(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180223
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ゴム組成物用フュームドシリカおよびフュームドシリカの圧縮方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/18 20060101AFI20241219BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20241219BHJP
C09C 1/28 20060101ALI20241219BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C01B33/18 E
C08K3/36
C09C1/28
C08L21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136383
(22)【出願日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2023098614
(32)【優先日】2023-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 正博
【テーマコード(参考)】
4G072
4J002
4J037
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072AA28
4G072AA41
4G072BB05
4G072CC16
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH17
4G072HH30
4G072JJ47
4G072MM40
4G072QQ03
4G072QQ07
4G072RR13
4G072TT04
4G072TT06
4G072TT08
4G072TT09
4G072UU08
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC081
4J002DJ016
4J002EC040
4J002EX080
4J002FA096
4J002FD016
4J002FD020
4J002FD030
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD170
4J002GN01
4J037AA18
4J037CC06
4J037DD05
4J037DD07
4J037DD17
4J037FF23
(57)【要約】
【課題】分割配合する回数が少なくてもゴム成分中に十分に分散できるフュームドシリカおよび当該フュームドシリカの圧縮方法を提供すること。
【解決手段】タップ密度が200g/L以上であり、かつ窒素吸着による吸着等温線に対しBJH法を適用して得られる細孔ピーク半径が22nm以上、細孔容積が1.6mL/g以上であるゴム組成物用フュームドシリカである。ゴム組成物用フュームドシリカのBET比表面積が180m2/g以上500m2/g以下であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タップ密度が200g/L以上であり、かつ窒素吸着による吸着等温線に対しBJH法を適用して得られる細孔ピーク半径が22nm以上、細孔容積が1.6mL/g以上であるゴム組成物用フュームドシリカ。
【請求項2】
前記ゴム組成物用フュームドシリカのBET比表面積が180m2/g以上500m2/g以下である請求項1に記載のゴム組成物用フュームドシリカ。
【請求項3】
前記ゴム組成物用フュームドシリカが未処理のゴム組成物用フュームドシリカである請求項1または2に記載のゴム組成物用フュームドシリカ。
【請求項4】
タップ密度が200g/L未満であるフュームドシリカに対して、一軸圧縮プレスを行うことによりタップ密度が200g/L以上である圧縮フュームドシリカを得るフュームドシリカの圧縮方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物用フュームドシリカおよびフュームドシリカの圧縮方法に関する。具体的には、ゴム成分中に容易に十分に分散するフュームドシリカおよび当該フュームドシリカの圧縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のタイヤには、低燃費性であることに加えて、長寿命であることが求められる。長寿命を実現するには、タイヤの耐摩耗性や耐熱老化性を向上させる必要がある。耐摩耗性を向上させるために、タイヤ用ゴム組成物には、補強用充填剤としてカーボンブラックが配合されてきた。
【0003】
一方、低燃費性の改善には湿式シリカが有効であることが知られているが、湿式シリカを配合した場合の耐摩耗性は、カーボンブラックを配合した場合の耐摩耗性に劣る。そのため、湿式シリカを補強用充填剤として用いた場合、カーボンブラックの配合量の一部を湿式シリカが置換することになり、カーボンブラックの配合量が相対的に減少するため、タイヤ用ゴム材料の耐摩耗性の低下が免れないことが知られている。
【0004】
特許文献1には、湿式シリカの一部を乾式シリカで置換することが提案されている。特許文献1には、乾式シリカは、湿式シリカよりも低燃費性を改善し、ゴム硬度の低下を抑制できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、乾式シリカは嵩高い状態で配合されていると考えられる。このような嵩高い(タップ密度が低い)乾式シリカを、ゴム組成物の一般的な混練装置であるバンバリーミキサーを用いて配合する場合、乾式シリカがゴム成分中に噛み込まれず流出してしまうという問題があった。そのため、配合予定量の乾式シリカを分割して配合する必要があった。しかしながら、分割回数が多くなるほど、生産性が低下するという問題があった。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、分割配合する回数が少なくてもゴム成分中に十分に分散できるフュームドシリカおよび当該フュームドシリカの圧縮方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、単にタップ密度を高くしたフュームドシリカを用いても、未加硫や加硫ゴム中に数十μmの凝集粒子が発生することがあるという知見を得た。この知見に基づき、本発明者は、タップ密度を高くするだけではなく、フュームドシリカの表面の細孔構造を所定の構造とすることにより、ゴム成分中に分配して配合する回数が少なくてもフュームドシリカが十分に分散できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
以上より、本発明の態様は、以下の通りである。
【0010】
[1]タップ密度が200g/L以上であり、かつ窒素吸着による吸着等温線に対しBJH法を適用して得られる細孔ピーク半径が22nm以上、細孔容積が1.6mL/g以上であるゴム組成物用フュームドシリカである。
[2]ゴム組成物用フュームドシリカのBET比表面積が180m2/g以上500m2/g以下である[1]に記載のゴム組成物用フュームドシリカである。
[3]ゴム組成物用フュームドシリカが未処理のゴム組成物用フュームドシリカである[1]または[2]に記載のゴム組成物用フュームドシリカである。
【0011】
[4]タップ密度が200g/L未満であるフュームドシリカに対して、一軸圧縮プレスを行うことによりタップ密度が200g/L以上である圧縮フュームドシリカを得るフュームドシリカの圧縮方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、分割配合する回数が少なくてもゴム成分中に十分に分散できるフュームドシリカおよび当該フュームドシリカの圧縮方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を、具体的な実施形態に基づき、以下の順序で詳細に説明する。
1.ゴム組成物用フュームドシリカ
2.フュームドシリカの圧縮方法
2.1.ボールミルを用いる場合
2.2.振動ミルを用いる場合
2.3.一軸対向圧縮プレス機を用いる場合
3.ゴム組成物
3.1.ジエン系ゴム
3.2.シランカップリング剤
3.3.各成分の配合量
3.4.その他の成分
4.ゴム組成物の製造方法
【0014】
(1.ゴム組成物用フュームドシリカ)
本実施形態に係るゴム組成物用フュームドシリカは、ゴム組成物に配合するために用いられるフュームドシリカであり、特に、タイヤ用ゴム組成物に用いられることが好ましい。フュームドシリカは、四塩化珪素を酸水素炎中で高温加水分解することによって製造される微粒子状の二酸化珪素である。したがって、フュームドシリカは、沈殿法、ゲル化法等の湿式法により製造される湿式シリカと製造方法が異なり、乾式シリカとも呼ばれる。湿式シリカのうち、一般的にゴムの補強材として使用されている沈殿法シリカの比表面積が200m2/g程度であるのに比べ、フュームドシリカに関しては400m2/g程度の物がシリコーンゴムなどの補強材として使用されている。したがって、フュームドシリカは、高比表面積がゆえに沈殿法シリカよりも一次凝集体(最小構成体)の一次粒子径が小さい。フュームドシリカの粒子は、数珠状に凝集・融着しており、嵩高い凝集体を形成する。
【0015】
本実施形態では、ゴム組成物用フュームドシリカのタップ密度は200g/L以上である。フュームドシリカは上述したように嵩高いので、通常、フュームドシリカのタップ密度は200g/Lより低いことが多い。そこで、フュームドシリカのタップ密度が低い場合(フュームドシリカが嵩高い場合)には、本実施形態に係るゴム組成物用フュームドシリカは、フュームドシリカの圧縮を行い、タップ密度を増加させたフュームドシリカ(圧縮フュームドシリカ)であることが好ましい。
【0016】
ゴム組成物用フュームドシリカのタップ密度が200g/L以上であることにより、ゴム組成物用フュームドシリカをゴム成分に配合して混練しても、タイヤ用ゴム組成物中に十分に分散させることができる。また、嵩高い成分の混練が難しいバンバリーミキサーを用いても、嵩高さが抑制されているので、十分に他の成分と混練することができる。
【0017】
ゴム組成物用フュームドシリカのタップ密度は250g/L以上であることが好ましく、300g/L以上であることがより好ましい。タップ密度の上限は特に制限されないが、製造上の観点から、たとえば、320g/L以下である。
【0018】
また、本実施形態では、ゴム組成物用フュームドシリカの嵩高さを、上記のタップ密度以外のパラメータにより評価してもよい。たとえば、JIS K5101-12-2に規定されるタンプ法により測定される見かけ密度により評価してもよい。
【0019】
ゴム組成物用フュームドシリカのタンプ法による見かけ密度は150g/L以上250g/L以下であることが好ましく、170g/L以上200g/L未満であることがより好ましい。タンプ法による見かけ密度の詳細な測定方法は実施例において説明する。
【0020】
フュームドシリカを圧縮する方法の詳細は後述するが、フュームドシリカを圧縮する方法としては、たとえば、ボールミルにより圧縮する方法、振動ミルにより圧縮する方法等が例示される。これらの方法では、フュームドシリカの圧縮は、ボールとボールとの間での圧縮、あるいは、ボールとミル容器との間での圧縮となる。このような硬い材質による接触面積の小さい圧縮が行われると、メカノケミカル反応により、分散性の低い凝集粒子(たとえば、粒径が20μm以上の粒子)が生成することがある。その結果、フュームドシリカのタップ密度が高く分割配合回数は少なくなっているにもかかわらず、ゴム組成物中にフュームドシリカの分散不良に起因する凝集粒子が発生することがある。
【0021】
本発明者は、このような低分散性は、圧縮により、フュームドシリカの表面にゴム成分とフュームドシリカとの濡れ性を向上させ又架橋を担うシランカップリング剤が入り込み難いサイズの細孔が形成され、シランカップリング剤がフュームドシリカの凝集体に浸透する速度が遅くなり、結果として十分均一にカップリング剤が反応できないことに起因すると推測した。
【0022】
そこで、本実施形態に係るゴム組成物用フュームドシリカは、窒素吸着による吸着等温線に対しBJH法を適用して得られる細孔ピーク半径が22nm以上、細孔容積が1.6mL/g以上である。フュームドシリカの表面の細孔が上記のように制御されたゴム組成物用フュームドシリカは、タップ密度が高くても、シランカップリング剤と十分に反応することができ、凝集粒子の発生を抑制することができる。
【0023】
細孔ピーク半径は30nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましい。一方、細孔ピーク半径の上限は特に制限されないが、たとえば、85nmである。
【0024】
細孔容積は2mL/g以上であることが好ましく、4mL/gであることがより好ましい。一方、細孔容積の上限は特に制限されないが、たとえば、6mL/gである。
【0025】
なお、上記の細孔ピーク半径および細孔容積は、窒素吸着による吸着等温線に対しBJH法を適用して得られる物性値である。窒素吸着による吸着等温線は、150℃で1Pa以下の圧力に脱気したサンプルに液体窒素温度下において窒素を吸着させた条件での測定解析により得られたものを用いることができる。
【0026】
また、本実施形態では、ゴム組成物用フュームドシリカのBET比表面積は180m2/g以上であることが好ましく、200m2/g以上であることがより好ましく、250m2/g以上であることがさらに好ましい。ゴム組成物用フュームドシリカのBET比表面積が上記範囲内であることにより、ゴム組成物用フュームドシリカにおいてジエン系ゴムまたはシランカップリング剤との反応点となるシラノール基の数を十分に確保できる。
【0027】
ゴム組成物用フュームドシリカのBET比表面積の上限は特に制限されないが、たとえば、500m2/gである。ゴム組成物用フュームドシリカのBET比表面積が小さすぎると、フュームドシリカ製造時の火炎温度をより高くする必要があり、フュームドシリカ特有の構造が失われ、安定的にフュームドシリカを製造することができない傾向にある。ゴム組成物用フュームドシリカのBET比表面積が大きすぎると、安定的に製造することができない傾向にある。なお、上記のBET比表面積は、窒素吸着BET法により測定した比表面積である。
【0028】
また、フュームドシリカはシロキサン結合を有するが、フュームドシリカの表面には、シロキサン基に加えて、ヒドロキシ基がケイ素原子に結合しているシラノール基が存在する。フュームドシリカの表面におけるシラノール基の密度(表面シラノール基密度)は、製造方法の違いに起因して、湿式シリカよりも低い。本実施形態では、ゴム組成物用フュームドシリカの表面シラノール基密度は3個/nm2以下である。表面シラノール基密度が上記の範囲内であることにより、カップリング剤との反応サイトであるシラノール基量は維持しながら、水分がシリカ表面に吸着することによるゴムとの濡れ性の低下を防げることにより更なる微分散性が期待できる。又、圧縮工程において吸着水分が多い粉体の凝集性がより高まるがこの圧縮工程でのシリカ凝集を防ぐことが期待できる。
【0029】
表面シラノール基密度は、たとえば、カールフィッシャー法、イグロス法、グリニアール試薬による活性水素滴定法等により測定すればよい。
【0030】
また、シラノール基は水を吸着しやすい。そこで、シラノール基と他の物質とを反応させることにより、水との反応性を低下させる表面処理が行われることがある。表面処理されたフュームドシリカは表面処理フュームドシリカと呼ばれ、表面処理されていないフュームドシリカは未処理フュームドシリカと呼ばれる。
【0031】
本実施形態では、表面処理フュームドシリカと未処理フュームドシリカとは、下記に示す修飾疎水度(M値)により区別する。修飾疎水度(M値)は、表面処理フュームドシリカは水には浮遊するが、メタノールには完全に懸濁することを利用した測定方法により得られる値である。M値を測定する方法は、国際公開第2004/099075号の実施例に記載の方法を採用できる。M値を用いて、表面処理フュームドシリカと未処理フュームドシリカを表すと、表面処理フュームドシリカはM値が1以上、未処理フュームドシリカは1未満となる。
【0032】
本実施形態では、シランカップリング剤は分子構造が嵩高くシリカ表面に十分な量が反応可能であるという観点から、ゴム組成物用フュームドシリカは、カップリング剤の自己縮合を誘発する水分は少ないながら、反応サイトであるシラノール基が十分確保されている未処理のゴム組成物用フュームドシリカであることが好ましい。
【0033】
(2.フュームドシリカの圧縮方法)
本実施形態に係るゴム組成物用フュームドシリカは、タップ密度が200g/L以上である。しかしながら、フュームドシリカは、その製造方法に起因して、嵩高くタップ密度は低くなる。そのため、タップ密度が200g/L以上であるゴム組成物用フュームドシリカは、一般的に、フュームドシリカを圧縮することにより得られる。
【0034】
上述したように、フュームドシリカを圧縮する方法としては、ボールミルにより圧縮する方法、振動ミルにより圧縮する方法等が例示される。しかしながら、通常の圧縮方法では、圧縮により、フュームドシリカの表面の細孔が小さくなりすぎ、小さな細孔ではシランカップリング剤がシリカ凝集粒子中へ浸透拡散する速度が遅くなってしまうと考えられる。
【0035】
そこで、圧縮後の細孔ピーク半径および細孔容積が上述した範囲を満足するように、圧縮前に、フュームドシリカの表面を部分的にコーティングしてもよい。コーティングは、たとえば、界面活性剤、ワックス等を用いることができる。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤であることが好ましい。非イオン性界面活性剤としては、ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド等の脂肪酸系界面活性剤、アルキルジアミンEO付加物のN,N’,N’-トリス(2-ヒドロキシエチル)-N-アルキル(C14~C18))1,3-ジアミノプロパン等のアルキルアミンエーテル系界面活性剤が例示される。また、ワックスとしては、炭化水素系ワックスが好ましく、たとえば、パラフィンワックスが例示される。パラフィンワックスとしては、融点が60~80℃程度の一般的なパラフィンワックス、タイヤの老化防止剤として通常使用されるパラフィンワックス等が好ましい。コーティング方法としては、たとえば、フュームドシリカを混合撹拌したミキサー中へ溶融したワックスを1流体もしくは2流体ノズルで噴霧する方法、フュームドシリカと微粉状のワックス粒子とを混合後、ワックスの融点以上で加熱しワックスを溶融してシリカ表面に拡散させる方法等が例示される。
【0036】
また、フュームドシリカの圧縮方法として、一軸対向圧縮プレス機、ボールミルまたは振動ミルを用いる場合には、以下に示す圧縮処理条件を採用することが好ましい。
【0037】
(2.1.ボールミルを用いる場合)
ボール径が小さいと曲率が小さい為、ボールによる圧縮力が点荷重となる傾向が強く、ボール径が大きいと面荷重となる傾向が大きくなる。従ってボールミルにおけるボール径は、好ましくは直径27~60mmであり、より好ましくは直径32~45mmである。ボール径が小さすぎると、粉砕圧縮時の荷重の集中による衝撃力が強すぎて、フュームドシリカの表面の細孔構造が変化し、上述した範囲を満足できない傾向にある。ボール径が大きすぎると、同一容量でのボールの充填個数が少なくなる為衝突頻度が低いため粉砕時間が長くなり、製造コストが増大するおそれがある。
【0038】
ボールミルの回転数は、好ましくは50~600rpmであり、より好ましくは200~400rpmである。回転数が低すぎると、ボールが落下せずポット壁面を転がるだけになるため粉砕時の衝撃力不足によりフュームドシリカのタップ密度が高くならないおそれがある。また、回転数が低すぎる場合には、フュームドシリカのタップ密度を200g/L以上にするために粉砕時間を長くする必要性があり、生産性が低下し製造コストが増大するおそれがある。回転数が高すぎると、粉砕効率が低下するおそれがある。
【0039】
ボールミルにおけるボール充填率は、好ましくは10~80%であり、より好ましくは20~50%である。ボール充填率が低すぎると、粉砕効率不足によりフュームドシリカのタップ密度が高くならないおそれがある。また、ボール充填率が低すぎる場合には、フュームドシリカのタップ密度を200g/L以上にするために粉砕時間を長くする必要があり、生産性が低下し製造コストが増大するおそれがある。ボール充填率が高すぎると、材料の充填量が減少し粉砕効率が低下するおそれがある。
【0040】
(2.2.振動ミルを用いる場合)
振動ミルにおけるボール径もしくはロッド径は、好ましくは直径27mm以上であり、より好ましくは直径32~60mmである。ボール径やロッド径が小さすぎると、粉砕時の衝撃が強すぎて、フュームドシリカの表面の細孔構造が変化し、上述した範囲を満足できない傾向にある。ボール径が大きすぎると、ボール間の空隙が大きく衝突頻度が低いため粉砕時間が長くなり、製造コストが増大するおそれがある。
【0041】
振動ミルにおける振動数は、好ましくは600~2000CPMであり、より好ましくは800~1500CPMである。振動数が低すぎると、粉砕時の衝撃力不足によりフュームドシリカのタップ密度が高くならないおそれがある。また、振動数が低すぎる場合には、フュームドシリカのタップ密度を200g/L以上にするために粉砕時間を長くする必要性があり、生産性が低下し製造コストが増大するおそれがある。振動数が高すぎると、衝撃力が大きくなり、安定的な粉砕ができないおそれがある。
【0042】
振動ミルにおけるボール充填率は、好ましくは30~90%であり、より好ましくは30~50%である。ボール充填率が低すぎると、粉砕効率不足によりフュームドシリカのタップ密度が高くならないおそれがある。また、ボール充填率が低すぎる場合には、フュームドシリカのタップ密度を200g/L以上にするために粉砕時間を長くする必要があり、生産性が低下し製造コストが増大するおそれがある。ボール充填率が高すぎると、粉砕効率が低下するおそれがある。
【0043】
(2.3.一軸対向圧縮プレス機を用いる場合)
一軸対向圧縮プレス機は対向する加圧ロール間に粉体を脱気スクリューなどで押し込み、ロール間の一軸圧縮力で粉体を圧縮する装置である。ロール間のクリアランスを十分小さく保てる場合、粉体には均等な一軸圧縮力が連続的に付加される。一方ボールミル圧縮などでは圧縮力が一点荷重に成り易く、又何度も同一の凝集粉体に対して繰り返し圧縮が繰り返される可能性がある。したがって、一軸対向圧縮プレス機を用いることにより、振動ミルやボールミルなどの装置に比べ、圧縮粉の見掛け密度の分布が少なくなる。又、メカノケミカルな効果によるシラノール基の増加を防ぐこともできる。粉体の圧縮度の調整する場合、脱気スクリューによる粉体の供給量、ロール間に付加される圧力、ロール回転数を調整することにより嵩密度を調整することができる。一般にロール回転数を遅く、ロール間圧力を高く且つロール回転数を遅くすると高嵩密度品が得られやすい。低嵩密度品が必要な場合は逆の条件を選択すればよい。
【0044】
(3.ゴム組成物)
本実施形態では、ゴム組成物は、上記のゴム組成物用フュームドシリカと、ジエン系ゴムと、シランカップリング剤と、を含む。当該ゴム組成物は、さらにジオールを含むことが好ましい。また、当該ゴム組成物はタイヤ用ゴム組成物であることが好ましい。
【0045】
(3.1.ジエン系ゴム)
ゴム組成物に含まれるジエン系ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、クロロプレンゴムから選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。ジエン系ゴムを構成する上記の各ゴムの含有量は用途等に応じて適宜決定すればよい。これらの中でも、天然ゴムおよびスチレンブタジエンゴムから選ばれる少なくとも1つが好ましい。
【0046】
天然ゴムとしては、天然ゴム(NR)やエポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(HPNR)などの改質天然ゴムが挙げられる。これらの天然ゴムは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。本実施形態では、天然ゴムとして、NRが好ましい。
【0047】
スチレンブタジエンゴム(SBR)としては、未変性の溶液重合SBR(S-SBR)、未変性の乳化重合SBR(E-SBR)、およびこれらの変性SBR(変性S-SBR、変性E-SBR)などが挙げられる。
【0048】
(3.2.シランカップリング剤)
疎水性のジエン系ゴムと親水性のシラノール基を有する上記のゴム組成物用フュームドシリカとは親和性が低く、混練時に混ざりにくい。そこで、シランカップリング剤を配合することにより、シランカップリング剤を介してジエン系ゴムとゴム組成物用フュームドシリカとの架橋構造が形成されやすくなり、ゴム組成物用フュームドシリカがジエン系ゴム中に均一に分散しやすい。その結果、ゴム組成物において、ゴム成分中に分散しなかった粗大なフュームドシリカの存在を抑制できる。
【0049】
シランカップリング剤としては、ゴム組成物に通常用いられるものであれば特に制限されない。本実施形態では、硫黄含有シランカップリング剤が好ましい。硫黄含有シランカップリング剤としては、スルフィド系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、チオエステル系シランカップリング剤等が好ましい。スルフィド系シランカップリング剤としては、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド等が例示される。メルカプト系シランカップリング剤としては、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプト-チオカルボキシレートオリゴマー等が例示される。チオエステル系シランカップリング剤としては、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等が例示される。
【0050】
(3.3.ジオール)
ジオールは、2価アルコールであり、ヒドロキシ基を2つ有する炭化水素である。ジオールを配合することにより、タイヤ用ゴム組成物のムーニー粘度が低下するにもかかわらず、タイヤ用ゴム材料のA硬度が増すので、フュームドシリカの配合量を減らすことができる。その結果、タイヤ用ゴム材料の低燃費性および耐摩耗性が向上する。さらに、ジオールを、上記のシランカップリング剤と共に配合することにより、耐熱老化性が良好なタイヤ用ゴム材料が得られる。なお、1価アルコールおよび3価以上のアルコールでは、上記の効果は得られない傾向にある。
【0051】
本実施形態では、好ましいジオールの例としては、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、重合度200~1000前後のポリエチレングリコール等があげられ、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、重合度300~500のポリエチレングリコールがより好ましい。
【0052】
(3.4.各成分の配合量)
本実施形態に係るゴム組成物用フュームドシリカの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、10質量部以上70質量部以下であることが好ましい。ゴム組成物用フュームドシリカの配合量が上記の範囲内であることにより、ゴム組成物用フュームドシリカが十分に分散されたゴム組成物を得ることができる。ゴム組成物用フュームドシリカの配合量が多すぎると、フュームドシリカがゴム成分中に十分に分散されず、良好な混練物が得られない傾向にある。
【0053】
ゴム組成物用フュームドシリカの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、20質量部以上であることがより好ましく、32質量部以上であることがさらに好ましい。一方、ゴム組成物用フュームドシリカの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、60質量部以下であることがより好ましく、50質量部以下であることがさらに好ましい。
【0054】
フュームドシリカ表面のゴムへの濡れ性を高めフュームドシリカの分散性を高める観点から、シランカップリング剤の配合量(タイヤ用ゴム組成物におけるシランカップリング剤の含有量)は、フュームドシリカの1g当たりのBET比表面積に対して、0.50μmol/m2以上3.9μmol/m2以下であることが好ましい。
【0055】
シランカップリング剤の配合量が上記の範囲内であることにより、ジエン系ゴムとゴム組成物用フュームドシリカとが十分分散され、ゴム組成物用フュームドシリカがゴム成分中に十分に分散されたゴム組成物を得ることができる。シランカップリング剤の配合量が多すぎると、カップリング剤が可塑剤的に働きゴム組成物の粘度が低くなりすぎるため、フュームドシリカがゴム成分中に十分に分散されず、良好な混練物が得られない傾向にある。又、加硫後のゴムの硬度も低下傾向になる為、同一硬度を得るのに必要なフィラー添加量が多くなる傾向にあり、燃費性能が悪化する傾向になる。
【0056】
シランカップリング剤の配合量は、フュームドシリカの比表面積に対し、0.7μmol/m2以上であることがより好ましい。
【0057】
ジオールの配合量は、混錬ゴムの粘度を低下させるため、シランカップリング剤と同様に、フュームドシリカの比表面積に応じて決定すればよい。ジオールの配合量(ゴム組成物におけるジオールの含有量)は、フュームドシリカの1g当たりのBET比表面積に対して、3μmol/m2以上14μmol/m2以下である。
【0058】
当該配合量は、3.4μmol/m2以上であることが好ましく、6.8μmol/m2以上であることがより好ましい。一方、当該配合量は、11μmol/m2以下であることが好ましい。
【0059】
(3.5.その他の成分)
本実施形態では、ゴム組成物は、上述した成分(ジエン系ゴム、ゴム組成物用フュームドシリカおよびシランカップリング剤)以外に、ゴム組成物に配合される成分を含んでもよい。このような成分としては、たとえば、滑剤が例示される。滑剤を配合することにより、各成分の混練性が向上し、各成分が良好に分散したゴム組成物が得られやすい。
【0060】
滑剤としては、ステアリン酸、プロセスオイルが例示される。滑剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。プロセスオイルとしては、鉱物油合成油などからなるアロマオイル、パラフィンオイル、ナフテンオイル等が例示される。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
滑剤の配合量(ゴム組成物における滑剤の含有量)は限定されない。たとえば、滑剤の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、2質量部以上60質量部以下であることが好ましい。さらに、滑剤の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、4質量部以上であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましい。
【0062】
滑剤の配合量が少なすぎると、粘度が高くなり混練性が悪く、ゴム組成物用フュームドシリカがジエン系ゴム中に十分に分散できないおそれがある。滑剤の配合量が多すぎると、混錬時、せん断が掛からず、ゴム組成物用フュームドシリカがジエン系ゴム中に十分に分散できないおそれがある。
【0063】
さらに、ゴム組成物は、ゴム組成物用フュームドシリカ以外の補強性充填剤を含んでもよい。補強性充填剤としては、たとえば、カーボンブラック、湿式シリカ、クレー、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等が例示される。補強性充填剤を配合する場合には、フィラーカップリング剤も適量配合できる。補強性充填剤の配合量は本願発明の効果が得られる範囲内において限定されず、一般的な配合量とすればよい。
【0064】
さらに、ゴム組成物は、酸化亜鉛、老化防止剤、可塑剤、加工助剤、液状ポリマー、熱硬化性樹脂などの各種添加剤を含んでもよい。これらの添加剤の配合量は本願発明の効果が得られる範囲内において限定されず、一般的な配合量とすればよい。
【0065】
(4.ゴム組成物の製造方法)
上記のゴム組成物は、上述したジエン系ゴムと、上述したゴム組成物用フュームドシリカと、上述したシランカップリング剤と、必要に応じて、その他の成分と、を混練して得られる。
【0066】
本実施形態では、所定の成分を混練してマスターバッチを作製し、マスターバッチに残りの成分を配合して混練することにより、ゴム組成物を製造してもよいし、全ての成分を混練することにより、ゴム組成物を製造してもよい。
【0067】
マスターバッチを作製する場合、上述したジエン系ゴムと、上述したゴム組成物用フュームドシリカと、上述したシランカップリング剤と、必要に応じて、その他の成分と、を混練して、マスターバッチを作製することが好ましい。
【0068】
マスターバッチの作製後、マスターバッチに他の成分を配合して混練することにより、ゴム組成物が得られる。本実施形態では、タップ密度が200g/L以上のゴム組成物用フュームドシリカを配合するので、たとえば、バンバリーミキサーを用いて混練しても、ゴム成分中にフュームドシリカが十分に分散したゴム組成物を得ることができる。
【0069】
混練条件は、各成分が十分に混練される条件に設定すればよい。
【0070】
上記のゴム組成物は、タイヤ用ゴム組成物として好適である。本実施形態に係るゴム組成物をタイヤ用ゴム組成物として用いることにより、低燃費性、耐摩耗性および耐熱老化性に優れたタイヤ用ゴム材料が得られる。タイヤ用ゴム材料は、タイヤ用ゴム組成物が加硫処理されてなる材料である。
【0071】
このようなタイヤ用ゴム材料は、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ等に好適に使用できる。タイヤの各部材に好適に使用できる。なかでも、トレッド、ベーストレッド、サイドウォール、クリンチ等に好適に用いることができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の態様で改変しても良い。
【実施例0073】
以下、実施例において、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
(実験1)
(タイヤ用ゴム組成物の調製)
実験1では、ジエン系ゴムはSBR系ゴムとした。SBR系ゴム100質量部に対する配合量が表1に示す配合量となるように、下記成分(A)~(D)および(E-1)~(E-4)を容積が0.6Lのバンバリーミキサータイプのプラストミル東洋精機社製BB600型に投入した。投入後、ローター回転数が20~100rpmの範囲内で、混練物の温度が140~150℃の範囲内となるよう回転数を調節し温度到達後5分間混練した。エアシリンダー圧は0.5MPaであった。混練終了後、室温まで冷却して、混練物を取り出しマスターバッチを得た。
【0075】
プラストミルには、混錬後のフィルファクターが70%になるようにジエン系ゴムおよびその他の添加剤の配合量を計算して各成分を投入し、混練を行った。なお、充填剤の投入回数は2回とした。
(A)ジエン系ゴム
(A―1)SBR(旭化成社製S-SBR E-581)
(A-2)BR(ENEOS社製 BR01)
(B)充填剤
(B-1)カーボンブラック(東海カーボン製、シースト6、窒素吸着BET比表面積:120m2/g,タップ密度:400g/L)
(B-2)湿式シリカ(東ソーシリカ製、NipsilAQ、窒素吸着BET比表面積:200m2/g,タップ密度:300g/L、シラノール基密度6個/nm2、ピクノメーター法真密度:2.1g/cm3)
(B-3)親水性フュームドシリカ(トクヤマ製、レオロシールQS-40、窒素吸着BET比表面積:380m2/g、タップ密度50g/L、シラノール基密度2.3個/nm2、ピクノメーター法真密度:2.2g/cm3)
(B-4)親水性フュームドシリカ(トクヤマ製、レオロシールQS-30C、窒素吸着BET比表面積:300m2/g,タップ密度:100g/L、シラノール基密度2.1個/nm2、ピクノメーター法真密度:2.2g/cm3)
(BM-1)~(BM-3)ボールミルにより圧縮したフュームドシリカ
(BC-1)~(BC-4)一軸対向圧縮プレス機により圧縮したフュームドシリカ
(C)シランカップリング剤
(C-1)ポリスルフィド系カップリング剤(EVONIK社製 Si69)
(D)ジオール
(D-1)1,3-プロパンジオール
(E)その他の成分
(E-1)滑剤(ステアリン酸、日油製、ビーズステアリン酸YR)
(E-2)滑剤(酸化亜鉛、正同化学製、酸化亜鉛2種)
(E-3)老化防止剤(精工化学製、オゾノン 6C)
(E-4)プロセスオイル(富士興産製、アロマックス3(TDAE Oil))
【0076】
[ボールミル圧縮フュームドシリカの調製]
ボールミルにより圧縮したフュームドシリカは、以下のようにして作成した。すなわち、(B-4)のフュームドシリカ約200gを、アルミナ製の7Lボールミル(ボール径φ32mmであるアルミナボールの充填率が30%)に投入し、室温下、回転数300rpmの条件で約3時間粉砕を行いタップ密度200g/Lの圧縮フュームドシリカ(BM-1)を得た。ボールミル時間をそれぞれ5時間及び8時間に延ばすことでタップ密度250g/Lの圧縮フュームドシリカ(BM-2)と、タップ密度320g/Lの圧縮フュームドシリカ(BM-3)とをそれぞれ得た。
【0077】
[一軸対向圧縮フュームドシリカの調製]
一軸対向圧縮プレス機により圧縮したフュームドシリカは、以下のようにして作成した。すなわち、(B-4)のフュームドシリカを、一軸対向圧縮プレス機としてのフロイントターボ社製WP-230×80型コンパクターにより圧縮した。ローラークリアランスを0.5mm、ローラー回転数を10rpm及びロールに加える圧縮圧を0.3T/cmに固定し、ローラーに粉体を送り込むスクリューフィーダーの減圧度を-10kPa~-45kPaに変化させることで粉体のタップ密度が異なる圧縮フュームドシリカを得た。得られた圧縮フュームドシリカのタップ密度は、それぞれ、200g/L(BC-1)、250g/L(BC-2)、320g/L(BC-3)、385g/L(BC-4)であった。
【0078】
充填剤のタップ密度は以下のようにして測定した。まず、1Lの樹脂製メスシリンダーを電子天秤の上に置き、風袋引きをし、充填剤を約1L充填し、重量M1(g)を記録する。その後、約10cmの高さから30回、手動でタッピングした後、容積V1(ml)を測定し、下記式からタップ密度ρ1を算出した。結果を表1に示す。
タップ密度ρ1=1000×M1/V1(g/L)
【0079】
また、充填剤のタンプ法による見かけ密度は以下のようにして測定した。各充填剤は目開き500μmの篩を通し105℃2時間で乾燥後、デシケーターで冷却した物を用いた。タンプ容積計の測定用シリンダーに充填剤を200±10mL充填し、充填剤の重量M2(g)を記録する。その後、測定用シリンダーをタンプ容積計のカムにより1250回転させた後、容積V2(mL)を測定し、下記式からタンプ法による見かけ密度ρ2を算出した。その他条件はJIS5101-12-2に準拠して測定した。結果を表1に示す。
タンプ法による見かけ密度ρ2=1000×M2/V2(g/L)
【0080】
充填剤の窒素吸着BET比表面積は、各充填剤について、マイクロトラック社製BELSOP MINI Xを用いて、窒素吸着BET法により測定した。結果を表1に示す。
【0081】
また、フュームドシリカ((B-3)、(B-4)、(BM-1)~(BM-3)、(BC-1)~(BC-4))の表面シラノール基の密度は、京都電子工業社製MKC-610電量滴定装置に、ADP-512水分気化装置を付属したもので測定した。すなわち、水分気化装置の低温側炉で130℃まで昇温しシリカ乾燥減量に相当する水分量をMKC-610型を用いて電量滴定法で測定した。その後、1000℃に加熱した高温側炉で強熱減量相当の水分量を同様に電量滴定で測定した。130℃から1000℃で発生した強熱減量相当水分量を以下の式を用いてシラノール基密度に換算した。結果を表1に示す。
シラノール基密度(個/nm2)=668.9 × H2O(%)/比表面積(m2/g)
【0082】
フュームドシリカ((B-3)、(B-4)、(BM-1)~(BM-3)、(BC-1)~(BC-4))の細孔ピーク半径および細孔容積は、以下のようにして測定した。マイクロトラック社製BELSOP MINI Xを用いて、150℃で1Pa以下の圧力に脱気したサンプルに液体窒素温度下において窒素を吸着させることにより吸着等温線を得た。得られた吸着等温線に対して、BELSOP MINI Xに付属する解析ソフトにより、BJH理論に基づき、細孔ピーク半径および細孔容積を算出した。結果を表1に示す。
【0083】
【0084】
得られた上記マスターバッチと、下記に示す(E-5)、(E-6)および(E-7)と、を6インチロール試験機により添加・混合して、タイヤ用ゴム組成物を得た。なお、硫黄の配合量は、他の添加成分が有する硫黄量を考慮して表2に示す量に設定した。
(E-5)硫黄(鶴見化学工業製、5%オイル金華印油入微粉硫黄)
(E-6)加硫促進剤(三新化学工業製、サンセラーCM-G N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS))
(E-7)加硫促進剤(三新化学工業製、サンセラー D-G 1,3-ジフェニルグアニジン(DPG))
【0085】
【0086】
得られたタイヤ用ゴム組成物について下記に示す評価を行うための試験片を作製した。得られた試験片を使用して、以下の物性を評価した。
【0087】
(加工性:ムーニー粘度)
得られたタイヤ用ゴム組成物の試験片について、ムーニー粘度計(上島製作所製VR-1132)を用いて、JIS K6300-1に準拠して、100℃におけるムーニー粘度(ML1+4 100℃)を測定した。ムーニー粘度が低いと、タイヤ用ゴム組成物の加工性が良好となる傾向にある。結果を表2に示す。
【0088】
(タイヤ用ゴム材料試験片の調製)
続いて、得られたタイヤ用ゴム組成物を160℃でT90+1分でプレス加硫して、タイヤ用ゴム材料を得た。得られたタイヤ用ゴム材料から下記に示す評価を行うための試験片を作製した。得られた試験片を使用して、以下の物性を評価した。
【0089】
(A硬度)
得られたタイヤ用ゴム材料の試験片について、JIS K6253 タイプAに準拠して、デュロメータにより硬度(ショアA硬度)を測定した。タイヤ用ゴム材料の目標A硬度が65であるので、試験片のA硬度も65前後であることが好ましい。なお、比較例3~5では、充填剤のタップ密度が低いため、1回当たりの配合量(配合体積)が多くミキサー内で充填剤が他の成分に練り込まれず、ミキサーから流出した。したがって、比較例3~5では、充填剤は、配合予定量よりも少ない量しか配合できなかった。その結果、得られたゴム材料のA硬度が非常に低くなり、タイヤ用ゴム材料として不適となった。結果を表2に示す。
【0090】
(低燃費性能:60℃におけるtanδ)
得られたタイヤ用ゴム材料の試験片について、JIS K6394に準拠して、動的粘弾性試験機(上島製作所製VR-7130)を用いて下記条件にて測定した。60℃における測定値からtanδ(60℃)を算出した。
測定温度: 60℃
静的歪 : 10%
動的歪 : ±2%
周波数 : 10Hz
【0091】
算出された標準例1(比較例1)のtanδ(60℃)を1.0として下記計算式により転がり抵抗指数を算出した。指数が大きいほど転がり抵抗性に優れる。結果を表2に示す。
(転がり抵抗指数)=(標準例1のtanδ(60℃))/(実施例のtanδ(60℃))
【0092】
(耐摩耗性能:FPS摩耗量)
得られたタイヤ用ゴム材料の試験片について、FPS摩耗試験機(上島製作所製AB-2012)を用いて、温度35℃、荷重40N、スリップ率10%、試験時間2分間の条件でFPS摩耗量を測定した。FPS摩耗量から容積損失を計算し、標準例1(比較例1)の損失量を1.0として下記計算式により摩耗指数を算出した。指数が大きいほど耐摩耗性能が優れる。結果を表2に示す。
(摩耗指数)=(標準例1の損失量)/(実施例の損失量)
【0093】
(耐熱老化性)
得られたタイヤ用ゴム組成物を厚さ2mmのモールドを用いて160℃でT90+1分間加硫し、得られた加硫ゴムシートをJIS3号ダンベルで打ち抜きサンプルとした。サンプルを温度80℃に設定したギヤーオーブンで5日間(120時間)熱老化させた後、未老化のサンプルと共にJIS K6251に従い引張試験機で破断時の強度(破断強度)を測定した。未老化の破断強度と老化後の破断強度との比をとり、耐熱老化性の指標とした。下記計算式により耐熱指数を算出した。耐熱指数が1以上の場合耐熱老化性に優れ、耐熱指数が1未満のとき、熱劣化により破断強度が落ちるため耐熱老化性が劣る。結果を表2に示す。
(耐熱指数)={(熱老化後の破断強度)/(未老化サンプルの破断強度)}
【0094】
また、熱老化試験前のサンプルについて標準例1(比較例1)の破断強度を1.00として、下記計算式により強度指数を算出した。強度指数が大きいほど強度に優れる。結果を表2に示す。
(強度指数)=(実施例の破断強度)/(標準例1の破断強度)
【0095】
表2より、ジエン系ゴムがSBR系ゴムである場合、充填剤として、上述した物性を有するゴム組成物用フュームドシリカを用いることにより、ゴム組成物用フュームドシリカの分割配合回数を少なくしつつ、良好な特性を有するタイヤ用ゴム材料が得られることが確認できた。一方、タップ密度の低い充填剤の配合回数を少なくした場合、充填剤を配合予定量よりも少ない量しか配合できず、所望の硬度を有するゴム材料が得られないことが確認できた。
【0096】
(実験2)
実験2では、ジエン系ゴムは天然ゴムとした。天然ゴム100質量部に対する配合量が表3に示す配合量となるように、下記に示す(A-3)、および、上記の(B)~(D)、(E-1)~(E-4)を容積が0.6Lのバンバリーミキサータイプのプラストミル東洋精機社製BB600型に投入した。投入後、実験1と同じ条件でマスターバッチを作製した。なお、(A-3)以外の充填剤(B)、シランカップリング剤(C)、ジオール(D)およびその他の成分(E-1)~(E-4)は、実験1で用いた成分と同一である。したがって、実験2で用いた充填剤の物性は表1に示す通りである。
(A)ジエン系ゴム
(A-3)ベトナム製天然ゴム:SVR
【0097】
得られた上記マスターバッチと、上記の(E-5)および下記に示す(E-8)と、を6インチロール試験機により添加・混合して、タイヤ用ゴム組成物を得た。なお、硫黄の配合量は、他の添加成分が有する硫黄量を考慮して表3に示す量に設定した。また、その他の成分(E-5)は、実験1で用いた成分と同一である。
(E)その他の成分
(E-8)加硫促進剤(三新化学工業製、サンセラー NS-G N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS))
【0098】
得られたタイヤ用ゴム組成物について、実験1と同じ方法により試験片を作製し、実験1と同じ方法および条件により物性を評価した。結果を表3に示す。さらに、得られたタイヤ用ゴム組成物を実験1と同じ条件で加硫し、タイヤ用ゴム材料を得た。得られたタイヤ用ゴム材料を実験1と同じ方法により試験片を作製し、実験1と同じ方法および条件により物性を評価した。結果を表3に示す。
【0099】
【0100】
表3より、ジエン系ゴムが天然ゴムである場合であっても、充填剤として、上述した物性を有するゴム組成物用フュームドシリカを用いることにより、ゴム組成物用フュームドシリカの分割配合回数を少なくしつつ、良好な特性を有するタイヤ用ゴム材料が得られることが確認できた。一方、タップ密度の低い充填剤の配合回数を少なくした場合、充填剤を配合予定量よりも少ない量しか配合できず、所望の硬度を有するゴム材料が得られないことが確認できた。
本発明に係るフュームドシリカは、嵩高いフュームドシリカを発塵しない形態に圧縮することで得られる。したがって、本発明に係るフュームドシリカを用いることにより、上記のタイヤ用ゴム組成物への添加に加えて、タイヤ以外のシリコーンゴム、靴用クリアーラバーや塗料への添加に際しても、発塵防止や媒体中への素早い噛み込みによるプロセス時間の短縮効果が期待できる。