(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180658
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02208 20210101AFI20241219BHJP
【FI】
H01S5/02208
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024184262
(22)【出願日】2024-10-18
(62)【分割の表示】P 2020153600の分割
【原出願日】2020-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】三浦 創一郎
(57)【要約】
【課題】パッケージを小型化することが可能な発光装置を提供する。
【解決手段】発光装置は、光出射面を有する第1発光素子と、下面と、下面に対して傾斜し、第1発光素子の光出射面から出射される第1の光の一部を透過させ残りを上方に反射する第1反射面と、第1反射面よりも第1発光素子の光出射面から離れて位置し、第1反射面を透過した第1の光の一部または全部を反射する第2反射面と、を有する光学部材と、光学部材の下方に位置し、第2反射面で反射した第1の光を受ける 第1受光領域を含
む1または複数の受光領域が設けられた上面を有する光検出器と、を備える。上面視において、第1受光領域の一部または全部が、第1反射面の一部または全部と重なる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面を有する底部と、
上面視で矩形の外形を有し前記実装面を囲う側壁と、上面と、前記上面より下方において前記側壁に沿って形成される段差部と、を有する側壁部と、
を備え、
前記段差部は、上面視で互いに幅の異なる2つの領域である幅広部と幅狭部とを有し、
前記幅狭部は、前記側壁の全周のうち1辺に沿った部分に形成される、パッケージ。
【請求項2】
前記段差部は、前記側壁の全周に沿って形成される、請求項1に記載のパッケージ。
【請求項3】
前記幅広部は、前記側壁の全周のうち3辺に沿った部分に形成される、請求項1または2に記載のパッケージ。
【請求項4】
前記段差部の上面に設けられる1または複数の配線領域を備え、
前記段差部の上面のうち、前記幅広部の上面に前記1または複数の配線領域が設けられる、請求項1から3のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項5】
前記段差部の上面のうち、前記幅狭部の上面には前記1または複数の配線領域は設けられない、請求項4に記載のパッケージ。
【請求項6】
請求項4または5に記載のパッケージと、
前記実装面に配置される半導体レーザ素子と、
を備え、
前記幅狭部は、前記半導体レーザ素子の光出射面と対向する位置に形成される、発光装置。
【請求項7】
前記半導体レーザ素子を前記1または複数の配線領域に電気的に接続する第1配線を備え、
前記第1配線は、上面視で、前記幅狭部と対向する位置に形成された前記幅広部の上面に設けられた前記1または複数の配線領域に接合される、請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記半導体レーザ素子を前記1または複数の配線領域に電気的に接続する第1配線を備え、
前記第1配線は、上面視で、前記幅狭部が沿って形成される辺と交わる辺に沿って形成された前記幅広部の上面に設けられた前記1または複数の配線領域に接合される、請求項6または7に記載の発光装置。
【請求項9】
上面視で、前記半導体レーザ素子と前記幅狭部との間に設けられる光学部材を備える、請求項6から8のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記光学部材を前記1または複数の配線領域に電気的に接続する第2配線を備え、
前記第2配線は、上面視で、前記幅狭部が沿って形成される辺と交わる辺に沿って形成された前記幅広部の上面に設けられた前記1または複数の配線領域に接合される、請求項9に記載の発光装置。
【請求項11】
前記第1配線が接合される前記配線領域と、前記第2配線が接合される前記配線領域とは、同じ辺に沿って形成された前記幅広部に設けられる、請求項10に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光素子から出射された光の一部を光電変換素子で受光し、その受光結果に基づいて光学制御を行う光学ユニットが知られている。例えば、特許文献1には、レーザダイオードと、レーザダイオードから出射される光の一部を反射する反射面を有するミラーと、ミラーの反射面の反対側に位置する背面の側に配置され、ミラーを透過した光を受光するフォトダイオードと、を備える光学ユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パッケージを小型化することが可能な発光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の発光装置は、例示的で非限定的な実施形態において、光出射面を有する第1発光素子と、下面と、前記下面に対して傾斜し、前記第1発光素子の光出射面から出射される第1の光の一部を透過させ残りを上方に反射する第1反射面と、前記第1反射面よりも前記第1発光素子の光出射面から離れて位置し、前記第1反射面を透過した前記第1の光の一部または全部を反射する第2反射面と、を有する光学部材と、前記光学部材の下方に位置し、前記第2反射面で反射した前記第1の光を受ける 第1受光領域を含む1または
複数の受光領域が設けられた上面を有する光検出器と、を備え、上面視において、前記第1受光領域の一部または全部が、前記第1反射面の一部または全部と重なる。
【発明の効果】
【0006】
本開示による発光装置によれば、パッケージを小型化することが可能な発光装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る発光装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係る発光装置からパッケージの蓋部を除いた状態の斜視図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係る発光装置からパッケージの蓋部を除いた状態の上面図である
【
図4】
図4は、
図3のIV-IV断面線における断面図である。
【
図5】
図5は、パッケージの内部の配線例を例示する上面図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に係る発光装置から光学部材を除いた状態の
図5の上面図における部分Xの拡大図である。
【
図7】
図7は、光検出器から光学部材を分離した状態を示す分解斜視図である。
【
図8A】
図8Aは、光学部材の第1反射面を透過して光検出器の受光領域に到達する光の代表的な光路を模式的に示す図である。
【
図8B】
図8Bは、光学部材の第1反射面と、光検出器の受光面に設けられた3つの受光領域との位置関係を示す上面図である。
【
図9A】
図9Aは、他の光学部材の第1反射面を透過して光検出器の受光領域に到達する光の代表的な光路を模式的に示す図である。
【
図9B】
図9Bは、他の光学部材の第1反射面と、光検出器の受光面に設けられた3つの受光領域との位置関係を示す上面図である。
【
図10】
図10は、光学部材と、1または複数のフィルタと、光検出器とを分解した状態を示す分解斜視図である。
【
図11】
図11は、光検出器の受光面上に配置された1または複数のフィルタを示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書または特許請求の範囲において、三角形、四角形などの多角形は、数学的に厳密な意味の多角形に限定されず、多角形の隅に角丸め、面取り、角取り、丸取り等の加工が施された形状も含むものとする。また、多角形の隅(辺の端)に限らず、辺の中間部分に加工が施された形状も同様に多角形と呼ぶものとする。つまり、多角形をベースに残しつつ、部分的な加工が施された形状は、本明細書および特許請求の範囲で記載される“多角形”に含まれる。
【0009】
多角形に限らず、台形や円形や凹凸など、特定の形状を表す言葉についても同様である。その形状を形成する各辺を扱う場合も同様である。つまり、ある辺において、隅や中間部分に加工が施されていたとしても、“辺”には加工された部分も含まれる。部分的な加工のない“多角形”や“辺”を、加工された形状と区別する場合は“厳密な”を付して、例えば、“厳密な四角形”などと記載するものとする。
【0010】
本明細書または特許請求の範囲において、ある名称によって特定される要素が複数あり、それぞれの要素を区別して表現する場合に、要素のそれぞれの頭に“第1”、“第2”などの序数詞を付記することがある。例えば、請求項では「発光素子が基板上に配されている」と記載されている場合、明細書中において「第1発光素子と第2発光素子とが基板上に配列されている」と記載されることがある。第1”および“第2”の序数詞は、単に2個の発光素子を区別するために使用されている。これらの序数詞の順序に特別の意味はない。同一の序数詞が付された要素名が、明細書と特許請求の範囲との間で、同一の要素を指さない場合がある。例えば、明細書において“第1発光素子”、“第2発光素子”、“第3発光素子”の用語で特定される要素が記載されている場合、特許請求の範囲における“第1発光素子”および“第2発光素子”が、明細書における“第1発光素子”および“第3発光素子”に相当することがある。また、特許請求の範囲に記載された請求項1において、“第1発光素子”の用語が使用され、“第2発光素子”の用語が使用されていない場合、請求項1に係る発明は、1個の発光素子を備えていればよく、その発光素子は、明細書中の“第1発光素子”に限定されず、“第2発光素子”または“第3発光素子”であり得る。
【0011】
本明細書または特許請求の範囲において、特定の方向または位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」およびそれらの用語を含む別の用語)を用いる場合がある。それらの用語は、参照した図面における相対的な方向または位置をわかり易さのために用いているに過ぎない。参照した図面における「上」、「下」等の用語による相対的な方向または位置の関係が同一であれば、本開示以外の図面、実際の製品、製造装置等において、参照した図面と同一の配置でなくてもよい。
【0012】
図面に示される要素または部材の寸法、寸法比率、形状、配置間隔等は、わかり易さのために誇張されている場合がある。また、図面が過度に複雑になることを避けるために、一部の要素の図示を省略することがある。
【0013】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。実施形態は、本発明の技術思想が具体化されたものではあるが、本発明を限定するものではない。実施形態の説明で示される数値、形状、材料、処理工程の順序などは、あくまでも一例であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の改変が可能である。以下の説明において、同一の名称、符号によって特定される要素は、同一または同種の要素であり、それらの要素について重複した説明を省略することがある。
【0014】
本実施形態に係る発光装置100を説明する。
図1から
図7は、発光装置100の例示的な一形態を説明するための図面である。
図1は、本実施形態に係る発光装置100の斜視図である。
図2は、発光装置100からパッケージ10の蓋部16を除いた状態の斜視図である。
図3は、発光装置100からパッケージ10の蓋部16を除いた状態の上面図である。
図4は、
図3のIV-IV断面線における断面図である。
図5は、パッケージ10の内部の配線例を例示する上面図である。
図6は、
図5の上面図における部分Xの拡大図である。なお、
図5で図示されていた光学部材40は、説明のため、
図6では除いている。
図7は、光検出器50と光学部材40が分離した状態を示す分解斜視図である。
【0015】
図面が煩雑になることを避けるために、いくつかの図面において配線70が図示されていないことがある。
図3および
図5において、全ての配線領域に符号14を付す代わりに、全ての配線領域に同様のハッチングを施している。
図5における部分Xを示す破線は、説明の便宜上の仮想線である。
図4および
図5において、発光素子20から出射される主要部分の光が破線で示され、
図5においては、その主要部分の光で照射される、光学部材40の反射面上の楕円形状の照射領域も破線で示されている。
【0016】
本実施形態に係る発光装置100は、パッケージ10、1または複数の発光素子20、1または複数のサブマウント30、光学部材40、光検出器50、1または複数の保護素子60、及び、1または複数の配線70を含む複数の構成要素を備える。
【0017】
図示される発光装置100の例では、パッケージ10の内部の空間に、複数の発光素子20(具体的には3つの発光素子20)、1つのサブマウント30、光学部材40、光検出器50、発光素子20と同数の保護素子60(具体的には3つの保護素子60)、及び、複数の配線70が配置されている。また、複数の発光素子20から出射された光は、それぞれ、光学部材40の反射面で上方に反射され、パッケージ10の透光性領域を透過して光取出面17から外部に出射される。
【0018】
まず、各構成要素について説明する。
【0019】
(パッケージ10)
パッケージ10は、他の構成要素が配置される実装面11M(または配置領域)を有する底部11と、実装面11Mを囲う側壁部12と、側壁部12の上面に固定される蓋部16と、を有する。また、パッケージ10は凹部を有し、実装面11Mと側壁部12とによって凹部は構成されている。凹部は、パッケージ10の上方から下方に向かって窪む。ここで、凹部の窪みの底となる面を底面と呼ぶ。底面は、実装面11Mの主要な部分となり得る。
【0020】
実装面11Mの法線方向から見る上面視で、パッケージ10の外形は矩形である。上面視で、パッケージ10の底面の外形は矩形である。パッケージ10の外形は、パッケージ10の底面の外形を包含する。なお、これらの外形は、いずれも矩形でなくてもよい。
【0021】
底部11は、パッケージ10の実装面11Mを構成する部分であり、パッケージ10の底面及び下面が含まれる。側壁部12は、パッケージ10の実装面11Mを囲い、かつ、
実装面11Mから上方に向かって延びる側壁を構成する部分である。側壁部12には、パッケージ10の1以上の外側面、1以上の内側面、及び、外側面と内側面とに交わる上面が含まれる。
【0022】
パッケージ10は、1以上の段差部13を有する。段差部13は、パッケージ10の窪み部分に設けられている。ここで、段差部13は、上面及びこの上面と交わり下方に延びる内側面によって構成される部分を指すものとする。つまり、段差部13には、段差部13の上面と交わり上方に延びる内側面は含まれない。段差部13は、パッケージ10の側壁部12の一部である。段差部13は、パッケージ10の上面よりも下方に位置する。段差部13は段差構造を有し、パッケージ10の側壁に沿って形成される。また、段差部13は、実装面11Mを囲う側壁の全周に沿って形成され得る。なお、段差部13は、全周に沿って形成されていなくてもよい。
【0023】
段差部13は、上面視で、幅の異なる領域を有する。段差部13の幅とは、パッケージ10の側壁に沿って形成されている部分を例に挙げると、上面視でこの側壁に垂直な方向の長さである。段差部13において、幅の異なる2つの領域を区別するときは、幅の広い方を幅広部、狭い方を幅狭部と呼ぶものとする。図示されるパッケージ10の例では、上面視で矩形の4辺に沿って段差部13が形成されており、そのうちの3辺に沿った部分が幅広部となり、残りの1辺に沿った部分が幅狭部となっている。
【0024】
段差部13の上面には、1または複数の配線領域14が設けられる。図示されるパッケージ10の例では、複数の配線領域14が設けられている。この配線領域14は、パッケージ10の内部を通り、パッケージ10の下面に設けられた配線領域に電気的に接続される。なお、配線領域14に電気的に接続する配線領域は、パッケージ10の下面に限定されず、パッケージ10の他の外表面(上面または外側面)に設けることができる。
【0025】
パッケージ10の底部11および側壁部12は、例えばセラミックを主材料として形成することができる。セラミックの例は、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、炭化ケイ素などを含む。
【0026】
パッケージ10は、底部11と側壁部12とが一体となって形成することができる。例えば、成形またはエッチングなどの加工技術を利用して底部11と側壁部12とが一体となった部材を作製することが可能である。または、パッケージ10は、異なる材料を主材料として別個に形成された底部11と側壁部12を接合して作製してもよい。この場合、例えば、底部11は金属を主材料として形成され、側壁部12はセラミックを主材料として形成され得る。また、この場合、底部11は、側壁部12の主材料に用いるセラミックよりも放熱性に優れた材料(熱伝導率の高い材料)を含んでいることが好ましい。そのような材料の例は、銅、アルミニウム、鉄、銅モリブデン、銅タングステン、銅-ダイヤモンド複合材料を含み得る。
【0027】
蓋部16は、下面と、上面と、を有し、直方体の平板形状の部材である。ただし、蓋部16は直方体でなくてもよい。蓋部16は、底部11の上方において側壁部12の上面に固定される。
【0028】
蓋部16は、透光性を有する領域である透光性領域を含む光取出面17を有する。蓋部16は、一部に、透光性を有しない領域である非透光性領域を有していてもよい。光取出面17は、蓋部16の上面に含まれる。なお、透光性を有するとは、そこに入射する主要な光の透過率が80%以上である性質を意味する。
【0029】
蓋部16は、サファイアを用いて形成することができる。サファイアは透光性を有して
おり、また、比較的屈折率が高く、比較的強度も高い材料である。蓋部16は、サファイア以外に、ガラス、プラスチック、石英などの透光性材料から形成され得る。
【0030】
パッケージ10は、例えば、高さが3mm以下、上面視で、矩形形状の外形における1辺の長さが10mm以下の寸法を有し得る。また、例えば、高さが2mm以下、上面視で、矩形形状の外形における1辺の長さが7mm以下の寸法を有し得る。
【0031】
(発光素子20)
発光素子20の例は、半導体レーザ素子である。発光素子20は、上面視で長方形の外形を有し得る。発光素子20が端面出射型の半導体レーザ素子である場合、この長方形の2つの短辺のうちの一辺と交わる側面が、光出射面20Eである。この例において、発光素子20の上面および下面は、光出射面20Eよりも面積が大きい。発光素子20は、端面出射型の半導体レーザ素子に限定されず、面発光型の半導体レーザ素子、または発光ダイオード(LED)であってもよい。
【0032】
本実施形態における発光素子20は、1以上のエミッタを有する。発光素子20は、1つのエミッタを有するシングルエミッタでもよく、2つ以上のエミッタを有するマルチエミッタであってもよい。
図5の例は、シングルエミッタの発光素子20から光が出射されている。
【0033】
ここで、発光素子20が半導体レーザ素子である場合について説明を補足しておく。半導体レーザ素子の光出射面20Eから出射される光(レーザ光)は、拡がりを有する発散光である。レーザ光は、光出射面20Eに平行な面において楕円形状のファーフィールドパターン(以下、「FFP」という。)を形成する。FFPとは、光出射面から離れた位置における出射光の形状や光強度分布である。
【0034】
FFPの楕円形状の中心を通る光、言い換えると、FFPの光強度分布においてピーク強度の光を、光軸を進む光と呼ぶものとする。また、光軸を進む光の光路を、その光の光軸と呼ぶものとする。また、FFPの光強度分布において、ピーク強度値に対して1/e2以上の強度を有する光を、「主要部分」の光と呼ぶものとする。
【0035】
半導体レーザ素子である発光素子20から出射される光のFFPの楕円形状において、楕円の短径方向を遅軸方向、長径方向を速軸方向というものとする。半導体レーザ素子を構成する、活性層を含んだ複数の層は、速軸方向に積層される。
【0036】
FFPの光強度分布に基づき、光強度分布の1/e2に相当する角度を、その半導体レーザ素子の光の拡がり角とする。速軸方向における光の拡がり角を速軸方向の拡がり角、遅軸方向における光の拡がり角を遅軸方向の拡がり角というものとする。
【0037】
発光素子20として、例えば、青色の光を出射する半導体レーザ素子、緑色の光を出射する半導体レーザ素子、または、赤色の光を出射する半導体レーザ素子などを採用することができる。また、これら以外の光を出射する半導体レーザ素子を採用してもよい。
【0038】
ここで、青色の光は、その発光ピーク波長が420nm~494nmの範囲内にある光をいうものとする。緑色の光は、その発光ピーク波長が495nm~570nmの範囲内にある光をいうものとする。赤色の光は、その発光ピーク波長が605nm~750nmの範囲内にある光をいうものとする。
【0039】
青色の光を発する半導体レーザ素子、または、緑色の光を発する半導体レーザ素子として、窒化物半導体を含む半導体レーザ素子が挙げられる。窒化物半導体としては、例えば
、GaN、InGaN、およびAlGaNを用いることができる。赤色の光を発する半導体レーザ素子として、InAlGaP系やGaInP系、GaAs系やAlGaAs系の半導体を含むものが挙げられる。
【0040】
(サブマウント30)
サブマウント30は、2つの接合面を有し、直方体の形状で構成される。一方の接合面の反対側に他方の接合面が設けられる。2つの接合面の間の距離が他の対向する2面の間の距離よりも短い。サブマウント30の形状は直方体に限らなくてよい。サブマウント30は、例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、または炭化ケイ素を用いて形成することができる。接合面には、接合のための金属膜が設けられている。サブマウント30の一方の接合面に、他の構成要素に電気的に接続される1または複数の配線領域が設けられ得る。
【0041】
(光学部材40)
光学部材40の例は、角柱の形状を有する。角柱は多角形を底面とする柱体である。柱体の底面の例は、三角形、四角形、五角形である。なお、光学部材40の形状は角柱に限定されない。光学部材40は、例えば、ガラス、プラスチック、石英などの透光性材料から形成され得る。光学部材40は複数の反射面を有し得る。本実施形態において、光学部材40は、第1反射面41と、第2反射面42と、下面43とを有する。光学部材40は、さらに、下面43に平行で、下面43の反対側に位置する上面44を有し得る。ここでの平行は±5度以内の誤差を含む。上面44は、第1反射面41と第2反射面42とに交わり得る。光学部材40は、他の部材に固定するための接合面を含むことが好ましい。図示される例において、光学部材40の下面43が、その下方に位置する部材に接合される接合面として機能し得る。なお、光学部材40が有する下面43以外の面が他の部材に接合する接合面として機能してもよい。
【0042】
第1反射面41は、下面43に対して、例えば35°以上55°以下の傾斜角度を成す平面で構成される。図示される発光装置100の例では、第1反射面41は、下面43に対して、45°の傾斜角度を成す平面で構成されている。第1反射面41は、入射光の一部を透過させ残りを反射する部分反射面である。
【0043】
第2反射面42は、第1反射面41とは反対側に位置する。第1反射面41を光学部材40の前面に設けられる反射面とすると、第2反射面42は光学部材40の背面に設けられる反射面ということができる。第2反射面42は下面43に平行ではない。また、第2反射面42は、第1反射面41に平行ではない。
【0044】
第1反射面41及び第2反射面42は、例えば、入射光を反射する光反射制御膜を透光性材料の上に設けることによって形成され得る。光反射制御膜は、例えば、Ag、Alなどの金属薄膜から形成され得る。または、光反射制御膜は、Ta2O5/SiO2、TiO2/SiO2、Nb2O5/SiO2などから形成された誘電体多層膜であり得る。例えば、光反射制御膜の膜厚や材料を変えることによって、反射面の反射率または透過率を制御することが可能となる。
【0045】
第1反射面41の反射率は、反射させる光のピーク波長に対して、例えば80%以上98%以下の範囲とすることができ、例えば90%以上97%以下の範囲とすることが好ましい。また、第1反射面41の透過率は、透過させる光のピーク波長に対して、例えば3%以上10%以下の範囲とすることが好ましい。また、第2反射面42の反射率は、反射させる光のピーク波長に対して、例えば99%以上であり、100%に近くなることが好ましい。第2反射面42も、下面43に対して所定の傾斜角度で傾斜し得る。この傾斜については、後で詳しく説明する。
【0046】
光学部材40の第1反射面41で反射された光と透過された光は、それぞれ異なる用途に利用することができる。例えば、光学部材40の第1反射面41で反射された光を画面表示などのための主な光(メイン光)として利用し、第1反射面41を透過した光の全部または一部をこのメイン光の強度を制御するためのモニタ用の光(モニタ光)として利用することができる。このように入射した光をメイン光とモニタ光とに分岐する場合、モニタ光の強度は、メイン光の強度よりも小さい。
【0047】
第1反射面41および第2反射面42の反射率は、それぞれ、入射光の波長に応じて変化し得る。そのため、1つの第1反射面41に、異なる色の光が入射する場合、色によって反射率が異なり得る。なお、すべての色の光に対して反射率を等しくする必要はない。第1反射面41によって反射する対象の光に対して、適当な反射率となるようにその反射面を設計すればよい。なお、具体的な数値の違いはあったとしても、異なる波長の入射光のそれぞれに対して、上述した反射率や透過率の条件が満たされることが好ましい。第2反射面42についても同様である。
【0048】
異なる色の光が入射する場合、第1反射面41は、例えば、それぞれの色の光が入射する領域毎に、その光の波長に適した反射率となる反射領域を有し得る。それぞれの光が入射する入射領域に対応した複数の反射領域は、互いに分離していてもよく、または、複数の反射領域の間で部分的に重なる領域が存在していてもよい。
【0049】
(光検出器50)
光検出器50は、接合面51と、受光面52と、1または複数の側面とを有する。接合面51は、光検出器50が他の構成要素に接合される面である。接合面51は、受光面52の反対側に位置する。光検出器50の上面に受光面52が設けられる。光検出器50の外形は直方体である。なお、その外形は直方体に限らない。
【0050】
受光面52は、1または複数の受光領域53を有する。複数の受光領域53を有する受光面52において、複数の受光領域53は、互いに離隔して設けられる。複数の受光領域53は、互いに電気的に分離される。1または複数の受光領域53のそれぞれは、入射光の強度または光量に応じて電気信号を出力する光電変換素子である。このような光電変換素子の典型例は、フォトダイオードである。
【0051】
図6や
図7に例示される光検出器50において、光検出器50の受光面52には、3つの受光領域53が設けられている。なお、光検出器50が有する受光領域53の数は3つに限らなくてよい。複数の受光領域53は、所定の間隔をあけて並べて配される。ここで、複数の受光領域53が並ぶ方向を「第1方向」と呼ぶものとする。また、上面視で、第1方向に垂直な方向を「第2方向」と呼ぶものとする。
図6の発光装置100の例では、1Dの矢印が第1方向と合致し、2Dの矢印が第2方向と合致する。
【0052】
受光面52の外形の例は矩形である。受光面52の第2方向の長さは、第1方向の長さよりも短い。ただし、受光面52の第1方向の長さと第2方向の長さの大小関係はこれに限定されなくてよい。
【0053】
複数の受光領域53を有する受光面52において、複数の受光領域53は、互いに近接して並ぶ。隣り合う2つの受光領域53の間隔は、隣り合う2つの受光領域53のうちのいずれか一方、あるいは両方の受光領域53における第1方向の幅(X1、X2、あるいは、X3)よりも小さい。これにより、それぞれの受光領域53に入射する光の間隔を近付けることができ、小型な光検出器50を実現することができる。また、受光面52において異なる受光領域に入射する複数の光の強度を、それぞれ、独立して測定することが可
能になる。
【0054】
各受光領域53は、受光面52において、矩形の外形を有している。受光領域53の形状は、矩形に限らず、受光面52に入射する光の形状に応じて適宜設計され得る。図示される光検出器50の例では、各受光領域53は長方形の外形を有している。矩形を構成する四辺のうちの二辺(長方形の場合は短辺)は、第1方向と平行である。他の二辺(長方形の場合は長辺)は第2方向に平行である。ここでの平行は±5度以内の誤差を含む。
【0055】
受光領域53において、第1方向の長さ(X1、X2、X3)よりも、第2方向の長さ(Z1、Z2、Z3)が長い(
図6参照)。なお、複数の受光領域53には、第1方向と第2方向との長さが等しい受光領域53が含まれてもよいし、第1方向の長さが第2方向の長さよりも長い受光領域53が含まれてもよい。
【0056】
各受光領域53の第1方向の長さ、及び、第2方向の長さは、例えば、受光領域53に入射する光の波長に応じて異なり得る。例えば、複数の受光領域53には、受光面52において、第2方向の長さの異なる2つの受光領域53が含まれ得る。図示される光検出器50の例では、Z3<Z1であり、Z3<Z2である。
【0057】
Z2-Z1の大きさは、例えば50μm以上150μm以下、好ましくは60μm以上100μm以下である。この範囲とすることで、このスペースを導通領域55に利用しつつ、適当な大きさの受光領域53を確保することができる。
【0058】
複数の受光領域53を有する受光面52において、複数の受光領域53は、第2方向における受光領域53の両端のうちのいずれか一方の端を揃えて配される。言い換えると、それぞれの受光領域53における第2方向の両端のうちのいずれか一方の端点を結ぶ直線が第1方向に平行となる。ここでの平行は±5度以内の誤差を含む。一方の端の位置を揃えることにより、光検出器50の第2方向の長さを抑えることができ、光検出器50の小型化に貢献できる。
【0059】
なお、複数の受光領域53の間におけるこれらの大小関係や配置関係は、本実施形態に係る発光装置100に必ずしも要求されるものではない。
【0060】
光検出器50は、1または複数の配線領域54を有する。1または複数の配線領域54は受光面52に設けられ得る。なお、1または複数の配線領域54は受光面52以外の面に設けられていてよい。それぞれの配線領域54は受光領域53に電気的に接続される。
【0061】
図示される光検出器50の例において、3つの受光領域53の電気的な接続のために4つの配線領域54が設けられている。光検出器50は、受光面52において、受光領域53の数よりも多く、かつ、受光領域53の数の2倍よりも少ない配線領域54を有する。
【0062】
4つの配線領域54のうちの3つは、互いに重複せずに、3つの受光領域53のいずれかのアノード電極に電気的に接続される。残りの1つは、3つの受光領域53に共通するカソード電極に電気的に接続される。
【0063】
(保護素子60)
保護素子60は、特定の素子(例えば発光素子20)に過剰な電流が流れて破壊されてしまうことを防ぐための回路要素である。保護素子60の典型例は、ツェナーダイオードなどの定電圧ダイオードである。ツェナーダイオードとしては、Siダイオードを採用できる。
【0064】
(配線70)
配線70は、両端を接合部とする線状の形状を有する導電体から構成される。言い換えると、配線70は、線状部分の両端に、他の構成要素に接合する接合部を有する。配線70は、例えば、金属のワイヤである。金属の例は、金、アルミニウム、銀、銅などを含む。
【0065】
(発光装置100)
次に、発光装置100について説明する。
【0066】
以下に説明する発光装置の100の例において、複数の発光素子20のそれぞれは端面出射型の半導体レーザ素子(レーザダイオード)である。ただし、本開示の実施形態に係る発光装置が備える発光素子20の数は3つに限定されず、1つ、2つまたは4つ以上であり得る。
【0067】
複数の発光素子20は、パッケージ10の内部に配される。複数の発光素子20は、パッケージ10における底部11の実装面11Mに配され、側壁部12に囲まれる。また、複数の発光素子20は、サブマウント30を介して実装面11Mに配される。なお、複数の発光素子20は、サブマウント30を介さずに実装面11Mに直接配され得る。ただし、サブマウント30を用いることによって、実装面11Mから発光素子20の光出射面20Eに位置する発光点までの高さを調整し易くなるという利点が得られる。
【0068】
サブマウント30の上面30Mに設けられた接合面に、複数の発光素子20が接合する。また、この接合面の反対側に設けられた接合面に実装面11Mが接合する。なお、発光装置100は、1つのサブマウント30に複数の発光素子20を配置する代わりに、複数のサブマウント30を備え、1つのサブマウント30に1つの発光素子20を配置するようにしてもよい。
【0069】
光検出器50は、パッケージ10の内部に配される。光検出器50は底部11の実装面11Mに配置され、側壁部12に囲まれる。光検出器50の受光面52は、各発光素子20から出射される光の出射点よりも低い位置に配される。また、光検出器50は、発光素子20に近い位置に配されることが好ましい。上面視で、光検出器50と発光素子20との間の距離は、300μmよりも短いことが好ましい。これにより、発光装置100の小型化を実現することが可能となる。
【0070】
複数の発光素子20を備える発光装置100においては、光検出器50は、複数の発光素子20から出射される光のそれぞれに対応した複数の受光領域53を有し得る。複数の受光領域53は、例えば、第1方向に並べて配置される。また、第1方向の長さよりも第2方向の長さが短い受光面52を有した光検出器50とすることで、発光装置100の小型化に寄与することができる。
【0071】
光学部材40は、光学部材40の下面43が光検出器50の受光面52に対向するように光検出器50の上方に配置される。従って、光検出器50は、サブマウント30とパッケージ10の側壁部12との間に配置され、かつ、光学部材40の下方に位置することとなる。例えば、光学部材40の下面43は、樹脂等の接着層を介して光検出器50の受光面52に接合される。
【0072】
第1反射面41は、発光素子20の方を向いて配される。第1反射面41には、発光素子20から出射される主要部分の光が照射される。第1反射面41は、発光素子20の光出射面20Eから出射される光の一部を透過させ残りを上方に反射する。例えば、第1反射面41は、入射光に対し90%以上の光を反射し、10%未満の残りの光を透過させる
。
【0073】
第2反射面42は、第1反射面41よりも発光素子20の光出射面20Eから離れて位置し、第1反射面41を透過した光の一部または全部を反射する。例えば、第2反射面42は、入射光に対し99%以上の光を反射する。第2反射面42によって反射される光は、主に下面43に向けられる。
【0074】
上面視において、受光領域53の一部または全部が、第1反射面41の一部または全部と重なり得る。上面視において、受光領域53の全体が、光学部材40に重なっている。上面視において、受光領域53の一部が第1反射面41に重なり、残りの部分が第2反射面42に重なり得る。
【0075】
受光領域53は第2反射面42によって反射された光を受ける。さらに、受光領域53は、光学部材40の第1反射面41を透過し、かつ、第2反射面42により反射されていない光、言い換えると、第1反射面41で屈折して下面43に向けて進む光を受け得る。これにより、受光領域53はより多くの光を受けることができる。
【0076】
光学部材40と光検出器50との間に介在する接着層は、空気の屈折率(約1.0)よりも高く、光学部材40の屈折率に近い屈折率を有する中間屈折率層として機能する。例えば、接着層の屈折率は、ガラスの屈折率(例えば1.5)に近い。下面43と受光面52
との間が樹脂等の接着層で埋められることで、光学部材40と中間屈折率層との界面で入射光が全反射されにくくなる。また、この樹脂等の接着層は、発光素子20から出射される光に対して、例えば80%以上の透過率を有することが好ましい。これにより、光学部材40の下面43に到達した光の多くが、下面43と接着層との界面で全反射されることなく、受光面52に達する。
【0077】
複数の発光素子20は、それぞれの光出射面20Eが光学部材40の第1反射面41に向く。複数の発光素子20は、それぞれの光出射面20Eが同じ方向に向く。複数の発光素子20は、並べて配置されている。図示される例において、上面視で、複数の発光素子20の発光点は、図中の1Dの矢印で示される方向に並び、各発光素子20から出射される光の光軸は、図中の2Dの矢印で示される方向に平行である。ここでの平行は±5度以内の誤差を含む。
【0078】
図示される発光装置100の例では、発光装置100は、3つの発光素子20を備えている。ここで、説明の便宜上、この3つの発光素子20をそれぞれ、第1発光素子20A、第2発光素子20B、第3発光素子20Cと区別する。また、第1発光素子20Aから出射される光を第1の光、第2発光素子20Bから出射される光を第2の光、第3発光素子20Cから出射される光を第3の光、と呼ぶものとする。第1の光、第2の光及び第3の光は、それぞれ、赤色の光、緑色の光及び青色の光から選択される互いに異なる色の光である。3つの発光素子20をRGBの3色の光で構成する形態は、例えば、カラー画像表示の用途に採用され得る。なお、各発光素子20が発する光の色は、これに限らず、また、可視光に限られない。光検出器50の受光面52に設けられている複数の受光領域53は、第1の光の一部を受ける第1受光領域53A、第2の光の一部を受ける第2受光領域53B、及び第3の光の一部を受ける第3受光領域53Cを含む。
【0079】
図8A及び
図9Aは、発光装置100において、第1反射面41を透過して受光領域53に到達する光の光路を模式的に示している。
図8Aは、光学部材40の一例として、光学部材40Aを、
図9Aは、光学部材40の一例として、光学部材40Bを採用した図である。
図8Aにおいて、光学部材40の下面43を含む平面及び第1反射面41を含む平面がそれぞれ一点鎖線で示されている。また、両図において、発光素子20から出射され
る主要部分の光、及びその主要部分の光に含まれる代表的な光線が破線で示されている。また、第1反射面41に反射される光を光L1、第1反射面41を透過し第2反射面42によって反射され受光領域53に到達する光を光L2、第1反射面41を透過し第2反射面42に入射せずに受光領域53に到達する光を光L3としている。
【0080】
図8B及び
図9Bは、光学部材40の第1反射面41と、光検出器50の受光面52に設けられた3つの受光領域53との位置関係を示す上面図である。
図8Bは
図8Aに、
図9Bは
図9Aにそれぞれ対応している。
図8Bにおいて、光学部材40の第1反射面41の外形が実線で示され、光学部材40の上面44の外形が点線で示され、光検出器50の3つの受光領域53が破線で示されている。
【0081】
光学部材40Aは、第1反射面41、第2反射面42、下面43及び上面44を有する。ただし、光学部材40Aにおいて上面44は必須の面ではない。つまり、第1反射面41は第2反射面42に直接接し得る。
【0082】
図8Aに示されるように、光学部材40Aにおいて、第1反射面41を含む平面と、下面43を含む平面または光検出器50の受光面52を含む平面とがなす角度αは、10°以上80°以下であり、例えば35°以上55°以下であることが好ましい。なお、角度αは、
図8Aにおいて、一点鎖線で示される、下面43を含む平面から第1反射面41へと反時計回りに回る角度である。光学部材40Aにおいて、下面43を含む平面または光検出器50の受光面52を含む平面と、第2反射面42を含む平面とがなす角度βは、例えば80°以上100°以下である。角度βは、下面43から第2反射面42へと時計回りに回る角度である。図示される例において、角度αは45°であり、角度βは90°である。光L2の光軸上の直線と、光学部材40の下面43との交点の直下に、受光領域53が位置しており、光L3の光軸上の直線と、光学部材40の下面43との交点の直下に、受光領域53が位置している。
【0083】
図8Bに示されるように、上面視において、光学部材40Aの外形は、3つの受光領域53を包含する。受光領域53の一部が、第1反射面41の一部と重なる。3つの受光領域53のそれぞれの一部が第1反射面41と重なっている。2Dの矢印で示される第2方向における上面44の長さが短いほど、その方向における発光装置100の小型化に寄与する。2D方向の長さに関し、下面43の長さは、第1反射面41の長さの2倍より小さく、好ましくは、1.5倍より小さい。発光素子20から出射される光の光軸方向における第1反射面41と第2反射面42との間の距離D1は、同方向における受光領域53の長さよりも短い。距離D1は、上面44と下面43との間の2つの反射面の間隔を意味し、上面44の幅に相当する。なお、図示される発光装置100の例において、光軸方向と2D方向は一致する。
【0084】
図9A及び
図9Bに例示される光学部材40Bは、第2反射面42の傾斜角度が異なる点で、
図8Aに例示される光学部材40Aと相違する。以下、光学部材40Aとの相違点を主に説明し、共通点の説明は省略する。
【0085】
光学部材40Bの角度βは、例えば30°以上80°以下であり得る。光学部材40Bは、光学部材40Aと同様に、第1反射面41と第2反射面42とを繋ぐ上面44をさらに有していても構わない。上面視において、受光領域53の一部が第1反射面41の一部と重なり、かつ、受光領域53の残りの部分の一部または全部が第2反射面42の一部と重なる。3つの受光領域53のそれぞれの一部が第1反射面41と重なり、かつ、残りの部分が第2反射面42と重なる。
【0086】
1または複数の保護素子60は、パッケージ10の内部に配される。保護素子60は、
発光素子20を保護するために配される。保護素子60は、パッケージ10の段差部13に設けられた一対の配線領域14の上に配置される。発光装置100において、1の発光素子20に対し、1の保護素子60が設けられる。つまり、発光素子20の数と同数の保護素子60が配される。保護素子60を段差部13の上面に配置することによって発光装置100の小型化に貢献できる。
【0087】
段差部13の幅狭部が、光学部材40の背面側に位置するように、光学部材40は配置される。段差部13の幅広部は、上面視で、第1方向に発光素子20及び光検出器50を挟むように配置される。また、段差部13の幅広部は、第1方向に発光素子20及び光検出器50を挟んで、段差部13の幅狭部と反対側に配置される。
【0088】
複数の配線70は、発光素子20及び光検出器50をパッケージ10の配線領域14に電気的に接続する。複数の配線70は、両端のうちの一端を段差部13の配線領域14に接合される。1または複数の保護素子60及び複数の配線70は、段差部13の幅広部に配置され、段差部13の幅狭部には配置されない。
【0089】
複数の発光素子20は、光学部材40の第1反射面41に向けて発散光を出射する。この発散光の光軸は実装面11Mに平行である。ここでの平行は±5度以内の誤差を含む。
図5に示されるように、複数の発光素子20A、20B及び20Cのそれぞれが、光学部材40の第1反射面41の異なる領域に主要部分の光を照射する。
【0090】
発光装置100において、パッケージ10の内部には封止された閉空間が作り出される。また、パッケージ10の側壁部12と蓋部16とを所定の雰囲気下で接合することにより、パッケージ10の内部に気密封止された閉空間が作り出される。発光素子20が配される空間を気密封止することにより、集塵による品質劣化を抑制することができる。なお、発光装置100の全体が、集塵や空気中の水分などの影響による品質劣化を危惧する必要のない環境または雰囲気中で使用される場合、蓋部16は不要である。例えば、発光装置100の全体がエンクロージャによって封止される場合、蓋部16によって発光素子20を覆う必要はない。
【0091】
発光素子20から出射された光は、第1反射面41で上方に反射され、パッケージ10の蓋部16の透光性領域を透過して、光取出面17から外部に出射される。光取出面17から取り出される光の中心軸は、光取出面17に対して垂直である。ここでの垂直は±5度以内の誤差を含む。ただし、光の中心軸は、光取出面17に対して必ずしも垂直でなくてもよい。
【0092】
次に、発光装置100の変形例として、フィルタ90を有する形態について説明する。複数の発光素子20、及び、複数の受光領域53を有する光検出器50を備える発光装置100において、それぞれの受光領域53によって、異なる波長の光を受光したい場合には、それぞれの受光領域53に対応したフィルタ90を設けるとよい。
図10乃至
図11は、受光領域53に対応してフィルタ90が設けられた発光装置100を説明するための図である。
【0093】
図10は、光学部材40と、1または複数のフィルタ90と、光検出器50とを分解した状態を示す分解斜視図である。
図11は、光検出器50の受光面52上に配置された1または複数のフィルタ90を示す上面図である。
【0094】
光学部材40と光検出器50との間に1または複数のフィルタ90が配置され得る。図示される例において、光学部材40と光検出器50との間に3つのフィルタ90が配置されている。3つのフィルタ90は、それぞれ、波長選択フィルタであり、第1フィルタ、
第2フィルタ及び第3フィルタを含む。以降、第1フィルタ、第2フィルタ及び第3フィルタを、それぞれ、フィルタ90A、フィルタ90B及びフィルタ90Cと表記する。
【0095】
フィルタ90Aは光学部材40の下面43の第1領域に形成される。第1領域は、光検出器50の受光面52における受光領域53Aの直上に位置する下面43の領域である。フィルタ90Bは光学部材40の下面43の第2領域に形成される。第2領域は、光検出器50の受光面52における受光領域53Bの直上に位置する下面43の領域である。フィルタ90Cは光学部材40の下面43の第3領域に形成される。第3領域は、光検出器50の受光面52における受光領域53Cの直上に位置する下面43の領域である。
【0096】
フィルタ90の例は、Ta2O5/SiO2、TiO2/SiO2、Nb2O5/SiO2などから形成された誘電体多層膜である。光学部材40の下面43における上記の第1領域、第2領域、第3領域に、それぞれ、所定の波長選択性を有する誘電体多層膜を形成することができる。
【0097】
先ず、3つの発光素子20のうちの隣り合う2つの発光素子20に着目する。フィルタ90Aは第2の光をカットし、第1の光を選択的に透過する光学特性を有する。フィルタ90Bは第1の光をカットし、第2の光を選択的に透過する光学特性を有する。第1の光及び第2の光の組み合わせは、例えばRGBの中から選択される2つの色の組み合わせである。ただし、その組み合わせに可視光以外の光、例えば赤外光が含まれ得る。一例として、第1の光が赤色の光であり、第2の光が緑色の光である場合、フィルタ90Aは、緑色の光をカットして、赤色の光を選択的に透過させ、フィルタ90Bは赤色の光をカットして、緑色の光を選択的に透過させる。
【0098】
上面視で、フィルタ90は、一部または全部が、受光領域53の一部または全部と重なるように配置され得る。
図11に示される例において、フィルタ90Aの全部が、受光領域53Aの全部と重なり、フィルタ90Bの全部が、受光領域53Bの全部と重なり、フィルタ90Cの全部が、受光領域53Cの全部と重なる。
【0099】
隣り合う2つの発光素子20の一方から出射される光は、他方から出射される光のモニタ光を検出する受光領域53に達し、隣り合う2つの発光素子20の他方から出射される光は、一方から出射される光のモニタ光を検出する受光領域53に達し得る。いわゆるクロストークが生じ得る。隣り合う2つの発光素子の間隔が極めて狭く(例えば0.5mm以下)なると、クロストークが生じ易くなる。クロストークは、光電変換素子における電気信号のノイズ成分を助長し、SN比を低下させる要因となり得る。結果として、検出対象とするモニタ光の検出精度が低下してしまう可能性がある。
【0100】
本実施形態によれば、隣り合う2つの受光領域53の上に、波長選択特性が異なるフィルタ90が配置される。これにより、隣り合う2つの発光素子20の一方から出射される光が、他方から出射される光のモニタ光を検出する受光領域53に混入することを抑制し、かつ、隣り合う2つの発光素子20の他方から出射される光が、一方から出射される光のモニタ光を検出する受光領域53に混入することを抑制することができる。その結果、モニタ光の検出精度の低下を抑制することが可能となる。
【0101】
図5に示される発光装置100の例において、中央に位置する第2発光素子20Bの両隣に、第1発光素子20Aと第3発光素子20Cとが配置される。この場合、フィルタ90Aは少なくとも第2の光をカットし、第1の光を選択的に透過する光学特性を有する。フィルタ90Aは第3の光をさらにカットする光学特性を有することが好ましい。発光素子20Cから出射された第3の光の一部も光学部材40の内部で反射を繰り返し、やがて受光領域53Aに到達し得るからである。フィルタ90Bは第1の光及び第3の光をカッ
トし、第2の光を選択的に透過する光学特性を有する。フィルタ90Cは少なくとも第2の光をカットし、第3の光を選択的に透過する光学特性を有する。フィルタ90Aと同様に、フィルタ90Cは第1の光をさらにカットする光学特性を有することが好ましい。
【0102】
本実施形態において、フィルタ90による光のカットは、例えば、フィルタ90が、可視光のうちの、選択的に透過させる光の波長以外の光に対して5%以下の透過率を有することを意味する。フィルタ90Aは、例えば、赤色の光に対して90%以上の透過率を有し、緑色及び青色の光に対して5%以下の透過率を有する。同様に、フィルタ90Bは、例えば、緑色の光に対して90%以上の透過率を有し、赤色及び青色の光に対して5%以下の透過率を有する。フィルタ90Cは、例えば、青色の光に対して90%以上の透過率を有し、赤色及び緑色の光に対して5%以下の透過率を有する。
【0103】
フィルタ90Bは、上面視で、一部または全部が、受光領域53Bに重なるように配置される。さらに、フィルタ90Bは、一部または全部が、受光領域53Aおよび受光領域53Cとは重ならないように配置される。光学部材40の下面43に配置された複数のフィルタ90は、互いに分離しているが、必ず分離されていなくてもよい。複数のフィルタ90は、下面43において一定の間隔を空けて配置され得る。この間隔は、例えば数十μm程度である。
【0104】
このように、光学部材40と光検出器50との間にフィルタ90を配置することによって、RGBの発光素子を備える発光装置100など、異なる波長の光を発する複数の発光素子を備える発光装置において、光の強度を、それぞれ、独立して精度よく測定することが可能になる。
【0105】
以上、本発明に係る実施形態を説明してきたが、本発明に係る発光装置は、実施形態の発光装置に厳密に限定されるものではない。つまり、本発明は、実施形態により開示された発光装置の外形や構造に限定されなければ実現できないものではない。例えば、保護素子を有しない発光装置であってもよい。また、全ての構成要素を必要十分に備えることを必須とせずに適用され得るものである。例えば、特許請求の範囲に、実施形態により開示された発光装置の構成要素の一部が記載されていなかった場合、その一部の構成要素については、代替、省略、形状の変形、材料の変更などの当業者による設計の自由度を認め、その上で特許請求の範囲に記載された発明が適用されることを特定するものである。
【産業上の利用可能性】
【0106】
実施形態に係る発光装置は、ヘッドマウントディスプレイ、プロジェクタ、照明、ディスプレイ等に使用することができる。
【符号の説明】
【0107】
10 :パッケージ
11 :底部
11M :実装面
12 :側壁部
13 :段差部
14 :配線領域
16 :蓋部
17 :光取出面
20、20A、20B、20C :発光素子
20E :光出射面
30 :サブマウント
30M :上面
40、40A、40B :光学部材
41 :第1反射面
42 :第2反射面
43 :下面
44 :上面
50 :光検出器
51 :接合面
52 :受光面
53、53A、53B、53C :受光領域
54 :配線領域
55 :導通領域
60 :保護素子
70、71、72 :配線
90、90A、90B、90C :フィルタ
100 :発光装置