(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180351
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ポリエステル系樹脂組成物、接着剤組成物、接着剤、繊維の積層体、衣料、及びポリエステル系接着剤
(51)【国際特許分類】
C08L 67/00 20060101AFI20241219BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20241219BHJP
C09J 167/00 20060101ALI20241219BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20241219BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C08L67/00
C08K5/29
C09J167/00
B32B27/36
B32B5/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024096158
(22)【出願日】2024-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2023097934
(32)【優先日】2023-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀昭
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AL052
4F100AR00C
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4J040KA27
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4J040LA01
4J040LA02
4J040LA11
4J040MA09
4J040MB02
4J040NA05
(57)【要約】
【課題】接着信頼性に優れ、さらに洗濯時に膨潤する透湿防水膜膜に対しても密着性が担保され、かつ、無溶剤でホットメルト塗工しやく、また、モノマテリアル化に貢献し、かつ、無駄なエネルギー消費が少なく、さらにリサイクルしやすい材料を提供できる、ポリエステル系樹脂組成物の提供を行うことを目的とする。
【解決手段】
非晶性ポリエステル系樹脂(A)と結晶性ポリエステル系樹脂(B)とを含有するポリエステル系樹脂組成物であって、
前記非晶性ポリエステル系樹脂(A)と結晶性ポリエステル系樹脂(B)との含有比(重量比)が、(A)/(B)=99/1~1/99であり、
前記非晶性ポリエステル系樹脂(A)及び結晶性ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度が20℃以下であり、
前記ポリエステル系樹脂組成物に含まれる有機溶剤の含有量が、ポリエステルテル系樹脂組成物全体に対して0~5重量%であるポリエステル系樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶性ポリエステル系樹脂(A)と結晶性ポリエステル系樹脂(B)とを含有するポリエステル系樹脂組成物であって、
前記非晶性ポリエステル系樹脂(A)と結晶性ポリエステル系樹脂(B)との含有比(重量比)が、(A)/(B)=99/1~1/99であり、
前記非晶性ポリエステル系樹脂(A)及び結晶性ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度が20℃以下であり、
前記ポリエステル系樹脂組成物に含まれる有機溶剤の含有量が、ポリエステルテル系樹脂組成物全体に対して0~5重量%であるポリエステル系樹脂組成物。
【請求項2】
前記非晶性ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度が-80~10℃である請求項1に記載のポリエステル系樹脂組成物。
【請求項3】
前記結晶性ポリエステル系樹脂(B)の融点が60℃以上である請求項1に記載のポリエステル系樹脂組成物。
【請求項4】
前記結晶性ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度が-60~15℃である請求項1に記載のポリエステル系樹脂組成物。
【請求項5】
前記非晶性ポリエステル系樹脂(A)が脂肪族ジカルボン酸類(a1-2)由来の構造単位を含み、前記結晶性ポリエステル(B)が脂肪族ジカルボン酸類(b1-2)由来の構造単位を含み、前記脂肪族ジカルボン酸類(a1-2)と脂肪族ジカルボン酸類(b1-2)が同一の化合物であるか、又は、その炭素数の差が2以下の化合物である請求項1に記載のポリエステル系樹脂組成物。
【請求項6】
さらに加水分解抑制剤(C)を含有する請求項1に記載のポリエステル系樹脂組成物。
【請求項7】
ポリエステル系樹脂組成物の粘度が130℃で1~500Pa・sである請求項1に記載のポリエステル系樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のポリエステル系樹脂組成物を含有する接着剤組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の接着剤組成物を含有する接着剤。
【請求項10】
請求項9に記載の接着剤と繊維とが積層された繊維の積層体。
【請求項11】
前記繊維がポリエステル系繊維を含有する請求項10に記載の繊維の積層体。
【請求項12】
さらに透湿防水膜が積層された請求項11に記載の繊維の積層体。
【請求項13】
請求項10に記載の繊維の積層体を備えた衣料。
【請求項14】
非晶性ポリエステル系樹脂(A)と結晶性ポリエステル系樹脂(B)とを含有するポリエステル系接着剤であって、
前記非晶性ポリエステル系樹脂(A)と結晶性ポリエステル系樹脂(B)との含有比(重量比)が、(A)/(B)=99/1~1/99であり、
前記非晶性ポリエステル系樹脂(A)及び結晶性ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度が20℃以下であり、
前記ポリエステル系接着剤に含まれる有機溶剤の含有量が、ポリエステル系接着剤全体に対して0~0.1重量%であるポリエステル系接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系樹脂組成物、かかるポリエステル系樹脂樹脂組成物を含有する接着剤組成物、ポリエステル系接着剤に関し、さらにかかる接着剤と繊維とが積層された繊維の積層体、及びかかる積層体を備えた衣料に関する。
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、実質的に溶媒を含まずに、加熱溶融により塗工するホットメルト用接着剤(粘着剤を含む)に好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来、衣服においては、生地の特性を活かし生地の弱点を補強するために、種々の芯地、裏地等を積層させた繊維生地積層体が用いられている。この積層体の積層方法としては、例えば、繊維シートの片面に接着剤を付着させ、ほかの繊維を積層する方法等が知られている。また、これらの繊維用接着剤としては、種々の素材が使用されており、例えば、結晶性ポリエステルやポリアミド等の熱可塑性樹脂、ポリウレタン樹脂等が使用されている。
【0003】
特許文献1では、繊維用接着剤としてガラス転移温度が50℃以上、160℃での溶融粘度が20000ポイズ(2000Pa・s)以下で数平均分子量が7000以上の非晶性ポリエステル系樹脂を使用する接着芯地が、温水クリーニング時の汚染(色移り)が無いことが開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、フラットケーブル用の接着剤として、ガラス転移温度が-70~10℃、分子量5000~40000のポリエステル系樹脂75~95重量部と、ガラス転移温度が50~100℃、分子量5000~40000のポリエステル系樹脂5~25重量部を含有する接着剤を用いることで、高い接着性と耐トラッキング性を両立した接着剤が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3では密着性の高いベース樹脂と、湿気硬化型のイソシアネートを用いることで、耐熱性と密着性を両立した接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-32175号公報
【特許文献2】特開2003-64339号公報
【特許文献3】特開2020-2262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、化石資源の枯渇や地球の温暖化対策等の一環として、再生原料の使用が推奨されており、繊維の分野においても、地球環境にやさしい再生原料を用いた樹脂組成物の利用が検討されている。
特にポリエステル系接着剤はオールポリエステル素材の衣類に使用されることで再びポリエステルとしてリサイクルができることから環境負荷を軽減する接着剤として、近年ますます注目されつつある。また、接着剤としては、環境負荷を軽減させる点から、溶剤を含まない無溶剤型の接着剤が求められている。
【0008】
衣料用の繊維生地は、繰り返しの洗濯や乾燥にさらされることとなるため、繊維生地に用いられる接着剤には耐久性が求められる。例えば、洗濯の際には、水中で連続的に衝撃を受けることになり、乾燥機での乾燥の際には80℃程度の温度にさらされることとなる。そのため、繊維生地積層体は、これらに耐える耐久性を求められることになり、繊維生地積層体に用いられる接着剤には高い接着信頼性だけではなく、耐洗濯性・耐熱性が求められることになる。
一方で、繊維生地積層体の高機能化のために、裏地に機能膜を貼り合わせることも行われている。例えば、機能膜としてポリウレタン系やポリエステル系の透湿防水膜が用いられることがある。この透湿防水膜は、湿度を通して水を通さないものであり、水分により、透湿防水膜が膨潤することで機能を発現するものである。そのため、このような透湿防水膜を有する繊維生地積層体に用いられる接着剤には、高い接着力の他に、繊維生地と透湿防水膜との膨潤度の違いによる体積変化の差により生じるストレスがかかっても、剥離が生じないことが求められる。
【0009】
しかしながら、前記特許文献1の開示技術は、非晶性ポリエステルのガラス転移温度が高すぎて表面の密着性が低下するものであった。つまり、繊維(同士)の接着であれば、接着樹脂(ポリエステル系樹脂)が、溶融して繊維に含侵されるため、ある程度の接着信頼性が得られるが、溶融樹脂が含侵されないような機能膜と繊維を貼り合わせる場合には、その界面での密着性が低下するものであった。さらに、特許文献1に開示の技術は、洗濯時に膨潤する機能膜に対しては、全く密着性が担保できないものであった。
【0010】
また、接着剤に用いられるポリエステル系樹脂組成物の主成分であるポリエステル系樹脂のガラス転移温度が低くなると、接着力が高くなるものの、分子凝集力が低下し接着シートとした際の耐ブロッキング性が低下する場合がある。一方、ポリエステル系樹脂のガラス転移温度が高くなると、接着力が低下するものの、分子凝集力が増加し、接着シートとした際の耐ブロッキング性が向上する。
特許文献2の開示技術は、ガラス転移温度の低いポリエステル系樹脂と、ガラス転移温度の高いポリステル樹脂とを特定の組成比で混合して使用することで、接着力と耐ブロッキング性を両立させた発明であり、従来かかる思想により設計されたポリエステル系樹脂組成物が用いられている。
【0011】
しかし、衣料用の繊維同士や繊維と機能膜(例えば、ポリエステル系樹脂フィルム)の密着を求める場合には、接着剤を塗工直後に貼り合わせが行われることが多いため、接着剤層の保存時の耐ブロッキング性は必要とされていない。一方で、密着性については、ポリエステル系樹脂組成物をホットメルト用接着剤として用いた場合、ポリエステル系樹脂組成物が繊維に含浸してしまい、機能膜への密着性が低下する傾向がある。さらに、透湿防水膜のような含水して膨潤する機能膜を用いた場合、かかる機能膜に対しての追従性が必要である。
しかし、特許文献2の開示技術では、耐熱性と耐洗濯性(膨潤への追随)の両立は、全く考慮されておらず、また、環境対応としての無溶剤化にも対応しないものであった。
【0012】
また、特許文献3の開示技術は、密着性の高いベース樹脂と、湿気硬化型のイソシアネートを用いることで、耐熱性と密着性を両立しているが、反応性の材料を使用する場合には、例えばウレタン結合が接着剤の中に入ることにより、モノマテリアルではなくなりリサイクル性が劣ることとなるため、さらなる改善が求められる。
【0013】
また、従来、ホットメルト等の無溶剤型の接着剤組成物は、主としてペレット状やフレーク状であった。例えば、ホットメルト用の接着剤組成物を塗工する場合には、かかる接着剤組成物の供給はホッパーから行う必要があり、必然的にホットメルト用の接着剤組成物は、ペレット状やフレーク状での供給が求められてきた。
前記ホットメルト用の接着剤組成物に用いられるポリエステル系樹脂は、通常、結晶性が高いか、または、ガラス転移温度が室温より十分高いため、問題なくペレットやフレーク状で供給することができる。
すなわち、前記ポリエステル系樹脂を工業的に製造した場合、通常、反応後、反応系外に出す際には、ストランド状、またはフレーク状で払い出し、かかるストランドを切断し最終的にはペレット状にしたり、フレーク状はそのままフレークとするか、又は、さらに粉砕して微粉にする必要があった。
【0014】
一方、近年エネルギーの省力化のため、ホットメルト用の接着剤組成物は、低温(130℃程度)で塗工をすることが検討されているが、低温での塗工を行うためには、ポリエステル系樹脂の分子量を低くして低粘度化させる必要があり、さらに繊維やフィルムへの密着性を考慮すると、ガラス転移温度と結晶性も低くした方が好ましい。
しかし、ポリエステル系樹脂の分子量を低くし、さらにガラス転移温度と結晶性も低下させた場合、ストランド状にした際に、かかるストランドのコシがなく、ストランドが切れてしまい、ペレット化が困難になることから、さらなる改善が求められる。
【0015】
そこで、本発明ではこのような背景下において、ポリエステル繊維のみでは無く溶融樹脂が含侵されないような透湿防水膜と繊維を貼り合わせる場合にも、接着信頼性に優れ、さらに洗濯時に膨潤する透湿防水膜膜に対しても密着性が担保され、かつ、無溶剤でホットメルト塗工しやすいポリエステル系樹脂組成物の提供を行うことを目的とする。また、本発明は、衣料品に使用されるポリエステル繊維や膜等の接着にポリエステル系樹脂組成物を用いることで、モノマテリアル化に貢献し、基材や被着体の接着に適しており、かつ、無駄なエネルギー消費が少なく、さらにリサイクルしやすい材料を提供できる、ポリエステル系樹脂組成物の提供を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
しかるに本発明者は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、非晶性ポリエステルに配合する湿気硬化型のイソシアネートに代えて結晶性ポリエステルを用いることにより、結晶性の疑似架橋を引き起こし、高温時での耐久性(耐熱性)を担保するすることができ、さらにガラス転移温度が低いポリエステル同士を混ぜることにより、密着性の悪化も見られず、高い接着信頼性が得られることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 非晶性ポリエステル系樹脂(A)と結晶性ポリエステル系樹脂(B)とを含有するポリエステル系樹脂組成物であって、
前記非晶性ポリエステル系樹脂(A)と結晶性ポリエステル系樹脂(B)との含有比(重量比)が、(A)/(B)=99/1~1/99であり、
前記非晶性ポリエステル系樹脂(A)及び結晶性ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度が20℃以下であり、
前記ポリエステル系樹脂組成物に含まれる有機溶剤の含有量が、ポリエステルテル系樹脂組成物全体に対して0~5重量%であるポリエステル系樹脂組成物。
[2] 前記非晶性ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度が-80~10℃である[1]に記載のポリエステル系樹脂組成物。
[3] 前記結晶性ポリエステル系樹脂(B)の融点が60℃以上である[1]または[2]に記載のポリエステル系樹脂組成物。
[4] 前記結晶性ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度が-60~15℃である[1]~[3]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物。
[5] 前記非晶性ポリエステル系樹脂(A)が脂肪族ジカルボン酸類(a1-2)由来の構造単位を含み、前記結晶性ポリエステル(B)が脂肪族ジカルボン酸類(b1-2)由来の構造単位を含み、前記脂肪族ジカルボン酸類(a1-2)と脂肪族ジカルボン酸類(b1-2)が同一の化合物であるか、又は、その炭素数の差が2以下の化合物である[1]~[4]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物。
[6] さらに加水分解抑制剤(C)を含有する[1]~[5]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物。
[7] ポリエステル系樹脂組成物の粘度が130℃で1~500Pa・sである[1]~[6]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物を含有する接着剤組成物。
[9] [8]に記載の接着剤組成物を含有する接着剤。
[10] [9]に記載の接着剤と繊維とが積層された繊維の積層体。
[11] 前記繊維がポリエステル系繊維を含有する[10]に記載の繊維の積層体。
[12] さらに透湿防水膜が積層された[10]又は[11]に記載の繊維の積層体。
[13] [10]~[12]のいずれかに記載の繊維の積層体を備えた衣料。
[14] 非晶性ポリエステル系樹脂(A)と結晶性ポリエステル系樹脂(B)とを含有するポリエステル系接着剤であって、
前記非晶性ポリエステル系樹脂(A)と結晶性ポリエステル系樹脂(B)との含有比(重量比)が、(A)/(B)=99/1~1/99であり、
前記非晶性ポリエステル系樹脂(A)及び結晶性ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度が20℃以下であり、
前記ポリエステル系接着剤に含まれる有機溶剤の含有量が、ポリエステル系接着剤全体に対して0~0.1重量%であるポリエステル系接着剤。
【発明の効果】
【0017】
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、130℃程度の低温で塗工が可能であって、接着力、耐洗濯性、耐熱性に優れるものである。そのため、本発明のポリエステル系樹脂組成物を用いて、繊維等の被着体に接着し得られた積層体は、接着力、耐洗濯性、耐熱性に優れた積層体とすることができる。
詳しくは、本発明のポリエステル系樹脂組成物は、130℃程度の低温加工を可能にすることで、無溶剤での塗工を可能にし、かつ、被着体となる繊維や膜等の接着信頼性が高く、耐洗濯性や耐熱性に優れるものである。とりわけかかるポリエステル系樹脂組成物は、ポリエステル系繊維用の接着剤、例えば、衣類に用いる生地の貼り合わせに用いられる接着剤として有効である。
ポリエステル系繊維と接着剤を一緒に用いることにより、モノマテリアル化が可能で、ケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルを行うことができ、ポリエステル系繊維やポリエステル系ボトル、ポリエステル系フィルム等のポリエステル系の成形品にリサイクルすることが可能で、環境負荷を軽減することができる。
【0018】
本発明のポリエステル系接着剤組成物は、ポリエステル繊維等に塗工する際に、輸送形態であるドラム缶から取り出すことなく、直接塗工工程に進むことができる。
具体的には、ドラムメルターを用い、ポリエステル系接着剤組成物を溶融し、塗工することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
なお、本明細書において、化合物名の後に付された「類」は当該化合物に加え、当該化合物の誘導体をも包括する概念である。例えば、「カルボン酸類」との用語は、カルボン酸に加え、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸エステル等のカルボン酸誘導体も含むものである。
なお、本明細書において、「x及び/又はy(x,yは任意の構成又は成分)」とは、xのみ、yのみ、x及びy、という3通りの組合せを意味するものである。
本明細書において、「結晶性である」とは、次の方法で結晶融解熱を測定した際に、結晶融解熱が5J/g以上であることを意味する。一方、本明細書において、「非晶性である」とは、次の方法で結晶融解熱を測定した際に、融点ピークが出ない、または結晶融解熱は5J/g未満であることを意味する。
前記結晶融解熱は、サンプルを23℃50%R.H.で7日間放置して、そのサンプルを5mg程度採取し、示差走査熱量計を用いて測定することにより求めることができる。なお、測定条件は、測定温度範囲-90~200℃、温度上昇速度10℃/分である。
【0020】
また、本明細書において、接着剤とは感圧接着剤(粘着剤)を含むものである。
【0021】
本発明の一実施形態に係るポリエステル系樹脂組成物(以下、「本樹脂組成物」と称する)は、非晶性ポリエステル系樹脂(A)と結晶性ポリエステル系樹脂(B)とを含有し、前記非晶性ポリエステル系樹脂(A)と結晶性ポリエステル系樹脂(B)の含有比(重量比)が99/1~1/99であり、非晶性ポリエステル系樹脂(A)及び結晶性ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度が20℃以下であり、前記ポリエステル系樹脂組成物に含まれる有機溶剤の含有量が、ポリエステル系樹脂組成物全体に対して0~5重量%である。
まず、非晶性ポリエステル系樹脂(A)について説明する。
【0022】
〔非晶性ポリエステル系樹脂(A)〕
本発明において、非晶性ポリエステル系樹脂(A)(以下、ポリエステル系樹脂(A)と省略することがある。)は非晶性であることが必要である。
【0023】
ポリエステル系樹脂(A)は、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位と多価アルコール類(a2)由来の構造単位を分子中に含むものであることが好ましい。
【0024】
〔多価カルボン酸類(a1)〕
多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位における多価カルボン酸(a1)としては、例えば、芳香族ジカルボン酸類(a1-1)、脂肪族ジカルボン酸類(a1-2)、酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-3)等を挙げることができる。これらの多価カルボン酸類(a1)は1種又は2種以上を用いることができる。
【0025】
[芳香族ジカルボン酸類(a1-1)]
前記芳香族ジカルボン酸類(a1-1)としては、例えば、テレフタル酸類、イソフタル酸類、オルトフタル酸類等のベンゼンジカルボン酸類、1,5-ナフタレンジカルボン酸類、2,6-ナフタレンジカルボン酸類、4,4’-ビフェニルジカルボン酸類等の多環式芳香族系ジカルボン酸類、フランジカルボン酸類、チオフェンジカルボン酸類(ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン等)等の複素環系ジカルボン酸類等の芳香族ジカルボン酸類;
4-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム、5-スルホイソフタル酸ナトリウム、5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム、4-スルホイソフタル酸ジメチルカリウム、5-スルホイソフタル酸ジメチルカリウム、2-スルホテレフタル酸ナトリウム、2-スルホテレフタル酸カリウム、2-スルホテレフタル酸ジメチルナトリウム、2-スルホテレフタル酸ジメチルカリウム等、2-スルホテレフタル酸ジエチレングルコールナトリウム等のスルホン酸基含有芳香族ジカルボン酸類等が挙げられる。
【0026】
[脂肪族ジカルボン酸類(a1-2)]
前記脂肪族ジカルボン酸類(a1-2)としては、例えば、アルキルジカルボン酸類、不飽和脂肪族ジカルボン酸類、脂環式ジカルボン酸類、その他の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。
【0027】
前記アルキルジカルボン酸類としては、例えば、マロン酸類、コハク酸類、グルタル酸類、アジピン酸類、ピメリン酸類、アゼライン酸類、セバシン酸類、1,9-ノナンジカルボン酸類、デカンジカルボン酸類等の直鎖アルキルジカルボン酸類;
ジメチルマロン酸類、トリメチルアジピン酸類、2,2-ジメチルグルタル酸類、1.3-ジエチルグルタル酸類、ダイマー酸の水素添加物等の分岐鎖ジカルボン酸類等が挙げられる。
【0028】
前記「ダイマー酸」とは、平均炭素数10~26の不飽和脂肪酸の二量体を主成分とするものであり、好ましくは平均炭素数12~24の不飽和脂肪酸の二量体、さらに好ましくは平均炭素数14~22の不飽和脂肪酸類の二量体である。具体的には、例えば、オレイン酸類やリノール酸、リノレン酸、エルカ酸等の不飽和脂肪酸から誘導されるジカルボン酸の二量体の水素添加物である。
なお、ここで「主成分」とは、その成分の含有量が全体の90重量%以上、好ましくは95重%以上、さらに好ましくは98重量%以上である成分のことをいう。
【0029】
前記不飽和脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸類、マレイン酸類、イタコン酸類、前記ダイマー酸等が挙げられる。
【0030】
前記脂環式ジカルボン酸類としては、例えば、1,3-シクロペンタンジカルボン酸類、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸類、1,3-シクロペンタンジカルボン酸類、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸類、2,5-ノルボルナンジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸類等の環式脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。
【0031】
前記その他の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、チオジプロピオン酸、ジグリコール酸等が挙げられる。
【0032】
[酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-3)]
前記酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-3)としては、例えば、トリメリット酸類、トリメシン酸類、ピロメリット酸類等の3価以上の芳香族多価カルボン酸類、1,2,4-ブタントリカルボン酸類、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸類、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸類、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸類等の3価以上の脂肪族多価カルボン酸類、及びこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0033】
これらの多価カルボン酸類(a1)のなかでも結晶性を下げて、柔軟性を与え、密着性を上げることができる点から、脂肪族ジカルボン酸類(a1-2)が好ましく、より好ましくはアルキルジカルボン酸類であり、さらに好ましくは直鎖アルキルジカルボン酸類であり、特に好ましくは炭素数が10以下の直鎖アルキルジカルボン酸であり、殊に好ましくはコハク酸類、アジピン酸類、セバシン酸類であり、最も好ましくは接着性の点で、アジピン酸類である。
【0034】
また、ポリエステル系樹脂(A)の物性をコントロールする点、接着性を向上させる点から、芳香族ジカルボン酸類(a1-1)が好ましく、より好ましくはテレフタル酸類、イソフタル酸類であり、最も好ましくは結晶性を下げる点で、イソフタル酸類である。
【0035】
さらに、ポリエステル系樹脂(A)の分散度を適切にコントロールする点から、酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-3)が好ましく、より好ましくは3価以上の芳香族多価カルボン酸類であり、特に好ましくはトリメット酸類である。
【0036】
また、ポリエステル系樹脂(A)は、接着性を適正に保つ点や、結晶性のコントロールの点から、複数種の多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位を含むことが好ましい。
【0037】
前記多価カルボン酸類(a1)は、地球環境に配慮するために、バイオマス度の高いもの、すなわち植物由来の多価カルボン酸類を用いることが好ましい。前記植物由来の多価カルボン酸類としては、例えば、コハク酸類、セバシン酸類等の直鎖アルキルジカルボン酸類や、ダイマー酸及びその水素添加物、また、糖等から作られるフランジカルボン酸類、植物由来のパラキシレンから誘導されるテレフタル酸類や、それらのエステル化物等が挙げられる。
【0038】
ポリエステル系樹脂(A)が、芳香族ジカルボン酸類(a1-1)由来の構造単位を含む場合、その含有量は、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位の5モル%以上であることが好ましく、より好ましくは10~80モル%、さらに好ましくは15~75モル%、特に好ましくは18~72モル%、殊に好ましくは20~70モル%、最も好ましくは25~60モル%である。芳香族ジカルボン酸類(a1-1)由来の構造単位の含有量が多すぎるとポリエステル系樹脂(A)が硬くなりすぎて、密着性が劣ることにより接着性が低下する傾向があり、少なすぎるとポリエステル系樹脂(A)が柔らかくなりすぎて、接着強度が出にくくなる傾向がある。
【0039】
ポリエステル系樹脂(A)が、脂肪族ジカルボン酸類(a1-2)由来の構造単位を含む場合、その含有量は、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位の10モル%以上であることが好ましく、より好ましくは20~90モル%、さらに好ましくは25~85モル%、特に好ましくは28~82モル%、殊に好ましくは30~80モル%、最も好ましくは40~75モル%である。脂肪族ジカルボン酸類(a1-2)由来の構造単位が少ないと、ポリエステル系樹脂(A)が硬くなりすぎて、密着性が劣ることにより接着性が低下する傾向があり、多すぎるとポリエステル系樹脂(A)が柔らかくなりすぎて、接着強度が出にくくなる傾向がある。
【0040】
また、芳香族ジカルボン酸類(a1-1)由来の構造単位と脂肪族ジカルボン酸類(a1-2)由来の構造単位の比率(モル比)〔(a1-1):(a1-2)〕は、5:95~90:10であることが好ましく、より好ましくは20:80~70:30、さらに好ましくは30:70~60:40である。芳香族ジカルボン酸類(a1-1)由来の構造単位と脂肪族ジカルボン酸類(a1-2)由来の構造単位の比率(モル比)が前記範囲内であると、剛直性と柔軟性のバランスに優れる傾向がある。また、芳香族ジカルボン酸類(a1-1)由来の構造単位が多すぎると、常温(23℃)での柔軟性が低下して接着強度が下がりやすかったり、耐水性が低下しやすくなる傾向があり、脂肪族ジカルボン酸類(a1-2)由来の構造単位が多すぎると、剛直性が低下することにより、接着強度が下がりやすかったり、耐熱性が低下したりする傾向がある。
【0041】
なお、ポリエステル系樹脂(A)が、後述する熱可塑性ポリエステル系樹脂(a3)由来の構造単位を含む場合、熱可塑性ポリエステル系樹脂(a3)の構造単位である多価カルボン酸類(a1)〔例えば、芳香族ジカルボン酸類(a1-1)、脂肪族ジカルボン酸類(a1-2)等〕由来の構造単位を含めて、前記の比率にすることが好ましい。
【0042】
ポリエステル系樹脂(A)が、酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-3)由来の構造単位を含む場合、その含有量は、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位の0.1~5モル%であることが、130℃における粘度と接着強度のバランスの点で好ましく、より好ましくは0.1~2.5モル%、さらに好ましくは0.2~2モル%である。かかる含有量が少なすぎると、接着剤とした際に耐久性が低下する傾向があり、多すぎるとゲル化がおこり、接着力が低下する傾向がある。
【0043】
〔多価アルコール類(a2)由来の構造単位〕
多価アルコール類(a2)由来の構造単位における多価アルコール類(a2)としては、例えば、直鎖脂肪族ジオール(a2-1)、分岐鎖脂肪族ジオール(a2-2)、脂環族系ジオール、芳香族ジオール、3価以上の多価アルコール(a2-3)等が挙げられる。これらの多価アルコール類(a2)は1種又は2種以上を用いることができる。
【0044】
[直鎖脂肪族ジオール(a2-1)]
前記直鎖脂肪族ジオール(a2-1)としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,18-オクタデカンジオール等が挙げられる。
【0045】
[分岐鎖脂肪族ジオール(a2-2)]
前記分岐鎖脂肪族ジオール(a2-2)としては、例えば、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,3,5-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,9-ノナンジオール、ダイマージオール、4-メチル-1,7-ヘプタンジオール、3-メチル-1,6-ヘキサンジオール、1-メチル-1,6-ヘキサンジオール、4-メチル-1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,9-ノナンジオール等が挙げられる。
【0046】
[脂環族系ジオール]
前記脂環族系ジオールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロブタンジオール、水添ビスフェノールA及び/又はそのエチレンオキサイド付加体やプロピオン付加体等が挙げられる。
【0047】
[芳香族ジオール]
前記芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA、9,9-ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’-チオジフェノール、4,4’-メチレンジフェノール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、o-,m-、およびp-ジヒドロキシベンゼン、2,5-ナフタレンジオール、p-キシレンジオール、およびそれらのエチレンオキサイド付加体やプロピレンオキサイド付加体等が挙げられる。
【0048】
[3価以上の多価アルコール(a2-3)]
前記3価以上の多価アルコール(a2-3)としては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の3価以上の脂肪族多価アルコールが挙げられる。
【0049】
また、本発明においては、目的とする分子量のポリエステル系樹脂(A)を容易に得るために、多価アルコール類(a2)として、例えば、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートジオール等を用いてもよい。
【0050】
前記ポリエステルジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、オクタデカンジオール等のジオール成分と、コハク酸、メチルコハク酸、アジピン酸、ピメリック酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン酸、1,14-テトラデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸やこれらの酸無水物または低級アルキルエステル等のジカルボン酸成分またはその誘導体を、それぞれ単独でもしくは混合物状態で脱水反応して得られるポリエステルジオール等が挙げられる。
前記ポリエステルジオールの市販品としては、例えば、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸とのポリエステルジオールである商品名「クラレポリオールP-510」、「クラレポリオールP-1010」、「クラレポリオールP-2010」、「クラレポリオールP-3010」、「クラレポリオールP-5010」(以上、クラレ社製)等が挙げられる。
【0051】
前記ポリエーテルジオールとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を開環重合させたポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれらを共重合させたコポリエーテル等が挙げられる。
前記ポリエーテルジオールの市販品としては、例えば、プロピレングリコールにプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルジオールである商品名「アデカポリエーテルP-400」、「アデカポリエーテルP-1000」、「アデカポリエーテルP-2000」、「アデカポリエーテルP-3000」(以上、ADEKA社製)等が挙げられる。
【0052】
前記ポリカプロラクトンジオールとしては、例えば、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン等の環状エステルモノマーの開環重合により得られるカプロラクトン系ポリエステルジオール等が挙げられる。
前記ポリカプロラクトンジオールの市販品としては、例えば、商品名「プラクセルL205AL」、「プラクセルL212AL」、「プラクセルL220AL」、「プラクセルL220PL」、「プラクセルL230AL」(以上、ダイセル社製)等が挙げられる。
【0053】
前記ポリカーボネートジオールとしては、例えば、プロピレンカーボネートジオール、ヘキサメチレンカーボネートジオール、3-メチルペンテンカーボネートジオール等のカーボネートジオールや、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール等の多価アルコールとジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネートとの脱アルコール反応等で得られるポリカーボネートジオール等が挙げられる。
前記ポリカーボネートジオールの市販品としては、例えば、商品名「PLACCEL CD205」、「PLACCEL CD210」、「PLACCEL CD220」、「PLACCEL CD205PL」、「PLACCEL CD210PL」、「PLACCEL CD220PL」(以上、ダイセル社製)等が挙げられる。
【0054】
これら多価アルコール類(a2)のなかでも、結晶性を崩し、密着性を上げられる点やガラス転移温度を制御できる点で、分岐鎖脂肪族ジオール(a2-2)が好ましく、反応性の点で1級水酸基を2つ以上有している分岐鎖脂肪族ジオールがより好ましく、さらに好ましくはネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、ダイマージオールからなる群から選択される少なくとも1種であり、特に好ましくは、入手のしやすさや反応制御、結晶性の崩しやすさの点で、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオールである。
【0055】
また、ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度を調整し、接着強度が向上する点で、直鎖脂肪族ジオール(a2-1)好ましく、より好ましくはエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオールであり、さらに好ましくは、入手のしやすさから、エチレングリコール、1,4―ブタンジオールである。
【0056】
前記多価アルコール類(a2)は、分岐鎖脂肪族ジオール(a2-2)と直鎖脂肪族ジオール(a2-1)の両方を含むことが好ましい。
【0057】
さらに、ポリエステル系樹脂(A)の分散度を適切にコントロールする点から、3価以上の多価アルコール(a2-3)が好ましく、特に好ましくはトリメチロールプロパンである。
【0058】
前記ポリエステル系樹脂(A)が、分岐鎖脂肪族ジオール(a2-2)由来の構造単位を含む場合、その含有量は、多価アルコール類(a2)由来の構造単位の10モル%以上であることが好ましく、より好ましくは51~90モル%である。分岐鎖脂肪族ジオール(a2-2)由来の構造単位の含有量が少なすぎると、ポリエステル系樹脂(A)が結晶化しやすくなり、接着性が低下する傾向がある。
【0059】
前記ポリエステル系樹脂(A)が、直鎖脂肪族ジオール(a2-1)由来の構造単位を含む場合、その含有量は、多価アルコール類(a2)由来の構造単位の10モル%以上であることが好ましく、より好ましくは30~85モル%である。直鎖脂肪族ジオール(a2-1)由来の構造単位の含有量が前記範囲内であると、結晶性を崩しやすく非晶性ポリエステル(A)として設計しやすく、ガラス転移温度も適切コントロールできることで粘度と接着性のバランスに優れる傾向がある。
【0060】
また、分岐鎖脂肪族ジオール(a2-2)由来の構造単位と直鎖脂肪族ジオール(a2-1)由来の構造単位の比率(モル比)〔(a2-2):(a2-1)〕は、5:95~99:1であることが好ましく、より好ましくは20:80~90:10、さらに好ましくは30:80~80:20である。分岐鎖脂肪族ジオール(a2-2)由来の構造単位と直鎖脂肪族ジオール(a2-1)由来の構造単位の比率(モル比)が前記範囲内であると、結晶性を崩しやすく非晶性ポリエステル(A)として設計しやすく、ガラス転移温度も適切コントロールできることで粘度と接着性のバランスに優れる傾向がある。また、分岐鎖脂肪族ジオール(a2-2)由来の構造単位が多すぎると、接着力に劣る傾向があり、直鎖脂肪族ジオール(a2-1)由来の構造単位が多すぎると、結晶性が増してしまい非晶性ポリエステルが作りにくい傾向がある。
【0061】
なお、ポリエステル系樹脂(A)が、後述する熱可塑性ポリエステル系樹脂(a3)由来の構造単位を含む場合、熱可塑性ポリエステル系樹脂(a3)の構造単位である多価アルコール類(a2)(例えば、直鎖脂肪族ジオール(a2-1)等)由来の構造単位を含めて、前記の比率にすることが好ましい。
【0062】
ポリエステル系樹脂(A)が、3価以上の多価アルコール(a2-3)由来の構造単位を有する場合、その含有量は、多価アルコール類(a2)由来の構造単位の0.1~5モル%であることが、130℃における粘度と接着強度のバランスの点で好ましく、より好ましくは0.1~4モル%、特に好ましくは0.2~3モル%である。
【0063】
前記ポリエステル系樹脂(A)は、分岐骨格を導入する目的で、前述した酸無水物基が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-3)由来の構造単位、及び/又は、3価以上の多価アルコール(a2-3)由来の構造単位を含むことが好ましい。
ポリエステル系樹脂(A)が、酸無水物基が0又は1である3価以上の3価以上の多価カルボン酸類(a1-3)由来の構造単位、及び/又は、3価以上の多価アルコール(a2-3)由来の構造単位を含む、すなわち、多官能構造を含むことにより、ポリエステル系樹脂(A)は、分岐構造を有することとなる。
通常、ポリエステル系樹脂の重量平均分子量が低すぎると接着特性が低下する傾向があり、粘度が高すぎると、低温での塗工適性が低下する傾向がある。しかし、このような分岐構造を有するポリエステル系樹脂は、重量平均分子量に対しての粘度が低下する傾向がある。そのため、接着特性と粘度のバランスを取るうえで、ポリエステル系樹脂(A)が、多官能構造を有することが好ましい。しかし、必要以上に多官能構造を持たせることによりゲル化がおこり、ポリエステル系樹脂(A)の製造が難しくなったり、接着性や塗工適性が低下したりする傾向がある。
【0064】
また、ポリエステル系樹脂(A)に分岐骨格を導入する目的で、3価以上の芳香族多価カルボン酸類由来の構造単位、及び/又は、3価以上の脂肪族多価アルコール由来の構造単位を含ませる場合、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位に対する3価以上の芳香族多価カルボン酸類由来の構造単位の含有量、又は、多価アルコール類(a2)由来の構造単位に対する3価以上の脂肪族多価アルコール由来の構造単位の含有量(ただし、解重合反応で使用する酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1-3)を除く)は、それぞれ好ましくは0.1~5モル%、より好ましくは0.3~3モル%、さらに好ましくは0.5~2モル%の範囲である。両方又はいずれか一方の含有量が多すぎると、必要以上に多官能構造を持たせることによりゲル化がおこると、樹脂の製造が難しくなったり、接着性や塗工適性が低下したりする傾向がある。
【0065】
〔熱可塑性ポリエステル系樹脂(a3)〕
前記ポリエステル系樹脂(A)は、熱可塑性ポリエステル系樹脂(a3)由来の構造単位を含有することが、リサイクルの点で好ましい。熱可塑性ポリエステル系樹脂(a3)としては、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と称する場合がある)を用いることが好ましい。前記PETは、テレフタル酸類とエチレングリコールとが重合したポリエステル系樹脂であり、テレフタル酸類由来の構造単位と、エチレングリコール由来の構造単位を有する。
【0066】
前記PETは、さらに必要に応じて、例えば、イソフタル酸類、無水フタル酸類、アジピン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸類、セバシン酸類等の多価カルボン酸類由来の構造単位、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の多価アルコール類由来の構造単位等が含まれていてもよい。
なかでも、前記ジエチレングリコール由来の構造単位が、PETに対して0.1~5重量%含まれていることが好ましく、より好ましくは0.5~2.5重量%である。ジエチレングリコール由来の構造単位が少なすぎると、ポリエステル系樹脂(A)の結晶化度が高くなり、溶融しにくく製造時に溶け残りが起こりやすい傾向があり、多すぎると全体の樹脂組成に影響を与えてしまい、安定製造に不具合が出やすい傾向にある。
【0067】
前記PETの固有粘度(IV)は、0.50~0.90dL/gであることが好ましく、より好ましくは0.70~0.90dL/gである。この範囲にあることで、PETと他の原料との重縮合反応を260℃以下で行うことができる。また、固有粘度(IV)が、0.70dL/g以上のPETは、PETボトル用に使用されており、大量に入手が出来るので好ましい。
【0068】
前記PETの酸価は、50mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは10mgKOH/g以下、さらに好ましくは5mgKOH/g以下である。酸価が高すぎると、ポリエステル系樹脂(A)を製造した際の酸価が上がりやすくなってしまう傾向がある。
【0069】
前記PETは、市販の未使用のPETボトル、PETフィルム、その他PET製品の製造時の残品を粉砕したもの、廃棄物から回収し洗浄したリサイクルPET等を使用することができる。なかでも、リサイクルPETを使用することが地球環境の点から好ましい。これらリサイクルPETは、ペレット化又はフレーク化されたものを市場から手に入れることができる。
【0070】
前記ポリエステル系樹脂(A)が、熱可塑性ポリエステル系樹脂(a3)由来の構造単位を含む場合、その含有量は、ポリエステル系樹脂(A)に対して1~90重量%であることが好ましく、より好ましくは10~80重量%、さらに好ましくは20~70重量%、特に好ましくは30~60重量%、殊に好ましくは40~55重量%である。
かかる含有量が少なすぎると、地球環境に対しての貢献度が小さくなる傾向があり、多すぎるとポリエステル系樹脂(A)の結晶性が強くなり、接着性が低下する傾向がある。また、地球環境のためには、熱可塑性ポリエステル系樹脂(a3)はリサイクルPETであることが好ましく、ポリエステル系樹脂(A)におけるリサイクルPET由来の構成単位は多ければ多い方がよい。
【0071】
ポリエステル系樹脂(A)が、熱可塑性ポリエステル系樹脂(a3)由来の構造単位を含む場合、熱可塑性ポリエステル系樹脂(a3)由来の多価カルボン酸類(a1)由来の構成単位の含有量は、多価カルボン酸類(a1)由来の構造単位の1モル%以上であることが好ましく、より好ましくは5~90モル%、さらに好ましくは20~80モル%、特に好ましくは30~70モル%、殊に好ましくは40~60モル%である。かかる含有量が少なすぎると、地球環境に対しての貢献度が小さくなる傾向があり、多すぎるとポリエステル系樹脂(A)の結晶性が強くなり、対象物に対する密着性が低下する傾向がある。
【0072】
さらに、前記ポリエステル系樹脂(A)には、オキシカルボン酸化合物由来の構造単位が含まれていてもよい。
前記オキシカルボン酸化合物とは、分子構造中に水酸基とカルボキシ基を有する化合物である。
前記オキシカルボン酸化合物としては、例えば、5-ヒドロキシイソフタル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシフェニルプロピオン酸、p-ヒドロキシフェニル酢酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4,4-ビス(p-ヒドロキシフェニル)バレリック酸等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上が含まれていてもよい。
【0073】
ポリエステル系樹脂(A)が、オキシカルボン酸化合物由来の構造単位を含む場合、その含有量は、ポリエステル系樹脂(A)に対して、10モル%以下が好ましく、さらに好ましくは5モル%以下である。
【0074】
〔ポリエステル系樹脂(A)の製造〕
前記ポリエステル系樹脂(A)は周知の方法により製造することができ、例えば、多価カルボン酸類(a1)、多価アルコール類(a2)、好ましくは熱可塑性ポリエステル系樹脂(a3)を、必要に応じて触媒の存在下で、エステル化反応又はエステル交換反応に付してプレポリマーを得た後、重縮合を行い、さらに必要に応じて解重合反応を行うことにより製造することができる。
【0075】
〔非晶性ポリエステル系樹脂(A)の溶融粘度〕
前記ポリエステル系樹脂(A)の130℃における溶融粘度は、1~800Pa・sであり、好ましくは、2~500Pa・s、より好ましくは3~200Pa・sであり、更に好ましくは4~100Pa・s、特に好ましくは5~50Pa・sである。
かかる溶融粘度が前記の範囲内であると、低温での塗工適性を損なわずに接着性が向上するという効果が得られる。
前記の溶融粘度は、高化式フローテスター(島津製作所社製「CFT-500WX」)を用い、ノズル;φ1mm×1cm、荷重(試験力);5または30kg、温度;130℃の条件で測定する。溶融粘度が、7Pa・s以上の場合は、荷重(試験力)30kgで測定を行い、7Pa・s未満の場合は、荷重(試験力)5kgで測定を行う。
【0076】
〔非晶性ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)〕
前記ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、20℃以下である必要があり、好ましくは-80~10℃、より好ましくは-70~5℃、特に好ましくは-50~3℃、さらに好ましくは-30~0℃、殊に好ましくは-20~-2℃である。ガラス転移温度(Tg)が低すぎると、柔らかすぎることにより、接着性が低下する傾向があり、ガラス転移温度(Tg)が高すぎると、なじみ性が悪くなることで接着性や接着力、また耐洗濯性が低下する傾向がある。また、ガラス転移温度を下げることで重量平均分子量を高く保ちながら、130℃での粘度を下げることが出来る。
【0077】
〔非晶性ポリエステル系樹脂(A)の結晶融解熱〕
前記ポリエステル系樹脂(A)は非晶性であり、結晶融解熱を測定した際に融点が出ないことが好ましいが、融点が出る場合には、1J/g未満であり、特に好ましくは0.1J/g未満で、最も好ましくは観測されないことである。結晶融解熱が高すぎると密着性、接着特性が低下し、特に耐洗濯性が低下する傾向がある。
【0078】
前記結晶融解熱を調整する方法としては、例えば、多価カルボン酸類(a1)としてイソフタル酸類を使用したり、モノマー成分を4種以上組み合わせたりすることで、コントロールすることが出来る。
【0079】
前記ガラス転移温度(Tg)、結晶融解熱の測定方法は以下のとおりである。
ガラス転移温度(Tg)、結晶融解熱は、ポリエステル系樹脂(A)を23℃50%R.H.で7日間静置して、そのサンプルを5mg程度採取し、示差走査熱量計を用いて測定することにより求めることができる。なお、測定条件は、測定温度範囲-90~200℃、温度上昇速度10℃/分である。
【0080】
〔非晶性ポリエステル系樹脂(A)の酸価〕
前記非晶性ポリエステル系樹脂(A)の酸価は、例えば、ポリエステル系樹脂(A)の経時での加水分解を抑制しやすい点や、後述する加水分解抑制剤(C)を含有させた場合に、加水分解抑制剤(C)との経時での反応を抑制しやすい点、つまり、保存安定性を上げる点で、10mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは3mgKOH/g以下、さらに好ましくは1mgKOH/g以下、特に好ましくは0.5mgKOH/g以下、最も好ましくは0.1mgKOH/g以下である。かかる酸価が大きすぎると保存安定性に劣る傾向がある。
前記酸価を調整するには、例えば、エステル化反応又はエステル交換反応時に多価アルコール(a2)の比率を増やしたり、反応条件を調節したりすることがあげられる。なお、酸価の下限値は通常0mgKOH/gである。
【0081】
酸価の定義や測定方法については以下のとおりである。
酸価(mgKOH/g)は、ポリエステル系樹脂(A)1gをトルエン/メタノールの混合溶剤(例えば、体積比でトルエン/メタノール=9/1)30gに溶解し、JIS K 0070に基づき中和滴定により求めることができる。
なお、結晶性が高すぎて、混合溶剤で溶解出来ないときは、適宜他の溶媒を使用することが出来る。その際にも、溶媒のみでの空試験を行う。
なお、本発明において、ポリエステル系樹脂(A)の酸価は、ポリエステル系樹脂(A)中におけるカルボキシ基の含有量に起因するものである。
【0082】
〔非晶性ポリエステル系樹脂(A)の水酸基価〕
また、前記ポリスエテル系樹脂(A)の水酸基価は3~50mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは5~40mgKOH/g、さらに好ましくは10~30mgKOH/g、特に好ましくは12~27mgKOH/gである。かかる水酸基価が高すぎると、耐洗濯性が低下しやすくなる傾向があり、水酸基価が低すぎると透湿防水膜への密着性が低下しやすくなる傾向がある。
前記ポリエステル系樹脂(A)の水酸基価は、JIS K 0070に基づき中和滴定により求められるものである。
【0083】
〔非晶性ポリエステル系樹脂(A)のエステル基濃度〕
前記ポリエステル系樹脂(A)のエステル基濃度は、6.0ミリモル/g以上であることが好ましく、より好ましくは7.0~12.0ミリモル/g、さらに好ましくは8.0~11.0ミリモル/gである。かかるエステル基濃度が小さすぎるとポリエステル系樹脂(A)の極性が下がり、接着性が低下する傾向があり、高すぎると結晶性が上がりやすい傾向にあり、密着性が低下しやすい傾向がある。
【0084】
前記エステル基濃度(ミリモル/g)とは、ポリエステル系樹脂(A)1g中のエステル基のモル数のことであり、例えば、仕込み量からの計算値で求められる。かかる計算方法は、多価カルボン酸類(a1)と多価アルコール類(a2)の仕込みモル数の少ない方のモル数を出来上がりの全体重量で割った値であり、計算式の例を以下に示す。
なお、多価カルボン酸類(a1)と多価アルコール類(a2)の各仕込み量が同モル量の場合には、下記のどちらの計算式を用いてもよい。
また、モノマーとして、カルボキシ基と水酸基を両方持ったものを使ったり、カプロラクトン等からポリエステルを調製する場合等は、適宜計算方法を変えることとなる。
【0085】
<多価カルボン酸類(a1)が少ない場合>
エステル基濃度(ミリモル/g)=〔(X1/x1×m1+X2/x2×m2+X3/x3×m3・・・)/Z〕×1000
X:多価カルボン酸類(a1)の仕込み量(g)
x:多価カルボン酸類(a1)の分子量
m:多価カルボン酸類(a1)の1分子あたりのカルボキシ基の数
Z:出来上がり重量(g)
【0086】
<多価アルコール類(a2)が少ない場合>
エステル基濃度(ミリモル/g)=〔(Y1/y1×n1+Y2/y2×n2+Y3/y3×n3・・・)/Z〕×1000
Y:多価アルコール類(a2)の仕込み量(g)
y:多価アルコール類(a2)の分子量
n:多価アルコール類(a2)の1分子あたりの水酸基の数
Z:出来上がり重量(g)
【0087】
また、前記エステル基濃度は、NMR等を用いて公知の方法で測定することもできる。
例えば、ポリエステル系樹脂(A)のエステル基濃度や組成及び組成比の決定は共鳴周波数400MHzの1H-NMR測定(プロトン型核磁気共鳴分光測定)、13C-NMR測定(カーボン型核磁気共鳴分光測定)にて行うことが出来る。
【0088】
〔非晶性ポリエステル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)及びピークトップ分子量(Mp)〕
前記ポリエステル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、通常10000以上であり、12000以上が好ましく、15000以上がより好ましく、18000以上が更に好ましく、20000以上が特に好ましく、30000以上がより更に好ましく、35000以上がより特に好ましく、40000以上が殊に好ましい。一方通常120000以下、100000以下が好ましく、90000以下がより好ましく、85000以下が更に好ましく、80000以下が特に好ましく、75000以下がより更に好ましく、70000以下がより特に好ましく、65000以下が最も好ましい。
重量平均分子量(Mw)が前記の範囲であると、接着剤の凝集力が適切に調整され、適切な接着性が得られる傾向にある。また、低温であっても適切な塗工適性が得られる傾向にある。
【0089】
前記ポリエステル系樹脂(A)のピークトップ分子量(Mp)は、通常5000以上、6000以上が好ましく、7500以上がより好ましく、9000以上が更に好ましく、10000以上が特に好ましく、15000以上がより更に好ましく20000以上が最も好ましい。一方通常100000以下、80000以下が好ましく70000以下が好ましく60000以下が好ましく50000以下が好ましく、45000以下が好ましく40000以下が好ましい。ピークトップ分子量(Mp)が前記の範囲であると、接着剤の凝集力が適切に調整され、適切な接着性が得られる傾向にある。また、低温であっても適切な塗工適性が得られる傾向にある。
【0090】
ポリエステル系樹脂(A)は、重量平均分子量が高いことが接着特性の上で有利である。一方、重量平均分子量が高くなると、粘度も高くなる傾向があり、本ポリエステル系樹脂組成物の塗工を想定する130℃での粘度が高いと塗工適性が劣ることとなる。このトレードオフを打破するために、ポリエステル系樹脂(A)の分子量分布(分散度)を広げることで、重量平均分子量を高くしながら、130℃での粘度を下げることが可能となる。前記分子量分布(分散度)は、重量平均分子量(Mw)とピークトップ分子量(Mp)の比率から求めることができる。
【0091】
ポリエステル系樹脂(A)の分散度(Mw/Mp)は、0.5~5.0であることが好ましく、さらには、0.8~4.0が好ましく、特には1.2~2.0であることが好ましく、殊には1.5~3.0であることが好ましい。分散度が低すぎると接着性と塗工性の両立が難しくなる傾向があり、分散度が高すぎると分岐が多すぎることにより製造時のゲル化の懸念や貼合時の接着性の低下が起こりやすい傾向がある。
【0092】
重量平均分子量(Mw)及びピークトップ分子量(Mp)の測定方法は以下のとおりである。
重量平均分子量(Mw)及びピークトップ分子量(Mp)は、高速液体クロマトグラフ(日本Waters社製「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)を、3本直列にして測定し、標準ポリスチレン分子量換算により求めることができる。
【0093】
<結晶性ポリエステル系樹脂(B)>
本発明において、結晶性ポリエステル系樹脂(B)(以下、「ポリエステル系樹脂(B)」と省略することがある。)は結晶性であることが必要である。
前記ポリエステル系樹脂(B)は、多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位と多価アルコール類(b2)由来の構造単位を分子中に含むものであることが好ましく、さらに好ましくは、リサイクルの点で熱可塑性ポリエステル系樹脂(b3)由来の構造単位を含むものである。
【0094】
結晶性ポリエステル系樹脂(B)に使用する原料は、前記非晶性ポリエステル系樹脂(A)を製造する場合と同じ原料が用いることができる。
すなわち、多価カルボン酸類(b1)としては、多価カルボン酸類(a1)と同様であり、多価アルコール類(b2)としては、多価アルコール類(a2)と同様であり、熱可塑性ポリエステル系樹脂(a3)としては、熱可塑性ポリエステル系樹脂(b3)と同様である。
【0095】
〔多価カルボン酸類(b1)〕
多価カルボン酸類(b1)のなかでも結晶性を上げて、耐熱性を上げる点から、芳香族ジカルボン酸類(b1-1)を用いることが好ましく、特にはテレフタル酸類が好ましい。
また、柔軟性を与え、接着性を向上させる点で、脂肪族ジカルボン酸類(b1-2)が好ましく、より好ましくはアルキルジカルボン酸類であり、さらに好ましくは直鎖アルキルジカルボン酸類であり、殊に好ましくはコハク酸類、アジピン酸類、セバシン酸類であり、最も好ましくは汎用性の点で、アジピン酸類である。
【0096】
さらに、ポリエステル系樹脂(B)は、結晶性を適正に保ち、接着性をコントロールする点から、複数種の多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位を含むことが好ましい。
【0097】
また、前記多価カルボン酸類(b1)は、地球環境に配慮するために、バイオマス度の高いもの、すなわち植物由来の多価カルボン酸類を用いることが好ましい。前記植物由来の多価カルボン酸類としては、例えば、コハク酸類、セバシン酸類等の直鎖アルキルジカルボン酸類や、ダイマー酸及びその水素添加物、また、糖等から作られるフランジカルボン酸類、植物由来のパラキシレンから誘導されるテレフタル酸類やそれらのエステル化物等が挙げられる。
【0098】
ポリエステル系樹脂(B)が、芳香族ジカルボン酸類(b1-1)由来の構造単位を含む場合、その含有量は、多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位の20モル%以上であることが好ましく、より好ましくは30~90モル%、さらに好ましくは40~80モル%、特に好ましくは45~70モル%、最も好ましくは50~65モル%である。芳香族ジカルボン酸類(b1-1)由来の構造単位の含有量が前記の範囲内であると接着性と耐熱性のバランスに優れる傾向にある。
【0099】
ポリエステル系樹脂(B)が、脂肪族ジカルボン酸類(b1-2)由来の構造単位を含む場合、その含有量は、多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位の10モル%以上であることが好ましく、より好ましくは20~80モル%、さらに好ましくは30~70モル%、特に好ましくは35~50モル%である。脂肪族ジカルボン酸類(b1-2)由来の構造単位の含有量が少ないと、ポリエステル系樹脂(B)が硬くなりすぎて、密着性が劣ることにより接着性が低下する傾向があり、多すぎるとポリエステル系樹脂(B)が柔らかくなりすぎて、接着強度が出にくくなる傾向がある。
【0100】
また、芳香族ジカルボン酸類(b1-1)由来の構造単位と脂肪族ジカルボン酸類(b1-2)由来の構造単位の比率(モル比)が、20:80~90:10であることが好ましく、より好ましくは、30:70~80:20、さらに好ましくは50:50~70:30である。芳香族ジカルボン酸類(b1-1)由来の構造単位と脂肪族ジカルボン酸類(b1-2)由来の構造単位の比率(モル比)〔(b1-1):(b1-2)〕が前記範囲内であると、剛直性と柔軟性のバランスに優れる傾向がある。芳香族ジカルボン酸類(b1-1)由来の構造単位が多すぎると、常温(23℃)での柔軟性が低下しやすい傾向があり、脂肪族ジカルボン酸類(b1-2)由来の構造単位が多すぎると、剛直性が低下することにより、接着強度が下がりやすくなる傾向があり、耐熱性が低下しやすい傾向がある。
【0101】
なお、ポリエステル系樹脂(B)が、後述する熱可塑性ポリエステル系樹脂(b3)由来の構造単位を含む場合、熱可塑性ポリエステル系樹脂(b3)の構造単位である多価カルボン酸類(b1)〔例えば、芳香族ジカルボン酸類、脂肪族ジカルボン酸類等〕由来の構造単位を含めて、前記の比率にすることが好ましい。
【0102】
また、本発明においては、前記非晶性ポリエステル系樹脂(A)が脂肪族ジカルボン酸類(a1-2)由来の構造単位を含み、結晶性ポリエステル(B)が脂肪族ジカルボン酸類(b1-2)由来の構造単位を含み、前記脂肪族ジカルボン酸類(a1-2)と脂肪族ジカルボン酸類(b1-2)が同一の化合物であるか、又は、その炭素数の差が2以下の化合物であることが、非晶性ポリエステル系樹脂(A)と結晶性ポリエステル(B)の相溶性が良くなることで作業性が良くなる点や長期耐久性の点で好ましい。
【0103】
〔多価アルコール類(b2)〕
多価アルコール類(b2)のなかでも、結晶性と密着性のバランスやガラス転移温度を制御できる点で、直鎖脂肪族ジオール(b2-1)が好ましく、より好ましくはエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオールからなる群から選択される少なくとも1種であり、特に好ましくはエチレングリコール及び/又は1,4-ブタンジオールである。また、多価アルコール類(b2)は、2種以上を併用することが好ましく、入手のしやすさや反応制御、結晶性のコントロールの点で、エチレングリコールと1,4-ブタンジオールを併用することが特に好ましい。
【0104】
さらに、多価アルコール類(b2)は、目的とする分子量のポリマーを容易に得るために、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートジオール等を用いてもよい。これらの多価アルコール類(b2)についても、ポリエステル系樹脂(A)で説明したものと同様のものを用いることができる。
【0105】
ポリエステル系樹脂(B)が、直鎖脂肪族ジオール(b2-1)由来の構造単位を含む場合、その含有量は、多価アルコール類(b2)由来の構造単位の20モル%以上であることが好ましく、より好ましくは51~100モル%である。かかる含有量が少なすぎると、凝集力が低下する傾向があり、接着性が低下する傾向がある。
【0106】
なお、ポリエステル系樹脂(B)が、後述する熱可塑性ポリエステル系樹脂(b3)由来の構造単位を含む場合、その構成単位である多価アルコール類(b2)(例えば、直鎖脂肪族ジオール(b2-1)等)由来の構造単位を含めて、前記の比率にすることが好ましい。
【0107】
前記ポリエステル系樹脂(B)は、分岐骨格を導入する目的で、酸無水物基が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(b1-3)由来の構造単位、及び/又は、3価以上の多価アルコール(a2-3)由来の構造単位を含んでいてもよい。
また、3価以上の多価カルボン酸類(b1-3)は、3価以上の芳香族多価カルボン酸類が好ましく、3価以上の多価アルコール(b2-3)は、3価以上の脂肪族多価アルコールが好ましい。
ポリエステル系樹脂(B)が、酸無水物基が0又は1である3価以上の3価以上の多価カルボン酸類(b1-3)由来の構造単位、及び/又は、3価以上の多価アルコール(b2-3)由来の構造単位を含む、すなわち、多官能構造を含むことにより、ポリエステル系樹脂(B)は、分岐構造を有することとなる。
通常、ポリエステル系樹脂の重量平均分子量が低すぎると接着特性が低下する傾向があり、粘度が高すぎると、低温での塗工適性が低下する傾向がある。しかし、このような分岐構造を有するポリエステル系樹脂は、重量平均分子量に対しての粘度が低下する傾向がある。そのため、接着特性と粘度のバランスを取るうえで、ポリエステル系樹脂(B)が、多官能構造を有することが好ましい。しかし、必要以上に多官能構造を持たせることによりゲル化がおこり、ポリエステル系樹脂(B)の製造が難しくなったり、接着性や塗工適性が低下したりする傾向がある。
【0108】
ポリエステル系樹脂(B)が、酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(b1-3)由来の構造単位を有する場合、その含有量は、多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位の0.1~5モル%であることが、130℃における粘度と接着強度のバランスの点で好ましく、より好ましくは0.1~2.5モル%、さらに好ましくは0.2~2モル%である。
【0109】
前記ポリエステル系樹脂(B)が、3価以上の多価アルコール(b2-3)由来の構造単位を有する場合、その含有量は、多価アルコール類(b2)由来の構造単位の0.001~5モル%であることが130℃における粘度と接着強度のバランスの点で好ましく、さらには0.01~4モル%であることが特に好ましく、0.015~3モル%であることが殊に好ましい。
【0110】
ポリエステル系樹脂(B)に分岐骨格を導入する目的で3価以上の芳香族多価カルボン酸類由来の構造単位、及び/又は、3価以上の脂肪族多価アルコール由来の構造単位を含ませる場合、多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位に対する3価以上の芳香族多価カルボン酸類由来の構造単位の含有量、又は、多価アルコール類(b2)由来の構造単位に対する3価以上の脂肪族多価アルコール由来の構造単位の含有量(ただし、解重合反応で使用する酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(b1-3)類を除く)は、それぞれ好ましくは0.1~5モル%、より好ましくは0.3~3モル%、さらに好ましくは0.5~2モル%である。両方又はいずれか一方の含有量が多すぎると、必要以上に多官能構造を持たせることによりゲル化がおこり、ポリエステル系樹脂(B)の製造が難しくなり、接着性や塗工適性が低下する傾向がある。
【0111】
〔熱可塑性ポリエステル系樹脂(b3)〕
ポリエステル系樹脂(B)が、熱可塑性ポリエステル系樹脂(b3)由来の構造単位を含む場合、その含有量は、ポリエステル系樹脂(B)に対して1~90重量%であることが好ましく、より好ましくは10~80重量%、さらに好ましくは20~70重量%、特に好ましくは30~60重量%、殊に好ましくは40~55重量%である。
かかる含有量が少なすぎると、地球環境に対しての貢献度が小さくなる傾向があり、多すぎるとポリエステル系樹脂(B)の結晶性が強くなり、接着性が低下する傾向がある。また、地球環境のためには、熱可塑性ポリエステル系樹脂(b3)はリサイクルPETであることが好ましく、リサイクルPET由来の構成単位は多ければ多い方がよい。
【0112】
ポリエステル系樹脂(B)が、熱可塑性ポリエステル系樹脂(b3)由来の構造単位を含む場合、熱可塑性ポリエステル系樹脂(b3)由来のジカルボン酸類(b1)由来の構成単位の含有量は、多価カルボン酸類(b1)由来の構造単位の1モル%以上であることが好ましく、より好ましくは5~90モル%、さらに好ましくは20~80モル%、特に好ましくは30~70モル%、殊に好ましくは40~60モル%である。かかる含有量が少なすぎると、地球環境に対しての貢献度が小さくなる傾向があり、多すぎるとポリエステル系樹脂(B)の結晶性が強くなり、対象物に対する密着性が低下する傾向がある。
【0113】
さらに、前記ポリエステル系樹脂(B)には、オキシカルボン酸化合物由来の構造単位が含まれていてもよい。
前記オキシカルボン酸化合物とは、分子構造中に水酸基とカルボキシ基を有する化合物である。
前記オキシカルボン酸化合物としては、例えば、5-ヒドロキシイソフタル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシフェニルプロピオン酸、p-ヒドロキシフェニル酢酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4,4-ビス(p-ヒドロキシフェニル)バレリック酸等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上が含まれていてもよい。
【0114】
ポリエステル系樹脂(B)が、オキシカルボン酸化合物由来の構造単位を含む場合、その含有量は、ポリエステル系樹脂(B)に対して、10モル%以下が好ましく、さらに5モル%以下が好ましい。
【0115】
〔ポリエステル系樹脂(B)の製造〕
前記ポリエステル系樹脂(B)は、上述した原料を用いてポリエステル系樹脂(A)と同様に製造することができる。
【0116】
〔結晶性ポリエステル系樹脂(B)の溶融粘度〕
前記ポリエステル系樹脂(B)の130℃における溶融粘度は、1~10000Pa・sであり、好ましくは、2~1000Pa・s、より好ましくは3~500Pa・sであり、更に好ましくは4~100Pa・s、特に好ましくは5~50Pa・sである。
かかる溶融粘度が前記の範囲内であると、低温での塗工適性と接着性が優れるという効果が得られる。
前記の溶融粘度は、高化式フローテスター(島津製作所社製「CFT-500WX」)を用い、ノズル;φ1mm×1cm、荷重(試験力);5又は30kg、温度;130℃の条件で測定する。溶融粘度が、7Pa・s以上の場合は、荷重(試験力)30kgで測定を行い、7Pa・s未満の場合は、荷重(試験力)5kgで測定を行う。
【0117】
〔結晶性ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)〕
前記ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)は、20℃以下である必要があり、より好ましくは-60~15℃、特に好ましくは-50~10℃、さらに好ましくは-40~8℃、より好ましくは-35~5℃、殊に好ましくは-30~0℃、最も好ましくは-25~-5℃である。ガラス転移温度(Tg)が低すぎると、耐熱性が劣る傾向があり、ガラス転移温度(Tg)が高すぎると、接着性が不十分になったり、130℃の粘度が上がってしまう傾向がある。
【0118】
〔結晶性ポリエステル系樹脂(B)の融点(Tm)〕
前記ポリエステル系樹脂(B)の融点(Tm)は、50℃以上であることが好ましく、より好ましくは70~150℃、特に好ましくは74~130℃、さらに好ましくは78~125℃、より好ましくは80~120℃、特に好ましくは81~110℃、殊に好ましくは83~100℃である。融点(Tm)が低すぎると、耐熱性が劣る傾向があり、融点(Tm)が高すぎると、低温での塗工適性が悪くなったり、接着性が不十分になったりする傾向がある。
【0119】
〔結晶性ポリエステル系樹脂(B)の結晶融解熱〕
前記ポリエステル系樹脂(B)は結晶性であり、結晶融解熱を測定した際の前記融点における、結晶融解熱に特に制限は無いが、通常5J/g以上であり、より好ましくは5~30J/g、更に好ましくは5~25J/g、特に好ましくは5~20J/gである。結晶融解熱が低すぎると、耐熱性や接着強度が低下する傾向にあり、高すぎると密着性が得られず、接着特性が低下する傾向がある。
【0120】
前記結晶融解熱を調整する方法としては、例えば、多価カルボン酸類(b1)としてテレフタル酸類、アジピン酸類、セバシン酸類のような対称性のある多価カルボン酸を複数種使うことで、コントロールすることが出来る。
【0121】
前記ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)、結晶融解熱の測定方法は以下のとおりである。
ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)、結晶融解熱は、ポリエステル系樹脂(B)を23℃50%R.H.で7日間静置して、そのサンプルを5mg程度採取し、示差走査熱量計を用いて測定することにより求めることができる。なお、測定条件は、測定温度範囲-90~200℃、温度上昇速度10℃/分である。
【0122】
〔結晶性ポリエステル系樹脂(B)の酸価〕
前記ポリエステル系樹脂(B)の酸価は、例えば、ポリエステル系樹脂(A)の経時での加水分解を抑制しやすい点や、後述する加水分解抑制剤(C)を含有させた場合に、加水分解抑制剤(C)との経時での反応を抑制しやすい点、つまり、保存安定性を上げる点で、10mgKOH/g以下であることが好ましく、なかでも、3mgKOH/g以下であることが好ましい。さらに好ましくは1mgKOH/g以下、特に好ましくは0.5mgKOH/g以下であり、最も好ましくは0.1mgKOH/g以下である。かかる酸価が大きすぎると保存安定性が低下する傾向がある。
前記酸価を調整するには、例えば、エステル化反応又はエステル交換反応時に多価アルコール類(b2)の比率を増やしたり、反応条件を調節したり、芳香族カルボン酸類(b1-1)成分として、熱可塑性ポリエステル系樹脂(b3)の使用を増やすことがあげられる。なお、酸価の下限値は通常0mgKOH/gである。
【0123】
酸価の定義や測定方法については以下のとおりである。
酸価(mgKOH/g)は、ポリエステル系樹脂(B)1gをトルエン/メタノールの混合溶剤(例えば、体積比でトルエン/メタノール=9/1)30gに溶解し、JIS K 0070に基づき中和滴定により求めることができる。
なお、結晶性が高すぎて、前記混合溶剤で溶解出来ないときは、適宜他の溶媒を使用することが出来る。その際にも、溶媒のみでの空試験を行う。
なお、本発明において、ポリエステル系樹脂(B)の酸価は、ポリエステル系樹脂(B)中におけるカルボキシ基の含有量に起因するものである。
【0124】
〔結晶性ポリエステル系樹脂(B)の水酸基価〕
また、前記ポリスエテル系樹脂(B)の水酸基価は3~50mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは5~40mgKOH/g、さらに好ましくは10~30mgKOH/g、特に好ましくは12~27mgKOH/gである。かかる水酸基価が高すぎると、耐洗濯性が低下しやすくなる傾向があり、水酸基価が低すぎるとポリエステル系フィルムへの密着性が低下しやすい傾向がある。
前記ポリエステル系樹脂(B)の水酸基価は、JIS K 0070に基づき中和滴定により求められるものである。
【0125】
〔結晶性ポリエステル系樹脂(B)のエステル基濃度〕
前記ポリエステル系樹脂(B)のエステル基濃度は、6.0ミリモル/g以上であることが好ましく、より好ましくは7.0~12.0ミリモル/g、さらに好ましくは8.0~11.0ミリモル/gである。かかるエステル基濃度が小さすぎるとポリエステル系樹脂(B)の極性が下がり、接着性が低下する傾向があり、高すぎると凝集力、結晶性が上がりすぎてしまい密着性が低下しやすい傾向がある。
【0126】
〔結晶性ポリエステル系樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)及びピークトップ分子量(Mp)〕
前記ポリエステル系樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)は、10000~100000が好ましく、より好ましくは12000~90000、特に好ましくは15000~85000、さらに好ましくは18000~80000であり、殊に好ましくは20000~75000である。
重量平均分子量(Mw)が低すぎると、接着剤の凝集力が下がることにより、接着性が低下する傾向がある。また、重量平均分子量(Mw)が高すぎると、低温での塗工適性が低下する傾向がある。
【0127】
本発明に用いるポリエステル系樹脂(B)のピークトップ分子量(Mp)は、5000~100000が好ましく、より好ましくは6000~95000、特に好ましくは7500~90000、さらに好ましくは9000~80000である。
ピークトップ分子量(Mp)が低すぎると、接着剤の凝集力が下がることにより、接着性が低下する傾向がある。また、ピークトップ分子量(Mp)が高すぎると、低温での塗工適性が低下する傾向がある。
【0128】
ポリエステル系樹脂(B)は、重量平均分子量が高いことが接着特性の上で有利である。一方、重量平均分子量が高くなると、粘度も高くなる傾向があり、本ポリエステル系樹脂組成物の塗工を想定する130℃での粘度が高いと塗工適性が劣ることとなる。このトレードオフを打破するために、ポリエステル系樹脂(B)の分子量分布(分散度)を広げることで、重量平均分子量を高くしながら、130℃での粘度を下げることが可能となる。前記分子量分布(分散度)は、重量平均分子量(Mw)とピークトップ分子量(Mp)の比率から求めることができる。
【0129】
ポリエステル系樹脂(B)の分散度(Mw/Mp)は、0.5~5.0であることが好ましく、より好ましくは、0.8~4.0、さらに好ましくは1.0~3.0、特に好ましくは1.2~2.0である。分散度が低すぎると接着性と塗工性の両立が難しくなる傾向があり、分散度が高すぎると分岐が多すぎることにより製造時のゲル化の懸念や貼合時の接着性の低下が起こりやすい傾向がある。
【0130】
重量平均分子量(Mw)及びピークトップ分子量(Mp)の測定方法は以下のとおりである。
重量平均分子量(Mw)及びピークトップ分子量(Mp)は、高速液体クロマトグラフ(日本Waters社製「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)を3本直列にして測定し、標準ポリスチレン分子量換算により求めることができる。
【0131】
なお、前記重量平均分子量とピークトップ分子量の分散度(Mw/Mn)については、粘度と接着力の関係でコントロールすることが重要であり、非晶性ポリエステル樹脂(A)と結晶性ポリエステル樹脂(B)のうち、本ポリエステル系樹脂組成物に多く含まれるもののみが、前記分散度(Mw/Mn)を満たせばよい。
【0132】
〔ポリエステル系樹脂組成物〕
本ポリエステル系樹脂組成物においては、非晶性ポリエステル系樹脂(A)と結晶性ポリエステル系樹脂(B)との含有比(重量比)が(A)/(B)=99/1~1/99であることが必要であり、好ましくは98/2~20/80、より好ましくは97/3~30/70である。非晶性ポリエステル系樹脂(A)と結晶性ポリエステル系樹脂(B)との含有比を前記範囲とした場合には、接着剤として使用したときに、耐熱性と耐洗濯性を両立することが出来る。
【0133】
ポリエステル系樹脂(A)の配合量は、ポリエステル系樹脂組成物100重量%に対して、1~99重量%であることが好ましく、より好ましくは20~98重量%、さらに好ましくは50~97重量%、特に好ましくは60~90重量%である。ポリエステル系樹脂(A)の配合量が少なすぎると、初期密着性や洗濯時の耐久性が低下する傾向があり、多すぎると乾燥機等にかけた際の耐熱性が低下する傾向がある。
【0134】
ポリエステル系樹脂(B)の配合量は、ポリエステル系樹脂組成物100重量%に対して、1~99重量%であることが好ましく、より好ましくは2~80重量%、さらに好ましくは3~50重量%、特に好ましくは10~40重量%であることが好ましい。配合量が少なすぎると、耐熱性が低下する傾向があり、多すぎると洗濯耐久性が低下する傾向がある。
【0135】
本ポリエステル系樹脂組成物において、ポリエステル系樹脂(A)及びポリエステル系樹脂(B)の合計の含有量は、本ポリエステル系樹脂組成物の固形分全体に対して、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、更に好ましくは98重量%以上である。なお、通常上限は100重量%である。
【0136】
〔加水分解抑制剤(C)〕
本ポリエステル系樹脂組成物は、さらに加水分解抑制剤(C)を含有することが、耐加水分解性の点で好ましい。
前記加水分解抑制剤(C)としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができ、例えば、前記ポリエステル系樹脂(A)及びポリエステル系樹脂(B)のカルボキシ基末端基と反応して結合する化合物が挙げられ、具体的には、例えば、カルボジイミド基、エポキシ基、オキサゾリン基等の官能基を有する化合物等が挙げられる。これらのなかでもカルボジイミド基含有化合物が、カルボキシ基末端基由来のプロトンの触媒活性を消失させる効果が高い点で好ましい。
【0137】
[カルボジイミド基含有化合物]
前記カルボジイミド基含有化合物としては、通常、カルボジイミド基(-N=C=N-)を分子内に1個以上有する公知のカルボジイミドを用いることができるが、より高温高湿下での耐久性を上げる点でカルボジイミド基を分子内に2個以上含有する化合物、すなわち多価カルボジイミド系化合物であることが好ましく、特にはカルボジイミド基を分子内に3個以上、さらには5個以上、殊には7個以上含有する化合物であることが好ましい。
なお、分子内に有するカルボジイミド基の数は通常50個以下であり、カルボジイミド基が多すぎると分子構造が大きくなりすぎるため相溶性が低下する傾向がある。
【0138】
前記カルボジイミド基含有化合物としては、耐加水分解性の観点から重量平均分子量が高いものを用いる方が好ましい。カルボジイミド基含有化合物の重量平均分子量は、1000以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましく、3000以上であることがさらに好ましい。なお、重量平均分子量の上限は通常50000である。
【0139】
また、カルボジイミド基含有化合物としては、揮発性が低い方が好ましく、そのために数平均分子量は高いものを用いる方が好ましく、通常、300~10000、好ましくは1000~5000である。
【0140】
カルボジイミド基含有化合物の分子量が小さすぎると、耐加水分解性が低下する傾向がある。なお、分子量が大きすぎると、ポリエステル系樹脂(A)及びポリエステル系樹脂(B)との相溶性が低下する傾向がある。
【0141】
前記カルボジイミド基含有化合物のカルボジイミド当量は、好ましくは50~10000であり、特に好ましくは100~1000であり、さらに好ましくは150~500である。なお、カルボジイミド当量とは、カルボジイミド基1個あたりの化学式量を示す。
【0142】
また、カルボジイミド基含有化合物としては、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させることによって生成するポリカルボジイミド系化合物を用いることも好ましい。
【0143】
(ポリカルボジイミド系化合物)
ポリカルボジイミド系化合物は、有機ジイソシアネート化合物を縮合反応させることにより得ることができる。
前記有機ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートとの混合物、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;
ヘキサメチレンジイソシアネート等の非環式脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、2,5(2,6)-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等の環式脂肪族ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
なかでも、耐湿熱性に優れるポリエステル系樹脂組成物とすることができる点で、芳香族ジイソシアネート化合物が好ましく、テトラメチルキシリレンジイソシアネートがより好ましい。
【0144】
前記有機ジイソシアネート化合物を公知のカルボジイミド化触媒を用い、常法にて脱炭酸縮合反応させることにより、ポリカルボジイミド系化合物を得ることができる。
【0145】
前記ポリカルボジイミド系化合物は、高温高湿度条件下でもヘイズ変化が小さく、耐湿熱性に優れる粘着剤とすることができる点から芳香族ポリカルボジイミド化合物であることが好ましい。
【0146】
ポリカルボジイミド系化合物の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)V-09GB、V-02B、V-04K、V-04PF、V-07、BASF社製のElastostabH01等が挙げられる
【0147】
[エポキシ基含有化合物]
前記エポキシ基含有化合物としては、例えば、グリシジルエステル化合物やグリシジルエーテル化合物等が挙げられる。
【0148】
前記グリシジルエステル化合物としては、例えば、安息香酸グリシジルエステル、t-Bu-安息香酸グリシジルエステル、p-トルイル酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ペラルゴン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、ベヘン酸グリシジルエステル、バーサティク酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレン酸グリシジルエステル、ベヘノール酸グリシジルエステル、ステアロール酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、メチルテレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、オクタデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステル等を挙げられ、これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
【0149】
前記グリシジルエーテル化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエ-テル、o-フェニルグリシジルエ-テル、1,4-ビス(β,γ-エポキシプロポキシ)ブタン、1,6-ビス(β,γ-エポキシプロポキシ)ヘキサン、1,4-ビス(β,γ-エポキシプポキシ)ベンゼン、1-(β,γ-エポキシプロポキシ)-2-エトキシエタン、1-(β,γ-エポキシプロポキシ)-2-ベンジルオキシエタン、2,2-ビス-[р-(β,γ-エポキシプロポキシ)フェニル]プロパンおよび2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパンや2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン等のビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応で得られるビスグリシジルポリエーテル等が挙げられ、これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
【0150】
[オキサゾリン基含有化合物]
前記オキサゾリン基含有化合物としては、例えば、ビスオキサゾリン化合物等が挙げられる。具体的には、例えば、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-エチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4,4’-ジエチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-プロピル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-ブチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-ヘキシル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-シクロヘキシル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-ベンジル-2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-o-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-エチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-テトラメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ヘキサメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-オクタメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-デカメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-エチレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-テトラメチレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-9,9’-ジフェノキシエタンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-シクロヘキシレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ジフェニレンビス(2-オキサゾリン)等が挙げられ、これらのなかでは、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)が、ポリエステル系樹脂(A)及びポリエステル系樹脂(B)との反応性の観点から最も好ましい。さらに、前記であげたビスオキサゾリン化合物は本発明の目的を奏する限り、これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
【0151】
これら加水分解抑制剤(C)としては、揮発性が低い方が好ましく、そのために分子量は高いものを用いる方が好ましい。
【0152】
前記加水分解抑制剤(C)の配合量は、ポリエステル系樹脂(A)とポリエステル系樹脂(B)の合計100重量部に対して、0.01~10重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.1~5重量部、さらに好ましくは0.2~3重量部である。かかる配合量が、前記範囲内であると、リサイクル性と耐久性のバランスに優れる傾向がある。また、配合量が多すぎるとポリエステル系樹脂組成物を含んだ繊維積層体のリサイクル時の異物となり、リサイクル性が悪くなる傾向がある。一方で、少なすぎると充分な耐久性が得られにくい傾向があるため、リサイクル性と耐久性のバランスを見て配合する必要がある。
【0153】
また、前記加水分解抑制剤(C)の配合量は、ポリエステル系樹脂(A)及びポリエステル系樹脂(B)の合計の酸価に応じて、配合量を最適化させることが好ましく、ポリエステル系樹脂組成物中のポリエステル系樹脂(A),ポリエステル系樹脂(B)の合計の酸価より求められるカルボキシ基の合計(i)と、ポリエステル系樹脂組成物中の加水分解抑制剤(C)の官能基量の合計(ii)のモル比((ii)/(i))が、0.5≦(ii)/(i)であることが好ましく、特に好ましくは1≦(ii)/(i)≦1000、さらに好ましくは1.5≦(ii)/(i)≦100である。
(i)に対する(ii)の含有割合が高すぎと、ポリエステル系樹脂(A)及びポリエステル系樹脂(B)との相溶性が低下したり、粘着力、凝集力、耐久性能が低下したりする傾向があり、(i)に対する(ii)の含有割合が低くなると、耐湿熱性能が低下する傾向がある。
【0154】
〔その他成分〕
本ポリエステル系樹脂組成物には、その機能性の更なる向上を目的として、ポリエステル系樹脂(A)、ポリエステル系樹脂(B)、加水分解抑制剤(C)、以外のその他成分を含んでいてもよい。その他成分としては、例えば、ポリイソシアネートなどの架橋剤、無機フィラー、シランカップリング剤等のカップリング剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、可塑剤、フラックス、難燃剤、着色剤、分散剤、乳化剤、低弾性化剤、希釈剤、消泡剤、イオントラップ剤、レベリング剤、触媒、その他ポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を併せて用いることができる。
【0155】
本ポリエステル系樹脂組成物は、架橋剤を配合してもよいが、ホットメルト塗工中の溶液安定性やリサイクル性の面から、イソシアネート架橋剤を実質的に配合しない方が好ましい。イソシアネート架橋剤を実質的に配合しないとは、イソシアネート架橋剤の含有量が、本ポリエステル系樹脂組成物の固形分全体に対して、通常5重量%以下であり、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下であることを意味する。
【0156】
本ポリエステル系樹脂組成物がその他成分を含有する場合、その他成分の含有量は、ポリエステル系樹脂の固形分全体に対して、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは0.05~30重量%、特に好ましくは0.1~10重量%、更に好ましくは0.2~5重量%である。
【0157】
本ポリエステル系樹脂組成物は実質的に無溶剤である。実質的に無溶剤とは、有機溶剤を全く含有しないことが最も好ましいが、有機溶剤が含まれる場合であっても、本ポリエステル系樹脂組成物全体に対して有機溶剤の含有量が0~5重量%であり、好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下であることを意味する。本ポリエステル系樹脂組成物が、実質的に無溶剤であることで、有害なVOCを発生させず、乾燥によるエネルギー消費も節約でき、環境に優しい接着剤となる。
前記有機溶剤の含有量は、ヘッドスペースGC/MSで測定することが出来る。
【0158】
本ポリエステル系樹脂組成物は、例えば、前記ポリエステル系樹脂(A)、ポリエステル系樹脂(B)、及び必要な任意成分を準備し、溶融混錬または溶融混合することで得られる。
かかる混錬温度、混合温度としては80~200℃であることが好ましい。
【0159】
〔ポリエステル系樹脂組成物の粘度〕
本ポリエステル系樹脂組成物の130℃における溶融粘度は、1~500Pa・sであることが好ましく、より好ましくは、2~250Pa・s、さらに好ましくは3~100Pa・sであり、特に好ましくは4~50Pa・s、最も好ましくは5~30Pa・sである。
かかる溶融粘度が前記範囲内であると、低温での塗工適性と接着性に優れるという効果が得られる。
前記の溶融粘度は、高化式フローテスター(島津製作所社製「CFT-500WX」)を用い、ノズル;φ1mm×1cm、荷重(試験力);5または30kg、温度;130℃の条件で測定する。溶融粘度が7Pa・s未満の場合は、荷重(試験力)を5kgで測定を行う。
【0160】
〔ポリエステル系樹脂組成物の融点(Tm)〕
本ポリエステル系樹脂組成物の融点(Tm)は、融点が出ない、又は、融点が60~150℃であることが好ましく、より好ましくは70~150℃、特に好ましくは80~130℃、さらに好ましくは90~120℃、殊に好ましくは95~110℃である。かかる融点が前記範囲内であると、接着特性、耐洗濯性に優れるという効果が得られる。
【0161】
〔ポリエステル系樹脂組成物の結晶融解熱〕
本ポリエステル系樹脂組成物の結晶融解熱は、10J/g以下であることが好ましく、より好ましくは5J/g以下、最も好ましくは観測されないことである。かかる結晶融解熱が前記範囲内であると、接着特性、耐洗濯性に優れるという効果が得られる。
【0162】
また、本ポリエステル系樹脂組成物は、前記の通り、ポリエステル系樹脂(A)及び/又はポリエステル系樹脂(B)を主成分とするものであるが、本ポリエステル系樹脂組成物の好ましい重量平均分子量、ピークトップ分子量、分散度や、酸価、水酸基価の範囲は、前記のポリエステル系樹脂(A)と同様である。
【0163】
<接着剤組成物>
本発明の一実施形態に係る接着剤組成物(以下、「本接着剤組成物」と称する)は、本ポリエステル系樹脂組成物を含有するものである。
本接着剤組成物において、ポリエステル系樹脂(A)及びポリエステル系樹脂(B)の合計の含有量は、本接着剤組成物の固形分全体に対して、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、更に好ましくは98重量%以上である。なお、通常上限は100重量%である。
ポリエステル系樹脂(A)及びポリエステル系樹脂(B)の含有量が高ければ高いほど、その後のリサイクルに寄与できることとなる。
【0164】
なお、本接着剤組成物は、感圧接着剤組成物も含むものである。
【0165】
<接着剤>
本発明の一実施形態に係る接着剤(以下、「本接着剤」と称する)は、本接着剤組成物を含有するものであり、本接着剤組成物を塗工することにより接着剤を得ることができる。
【0166】
<ポリエステル系接着剤>
本発明の一実施形態に係るポリエステル系接着剤(以下、「本ポリエステル系接着剤」と称する)は、非晶性ポリエステル系樹脂(A)、結晶性ポリエステル系樹脂(B)を含有し、非晶性ポリエステル系樹脂(A)と結晶性ポリエステル系樹脂(B)との含有比(重量比)が(A)/(B)=99/1~1/99であり、非晶性ポリエステル系樹脂(A)及び結晶性ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度が20℃以下であり、ポリエステル系接着剤に含まれる有機溶剤の含有量が0~0.1重量%である。本ポリエステル系接着剤は、含まれる有機溶剤が少量であることから、有害なVOCを発生させず、乾燥によるエネルギー消費も節約できる、環境に優しい接着剤となる。
【0167】
前記非晶性ポリエステル系樹脂(A)、結晶性ポリエステル系樹脂(B)は、本ポリエステル系樹脂組成物で説明したとおりである。また、本ポリエステル系接着剤には、本ポリエステル系樹脂組成物で説明した、加水分解抑制剤(C)や、その他の成分を含有してもよい。
【0168】
本ポリエステル系接着剤においては、リサイクル性を上げるために、非晶性ポリエステル系樹脂(A)と結晶性ポリエステル系樹脂(B)とその他ポリエステル系樹脂を含んだ、ポリエステル系樹脂成分が、本ポリエステル系接着剤の固形分全体に対して90重量%以上であることが好ましく、より好ましくは95重量%以上、更に好ましくは98重量%以上である。
【0169】
また、本ポリエステル系接着剤は、粘度が130℃で1~500Pa・sであり、23℃50%R.H.環境下で1週間放置した後に、結晶化しており、融点が出ないか、または60℃以上150℃以下であり、その融点の結晶融解熱が10J/g以下であることが好ましい。
さらに、本ポリエステル系接着剤の粘度、融点、結晶融解熱、及びガラス転移温度は、本ポリエステル系樹脂組成物で説明した範囲であることが好ましい。
また、本ポリエステル系接着剤のガラス転移温度、重量平均分子量、ピークトップ分子量、分散度や、酸価、水酸基価の範囲は、前記のポリエステル系樹脂(A)と同様である。
【0170】
〔用途〕
本接着剤や、本ポリエステル系接着剤は、一液で使用可能で、かつ、反応性もないために塗工性に優れる点で、樹脂や金属等の各種材料からなる基材の接着や、樹脂基材を用いた感圧接着剤に有効である。本接着剤や、本ポリエステル系接着剤は、特にポリエステル系繊維に用いられる接着剤として好適に用いることができる。なお、本接着剤や、本ポリエステル系接着剤を、塗工又は接着シートとし、繊維と積層することで、繊維の積層体が得られる。
【0171】
樹脂や金属等の各種材料からなる基材の接着の場合は、一方の基材上に130℃程度で溶融した本接着剤や、本ポリエステル系接着剤を塗工し、そのまま、もう一方の基材に貼り合わせる工程を取ることが好ましい。
【0172】
樹脂基材を用いた感圧接着剤として使用する場合には、樹脂基材または離型処理をした基材に130℃程度で溶融した本接着剤や、本ポリエステル系接着剤を塗工し、そのまま樹脂基材または離型処理をした基材を貼り合わせる工程を取ることが好ましい。なお、感圧接着剤は接着剤の両面または片面に前記剥離処理した基材がくることになる。使用時に剥離処理をした基材を剥がして被着体に付けることとなる。
【0173】
本接着剤や、本ポリエステル系接着剤は、前記の説明の通り、実質的に溶剤を含まない、いわゆる無溶剤型であるため、出来上がる接着剤、接着シート、接着剤を含んだ積層体は、当然無溶剤となる。
なお、接着剤、接着シート、接着剤を含んだ積層体に含まれる有機溶剤が0.1重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.05重量%で以下であり、とくには0.01重量%で以下で、ことに好ましくは0.001重量%以下であり、最も好ましくは0重量%、または以下の測定で検出されないことである。
接着剤、接着シート、接着剤を含んだ積層体の残存する有機溶剤の含有量については、ヘッドスペースGC/MSで測定することが出来る。
【0174】
〔ポリエステル系繊維用接着剤〕
本接着剤や、本ポリエステル系接着剤は、ポリエステル系樹脂を含有することから、リサイクルがしやすい点で、ポリエステル系材料に使用されることが好ましい。特にポリエステル系繊維同士や、ポリエステル系繊維と透湿防水膜に用いられる接着剤に好適である。さらにポリエステル系繊維用接着剤として有用であり、本接着剤や、本ポリエステル系接着剤におけるポリエステル系樹脂の含有量が多くなるとモノマテリアル化が可能であり、リサイクルが容易となる。
【0175】
前記ポリエステル系材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートからなるもの等が挙げられ、ポリエーテル系ポリオール等が共重合されていても良いが、繊維であることが好ましく、特に好ましくはポリエチレンテレフタレート系の繊維である。
【0176】
前記透湿防水膜としては、例えば、ポリウレタンやポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートからなるものが挙げられ、ポリエーテル系ポリオール等が共重合されていても良く、好ましくはポリブチレンテレフタレート系の透湿防水膜である。前記の樹脂は機能膜の貼合の点で好ましい。
【0177】
本接着剤や、本ポリエステル系接着剤を、塗工又は接着シートとし、ポリエステル系材料等の繊維や、透湿防水膜と積層させた、繊維の積層体は、衣料用として好適に用いられる。
【実施例0178】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
【0179】
また、下記実施例中におけるポリエステル系樹脂の重量平均分子量、ピークトップ分子量、ガラス転移温度、水酸基価、酸価の測定に関しては、前述の方法に従って測定した。
【0180】
以下の方法により、ポリエステル系樹脂(A)及びポリエステル系樹脂(B)を製造した(表1参照)。
【0181】
[ポリエステル系樹脂(A-1~4、B-1~3、A’-1、B’-1)]
温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸類、多価アルコール類、及び(必要に応じて)熱可塑性ポリエステル系樹脂、を配合し、触媒として、テトラブチルチタネートを多価カルボン酸類に対して0.2ミリモル/モル仕込み、精留塔頂が100℃以下をキープできる状況下で、微量の窒素を流しながら、内温260℃まで徐々に温度を上げ、精留塔頂が50℃以下になるまでエステル化およびエステル交換反応を行った。その後、内温260℃で、触媒として、テトラブチルチタネートを多価カルボン酸類に対して0.2ミリモル/モル仕込み、徐々に1.33~2.66hPaまで減圧し、0.5~3時間かけて重合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A-1~4、A’-1)(B-1~3、B’-1)を製造した。
得られたポリエステル系樹脂(A-1~4、A’-1)(B-1~3、B’-1)の組成モル比を後記の表1に示す。また、それらの物性を後記の表2に示す。
【0182】
【0183】
AdA:アジピン酸
IPA:イソフタル酸
TPA:テレフタル酸
EG:エチレングリコール
1,4BG:1,4-ブタンジオール
1,6HG:1,6-ヘキサンジオール
CHDM:1,4-シクロヘキサンジメタノール
NPG:ネオペンチルグリコール
TMP:トリメチロールプロパン
【0184】
【0185】
<実施例1>
[ポリエステル系樹脂組成物の作製]
前記で製造した非晶性ポリエステル系樹脂(A-1)、結晶性ポリエステル系樹脂(B-1)、酸化防止剤としてIRG1010を0.1部、加水分解抑制剤(C)としてポリカルボジイミド系化合物(C-1)(カルボジライト Elastostab H01)を表3に示す量を入れて、よく混合し、実施例1のポリエステル系樹脂組成物を作製した。
【0186】
【0187】
[塗工適性評価]
前記で得られたポリエステル系樹脂組成物を適宜50~200℃に調整し、100μmのポリエステル系フィルム2枚の間に垂らし、ポリエステル系フィルム/ポリエステル系樹脂組成物/ポリエステル系フィルムの順として、熱ラミネートローラーでポリエステル系樹脂組成物を層にすることで接着剤測定用の積層体を作成した。貼合条件は、熱ラミネートローラーの温度は適宜必要に応じて50~200℃に設定し、0.1~1.0MPaの圧力、ロール速度0.1~1.5m/minで行い、下記の評価基準により評価を行った。
(評価基準)
◎:塗工温度が150℃以下、且つポリエステル系樹脂組成物の厚さを10~50μmとすることが出来た
〇:塗工温度が150℃を超え、且つポリエステル系樹脂組成物の厚さを10~50μmとすることが出来た
×:ポリエステル系樹脂組成物の厚さが50μmより厚い、または均一に塗工出来なかった
【0188】
[外観評価]
塗工適性評価を行った積層シートを、23℃50%R.H.環境下に1週間静置した後の外観を目視で確認した。
白濁:接着剤組成物が結晶化し、接着剤が白く濁っている
透明:接着剤組成物が非晶であり、接着剤がクリアな状態
【0189】
[接着力評価]
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み100μm)に、前記ポリエステル系樹脂組成物を厚みが30μmとなるように塗工し、その後、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み100μm)と熱ロール機(ロール温度170℃、圧力0.5MPa、速度0.5m/分)で貼り合せて、積層体を得た。得られた積層体を23℃、湿度50%の環境下に3日以上静置した後、オートグラフ(島津製作所社製、オートグラフAGS-H 500N)を用いて、剥離速度100mm/分でT字(180度)剥離強度(N/10mm)を測定した。評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
◎:3N/cm以上
〇:1N/cm以上、3N/cm未満
×:1N/cm未満
【0190】
[耐洗濯性評価]
前記の「接着力評価」の際に、作成するポリエステル系フィルム/ポリエステル系樹脂組成物/ポリエステルフィルムの片方のポリエステル系フィルムを、厚み10μmのポリブチレンテレフタレート(PBT)系透湿防水膜(Vresh-TP10)に変更した以外は同様の方法で積層体を作成した。
作成した100μmポリエステル系フィルム/ポリエステル系樹脂組成物/PBT系透湿防水膜の積層体を5cm×1cmで裁断し、室温で100ccのフラスコ内で8時間撹拌した後、16時間静置した。その後、サンプルを取出し、手で剥がし、以下の評価基準で評価した。また、3以上が合格である。
(評価基準)
5:取出し時についており、非常に強く接着しており、全く動かない。
4:取出し時についており、非常に強く接着しているが、引っ張ると少し剥がれる
3:取出し時についており、剥がすのに抵抗がある
2:ついているが、ほとんど抵抗なく剥がれる
1:取出し時にすでに剥がれている
【0191】
[耐熱性評価]
前記耐洗濯性評価で作成した積層体を、80℃の乾燥機に30分以上静置した。その後、積層体を乾燥機の中で、手で剥離し、以下の評価基準で評価した。衣料用繊維としての使用を考慮すると、洗濯後の乾燥工程があるため、ある程度の熱がかかっても簡単に剥がれないことが求められる。
(評価基準)
〇:簡単に剥がれない
×:簡単に剥がれる
【0192】
<実施例2~13,比較例1~5>
実施例1において、ポリエステル系樹脂組成物を表3の通り変えた以外は同様にして、実施例2~13、比較例1~5のポリエステル系樹脂組成物を得た。また、得られた実施例2~11、比較例1~4のポリエステル系樹脂組成物を用い、実施例1と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
【0193】
【0194】
特定の非晶性ポリエステル(A)と結晶性ポリエステル(B)を含有する実施例1~11のポリエステル系樹脂組成物は、接着性、耐熱性及び耐洗濯性に優れるものであった。
一方、ポリエステル系樹脂として非晶性ポリエステル系樹脂(A)のみを含有する比較例1や、結晶性ポリエステル系樹脂(B)のみを含有する比較例2のポリエステル系樹脂組成物は、耐洗濯性に非常に劣るものであった。
また、比較例1のポリエステル系樹脂組成物は、耐熱性にも劣るものであった。
さらに、非晶性ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度が高い比較例3のポリエステル系樹脂組成物では、接着性に劣り、積層体が簡単に剥がれるものであり、耐洗濯性にも劣るものであった。
また、結晶性ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度が高い比較例4のポリエステル系樹脂組成物においては、そもそも溶解性に問題があり、非晶性ポリエステル系樹脂(A)と結晶性ポリエステル系樹脂(B)とが相溶せず、塗工が出来ないものであった。
【0195】
また、実施例12、10、13、比較例2~5のポリエステル系樹脂組成物を用いて、下記の評価を行った。結果を後記の表5に示す。
【0196】
[塗工適性評価]
前記で得られたポリエステル系樹脂組成物を適宜50~200℃に調整し、100μmのポリエステルフィルムと、38μmのポリエステル系離型フィルムを用いて、ポリエステル系フィルム/ポリエステル系樹脂組成物/ポリエステル系離型フィルムの順として、熱ラミネートローラーでポリエステル系樹脂組成物を層(ポリエステル系接着剤層)にすることで感圧接着剤測定用の粘着シートを作成した。貼合条件は、熱ラミネートローラーの温度は適宜必要に応じて50~200℃に設定し、0.1~1.0MPaの圧力、ロール速度0.1~1.5m/minで行い、下記の評価基準により評価を行った。
(評価基準)
◎:塗工温度が150℃以下、且つポリエステル系樹脂組成物の厚さを10~50μmとすることが出来た
〇:塗工温度が150℃を超え、且つポリエステル系樹脂組成物の厚さを10~50μmとすることが出来た
×:ポリエステル系樹脂組成物の厚さが50μmより厚い、または均一に塗工出来なかった
【0197】
[外観評価]
前記塗工適性評価で得られた粘着シートを、23℃50%R.H.環境下に1週間静置した後の外観を目視で確認した。
白濁:接着剤組成物が結晶化し、接着剤が白く濁っている
透明:接着剤組成物が非晶であり、接着剤がクリアな状態
【0198】
[粘着力(対SUS-BA板)]
被着体としてSUS-BA板を準備した。前記塗工適性評価で得られた粘着シートを23℃、50%R.H.の環境下で25mm×200mmに裁断した後、離型フィルムを剥がし、ポリエステル系接着剤層側をSUS-BA板に当接させ、2kgローラーを往復させ加圧貼付けした。そして、同環境下で所定時間(30分間)静置した後、オートグラフ(島津製作所社製、オートグラフAGS-H 500N)を用いて、剥離速度300mm/分で180度剥離強度(N/25mm)を測定し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
〇・・・3N/25mm以上
×・・・3N/25mm未満
【0199】
[粘着力(対PET)]
被着体として100μmPETフィルム(フィルムの裏側をガラス板と両面テープで接着させて板状にしたもの)を準備した。前記塗工適性評価で得られた粘着シートを23℃、50%R.H.の環境下で25mm×200mmに裁断した後、離型フィルムを剥がし、ポリエステル系接着剤層側を無アルカリガラス板に当接させ、2kgローラーを往復させ加圧貼付けした。そして、同環境下で所定時間(30分間)静置した後、オートグラフ(島津製作所社製、オートグラフAGS-H 500N)を用いて、剥離速度300mm/分で180度剥離強度(N/25mm)を測定し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
〇・・・3N/25mm以上
×・・・3N/25mm未満
【0200】
[保持力(凝集力)]
前記塗工適性評価で得られた粘着シートをJIS Z-0237に準じ、SUS304を被着体とし、貼付面積25mm×25mmで貼り付けた後、40℃で20分間静置した。その後、1kgの荷重をかけて、60分間静置して、落下するかどうかを40℃の環境下で測定し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
〇・・・60分静置後でも落下しなかった。
×・・・60分静置中に落下した。
【0201】
【0202】
特定の非晶性ポリエステル(A)と結晶性ポリエステル(B)を含有する実施例12、10、13のポリエステル系樹脂組成物は、感圧接着剤として使用した場合にも、SUS-BA板やPETフィルムに対する粘着性に優れ、なおかつ、保持力に優れるものであり、感圧接着剤として使用できるものであった。
一方、ポリエステル系樹脂として非晶性ポリエステル系樹脂(A)のみを含有する比較例5は、保持力に劣り、結晶性ポリエステル系樹脂(B)のみを含有する比較例2のポリエステル系樹脂組成物は、軽い力で接着する感圧接着性に劣り、被着体に密着しないことから、粘着力と保持力にも劣るものであった。
さらに、非晶性ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度が高い比較例3のポリエステル系樹脂組成物も比較例2と同様に、軽い力で接着する感圧接着性に劣り、被着体に密着しないことから、粘着力と保持力にも劣るものであった。
また、結晶性ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度が高い比較例4のポリエステル系樹脂組成物においては、そもそも溶解性に問題があり、非晶性ポリエステル系樹脂(A)と結晶性ポリエステル系樹脂(B)とが相溶せず、塗工が出来ないものであった。