂組成物及びソルダーレジスト用樹脂材料、並びにその硬化物、絶縁材料及びレジスト部材を提供しうる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態(「本実施形態」と称する。)について詳細に説明するが、本開示は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0021】
<用語>
本明細書における「反応原料」とは、化合又は分解といった化学反応により目的の化合物を得るために用いられ、目的の化合物の化学構造を部分的に構成する化合物をいい、触媒及び溶媒は除外される。本明細書では特に、「反応原料」とは、目的の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂又は(メタ)アクリル共重合体(A)を化学反応により得るための前駆体をいう。
本明細書における「構造単位」とは、反応又は重合時に形成される化学構造の(繰り返し)単位をいい、換言すると、反応又は重合よりに形成される生成化合物において、当該反応又は重合に関与する化学結合の構造以外の部分構造をいい、いわゆる残基をいう。
本明細書における「芳香族基」は、炭素原子数3~30の芳香族環を有することが好ましく、炭素原子数4~26の芳香族環を有することがより好ましい。そして、本明細書における「芳香族基」は、当該芳香族基中の芳香族環の水素原子が、置換基、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。また、「芳香族基」は、複素芳香族を含み、「芳香族基」中の-CH2-又は-CH=が互いに隣接しないよう、-O-、-S-、-NH-又は-N=に置換されてもよい。当該芳香族環の種類は、例えば、単環芳香族環、縮環芳香族環又は環集合芳香族環等が挙げられる。前記単環芳香族環としては、例えば、ベンゼン、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン等が挙げられる。前記縮環芳香族環としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、プテリジン、クマリン、インドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、アクリジン等が挙げられる。前記環集合芳香族環としては、例えば、ビフェニル、ビナフタレン、ビピリジン、ビチオフェン、フェニルピリジン、フェニルチオフェン、テルフェニル、ジフェニルチオフェン、クアテルフェニル等が挙げられる。また、当該芳香族基中の芳香族環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。なお、二価の芳香族基とは、「芳香族基」中の水素原子を2つ除いた基をいう。
本明細書における「アリール基」は、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントリル基、アズレニル基、インデニル基、インダニル基、テトラリニル基等が挙げられる。また、当該「アリール基」は、当該アリール基中の芳香族環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数2~12のアルケニル基又はハロゲン原子に置換されてもよい。なお、「アリーレン基」は、前記「アリール基」から任意の水素原子を1つ除いた二価の基が挙げられる。
本明細書における「アラルキル基」としては、例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ビフェニル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。当該アラルキル基中の芳香族環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数2~12のアルケニル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。なお、「アラルキレン基」は、前記「アラルキル基」から任意の水素原子を1つ除いた二価の基が挙げられる。
本明細書における「アリールオキシ基」は、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、アンスリルオキシ基、フェナントリルオキシ基又はピレニルオキシ基等が挙げられる。
本明細書における「アリールチオ基」は、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、アンスリルチオ基、フェナントリルチオ基又はピレニルチオ基等のアリールチオ基が挙げられる。
本明細書における「アルキル基」は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、(n-)ヘプチル基、(n-)オクチル基、(n-)ノニル基、(n-)デシル基、(n-)ウンデシル基、(n-)ドデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基又はシクロノニル基が挙げられる。アルキレン基は、上記アルキル基から1つの水素原子を除いた基である。アルキレンオキサイド基としては、例えば、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、ブチレンオキサイド基、ペンチレンオキサイド基等が挙げられる。
本明細書における「シクロアルキル基」は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基又はアダマンチル基等が挙げられる。
本明細書における「アルキルチオ基」は、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、オクチルチオ基又は2-エチルヘキシルチオ基が挙げられる。
本明細書における「アルケニル基」は、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ビニル基、アリル基又はイソプロペニル基等が挙げられる。
本明細書における「アルコキシ基」は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基又はノニルオキシ基等が挙げられる。
本明細書における「ハロゲン原子」は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子等が挙げられる。
本明細書における「一価の有機基」は、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数2~6のアルケニル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数6~20のアリール基又は炭素原子数7~20のアラルキル基であることが好ましい。また、当該アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基中の1個又は隣接しない2個以上の-CH2-は、-O-、-COO-又は-OCO-で置換されてもよい。また、「二価の有機基」は、上記一価の有機基中の任意の水素原子を1つ取り除いた基をいう。さらに、「三価の有機基」は、上記一価の有機基中の任意の水素原子を2つ取り除いた基をいう。そして、「六価の有機基」は、上記一価の有機基中の任意の水素原子を5つ取り除いた基をいう。
【0022】
[酸基及び重合性不飽和基含有樹脂]
本開示は、(メタ)アクリル共重合体(A)と、第2重合性不飽和基及び第2反応性官能基を有する化合物(B)と、多塩基酸無水物(C)と、を必須の反応原料(1)とする酸基及び重合性不飽和基含有樹脂である。より詳細には、本開示の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂は、(メタ)アクリル共重合体(A)由来の構造単位と、第2重合性不飽和基及び第2反応性官能基を有する化合物(B)由来の構造単位と、多塩基酸無水物(C)由来の構造単位とを分子内に有する。
そして、前記(メタ)アクリル共重合体(A)は、(メタ)アクリレート化合物(a1)と、第1重合性不飽和基及び第1反応性官能基を1以上有する化合物(a2)とを必須の反応原料(i)とする共重合体である。
また、前記第2重合性不飽和基及び第2反応性官能基を有する化合物(B)は、第2重合性不飽和基と、前記第1反応性官能基と反応し得る第2反応性官能基とを有し、かつ前記(メタ)アクリレート化合物(a1)及び前記化合物(a2)とは異なる化学構造を備える。
さらには、前記酸基及び重合性不飽和基含有樹脂中の塩素原子含有量が100質量ppm以下である。
これにより、環境負荷を低減し、硬化時において、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性に優れた、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂を提供しうる。本実施形態の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂を、特にソルダーレジスト用樹脂材料、絶縁材料及びレジスト部材などに使用する場合、優れた、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変を発揮しうる。
【0023】
また、反応原料(i)は、必要により、多官能モノマー化合物(a3)及びリン含有(メタ)アクリレート化合物(a4)からなる群から選択される1種又は2種以上をさらに含有してもよい。これにより、硬化時において、より優れた、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性を発揮しうる。
さらには、反応原料(1)として、アルコール性水酸基とカルボキシル基を有する化合物(E)をさらに含有してもよい。
より詳細には、本開示の好ましい酸基及び重合性不飽和基含有樹脂は、(メタ)アクリル共重合体(A)由来の構造単位と、第2反応性官能基を有する化合物(B)由来の構造単位と、多塩基酸無水物(C)由来の構造単位とを分子内に必須に有し、必要により、アルコール性水酸基とカルボキシル基とを有する化合物(E)由来の構造単位を分子内に有する。
【0024】
一般に、絶縁材料から構成される基板上若しくは内部に導体の配線又は電子部品が取り付けられているプリント配線基板において、基板の電極間に電圧を印加すると配線パターンの陽極部が電子を受け取ることにより、当該陽極部の表面から金属イオンが基板表面又は基材内部に含まれる水分又はイオン物質に溶け出しやすい状態になる。そして、当該金属イオンが前記水分又はイオン物質に溶け出すと、電場によるクローン力によって陰極側に前記金属イオンが移動し電子交換で再び金属(いわゆるデンドライト)として生成されうる。このような電極を構成する金属のイオン化及び溶出によりデンドライトが大きく成長すると、絶縁劣化を引き起こす原因となる。特に、水分又はイオン物質中に、レジスト材料あるいは基材に含まれるイオン成分(例えば、塩素原子などのハロゲン原子)が所定量以上存在すると、金属イオンが溶出しやすくなるため、マイグレーションが進行しやすくなり、結果として絶縁信頼性が低下しうる。
しかし、本実施形態の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂では、当該酸基及び重合性不飽和基含有樹脂に含まれる塩素原子の含有量を低減しているため、このような絶縁信頼性の低下を抑制・防止することができると考えられる。さらには、ハロゲン量を低減しているため、環境負荷を低減できると考えられる。
後述するように、硬化性樹脂組成物の成分としてエポキシ基を有する化合物を使用する場合、工業的にはエピクロロヒドリンなどの塩素原子含有化合物を用いてエポキシ基を所望の化合物に導入していることから、高い絶縁信頼性を維持するためには系内において残存する塩素原子の量が無視できなくなる。
【0025】
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂中の塩素原子含有量は100質量ppm以下であり、80質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以下であることがより好ましい。なお、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂中の塩素原子含有量の下限は、好ましくは0質量ppm以上であり、より好ましくは0質量ppm超であり、検出限界の観点を踏まえると、10質量ppm超でありうる。
本明細書において、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂、反応原料(i)又は硬化性樹脂組成物中の塩素原子の含有量の算出方法は、以下の通りである。
酸基及び重合性不飽和基含有樹脂中、第1重合性不飽和基及び第1反応性官能基を1以上有する化合物(a2)中、第2重合性不飽和基及び第2反応性官能基を有する化合物(B)中、又は硬化性樹脂組成物中の塩素原子の含有量は、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂、化合物(a2)、化合物(B)又は硬化性樹脂組成物を、燃焼管燃焼法により高温で燃焼・分解させ、その分解ガスを吸収液に吸収させてイオンクロマトグラフィーで定量することによって測定した。当該吸収液として、過酸化水素水及び抱水ヒドラジン含有の超純水を用いた。
また、前記イオンクロマトグラフィーは、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製のイオンクロマトグラフ装置「イオンクロマトグラフICS-1500型(検出器:電気伝導度計)」とイオンクロマトグラフィー用カラム「サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製 AS-12A」を用いて行った。
溶離液は、濃度0.3mMの炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)水溶液と濃度2.7mMの炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液の混合溶液であり、流量は1.5mL/minである。
【0026】
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂中又は硬化性樹脂組成物中の塩素原子の含有量を100質量ppm以下にする手段としては、例えば以下の(1)及び/又は(2)の手段が挙げられる。
(1)酸基及び重合性不飽和基含有樹脂又は硬化性樹脂組成物を構成する成分及び当該成分を合成する原料・触媒・溶媒・添加剤に、塩素原子を含まない化合物を使用する。
(2)酸基及び重合性不飽和基含有樹脂又は硬化性樹脂組成物を構成する成分及び当該成分を合成する原料・触媒・溶媒・添加剤に対して、塩素原子を除去する精製工程を行うなどが挙げられる。
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂中又は硬化性樹脂組成物中の塩素原子の含有量を100質量ppm以下にする手段としては、分取HPLCを用いて公知の条件により精製する及び/又は酸基及び重合性不飽和基含有樹脂又は硬化性樹脂組成物を構成する成分及び当該成分を合成する原料・触媒・溶媒・添加剤に、塩素原子を含まない化合物を使用する手段を用いることが好ましい。
前記酸基及び重合性不飽和基含有樹脂又は硬化性樹脂組成物を構成する成分及び当該成分を合成する原料・触媒・溶媒・添加剤に、塩素原子を含まない化合物を使用する手段としては、後述するように、塩素原子の含有量が10質量ppm以下、好ましくは検出限界以下の反応原料(i)、例えば、第1重合性不飽和基及び第1反応性官能基を1以上有する化合物(a2)を使用することが好ましい。
より詳細には、第1重合性不飽和基及び第1反応性官能基を1以上有する化合物(a2)の好ましい態様としては、前記塩素原子の含有量が10質量ppm以下、好ましくは検出限界以下の第1重合性不飽和基及び第1反応性官能基を1以上有する化合物(a2)が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物、あるいは(メタ)アクリル酸系化合物が挙げられる。
第1重合性不飽和基及び第1反応性官能基を1以上有する化合物(a2)が、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物である場合、(メタ)アクリル系化合物(例えば、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステル)にエピクロロヒドリンを作用させ、グリシジル化して合成された化合物と同様の化学構造を有する化合物、あるいは、エポキシ基及び水酸基含有化合物(例えば、グリシドール)と前記(メタ)アクリル系化合物、特に(メタ)アクリル酸エステルとのエステル交換反応によって得られる化合物と同様の化学構造を有する化合物であることが好ましい。工業的観点から言えば、前者の反応の方が高い収率を示すが、エピクロロヒドリンは分子中に塩素原子を有するため、得られるエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物には、500ppm~数パーセント程度の濃度の塩素化合物が副生物として混入している。したがって、塩素原子の含有量の観点から言えば、後者の方が好ましいが、前者を精製して使用してもよい。
また、第1重合性不飽和基及び第1反応性官能基を1以上有する化合物(a2)は、(メタ)アクリル酸系化合物(例えば、(メタ)アクリル酸)であってもよい。この場合、第2重合性不飽和基及び第2反応性官能基を有する化合物(B)が、エポキシ基及び(メタ)アクリル基を有する化合物(例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基及び水酸基含有化合物(例えば、グリシドール)と(メタ)アクリル酸系化合物等との反応物)であることが好ましい。一方、第1重合性不飽和基及び第1反応性官能基を1以上有する化合物(a2)が、例えばエポキシ基及び(メタ)アクリル基を有する化合物(例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基及び水酸基含有化合物(例えば、グリシドール)と(メタ)アクリル酸系化合物等との反応物)である場合、第2重合性不飽和基及び第2反応性官能基を有する化合物(B)が、例えば、(メタ)アクリル酸であることが好ましい。
そのため、本実施形態において、第1重合性不飽和基及び第1反応性官能基を1以上有する化合物(a2)の一例であるエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物は、エポキシ基及び水酸基含有化合物(例えば、グリシドール)と、(メタ)アクリル系化合物(例えば、(メタ)アクリル酸メチル等に代表される(メタ)アクリル酸アルキル)とを反応原料とする化合物であることが好ましい。また、第1重合性不飽和基及び第1反応性官能基を1以上有する化合物(a2)の他の例である(メタ)アクリル酸系化合物は、(メタ)アクリル酸であることが好ましい。
これにより、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂中又は硬化性樹脂組成物中の塩素原子の含有量を100質量ppm以下にすることができる。その結果、ハロゲン量が少ないことに起因する環境負荷低減の効果を発揮する。
また、上記エポキシ基及び水酸基含有化合物(例えば、グリシドール)としては、後述するように、バイオマス材料を用いて製造した化合物、すなわちバイオマス炭素含有率(%)が20%以上であるエポキシ基及び水酸基含有化合物であることがより好ましい。これにより、化石燃料の使用量を低減した環境負荷低減の効果を発揮する。
上記エポキシ基及び水酸基含有化合物のバイオマス炭素含有率(%)の好ましい範囲は、22%以上100%以下、34%以上95%以下、46%以上83%以下でありうる。
【0027】
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(固形分)のバイオマス炭素含有率(%)の下限は、10%以上、13%以上、15%以上、17%以上、20%以上、25%以上、35%以上の順で好ましい。一方、前記バイオマス炭素含有率(%)の上限は、100%以下、90%以下、80%以下、73%以下、68%以下の順で好ましい。当該上限及び下限は任意に組み合わせできる。例えば、好ましい酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(固形分)のバイオマス炭素含有率(%)の範囲は、10%以上であることが好ましく、10%以上90%以下であることがより好ましく、20%以上80%以下であることがさらに好ましく、22%以上73%以下であることがさらに好ましい。酸基及び重合性不飽和基含有樹脂のバイオマス炭素含有率(%)が10%以上であると、環境負荷低減の効果を発揮することができる。
本明細書における「バイオマス炭素含有率(%)」は、放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)に対して補正割合である0.93をかけた補正値であって、かつ前記補正値が100%以上の場合は、100%とみなしている。
本明細書における放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)とは、バイオマス由来成分の炭素濃度(質量比率)を示すものであり、いわゆるバイオマスの配合比率に関係する。
より詳細には、ASTM-D6866(特にASTM D6866 B法)に準拠した放射性炭素(14C)測定方法によって得られた放射性炭素(14C)の含有比の値である。放射性炭素(14C)は、5730年の半減期で窒素(14N)に放射壊変する性質を有することが知られている。そして、地球上において宇宙から降り注ぐ宇宙線の作用により絶えず極微量生成される放射性炭素(14C)は、二酸化炭素14CO2に酸化され大気中に拡散した後に食物連鎖の過程で動植物の中に取り込まれ、当該食物連鎖を介して環境中を循環しながら半減期に従って消滅する。そのため、放射性炭素(14C)測定方法は、化石燃料は放射性炭素(14C)を実質的に含まず、かつバイオマス(又は生物)由来炭素は成長した時期の大気中の放射性炭素(14C)を吸収していることを利用しており、バイオマス材料(又は生物)に含まれる炭素中の放射性炭素(14C)比率から放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)を推定する方法である。したがって、放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)の値が大きいほど、化石燃料の使用量が少なく、環境負荷低減の効果を発揮しうる。そのため、放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)の値が、再生可能な、生物由来の有機性資源であるバイオマスの配合比率を示す指標(=バイオマス炭素含有率(%))に関係する。
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂又は第1重合性不飽和基及び第1反応性官能基を1以上有する化合物(a2)(例えば、後述のエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物)中の全炭素原子中に含まれる放射性炭素(14C)の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本開示においては、後述の実施例の欄で記載する方法を用いて、以下の式(1)により、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂の放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)を算出している。そして、下記の式(4)に示すように、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂の放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)に0.93をかけて、1950年以降から現代に至る大気圏核実験の影響を加味した値を酸基及び重合性不飽和基含有樹脂のバイオマス炭素含有率(%)とした。
式(1):
放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)=[{酸基及び重合性不飽和基含有樹脂中の放射性炭素(14C)÷酸基及び重合性不飽和基含有樹脂中の炭素(12C)}/{標準物質の放射性炭素(14C)/標準物質の炭素(12C)}×100
(上記式(1)中、標準物質は、米国標準技術研究所が年代測定法の標準物質として供給するシュウ酸(SRM4990C)を後述の実施例の欄に記載の測定用のグラファイトと同じ前処理方法でグラファイトに変換したものを使用した。)
式(4):
バイオマス炭素含有率(%)=放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)×0.93
なお、1950年以降の大気圏核実験の影響を受けて、人工的に大気中に注入された放射性炭素(14C)により、通常の約1.5倍量の放射性炭素(14C)が観測されている。しかし、時間の経過とともに徐々に減少しており、現在の値は107.5(pMC%)付近である。そのため、本開示においても、ASTM D6866の規格と同様に放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)に0.93(=100/107.5)をかけた値をバイオマス炭素含有率(%)と規定している。ただし、上記式(4)を用いた手法を採用しても100%以上の値が算出される場合が生じる。そこで、本開示ではASTMの規格と同様に、バイオマス炭素含有率(%)の値が100%以上の値である場合、100%とみなしている。
本実施形態において、放射性炭素(14C)の濃度測定は、タンデム加速器及び質量分析計を組合せた加速器質量分析(AMS:Accelerator Mass Spectrometry)によって、分析する試料に含まれる炭素原子の同位体(具体的には12C,13C,14Cが挙げられる。)を原子の重量差を利用して加速器により物理的に分離し、同位体の原子一つ一つの存在量を計測する方法を用いて測定している。
また、前記分析する試料については、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂、(メタ)アクリル共重合体(A)、第1重合性不飽和基及び第1反応性官能基を1以上有する化合物(a2)(例えば、エポキシ基及び水酸基含有化合物)、化合物(B)、並びに硬化性組成物等であり、前処理が必要となる。具体的には、後述の実施例の欄に記載した通り、これら試料に含まれる炭素を酸化処理し、すべて二酸化炭素へと変換する。更に、得られた二酸化炭素を水や窒素と分離し、二酸化炭素を還元処理し、固形炭素であるグラファイトへと変換する。この得られたグラファイトを測定用試料とし、当該試料にCs+などの陽イオンを照射して炭素の負イオンを生成させ、3MVタンデム加速器を用いて炭素イオンを加速し、負イオンから陽イオンへ荷電変換させ、質量分析電磁石により12C3+、13C3+、14C3+の進行する軌道を分離し、14C3+は静電分析器により測定を行う方法を本実施形態の加速器質量分析は採用している。
なお、前処理した試料から得られたグラファイトに含まれる炭素同位体12C、13C及び14Cは、同じ速度で加速され質量分析電磁石の磁場により、飛翔ラインが曲げられる。その際、12C、13Cは内側に、最も重い14Cが曲折部の一番外側を飛翔する。また、12C、13Cの量は存在数が多いため電流としてファラディカップ検出器により、14Cは電離箱形のイオン検出器により、それぞれ1個ずつ、計数される。
【0028】
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(固形分)の酸価は、より優れた、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性を発揮しうる硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、50~140mgKOH/gの範囲であることが好ましく、60~120mgKOH/gの範囲であることがより好ましい。なお、本願発明において酸基及び重合性不飽和基含有樹脂の酸価はJIS K 0070(1992)の中和滴定法にて測定される値である。
【0029】
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂中の(メタ)アクリル共重合体(A)由来の構造単位は、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂の総量(固形分の総量)に対して、概ね20~80質量%であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましい。
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂中の化合物(B)由来の構造単位は、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂の総量(固形分の総量)に対して、概ね5~50質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましい。
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂中の多塩基酸無水物(C)由来の構造単位は、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂の総量(固形分の総量)に対して、概ね10~50質量%であることが好ましく、15~45質量%であることがより好ましい。
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂は、当該樹脂単体であっても、あるいは当該樹脂と任意成分である添加剤との混合物であってもよい。
以下、本実施形態の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂の反応原料(1)の必須成分である、(メタ)アクリル共重合体(A)、第2重合性不飽和基及び第2反応性官能基を有する化合物(B)及び多塩基酸無水物(C)、並びに任意成分である、アルコール性水酸基とカルボキシル基を有する化合物(E)及び添加剤について説明する。
【0030】
((メタ)アクリル共重合体(A))
本実施形態の(メタ)アクリル共重合体(A)は、(メタ)アクリレート化合物(a1)、及び第1重合性不飽和基及び前記第1反応性官能基をそれぞれ1又は2以上有する化合物(a2)を必須の反応原料(i)とする共重合体である。また、前記反応原料(i)は、必要により多官能モノマー化合物(a3)及びリン含有(メタ)アクリレート化合物(a4)からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
本開示の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂を構成する構造単位として、(メタ)アクリル共重合体(A)由来の構造単位を含むことにより、環境負荷を低減し、硬化時において、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性に優れた効果を発揮しうる。
本実施形態の(メタ)アクリル共重合体(A)(固形分)のバイオマス炭素含有率(%)の下限は、例えば、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上、よりさらに好ましくは9%以上、さらにより好ましくは12%以上でありうる。一方、当該バイオマス炭素含有率(%)の上限は、好ましくは100%以下、より好ましくは90%以下、さらに好ましくは80%以下、よりさらに好ましくは70%以下でありうる。前記上限及び下限は適宜組み合わせすることができる。
【0031】
以下、本実施形態の(メタ)アクリル共重合体(A)の反応原料(i)の各成分について説明する。
<(メタ)アクリレート化合物(a1)(以下、化合物(a1)とも称する。)>
本開示の(メタ)アクリル共重合体(A)を構成する構造単位として、(メタ)アクリレート化合物(a1)由来の構造単位を含むことにより、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性に優れた効果を発揮しうる。
本実施形態の(メタ)アクリレート化合物(a1)は、分子内に1又は2個の(メタ)アクリロ基(CH2=CR-C≡(Rは水素原子又はメチル基))を有する単官能又は二官能(メタ)アクリレートモノマーであり、かつ-C(=O)-O-C≡構造を有する化合物である。そして、(メタ)アクリレート化合物(a1)としては、水酸基を有さないことが好ましい。
【0032】
本実施形態の(メタ)アクリレート化合物(a1)は、(メタ)アクリレート基((メタ)アクリロ基)を有し、かつ芳香族環を有しない非芳香族性の化合物(いわゆる、脂肪族性化合物)であっても、あるいは(メタ)アクリレート基を有し、かつ芳香族環を有する芳香族性の化合物であってもよい。耐熱黄変性を重視する場合は、一般的には、非芳香族性の化合物、特に脂肪族性化合物又は脂環式の化合物が好ましい(但し、ベンジルメタクリレートは耐熱黄変性に優れる)。一方、耐熱性(高いガラス転移温度Tg)等を重視する場合は、一般的には、芳香族環を有する芳香族性の化合物が好ましい。
当該非芳香族性の化合物としては、直鎖状、分岐状、又は環状のいずれでもよい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味する。さらに、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
【0033】
上記(メタ)アクリレート化合物(a1)が単官能(メタ)アクリレートモノマーである場合、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチルモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]フタルイミド、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]テトラヒドロフタルイミド、2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、フェニルベンジルアクリレート、フェノキシアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエトキシエチルアクリレート、フェノキシベンジルアクリレート、フェニルフェノキシエチルアクリレート、メタクリル酸フェニル、フェニルベンジルメタクリレート、フェノキシベンジルメタクリレート、ビフェニルメチルメタクリレート、フェノールEO変性メタクリレート、フェノールPO変性メタクリレート、ノニルフェノールEO変性メタクリレート、ノニルフェノールPO変性メタクリレート、フェニルフェノールEO変性メタクリレート又はフェニルフェノールPO変性メタクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリレート化合物(a1)としては、これらの中でも水酸基を有さない化合物が好ましい。
【0034】
上記(メタ)アクリレート化合物(a1)が二官能(メタ)アクリレートモノマーである場合、例えば、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレ-ト、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型EO変性ジメタクリレート、ビスフェノールA型PO変性ジメタクリレート、ビスフェノールF型EO変性ジメタクリレート、ビスフェノールF型PO変性ジメタクリレート、ビフェノールジメタクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記各種のモノ(メタ)アクリレートモノマーの分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等のポリオキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性モノ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のモノ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性モノ(メタ)アクリレート化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ジ(メタ)アクリレート化合物;1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の脂環型ジ(メタ)アクリレート化合物;ビフェノールジアクリレート、ビスフェノールジアクリレート等の芳香族ジアクリレート化合物;前記各種のジ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入したポリオキシアルキレン変性ジ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のジ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性ジ(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等の脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性トリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性トリ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した四官能以上の(ポリ)オキシアルキレン変性ポリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入した四官能以上のラクトン変性ポリ(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
上記(メタ)アクリレート化合物化合物(a1)は、単独で用いても、あるいは2種以上を併用してもよい。また、(メタ)アクリレート化合物(a1)としては、これらの中でも水酸基を有さない化合物が好ましい。さらにこれらの中でも、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性に優れた硬化物を形成可能な酸基及び重合性不飽和基含有樹脂が得られることから、単官能メタクリレートが好ましく、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリル酸メチルがより好ましい。
【0035】
本実施形態において、(メタ)アクリル共重合体(A)全体に対する、(メタ)アクリレート化合物(a1)の含有量(換言すると、(メタ)アクリレート化合物化合物(a1)の構造単位の含有量)は、光感度、耐熱黄変性及び絶縁信頼性に優れた硬化物を形成可能な酸基及び重合性不飽和基含有樹脂が得られることから、前記共重合体(A)中に3質量%以上40質量%以下であることが好ましい。なかでも、(メタ)アクリレート化合物(a1)としてベンジル(メタ)アクリレート又はフェニル(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する芳香族性の化合物を選択する場合は、前記共重合体(A)中の芳香族環を有する芳香族性の化合物(例えば、ベンジル(メタ)アクリレート)の含有量は、1.3質量%以上15質量%以下であることが好ましく、2.6質量%超11質量%以下、3質量%以上10質量%以下の範囲がより好ましい。一方、(メタ)アクリレート化合物(a1)として(メタ)アクリル酸メチルを選択する場合、前記共重合体(A)中の(メタ)アクリル酸メチルの含有量は、5質量%以上40質量%以下であることが好ましく、5質量%超38質量%以下の範囲がより好ましい。
本実施形態の化合物(a1)(固形分)のバイオマス炭素含有率(%)の下限は、例えば、好ましくは0%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上、よりさらに好ましくは9%以上、さらにより好ましくは12%以上でありうる。一方、当該バイオマス炭素含有率(%)の上限は、好ましくは100%以下、より好ましくは98%以下、さらに好ましくは95%以下、よりさらに好ましくは90%以下でありうる。前記上限及び下限は適宜組み合わせすることができる。
【0036】
<第1重合性不飽和基及び第1反応性官能基をそれぞれ1又は2以上有する化合物(a2)(以下、化合物(a2)とも称する。)>
本開示の(メタ)アクリル共重合体(A)を構成する構造単位として、化合物(a2)由来の構造単位を含むことにより、不飽和結合量の調整がしやすく、その結果、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性に優れた効果を発揮しうる。
本実施形態の第1重合性不飽和基及び第1反応性官能基を1又は2以上有する化合物(a2)は、分子内に1又は2の第1重合性不飽和基と、第1反応性官能基1又は2以上とを有し、かつ(メタ)アクリレート化合物化合物(a1)とは異なる化学構造を有することが好ましい。
本実施形態において、当該化合物(a2)としては、一分子中に第1反応性官能基及び第1重合性不飽和基を有するものを用いることが好ましい。なお、本明細書において、「重合性不飽和基」とは、ラジカル重合し得る不飽和基を意味する。
前記第1反応性官能基としては、例えば、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基又はアルコキシ基等が挙げられる。これらの第1反応性官能基は、単独で有していてもよいし、2種以上を有していてもよい。但し、化合物(a2)は、(メタ)アクリレート化合物化合物(a1)とは異なる化学構造を有する。また、化合物(a2)が2つ以上の第1反応性官能基を有する場合、複数存在する第1反応性官能基が、他の反応性官能基のいずれか1つと同一であってもあるいは異なる化学構造であればよい。また、化合物(a1)が2つ以上の第1反応性官能基を有する場合、複数存在する第1反応性官能基のいずれか1つの基が、(メタ)アクリレート化合物化合物(a1)と異なる化学構造であればよい。
【0037】
本実施形態において、第1重合性不飽和基は、例えば、(メタ)アクリロイル基、アリル基、イソプロペニル基、1-プロぺニル基、スチリル基、スチリルメチル基、マレイミド基、ビニルエーテル基又は(メタ)アクリルアミド基等が挙げられる。なかでも、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性に優れた効果を発揮する観点から(メタ)アクリロイル基、スチリル基が好ましい。
【0038】
本実施形態において、第1重合性不飽和基及び第1反応性官能基を1以上有する化合物(a2)の好ましい態様としては、第1反応性官能基として水酸基を有する場合、第1反応性官能基としてエポキシ基を有する場合、第1反応性官能基としてイソシアネート基を有する場合、第1反応性官能基としてカルボキシル基を有する場合、及び第1反応性官能基としてアルコキシ基を有する場合の5つの態様が挙げられ、第1反応性官能基としてエポキシ基又はカルボキシル基を有する態様がより好ましい。以下、当該5つの態様について説明する。
【0039】
本実施形態の化合物(a2)が第1反応性官能基として水酸基を有する場合、当該化合物(a2)としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、前記各種化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体や、前記各種化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等も用いることができる。これらの化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
なかでも、本実施形態の化合物(a2)は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましく、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートがより好ましい。
本実施形態の化合物(a2)は、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましい。そして、当該水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物が含有する塩素原子の含有量が500質量ppm以下であることが好ましく、1質量ppm以上100質量ppm以下であることがより好ましく、1質量ppm以上100質量ppm以下がより好ましい。
【0040】
本実施形態の化合物(a2)が第1反応性官能基としてエポキシ基を有する場合、当該化合物(a2)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、エポキシシクロへキシルメチル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有する(メタ)アクリレートモノマー;ジヒドロキシベンゼンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル化合物のモノ(メタ)アクリレート化物等が挙げられる。なかでもグリシジル(メタ)アクリレート及び/又は4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル及び/又はエポキシシクロへキシルメチル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。これらのエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
本実施形態の化合物(a2)は、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましい。そして、当該エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物が含有する塩素原子の含有量が500質量ppm以下であることが好ましく、1質量ppm以上100質量ppm以下であることがより好ましく、1質量ppm以上100質量ppm以下がより好ましい。
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂中の塩素原子の含有量が100質量ppm以下であることに起因して、当該樹脂の反応原料(i)中の成分である化合物(a2)(例えば、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物)が含有する塩素原子の含有量が100質量ppm以下でありうる。
一般的なグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物の合成方法は、エピクロロヒドリンを原料に用いる方法が挙げられる。当該方法を大別すると以下の2つの方法に分類される。1つ目の方法は、エピクロロヒドリンと(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩とを触媒の存在下で反応させてグリシジル(メタ)アクリレートを合成する方法である。2つ目の方法は、エピクロロヒドリンと(メタ)アクリル酸とを触媒の存在下で反応させ、その後アルカリ水溶液で閉環反応させてグリシジル(メタ)アクリレートを合成する方法である。しかし、いずれの方法であっても、エピクロロヒドリンは分子中に塩素原子を有する。
そのため、本実施形態のエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物の合成法として、(メタ)アクリレート化合物(a1)にエピクロロヒドリンを作用させ、グリシジル化して合成する方法を採用すると、エピクロロヒドリンは分子中に塩素原子を有するため、得られるエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物には、500ppm~数パーセント程度の濃度の塩素化合物が副生物として混入すると考えられる。そのため、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物を反応原料(i)の成分とする酸基及び重合性不飽和基含有樹脂にも塩素原子が500ppm~数パーセント程度の質量ppm以下含有しうる。また、当該酸基及び重合性不飽和基含有樹脂を硬化性樹脂組成物の硬化剤として選択した場合も同様に、不純物の塩素原子又は塩素化合物の存在によって絶縁信頼性に影響が出る場合存在する。そのため、本実施形態としてエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物を、エピクロロヒドリンを用いて合成した場合、上述した精製方法により、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物が含有する塩素原子の含有量を100質量ppm以下に低減することが好ましい。
【0041】
本実施形態の化合物(a2)が第1反応性官能基としてイソシアネート基を有する場合、当該化合物(a2)としては、例えば、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等のイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
また、前記イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、ジイソシアネート化合物が有するイソシアネート基の1つに水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物を付加させて得られるものを用いることもできる。
前記ジイソシアネート化合物としては、例えば、ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルビフェニル、o-トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物などが挙げられる。
なお、前記イソシアネート基を有する化合物(a2)としては、市販品を用いることもでき、前記市販品としては、例えば、昭和電工株式会社製「カレンズAOI」、「カレンズMOI」、「カレンズBEI」等が挙げられる。
本実施形態の化合物(a2)は、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましい。そして、当該イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物が含有する塩素原子の含有量が500質量ppm以下であることが好ましく、1質量ppm以上100質量ppm以下であることがより好ましく、1質量ppm以上100質量ppm以下がより好ましい。
【0042】
本実施形態の化合物(a2)が第1反応性官能基としてカルボキシル基を有する場合、分子構造中にカルボキシル基と第1重合性不飽和基とを有する化合物であれば他の具体構造は特に限定されず、多種多様な化合物を用いることができる。前記化合物(a2)の具体例としては、第1重合性不飽和基として(メタ)アクリロイル基を有するものが挙げられ、かつアルコキシ基を有さない化合物、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、α-シアノ桂皮酸、β-スチリルアクリル酸、β-フルフリルアクリル酸、又はこれらのエステル化物、酸ハロゲン化物、もしくは酸無水物等が挙げられる。
本実施形態の化合物(a2)は、カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましい。そして、当該カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物が含有する塩素原子の含有量が500質量ppm以下であることが好ましく、1質量ppm以上100質量ppm以下であることがより好ましく、1質量ppm以上100質量ppm以下がより好ましい。
【0043】
本実施形態の化合物(a2)が分子構造中にアルコキシ基と第1重合性不飽和基とを有する化合物であれば他の具体構造は特に限定されず、多種多様な化合物を用いることができる。その具体例としては、第1重合性不飽和基として(メタ)アクリルアミド基を有するものが挙げられ、例えば、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
これらのアルコキシ基と第1重合性不飽和基とを有する化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。これらの中でも、光感度、及び耐熱黄変性により優れた硬化物を形成可能な酸基及び重合性不飽和基含有樹脂が得られる傾向にあることから、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
本実施形態の化合物(a2)は、アルコキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましい。そして、当該アルコキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物が含有する塩素原子の含有量が500質量ppm以下であることが好ましく、1質量ppm以上100質量ppm以下であることがより好ましく、1質量ppm以上100質量ppm以下がより好ましい。
【0044】
本実施形態において、上記化合物(a2)の例示以外の化合物(a2)としては、例えば、桂皮酸等の不飽和酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸等の分子中に不飽和結合を有する酸無水物、アリルアルコール等の反応性官能基を有するアリル化合物、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル等の第1反応性官能基を有するビニルエーテル化合物、N-(4-アミノフェニル)マレイミド等の第1反応性官能基を有するマレイミド化合物、4-ビニル安息香酸等の第1反応性官能基を有するスチリル化合物などが挙げられる。
【0045】
本実施形態において、耐熱黄変性に優れた硬化物を形成可能な酸基及び重合性不飽和基含有樹脂が得られることから、化合物(a2)の含有量は、前記(メタ)アクリル共重合体(A)中に40~90質量%の範囲が好ましく、50~90質量%の範囲がより好ましい。
本実施形態にかかる反応原料(i)において、前記化合物(a2)の配合量に対する化合物(a1)の配合量の配合比(化合物(a1)の配合量/化合物(a2))の配合量)は、10/90~50/50が好ましく、より好ましくは15/85~45/55、さらに好ましくは20/80~40/60である。耐熱黄変性及び伸度のバランスの観点から上記配合比が好ましい。
本実施形態の化合物(a2)(固形分)のバイオマス炭素含有率(%)の下限は、例えば、好ましくは0%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上、よりさらに好ましくは9%以上、さらにより好ましくは12%以上でありうる。一方、当該バイオマス炭素含有率(%)の上限は、好ましくは100%以下、より好ましくは98%以下、さらに好ましくは95%以下、よりさらに好ましくは90%以下でありうる。前記上限及び下限は適宜組み合わせすることができる。
【0046】
<多官能モノマー化合物(a3)(以下、化合物(a3)とも称する。)>
本開示の(メタ)アクリル共重合体(A)を構成する構造単位として、多官能モノマー化合物(a3)由来の構造単位を必要により含んでもよい。換言すると、前記反応原料(i)は、必要により多官能モノマー化合物(a3)を含有してもよい。これにより、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性により優れた効果を発揮する。
本実施形態の多官能モノマー化合物(a3)は、分子内に3個以上の第3重合性不飽和基を有する化合物でありうる。そして、当該多官能モノマー化合物(a3)は、0以上3以下の第3反応性官能基を有してもよい。また、多官能モノマー化合物(a3)において、当該第3反応性官能基は、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基又はアルコキシ基等を1以上有してもよい。
本実施形態において、第3重合性不飽和基は、例えば、(メタ)アクリロイル基、アリル基、イソプロペニル基、1-プロペニル基、スチリル基、スチリルメチル基、マレイミド基、ビニルエーテル基又は(メタ)アクリルアミド基等が挙げられる。なかでも、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性に優れた効果を発揮する観点から(メタ)アクリロイル基、スチリル基が好ましい。
本実施形態の多官能モノマー化合物(a3)は、分子内に3個以上20個以下の第3重合性不飽和基を有する化合物であることが好ましく、分子内に3個以上10個以下の第3重合性不飽和基を有する化合物であることがより好ましく、特に好ましくは3個以上6個以下の第3重合性不飽和基を有する。
前記第3重合性不飽和基の数が3個以上6個以下であると、優れた、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性のバランスの観点で好ましい。
本実施形態の多官能モノマー化合物(a3)は、分子内に0個以上3個以下の第3反応性官能基を有する化合物であることが好ましく、分子内に0個以上1個以下の第3反応性官能基を有する化合物であることがより好ましい。
本実施形態にかかる(メタ)アクリル共重合体(A)における多官能モノマー化合物(a3)の含有量は、(メタ)アクリル共重合体(A)全体に対して7質量部未満が好ましく、6質量部以下含有することがより好ましく、1~5質量部含有することがさらに好ましく、2~5質量部含有することがよりさらに好ましく、3~5質量部含有することがさらにより好ましい。耐熱黄変性の観点で7質量部未満が好ましく、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性のバランスの観点から5質量部以下であることが特に好ましい。
【0047】
本実施形態の好ましい多官能モノマー化合物(a3)は、以下の一般式(1)で表される。
【化1】
(上記一般式(1)中、L
aはそれぞれ独立して、二価の有機基を表し、P
aはそれぞれ独立して、水素原子、水酸基、CH
2=C(R
c1)-C(=O)-、CH
2=C(R
c1)-C(=O)-O-又はCH
2=C(R
c1)-C(=O)-NH-(R
c1は、炭素原子数1~3のアルキル基を表す。)を表し、n
aは、3以上20以下の整数を表し、A
aは、n
a価の有機基を表す。但し、一般式(1)中の3つ以上のP
aは、炭素-炭素の不飽和結合を有する。)
上記一般式(1)において、L
aを表す二価の有機基としては、炭素原子数1~30のアルキレン基、炭素原子数6~18のアリーレン基又は炭素原子数7~24のアラルキレン基を表し、但し、当該アルキレン基中の-CH
2-は、-O-、-C(=O)O-又は-O(C=O)-に置換されてもよく、L
aは、アルキレン基、又はアルキレンオキサイド鎖(例えば、エチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基)であることが好ましい。
上記一般式(1)中のP
aは、水素原子、水酸基又はCH
2=C(R
a)-C(=O)-であることが好ましい。当該R
aは水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基でありうる。上記一般式(1)中のR
c1は、メチル基が好ましい。
【0048】
本実施形態のより好ましい多官能モノマー化合物(a3)は、以下の一般式(2)又は(3)で表される。
【化2】
(上記一般式(2)中、L
c1、L
c2及びL
c3はそれぞれ独立して、二価の有機基を表し、P
c1、P
c2及びP
c3はそれぞれ独立して、CH
2=C(R
c1)-C(=O)-、CH
2=C(R
c1)-C(=O)-O-又はCH
2=C(R
c1)-C(=O)-NH-(R
c1は、炭素原子数1~3のアルキル基を表す。)を表し、A
c1は、三価の有機基を表す。但し、一般式(2)中の3つ以上のP
aは、炭素-炭素の不飽和結合を有する。)
【化3】
(上記一般式(3)中、L
c1、L
c2、L
c3、L
c4、L
c5及びL
c6はそれぞれ独立して、二価の有機基を表し、P
c1、P
c2、P
c3、P
c4、P
c5及びP
c6はそれぞれ独立して、水素原子、水酸基、CH
2=C(R
c1)-C(=O)-、CH
2=C(R
c1)-C(=O)-O-、CH
2=C(R
c1)-C(=O)-NH-又は・・・・(R
c1は、炭素原子数1~3のアルキル基を表す。)を表し、A
c2は、六価の有機基を表す。但し、一般式(3)中のP
c1、P
c2、P
c3、P
c4、P
c5及びP
c6のうち3以上が、炭素-炭素の不飽和結合を有する。)
上記一般式(2)中の二価の有機基としては、炭素原子数1~30のアルキレン基を表し、但し、当該アルキレン基中の-CH
2-は、-O-、-C(=O)O-又は-O(C=O)-に置換されてもよく、アルキレン基、又はアルキレンオキサイド鎖(例えば、エチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基)であることが好ましい。
上記一般式(2)中のP
c1、P
c2及びP
c3は、水素原子、水酸基又はCH
2=C(R
c1)-C(=O)-であることが好ましい。当該R
c1は水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基でありうる。上記一般式(2)中のR
c1は、メチル基が好ましい。
上記一般式(2)中のA
c1は、特に以下の式(i)又は(ii)で表される三価の基であることが好ましい。また、上記一般式(2)中のA
c1の1以上の水素原子は、P
c1に置換されてもよい。
【化4】
(上記式(i)中、R
c1は炭素原子数1~8のアルキル基又は炭素原子数1~8のアルキレンオキサイド基を表し、前記アルキル基又はアルキレンオキサイド基中の1以上の水素原子をH
2=C(R
c1)-C(=O)-に置換してもよい。)
上記一般式(3)中のA
c2は、特に以下の式(iii)で表される六価の基であることが好ましい。上記一般式(3)中のR
c1は、メチル基が好ましい。
(上記式(iii)中、M
c1は炭素原子数1~8のアルキレン基又は炭素原子数1~8のアルキレンオキサイド基を表す。)
【0049】
本実施形態の多官能モノマー化合物(a3)の重量平均分子量は、400~3000であることが好ましく、500~2000であることがより好ましい。
当該重量平均分子量の測定方法は、後述の実施例の欄に記載したゲルパーミッションクロマトグラフ(GPC)により測定している。
【0050】
本実施形態の多官能モノマー化合物(a3)としては、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコール変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコール変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート琥珀酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート琥珀酸モノエステル等が挙げられる。
本実施形態の多官能モノマー化合物(a3)(固形分)のバイオマス炭素含有率(%)の下限は、例えば、好ましくは0%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上、よりさらに好ましくは9%以上、さらにより好ましくは12%以上でありうる。一方、当該バイオマス炭素含有率(%)の上限は、好ましくは100%以下、より好ましくは98%以下、さらに好ましくは95%以下、よりさらに好ましくは90%以下でありうる。前記上限及び下限は適宜組み合わせすることができる。
【0051】
<リン含有(メタ)アクリレート化合物(a4)(以下、化合物(a4)とも称する。)>
本開示の(メタ)アクリル共重合体(A)を構成する構造単位として、リン含有(メタ)アクリレート化合物(a4)由来の構造単位を必要により含んでもよい。換言すると、前記反応原料(i)は、必要によりリン含有(メタ)アクリレート化合物(a4)を含有してもよい。これにより、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性により優れた効果を発揮する。特に、耐熱黄変性は、リンによる酸化防止効果により向上すると考えられる。また、特に、2官能以上であることなどにより化合物(a4)の分子量がある程度高いと、光感度がより向上すると考えられる。なお、化合物(a4)は、リンを含有するため、(メタ)アクリレート化合物(a1)及び化合物(a2)とは異なる化合物である。したがって、化合物(a2)はリンを含有しておらず、化合物(a2)からリン含有(メタ)アクリレート化合物(a4)は除かれる。
【0052】
リン含有(メタ)アクリレート化合物(a4)としては、分子構造中に(メタ)アクリロイル基とリン原子とを有する化合物であれば他の具体構造は特に限定されず、多種多様な化合物を用いることができる。その具体例としては、例えば、2-(メタ)アクリロイロキシエチルカプロエートアシッドホスフェート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、3-(メタ)アクリロイロキシプロピルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイロキシポリオキシエチレングリコールアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイロキシプロピレングリコールアシッドホスフェート、ジ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等が挙げられる。これらのリン含有(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。これらの中でも、光感度、耐熱黄変性及び絶縁信頼性により優れた硬化物を形成可能な酸基及び重合性不飽和基含有樹脂が得られる傾向にあることから、2-(メタ)アクリロイロキシエチルカプロエートアシッドホスフェート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェートが好ましく、2-(メタ)アクリロイロキシエチルカプロエートアシッドホスフェートがより好ましい。リン含有(メタ)アクリレート化合物(a4)がカプロラクトン由来の構造を有する場合やある程度高い分子量を有する場合に、光感度、耐熱黄変性及び絶縁信頼性により優れた効果を発揮する傾向にある。
【0053】
また、上記リン含有(メタ)アクリレート化合物としては、市販品を用いることもでき、例えば、日本化薬株式会社製「KAYAMER PM-21」、「KAYAMER PM-2」、共栄社株式会社製「ライトエステル P-2M」、「ライトエステル P-1M」、「ライトアクリレート P-1A」等が挙げられる。
【0054】
リン含有(メタ)アクリレート化合物(a4)中のリン原子の含有量は、分子量比率(化合物(a4)1分子中のリン原子の質量/化合物(a4)の分子量)として、1~40質量%であることが好ましく、3~30質量%であることがより好ましく、3~20質量%であることがさらに好ましい。
なお、リン含有(メタ)アクリレート化合物中のリン原子の含有量は、原子吸光法、ICP発光分光分析法等により測定することができる。
【0055】
本実施形態において、(メタ)アクリル共重合体(A)中に化合物(a4)由来の構造単位を含有する場合、前記(メタ)アクリル共重合体(A)全体に対する、化合物(a4)の含有量(換言すると、化合物(a4)由来の構造単位の含有量)は、光感度、耐熱黄変性及び絶縁信頼性により優れた硬化物を形成可能な酸基及び重合性不飽和基含有樹脂が得られる傾向にあることから、(メタ)アクリル共重合体(A)を100質量%として、0.5~10質量%であることが好ましく、1~8質量%であることがより好ましく、3~6質量%であることがさらに好ましい。
本実施形態の化合物(a4)(固形分)のバイオマス炭素含有率(%)の下限は、例えば、好ましくは0%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上、よりさらに好ましくは9%以上、さらにより好ましくは12%以上でありうる。一方、当該バイオマス炭素含有率(%)の上限は、好ましくは100%以下、より好ましくは98%以下、さらに好ましくは95%以下、よりさらに好ましくは90%以下でありうる。前記上限及び下限は適宜組み合わせすることができる。
【0056】
<反応原料(i)に含まれてもよいその他の重合成分>
本実施形態において、(メタ)アクリル共重合体(A)の反応原料(i)には、前記化合物(a1)、前記化合物(a2)、並びに任意成分である前記化合物(a3)及び前記化合物(a4)以外、必要に応じて、その他の重合成分を含有することもできる。前記その他の重合成分としては、例えば、前記(メタ)アクリレート化合物(a1)以外の重合性不飽和基を有する化合物(a5)等が挙げられる。
【0057】
前記(メタ)アクリレート化合物(a1)以外の重合性不飽和基を有する化合物(a5)としては、分子中に1個以上の重合性不飽和基を有する化合物であれば、特に限定されない。前記重合性不飽和基としては、例えば、アリル基、イソプロペニル基、1-プロペニル基、スチリル基、スチリルメチル基、マレイミド基、ビニルエーテル基等が挙げられる。これらの化合物(a5)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。なお、化合物(a5)としては、上記化合物(a2)は除く。
本実施形態にかかる反応原料(i)において、前記化合物(a1)100質量部に対する化合物(a5)の配合量は、0質量部以上20質量部以下が好ましく、0~10質量部含有することがより好ましく、0~8質量部含有することがさらに好ましい。
【0058】
<(メタ)アクリル共重合体(A)の製造方法>
本実施形態の(メタ)アクリル共重合体(A)の製造方法としては、特に制限されず、どのような方法にて製造してもよい。例えば、前記化合物(a1)と、前記化合物(a2)と、必要により配合される、前記化合物(a3)と、前記化合物(a4)と、その他の重合成分(例えば、前記(メタ)アクリレート化合物(a1)以外の重合性不飽和基を有する化合物(a5))を含有する重合成分の全てを一括で、50~200℃で重合させて得られる方法等が挙げられる。
前記(メタ)アクリル共重合体(A)好ましい重合方法としては、例えば、重合開始剤として過酸化物を用い、後述の重合溶媒中に、化合物(a1)と、化合物(a2)と、必要により配合されるその他の重合成分(例えば、上述の化合物(a4))を含有する重合成分の全てを予め混合したものを滴下し、50~200℃で重合させて得られる方法等が挙げられる。
【0059】
本実施形態の(メタ)アクリル共重合体(A)を重合する工程においては、必要に応じて、重合溶媒及び/又は重合開始剤を用いることができる。
上記重合溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキソラン等の環状エーテル溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒;トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族溶媒;カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶媒;アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等のグリコールエーテル溶媒;メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。また、上記有機溶媒の使用量は、反応効率が良好となることから、反応原料(i)の合計質量に対し0.1~5倍量程度の範囲で用いることが好ましい。
上記重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩、有機過酸化物、過酸化水素等のラジカル重合開始剤や、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ開始剤などが挙げられる。また、前記ラジカル重合開始剤は、例えば、アスコルビン酸等の還元剤と併用しレドックス重合開始剤として使用してもよい。これらの重合開始剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記過硫酸塩としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。これらの過硫酸塩は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0060】
前記有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。これらの有機過酸化物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。これらの中でも、高伸度、光感度、耐熱黄変性及び密着性に優れた硬化物を形成可能な酸基及び重合性不飽和基含有樹脂が得られることから、パーオキシエステルが好ましい。
【0061】
前記重合開始剤の使用量は、重合が円滑に進行する量を使用すれば良いが、前記化合物(a1)と、前記化合物(a2)との合計100質量部に対して、0.1~20質量部の範囲が好ましく、0.5~10質量部の範囲がより好ましい。
本実施形態にかかる反応原料(i)において、前記化合物(a1)と、前記化合物(a2)と、前記多官能モノマー化合物(a3)と、前記化合物(a4)と、の好ましい配合比は、反応原料(i)の総量(=前記化合物(a1)と、前記化合物(a2)と、前記多官能モノマー化合物(a3)と、前記化合物(a4)との合計量)に対して、前記化合物(a1)1質量%~80質量%、前記化合物(a2)20質量%~99質量%、前記多官能モノマー化合物(a3)0質量%~10質量%、前記化合物(a4)0質量%~10質量%であり、より好ましくは、前記化合物(a1)5質量%~70質量%、前記化合物(a2)30質量%~95質量%、前記多官能モノマー化合物(a3)0質量%~8質量%、前記化合物(a4)0質量%~8質量%であり、さらに好ましくは、前記化合物(a1)10質量%~30質量%、前記化合物(a2)70質量%~90質量%、前記多官能モノマー化合物(a3)0質量%~7質量%、前記化合物(a4)0質量%~7質量%であり、特に好ましくは、前記化合物(a1)15質量%~35質量%、前記化合物(a2)65質量%~85質量%、前記多官能モノマー化合物(a3)0質量%~5質量%、前記化合物(a4)0質量%~5質量%でありうる。
【0062】
(第2重合性不飽和基及び第2反応性官能基を有する化合物(B)(以下、化合物(B)と称する。))
本開示の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂を構成する構造単位として、第2重合性不飽和基及び第2反応性官能基を有する化合物(B)由来の構造単位を含むことにより、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性に優れた効果を発揮しうる。
本実施形態の化合物(B)は第2重合性不飽和基及び第2反応性官能基を有する化合物であり、前記第2反応性官能基は前記(メタ)アクリル共重合体(A)が有する前記化合物(a2)由来の構造単位中の第1反応性官能基と反応し得る官能基である。
本実施形態における第2反応性官能基としては、水酸基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基又はアルコキシ基等が挙げられる。これらの第2反応性官能基は、化合物(B)中に1種有していてもよいし、あるいは2種以上を有していてもよい。
さらには、これらの第2反応性官能基の数は、化合物(B)中に1つであっても、あるいは2以上であってもよい。
また、上述した通り、本実施形態における第2反応性官能基は、第1反応性官能基と反応し得る官能基であるため、第1反応性官能基の種類に応じて、当該第1反応性官能基と反応しうる、水酸基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基及びアルコキシ基からなる群から適宜選択されうる。
【0063】
本実施形態における第2重合性不飽和基は、例えば、(メタ)アクリロイル基、アリル基、イソプロペニル基、1-プロぺニル基、スチリル基、スチリルメチル基、マレイミド基、ビニルエーテル基又は(メタ)アクリルアミド基等が挙げられる。当該第2重合性不飽和基は、第1重合性不飽和基と同一であっても、あるいは異なっていてもよい。好ましい第2重合性不飽和基は、(メタ)アクリロイル基、アリル基、イソプロペニル基、1-プロぺニル基、スチリル基、マレイミド基、ビニルエーテル基及び(メタ)アクリルアミド基からなる群から選択される1種又は2種以上の基であることが好ましい。
【0064】
本実施形態の第2重合性不飽和基及び第2反応性官能基を有する化合物(B)は、上述した通り、前記(メタ)アクリレート化合物(a1)及び前記化合物(a2)とは異なる化学構造を備えている。そのため、本開示の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂の同一分子中において、第2重合性不飽和基及び第2反応性官能基を有する化合物(B)と前記(メタ)アクリレート化合物(a1)とを比較した際に、前記(メタ)アクリレート化合物(a1)には存在しない基を前記化合物(B)が有する、あるいは前記化合物(B)には存在しない基を前記(メタ)アクリレート化合物(a1)が有する。さらには、本開示の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂の同一分子中において、第2重合性不飽和基及び第2反応性官能基を有する化合物(B)と前記化合物(a2)とを比較した際に、前記化合物(a2)には存在しない基を前記化合物(B)が有する、あるいは前記化合物(B)には存在しない基を前記化合物(a2)が有する。換言すると、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂の同一分子中において、(メタ)アクリレート化合物(a1)と化合物(B)とは異なる化学構造を有するものが選択されればよく、かつ化合物(B)と化合物(a2)とは異なる化学構造を有するものが選択されればよい。そのため、(メタ)アクリレート化合物(a1)と、化合物(a2)と、化合物(B)の好ましい範囲は互いに重複してもよい。
以下、本実施形態において、化合物(a2)と第2重合性不飽和基及び第2反応性官能基を有する化合物(B)との組み合わせの形態について説明する。
【0065】
前記化合物(B)としては、例えば、上述の前記化合物(a2)として例示したものと同様のものが挙げられるが、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂の同一分子中においては前記化合物(a2)と前記化合物(B)とは互いに異なる化学構造を有するものが選択される。例えば、化合物(a2)として水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いた場合には、化合物(B)としてイソシアネート基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物及び/又はアルコキシ基及び(メタ)アクリルアミド基を有する化合物を用いることが好ましく、化合物(a2)としてエポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いた場合には、化合物(B)としてカルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いることが好ましく、化合物(a2)としてイソシアネート基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いた場合には、化合物(B)として水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いることが好ましく、化合物(a2)としてカルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いた場合には、化合物(B)としてエポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いることが好ましく、化合物(a2)としてアルコキシ基及び(メタ)アクリルアミド基を有する化合物を用いた場合には、化合物(B)として水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いることが好ましい。これらの化合物(B)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、高伸度、光感度、耐熱黄変性及び密着性に優れた硬化物を形成可能な酸基及び重合性不飽和基含有樹脂が得られることから、前記化合物(a2)としてエポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用い、前記化合物(B)としてカルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いることが好ましく、あるいは前記化合物(a2)としてカルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用い、前記化合物(B)としてエポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いることが好ましい。
本実施形態の第2重合性不飽和基及び第2反応性官能基を有する化合物(B)は、以下の一般式(4)であることが好ましい。
【化5】
(上記一般式(4)中、R
b1は水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、L
b1は-O-又は-NH-を表し、P
b1は水素原子又は炭素原子数1~30のアルキル基を表し、但し、前記アルキル基中の1以上の-CH
2-は、-O-、-C(=O)O-、-O(C=O)-、-C(=O)-又は環式基(例えば、二価の芳香族基(特に、フェニレン基)又は二価の脂環基)を表す。また、-L
b1-P
b1中に、第2反応性官能基として、水酸基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基及びアルコキシ基からなる群から選択される1種又は2種以上を有する。)
上記一般式(4)中、R
b1は水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基(フルオロアルキルを含む。)を表すことが好ましく、水素原子、メチル基又はフルオロメチル基であることがより好ましい。
上記一般式(4)における、脂環基としては、窒素原子、酸素原子若しくは硫黄原子を少なくとも一つ含んでもよい4~7員の脂環基であることが好ましい。前記脂環基は、水酸基、炭素原子数1~10の炭化水素基又はハロゲン原子を有してもよく、あるいは該脂環基中の1以上の-CH
2-は、-C(=O)-に置換されてもよい。前記二価の脂環基は、単環式であってもよく、あるいは多環式であってもよい。単環式の二価の脂環基としては、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、及び、シクロオクチレン基等の単環のシクロアルキレン基が挙げられる。多環式の二価の脂環基としては、例えば、ノルボルニレン基、トリシクロデカニレン基、テトラシクロデカニレン基、テトラシクロドデカニレン基、及び、アダマンチレン基等の多環のシクロアルキレン基が挙げられる。
上記一般式(4)中、P
b1は、水素原子又は以下の一般式(5-1)~(5-4)のいずれかであることがより好ましい。
【化6】
(上記式(5-1)~(5-4)中、A
51は、無置換又は1以上の水素原子が置換基R
b2により置換されてもよい、二価の芳香族基(好ましくは、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基又は1,4-フェニレン基)を表し、A
52は、無置換又は1以上の水素原子が置換基R
b2により置換されてもよい、二価の脂環基(好ましくは、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロオクチレン基、ノルボルニレン基、トリシクロデカニレン基、テトラシクロデカニレン基、テトラシクロドデカニレン基又はアダマンチレン基)を表し、n
b1は1~10の整数を表し、n
b2は1~10の整数を表し、m
b1は1~10の整数を表し、Y
51、Y
52及びY
53はそれぞれ独立して、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基又はアルコキシ基を表し、R
b2は、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基又は炭素原子数1~5のアルキル基若しくはアルコキシ基を表す。)
第2重合性不飽和基及び第2反応性官能基を有する化合物(B)が、上記一般式(4)で表される化合物であると、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性に優れた効果を発揮する観点で好ましい。
【0066】
本実施形態の第2重合性不飽和基及び第2反応性官能基を有する化合物(B)は、(メタ)アクリル酸、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸、琥珀酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチル、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート、6-アクリルアミドヘキサン酸、グリシジル(メタ)アクリレート及びエポキシ基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
前記エポキシ基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素原子数1~5のヒドロキシアルキル基を有するグリシジルエーテルが好ましく、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル又は5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルが挙げられる。
本実施形態の第2重合性不飽和基及び第2反応性官能基を有する化合物(B)としては、互いに化学構造が異なる2種以上の化合物であることが好ましい。第2重合性不飽和基及び第2反応性官能基を有する化合物(B)が、2種以上の化合物であると、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性性に優れた効果を発揮する観点で好ましい。
【0067】
本実施形態において、前記(メタ)アクリル共重合体(A)と前記化合物(B)との混合割合が、前記(メタ)アクリル共共重合体(A)が有する第1反応性官能基1モルに対して、前記化合物(B)が有する前記第2反応性官能基が、0.5~1.05モルの範囲であることが好ましく、0.5~1.03であることがより好ましく、0.95~1.03であることがさらに好ましい。
本実施形態の化合物(B)(固形分)のバイオマス炭素含有率(%)の下限は、例えば、好ましくは0%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上、よりさらに好ましくは9%以上、さらにより好ましくは12%以上でありうる。一方、当該バイオマス炭素含有率(%)の上限は、好ましくは100%以下、より好ましくは98%以下、さらに好ましくは95%以下、よりさらに好ましくは90%以下でありうる。前記上限及び下限は適宜組み合わせすることができる。
【0068】
(多塩基酸無水物(C))
本開示の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂を構成する構造単位として、多塩基酸無水物(C)由来の構造単位を含むことにより、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性に優れた効果を発揮しうる。
本実施形態の多塩基酸無水物(C)としては、例えば、飽和多塩基酸無水物、不飽和多塩基酸無水物等が挙げられる。なお、本明細書において、飽和多塩基酸無水物とは、炭素―炭素二重結合を有しない多塩基酸無水物を意味し、不飽和多塩基酸無水物とは、炭素―炭素二重結合を有する多塩基酸無水物を意味する。
【0069】
前記飽和多塩基酸無水物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサントリカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸等の酸無水物が挙げられる。
なかでも、ヘキサヒドロ無水フタル酸(ヘキサヒドロイソベンゾフラン-1,3-ジオン)、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(3-メチル-8-オキサビシクロ[4.3.0]ノナン-7,9-ジオン)などがより好ましい。
【0070】
前記不飽和多塩基酸無水物としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、テトラヒドロフタル酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸等の酸無水物が挙げられる。
【0071】
これらの多塩基酸無水物は、単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性に優れた硬化物を形成可能な酸基及び重合性不飽和基含有樹脂が得られることから、飽和多塩基酸無水物が好ましく、脂環構造を有する飽和多塩基酸無水物がより好ましい。
【0072】
前記多塩基酸無水物(C)の使用量は、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、多塩基酸無水物(C)の使用量が、前記(メタ)アクリル共重合体(A)が有する第1反応性官能基1モルに対して、0.2~1.05モルの範囲で用いることが好ましく、0.25~0.95モルがより好ましく、0.3~0.95がさらに好ましく、0.3~0.9がよりさらに好ましい。
【0073】
本実施形態の多塩基酸無水物(C)(固形分)のバイオマス炭素含有率(%)の下限は、例えば、好ましくは0%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上、よりさらに好ましくは9%以上、さらにより好ましくは12%以上でありうる。一方、当該バイオマス炭素含有率(%)の上限は、好ましくは100%以下、より好ましくは98%以下、さらに好ましくは95%以下、よりさらに好ましくは90%以下でありうる。前記上限及び下限は適宜組み合わせすることができる。
【0074】
(酸基及び重合性不飽和基含有樹脂の好ましい態様)
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂としては、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性に優れた硬化物を形成可能なことから、前記(メタ)アクリル共重合体(A)、前記化合物(B)及び前記多塩基酸無水物(C)の合計の含有量(前記(メタ)アクリル共重合体(A)の構造単位、前記化合物(B)の構造単位及び前記多塩基酸無水物(C)の構造単位)が、前記酸基及び重合性不飽和基含有樹脂中に90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。また、本実施形態の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂は、前記(メタ)アクリル共重合体(A)の構造単位、前記化合物(B)の構造単位及び前記多塩基酸無水物(C)の構造単位のみから構成されていてもよい。
【0075】
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂又は後述の硬化性樹脂組成物は、必要に応じ安定剤として、さらに、フェノール性水酸基及びtert-ブチル基を有する化合物(D)(以下、化合物(D)とも称する。)を含有することもできる。
前記化合物(D)としては、例えば、tert-ブチルカテコール、tert-ブチルヒドロキノン、tert-ブチルレゾルシン、2,5-ジ-tert-アミルハイドロキノン、tert-ブチル-p-ベンゾキノン、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2-tert-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(ジブチルヒドロキシトルエン)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-エチルフェノール)、N,N’-ビス{2-[2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)エチルカルボニルオキシ]エチル}オキサミド、オクチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロ肉桂酸、3,6-ジオキサオクタメチレン=ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオナート]、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、2,2’-ジメチル-2,2’-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジイル)ジプロパン-1,1’-ジイル=ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロパノアート]、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルホスホネート-ジエチルエステル、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-tert-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ペンタエリトリトール=テトラキス[3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナ-ト]、2,4.6-トリ-tert-ブチルニトロンベンゼン、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-6-[(2-エチルヘキサン-1-イル)オキシ]-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、光感度、耐熱黄変性及び絶縁信頼性に優れた硬化物を形成可能なことから、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ペンタエリトリトール=テトラキス[3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナ-ト]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。
前記化合物(D)の含有量は、本実施形態の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂中に0.01~10質量%の範囲が好ましく、0.01~5質量%の範囲がより好ましい。
【0076】
(アルコール性水酸基とカルボキシル基を有する化合物(E)(以下、化合物(E)とも称する。)
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂は、該樹脂を構成する構造単位として、アルコール性水酸基とカルボキシル基を有する化合物(E)に由来する構造単位を含むことにより、光感度、絶縁信頼性、及び耐熱黄変性により優れた効果を発揮する。
本実施形態の化合物(E)としては、少なくとも1個のアルコール性水酸基と少なくとも1個のカルボキシル基とを有する化合物であれば特に限定されず、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール吉草酸、ジメチロールカプロン酸、ヒドロキシピバル酸等が挙げられる。これらのアルコール性水酸基とカルボキシル基を有する化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。これらの中でも、光感度、絶縁信頼性、及び耐熱黄変性により優れた硬化物を形成可能な酸基及び重合性不飽和基含有樹脂が得られる傾向にあることから、DMPAが好ましい。
【0077】
(メタ)アクリル共重合体(A)と化合物(E)との混合割合は、光感度、伸度、弾性、及び耐熱黄変性により優れた硬化物を形成可能な酸基及び重合性不飽和基含有樹脂が得られる傾向にあることから、(メタ)アクリル共重合体(A)が有する第1反応性官能基1モルに対して、化合物(E)が、0.05~0.3モルとなる範囲であることが好ましく、0.1~0.3モルであることがより好ましく、0.15~0.25モルであることがさらに好ましい。
また、(メタ)アクリル共重合体(A)に対する、化合物(B)、多塩基酸無水物(C)及び化合物(E)の混合割合は、光感度、絶縁信頼性、及び耐熱黄変性により優れた硬化物を形成可能な酸基及び重合性不飽和基含有樹脂が得られる傾向にあることから、(メタ)アクリル共重合体(A)が有する第1反応性官能基1モルに対して、化合物(B)が有する第2反応性官能基と化合物(E)との合計モル数が、0.9~1.1モルとなる範囲であることが好ましく、0.95~1.05モルであることがより好ましく、0.97~1.03モルであることがさらに好ましい。
【0078】
また、光感度、耐熱黄変性及び絶縁信頼性に優れた硬化物を形成可能なことから、本実施形態の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂の二重結合当量(g/当量)は、500以下が好ましく、450以下がより好ましい。本明細書における「二重結合当量」は、分子中に含まれる二重結合量の指標となる量であり、同一分子量の化合物同士であれば、二重結合当量の数値が小さいほど二重結合の導入量が多くなる傾向を示す。また、本明細書における「二重結合当量」は、実質的に、(メタ)アクリレート基(CH2=CR-C(=O)-O-C≡(Rは水素原子又はメチル基を表す。)))当量でありうる。
当該「二重結合当量」は、実施例の欄に記載の通り、原料の仕込み量より算出した計算値である。
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂の固形分酸価は、中性条件下での測定値が50~130mgKOH/gの範囲であることが好ましい。
当該「固形分酸価」は、実施例の欄に記載の方法により算出した。
【0079】
[酸基及び重合性不飽和基含有樹脂の製造方法]
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂の製造方法としては、特に制限されず、どのような方法にて製造してもよい。例えば、前記(メタ)アクリル共重合体(A)と、前記化合物(B)と、前記多塩基酸無水物(C)と、任意成分である、アルコール性水酸基とカルボキシル基を有する化合物(E)と、を含有する原料の全てを一括で反応させる方法(後述の方法1)で製造してもよいし、原料を順次反応させる方法(後述の方法2)で製造してもよい。なお、反応効率の観点から方法2が好ましい。
【0080】
前記方法1としては、例えば、前記(メタ)アクリル共重合体(A)と、前記化合物(B)と、前記多塩基酸無水物(C)と、任意成分である、アルコール性水酸基とカルボキシル基を有する化合物(E)と、を含む反応原料(1)を、塩基性触媒又は酸性触媒の存在下、50~150℃で反応させて得られる方法等が挙げられる。
【0081】
前記塩基性触媒としては、例えば、N-メチルモルフォリン、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ-n-ブチルアミンもしくはジメチルベンジルアミン、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジエチルプロピルアミン、ジプロピルメチルアミン、ジプロピルエチルアミン、トリプロピルアミン、ジメチルブチルアミン、ジエチルブチルアミン、ジブチルメチルアミン、ジブチルエチルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、1,4-ジエチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアミン化合物;トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート等の四級アンモニウム塩;トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物;テトラメチルホスホニウムクロライド、テトラエチルホスホニウムクロライド、テトラプロピルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、トリメチル(2-ヒドロキシルプロピル)ホスホニウムクロライド、トリフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩;ジブチル錫ジラウレート、オクチル錫トリラウレート、オクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジネオデカノエート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ドデカノイルジスタノキサン等の有機錫化合物;オクチル酸亜鉛、オクチル酸ビスマス等の有機金属化合物;オクタン酸錫等の無機錫化合物;無機金属化合物などが挙げられる。また、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等を用いることもできる。
これらの塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。使用に際しては、これらの塩基性触媒を10~55質量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。これらの塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0082】
前記酸性触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸、三フッ化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸などが挙げられる。これらの酸性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0083】
前記方法1における前記塩基性触媒又は酸性触媒の使用量は、前記(メタ)アクリル共重合体(A)と、前記化合物(B)と、前記多塩基酸無水物(C)と、任意成分である、アルコール性水酸基とカルボキシル基を有する化合物(E)と、の合計質量100質量部に対して、0.01~5質量部の範囲が好ましい。
【0084】
前記方法2としては、例えば、予め前記(メタ)アクリル共重合体(A)、前記化合物(B)及びアルコール性水酸基とカルボキシル基を有する化合物(E)を塩基性触媒又は酸性触媒の存在下、70~140℃で反応させて反応生成物(I)を得て、次いで、前記反応生成物(I)と、前記多塩基酸無水物(C)と、を塩基性触媒又は酸性触媒の存在下、70~140℃で反応させて得られる方法等が挙げられる。
前記塩基性触媒としては、上述の塩基性触媒として例示したものと同様のものを用いることができる。これらの塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記酸性触媒としては、上述の酸性触媒として例示したものと同様のものを用いることができる。これらの酸性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0085】
前記方法2の前記(メタ)アクリル共重合体(A)及び前記化合物(B)の反応における前記塩基性触媒又は酸性触媒の使用量は、前記(メタ)アクリル共重合体(A)及び前記化合物(B)の合計質量100質量部に対して、0.01~5質量部の範囲が好ましい。また、前記反応生成物(I)と、前記多塩基酸無水物(C)と、任意成分である、アルコール性水酸基とカルボキシル基を有する化合物(E)と、の反応における前記塩基性触媒又は酸性触媒の使用量は、前記反応生成物(I)と、前記多塩基酸無水物(C)と、任意成分である、アルコール性水酸基とカルボキシル基を有する化合物(E)との合計質量100質量部に対して、0.01~5質量部の範囲が好ましい。
【0086】
前記方法1及び2において、前記(メタ)アクリル共重合体(A)が化合物(a2)由来のエポキシ基を有するものであり、前記化合物(B)がカルボキシル基を有するものである場合、又は、前記(メタ)アクリル共重合体(A)が化合物(a2)由来のカルボキシル基を有するものであり、前記化合物(B)がエポキシ基を有するものである場合、反応に用いる触媒としては、ホスフィン化合物、ホスホニウム塩等のリン系触媒が好ましく、ホスフィン化合物がより好ましい。
【0087】
前記ホスフィン化合物としては、上述のホスフィン化合物として例示したものと同様のものを用いることができる。また、これらのホスフィン化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0088】
前記ホスホニウム塩としては、上述のホスホニウム塩として例示したものと同様のものを用いることができる。また、これらのホスホニウム塩は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0089】
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂の製造において、前記(メタ)アクリル共重合体(A)と、前記化合物(B)との使用割合は、前記(メタ)アクリル共重合体(A)を構成する化合物(a2)の構造単位が有する反応性官能基1モルに対して、前記化合物(B)が0.9~1.1モルの範囲であることが好ましく、0.95~1.05の範囲がより好ましい。
【0090】
また、本実施形態の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂の製造において、前記(メタ)アクリル共重合体(A)と、前記重多塩基酸無水物(C)との使用割合は、前記(メタ)アクリル共重合体(A)が有する反応性官能基1モルに対して、前記多塩基酸無水物(C)が0.25~0.95モルの範囲であることが好ましく、0.3~0.9の範囲がより好ましい。
【0091】
本開示の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂の製造において、必要に応じて、重合禁止剤、酸化防止剤等を用いることもできる。当該重合禁止剤、酸化防止剤等は、上記化合物(D)の代わりに使用しても、あるいは化合物(D)と重複若しくは併用して使用してもよい。
【0092】
前記重合禁止剤としては、例えば、p-メトキシフェノール、p-メトキシクレゾール、4-メトキシ-1-ナフトール、4,4’-ジアルコキシ-2,2’-ビ-1-ナフトール、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール、N’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、スチレン化フェノール、N-イソプロピル-N’-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等のフェノール化合物、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、p-ベンゾキノン、メチル-p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニルベンゾキノン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、アントラキノン、ジフェノキノン等のキノン化合物、メラミン、p-フェニレンジアミン、4-アミノジフェニルアミン、N.N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-i-プロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1.3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、4,4’-ジクミル-ジフェニルアミン、4,4’-ジオクチル-ジフェニルアミン、ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)、スチレン化ジフェニルアミン、スチレン化ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンの反応生成物、ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンの反応生成物等のアミン化合物、フェノチアジン、ジステアリルチオジプロピオネート、2,2-ビス({[3-(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)-1,3-プロパンジイル=ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオナート]、ジトリデカン-1-イル=3,3’-スルファンジイルジプロパノアート等のチオエーテル化合物、N-ニトロソジフェニルアミン、N-ニトロソフェニルナフチルアミン、p-ニトロソフェノール、ニトロソベンゼン、p-ニトロソジフェニルアミン、α-ニトロソ-β-ナフトール等、N、N-ジメチルp-ニトロソアニリン、p-ニトロソジフェニルアミン、p-ニトロンジメチルアミン、p-ニトロン-N、N-ジエチルアミン、N-ニトロソエタノールアミン、N-ニトロソジ-n-ブチルアミン、N-ニトロソ-N-n-ブチル-4-ブタノールアミン、N-ニトロソ-ジイソプロパノールアミン、N-ニトロソ-N-エチル-4-ブタノールアミン、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン、N-ニトロソモルホリン、N-二トロソーN-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、二トロソベンゼン、N-ニトロソ-N-メチル-p-トルエンスルホンアミド、N-ニトロソ-N-エチルウレタン、N-ニトロソ-N-n-プロピルウレタン、1-ニトロソ-2-ナフトール、2-ニトロソ-1-ナフトール、1-ニトロソ-2-ナフトール-3,6-スルホン酸ナトリウム、2-ニトロソ-1-ナフトール-4-スルホン酸ナトリウム、2-ニトロソ-5-メチルアミノフェノール塩酸塩、2-ニトロソ-5-メチルアミノフェノール塩酸塩等のニトロソ化合物、リン酸とオクタデカン-1-オールのエステル、トリフェニルホスファイト、3,9-ジオクタデカン-1-イル-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリスノニルフェニルホスフィト、亜リン酸-(1-メチルエチリデン)-ジ-4,1-フェニレンテトラ-C12-15-アルキルエステル、2-エチルヘキシル=ジフェニル=ホスフィット、ジフェニルイソデシルフォスファイト、トリイソデシル=ホスフィット、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等のホスファイト化合物、ビス(ジメチルジチオカルバマト-κ(2)S,S’)亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチル・ジチオカルバミン酸亜鉛等の亜鉛化合物、ビス(N,N-ジブチルカルバモジチオアト-S,S’)ニッケル等のニッケル化合物、1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール-2-チオン、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、2-メチル-4,6-ビス[(オクタン-1-イルスルファニル)メチル]フェノール、ジラウリルチオジプロピオン酸エステル、3,3’-チオジプロピオン酸ジステアリル等の硫黄化合物などが挙げられる。これらの重合禁止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0093】
前記酸化防止剤としては、前記重合禁止剤で例示した化合物と同様のものを用いることができ、前記酸化防止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0094】
また、前記重合禁止剤、及び前記酸化防止剤の市販品としては、例えば、和光純薬工業株式会社製「Q-1300」、「Q-1301」、住友化学株式会社製「スミライザーBBM-S」、「スミライザーGA-80」等が挙げられる。
【0095】
[硬化性樹脂組成物]
本実施形態の別の態様は、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂及び重合開始剤を含有する硬化性樹脂組成物であり、好ましくは酸基及び重合性不飽和基含有樹脂及び光重合開始剤を含有する硬化性樹脂組成物でありうる。
本実施形態の硬化性樹脂組成物のバイオマス炭素含有率(%)は、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂及び重合開始剤以外に配合する成分の種類あるいは各成分の配合量によって適宜変わるものであるが、当該バイオマス炭素含有率(%)の下限は、例えば、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上、よりさらに好ましくは9%以上、さらにより好ましくは12%以上でありうる。一方、当該バイオマス炭素含有率(%)の上限は、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは70%以下、よりさらに好ましくは60%以下でありうる。前記上限及び下限は適宜組み合わせすることができる。
【0096】
(光重合開始剤)
本実施形態の光重合開始剤は、照射する活性エネルギー線の種類等により適切なものを選択して用いることができる。また、アミン化合物、尿素化合物、含硫黄化合物、含燐化合物、含塩素化合物、ニトリル化合物等の光増感剤と併用してもよい。また、光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。かかる光重合開始剤の具体例としては、例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、1,2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等のアルキルフェノン系光重合開始剤;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤;ベンゾフェノン化合物等の分子内水素引き抜き型光重合開始剤等が挙げられる。
本実施形態の光重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,2′-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン等が挙げられる。
【0097】
前記その他の光重合開始剤の市販品としては、例えば、「Omnirad-1173」、「Omnirad-184」、「Omnirad-127」、「Omnirad-2959」、「Omnirad-369」、「Omnirad-379」、「Omnirad-907」、「Omnirad-4265」、「Omnirad-1000」、「Omnirad-651」、「Omnirad-TPO」、「Omnirad-819」、「Omnirad-2022」、「Omnirad-2100」、「Omnirad-754」、「Omnirad-784」、「Omnirad-500」、「Omnirad-81」(IGM社製)、「カヤキュア-DETX」、「カヤキュア-MBP」、「カヤキュア-DMBI」、「カヤキュア-EPA」、「カヤキュア-OA」(日本化薬株式会社製)、「バイキュア-10」、「バイキュア-55」(ストウファ・ケミカル社製)、「トリゴナルP1」(アクゾ社製)、「サンドレイ1000」(サンドズ社製)、「ディープ」(アプジョン社製)、「クオンタキュア-PDO」、「クオンタキュア-ITX」、「クオンタキュア-EPD」(ワードブレンキンソップ社製)、「Runtecure-1104」(Runtec社製)等が挙げられる。
前記光重合開始剤の添加量は、例えば、前記硬化性樹脂組成物中に、硬化性樹脂組成物全体に対して、0.5~20質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0098】
(硬化性樹脂組成物の好ましい態様)
本開示の硬化性樹脂組成物は、前述した酸基及び重合性不飽和基含有樹脂及び重合開始剤、好ましくは光重合開始剤以外、その他の樹脂成分を含有してもよい。前記その他の樹脂成分としては、その他の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂及び/又は各種の(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。
【0099】
<その他の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂>
本実施形態の硬化性樹脂組成物において、任意成分である、その他の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂としては、前述した酸基及び重合性不飽和基含有樹脂以外の樹脂であって、かつ前記樹脂中に酸基及び重合性不飽和基を有するものであれば何れでもよく、例えば、酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(I)、酸基及び重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(II)、酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(III)、酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(IV)、酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(V)、酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂(VI)等が挙げられる。
前記酸基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基等が挙げられる。また、上記重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、アリル基、イソプロペニル基、1-プロぺニル基、スチリル基、スチリルメチル基、マレイミド基、ビニルエーテル基等が挙げられる。
以下、酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(I)、酸基及び重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(II)、酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(III)、酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(IV)、酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(V)、酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂(VI)及びその他の各種の(メタ)アクリレートモノマーの順に説明する。
なお、本実施形態のその他の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂の使用量は、本実施形態の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂100質量部に対して、10~900質量部の範囲が好ましい。
【0100】
<<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(I)>>
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(I)としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和一塩基酸、及び多塩基酸無水物を必須の原料とする酸基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和一塩基酸、多塩基酸無水物、ポリイソシアネート化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を反応原料とする酸基及びウレタン基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂などが挙げられる。
【0101】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、トリヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、オキサゾリドン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0102】
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールBP型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。
前記水添ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールB型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールE型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0103】
前記ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチル-4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチル-2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
前記水添ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、水添4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、水添2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂、水添テトラメチル-4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、水添テトラメチル-2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0104】
前記不飽和一塩基酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、α-シアノ桂皮酸、β-スチリルアクリル酸、β-フルフリルアクリル酸等が挙げられる。また、前記不飽和一塩基酸のエステル化物、酸ハロゲン化物、酸無水物等も用いることができる。さらに、下記一般式(6)で表される化合物等も用いることができる。
【化7】
[上記一般式(6)中、X
61は、炭素数1~10のアルキレン鎖、ポリオキシアルキレン鎖、(ポリ)エステル鎖、芳香族炭化水素鎖、又は(ポリ)カーボネート鎖を表し、X
61の構造中の水素原子がハロゲン原子又はアルコキシ基に置換されてもよく、Y
61は、水素原子又はメチル基である。]
【0105】
前記ポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖等が挙げられる。
前記(ポリ)エステル鎖としては、例えば、下記一般式(7)で表される(ポリ)エステル鎖が挙げられる。
【化8】
(上記一般式(7)中、R
71及びR
72は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、n
71は1~5の整数を表す。)
【0106】
上記一般式(6)における(ポリ)カーボネート鎖としては、例えば、下記一般式(8)で表される(ポリ)カーボネート鎖が挙げられる。
【化9】
(上記一般式(8)中、R
81は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、n
81は1~5の整数を表す。)
一般式(6)で表される化合物の分子量は、100~500の範囲が好ましく、150~400の範囲がより好ましい。
【0107】
上記一般式(6)における芳香族炭化水素鎖としては、例えば、フェニレン鎖、ナフチレン鎖、ビフェニレン鎖、フェニルナフチレン鎖又はビナフチレン鎖等が挙げられる。また、部分構造として、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等の芳香環を有する炭化水素鎖も用いることができる。
【0108】
前記多塩基酸無水物としては、上述の多塩基酸無水物(C)として例示したものと同様のものを用いることができ、前記多塩基酸無水物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0109】
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルビフェニル、o-トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;下記一般式(9)で表される繰り返し構造を有するポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体等が挙げられる。また、これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【化10】
[上記一般式(9)中、R
92及びR
93はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基の何れかである。R
91はそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基、又は一般式(9)で表される構造部位と*印が付されたメチレン基を介して連結する結合点の何れかである。lは0又は1~3の整数であり、mは1~15の整数である。]
【0110】
前記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、上述の水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物として例示したものと同様のものを用いることができ、前記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0111】
前記酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(I)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(I)の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
【0112】
前記有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキソラン等の環状エーテル溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族溶剤;カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール溶剤;アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等のグリコールエーテル溶剤;メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、前記有機溶剤の使用量は、反応効率が良好となることから、反応原料の合計質量に対し0.1~5倍量程度の範囲で用いることが好ましい。
【0113】
前記塩基性触媒としては、上述の塩基性触媒として例示したものと同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0114】
<<酸基及び重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(II)>>
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(II)としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物、カルボキシル基含有ポリオール化合物、及び必要に応じて多塩基酸無水物、前記カルボキシル基含有ポリオール化合物以外のポリオール化合物とを反応させて得られたものや、ポリイソシアネート化合物、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物、多塩基酸無水物、及びカルボキシル基含有ポリオール化合物以外のポリオール化合物とを反応させて得られたもの等が挙げられる。
【0115】
前記ポリイソシアネート化合物としては、上述のポリイソシアネート化合物として例示したものと同様のものを用いることができ、前記ポリイソシアネート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0116】
前記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、上述の水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物として例示したものと同様のものを用いることができ、前記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0117】
前記カルボキシル基含有ポリオール化合物としては、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール吉草酸等が挙げられる。前記カルボキシル基含有ポリオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0118】
前記多塩基酸無水物としては、上述の多塩基酸無水物(C)として例示したものと同様のものを用いることができ、前記多塩基酸無水物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0119】
前記カルボキシル基含有ポリオール化合物以外のポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール化合物;ビフェノール、ビスフェノール等の芳香族ポリオール化合物;前記各種のポリオール化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体;前記各種のポリオール化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等が挙げられる。前記カルボキシル基含有ポリオール化合物以外のポリオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0120】
前記酸基及び重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(II)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(II)の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
【0121】
前記有機溶剤としては、上述の有機溶剤として例示したものと同様のものを用いることができ、前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記塩基性触媒としては、上述の塩基性触媒として例示したものと同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0122】
<<酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(III)>>
前記酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(III)としては、例えば、水酸基やカルボキシル基、イソシアネート基、グリシジル基等の反応性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物(α)を必須の成分として重合させて得られるアクリル樹脂中間体に、これらの官能基と反応し得る反応性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物(β)をさらに反応させることにより(メタ)アクリロイル基を導入して得られる反応生成物や、前記反応生成物中の水酸基に多塩基酸無水物を反応させて得られるもの等が挙げられる。
【0123】
前記アクリル樹脂中間体は、前記(メタ)アクリレート化合物(α)の他、必要に応じてその他の重合性不飽和基含有化合物を共重合させたものであってもよい。前記その他の重合性不飽和基含有化合物は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシリル基含有(メタ)アクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン誘導体等が挙げられる。これらは単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0124】
前記(メタ)アクリレート化合物(β)は、前記(メタ)アクリレート化合物(α)が有する反応性官能基と反応し得るものであれば特に限定されないが、反応性の観点から以下の組み合わせであることが好ましい。即ち、前記(メタ)アクリレート化合物(α)として水酸基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)としてイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(α)としてカルボキシル基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)としてグリシジル基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(α)としてイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)として水酸基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(α)としてグリシジル基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)としてカルボキシル基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(β)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0125】
前記多塩基酸無水物は、上述の多塩基酸無水物(C)として例示したものと同様のものを用いることができ、前記多塩基酸無水物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0126】
前記酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(III)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(III)の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
【0127】
前記有機溶剤としては、上述の有機溶剤として例示したものと同様のものを用いることができ、前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記塩基性触媒としては、上述の塩基性触媒として例示したものと同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0128】
<<酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(IV)>>
前記酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂としては、例えば、酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物及び/又はエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物と、必要に応じて、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、グリシジル基、及び酸無水物基からなる群より選ばれる1種以上の反応性官能基を有する化合物を反応させて得られるものが挙げられる。なお、前記反応性官能基を有する化合物は、(メタ)アクリロイル基を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0129】
前記アミドイミド樹脂としては、酸基又は酸無水物基のどちらか一方のみを有するものであってもよいし、両方を有するものであってもよい。水酸基含有(メタ)アクリレート化合物や(メタ)アクリロイル基含有エポキシ化合物との反応性や反応制御の観点から、酸無水物基を有するものであることが好ましく、酸基と酸無水物基との両方を有するものであることがより好ましい。前記アミドイミド樹脂の固形分酸価は、中性条件下、即ち、酸無水物基を開環させない条件での測定値が60~350mgKOH/gの範囲であることが好ましい。他方、水の存在下等、酸無水物基を開環させた条件での測定値が61~360mgKOH/gの範囲であることが好ましい。
【0130】
前記アミドイミド樹脂としては、例えば、ポリイソシアネート化合物と、多塩基酸無水物とを反応原料として得られるものが挙げられる。
前記ポリイソシアネート化合物としては、上述のポリイソシアネート化合物として例示したものと同様のものを用いることができ、前記ポリイソシアネート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0131】
前記多塩基酸無水物としては、上述の多塩基酸無水物(C)として例示したものと同様のものを用いることができ、前記多塩基酸無水物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
また、前記アミドイミド樹脂は、必要に応じて、前記ポリイソシアネート化合物及び多塩基酸無水物以外に、多塩基酸を反応原料として併用することもできる。
【0132】
前記多塩基酸としては、一分子中にカルボキシル基を2つ以上有する化合物であれば何れのものも用いることができる。例えば、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等が挙げられる。また、前記多塩基酸としては、例えば、共役ジエン系ビニルモノマーとアクリロニトリルとの共重合体であって、その分子中にカルボキシル基を有する重合体も用いることができる。これらの多塩基酸は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0133】
前記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、上述の水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物として例示したものと同様のものを用いることができ、前記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0134】
前記エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物としては、上述したエポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物として例示したものと同様のものを用いることができ、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0135】
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(IV)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(IV)の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
前記有機溶剤としては、上述の有機溶剤として例示したものと同様のものを用いることができ、前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記塩基性触媒としては、上述の塩基性触媒として例示したものと同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0136】
<<酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(V)>>
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂としては、例えば、フェノール性水酸基含有化合物と、アルキレンオキサイド又はアルキレンカーボネートと、N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物と、多塩基酸無水物と、必要に応じて不飽和一塩基酸とを反応させて得られたものが挙げられる。
【0137】
前記フェノール性水酸基含有化合物としては、分子内にフェノール性水酸基を少なくとも1つ有するフェノール性水酸基を含有する化合物をいう。フェノール性水酸基含有化合物としては、例えば、下記一般式(10.1)~(10.5)のいずれかで表される化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物と下記一般式(11.1)~(11.5)のいずれかで表される化合物とを必須の反応原料とする反応生成物、あるいは芳香族ポリヒドロキシ化合物又はその他分子内にフェノール性水酸基を1つ有する化合物の1種又は2種以上を反応原料とするノボラック型フェノール樹脂なども用いることができる。前記分子内にフェノール性水酸基を少なくとも1つ有する化合物としては、例えば、下記一般式(10.1)~(10.5)で表される化合物が挙げられる。
【化11】
【0138】
(上記一般式(10.1)~(10.5)中、R
101~R
104及びR
107それぞれ独立して、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、アリール基又はハロゲン原子のいずれかを表し、R
105及びR
106はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、j
101~j
105はそれぞれ独立して、0又は1以上の整数を表し、好ましくは0又は1~3の整数であり、より好ましくは0又は1である。k
101~k
105はそれぞれ独立して、1以上の整数を表し、好ましくは、2又は3である。)
なお、上記一般式(10.1)~(10.5)における芳香環上の置換基の位置については、任意であり、例えば、一般式(10.2)のナフタレン環においてはいずれの環上の水素原子と置換していてもよく、一般式(10.3)では、ビフェニル1分子中に存在するベンゼン環のいずれの水素原子に置換していてもよく、一般式(10.4)では、アラルキル1分子中に存在するベンゼン環のいずれかの水素原子と置換していてもよく、一般式(10.5)では、1分子中に存在するベンゼン環のいずれの水素原子と置換していてもよいことを示し、1分子中における置換基の個数がj
101~j
105及びk
101~k
105であることを示している。
【化12】
【0139】
上記一般式(11.1)~(11.5)中、h81は、0又は1を表し、R111~R116はそれぞれ独立して、一価の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基又はアラルキル基のいずれかを表し、k111~k116はそれぞれ独立して、0又は1~4の整数を表し、Z111~Z116はそれぞれ独立して、ビニル基、ハロメチル基、ヒドロキシメチル基又はアルキルオキシメチル基のいずれかを表し、Y111は、炭素原子数1~4のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基のいずれかを表し、n111は1~4の整数を表す。)
上記一般式(11.1)~(11.5)で表される化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0140】
前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ペンチレンオキサイド等が挙げられる。これらの中でも、高伸度、光感度、耐熱黄変性及び密着性に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが好ましい。前記アルキレンオキサイドは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0141】
前記アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ペンチレンカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、高伸度、光感度、耐熱黄変性及び密着性に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートが好ましい。前記アルキレンカーボネートは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0142】
前記N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物としては、例えば、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。前記N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0143】
前記多塩基酸無水物としては、上述の多塩基酸無水物(C)として例示したものと同様のものを用いることができ、前記多塩基酸無水物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記不飽和一塩基酸としては、上述の不飽和一塩基酸として例示したものと同様を用いることができ、前記不飽和一塩基酸は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0144】
前記酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒及び酸性触媒を用いてもよい。
【0145】
前記有機溶剤としては、上述の有機溶剤として例示したものと同様のものを用いることができ、前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記塩基性触媒としては、上述の塩基性触媒として例示したものと同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記酸性触媒としては、上述の酸性触媒として例示したものと同様のものを用いることができ、前記酸性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0146】
<<酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂(VI)>>
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂(VI)としては、例えば、フェノール性水酸基含有化合物と、アルキレンオキサイド又はアルキレンカーボネートと、不飽和一塩基酸と、多塩基酸無水物とを反応させて得られたものが挙げられる。
【0147】
前記フェノール性水酸基含有化合物としては、上述のフェノール性水酸基含有化合物として例示したものと同様のものを用いることができ、前記フェノール性水酸基含有化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0148】
前記アルキレンオキサイドとしては、上述のアルキレンオキサイドとして例示したものと同様のものを用いることができる。これらの中でも、高伸度、光感度、耐熱黄変性及び密着性に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが好ましい。前記アルキレンオキサイドは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0149】
前記アルキレンカーボネートとしては、上述のアルキレンカーボネートとして例示したものと同様のものを用いることができる。これらの中でも、高伸度、光感度、耐熱黄変性及び密着性に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートが好ましい。前記アルキレンカーボネートは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記不飽和一塩基酸としては、上述の不飽和一塩基酸として例示したものと同様を用いることができ、前記不飽和一塩基酸は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記多塩基酸無水物としては、上述の多塩基酸無水物(C)として例示したものと同様のものを用いることができ、前記多塩基酸無水物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0150】
前記酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂(VI)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂(VI)の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒及び酸性触媒を用いてもよい。
【0151】
前記有機溶剤としては、上述の有機溶剤として例示したものと同様のものを用いることができ、前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記塩基性触媒としては、上述の塩基性触媒として例示したものと同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記酸性触媒としては、上述の酸性触媒として例示したものと同様のものを用いることができ、前記酸性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0152】
<<その他の各種の(メタ)アクリレートモノマー>>
本実施形態のその他の各種の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等の脂肪族モノ(メタ)アクリレート化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチルモノ(メタ)アクリレート等の脂環型モノ(メタ)アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等の複素環型モノ(メタ)アクリレート化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族モノ(メタ)アクリレート化合物等のモノ(メタ)アクリレート化合物:前記各種のモノ(メタ)アクリレートモノマーの分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等のポリオキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性モノ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のモノ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性モノ(メタ)アクリレート化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ジ(メタ)アクリレート化合物;1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の脂環型ジ(メタ)アクリレート化合物;ビフェノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート等の芳香族ジ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のジ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入したポリオキシアルキレン変性ジ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のジ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性ジ(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等の脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性トリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性トリ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した4官能以上の(ポリ)オキシアルキレン変性ポリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入した4官能以上のラクトン変性ポリ(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
また、本実施形態のその他の各種の(メタ)アクリレートモノマーとしては、上述したものの他に、フェノール化合物と、環状カーボネート化合物又は環状エーテル化合物と、不飽和モノカルボン酸とを必須の反応原料とする(メタ)アクリレートモノマーを用いることができる。
【0153】
前記フェノール化合物としては、例えば、クレゾール、キシレノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、3-メチルカテコール、4-メチルカテコール、4-アリルピロカテコール、1,2,3-トリヒドロキシベンゼン、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、1-ナフトール、2-ナフトール、1,3-ナフタレンジオール、1,5-ナフタレンジオール、2,6-ナフタレンジオール、2,7-ナフタレンジオール、水添ビスフェノール、水添ビフェノール、ポリフェニレンエーテル型ジオール、ポリナフチレンエーテル型ジオール、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック型樹脂、ナフトールノボラック型樹脂、フェノールアラルキル型樹脂、ナフトールアラルキル型樹脂、シクロ環構造含有フェノール樹脂等が挙げられる。
【0154】
前記環状カーボネート化合物としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ペンチレンカーボネート等が挙げられる。これらの環状カーボネート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記環状エーテル化合物としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらの環状エーテル化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記不飽和モノカルボン酸としては、上述の不飽和一塩基酸として例示したものと同様のものを用いることができる。
前記その他の(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、本実施形態の硬化性樹脂組成物中に90質量%以下が好ましい。
【0155】
<<添加剤>>
本実施形態の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、紫外線吸収剤、有機溶媒、無機質充填材やポリマー微粒子、顔料、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、難燃剤、保存安定化剤、重合禁止剤及び酸化防止剤からなる群から選択される添加剤を含有することもできる。
前記添加剤は、前記硬化性樹脂組成物の固形分中、硬化性樹脂組成物全体に対して0.01~30質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0156】
前記硬化剤としては、例えば、多塩基酸、不飽和一塩基酸、アミン化合物、アミド化合物、アゾ化合物、有機過酸化物、ポリオール化合物、エポキシ樹脂等が挙げられる。
前記硬化剤の添加量は、例えば、前記硬化性樹脂組成物の固形分中、硬化性樹脂組成物全体に対して0.1~30質量%の範囲で用いることが好ましい。
前記多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等が挙げられる。また、前記多塩基酸としては、例えば、共役ジエン系ビニルモノマーとアクリロニトリルとの共重合体であって、その分子中にカルボキシル基を有する重合体も用いることができる。これらの多塩基酸は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記不飽和一塩基酸としては、上述の不飽和一塩基酸として例示したものと同様のものを用いることができ、前記不飽和一塩基酸は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記アミン化合物としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ-ル、BF3-アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられる。これらのアミン化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記アミド系化合物としては、例えば、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。これらのアミド化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記アゾ化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
前記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、アルキルパーオキシカーボネート等が挙げられる。これらの有機過酸化物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0157】
前記ポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタン、トリメチロールメタンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等のポリオールモノマー;前記ポリオールモノマーと、琥珀酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸との共縮合によって得られるポリエステルポリオール;前記ポリオールモノマーと、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、3-メチル-δ-バレロラクトン等の種々のラクトンとの重縮合反応によって得られるラクトン型ポリエステルポリオール;前記ポリオールモノマーと、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル等の環状エーテル化合物との開環重合によって得られるポリエーテルポリオールなどが挙げられる。これらのポリオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記エポキシ樹脂としては、上述のエポキシ樹脂として例示したものと同様のものを用いることができ、前記エポキシ樹脂は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記硬化促進剤としては、硬化反応を促進するものであり、例えば、リン系化合物、アミン系化合物、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、前記硬化促進剤の添加量は、例えば、前記硬化性樹脂組成物の固形分中に0.01~10質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0158】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン誘導体、2-(2′-キサンテンカルボキシ-5′-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2′-o-ニトロベンジロキシ-5′-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-キサンテンカルボキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン、2-o-ニトロベンジロキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0159】
前記有機溶媒としては、上述の有機溶媒として例示したものと同様のものを用いることができ、前記有機溶媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。
前記顔料としては、公知慣用の無機顔料や有機顔料を使用することができる。
前記無機顔料としては、例えば、白色顔料、アンチモンレッド、ベンガラ、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等が挙げられる。これらの無機顔料は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。前記無機顔料としては、白色顔料が好ましい。
前記白色顔料としては、例えば、酸化チタン,酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、中空樹脂粒子、硫化亜鉛等が挙げられる。なかでも、白色顔料としては酸化チタンが好ましい。
前記有機顔料としては、例えば、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、フタロシアニン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンツイミダゾロン顔料、アゾ顔料等が挙げられる。これらの有機顔料は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0160】
前記難燃剤としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム、リン酸アミド等の無機リン化合物;リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5―ジヒドロオキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等の有機リン化合物;トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等の窒素系難燃剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等のシリコーン系難燃剤;金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等の無機難燃剤などが挙げられる。これらの難燃剤は、単独でも用いることも2種以上を併用することもできる。また、これら難燃剤を用いる場合は、全樹脂組成物中0.1~20質量%の範囲であることが好ましい。
本開示の硬化性樹脂組成物の製造方法としては、特に制限されず、どのような方法にて製造してもよい。例えば、各配合成分を混合して製造する方法等が挙げられる。混合方法は特に限定されず、ペイントシェイカー、ディスパー、ロールミル、ビーズミル、ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等を用いてもよい。
【0161】
本開示は、硬化性樹脂組成物を硬化反応させて得られることを特徴とする硬化物に関する。
本実施形態の硬化物は、前記硬化性樹脂組成物の硬化物である。当該硬化物は、前記硬化性樹脂組成物に、活性エネルギー線を照射することで得ることができる。前記活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。また、前記活性エネルギー線として、紫外線を用いる場合、紫外線による硬化反応を効率よく行う上で、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で照射してもよく、空気雰囲気下で照射してもよい。
【0162】
紫外線発生源としては、実用性、経済性の面から紫外線ランプが一般的に用いられている。具体的には、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、太陽光、LED等が挙げられる。
前記活性エネルギー線の積算光量は、特に制限されないが、0.1~50kJ/m2であることが好ましく、0.5~10kJ/m2であることがより好ましい。積算光量が上記範囲であると、未硬化部分の発生の防止又は抑制ができることから好ましい。
なお、前記活性エネルギー線の照射は、一段階で行ってもよいし、二段階以上に分けて行ってもよい。
【0163】
また、本実施形態の硬化物は、優れた、伸度、光感度、耐熱黄変性及び密着性を有することから、例えば、半導体デバイス用途における、ソルダーレジスト、層間絶縁材料、パッケージ材、アンダーフィル材、回路素子等のパッケージ接着層や、集積回路素子と回路基板の接着層として好適に用いることができる。また、LCD、OELDに代表される薄型ディスプレイ用途における、薄膜トランジスタ保護膜、液晶カラーフィルタ保護膜、カラーフィルタ用顔料レジスト、ブラックマトリックス用レジスト、スペーサー等に好適に用いることができる。これらの中でも、特にソルダーレジスト用途に好適に用いることができる。
【0164】
本実施形態のソルダーレジスト用樹脂材料は、前記硬化性樹脂組成物からなるものである。本実施形態のレジスト部材は、例えば、前記ソルダーレジスト用樹脂材料を基材上に塗布し、60~100℃程度の温度範囲で有機溶媒を揮発乾燥させた後、所望のパターンが形成されたフォトマスクを通して活性エネルギー線にて露光させ、アルカリ水溶液にて未露光部を現像し、更に140~200℃程度の温度範囲で加熱硬化させて得ることができる。前記基材としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などが挙げられる。
【実施例0165】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下に挙げた実施例に限定されるものではない。
1.実施例及び比較例における評価方法
【0166】
[塩素量の評価方法]
各実施例及び比較例で得られた酸基及び重合性不飽和基含有樹脂又は硬化性樹脂組成物中の塩素原子の含有量は、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂又は硬化性樹脂組成物を、燃焼管燃焼法により高温で燃焼・分解させ、その分解ガスを吸収液に吸収させてイオンクロマトグラフィーで定量することによって測定した。当該吸収液として、過酸化水素水及び抱水ヒドラジン含有の超純水を用いた。
また、燃焼管燃焼法で使用したイオンクロマトグラフィーは、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製のイオンクロマトグラフ装置「イオンクロマトグラフICS-1500型(検出器:電気伝導度計)」とイオンクロマトグラフィー用カラム「サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製 AS-12A」である。
溶離液は、濃度0.3mMの炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)水溶液と濃度2.7mMの炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液の混合溶液であり、流量は1.5mL/minであった。
【0167】
[絶縁信頼性(HAST(High Accelerated Stress Test)特性)の評価方法]
温度、湿度に対する信頼性評価として高温高湿下での電気特性を評価した。より詳細には、クシ型電極基板(ラインアンドスペースは100μm/100μm)上に、各実施例及び各比較例において調製した硬化性樹脂組成物を用いて硬化塗膜をそれぞれ作製し、120℃、85%R.H.の高温高湿槽にて、DC100Vのバイアス電圧を印加し100時間、250時間後のマイグレーションの有無を目視にて下記の評価基準で評価した。
評価基準:
○:全く変化無し
△:僅かな変化が観察される
×:マイグレーションが発生する
なお、上記硬化塗膜は、各実施例及び各比較例において調製した硬化性樹脂組成物を前記クシ型電極基板に塗布し、80℃で30分乾燥させた後、メタルハライドランプを用いて10kJ/m2の紫外線を照射し、160℃で1時間後硬化して作製した。
【0168】
[光感度の評価方法]
各実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物を、アプリケーターを用いてガラス基材上に膜厚50μmとなるように塗布した後、80℃でそれぞれ30分間乾燥させた。次いで、コダック社製のステップタブレットNo.2を介し、メタルハライドランプを用いて紫外線(10kJ/m2)を照射した。これを1質量%の炭酸ナトリウム水溶液で180秒現像し、残存した段数で下記の基準に従い評価した。なお、残存段数が多いほど光感度が高いことを表す。
【0169】
[耐熱黄変性の評価方法]
各実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物を、アプリケーターを用いてガラス上に膜厚50μmとなるように塗布し、80℃で30分乾燥させた。次いで、メタルハライドランプを用いて紫外線(10kJ/m2)を照射した後、160℃で1時間加熱して、硬化塗膜を得た。得られた硬化塗膜に熱風循環式乾燥炉中で260℃に加熱して、加速劣化させ、60分後に取り出し、未加熱ものと色差をΔE*ab日本電色工業株式会社製の測色色差計「ZE6000」にて測定し下記の基準に従い評価した。色差ΔE*abが低いほど、耐熱黄変性に優れることを示す。
【0170】
[二重結合当量(g/当量)の測定方法]
実施例で作製した酸基及び重合性不飽和基含有樹脂の二重結合当量は、下記式を用いて反応原料中の各成分の仕込み量から算出した。
二重結合当量=(二重結合を有する反応原料中の化合物成分の分子量)/(二重結合を有する化合物の官能基1モル当たりのモル当量)
すなわち、二重結合当量は、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂の二重結合1モル当たりの樹脂溶液の固形分の質量である。上記二重結合を有する反応原料中の化合物成分の分子量とは、上記酸基及び重合性不飽和基含有樹脂を構成する反応原料のうち、当該反応原料が全て反応して結合しているという仮定の下で、樹脂の固形分の重量として、全ての反応原料の各成分の質量を合計したものである。また、二重結合当量(g/当量)は、滴定及び元素分析、NMR、IR等の各種分析や示差走査熱量計法を用いて測定することもできるが、本明細書では、1H-NMRの面積比から算出している。
【0171】
[酸価の評価方法]
実施例の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂及び比較例で作製した酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(C1)の固形分酸価は、試料1g中に含有する遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K0070-1992で示された下記の1)~4)の手順に従い算出した。
1)試薬は、次のとおりとする。
・0.1mol/Lの塩酸 JIS K8001の4.5(5.5)[0.1mol/L塩酸(3.646gHCl/L)]による。
・0.1mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液 JIS K8574に規定する水酸化カリウム7gを5mLの水に溶かし、JIS K8102に規定するエタノール(95)を加えて1Lとし、二酸化炭素をさえぎって、2~3日間放置した後、上澄みを取るか又はろ過して耐アルカリ性の瓶に保存する。標定は、0.1mol/Lの塩酸25mLを全量ピペットを用いて三角フラスコに取り、フェノールフタレイン溶液を加え、0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、中和に要した量からファクターを求める。
・フェノールフタレイン溶液 JIS K8001の4.3(指示薬)による。
・溶媒JIS K8103に規定するジエチルエーテルとJISK8101に規定するエタノール(99.5)とを体積比で1:1又は2:1で混合したもの。
これらは、使用直前にフェノールフタレイン溶液を指示薬として数滴加え、0.1mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液で中和する。
2)装置及び器具装置及び器具は、次のとおりとする。
・三角フラスコ300ml
・ビュレット25ml
・水浴又は熱板
3)操作は、次のとおり行う。
・試料を適量三角フラスコに量り取る。
・溶媒100mL及び指示薬としてフェノールフタレイン溶液数滴加え、水浴上で試料が完全に溶けるまで十分に振り混ぜる。
・0.1mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬のうすい紅色が30秒間続いたときを終点とする。
4)計算酸価は、次の式によって算出する。
A=(B×f×5.611)/S
ここで、
A:酸価
B:滴定に用いた0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)
f:0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:試料の質量(g)
5.611:水酸化カリウムの式量56.11×1/10
【0172】
[バイオマス炭素含有率(%)の測定方法]
<加速器質量分析(AMS)に用いる試料の前処理方法>
後述の実施例及び比較例で用いた、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂又は硬化性組成物それぞれ10mgを微粒状の酸化銅とともにクォーツ製のサンプル管に入れ、脱気封管して、500℃で30分、850℃で2時間加熱することにより、二酸化炭素に変換した。次いで、サンプル管を真空ラインに接続してコールドトラップ法により二酸化炭素のみに精製し、鉄粉が入ったクォーツ管に二酸化炭素を移した後、水素ガスを同封して、封管した。そして、650℃で10時間加熱して還元反応を行い、測定用のグラファイトを作製した。
【0173】
<放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)の算出>
得られた測定用グラファイトをサンプルフォルダーに充填して、加速器質量分析(AMS)を行い、以下の式(1)~(3)により、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)及び硬化性樹脂組成物の放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)を算出した。
式(1):
放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)=[{酸基及び重合性不飽和基含有樹脂中の放射性炭素(14C)÷酸基及び重合性不飽和基含有樹脂中の炭素(12C)}/{標準物質の放射性炭素(14C)/標準物質の炭素(12C)}×100
式(2):
放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)=[{エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)中の放射性炭素(14C)÷(メタ)アクリレート化合物(B)中の炭素(12C)}/{標準物質の放射性炭素(14C)/標準物質の炭素(12C)}×100
式(3):
放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)=[{硬化性樹脂組成物中の放射性炭素(14C)÷硬化性樹脂組成物中の炭素(12C)}/{標準物質の放射性炭素(14C)/標準物質の炭素(12C)}×100
(上記式(1)~(3)中の標準物質は、米国標準技術研究所が年代測定法の標準物質として供給するシュウ酸(SRM4990C)を、上記測定用のグラファイトと同じ前処理方法でグラファイトに変換したものを使用した。)
【0174】
<バイオマス炭素含有率(%)の算出>
次いで、下記の式(4)に示すように、上記の方法で得られた各試料の放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)に0.93をかけて、1950年以降から現代に至る大気圏核実験の影響を加味した値をバイオマス炭素含有率(%)とした。
式(4):
バイオマス炭素含有率(%)=放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)×0.93
(1950年以降の大気圏核実験の影響を受けて、人工的に大気中に注入された放射性炭素(14C)により、通常の約1.5倍量の放射性炭素(14C)が観測されていた。しかし、時間の経過とともに徐々に減少しており、現在の値は107.5pMC付近である。そのため、本開示においても、ASTM D6866の規格と同様に放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)に0.93をかける。ただし、上記式(4)を用いた手法を採用しても、100%以上の値が算出される場合がある。そのため、混合物に対してこの手法を用いると大きさ誤差を生じる虞があるため、本開示ではバイオマス炭素含有率(%)が100%以上の値である場合、100%とみなしている。)
なお、硬化性樹脂組成物全体のバイオマス炭素含有率(%)は、使用目的等により各成分比が変わってくるため、硬化性樹脂組成物中の既知のバイオマス炭素含有率(%)の原料成分の重量比から概算している。
【0175】
2.酸基及び重合性不飽和基含有樹脂の製造
【0176】
(実施例1:酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(1)の製造)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート66.7質量部を添加し、窒素雰囲気下で120℃に昇温した。次いで、グリシジルメタクリレート(全塩素量:30ppm、バイオマス炭素含有率(%):0%)80質量部(化合物(a2))、メタクリル酸メチル20質量部((メタ)アクリレート化合物(a1))、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート55.6質量部、(2-エチルヘキサノイル)(tert-ブチル)ペルオキシド(日本油脂株式会社製「パーブチルO」)5質量部を予め混合させ、3時間かけて滴下した。120℃で10時間ホールドし、(メタ)アクリル共重合体(A1)を得た。次いで、メチルハイドロキノン0.1質量部、ジブチルヒドロキシトルエン0.9質量部、アクリル酸40.6質量部、トリフェニルホスフィン0.9質量部を仕込み、空気を吹き込み、撹拌しながら、120℃で12時間反応させた。次いで、多塩基酸無水物(C)として、3-メチル-8-オキサビシクロ[4.3.0]ノナン-7,9-ジオン42.6質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート15.9質量部を添加し、110℃で5時間反応させ、目的の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(1)を得た。
この酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(1)の不揮発分は、57質量%であり、固形分酸価は、80mgKOH/gであり、固形分の二重結合当量は、325g/当量であり、固形分の全塩素量は、検出限界以下(10ppm以下)であった。また、固形分のバイオマス炭素含有率(%)は、約0%であった。
なお、実施例1で使用したグリシジルメタクリレートは、分取HPLCを用いて精製してから使用した。その結果、使用したグリシジルメタクリレートの塩素量は30ppmであった。
【0177】
(実施例2:酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(2)の製造)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート66.7質量部を添加し、窒素雰囲気下で120℃に昇温した。次いで、グリシジルメタクリレート(全塩素量:当該グリシジルメタクリレートの全塩素量は、10質量ppm以下であった。より詳細には定量下限以下のため数値は特定できなかったが概ね数ppm程度と考えられる。バイオマス炭素含有率(%):43%)80質量部(化合物(a2))、メタクリル酸メチル20質量部((メタ)アクリレート化合物(a1))、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート55.6質量部、(2-エチルヘキサノイル)(tert-ブチル)ペルオキシド(日本油脂株式会社製「パーブチルO」)5質量部を予め混合させ、3時間かけて滴下した。120℃で10時間ホールドし、(メタ)アクリル共重合体(A2)を得た。次いで、メチルハイドロキノン0.1質量部、ジブチルヒドロキシトルエン0.9質量部、アクリル酸40.6質量部、トリフェニルホスフィン0.9質量部を仕込み、空気を吹き込み、撹拌しながら、120℃で12時間反応させた。次いで、多塩基酸無水物(C)として、ヘキサヒドロイソベンゾフラン-1,3-ジオン38.2質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート12.6質量部を添加し、110℃で5時間反応させ、目的の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(2)を得た。
この酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(2)の不揮発分は、57質量%であり、固形分酸価は、81mgKOH/gであり、固形分の二重結合当量は、317g/当量であり、固形分の全塩素量は、検出限界以下(10ppm以下)であった。また、固形分のバイオマス炭素含有率(%)は、約19%であった。
【0178】
(実施例3:酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(3)の製造)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート66.7質量部を添加し、窒素雰囲気下で120℃に昇温した。次いで、グリシジルメタクリレート(全塩素量:当該グリシジルメタクリレートの全塩素量は、10質量ppm以下であった。より詳細には定量下限以下のため数値は特定できなかったが概ね数ppm程度と考えられる。バイオマス炭素含有率(%):43%)80質量部(化合物(a2))、メタクリル酸メチル17質量部((メタ)アクリレート化合物(a1))、ベンジルメタクリレート3質量部((メタ)アクリレート化合物(a1))、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート55.6質量部、(2-エチルヘキサノイル)(tert-ブチル)ペルオキシド(日本油脂株式会社製「パーブチルO」)5質量部を予め混合させ、3時間かけて滴下した。120℃で10時間ホールドし、(メタ)アクリル共重合体(A3)を得た。次いで、メチルハイドロキノン0.1質量部、ジブチルヒドロキシトルエン0.9質量部、アクリル酸40.6質量部、トリフェニルホスフィン0.9質量部を仕込み、空気を吹き込み、撹拌しながら、120℃で12時間反応させた。次いで、多塩基酸無水物(C)として、3-メチル-8-オキサビシクロ[4.3.0]ノナン-7,9-ジオン42.6質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート15.9質量部を添加し、110℃で5時間反応させ、目的の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(3)を得た。
この酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(3)の不揮発分は、57質量%であり、固形分酸価は、81mgKOH/gであり、固形分の二重結合当量は、325g/当量であり、固形分の全塩素量は、検出限界以下(10ppm以下)であった。また、固形分のバイオマス炭素含有率(%)は、約19%であった。
【0179】
(実施例4:酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(4)の製造)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート66.7質量部を添加し、窒素雰囲気下で120℃に昇温した。次いで、グリシジルメタクリレート(全塩素量:当該グリシジルメタクリレートの全塩素量は、10質量ppm以下であった。より詳細には定量下限以下のため数値は特定できなかったが概ね数ppm程度と考えられる。バイオマス炭素含有率(%):43%)90質量部(化合物(a2))、メタクリル酸メチル10質量部((メタ)アクリレート化合物(a1))、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート55.6質量部、(2-エチルヘキサノイル)(tert-ブチル)ペルオキシド(日本油脂株式会社製「パーブチルO」)7質量部を予め混合させ、3時間かけて滴下した。120℃で10時間ホールドし、(メタ)アクリル共重合体(A4)を得た。次いで、メチルハイドロキノン0.1質量部、ジブチルヒドロキシトルエン0.9質量部、アクリル酸45.6質量部、トリフェニルホスフィン0.9質量部を仕込み、空気を吹き込み、撹拌しながら、120℃で14時間反応させた。次いで、多塩基酸無水物(C)として、3-メチル-8-オキサビシクロ[4.3.0]ノナン-7,9-ジオン43.7質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート32.7質量部を添加し、110℃で5時間反応させ、目的の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(4)を得た。
この酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(4)の不揮発分は、55質量%であり、固形分酸価は、80mgKOH/gであり、固形分の二重結合当量は、299g/当量であり、固形分の全塩素量は、検出限界以下(10ppm以下)であった。また、固形分のバイオマス炭素含有率(%)は、約20%であった。
【0180】
(実施例5:酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(5)の製造)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート66.7質量部を添加し、窒素雰囲気下で120℃に昇温した。次いで、グリシジルメタクリレート(全塩素量:当該グリシジルメタクリレートの全塩素量は、10質量ppm以下であった。より詳細には定量下限以下のため数値は特定できなかったが概ね数ppm程度と考えられる。バイオマス炭素含有率(%):43%)70質量部(化合物(a2))、メタクリル酸メチル30質量部((メタ)アクリレート化合物(a1))、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート55.6質量部、(2-エチルヘキサノイル)(tert-ブチル)ペルオキシド(日本油脂株式会社製「パーブチルO」)5質量部を予め混合させ、3時間かけて滴下した。120℃で10時間ホールドし、(メタ)アクリル共重合体(A5)を得た。次いで、メチルハイドロキノン0.1質量部、ジブチルヒドロキシトルエン0.9質量部、アクリル酸35.5質量部、トリフェニルホスフィン0.9質量部を仕込み、空気を吹き込み、撹拌しながら、120℃で12時間反応させた。次いで、多塩基酸無水物(C)として、3-メチル-8-オキサビシクロ[4.3.0]ノナン-7,9-ジオン40.6質量部を添加し、110℃で5時間反応させ、目的の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(5)を得た。
この酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(5)の不揮発分は、59質量%であり、固形分酸価は、79mgKOH/gであり、固形分の二重結合当量は、357g/当量であり、固形分の全塩素量は、検出限界以下(10ppm以下)であった。また、固形分のバイオマス炭素含有率(%)は、約17%であった。
【0181】
(実施例6:酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(6)の製造)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート66.7質量部を添加し、窒素雰囲気下で120℃に昇温した。次いで、グリシジルメタクリレート(全塩素量:当該グリシジルメタクリレートの全塩素量は、10質量ppm以下であった。より詳細には定量下限以下のため数値は特定できなかったが概ね数ppm程度と考えられる。バイオマス炭素含有率(%):43%)80質量部(化合物(a2))、メタクリル酸メチル15質量部((メタ)アクリレート化合物(a1))、エトキシ化ジペンタエリスリトールポリメタクリレート(新中村化学工業株式会社製「M-DPH-12E」)5質量部(多官能モノマー化合物(a3))、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート55.6質量部、(2-エチルヘキサノイル)(tert-ブチル)ペルオキシド7質量部を予め混合させ、3時間かけて滴下した。そして、120℃で6時間ホールドし、(メタ)アクリル共重合体(A6)を得た。次いで、メチルハイドロキノン0.1質量部、ジブチルヒドロキシトルエン0.9質量部、アクリル酸28.4質量部、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート(東亜合成株式会社製「アロニックス M-5300」)53.6質量部、トリフェニルホスフィン0.9質量部を仕込み、空気を吹き込み、撹拌しながら、120℃で20時間反応させた。次いで、3-メチル-8-オキサビシクロ[4.3.0]ノナン-7,9-ジオン53.9質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート35.1質量部を添加し、110℃で3時間反応させ、目的の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(6)を得た。この酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(6)の不揮発分は、60質量%であり、固形分酸価は、80mgKOH/gであり、固形分の二重結合当量は、419g/当量であり、固形分の全塩素量は、検出限界以下(10ppm以下)であった。また、固形分のバイオマス炭素含有率(%)は、約15%であった。
【0182】
(実施例7:酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(7)の製造)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート66.7質量部を添加し、窒素雰囲気下で120℃に昇温した。次いで、グリシジルメタクリレート(全塩素量:当該グリシジルメタクリレートの全塩素量は、10質量ppm以下であった。より詳細には定量下限以下のため数値は特定できなかったが概ね数ppm程度と考えられる。バイオマス炭素含有率(%):43%)80質量部(化合物(a2))、メタクリル酸メチル20質量部((メタ)アクリレート化合物(a1))、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート55.6質量部、(2-エチルヘキサノイル)(tert-ブチル)ペルオキシド(日油株式会社製「パーブチルO」)5質量部を予め混合させ、3時間かけて滴下した。120℃で6時間ホールドし、(メタ)アクリル共重合体(A7)を得た。次いで、メチルハイドロキノン0.1質量部、ジブチルヒドロキシトルエン0.9質量部、アクリル酸28.4質量部、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート(東亜合成株式会社製「アロニックス M-5300」)35.7質量部、2,2-ジメチロールプロピオン酸7.4質量部、トリフェニルホスフィン0.9質量部を仕込み、空気を吹き込み、撹拌しながら、120℃で20時間反応させた。次いで、3-メチル-8-オキサビシクロ[4.3.0]ノナン-7,9-ジオン52.1質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート26.8質量部を添加し、110℃で3時間反応させ、目的の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(7)を得た。この酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(7)の不揮発分は、60質量%であり、固形分酸価は80mgKOH/g、固形分の二重結合当量は441g/当量であった。そして、固形分の全塩素量は、検出限界以下(10ppm以下)であった。また、固形分のバイオマス炭素含有率(%)は、約16%であった。
【0183】
(実施例8:酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(8)の製造)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート66.7質量部を添加し、窒素雰囲気下で120℃に昇温した。次いで、グリシジルメタクリレート(全塩素量:当該グリシジルメタクリレートの全塩素量は、10質量ppm以下であった。より詳細には定量下限以下のため数値は特定できなかったが概ね数ppm程度と考えられる。バイオマス炭素含有率(%):43%)80質量部(化合物(a2))、メタクリル酸メチル17質量部((メタ)アクリレート化合物(a1))、2-メタクリロイロキシエチルカプロエートアシッドホスフェート(日本化薬株式会社製「KAYAMER PM-21」)3質量部(リン含有(メタ)アクリレート化合物(a4))、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート55.6質量部、(2-エチルヘキサノイル)(tert-ブチル)ペルオキシド(日油株式会社製「パーブチルO」)7質量部を予め混合させ、3時間かけて滴下した。120℃で6時間ホールドし、(メタ)アクリル共重合体(A1)を得た。次いで、メチルハイドロキノン0.1質量部、ジブチルヒドロキシトルエン0.9質量部、アクリル酸28.4質量部、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート(東亜合成株式会社製「アロニックス M-5300」)53.6質量部、トリフェニルホスフィン0.9質量部を仕込み、空気を吹き込み、撹拌しながら、120℃で20時間反応させた。次いで、3-メチル-8-オキサビシクロ[4.3.0]ノナン-7,9-ジオン53.9質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート35.1質量部を添加し、110℃で3時間反応させ、目的の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(8)を得た。この酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(8)の不揮発分は、60質量%であり、固形分酸価は、80mgKOH/gであり、固形分の二重結合当量は、419g/当量であり、固形分の全塩素量は、検出限界以下(10ppm以下)であった。また、固形分のバイオマス炭素含有率(%)は、約15%であった。
【0184】
(実施例9:酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(9)の製造)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、シクロヘキサノン66.7質量部を添加し、窒素雰囲気下で120℃に昇温した。次いで、メタクリル酸(化合物(a2))60質量部、メチルメタクリレート40質量部、シクロヘキサノン55.6質量部、(2-エチルヘキサノイル)(tert-ブチル)ペルオキシド(日油株式会社製「パーブチルO」)7質量部を予め混合させ、3時間かけて滴下した。120℃で6時間ホールドし、(メタ)アクリル共重合体(A9)を得た。次いで、メチルハイドロキノン0.1質量部、ジブチルヒドロキシトルエン0.6質量部、グリシジルメタクリレート(全塩素量:当該グリシジルメタクリレートの全塩素量は、10質量ppm以下であった。より詳細には定量下限以下のため数値は特定できなかったが概ね数ppm程度と考えられる。バイオマス炭素含有率(%):43%)69.3質量部、トリフェニルホスフィン0.7質量部を仕込み、空気を吹き込み、撹拌しながら、100℃で18時間反応させた。次いで、3-メチル-8-オキサビシクロ[4.3.0]ノナン-7,9-ジオン18.8質量部、シクロヘキサノン31.7質量部を添加し、110℃で2時間反応させ、目的の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(9)を得た。この酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(9)の不揮発分は、55質量%であり、固形分酸価は、101mgKOH/gであり、固形分の二重結合当量は、385g/当量であり、固形分の全塩素量は、検出限界以下(10ppm以下)であった。また、固形分のバイオマス炭素含有率(%)は、約16%であった。
【0185】
(他の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(X1)の調製)
温度計、撹拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート123gを入れ、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂「EPICLON N-680」(DIC株式会社製、軟化点86℃、エポキシ当量:214g/eq、)214gを溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン0.9g、メトキノン0.2gを加えた後、アクリル酸72g、トリフェニルホスフィン1.4gを添加し、空気を吹き込みながら120℃で10時間反応を行った。次いで、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート72g、テトラヒドロ無水フタル酸76gを加え110℃で3時間反応し、他の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(X1)を得た。この他の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(X1)は、不揮発分が65質量%であり、固形分酸価が80mgKOH/gであった。なお、他の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(X1)の固形分のバイオマス炭素含有率(%)は、約0%であった。
【0186】
(比較例1:酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(C1)の製造)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート66.7質量部を添加し、窒素雰囲気下で120℃に昇温した。次いで、グリシジルメタクリレート(「市販品 GMA(メタクリル酸グリシジル」 全塩素量は1500ppm、バイオマス炭素含有率(%):0%)70質量部、メタクリル酸メチル30質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート55.6質量部、(2-エチルヘキサノイル)(tert-ブチル)ペルオキシド(日本油脂株式会社製「パーブチルO」)5質量部を予め混合させ、3時間かけて滴下した。120℃で10時間ホールドし、(メタ)アクリル共重合体(c1)を得た。次いで、メチルハイドロキノン0.1質量部、ジブチルヒドロキシトルエン0.3質量部、アクリル酸35.5質量部、トリフェニルホスフィン0.9質量部を仕込み、空気を吹き込み、撹拌しながら、120℃で12時間反応させた。次いで、ヘキサヒドロイソベンゾフラン-1,3-ジオン35.7質量部を添加し、110℃で5時間反応させ、目的の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(C1)を得た。この酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(C1)の不揮発分は、58質量%であり、固形分酸価は、79mgKOH/gであり、固形分の全塩素量は、610ppmであった。また、固形分のバイオマス炭素含有率(%)は、約0%であった。
【0187】
3.硬化性樹脂組成物の調製及び評価結果
(実施例10:硬化性樹脂組成物(1)の調製)
表1に示す通り、実施例1で作製した酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(1)を用いて硬化性樹脂組成物(1)を調製した。具体的には、実施例1で得た酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(1)の固形分57質量部と、硬化剤としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 850-S」、エポキシ当量:188g/当量)15.2質量部と、光重合性開始剤(IGM社製「Omnirad907」)2.9質量部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート5.7質量部と、メラミン1.0質量部と、硫酸バリウム10.0質量部とを混合し、硬化性樹脂組成物(1)を調製した。
上記の実施例10で得られた硬化性樹脂組成物(1)を用いて、上記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0188】
(実施例11~19:硬化性樹脂組成物(2)~(10)の調製)
上記実施例10で用いた酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(1)の代わりに、実施例2~9で調製した酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(2)~(9)を用いて、表1に示す組成比で各成分を混合し、上記実施例10と同様に硬化性樹脂組成物(2)~(10)を調製した。
上記の実施例11~19で得られた硬化性樹脂組成物(2)~(10)を用いて、上記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0189】
(比較例2:硬化性樹脂組成物(C2)の調製)
上記比較例1で得た酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(C1)の固形分58質量部と、硬化剤としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 850-S」、エポキシ当量:188g/当量)15.3質量部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート5.8質量部と、光重合性開始剤(IGM社製「Omnirad907」)2.9質量部と、メラミン1.0質量部と、硫酸バリウム10.0質量部とを混合し、硬化性樹脂組成物(C2)を調製した。上記の比較例2で得られた硬化性樹脂組成物(C2)を用いて、上記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0190】
(実施例20~29:硬化性樹脂組成物(11)~(20)の調製)
表2に示す通り、実施例1で作製した酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(1)を用いて硬化性樹脂組成物(11)を調製した。具体的には、実施例1で得た酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(1)の固形分57質量部と、硬化剤としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 850-S」、エポキシ当量:188g/当量)15.2質量部と、光重合性開始剤(IGM社製「Omnirad907」)3.0質量部と、を混合し、硬化性樹脂組成物(11)を調製した。
同様に、上記実施例20で用いた酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(1)の代わりに、実施例2~9で調製した酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(2)~(9)を用いて、表2に示す組成比で各成分を混合し、上記実施例20と同様に硬化性樹脂組成物(12)~(20)を調製した。
上記の実施例20~29で得られた硬化性樹脂組成物(11)~(20)を用いて、上記の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0191】
(比較例3:硬化性樹脂組成物(C3)の調製)
比較例1で用いた酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(C1)を表2に示した配合量で用いた以外は、比較例2と同様にして、硬化性樹脂組成物(C3)を得た。
上記の比較例3で得られた硬化性樹脂組成物(C3)を用いて、上記の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0192】
(実施例30~39:硬化性樹脂組成物(21)~(30)の調製)
表2に示す通り、実施例1で作製した酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(1)を用いて硬化性樹脂組成物(21)を調製した。具体的には、実施例1で得た酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(1)の固形分57質量部と、硬化剤としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 850-S」、エポキシ当量:188g/当量)15.2質量部と、光重合性開始剤(IGM社製「Omnirad907」)2.9質量部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート5.7質量部と、2-エチル-4-メチル-イミダゾール0.3質量部と、酸化チタン3.6質量部とを混合し、硬化性樹脂組成物(21)を調製した。
同様に、上記実施例1で用いた酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(1)の代わりに、実施例2~9で調製した酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(2)~(9)を用いて、表3に示す組成比で各成分を混合し、上記実施例30と同様に硬化性樹脂組成物(22)~(30)を調製した。
上記の実施例30~39で得られた硬化性樹脂組成物(21)~(30)を用いて、上記の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0193】
(比較例4:硬化性樹脂組成物(C4)の調製)
比較例1で用いた酸基及び重合性不飽和基含有樹脂(C1)を表3に示した配合量で用いた以外は、比較例3と同様にして、硬化性樹脂組成物(C3)を得た。
上記の比較例3で得られた硬化性樹脂組成物(C4)を用いて、上記の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
上記表1~3の実験結果から、本実施例の硬化性樹脂組成物は、比較例の硬化性樹脂組成物より、環境負荷を低減し、硬化時において、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性に優れることが確認された。したがって、本実施例の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂は、比較例の酸基及び重合性不飽和基含有樹脂と比べて、環境負荷を低減し、硬化時において、光感度、絶縁信頼性及び耐熱黄変性に優れると考えられる。