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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180612
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H05H1/46 L
H05H1/46 M
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024181471
(22)【出願日】2024-10-17
(62)【分割の表示】P 2021094193の分割
【原出願日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】P 2020146197
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大秦 充敬
(72)【発明者】
【氏名】竹内 貴広
(57)【要約】
【課題】3つの電力パルス信号を用いてプロセス性能を向上させる。
【解決手段】少なくとも3つのパワーレベルのソースRFパルス信号を生成するソースRF生成部、ソースRFパルス信号の周波数よりも低い周波数の、少なくとも2つのパワーレベルの第1及び第2バイアスRFパルス信号を生成する第1及び第2バイアスRF生成部、ソースRF生成部、第1及び第2バイアスRF生成部を互いに同期させるための同期信号を生成する同期信号生成部、ソースRF生成部及びアンテナに接続され、ソースRFパルス信号がソースRF生成部から第1整合回路を介してアンテナに供給可能にする第1整合回路、第1及び第2バイアスRF生成部及び基板支持部に接続され、第1及び第2バイアスRFパルス信号が第1及び第2バイアスRF生成部から第2整合回路を介して基板支持部に供給可能にする第2整合回路を有するプラズマ処理装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバ内に設けられた基板支持部と、
前記プラズマ処理チャンバの上部に設けられたアンテナと、
ソースRFパルス信号を生成するように構成されたソースRF生成部であり、前記ソースRFパルス信号は、少なくとも3つのパワーレベルを有し、各パワーレベルは、0以上である、ソースRF生成部と、
第1バイアスRFパルス信号を生成するように構成された第1バイアスRF生成部であり、前記第1バイアスRFパルス信号の周波数は、前記ソースRFパルス信号の周波数よりも低く、前記第1バイアスRFパルス信号は、少なくとも2つのパワーレベルを有し、各パワーレベルは、0以上である、第1バイアスRF生成部と、
第2バイアスRFパルス信号を生成するように構成された第2バイアスRF生成部であり、前記第2バイアスRFパルス信号は、少なくとも2つのパワーレベルを有し、各パワーレベルは、0以上である、第2バイアスRF生成部と、
前記ソースRF生成部、前記第1バイアスRF生成部及び前記第2バイアスRF生成部を互いに同期させるための同期信号を生成するように構成された同期信号生成部と、
前記ソースRF生成部及び前記アンテナに接続される第1整合回路であり、前記ソースRFパルス信号が前記ソースRF生成部から前記第1整合回路を介して前記アンテナに供給されるのを可能にする、第1整合回路と、
前記第1バイアスRF生成部、前記第2バイアスRF生成部及び前記基板支持部に接続される第2整合回路であり、前記第1バイアスRFパルス信号が前記第1バイアスRF生成部から前記第2整合回路を介して前記基板支持部に供給されるのを可能にし、前記第2バイアスRFパルス信号が前記第2バイアスRF生成部から前記第2整合回路を介して前記基板支持部に供給されるのを可能にする、第2整合回路と、を有する、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記第2バイアスRFパルス信号の周波数は、前記第1バイアスRFパルス信号の周波数とは異なる、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記第2バイアスRFパルス信号の周波数は、前記第1バイアスRFパルス信号の周波数よりも低い、
請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記同期信号生成部は、前記ソースRF生成部、前記第1バイアスRF生成部及び前記第2バイアスRF生成部のうちいずれか1つに配置される、
請求項1~3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記第1バイアスRF生成部は、前記第1バイアスRFパルス信号のパワーレベルの変化のタイミングを、前記ソースRFパルス信号のパワーレベルの変化のタイミングに対してシフトさせるように構成される、
請求項1~4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記第2バイアスRF生成部は、前記第2バイアスRFパルス信号のパワーレベルの変化のタイミングを、前記ソースRFパルス信号のパワーレベルの変化のタイミング、及び/又は前記第1バイアスRFパルス信号のパワーレベルの変化のタイミングに対してシフトさせるように構成される、
請求項1~5のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記第2バイアスRFパルス信号は、ゼロパワーレベルを含む2つのパワーレベルを有する、
請求項1~6のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記第1バイアスRFパルス信号は、第1時間において、0よりも大きいパワーレベルを有し、
前記第2バイアスRFパルス信号は、前記第1時間において、ゼロパワーレベルを有する、
請求項7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記第2整合回路は、
前記第1バイアスRF生成部と前記基板支持部との間に接続され、前記第2バイアスRF生成部からの第2バイアスRFパルス信号の結合を防止する第1分離回路と、
前記第2バイアスRF生成部と前記基板支持部との間に接続され、前記第1バイアスRF生成部からの第1バイアスRFパルス信号の結合を防止する第2分離回路と、を有する、
請求項1~8のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記第1分離回路は、コンデンサとインダクタとを含む共振回路であり、
前記第2分離回路は、インダクタを含むRFチョーク回路である、
請求項9に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記基板支持部に電気的に接続され、バイアスDCパルス信号を生成するように構成されたDCパルス生成部を有する、
請求項1~10のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記第2バイアスRFパルス信号は、DCオン時間において、ゼロパワーレベルを有し、
前記DCパルス生成部は、前記DCオン時間において、バイアスDCパルス信号を生成し、前記DCオン時間とは異なるDCオフ時間において、DCパルスの生成を停止するように構成される、
請求項11に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
プラズマ処理チャンバと、前記プラズマ処理チャンバ内に設けられた基板支持部と、前記プラズマ処理チャンバの上部に設けられたアンテナとを有するプラズマ処理装置で使用するプラズマ処理方法であって、
ソースRFパルス信号を生成する工程であり、前記ソースRFパルス信号は、少なくとも3つのパワーレベルを有し、各パワーレベルは、0以上である、工程と、
前記ソースRFパルス信号を第1整合回路を介して前記アンテナに供給する工程と、
第1バイアスRFパルス信号を生成する工程であり、前記第1バイアスRFパルス信号の周波数は、前記ソースRFパルス信号の周波数よりも低く、前記第1バイアスRFパルス信号は、少なくとも2つのパワーレベルを有し、各パワーレベルは、0以上である、工程と、
前記第1バイアスRFパルス信号を第2整合回路を介して前記基板支持部に供給する工程と、
第2バイアスRFパルス信号を生成する工程であり、前記第2バイアスRFパルス信号の周波数は、前記第1バイアスRFパルス信号の周波数よりも低く、前記第2バイアスRFパルス信号は、少なくとも2つのパワーレベルを有し、各パワーレベルは、0以上である、工程と、
前記第2バイアスRFパルス信号を前記第2整合回路を介して前記基板支持部に供給する工程と、
を有する、
プラズマ処理方法。
【請求項14】
プラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバ内に設けられた基板支持部と、
前記プラズマ処理チャンバに結合される第1整合回路と、
前記基板支持部に結合される第2整合回路と、
前記第1整合回路に結合され、第1ソースRFパルス信号を生成するように構成されたソースRF生成部であり、前記ソースRFパルス信号は、少なくとも3つのパワーレベルを有し、各パワーレベルは、0以上である、ソースRF生成部と、
前記第2整合回路に結合され、第1バイアスRFパルス信号を生成するように構成された第1バイアスRF生成部であり、前記第1バイアスRFパルス信号の周波数は、前記ソースRFパルス信号の周波数よりも低く、前記第1バイアスRFパルス信号は、少なくとも2つのパワーレベルを有し、各パワーレベルは、0以上である、第1バイアスRF生成部と、
前記第2整合回路に結合され、第2バイアスRFパルス信号を生成するように構成された第2バイアスRF生成部であり、前記第2バイアスRFパルス信号は、少なくとも2つのパワーレベルを有し、各パワーレベルは、0以上である、第2バイアスRF生成部と、
前記ソースRF生成部、前記第1バイアスRF生成部及び前記第2バイアスRF生成部を互いに同期させるための同期信号を生成するように構成された同期信号生成部と、
を有する、
プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、2つの高周波電源を有し、チャンバ上部のアンテナ及び下部電極(サセプタ)に2周波の高周波電力を供給するICP(Inductively Coupled Plasma)装置を提案する。2つの高周波電源のうち、一方の高周波電源から下部電極に、例えば13MHzの周波数のバイアス用の高周波電力が供給される。チャンバの上方にはアンテナが設けられ、他方の高周波電源からアンテナの外側コイルを構成する線路の中点またはその近傍に、例えば27MHzのプラズマ励起用の高周波電力が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-67503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、3つの高周波(RF;Radio Frequency)電力パルスを用いてプロセスの性能を向上させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、チャンバと、前記チャンバ内に設けられた基板支持部と、前記チャンバの上部に設けられたアンテナと、ソースRFパルス信号を生成するように構成されたソースRF生成部であり、前記ソースRFパルス信号は、少なくとも3つのパワーレベルを有し、各パワーレベルは、0以上である、ソースRF生成部と、第1バイアスRFパルス信号を生成するように構成された第1バイアスRF生成部であり、前記第1バイアスRFパルス信号の周波数は、前記ソースRFパルス信号の周波数よりも低く、前記第1バイアスRFパルス信号は、少なくとも2つのパワーレベルを有し、各パワーレベルは、0以上である、第1バイアスRF生成部と、第2バイアスRFパルス信号を生成するように構成された第2バイアスRF生成部であり、前記第2バイアスRFパルス信号は、少なくとも2つのパワーレベルを有し、各パワーレベルは、0以上である、第2バイアスRF生成部と、前記ソースRF生成部、前記第1バイアスRF生成部及び前記第2バイアスRF生成部を互いに同期させるための同期信号を生成するように構成された同期信号生成部と、前記ソースRF生成部及び前記アンテナに接続される第1整合回路であり、前記ソースRFパルス信号が前記ソースRF生成部から前記第1整合回路を介して前記アンテナに供給されるのを可能にする、第1整合回路と、前記第1バイアスRF生成部、前記第2バイアスRF生成部及び前記基板支持部に接続される第2整合回路であり、前記第1バイアスRFパルス信号が前記第1バイアスRF生成部から前記第2整合回路を介して前記基板支持部に供給されるのを可能にし、前記第2バイアスRFパルス信号が前記第2バイアスRF生成部から前記第2整合回路を介して前記基板支持部に供給されるのを可能にする、第2整合回路と、を有する、プラズマ処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、3つの高周波電力パルス信号を用いてプロセスの性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係るプラズマ処理システムの一例を示す断面模式図。
図2】実施形態に係るプラズマ処理装置の一例を示す図。
図3】実施形態に係る2つのバイアスRFパルス信号の整合回路の一例を示す図。
図4】ラジカル、イオン、電子温度、イオンエネルギー、副生成物の一例を示す図。
図5】実施形態に係る2周波の高周波電力パルスのパルスパターンを示す図。
図6】実施形態に係る3周波の高周波電力パルスのパルスパターンを示す図。
図7】実施形態に係る3周波の高周波電力パルスのパルスパターンを示す図。
図8】実施形態に係る3周波の高周波電力パルスのパルスパターンを示す図。
図9】実施形態の変形例に係るプラズマ処理装置の一例を示す図。
図10】変形例1に係るDCパルスと高周波電力パルスのパルスパターンを示す図。
図11】変形例2に係るDCパルスと高周波電力パルスのパルスパターンを示す図。
図12】変形例3に係るDCパルスと高周波電力パルスのパルスパターンを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
[プラズマ処理システム]
初めに、図1及び図2を参照しながら、実施形態に係るプラズマ処理システムについて説明する。図1は、実施形態に係るプラズマ処理システムの一例を示す断面模式図である。図2は、実施形態に係るプラズマ処理装置1の一例を示す図である。
【0010】
実施形態において、プラズマ処理システムは、プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理装置1は、3つの高周波電力パルス(3つのRFパルス信号)をチャンバ10内に供給することによりチャンバ10内の処理ガスからプラズマを生成するように構成されている。そして、プラズマ処理装置1は、生成されたプラズマを基板に曝すことにより基板を処理する。
【0011】
プラズマ処理装置1は、チャンバ(プラズマ処理チャンバ)10、基板支持部11及びプラズマ生成部を含む。チャンバ10は、プラズマ処理空間10sを規定する。また、チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するためのガス入口10aと、プラズマ処理空間からガスを排出するためのガス出口10bとを有する。ガス入口10aは、少なくとも1つのガス供給部20に接続される。
【0012】
ガス出口10bは、例えばチャンバ10の底部に設けられた排気口であり、排気システム40に接続される。排気システム40は、ガス出口に接続され得る。排気システム40は、圧力弁及び真空ポンプを含んでもよい。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、粗引きポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0013】
基板支持部11は、プラズマ処理空間10s内に配置され、基板Wを支持する。プラズマ生成部は、プラズマ処理空間10s内に供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。
【0014】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。実施形態において、図1に示すように、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ21を含んでもよい。コンピュータ21は、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)21a、記憶部21b、及び通信インターフェース21cを含んでもよい。処理部21aは、記憶部21bに格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部21bは、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース21cは、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0015】
以下に、図2の誘導結合プラズマ処理装置を一例として、プラズマ処理装置1の構成例について更に説明する。プラズマ処理装置1は、チャンバ10を含む。チャンバ10は、誘電体窓10c及び側壁10dを含む。誘電体窓10c及び側壁10dは、チャンバ10内のプラズマ処理空間10sを規定する。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11、ガス導入部13、ガス供給部20、電力供給部及びアンテナ14を含む。
【0016】
基板支持部11は、チャンバ10内のプラズマ処理空間10sに配置される。アンテナ14は、チャンバ10(誘電体窓10c)の上部又は上方に配置される。
【0017】
基板支持部11は、本体部及び環状部材(エッジリング)12を含む。本体部は、基板(ウェハ)Wを支持するための中央領域(基板支持面)11aと、環状部材12を支持するための環状領域(エッジリング支持面)11bを有する。本体部の環状領域11bは、本体部の中央領域11aを囲んでいる。基板Wは、本体部の中央領域11a上に配置され、環状部材12は、本体部の中央領域11a上の基板Wを囲むように本体部の環状領域11b上に配置される。実施形態において、本体部は、静電チャック111及び導電部材112を含む。静電チャック111は、導電部材112の上に配置される。導電部材112は、RF電極として機能し、静電チャック111の上面は、基板支持面(中央領域11a)として機能する。また、図示は省略するが、実施形態において、基板支持部11は、静電チャック111及び基板Wのうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、冷媒、伝熱ガスのような温調流体が流れる。なお、チャンバ10、基板支持部11、及び環状部材12は、軸Zを中心軸として軸Zが一致するように配置される。
【0018】
ガス導入部13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するように構成される。実施形態において、ガス導入部13は、基板支持部11の上方に配置され、誘電体窓10cに形成された中央開口部に取り付けられる。
【0019】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース23及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。実施形態において、ガス供給部20は、1又はそれ以上の処理ガスを、それぞれに対応のガスソース23からそれぞれに対応の流量制御器22を介してガス導入部13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、1又はそれ以上の処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0020】
電力供給部は、チャンバ10に結合されるRF電力供給部31を含む。RF電力供給部31は、3つのRF信号(RF電力)を、基板支持部11の導電部材112又はアンテナ14に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。なお、プラズマ生成部は、プラズマ処理空間10s内に少なくとも1つの処理ガスを供給するガス供給部20と、RF電力供給部31とを含み、処理ガスからプラズマを生成するように構成されてもよい。
【0021】
アンテナ14は、1又は複数のコイルを含む。実施形態において、アンテナ14は、同軸上に配置された外側コイル及び内側コイルを含んでもよい。この場合、RF電力供給部31は、外側コイル及び内側コイルの双方に接続されてもよく、外側コイル及び内側コイルのうちいずれか一方に接続されてもよい。前者の場合、同一のRF生成部が外側コイル及び内側コイルの双方に接続されてもよく、別個のRF生成部が外側コイル及び内側コイルに別々に接続されてもよい。
【0022】
実施形態において、RF電力供給部31は、ソースRF生成部31a、第1バイアスRF生成部31b及び第2バイアスRF生成部31cを含む。ソースRF生成部31aは、アンテナ14に結合され、第1バイアスRF生成部31b及び第2バイアスRF生成部31cは、導電部材112に結合される。ソースRF生成部31aは、第1整合回路33を介してアンテナ14に接続され、プラズマ生成用のソースRFパルス信号(以下、HF電力ともいう。)を生成するように構成される。実施形態において、ソースRFパルス信号は、10MHz~100MHzの範囲内の周波数を有する。実施形態において、ソースRFパルス信号は、20MHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。実施形態において、ソースRFパルス信号は、100MHz以上の周波数を有する。生成されたソースRFパルス信号は、アンテナ14に供給される。ソースRFパルス信号は、少なくとも3つのパワーレベルを有し、各パワーレベルは、0以上である。従って、ソースRFパルス信号は、High/Middle/Lowパワーレベルを有してもよく、これらは0よりも大きい。また、ソースRFパルス信号は、High/Lowパワーレベル及びゼロパワーレベル(Off)を有してもよい。
【0023】
また、第1バイアスRF生成部31bは、第2整合回路34及び給電ライン37を介して基板支持部11の導電部材112に接続され、第1バイアスRFパルス信号(以下、LF1電力ともいう。)を生成するように構成される。生成された第1バイアスRFパルス信号は、基板支持部11の導電部材112に供給される。実施形態において、第1バイアスRFパルス信号は、ソースRFパルス信号の周波数とは異なる周波数を有する。実施形態において、第1バイアスRFパルス信号は、ソースRFパルス信号の周波数よりも低い周波数を有する。実施形態において、第1バイアスRFパルス信号は、ソースRFパルス信号の周波数と同じ周波数を有する。実施形態において、第1バイアスRFパルス信号は、1MHz~40MHzの範囲内の周波数を有する。実施形態において、第1バイアスRFパルス信号は、1.2MHz~15MHzの範囲内の周波数を有する。第1バイアスRFパルス信号は、少なくとも2つのパワーレベルを有し、各パワーレベルは、0以上である。従って、第1バイアスRFパルス信号は、High/Lowパワーレベルを有してもよく、これらは0よりも大きい。また、第1バイアスRFパルス信号は、0よりも大きいパワーレベル及びゼロパワーレベル、すなわちオン/オフ信号を有してもよい。
【0024】
また、第2バイアスRF生成部31cは、第2整合回路34及び給電ライン37を介して基板支持部11の導電部材112に接続され、第2バイアスRFパルス信号(以下、LF2電力ともいう。)を生成するように構成される。生成された第2バイアスRFパルス信号は、基板支持部11の導電部材112に供給される。実施形態において、第2バイアスRFパルス信号は、第1バイアスRFパルス信号の周波数よりも低い周波数を有する。実施形態において、第2バイアスRFパルス信号は、100kHz~5MHzの範囲内の周波数を有する。実施形態において、第2バイアスRFパルス信号は、200kHz~4MHzの範囲内の周波数を有する。実施形態において、第2バイアスRFパルス信号は、400kHz~2MHzの範囲内の周波数を有する。第1バイアスRFパルス信号は、少なくとも2つのパワーレベルを有し、各パワーレベルは、0以上である。従って、第2バイアスRFパルス信号は、High/Lowパワーレベルを有してもよく、これらは0よりも大きい。また、第2バイアスRFパルス信号は、0よりも大きいパワーレベル及びゼロパワーレベル、すなわちオン/オフ信号を有してもよい。
【0025】
このように、ソースRFパルス信号、第1バイアスRFパルス信号及び第2バイアスRFパルス信号はパルス化される。第1バイアスRFパルス信号及び第2バイアスRFパルス信号はオン状態とオフ状態との間、或いは2以上の異なるオン状態(High/Low)の間でパルス化される。ソースRFパルス信号は2以上の異なるオン状態(High/Low)とオフ状態との間、或いは3以上の異なるオン状態(High/Middle/Low)の間でパルス化される。
【0026】
第1整合回路33は、ソースRF生成部31a及びアンテナ14に接続される。第1整合回路33は、ソースRFパルス信号がソースRF生成部31aから第1整合回路33を介してアンテナ14に供給されるのを可能にする。
【0027】
第2整合回路34は、第1バイアスRF生成部31b、第2バイアスRF生成部31c及び基板支持部11(導電部材112)に接続される。第2整合回路34は、第1バイアスRFパルス信号が第1バイアスRF生成部31bから第2整合回路34を介して基板支持部11に供給されるのを可能にする。また、第2整合回路34は、第2バイアスRFパルス信号が第2バイアスRF生成部31cから第2整合回路34を介して基板支持部11に供給されるのを可能にする。
【0028】
RF電力供給部31は、同期信号生成部31dをさらに含む。同期信号生成部31dは、ソースRF生成部31a、第1バイアスRF生成部31b、第2バイアスRF生成部31c、第1整合回路33及び第2整合回路34を互いに同期させるための同期信号31sを生成するように構成される。同期信号生成部は31d、ソースRF生成部31a、第1バイアスRF生成部31b及び第2バイアスRF生成部31cのうちいずれか1つに配置される。そして、同期信号生成部31dは、残りの2つのRF生成部、第1整合回路33及び第2整合回路34に同期信号31sを供給するように構成される。一実施形態において、同期信号生成部31dは、ソースRF生成部31aに配置され、第1バイアスRF生成部31b、第2バイアスRF生成部31c、第1整合回路33及び第2整合回路34に同期信号31sを生成するように構成される。なお、同期信号生成部31dは別個に配置されてもよく、この場合、同期信号31sは、ソースRF生成部31a、第1バイアスRF生成部31b、第2バイアスRF生成部31c、第1整合回路33及び第2整合回路34に供給される。
【0029】
制御部2は、ソースRF生成部31a、第1バイアスRF生成部31b及び第2バイアスRF生成部31cのそれぞれに各パルス信号の供給を指示する制御信号を出力する。これにより、予め定められたタイミングにソースRFパルス信号、第1バイアスRFパルス信号、及び第2バイアスRFパルス信号が供給され、チャンバ10内の処理ガスからプラズマが生成される。そして、生成されたプラズマを基板に曝すことにより基板処理が行われる。これにより、プロセスの効能を向上させ、高精度の基板処理を可能にする。制御部2によるソースRFパルス信号、第1バイアスRFパルス信号、及び第2バイアスRFパルス信号のオン・オフ状態又は0以上のパワーレベルの制御タイミングについては後述する。
【0030】
[第2整合回路の内部構成の一例]
次に、第2整合回路34の構成の一例について、図3を参照しながら説明する。図3は、実施形態に係る第2整合回路34の内部構成の一例を示す図である。
【0031】
第1バイアスRF生成部31b及び第2バイアスRF生成部31cは、第2整合回路34及び給電ライン37を介して、基板支持部11(導電部材112)に接続される。第1バイアスRF生成部31bから供給される第1バイアスRFパルス信号を、以下の説明ではLF1電力(LF1 Power)とも表記する。また、第2バイアスRF生成部31cから供給される第2バイアスRFパルス信号を、以下の説明ではLF2電力(LF2 Power)とも表記する。
【0032】
第1バイアスRF生成部31bから供給される第1バイアスRFパルス信号(LF1電力)が第2整合回路34内の給電ライン36を介して反対側(第2バイアスRF生成部31c側)に結合すると、チャンバ10へ供給されるLF1電力の供給効率が低下する。同様に、第2バイアスRF生成部31cから供給される第2バイアスRFパルス信号(LF2電力)が給電ライン36を介して反対側(第1バイアスRF生成部31b側)に結合すると、チャンバ10へ供給されるLF2電力の供給効率が低下する。そうすると、チャンバ10へのバイアス電力の供給が低下するために、イオンエネルギーの制御等が難しくなり、プロセスの性能が悪化する。
【0033】
そこで、本実施形態に係る第2整合回路34は、第1調整回路34b1、第1分離回路34b2、第2調整回路34c1、第2分離回路34c2を有する。第1調整回路34b1及び第1分離回路34b2は、第1バイアスRF生成部31bと給電ライン37との間に接続される。第2調整回路34c1及び第2分離回路34c2は、第2バイアスRF生成部31cと給電ライン37との間に接続される。係る構成により、第1バイアスRF生成部31bにおいて生成された第1バイアスRFパルス信号(LF1電力)が、第2バイアスRF生成部31cへの結合を抑制しつつ、基板支持部11(導電部材112)に供給される。また、第2バイアスRF生成部31cにおいて生成された第2バイアスRFパルス信号(LF2電力)が、第1バイアスRF生成部31bへの結合を抑制しつつ、基板支持部11(導電部材112)に供給される。
【0034】
第1調整回路34b1は、可変素子を有し、第1バイアスRF生成部31bの負荷側(基板支持部11側)のインピーダンスを、第1バイアスRF生成部31bの出力インピーダンスに整合させるよう構成されている。一実施形態において、第1調整回路34b1の可変素子は、可変コンデンサである。
【0035】
第2分離回路34c2は、第2バイアスRF生成部31cと基板支持部11との間に接続され、第1バイアスRF生成部31bからのLF1電力である第1バイアスRFパルス信号の結合を防止する。
【0036】
第2調整回路34c1は、可変素子を有し、第2バイアスRF生成部31cの負荷側(基板支持部11側)のインピーダンスを、第2バイアスRF生成部31cの出力インピーダンスに整合させるよう構成されている。一実施形態において、第2調整回路34c1の可変素子は、可変インダクタである。
【0037】
第1分離回路34b2は、第1バイアスRF生成部31bと基板支持部11との間に接続され、第2バイアスRF生成部31cからのLF2電力である第2バイアスRFパルス信号の結合を防止する。
【0038】
第2分離回路34c2は、インダクタL2を含むRFチョーク回路である。第1分離回路34b2は、コンデンサC1とインダクタL1とを含む共振回路である。第1分離回路34b2は、コンデンサC1とインダクタL1により構成される。第2分離回路34c2は、インダクタL2により構成される。
【0039】
第1分離回路34b2は、第1バイアスRFパルス信号からはインピーダンスが0または0近くに見え、第2バイアスRFパルス信号からはインピーダンスが高く、第1バイアスRF生成部31b側が壁に見えるようにC1とL1の回路定数を設定する。これにより、第1分離回路34b2において第2バイアスRFパルス信号から見たインピーダンスをZLF2とし、プラズマの負荷インピーダンスをZchamberと表記すると、ZLF2>>Zchamberが成立する。
【0040】
また、第2分離回路34c2は、第2バイアスRFパルス信号からはインピーダンスが0又は0近くに見え、第1バイアスRFパルス信号からはインピーダンスが高く、第2バイアスRF生成部31c側が壁に見えるようにL2の回路定数を設定する。これにより、第2分離回路34c2において第1バイアスRFパルス信号から見たインピーダンスをZLF1とすると、ZLF1>>Zchamberが成立する。
【0041】
このように、第1分離回路34b2の回路定数を上記のように設定することで、第1分離回路34b2では、インピーダンスZLF2がプラズマの負荷インピーダンスZchamberよりもはるかに大きくなる。これにより、第1分離回路34b2は、第2バイアスRF生成部31cからの第2バイアスRFパルス信号の結合を防止する(図3の「LF2 Power→×」)。この結果、LF2電力は、給電ライン37を介してチャンバ10内に供給され、これにより、LF2電力の供給効率の低下を抑制できる。
【0042】
同様に、第2分離回路34c2の回路定数を上記のように設定することで、第2分離回路34c2では、インピーダンスZLF1がプラズマの負荷インピーダンスZchamberよりもはるかに大きくなる。これにより、第2分離回路34c2は、第1バイアスRF生成部31bからの第1バイアスRFパルス信号の結合を防止する(図3の「LF1 Power→×」)。この結果、LF1電力は、給電ライン37を介してチャンバ10内に供給され、これにより、LF1電力の供給効率の低下を抑制できる。
【0043】
係る構成により、異なる周波数を有する2つのバイアス電力(LF1電力及びLF2電力)のパルス信号を基板支持部11に効率良く供給することができる。
【0044】
[パルス信号]
例えば、アスペクト比が高い深穴をエッチングするプロセスの場合、HF電力、LF1電力及びLF2電力のパルス信号を用いて、イオンの入射角を垂直にしたり、マスク選択比を高めたりすることができる。
【0045】
図4は、ラジカル、イオン、電子温度、イオンエネルギー、副生成物の一例を示す図である。図4の横軸は、RF電力の供給を停止(オフ)した後の経過時間(1周期)を示す。図4の縦軸は、オフ時間におけるラジカル(Radical)、イオン(Ions)、電子温度(Te)、イオンエネルギー(ε)、副生成物(By-products)の各時間における状態を示す。
【0046】
これによれば、ラジカル(Radical)は、RF電力をオフ状態にしてからの変化が緩やかであるのに対して、イオン(Ions)及びプラズマ温度(Te)はRF電力をオフ状態にしてからの変化がラジカルよりも早い。このようなプラズマ中のラジカルやイオンの減衰やエネルギーの変化等を考慮してHF電力及びLF電力(例えばLF1電力及びLF2電力)のパルス信号を制御する。HF電力をオフ状態にした後に供給するLF電力のパルス信号の一例としては、プラズマ温度(Te)が高い初期時間は、LF電力をオフ状態にし、プラズマ温度(Te)が低下した後にLF電力をオン状態にする制御が考えられる。これによれば、イオンはまだ残っているが、プラズマ温度(Te)が低い時間にLF電力を用いて、イオンの基板への引き込みを効率的に行うことができる。
【0047】
HF電力をオフ状態にした後に供給するLF電力のパルス信号の他の例としては、プラズマパラメータとしてイオンエネルギーを示すεを用い、プラズマ電子温度Teがほぼ変化しない時間にLF2電力を制御する。これにより、イオンエネルギーεをコントロールしてイオンの入射角をより垂直に制御することができる。
【0048】
このように、HF電力及びLF電力をオン・オフ状態にするタイミングを、ラジカル、イオン、プラズマ電子温度、イオンエネルギー、副生成物等のプラズマパラメータの動きに応じて細かく制御する。これにより、プロセスの性能を向上させることができる。以下、高周波電力のパルス信号の供給タイミングについて、図5図8を参照しながら説明する。なお、高周波電力のパルス信号の供給タイミングは、制御部2により制御される。
【0049】
(2周波のパルス信号)
図5は、実施形態に係る2周波の高周波電力パルスのパルスパターンを示す図である。まず、図5に示す2周波の高周波電力であるHF電力(Source Power)と、LF1電力(Bias Power)のパルス信号の供給タイミングについて説明する。図5の横軸は、1周期の時間を示し、縦軸は、HF電力及びLF1電力のオン・オフ状態を示す。期間(1)~(4)を1周期として、HF電力及びLF1電力の各パルス信号の制御が繰り返される。
【0050】
2周波の高周波電力パルスの制御では、HF電力のオン状態とLF1電力のオン状態とは時間的にオーバーラップせず、HF電力をオン状態にしている間、LF1電力をオフ状態にし、HF電力をオフ状態にしている間、LF1電力をオン状態にする。ソースRF生成部31aは、ソースRFパルス信号(HF電力)を生成するように構成され、本実施形態では、ソースRFパルス信号は、2つのパワーレベル(On/Off)を有する。例えばソースRFパルス信号は、27MHzの周波数を有してもよい。
【0051】
第1バイアスRF生成部31bは、第1バイアスRFパルス信号(LF1電力)を生成するように構成され、本実施形態では、第1バイアスRFパルス信号は、2つのパワーレベル(On/Off)を有する。第1バイアスRFパルス信号の周波数は、ソースRFパルス信号の周波数よりも低い。例えば第1バイアスRFパルス信号は、13MHzの周波数を有する。
【0052】
図5の期間(1)では、HF電力をオン状態にし、LF1電力をオフ状態にする。つまり、時刻tから時刻tまでの時間Tは、HF電力の供給により、ラジカルとイオンを含むプラズマが生成される。
【0053】
時間T経過後の時刻tにHF電力をオフ状態に制御すると、図4に一例を示すように、ラジカル、イオン、プラズマ温度はそれぞれの時定数をもって減衰する。これらのプラズマパラメータの減衰状態に応じて、HF電力がオフ状態に制御されている期間(2)及び期間(3)にLF1電力をオンするタイミングを制御する。期間(2)では、LF1電力の供給タイミングを制御することで、主にイオンの挙動を制御する。期間(3)では、副生成物の排気を制御する。
【0054】
例えば、プラズマ温度が高いときにLF1電力をオン状態にすると、副生成物が多く発生し、これにより、エッチングが阻害される場合がある。よって、プラズマ温度が高いときを避けてLF1電力をオン状態にすることが好ましい場合がある。つまり、HF電力をオフ状態にした時刻tから予め定められたディレイ時間Tdelayだけシフトした時刻tにLF1電力をオン状態に制御することで、エッチング時の副生成物の量を抑制でき、エッチングを促進できる。
【0055】
ディレイ時間Tdelayでは、HF電力及びLF1電力の双方が一時的にオフ状態になっている。これにより、LF1電力を供給する時刻tよりも前に一時的にラジカルとイオンの生成が停止される。この結果、LF1電力を供給している時間Tにおいてエッチングする凹部の底部に到達させるイオンフラックス(イオン量)を制御でき、エッチングを促進できる。
【0056】
また、ディレイ時間Tdelayを設けることで、プラズマ温度が低下してからLF1電力をオン状態に制御できる。これにより、イオンエネルギーεを大きくでき、また、LF1電力のVpp(ピーク・ツー・ピーク電圧)が大きくなり、エッチングした凹部へのイオン入射角をより垂直に制御できる。ただし、ディレイ時間Tdelayを長くしすぎると、図4に示すイオンの減衰によりイオンが消失するため、ディレイ時間Tdelayは予め適切な値に設定されている。
【0057】
時刻tにLF1電力をオフ状態に制御する。期間(3)では、時刻tから時刻tの排気期間Toffには、HF電力及びLF1電力の双方をオフ状態に制御し、副生成物を排気する。排気期間Toffは、副生成物が基板W上に付着しない時間に予め設定されている。
【0058】
排気期間Toffが経過した時刻tに、HF電力が再びオン状態に制御され、期間(4)から期間(1)に戻る。このようにして、HF電力のオン・オフ状態、及びLF1電力のオン・オフ状態の制御を互いのオン状態が時間的にオーバーラップしないように行い、時間T、時間T、ディレイ時間Tdelay、時間Toffを別々に制御する。特に、第1バイアスRF生成部31bは、第1バイアスRFパルス信号のパワーレベルの変化のタイミングを、ソースRFパルス信号のパワーレベルの変化のタイミングに対してシフトさせるように構成される。これにより、LF1電力を供給するタイミングよりも前にディレイ時間TdelayだけHF電力及びLF1電力の供給が停止する。この結果、LF1電力をオン状態にしている時間Tにおいてエッチングされた凹部の底部に到達させるイオンフラックスを制御できる。ただし、HF電力及びLF1電力の供給タイミングは、これに限らない。例えば、ディレイ時間Tdelayは設けなくてもよい。
【0059】
(3周波のパルス信号)
図6図8は、実施形態に係る3周波の高周波電力パルスのパルスパターンを示す図である。まず、図6図8に示す3周波の高周波電力パルスであるHF電力(Source Power)と、LF1電力(Bias1 Power)と、LF2電力(Bias2 Power)のパルス信号の供給タイミングについて説明する。図6図8の横軸は、1周期の時間を示し、縦軸は、HF電力、LF1電力及びLF2電力のオン・オフ状態を示す。期間(1)~(4)を1周期として、HF電力、LF1電力及びLF2電力の各パルス信号の制御が繰り返される。
【0060】
3周波の高周波電力パルスの制御では、LF1電力のオン状態とLF2電力のオン状態とは時間的にオーバーラップせず、LF1電力をオン状態にしている間、LF2電力をオフ状態にし、LF1電力をオフ状態にしている間、LF2電力をオン状態にする。HF電力のオン状態とLF1電力のオン状態、及びHF電力のオン状態とLF2電力のオン状態は時間的にオーバーラップしてもよいし、しなくてもよい。
【0061】
ソースRF生成部31aは、ソースRFパルス信号(HF電力)を生成するように構成され、本実施形態では、ソースRFパルス信号は、4つのパワーレベル(High/Middle/Low/Off)を有する。これらのパワーレベルは対象プロセスに応じて任意に設定及び変更可能である。例えばソースRFパルス信号は、27MHzの周波数を有する。
【0062】
第1バイアスRF生成部31bは、第1バイアスRFパルス信号(LF1電力)を生成するように構成され、本実施形態では、第1バイアスRFパルス信号は、2つのパワーレベル(On/Off)を有する。つまり、第1バイアスRFパルス信号は、ゼロパワーレベルを含む2つまたはそれ以上のパワーレベルを有する。第1バイアスRFパルス信号の周波数は、ソースRFパルス信号の周波数よりも低い。例えば第1バイアスRFパルス信号は、13MHzの周波数を有する。
【0063】
第2バイアスRF生成部31cは、第2バイアスRFパルス信号(LF2電力)を生成するように構成され、本実施形態では、第2バイアスRFパルス信号は、2つのパワーレベル(On/Off)を有する。つまり、第2バイアスRFパルス信号は、ゼロパワーレベルを含む2つまたはそれ以上のパワーレベルを有する。第2バイアスRFパルス信号の周波数は、第1バイアスRFパルス信号の周波数よりも低い。例えば第2バイアスRFパルス信号は、1.2MHzの周波数を有する。
【0064】
図6図8では、Source Power(HF電力)がソースRFパルス信号、Bias Power1(LF1電力)が第1バイアスRFパルス信号、Bias Power2(LF2電力)が第2バイアスRFパルス信号の状態を示す。
【0065】
図6の期間(1)では、HF電力は、Highパワーレベルを有し、LF1電力及びLF2電力は、オフ状態である。つまり、時刻tから時刻t11までの時間Tは、HF電力の供給により、ラジカルとイオンを含むプラズマが生成される。これにより、図6(a)に示すように、マスク101を介してエッチング対象膜100がエッチングされ、エッチング対象膜100に形成されたホールHLの内壁に、主にラジカルRが付着する。
【0066】
時間T経過後の時刻t11にHF電力がオフ状態に遷移すると、図4に一例を示すように、ラジカル、イオン、プラズマ温度はそれぞれの時定数をもって減衰する。これらのプラズマパラメータの減衰状態に応じて、HF電力のパワーレベルを下げる又はオフ状態に制御されている期間(2)、(3)及び副生成物を排気する期間(4)にLF1電力及びLF2電力をそれぞれオンするタイミングを制御する。
【0067】
本実施形態では、HF電力をHighパワーレベルからMiddleパワーレベル(又はオフ状態)に下げた時刻t11からディレイ時間Tdelay1だけシフトした時刻t12にLF1電力がオン状態に遷移する。これにより、図6(b)に示すように、エッチングされた凹部の底部に到達させるイオンフラックスを制御できる。また、エッチング時の副生成物の量を抑制できる。
【0068】
また、ディレイ時間Tdelay1を設けてプラズマ温度が低下してからLF1電力をオン状態にすることで、イオンエネルギーεを大きくでき、イオン入射角をより垂直に制御できる。ただし、図4に示すように、ディレイ時間Tdelay1を長くしすぎるとイオンが消失するため、ディレイ時間Tdelay1は予め適切な値に設定されている。
【0069】
期間(2)では、HF電力は、Middleパワーレベルを有し、LF1電力はオン状態であり、LF2電力は、オフ状態に維持される。時刻t13において、HF電力は、Lowパワーレベル(又はオフ状態)に遷移し、LF1電力は、オフ状態に遷移する。そして、時刻t13からディレイ時間Tdelay2だけシフト(遅延)した時刻t14にLF2電力がオン状態に遷移する。時刻t13において、HF電力は、Lowパワーレベル(又はオフ状態)を維持し、LF1電力は、オフ状態を維持する。期間(3)では、HF電力は、Lowパワーレベル(又はオフ状態)であり、LF2電力は、オン状態であり、LF1電力は、オフ状態である。
【0070】
本実施形態では、期間(2)で供給したLF1電力の周波数よりも低い周波数のLF2電力を期間(3)で供給する。LF2電力のVppはLF1電力のVppよりも大きい。これにより、期間(3)では、期間(2)よりもバイアス電圧のVppをより大きくでき、イオンエネルギーεをより大きくし、イオン入射角をより垂直に制御できる。これにより、LF2電力を供給している時間Tb2においてエッチングされた凹部の底部に到達させるイオンフラックスを制御できる。これにより図6(c)に示すように、ホールHLの底部の角部等に残った副生成物B等がエッチングされ、エッチングを促進できる。ただし、図4に示すように、ディレイ時間Tdelay2を長くしすぎるとイオンが消失するため、ディレイ時間Tdelay2は予め適切な値に設定されている。
【0071】
このようにして、アスペクト比が高い深穴をエッチングするプロセスにおいて、HF電力、LF1電力及びLF2電力のパルス信号を用いて、マスク選択比を高め、イオンの入射角を垂直にすることができる。これにより、エッチング形状を垂直にしたり、エッチングを促進したりすることができる。ただし、アスペクト比が高い深穴をエッチングするプロセスは基板処理の一例であり、プロセスの種類はこれに限らない。
【0072】
期間(4)では、副生成物の排気を制御する。つまり、期間(4)には、HF電力、LF1電力及びLF2電力をオフ状態に制御する。これにより、図6(d)に示すように、ホールHL内に付着した副生成物Bを排気する。これにより、次のサイクルのエッチングを促進できる。期間(4)は、副生成物Bが基板W上に再付着しない時間に予め設定されている。
【0073】
図6の例では、HF電力のパワーレベルを4レベルに制御し、LF1電力及びLF2電力のパワーレベルをオン・オフ状態の2レベルに制御したが、これに限らない。例えば、HF電力のパワーレベルを3レベル又はそれ以上に制御してもよい。
【0074】
図7は、3周波の高周波電力パルスのパルスパターンの他例を示す。本例では、期間(1)~(4)を1周期として、HF電力、LF1電力及びLF2電力の各パルス信号の制御が繰り返される。
【0075】
期間(1)では、時刻tから時刻tまでの時間Ts1に、HF電力は、Highパワーレベルを有する。これにより、ラジカルとイオンを含むプラズマが生成される。
【0076】
HF電力がHighパワーレベルを有する時間Ts1内の時間Tb1にLF1電力はオン状態に遷移する。これにより、生成されたイオンを基板Wに引き込み、エッチングを促進する。
【0077】
時刻tにLF1電力がオフ状態に遷移し、その後、HF電力は、Middleパワーレベルに遷移する。つまり、時間Ts2は、パワーが弱められたHF電力の供給により、ラジカル及びイオンの生成が低下する。次の期間(3)にHF電力は、オフ状態に遷移する。期間(3)にHF電力は、期間(2)におけるパワーレベルよりも低いパワーレベルを有してもよい。この場合、HF電力は、期間(2)においてMiddleパワーレベルを有し、期間(3)においてLowパワーレベルを有する。図4に一例を示すように、ラジカル、イオン、プラズマ温度はそれぞれの時定数をもって減衰する。かかるプラズマパラメータの減衰状態に応じて、HF電力のパワーレベルに応じてLF1電力及びLF2電力をオン・オフ状態にするタイミングを制御する。
【0078】
例えば、プラズマ温度が高いときにLF1電力又はLF2電力をオン状態にすると、副生成物が多く発生し、これにより、エッチングが阻害される場合がある。よって、プラズマ温度が高いときを避けてLF2電力をオン状態にすることが考えられる。つまり、時刻tから予め定められたディレイ時間Tdelayの時間が経過した後の時刻tにはプラズマ温度が低下している。このタイミングにLF2電力はオン状態に遷移する。つまり、LF1電力がオフ状態に遷移した時刻tからディレイ時間Tdelayだけシフト(遅延)してからLF2電力がオン状態に遷移する。これにより、エッチング時の副生成物の量を抑制でき、エッチングを促進できる。なお、本実施形態では、期間(2)のHF電力のパワーレベルは期間(1)のHF電力のパワーレベルよりも低い。しかしながら、期間(2)においてHF電力はオフ状態であってもよい。
【0079】
本実施形態では、ディレイ時間Tdelayは、LF1電力がオフ状態になり、HF電力のパワーレベルが低くなる。これにより、LF2電力を供給する時刻tのタイミングよりも前のディレイ時間Tdelayにラジカルとイオンの生成を減らすことができる。この結果、LF2電力を供給している時間Tb2においてエッチング対象膜に形成された凹部の底部に到達させるイオンフラックスを制御できる。
【0080】
また、期間(1)ではLF2電力はオフ状態であり、プラズマ温度が低下してからLF2電力がオン状態に遷移することでイオン入射角をより垂直に制御できる。ただし、図4に示すように、ディレイ時間Tdelayを長くしすぎるとイオンが消失するため、ディレイ時間Tdelayは予め適切な値に設定されている。
【0081】
係る制御により、LF1電力のオン・オフ状態とLF2電力のオン・オフ状態とを互いに異なる時間帯にオン状態に遷移させることで、主にイオンの挙動を制御する。LF1電力は、時間Tb1において0よりも大きいパワーレベルを有し、LF2電力は、時間Tb1においてゼロパワーレベルを有する。LF2電力は、時間Tb2において0よりも大きいパワーレベルを有し、LF1電力は、時間Tb2においてゼロパワーレベルを有する。つまり、LF1電力とLF2電力は、0よりも大きいパワーレベルを有する時間が重ならない。
【0082】
LF2電力は、LF1電力よりもマスク選択比が高く、垂直なエッチングが可能である。HF電力のパワーレベルが期間(2)よりも高い期間(1)では、ラジカルとイオンが大量に生成されており、その期間(1)にLF2電力を供給しても上記効果は発揮しにくい。一方、HF電力のパワーレベルが期間(1)よりも低い期間(2)では、ラジカルとイオンの生成が低下し、その期間(2)にLF2電力を供給することで上記効果を発揮しやすい。よって、期間(2)にLF2電力を供給することで、イオンエネルギーを高め、イオン入射角を垂直にできる。これにより、期間(2)では、期間(1)よりもマスク選択比が高く、垂直なエッチングが可能になる。
【0083】
なお、LF1電力とLF2電力はオン状態とオフ状態の2つのパワーレベルを有するパルス信号を生成可能である。ただし、LF1電力とLF2電力をオン状態とオフ状態とその中間のパワーレベルというように、2つ以上のパワーレベルを有するパルス信号が生成されてもよい。LF1電力とLF2電力は2つの異なるオン状態を有してもよい。
【0084】
時刻tにおいて、HF電力は、オフ状態に遷移する。期間(3)では、副生成物の排気を制御する。つまり、時刻tから時刻tの排気期間Toffには、HF電力、LF1電力及びLF2電力は、オフ状態であり、これにより、副生成物を排気する。排気期間Toffは、副生成物が基板W上に付着しない時間に予め設定されている。
【0085】
排気期間Toffが経過した時刻tに、HF電力は、Highパワーレベルに遷移し、時刻tに期間(4)から期間(1)に戻る。このようにして、HF電力、LF1電力、LF2電力のパワーレベルの制御を別々に行う。
【0086】
図6及び図7に示すパルス信号の制御では、第2バイアスRFパルス信号のパワーレベルの変化のタイミングを、ソースRFパルス信号のパワーレベル及び/又は第1バイアスRFパルス信号のパワーレベルの変化のタイミングに対してシフトさせた。しかし、これに限らず、ディレイ時間は設けなくてもよい。
【0087】
図8は、3周波の高周波電力パルスのパルスパターンの他の例を示す。本例においても、期間(1)~(4)を1周期として、HF電力、LF1電力及びLF2電力の各パルス信号の制御が繰り返される。
【0088】
本例と、図7のパルス信号のパターンとの違いについて説明する。図7の例では、HF電力のパワーレベルは、0パワーレベル(オフ状態)を含む3レベルを有していた。これに対して、本例のようにHF電力のパワーレベルが4レベルを有してもよい。また、HF電力のパワーレベルは、0パワーレベルを含んでもよいし、含まなくてもよい。例えば本例のように、副生成物を排気する期間(3)において、HF電力をオフ状態にせず、HF電力のパワーレベルを下げてオン状態を維持してもよい。
【0089】
また、図7では、LF1電力は、オン・オフの2レベルを有していた。これに対して、本例のように、LF1電力が、時間Tb1-1、時間Tb1-2におけるオン状態の2レベル、及び0パワーレベルを含む3レベルを有してもよい。なお、本例の場合にも、LF1電力のパワーレベルが最も高いオン状態(Highパワーレベル)と、LF2電力のオン状態とは時間的にオーバーラップしない。
【0090】
[プラズマ処理装置の変形例]
プラズマ処理装置1の変形例について、図9を参照して説明する。図9は、実施形態の変形例に係るプラズマ処理装置1の一例を示す図である。変形例に係るプラズマ処理装置1では、図2に示すプラズマ処理装置1の構成に加えて、電力供給部がDC電力供給部32を含んでいる点のみ異なる。
【0091】
DC電力供給部32は、基板支持部11に結合されたDCパルス生成部32aを含む。DCパルス生成部32aは、第2整合回路34を介して基板支持部11の導電部材112に接続され、バイアスDCパルス信号(電圧)を生成するように構成される。生成されたバイアスDCパルス信号は、基板支持部11の導電部材112に印加される。DCパルス生成部32aは、RF電力供給部31に加えて設けられてもよく、第2バイアスRF生成部31cに代えて設けられてもよい。変形例に係るプラズマ処理装置1の他の構成については、図2に示すプラズマ処理装置1と同様であるため、説明を省略する。
【0092】
次に、変形例1~変形例3に係るDCパルス及び高周波電力パルスのパルスパターンの一例について図10図12を参照しながら説明する。図10図12は、変形例1~変形例3に係るDCパルス及び高周波電力パルスのパルスパターンを示す図である。
【0093】
図10の変形例1は、DCパルス生成部32aが、第2バイアスRF生成部31cに代えて設けられている場合の、HF電力、LF1電力及びDCパルス電圧(DCパルス信号)のパルスパターンを示す。変形例1では、期間(1)~期間(3)及び期間(3)の後の図示しない排気期間を1周期として、HF電力、LF1電力及びDCパルス電圧の各パルス信号の制御が繰り返される。
【0094】
時刻tから時刻t21までの期間(1)では、HF電力は、Highパワーレベルを有し、LF1電力は、Highパワーレベルを有し、DCパルス電圧は、オフ状態である。時刻t21において、HF電力は、Lowパワーレベルに遷移し、LF1電力は、Lowパワーレベルに遷移し、DCパルス電圧は、オフ状態を維持する。時刻t21から時刻t22までの期間(2)では、HF電力は、Lowパワーレベルを有し、LF1電力は、Lowパワーレベルを有し、DCパルス電圧は、オフ状態である。時刻t22において、HF電力は、オフ状態に遷移し、LF1電力は、オフ状態に遷移し、DCパルス電圧は、オフ状態を維持する。時刻t22からディレイ時間Tdelay経過後、DCパルス電圧はオン状態に遷移する。時刻t22からディレイ時間Tdelay経過後、時刻t23までの期間(3)では、HF電力及びLF1電力はオフ状態であり、DCパルス電圧はオン状態である。DCパルス生成部32aは、DCパルス電圧のオン状態において、パルスシーケンスを生成する。
【0095】
以上のように、変形例1では、LF1電力は、期間(3)のDCパルス電圧のオン時間において、ゼロパワーレベルを有する。DCパルス生成部32aは、DCオン時間において、DCパルス信号を生成し、DCオン時間とは異なるDCオフ時間において、DCパルスの生成を停止するように構成される。
【0096】
図11の変形例2は、DCパルス生成部32aが、第2バイアスRF生成部31cに加えて設けられている場合の、HF電力、LF1電力、LF2電力及びDCパルス電圧のパルスパターンを示す。変形例2では、期間(1)~(4)及び期間(4)の後の図示しない排気期間を1周期として、HF電力、LF1電力、LF2電力及びDCパルス電圧の各パルス信号の制御が繰り返される。
【0097】
時刻tから時刻t24までの期間(1)では、HF電力及びLF1電力はオン状態であり、LF2電力及びDCパルス電圧はオフ状態である。時刻t24において、HF電力はオン状態を維持し、LF1電力は、オフ状態に遷移し、LF2電力は、オフ状態を維持し、DCパルス電圧はオン状態に遷移する。時刻t24から時刻t25までの期間(2)では、HF電力はオン状態であり、LF1電力及びLF2電力は、オフ状態であり、DCパルス電圧はオン状態である。DCパルス生成部32aは、DCパルス電圧のオン状態において、パルスシーケンスを生成する。時刻t25において、HF電力は、オン状態を維持し、LF1電力は、オフ状態を維持し、LF2電力は、オン状態に遷移し、DCパルス電圧は、オフ状態に遷移する。時刻t25から時刻t26までの期間(3)では、HF電力は、オン状態であり、LF1電力は、オフ状態であり、LF2電力は、オン状態であり、DCパルス電圧は、オフ状態である。時刻t26において、HF電力は、オフ状態に遷移し、LF1電力は、オフ状態を維持し、LF2電力は、オン状態を維持し、DCパルス電圧は、オフ状態を維持する。時刻t26から時刻t27までの期間(4)では、HF電力は、オフ状態であり、LF1電力は、オフ状態であり、LF2電力は、オン状態であり、DCパルス電圧は、オフ状態である。
【0098】
以上のように、変形例2では、LF2電力は、期間(2)のDCパルス電圧のオン時間において、ゼロパワーレベルを有する。DCパルス生成部32aは、DCオン時間において、DCパルス信号を生成し、DCオン時間とは異なるDCオフ時間において、DCパルスの生成を停止するように構成される。
【0099】
図12の変形例3は、DCパルス生成部32aが、第2バイアスRF生成部31cに加えて設けられている場合の、HF電力、LF1電力、LF2電力及びDCパルス電圧のパルスパターンの他の例を示す。変形例3では、期間(1)~期間(3)及び期間(3)の後の図示しない排気期間を1周期として、HF電力、LF1電力、LF2電力及びDCパルス電圧の各パルス信号の制御が繰り返される。
【0100】
時刻tから時刻t28までの期間(1)では、HF電力は、Highパワーレベルを有し、LF1電力は、Highパワーレベルを有し、LF2電力は、オフ状態であり、DCパルス電圧は、オン状態である。DCパルス電圧は、HF電力のHighパワーレベルへの遷移及びLF1電力のHighパワーレベルへの遷移に対して遅延してオン状態に遷移される。DCパルス生成部32aは、DCパルス電圧のオン状態において、パルスシーケンスを生成する。時刻t28において、HF電力は、Lowパワーレベルに遷移し、LF1電力は、Lowパワーレベルに遷移し、LF2電力は、オフ状態を維持し、DCパルス電圧はオン状態を維持する。時刻t28から時刻t29までの期間(2)では、HF電力は、Lowパワーレベルを有し、LF1電力は、Lowパワーレベルを有し、LF2電力は、オフ状態であり、DCパルス電圧は、オン状態である。時刻t29において、HF電力は、オフ状態に遷移し、LF1電力は、オフ状態に遷移し、LF2電力は、オフ状態を維持し、DCパルス電圧は、オフ状態に遷移する。時刻t29からディレイ時間Tdelay経過後、LF2電力は、オン状態に遷移する。時刻t29からディレイ時間Tdelay経過後、時刻t30までの期間(3)では、HF電力及びLF1電力は、オフ状態であり、LF2電力は、オン状態であり、DCパルス電圧は、オフ状態である。
【0101】
以上のように、変形例3では、LF2電力は、期間(1)及び期間(2)のDCパルス電圧のオン時間において、ゼロパワーレベルを有する。DCパルス生成部32aは、DCオン時間において、DCパルス信号を生成し、DCオン時間とは異なるDCオフ時間において、DCパルスの生成を停止するように構成される。
【0102】
以上に示したように、DCパルス電圧のオン状態とLF2電力のオン状態とは時間的にオーバーラップしない。なお、DCパルス電圧のオン状態とLF1電力のオン状態とは時間的にオーバーラップしてもよいし、しなくてもよい。
【0103】
以上に説明したように、本実施形態のプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法によれば、3つの高周波電力パルス信号を用いてプロセスの性能を向上させることができる。
【0104】
今回開示された実施形態に係るプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0105】
例えば、上記実施形態では、誘導結合型プラズマ装置を例に説明したが、これに限定されるものではなく、他のプラズマ装置に適用されてもよい。例えば、誘導結合型プラズマ装置に代えて、容量結合型プラズマ(Capacitively-coupled plasma:CCP)装置が用いられてもよい。この場合、容量結合型プラズマ装置は、上部電極及び下部電極を含む。下部電極は、基板支持部内に配置され、上部電極は、基板支持部の上方に配置される。そして、第1整合回路33は、上部電極に結合され、第2整合回路34は、下部電極に結合される。従って、第1整合回路33は、誘導結合型プラズマ装置のアンテナ14、又は、容量結合型プラズマ装置の上部電極に結合される。即ち、第1整合回路33は、チャンバ10に結合される。
【符号の説明】
【0106】
1 プラズマ処理装置
2 制御部
10 チャンバ
10s プラズマ処理空間
11 基板支持部
12 環状部材
13 ガス導入部
14 アンテナ
20 ガス供給部
21 コンピュータ
21a 処理部
21b 記憶部
21c 通信インターフェース
31 RF電力供給部
31a ソースRF生成部
31b 第1バイアスRF生成部
31c 第2バイアスRF生成部
31d 同期信号生成部
32a DCパルス生成部
34b1 第1調整回路
34b2 第1分離回路
34c1 第2調整回路
34c2 第2分離回路
33 第1整合回路
34 第2整合回路
37 給電ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2024-11-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバ内に設けられた基板支持部と
前記プラズマ処理チャンバに結合され、ソースRFパルス信号を生成するように構成されたソースRF生成部と、
第1バイアスRFパルス信号を生成するように構成された第1バイアスRF生成部と、
第2バイアスRFパルス信号を生成するように構成された第2バイアスRF生成部と、
前記第1バイアスRF生成部と前記基板支持部との間に接続され、前記第2バイアスRF生成部から前記第1バイアスRF生成部への前記第2バイアスRFパルス信号の結合を抑えるとともに、前記第1バイアスRF生成部から前記基板支持部に前記第1バイアスRFパルス信号を供給するように構成された第1分離回路と、
前記第2バイアスRF生成部と前記基板支持部との間に接続され、前記第1バイアスRF生成部から前記第2バイアスRF生成部への前記第1バイアスRFパルス信号の結合を抑えるとともに、前記第2バイアスRF生成部から前記基板支持部に前記第2バイアスRFパルス信号を供給するように構成された第2分離回路と、
を備える、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記ソースRF生成部、前記第1バイアスRF生成部及び前記第2バイアスRF生成部を互いに同期させるための同期信号を生成するように構成された同期信号生成部を更に備える、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記ソースRFパルス信号は、少なくとも3つのパワーレベルを有し、
前記第1バイアスRFパルス信号は、少なくとも2つのパワーレベルを有し、
前記第2バイアスRFパルス信号は、少なくとも2つのパワーレベルを有する、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記第2バイアスRFパルス信号の周波数は、前記第1バイアスRFパルス信号の周波数とは異なる、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記第2バイアスRFパルス信号の周波数は、前記第1バイアスRFパルス信号の周波数よりも低い、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記同期信号生成部は、前記ソースRF生成部、前記第1バイアスRF生成部及び前記第2バイアスRF生成部のうちいずれか1つに配置される、
請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記第1バイアスRF生成部は、前記第1バイアスRFパルス信号のパワーレベルの変化のタイミングを、前記ソースRFパルス信号のパワーレベルの変化のタイミングに対してシフトさせるように構成される、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記第2バイアスRF生成部は、前記第2バイアスRFパルス信号のパワーレベルの変化のタイミングを、前記ソースRFパルス信号のパワーレベルの変化のタイミング、及び/又は前記第1バイアスRFパルス信号のパワーレベルの変化のタイミングに対してシフトさせるように構成される、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記第2バイアスRFパルス信号は、ゼロパワーレベルを含む2つのパワーレベルを有する、
請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記第1バイアスRFパルス信号は、第1時間において、0よりも大きいパワーレベルを有し、
前記第2バイアスRFパルス信号は、前記第1時間において、ゼロパワーレベルを有する、
請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記第1分離回路は、コンデンサと第1インダクタとを含み、
前記第2分離回路は、第2インダクタを含む、
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
プラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバ内に設けられた基板支持部と、
前記基板支持部に接続され、RFパルス信号を生成するように構成されたRF生成部と、
前記基板支持部に接続され、DCパルス信号を生成するように構成されたDCパルス生成部と、
前記RF生成部と前記基板支持部との間に接続され、前記DCパルス生成部から前記RF生成部への前記DCパルス信号の結合を抑えるとともに、前記RF生成部から前記基板支持部に前記RFパルス信号を供給するように構成された第1分離回路と、
前記DCパルス生成部と前記基板支持部との間に接続され、前記RF生成部から前記DCパルス生成部への前記RFパルス信号の結合を抑えるとともに、前記DCパルス生成部から前記基板支持部に前記DCパルス信号を供給するように構成された第2分離回路と、
を備える、
プラズマ処理装置。
【請求項13】
前記RF生成部及び前記DCパルス生成部を互いに同期させるための同期信号を生成するように構成された同期信号生成部を更に備える、
請求項12に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
前記第1分離回路は、コンデンサと第1インダクタとを含み、
前記第2分離回路は、第2インダクタを含む、
請求項12又は請求項13のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
プラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバ内に設けられた基板支持部と、
前記プラズマ処理チャンバの上部又は上方に設けられたアンテナと、
前記アンテナに接続され、ソースRFパルス信号を生成するように構成されたソースRF生成部と、
前記基板支持部に接続され、バイアスDCパルス信号を生成するように構成されたDCパルス生成部と、
を備える、
プラズマ処理装置。
【請求項16】
前記基板支持部に接続され、バイアスRFパルス信号を生成するように構成されたバイアスRF生成部を更に備える、
請求項15に記載のプラズマ処理装置。
【請求項17】
前記バイアスRF生成部と前記基板支持部との間に接続され、前記DCパルス生成部から前記バイアスRF生成部への前記バイアスDCパルス信号の結合を抑えるとともに、前記バイアスRF生成部から前記基板支持部に前記バイアスRFパルス信号を供給するように構成された第1分離回路と、
前記DCパルス生成部と前記基板支持部との間に接続され、前記バイアスRF生成部から前記DCパルス生成部への前記バイアスRFパルス信号の結合を抑えるとともに、前記DCパルス生成部から前記基板支持部に前記バイアスDCパルス信号を供給するように構成された第2分離回路と、
を更に備える、
請求項16に記載のプラズマ処理装置。
【請求項18】
前記第1分離回路は、コンデンサと第1インダクタとを含み、
前記第2分離回路は、第2インダクタを含む、
請求項17に記載のプラズマ処理装置。
【請求項19】
前記ソースRF生成部、前記バイアスRF生成部及び前記DCパルス生成部を互いに同期させるための同期信号を生成するように構成された同期信号生成部を更に備える、
請求項16から請求項18のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項20】
前記ソースRF生成部及び前記DCパルス生成部を互いに同期させるための同期信号を生成するように構成された同期信号生成部を更に備える、
請求項15に記載のプラズマ処理装置。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置に関する。