(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180327
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】基板支持装置及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241219BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20241219BHJP
C23C 16/458 20060101ALI20241219BHJP
F16H 1/10 20060101ALI20241219BHJP
F16H 1/14 20060101ALI20241219BHJP
F16H 48/08 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/31 C
C23C16/458
F16H1/10
F16H1/14
F16H48/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024094328
(22)【出願日】2024-06-11
(31)【優先権主張番号】63/472,839
(32)【優先日】2023-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲ヤナギ▼澤 一平
(72)【発明者】
【氏名】▲ハマ▼口 高志
【テーマコード(参考)】
3J009
3J027
4K030
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
3J009EA06
3J009EA14
3J009EA16
3J009EA44
3J027HB06
3J027HC29
4K030GA06
5F045AA08
5F045AA15
5F045BB02
5F045DP03
5F045DP28
5F045EF05
5F045EF11
5F045EK07
5F045EM02
5F045EM10
5F131AA02
5F131BA04
5F131CA06
5F131EA03
5F131EA05
5F131EA14
5F131EA19
5F131EA23
5F131EA24
5F131EB78
5F131EB81
(57)【要約】
【課題】基板に成膜される薄膜の膜特性を安定して均一化することができる基板支持装置及び基板処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る基板支持装置は、基板が載置されるサセプタと、サセプタに接続され、上下方向に延びるサセプタの中心軸回りにサセプタを回転させる移動機構と、を備え、移動機構は、さらに、中心軸と垂直な仮想の水平面が広がる方向にサセプタを移動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置されるサセプタと、
前記サセプタに接続され、上下方向に延びる前記サセプタの中心軸回りに前記サセプタを回転させる移動機構と、を備え、
前記移動機構は、さらに、前記中心軸と垂直な仮想の水平面が広がる方向に前記サセプタを移動させる、
基板支持装置。
【請求項2】
前記サセプタは、前記水平面が広がる方向の移動範囲の任意の位置で停止可能である、
請求項1に記載の基板支持装置。
【請求項3】
前記移動機構は、
内周に複数の歯が並んで配置される外歯車と、
外周に複数の歯が並んで配置され、前記外歯車と噛み合った状態で回転し、前記サセプタに接続される内歯車と、を有し、
前記内歯車の歯数は、前記外歯車の歯数よりも少ない、
請求項1に記載の基板支持装置。
【請求項4】
前記サセプタ上の任意の点は、前記仮想の水平面の面内でトロコイド曲線状の移動軌跡を描く、
請求項3に記載の基板支持装置。
【請求項5】
請求項1に記載の基板支持装置と、
前記サセプタを収容するチャンバーと、を備える、
基板処理装置。
【請求項6】
請求項3に記載の基板支持装置と、
前記サセプタを収容するチャンバーと、
前記サセプタを上下方向に移動させる昇降機構と、
前記昇降機構を駆動する駆動源と、を備える、
基板処理装置。
【請求項7】
前記外歯車及び前記内歯車は、前記チャンバーの外部に配置される、
請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記駆動源は、さらに、前記内歯車を回転駆動する、
請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記内歯車は、前記内歯車の歯車中心軸回りの回転方向が、前記歯車中心軸を中心とする180°以下の角度範囲で正転と逆転とを繰り返す、
請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記駆動源の回転駆動力を前記内歯車に伝達するギア機構を備え、
前記ギア機構は、
前記回転駆動力が入力される入力軸と、
前記入力軸に入力された前記回転駆動力が分岐して出力される複数の出力軸と、を有し、
前記サセプタ及び前記移動機構の組は、複数設けられ、
各前記組の前記移動機構の前記内歯車と、各前記出力軸とが、連結される、
請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記内歯車と前記出力軸とを繋ぐ連結部材を備え、
前記出力軸は、上下方向に延びる縦軸部を有し、
前記連結部材は、互いに偏芯して配置される前記内歯車と前記縦軸部とを連結する、
請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記ギア機構は、
前記入力軸に設けられる入力ギアと、
前記入力ギアに噛み合うリングギアと、
前記リングギアに固定されるギアハウジングと、
前記ギアハウジングに支持されるピニオンシャフトと、
前記ピニオンシャフトに回転自在に支持される一対のピニオンギアと、
前記一対のピニオンギアに噛み合う一対のサイドギアと、を有し、
前記出力ギアは、前記リングギアの中心軸と同軸に配置されて一対設けられ、
各前記サイドギアは、各前記出力軸に設けられる、
請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記リングギアの歯数は、前記入力ギアの歯数よりも多い、
請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記ピニオンギアの歯数と前記サイドギアの歯数とが、互いに同じである、
請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記複数の出力軸のうち、所定の前記出力軸の回転を規制するロック機構を備える、
請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記基板にCVD法により薄膜を成膜するCVD装置である、
請求項6に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板支持装置及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置は、基板を処理するために、例えば基板上に薄膜を成膜するために広く利用されている。CVD装置は、膜成分を含む原料ガスの化学反応によって生成した物質を、被処理基板(例えば、シリコンウェハ)の表面に堆積させることによって薄膜を成膜する基板処理装置として知られている。CVD装置としては、プラズマCVD装置が広く利用されている。プラズマCVD装置では、原料ガスをプラズマ状態とし、活性な励起分子、ラジカル、イオンを生成させることによって、化学反応を促進させる。プラズマCVD装置は、チャンバー内に、成膜処理対象のウェハを支持するウェハ支持装置が配置されている。この基板支持装置の上方には、原料ガスをチャンバーの内部に供給するためのシャワーヘッドが配置されている。そして、シャワーヘッドと基板支持装置の間に高周波(RF)の電圧を印加することによってプラズマを発生させる。
【0003】
また、ウェハに成膜したCVD膜を、UV放射線を使用することで硬化させ、ウェハの熱履歴を減少させつつ製造プロセスをスピードアップすることが行われていてもよい。例えば、US8203126B2に記載のUV処理装置では、基板(ウェハ)上に高強度で均一性の高い露光を与えるパターンを発生させるため、硬化プロセス中にUVランプモジュール及び基板のうち少なくとも一方が回転する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
CVD装置での成膜時には、チャンバー内の基板の各位置においてプラズマ密度、ポンピング効率、ガス拡散などの分布にバラつきが生じる。このため、基板に成膜される薄膜の膜特性を均一化することが難しい。そこで、例えばUS8203126B2に記載のUV処理装置のように、基板支持装置を回転させることで、薄膜の膜特性を均一化することが考えられる。
【0005】
しかしながら、プラズマ密度、ポンピング効率、ガス拡散などの分布が正規分布をとる場合、すなわち分布のピークが基板の中心部付近にある場合などにおいては、基板支持装置を基板中心軸回りに回転させても、成膜される薄膜の膜特性を基板径方向において均一化することはできない。
【0006】
本発明は、基板に成膜される薄膜の膜特性を安定して均一化することができる基板支持装置及び基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の概要は、概念の選択を簡略化した形で紹介するように提供される。これらの概念は、以下の開示の例示の実施形態の詳細な説明において更に詳細に説明される。この発明の概要は、請求項に記載の主題の重要な特徴や本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、請求項に記載の主題の範囲を限定するために使用されることも意図していない。
【0008】
〔本発明の態様1〕
基板が載置されるサセプタと、前記サセプタに接続され、上下方向に延びる前記サセプタの中心軸回りに前記サセプタを回転させる移動機構と、を備え、前記移動機構は、さらに、前記中心軸と垂直な仮想の水平面が広がる方向に前記サセプタを移動させる、基板支持装置。
【0009】
〔本発明の態様2〕
前記サセプタは、前記水平面が広がる方向の移動範囲の任意の位置で停止可能である、態様1に記載の基板支持装置。
【0010】
〔本発明の態様3〕
前記移動機構は、内周に複数の歯が並んで配置される外歯車と、外周に複数の歯が並んで配置され、前記外歯車と噛み合った状態で回転し、前記サセプタに接続される内歯車と、を有し、前記内歯車の歯数は、前記外歯車の歯数よりも少ない、態様1または2に記載の基板支持装置。
【0011】
〔本発明の態様4〕
前記サセプタ上の任意の点は、前記水平面の面内でトロコイド曲線状の移動軌跡を描く、態様3に記載の基板支持装置。
【0012】
〔本発明の態様5〕
態様1から4のいずれか1つに記載の基板支持装置と、前記サセプタを収容するチャンバーと、を備える、基板処理装置。
【0013】
〔本発明の態様6〕
態様3または4に記載の基板支持装置と、前記サセプタを収容するチャンバーと、前記サセプタを上下方向に移動させる昇降機構と、前記昇降機構を駆動する駆動源と、を備える、基板処理装置。
【0014】
〔本発明の態様7〕
前記外歯車及び前記内歯車は、前記チャンバーの外部に配置される、態様6に記載の基板処理装置。
【0015】
〔本発明の態様8〕
前記駆動源は、さらに、前記内歯車を回転駆動する、態様6または7に記載の基板処理装置。
【0016】
〔本発明の態様9〕
前記内歯車は、前記内歯車の歯車中心軸回りの回転方向が、前記歯車中心軸を中心とする180°以下の角度範囲で正転と逆転とを繰り返す、態様6から8のいずれか1つに記載の基板処理装置。
【0017】
〔本発明の態様10〕
前記駆動源の回転駆動力を前記内歯車に伝達するギア機構を備え、前記ギア機構は、前記回転駆動力が入力される入力軸と、前記入力軸に入力された前記回転駆動力が分岐して出力される複数の出力軸と、を有し、前記サセプタ及び前記移動機構の組は、複数設けられ、各前記組の前記移動機構の前記内歯車と、各前記出力軸とが、連結される、態様8または9に記載の基板処理装置。
【0018】
〔本発明の態様11〕
前記内歯車と前記出力軸とを繋ぐ連結部材を備え、前記出力軸は、上下方向に延びる縦軸部を有し、前記連結部材は、互いに偏芯して配置される前記内歯車と前記縦軸部とを連結する、態様10に記載の基板処理装置。
【0019】
〔本発明の態様12〕
前記ギア機構は、前記入力軸に設けられる入力ギアと、前記入力ギアに噛み合うリングギアと、前記リングギアに固定されるギアハウジングと、前記ギアハウジングに支持されるピニオンシャフトと、前記ピニオンシャフトに回転自在に支持される一対のピニオンギアと、前記一対のピニオンギアに噛み合う一対のサイドギアと、を有し、前記出力軸は、前記リングギアの中心軸と同軸に配置されて一対設けられ、各前記サイドギアは、各前記出力軸に設けられる、態様10または11に記載の基板処理装置。
【0020】
〔本発明の態様13〕
前記リングギアの歯数は、前記入力ギアの歯数よりも多い、態様12に記載の基板処理装置。
【0021】
〔本発明の態様14〕
前記ピニオンギアの歯数と前記サイドギアの歯数とが、互いに同じである、態様12または13に記載の基板処理装置。
【0022】
〔本発明の態様15〕
前記複数の出力軸のうち、所定の前記出力軸の回転を規制するロック機構を備える、態様10から14のいずれか1つに記載の基板処理装置。
【0023】
〔本発明の態様16〕
前記基板にCVD法により薄膜を成膜するCVD装置である、態様6から15のいずれか1つに記載の基板処理装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明の前記態様の基板支持装置及び基板処理装置によれば、基板に成膜される薄膜の膜特性を安定して均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図中の要素は単純さと明瞭さのために例示されたものであり、必ずしも縮尺どおりに描かれていないことが理解されよう。例えば、図中のいくつかの要素の寸法は、本開示の例示された実施形態の理解の向上に役立つように、他の要素に比べて誇張される場合がある。
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るプラズマCVD装置のチャンバーの一例を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るプラズマCVD装置、及びプラズマCVD装置が備える基板支持装置を模式的に簡略化して示す縦断面図である。
【
図3】
図3(a)、(b)は、移動機構の外歯車及び内歯車を示す平面図であり、内歯車の公転及び自転を説明する図である。
【
図4】
図4(a)、(b)は、連結部材を簡略化して示す側面図である。
【
図5】
図5は、ギア機構を簡略化して示す斜視図である。
【
図6】
図6は、ギア機構及びロック機構を簡略化して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
特定の実施形態および実施例が以下に開示されているが、具体的に開示された本発明の実施形態および/または用途、ならびにその自明な変更および均等物も本発明の範囲内であることは、当業者には理解されるであろう。したがって、開示された発明の範囲は、以下に説明する特定の開示された実施形態によって制限されるべきではないということが意図されている。
【0028】
ここで使用されている「基板」という用語は、いかなる下地材料又は材料をも指す場合があり、それらの下地材料又は材料には、修飾され得るもの、あるいは、その上にデバイス、回路、膜が形成され得るものが含まれる。「基板」は連続的であっても非連続的であってもよく;剛体であっても柔軟であってもよく;固体であっても多孔質であってもよく;それらの組み合わせであってもよい。基板(基材)は、粉末状、板状、ワークピースなど、どのような形態でもよい。板状の基板には、様々な形状やサイズの基板が含まれる。基板は、例えば、シリコン、シリコンゲルマニウム、シリコン酸化物、ガリウムヒ素、窒化ガリウムおよびシリコンカーバイドを含む半導体材料から製造することができる。
【0029】
例として、粉末状の基板(基材)は医薬品製造に応用できる可能性がある。多孔質基板(基材)はポリマーを含んでもよい。ワークピースの例としては、医療機器(例えば、ステントや注射器)、宝石、工具器具、電池製造用部品(たとえば、陽極、陰極、またはセパレータ)または光電池の部品などがある。
【0030】
連続基板は、堆積プロセスが発生するプロセスチャンバーの境界を超えて広がるものでもよい。いくつかのプロセスでは、連続基板は、基板の端に達するまでプロセスが続くように、プロセスチャンバー内を移動できてもよい。連続基板は、連続基板供給システムから供給され、任意の適切な形態の連続基板の製造と出力を可能にすることができてもよい。
【0031】
連続基板の非限定的な例としては、シート、不織布フィルム、ロール、箔、ウェブ、柔軟性材料、連続的な糸または繊維の束(例えば、セラミックファイバーやポリマー繊維)などがある。連続基板は、非連続基板が搭載されるキャリアまたはシートを含んでもよい。
【0032】
ここに提示する図面は、任意の特定の材料、構造または装置の実際の図であることを意図したものではなく、本開示の実施形態を説明するために使用される単なる理想化された表現に過ぎない。
【0033】
ここに示し、説明される特定の実装は、本発明とそのベストモードを例示するものであり、他のいかなる方法での態様や実装の範囲を制限することを意図していない。実際、簡潔にするために、従来の製造、接続、準備、およびシステムのその他の機能的態様については詳細に説明されていない場合がある。さらに、さまざまな図に示されている接続線は、さまざまな要素間の例示的な機能関係および/または物理的な結合を表すことを意図している。多くの代替的または追加的な機能的関係または物理的接続が実用的なシステムに存在する場合があり、および/またはいくつかの実施形態では存在しない場合がある。
【0034】
ここに記載されている構成および/またはアプローチは、本質的に例示的なものであり、多数のバリエーションが可能であるため、これらの特定の実施形態または例は限定的な意味で考慮されるべきではないことを理解されたい。ここで説明する特定のルーチンまたは方法は、任意の数の処理戦略の1つ以上を表す場合がある。したがって、例示された様々な動作は、例示された順序で行われたり、他の順序で行われたり、場合によっては省略されたりする。
【0035】
本開示の主題は、ここに開示された様々なプロセス、システム、構成、およびその他の特徴、機能、動作、および/または特性のすべての新規かつ非自明な組み合わせおよびサブコンビネーション、ならびにそれらのすべての均等物を含む。
【0036】
本実施形態では、各図に適宜XYZ直交座標系(3次元直交座標系)を設定し、各構成要素について説明する。各図において、Z軸方向は上下方向(鉛直方向)に相当する。Z軸方向のうち、+Z側は上側に相当し、-Z側は下側に相当する。また、X軸方向及びY軸方向は、Z軸方向と垂直な仮想の水平面(X-Y面)が広がる方向に相当する。例えば、Y軸方向は前後方向に相当し、+Y側は後側に相当し、-Y側は前側に相当する。また、X軸方向は左右方向に相当し、+X側は右側に相当し、-X側は左側に相当する。ただしこれに限らず、Y軸方向を左右方向とし、X軸方向を前後方向としてもよい。
【0037】
本実施形態の基板処理装置は、基板(ウェハ)にCVD法により薄膜を成膜するCVD装置であり、具体的には、プラズマCVD装置である。
図1及び
図2に示すように、プラズマCVD装置100は、チャンバー1と、基板支持装置30と、ギア機構50と、連結部材60と、駆動源65と、ロック機構70(
図6を参照)と、昇降機構40と、を備えている。なお、
図2においては、ギア機構50を模式的に簡略化して表しており、連結部材60の形状の図示については省略している。
【0038】
図1に示すように、チャンバー1は、略円筒体とされている。チャンバー1は、基板支持装置30の後述するサセプタ31を収容する。チャンバー1は、チャンバー本体11と、蓋材19と、シャワーヘッド固定部材15と、シャワーヘッド20と、高周波遮蔽板17と、ガス供給管24と、ガス排出管25と、を有する。
【0039】
チャンバー本体11及び蓋材19は、金属材料で形成されている。この金属材料としては、例えばアルミニウムを用いることができる。チャンバー本体11は、有底円筒状をなしている。蓋材19は、円板状であり、チャンバー本体11の上端部を塞ぐ。チャンバー本体11は、出入口12と、扉部13と、凹部14と、を有する。
【0040】
出入口12は、チャンバー本体11の側部に配置されている。出入口12は、チャンバー本体11の周壁を貫通して設けられている。被処理基板である基板Sbは、出入口12を通して、チャンバー1に搬入されまたは搬出される。扉部13は、出入口12を開閉可能に構成されている。
【0041】
凹部14は、チャンバー本体11の周壁の内面のうち、出入口12よりも上側に配置されている。凹部14には、シャワーヘッド固定部材15が配置される。シャワーヘッド固定部材15は、開口部16を有するリング状の部材である。開口部16は、シャワーヘッド固定部材15を上下方向に貫通する逆円錐形状の孔であり、上部より下部の内径寸法が小さい。シャワーヘッド固定部材15の材料としては、例えば、Al2O3などのセラミック材料を用いることができる。
【0042】
シャワーヘッド20は、円板状をなしており、その内部が中空状とされている。シャワーヘッド20は、複数の通気孔21を有する。複数の通気孔21は、シャワーヘッド20の下部に配置される。シャワーヘッド20は、フランジ部22を有する。フランジ部22は、シャワーヘッド20の上部に配置される。フランジ部22の外径寸法は、シャワーヘッド固定部材15の開口部16の内径寸法よりも大きい。シャワーヘッド20は、フランジ部22から下側へ延びる逆円錐台形状の側面23を有する。側面23は、上部より下部の外径寸法が小さい。シャワーヘッド20の側面23とシャワーヘッド固定部材15の開口部16とは、互いに密着するように嵌合する。シャワーヘッド20の材料としては、例えば、アルミニウムなどの金属を用いることができる。
【0043】
高周波遮蔽板17は、円板状をなしている。高周波遮蔽板17は、シャワーヘッド20と蓋材19との間に配置されている。シャワーヘッド20のフランジ部22は、高周波遮蔽板17の下面とシャワーヘッド固定部材15の上面との間に挟まれている。高周波遮蔽板17の材料としては、例えば、Al2O3などのセラミック材料を用いることができる。
【0044】
ガス供給管24は、蓋材19を上下方向に貫通して設けられており、シャワーヘッド20の上部中央に接続されている。ガス供給管24を通して、原料ガスがシャワーヘッド20に供給される。さらに原料ガスは、シャワーヘッド20の複数の通気孔21を通して、チャンバー1内の基板Sbに供給される。ガス排出管25は、チャンバー1内の下部に配置されている。チャンバー1内のガスは、ガス排出管25を通して、チャンバー1の外部へ排出される。
【0045】
基板支持装置30は、基板Sbが載置されるサセプタ31と、サセプタ31に接続され、上下方向に延びるサセプタ31の中心軸C回りにサセプタ31を回転させる移動機構32と、を備える。移動機構32は、さらに、中心軸Cと垂直な仮想の水平面(X-Y面)が広がる方向にサセプタ31を移動させる。本実施形態ではプラズマCVD装置100に、チャンバー1、サセプタ31及び移動機構32の組Sが、複数設けられる。
図2に示す例では、組S(S1,S2)が2つ設けられている。ただしこれに限らず、組Sは3つ以上(例えば4つ)設けられていてもよい。
【0046】
サセプタ31は、チャンバー1の内部に配置される。サセプタ31は、中心軸Cを中心とする円板状をなしている。基板Sbは、サセプタ31の上面に配置される。サセプタ31は、成膜時においてヒータとして機能するよう、内部に発熱体を備えていてもよい。サセプタ31は、高熱伝導性材料により形成されている。サセプタ31は、例えば、アルミニウムなどの金属材料で形成されており、具体的には、窒化アルミニウム製等である。
【0047】
図2及び
図3(a)、(b)に示すように、移動機構32は、支柱33と、外歯車34と、内歯車35と、を有する。支柱33は、サセプタ31の下側に配置され、サセプタ31を支持する。支柱33は、上下方向に延びる円柱状をなしている。支柱33の上端部は、サセプタ31の下部中央に接続されている。支柱33は、チャンバー本体11の底壁に開口する貫通孔18に挿入されている。支柱33は、貫通孔18を通して、チャンバー1の内部と外部とにわたって延びている。
【0048】
外歯車34及び内歯車35は、チャンバー1の下側に配置されている。すなわち、外歯車34及び内歯車35は、チャンバー1の外部に配置される。外歯車34は、歯車中心軸A1を中心とする円環板状をなしている。外歯車34は、その内周に配置される複数の歯34aを有する。複数の歯34aは、外歯車34の歯車中心軸A1回りの周方向において、等ピッチで並んで配置される。
図3(a)、(b)に示す例では、歯34aが、外歯車34の内周に12個設けられている。
【0049】
内歯車35は、歯車中心軸A2を中心とする円板状をなしている。
図3(a)、(b)に示すように上下方向から見て、内歯車35の歯車中心軸A2は、外歯車34の歯車中心軸A1からずれた位置に配置されている。すなわち、内歯車35の歯車中心軸A2と外歯車34の歯車中心軸A1とは、互いに偏芯して配置されている。
【0050】
支柱33の下端部が、内歯車35の上部中央に接続されている。内歯車35は、支柱33を介してサセプタ31に接続されている。内歯車35、支柱33及びサセプタ31は、互いに固定されている。内歯車35の歯車中心軸A2と、サセプタ31の中心軸Cとは、互いに同軸に配置されている。
【0051】
内歯車35は、その外周に配置される複数の歯35aを有する。複数の歯35aは、内歯車35の歯車中心軸A2回りの周方向において、等ピッチで並んで配置される。内歯車35の歯数(歯35aの数)は、外歯車34の歯数(歯34aの数)よりも少ない。具体的に、本実施形態では内歯車35の歯数が、外歯車34の歯数よりも1つ少ない。
図3(a)、(b)に示す例では、歯35aが、内歯車35の外周に11個設けられている。
【0052】
本実施形態では、外歯車34が、昇降機構40に固定されており、回転しない。内歯車35は、ギア機構50の後述する出力軸52に連結されており、外歯車34と噛み合った状態で回転する。すなわち、内歯車35は、外歯車34と噛み合った状態を維持しつつ、外歯車34の内周に沿って周方向に回転移動する。
【0053】
具体的に、
図3(a)に示す状態では、内歯車35の歯車中心軸A2が、外歯車34の歯車中心軸A1よりも前側(-Y側)に位置している。この状態から、内歯車35が外歯車34の内周に沿って回転移動していくと、内歯車35の歯車中心軸A2は、外歯車34の歯車中心軸A1回りに回転しつつ、
図3(b)に示すように、外歯車34の歯車中心軸A1よりも後側(+Y側)へと移動する。内歯車35は、さらに外歯車34の内周に沿って回転移動していき、
図3(a)に示す状態とされる。
【0054】
このようにして、内歯車35の歯車中心軸A2は、外歯車34の歯車中心軸A1回りに公転する。また、内歯車35が外歯車34の内周に沿って一周回転移動したとき、内歯車35は、外歯車34の歯数と内歯車35の歯数との差分に応じて、内歯車35の歯車中心軸A2回りに自転する。本実施形態では内歯車35が、外歯車34の内周に沿って一周公転したときに、歯数1つ分自転する。
【0055】
内歯車35が外歯車34に対して公転しつつ自転することで、内歯車35に接続されるサセプタ31も、チャンバー1内で公転しつつ自転する。詳しくは、
図3(a)から
図3(b)へと、内歯車35及びサセプタ31が歯車中心軸A1を中心として180°公転したときに、サセプタ31は距離Dだけ前後方向(Y軸方向)へ移動する。また特に図示しないが、
図3(a)、(b)とは内歯車35及びサセプタ31の歯車中心軸A1回りの位相(回転角度)が90°ずれた状態では、内歯車35及びサセプタ31が歯車中心軸A1を中心として180°公転したときに、サセプタ31は距離Dだけ左右方向(X軸方向)へ移動する。
【0056】
具体的に、サセプタ31上の任意の点は、水平面(X-Y面)の面内でトロコイド曲線状の移動軌跡を描く。このようにサセプタ31は、水平面が広がる方向に移動可能とされている。
【0057】
また、
図2に示すように、チャンバー本体11の底壁と外歯車34との間は、上下方向に伸縮可能なシール部材26により気密にシールされている。外歯車34のうち歯34aよりも上側に位置する部分と、内歯車35のうち歯35aよりも上側に位置する部分との間は、水平面(X-Y面)が広がる方向に伸縮可能なシール部材27により気密にシールされている。内歯車35と支柱33との間は、Oリング等のシール部材28により気密にシールされている。
【0058】
駆動源65は、例えばモータである。駆動源65は、昇降機構40を駆動する。昇降機構40は、駆動源65に駆動されることにより、移動機構32を介してサセプタ31を上下方向に移動させる。詳しくは、基板Sbをチャンバー1に搬入しまたは搬出する際、昇降機構40は、サセプタ31を下降端位置まで下降させる。また、基板Sbに対してCVD法により成膜処理を行う際、昇降機構40は、サセプタ31を
図1に示す上昇端位置まで上昇させる。
【0059】
成膜時には、シャワーヘッド20の通気孔21から、原料ガスが基板Sbに向けて放出されるとともに、シャワーヘッド20とサセプタ31の上面(基板載置面)との間に高周波(RF)の電圧が印加され、原料ガスがプラズマ状態とされる。これにより、活性な励起分子、ラジカル、イオンが生成し、化学反応が促進され、基板Sbの表面に薄膜が成膜される。
【0060】
図2に示すように、駆動源65は、さらに、内歯車35を回転駆動する。ギア機構50は、駆動源65の回転駆動力を内歯車35に伝達する。ギア機構50は、駆動源65の回転駆動力が入力される入力軸51と、入力軸51に入力された回転駆動力が分岐して出力される複数の出力軸52と、を有する。本実施形態では出力軸52(52A,52B)が、2つ設けられている。各組S(S1,S2)の移動機構32の内歯車35と、各出力軸52(52A,52B)とが、連結されている。
【0061】
出力軸52は、横軸部53と、縦軸部54と、を有する。横軸部53は、上下方向と直交する方向に延びる。図示の例では横軸部53が、X軸方向に延びている。
図5及び
図6に示すように、横軸部53は、ロック機構70に係止される係止部53aを有する。係止部53aは、横軸部53の中心軸と垂直な断面が非円形状をなしており、本実施形態では四角形柱状等の多角形柱状とされている。なお
図2においては、係止部53a及びロック機構70の図示を省略している。
【0062】
図2に示すように、縦軸部54は、上下方向に延びる。縦軸部54と横軸部53とは、互いに噛み合う一対のかさ歯車62,63を介して、連結されている。縦軸部54の中心軸と、内歯車35の歯車中心軸A2とは、互いに平行であり、かつ偏芯して配置されている。縦軸部54の中心軸は、外歯車34の歯車中心軸A1と同軸に配置されている。
【0063】
連結部材60は、内歯車35と出力軸52とを繋ぐ。具体的に、連結部材60は、互いに偏芯して配置される内歯車35と縦軸部54とを連結する。連結部材60は、例えば、
図4(a)に示すユニバーサルジョイント60Aや、
図4(b)に示すボールジョイント60B等により構成される。連結部材60と内歯車35とは、図示しないベアリング等を介して連結されている。
【0064】
図5に示すように、ギア機構50は、さらに、入力ギア55と、リングギア56と、ギアハウジング57と、ピニオンシャフト58と、ピニオンギア59と、サイドギア61と、を有する。
【0065】
入力ギア55は、入力軸51に設けられる。リングギア56は、入力ギア55に噛み合う。リングギア56の歯数は、入力ギア55の歯数よりも多い。ギアハウジング57は、リングギア56に固定される。ピニオンシャフト58は、ギアハウジング57に支持されている。ピニオンシャフト58は、リングギア56の中心軸と直交する方向(リングギア56の径方向)に延びている。
【0066】
ピニオンギア59は、ピニオンシャフト58に一対設けられている。一対のピニオンギア59は、リングギア56の径方向において、互いに間隔をあけて配置されている。各ピニオンギア59は、ピニオンシャフト58に回転自在に支持されている。
【0067】
サイドギア61は、出力軸52A,52Bに一対設けられている。各サイドギア61は、各出力軸52A,52Bの横軸部53に固定されている。一対のサイドギア61は、一対のピニオンギア59に噛み合う。ピニオンギア59の歯数とサイドギア61の歯数とは、互いに同じである。一対の出力軸52A,52Bの各横軸部53は、リングギア56の中心軸と同軸に配置されている。
【0068】
このギア機構50では、駆動源65から入力軸51に回転駆動力が入力されると、この回転駆動力が、入力ギア55及びリングギア56を介して、リングギア56の中心軸回りの回転駆動力へと変換される。リングギア56がその中心軸回りに回転駆動されることで、ギアハウジング57、ピニオンシャフト58及び一対のピニオンギア59が、リングギア56の中心軸回りに回転する。
【0069】
一対のピニオンギア59がリングギア56の中心軸回りに回転(公転)すると、一対のピニオンギア59に噛み合う一対のサイドギア61が、リングギア56の中心軸回りに回転する。これにより、各サイドギア61が固定される各出力軸52A,52Bが、リングギア56の中心軸回りに回転駆動される。このようにして、入力軸51に入力された回転駆動力は、複数(一対)の出力軸52に分岐して出力される。出力軸52の回転数は、入力ギア55とリングギア56のギア比によって決まる。本実施形態のように、リングギア56の歯数を入力ギア55の歯数よりも多くすることで、出力軸52の回転数を小さく抑えることができる。
【0070】
図6に示すように、ロック機構70は、出力軸52の係止部53aに係止可能とされている。図示を一部省略しているが、本実施形態ではロック機構70が、一対の出力軸52A,52Bの各係止部53aに対向して一対設けられている。各ロック機構70は、各係止部53aに対して進退可能に構成されている。ロック機構70は、複数の出力軸52A,52Bのうち、所定の出力軸52Aまたは52Bの回転を規制する。なお、ロック機構70は、1つのみ設けられていてもよい。
【0071】
図6に示す例では、ロック機構70が、出力軸52Bの係止部53aに係止されている。これにより、出力軸52Bの中心軸回りの回転が規制され、出力軸52Bに連結される組S2の内歯車35の回転が規制されることで、組S2のサセプタ31の中心軸C回りの回転及び水平面(X-Y面)が広がる方向への移動が規制される(
図2を参照)。ロック機構70を用いることで、サセプタ31は、水平面が広がる方向の移動範囲の任意の位置で停止可能とされている。
【0072】
また、
図6において、ロック機構70により出力軸52Bの回転が停止されると、出力軸52Bに設けられるサイドギア61の回転も停止する。これにより、このサイドギア61に噛み合う一対のピニオンギア59が、リングギア56の中心軸回りに回転(公転)しつつ、ピニオンシャフト58の中心軸回りに回転(自転)して、出力軸52Aに設けられるサイドギア61とともに出力軸52Aの回転数が高められる。具体的に、ロック機構70が係止部53aに係止されていない状態と比べて、ロック機構70が係止部53aに係止された状態では、出力軸52Aの回転数は2倍となる。
【0073】
以上説明した本実施形態の基板支持装置30及びプラズマCVD装置100によれば、サセプタ31に接続される移動機構32が、サセプタ31を中心軸C回りに回転(自転)させ、かつ、サセプタ31を中心軸Cと垂直な仮想の水平面(X-Y面)が広がる方向に移動させる。このため、チャンバー1内の基板Sbの各位置において、プラズマ密度、ポンピング効率、ガス拡散などの分布にバラつきが生じた場合でも、基板Sbに成膜される薄膜の膜特性を均一化することができる。特に、プラズマ密度、ポンピング効率、ガス拡散などの分布のピークが基板Sbの中心部付近にあるような場合(つまり正規分布をとる場合)であっても、膜特性を基板(ウェハ)径方向において均一化することが可能である。
【0074】
また本実施形態において、サセプタ31は、水平面(X-Y面)が広がる方向の移動範囲の任意の位置で停止可能である。
例えば、基板Sbに成膜される薄膜の膜特性を均一化する上で、サセプタ31を水平面(X-Y面)の面内の任意の位置で留まらせることが好ましい場合などには、サセプタ31の移動を停止させることができる。サセプタ31の移動と停止とを適宜組み合わせることも可能である。基板Sbに成膜される薄膜の膜特性をより均一化することができる。
【0075】
また本実施形態では、移動機構32が、外歯車34と、外歯車34に噛み合った状態で回転し、サセプタ31に接続される内歯車35と、を有しており、内歯車35の歯数が、外歯車34の歯数よりも少ない。
この場合、外歯車34に対して内歯車35が回転し、内歯車35の歯車中心軸A2が、外歯車34の歯車中心軸A1回りに一回転(公転)したときに、内歯車35は、内歯車35の歯車中心軸A2回りに、各歯34a,35aの歯数の差分(本実施形態では歯数1つ分)だけ回転(自転)する。すなわち、内歯車35は、外歯車34の歯車中心軸A1回りに公転しつつ、内歯車35の歯車中心軸A2回りに自転する。これにともない、内歯車35に接続されるサセプタ31も、チャンバー1内で公転しつつ自転する。したがって、サセプタ31を水平面(X-Y面)が広がる方向に安定して移動させることが可能になり、基板Sbに成膜される薄膜の膜特性を基板Sbの各位置でバラつき少なく均等にすることができる。
【0076】
また本実施形態では、外歯車34及び内歯車35が、チャンバー1の外部に配置されている。
この場合、例えば、外歯車34と内歯車35との噛み合いによって金属屑等が発生するなどしても、これによりチャンバー1内にコンタミネーションが生じるような不具合が防止される。
【0077】
また本実施形態において、駆動源65は、昇降機構40を駆動する。これにより昇降機構40は、チャンバー1に基板Sbを搬入及び搬出する際に、サセプタ31を昇降させる。本実施形態ではこの駆動源65を用いて、さらに内歯車35を回転駆動している。内歯車35を回転駆動するために、例えば新たなモータ等を設ける必要はなく、設備費用を削減できる。
【0078】
また本実施形態では、駆動源65の回転駆動力を内歯車35に伝達するギア機構50が備えられている。ギア機構50は、回転駆動力が入力される入力軸51と、入力軸51に入力された回転駆動力が分岐して出力される複数の出力軸52(52A,52B)と、を有する。サセプタ31及び移動機構32の組S(S1,S2)は、複数設けられており、各組S1,S2の移動機構32の内歯車35と、各出力軸52A,52Bとが、連結されている。
この場合、駆動源65の回転駆動力をギア機構50によって分岐し、分岐した回転駆動力を、複数の出力軸52(52A,52B)から複数の移動機構32及びサセプタ31の組S(S1,S2)へ伝達することができる。1つの駆動源65により、複数のサセプタ31を回転及び移動させることが可能となる。複数のサセプタ31に支持される各基板Sbに対して、膜特性が均一化された薄膜をそれぞれ成膜することができる。
【0079】
また本実施形態では、内歯車35が、外歯車34の歯車中心軸A1回りに公転しつつ内歯車35の歯車中心軸A2回りに自転する。内歯車35が公転するため、内歯車35の歯車中心軸A2と、出力軸52の縦軸部54の中心軸(歯車中心軸A1に相当)とは、互いに偏芯して配置される。このように互いの中心軸がずれて配置される内歯車35と縦軸部54とを、例えばユニバーサルジョイント60Aやボールジョイント60B等の連結部材60により連結することで、出力軸52の回転駆動力を内歯車35へ安定して伝達することができる。
【0080】
また、本実施形態のギア機構50は、いわゆる差動装置(ディファレンシャルギア)の構造を備えている。このギア機構50を用いることで、駆動源65から入力軸51に入力された回転駆動力を、一対の出力軸52A,52Bに安定して出力することができる。
【0081】
また本実施形態では、複数の出力軸52のうち、所定の出力軸52の回転を規制するロック機構70が備えられる。
この場合、ロック機構70により所定の出力軸52の回転を規制することで、この出力軸52に移動機構32を介して接続されるサセプタ31を、水平面(X-Y面)の面内の任意の位置で停止させることができる。サセプタ31を所望の位置で停止させたり、移動と停止とを組み合わせたりすることにより、基板Sbに成膜される薄膜の膜特性をより均一化することが可能になる。
【0082】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0083】
前述の実施形態では、プラズマCVD装置100に、チャンバー1、サセプタ31及び移動機構32の組Sが2つ設けられる例を挙げたが、これに限らない。組Sは、例えば4つ設けられていてもよい。この場合、駆動源65の回転駆動力を図示しないTアングル等で2つに分岐し、分岐した回転駆動力を一対のギア機構50に入力して、各ギア機構50から複数(一対)の出力軸52A,52Bへ回転駆動力が出力される。これにより、1つの駆動源65によって4つのチャンバー1の各サセプタ31を、それぞれ、中心軸C回りに回転させつつ水平面(X-Y面)が広がる方向に移動させることができる。
【0084】
また、外歯車34の歯34aの数及び内歯車35の歯35aの数は、前述の実施形態で説明した数量に限定されない。また、内歯車35の歯数が、外歯車34の歯数よりも2つ以上少なくてもよい。
【0085】
また、例えば、駆動源65であるモータの回転方向を正転または逆転とすることで、内歯車35が自転する回転方向を、正転または逆転とすることができる。内歯車35は、内歯車35の歯車中心軸A2回りの回転方向が、歯車中心軸A2を中心とする180°以下の角度範囲で正転と逆転とを繰り返すこととしてもよい。内歯車35の自転の回転方向を180°以下の角度範囲で交互に反転させることにより、基板Sbに成膜される薄膜の膜特性を、基板Sbの各位置においてよりバラつき少なく均等にすることができる。
【0086】
前述の実施形態では、本発明に係る成膜処理装置についてプラズマCVD装置100を例に挙げて説明したが、成膜処理装置はプラズマCVD装置100に限定されるものではない。基板処理装置は、例えば、サーマルCVD装置、プラズマALD装置、サーマルALD装置等であってもよい。
【0087】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態及び変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の基板支持装置及び基板処理装置によれば、基板に成膜される薄膜の膜特性を安定して均一化することができる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0089】
1…チャンバー
30…基板支持装置
31…サセプタ
32…移動機構
34…外歯車
34a…歯
35…内歯車
35a…歯
40…昇降機構
50…ギア機構
51…入力軸
52(52A,52B)…出力軸
54…縦軸部
55…入力ギア
56…リングギア
57…ギアハウジング
58…ピニオンシャフト
59…ピニオンギア
60(60A,60B)…連結部材
61…サイドギア
65…駆動源
70…ロック機構
100…プラズマCVD装置(基板処理装置)
A1…外歯車の歯車中心軸
A2…内歯車の歯車中心軸
C…サセプタの中心軸
S(S1,S2)…組
Sb 基板
W…ウェハ
【外国語明細書】