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特開2024-180310超音波測定治具および超音波振動の測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180310
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】超音波測定治具および超音波振動の測定方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241219BHJP
   B23K 26/53 20140101ALN20241219BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
B23K26/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024088975
(22)【出願日】2024-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2023099343
(32)【優先日】2023-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 昇
(72)【発明者】
【氏名】柳谷 幸平
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄大
【テーマコード(参考)】
4E168
5F057
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168CB02
4E168DA43
4E168HA01
4E168JA12
4E168JA13
5F057AA19
5F057BA01
5F057BB01
5F057BB03
5F057BB06
5F057BB09
5F057BB12
5F057CA02
5F057DA22
5F057DA26
5F057DA31
5F057GB01
5F057GB35
(57)【要約】
【課題】インゴットからのウエーハの剥離性を向上させるための超音波付与機構の異常を正確かつ容易に検知することができる超音波測定治具および超音波振動の測定方法を提供すること。
【解決手段】超音波測定治具1は、超音波振動を測定する超音波測定治具1であって、板状部材10と、一方の面21に凹部22が形成されるとともに一方の面21が板状部材10の一方の面11に対面して貼り合わされた柱状部材20と、板状部材10の一方の面11に貼着されるとともに凹部22に収容される圧電素子30と、圧電素子30が検出した振動データを外部に出力する出力部40と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動を測定する超音波測定治具であって、
板状部材と、
一方の面に凹部が形成されるとともに該一方の面が該板状部材の一方の面に対面して貼り合わされた柱状部材と、
該板状部材の該一方の面に貼着されるとともに該凹部に収容される圧電素子と、
該圧電素子が検出した振動データを外部に出力する出力部と、
を備える
ことを特徴とする、超音波測定治具。
【請求項2】
該板状部材の該一方の面に貼着されるとともに該凹部に収容される第二の圧電素子と、
該第二の圧電素子と有線接続するとともに該出力部に電力を供給する電池と、
該第二の圧電素子の振動を電力に変換して該電池に供給する発電充電回路部と、
を更に備える
ことを特徴とする、請求項1に記載の超音波測定治具。
【請求項3】
該圧電素子と有線接続するとともに該出力部に電力を供給する電池と、
該圧電素子の振動を電力に変換して該電池に供給する発電充電回路部と、
を更に備える
ことを特徴とする、請求項1に記載の超音波測定治具。
【請求項4】
超音波振動の測定方法であって、
請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波測定治具を準備する治具準備ステップと、
該板状部材の他方の面に超音波付与ユニットを対面させ、該超音波付与ユニットと該板状部材の他方の面との間に液体を供給しながら該超音波付与ユニットを作動させることで、該超音波測定治具に対して超音波を付与する超音波付与ステップと、
該超音波付与ステップの実施中に該圧電素子が検出した振動データに基づいて、該板状部材が受ける振動を測定する測定ステップと、
を含む
ことを特徴とする、超音波振動の測定方法。
【請求項5】
レーザービームの照射により内部に改質部と該改質部から伸展するクラックとを含む剥離層が形成された被加工物を準備する被加工物準備ステップと、
該超音波付与ユニットを用いて該被加工物に対して超音波を付与することで、該被加工物が該剥離層を起点として正常に分離できるか否かを確認する確認ステップと、
該確認ステップで該被加工物が正常に分離できることを確認した後、該超音波付与ユニットを用いて該超音波測定治具に対して超音波を付与しながら、該圧電素子が検出した振動データに基づいて、該板状部材が受ける振動を測定する基準データ取得ステップと、
を該超音波付与ステップおよび該測定ステップより前に予め実施し、
該基準データ取得ステップにより取得された結果と、該測定ステップにより取得された結果と、を比較することで、該超音波付与ユニットが正常に動作しているか否かを判定する判定ステップと、
を更に含む
ことを特徴とする、請求項4に記載の超音波振動の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波測定治具および超音波振動の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスが形成される半導体ウエーハ等のウエーハは、一般に円柱形状のインゴットをワイヤソーで薄く切断して表裏面を研磨することで生成されるが、ワイヤソーでの切り出しは、インゴットの大部分が捨てられるため、不経済であるという問題があった。
【0003】
これを解決するために、インゴットに対してレーザービームを照射して剥離層を形成し、剥離層を起点としてウエーハを剥離した後、剥離面を研削して平坦化する、という工程を繰り返すことでインゴットからウエーハを生成する装置が提案されている(特許文献1参照)。また、剥離層を起点としてウエーハを剥離する際に超音波を付与することで剥離性を向上させる技術が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-012765号公報
【特許文献2】特開2019-102513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の装置や方法において、レーザー照射機構や超音波付与機構等の不具合により、ウエーハがうまく剥離できない場合がある。このうち、超音波付与機構については、市販の音圧計を用いて音圧を測定することで異常検知する方法があるが、実際に被加工物が受けている振動と音圧計が検出できる振動とが異なるために、正確な測定が困難であるという課題がある。したがって、不具合の特定に時間がかかるだけでなく、異常検知のために実際の被加工物を余分に準備する必要がありコストが増大するという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、インゴットからのウエーハの剥離性を向上させるための超音波付与機構の異常を正確かつ容易に検知することができる超音波測定治具および超音波振動の測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の超音波測定治具は、超音波振動を測定する超音波測定治具であって、板状部材と、一方の面に凹部が形成されるとともに該一方の面が該板状部材の一方の面に対面して貼り合わされた柱状部材と、該板状部材の該一方の面に貼着されるとともに該凹部に収容される圧電素子と、該圧電素子が検出した振動データを外部に出力する出力部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の超音波測定治具は、該板状部材の該一方の面に貼着されるとともに該凹部に収容される第二の圧電素子と、該第二の圧電素子と有線接続するとともに該出力部に電力を供給する電池と、該第二の圧電素子の振動を電力に変換して該電池に供給する発電充電回路部と、を更に備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の超音波測定治具は、該圧電素子と有線接続するとともに該出力部に電力を供給する電池と、該圧電素子の振動を電力に変換して該電池に供給する発電充電回路部と、を更に備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の超音波振動の測定方法は、超音波測定治具を準備する治具準備ステップと、該板状部材の他方の面に超音波付与ユニットを対面させ、該超音波付与ユニットと該板状部材の他方の面との間に液体を供給しながら該超音波付与ユニットを作動させることで、該超音波測定治具に対して超音波を付与する超音波付与ステップと、該超音波付与ステップの実施中に該圧電素子が検出した振動データに基づいて、該板状部材が受ける振動を測定する測定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の超音波振動の測定方法は、レーザービームの照射により内部に改質部と該改質部から伸展するクラックとを含む剥離層が形成された被加工物を準備する被加工物準備ステップと、該超音波付与ユニットを用いて該被加工物に対して超音波を付与することで、該被加工物が該剥離層を起点として正常に分離できるか否かを確認する確認ステップと、該確認ステップで該被加工物が正常に分離できることを確認した後、該超音波付与ユニットを用いて該超音波測定治具に対して超音波を付与しながら、該圧電素子が検出した振動データに基づいて、該板状部材が受ける振動を測定する基準データ取得ステップと、を該超音波付与ステップおよび該測定ステップより前に予め実施し、該基準データ取得ステップにより取得された結果と、該測定ステップにより取得された結果と、を比較することで、該超音波付与ユニットが正常に動作しているか否かを判定する判定ステップと、を更に含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、インゴットからのウエーハの剥離性を向上させるための超音波付与機構の異常を正確かつ容易に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る超音波測定治具の分解斜視図である。
図2図2は、図1に示す超音波測定治具を模式的に示す断面図である。
図3図3は、図1に示す超音波測定治具の電気回路構成図である。
図4図4は、実施形態に係る超音波測定方法の流れを示すフローチャートである。
図5図5は、図4に示す被加工物準備ステップの一状態を示す斜視図である。
図6図6は、図5に示す被加工物の側面図である。
図7図7は、図5および図6の後の一状態を一部断面で示す側面図である。
図8図8は、図7の後の一状態を示す斜視図である。
図9図9は、図4に示す確認ステップの一状態を示す側面図である。
図10図10は、図9の後の一状態を示す側面図である。
図11図11は、図10の後の一状態を示す側面図である。
図12図12は、図4に示す基準データ取得ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
図13図13は、図12における板状部材の挙動を模式的に示す断面図である。
図14図14は、第1変形例に係る超音波測定治具を模式的に示す断面図である。
図15図15は、第2変形例に係る超音波測定治具を模式的に示す断面図である。
図16図16は、第2変形例に係る超音波測定治具の電気回路構成図である。
図17図17は、第3変形例に係る超音波測定治具を模式的に示す断面図である。
図18図18は、第3変形例に係る超音波測定治具の電気回路構成図である。
図19図19は、第3変形例に係る圧電素子が検出した振動データの一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0015】
〔実施形態〕
<超音波測定治具1>
本発明の実施形態に係る超音波測定治具1の構成について図面に基づいて説明する。図1は、実施形態に係る超音波測定治具1の分解斜視図である。図2は、図1に示す超音波測定治具1を模式的に示す断面図である。図3は、図1に示す超音波測定治具1の電気回路構成図である。
【0016】
超音波測定治具1は、超音波振動を測定する治具である。より詳しくは、超音波測定治具1は、後述の図5から図11までに示すインゴット110からウエーハ130を剥離させる際、剥離性を向上させるために超音波が付与されるインゴット110およびウエーハ130が再現された治具である。図1から図3までに示すように、超音波測定治具1は、板状部材10と、柱状部材20と、圧電素子30と、出力部40と、平均化回路部50と、電池70と、を有する。
【0017】
板状部材10は、全体として厚みが均一な板状に形成される部材であり、後述の図9から図11までに示すウエーハ130に見立てられる疑似ウエーハである。実施形態の板状部材10は、外径が4inchであり、厚みが600μmである円板状であるが、本発明の板状部材10は、寸法および平面視形状が特に限定されず、例えば、平面視形状が正方形状、長方形状、多角形状等の板状であってもよい。また、実施形態の板状部材10は、サファイア(Al)からなる。本発明の板状部材10は、サファイアに限定されず、例えば、SUS303やSUS304でもよく、本発明を実施可能であれば上記以外の材質でも構わない。
【0018】
柱状部材20は、全体として高さが均一な柱状に形成される部材であり、後述の図5から図11までに示すインゴット110に見立てられる疑似インゴットである。実施形態の柱状部材20は、外径が4inchであり、厚みが200mmであるが、本発明の柱状部材20は、寸法および平面視形状が特に限定されず、例えば、平面視形状が正方形状、長方形状、多角形状等の柱状であってもよい。なお、板状部材10と柱状部材20とは、実施形態では同径かつ平面形状が同形状であるが、本発明では同径や同形状に限定されない。また、実施形態の柱状部材20は、ガラスからなる。ガラスは、例えば、アルカリガラス、無アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、等を含む。本発明の板状部材10は、ガラスに限定されず、例えば、PEEKやPP等でもよく、本発明を実施可能であれば上記以外の材質でも構わない。
【0019】
柱状部材20の一方の面11の中央部には、凹部22が形成される。凹部22は、少なくとも圧電素子30の厚みより深く形成される。凹部22の底面23には、出力部40、平均化回路部50、A/D変換部60、および電池70が配置される。
【0020】
板状部材10の一方の面11と、柱状部材20の一方の面21とは、対面して貼り合わされる。板状部材10と柱状部材20とが貼り合わされた状態においては、板状部材10の一方の面11の反対側の面である他方の面12と、柱状部材20の一方の面21の反対側の面である他方の面24とが、それぞれ露出し、凹部22が閉じた空間をなす。
【0021】
圧電素子30は、印加された圧力を電圧に変換する受動素子であり、圧電体と、圧電体を挟む2枚の電極と、を含んで構成される。圧電素子30は、板状部材10の一方の面11の中央部に貼着される。圧電素子30は、板状部材10の一方の面11と柱状部材20の一方の面21とが貼り合わされた状態において、柱状部材20の凹部22に収容される。実施形態の圧電素子30は、外径が30mmであり、厚みが250μmである。
【0022】
圧電素子30は、実施形態においては、印加された超音波振動を検出して電圧に変換する。より詳しくは、圧電素子30は、圧力が印加されることにより板状部材10および圧電素子30が厚み方向に湾曲すると、圧電素子30の一方の面が収縮し、他方の面が伸長して、圧力に比例した分極が現れる圧電効果の現象を利用して、圧力を電圧に変換する。超音波振動が付加されると、圧電素子30の一方の面および他方の面の伸縮が周期的に反転を繰り返すため、交流信号が発生する。このように、圧電素子30は、検出した振動データを、電圧値に変換する。
【0023】
出力部40は、圧電素子30が検出した振動データを外部に出力する。外部とは、超音波測定治具1と別個の外部装置であり、実施形態においては、コンピュータ80である。出力部40は、実施形態において、圧電素子30が検出した振動データを、無線通信により外部に送信する送信ユニットを含む。送信ユニットは、実施形態において、Bluetooth(登録商標)モジュールが想定されるが、無線LAN(Local Area Network)等の他の近距離無線通信や、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、5G(5th Generation:第5世代移動通信システム)等の無線通信網等を用いた通信モジュールにより実現されてもよい。
【0024】
平均化回路部50は、圧電素子30において発生した交流信号の振動データを平均化する。平均化回路部50は、絶対値回路51と、平滑化回路52と、を含む。絶対値回路51では、圧電素子30において発生した交流信号の電圧値が、絶対値に変換される。絶対値回路51では、例えば、図3に示すように、正弦波が入力されると、入力電圧の負電圧文を正電圧に変換する全波整流された波形の脈流信号が出力される。平滑化回路52では、絶対値回路51において絶対値に変換された脈流信号の電圧値が、平滑化された直流信号に変換される。このように、実施形態では、圧電素子30において発生した交流信号の振動データは、平均化回路部50により平均化され直流信号に変換された後、出力部40に出力される。すなわち、出力部40には、圧電素子30において発生した交流電圧の振幅の大きさを示す情報が出力される。
【0025】
実施形態の出力部40は、更に、A/D変換部60を含む。A/D変換部60は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。出力部40は、圧電素子30が検出し、平均化回路部50において平均化された振動データを、A/D変換部60においてデジタル信号に変換して、送信ユニットにより無線通信により外部に送信する。電池70は、送信ユニットに電力を供給する。送信ユニットから送信された振動データは、外部装置であるコンピュータ80が受信する。
【0026】
コンピュータ80は、CPU(Central Processing Unit)等のマイクロプロセッサを含む演算手段としての演算処理装置と、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)等のメモリを有する記憶手段としての記憶装置と、通信手段としての入出力インターフェース装置と、を含む周知のコンピュータである。
【0027】
<超音波測定方法>
図4は、実施形態に係る超音波測定方法の流れを示すフローチャートである。実施形態の超音波測定方法は、被加工物準備ステップ101と、確認ステップ102と、治具準備ステップ103と、基準データ取得ステップ104と、超音波付与ステップ105と、測定ステップ106と、判定ステップ107と、を含む。被加工物準備ステップ101、確認ステップ102、治具準備ステップ103、および基準データ取得ステップ104は、被加工物(インゴット110)からウエーハ130を次々に生成する前に、予め実施する準備ステップである。超音波付与ステップ105、測定ステップ106、および判定ステップ107は、被加工物の加工中に適宜繰り返して実行される点検ステップである。
【0028】
(被加工物準備ステップ101)
図5は、図4に示す被加工物準備ステップ101の一状態を示す斜視図である。図6は、図5に示す被加工物の側面図である。図7は、図5および図6の後の一状態を一部断面で示す側面図である。図8は、図7の後の一状態を示す斜視図である。被加工物準備ステップ101は、被加工物からウエーハ130を剥離するための起点となる剥離層123が形成された被加工物を準備するステップである。
【0029】
被加工物は、全体として柱状に形成され、サファイア、シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、ヒ化ガリウム(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、タンタル酸リチウム(LiTaO)等を母材とする単結晶の半導体インゴット等のインゴット110である。インゴット110は、実施形態において、円柱状である。インゴット110は、第一の面111と、第二の面112と、周面113と、第一オリエンテーションフラット114と、第二オリエンテーションフラット115と、を有している。
【0030】
第一の面111は、実施形態において円形状であって、円柱状に形成されるインゴット110の一方の端面である。第二の面112は、実施形態において円形状であって、円柱状に形成されるインゴット110の第一の面111とは反対側の端面である。第二の面112は、インゴット110の底面に相当する。周面113は、第一の面111の外縁と第二の面112の外縁とに連なる面である。
【0031】
第一オリエンテーションフラット114は、インゴット110の結晶方位を示すために周面113の一部に形成される平面である。第二オリエンテーションフラット115は、インゴット110の結晶方位を示すために周面113の一部に形成される平面である。第二オリエンテーションフラット115は、第一オリエンテーションフラット114に直交する。なお、第一オリエンテーションフラット114の長さは、第二オリエンテーションフラット115の長さより長い。
【0032】
また、インゴット110は、第一の面111の垂線116に対して第二オリエンテーションフラット115に向かう傾斜方向117にオフ角120傾斜したc軸118と、c軸118に直交するc面119と、を有している。c軸118の垂線116からの傾斜方向117は、第二オリエンテーションフラット115の伸長方向に直交し、かつ第一オリエンテーションフラット114と平行である。c面119は、インゴット110の第一の面111に対してオフ角120傾斜している。
【0033】
c面119は、インゴット110中にインゴット110の分子レベルで無数に設定される。インゴット110は、実施形態では、オフ角120を1°、4°または6°に設定されているが、本発明では、例えば1°~6°の範囲で自由に設定されて製造されてもよい。インゴット110は、第一の面111が研削装置により研削加工された後、研磨装置により研磨加工されて、第一の面111が鏡面に形成される。
【0034】
被加工物準備ステップ101では、レーザービーム222の照射により、上記のインゴット110の内部に、改質部121と改質部121から伸展するクラック122とを含む剥離層123を形成する。実施形態の被加工物準備ステップ101において、レーザービーム222の照射は、図7に示すレーザー加工装置200によって実施される。
【0035】
レーザー加工装置200は、保持テーブル210と、レーザービーム照射ユニット220と、保持テーブル210とレーザービーム照射ユニット220とを相対的に移動させる不図示の移動ユニットと、を備える。保持テーブル210は、インゴット110を保持面211で保持する。保持面211は、ポーラスセラミック等から形成された円板形状であり、例えば、真空吸引経路を介して真空吸引源と接続している。保持テーブル210は、保持面211上に載置されたインゴット110の第二の面112側を吸引保持する。
【0036】
レーザービーム照射ユニット220は、例えば、レーザービーム222を出射する発振器と、レーザービーム222を保持テーブル210に保持されたインゴット110に向けて集光する集光器221と、発振器から集光器221までレーザービーム222を導く各種の光学部品と、を有する。なお、以下の説明において、水平面における一方向であるX軸方向が加工送り方向であり、水平面においてX軸方向に直交する方向であるY軸方向が割り出し送り方向である。
【0037】
被加工物準備ステップ101では、インゴット110の第二の面112側を保持テーブル210の保持面211に吸引保持する。この際、インゴット110の第二オリエンテーションフラット115と加工送り方向(X軸方向)とが平行になるように調整する。次に、レーザービーム222の集光点223をインゴット110内部の生成すべきウエーハ130(図9から図11まで参照)の厚みに相当する深さに位置づける。レーザービーム222は、インゴット110に対して透過性を有する波長のパルス状のレーザービームである。
【0038】
被加工物準備ステップ101では、次に、インゴット110内部において第一の面111側から生成すべきウエーハ130(図7等参照)の厚みに相当する深さに集光点223を位置づけた状態で、レーザービーム照射ユニット220の集光器221と保持テーブル210とを相対的に移動させる。すなわち、集光点223とインゴット110とを第一の面111と平行な方向(XY方向)に相対的に移動させながら、レーザービーム222をインゴット110に向けて照射する。
【0039】
パルス状のレーザービーム222が照射されることにより、インゴット110の内部に加工送り方向に沿う改質部121が形成される。ここで、改質部121とは、レーザービーム222が照射されることによって、密度、屈折率、機械的強度またはその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味する。改質部121は、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、およびこれらの領域が混在した領域等である。改質部121は、インゴット110の他の部分よりも機械的な強度等が低い。
【0040】
インゴット110の内部では、改質部121からc面119に沿って延びるクラック122が生成される。すなわち、実施形態では、クラック122は、割り出し送り方向(Y軸方向)に伸展する。このようにして、被加工物準備ステップ101では、改質部121と、改質部121からc面119に沿って形成されるクラック122とを含む剥離層123が形成された被加工物(インゴット110)が準備される。
【0041】
(確認ステップ102)
図9は、図4に示す確認ステップ102の一状態を示す側面図である。図10は、図9の後の一状態を示す側面図である。図11は、図10の後の一状態を示す側面図である。確認ステップ102は、超音波付与ユニット320を用いて被加工物(インゴット110)に対して超音波を付与することで、被加工物が剥離層123を起点として正常に分離できるか否かを確認するステップである。
【0042】
実施形態の確認ステップ102において、超音波の付与は、図9に示す超音波付与装置300によって実施される。また、実施形態の確認ステップ102において、剥離層123起点とした分離は、図10および図11に示す剥離装置400によって実施される。
【0043】
図9に示す超音波付与装置300は、保持テーブル310と、超音波付与ユニット320と、保持テーブル310と超音波付与ユニット320とを相対的に移動させる不図示の移動ユニットと、液体供給ユニット330と、を備える。保持テーブル310は、インゴット110を保持面311で保持する。保持面311は、ポーラスセラミック等から形成された円板形状であり、例えば、真空吸引経路を介して真空吸引源と接続している。保持テーブル310は、保持面311上に載置されたインゴット110の第二の面112側を吸引保持する。なお、保持テーブル310は、レーザー加工装置200の保持テーブル210と兼用のものであってもよい。
【0044】
超音波付与ユニット320は、例えば、交流電力が印加されることにより伸縮して、保持テーブル310の保持面311に対向する一方の端面321に垂直な方向に超音波振動を発生させる超音波振動子と、超音波振動子に交流電力を印加する電源と、液体供給ユニット330と、を有する。端面321は、水平方向と平行な平面であり、超音波振動子の超音波振動に伴って、保持テーブル310の保持面311に垂直な方向に振動する。
【0045】
図10および図11に示す剥離装置400は、インゴット保持ユニット410と、ウエーハ保持ユニット420と、インゴット保持ユニット410とウエーハ保持ユニット420とを相対的に移動させる不図示の移動ユニットと、を備える。インゴット保持ユニット410は、保持面411上に載置されたインゴット110の第二の面112側を吸引保持する。
【0046】
ウエーハ保持ユニット420は、インゴット110の第一の面111側、すなわち生成すべきウエーハ130を吸引保持する保持面421を有し、保持面421に当接しているインゴット110の第一の面111側を吸引保持可能である。保持面411、421は、ポーラスセラミック等から形成された円板形状であり、例えば、真空吸引経路を介して真空吸引源と接続している。なお、インゴット保持ユニット410は、超音波付与装置300の保持テーブル310と兼用のものであってもよい。
【0047】
図9に示すように、確認ステップ102では、まず、剥離層123が形成されたインゴット110の第二の面112を、保持テーブル310の保持面311で保持する。次に、超音波付与ユニット320の端面321を、保持テーブル310に保持されたインゴット110の第一の面111と所定の間隔をあけて対向させる。所定の間隔は、例えば、0.5~1.0mm程度である。
【0048】
確認ステップ102では、次に、液体供給ユニット330からインゴット110の第一の面111と超音波付与ユニット320の端面321との間に液体331を供給する。液体331は、例えば、純水である。次に、超音波付与ユニット320の端面321を液体331内に浸漬させながら、超音波付与ユニット320の超音波振動子に所定時間交流電力を印加して端面321を超音波振動させる。
【0049】
これにより、端面321の超音波振動が、液体331を介してインゴット110の第一の面111に付与されると、クラック122が伸展する。確認ステップ102では、超音波付与ユニット320とインゴット110の第一の面111とを相対的に移動させ、インゴット110の第一の面111の全面に超音波を付与して、剥離層123全体のクラック122を伸展させる。
【0050】
図10に示すように、確認ステップ102では、次に、インゴット110の第二の面112を、インゴット保持ユニット410の保持面411で保持する。次に、ウエーハ保持ユニット420をインゴット保持ユニット410側に近接させ、インゴット110の第一の面111を保持面421で吸引保持する。
【0051】
この状態で、図11に示すように、次に、ウエーハ保持ユニット420をインゴット保持ユニット410から離隔させる。これにより、上下に引っ張られたインゴット110が剥離層123を起点として分離し、インゴット110の第一の面111側の剥離した一部がウエーハ130として生成される。
【0052】
なお、ウエーハ130は、確認ステップ102において超音波を付与した段階で剥離層123を界面としてインゴット110から完全に分離している場合と、完全に分離していない場合とがある。後者の場合、ウエーハ130は、インゴット保持ユニット410に保持されたインゴット110に対してウエーハ保持ユニット420で上方に引っ張られることによって外力が付与され、剥離層123を起点としてインゴット110から剥離して分離する。
【0053】
確認ステップ102において、剥離装置400によってウエーハ130が剥離できない場合、または、ウエーハ130に割れや欠けが生じる等、正常に分離できない場合、加工条件または各種装置を変更して、被加工物準備ステップ101からやり直す。なお、正常に分離できたか否かの確認は、オペレータによる目視でもよいし、不図示の撮像手段によって撮像された撮像画像を周知の画像処理することにより自動的に行ってもよい。
【0054】
(治具準備ステップ103)
治具準備ステップ103は、超音波測定治具1を準備するステップである。なお、治具準備ステップ103は、基準データ取得ステップ104より前であれば、いずれのタイミングであっても構わない。
【0055】
(基準データ取得ステップ104)
図12は、図4に示す基準データ取得ステップ104の一状態を一部断面で示す側面図である。図13は、図12における板状部材10の挙動を模式的に示す断面図である。基準データ取得ステップ104は、確認ステップ102で被加工物(インゴット110)が正常に分離できることを確認した後、後述の超音波付与ステップ105、測定ステップ106、および判定ステップ107より前に予めに実施される。
【0056】
基準データ取得ステップ104は、確認ステップ102で用いた超音波付与ユニット320を用いて超音波測定治具1に対して超音波を付与しながら、圧電素子30が検出した振動データに基づいて、板状部材10が受ける振動を測定するステップである。言い換えると、確認ステップ102で被加工物(インゴット110)に対して実施した超音波付与と同一の条件下において、疑似インゴットおよび疑似ウエーハである超音波測定治具1に対して超音波を付与する。
【0057】
図12に示すように、基準データ取得ステップ104では、まず、超音波測定治具1の柱状部材20側の面(他方の面24)を、保持テーブル310の保持面311で保持する。次に、超音波付与ユニット320の端面321を、保持テーブル310に保持された超音波測定治具1の板状部材10側の面(他方の面12)と所定の間隔をあけて対向させる。所定の間隔は、確認ステップ102においてインゴット110に超音波を付与した際のインゴット110の第一の面111と超音波付与ユニット320の端面321との距離と同間隔である。
【0058】
基準データ取得ステップ104では、次に、液体供給ユニット330から板状部材10の他方の面12と超音波付与ユニット320の端面321との間に液体331を供給する。次に、超音波付与ユニット320の端面321を液体331内に浸漬させながら、超音波付与ユニット320の超音波振動子に所定時間交流電力を印加して端面321を超音波振動させる。
【0059】
これにより、端面321の超音波振動が、液体331を介して超音波測定治具1の板状部材10側の面(他方の面12)に付与されると、図13に示すように、板状部材10と、板状部材10の一方の面11に貼着された圧電素子30とが、厚み方向にたわみ振動する。
【0060】
圧電素子30が厚み方向に湾曲することで、厚み方向に湾曲させる圧力に対応する電圧が発生するため、たわみ振動に対応して圧力に対応する電圧値を振幅とする交流信号が発生する。すなわち、圧電素子30は、超音波振動の振動データを電圧として検出することで、板状部材10が受ける振動を測定することができる。振動データは、平均化回路部50で平均化されて直流信号に変換された後、出力部40からコンピュータ80に出力される。コンピュータ80は、測定された振動データを、基準データとして記憶する。
【0061】
以上のように、被加工物準備ステップ101、確認ステップ102、治具準備ステップ103、および基準データ取得ステップ104により、正常に動作している状態の装置においてインゴット110からウエーハ130を剥離する際の、超音波付与時の超音波振動の振動データを、基準データとして取得する。以降の、超音波付与ステップ105、測定ステップ106、および判定ステップ107は、実際の製造ラインでインゴット110からウエーハ130を次々に生成している合間に、超音波付与ユニット320が正常か否かを点検するために実施される。
【0062】
(超音波付与ステップ105および測定ステップ106)
超音波付与ステップ105は、超音波測定治具1(図12参照)の板状部材10の他方の面12に超音波付与ユニット320(図12参照)を対面させ、超音波付与ユニット320と板状部材10の他方の面12との間に液体331を供給しながら超音波付与ユニット320を作動させることで、超音波測定治具1に対して超音波を付与するステップである。また、測定ステップ106は、超音波付与ステップ105の実施中に、圧電素子30が検出した振動データに基づいて、板状部材10が受ける振動を測定するステップである。
【0063】
超音波付与ステップ105および測定ステップ106は、基準データ取得ステップ104において基準データを取得したのと同様の手順で実施される。例えば、超音波付与ユニット320が正常に動作しており、基準データ取得ステップ104と同条件で超音波測定治具1に対して超音波が付与された場合、基準データ取得ステップ104で取得された基準データと同様の振動データが取得される。また、例えば、超音波付与ユニット320に不具合があり、基準データ取得ステップ104と同条件で超音波測定治具1に対して超音波が付与できなかった場合、基準データ取得ステップ104で取得された基準データと異なる振動データが取得される。
【0064】
(判定ステップ107)
判定ステップ107は、基準データ取得ステップ104により取得された結果と、測定ステップ106により取得された結果と、を比較することで、超音波付与ユニット320が正常に動作しているか否かを判定する。判定ステップ107では、例えば、基準データ取得ステップ104により取得された結果に基づいて設定された所定の閾値を、測定ステップ106により取得された結果が超えた場合、超音波付与ユニット320に不具合があると判定してもよい。
【0065】
判定ステップ107は、実施形態において、コンピュータ80により実行される。コンピュータ80は、判定結果を、不図示の表示装置等に出力する。コンピュータ80は、超音波付与ユニット320に不具合があると判定した場合、不図示の報知装置により、所定の報知情報を発報してもよい。
【0066】
以上説明したように、実施形態の超音波測定治具1は、圧電素子30を貼着した板状部材10を疑似ウエーハとし、板状部材10を被加工物(インゴット110)に見立てた柱状部材20に貼り付けて形成されている。このため、実施形態の超音波振動の測定方法では、被加工物に剥離層123を形成するための超音波付与と同条件で、超音波付与ユニット320により超音波を付与された際の振動データを取得することができ、振動データに基づいて、疑似ウエーハである板状部材10が受ける振動を測定することができる。したがって、超音波付与ユニット320の異常を正確かつ容易に検知することができる。
【0067】
また、被加工物(インゴット110)からウエーハ130の剥離が正常に行われた際と同条件での振動データを基準データとして予め取得しておき、その後、超音波付与ユニット320を繰り返し動作させた後の点検時に取得した振動データと基準データとを比較することで、定量的に超音波付与ユニット320が正常に動作しているか否かを判定することができる。
【0068】
更に、実施形態の超音波測定治具1は、振動データを、無線通信によりコンピュータ80に出力するため、煩雑な配線が不要となり、加工装置内を搬送することができるとともに、周囲の構造物との干渉を配慮する必要がないため、熟練者でなくとも作業が安全に実施できる。
【0069】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0070】
〔第1変形例〕
<超音波測定治具2>
本発明の第1変形例に係る超音波測定治具2の構成について図面に基づいて説明する。図14は、第1変形例に係る超音波測定治具2を模式的に示す断面図である。図14に示す第1変形例の超音波測定治具2について、実施形態の超音波測定治具1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0071】
第1変形例の超音波測定治具2は、実施形態の超音波測定治具1と比較して、柱状部材20-1および出力部40-1の構成が異なる。また、超音波測定治具2は、平均化回路部50および電池70を内蔵せず、有線接続によって圧電素子30からオシロスコープ90に直接接続する。
【0072】
第1変形例の柱状部材20-1は、柱部25と、間座部26と、を含む。間座部26は、柱部25の外径と同径の外径を有する筒形状のスペーサである。言い換えると、実施形態の柱状部材20は、中央部に凹部22を含む柱形状に一体で形成されるが、第1変形例の柱状部材20-1は、柱部25と、凹部22の外周を囲繞する環形状の間座部26とが、別体で形成されて、互いに固定される。板状部材10と柱部25と間座部26とに囲まれた空間には、板状部材10の一方の面11に貼着された圧電素子30が収容される。
【0073】
第1変形例の出力部40-1は、超音波測定治具2の外部のオシロスコープ90と圧電素子30とを有線接続する2本の配線コードである。2本の配線は、圧電素子30を構成する2枚の電極それぞれと、オシロスコープ90とを接続する。振動データの平均化は、オシロスコープ90において実行される。
【0074】
〔第2変形例〕
<超音波測定治具3>
本発明の第2変形例に係る超音波測定治具3の構成について図面に基づいて説明する。図15は、第2変形例に係る超音波測定治具3を模式的に示す断面図である。図16は、第2変形例に係る超音波測定治具3の電気回路構成図である。図15および図16に示す第2変形例の超音波測定治具3について、実施形態の超音波測定治具1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0075】
第2変形例の超音波測定治具3は、実施形態の超音波測定治具1と比較して、1種の圧電素子30の代わりに、2種の圧電素子、すなわち測定用圧電素子31および発電用圧電素子32と、ケーブル71と、発電充電回路部72と、を有する。
【0076】
測定用圧電素子31は、実施形態の圧電素子30と同様の構成および機能を有する。発電用圧電素子32は、実施形態の圧電素子30と同様に、印加された圧力を電圧に変換する受動素子であり、圧電体と、圧電体を挟む2枚の電極と、を含んで構成される。発電用圧電素子32は、板状部材10の一方の面11において、測定用圧電素子31の外周部に貼着される。発電用圧電素子32は、板状部材10の一方の面11と柱状部材20の一方の面21とが貼り合わされた状態において、柱状部材20の凹部22に収容される。第2変形例の発電用圧電素子32は、例えば、外径が10mm、厚みが250μmであって、測定用圧電素子31の外周部に均等に12個設けられる。発電用圧電素子32は、外径が50mmかつ内径が40mmの環状であって、測定用圧電素子31と同心であるように設けられてもよい。
【0077】
発電用圧電素子32は、ケーブル71を介して電池70と電気的に有線接続する。ケーブル71は、2枚の電極のそれぞれに接続する2本の配線を含む。発電用圧電素子32は、検出した振動データを、電圧値に変換して、発電充電回路部72に出力する。発電充電回路部72は、発電用圧電素子32において発生した振動により発電し、直流電力を蓄積する。発電充電回路部72は、例えば、ブリッジ接続された4つのダイオードにより、振動により発生した交流電圧を整流し、直流電力に変換するものであってもよい。発電充電回路部72は、例えば、コンデンサを有し、コンデンサに直流電力を蓄えるものであってもよい。発電充電回路部72は、出力部40および絶対値回路51に電力を供給する電池70に、電力を供給する。発電充電回路部72は、出力部40および絶対値回路51に電力を直接供給してもよい。
【0078】
このように、第2変形例の超音波測定治具3では、測定用圧電素子31とは別に、発電用圧電素子32を設け、振動を測定するのと同時に振動により発電するようにしている。これにより、電力を確保できるため、電池70の交換または充電の頻度を低減することができる。
【0079】
〔第3変形例〕
<超音波測定治具4>
本発明の第3変形例に係る超音波測定治具4の構成について図面に基づいて説明する。図17は、第3変形例に係る超音波測定治具4を模式的に示す断面図である。図18は、第3変形例に係る超音波測定治具4の電気回路構成図である。図19は、第3変形例に係る圧電素子33が検出した振動データの一例を示すグラフである。図17および図18に示す第3変形例の超音波測定治具4について、実施形態の超音波測定治具1または第2変形例の超音波測定治具3と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0080】
第3変形例の超音波測定治具4は、実施形態の超音波測定治具1と比較して、圧電素子30の代わりに、圧電素子33と、ケーブル73と、発電充電回路部72と、を有する。
【0081】
圧電素子33は、実施形態の圧電素子30と同様の構成を有するとともに、第2変形例の測定用圧電素子31および発電用圧電素子32の機能を併せ持つ。圧電素子33は、ケーブル73を介して電池70と電気的に有線接続する。ケーブル73は、2枚の電極のそれぞれに接続する2本の配線を含む。圧電素子33は、検出した振動データを、電圧値に変換して、平均化回路部50および発電充電回路部72に出力する。
【0082】
発電充電回路部72は、スイッチを含んで構成されてもよい。この場合、図19に示すように、所定時間は平均化回路部50に振動データを出力して測定に割り当て、それ以外の所定時間は発電充電回路部72に振動データを出力して発電および充電に割り当ててもよい。あるいは、同時に出力して、測定と発電および充電とを同時に実施してもよい。
【0083】
このように、第3変形例の超音波測定治具4では、圧電素子33を、超音波の測定と発電および充電との両方に用いる。これにより、振動を測定するとともに、電力を確保できるため、電池70の交換または充電の頻度を低減することができる。また、共用にするため、圧電素子33を別途設ける必要がない。
【0084】
〔その他の変形例〕
例えば、実施形態、第2変形例および第3変形例の一体成形された柱状部材20に有線配線を通す孔を形成し、オシロスコープ90に有線接続する構成であってもよい。また、第1変形例の柱状部材20-1の間座部26の厚みを大きくして、出力部40、平均化回路部50および電池70を内蔵し、コンピュータ80に無線接続する構成であってもよい。また、出力部40によって外部に振動データを送信する際、連続的に送信する代わりに、例えば1秒周期等、所定の時間間隔で間欠的に送信することで、電力消費を抑制してもよい。
【符号の説明】
【0085】
1、2、3、4 超音波測定治具
10 板状部材
11 一方の面
12 他方の面
20、20-1 柱状部材
21 一方の面
22 凹部
23 底面
24 他方の面
30、33 圧電素子
31 測定用圧電素子(圧電素子)
32 発電用圧電素子(第二の圧電素子)
40、40-1 出力部
50 平均化回路部
60 A/D変換部
70 電池
72 発電充電回路部
80 コンピュータ
110 インゴット(被加工物)
121 改質部
122 クラック
123 剥離層
130 ウエーハ
222 レーザービーム
320 超音波付与ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19