(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180593
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】女性ホルモン様作用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/539 20060101AFI20241219BHJP
A61K 36/233 20060101ALI20241219BHJP
A61K 36/708 20060101ALI20241219BHJP
A61K 36/752 20060101ALI20241219BHJP
A61K 36/888 20060101ALI20241219BHJP
A61K 36/9068 20060101ALI20241219BHJP
A61K 36/65 20060101ALI20241219BHJP
A61P 5/30 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61K36/539
A61K36/233
A61K36/708
A61K36/752
A61K36/888
A61K36/9068
A61K36/65
A61P5/30
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024180737
(22)【出願日】2024-10-16
(62)【分割の表示】P 2020036003の分割
【原出願日】2020-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】橋本 統星
(57)【要約】
【課題】本発明は、女性ホルモン様作用を奏する新たな剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のキジツエキス、ダイオウエキス、及びオウゴンエキスからなる群より選択される少なくとも1種の生薬エキスを含有する女性ホルモン様作用剤によると、優れた女性ホルモン様作用が発揮される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キジツエキス、ダイオウエキス、及びオウゴンエキスからなる群より選択される少なくとも1種の生薬エキスを含有する、女性ホルモン様作用剤。
【請求項2】
キジツエキス、ダイオウエキス、及びオウゴンエキスからなる群より選択される少なくとも2種の生薬エキスを含有する、請求項1に記載の女性ホルモン様作用剤。
【請求項3】
大柴胡湯エキスを含有する、請求項1又は2に記載の女性ホルモン様作用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、女性ホルモン様作用を奏する剤に関する。
【背景技術】
【0002】
エストロゲンは、コレステロールから合成されるステロイドホルモンの一種であり、卵胞ホルモンまたは女性ホルモンとも呼ばれている。エストロゲン受容体は、古典的なリガンド活性化転写因子の一つであり、女性ホルモンは、この受容体を介して、生殖、骨生理等の様々な機能に対する生理作用を発揮する。
【0003】
女性ホルモンが欠乏すると、その影響によって、更年期障害、骨粗鬆症等の症状を引き起こす。これらの症状を緩和させるための治療法として、ホルモン補充療法(HRT)が盛んに行われている。しかしながら、HRTは大量の女性ホルモンを人為的に補充する治療法であるため、有効性が高い一方で体への負荷も大きく、投与の調整が非常に難しい。
【0004】
そこで、近年、植物由来のイソフラボン類が、女性ホルモン様作用を奏する成分として注目されている。このような女性ホルモン様作用は、イソフラボン類の化学構造がエストロゲンの化学構造と類似していることに起因すると考えられている。中でも、大豆に含まれるイソフラボンに由来するエクオールは、エストロゲン活性が高いことが知られており(非特許文献1及び2)、脚光を浴びている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sathyamoorthy, N. and Wang, T. T., Eur. J. Cancer, 33, 2384-2389 (1997)
【非特許文献2】Schmitt, E. et al., Toxicol. In Vitro, 15, 433-439 (2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大豆由来のエクオールには女性ホルモンの減少による症状に対する効果が期待されているものの、大豆アレルギーの人には適用できない。従って、女性ホルモン様作用が期待できる植物由来成分について、更なる選択肢が望まれる。
【0007】
そこで、本発明は、女性ホルモン様作用を奏する新たな剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討の結果、キジツエキス、ダイオウエキス、及びオウゴンエキスに、女性ホルモン様作用を見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. キジツエキス、ダイオウエキス、及びオウゴンエキスからなる群より選択される少なくとも1種の生薬エキスを含有する、女性ホルモン様作用剤。
項2. キジツエキス、ダイオウエキス、及びオウゴンエキスからなる群より選択される少なくとも2種の生薬エキスを含有する、項1に記載の女性ホルモン様作用剤。
項3. 大柴胡湯エキスを含有する、項1又は2に記載の女性ホルモン様作用剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、女性ホルモン様作用を奏する新たな剤が提供されるため、女性ホルモンの減少による諸症状の改善が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の女性ホルモン様作用剤は、キジツエキス、ダイオウエキス、及びオウゴンエキスからなる群より選択される少なくとも1種の生薬エキスを含有することを特徴とする。
【0012】
本発明の女性ホルモン様作用剤に含まれるキジツエキス、ダイオウエキス、及びオウゴンエキスは、それぞれ、単味エキス(キジツ単味エキス、ダイオウ単味エキス、及びオウゴン単味エキス)であってもよいし、漢方エキス(キジツ、ダイオウ、及びオウゴンからなる群から選択される2種以上を含む混合生薬のエキス、若しくは、キジツ、ダイオウ、及びオウゴンからなる群から選択される1種以上と、キジツ、ダイオウ、及びオウゴン以外の生薬から選択される1種以上との混合生薬のエキス)を構成するエキスであってもよい。
【0013】
本発明の女性ホルモン様作用剤に含まれるキジツエキス、ダイオウエキス、及びオウゴンエキスの具体的態様としては、生薬の単味エキスの混合物、漢方エキス、一の漢方エキスと他の漢方エキスとの混合物、単味エキスと漢方エキスとの混合物等が挙げられる。生薬の単味エキスの混合物の例としては、キジツの単味エキス、ダイオウの単味エキス、及びオウゴンの単味エキスの混合物が挙げられる。漢方エキスの例としては、キジツ、ダイオウ、及びオウゴンを含む混合生薬のエキスが挙げられる。一の漢方エキスと他の漢方エキスとの混合物としては、キジツ、ダイオウ、及びオウゴンからなる群から選択される少なくとも1種を含む一の混合生薬のエキスと、キジツ、ダイオウ、及びオウゴンからなる群から選択される少なくとも他の1種を含む他の混合生薬のエキスとを含む混合物が挙げられる。単味エキスと生薬混合物のエキスとの混合物としては、キジツ、ダイオウ、及びオウゴンからなる群から選択される少なくとも1種の単味エキスと、キジツ、ダイオウ、及びオウゴンからなる群から選択される少なくとも他の1種を含む混合生薬のエキスとを含む混合物等が挙げられる。
【0014】
また、本発明において用いられる上記の生薬エキスの形態としては、軟エキス等の液状のエキス、及び固形状の乾燥エキス末のいずれであってもよい。
【0015】
キジツ(枳実)は、ミカン科(Rutaceae)のダイダイ Citrus aurantium Linne var. daidai Makino、Citrus aurantium Linne 又はナツミカンCitrus natsudaidai
Hayata の未熟果実をそのまま又はそれを半分に横切したものであり、生薬(日本薬局方)として主に健胃薬、瀉下薬、去痰薬、抗炎症薬、抗アレルギー薬などの用途に使用される。キジツの市販品としては、松浦薬業株式会社、高砂薬業株式会社、株式会社栃本天海堂等から商業的に入手可能である。キジツの単味エキスの市販品は、例えば、本粉末薬品株式会社、アルプス薬品工業株式会社等から商業的に入手可能である。
【0016】
ダイオウ(大黄)は、タデ科(Polygonaceae)のRheum palmatum L., Rheum tanguticum Maximowicz, Rheum officinale Baillon, Rheum coreanum Nakai又はそれらの種間雑種の通例、根茎であり、生薬(日本薬局方)として主に健胃薬や瀉下薬の用途に使用される。ダイオウの市販品は、三和生薬株式会社、株式会社栃本天海堂等から商業的に入手可能である。ダイオウの単味エキスの市販品は、例えば、アルプス薬品工業株式会社等から商業的に入手可能である。
【0017】
オウゴン(黄ごん)は、シソ科(Labiatae)のコガネバナ Scutellaria baicalensis Georgiの周皮を除いた根であり、生薬(日本薬局方)として主に抗炎症薬、抗アレルギー薬、抗菌・抗真菌薬の用途に使用される。オウゴンの市販品は、高砂薬業株式会社、株式会社栃本天海堂等から商業的に入手可能である。オウゴンの単味エキスは、オウゴンエキスとして、医薬部外品原料規格に記載されており、公知である。オウゴンエキスの市販品は、例えば、一丸ファルコス株式会社等から商業的に入手可能である。
【0018】
また、上記の生薬の単味エキスについては、市販品を用いる他、上記の植物の部位を、水又は含水エタノール、好ましくは水を抽出溶媒として抽出処理し、得られた抽出液を必要に応じて濃縮することでエキス液として得てもよいし、エキス液を乾燥処理することでエキス末として得てもよい。また、生薬の単味エキスの乾燥処理としても、特に限定されず、公知の方法、例えば、スプレードライ法や、エキス液の濃度を高めた軟エキスに対して適当な吸着剤(例えば無水ケイ酸、デンプン等)を加えて吸着末とする方法等が挙げられる。
【0019】
本発明の女性ホルモン様作用剤の好ましい例においては、より一層優れた女性ホルモン様作用を得る観点から、上記の生薬エキスは、キジツエキス、ダイオウエキス、及びオウゴンエキスからなる群より選択される少なくとも2種の生薬エキスが組み合わせられたものであることが好ましく、キジツ、ダイオウ、及びオウゴンからなる群より選択される少なくとも2種の混合生薬の漢方エキスを構成するものであることがより好ましい。このような漢方エキスとしては特に限定されず、例えば、大柴胡湯エキス、防風通聖エキス、麻子仁丸エキス、潤腸湯エキス、小承気湯エキス、通導散エキス、清上防風湯エキス、大柴胡湯去大黄エキス、甘露飲エキス、女神散エキス、乙字湯エキス、加味解毒湯エキス、柴胡加竜骨牡蛎湯エキス等が挙げられる。これらの漢方エキスは、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの漢方エキスの中でも、より一層優れた女性ホルモン様作用を得る観点から、好ましくは、キジツ、ダイオウ、及びオウゴンの混合生薬の漢方エキス、具体的には、大柴胡湯エキスが挙げられる。
【0020】
大柴胡湯を構成する生薬は、「一般用漢方処方の手引き」(厚生省薬務局監修、日薬連漢方専門委員会編集、薬業時報社発行)、「第十七改正日本薬局方」、「一般用漢方製剤製造販売承認基準」(厚生労働省医薬・生活衛生局施行)によれば、サイコ、ハンゲ、オウゴン、キジツ、シャクヤク、ショウキョウ、タイソウ、及びダイオウである。また、大柴胡湯には、漢方生薬調査会により定められた「漢方製剤の基本的取扱い方針」に規定されるように、現在繁用されている漢方関係の書簡に記載されている混合生薬(漢方処方)が包含される。
【0021】
大柴胡湯エキスの市販品は、大柴胡湯乾燥エキスAM、大柴胡湯乾燥エキスSN、及び大柴胡湯乾燥エキス粉末(いずれも日本粉末株式会社製)、並びに大柴胡湯乾燥エキスF、及び大柴胡湯乾燥エキス-F(いずれもアルプス薬品工業製)等が商業的に入手可能である。
【0022】
また、上記の大柴胡湯については、市販品を用いる他、上記の構成生薬の混合物を、水又は含水エタノール、好ましくは水を抽出溶媒として抽出処理し、得られた抽出液を必要に応じて濃縮することによりエキス液として得てもよいし、エキス液を乾燥処理することでエキス末として得てもよい。また、漢方エキスの乾燥処理としても、特に限定されず、公知の方法、例えば、スプレードライ法や、エキス液の濃度を高めた軟エキスに対して適当な吸着剤(例えば無水ケイ酸、デンプン等)を加えて吸着末とする方法等が挙げられる。
【0023】
本発明の女性ホルモン様作用剤において、キジツエキス、ダイオウエキス、及びオウゴンエキスの含有量としては、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、女性ホルモン様作用剤100重量部当たりの原生薬換算量として、キジツエキスの含有量が、0.1~10000重量部、好ましくは1~1000重量部;ダイオウエキスの含有量が、0.1~10000重量部、好ましくは1~1000重量部;オウゴンエキスの含有量が、0.1~10000重量部、好ましくは1~1000重量部が挙げられる。
【0024】
また、本発明の女性ホルモン様作用剤において、キジツエキス、ダイオウエキス、及びオウゴンエキスの少なくとも2種を組み合わせる場合の比率としては、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、キジツエキス及びダイオウエキスを組み合わせる場合、キジツエキスの原生薬換算量1重量部に対するダイオウエキスの原生薬換算量として、0.05~50重量部、好ましくは0.09~10重量部、より好ましくは0.1~1重量部;キジツエキス及びオウゴンエキスを組み合わせる場合、キジツエキスの原生薬換算量1重量部に対するオウゴンエキスの原生薬換算量として、0.1~100重量部、好ましくは0.3~10重量部、より好ましくは0.5~2重量部;ダイオウエキス及びオウゴンエキスを組み合わせる場合、ダイオウエキスの原生薬換算量1重量部に対するオウゴンエキスの原生薬換算量として、0.1~1000重量部、好ましくは0.5~500重量部、より好ましくは1.5~100重量部、さらに好ましくは2.5~10重量部;キジツエキス、ダイオウエキス、及びオウゴンエキスを組み合わせる場合、キジツエキスの原生薬換算量1重量部に対する原生薬換算量として、ダイオウエキスが0.05~50重量部、好ましくは0.09~10重量部、より好ましくは0.1~1重量部、オウゴンエキスが0.1~100重量部、好ましくは0.3~10重量部、より好ましくは0.5~2重量部が挙げられる。
【0025】
本発明の女性ホルモン様作用剤に含まれる、キジツエキス、ダイオウエキス、及びオウゴンエキスからなる群より選択される少なくとも1種の生薬エキスの総量としては、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、乾燥エキス末量換算で、通常1~100重量%、好ましくは5~90重量%、より好ましくは10~80重量%、更に好ましくは20~60重量%が挙げられる。なお、本発明において、乾燥エキス末量換算とは、乾燥エキス末を使用する場合にはそれ自体の量であり、液状のエキスを使用する場合には、溶媒を除去した残量に換算した量である。また、乾燥エキス末が、製造時に添加される吸着剤等の添加剤を含む場合は、当該添加剤を除いた量である。
【0026】
[他の含有成分]
本発明の女性ホルモン様作用剤は、前述の生薬エキスの他に、必要に応じて、他の薬理成分を含んでいてもよい。このような薬理成分の種類については、特に限定されないが、例えば、制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、鎮痙剤、粘膜修復剤、抗炎症剤、収れん剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、鎮静催眠剤、抗ヒスタミン剤、カフェイン類、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、生薬末、生薬エキス、ビタミン類、メントール類等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの薬理成分の含有量については、使用する薬理成分の種類等に応じて公知のものから適宜設定すればよい。
【0027】
本発明の女性ホルモン様作用剤には、所望の剤型に調製するために、必要に応じて、薬学的に許容される基剤や添加剤等が含まれていてもよい。このような基剤及び添加剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、等張化剤、可塑剤、分散剤、乳化剤、溶解補助剤、湿潤化剤、安定化剤、懸濁化剤、粘着剤、コーティング剤、光沢化剤、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、低級アルコール類、多価アルコール、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、防腐剤、矯味剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等が挙げられる。これらの基剤や添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの基剤や添加剤の含有量については、使用する添加成分の種類や剤型等に応じて公知のものから適宜設定すればよい。
【0028】
[剤型]
本発明の女性ホルモン様作用剤の剤型については、特に制限されず、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、カプセル剤、フィルム剤、液剤(ドリンク剤)等のいずれであってもよい。これらの剤型の中でも、服用簡易性等の観点から、好ましくは錠剤、顆粒剤、フィルム剤が挙げられる。これらの剤型は、薬学的に許容される基材や添加剤を用いて調製することができ、当該基材や添加剤の種類や配合量についても、製剤技術の分野で公知である。
【0029】
本発明の女性ホルモン様作用剤を錠剤として提供する場合、当該錠剤は、胃溶性錠剤(通常錠剤)又は腸溶性錠剤のいずれであってもよく、また、必要に応じて、糖衣基剤、水溶性フィルムコーティング基剤等でコーティングがなされていてもよい。
【0030】
[用途]
本発明の女性ホルモン様作用剤は、エストロゲン受容体への結合活性を有するため、女性ホルモンとエストロゲン受容体との結合により発現する生理的及び病態生理学的な作用を期待する用途に適用される。具体的には、本発明の女性ホルモン様作用剤は、女性ホルモンの減少により生じる症状の予防又は改善に用いられ、そのような症状としては、更年期症状、更年期障害、骨粗鬆症、体調の揺らぎ、月経痛、肌質又は髪質(コラーゲン及び/又はエラスチンの保持能)の低下等が挙げられる。従って、本発明の女性ホルモン増加剤は、女性ホルモンが減少している女性、特に、女性ホルモンの減少により生じる症状を自覚する女性に対して適用される。具体的な適用対象としては、40歳以上の女性、更年期の女性、卵巣摘出手術後又は化学療法後等の早期卵巣不全の女性、子宮摘出手術後の女性、老年期の女性等が挙げられる。
【0031】
[用量・用法]
本発明の女性ホルモン様作用剤は、経口投与によって投与される。本発明の女性ホルモン様作用剤の投与量については、女性ホルモンの減少の程度、年齢等に応じて適宜設定されるが、例えば、1日当たりの摂取量として、キジツエキスの原生薬換算量で0.01~50g、好ましくは0.1~10gが挙げられ、ダイオウエキスの原生薬換算量で0.01~50g、好ましくは0.1~10gが挙げられ、オウゴンエキスの原生薬換算量で0.01~50g、好ましくは0.1~10gが挙げられる。
【0032】
また、本発明の女性ホルモン様作用剤の投与量としては、生薬エキス総量の乾燥エキス末換算量で、400~10000mg、好ましくは1300~6000mgが挙げられ、大柴胡湯エキスについては1700~5800mgが挙げられる。服用タイミングについては特に制限されず、食前、食後、又は食間のいずれであってもよいが、好ましくは食前又は食間が挙げられる。
【実施例0033】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
1.エキス末の調製
(1)生薬単味エキス
原料生薬として、キジツ、ダイオウ、オウゴン、サイコ、ハンゲ、ショウキョウ、シャクヤク、タイソウをそれぞれ100g用意し、これらを刻んだ後、15倍量の水を加えて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得、減圧下で濃縮して凍結乾燥を行い、キジツ単味エキス末17.6g、ダイオウ単味エキス末16.3g、オウゴン単味エキス末29.8g、サイコエキス単味末22.2g、ハンゲ単味エキス末8.9g、ショウキョウ単味エキス末4.0g、シャクヤク単味エキス末22.4g、タイソウ単味エキス末38.3gを得た。
【0035】
(2)大柴胡湯エキス
原料生薬として、ショウキョウ0.6(重量部、以下同じ)、タイソウ1.8、サイコ3.6、シャクヤク1.8、キジツ1.2、ハンゲ2.4、オウゴン1.8、ダイオウ0.6の割合で用い、これらを刻んだ後、総量100gを、水15倍重量を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得、減圧下で濃縮して凍結乾燥を行い、大柴胡湯エキス末20.2gを得た。
【0036】
2.試験方法
50U/mlのペニシリン、50mg/mlのストレプトマイシン、3%のウシ胎児血清(FBS)、及び0.5mMのL-グルタミンを含むフェノールレッド非添加DMEM培地を準備した。ヒト乳癌由来のMCF7細胞(株式会社ケー・エー・シー)を準備した。MCF7細胞は、エストロゲン依存的に増殖能が向上する癌細胞であり、MCF7細胞の増殖性は、エストロゲン様作用の検出系として利用されている。
【0037】
実験用培地で4×104cells/mlに調整したMCF7細胞懸濁液を、96ウェルプレートのウェルに50μl/ウェルとなるように播種した。次いで、上記の生薬単味エキス末又は漢方エキス末を、1ウェル当たりの各エキス末の終濃度が表1に示す量(単位:μg/mL)となるよう、エキス末と0.2体積%DMSOを含む培地50μlを各ウェルに添加した。また、MCF7細胞懸濁液50μlを播種したウェルに、エキス末を含まない、0.2体積%DMSOを含む培地50μlを添加したものをコントロールとした。ウェルプレートを、37℃、CO2存在下に供し、48時間培養を行った。
【0038】
培養後、細胞増殖/細胞毒性アッセイキット(商品名「Cell Counting kit-8」、株式会社同仁科学研究所)を用いて、450nmの吸光度(細胞数に対応)を計測した。測定した450nmの吸光度の値を用いて、下記算出式に従って、細胞増殖促進率を計算した。本試験はn=6で実施し、得られた細胞増殖促進率の平均値を、女性ホルモン様作用の評価値として得た。結果を表1に示す。
【0039】
【0040】
【0041】
3.結果
キジツ、ダイオウ、オウゴン、サイコ、ハンゲ、ショウキョウ、シャクヤク、タイソウの単味エキスのうち、比較例1~5に示すように、ボウイ、サイコ、ハンゲ、ショウキョウ、シャクヤク、タイソウの単味エキスには女性ホルモン様作用は見られなかったが、実施例1~3に示すように、キジツ、ダイオウ、オウゴンの単味エキスには、女性ホルモン様作用が見出された。また、実施例1~3で女性ホルモン様作用が見出されたエキスを組み合わせることで、実施例4~7に示すように、顕著な女性ホルモン様作用が認められた。さらに、実施例8に示すように、実施例1~3で女性ホルモン様作用が見出された全てのエキスの組み合わせを含む漢方エキス(実施例8の大柴胡湯は、キジツ、ダイオウ及びオウギを含む混合生薬のエキスである。)では、さらに顕著な女性ホルモン様作用が認められた。