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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180471
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/70 20230101AFI20241219BHJP
   H04N 23/75 20230101ALI20241219BHJP
   H04N 23/71 20230101ALI20241219BHJP
   G03B 7/091 20210101ALI20241219BHJP
   G03B 11/00 20210101ALI20241219BHJP
【FI】
H04N23/70
H04N23/75
H04N23/71
G03B7/091
G03B11/00
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024177159
(22)【出願日】2024-10-09
(62)【分割の表示】P 2023103418の分割
【原出願日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2020057928
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100153822
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 重之
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】島田 智大
(72)【発明者】
【氏名】河口 武弘
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 太郎
(72)【発明者】
【氏名】西山 幸徳
(57)【要約】
【課題】明るさが変化しても連続的に自然な動画を撮像できる撮像装置を提供する。
【解決手段】透過率制御素子の特性に基づいて露出条件が設定される撮像装置において、撮像装置の測光に基づいて第1露出条件範囲を算出する。算出した第1露出条件範囲が、透過率制御素子の取得した制御範囲を適用することができる第2露出条件範囲に含まれるか否かを判定する。算出した第1露出条件範囲が、第2露出条件範囲に含まれない場合、第1露出条件範囲が、第2露出条件範囲に含まれるように、撮像装置の露出条件を変更する。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
測光結果に基づいて露光変化量を推定し、
推定した前記露光変化量に基づいて、前記露光変化量に付加する値を決定し、
決定した前記値を前記露光変化量に付加して、第1露出条件範囲を算出し、
前記値は、露光量と前記値との関係が設定されたテーブルに基づいて決定され、
前記テーブルは、前記露光量を少なくとも第1範囲と第2範囲とに区分して設定され、
推定した前記露光変化量が、前記第1範囲と前記第2範囲を跨ぐ場合、前記第1範囲に対して設定された前記値と前記第2範囲に対して設定された前記値とのうちより多く設定されている方の前記値が採用される、
撮像装置。
【請求項2】
透過率制御素子を備え、
前記プロセッサは、
前記第1露出条件範囲が、前記透過率制御素子の制御範囲を適用することができる第2露出条件範囲に含まれるか否かを判定し、
前記第1露出条件範囲が前記第2露出条件範囲に含まれない場合、算出した前記第1露出条件範囲が前記第2露出条件範囲に含まれるように、前記撮像装置の露出条件を変更する、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記テーブルにおいて、前記値は、暗くなる側に付加される値αと、明るくなる側に付加される値βと、が設定される、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記値は、前記露光量が第1閾値以上の範囲では、前記値αが前記値βよりも多く設定される、
請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記値は、前記露光量が第2閾値以下の範囲では、前記値αが前記値βよりも少なく設定される、
請求項3又は4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記値は、前記露光量が第1閾値よりも小さく第2閾値よりも大きい範囲では、前記値αと前記値βが等しく設定される、
請求項3から5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記値は、
前記露光量が第1閾値以上の範囲では、前記値αが前記値βよりも多く設定され、
前記露光量が第2閾値以下の範囲では、前記値αが前記値βよりも少なく設定され、
前記露光量が前記第1閾値よりも小さく前記第2閾値よりも大きい範囲では、前記値αと前記値βが等しく設定される、
請求項3に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置に係り、特に、動画を撮像する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可変NDフィルタ(Variable Neutral Density Filter)等の透過率制御素子を使用して、露出を制御する技術が知られている(特許文献1-3等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-191310号公報
【特許文献2】特開2017-62466号公報
【特許文献3】国際公開第2013/031429号
【発明の概要】
【0004】
本開示の技術に係る1つの実施形態は、明るさが変化しても連続的に自然な動画を撮像できる撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)透過率制御素子の特性に基づいて露出条件が設定される撮像装置であって、プロセッサを備え、プロセッサは、撮像装置の測光に基づいて第1露出条件範囲を算出し、第1露出条件範囲が、透過率制御素子の取得した制御範囲を適用することができる第2露出条件範囲に含まれない場合、算出した第1露出条件範囲が第2露出条件範囲に含まれるように、撮像装置の露出条件を変更する、撮像装置。
【0006】
(2)プロセッサは、撮像装置の測光に基づいて撮像シーン情報を決定し、決定した撮像シーン情報に基づいて、第1露出条件範囲を算出する、(1)の撮像装置。
【0007】
(3)プロセッサは、撮像中、第2露出条件範囲においては透過率制御素子によって露出を制御する、(1)又は(2)の撮像装置。
【0008】
(4)プロセッサは、撮像中、撮像装置の測光に基づいて算出した第3露出条件範囲が第1露出条件範囲と異なる場合、第2露出条件範囲が第3露出条件範囲に含まれるように、撮像装置の露出条件を変更する、(3)の撮像装置。
【0009】
(5)露出条件は、絞り制御量、シャッタ速度制御量、感度制御量である、(1)から(4)のいずれか一の撮像装置。
【0010】
(6)プロセッサは、露出制御モードを判別し、露出制御モードが絞り優先モードの場合、絞り制御量を固定して露出条件を設定する、(5)の撮像装置。
【0011】
(7)プロセッサは、露出制御モードを判別し、露出制御モードがシャッタ速度優先モードの場合、シャッタ速度制御量を固定して露出条件を設定する、(5)の撮像装置。
【0012】
(8)プロセッサは、露出制御モードを判別し、露出制御モードがマニュアルモードの場合、絞り制御量及びシャッタ速度制御量を固定して露出条件を設定する、(5)の撮像装置。
【0013】
(9)プロセッサは、露出制御モードを判別し、露出制御モードがオートモードの場合、透過率制御素子を可動範囲の中央値に設定する、(5)の撮像装置。
【0014】
(10)プロセッサは、撮像中、透過率制御素子が設定可能な範囲から外れる場合、絞り制御量、シャッタ速度制御量及び感度制御量をあらかじめ定められた優先順位で変更する、(9)の撮像装置。
【0015】
(11)優先順位が、最大値から最大値の1/2までの範囲でのシャッタ速度制御量、感度制御量、最大値の1/2のシャッタ速度制御量、絞り制御量の順である、(10)の撮像装置。
【0016】
(12)プロセッサは、動画を撮像した際の露光量の変動幅を計測し、計測した露光量の変動幅の情報をメモリに記録し、メモリに記録された露光量の変動幅の履歴の情報に基づいて、第1露出条件範囲を設定する、(1)から(11)のいずれか一の撮像装置。
【0017】
(13)プロセッサは、動画を撮像した場合に想定される露光量の変動幅の情報を事前に取得し、取得した露光量の変動幅の情報に基づいて、第1露出条件範囲を設定する、(1)から(11)のいずれか一の撮像装置。
【0018】
(14)プロセッサは、動画を撮像する領域の露光量の変動幅の情報を事前に取得し、取得した露光量の変動幅の情報に基づいて、第1露出条件範囲を設定する、(1)から(11)のいずれか一の撮像装置。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】撮像装置の概略構成を示す図
図2】露出制御に係わる機能のブロック図
図3】領域分割の一例を示す図
図4】補正の要否の判定の概念図
図5】補正の要否の判定の概念図
図6】可変NDフィルタの設定の補正の概念図
図7】撮像を開始する際の露出制御量の設定手順を示すフローチャート
図8】撮像中の露出制御の手順を示すフローチャート
図9】露出制御モードがオートモードの場合の撮像中の露出制御の手順を示すフローチャート
図10】露出制御量の設定処理の手順を示すフローチャート
図11】推定露光変動範囲の算出の概念図
図12】推定露光変化量に対して付加するマージンの一例を示す図
図13】露光量とシーンの関係の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0021】
[第1の実施の形態]
動画の撮像では、特殊な表現を狙っている場合などを除いて、撮像中に被写界深度、動体感及び粒状感などが変わることは望ましくない。一般に、被写界深度は絞り値、動体感はシャッタ速度、粒状感は撮像感度で変わる。可変NDフィルタ等の透過率制御素子を使用することで、撮像中に絞り値、シャッタ速度及び撮像感度を変えることなく露出を制御できる。これにより、明るさが変化しても連続的に自然な動画を撮像できる。
【0022】
しかし、透過率制御素子の可動範囲は限られている。このため、動画の撮像を開始する際に、透過率制御素子が、可動範囲の上限値又は下限値の近くに設定されていると、撮像中に透過率制御素子だけでは露出を制御できなくなるおそれがある。一方、透過率制御素子を強制的に可動範囲の中央値に設定すると、ユーザが望む露出条件(絞り値、シャッタ速度及び撮像感度)で動画を撮像できなくなる。
【0023】
本実施の形態では、ユーザが設定した露出条件を可能な限り維持しつつ、明るさが変化しても連続的に自然な動画を撮像できる撮像装置を提供する。
【0024】
[装置構成]
図1は、撮像装置の概略構成を示す図である。
【0025】
同図に示すように、本実施の形態の撮像装置1は、主として、撮像レンズ10、撮像素子20、撮像素子駆動部22、アナログ信号処理部24、ADC(Analog to Digital Converter)26、主記憶部28、デジタル信号処理部30、補助記憶部32、表示部34、操作部36及びシステム制御部40等を備える。
【0026】
撮像レンズ10は、主として、レンズ11、絞り12、可変NDフィルタ13、レンズ駆動部14、絞り駆動部15及びNDフィルタ駆動部16等を備える。なお、図1においては、便宜上、レンズ11を1枚のみ図示しているが、撮像レンズ10には、複数枚のレンズが備えられる。
【0027】
撮像レンズ10は、たとえば、ズームレンズで構成される。撮像レンズ10は、ズームレンズ群を光軸に沿って前後移動させることにより、ズームする。また、撮像レンズ10は、焦点調節機構を有し、フォーカスレンズ群を光軸に沿って前後移動させることにより、焦点調節される。レンズ駆動部14は、ズームレンズ群及びフォーカスレンズ群を光軸に沿って前後移動させる。
【0028】
絞り12は、たとえば、虹彩絞りで構成される。絞り12は、撮像レンズ10の光路中に配置されて、撮像レンズ10を通過する光量を調節する。絞り12は、絞り駆動部15に駆動されて、開口量が変化する。
【0029】
可変NDフィルタ13は、撮像レンズ10の光路中に配置されて、撮像レンズ10を通過する光量を一律に減少させる。可変NDフィルタ13は、光量の減少率を可変にしたNDフィルタである。本実施の形態の撮像装置1では、電子式の可変NDフィルタ13が使用される。電子式の可変NDフィルタは、印加する電圧によって光量の減少率が変化する。本実施の形態の撮像装置1では、一例として、1/4から1/128までの範囲で光量の減少率が変化する可変NDフィルタ13が使用される。可変NDフィルタ13は、透過率制御素子の一例である。可変NDフィルタ13は、NDフィルタ駆動部16に駆動されて、光量の減少率が変化する。
【0030】
撮像素子20は、カラーのエリアイメージセンサで構成される。イメージセンサは、たとえば、所定のカラーフィルタ配列(たとえば、ベイヤ配列等)を有するCMOS(CMOS:Complementary Metal-Oxide Semiconductor)型、CCD(CCD:Charged Coupled Device)型等のイメージセンサで構成される。撮像素子20は、撮像素子駆動部22に駆動されて動作する。撮像装置1は、撮像素子20のオン及びオフを電子的に制御することにより、露光時間(シャッタ速度)が調節される(いわゆる電子シャッタ機能)。
【0031】
アナログ信号処理部24は、撮像素子20から出力されるアナログの画像信号に対し、所定の信号処理を施す。アナログ信号処理部24は、サンプリングホールド回路、色分離回路、AGC回路(Automatic Gain Control circuit)等を含む。AGC回路は、撮像感度(ISO感度(ISO:International Organization for Standardization))を調整する感度調整部として機能する。
【0032】
ADC26は、アナログ信号処理部24で所定の信号処理が施されたアナログの画像信号をデジタルの画像信号に変換する。
【0033】
なお、撮像素子20がCMOS型のイメージセンサで構成される場合、撮像素子駆動部22、アナログ信号処理部24及びADC26は、撮像素子20に含まれることが多い。また、撮像素子20が、CMOS型のイメージセンサで構成される場合、アナログ信号処理部24に代えて、デジタルのイメージセンサ信号処理部が備えられることも多い。
【0034】
撮像素子20が、ADC及びデジタルのイメージセンサ信号処理部を含んだCMOS型のイメージセンサで構成される場合、撮像素子20からは、次のように、各画素の信号が出力される。各画素の信号は、画素ごと又は複数の画素ごとに備えられたアナログ増幅部で増幅されたのち、行単位で読み出されて、ADCに供給される。ADCは、供給された各画素の信号をデジタルの信号に変換して、イメージセンサ信号処理部に供給する。イメージセンサ信号処理部は、供給された各画素のデジタルの信号に対し、デジタル相関二重サンプリング処理、デジタルゲイン処理、補正処理等の各種信号処理を施す。信号処理部で各種信号処理が施された信号が、撮像素子20から出力される。
【0035】
主記憶部28は、データの一時記憶領域として使用される。撮像素子20から出力される画像信号は、アナログ信号処理部24及びADC26を経て、1フレームごとに主記憶部28に格納される。
【0036】
デジタル信号処理部30は、デジタル信号に変換された画像信号に対し、オフセット処理、ガンマ補正処理、デモザイク処理、RGB/YCrCb変換処理等の信号処理を施して、画像データを生成する。デジタル信号処理部30は、たとえば、マイクロプロセッサで構成される。
【0037】
補助記憶部32は、主として、撮像により得られた画像データを記憶する。補助記憶部32は、内蔵メモリ及び/又は外部メモリで構成される。内蔵メモリは、撮像装置1の本体に内蔵されるメモリである。内蔵メモリは、たとえば、不揮発性を有する半導体メモリで構成される。外部メモリは、たとえば、メモリカードで構成され、撮像装置本体に備えられたカードスロットに装填される。
【0038】
表示部34は、撮像済みの画像の再生に使用される他、撮像の際にライブビュー画像が表示される。また、各種設定を行う際に設定画面として使用される。表示部34は、たとえば、LCD(Liquid Crystal Display)、OLED(Organic Light Emitting Diode)などのディスプレイで構成される。
【0039】
操作部36は、撮像装置1を操作するための各種操作部材を含んで構成される。操作部材には、撮像装置1の電源をオン及びオフするための操作部材(電源ボタン)、撮像の開始及び終了を指示するための操作部材(録画ボタン)、各種設定を行うための操作部材等が含まれる。各種設定を行うための操作部材には、たとえば、露出制御モードを設定する操作部材、絞り値を設定する操作部材、シャッタ速度を設定する操作部材、撮像感度を設定する操作部材等が含まれる。露出制御モードを設定する操作部材は、たとえば、モードダイヤルで構成される。露出制御モードには、たとえば、オートモード、絞り優先モード、シャッタ速度優先モード及びマニュアルモード等が含まれる。オートモードとは、絞り値、シャッタ速度及び撮像感度が自動的に設定されるモードである。絞り優先モードとは、設定した絞り値に合わせて、シャッタ速度及び撮像感度が自動的に設定されるモードである。シャッタ速度優先モードとは、設定したシャッタ速度に合わせて、絞り値及び撮像感度が自動的に設定されるモードである。マニュアルモードとは、絞り値及びシャッタ速度を手動で設定するモードである。絞り値を設定する操作部材は、たとえば、絞りリングで構成される。シャッタ速度を設定する操作部材は、たとえば、シャッタ速度ダイヤルで構成される。撮像感度を設定する操作部材は、たとえば、撮像感度ダイヤルで構成される。なお、これらの設定は、表示部34及び十字キー等の操作部材を利用して、画面上で設定する構成とすることもできる。操作部36は、各操作部材の操作に応じた信号をシステム制御部40に出力する。
【0040】
システム制御部40は、撮像装置1の各部の動作を制御して、撮像装置1の全体の動作を統括制御する。また、システム制御部40は、制御に必要な物理量の算出処理等を行う。システム制御部40は、たとえば、プロセッサ及びメモリを備えたマイクロコンピュータで構成される。プロセッサは、たとえば、CPU(Central Processing Unit)等で構成される。メモリは、たとえば、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等で構成される。メモリには、プロセッサが実行するプログラム及び各種データが格納される。
【0041】
システム制御部40が行う制御には、露出制御が含まれる。本実施の形態の撮像装置1では、絞り12、シャッタ速度、撮像感度及び可変NDフィルタ13によって露出が制御される。以下、本実施の形態の撮像装置1で動画を撮像する場合に行われる露出制御について説明する。
【0042】
図2は、露出制御に係わる機能のブロック図である。
【0043】
同図に示すように、システム制御部40は、露出制御に関し、露出制御モード判別部40A、測光部40B、露出制御量設定部40C、露光変化量推定部40D及び露出制御量補正部40Eとして機能する。
【0044】
露出制御モード判別部40Aは、設定されている露出制御モードを判別する。露出制御モード判別部40Aは、操作部36からの情報に基づいて、露出制御モードを判別する。具体的には、モードダイヤルの設定に基づいて、現在設定されている露出制御モード(オートモード、絞り優先モード、シャッタ速度優先モード及びマニュアルモード等)を判別する。
【0045】
測光部40Bは、撮像素子20から出力される画像信号に基づいて、被写体の明るさを測定する。測光部40Bは、被写体の明るさを測定して、露光量を算出する。露光量は、たとえば、EV値(Exposure Value)として算出される。本実施の形態の撮像装置1では、撮像素子20の受光面を複数の領域に分割し、領域ごとに測光し、露光量を算出する。図3は、領域分割の一例を示す図である。同図に示すように、本実施の形態の撮像装置では、撮像素子20の受光面20Aが、8×8の領域a11~a88に等分割される。
【0046】
露出制御量設定部40Cは、露出制御量を設定する。すなわち、絞り値、シャッタ速度、撮像感度及び光量の減少率を設定する。特に、絞り値、シャッタ速度及び撮像感度は露出条件として設定される。絞り値は、絞り制御量の一例である。シャッタ速度は、シャッタ速度制御量の一例である。撮像感度は、感度制御量の一例である。露出制御量設定部40Cは、測光部40Bの測光結果に基づいて、所望の明るさとなる露出制御量を設定する。たとえば、各領域の測光結果に重み付けをして、全体の露光量を求め、求めた全体の露光量に基づいて、所望の明るさとなる露出制御量を設定する。所望の明るさとは、たとえば、適正露出となる明るさである。通常は、適正露出となるように、各露出制御量が設定される。また、たとえば、露出補正等が行われた場合は、補正された露出となるように、各露出制御量が設定される。
【0047】
露出制御量設定部40Cは、露出制御量を設定する際、現在設定されている露出制御モードに従って、各露出制御量を設定する。オートモードの場合、可変NDフィルタ13を可動範囲の中央値に設定して、各露出制御量を設定する。絞り優先モードの場合、絞り値を固定して、各露出制御量を設定する。シャッタ速度優先モードの場合、シャッタ速度を固定して、各露出制御量を設定する。マニュアルモードの場合、絞り値及びシャッタ速度を固定して、各露出制御量を設定する。各モードにおいて、露出制御量は、所望の明るさとなるように、あらかじめ定められた基準に従って設定される。たとえば、プログラム線図等に従って設定される。
【0048】
露光変化量推定部40Dは、撮像するシーンの露光変化量を推定する。露光変化量推定部40Dは、測光部40Bの測光結果(各領域a11~a88の露光量)に基づいて、露光変化量を推定する。本実施の形態では、次のように露光変化量を推定する。まず、各領域a11~a88の露光量の情報を取得する。次に、取得した各領域a11~a88の露光量の情報に基づいて、最も暗い領域及び最も明るい領域を特定する。次に、特定した最も暗い領域から最も明るい領域をカバーする露光量の範囲を求める。求めた範囲を推定露光変化量とする。この場合、たとえば、最も暗い領域の露光量が10EV、最も明るい領域の露光量が15EVの場合、10EV~15EVの範囲が推定露光変化量として算出される。
【0049】
露出制御量補正部40Eは、必要に応じて、露出制御量設定部40Cで設定された各露出制御量を補正する。露出制御量補正部40Eは、可変NDフィルタ13の特性、可変NDフィルタ13の設定値、露光変化量推定部40Dで推定された露光変化量(推定露光変化量)、及び、露出制御量を設定した際の露光量に基づいて、補正の要否を判定する。ここで、可変NDフィルタ13の特性とは、具体的には、可変NDフィルタ13の制御範囲である。可変NDフィルタ13の制御範囲は、可変NDフィルタ13の可動範囲として特定される。可変NDフィルタ13の可動範囲は、いわゆる可動幅であり、変更できる光量の減少率の範囲である。本実施の形態の可変NDフィルタ13の場合、1/4~1/128の範囲が可動範囲となる。
【0050】
図4及び図5は、補正の要否の判定の概念図である。図4は、補正が不要な場合の一例を示している。図5は、補正が必要な場合の一例を示している。
【0051】
露出制御量補正部40Eは、推定露光変動範囲Sが可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rに含まれない場合、補正が必要と判定する。
【0052】
推定露光変動範囲Sは、動画を撮像した場合に、予測される露光量の変動範囲である。推定露光変動範囲Sは、露出制御量を設定した際の露光量Mを基準として、暗くなる側の推定露光変動範囲Sa及び明るくなる側の推定露光変動範囲Sbが求められる。露出制御量を設定した際の露光量Mは、現在の被写体の明るさ(露光量)を表わす。
【0053】
推定露光変動範囲Sは、推定露光変化量に基づいて算出される。たとえば、推定露光変化量がAmin~Amaxの場合(Aminは、推定露光変化量の最小値、Amaxは、推定露光変化量の最大値)、Amin~Mの範囲が、暗くなる側の推定露光変動範囲Saとなる。また、M~Amaxの範囲が、明るくなる側の推定露光変動範囲Sbとなる。推定露光変動範囲Sは、第1露出条件範囲の一例である。
【0054】
可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rは、可変NDフィルタ13の制御範囲を適用できる範囲である。可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rは、現在の設定値N(現在設定されている光量の減少率)を基準として、減少率を下げる方向(明るくする方向)の設定可能範囲Ra、及び、減少率を上げる方向(暗くする方向)の設定可能範囲Rbが求められる。可変NDフィルタ13の可動範囲が、1/4~1/128の場合、1/4~Nの範囲が減少率を下げる方向の設定可能範囲Raとなり、N~1/128の範囲が減少率を上げる方向の設定可能範囲Rbとなる。可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rは、第2露出条件範囲の一例である。
【0055】
図4に示す例の場合、推定露光変動範囲Sが可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rに含まれている。この場合、可変NDフィルタ13だけで撮像中の露出制御が可能である。このため、推定露光変動範囲Sが、可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rに含まれている場合、露出制御量補正部40Eは、露出制御量設定部40Cで設定された露出制御量の補正は不要と判定する。
【0056】
一方、図5に示す例の場合、推定露光変動範囲Sが可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rを超えている。すなわち、明るくなる側の推定露光変動範囲Sbに対し、減少率を上げる方向の設定可能範囲Rbが不足している。この場合、可変NDフィルタ13だけでは、明るさの変化に追従できない。したがって、この場合、露出制御量補正部40Eは、露出制御量設定部40Cで設定された露出制御量の補正が必要と判定する。
【0057】
露出制御量の補正が必要と判定すると、露出制御量補正部40Eは、推定露光変動範囲Sが可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rに含まれるように、露出制御量を補正する。すなわち、暗くなる側の推定露光変動範囲Saが、減少率を下げる方向の設定可能範囲Raの範囲内に収まり、かつ、明るくなる側の推定露光変動範囲Sbが、減少率を上げる方向の設定可能範囲Rbの範囲内に収まるように、露出制御量を補正する。補正は、たとえば、次の手順で行う。
【0058】
まず、推定露光変動範囲が可変NDフィルタ13の設定可能範囲に含まれるように、可変NDフィルタ13の設定値を補正する。すなわち、現在設定されている光量の減少率を補正する。
【0059】
図6は、可変NDフィルタの設定の補正の概念図である。同図は、図5の状態から補正する場合の一例を示している。
【0060】
図5に示す例の場合、明るくなる側の推定露光変動範囲Sbに対し、減少率を上げる方向の設定可能範囲Rbが不足している。したがって、この場合、減少率を下げる方向に可変NDフィルタ13の設定値を補正する。この際、最小の補正量とすることが好ましい。これにより、他の露出制御量を補正する際、その補正量を少なくできる。すなわち、可能な限り現在の露出条件に近い状態を維持できる。
【0061】
図6に示す例では、明るくなる側の推定露光変動範囲Sbと、減少率を上げる方向の設定可能範囲Rbとが一致するように、可変NDフィルタ13の設定値を補正している。
【0062】
可変NDフィルタ13の設定値を補正後、他の露出制御量を補正する。すなわち、補正により可変NDフィルタ13の設定値が変わるので、新たな設定値(光量の減少率)の下で、所望の明るさとなるように、露出条件(絞り値、シャッタ速度及び撮像感度)が変更される。この際、現在設定されている露出制御モードに従って、各露出制御量が補正される。すなわち、露出制御モードが絞り優先モードに設定されている場合は、絞り値以外の露出制御量が補正される。また、露出制御モードがシャッタ速度優先モードに設定されている場合は、シャッタ速度以外の露出制御量が補正される。また、露出制御モードがマニュアルモードに設定されている場合は、絞り値及びシャッタ速度以外の露出制御量が補正される。なお、各モードにおいて、変更可能な露出制御量だけでは、所望の明るさに設定できない場合も想定される。たとえば、マニュアルモードの場合、撮像感度の補正だけでは所望の明るさに設定できない場合も想定される。このような場合は、固定された露出制御量も併せて補正される。なお、この場合、補正の優先順位をあらかじめ定めておくことが好ましい。優先順位は、ユーザが設定できるようにしてもよい。
【0063】
露出制御量補正部40Eで露出制御量を補正した場合、補正後の露出制御量が、撮像の際の露出制御量とされる。補正しなかった場合は、露出制御量設定部40Cで設定された露出制御量が、撮像の際の露出制御量とされる。
【0064】
[撮像動作]
本実施の形態の撮像装置1では、ユーザが設定した露出条件(絞り値、シャッタ速度及び撮像感度)を可能な限り維持しつつ、可能な限り可変NDフィルタ13だけで撮像中の露出を制御する。このために、本実施の形態の撮像装置1では、撮像を開始する際の各露出制御量を以下のように設定する。
【0065】
図7は、撮像を開始する際の露出制御量の設定手順を示すフローチャートである。
【0066】
まず、撮像開始の指示が指示されると、測光処理が行われる(ステップS1)。撮像開始の指示は、録画ボタンの押下により行われる。測光により、領域ごとの露光量が得られる。
【0067】
次に、測光結果に基づいて、露出制御量が設定される(ステップS2)。この露出制御量は、仮の露出制御量である。露出制御量は、設定されている露出制御モードに従って設定される。具体的には、以下のように設定される。
【0068】
露出制御モードが、オートモードに設定されている場合、可変NDフィルタ13を可動範囲の中央値に設定した上で、所望の明るさ(たとえば、適正露出)となるように、残りの露出制御量が設定される。すなわち、絞り値、シャッタ速度及び撮像感度が設定される。
【0069】
露出制御モードが、絞り優先モードに設定されている場合、絞り値を固定した上で、所望の明るさとなるように、残りの露出制御量が設定される。すなわち、シャッタ速度、撮像感度及び光量の減少率が設定される。絞り値は、操作部36からの情報に基づいて判定される。
【0070】
露出制御モードが、シャッタ速度優先モードに設定されている場合、シャッタ速度を固定した上で、所望の明るさとなるように、残りの露出制御量が設定される。すなわち、絞り値、撮像感度及び光量の減少率が設定される。シャッタ速度は、操作部36からの情報に基づいて判定される。
【0071】
露出制御モードが、マニュアルモードに設定されている場合、絞り値及びシャッタ速度を固定した上で、所望の明るさとなるように、残りの露出制御量が設定される。すなわち、撮像感度及び光量の減少率が設定される。絞り値及びシャッタ速度は、操作部36からの情報に基づいて判定される。
【0072】
次に、測光結果に基づいて、推定露光変化量が算出される(ステップS3)。本実施の形態では、各領域の測光結果に基づいて、画像内で最も暗い領域から最も明るい領域をカバーする露光量の範囲を求めて、推定露光変化量が算出される。
【0073】
次に、推定露光変化量に基づいて、推定露光変動範囲Sが算出される(ステップS4)。推定露光変動範囲Sは、露出制御量を設定した際の露光量Mを基準として、暗くなる側の推定露光変動範囲Sa、及び、明るくなる側の推定露光変動範囲Sbが算出される。
【0074】
次に、可変NDフィルタ13の可動範囲に基づいて、可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rが算出される(ステップS5)。可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rは、現在の可変NDフィルタ13の設定値Nを基準として、減少率を下げる方向の設定可能範囲Ra、及び、減少率を上げる方向の設定可能範囲Rbが算出される。
【0075】
次に、推定露光変動範囲S及び可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rの算出結果に基づいて、推定露光変動範囲Sが可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rに含まれるか否かが判定される(ステップS6)。
【0076】
ここで、推定露光変動範囲Sが可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rに含まれている場合とは、予測される露光量の変動範囲が、可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rの範囲内に収まっている場合である(図4参照)。この場合、動画撮像中、可変NDフィルタ13だけで露出を制御できる。
【0077】
一方、推定露光変動範囲Sが可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rに含まれていない場合とは、予測される露光量の変動範囲が、可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rの範囲内に収まっていない場合である(図5参照)。この場合、動画撮像中、可変NDフィルタ13だけでは露出を制御できない。すなわち、撮像中、他の露出制御量を変更する必要が生じる。
【0078】
したがって、ステップS6において、推定露光変動範囲Sが可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rに含まれないと判定されると(ステップS6の判定において「No」の場合)、ステップS2で設定された露出制御量(仮の露出制御量)が補正される(ステップS7)。露出制御量の補正は、たとえば、次のように行われる。まず、推定露光変動範囲が、可変NDフィルタ13の設定可能範囲に含まれるように、可変NDフィルタ13の設定値が変更される。すなわち、現在設定されている光量の減少率が変更される。可変NDフィルタ13の設定値を変更後、他の露出制御量を変更する。すなわち、新たに設定された光量の減少率の下で、所望の明るさとなるように、絞り値、シャッタ速度及び撮像感度が変更される。補正後の露出制御量が、撮像を開始する際の露出制御量とされる。補正も現在設定されている露出制御モードに従って行われる。したがって、絞り優先モードの場合は、シャッタ速度及び撮像感度が補正される。また、シャッタ速度優先モードの場合は、絞り値及び撮像感度が補正される。また、マニュアルモードの場合は、撮像感度が補正される。変更可能な露出制御量だけでは、所望の明るさにできない場合、他の露出制御量も補正される。たとえば、マニュアルモードにおいて、撮像感度だけでは、所望の明るさにできない場合、絞り値及びシャッタ速度も補正される。この場合、あらかじめ定められた優先順位に従って各露出制御量が補正される。
【0079】
ステップS6において、推定露光変動範囲Sが可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rに含まれていると判定されると(ステップS6の判定において「Yes」の場合)、補正は行われず、設定された仮の露出制御量が、そのまま撮像を開始する際の露出制御量とされる。
【0080】
以上一連の工程で撮像を開始する際の露出制御量の設定が完了する。この後、設定された露出制御量の下で露出が制御され、撮像が開始される。
【0081】
以上説明したように、本実施の形態の撮像装置1によれば、露光変動範囲が推定され、その推定結果に基づいて、可変NDフィルタだけで露出を制御できるか否かが事前に判定される。可変NDフィルタだけでは、露出を制御できないと判定されると、露出制御量が補正され、可変NDフィルタだけで露出を制御できるように再設定される。これにより、ユーザが設定した露出条件を可能な限り維持しつつ、可変NDフィルタ13だけで露出を制御して、動画を撮像できる。また、これにより、明るさが変化しても連続的に自然な動画を撮像できる。すなわち、可能な限り可変NDフィルタ13だけで露出を制御できるので、明るさが変化しても連続的に自然な動画を撮像できる。
【0082】
[変形例]
上記実施の形態の撮像装置1では、露出制御モードが、オートモードの場合、可変NDフィルタ13を可動範囲の中央値に設定しているが、中央値以外の値に設定する構成とすることもできる。
【0083】
なお、オートモードにおいて、可変NDフィルタ13を可動範囲の中央値に設定する場合、露出制御量の補正の要否を判定する処理は不要である。したがって、露出制御モードがオートモードに設定された場合、その後に行われる露出制御量の補正の要否を判定する処理を省略できる。
【0084】
また、絞り優先モード、シャッタ速度優先モード及びマニュアルモードにおいて、撮像感度が設定されている場合(すなわちオート以外の場合)、撮像感度が固定されて、残りの露出制御量が設定される。
【0085】
また、補正によっても推定露光変動範囲を可変NDフィルタ13の設定可能範囲内に収めることができない場合は、可変NDフィルタ13を可動範囲の中央値に設定することが好ましい。たとえば、推定露光変化量が可変NDフィルタ13の可動範囲を超えているような場合は、可変NDフィルタを可動範囲の中央値に設定して、他の露出制御量を設定することが好ましい。
【0086】
[第2の実施の形態]
上記第1の実施の形態の撮像装置では、事前に露光量の変動範囲を推定し、撮像中は可変NDフィルタだけで露出を制御できるように、撮像を開始する際の露出制御量を設定している。しかしながら、必ずしも実際の露光量が、推定した変動範囲内に収まるとは限らない。本実施の形態の撮像装置では、撮像中、推定露光変動範囲が変化した場合、変化した推定露光変動範囲が、可変NDフィルタの設定可能範囲に含まれるように、露出制御量を補正(変更)する。
【0087】
なお、装置構成は、上記第1の実施の形態の撮像装置と同じなので、ここでは、撮像中の露出制御の手法についてのみ説明する。
【0088】
図8は、撮像中の露出制御の手順を示すフローチャートである。
【0089】
まず、測光処理が行われる(ステップS10)。次に、測光結果に基づいて、被写体の明るさ(露光量)が変化したか否かが判定される(ステップS11)。
【0090】
被写体の明るさが変化したと判定されると、測光結果に基づいて、推定露光変化量が算出される(ステップS12)。次に、推定露光変化量に基づいて、推定露光変動範囲Sが算出される(ステップS13)。この撮像中に算出される推定露光変動範囲Sは、第3露出条件範囲の一例である。
【0091】
次に、算出された推定露光変動範囲Sが変化したか否かが判定される(ステップS14)。具体的には、算出された推定露光変動範囲(第3露出条件範囲)が、先に算出された推定露光変動範囲(第1露出条件範囲)と異なるか否かが判定される。
【0092】
推定露光変動範囲Sが変化していないと判定されると(ステップS14の判定において「No」の場合)、測光結果に基づいて、所望の明るさとなるように、可変NDフィルタ13の設定値が変更される(ステップS18)。すなわち、この場合、可変NDフィルタ13だけで露出を制御できるので、可変NDフィルタ13の設定値だけが変更される。この後、変更された減少率となるように、可変NDフィルタ13が制御されて、露出が制御される(ステップS19)。
【0093】
一方、推定露光変動範囲Sが変化したと判定されると(ステップS14の判定において「Yes」の場合)、変化後の推定露光変動範囲Sが、可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rに含まれるか否かが判定される。すなわち、変化後も可変NDフィルタだけで露出を制御できるか否かが判定される。
【0094】
この場合、まず、現在の可変NDフィルタ13の設定値に基づいて、設定可能範囲Rが算出される(ステップS15)。次に、算出された設定可能範囲Rに基づいて、推定露光変動範囲Sが設定可能範囲Rに含まれるか否かが判定される(ステップS16)。
【0095】
推定露光変動範囲Sが可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rに含まれていると判定されると(ステップS16の判定において「Yes」の場合)、測光結果に基づいて、所望の明るさとなるように、可変NDフィルタ13の設定値が変更される(ステップS18)。すなわち、この場合も可変NDフィルタ13だけで露出を制御できるので、可変NDフィルタ13の設定値だけが変更される。この後、変更された減少率となるように、可変NDフィルタ13が制御されて、露出が制御される(ステップS19)。
【0096】
一方、推定露光変動範囲Sが可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rに含まれていないと判定されると(ステップS16の判定において「No」の場合)、推定露光変動範囲Sが可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rに含まれるように、露出制御量が設定される(ステップS17)。この場合、まず、推定露光変動範囲Sが可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rに含まれるように、可変NDフィルタ13の減少率が設定される。その後、設定された減少率に基づいて、他の露出制御量が設定される。すなわち、絞り値、シャッタ速度及び撮像感度が設定される。この際、露出制御モードの設定に従って各露出制御量が設定される。この後、設定された露出制御量で露出が制御される(ステップS19)。
【0097】
露出制御後、撮像の終了が指示されたか否かが判定される(ステップS20)。撮像の終了が指示された場合は、処理を終了する。一方、撮像の終了が指示されていない場合は、ステップS10に戻り、上記一連の処理を繰り返し実施する。
【0098】
以上説明したように、本実施の形態の撮像装置によれば、撮像中も露光量の変動範囲が推定され、必要に応じて、可変NDフィルタ以外の露出制御量が調整される。すなわち、可変NDフィルタだけでは露出を制御できないと判定された場合にのみ、可変NDフィルタ以外の露出制御量が調整される。これにより、可能な限り可変NDフィルタだけで撮像中の露出を制御できる。
【0099】
[第3の実施の形態]
露出制御モードがオートモードに設定されている場合は、次のように撮像中の露出を制御することが好ましい。
【0100】
図9は、露出制御モードがオートモードの場合の撮像中の露出制御の手順を示すフローチャートである。
【0101】
ここでは、可変NDフィルタ13が可動範囲の中央値に設定されて、設定撮像が開始されたものとする。
【0102】
まず、測光処理が行われる(ステップS30)。次に、測光結果に基づいて、被写体の明るさ(露光量)が変化したか否かが判定される(ステップS31)。
【0103】
被写体の明るさが変化したと判定されると、可変NDフィルタ13だけで露出を制御できるか否かが判定される(ステップS32)。この場合、変化した露光量が、可変NDフィルタ13の設定可能範囲内に収まっているか否かが判定される。変化した露光量が、可変NDフィルタ13の設定可能範囲内に収まっている場合は、可変NDフィルタ13だけで露出を制御できると判定される。
【0104】
可変NDフィルタ13だけで露出を制御できると判定されると(ステップS32の判定において「Yes」の場合)、可変NDフィルタ13の設定値が変更される(ステップS33)。すなわち、所望の明るさとなるように、可変NDフィルタ13の設定値(光量の減少率)が変更される。この後、変更された減少率となるように、可変NDフィルタ13が制御されて、露出が制御される(ステップS35)。
【0105】
一方、可変NDフィルタ13だけで露出を制御できないと判定されると(ステップS32の判定において「No」の場合)、露出制御量が設定される(ステップS34)。すなわち、この場合は、可変NDフィルタ13が、設定可能な範囲を外れる場合なので、他の露出制御量を含めて、露出制御量が設定される。ここでの露出制御量は、たとえば、次のように設定される。
【0106】
図10は、露出制御量の設定処理の手順を示すフローチャートである。
【0107】
まず、測光結果に基づいて、推定露光変化量が算出される(ステップS34a)。次に、算出された推定露光変化量に基づいて、推定露光変動範囲Sが算出される(ステップS34b)。次に、可変NDフィルタ13の可動範囲に基づいて、可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rが算出される(ステップS34c)。次に、推定露光変動範囲S及び可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rの算出結果に基づいて、推定露光変動範囲Sが可変NDフィルタ13の設定可能範囲Rに含まれるように、可変NDフィルタ13の設定値(光量の減少率)が変更される(ステップSS34d)。この際、最小の変更量となる条件で変更する。これにより、他の露出制御量の変化量を少なくできる。次に、新たに設定された減少率の下で、所望の明るさとなるように、可変NDフィルタ以外の露出制御量が変更される(ステップS34e)。この場合、あらかじめ定められた優先順位で絞り値、シャッタ速度及び撮像感度が変更される。優先順位は、動画としての連続性等を考慮して設定することが好ましい。すなわち、変更後に撮像される動画が不自然にならないように設定することが好ましい。一例として、最大値から最大値の1/2までの範囲でのシャッタ速度、撮像感度、最大値の1/2のシャッタ速度、絞り値の順で優先順位を設定できる。この場合、まず、最大値から最大値の1/2までの範囲でのシャッタ速度が変更される。この変更だけでは、所望の明るさにできない場合、更に、撮像感度が変更される。撮像感度の変更によっても所望の明るさにできない場合、更にシャッタ速度が変更される。すなわち、最大値の1/2のシャッタ速度に変更される。また、シャッタ速度の変更によっても、所望の明るさに変更できない場合、更に絞り値が変更される。このように、あらかじめ定められた優先順位に従って、絞り値、シャッタ速度及び撮像感度の各露出制御量が変更されて、所望の明るさが得られる露出制御量が設定される。
【0108】
露出制御量が設定されると、設定された露出制御量で露出が制御される(ステップS35)。露出制御後、撮像の終了が指示されたか否かが判定される(ステップS36)。撮像の終了が指示された場合は、処理を終了する。一方、撮像の終了が指示されていない場合は、ステップS30に戻り、上記一連の処理を繰り返し実施する。
【0109】
以上説明したように、可変NDフィルタ13が設定可能範囲を外れる場合、可変NDフィルタ以外の露出制御量が変更されて、可変NDフィルタ13の設定可能範囲が確保される。その際、あらかじめ定められた優先順位で可変NDフィルタ以外の露出制御量が変更される。
【0110】
[変形例]
可変NDフィルタが設定可能範囲を外れる場合において、露出制御量を設定する際、可変NDフィルタを可動範囲の中央値に設定する構成としてもよい。
【0111】
また、可変NDフィルタ以外の露出制御量を変更する際、変更する露出制御量の優先順位をユーザが設定できるようにしてもよい。
【0112】
[第4の実施の形態]
本実施の形態の撮像装置では、推定露光変動範囲を算出する際、余裕を持たせて推定露光変動範囲を算出する。具体的には、測光結果から求められる推定露光変化量に対し、所定のマージン(変動幅)を付加して、推定露光変動範囲を算出する。
【0113】
なお、推定露光変動範囲の算出方法が異なる点以外は、上記第1から第3の実施の形態の撮像装置と同じである。したがって、ここでは、推定露光変動範囲の算出方法についてのみ説明する。
【0114】
図11は、推定露光変動範囲の算出の概念図である。
【0115】
上記のように、推定露光変動範囲Sは、測光結果から求められる推定露光変化量A(Amin~Amax)に対し、所定のマージンα、βを付加して、算出される。マージンα、βは、暗くなる側(-側)に付加するマージンαと、明るくなる側(+側)に付加するマージンβとが、別個に用意される。付加するマージンα、βは、推定露光変化量に基づいて決定される。
【0116】
図12は、推定露光変化量に対して付加するマージンの一例を示す図である。
【0117】
同図に示す例によれば、たとえば、推定露光変化量Aが13~15の場合(Amin=13、Amax=15)、暗くなる側のマージンαは2、明るくなる側のマージンβは1となる。したがって、この場合、推定露光変動範囲Sは、11~16の範囲に設定される。また、たとえば、推定露光変化量Aが0~2の場合(Amin=0、Amax=2)、暗くなる側のマージンαは2、明るくなる側のマージンβは3となる。したがって、この場合、推定露光変動範囲Sは、-2~5の範囲に設定される。なお、推定露光変化量Aが、図12の表に定められた範囲を跨ぐ場合は、多く設定されている方のマージンが優先される。たとえば、推定露光変化量Aが6~7の場合、暗くなる側のマージンαは3~4、明るくなる側のマージンβは3~4の値を取り得るが、多く設定されている方が優先される。したがって、この場合、暗くなる側のマージンαは4、明るくなる側のマージンβは4となる。なお、マージンを付加した後の推定露光変動範囲が、露光量の上限又は下限を超える場合は、上限又は下限に設定される。たとえば、図12の例では、16EV又は-4EVを超える場合は、16EV又は-4EVに設定される。
【0118】
このように、測定結果から求められる推定露光変化量に対し、所定のマージンを付加して、推定露光変動範囲を算出することにより、より適切に推定露光変動範囲を設定できる。すなわち、動画を撮像した場合に、予測される露光量の変動範囲をより適切に設定できる。
【0119】
[変形例]
上記実施の形態では、推定露光変化量Aに基づいて、マージンα、βを設定しているが、付加するマージンα、βの設定方法は、これに限定されるものではない。以下、マージンの設定方法の他の例について説明する。
【0120】
(1)マージンの設定方法1
撮像するシーンに応じてマージンを設定する。この場合、あらかじめシーンごとに付加すべきマージンα、βを定めておく。撮像する場合は、シーンを特定して、付加すべきマージンα、βの情報を取得する。
【0121】
シーンを特定する方法としては、ユーザが選択する方法、撮像装置が自動でシーンを認識する方法等を採用できる。シーンを自動で認識する方法は、たとえば、測光結果を利用する方法等を採用できる。たとえば、測光により得られる露光量の情報からシーンを判別する方法等を採用できる。図13は、露光量とシーンの関係の一例を示す図である。同図に示すように、露光量からある程度のシーン(撮像シーン情報)を特定できる。同図に示す例によれば、たとえば、分割して得られた各領域の露光量の範囲が、13EV~15EVの場合は、晴天の撮像シーンと判別できる。したがって、この場合、晴天の撮像シーンに用意されたマージンα、βが推定露光変化量に付加されて、推定露光変動範囲が設定される。撮像シーンを特定の特定方法は、この他、公知の技術を採用できる。
【0122】
ユーザが、シーンを特定する場合は、たとえば、選択可能な撮像シーンを表示部34に一覧表示し、操作部36を利用して、ユーザに選択させる方法を採用できる。
【0123】
(2)マージンの設定方法2
ユーザの過去の撮像の履歴を利用して、最適なマージンを設定する。すなわち、ユーザの過去の撮像傾向から最適なマージンα、βを設定する。この場合、動画の撮像の都度、露光量の変動幅を計測し、計測した変動幅の情報を記録する。変動幅は、暗くなる方向の変動幅及び明るくなる方向の変動幅の双方を計測し、記録する。推定露光変動範囲を算出する際は、記録された変動幅に基づいて、暗くなる側のマージンα及び明るくなる側のマージンβが設定される。たとえば、記録されている変動幅の平均値をマージンとして設定する。あるいは、記録されている変動幅の最大値をマージンとして設定する。本処理は、システム制御部40が行う。変動幅の情報は、たとえば、内蔵メモリで構成された補助記憶部32に記録する。
【0124】
(3)マージンの設定方法3
手動によるマージンを設定する。動画を撮像した場合に想定される露光量の変動幅が事前に分かる場合は、その情報を利用して、マージンα、βを設定することができる。たとえば、撮像する場所(シーン)が決まっている場合などは、想定される露光量の変動幅が、事前にある程度分かる。たとえば、屋外のみでの撮像は、急に暗くならないので、変動幅は小さいと想定される。一方、ライブ会場、結婚式場などでの撮像は、明るさが急に変化するシーンが想定されるので、変動幅は大きいと想定される。
【0125】
本例の場合、たとえば、表示部34にマージンの設定画面を表示し、操作部36を利用して、手動でマージンα、βを設定する。
【0126】
(4)マージンの設定方法4
露光量の変動幅を実測して、最適なマージンを設定する。たとえば、撮像する領域(場所)が、事前に決まっている場合などに、撮像する領域の露光量の変動幅を事前に実測し、その測定結果を利用して、マージンを設定する。
【0127】
[その他の実施の形態]
(1)透過率制御素子
上記実施の形態では、透過率制御素子として、電子式の可変NDフィルタを使用する場合を例に説明したが、透過率制御素子として使用可能な光学素子は、これに限定されるものではない。透過率を変更できる光学素子であればよい。たとえば、透過率制御素子として、液晶光学素子等のその他の調光素子を利用することもできる。
【0128】
(2)撮像装置
撮像装置は、単体で構成されるものに限らず、他の機器に組み込まれているものも含まれる。たとえば、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、ウェアラブルデバイス等に組み込まれたカメラも撮像装置に含まれる。
【0129】
(3)プロセッサ
本発明の処理を司るプロセッサには、汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0130】
1つの制御部及び信号処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサ(たとえば、複数のFPGA、あるいはCPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。
【0131】
また、複数の制御部及び信号処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の制御部及び信号処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の制御部及び信号処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の制御部及び信号処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。
【0132】
このように、各種の制御部及び信号処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0133】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路である。
【符号の説明】
【0134】
1 撮像装置
10 撮像レンズ
11 レンズ
12 絞り
13 可変NDフィルタ
14 レンズ駆動部
15 絞り駆動部
16 NDフィルタ駆動部
20 撮像素子
20A 撮像素子の受光面
22 撮像素子駆動部
24 アナログ信号処理部
26 ADC
28 主記憶部
30 デジタル信号処理部
32 補助記憶部
34 表示部
36 操作部
40 システム制御部
40A 露出制御モード判別部
40B 測光部
40C 露出制御量設定部
40D 露光変化量推定部
40E 露出制御量補正部
A 推定露光変化量
Amin 推定露光変化量の最小値
Amax 推定露光変化量の最大値
M 露出制御量を設定した際の露光量
N 可変NDフィルタの設定値
R 可変NDフィルタの設定可能範囲
Ra 光量の減少率を下げる方向の設定可能範囲
Rb 光量の減少率を上げる方向の設定可能範囲
S 推定露光変動範囲
Sa 暗くなる側の推定露光変動範囲
Sb 明るくなる側の推定露光変動範囲
a11~a88 分割した領域
α マージン
β マージン
S1~S7 撮像を開始する際の露出制御量の設定手順
S10~S20 撮像中の露出制御の手順
S30~S36 露出制御モードがオートモードの場合の撮像中の露出制御の手順
S34a~S34e 露出制御量の設定処理の手順
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13