IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DIC株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-積層体及びPTP包装シート 図1
  • 特開-積層体及びPTP包装シート 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180183
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】積層体及びPTP包装シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20241219BHJP
   C09D 11/102 20140101ALI20241219BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B32B15/08 Z
C09D11/102
B65D65/40 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099672
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(72)【発明者】
【氏名】中町 和政
(72)【発明者】
【氏名】岡田 守弘
(72)【発明者】
【氏名】藤野 浩二
(72)【発明者】
【氏名】田原 裕介
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J039
【Fターム(参考)】
3E086AA21
3E086AC35
3E086AD07
3E086BA15
3E086BB67
3E086BB85
3E086CA28
4F100AB31A
4F100AK23B
4F100AK23C
4F100AK23J
4F100AK62D
4F100AL01B
4F100AL01C
4F100AT00
4F100BA03
4F100BA04
4F100EH462
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100GB15
4F100GB23
4F100GB66
4F100HB31B
4F100HB31C
4F100HB35B
4F100HB35C
4J039AD07
(57)【要約】
【課題】本開示の積層体及びPTP包装体は、環境負荷を低減し、かつ耐熱性、耐摩擦性、密着性、耐ブロッキング性及びにラビング強度に優れる。
【解決手段】 本開示は、金属箔、前記金属箔上に設けられる第1インキ層及び前記第1インキ層上に設けられるニス層を有する積層体であって、
前記第1インキ層中のバインダー樹脂成分(1)としてブチラール系樹脂を含有し、かつ前記ニス層中のバインダー樹脂成分(2)としてブチラール系樹脂を含有する、積層体である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔、前記金属箔上に設けられる第1インキ層及び前記第1インキ層上に設けられるニス層を有する積層体であって、
前記第1インキ層は、ブチラール系樹脂を含有し、かつ前記ニス層は、ブチラール系樹脂を含有する、積層体。
【請求項2】
前記ブチラール系樹脂が、前記第1インキ層に含まれる樹脂成分中の最も含有量が多い構成成分である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記ニス層は、前記ブチラール系樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記金属箔、前記金属箔の一方の面上に設けられる第1インキ層、前記第1インキ層上に設けられる前記ニス層、前記金属箔の他方の面上に設けられるヒートシール層を有する、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項5】
前記ヒートシール層は、αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有する、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項6】
前記金属箔と前記ヒートシール層との間に設けられる第2インキ層を有し、
前記第2インキ層は、ブチラール系樹脂含有する、請求項4に記載の積層体。
【請求項7】
前記第1インキ層及び/又は前記第2インキ層は、ベタ塗りの色表示インキ層、並びに文字及び/又は柄を表示する情報表示インキ層を含む多層印刷により構成される多層印刷層である、請求項5に記載の積層体。
【請求項8】
PTP包装の蓋材用である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項9】
薬剤を収容可能な複数の凹部を有する容器シートと、前記凹部を覆う蓋材である請求項1又は2の積層体と、を有するPTP包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及びPTP包装シートに関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤又はカプセル剤等の医薬品の包装に用いられているPTP(プレススルーパック)包装体は、医薬品等の内容物を収容するポケット状の凹部及び該凹部の端部に設けられたフランジ部を備えた容器と、前記蓋材とから構成されている。そして、前記蓋材(即ち、PTP用蓋材)は、基材となる金属箔(例えば、硬質アルミニウム箔(硬質アルミ箔とも称する。))と、該金属箔の一方の面上に順次形成されたインキ層及びニス層とを備え、必要により前記金属箔の他方の面上に順次形成された印刷層及びヒートシール層と、を備える。そして、容器の凹部に医薬品等の内容物を収容した後、容器のフランジ部に蓋材のヒートシール層を接触させ、熱融着することにより通常包装を行っている。また、このようなPTP包装体の各材料としては、容器には塩化ビニル樹脂、インキ層には硝化綿系樹脂、ニス層にはエポキシ・メラミン系樹脂、そしてヒートシール層には塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体が、現在一般的に使用されている。
【0003】
しかし、特に医薬品PTP包装体のインキ層で硝化綿系樹脂を使用した製品において、発がん性のNDMA(ジメチルアミン)が検出されたことから、当該製品において検出されたNDMAは、インキ層の原料の硝化綿系樹脂に起因するものではないかと疑われており、硝化綿系樹脂フリーのインキ層の要望が高まっている。
また、ダイオキシン等の環境ホルモンの排出を抑制・防止する観点から、海外(EU等の一部地域)では塩素系樹脂(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等を含む)の使用が制限されているため、塩素系樹脂フリーのPTP包装体に対する関心が高まっている。
【0004】
このような人体又は環境への悪影響を及ぼしうる物質を低減する循環型社会の構築といった低環境負荷に関する技術として、特許文献1が挙げられる。当該特許文献1には、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂及びホルムアルデヒド吸収剤を含む組成物、並びに当該組成物からなる耐熱被覆層を有する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-2922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1によれば、熱硬化時に発生するホルムアルデヒドをホルムアルデヒド吸収剤で吸収することにより、ホルムアルデヒドの発生量を抑制できるとしている。しかし、当該特許文献1の第1印刷層には、ブチル化メラミン樹脂が好ましいと記載されている。そのため、メラミンとホルムアルデヒドとを反応させて通常製造されるメラミン樹脂中に未反応のホルムアルデヒドが残留する等の理由から、実際にどの程度ホルムアルデヒドの発生量を抑制しうる技術であるか疑問視されうる。
【0007】
また、引用文献1には、印刷層用インキ組成物は塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂を含有する旨も記載されているため、低環境負荷に関する技術としては不十分である。更には、PTP用蓋材に使用する場合、ヒートシール時の加熱温度に耐える耐熱性、表面層の耐摩擦性及びラビング強度、隣接する層同士の密着性等も実用に足りうる高いレベルが要求される。
【0008】
そこで、本開示は、環境負荷を低減し、かつ耐熱性、耐摩擦性、密着性、耐ブロッキング性及びにラビング強度に優れた積層体、並びに当該積層体を有するPTP包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、インキ層及びニス層中のバインダー樹脂成分としてブチラール系樹脂を含有する積層体を用いることにより、環境負荷を低減し、かつ耐熱性、耐摩擦性、密着性、耐ブロッキング性及びにラビング強度に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
[1]金属箔、前記金属箔上に設けられる第1インキ層及び前記第1インキ層上に設けられるニス層を有する積層体であって、前記第1インキ層はブチラール系樹脂を含有し、かつ前記ニス層はブチラール系樹脂を含有する、積層体。
【0011】
[2]前記ブチラール系樹脂が、前記第1インキ層の樹脂成分中の最も含有量が多い構成成分である、[1]に記載の積層体。
【0012】
[3]前記ニス層は、前記ブチラール系樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する、[1]又は[2]に記載の積層体。
【0013】
[4]前記金属箔、前記金属箔の一方の面上に設けられる第1インキ層、前記第1インキ層上に設けられる前記ニス層、前記金属箔の他方の面上に設けられるヒートシール層を有し、かつ前記ヒートシール層は、αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有する、[1]~[3]のいずれか一つに記載の積層体。
【0014】
[5]前記金属箔と前記ヒートシール層との間に設けられる第2インキ層を有し、
前記第2インキ層は、ブチラール系樹脂を含有する、[1]~[4]のいずれか一つに記載の積層体。
【0015】
[6]前記第1インキ層及び/又は前記第2インキ層は、ベタ塗りの色表示インキ層、並びに文字及び/又は柄を表示する情報表示インキ層を含む多層印刷により構成される多層印刷層である、[5]に記載の積層体。
【0016】
[7]PTP包装の蓋材用である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の積層体。
【0017】
[8]薬剤を収容可能な複数の凹部を有する容器シートと、前記凹部を覆う蓋材である[1]~[6]のいずれか1つに記載の積層体と、を有するPTP包装シート。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、環境負荷を低減し、かつ耐熱性、耐摩擦性、密着性、耐ブロッキング性及びにラビング強度に優れた積層体を提供することができる。
本開示によれば、環境負荷を低減し、かつ耐熱性、耐摩擦性、密着性、耐ブロッキング性及びにラビング強度に優れたPTP用蓋材、及びPTP包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態の積層体の一例の断面図である。
図2】本実施形態のPTP包装体の一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、なお、本実施形態において、A(数値)~B(数値)は、A以上B以下を意味する。
[定義]
本明細書において、「インキ組成物」とは、グラビアインキ、フレキソインキ等の、印刷版を使用する印刷方法に適用されるリキッド状の印刷用インキを指し、好ましくはグラビアインキ又はフレキソインキである。また、「インキ組成物」は、第1インキ層を形成するために使用される第1インキ組成物及び第2インキ層を形成するために使用される第2インキ組成物を包含する総称である。「インキ層」も同様に第1インキ層及び第2インキ層を包含する総称である。
また、以下の説明で用いる「インキ」とは全て「印刷インキ」を示す。
本明細書における「部」とは全て「質量部」を示し、「インキ全量」とは、溶剤等の揮発性成分を全て含んだインキの全量を示し、「インキ固形分全量」とは、揮発性成分を含まない、不揮発性成分のみの全量を示す。
本明細書における「上」とは、基準要素と直接当接又は直接接触して当該基準要素の上に存在する場合と、基準要素と直接当接又は直接接触しないで当該基準要素の上方に存在する場合を含む。したがって、例えば「面上」とは、面と直接当接又は直接接触する場合と、面と直接当接又は直接接触しないで前記面の上方に存在する場合を含む。
【0021】
[積層体]
本開示は、金属箔、前記金属箔上に設けられる第1インキ層及び前記第1インキ層上に設けられるニス層を有する積層体であって、前記第1インキ層中にブチラール系樹脂を含有し、かつ前記ニス層中にブチラール系樹脂を含有する、積層体である。
これにより、環境負荷を低減し、かつ耐熱性、耐摩擦性、密着性、耐ブロッキング性及びにラビング強度に優れた積層体を提供できる。
本開示の積層体は、金属箔と、当該金属箔の少なくとも一方の面上に設けられるインキ層と、前記インキ層上に設けられるニス層と、を有する。また、前記金属箔の他方の面上にヒートシール層を有することが好ましい。そして、前記ヒートシール層と前記金属箔との間にインキ層を有することが好ましい。本明細書では、便宜上、ニス層と金属箔との間のインキ層を第1インキ層と称し、前記金属箔と任意要素である前記ヒートシール層との間のインキ層を第2インキ層と称する。前記第1インキ層と前記第2インキ層とは、同じ組成であっても、あるいは異なる組成であってもよい。前記第1インキ層と前記第2インキ層とは、同じ組成であることが好ましい。これにより、環境負荷をより低減し、かつ耐熱性、耐摩擦性、密着性、耐ブロッキング性及びにラビング強度により優れる。
したがって、本開示の好ましい積層体は、金属箔と、前記金属箔の一方の面に設けられた第1インキ層と、前記第1インキ層上に設けられるニス層と、前記金属箔の他方の面に設けられた第2インキ層と、前記第2インキ層上に設けられる前記ヒートシール層とを有する。
本実施形態の積層体のうち、金属箔を除いた部分の平均厚みは、第1インキ層及びニス層を合わせた厚みで0.1~10μmであり、第2インキ層及びヒート層を合わせた厚みで1~10μmであることが好ましい。
【0022】
以下、本実施形態の積層体の好適な例を、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本実施形態の積層体の一例の断面図である。図1に示す積層体10は、金属箔1と、金属箔1の両面上に設けられたインキ層(第1インキ層2,第2インキ層3)2,3と、第1インキ層2上に設けられたニス層4と、任意要素である第2インキ層3上に設けられた、任意要素であるヒートシール層5と、を備える。換言すると、図1に示す積層体10は、ニス層4と、第1インキ層2と、金属箔1と、第2インキ層3と、ヒートシール層5と、の順で積層されている。また、第2インキ層3とヒートシール層5との間に、必要により、アンカーコート層(図示せず)を更に備えてもよい。
本実施形態の積層体10を構成する、金属箔1、第1インキ層2、ニス層4、第2インキ層3、ヒートシール層5及びアンカーコート層(図示せず)について、以下詳説する。
【0023】
(金属箔)
本実施形態の金属箔1は、種々の金属からなる箔を利用でき、中でも、アルミニウム箔が好ましく、アルミニウム純度98.0~99.9重量%のアルミニウム箔がより好ましい。具体的には、JIS H4160の規格では、1000系(1N30、1070等)、3000系あるいは8000系(8021、8079等)等のアルミニウム材を用いることができる。そして、調質は、硬質材(H材(JISH0001))、半硬質材又は軟質材(O材(JISH0001))のいずれも使用できるが、硬質アルミニウム箔がより好ましい。
ここで、硬質アルミニウム箔とは、原料のアルミニウムを、例えば、ロール等により200μm~5μm程度まで圧延して薄く伸ばした箔であり、原料のアルミニウムを圧延して薄く伸ばした後、400℃前後で熱を加えて柔らかくした軟質アルミニウム箔とは、区別される。
前記金属箔1の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、5μm~100μmが好ましく、5μm~50μmがより好ましい。また、本実施形態の金属箔1として、金属層を有するシートを使用してもよい。具体的には、プラスチックフィルム等のシート状の基材に、例えば金属箔、金属蒸着膜、金属メッキ膜等を設けたものを使用できる。
【0024】
本実施形態において、金属箔1の上にインキ層(第1インキ層2及び/又は後述の第2インキ層3が該当する。)2,3等の所望の層を積層する方法としては、液体状のインキ組成物の塗工を用いる方法が好ましい。当該金属箔への塗工法としては、例えば、バーコーター、グラビアコート法、ロールコート法、ナイフコート法、キスコート法、その他等の方法で塗工することができる。本実施形態の効果を最大限発揮するためには、金属箔1への液体状のインキ組成物の塗膜量としては0.5~5g/mが好ましく、乾燥条件は120~200℃で5~100秒の範囲が好ましい。
【0025】
(第1インキ層)
本実施形態の第1インキ層2は、金属箔1の一方の面上に設けられる。当該第1インキ層は、例えば、文字、図形若しくは記号といった情報、及び/又は、色を表示しうる。より詳細には、積層体10をPTP包装体の蓋材として使用する場合、内容物の品名、価格、内容物の用量、内容物の効能・効果等の不変情報又は製造年月日、ロット番号、有効期限等の可変情報が第1インキ層2として印刷されうる。中でも、第1インキ層2は、内容物の製品の個別の情報である、製造年月日、ロット番号等の可変情報を含む一次元コード(例えば、バーコード)、二次元コード(例えば、QRコード(登録商標))を表示することが好ましい。例えば、前記内容物が医薬品である場合、当該医薬品用のバーコードであるGS1(旧RSSコード)、GS1-RSSリミテッド合成シンボルCC-A、GS1-RSS14スタック合成シンボルCC-Aを、第1インキ層2として表示してもよい。
本実施形態の第1インキ層2が表示する色は特に制限されることはなく、着色しなくてもよく、あるいは例えば、黒、青、緑、赤、黄等の各色を表示してもよい。第1インキ層2は、従来公知の方法で形成することができ、例えば、第1インキ層2はグラビアインキ、フレキソインキ、オフセットインキ、孔版インキ、インキジェットインキ等各種印刷インキにより、従来の印刷に用いられてきた公知の材料及び印刷方法で形成することができる。
【0026】
本実施形態において、バーコード等の情報を印刷する等のために、金属箔1の上にベタ塗の所定の色を表示する色表示インキ層を設ける、及び/又は文字、図形若しくは記号といった情報を表示する情報表示インキ層を設けることが好ましく、バーコード等の情報を印刷する等のために、金属箔1の上にベタ塗の所定の色を表示する色表示インキ層を設け、更にその上に文字、図形若しくは記号といった情報を表示する情報表示インキ層を設けることがより好ましい。
すなわち、本実施形態の第1インキ層2は、ベタ塗りの色表示インキ層、あるいは、文字及び/又は柄を表示する情報表示インキ層を含むことが好ましく、第1インキ層2は、ベタ塗りの色表示インキ層、並びに文字及び/又は柄を表示する情報表示インキ層を含む多層印刷により構成される多層印刷層であることがより好ましい。
特に、積層体10を医薬品用のPTP用蓋材に使用する場合、内容物等の誤認防止の観点から、バーコード又はQRコードを表示する必要がある場合があり、金属箔1上にバーコード又はQRコード(情報表示インキ層)を直接印刷して形成しても、読み取りが困難な場合がある。これに対して、金属箔1の上に一旦ベタ印刷により色表示インキ層を設け、更にその上にバーコード又はQRコード(情報表示インキ層)を印刷して形成することで、バーコード等の情報表示インキ層を読み取り易くすることができる。
前記ベタ塗りの色表示インキ層及び前記情報表示インキ層には、後述の第1インキ組成物及び/又は第2インキ組成物を使用することができる。色表示インキ層は、一色(透明も含む)で全面印刷を行って形成した層であり、情報表示インキ層を鮮明にする観点から、白等の淡色が好ましい。また、色表示インキ層には、後述のインキ組成物において、着色剤として白色顔料等の淡色の顔料を配合したものを使用できる。前記色表示インキ層は、第1インキ組成物又は第2インキ組成物をベタ印刷して形成することができる。
また後述するが、必要により設けられる第2インキ層3も、第1インキ層2と同様の理由により、ベタ塗りの色表示インキ層、並びに文字及び/又は柄を表示する情報表示インキ層を含む多層印刷により構成される多層印刷層であることが好ましい。
なお、情報表示インキ層は、通常は、文字を印刷して形成される層であるが、印刷の目的に応じて、文字の代わりに、バーコード、QRコード、模様、絵等を印刷した層も、本明細書では、情報表示インキ層に含めるものとする。
【0027】
本実施形態の第1インキ層2の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm~5μmが好ましく、0.1μm~3μmがより好ましい。
本実施形態の第1インキ層2は、バインダー樹脂成分(1)としてブチラール系樹脂を含有し、必要により、着色剤、硬化剤、ワックス及び添加剤からなる群から選択される1種又は2種以上をさらに含有することが好ましい。
また、本実施形態の第1インキ層において、ブチラール系樹脂の含有量は、前記第1インキ層の総量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であってもよい(即ち、バインダー樹脂成分(1)の全てがブチラール樹脂であってもよい)。
前記ブチラール系樹脂が、前記第1インキ層に含まれる樹脂成分(いわゆる、バインダー樹脂成分(1))中の最も含有量が多い構成成分であることが好ましい。これにより、ニトロセルロース等の硝化綿系樹脂を使用しないため、発がん性のNDMA(ジメチルアミン)の発生を抑制できるため、より優れた環境負荷低減効果が期待されうる。
以下、第1インキ層を構成しうる各成分である、ブチラール系樹脂、バインダー樹脂成分(1)、着色剤、硬化剤及び添加剤について説明する。なお、説明の便宜上、第1インキ層に含まれるバインダー樹脂成分をバインダー樹脂成分(1)と称し、ニス層に含まれるバインダー樹脂成分をバインダー樹脂成分(2)と称し、第2インキ層に含まれるバインダー樹脂成分をバインダー樹脂成分(3)と称する。また、バインダー樹脂成分(1)とバインダー樹脂成分(3)とは互いに同一組成であっても、あるいは異なる組成であっていてもよい。さらには、バインダー樹脂成分(1)~(3)のいずれにおいても、ニトロセルロース等の硝化綿系樹脂あるいは塩化ビニルを使用しないため、環境負荷をより低減し、かつ耐熱性、耐摩擦性、密着性、耐ブロッキング性及びにラビング強度により優れた効果を発揮しうる。
【0028】
<ブチラール系樹脂>
前記ブチラール系樹脂は、金属箔1に対する密着性を向上させる作用に優れる。また、ブチラール系樹脂は、構成元素が炭素原子、水素原子、酸素原子のみであるため、環境に対しても優しい。
本実施形態のブチラール系樹脂としては、特に限定なく公知の樹脂を使用することができる。一般的には、ブチラール系樹脂として、ポリビニルアルコールにブチルアルデヒド等のアルデヒド化合物を公知の反応によりアセタール化することにより得られた反応物を使用することができる。本実施形態のブチラール系樹脂は、以下の一般式(1):
【化1】
(上記一般式(1)中、n1及びn2はそれぞれ独立して、1以上の整数であり、Rは、水素原子又は炭素原子数1~12の炭化水素基を表す。)
で表される部分構造を有することが好ましい。
上記一般式(1)中、Rは水素原子又は炭素原子数1~10の炭化水素基を表すことが好ましく、水素原子又は炭素原子数1~7の炭化水素基がより好ましく、水素原子又は炭素原子数1~4の炭化水素基が更に好ましい。
なお、前記炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基が挙げられ、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよい。中でも、アルキル基が好ましい。炭素原子数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、(n-)ヘプチル基、(n-)オクチル基、(n-)ノニル基、(n-)デシル基、(n-)ウンデシル基、(n-)ドデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基又はシクロノニル基が挙げられる。中でも、Rは、プロピル基又はイソプロピル基がより好ましい。
なお、上記した通り、本実施形態のブチラール系樹脂は、ポリビニルアルコールとアルデヒド化合物とを反応原料とする樹脂である。その際、アルデヒド化合物をR-C(=O)Hと表した場合、前記一般式(1)中のRは、ブチラール系樹脂を合成する際に使用するアルデヒド化合物由来の炭化水素基である。
【0029】
本実施形態の好適なブチラール系樹脂は、上記一般式(1)で表される部分構造、下記一般式(2)で表される部分構造及び下記一般式(3)で表される部分構造を有する樹脂であることが好ましい。
【化2】
(上記一般式(2)中、n3はそれぞれ独立して、1以上の整数であり、Rは、水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表す。)
【化3】
(上記一般式(3)中、n4はそれぞれ独立して、1以上の整数である。)
【0030】
上記一般式(2)中、Rは水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表すことが好ましく、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基がより好ましい。
なお、前記Rとしては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基又はtert-ブチル基がより好ましい。
また、本実施形態のブチラール系樹脂を、上記一般式(1)で表される部分構造、下記一般式(2)で表される部分構造及び下記一般式(3)で表される部分構造を有する樹脂で表す場合、前記ブチラール系樹脂の総量に対する上記一般式(2)で表される部分構造の含有量は、好ましくは12質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。これにより、ブチラール系樹脂の上記一般式(2)で表される部分構造の含有量を上記範囲にすることにより、流動性と分散性のバランスに優れたインキ層を得ることができる。
【0031】
本実施形態のブチラール系樹脂の重量平均分子量は、5000~150000であることが好ましく、6000~100000であることがより好ましく、7000~50000であることが更に好ましい。ブチラール系樹脂の重量平均分子量を上記範囲にすることにより、硬化性に優れ、塗膜の強度と適度な柔軟性を両立させることができる。また、重量平均分子量が5,000~150,000であるブチラール系樹脂は、入手し易く、また、かかるブチラール系樹脂を使用することで、流動性と分散性のバランスに優れたインキ層を得ることができる。
【0032】
本実施形態のブチラール系樹脂のガラス転移温度(以下、Tgと称する場合がある)は、50℃~120℃の範囲であることが好ましく、中でも、55℃~115℃の範囲が好ましく、60~110℃の範囲がより好ましい。本発明においてガラス転移温度は、示差走査熱量計による測定により得られるものである。
【0033】
本実施形態のブチラール系樹脂の水酸基価は10~40質量/%の範囲にあることが好ましく、15質量%~30質量%であることがより好ましい。ブチラール系樹脂の水酸基量を上記範囲にすることにより、流動性と分散性のバランスに優れたインキ層を得ることができる。
なお、前記水酸基量とは、上記一般式(3)で表される部分構造の量がブチラール系樹脂の総量に対する含有量をいう。
【0034】
前記ブチラール系樹脂のアセチル基量は、8質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。ブチラール系樹脂のアセチル基量を上記範囲にすることにより、流動性と分散性のバランスに優れたインキ層を得ることができる。
なお、前記アセチル基量とは、上記一般式(2)で表される部分構造において、Rがメチル基の場合の部分構造をアセチル基といい、かつそのアセチル基の量がブチラール系樹脂の総量に対する含有量をいう。
【0035】
インキ層(第1インキ層及び/又は第2インキ層に該当する。)中の前記ブチラール系樹脂は、前記インキ層中の樹脂成分(例えば、バインダー樹脂成分(バインダー樹脂成分(1)及び/又は後述のバインダー樹脂成分(3)に該当する。))の中で最も含有割合量(固形分)が多い樹脂成分(例えば、バインダー樹脂成分(バインダー樹脂成分(1)及び/又は後述のバインダー樹脂成分(3)に該当する。))を構成する樹脂でありうる。これにより、流動性と分散性のバランスに優れたインキ層を得ることができる。
より具体的には、前記樹脂成分(例えば、バインダー樹脂成分(バインダー樹脂成分(1)及び/又は後述のバインダー樹脂成分(3)に該当する。))の総量中の前記ブチラール系樹脂の割合は、50質量%より多いことが好ましい。ここで、該割合は、固形分での割合を指す。前記樹脂成分(例えば、バインダー樹脂成分(バインダー樹脂成分(1)及び/又は後述のバインダー樹脂成分(3)に該当する。))の総量中の前記ブチラール系樹脂の割合が50質量%より多いと、インキ組成物の金属箔に対する密着性が更に向上する。また、前記樹脂成分(例えば、バインダー樹脂成分(バインダー樹脂成分(1)及び/又は後述のバインダー樹脂成分(3)に該当する。))の総量中の前記ブチラール系樹脂の割合は、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上がより一層好ましく、80質量%以上が特に好ましく、100質量%であってもよい(即ち、前記バインダー樹脂成分の全てがブチラール系樹脂であってもよい。)。
【0036】
-樹脂成分-
本実施形態のブチラール系樹脂が、前記第1インキ層に含まれる樹脂成分中の最も含有量が多い構成成分であることが好ましい。換言すると、本実施形態の第1インキ層2は、バインダー樹脂成分(1)を含有することが好ましい。そして、当該バインダー樹脂成分(1)において、最も含有量が多い成分がブチラール系樹脂(「主樹脂」とも呼ぶ。)であることが好ましく、更に他のバインダー樹脂(「助樹脂」とも呼ぶ。)を含有してもよい。
なお、本明細書における「樹脂成分」とは、着色剤以外の成分をいう。また、「バインダー樹脂成分」とは、有機溶剤系グラビアインキに含まれる樹脂成分であり、例えば、結合作用を有する樹脂を指し、後述のワックス、後述の添加剤は除かれる。
本実施形態の第1インキ層及び後述の第1インキ組成物は、バインダー樹脂成分(1)として、ブチラール系樹脂以外の他のバインダー樹脂を含有してもよい。換言すると、バインダー樹脂成分(1)は、必須としてブチラール系樹脂を含有し、必要により前記ブチラール系樹脂(主樹脂)以外の他のバインダー樹脂(助樹脂)を含有してもよい。
前記他のバインダー樹脂(助樹脂)としては、ケトン系樹脂、ロジン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、更には、ポリアミド樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アルキッド樹脂、環化ゴム、ブチラール、石油樹脂等を挙げることもできる。これらの中でも、他のバインダー樹脂(助樹脂)としては、ケトン系樹脂、ロジン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、及びセルロース樹脂(但し、硝化綿樹脂を除く。)が好ましい。
【0037】
前記他のバインダー樹脂(助樹脂)の含有量は、バインダー樹脂成分(1)の総量に対して、0.1~49質量%の範囲が好ましい。他のバインダー樹脂(助樹脂)の含有量が、バインダー樹脂成分(1)の総量中、0.1質量%以上であると、インキの物性が向上し、印刷適性が向上する。また、他のバインダー樹脂(助樹脂)の含有量が、バインダー樹脂成分(1)の総量に対して、49質量%以下であると、ブチラール系樹脂(主樹脂)の割合を増やすことができ、150℃程度の低温で焼き付けを行っても、金属箔1に対する密着性を向上させ易い。また、他のバインダー樹脂(助樹脂)の含有量の上限については、バインダー樹脂成分(1)の総量中、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下、より一層好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0038】
-ケトン系樹脂-
前記ケトン系樹脂としては、公知のものを挙げることができ、例えば、ホルムアルデヒド樹脂、シクロヘキサノン・ホルムアルデヒド樹脂、ケトンアルデヒド縮合樹脂等を好適に用いることができる。
【0039】
-ロジン系樹脂-
前記ロジン系樹脂は、ロジン骨格を有する樹脂であれば特に限定されないが、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンエステル、ロジンフェノール、重合ロジン等が好ましい。また、ロジン系樹脂は、軟化点(環球法による)が90~200℃であることが好ましい。
【0040】
-ポリウレタン樹脂-
前記ポリウレタン樹脂としては、ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得たポリウレタン樹脂であれば特に限定されない。
【0041】
前記ポリオールとしては、例えば、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知のポリオールを用いることができ、1種又は2種以上を併用してもよい。該ポリオールとして、具体的には、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトール等の飽和又は不飽和の低分子ポリオール類(1);これらの低分子ポリオール類(1)と、セバシン酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸、或いはこれらの無水物と、を脱水縮合又は重合させて得られるポリエステルポリオール類(2);環状エステル化合物、例えば、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール類(3);前記低分子ポリオール類(1)等と、例えば、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等と、の反応によって得られるポリカーボネートポリオール類(4);ポリブタジエングリコール類(5);ビスフェノールAに酸化エチレン又は酸化プロピレンを付加して得られるグリコール類(6);1分子中に1個以上のヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリルヒドロキシブチル等、或いはこれらの対応するメタクリル酸誘導体等と、例えば、アクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルと、を共重合することによって得られるアクリルポリオール(7)等が挙げられる。
また、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知のポリエーテルポリオールを用いることができ、1種または2種以上を併用してもよい。例えば、酸化メチレン、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフラン等の重合体または共重合体のポリエーテルポリオール類が挙げられる。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等公知汎用のものでよい。
本発明のポリウレタン樹脂は、ポリオールとしては、ポリエステルポリオールを用いることが好ましく、ポリエステルポリオール類(2)及びポリエーテルポリオールを用いることがより好ましい。
【0042】
前記ポリイソシアネートとしては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。該ポリイソシアネートとして、具体的には、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-3,5-フェニレンジイソシアネート、1-エチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-イソプロピル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-4,6-フェニレンジイソシアネート、1,4-ジメチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート、1-メチル-3,5-ジエチルベンゼンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ジエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、1,3,5-トリエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、1-メチル-ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、ナフタレン-2,7-ジイソシアネート、1,1-ジナフチル-2,2’-ジイソシアネート、ビフェニル-2,4’-ジイソシアネート、ビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4-ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-シクロペンチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート等を用いることができる。これらのポリイソシアネートは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0043】
また、前記ポリウレタン樹脂には、鎖伸長剤を使用することもできる。鎖伸長剤としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン等の他、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等、分子内に水酸基を有するアミン類も用いることが出来る。これらの鎖伸長剤は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0044】
また、前記ポリウレタン樹脂には、反応停止を目的とした末端封鎖剤として、一価の活性水素化合物を用いることもできる。かかる化合物としては、例えば、ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類や、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類が挙げられる。更に、特にポリウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときには、グリシン、L-アラニン等のアミノ酸を反応停止剤として用いることができる。これらの末端封鎖剤は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0045】
前記ポリウレタン樹脂は、重量平均分子量が10,000~100,000であることが好ましく、15,000~80,000の範囲がより好ましい。
尚、本発明において、数平均及び重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0046】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
〔標準ポリスチレン〕
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0047】
-アクリル樹脂-
前記アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする重合性モノマーが共重合したものであれば特に限定されない。重合性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、iso-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、iso-ノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートと、メタクリレートとの両方を指す。重合法も、特に限定はなく、公知の塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合法等で得たものを使用することができる。
前記アクリル樹脂は、重量平均分子量が5,000~200,000であることが好ましく、10,000~100,000の範囲がより好ましい。
【0048】
-セルロース樹脂-
前記セルロース樹脂(繊維素系樹脂)としては、例えば、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)等のセルロースエステル樹脂、硝化綿樹脂(「ニトロセルロース」とも呼ぶ。)、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース等が挙げられるが、環境及び健康の観点から、硝化綿樹脂以外のものが好ましい。前記セルロースエステル樹脂は、アルキル基を有することが好ましく、該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、更にアルキル基が置換基を有していてもよい。前記セルロース樹脂としては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが好ましい。
【0049】
前記セルロース樹脂は、重量平均分子量が5,000~200,000であることが好ましく、10,000~50,000であることが更に好ましい。また、前記セルロース樹脂は、ガラス転移温度が120℃~180℃であるものが好ましい。セルロース樹脂を使用することで、耐ブロッキング性、耐擦傷性、その他のインキ被膜物性が向上することが期待できる。
【0050】
-ポリエステル樹脂-
前記ポリエステル樹脂としては、アルコールとカルボン酸とを公知のエステル化重合反応を用いて反応させてなるポリエステル樹脂であれば特に限定されない。
前記アルコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビド等が挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。中でも、多官能アルコールが好ましい。
【0051】
前記カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、オレイン酸、リノール酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。中でも多官能カルボン酸が好ましい。
前記ポリエステル樹脂は、重量平均分子量が500~6,000であることが好ましく、1,400~5,500であることが更に好ましい。
【0052】
<着色剤>
本実施形態のインキ層(第1インキ層及び/又は後述の第2インキ層が該当する。)及び後述のインキ組成物(第1インキ組成物及び/又は後述の第2インキ組成物が該当する。)は、着色剤を含有することが好ましい。該着色剤としては、着色顔料、白色顔料いずれの顔料でもよい。
前記着色剤としては、顔料が好ましく、一般のインキ、塗料、及び記録剤等に使用されている有機顔料、無機顔料を挙げることができる。
【0053】
前記有機顔料としては、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系等の顔料が挙げられる。また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられる。また、未酸性処理顔料、酸性処理顔料のいずれも使用することができる。また、前記有機顔料としては、黒色顔料、藍色顔料、緑色顔料、赤色顔料、紫色顔料、黄色顔料、橙色顔料及び茶色顔料が挙げられる。以下に各有機顔料の好ましい具体的な例を挙げる。
【0054】
黒色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7、C.I.ピグメントブラック9、C.I.ピグメントブラック20等が挙げられる。
【0055】
藍色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:5、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー17:1、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー24:1、C.I.ピグメントブルー25、C.I.ピグメントブルー26、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー61、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー63、C.I.ピグメントブルー64、C.I.ピグメントブルー75、C.I.ピグメントブルー79、C.I.ピグメントブルー80等が挙げられる。
【0056】
緑色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン1、C.I.ピグメントグリーン4、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン8、C.I.ピグメントグリーン10、C.I.ピグメントグリーン36等が挙げられる。
【0057】
赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド4、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド8、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド10、C.I.ピグメントレッド11、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド17、C.I.ピグメントレッド18、C.I.ピグメントレッド19、C.I.ピグメントレッド20、C.I.ピグメントレッド21、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド31、C.I.ピグメントレッド32、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド41、C.I.ピグメントレッド43、C.I.ピグメントレッド46、C.I.ピグメントレッド48、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド48:5、C.I.ピグメントレッド48:6、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド49:1、C.I.ピグメントレッド49:2、C.I.ピグメントレッド49:3、C.I.ピグメントレッド52、C.I.ピグメントレッド52:1、C.I.ピグメントレッド52:2、C.I.ピグメントレッド53、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド53:2、C.I.ピグメントレッド53:3、C.I.ピグメントレッド54、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド58、C.I.ピグメントレッド58:1、C.I.ピグメントレッド58:2、C.I.ピグメントレッド58:3、C.I.ピグメントレッド58:4、C.I.ピグメントレッド60:1、C.I.ピグメントレッド63、C.I.ピグメントレッド63:1、C.I.ピグメントレッド63:2、C.I.ピグメントレッド63:3、C.I.ピグメントレッド64:1、C.I.ピグメントレッド68、C.I.ピグメントレッド68、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド83、C.I.ピグメントレッド88、C.I.ピグメントレッド89、C.I.ピグメントレッド95、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド114、C.I.ピグメントレッド119、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド136、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド147、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド164、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド169、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド171、C.I.ピグメントレッド172、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド181、C.I.ピグメントレッド182、C.I.ピグメントレッド183、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド188、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド193、C.I.ピグメントレッド194、C.I.ピグメントレッド200、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド208、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド210、C.I.ピグメントレッド211、C.I.ピグメントレッド213、C.I.ピグメントレッド214、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド223、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド226、C.I.ピグメントレッド237、C.I.ピグメントレッド238、C.I.ピグメントレッド239、C.I.ピグメントレッド240、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントレッド247、C.I.ピグメントレッド248、C.I.ピグメントレッド251、C.I.ピグメントレッド253、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド256、C.I.ピグメントレッド257、C.I.ピグメントレッド258、C.I.ピグメントレッド260、C.I.ピグメントレッド262、C.I.ピグメントレッド263、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド266、C.I.ピグメントレッド268、C.I.ピグメントレッド269、C.I.ピグメントレッド270、C.I.ピグメントレッド271、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントレッド279等が挙げられる。
【0058】
紫色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット2、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット3:1、C.I.ピグメントバイオレット3:3、C.I.ピグメントバイオレット5:1、C.I.ピグメントバイオレット13、C.I.ピグメントバイオレット19(γ型、β型)、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット25、C.I.ピグメントバイオレット27、C.I.ピグメントバイオレット29、C.I.ピグメントバイオレット31、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントバイオレット36、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントバイオレット38、C.I.ピグメントバイオレット42、C.I.ピグメントバイオレット50、等が挙げられる。
【0059】
黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー42、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー62、C.I.ピグメントイエロー65、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー86、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー120、ピグメントイエロー125、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー137、C.I.ピグメント、イエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー148、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー174、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185およびC.I.ピグメントイエロー213等が挙げられる。
【0060】
橙色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ37、C.I.ピグメントオオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントレンジ55、C.I.ピグメントオレンジ59、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ71、又はC.I.ピグメントオレンジ74等が挙げられる。
【0061】
茶色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25、又はC.I.ピグメントブラウン26等が挙げられる。
【0062】
中でも、好ましい顔料として、黒色顔料としてC.I.ピグメントブラック7、藍色顔料としてC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、緑色顔料としてC.I.ピグメントグリーン7、赤色顔料としてC.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、紫色顔料としてC.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、黄色顔料としてC.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー139、橙色顔料としてC.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ64、等が挙げられ、これらの群から選ばれる少なくとも一種又は二種以上を使用することが好ましい。
【0063】
前記無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、リトボン、アンチモンホワイト、石膏等の白色無機顔料が挙げられる。無機顔料の中では、酸化チタンの使用が特に好ましい。酸化チタンは、白色を呈し、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から好ましく、印刷性能の観点から該酸化チタンは、シリカ及び/又はアルミナ処理を施されているものが好ましい。
【0064】
白色以外の無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、ジルコン等が挙げられ、アルミニウムは粉末またはペースト状であるが、取扱い性及び安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィング又はノンリーフィングを使用するかは、輝度感及び濃度の点から適宜選択される。
【0065】
本実施形態のインキ層(第1インキ層及び後述の第2インキ層が該当する。)において、前記インキ層の総量に対して、着色剤の含有量は、1.0~90.0質量%であることが好ましく、1.0~60質量%であることが更に好ましい。
【0066】
<添加剤等>
本実施形態のインキ層(第1インキ層及び後述の第2インキ層が該当する。)及び後述のインキ組成物(第1インキ組成物及び第2インキ組成物を含む)は、更に必要に応じて、添加剤を含むことができる。当該添加剤は、体質顔料、顔料分散剤、分散剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤及び難燃剤からなる群から選択されることが好ましい。
本実施形態のインキ層(第1インキ層及び後述の第2インキ層が該当する。)において、前記インキ層の総量に対して、添加剤の含有量は、0.1~20.0質量%であることが好ましい。
本実施形態のインキ層(第1インキ層及び後述の第2インキ層が該当する。)及び後述のインキ組成物(第1インキ組成物及び第2インキ組成物を含む)は、必要に応じて、硬化剤及びワックスからなる群から選択される1種以上を更に含有してもよい。
前記硬化剤は、イソシアネート系の硬化剤が挙げられる。また、前記ワックスとしては、リキッドインキ分野で公知のポリオレフィンワックスや、脂肪酸アマイド系ワックスを使用することが好ましい。前記ポリオレフィンワックスとしては、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス等が挙げられる。前記脂肪酸アマイド系ワックスとしては、飽和脂肪酸アマイドであるステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、不飽和脂肪酸アマイドであるエルカ酸アミド、置換アマイド、芳香族アマイド等が挙げられる。
本実施形態のインキ層(第1インキ層及び後述の第2インキ層が該当する。)において、前記インキ層の総量に対して、ワックスの含有量は、0.1~20.0質量%であることが好ましい。
【0067】
なお、本実施形態の第1インキ層2及び後述の第1インキ組成物は、硝化綿樹脂及び塩素系樹脂のいずれも含有しないことが好ましい。硝化綿系樹脂及び塩素系樹脂のいずれも含有しない第1インキ層は、環境及び健康の観点から好ましい。
医薬品のPTP包装体用インキとして、硝化綿系樹脂を使用した製品において、発がん性のNDMA(N-ニトロソジメチルアミン)が検出されており、該NDMAの発生原因として、インキ原料の硝化綿が疑われているが、第1インキ層2及び後述の第1インキ組成物は、バインダー樹脂として、硝化綿樹脂を含有しないことで、かかる懸念を解消できる。
また、海外(EU等の一部地域)では、塩素系樹脂(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂等)の使用が制限されており、インキ層(第1インキ層及び/又は後述の第2インキ層が該当する。)及び後述のインキ組成物(第1インキ組成物及び/又は後述の第2インキ組成物が該当する。)が、バインダー樹脂として、塩素系樹脂を含有しないことにより、全世界への輸出が可能となる。
【0068】
<インキ組成物>
本実施形態の第1インキ層2は、第1インキ組成物から形成されることが好ましい。また、前記第1インキ組成物は、液状の組成物、いわゆるリキッドインキ組成物であることが好ましい。
同様に、任意要素である第2インキ層3を金属箔1上に更に設ける場合、第2インキ層3は、第2インキ組成物から形成されることが好ましい。また、前記第2インキ組成物は、液状の組成物、いわゆるリキッドインキ組成物であることが好ましい。
本実施形態のインキ組成物(第1インキ組成物及び/又は後述の第2インキ組成物が該当する。)は、樹脂成分(例えば、バインダー樹脂成分(バインダー樹脂成分(1)及び/又は後述のバインダー樹脂成分(3)が該当する。))を含有し、該バインダー樹脂成分は、隣接する層(例えば、金属箔等)への密着性を向上させる作用を有する。そして、前記インキ組成物において、前記バインダー樹脂成分は、最も含有量が多い成分(即ち、前記バインダー樹脂成分の主成分)がブチラール系樹脂であることが好ましい。
【0069】
従来のPTP用蓋材のインキ層に用いられるインキ組成物は、バインダー樹脂の主成分が硝化綿樹脂等であり、150℃程度の低温で焼き付けを行うと、金属箔に対する密着性が低かった。そのため、従来のリキッドインキ組成物では、200℃程度の高温で焼き付けを行わざるを得ず、作業効率が低下し、また、金属箔が熱からダメージを受けていた。これに対して、本実施形態のインキ組成物(第1インキ組成物及び/又は後述の第2インキ組成物が該当する。)は、樹脂成分(例えば、バインダー樹脂成分(バインダー樹脂成分(1)及び/又は後述のバインダー樹脂成分(3)が該当する。))の主成分がブチラール系樹脂であることで、150℃程度の低温で焼き付けを行っても、金属箔に対する密着性が良好である。そのため、本実施形態のインキ組成物第1インキ組成物及び/又は第2インキ組成物が該当する。)を用いることで、150℃程度の低温での焼き付けが可能となり、焼き付けの作業効率が向上し、また、金属箔が熱から受けるダメージを低減することができる。
【0070】
本実施形態の第1インキ組成物は、ブチラール系樹脂と、必要により配合される、ブチラール系樹脂以外のバインダー樹脂成分(1)、着色剤、添加剤、硬化剤及びワックスからなる群から選択される1種又は2種以上と、を溶剤中に溶解及び/又は分散させることにより製造することができる。例えば、着色剤としての顔料を、ブチラール系樹脂あるいはバインダー樹脂成分(1)により有機溶剤に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に、必要に応じて他の化合物等を配合することにより第1インキ組成物を製造することができる。
顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度等を適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミル等を用いることができる。
インキ組成物中に気泡や予期せずに粗大粒子等が含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過等により取り除くことが好ましい。濾過器としては、従来公知のものを使用することができる。
【0071】
前記方法で製造されたインキ組成物(第1インキ組成物及び/又は後述の第2インキ組成物が該当する。)の粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。なお、前記粘度は、トキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
本実施形態のインキ組成物(第1インキ組成物及び/又は後述の第2インキ組成物が該当する。)の粘度は、使用される原材料の種類や量、例えば、バインダー樹脂成分(バインダー樹脂成分(1)及び/又は後述のバインダー樹脂成分(3)が該当する。)、着色剤、溶剤、添加剤、硬化剤及びワックス等を適宜選択することにより調整することができる。また、インキ組成物中の顔料の粒度及び粒度分布を調節することによりインキ組成物の粘度を調整することもできる。
【0072】
-第1インキ組成物中のバインダー樹脂成分(1)-
本実施形態の第1インキ組成物は、ブチラール系樹脂を含むバインダー樹脂成分(1)を含有することが好ましい。そして、前記ブチラール系樹脂を含むバインダー樹脂成分(1)全体の含有量は、当該第1インキ組成物の総量に対して、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~70質量%である。第1インキ組成物中に、ブチラール系樹脂を含むバインダー樹脂成分(1)が上記範囲で含有すると、密着性が更に向上する。
本実施形態の第1インキ組成物において、前記ブチラール系樹脂が、前記バインダー樹脂成分(1)中の最も含有量が多い構成成分であることが好ましい。また、前記バインダー樹脂成分(1)の総量中の前記ブチラール系樹脂の割合は、50質量%より多いことがより好ましい。ここで、前記割合は、固形分での割合を指す。バインダー樹脂成分(1)の総量中の前記ブチラール系樹脂の割合が50質量%より多いと、第1インキ組成物の金属箔に対する密着性が更に向上する。また、バインダー樹脂成分(1)の総量中の前記ブチラール系樹脂の割合は、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上がより一層好ましく、80質量%以上が特に好ましく、100質量%であってもよい(即ち、バインダー樹脂成分(1)の全てがブチラール系樹脂であってもよい)。
【0073】
-ブチラール系樹脂-
本実施形態のインキ組成物(第1インキ組成物及び/又は後述の第2インキ組成物が該当する。)は、ブチラール系樹脂を含有する。そして、前記ブチラール系樹脂の含有量は、当該インキ組成物の総量に対して、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~70質量%である。
本実施形態の好ましいインキ組成物(第1インキ組成物及び/又は後述の第2インキ組成物が該当する。)は、当該インキ組成物の総量に対して、ブチラール系樹脂(主樹脂)の含有量が5~30質量%であることが好ましく、前記ブチラール系樹脂以外の前記バインダー樹脂成分(1)(助樹脂)の含有量が0~10質量%であることが好ましく、着色剤の含有量が0~45質量%であることが好ましく、溶剤の含有量が10~90質量%であることが好ましく、添加剤(ワックス等)の含有量が0~10質量%であることが好ましい。
【0074】
-溶剤-
本実施形態のインキ組成物(第1インキ組成物及び/又は後述の第2インキ組成物が該当する。)は、溶剤(好ましくは、有機溶剤)を含有することでき、芳香族系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、及びアルコール系溶剤からなる群から選択される少なくとも一種の溶剤を含有することが好ましい。芳香族系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、及びアルコール系溶剤は、上述したブチラール系樹脂(主樹脂)や、上述した他のバインダー樹脂(助樹脂)の溶解性が良好である。前記インキ組成物中の溶剤の含有量は、当該インキ組成物の総量に対して、10~90質量%の範囲が好ましい。
前記芳香族系溶剤としては、トルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等が挙げられる。前記ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。前記エステル系溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。前記アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イノプロパノール、n-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これらを1種単独又は2種以上の混合物で用いることができる。近年、作業環境の観点から、トルエン、キシレンといった芳香族系溶剤やケトン系溶剤を用いないことがより好ましい。
本実施形態のインキ組成物(第1インキ組成物及び/又は後述の第2インキ組成物が該当する。)には、揮発性成分として有機溶剤と共に、水を含有させてもよい。水の含有量は前記インキ組成物の総量の10質量%未満であることが好ましい。水の添加により、インキの乾燥性を制御することができ、特にグラビア印刷では、その特徴であるインキ転移量の少ないグラデーション部をきれいに再現することができる。更に、前記インキ組成物の総量の1~5質量%の範囲であることが、印刷適性が良好となることから、特に好ましい。また、このような水の添加により、使用する有機溶剤成分を低減することも可能である。水は、有機溶剤に予め添加して含水の有機溶剤としてもよいし、別途特定量の水を添加してもよい。
【0075】
-着色剤-
本実施形態のインキ組成物(第1インキ組成物及び/又は後述の第2インキ組成物が該当する。)において、前記着色剤の含有量は、前記インキ組成物の濃度・着色力を確保するのに充分な量、即ち、前記インキ組成物の総量に対して1~60質量%、インキ層(第1インキ層及び/又は第2インキ層が該当する。)中の固形分全量に対して10~90質量%の割合で含まれることが好ましい。また、着色剤は、1種単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
前記顔料等の前記着色剤を溶剤に安定に分散させるには、前記バインダー樹脂成分単独でも分散可能であるが、更に前記顔料等の前記着色剤を安定に分散させるため、顔料分散剤を併用することもできる。前記顔料分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性等の界面活性剤を使用することができる。例えば、ポリエチレンイミンにポリエステル付加させた櫛型構造高分子化合物、或いはα-オレフィンマレイン酸重合物のアルキルアミン誘導体等が挙げられる。顔料分散剤としては、具体的には、ソルスパーズシリーズ(ZENECA)、アジスパーシリーズ(味の素)、ホモゲノールシリーズ(花王)等を挙げることができる。また、BYKシリーズ(ビックケミー)、EFKAシリーズ(EFKA)等も適宜使用できる。前記顔料分散剤は、インキ組成物の保存安定性の観点からインキ組成物(第1インキ組成物及び/又は後述の第2インキ組成物が該当する。)の総質量に対して0.05質量%以上、ラミネート適性の観点から5質量%以下で前記インキ組成物中に含まれることが好ましく、更に好ましくは、0.1~2質量%の範囲である。
【0076】
-添加剤-
本実施形態のインキ組成物(第1インキ組成物及び/又は後述の第2インキ組成物が該当する。)において、上述した添加剤の含有量は、前記インキ組成物の総量に対して、0~30質量%であることが好ましく、0~20質量%であることがより好ましく、0~10質量%であることが更に好ましい。
【0077】
-硬化剤-
本実施形態のインキ組成物(第1インキ組成物及び/又は後述の第2インキ組成物が該当する。)には、硬化剤を使用してもよい。
なお、本実施形態のインキ組成物(第1インキ組成物及び/又は後述の第2インキ組成物が該当する。)は、1液であっても、印刷に適用でき、印刷における作業性に優れる。即ち、本実施形態の第1インキ組成物は、硬化剤を使用しない1液タイプ、硬化剤を使用する2液タイプのいずれにおいても、インキの分散性、流動性等に優れる。
前記硬化剤としては、有機溶剤系のグラビアインキで汎用の硬化剤が挙げられ、例えば、イソシアネート系の硬化剤が挙げられる。
本実施形態のインキ組成物(第1インキ組成物及び/又は後述の第2インキ組成物が該当する。)には、硬化剤として、メラミン樹脂を使用しないことが好ましい。前記インキ組成物に、硬化剤として、メラミン樹脂を使用しないことで、ホルムアルデヒドの発生を抑制することができる。
本実施形態のインキ組成物(第1インキ組成物及び/又は後述の第2インキ組成物が該当する。)において、前記硬化剤の含有量としては、硬化効率の観点から前記インキ組成物の全固形分に対し0.3質量%~10.0質量%の範囲が好ましく、1.0質量%~7.0質量%の範囲がより好ましい。
【0078】
-ワックス-
本実施形態のインキ組成物(第1インキ組成物及び/又は後述の第2インキ組成物が該当する。)は、上述したワックスを含有することが好ましい。ワックスを含有する前記インキ組成物は、巻取りの際のブロッキングを防止でき、加工し易い。
前記ワックスの含有量としては、特に限定はなく、公知の範囲でよいが、通常は、インキ組成物(第1インキ組成物及び/又は後述の第2インキ組成物が該当する。)の全固形分に対し0.1~20質量%の範囲が好ましい。
【0079】
(ニス層)
本実施形態の積層体10は、第1インキ層2上に設けられるニス層4を有する。そして、ニス層4は、「オーバープリントニス層」、「オーバーコート層」あるいは、「トップコート層」とも称され、第1インキ層2を保護する層でありうる。これにより、耐熱性、耐摩耗性に優れた積層体を提供できる。また、本実施形態のニス層4は、バインダー樹脂成分(2)としてブチラール系樹脂を含有する。これにより、環境負荷を低減し、かつ耐熱性、耐摩擦性、密着性、耐ブロッキング性及びにラビング強度に優れた積層体、並びに当該積層体を有するPTP包装体を提供しうる。
本実施形態のニス層4の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm~10μmが好ましく、1μm~5μmがより好ましい。
ニス層4は、着色していてもよく、あるいは着色していなくてもよい。当該ニス層を着色する場合、前記樹脂に着色剤を添加すればよく、該着色剤としては、上述のインキ組成物の項で述べた着色剤を使用することができる。
【0080】
本実施形態のニス層4は、ポリイソシアネート化合物及びブチラール系樹脂を含有することが好ましく、より詳細には、ニス層4は、ブチラール系樹脂とポリイソシアネート化合物とを反応原料とする樹脂を含有することがより好ましい。また、ニス層4は、ブチラール系樹脂と、必要により、ブチラール系樹脂以外のバインダー樹脂成分(2)(以下、他の樹脂とも称する)、着色剤及び添加剤からなる群から選択される1種又は2種以上と、を更に含有してよい。換言すると、バインダー樹脂成分(2)は、ブチラール系樹脂と、他の樹脂とを包含する。
ニス層4は、メラミン樹脂を使用しないことが好ましい。メラミン樹脂を使用しないことにより、ホルムアルデヒドの発生を抑制できるため、より優れた環境負荷低減効果が期待されうる。
前記ブチラール系樹脂あるいはブチラール系樹脂由来の構成単位(=ブチラール系樹脂残基、例えば、上記一般式(1)で表される部分構造)が、前記ニス層中の最も含有量が多い構成成分であることが好ましく、前記ブチラール系樹脂あるいはブチラール系樹脂由来の構成単位が、前記バインダー樹脂成分(2)中の最も含有量が多い構成成分であることがより好ましい。これにより、ブチラール系樹脂の使用量が多いため、ホルムアルデヒドの発生を抑制できることから、より優れた環境負荷低減効果が期待されうる。
また、本実施形態のニス層4は、後述するコーティング剤をグラビアコート等で塗布して形成することができる。また、ニス層4のコート量は、特に限定するものではないが、単位面積当たり0.5g/m~5g/mで形成することができる。
以下、ニス層4を構成する各成分である、ポリイソシアネート化合物、ブチラール系樹脂及びバインダー樹脂成分(2)について説明する。なお、ニス層4の任意成分である着色剤及び添加剤は、上記(第1インキ層)の欄における、着色剤及び添加剤の内容を援用する。
【0081】
<ポリイソシアネート化合物>
本実施形態のニス層4及び後述する当該ニス層4を形成するコーティング剤は、ブチラール系樹脂とポリイソシアネート化合物とを含有することにより、これらの硬化反応によって架橋状態の樹脂を形成できる。そのため、密着性、耐擦性及び耐熱性を向上させることができる。
【0082】
本実施形態で使用するポリイソシアネート化合物は、特に限定なくブチラール系樹脂と反応しうるよう、イソシアネート基を複数有するポリイソシアネート化合物であれば特に限定されない。
当該ポリイソシアネート化合物の具体例としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のポリイソシアネート;これらのポリイソシアネートのアダクト体、これらのポリイソシアネートのビュレット体、または、これらのポリイソシアネートのイソシアヌレート体等のポリイソシアネートの誘導体(変性物)等が挙げられる。
【0083】
本開示に用いるポリイソシアネート化合物は、いわゆる硬化剤として作用し適宜選択して用いることができるが、芳香族系であっても脂肪族系であってもよい。すなわち、本実施形態のポリイソシアネート化合物は、脂肪族又は芳香族系のポリイソシアネートであることが好ましい。
本実施形態で好ましく用いられるポリイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等のポリイソシアネート、を挙げることができる。
中でもキシリレンジイソシアネート(XDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)
が好ましい。
【0084】
-イソシアネート基含有率(当量)-
本実施形態においては、前記ブチラール系樹脂の水酸基価に対するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基含有率(当量)が0.1~5.0の範囲であることが好ましく、0.2~4.0の範囲であることがより好ましく、0.3~3.0の範囲であることが更に好ましい。この範囲とすることによって、金属箔に対する密着性と耐擦性とを両立させることができる。なお、本実施形態において、前記ブチラール系樹脂の水酸基価に対するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基含有率(当量)は次の方法により算出した。
ブチラール系樹脂の水酸基価:A(mgKOH/g)
ブチラール系樹脂の質量:B(g)
ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基(-N=C=O)の割合(%):C(%)
ポリイソシアネート化合物の質量:D(g)
(イソシアネート基/水酸基)で表される比=C×D×561/(A×B×42)
D(g)=((A×B)/C)×(42/561)×(イソシアネート基/水酸基)(当量比)
【0085】
<ブチラール系樹脂>
本実施形態のニス層4におけるブチラール系樹脂は、上記(第1インキ層)の欄で説明したブチラール系樹脂と同様の樹脂を使用することができる。
すなわち、ニス層4におけるブチラール系樹脂は、一般的には、ブチラール系樹脂として、ポリビニルアルコールにブチルアルデヒド等のアルデヒド化合物を公知の反応によりアセタール化することにより得られた反応物を使用することができる。そして、上記一般式(1)で表される部分構造を有することが好ましく、上記一般式(1)で表される部分構造、上記一般式(2)で表される部分構造及び上記一般式(3)で表される部分構造を有する樹脂であることがさらに好ましい。
本実施形態のニス層4に含有されるポリビニルブチラール樹脂は、1種類を用いても2種類以上を併用して用いてもよい。
【0086】
ニス層4に用いられるブチラール系樹脂の重量平均分子量は、5000~150000であることが好ましく、6000~100000であることがより好ましく、7000~50000であることが更に好ましい。ポリビニルブチラール樹脂の重量平均分子量を上記範囲にすることにより、強度及び分散性とのバランスに優れたニス層を提供できる。
【0087】
ニス層4に用いられるブチラール系樹脂のガラス転移温度(以下Tgと称する場合がある)は、50℃~120℃の範囲であることが好ましく、中でも55℃~115℃の範囲が好ましく、60~90℃の範囲がより好ましい。本発明においてガラス転移温度は、示差走査熱量計による測定により得られるものである。
【0088】
ニス層4に用いられるブチラール系樹脂の水酸基価は10~50mol/%の範囲にあることが好ましく、30~40mol/%であることがより好ましい。ポリビニルブチラール樹脂の水酸基価を上記範囲にすることにより、架橋剤と反応させたときの硬化性に優れ、塗膜の強度と適度な柔軟性を両立させることができる。
なお、前記水酸基量とは、上記一般式(3)で表される部分構造の量がブチラール系樹脂の総量に対する含有量をいう。
【0089】
<バインダー樹脂成分(2)>
本実施形態のニス層4は、バインダー樹脂成分(2)を含有することが好ましい。そして、当該バインダー樹脂成分(2)において、最も含有量が多い成分がブチラール系樹脂であることが好ましく、更に他の樹脂を含有してもよい。
前記他の樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ロジン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ダンマル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、ポリアセタール樹脂、石油樹脂、およびこれらの変性樹脂等があげられる。これらの他の樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。医薬品や食品用途の場合は、安全衛生の観点から、エポキシ樹脂や塩素系樹脂を用いないことが好ましい。
【0090】
<コーティング剤>
本実施形態のニス層4は、液状のコーティング剤から形成されることが好ましい。より詳細には、第1インキ層2上に公知の方法によりコーティング剤を塗工してニス層4を形成することが好ましい。
また、前記コーティング剤は、ポリイソシアネート化合物と、ブチラール系樹脂とを含有することが好ましい。
本実施形態のコーティング剤は、本発明の効果を発現するために、本実施形態のコーティング剤中に含有される樹脂全量に対して、前記ブチラール系樹脂及び前記ポリイソシアネート化合物の合計量の下限は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることが好ましい。前記ブチラール系樹脂及び前記ポリイソシアネート化合物の合計量の上限は、100質量%以下であることが好ましい。また、コーティング剤中に含有される樹脂全量に対して、前記ブチラール系樹脂及び前記ポリイソシアネート化合物の合計量は、実質的に(不可避的不純物を除き)100質量%であることが特に好ましい。上記上限及び下限を任意に組み合わせできる。
また、耐摩性を上げる為、必要によりコーティング剤は、耐摩剤、滑り剤等を配合しても良い。脂肪酸アミド、シリコーン、ポリエチレン、ポリプロピレン、PTFE等を単独で使用しても、あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
また、硬化性を上げる為、必要によりコーティング剤は、触媒をコーティング剤に添加しても良い。前記触媒としては、有機系スズ化合物、三級アミン化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物等が挙げられる。
【0091】
本実施形態のコーティング剤において、ブチラール系樹脂の含有量は、コーティング剤の総量(固形分)に対して10~50質量%含有することが好ましく、より好ましくは15~40質量%であり、最も好ましくは20~30質量%である。
【0092】
本実施形態のコーティング剤は、必要に応じて、上記以外の例えば、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、高級脂肪酸等の有機化合物系ブロッキング防止剤を含有することが好ましい。これら有機化合物系ブロッキング防止剤は、インキ層表面にブリードアウトすることでブロッキングを防止する。そのため、粒子系ブロッキング防止剤と有機化合物系ブロッキング防止剤を併用してもよい。有機化合物系ブロッキング防止剤は多量に配合すると接着性を阻害し、接着不良を起こし易いので、少量添加に留めることが好ましい。
【0093】
実際に本実施形態のコーティング剤を第1インキ層2上に塗布する際において、その塗布性能を上げるべく、各種有機溶剤で固形分20%質量となるように溶解して使用しうる。
使用できる希釈する前記有機溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤が挙げられる。これらの中でも、アルコール系、メチルエチルケトン等のケトン系や、これらの混合物を使用するのが好ましい。近年、作業環境の観点から、トルエン、キシレンといった芳香族系溶剤やケトン系溶剤を用いないことがより好ましい。
【0094】
以上が、本実施形態の積層体10の必須の構成要素である、金属箔1、第1インキ層2及びニス層4についての内容である。以下、本実施形態の任意要素である、第2インキ層3及びヒートシール層5について説明する。
【0095】
(第2インキ層)
本実施形態の第2インキ層3は、金属箔1の他方の面上に設けられてもよい。より詳細には、本実施形態の積層体10において、第1インキ層が設けられた金属箔1の面と対向する面上に第2インキ層3が設けられてもよい。当該第2インキ層3は、第1インキ層2と同様に、例えば、文字、図形若しくは記号といった情報、及び/又は、色を表示しうる。より詳細には、積層体10をPTP包装体の蓋材として使用する場合、内容物の品名、価格、内容物の用量、内容物の効能・効果等の不変情報又は製造年月日、ロット番号、有効期限等の可変情報が第1インキ層2及び/又は第2インキ層3として印刷されうる。中でも、第1インキ層2及び/又は第2インキ層3は、内容物の製品の個別の情報である、製造年月日、ロット番号等の可変情報を含む一次元コード(例えば、バーコード)、二次元コード(例えば、QRコード(登録商標))を表示することが好ましい。例えば、前記内容物が医薬品である場合、当該医薬品用のバーコードであるGS1(旧RSSコード)、GS1-RSSリミテッド合成シンボルCC-A、GS1-RSS14スタック合成シンボルCC-Aを、第1インキ層2及び/又は第2インキ層3として表示してもよい。
本実施形態の第2インキ層3が表示する色は特に制限されることはなく、着色しなくてもよく、あるいは例えば、黒、青、緑、赤、黄等の各色を表示してもよい。第2インキ層3は、従来公知の方法で形成することができ、例えば、インクジェット印刷、グラビア印刷等で形成することができる。
本実施形態の第2インキ層は、ベタ塗りの色表示インキ層、並びに文字及び/又は柄を表示する情報表示インキ層を含む多層印刷により構成される多層印刷層であることが好ましい。
第2インキ層が多層印刷層であると、特に、積層体10を医薬品用のPTP用蓋材に使用する場合、内容物等の誤認防止の観点から、バーコード又はQRコードを表示する必要がある場合があり、金属箔1上にバーコード又はQRコード(情報表示インキ層)を直接印刷して形成しても、読み取りが困難な場合がある。これに対して、金属箔1の上に一旦ベタ印刷により色表示インキ層を設け、更にその上にバーコード又はQRコード(情報表示インキ層)を印刷して形成することで、バーコード等の情報表示インキ層を読み取り易くすることができる。
【0096】
本実施形態の第2インキ層3の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm~5μmが好ましく、0.1μm~3μmがより好ましい。
本実施形態の第2インキ層3は、ブチラール系樹脂を含有し、必要により、前記ブチラール系樹脂以外のバインダー樹脂成分(3)、着色剤、硬化剤、ワックス及び添加剤からなる群から選択される1種又は2種以上をさらに含有することが好ましい。そして、前記バインダー樹脂成分(3)は、ブチラール系樹脂を必須に含有する。
本実施形態の第2インキ層の組成は、前記第1インキ層の組成と同じであることが好ましい。この場合、第2インキ層中のバインダー樹脂成分(3)及びブチラール系樹脂の含有量は、第1インキ層中のバインダー樹脂成分(1)の含有量の好ましい範囲を援用する。
本実施形態のブチラール系樹脂が、前記第2インキ層に含まれる樹脂成分中の最も含有量が多い構成成分であることが好ましい。換言すると、前記ブチラール系樹脂が、前記バインダー樹脂成分(3)中の最も含有量が多い構成成分であることが好ましい。これにより、ニトロセルロース等の硝化綿系樹脂を使用しないため、発がん性のNDMA(ジメチルアミン)の発生を抑制できるため、より優れた環境負荷低減効果が期待されうる。
第2インキ層を構成しうる各成分である、ブチラール系樹脂、バインダー樹脂成分(3)、着色剤、硬化剤、ワックス及び添加剤は、上記第1インキ層を構成しうる各成分である、ブチラール系樹脂、バインダー樹脂成分(1)、着色剤、硬化剤、ワックス及び添加剤と同様である。したがって、第2インキ層を構成しうる各成分である、ブチラール系樹脂、着色剤、硬化剤、ワックス及び添加剤の内容は、上記(第1インキ層)の欄の内容を援用する。
【0097】
<バインダー樹脂成分(3)>
本実施形態の第2インキ層3は、バインダー樹脂成分(3)を含有することが好ましい。そして、当該バインダー樹脂成分(3)において、最も含有量が多い成分がブチラール系樹脂(「主樹脂」とも呼ぶ。)であることが好ましく、前記ブチラール系樹脂(主樹脂)以外の他のバインダー樹脂(「助樹脂」とも呼ぶ。)を更に含有してもよい。
本実施形態の第2インキ層3及び後述の第2インキ組成物は、ブチラール系樹脂だけでなく、当該ブチラール系樹脂以外のバインダー樹脂成分(3)を含有してもよい。換言すると、バインダー樹脂成分(3)は、必須としてブチラール系樹脂を含有し、必要により前記ブチラール系樹脂(主樹脂)以外の他のバインダー樹脂(助樹脂)を含有してもよい。前記他のバインダー樹脂(助樹脂)の樹脂としては、前記バインダー樹脂成分(1)と同様の他のバインダー樹脂(助樹脂)であるため、ここでは省略する。
【0098】
前記バインダー樹脂成分(3)に含まれうる前記他のバインダー樹脂(助樹脂)の含有量は、バインダー樹脂成分(3)の総量に対して、0.1~49質量%の範囲が好ましい。前記他のバインダー樹脂(助樹脂)の含有量が、バインダー樹脂成分(3)の総量中、0.1質量%以上であると、インキの物性が向上し、印刷適性が向上する。また、前記他のバインダー樹脂(助樹脂)の含有量が、バインダー樹脂成分(3)の総量に対して、49質量%以下であると、ブチラール系樹脂(主樹脂)の割合を増やすことができ、150℃程度の低温で焼き付けを行っても、金属箔1に対する密着性を向上させ易い。また、前記他のバインダー樹脂(助樹脂)の含有量の上限については、バインダー樹脂成分(3)の総量中、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下、より一層好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0099】
なお、本実施形態の第2インキ層3及び後述の第2インキ組成物は、硝化綿系樹脂及び塩素系樹脂のいずれも含有しないことが好ましい。硝化綿系樹脂及び塩素系樹脂のいずれも含有しない第1インキ層は、環境及び健康の観点から好ましい。
医薬品のPTP包装体用インキとして、硝化綿系樹脂を使用した製品において、発がん性のNDMA(N-ニトロソジメチルアミン)が検出されており、該NDMAの発生原因として、インキ原料の硝化綿が疑われているが、第2インキ層3及び後述の第2インキ組成物は、が、バインダー樹脂として、硝化綿樹脂を含有しないことで、かかる懸念を解消できる。
【0100】
<第2インキ組成物>
本実施形態の積層体10において、任意要素である第2インキ層3を金属箔1上に更に設ける場合、第2インキ層3は、第2インキ組成物から形成されることが好ましい。また、前記第2インキ組成物は、液状の組成物、いわゆるリキッドインキ組成物であることが好ましい。
本実施形態の第2インキ組成物は、ブチラール系樹脂と、必要により配合される、ブチラール系樹脂以外のバインダー樹脂成分(3)着色剤、添加剤、硬化剤及びワックスからなる群から選択される1種又は2種以上と、を溶剤中に溶解及び/又は分散させることにより製造することができる。例えば、着色剤としての顔料をバインダー樹脂成分(3)により有機溶剤に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に、必要に応じて他の化合物等を配合することにより第2インキ組成物を製造することができる。
なお、前記顔料分散体における顔料の粒度分布は、上記第1インキ組成物中の顔料分散体と同様の方法及び手段で調整することができる。また、第2インキ組成物も第1インキ組成物の組成と同様である。この場合、第2インキ層中のバインダー樹脂成分(3)及びブチラール系樹脂の含有量は、第1インキ層中のバインダー樹脂成分(1)の含有量の好ましい範囲を援用する。
【0101】
本実施形態の第2インキ組成物において、前記ブチラール系樹脂が、前記バインダー樹脂成分(3)中の最も含有量が多い構成成分であることが好ましい。また、前記バインダー樹脂成分(3)の総量中の前記ブチラール系樹脂の割合は、50質量%より多いことがより好ましい。ここで、前記割合は、固形分での割合を指す。バインダー樹脂成分(3)の総量中の前記ブチラール系樹脂の割合が50質量%より多いと、第2インキ組成物の金属箔に対する密着性が更に向上する。また、バインダー樹脂成分(3)の総量中の前記ブチラール系樹脂の割合は、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上がより一層好ましく、80質量%以上が特に好ましく、100質量%であってもよい(即ち、バインダー樹脂成分(3)の全てがブチラール系樹脂であってもよい)。
【0102】
(ヒートシール層)
本実施形態の積層体10は、第2インキ層3上にヒートシール層5を更に設けてもよい。本実施形態のヒートシール層5は、積層体10を他の部材と熱接着するときに使用する層である。そのため、例えば、積層体10をPTP包装体の蓋材として使用する場合、積層体10を容器等の他の部材に熱接着する際に、ヒートシール層5は、前記容器のフランジ部に対して溶着される層であり、容器と積層体10とを良好に接着できる材料が選択されることが好ましい。したがって、ヒートシール層5は、ヒートシール性を付与する公知の熱可塑性樹脂を主たる樹脂成分として含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有することができる。
本実施形態のヒートシール層5は、ヒートシール性を付与する公知の熱可塑性樹脂を主たる樹脂成分として含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有することができる。熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく目的に応じて公知の熱可塑性樹脂を適宜選択することができる。
当該ヒートシール層5に使用される熱可塑性樹脂としては、オレフィン系単量体単位(又は構成単位とも称する)と不飽和カルボン酸系単量体単位(例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、マレイン酸、フマル酸又はイタコン酸等の単量体単位)とを有する共重合体が好ましく、αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体が特に好ましい。そのため、本実施形態のヒートシール層5としては、αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有するヒートシール剤を金属箔1等の基材又は第2インキ層3上に塗布することにより設けられることが好ましい。尚、本明細書における「(メタ)アクリル酸エステル」は、アクリル酸エステルとメタアクリル酸エステルの総称を表す。
明細書における「αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体」は、αオレフィンと(メタ)アクリル酸エステルとが共重合した共重合体である。
前記αオレフィンとしては、特に限定なく公知のαオレフィンを使用できるが、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテン、ブタジエン等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。中でもαオレフィンとしてエチレン又はプロピレンを主体とするものが好ましい。
【0103】
前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定なく公知の(メタ)アクリル酸エステルを使用できる。前記(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステル、アルコキシアルキルエステル等を使用することができる。前記(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸nプロピル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸nオクチル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-メトキシエチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸nプロピル、メタクリル酸nブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸nへキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸nラウリル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-エトキシエチル等のメタクリル酸エステルを例示することができる。これらは1種又は2種以上組合せて使用することができる。中でも、(メタ)アクリル酸エステルとして、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸nプロピル、(メタ)アクリル酸nブチル、(メタ)アクリル酸イソブチルを1種または2種以上用いることが好ましく、(メタ)アクリル酸メチルを主体として用い、(メタ)アクリル酸nブチル、(メタ)アクリル酸イソブチルを組み合わせて用いることが好ましい。例えば、(メタ)アクリル酸エステルの総量のうち、(メタ)アクリル酸メチルが60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが好ましい。
【0104】
また、本実施形態のαオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、αオレフィン単量体単位及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位以外の他のモノマーが更に共重合されていてもよいが、他のモノマーに由来する単量体単位の含有量は、共重合体全体の好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下である。
【0105】
本実施形態のαオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体中のエチレンの割合は特に制限はないが、共重合体中のエチレンの割合が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上であることが好ましい。一方、共重合体中の(メタ)アクリル酸エステル共重合体の割合が、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であることが好ましい。
【0106】
本実施形態のαオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は、特に制限はないが、耐ブロッキング性の観点から、20万以上であることが好ましい。一方、密着性や低温ヒートシール性の観点から、重量平均分子量は100万以下であることが好ましく、50万以下であることがより好ましい。
【0107】
また、αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体のガラス転移温度は、低温でのヒートシール性が良好になることから、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下、更に好ましくは0℃以下である。一方、ガラス転移温度の下限は、好ましくは-70℃以上、より好ましくは-60℃以上、更に好ましくは-50℃以上である。
本実施形態で用いるαオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体は公知のものを用いることができ、市販品を使用することができる。
【0108】
また、ヒートシール層5は、αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体以外の樹脂、例えば、αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体以外の熱可塑性樹脂を含有してもよい。前記熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく目的に応じて公知の熱可塑性樹脂を適宜選択することができ、例えば、α-オレフィン樹脂、スチレン樹脂、エステル樹脂、アクリル樹脂、環状オレフィン樹脂、アクリル/オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、セラック類、ロジン類、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、酢酸セルロース、セルロースアセチルプロピオネート、セルロースアセチルブチレート、環化ゴム、ポリアミド樹脂、ケトン樹脂、ブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、カゼイン、アルキッド樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、良好なヒートシール性を付与できる点から、α-オレフィン樹脂が好ましい。
前記ヒートシール層の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、1μm~10μmが好ましく、3μm~5μmがより好ましい。
【0109】
ヒートシール層5は、金属箔1上に、直接又は任意の層(例えば、第2インキ層)を介して配置される。前記ヒートシール層の形成方法としては、前記樹脂等を溶媒に分散又は溶解させたヒートシール剤を塗工して設けることができる。このようなヒートシール剤としては、市販品のホットメルトシール剤を使用することもできる。ヒートシール剤は、PTP用蓋材の最外面の所望の面に全面又は部分的に塗工することができる。
【0110】
<ヒートシール剤>
本実施形態のヒートシール層5は、ヒートシール剤を所望の層又は金属箔上に塗工することにより形成されうる。
そして、前記ヒートシール剤としては、特に限定されず、ヒートシール性を有する熱可塑性樹脂を有機溶剤に溶解したタイプ、水又は水性の有機溶剤に溶解したタイプ、水又は水性の有機溶剤中に分散させたエマルジョンタイプ等、いずれの形態のものであってもよい。中でも、本実施形態のヒートシール剤は、αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体及び有機溶剤を含有することが好ましく、必要により上記熱可塑性樹脂をさらに含有してもよい。ヒートシール剤において、αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、固形分濃度が20~70重量%に調整することが好ましい。
【0111】
使用できる有機溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤が挙げられる。これらの中でも、アルコール系、メチルエチルケトン等のケトン系や、これらの混合物を使用するのが好ましい。近年、作業環境の観点から、トルエン、キシレンといった芳香族系溶剤やケトン系溶剤を用いないことがより好ましい。
【0112】
本実施形態のヒートシール剤は、熱可塑性樹脂、有機溶剤に加え、任意の添加剤を含んでいてもよい。前記任意の添加剤としては、ワックス、フィラー、粘度調整剤、防腐剤、抗菌剤、防錆剤、酸化防止剤、架橋剤、硬化剤、硬化触媒、光安定剤、紫外線吸収剤、光触媒性化合物、染料、無機顔料、有機顔料、体質顔料、可塑剤、帯電防止剤等が挙げられる。中でも、ブロッキング性を防止するために、シリカ等のフィラー、ワックス等のブロッキング防止剤を含有することが好ましい。
【0113】
一方、本実施形態のヒートシール剤は、αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体以外の他の樹脂を実質的に含まず、ヒートシール剤中に含まれる樹脂成分がαオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなることが好ましい。すなわち、本発明のヒートシール剤は、αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなるシンプルな構成であることが好ましい。
なお、「実質的に含まない」とは、αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体以外の他の樹脂を意図的に含有させないことを意味する。
【0114】
(アンカーコート層)
本実施形態の積層体10は、必要により、インキ層(第1インキ層2及び第2インキ層3を含む)と、ヒートシール層5との間に、アンカーコート層を更に備えてもよい。
積層体10を特に医薬品用のPTP用蓋材に使用する場合、ヒートシール層5は、内容部の医薬品に直接接触するため、着色剤を含まないことが好ましい。そのためインキ層(第1インキ層2及び第2インキ層3を含む)(例えば、上述の情報表示インキ層)の上に着色した層を設けたい場合は、ヒートシール層との間に、アンカーコート層を設け、該アンカーコート層を着色することが好ましい。
前記アンカーコート層には、上述のヒートシール層と同様の樹脂を使用でき、また、着色剤を添加することが好ましい。アンカーコート層に用いる着色剤としては、上述の第1インキ組成物の項で述べた着色剤を使用することができる。また、前記アンカーコート層は、例えば、原料の塗布液をベタ塗りして形成することができる。
前記アンカーコート層の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、1μm~10μmが好ましく、1μm~5μmがより好ましい。
【0115】
(積層体の好ましい形態)
本実施形態において、積層体10の具体的な用途としては、錠剤やカプセルを充填した医療用PTP包装体(Press Through Package)の蓋材、ヨーグルトパックの蓋材、ゼリーのパックの蓋材、コーヒーパックの蓋材、乳飲料パックの蓋材、電磁波シールド等の金属箔を有するシート等を挙げることができる。中でも、本実施形態の積層体10は、PTP包装体に使用される蓋材(PTP用蓋材と称する。)に使用することが好ましい。すなわち、本実施形態の積層体10は、PTP用蓋材であることが好ましい。
以下、積層体10をPTP用蓋材として使用する場合の好ましい形態を説明する。
【0116】
<PTP用蓋材の好適実施形態>
本実施形態の積層体10を前記PTP用蓋材として使用する場合の好適な態様としては、以下の構成のものが挙げられる。なお、以下の表記においては、各層を積層順に記載している。また、ニス層については、着色の有る場合と、着色の無い場合を区分けするために、「ニス層(着色無し)」、「ニス層(着色有り)」とそれぞれ表記する。
【0117】
第1実施形態: ニス層(着色無し)/情報表示インキ層/硬質アルミ箔/情報表示インキ層/ヒートシール層(着色無し)
第2実施形態: ニス層(着色無し)/情報表示インキ層/色表示インキ層/硬質アルミ箔/情報表示インキ層/ヒートシール層(着色無し)
第3実施形態: ニス層(着色無し)/情報表示インキ層/色表示インキ層/硬質アルミ箔/色表示インキ層/情報表示インキ層/ヒートシール層(着色無し)
第4実施形態: ニス層(着色無し)/情報表示インキ層/硬質アルミ箔/色表示インキ層/情報表示インキ層/ヒートシール層(着色無し)
【0118】
上記の第1~第4の実施例形態のPTP用蓋材は、ニス層及びヒートシール層のいずれも着色されておらず、情報表示インキ層をそのまま視認できる。
第1の実施形態では、ニス層側の「情報表示インキ層」が、第1インキ層に対応し、ヒートシール層側の「情報表示インキ層」が、第2インキ層に対応する。
第2実施形態では、ニス層側の情報表示インキ層をより視認し易くするために、ニス層側の情報表示インキ層と硬質アルミ箔との間に色表示インキ層が設けられている。また、第2の実施形態では、ニス層側の「情報表示インキ層/色表示インキ層」(上記多層印刷層)が、第1インキ層に対応し、ヒートシール層側の「情報表示インキ層」が、第2インキ層に対応する。
第3の実施形態では、ニス層側の「情報表示インキ層/色表示インキ層」(上記多層印刷層)が、第1インキ層に対応し、ヒートシール層側の「色表示インキ層/情報表示インキ層」(上記多層印刷層)が、第2インキ層に対応する。また、第3実施形態では、ニス層側及びヒートシール層側の両方の情報表示インキ層をより視認し易くするために、硬質アルミ箔の両面に色表示インキ層が設けられている。
第4実施形態では、ヒートシール層側の情報表示インキ層をより視認し易くするために、ヒートシール層側の情報表示インキ層と硬質アルミ箔との間に色表示インキ層が設けられている。また、第4の実施形態では、ニス層側の「情報表示インキ層」が、第1インキ層に対応し、ヒートシール層側の「色表示インキ層/情報表示インキ層」が、第2インキ層に対応する。
【0119】
第5実施形態: ニス層(着色有り)/情報表示インキ層/硬質アルミ箔/情報表示インキ層/アンカーコート層(着色有り)/ヒートシール層(着色無し)
第6実施形態: ニス層(着色有り)/情報表示インキ層/色表示インキ層/硬質アルミ箔/情報表示インキ層/アンカーコート層(着色有り)/ヒートシール層(着色無し)
第7実施形態: ニス層(着色有り)/情報表示インキ層/色表示インキ層/硬質アルミ箔/色表示インキ層/情報表示インキ層/アンカーコート層(着色有り)/ヒートシール層(着色無し)
第8実施形態: ニス層(着色有り)/情報表示インキ層/硬質アルミ箔/色表示インキ層/情報表示インキ層/アンカーコート層(着色有り)/ヒートシール層(着色無し)
【0120】
上記の第5~第8の実施例形態のPTP用蓋材は、ニス層が着色されている一方、ヒートシール層は着色されていない。また、内容物側の情報表示インキ層の上に着色した層を設けるため、着色されているアンカーコート層を情報表示インキ層とヒートシール層との間に設けている。
第6実施形態では、ニス層側の情報表示インキ層をより視認し易くするために、ニス層側の情報表示インキ層と硬質アルミ箔との間に色表示インキ層が設けられている。
第8実施形態では、ヒートシール層側の情報表示インキ層をより視認し易くするために、ヒートシール層側の情報表示インキ層と硬質アルミ箔との間に色表示インキ層が設けられている。
また、第7実施形態では、ニス層側及びヒートシール層側の両方の情報表示インキ層をより視認し易くするために、硬質アルミ箔の両面に色表示インキ層が設けられている。
第5~8の実施形態も第1~4の実施形態と同様に、ニス層側の「情報表示インキ層/色表示インキ層」又は「情報表示インキ層」が第1インキ層に対応し、ヒートシール層側の「色表示インキ層/情報表示インキ層」又は「情報表示インキ層」が、第2インキ層に対応する。
【0121】
第9実施形態: ニス層(着色無し)/情報表示インキ層/硬質アルミ箔/情報表示インキ層/アンカーコート層(着色有り)/ヒートシール層(着色無し)
第10実施形態: ニス層(着色無し)/情報表示インキ層/色表示インキ層/硬質アルミ箔/情報表示インキ層/アンカーコート層(着色有り)/ヒートシール層(着色無し)
第11実施形態: ニス層(着色無し)/情報表示インキ層/色表示インキ層/硬質アルミ箔/色表示インキ層/情報表示インキ層/アンカーコート層(着色有り)/ヒートシール層(着色無し)
第12実施形態: ニス層(着色無し)/情報表示インキ層/硬質アルミ箔/色表示インキ層/情報表示インキ層/アンカーコート層(着色有り)/ヒートシール層(着色無し)
【0122】
上記の第9~第12の実施例形態のPTP用蓋材は、ニス層及びヒートシール層のいずれも着色されていない。但し、内容物側の情報表示インキ層の上に着色した層を設けるため、着色されているアンカーコート層を情報表示インキ層とヒートシール層との間に設けている。
第10実施形態では、ニス層側の情報表示インキ層をより視認し易くするために、ニス層側の情報表示インキ層と硬質アルミ箔との間に色表示インキ層が設けられている。
第12実施形態では、ヒートシール層側の情報表示インキ層をより視認し易くするために、ヒートシール層側の情報表示インキ層と硬質アルミ箔との間に色表示インキ層が設けられている。
また、第11実施形態では、ニス層側及びヒートシール層側の両方の情報表示インキ層をより視認し易くするために、硬質アルミ箔の両面に色表示インキ層が設けられている。
第9~12の実施形態も第1~4の実施形態と同様に、ニス層側の「情報表示インキ層/色表示インキ層」又は「情報表示インキ層」が第1インキ層に対応し、ヒートシール層側の「色表示インキ層/情報表示インキ層」又は「情報表示インキ層」が、第2インキ層に対応する。
【0123】
第13実施形態: ニス層(着色有り)/情報表示インキ層/硬質アルミ箔/情報表示インキ層/ヒートシール層(着色無し)
第14実施形態: ニス層(着色有り)/情報表示インキ層/色表示インキ層/硬質アルミ箔/情報表示インキ層/ヒートシール層(着色無し)
第15実施形態: ニス層(着色有り)/情報表示インキ層/色表示インキ層/硬質アルミ箔/色表示インキ層/情報表示インキ層/ヒートシール層(着色無し)
第16実施形態: ニス層(着色有り)/情報表示インキ層/硬質アルミ箔/色表示インキ層/情報表示インキ層/ヒートシール層(着色無し)
【0124】
上記の第13~第16の実施例形態のPTP用蓋材は、ニス層が着色されている一方、ヒートシール層は着色されていない。但し、内容物側の情報表示インキ層の上に着色した層を設けるため、着色されているアンカーコート層を情報表示インキ層とヒートシール層との間に設けている。
第14実施形態では、ニス層側の情報表示インキ層をより視認し易くするために、ニス層側の情報表示インキ層と硬質アルミ箔との間に色表示インキ層が設けられている。
第16実施形態では、ヒートシール層側の情報表示インキ層をより視認し易くするために、ヒートシール層側の情報表示インキ層と硬質アルミ箔との間に色表示インキ層が設けられている。
また、第15実施形態では、ニス層側及びヒートシール層側の両方の情報表示インキ層をより視認し易くするために、硬質アルミ箔の両面に色表示インキ層が設けられている。
第9~12の実施形態も第1~4の実施形態と同様に、ニス層側の「情報表示インキ層/色表示インキ層」又は「情報表示インキ層」が第1インキ層に対応し、ヒートシール層側の「色表示インキ層/情報表示インキ層」又は「情報表示インキ層」が、第2インキ層に対応する。
【0125】
第1~第16の実施形態において、情報表示インキ層、色表示インキ層の少なくとも一つの層として本実施形態のインキ組成物(第1インキ組成物及び第2インキ組成物を含む)を用いることができる。なお、これらの実施形態は、本発明のPTP用蓋材の好適例の一部であり、本発明のPTP用蓋材には、種々の構成を採用することができる。
上述した、本実施形態のPTP用蓋材は、構成部分のいずれも、硝化綿樹脂及び塩素系樹脂を含まないことが好ましい。硝化綿樹脂及び塩素系樹脂のいずれも含有しないPTP用蓋材は、環境及び健康の観点から好ましい。より具体的には、PTP用蓋材が、硝化綿樹脂を含有しないことで、NDMA(N-ニトロソジメチルアミン)の発生の懸念を解消できる。また、PTP用蓋材が、塩素系樹脂を含有しないことで、全世界への輸出が可能となる。
また、本実施形態のPTP用蓋材は、構成部分のいずれも、メラミン樹脂を含まないことが好ましい。PTP用蓋材が、メラミン樹脂を含有しないことで、ホルムアルデヒドの発生を抑制することができる。
【0126】
[PTP包装体]
本実施形態のPTP包装体は、積層体10をPTP用蓋材として備えることを特徴とする。すなわち、本実施形態のPTP包装体は、医薬品等の内容物を収容するポケット状の凹部及び該凹部の端部に設けられたフランジ部を備えた容器と、PTP用蓋材としての積層体10とから構成されている。そして、前記容器の凹部内に医薬品等の内容物が収容した後、前記凹部の開口部を前記PTP用蓋材としての積層体10により被覆して密封される。この際、積層体10の表面にヒートシール層5を有する場合、前記容器のフランジ部に積層体10のヒートシール層を接触させ、熱融着することにより内容物を密封していることが好ましい。
以下、本実施形態のPTP包装体(プレス・スルー・パッケージ)を、図面を参照しながら、更に詳細に説明する。
図2は、本実施形態のPTP包装体の一例の断面図である。図2に示すPTP包装体100は、医薬品等の内容物を収容する容器20と、該容器20に接着されたPTP用蓋材10(=積層体10)と、から構成されている。容器20は、内容物30を収容するポケット状の凹部21と、該凹部21の端部に設けられたフランジ部22とを具える。凹部21には、医薬品(錠剤)等の内容物30が直接収容され、フランジ部22には、PTP用蓋材10(より具体的には、PTP用蓋材10のヒートシール層5)が直接接着される。
【0127】
前記PTP用蓋材10には、上述の、本実施形態のPTP用蓋材である積層体10を適用することができる。
前記容器20には、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂からなる熱可塑性樹脂シートを使用することができる。
前記ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。前記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、環状オレフィンからなる樹脂等が挙げられる。前記フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が挙げられる。
【0128】
本実施形態のPTP包装体100は、上述したPTP用蓋材10及び容器20をヒートシール層により接着して用いられる。即ち、容器20の凹部21に医薬品(錠剤)等の内容物30を収容し、該容器20にPTP用蓋材10を、ヒートシール層を容器20側に向けて重ねて熱接着する方法により、PTP包装体100を製造できる。
本実施形態のPTP包装体は、薬、タブレット、キャンディーやチョコレート等の食品等の包材として使用することができる。また、歯ブラシ、乾電池、おもちゃ等のブリスターパック用の包材としても使用することができる。
【0129】
上述した、本実施形態のPTP包装体は、構成部品のいずれも、硝化綿樹脂及び塩素系樹脂を含まないことが好ましい。硝化綿樹脂及び塩素系樹脂のいずれも含有しないPTP包装体は、環境及び健康の観点から好ましい。より具体的には、PTP包装体が、硝化綿樹脂を含有しないことで、NDMA(N-ニトロソジメチルアミン)の発生の懸念を解消できる。また、PTP包装体が、塩素系樹脂を含有しないことで、全世界への輸出が可能となる。
また、本実施形態のPTP包装体は、構成部品のいずれも、メラミン樹脂を含まないことが好ましい。PTP包装体が、メラミン樹脂を含有しないことで、ホルムアルデヒドの発生を抑制することができる。
【実施例0130】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。以下、「部」及び「%」は、特に言及が無い限り、いずれも質量基準によるものとする。
[実施例及び比較例で用いた測定方法又は評価方法]
(1)重量平均分子量の測定
GPCによる重量平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は、東ソー(株)社製HLC8220システムを用い、以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR-Nを4本使用
カラム温度:40℃
移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0重量%
試料注入量:100マイクロリットル
検出器:示差屈折計
【0131】
(2)ニス層の物性評価
(2-0)試験体の作製
後述の実施例5、参考例、比較例3及び比較例4の欄で記載した通り、実施例5、参考例、比較例3及び比較例4の積層体をそれぞれ作製した。そして、前記各積層体作製直後の積層体を試験体(1)とし、前記積層体作製後、1日室温(23℃)にて静置した積層体を試験体(2)、前記積層体作製後、2日室温(23℃)にて静置した積層体を試験体(3)とし、前記積層体作製後、1日40℃にて静置した積層体を試験体(4)とし、前記積層体作製後、2日40℃にて静置した積層体を試験体(5)とし、それぞれ測定又は評価対象として用意した。
なお、後述の「(2-1)密着性、(2-2)耐熱性(インキ滲み)、(2-3)耐摩耗性、(2-4)MEKラビング特性、(2-5)耐ブロッキング性」の評価は、ヒートシール層及び第2インキ組成物を含む第2インキ層を設けていない積層体(金属箔、第1インキ層及びニス層を有する積層体)で評価した。
【0132】
(2-1)密着性
上記試験体(1)、(2)及び(4)の表面のニス層に対して、ニチバンセロハンテープ(18mm巾)を貼り付け、該セロハンテープを90°剥離させ、ニス被膜の剥がれを目視で判定し、1~5までの評点で分類した。該評点は、1刻みであり、1が不良、5が良好であることを示し、評点が大きい程、ニス被膜の硬質アルミ原反あるいはインキ層への接着性が優れることを示す。その実験結果を表2に示す。評点の詳細を以下に示す。
5 : 全く剥離しない
4 : 約25%剥離
3 : 約50%剥離
2 : 約75%剥離
1 : 完全に剥離(約100%剥離)
【0133】
(2-2)耐熱性(インキ滲み)
上記試験体(1)~(5)を用意し、ヒートシールバーにて、各温度(230℃、250℃又は270℃)、0.3Nで、2秒の条件で圧着し、塗膜状態あるいは文字インキの滲み(流れ)を目視で判定し、1~5までの評点で分類した。該評点は、1刻みであり、1が不良、5が良好であることを示し、評点が大きい程、インキの滲みが少なく、耐熱性が優れることを示す。その実験結果を表2に示す。
【0134】
(2-3)耐摩耗性
上記試験体(2)を用意し適当な大きさに切断した後、学振型摩擦試験機(大栄科学精器製作所製RT-100、曲面半径200mm)にセットした。磨耗子の先端にガーゼを取り付け、試験荷重500(g)で100往復させた後、塗膜表面の傷付き、磨耗具合を目視判定する。その実験結果を表2に示す。
(評価基準)
5:塗膜表面の傷付き、磨耗部分の面積が0%
4:塗膜表面の傷付き、磨耗部分の面積が10%未満
3:塗膜表面の傷付き、磨耗部分の面積が10%以上30%未満
2:塗膜表面の傷付き、磨耗部分の面積が30%以上50%未満
1:塗膜表面の傷付き、磨耗部分の面積が50%以上
【0135】
(2-4)MEKラビング特性
上記試験体(3)及び(5)を用意し、前記試験体(3)及び(5)それぞれの塗膜表面にMEK(メチルエチルケトン)に浸した脱脂綿を荷重500gで設置した後、前記試験体(3)及び(5)表面の塗膜が剥離するまで前記脱脂綿を往復ラビングした回数をカウントした。1往復が1回としてカウントしている。その実験結果を表2に示す。
【0136】
(2-5)耐ブロッキング性
試験体(1)を準備し、ニス層とポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムとが接するように重ね合わせ、更にその両面を乳白色PETフィルムで挟んで被測定用サンプルを作製した後、前記被測定用サンプルを東洋精機(株)製のブロッキングテスターにて、0.5MPaの加重をかけ、50℃の恒温室に24時間静置した。24時間後に前記被測定用サンプルを取り出し、PETフィルムを剥離した。ニス層面と接触させていたPETフィルムにニス層又はインク層が転移する程度を下記の3段階にて官能評価した。その実験結果を表2に示す。
(評価基準)
3:抵抗なく剥離する
2:3と1の間
1:剥離抵抗が強い
【0137】
(3)ヒートシール層の物性評価
(3-0)テストピースの作製
後述の実施例、参考例及び比較例の欄で記載した通り、実施例、参考例及び比較例の積層体を作製した。そして、PVCシート(昭北アルミ製)と、前記積層体とをヒートシール層を介して重ね合わせてテストピースを作製した。その後、作製したテストピースについて、以下の評価を行った。
(3-1)ヒートシール層(又はHS層とも称する。)の強度測定
シール温度180℃、0.3MPa/秒の条件でヒートシールした上記各テストピースについて、(株)島津製作所製小型卓上試験機EZ testを用い、剥離速度100mm/分、剥離方向180度剥離(下:硬質塩ビシート、上:硬質アルミ)、剥離幅15mmにおける接着力の測定を行った。評価基準は以下のとおり5段階評価とした。
実験結果を表3に示す。なお、表3中の「3.5」の評価結果は、複数回の評価のうち、3と4の評価結果が同等レベルに混在した場合である。
(評価基準)
5:10(N/15mm)以上
4:3(N/15mm)以上10(N/15mm)未満
3:1(N/15mm)以上3(N/15mm)未満
2:1(N/15mm)未満
1:全く接着しない
【0138】
[積層体及びPTP包装体の作製]
<実施例1>
実施例1の積層体10を以下のように作製した(例えば、図1参照)。
(金属箔1)
アルミニウム箔層として、硬質アルミニウム箔を用いた。
(第1インキ層2及び第2インキ層3)
第1インキ層として、硬質アルミニウム箔の表面(OP層側)に下記表1に示す組成の第1インキ組成物を全面に塗布し、その上にGS1データバーリミテッドを印刷した。また、前記硬質アルミニウム箔の裏面(HS層側)に、下記表1に示す組成の第2インキ組成物により薬品名等を墨色、藍色、赤色のインキを用いて印刷した。
【0139】
(ニス層4)
ニス層4として、下記に示す組成のコーティング剤を用い、第1インキ層2の上にグラビアコートして形成した。そのコート量は焼き付け後の塗膜量が2g/mであった。
ニス層4のコーティング剤は、具体的には以下を用いた。
ポリビニルブチラール樹脂(重量平均分子量15000、水酸基価約35mol/%、ガラス転移点70℃)を、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールとが質量比で45:55の混合溶剤で固形分が25%となるように溶解しポリビニルブチラール溶液とした。
続いて、ポリビニルブチラール樹脂の水酸基価に対して、イソシアネートのNCO基含有率(当量)が0.5~2.5となる様に、ポリビニルブチラール溶液100部に対して、ポリイソシアネートとして、タケネートD-110NB(キシリレンジイソシアネート(XDI)を12部、混合攪拌し、ニス層4のコーティング剤を作製した。
【0140】
(ヒートシール層5)
ヒートシール層5として、下記に示す組成のヒートシール剤(1)を用い、前記第2インキ層上にバーコーターにて塗工してヒートシール層5を形成した。そのコート量は4g/mである。
ヒートシール層5のヒートシール剤(1)は、具体的には以下を用いた。
市販のエチレン-メタクリル酸共重合樹脂(固形分45%)を、メチルエチルケトンと酢酸エチルの混合溶剤で固形分25%となるように溶解し、ヒートシール剤(1)を調製した。混合溶剤におけるメチルエチルケトンと酢酸エチルは、メチルエチルケトン/酢酸エチル=50/50の質量割合である。
【0141】
<実施例2>
実施例2の積層体を以下のように作製した。実施例2において、ヒートシール層5として以下のヒートシール剤(2)を用いた。それ以外は実施例1と同様にした。
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂(重量平均分子量5万、塩化ビニル割合85%、ガラス転移点(Tg)75℃、ISO1628-2により測定されるK値45)を、メチルエチルケトンと酢酸エチルとの混合溶剤で固形分25%となるように溶解し、ヒートシール剤(2)を調製した。混合溶剤におけるメチルエチルケトンと酢酸エチルとは、メチルエチルケトン/酢酸エチル=50/50の質量割合である。
【0142】
<実施例3>
実施例3の積層体10を以下のように作製した。実施例3において、ヒートシール層5として以下のヒートシール剤(3)を用いた。それ以外は実施例1と同様にした。
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂(重量平均分子量5万、塩化ビニル割合85%、ガラス転移点(Tg)75℃、ISO1628-2により測定されるK値45)とポリエステル樹脂(数平均分子量3万、ガラス転移点(Tg)-20℃)を、メチルエチルケトンと酢酸エチルの混合溶剤で固形分16%となるように溶解し、ヒートシール剤(3)を調製した。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂とポリエステル樹脂との比率は、質量比で1:1である。また、混合溶剤におけるメチルエチルケトンと酢酸エチルとは、メチルエチルケトン/酢酸エチル=60/40の質量割合である。
【0143】
<実施例4>
実施例4の積層体10を以下のように作製した。
実施例4において、ヒートシール層5として以下のヒートシール剤(4)を用いた以外は実施例1と同様にした。
市販のエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂の水分散体(固形分50%)と水とを、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂分散体/水=80/20の質量割合に調整し、ヒートシール剤(4)を調製した。
なお、上記実施例1~4及び下記比較例1~2の積層体はいずれも、実施例1のニス層と同様の層構成であり、かつ表1-2に記載の実施例1の第2インキ組成物を使用して第2インキ層を設けた。また、上記実施例1~4で作製した積層体10は、いずれもPTP包装体用蓋材として使用可能である。
【0144】
<実施例5>
実施例5の積層体を以下のように作製した。
上記実施例1と同様に、実施例1と同様の硬質アルミニウム箔を用意し、当該硬質アルミニウム箔の表面(OP層側)に、表1に示す実施例1の組成の第1インキ組成物を全面に塗布し、その上にGS1データバーリミテッドを印刷して第1インキ層を作製した。そして、ニス層として、上記実施例1で使用した組成のコーティング剤を用い、前記第1インキ層の上にグラビアコートして形成して、片面のみにインキ層を形成した実施例5の積層体を作製した。当該コート量は焼き付け後の塗膜量が2g/mであった。
【0145】
<比較例1>
比較例1の積層体を以下のように作製した。
比較例1において、第1インキ層として表1-1の比較例1の第1インキ組成物の組成を用いた以外は実施例1と同様にした。
【0146】
<比較例2>
比較例2の積層体を以下のように作製した。
比較例2において、第1インキ層として表1-1の比較例2の第1インキ組成物の組成を用いた以外は実施例1と同様にした。
【0147】
<比較例3>
比較例3の積層体を以下のように作製した。
比較例3において、第1インキ層として表1-1の比較例1の第1インキ組成物の組成を用いた以外は実施例5と同様にして、当該実施例5と同様の層構成の積層体を作製した。
【0148】
<比較例4>
比較例4の積層体を以下のように作製した。
比較例4において、第1インキ層として表1-1の比較例2の第1インキ組成物の組成を用いた以外は実施例5と同様にして、当該実施例5と同様の層構成の積層体を作製した。
【0149】
<参考例1>
コントロールとして、硬質アルミ原反上に、焼き付け後の塗膜量が2g/mとなるようグラビアコーターを使用して各コーティング剤を硬質アルミ原反の片側に直接塗工し、180℃で10秒乾燥させて、硬質アルミ原反及びニス層を有するコントロール用積層体(0)を作製した。
【0150】
【表1-1】
【0151】
【表1-2】
【0152】
【表2】
【0153】
【表3】
【0154】
*1 顔料1: 白色顔料、石原産業社製の商品名「タイペーク A-220」
*2 塩酢ビ樹脂: 日信化学社製の商品名「ソルバインA」
*3 アクリル系樹脂: DOW社製の商品名「パラロイド A-11」
*4 ブチラール系樹脂: ポリビニルアルコールにブチルアルデヒドを反応させることにより得られたポリビニルブチラール樹脂(重量平均分子量19,000、水酸基量26質量%、ガラス転移点70℃、アセチル基量4質量%以下)を、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチルで25%溶液とし、これをブチラール系樹脂溶液とした。該ブチラール系樹脂溶液をインキ組成物の調製に使用した。表1-1及び表1-2中には、固形分としての含有量を示す。
【0155】
*5 ポリウレタン樹脂: 攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ネオペンチルグリコールアジペートジオール233.38部(水酸基価:37.4mgKOH/g)とポリエチレングリコール2.36部(水酸基価:280.5mgKOH/g)およびイソホロンジイソシアネート31.58部を仕込み、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、イソシアネート基含有率1.77質量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル66.8部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン10.59部、シクロヘキシルアミン0.28部、酢酸エチル387.6部およびイソプロピルアルコール194.7部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタン樹脂溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂溶液は、樹脂固形分濃度30.3質量%、樹脂固形分の重量平均分子量(Mw)は58,000であった。該ポリウレタン樹脂溶液をインキ組成物の調製に使用した。表1-1及び表1-2中には、固形分としての含有量を示す。
【0156】
*6 ケトン系樹脂: Evonik Tego Chemie GmbH社製の商品名「TEGO VARIPLUS SK」を添加、表1中には、固形分としての含有量を示す。
*7 PEワックス: 岐阜セラック社製の商品名「X-7019」を添加、表1中には、固形分としての含有量を示す。
*8 可塑剤: DIC社製の商品名「モノサイザーATBC」を添加、表1中には、固形分としての含有量を示す。
*9 溶剤: インキ組成物中の溶剤の総量であり、上記のバインダー樹脂成分等の溶解に使用した溶剤以外に、メチルエチルケトン/酢酸ノルマルプロピル=1/1(質量比)を含む。
【0157】
上記表2及び3の実験結果から、本開示に従う実施例の積層体は、150℃程度の低温で焼き付けを行っても、硬質アルミ箔に対する密着性(接着性)に優れることが分かる。例えば、表2から実施例5の片側のみに第1インキ層を設けた積層体は、耐熱性、耐摩擦性、密着性、耐ブロッキング性及びにラビング強度が全て高いレベルであり、比較例の積層体より優れていることが確認される。そのため、実施例1~4の積層体のように、両側にインキ層を設けても同様に耐熱性、耐摩擦性、密着性、耐ブロッキング性及びにラビング強度に優れた結果を得ることができると考えられる。次に、表3に示す実験結果から、ヒートシール層が、αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む場合、強度に優れることが確認された。
以上のことから、本開示に従う実施例の積層体は、比較例と比べて、環境負荷を低減し、かつ耐熱性、耐摩擦性、密着性、耐ブロッキング性及びにラビング強度に優れることが確認された。
【0158】
<実施例6>
実施例6のPTP包装体100を以下のように作製した。
250μm厚の透明なポリポリプロピレンフィルムを用いて、真空成形法で円柱状の収納部を有する図2に示す構造の容器20を作製した。そして、作製した透明なポリポリプロピレン製容器20に、内容物30(錠剤状の薬)を装填したのち、上記実施例1の積層体10(PTP包装用蓋材)と容器20のフランジ部22とをヒートシールにより、熱融着して、容器20の開口部を密封し、PTP包装体100を作製した。PTP包装体100は、容器20の上面を、指で押圧することにより、内容物30によって積層体10が押圧されて破断し、内容物30を取り出すことができた。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本開示の積層体及びPTP包装体は、環境負荷を低減し、かつ耐熱性、耐摩擦性、密着性、耐ブロッキング性及びにラビング強度に優れる。
【符号の説明】
【0160】
10:PTP用蓋材
1:金属箔
2:第1インキ層
3:第2インキ層
4:ニス層
5:ヒートシール層
100:PTP包装体
20:容器
21:凹部
22:フランジ部
30:内容物
図1
図2